当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」ことを会社の使命とし、人流・物流の課題の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
会社の使命を果たすため、「HINO基本理念」、「HINOサステナビリティ方針」、「HINO行動規範」から成る企業理念「HINO ウェイ」を定め、以下、3つを共有の価値観として、当社グループは事業活動及び健全な企業風土の醸成に取り組んでおります。
「誠実」:コンプライアンスを徹底し、誠実に行動します。
「貢献」:安全・環境にこだわり、未来の社会を支えます。
「共感」:互いを尊重し、安全安心な職場をつくります。
(2)会社の環境及び対処すべき課題
<会社の環境>
1)エンジン認証不正問題への対応
当社のエンジン認証不正問題については、米国市場におけるエンジンの排出ガス認証試験および性能の問題について米国連邦およびカリフォルニア州当局による調査が継続していましたが、2025年1月16日に米国当局との間で和解に至りました。これは、米国における当社の過去のエンジン認証問題を一括して解決するものとなります。
日本市場においては、国土交通省から型式指定取消の処分を受けたもののうち、大型エンジン「A09C」搭載車の出荷を2023年2月より再開しました。大型エンジン「E13C」は型式指定の再申請に向けて劣化耐久試験を進めており、中型エンジン「A05C(HC-SCR)」については対応に時間を要していることから現行モデルの再申請はせず、エンジンを「A05C(尿素SCR)」の1機種に統合した2026年モデルで対応します。
また、当社に対する訴訟については、2022年8月に提起された米国の集団訴訟、2022年9月および2023年4月に提起された豪州の集団訴訟、2023年10月に提起されたカナダの集団訴訟はすべて和解に至っております。2025年3月に提起されたニュージーランドの集団訴訟については現在係争中です。当社のエンジン認証不正問題の詳細については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」をご参照ください。
当社は二度と不正を起こさないため、2022年10月に「3つの改革」を策定しました。すべての礎となる企業理念「HINO ウェイ」に則り、会社の使命を実現して再び社会への責任を果たしていくため、経営層の強い覚悟と率先垂範により経営・企業風土・クルマづくりにおける改革を進めております。国土交通省からの是正命令に対しても、「3つの改革」を含む抜本的な再発防止策に取り組み、進捗を定期的に報告してまいりました。現在は、同省からの是正命令である社内チェック体制の再構築、 コンプライアンスおよびガバナンス強化、開発体制の見直し、組織風土の抜本的改革等、再発防止策を全て実施フェーズに移しています。これらの施策を社内で仕組みとして定着させるべく、従業員への教育の拡充等にも継続的に取り組んでおります。
2024年度の具体的な取り組みとして、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証を2024年4月に取得いたしました。データの適切な管理体制の強化に向けては、認証試験データの自動保存化とアクセス管理を強化した外部新システムを導入しております。また、この問題を 風化させないために、認証不正問題の公表を行った3月4日を新たに「再出発の日」と位置づけ、全社での振り返りを毎年実施しております。
「3つの改革」を更に深化させ、組織風土・業務執行の継続的な改善を実行していくために、経営層と従業員が何度も意見交換をする機会を持ち、これまでの取り組みや成果の振り返り、施策の見直しを行っています。
また、米国当局との和解内容を受け、当局と合意した市場措置および超過排出による環境への影響を相殺するための環境負荷軽減プロジェクトを、確実に実施してまいります。更に、米国環境法等をより意識した「コンプライアンス・プログラム」を策定・実施し、自浄作用を働かせながらコンプライアンスの改善・強化を今後とも継続します。こうした取り組みを自律的なものとして定着させることで、当社の使命である「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献」できるよう、努めてまいります。
2)事業および経営環境の強化に向けて
当連結会計年度における世界経済は、インフレの落ち着き、貿易持ち直し等による実質所得の改善を背景に底堅い成長を維持しています。国内の製造業においても、デジタル化・脱炭素化・サプライチェーン強靱化に向けた取り組みや人手不足対応などを背景に、投資活動の拡大傾向が続きました。一方で、各国の政権交代や紛争などの地政学的な変化と相まって、他社と同様に不確実性が高まっています。
このような状況において、当社がこれからもお客様へ継続的に価値を提供していくには、商品・サービスを軸とした経営を行い、私たちの強みであるクルマのQDR=「商品品質」を、クルマの稼働を支えるサービスとお客様ビジネスの困り事を解決するソリューションの「トータルサポート品質」で最大化し、「2つの品質」が相互に支え合うことで「総合品質」を向上して、お客様からパートナーとして選ばれ続けること、あわせて経営基盤の強化に取り組んでまいります。
商品については、大型トラック「日野プロフィア」、中型トラック「日野レンジャー」、小型トラック「日野デュトロ」、観光・路線バスなどの改良モデル等、まだ出荷再開に至らない型式車両がある中でも、できる限りお客様のニーズにお応えする商品を提供してまいりました。
トータルサポートについては、国内外の販売会社の拠点新設・拡充・更新等を継続的に進め、スピーディーで質の高いサービスを提供し、お客様のビジネスに貢献し続けていくための体制整備に注力しております。
また、こうした既存事業の競争力強化に加え、カーボンニュートラルの実現、人流・物流に関する社会課題の解決に向けた取り組みを継続してまいりました。
カーボンニュートラルの実現に向けては、内燃機関車と電動車の両輪で適材適所に対応するマルチパスウェイによるアプローチで取組みを進めています。2022年6月に発売した小型BEVトラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」は、脱炭素社会の実現を目指す全国のお客様に幅広くご愛用されており、2024年度の販売台数は560台を超えるレベルに達しました。燃料電池トラック「日野プロフィア Z FCV」は、水素社会の普及を目指し、お客様に実際に使用していただく走行実証を通じて実用化に向けた取り組みを推進しています。2025年4月から開催中の日本国際博覧会(大阪・関西万博)においては、ENEOS株式会社様と西日本ジェイアールバス様とともに国内初となる合成燃料を使用した駅シャトルバスを運行しております。
人流・物流に関する社会課題の解決に向けては、CASE技術を活用し、業界を越えた様々なパートナーとの実証プログラムを推進しています。2023年7月に提供を開始した公共ライドシェアの運行管理受託サービスは、国土交通省が主導する「『交通空白』解消・官民連携プラットフォーム」に参画したことで自治体への導入やサービス拡充が順調に進んでいます。2024年11月には、国内商用車メーカー3社様ほか官民一体となって、新東名高速道路で自動運転技術を用いた大型トラックによる走行実証を開始しました。2025年1月より、苫小牧港にてコンテナ運搬を行うトレーラーの運行を高度化する実証実験を苫小牧栗林運輸株式会社様、株式会社三井E&S様とともに実施するほか、同2月からは、次世代道路技術の早期実装を目指して、新たに建設された舗装評価走路での自動運転レベル4相当の車両を用いた無人走行試験を大成ロテック株式会社様と開始しました。
また、ステークホルダーの皆さまに持続的に価値を提供していくため、「経営基盤の強化」にも継続して取り組んでおります。身の丈を越えて事業拡大を優先した経営から脱却し、財務基盤と競争力を強化するため、2024年は米国部品事業の撤退や中国事業の縮小等、事業の「選択と集中」を図ってまいりました。あわせて、需給の改善による車両在庫の適正化、車両型式の見直しや部品種類の削減等の取り組みも進めております。
また、経営基盤を強化する上で「人材」を重要な資産と考えており、企業理念の浸透や社内コミュニケーションの活性化、人材育成、職場環境の整備など、従業員が自社に誇りを持ちいきいきと働くための取り組みにも尽力しております。2024年度は、「人の成長」に注力する人事中期計画(2024年度~2026年度)の初年度として、評価・賃金制度の見直しや学びの支援に向けた様々な施策を実施しました。また、毎年実施している従業員意識調査において、2024年度は全ての指標でスコアの改善が見られ、結果を職場にフィードバックし、各組織の対話や改善に活用しています。
<対処すべき課題>
1)収益力回復と営業利益率8%の達成
当社は、2025年1月、北米向けエンジンの認証問題について米国当局と和解し、一連の認証問題に区切りをつけることができました。今後は「日野の目指す姿」実現に向けてスピード感を持って事業を再建し、お客様・社会からの信頼回復に努めるとともに、企業価値の向上と株主還元を実現させていきます。そのためには、「商品・サービスを軸にした経営」への変革が不可欠であり、良品廉価なクルマと高品質な「製品・サービス」でお客様・社会に価値提供し持続的な成長を目指します。
また、当社の持続的成長を実現させるための戦略資産である人的資本の強化についても、「人の成長」を主眼に一層取り組んでいきます。そして、これらの活動の基盤となる、コンプライアンス・ガバナンスの強化については、「「正しい仕事」を仕組み化するための規則・体制整備」と「ルールを守り、主体的に『考動』する行動様式の徹底」を両輪にして、引き続き推進してまいります。
上記を踏まえ、当社グループは、中長期的な成長に向けた方針として、順次利益水準の回復を図り、2030年度には営業利益率8%の実現を目指しています。そのために、事業ポートフォリオ見直し(選択と集中)を念頭に、お客様に貢献できていない事業および商品の再検討、「選択と集中」によって創出したリソースをお客様から高く評価いただいている商品の改良・拡販や、日本、アセアン、オーストラリアなど優位性のある市場での事業拡大に投下し、新たな付加価値の高い商品・サービスの提供につなげて競争力強化を図っていきます。
2)4社協業、2社経営統合について
2023年5月にトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)、ダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)および当社が基本合意書を締結して以降、当社及び三菱ふそうの統合(以下「本経営統合」という。)に関する協議を進めてまいりましたが、2025年6月10日に経営統合契約を4社で締結いたしました。本経営統合の詳細については、「第2 事業の状況 5.重要な契約等 (4)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る経営統合契約の締結」をご参照ください。
なお同日、本経営統合を契機に、羽村工場の競争力の更なる強化を図るべく、当社の羽村工場のトヨタへの移管(以下「本移管」という。)に関する契約を締結しました。本移管の詳細については、「第2 事業の状況 5.重要な契約等 (5)羽村工場のトヨタ株式会社への移管に関する契約締結」をご参照ください。
これら本経営統合と本移管はいずれも2026年4月の新体制発足を目標に準備を進めてまいりますが、その推進にあたっては、あらゆるコンプライアンス面での要求を満たすことを前提に、全てのステークホルダーの皆様への影響を考慮しつつご期待にお応えするべく、誠実にコミュニケーションを図りながら進めてまいります。
(1)全般
当社グループの主要な製品であるトラック・バスは、人流・物流を支える社会インフラであり、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命のもと、お客様や社会が抱える物流・人流の課題を解決することによって、サステナブルな社会の実現に貢献したいと考えています。
2022年に策定した企業理念「HINOウェイ」の中で「HINOサステナビリティ方針」を定め、当社グループの全ての従業員がサステナブルな社会の実現に向けて誠実に行動することを宣言しています。
①ガバナンス
当社グループは、人流・物流に関する社会課題解決を含むサステナブルな社会実現に向けた取組みを経営の重要課題の一つに位置付け、経営の健全性、効率性、および透明性を確保し、適正な業務が行われるようガバナンス機能の強化と運用に努めています。
取締役会においては、組織運営のベースとなるスキルと当社独自の戦略・ビジョンに紐づけられるスキルから選定したスキルセットの一つに「サステナビリティ」を設定し、ガバナンスの実効性向上と当社グループの継続的な企業価値向上の実現を図っています。
加えて、気候変動や人的資本に関する重要な課題については、経営会議にも報告しています。
当社のガバナンスについては、
②戦略
当社の経営ビジョンである「日野の『目指す姿』」※1を実現するために取り組むべき社会課題を洗い出し、その中から、当社が特に重要だと考える8つの課題をマテリアリティ(重要課題)※2として特定し、経営資源を適切に配分して取り組んでいます。
