第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社グループは、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、経営理念および以下の基本方針に基づき、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築並びに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に取り組んでまいります。
 

<経営理念>

「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」

1.規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。

2.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。

3.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。

4.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します。

 

<コーポレートガバナンス基本方針>

1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。

2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。

3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。

4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上ならびに収益力および資本効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。

5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の改善に繋げるなど適切な対応に努める。

 

(2) 経営環境

世界経済を俯瞰すると、新型コロナウイルスや半導体不足、ロシアのウクライナ侵攻などの地政学リスク等、需要の予測が困難な状況が長期化する一方、エネルギー価格の高騰を筆頭に世界的インフレーションの進行と金利引き上げや為替の変動が経済の不透明さ、不安定さを増幅させています。

当社を取り巻く事業環境は、AC事業は急速なEV化の進行とMaaS、CASEに代表される変革期を迎え対応を迫られています。HC事業は欧米・日本の成熟市場、中国・ASEANなどの新興市場に応じた地域戦略と電子化・電動化・システム化による高付加価値化を求められています。特装車両事業では国内需要は堅調ながら、トラックメーカーの減産による影響を受けています。免震・制振用オイルダンパーの適合化終息も一定の目途がつき、お客様からの信頼回復を進めています。

一方、グローバルでの法規制の強化と企業のESGやSDGs、カーボンニュートラルに対する社会的な要求が急速に高まり、更には、人口や社会の変化による働き方の多様化とグローバル化や経済成長に伴う賃金上昇の加速、IoT、AI、自動運転などの技術進化の加速と業界の垣根を越えた連携や異業種からの参入など、当社を取り巻く環境は急速な変化を見せています。

 

(3) 事業上の対処すべき課題

当社は、持続的な成長と企業価値向上の実現を通じて、ステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たす一方、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでまいりました。

前2020中期経営計画においては「取り戻そう信頼と誇り」をスローガンに、不適切行為の再発防止、規範意識とコンプライアンスを経営の根幹に据え、高収益体質へのグループ一丸となった改革を進めました。最終年度の2022年度は、半導体不足やエネルギー、原材料価格の高騰、急激な為替変動等にさらされながらも、総仕上げの年として総力を結集してまいりました。

2023年度は2023中期経営計画の初年度にあたります。不適切行為の再発防止、規範意識とコンプライアンスは永続的な課題として実施しながら、当中期経営計画では「品質経営を極める~TQM(※1)をすべての活動の起点に~」をスローガンに、TQM活動を起点にスピードをあげて以下の方策を展開、強力に推進してまいります。また、IoTやAIなどデジタル技術を活用した業務変革を進めており、デジタル変革推進本部を設立し変革を強力に牽引してまいります。

 

1.マネジメント

「全員参加のTQM活動」「規範意識の醸成・定着」「成長戦略」「革新的モノづくり」「目標に向けた絶え間ないコスト低減活動」「環境対応への取り組み」

2023中期経営計画はTQM活動が起点になります。全員参加の活動を通じ、人財の質・情報の質の向上を図り、仕事の質を高め、製品・サービスの質の向上へ繋げ、ステークホルダーの皆様からの信頼と満足を得ることを目指してまいります。

当社の経営の根幹である規範意識の醸成・定着につきましては、免震・制振用オイルダンパーをはじめとした不適切行為を過去のものとせず、規範意識の更なる醸成・定着や不適切行為の再発防止活動を継続し、グローバルで高い規範意識が企業風土となるまでガバナンスを強化してまいります。

免震・制振用オイルダンパーの適合化は2022年度末で約98%まで進捗いたしました。引き続き適合化完了に向けて対応を進めてまいります。

成長戦略における環境認識としましては、新興EVメーカーの台頭、CASEの加速、各社のロシア市場からの撤退等、大きな変化を認識しております。将来への種まきも踏まえて、電動化に対応した製品開発と、その早期投入や、需要拡大が見込まれる成長市場へM&Aも視野に入れた積極的投資を進め、新たなビジネス創出・利益拡大に努めてまいります。

革新的モノづくりにつきましては、加工から組立が完全に一貫となった自己完結革新工場の2030年実現を目指す、Ship’30活動を進めております。革新ラインの要素技術開発、信頼性の高い設備の開発と導入、TPM(※2)活動を通じた設備維持管理体制構築による設備故障率低減、これらの取り組みはAI・IoT技術を駆使して2030年の実現に向けて取り組んでまいります。

目標に向けた絶え間ないコスト低減活動につきましては、デジタル技術を活用した間接部門の業務合理化を進めることで総就業時間を削減し、固定費低減を進めてまいります。また、調達部門、生産管理部門や技術部門と連携を強化したVE・VA提案、部品標準化による原価低減、地産地消と他国の競争力ある部品の活用を組み合わせた最適調達を推進し、変動費低減を図ってまいります。さらには、キャッシュ・フロー改善の一つとして、棚卸資産回転率の指標管理を強化し、全社棚卸資産圧縮を推進してまいります。

環境対応への取り組みとしては、2030年に「CO2排出量 2018年度比 50%削減」、また、2050年にカーボンニュートラル(CN)の目標を掲げており、サステナビリティ委員会、ESG推進室、CN推進室を設置して体制整備を図り目標達成に向けた取り組みを強化しております。2022年度にはCDP(国際NGO)によるESGの「気候変動分野」でB評価の取得、TCFD提言への賛同を表明しました。引き続き人と地球に優しい製品づくりを推進するとともに、環境保全活動を積極的に推進してまいります。

(※1)TQM:Total Quality Management(総合的品質管理)の略で、製造部門のみならず全社的な業務改善へも発展させた管理手法

(※2)TPM:Total Productive Maintenanceの略で、ロスを未然防止する仕組みを構築し、部署を越えた全員参加での改善・維持活動。

 

2.オートモーティブコンポーネンツ事業

「新しい挑戦を!」~顧客・社会・働くカヤバ人財が満足出来る商品の為に~
 当中期経営計画ではAC事業は「新しい挑戦を!」をスローガンに掲げ、電動化・自動化のトレンドに対し、新商品・改良商品の開発を促進するとともに、新領域への進出を図り、収益力向上だけでなく全てのステークホルダーのニーズを満たす挑戦をしてまいります。

具体的には、高機能・高付加価値商品である電子制御セミアクティブサスペンションのラインアップの拡充、自動運転のカギとなるステアバイワイヤシステムの技術の深耕、またe-Axle向けの電動ポンプや二輪車用車高調整システムの開発、さらに、将来への種まきとして電動油圧アクティブサス、フル電動SAやステアリングとサスペンションの協調制御といった、全ての移動を快適にする技術に挑戦してまいります。また、モノからコトにシフトする一つとして「スマート道路モニタリング」による道路維持管理支援サービス提供を進めてまいります。一方、成長市場への進出によるシェア拡大や新規顧客開拓へ向けた戦略構築を行い、市場でのプレゼンス向上を図ってまいります。環境対応の観点からは、生分解性やCN達成のため、製造過程でのCO2排出ゼロを目指し、さらにリサイクル性を訴求した環境作動油開発へも挑戦し、環境にやさしい製品開発も推進してまいります。

 

3.ハイドロリックコンポーネンツ事業

「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」
 HC事業といたしましては、2030年に向け「会社を担う2本柱の一つになるように成長させる」ことを目指す姿とし、当中期経営計画においては「“ゆるぎない信頼”をベースにした成長への再スタート」をスローガンに掲げ、ボリュームゾーンである既存ビジネスと次期主力商品となる新たなビジネスを両輪にして活動を進めてまいります。既存ビジネスにおいては事業を支える柱として利益・シェアを確保し、QCDの観点からも品質不良の潰しこみ、Ship’30活動に基づくラインづくりや内製化を推し進めて生産性を向上させ、コスト競争力強化・安定供給に向けた活動に取り組んでまいります。新たなビジネスにおきましては、ロードセンシング化・電子制御化製品を拡大し、将来の建機の電動化・自動化に対応する開発を進めていくとともに、建機ショベル以外の製品市場参入を行ってまいります。また、センシング技術を生かした「油漏れ検知シリンダ」や「油状態センサ」の開発、ポンプ・バルブ・ソフトウェアがセットになった最適制御システム製品の開発などを通じてお客様課題の解決、省エネ・CO2削減といった環境課題への貢献等、付加価値の創造を図ってまいります。各種新たなビジネスへの取り組みを進めて「成長」し、景気変動に強い事業構造を目指してまいります。