<8つのマテリアリティ(重要課題)>
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お客様・社会への価値提供 |
・環境負荷低減とカーボンニュートラル社会実現への貢献 ・商品・サービスとデジタルデータ活用を通じ、人や物が最適に移動できる社会の実現 ・事故のない安全な社会の実現 |
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価値提供を実現するための 経営基盤 |
・企業活動における人権尊重 ・「正しい仕事」を支えるガバナンス ・従業員尊重と多様な人財の活躍 ・信頼回復に向けたステークホルダーとの誠実な対話 ・強靭で持続可能なサプライチェーンの維持 |
<特定のステップ>
※1 日野の「目指す姿」
※2 マテリアリティ(重要課題)へのアプローチおよび主な取り組みについては統合報告書2024をご参照ください
③リスク管理
当社は、グループ企業を含めた全社横断的なリスクマネジメント体制を構築するとともに、従業員一人ひとりのリスク感度を上げ、リスク顕在化の未然防止を図ることを基本方針としています。業務執行を担当するCxO・機能長および各部署長がサステナビリティに関するリスクを含む各種リスクの管理を適切に行うとともに、重要リスクについては、取締役会・経営会議等に諮り、全社的に管理しています。
<当社グループのリスク管理体制>
④指標と目標
気候変動に関する指標と目標は後述の
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)
当社グループは、2022年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同しました。
TCFDのガイドラインに基づき、シナリオ分析を行い、事業活動に与えるリスクと機会を抽出し、気候変動におけるリスクと機会への取り組みを以下の通り開示し、今後も継続的に開示内容の充実を図っています。
①ガバナンス
当社は、気候変動を含む環境課題解決を経営の最重要課題の一つに位置付けています。
部門横断的組織として、代表取締役社長を委員長とする「日野環境委員会」を年4回開催し、中長期の環境方針と短期の実行計画について審議・報告を行い、企業経営へ反映しています。当社のガバナンスの全般については、
②戦略
当社グループは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などが公表した外部シナリオを考慮し、気温上昇が「4℃(注1)」、「2℃未満(注2)」の2つのシナリオを検討し、影響分析を実施しました。
(注1)4℃シナリオ :産業革命前と比べて4℃前後上昇するシナリオ
(注2)2℃未満シナリオ:産業革命前に比べて21世紀末に世界平均気温の上昇幅が2℃未満に抑えられるシナリオ
その結果、「4℃シナリオ」では異常気象が常態化し、干ばつや洪水など当社の事業活動に影響を及ぼす物理リスクが増大すると想定しています。
一方、「2℃未満シナリオ」においては先進国を中心とした積極的な対策(例:燃費・排ガス規制、車両電動化規制の強化等)により脱炭素社会が進展し、車両電動化を中心とした環境対応車の拡大を想定しております。「2℃未満シナリオ」では主に移行リスクおよび機会への対応が必要と考えています。
4℃シナリオの世界観
2℃未満シナリオの世界観
上記シナリオにおける当社事業へのリスクおよび機会を特定し、インパクトを分析すると共に対応策を検討した内容は以下の通りです。
(物理リスク)気候変動による災害など物理的影響に関連するリスク
(移行リスク・機会)脱炭素社会への移行に伴い発生するリスクと機会
シナリオ分析およびリスクと機会を特定した結果は、当社の経営戦略へ反映していきます。また、カーボンニュートラルの実現に必要な、水素をはじめとしたCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)技術開発については、ダイムラートラック社、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下、三菱ふそう)、およびトヨタ自動車株式会社との協業、ならびに三菱ふそうと当社の経営統合によるシナジーも活用して取り組みます。
気候変動に関するリスクや機会は日々大きく変化しており、今後も変化するリスクや機会に柔軟に対応を見直していくとともに、さらなる開示内容の充実に取り組みます。
③リスク管理
気候変動に関連するリスクについては、上記のシナリオ分析に基づき、日野環境委員会に属する各部会で分析や評価、優先順位付けを行い、長期や短期の対応策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に日野環境委員会に報告しています。
④指標と目標
当社グループの環境活動は、長期ビジョン「日野環境チャレンジ2050」にて掲げた6つの重点的なチャレンジ項目を指標とし、全てのチャレンジにおいて環境負荷を最小化することを目標として掲げています。
その実現に向け、「日野環境マイルストーン2030」にてそれぞれのチャレンジ項目における2030年までに達成する中期目標を設定しました。更に5年ごとの「環境取り組みプラン」を策定し、毎年の実行目標へ落とし込み、活動を推進しています。
特にCO₂排出量においては「温室効果ガス(GHG)報告ガイドライン」に基づき、報告値および入手可能なデータを用いてScope1、Scope2に加えてScope3(注3)の排出量を算出しています。今後もライフサイクルCO₂排出量の管理を強化するとともに、CO₂削減活動に取り組んでいきます。
(注3) Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(3)人的資本
当社では、2022年3月4日に公表しましたエンジン認証に関する不正行為を受けて策定した、二度と不正を起こさないための「3つの改革」に関する取り組みを継続的に推進中であり、今後の当社の再生と飛躍を実現するためには、土台となる人的資本が非常に重要と考えております。
そのため、当社の中期事業計画と連動し、実現につながる人材戦略を策定いたしました。この戦略に基づき、人材を確保・育成し、当社でモチベーション高く働きたいと思えるような施策を行ってまいります。
①ガバナンス
当社は、2023年2月に執行体制を見直すと共に、経営視点で人材戦略・人事戦略と人的資本経営の企画立案、および実行を担う責任者としてCHRO(Chief Human Resources Officer)を設置しました。あわせてタイムリーな課題推進と専門能力の習得、組織的な能力向上と確実なアウトプットを目的に、本社人事機能を採用・育成・処遇・配置を司る組織と労務・ペイロールを推進する組織へ2分割しました。人事機能と各機能の人事部門との役割明確化と権限委譲を進め、各機能出身者(事業部門経験)と人事機能出身者とのローテーションを積極的に実施し、人事機能の強化と合理化を図っております。
加えて人的資本に関連する重要な方針・戦略については、経営会議や取締役会など適切な会議体において議論し決定しており、全社展開時にはきめ細かな説明会を実施し浸透を徹底・粘り強くフォローしております。
経営層の人事は、委員長および委員の過半数を独立社外取締役が務める「役員人事案検討会議(任意の指名委員会に相当)」で審議しております。将来の経営層を継続的に輩出するため、若手層の抜擢人事や積極的な中途採用、他社でのマネジメント経験のある人材のChief Officer(機能・専門分野の責任者)登用を行っています。キャリアローテーションを活性化し、多くの経験を積む機会を増やし、経営者として必要な胆力を持ち合わせた人材の輩出に努めています。
②戦略
当社がトラック・バスという商品を通じてお客様への価値提供を継続していくためには、『自ら考動・新たな価値を創造できる人材』 を育成することが重要であると考えております。また、人材を重要な財産と位置付け、人の成長を主眼に適正な資本を適切に投下していくこと(人的資本経営)を経営課題としております。
人材戦略を実現するため、当社は以下の「人材育成方針」と「人材マネジメントポリシー」を設けるとともに、人的リソーセス、人的資本は質・士気(エンゲージメント)・人数の掛け合わせと捉え、それぞれに適した人事施策を策定・実行することで社員一人ひとりの成長を支援し、全従業員のパフォーマンス最大化を図っています。
■人材育成方針
当社は、人材を重要な会社の財産と考えております。「HINOウェイや会社ビジョンに共感を持ち、お客様・社会の為に自ら考え・自主的に行動を起こし、新たな価値創造を生み出せる人材」を育成します。そして、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命の具現化のため、従業員一人ひとりの成長を支援します。
また、この方針に基づいて人の成長を実現・加速させることで、企業価値の向上につながる正のスパイラルを回し続け、当社の持続的な成長を目指しております。
■人材マネジメントポリシー
・人材の評価・昇格・役職任用は、期待される役割に対する能力発揮(パフォーマンス)や可能性(ポテンシャル)に基づき、公正かつ厳格に判断する
・社員は自身のキャリア形成に対する一層の主体性を持ち、会社は適切に成長機会を提供することで、双方が長期的な視点で計画的に自ら成長・人材を育成する
・各職場で合意形成が難しい場合には、全社最適・長期視点・公正さを担保する観点で人事機能が人材に関する最終的な意思決定を行う
■人事施策(一部抜粋)
③リスク管理
当社は、人材戦略、人的資本に関連したリスク管理として、ネガティブな「リスク」、ポジティブな「機会」の両面を意識した取り組みを行っています。「HINOウェイ」の構成要素として、一人ひとりの具体的な行動の基準である「HINO行動規範」を定めており、「法令・基準を守る」「お客様・社会に貢献する」「健全な職場を作る」の3つに大別して、当社社員が守るべき、模範となる具体的な行動を明記しております。
この行動規範の浸透・徹底を通じて、全社でリスクの管理・低減に努めております。
具体的な活動の一例として、CCOの指揮監督により、コンプライアンス推進部を中心とした全社のコンプライアンス徹底、意識向上につながる教育活動の推進しております。
またコンプライアンスに関する報告・相談先として、第三者機関による「HINOコンプライアンス相談窓口」
を設定しており、国内外の当社グループ全従業員が24時間365日利用可能で、広くスピークアップを受け付けてい
ます。
④指標と目標
当社は、前述の方針等を踏まえて以下指標に対して目標を設定し、達成に向けた取り組みとモニタリングを継続的に実施しております。
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項目 |
23年3月期 |
24年3月期 |
25年3月期 |
目標 |
備考 |
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中核人材 の多様性 |
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54名 |
56名 |
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14年度:19名 |
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2.6% |
2.6% |
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- |
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4.8% |
6.3% |
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目標達成済 |
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40.3% |
39.8% |
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- |
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その他 |
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41.4% |
64.0% |
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20年度:11.0% |
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76.4% |
77.7% |
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- |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)需要及び価格の変動
国内においてのトラック・バス等の販売は、国及び地方自治体による環境規制強化の実施の有無による需要の変動に大きく影響を受けます。また、国内貨物輸送の低迷や物流改革の進行により今後のトラック需要は減少する可能性があります。さらに、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
海外においてのトラック・バス等の販売は、国・地域及びその市場における経済状況の影響を受け、かつ、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
これらの需要及び価格変動に対応するため、当社グループは商品力の強化と適正な生産体制の構築、原価改善等を推進し、需要・価格変動に強い企業体質を目指しております。
(2)材料価格の変動
当社グループは国内及び海外の複数のメーカーから鋼材等の資材、部品等を調達し、トラック・バス、エンジン等を生産しております。これらの材料価格は、業界の需要や原材料の価格に伴い変動しております。材料価格が高騰し、かつ、長期化する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはこれらの材料価格の変動に対応するため、原価改善等を推進しております。
(3)為替の変動
当社は円表示で連結財務諸表を作成しており、海外における現地通貨建の売上高、費用、資産等の項目は、連結財務諸表作成時に円換算されるため、換算時の為替レートによって、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
また、国内外での原材料等の仕入れや製品の販売において、外国為替相場の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。この為替変動リスクを抑えるために一部でデリバティブ取引を行っておりますが、それによって本来得られた利益を逸失する可能性があります。
当社グループは、これらリスクに対応するため、適切なグローバル調達・生産・販売体制を検討・構築しております。
(4)金利の変動
資金調達に係るコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは親会社であるトヨタ自動車株式会社とのインハウスバンキングを通じた資金調達のグローバル化等によって当該リスクの最小化を図っております。
(5)貸倒れリスク
当社グループは当社で生産したトラック・バスを全国の販売会社を通し様々な取引先に販売をしております。
これらの取引先において信用不安などにより予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは取引先の信用リスク情報などを適時入手し、当該リスクの最小化を図っております。
(6)親会社との取引
当社グループは、親会社であるトヨタ自動車株式会社より乗用車及び一部の小型トラックの生産を委託されており、また小型トラックのOEM供給を行っております。当連結会計年度の売上高の9.0%を同社に依存しております。
尚、当社とトヨタ自動車株式会社との取引は、「関連当事者情報」に記載しております。
(7)国内外での事業活動
当社グループは、日本をはじめアジアを中心とした世界各地で事業活動を展開しております。それらの事業活動には、通常、予期しない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の採用・確保の困難等、経済的に不利な要因の存在又は発生、テロ・戦争・自然災害・その他の要因による社会的又は政治的混乱等のリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
尚、当社グループの世界各地域における事業活動は、「セグメント情報」に記載しております。
(8)法規制等
当社グループは、国内外でのトラック・バス等の販売において、安全性や排出ガス、燃費、騒音、公害などに関する法規制等やその他各国の様々な法規制等の適用を受けているため、これらの規制に適合するために費用を負担しております。これら法規制等の制定又は改正が行われた場合、費用負担が増える可能性があります。
(9)製品の欠陥
当社グループは、基礎研究段階を含め、商品企画・開発からアフターサービスまでの各ステップにおいて、安全性への細心の配慮を行うとともに、品質の確保に努めております。
しかし、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたりリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。そのため、これらのリスクが顕在化する場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)エンジン認証不正問題
当社の日本市場向けエンジンの複数機種について、認証手続上の不正行為があったことが判明し、国土交通省より、一部製品の型式指定の取消等の行政処分を受け、現在も国土交通省やお客様をはじめとして関係各所とのコミュニケーションを継続して行っています。また、当社の米国市場向け2010年モデルから2019年モデルのエンジン認証に関する法令違反の疑いについて、米国司法省及び他の当局による調査が行われておりました。これに関し、当社及び当社子会社に対し、2004年から2021年に米国で販売された車両に関する損害の賠償を求める訴訟が暫定的な集団訴訟として、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で提起されました。2023年10月25日に開示しましたとおり、当社及び当社子会社は、同日、2010年から2019年モデルのエンジンを搭載して米国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で、総額237.5百万米ドルの和解契約を締結しました。この和解契約は、2024年4月1日に裁判所の最終承認を受けた上で、同月11日に上記和解金の支払いを完了し、当該和解は、同年5月2日に確定しております。2025年1月16日に開示しましたとおり、米国司法省及び他の当局による調査は完了し、当社は2025年1月16日に、米国司法省との間で、刑事和解契約の締結に至りました。同契約において、当社は有罪を認めるとともに、調査協力による大幅な減額を反映した、総額5億2,176万米ドルの刑事制裁金を支払うことに合意し、2025年3月19日に刑事和解契約の効力が発生しました。また、2025年1月16日、当該問題について、当社及び当社米国子会社は、米国当局及びカリフォルニア当局との間で、民事和解契約の締結に至りました。同契約において、当社及び当社米国子会社は、米国司法省(DOJ)、米国環境保護庁(EPA)、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)及び米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)を含む米国当局に対し総額4億4,250万米ドル、カリフォルニア州大気資源局(CARB)及びカリフォルニア州司法長官室(California State Attorney General’s Office)を含むカリフォルニア州当局に対し総額2億3,650万米ドルの民事制裁金等を支払うことに合意し、2025年5月21日に民事和解契約の効力が発生しました。カナダにおいては、当社及び当社子会社に対する2件の訴訟が集団訴訟として提起されておりましたが、2024年11月13日に総額55百万カナダドルの和解契約を締結しました。当該和解契約は、2025年5月6日にブリティッシュコロンビア州上級裁判所の実質的な承認を受け、同年6月2日にケベック州上級裁判所の承認を受けました。また、豪州においては、当社及び当社子会社に対する訴訟が集団訴訟として提起されていましたが、2025年2月14日に、和解金87百万豪ドルを支払うことを内容とする和解契約を締結し、当該金額について2025年3月期に特別損失を計上しました。さらに、2025年3月31日に開示しましたとおり、ニュージーランドにおいても、当社に対する集団訴訟が提起されており、今後も米国、豪州、カナダ、ニュージーランド、その他の法域においてこれらと同様の訴訟を提起される可能性があります。これらに関連して当社に生じる金銭的負担について、当社は、2025年3月期中間連結財務諸表において、北米向けエンジンの認証問題に係る損失として、米国当局との認証問題に関する和解に伴う費用及びカナダ訴訟の和解金について、2025年3月期中間連結財務諸表作成時点で当社として合理的に見積もり可能と判断した範囲において、北米認証関連損失として特別損失を計上いたしました。また、米国以外の国における認証問題に関連して負担する可能性のある費用や、カナダ以外の訴訟に関する和解金等は上記で計上した損失には含まれておりません。上記の当局調査の結果科される罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否及び条件等に関するリスク
当社は、2025年6月10日に、当社、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)及び三菱ふそうの親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)の4社において、2026年4月1日を統合予定日として、当社と三菱ふそうとの経営統合(以下「本経営統合」という。)について経営統合契約(以下「本経営統合契約」という。)を締結しました。
本経営統合の詳細については、「第2 事業の状況 5.重要な契約等 (4)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る経営統合契約の締結」をご参照ください。上記(10)のエンジン認証不正に関連して当社に生じる金銭負担の金額規模及びそれが判明するタイミング次第では、①本経営統合契約の実行に関する前提条件を充足せず、その結果、本経営統合の実施に至らないおそれ、並びに②本経営統合契約の規定に基づき、統合会社及び当社がダイムラートラック及びその他の三菱ふそうの株主に対して特別補償の責任を負うおそれがあり、本経営統合の成否及び条件等、さらには当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、本経営統合の一環として、当社はトヨタに対して第三者割当の方法により普通株式270,915,798株及びA種種類株式175,512,774株を統合予定日の直前に発行する予定です。当該第三者割当による普通株式の希薄化率(2025年3月31日現在の当社の発行済株式総数である574,580,850株(総議決権数5,737,805個)を分母とします。)は47.15%(議決権における割合は、総議決権数の47.22%)に相当し、大規模な株式の希薄化が生じる予定です。
また、最終的に競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等が取得できないことにより、本経営統合の実施に至らない可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、インフレの落ち着き、貿易持ち直し等による実質所得の改善を背景に底堅い成長を維持しています。国内の製造業においても、デジタル化・脱炭素化・サプライチェーン強靱化に向けた取り組みや人手不足対応などを背景に、投資活動の拡大傾向が続きました。
当連結会計年度の国内のトラック市場につきましては、部品供給の改善等に伴う各社生産回復により、大中型トラックおよび小型トラックの総需要は増加となりました。また、国内のバス市場につきましても、供給制約問題の解消や新型コロナ禍以降の買い控えからの回復等によりバスの総需要は増加し、国内トラック・バスの総需要は合計で167.8千台と前期に比べ18.4千台(12.3%)の増加となりました。
当社の国内売上台数につきましては、出荷再開した大型トラックの一部車型の販売が好調なことにより、トラック・バスの合計で42.0千台と、前期に比べ3.4千台(8.9%)の増加となりました。
海外につきましては、主にアセアンを中心とした販売減により、連結売上台数はトラック・バスの合計で85.8千台と前期に比べ6.2千台(△6.8%)減少いたしました。
この結果、日野ブランド事業のトラック・バスの総売上台数は127.8千台と前期に比べ2.8千台(△2.1%)減少いたしました。
また、トヨタ向け車両売上台数につきましては、SUVおよび小型トラックともに台数が増加し、152.5千台と前期に比べ48.2千台(46.2%)増加いたしました。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
ⅰ)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ138億5百万円増加し、1兆4,781億80百万円となりました。これは、棚卸資産が423億66百万円、投資有価証券が225億67百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が1,166億48百万円増加したこと等によります。
(負債合計)
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ2,262億4百万円増加し、1兆2,271億59百万円となりました。これは、認証関連損失引当金が1,042億67百万円、長期未払金が585億10百万円それぞれ増加したこと等によります。
(純資産合計)