 

4.特装車両事業

「真のダントツミキサメーカーを目指す」
 特装車両事業につきましては、お客様目線で活動し、顧客価値の創造により、真のダントツミキサメーカーを目指すことを基本戦略とし活動してまいります。リニア新幹線や大阪万博、都市再開発、老朽化インフラ需要を確実に取り込みながら、キャブ内モニタを搭載したeミキサⅢやドラム軽量化による積載量を増やした高付加価値製品の市場投入を図ってまいります。また、電動化への対応といたしまして国内初となるEV対応ミキサの開発を進めます。サービス体制におきましては、パーツカタログ整備や部品発注のDX化によるアフターサービスの強化を推進してまいります。これらの取り組みにより顧客価値の創造を目指し、お客様の満足度向上に努めるだけでなく、当社の新たな収益基盤として、これまで培った技術・経験を投入しキャンピングカーの事業化・製品化に向けた取り組みを進めてまいります。

 

5.航空機器事業

航空機器事業につきましては、2022年2月9日に公表いたしましたとおり、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、撤退を決定いたしております。お客様のご理解を得ながら、ご迷惑をおかけすることの無いよう、粛々と撤退を進めてまいります。

 

6.技術・製品開発

「[攻め]の研究 / 技術開発による永続的な新価値創造」
 技術・製品開発におきましては現在起点の発想に基づくフォアキャスト型の製品ロードマップにより、お客様の困りごとや市場の課題に応えてまいりました。一方、CNやSDGsなどの社会環境変化へ対応するため、未来起点の発想に基づく、ありたい姿から「何をすべきか」という視点を取り入れた、バックキャスト型の技術ロードマップ活動も融合させて新技術・新製品開発や新規ビジネス創出を進めてまいります。成熟領域であるAC・HC事業の油圧製品におきましては電子制御・電動化・自動化製品を開発する一方、センシング技術・通信技術・データ分析技術を用いた情報サービス分野での事業創出を図ってまいります。また、これら事業戦略や新価値創造に際してはIPランドスケープ(※3)の活用・推進も行ってまいります。

先進的な研究開発・生産技術開発実現に向けて、デジタル技術を融合・活用した開発やプロセス革新も進めてまいります。モデルベース開発手法の拡大やデジタルツイン(※4)活用といったデジタル・リアルの融合のほか、Ship’30活動とも連携し、人に頼ったモノづくりから脱却する技術開発を行い、さらなる効率化を目指してまいります。これらデジタル技術を活用できる人財のみならず、電気・電子、電動化技術に係る人財を拡大し、全社一体となりさらなる開発の加速を進めてまいります。

(※3)IPランドスケープ:知財を中心とした情報を統合的に分析し、企業の経営戦略に役立てる活動。

(※4)デジタルツイン:現実空間から収集した各種データを用い、仮想空間(コンピュータ)上で双子のように再現すること。

 

7.人財育成

「経営理念を実現し会社の持続的成長に貢献できる人財育成」「心身ともに健康で働き甲斐のある職場づくり」「間接部門生産性向上への取り組み」

2023中期経営計画におきましてはTQM活動を起点に重点方策を実施することから、TQM教育を全社活動として展開してまいります。従業員一人ひとりが業務に活用でき組織能力が向上することを目指し、教育体制を構築し人財の質の底上げを図ってまいります。

また、当社は従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置付け、持続的な成長を実現するため、従業員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきと働くことができる環境づくりに取り組んでおります。健康経営に向けた取り組みとして、2023年も「健康経営優良法人」に4年連続で認定され、今後も取得を継続するとともに、2024年のホワイト500認定取得を目指してまいります。さらには、DXやRPAなどのデジタル技術を用いた業務改善活動のほか、間接部門生産性向上に向け生産現場の改善手法のKPS(※5)を取り入れ、抜本的なムダ取りの実践に取り組んでまいります。