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,123億99百万円減少し、2,510億20百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純損失を2,177億53百万円計上したこと等によります。
セグメントごとの財政状態は次のとおりであります。
(日本)
当連結会計年度末の売上債権が367億98百万円、棚卸資産が291億21百万円減少した一方で、当連結会計年度末の現預金が1,251億64百万円増加したこと等により、セグメント資産は1兆764億72百万円と前連結会計年度末に比べ、242億74百万円増加しました。
(アジア)
当連結会計年度末の棚卸資産が124億5百万円減少したこと等により、セグメント資産は3,254億59百万円と前連結会計年度末に比べ、129億56百万円減少しました。
(その他)
当連結会計年度末の有形固定資産が56億49百万円、未収入金が28億28百万円減少した一方で、当連結会計年度末の売上債権が122億89百万円増加したこと等により、セグメント資産は1,705億18百万円と前連結会計年度末に比べ、36億34百万円増加しました。
ⅱ)経営成績
(売上高)
当連結会計年度の連結売上高は1兆6,972億29百万円となりました。
国内トラック市場につきましては、部品供給の改善等に伴う各社生産回復により、売上高は3,659億49百万円となりました。
海外トラック・バスにつきましては、アセアンを中心とした販売減により、売上台数が減少したものの価格改定の影響により、売上高は増加し5,408億24百万円となりました。
トヨタ向け車両につきましては、SUVおよび小型トラックともに台数が増加し、売上高は1,228億41百万円となりました。
その他の部門の売上高につきましては、トヨタ向けユニットの売上高が増加したこと等により、6,676億13百万円となりました。
(営業利益)
国内売上台数及びトヨタ向け車両台数の増加に加え、為替円安等により、営業利益は574億90百万円と前期に比べ655億94百万円(前期は81億3百万円の営業損失)の増益となりました。
(経常利益)
当連結会計年度は、経常利益は393億10百万円と前期に比べ485億44百万円(前期は92億33百万円の経常損失)の増益となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度は、日野工場の一部の土地売却等による固定資産売却益345億53百万円や当社が保有していた政策保有株式の売却等による有価証券売却益180億2百万円を特別利益に計上したものの、北米認証関連損失2,584億13百万円を特別損失に計上したこと等により、税金等調整前当期純損失は1,905億63百万円と前期に比べ2,336億51百万円(前期は430億88百万円の税金等調整前当期純利益)の減益となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、221億29百万円と前期に比べ42億61百万円の増加となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は、50億60百万円と前期に比べ30億71百万円減少しました。
以上により、親会社株主に帰属する当期純損失は2,177億53百万円と前期に比べ2,348億41百万円(前期は170億87百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)の減益となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(日本)
日野ブランド事業の国内向けトラック・バスの売上高は、主に大型トラックの売上台数の増加により、増収となりました。海外向けについては、アセアン向けを中心として売上台数が減少したものの、北米向けの売上台数は増加し、全体として増収となりました。また、トヨタ向けについてはSUVやダイナ等で台数増により増収となりました。
以上により、売上高は1兆1,728億51百万円と前年同期に比べ1,463億68百万円(14.3%)の増収となりました。損益面におきましては、セグメント利益(営業利益)は283億53百万円と前年同期に比べ439億94百万円の増益(前年同期は156億40百万円のセグメント損失)となりました。
(アジア)
タイを中心としたアジア経済の低迷によって売上台数が減少したこと等により、売上高は4,246億1百万円と前年同期に比べ367億68百万円(△8.0%)の減収となりました。セグメント利益(営業利益)は、246億1百万円と前年同期に比べ73億円(△22.9%)の減益となりました。
(その他)
北米を中心として売上台数が増加したこと等により、売上高は3,346億58百万円と前年同期に比べ550億80百万円(19.7%)の増収となりました。セグメント利益(営業利益)は、64億75百万円と前年同期に比べ327億96百万円の増益(前年同期は263億21百万円のセグメント損失)となりました。
ⅲ)生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
区分 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
トラック・バス(台) |
84,913 |
△11.2 |
|
トヨタ向け車両(台) |
152,423 |
+46.2 |
|
|
アジア |
トラック・バス(台) |
24,993 |
△17.9 |
|
トヨタ向け車両(台) |
65 |
△23.5 |
|
|
報告セグメント計 |
トラック・バス(台) |
109,906 |
△12.8 |
|
トヨタ向け車両(台) |
152,488 |
+46.2 |
|
|
その他 |
トラック・バス(台) |
11,312 |
+64.2 |
|
トヨタ向け車両(台) |
- |
- |
|
|
合計 |
トラック・バス(台) |
121,218 |
△8.8 |
|
トヨタ向け車両(台) |
152,488 |
+46.2 |
(b)受注実績
当社グループは国内及び海外の販売実績及び販売見込等の資料を基礎として見込生産を行っております。尚、トヨタ向け車両についてはトヨタ自動車株式会社からの受注に基づき生産しております。
(c)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
日本(百万円) |
1,172,851 |
+14.3 |
|
アジア(百万円) |
424,601 |
△8.0 |
|
報告セグメント計(百万円) |
1,597,452 |
+7.4 |
|
その他(百万円) |
334,658 |
19.7 |
|
調整額(百万円) |
△234,880 |
△6.5 |
|
合計(百万円) |
1,697,229 |
+11.9 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額 (百万円) |
割合 (%) |
金額 (百万円) |
割合 (%) |
|
|
トヨタ自動車㈱ |
93,859 |
6.2 |
153,218 |
9.0 |
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況及び分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、入出金が制限された口座への振替による資金の減少があった一方で、売上債権及び棚卸資産の減少や有形固定資産及び投資有価の売却等による資金の増加があったこと等により、前期末に比べ206億87百万円増加(前期は79億50百万円減少)し、884億20百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による増加は11億28百万円(前期は1,104億10百万円の減少)となりました。これは入出金が制限された口座への振替が973億37百万円あった一方で、棚卸資産の減少が430億22百万円(前期は406億44百万円の増加)、売上債権の減少が330億84百万円(前期は29億13百万円の減少)あったこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は46億円(前期は392億44百万円の増加)となりました。これは有形固定資産の売却による収入が363億66百万円(前期は992億90百万円)あった一方で、生産設備を中心とした有形固定資産の取得による支出が619億87百万円(前期は673億21百万円)あったこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は297億38百万円(前期は556億38百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の純増加額が397億5百万円(前期は630億88百万円の増加)あったこと等によります。
②資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
③契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
365,543 |
365,543 |
- |
- |
- |
|
1年内返済予定の長期借入金 |
8,511 |
8,511 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
18,351 |
- |
17,633 |
717 |
- |
|
1年内償還社債 |
8,418 |
8,418 |
- |
- |
- |
|
社債 |
6,703 |
- |
6,703 |
- |
- |
④財務政策
当社グループは、事業活動のための適切な資金調達、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化を図ることを財務方針としております。設備投資、投融資などの長期資金需要に対しては、内部留保、長期借入債務及び社債の発行により、また、運転資金需要には短期借入債務により対応しております。借入債務については、主にトヨタ自動車株式会社、金融機関からの借入れによって調達しております。
加えて、資金マネジメントについては、当社と子会社の資金管理の一元化を図るなかで、緊密な連携をとることにより、グローバルな資金効率の向上を図っております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、各種の見積りと仮定を行っております。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に係る当期純損益額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 製品保証引当金
当社は、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款及び法令等に従い、過去の実績等を基礎にして計上しております。また、北米認証問題を起因とする米国で提起された暫定的な集団訴訟の和解及び米国当局との民事和解並びにカナダで提起された暫定的な集団訴訟の和解において、保証期間の延長を合意した車両の修理費用についても、過去の実績率等により見積もられた台当たりの修理費用、修理の見込み台数等に基づいて計上しております。
引当金の見積り時において想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生や、引当の額を超えて保証費用が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
④ 認証関連損失引当金
当社は、認証関連課題に関連した損失に備えるため、合理的に見積もることが可能な金額を計上しております。主に北米認証問題を起因とする米国民事制裁金96,993百万円、米国環境負荷軽減費用23,325百万円及び国内顧客への燃費補償費用4,002百万円が含まれています。
引当金の見積り時において想定していなかった認証関連の損失の発生した場合や米国民事制裁金及び米国環境負荷軽減費用、顧客への燃費補償費用の見積り前提が変化した場合には、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
(1)トヨタ自動車株式会社との業務提携
1966年10月より、当社はトヨタ自動車株式会社と業務提携を行っており、現在当社は同社より乗用車「ランドクルーザー250」の生産を受託し、小型トラック「ダイナ」を同社に対してOEM供給しております。また商品相互補完取引、台湾における合弁会社(国瑞汽車株式会社)への共同出資、トヨタ販売網を通じた当社製品の販売など各般にわたって提携関係の発展・強化を図っております。
(2)いすゞ自動車株式会社との株主間協定書
当社といすゞ自動車株式会社は、両社が保有するバス製造子会社である日野車体工業株式会社及びいすゞバス製造株式会社の株式を、バス事業統合準備会社として両社が折半出資により設立したジェイ・バス株式会社へ譲渡すること並びに統合の基本的事項について合意し、2003年9月12日、株主間協定を締結いたしました。
さらにその統合効果を最大限に引き出すことを目的として、ジェイ・バス株式会社はその傘下の両バス製造子会社と、2004年7月30日に合併契約を締結、2004年10月1日に合併いたしました。
(3)コミットメントライン契約の締結
当社は、2022年11月1日、事業環境の変化に対応するため、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保すると共に、財務基盤のより一層の安定を図ることを目的として、以下の内容のコミットメントライン契約を締結いたしました。当該契約は2025年3月21日、資金調達手段の見直しにより終了いたしました。
・コミットメントライン契約の概要
|
⑴契約形態 |
バイラテラル方式コミットメント契約 |
|
⑵組成金額 |
2,000億円 |
|
⑶契約期間 |
2022年11月1日~2025年3月31日 |
|
⑷担保の有無 |
無担保・無保証 |
|
⑸契約締結先 |
株式会社三菱UFJ銀行 |
(4)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る経営統合契約の締結
当社は、2025年6月10日に、当社、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)及び三菱ふそうの親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)の4社において、2026年4月1日を統合予定日として、当社と三菱ふそうとの経営統合(以下「本経営統合」という。)について経営統合契約(以下「本経営統合契約」という。)を締結しました。
① 本経営統合の目的
当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社の企業理念に共通するのは、「移動を通じて、豊かな社会に貢献したい」という想いです。当社と三菱ふそうが力を合わせ、日本の商用車メーカーの競争力を磨くことで、日本・アジアの自動車産業の基盤を守り、社会やステークホルダーに対して、意義深く永続的な貢献をしていきます。
<協業内容>
■ 当社と三菱ふそうは対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産の分野で協力
■ ダイムラートラックとトヨタは、本統合会社(上場)の株式をそれぞれ25%保有することを目指す
■当社及び三菱ふそう両社統合の持株会社(以下「本統合会社」という。)は当社と三菱ふそうの株式を100%保有する予定
② 本経営統合の方法、本経営統合に係る割当ての内容その他の本経営統合の内容
(ア)本経営統合の方法
本経営統合契約において、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックは、本経営統合の方式について、大要以下のとおり合意しております。
(ⅰ)当社が、完全子会社となる株式会社(本統合会社)を設立する(注1)。
(ⅱ)当社は、トヨタに対して、当社普通株式及びA種種類株式を第三者割当の方法により割り当てる(以下「本第三者割当増資」という。)。本第三者割当増資は、その手取金を当社の親会社であるトヨタからの借入金の弁済のための資金として充当し、トヨタに対する借入金債務を減少させることに伴う当社の資本の強化及び自己資本比率の改善等の財務状況の改善によって本経営統合を円滑に進めること、また、本経営統合後のトヨタの本統合会社の議決権比率を19.9%(注2)に調整するために無議決権種類株式を利用することを目的としている。
(ⅲ)トヨタ及びダイムラートラックは、本経営統合後の本統合会社の両者の持分比率が同割合となるよう、両者で別途合意する持分の調整(ダイムラートラックからトヨタに対する三菱ふそう株式の一部譲渡)(以下「本持分調整」という。)を行う。
(ⅳ)本統合会社を株式交換完全親会社、当社を株式交換完全子会社とする株式交換(以下「本株式交換」という。)を行う。本株式交換により、当社は本統合会社の完全子会社になるとともに、当社株主は本統合会社の株式を取得する。
(ⅴ)本統合会社を株式交付親会社、三菱ふそうを株式交付子会社とする株式交付(以下「本株式交付」という。)を行う。本株式交付により、本統合会社が三菱ふそうの全株主から保有する全ての三菱ふそうの普通株式を譲り受けることによって、三菱ふそうは本統合会社の完全子会社になるとともに、三菱ふそうの株主は本統合会社の株式を取得する。
(ⅵ)本統合会社は、自己株式取得又は現物配当等の方法で、当社が保有する全ての本統合会社の株式を取得及び消却する。
(ⅶ)本統合会社の普通株式について東京証券取引所プライム市場に上場させる。
(ⅷ)トヨタ及びダイムラートラックは、本統合会社の普通株式の流通株式比率を高めるため、本経営統合後一定期間内に、本統合会社の両者の持分比率が発行済株式総数の25%ずつ(議決権比率については、トヨタが19.9%(注2)、ダイムラートラックが26.7%)となるよう、本経営統合の効力発生と同時又は直後、あるいはそれ以降でトヨタ及びダイムラートラックが別途合意するいずれかの時期に、トヨタ及びダイムラートラックが別途合意する方法(例えば本統合会社の株式の売出し)により本統合会社の持分比率を減少させる(以下「本持分比率調整取引」という。)。
(注1)本経営統合のための準備会社を既に設立済みです。
(注2)本経営統合によりトヨタが当社の親会社ではなくなる一方で、トヨタが日本において小型トラック事業を営んでいることを踏まえ、本統合会社の独立した事業運営を尊重する観点や競争法の観点から、本統合会社におけるトヨタの議決権比率を20%未満とすることが適切と判断いたしました。
(イ)本株式交換における交換比率及び本株式交付における交付比率
本株式交換に当たっては、当社の普通株式1株に対して、本統合会社の普通株式1株を、当社のA種種類株式(本第三者割当増資により発行予定)1株に対して、本統合会社のA種種類株式1株を、それぞれ割当交付する予定です。また、本株式交付に当たって、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックは、2024年12月31日時点(以下「株式交付比率基準日」という。)の当社及び三菱ふそうの株式価値の比率(当社の株式価値を1とした場合の三菱ふそうの株式価値の比率をいい、以下「株式価値比率」という。)を1.00:1.70とすること、及び当該株式価値比率をもとに、本株式交付においては三菱ふそうの普通株式1株に対して、本統合会社の普通株式310株を割当交付することに合意しております(かかる株式交付比率を、以下「本株式交付比率」という。
なお、本株式交付比率は本第三者割当増資に係る発行予定株式数を考慮して合意されています。)。当社は、エンジン認証問題について従前から開示をしておりますが、エンジン認証問題に係るリスクについては、三菱ふそうの株主は負担すべきではないとの基本的な考え方から、株式交付比率のベースとなる当社の株式価値には、2025年3月期中間連結財務諸表に計上した北米向けエンジンの認証問題に係る引当金を含め、株式交付比率基準日時点で引当金その他の負債として計上しているエンジン認証問題に係る債務の額が反映されております。当社は、本株式交付の株式交付比率算定にあたり、公平性・妥当性を確保するため、ファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として野村證券(以下「野村證券」という。)を選定の上、野村證券による株式交付比率の算定結果を参考にし、慎重に協議・検討した結果、本株式交付比率は、野村證券が株式交付比率の算定結果において算定した株式交付比率レンジ内であり、当社の株主の利益を損ねるものではなく、本株式交付比率により本株式交付を行うことが妥当であると判断しました。
(ウ)その他の本経営統合の内容
(a)エンジン認証問題に関する特別補償
通常の表明保証違反等に基づく補償に加え、株式交付比率基準日以降に、株式交付比率基準日時点で引当金その他の負債として計上していないエンジン認証問題に起因する潜在債務が顕在化し、これにより本統合会社、当社、三菱ふそう、又はダイムラートラック及びその他の本経営統合契約に参加することを内容とする契約を締結し本統合会社の株主になる三菱ふそうの株主(ダイムラートラックを含み、以下「三菱ふそう補償対象株主」という。)が損失を被った場合、本統合会社及び当社は、三菱ふそう補償対象株主に対して、その損失につき(損失の一部が株式交付比率基準日時点で引当金として計上されている場合は当該引当金を超える金額の限度で)一定の金銭補償義務を負います。補償対象となる損失には、本統合会社、当社又は三菱ふそうに生じた損失による三菱ふそう補償対象株主が保有する本統合会社株式の価値の毀損(特別補償による補償金の支払による毀損を含む。)、及び三菱ふそう補償対象株主が補償金を受領したことにより三菱ふそう補償対象株主が被る税負担が含まれます(ただし、株式交付比率基準日から本経営統合の効力発生日の間にエンジン認証問題に起因して引き当て、負担し又は支払った潜在債務であって、株式交付比率基準日時点で引当金その他の負債として計上していないものについては、その累積額が300億円を超えない部分は当該税負担に係る補償の対象外となります。)。当該損失について、各三菱ふそう補償対象株主は、補償請求時点における本統合会社の各持分比率に応じて(ただし、株式交付比率基準日から本経営統合の効力発生日の間に引き当て、負担し又は支払ったエンジン認証問題に起因する潜在債務であって、株式交付比率基準日時点で引当金その他の負債として計上していないもののうちその累積額が300億円を超えない部分については、本持分比率調整取引が完了したと仮定した場合の完了時点における本統合会社の各持分比率に応じて、また、三菱ふそう補償対象株主がエンジン認証問題に起因する損失を直接負担することとなった場合には三菱ふそう補償対象株主についてはその全額について)補償請求権を有します。この特別補償の請求期間は、本経営統合の効力発生日後15年間です。
(b)本経営統合の成否及び条件等に関するリスク
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (11)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否及び条件等に関するリスク」をご参照ください。
③ 三菱ふそうの概要
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(ア) |
名称 |
三菱ふそうトラック・バス株式会社 |
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(イ) |
所在地 |
神奈川県川崎市中原区大倉町10番地 |
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(ウ) |
代表者の役職・氏名 |
代表取締役社長 CEO カール・デッペン |
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(エ) |
事業内容 |
トラック・バス、産業エンジンなどの開発、設計、製造、売買、輸出入、その他取引業 |
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(オ) |
資本金 |
35,000百万円(2024年12月31日現在) |
④ 本統合会社の概要
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(ア) |
名称 |
本経営統合時の名称については、本経営統合に向けて今後決定する予定です。 |
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(イ) |
所在地 |
本経営統合時の所在地については、本経営統合に向けて今後決定する予定です。 |
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(ウ) |
代表者の役職・氏名 |
本経営統合時は代表取締役を2名置き、うち1名はカール・デッペンがCEO兼代表取締役として就任予定です。 |
|
(エ) |
事業内容 |
本経営統合後の当社及び三菱ふそうの事業に係る経営管理(予定) |
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(オ) |
資本金 |
本経営統合時の資本金については、本経営統合に向けて今後決定する予定です。 |
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(カ) |
機関設計 |
監査等委員会設置会社とし、取締役及び株主総会のほか、取締役会、監査等委員会及び会計監査人を設置する予定です。また、経営会議、任意の指名委員会及び報酬委員会等も設置する予定です。 |
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(キ) |
本経営統合時の取締役会 |
本経営統合時の取締役会は、ダイムラートラックが指名する取締役(監査等委員を兼任)1名、当社が指名する業務執行取締役1名、三菱ふそうが指名する業務執行取締役1名、並びに、4社が合意の上で決定する業務執行取締役1名、独立社外取締役4名(独立社外取締役のうち3名は監査等委員を兼任)及び取締役(監査等委員を兼任)1名の合計9名によって構成する予定です。 |
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(ク) |
本経営統合後の取締役指名権等 |