(※5)KPS:Kayaba Production Systemの略でムダの徹底的排除の思想に基づく生産方式を指す。

 

8.モノづくり

「質を極め~量変動に追従できる革新的モノづくりの実現」
 革新的モノづくりにつきましては、これまでも最適な生産を実現し生産革新活動を進めて収益性強化に努めてまいりました。次の時代に向けてモノづくり現場をより一層進化させ、自己完結革新工場の2030年の実現を目指し、デジタル技術を軸にしたShip’30活動を前中期経営計画から進めており、2022年度は国内主要拠点を中心に活動を展開してまいりました。2023中期経営計画ではShip’30活動における生産工程革新といたしまして、コンセプトライン構想および実現に向けた取り組みの推進、運搬や検査などの自動化の実現や、設備モニタリングシステムの展開といったIoTの活用を図ってまいります。また、革新ライン構築に向けて信頼性の高い設備開発と導入を進めてまいります。設備管理革新活動としては、高度化する設備群への対応と故障率低減に向けたTPM体制構築及び故障分析と対策・保全の実施を進めてまいります。さらに、KPS活動を推進し、モノづくり現場の底上げを図り生産性を向上させるとともに、活動を通じ人財の育成を図ってまいります。

 

当社グループは、これらの重点方策活動を着実に実施し、筋肉質で高収益な企業体質への改革に取り組んでまいります。

 

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、3年間(2024年3月期~2026年3月期)の2023中期経営計画を策定しており、目標数値は以下のとおりです。

 

2024年3月期目標

2025年3月期目標

2026年3月期目標

売上高

4,500億円

4,600億円

4,700億円

セグメント利益 (注)

280億円

330億円

380億円

セグメント利益率

6.2%

7.2%

8.0%以上

自己資本比率

45.0%以上

ROE

12.0%以上

 

(注) セグメント利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出したもので、日本基準の営業利益に相当いたします。

また、収益基盤の安定化を図るため、収益力改善については、固定費管理体制強化、最適調達による変動費削減、グローバル総原価低減の推進、グループ生産体制の最適化を、財務体質改善については、棚卸資産回転率の指標管理強化による全社棚卸資産圧縮を推進し、重要な指標と位置付けております当社グループ自己資本比率やROEの改善を進め、グループ一体となった利益確保を通じ企業価値向上に向けて取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

当社グループでは環境や社会の問題解決に向けた活動を実践し、持続可能な社会の実現に貢献するべく活動を推進しています。経営理念である「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」を根幹に、創業者から受け継がれてきた独創の精神に立ち返り、豊かな未来を描く新たな歴史を創り続けます。

気候変動問題に対しては、地球温暖化防止、循環型の持続可能な社会の実現に向けて、人と地球に優しい製品づくりを目指すとともに、省エネ化や再生可能エネルギーの導入、廃棄物削減などを推進します。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは持続可能な社会の実現へ貢献すべく各種取組を推進しており、会社全体を取りまとめる組織として、ESG推進室が事務局、社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を2022年3月に設置し、サステナビリティに関する取組を討議の上、取締役会へ3か月に1回報告または上申しております。

加えて、サステナビリティ委員会の傘下として、各事業部内に事業ESGワーキングチームを設置して、気候変動に関するリスクや機会の抽出、対応策の検討などを実施し、サステナビリティ委員会へ報告しております。また、気候変動リスクに対応するサステナビリティ委員会と会社全般のリスク管理を行うリスク管理委員会は連携しながら活動を行なっております。

取締役会ではサステナビリティ委員会からの報告または上申を受けてプロセスを監督し、必要に応じた決議を行っております。

また、気候変動や環境保全に関連して業績に影響を与える事項は、機能部門および事業部門が業務執行状況を報告する「経営報告会」や、安全・環境部による「環境安全監査」等においても監視を行っております。

サステナビリティに関する体制図は、以下の通りです。

 


 