本経営統合後、ダイムラートラックは、本統合会社の議決権の10%以上を保有する限りにおいて、本統合会社の取締役(監査等委員及び少なくとも指名委員会委員を兼任)1名を指名する権利を有します。 本経営統合後、本統合会社又はダイムラートラックは、トヨタが本統合会社の議決権の10%以上を保有する限りにおいて、随時トヨタに対して、1名の監査等委員である取締役候補者(以下「トヨタ推薦者」という。)の推薦又は紹介を請求することができます。本統合会社は、その裁量により、トヨタ推薦者を取締役として指名することができます。 本経営統合後、ダイムラートラックが本統合会社の議決権の10%以上を保有する限りにおいて、独立社外取締役の人数が、4社が別途合意した場合を除き、業務執行取締役及びダイムラートラックが指名する取締役及びトヨタ推薦者の合計数より2名以上下回らないようにします。 |
|
(ケ) |
ロックアップ 及び先買権 |
トヨタとダイムラートラックは、本経営統合の効力発生日から60ヶ月間(以下「ロックアップ期間」という。)については原則として本統合会社の株式(なお、本持分比率調整取引後のトヨタとダイムラートラックの持分比率は発行済株式総数の25%ずつとなる予定です。)を譲渡することはできず(本持分比率調整取引等を除きます。)、ロックアップ期間経過後については、自らの保有する本統合会社の株式を譲渡することができる旨を合意しており、一方、原則としてトヨタとダイムラートラックは当該株式の譲渡について、それぞれ相手方に対して先買権を付与する旨を合意しています。 |
(5)羽村工場のトヨタ自動車株式会社への移管に関する契約締結
当社は、2025年6月10日に、当社の羽村工場を、当社が新たに設立する会社(以下「本新会社」という。)へ承継(以下「本承継」という。)した上で、本新会社の株式の全部をトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)へ譲渡する旨の株式譲渡契約(以下「本株式譲渡契約」といい、当該譲渡を「本株式譲渡」という。)(これらの一連の行為を以下「本移管」と総称する。)を締結しました。
① 本移管の目的
当社は、2025年6月10日、商用車領域の競争力強化に向けて、本移管について合意いたしました。本移管は、本経営統合を契機に、商用車の未来をつくり、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて、トヨタと当社で最適な役割分担を進めるものです
羽村工場は1963年の生産開始以来、両ブランドの小型トラック及びトヨタのハイラックスやランドクルーザー250などの生産を担い、世界中のお客様のニーズにお応えしてまいりました。60年以上の歴史を通じて積み重ねたモノづくりの知見を活かし、今後はトヨタグループにおけるフレーム構造車両の中核工場の1つとして、「もっといいクルマづくり」に貢献し、お客様や地域の皆さまのご期待に応えてまいります。
② 本移管の方法その他の本移管の内容
(ア)本移管の方法
羽村工場の本新会社への本承継は吸収分割又は事業譲渡のいずれかとする予定です。その上で、本新会社の全株式をトヨタへ譲渡することにより本移管を実施する予定です。
(イ)本移管に係る対価の内容
本新会社は、当社の100%子会社となるため、本承継の方式が会社分割の場合は、本承継に際し、本新会社は当社に対して対価を交付しない予定です。本承継の方式が事業譲渡の場合の対価の内容は協議の上で決定する予定です。
また、トヨタへの本株式譲渡の譲渡価額は1,500億円です。当社は、本株式譲渡に係る譲渡価額の算定にあたり、公平性・妥当性を確保するため、第三者算定機関としてデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(以下「デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー」という。)を選定の上、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーによる本株式譲渡に基づき承継させる事業部門の価値の算定結果を参考にし、慎重に協議・検討した結果、上記譲渡価額は、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーによる算定結果のレンジ内であり、上記本移管の目的も勘案の上、当社の株主の利益を損ねるものではなく、上記譲渡価額により本株式譲渡を行うことが妥当であると判断しました。
(ウ)承継させる事業部門の概要
(a)承継させる事業部門の事業内容
SUV、小型トラック等の自動車製造、自動車部品製造
(b)その他
その他の分割する事業部門の詳細については、決定次第お知らせいたします。
(エ)エンジン認証問題に関する特別補償
本株式譲渡契約に基づき、当社が負担するエンジン認証問題に起因又は関連する義務、負担及び費用等のうち、当社の義務、負担及び費用等を本新会社が何らかの理由により承継し、これによりトヨタ及び本新会社が損失を被った場合、当社は、トヨタに対して、その損失の金銭補償義務を負います。
③ 本新会社の概要
本新会社の詳細については、確定しておりません。なお、本移管後の本新会社の代表者は青木是篤氏(提出日時点でトヨタより当社へ出向中)となる予定です。
④ トヨタの概要
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(ア) |
名称 |
トヨタ自動車株式会社 |
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(イ) |
所在地 |
愛知県豊田市トヨタ町1番地 |
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(ウ) |
代表者の役職・氏名 |
代表取締役社長 佐藤 恒治 |
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(エ) |
事業内容 |
自動車事業、金融事業及びその他事業 |
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(オ) |
資本金 |
635,402百万円(2025年3月31日現在) |
(6)いすゞ自動車株式会社、スズキ株式会社、ダイハツ工業株式会社及びトヨタ自動車株式会社との商用事業にお
ける協業の合意
当社といすゞ自動車株式会社及びトヨタ自動車株式会社は、商用事業において新たな協業に取り組むことに2021年3月24日に合意し、2021年4月、協業を推進するため、商用車におけるCASE技術・サービスの企画を事業内容とするCommercial Japan Partnership Technologies株式会社を設立いたしました。
2021年7月21日、協業体制を軽自動車まで拡大することにより、トラックから軽商用車まで一気通貫での物流効率化を図ることを目的として、上記3社の合意にスズキ株式会社及びダイハツ工業株式会社が加わり、両社は Commercial Japan Partnership Technologies株式会社に出資をしました。
2022年8月24日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社において、当社における認証不正問題を踏まえ当社を除名するという意思決定がなされたことを公表しました。これを受けて、2022年8月31日、当社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者から外れるとともに、当社のCommercial Japan Partnership Technologies 株式会社への出資持分(10%)をトヨタ自動車株式会社に譲渡しました。
2023年10月2日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社において、当社における認証不正問題への信頼回復に向けての取り組みやそれに対する世間の評価等を鑑み、当社の復帰を認めるという意思決定がなされました。これを受けて、同日、当社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者に復帰するための契約を締結するとともに、トヨタ自動車株式会社に譲渡したCommercial Japan Partnership Technologies株式会社への出資持分 (10%)をトヨタ自動車株式会社から譲り受けました。
2024年2月13日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社は、ダイハツ工業株式会社からの認証不正を踏まえたCommercial Japan Partnership Technologies株式会社脱退の申し入れを受け、承認しました。これを受けて、2024年2月29日、ダイハツ工業株式会社は、共同企画契約等の協業に関する契約の当事者から外れるとともに、ダイハツ工業株式会社のCommercial Japan Partnership Technologies株式会社への出資持分(10%)をトヨタ自動車株式会社に譲渡しました。2025年1月29日、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社は、共同企画契約等の協業に関する契約にダイハツを再度加えるとともに、トヨタ自動車株式会社がCommercial Japan Partnership Technologies株式会社へ出資している株式(70%)から10%をダイハツに再度譲渡することを公表し、これを受けて当該株式譲渡が実施されました。
(7)米国における訴訟に関する和解契約の締結
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」のとおり、過去の不正行為等に起因して損害を被ったなどとして、米国において提起されていた暫定的な集団訴訟について、 当社、並びに当社の子会社であるHINO MOTORS MANUFACTURING U.S.A., Inc.及びHINO MOTORS SALES U.S.A., Inc. は、2023年10月25日に、和解金237.5百万米ドルを支払うことを内容とする和解契約を、当社の2010年から2019年モデルのエンジンを搭載し、米国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で締結しました。2024年4月1日に裁判所は、和解契約を最終承認し、同年5月2日に和解が確定しました。
(8)カナダの集団訴訟に関する和解契約の締結
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」のとおり、過去の不正行為等に起因して損害を被ったなどとして、カナダブリティッシュコロンビア州及び同ケベック州において提起されていた暫定的な集団訴訟について、当社、並びに当社の子会社であるHINO MOTORS MANUFACTURING U.S.A., Inc.、HINO MOTORS SALES U.S.A., Inc. 及び HINO MOTORS CANADA LTD. は、2024年11月13日に、和解金55百万カナダドルを支払うことを内容とする和解契約を、当社の2010年から2019年モデルのエンジンを搭載し、カナダ国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で締結しました。当該和解契約は、2025年5月6日にブリティッシュコロンビア州上級裁判所の実質的な承認を受け、同年6月2日にケベック州上級裁判所の承認を受けました。
(9)米国のエンジン認証問題に関する米国当局との和解契約の締結
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」のとおり、当社の米国市場におけるエンジンの排ガス認証試験及び性能の問題について、当社は2025年1月16日に、米国司法省(DOJ)との間で、刑事和解契約の締結に至りました。同契約において、当社は有罪を認めるとともに、調査協力による大幅な減額を反映した、総額5億2,176万米ドルの刑事制裁金を支払うことに合意し、2025年3月19日に刑事和解契約の効力が発生しました。
また、2025年1月16日、当該問題について、当社及び当社の子会社であるHINO MOTORS MANUFACTURING U.S.A., Inc.及びHINO MOTORS SALES U.S.A., Inc.は、米国当局及びカリフォルニア当局との間で、民事和解契約の締結に至りました。同契約において、当社及び当社米国子会社は、DOJ、米国環境保護庁(EPA)、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)及び米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)を含む米国当局に対し総額4億4,250万米ドル、カリフォルニア州大気資源局(CARB)及びカリフォルニア州司法長官室(California State Attorney General’s Office)を含むカリフォルニア州当局に対し総額2億3,650万米ドルの民事制裁金等を支払うことに合意しております。
(10)豪州の集団訴訟に関する和解契約の締結
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (10) エンジン認証不正問題」のとおり、当社車両用エンジンの排気ガス性能基準の違反に関する詐欺行為等に起因して損害を被ったなどとして、豪州ビクトリア州上級裁判所において提起されていた集団訴訟について、当社及び当社の子会社であるHino Motor Sales Australia Pty Ltdは、2025年2月14日に、和解金87百万豪ドルを支払うことを内容とする和解契約を、2003年1月1日から2022年8月22日までの期間に製造された当社のディーゼルエンジンを搭載したオンロード車両を2023年4月17日までに豪州で購入、リース、又はその他の方法で取得した者との間で締結しました。
(11)不動産売買契約の締結
当社は、2025年2月28日、経営資源の有効活用と資産効率向上のため、固定資産の一部である以下の不動産について、野村不動産株式会社に譲渡する不動産売買契約を締結し、同日引渡しを実施いたしました。
・譲渡資産の内容
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譲渡資産の内容および所在地 |
帳簿価額 |
譲渡益 |
現況 |
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土 地 15.5万㎡ 所在地 東京都日野市日野台3丁目1番地1 |
約0.2億円 |
約340億円 |
工場用地 (日野工場の一部) |
日野グループは、HINO基本理念において「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」を会社の使命とし、人流・物流の課題の解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献しています。
技術・技能の継承と創造・革新・改善を続け、安全かつ高品質で、お客様のビジネスのお役に立つ商品・サービスを提供しています。
また、物流と人流を支える事業活動を通じて、お客様・社会の課題解決に積極的に取り組んでいます。
2022年3月に確認、公表したエンジン認証申請における不正行為においては、お客様、仕入先様はじめ、全てのステークホルダーにご迷惑をお掛けしました。信頼回復に向けた、抜本的な再発防止および、コンプライアンス・ファーストの企業体質再構築に取り組んでおります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(日本)
[最近の新製品、新技術]
(1) 持続可能な豊かで住みよい街づくりに貢献する新たな取り組みとして、ごみ収集業界向けソリューションサービスの提供を開始いたしました。また、神奈川県葉山町にて、本サービスの提供を開始しています。私たちの暮らしを支えるごみ収集業務は、人口減少や高齢化を背景とした人手不足に加え、収集漏れの際の確認作業に多くの時間を要するといった作業負担に関する課題を抱えています。また、その運用体制や管理システムは各自治体が独自に最適化しているため、業界全体として効率的・抜本的な業務改善が進みにくくなっています。このような課題の解決に向け、株式会社ユニ・トランド(以下 ユニ・トランド)と協業し、ごみ収集に特化した作業車両の動態管理サービスを開発しました。本サービスでは、ごみ収集車両に専用の機器を取り付けることで位置情報を取得し、走行ルートを地図上にリアルタイムで記録します。これにより、あらかじめ設定したルートと実際の走行ルートの対比や未収集のエリアを可視化でき、システムを通して現場と管理者の迅速かつ正確な情報共有が可能となります。また、オプションとして、集めたデータを日野、ユニ・トランドの両社が分析し、作業員の配置や収集ルートの見直しをサポートすることで、さらなる業務の効率化に貢献します。日野は、地域の皆様と実証実験等を行いながら、持続可能なソリューションを検討してきました。今後も、お客様に寄り添った課題解決に貢献していきます。
(2) 中型トラック「日野レンジャー」を一部改良し発売しました。今回の改良では、サイトアラウンドモニターシステム(SAMS)に、従来から搭載済みの出会い頭警報※(FCTA)に加え、左折時に左側方の移動物を検知する左折巻き込み警報(BSIS)および、車線変更時にミラーでは確認しにくい左右側方の移動物を検知する車線変更警報(BSD)を新規追加しました。これにより、右左折時や車線変更時に衝突の危険性が高まった際、ブザー音とピラー部の表示灯でドライバーに注意を促すことで、安全運転のサポートを行います。これらは全て標準装備となります。また、法規対応としてバックカメラ・モニターを標準装備しています。
(3) 中型観光バス「日野メルファ」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、法規対応としてバックカメラ・モニターを標準装備しています。
(4) 大型トラック「日野プロフィア」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、サイトアラウンドモニターシステム(SAMS)に、従来から搭載済みの出会い頭警報(FCTA)に加え、左折時に左側方の移動物を検知する左折巻き込み警報(BSIS)および、車線変更時にミラーでは確認しにくい左右側方の移動物を検知する車線変更警報(BSD)を新規追加しました。また、法定3要素(時間・距離・速度)の記録に特化した小型かつシンプルなデジタルタコグラフや、法規対応としてバックカメラ・モニターを装備しています。これらは全て標準装備となります。加えて、Pro Shift 12搭載車は、23年モデルからさらに変速制御を最適化しています。
(5) 小型BEVトラック「日野デュトロ Z EV」を一部改良し、発売しました。超低床・前輪駆動小型BEVトラック「日野デュトロ Z EV」は、2022年6月の販売開始から主に「物流のラストワンマイル」の現場を支え、ドライバーの疲労負担軽減やカーボンニュートラルに貢献してきました。今回の改良では、従来モデルをご使用いただいたお客様ならではの声をスピーディーに反映し、物流現場での使い勝手をさらに高めています。日野は今後もお客様目線で課題を捉え、物流現場における使い勝手の良い製品を投入することで、お客様に貢献し、豊かで住みよい持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。
■改良点
1.標準設定
・荷台後扉へのスマートエントリーシステム導入(ウォークスルーバンのみ)
ポケットなどに携帯していれば、キーを取り出さずにドアの施錠・解錠ができるスマートエントリーシステム
をウォークスルーバンの荷台後扉にも導入、荷台開閉時の手間を削減。
・ルームミラーモニター表示設定変更
イグニッション(モーターを始動する装置、以下I/G) OFF時のルームミラーモニター表示状態の記憶が可能
に。従来のモニター表示は、I/Gを再起動すると常に非表示となる仕様だったが、今回の改良によって、I/G OFF
時にモニターを表示していた場合は再起動時もモニターが表示され、モニター表示のスイッチ操作が不要とな
る。
・スイッチレイアウト変更
使用頻度に合わせたスイッチ位置に変更することで、ドライバーの使い勝手をサポート。ウォークスルーバン
では、使用頻度の高い「庫内灯」スイッチを運転席から自然に手の届く位置に変更している。(アルミバンの庫
内灯スイッチは庫内にのみ設定)
・ラジオアンテナ長の短縮
アンテナの長さを短縮することで、高さのない駐車場への進入時などアンテナを横に倒す際にも、車両からの
はみだし幅を抑えることができ、他車両や障害物への干渉を改善する。
・法規対応
側面衝突時の乗員保護や感電防止の対策などを実施
2.オプション設定
・車両後方部への普通充電口移設(ウォークスルーバンのみ)
車両前面にある普通充電口は、車両右側リヤタイヤ後部に移設可能(急速充電口はいずれの場合も車両前
面)。お客様の使用環境に合わせて車両後方からの充電ニーズにも対応。なお、電動商用車および充電器などの
周辺機器の導入や、安心かつ効率的な稼働のために重要なエネルギーマネジメントは、日野のグループ会社であ
るCUBE-LINXのソリューションを引き続きご利用いただけます。
(6) 持続可能な豊かで住みよい街づくりに貢献する取り組みとして、2024年4月に提供開始したごみ収集業界向けソリューション「GOMIRUTO(ごみると)」に、「タスク管理サービス」を追加しました。事業系ごみ※の収集運搬においては、ごみの種類や量に基づいて料金が定められる場合が多く、顧客別・品目別の収集量を早く正確に把握することが求められています。しかしながら、それらの情報を紙のリストに記入している収集現場がまだまだ多いため、事業者は「ドライバーによる記入作業に手間がかかる」、「事務所での集計作業に時間がかかり、入力ミスが発生しやすい」といった困りごとを抱えています。「GOMIRUTO」では、これまで位置情報を軸とした動態管理サービスを提供してきましたが、顧客ごとに定められた作業内容や収集量、その日の訪問リストといった"収集タスク情報"の記録と伝達を支援する「タスク管理サービス」を追加することにより、事業系ごみ収集に関する課題解決に貢献します。
「タスク管理サービス」では、"収集タスク情報"を従来の紙への記入からタブレットでの入力、またはごみ収集車両に搭載された重量センサーとの連携による自動入力に置き換えることで、収集現場の作業負担を軽減します。また収集現場で入力された情報は、事務所や他ドライバーにリアルタイムで共有されるため、情報待ちによる事務作業の停滞や手作業による入力ミスを解消するとともに、ドライバー間の相互応援も促進し、事業系ごみ収集全体の業務品質向上と効率化を実現します。
※会社や店舗などが事業活動を行うことにより発生するごみ
(7) バッテリーEV(BEV)フルフラット路線バス「日野ブルーリボン Z(ズィー) EV」を、発売しました。「日野ブルーリボン Z EV」は、バッテリーとモーターによる走行で、排気ガス・CO2を排出しないゼロエミッションを実現しています。低騒音・低振動のスムーズな走りは、お客様の快適性向上だけではなく、ドライバーの運転疲労軽減にも寄与します。小型化したバッテリーは屋根上および最後部の座席下に収納、また、リヤアクスルの左右それぞれにモーターを内蔵した「ハブモーター付きドロップアクスル」を採用することで、最前部から最後席までステップがないバリアフリーのフルフラットフロアを実現しました。これにより、段差を気にすることなくすべての客席にアクセスが可能となり、お客様の利便性や安全性が大幅に向上しました。
また、「日野ブルーリボン Z EV」では、日野のグループ会社であるCUBE-LINXが提供する、商用電動車の導入・利用に関するワンストップサービス「エモぷらっと」をご利用いただけます。本車両の運行にあたり必要な充電器や電力設備、工事手配はもちろんのこと、建物側と合わせた電力の視える化やCO2の削減など、お客様の稼働をサポートします。
<車両の特長>
1.フルフラットフロア
リヤアクスルの左右それぞれにモーターを内蔵した「ハブモーター付きドロップアクスル」を採用し、フロアを低床化しました。また、高電圧バッテリーパックを車両の屋根上と最後部の座席下に分散して配置することで、フロアレイアウトの自由度を高め、最後部席まで段差のないバリアフリー化を実現しています。
2.航続距離
ディーゼルエンジンモデルの「日野ブルーリボン」と同等の動力性能を確保しながら、路線バスで使用される航続距離をカバーしています※1。バッテリー充電は国内主流の350Vで充電できる高電圧バッテリーを採用し、3.2時間※2で20%の残量から80%まで充電が可能です。
3.外部給電
「日野ブルーリボン Z EV」と、電力を取り出す外部給電器(別売)を接続することで家庭用電源として使用可能になり、災害などによる非常時には救援車として電力供給を行うことができます。(V2L機能※3)
4.安全機能
事故の抑制に貢献するフロントブラインドスポットモニター※4を装備し、死角になりやすい車両直前の歩行者や自転車を検知し、自車と近づくと警告表示でドライバーに注意喚起を行います。また、衝突の可能性があると判断した場合、警告表示に加え、シートバイブレーターで注意を促します。
EDSS※5による緊急停車時には、電動パーキングブレーキが自動で作動する機能を採用し、坂路などでの緊急停車時の安全性が向上しました。
※1 航続距離は、外気温、冷暖房の使用、乗車人数などの影響により短くなります
※2 急速充電(CHAdeMO Ver1.0), 外気温20℃・充電出力50kwの場合
※3 Vehicle to Loadの略称。日本国内の主流の規格(EVPS-004:2014)に対応
※4 自車速10km/h以下 警報対象速度:歩行者3~5km/h 自転車3~10km/hで作動
※5 Emergency Driving Stop System/ドライバー異常時対応システム
(8) 国産で唯一の小型ノンステップバス「日野ポンチョ」を一部改良し、発売しました。今回の改良では、法規対応としてバックカメラ・モニターを標準装備しています。「日野ポンチョ」は広いフルフラットエリアを持つ小型ノンステップバスです。前後のオーバーハングが短く小回り性能に優れるため狭い道でもスムーズに走行でき、全国でコミュニティバスとして数多く採用されています。
[最近の主な成果]
(1) 2023年7月に提供を開始した「自家用有償旅客運送の運行管理受託サービス」の拡充に向け、通信型ドライブレコーダーを用いた運行管理業務の実証実験を実施しました。