(2) 戦略

当社はESG経営を方針策定の基盤とし、環境への対応はもちろんのこと、機会を企業価値向上へと繋げ、持続可能な社会に貢献する製品開発を推進しています。またESG推進室を中心に環境・社会・ガバナンスに関するすべての社内活動を推進しています。

<気候変動>

当社は「守りますみどりの地球 創ります環境に優しい製品」をスローガンに、2050年カーボンニュートラル達成を目標として、温室効果ガス排出量削減の活動、製品の環境負荷物質低減のための対策、CO2低排出・省エネルギー製品の開発を行っています。気候変動に関するリスクとその影響から見えるビジネス機会に関しては、下表に示すシナリオ分析により影響度を評価し、事業戦略や経営計画に反映させていきます。

リスクの分類

特定されたリスク

取組・対応策

物理

急性

気候変動に起因する自然災害の激甚化

2010年7月に東海地区を襲った集中豪雨において、工場の近くを流れる河川が氾濫し被害が生じた。

今後さらに地球温暖化が進むと大型化する台風、高潮などによる水害のリスクが高まる。

岐阜地域の工場においては、敷地内の浸水防止や排水機能強化に向けた取組を毎年継続で行っている。また、河川水位による移動処置のマニュアル化等、災害発生時に備えた活動を進めている。

移行

規制

温室効果ガス排出削減に関する規制強化

自動車のEV化が加速する中、ショックアブソーバへは、客先の多様化による要求仕様の多様化が、バッテリー搭載による重量増加から軽量化が、車両の静音化に伴う静音(無音)化への要求が加速すると想定され、ニーズに応えられない場合、市場から取り残されるリスクがある。

技術戦略として、自動車の次世代プラットフォームへの対応、コア技術である振動制御やパワー制御をより深化させ対応を進めている。

 

 

機会の分類

特定された機会

取組・対応策

製品・

サービス

商品とサービスに対する需要増加に起因する売上増加

自動車市場から更なる「静粛性」「乗り心地」等を求められると予想され、コア技術である振動制御、パワー制御をより深化させ次世代プラットフォームへの対応によるビジネス拡大の機会がある。

炭素税が導入されるにつれて、モーダルシフト(道路貨物輸送から鉄道貨物輸送への転換)が加速する可能性があり、鉄道ダンパービジネス拡大の機会がある。

中期をエンジン車(動力)から電動車(動力)への移行期間とすると、共存の期間でありこの期間で電動化に適した製品を提供することで長期的な展望が見えてくると思われる。また、製品の付加価値を高めることにより差別化を図り、優位性を確保し消費者に満足していただけるものづくりを目指している。

 

 

また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりです。

※当社では、「組織をつくるのは人であり、人は組織の財産」という考えのもと、人材を「人財」と表現しています。

<人財への取組>

当社グループは、グループで働く人財の多様性を経営健全化実現のための重要な取組の一つと捉え、多様な価値観、文化、慣習を受容・尊重した働きがいのある職場を創出するとともに、風通しの良い企業風土の構築を目指しています。

人財の多様性を確保する具体的な施策として、特に女性管理職の増加について重点的に取組を進めており、管理職候補となる職位の女性従業員の数を増やすとともに、研修制度の充実、公的認定である「くるみん」「えるぼし」の2023年度取得を目標とした活動を行い、女性従業員が管理職を目指す意識向上と環境整備を進めています。本人の意識を変える視点としての女性キャリアパス策定、周囲の意識を変える視点としての上司による育成計画作成なども進める予定です。

また、障害者雇用についても、2019年9月に「業務支援センター」を設置し、社内の各部門、官公庁、学校、各種団体と連携して雇用促進や定着率の安定に向けた取組を進めてきた結果、2019年3月末に1.88%であった障害者雇用率が、2023年3月末には2.40%と法定雇用率の2.30%を上回る状態へ改善されました。引き続き、一層の障害者雇用率の向上と障害者、健常者がともに働きがいを感じられる職場を目指して活動を継続していきます。

人財の育成については、「経営理念(規範、活気、愛、独創)の実現に貢献する人財の育成」を基本とし、そのために必要な資質が備わる人財育成プログラムの体系を整備しています。人事考課、人財登用の透明性も、人財育成の重要な柱の一つと捉え、制度の改善に取り組んでいます。また、2023中期経営計画においては、TQM活動を起点に重点方策を実施することから、TQM教育を全社活動として展開予定です。従業員一人ひとりが業務に活用でき組織能力が向上することを目指し、教育体制を構築し人財の質の底上げを図ってまいります。

 

<社内環境整備>

当社グループは、「カヤバ健康宣言」において、従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置付け、持続的な成長を実現するため、従業員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきと働くことができる環境づくりに取り組むことを掲げています。

働きやすい環境の下で多様な人財が活躍できる職場づくりが、企業価値向上のためには不可欠であると考え、ワークライフバランスを念頭に、引き続きテレワーク、年休取得を推進し、長時間労働の抑制を図っていきます。

また、疾病による休業者を減らすべく、生活習慣病対策、受動喫煙対策、メンタルヘルス対策といった健康経営重点方策も実施しております。その取組により「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定され、これで4年連続の認定となります。今後も取得を継続するとともに、2024年のホワイト500認定取得を目指してまいります。

これら諸施策を継続することが、従業員の仕事満足度向上に寄与し、パフォーマンス最大化につながるものと考えています。


 

 

(3) リスク管理

会社全般のリスクへの対応については、取締役会の下部組織であるリスク管理委員会において、全社的な対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行い、四半期毎に取締役会へ報告しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りです。気候変動に関するリスクについては、気候変動課題への対応を事業で推進するチームである事業ESGワーキングチームで、AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業、特装車両事業のそれぞれでTCFDの推奨するシナリオ分析を活用して気候変動リスクの検討を実施し、サステナビリティ委員会で討議し、取締役会へ報告しています。現在は各事業の短期・中期・長期のリスクと機会の財務的影響度の分析に着手しております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「戦略」において記載した、気候変動について、当社及び連結子会社の生産拠点において次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

2022年度(実績)

年度

目標値

実績

評価

CO2排出量 原単位(Scope1・2)

2022年度

0.604 tCO2/百万円

0.526 tCO2/百万円

達成

CO2総排出量(Scope1・2)

2030年度

138,578 tCO2

224,365 tCO2

(取組中)

2050年度

0 tCO2 カーボンニュートラル

(取組中)

再生可能エネルギー導入率

2025年度

15%

7.7%

(取組中)

 

 


 

また、当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。

なお、当該指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

項目

指標

2025年度(目標)

2022年度(実績)

人財の多様性

女性管理職人数

27名

18名

障害者雇用率

2.70%

2.40%

健康経営

有給休暇取得率

80%以上

63.0%

仕事満足度

60%以上

57.3%

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) リスク管理の仕組み

① 「リスク管理委員会」について

当社グループでは、経営目的の達成および事業の運営を阻害する可能性のある事象をリスクと定義し、リスク管理に取り組んでおります。また、全社的リスク低減のため、「リスク管理委員会」を取締役会の下部組織として設置しております。リスク管理委員会において、全社的に対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行うとともに、全社BCPプロジェクト活動により大規模災害に対処しております。また、事業リスクに関しては当該リスクを抱える事業部が責任をもって取り扱う一方、リスク管理委員会はモニタリングを行います。

体制については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。

また、リスク管理委員会の構成は、以下のとおりです。

委員長

CSR担当役員

委員

本社機能部署、事業(本)部、子会社の責任者

事務局

CSR・安全本部 内部統制部

 

 

② リスク管理の流れ

以下のスケジュールに基づき、1年単位でリスク低減活動を行なっております。

当事業年度

翌事業年度

11月

12月~2月

3月

4月

7月

10月

1月

翌4月

リスク抽出

重点リスク選定

計画策定

リスク低減活動開始

第一四半期報告

第二四半期報告

第三四半期報告

年度報告

取締役会決議

取締役会での報告

 

 

③ リスク評価方法

リスクを、財務、人的被害、操業停止、法令違反、評判などの視点から事業の運営に及ぼす影響度と、発生する可能性から、リスクの大きさを評価しております。

 

 

(2) リスク管理の現状

① 全社リスクの内容と対応状況

2023年度のリスク管理活動では、子会社を含む全拠点から抽出したリスクから、リスクが大きいと評価した以下6件を重点リスクとして選定しております。これらについては、それぞれの責任部署が、年度活動計画を策定し、それに基づいてリスク低減活動を行なっており、活動の進捗や、リスクの状況については、四半期ごとに取締役会へ報告しております。

No.