1.実証実験の背景・狙い
少子高齢化や人口減少により、特に地方部においては公共交通の維持が困難になるなど、人の移動を取り巻く環境は厳しいものになっています。これに伴い、内閣官房が実施するデジタル行財政改革会議にて、従来の自家用有償旅客運送制度(自治体ライドシェア)を利用しやすい制度へ改善することを決定し、2024年4月までに現行制度の一部改善や改正等が実施されています。
日野は、自家用有償旅客運送における働き方の改善や交通空白地の解消を目指した取り組みを推進するため、通信型ドライブレコーダーを用いた運行管理業務の実証実験を実施します。本実証では、乗務前後の法定業務だけではなく、運転・運行状況の見える化を実現することで、自家用有償旅客運送に従事するドライバーとの連携強化を図るとともに、蓄積したデータをもとにした安心・安全な運行のサポートを目指します。
2.実証実験の概要
・期 間 :2024年7月1日~2025年1月(約6ヵ月)
・場 所 :石川県小松市、鳥取県智頭町、兵庫県朝来市
・台 数 :2台(小松市)、3台(智頭町)、2台(朝来市)
3.実証実験の内容
(1)通信型ドライブレコーダーを搭載
株式会社プレミア・ブライトコネクト(以下 プレミア・ブライトコネクト社)と連携し、同社が提供している通信型ドライブレコーダーを車両に搭載。本ドライブレコーダーはGPSやみちびき、GLONASSといった測位システムに対応し、精度の高い位置情報の測位および速度を算出することで、ドライバーの走行状況を運行管理者がリアルタイムで把握。また、急挙動を検知した場合、音声にてドライバーへ注意と警告を促す。
(2)イベントの記録・日報の作成
ドライブレコーダーで取得したさまざまな運行・運転データをクラウドサーバー上に保存し、トラブルや事故、急挙動が発生した位置情報や速度のほか、発生時の静止画やその前後の動画を運行管理者が即座に確認可能。また、車両やドライバーの情報、運転経路、運転評価、走行履歴などを自動で作成し、運行状況を見える化と業務を効率化。蓄積された運行・運転データは、ドライバー講習や運営主体への助言にも活用。
(3)スマホアプリ「Pdrive DRV」、「Pdrive MGR」との連携
プレミア・ブライトコネクト社より提供されているアプリと連携し、安全運転診断ほか、クラウドにアップロードされた映像を確認することも可能。
(2) 新東名高速道路で大型トラックを用いた自動運転技術の公道実証を開始
豊田通商株式会社(以下:豊田通商)、先進モビリティ株式会社(以下:先進モビリティ)、日本工営株
式会社(以下:日本工営)、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(以下:みずほリサーチ&テクノロジー
ズ)の 4 社は、「自動運転レベル 4※1等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to
the L4)」の「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み(テーマ3)」※2を 2021 年度に経
済産業省および国土交通省から受託するとともに、直近では国土交通省事業「高速道路における路車協調による
自動運転トラックの実証実験」※3 の実験車両協力者として採択されるなど、自動運転レベル4トラックの社会
実装に向けて取り組んでいます。
このたび、日野自動車株式会社(以下:日野)は、いすゞ自動車株式会社(以下:いすゞ)、三菱ふそうトラ
ック・バス株式会社(以下:三菱ふそう)、UDトラックス株式会社(以下:UDトラックス)の商用車メーカ
とともに、新東名高速道路で自動運転技術を用いた大型トラックによる走行実証を、実施しました。
1. プロジェクトの経緯と目的
ドライバー不足などの社会課題解決に向け、本プロジェクトの受託者である 4 社は、メーカー4 社および物流事業者をはじめとする関係者とともに、官民一体で 2026 年度以降の幹線道路における自動運転トラックの社会実装を目指しています。これまで、経済産業省および国土交通省による「トラック隊列走行の社会実装に向けた実証」※4(2016~2020 年度)を行い、後続車の運転席を無人とした状態でのトラックの隊列走行技術を実現しました。現在実施中の 2021 年度から 2025 年度における取り組みにおいては、高速道路周辺の物流施設やサービスエリア・パーキングエリアなどの中継エリア間における単独での無人走行の実現を目指し、その際に必要な外部インフラ機器からの支援、監視・管理などの運用、車両機能の検証を行っています。
2. 実証の概要
今回の実証では、新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリア~浜松サービスエリア間において、自動運転を社会実装する際に必要となる、複数の機能の確認や検証を個別に行います。具体的には、出発・到着地点において自動で発車・駐車を行う自動発着システムや、緊急時に停止するための制動機能をはじめ、道路周辺に設置されている ITS スポット※5 などの路側機器から発信される故障車や落下物情報等の有用性、走行時の遠隔監視機能などを確認・検証していきます。
3. 今後の取り組み
今回の実証における評価結果を踏まえ、本プロジェクトの最終年度となる 2025 年度は、サービスエリアでの発車から本線の合流・車線変更、目的地点への駐車までを、より実際の走行に近い形で検証する予定です。また、今後は経済産業省が主導する「デジタルライフライン全国総合整備計画」におけるアーリーハーベストプロジェクト「自動運転サービス支援道の設定」※6 の一つである、自動運転車優先レーンを活用した実証実験を実施していく予定です。
※1 自動運転レベル 4 とは、特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態と定義されている。
(参考)国土交通省 HP:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377364.pdf
※2 無人自動運転サービスの実現および普及に向けて、4つの取り組み(テーマ 1~4)が設定されており、「高速道路における高性能トラックの実用化に向けた取り組み(テーマ3)」はそのうちの一つ。
(参考)経済産業省 HP:
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/Automated-driving/automated-driving.html
※3 国土交通省 HP: https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001845.html
※4 国土交通省 HP:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000362.html
※5 ITS(Intelligent Transport Systems)。交通情報を提供するためのインフラで、道路上に設置された情報通信装置。ドライバーはリアルタイムの交通情報や安全情報を受け取ることができる。
※6 経済産業省 HP: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline.html
(3) 大成ロテック株式会社(以下 大成ロテック)と日野自動車株式会社(以下 日野)は、次世代道路技術の早期実装を目指した取り組みを開始しました。大成ロテックは、新たな舗装技術の研究・開発から実用化・普及までの期間を大幅に短縮し、カーボンニュートラルや長寿命化など、わが国の課題解決に資する舗装技術を早期に社会実装することを目指し、福島県田村市に舗装の耐久性を評価する走路(以下、舗装評価路)を新しく建設しました。日野は、CASE※1技術を活用したお客様起点のソリューションの実現を目指し、舗装評価路にて自動運転荷重車両(自動運転レベル4相当※2)の無人走行試験を開始しました。両社は、舗装評価路において自動運転荷重車両の運行テストを重ね、2025年夏頃をめどに5台の自動運転荷重車両の無人運行による舗装の耐久性試験※3を実施することを目指します。5台の自動運転荷重車両による24時間連続稼働は国内で初めてで、舗装の耐久性を短期間で評価できるほか、省人化による生産性向上に寄与します。
■施設について
舗装評価路は、舗装の耐久性を短期間で評価できる国内民間企業初の施設です。効率的な運用を行うため、舗装
評価路に近接して自動運転荷重車両の駐車と点検・整備を行う"トラックヤード" と"給油施設"を備えていま
す。
<研究施設の概要>
所在地: 福島県田村市常葉町山根字宇藤1-9
敷地面積: 約14.4ha
■自動運転荷重車両について
今回使用する自動運転荷重車両は、ベース車両である大型トラック「日野プロフィア」に自動運転技術を搭載
し、舗装評価路を40km/hで走行します。自動運転荷重車両の走行位置や経路をLiDAR※4、GNSS※5データ、カメ
ラで把握し、通信による制御により安全な車間距離を保ち、人および障害物を検知すると停止します。また自動
運転荷重車両は、トラックヤードからの入退場(舗装評価路からトラックヤード内部まで)を自動運転で移動し
ます。
※1 C=Connected(コネクティッド・接続性)、A=Autonomous(自動運転)、S=Shared(シェアード・共有)、E=Electric(電動化)の頭文字からとった造語。新しい領域で技術革新、自動車業界を取り巻く変革の動き(トレンド)のこと
※2 限定領域内の無人走行を想定した自動運転
※3 舗装は交通荷重(自動車の輪荷重)を繰り返し受けることにより疲労破壊を生じ、舗装にひび割れが発生します。高速道路や国道、県道、市町村道などの道路に新たな技術を適用し、普及させるためには疲労破壊に至るまでの輪数を確認する必要があります。本施設では、実際に舗装上に大型車を走行させて、舗装にひび割れが発生し疲労破壊に至るまでに通過する輪数(疲労破壊輪数)を実験的に確認します。
※4 Light Detection And Ranging、周辺環境の立体的な様子を捉える技術や機器
※5 Global Navigation Satellite System、GPSなどの全地球衛星測位システム
(4) 苫小牧栗林運輸株式会社(以下 苫小牧栗林運輸)と日野自動車株式会社(以下 日野)と株式会社三井E&S(以下 三井E&S)は、国土交通省の令和5年度港湾技術開発制度である「コンテナヤード内横持トレーラー※1運行の高度化に関する技術開発」の実証実験を1月11日~13日に苫小牧港東港区苫小牧国際コンテナターミナルで実施しました。港湾では、物流の2024年問題を起点とする労働力不足の深刻化に加え、苫小牧港をはじめとする地方港においては作業者の高齢化も進行しており、労働環境の改善、安全性の向上、さらには次世代を担う若い働き手の確保が必要になっています。こうした課題解決に向け、苫小牧港での港湾物流を担う苫小牧栗林運輸、車両を提供する日野、コンテナターミナルマネジメントシステムを構築する三井E&Sの3社は、船から降ろしたコンテナの蔵置場所までの運搬および、蔵置場所から船積み場所までのコンテナ運搬を行う横持ちトレーラーの運行を高度化する実証実験を行いました。現在、港ではドライバーが紙の指示書に基づき車両運行を行っていますが、実証実験では運転補助機能※2付きの横持ちトレーラーがターミナルオペレーションシステム※3(以下 TOS)からの作業指示を受けて運行します。これにより、乗員は作業負担が軽減され、走行時の安全確保に集中することができます。このように高度化した運行を実際のオペレーションを通して実施し、以下の項目を検証することによって、開発した技術の作業性・有用性を確認しました。
■検証内容
・TOS、車両管制システム※4、車両のデータ連携
・ガントリークレーンやRTG※5といった港湾資機材への正着連携
・車外からの車両管制端末による車両前後調整やコンテナ向きの違いに対応する車両転回など実オペレーションに即した運用
■運転補助機能付き車両
大型トラック「日野プロフィア」をベースにGNSS※6データや複数の3DLiDAR※7、白線検知カメラなどの運転補
助機能を搭載しています。これらを複合的に活用することで、刻々と変化する港湾の環境においても自己位置把
握や港湾機器への正着を可能にしました。
※1 ターミナル内のコンテナ移動に使われるトレーラー
※2 特定条件下においてシステムが全ての運転操作を実施する。搭乗した監視員が周辺安全監視を行うとともに、異常時にシステムからの警報に対して監視員が適切に対応する。
※3 コンテナの積み降ろし作業、搬入・搬出等を一元的に管理するシステム
※4 運転補助機能付き横持トレーラーの運行管理や目的地指示等の管制を行うシステム
※5 コンテナヤード内でコンテナの運搬(積み/降ろし)を行うクレーン
※6 Global Navigation Satellite System、GPSなどの全地球衛星測位システム
※7 Light Detection And Ranging、周辺環境の立体的な様子を捉える技術や機器
以上、当連結会計年度の「日本」セグメントの研究開発費の総額は、
(アジア)
主にASEANを主な市場とする車両について、現地で商品化に向けた開発を行っております。
当連結会計年度の「アジア」セグメントの研究開発費の総額は、
(その他)
該当事項はありません。