リスク・概要

方策

1.

品質不正

品質記録の改ざんによる法令違反リスク

全拠点に対する品質管理部による品質体制監査を実施し、不正リスクゼロを目指す。

2.

大規模災害

BCP活動管理不備による操業停止リスク

BCP訓練、減災対策の実施等を行うことで、影響度の低減を図る。

3.

人権問題

ハラスメント管理不備による事業活動鈍化リスク

教育の実施や、重点拠点への対応等で、ハラスメント発生低減を図る。

4.

サイバー攻撃

サイバーセキュリティ管理不備による操業停止リスク

教育訓練、新セキュリティソフト導入等で防止と復旧の両面で備える。

5.

労働災害

労働災害予防管理不備による人的被害リスク

他拠点の事例を水平展開と、その維持を確認し、発生させない。

6.

火災

火災予防措置管理の不備による操業停止リスク

防火体制の点検、火災リスクの見える化等により、発生させない。

 

なお、2022年度に重点リスクとしていた新型コロナウイルス等の感染症拡大によるリスクについては、その影響をライン停止としておりましたが、感染症第5類への取り扱いに変更されたことにより、濃厚接触者の自宅待機などの対応が不要となったことから、重点リスクより外しております。

 

各全社リスクの詳細は以下の通りです。

1.品質不正

品質不正による法令違反やお客様との契約違反は、お客様からの損害賠償請求や是正対応費用などにより、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、品質不正に直結する品質記録の改ざんなどを防止する活動を行っております。具体的には、拠点が自主監査で使用するマニュアルの見直し/改定を行い、拠点自身での発見力強化を行います。また拠点自主監査後の品質管理部による監査等により、品質不正の懸念事項の発見漏れを防ぎ、是正を行うことで品質不正リスクを低減してまいります。

 

2.大規模災害

当社グループでは、地震、火災、風水害での自社生産設備の損傷やサプライヤーチェーンの寸断、サイバーインシデントなどによる操業停止の可能性があるため、災害発生時の被害を最小化する活動や災害発生時の復旧訓練の実施など、生産能力早期復旧のための対策をとっております。また、発生の可能性が高いと推測される国内地震を中心に、国内外火災に対しても、訓練の実施に取り組んでまいります。また減災対応や復旧戦略策定についても見直し・強化を進め、大規模災害時の操業停止リスクを低減してまいります。

 

3.人権問題

職場でハラスメントが発生した場合、職場環境悪化による生産性低下や人財流出によって事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、労務訴訟などで賠償請求を受けるリスクもあります。

当社グループでは、いきいきと働くことのできる職場環境の土台づくりの一環として、内部通報件数やストレスチェックの結果から選定した重点拠点、部署への個別対応、および従業員へのハラスメント防止教材の事例集拡充により、多様な価値観を尊重する職場づくりをすすめ、ハラスメントによる事業活動の鈍化や労務訴訟リスクを低減してまいります。

 

 

4.サイバー攻撃

近年の情報システム環境の進化・複雑化に加え、テレワークの普及による従業員の外部からのアクセス機会が増える一方、サイバー攻撃は急増し、複雑・高度化しており、情報セキュリティに係るリスクが高まっています。これらにより、情報漏えいやシステム障害等が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループ共通の情報セキュリティ教育の実施と、新セキュリティソフト導入、インシデント発生時の早期検知・回復を中心とした訓練やバックアップを実施することで、グループ全体の防衛力を強化し、サイバー攻撃による操業停止リスクを低減してまいります。

 

5.労働災害

労働災害の発生は、従業員の生命を脅かすだけでなく、是正対応などのために操業停止又は、生産能力が著しく低下する可能性があります。現在、発生頻度の高い災害を重点災害と位置づけ、再発防止策をグループ内で水平展開することで、労働災害の人的被害リスクを低減してまいります。

 

6.火災

当社グループの多くの工場では、油の特性を利用した油圧製品の生産を行っており、有機溶剤を使用する塗装設備、作動油・化学薬品等を貯蔵するタンク等が設置されていることから、火災の発生や有害物質が流出する可能性があり、万が一、事故が発生した場合には生産活動が一時的に停止する可能性があります。過去事例を反映した防火体制チェックリストによる点検の実施、火災の原因となりうる設備の見える化、清掃状況の見える化、防火教育にて、火災による操業停止リスクを低減してまいります。

 

② 各事業の個別リスクの内容と対応状況

全拠点から抽出したリスクのうち、各事業や各拠点で個別に対応するリスクについてはリスク管理委員会の活動に依らず、各事業等で対応しており、以下のものがあります。これらは、2023中期および2023年度方針に掲げ、各事業等の日常の管理活動の中でリスク低減活動を実施しております。その進捗については経営報告会等の会議体を通じて定期的に報告されております。

リスク分類

リスク項目

方策

生産・販売

数量減少

需要動向

グローバルでの情報収集・分析

生産活動の停止

品質リスク

品質不良の発生

品質経営を基盤とした品質管理体制強化

価格リスク

製品販売価格の価格競争等

高品質・高付加価値製品を提供等

原材料・部品等の調達価格上昇

複数購買の実施・購買機能の集約等

財務リスク

資金調達

金融市場の動向を注視

為替相場の変動

グローバルでの生産拠点の配置等

金利上昇リスク

固定金利での調達

その他

得意先の信用リスク

与信管理や取引先との関係強化等

重要な訴訟等の発生

国内外の弁護士と連携

 

 

 

上記のリスクに関する詳細は以下の通りです。

1.需要動向・生産活動停止

当社グループのAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業・HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の主要製品は自動車、建設機械および産業車両メーカー等(以下、お客様といいます)へ供給する組付用部品であり、世界的な自動車生産台数や建設機械生産台数に大きく依拠しています。世界的な景気悪化による自動車ならびに建設機械需要の減退、半導体等主要部材の需給状況によるお客様の生産調整等、お客様の予期せぬ事象等により、この部門の収益性に大きな影響を与えます。特に欧州域においてはロシア・ウクライナ情勢による製品や主要部材の供給制限によるお客様の生産調整や生産稼働停止で、欧州拠点等の収益性に大きな影響を与える可能性があります。加えて、補修市場向けではロシア・ウクライナ地域での製品輸入の制限、販売活動の停止による事業活動停止など事業継続に影響する可能性があります。

また、上記の主要部材の需給状況逼迫や供給制限は当社の部品調達にも影響を与え、生産活動の継続に影響を与える可能性があります。

航空機器事業、特装車両事業の製品は、国内を中心に展開しております。特にコンクリートミキサ車を主力とする特装車両は、景気の先行きと相関の深い建設工事の増減により需要が変動する可能性があります。

当社グループでは、グローバルで情報収集・分析を行い、状況に応じた対応をしております。

 

2.品質不良の発生

品質に関しては、自動車では操縦安定性を支えるショックアブソーバや操舵力を補助するパワーステアリング等の重要な部品を供給しており、建設機械・産業車両等では母機を駆動させるシリンダ、モータ等の主要な機能部品を供給していることから、仮に当社グループが供給した製品に品質不良が発生した場合、その損害賠償をお客様から求められる等で多額の費用が発生する可能性があります。当社グループでは、品質経営を基盤に品質管理体制強化など品質向上を継続して追求しております。また、グループ全体での不正防止活動への取組やコンプライアンス教育を通じ、問題が発生した際には対応が迅速且つ確実に行われるよう体制を整備しています。

 

3.製品販売価格

価格に関しては、国内・海外市場共に熾烈な価格競争にさらされており、お客様からのコスト低減、価格引下げ要請が常に存在します。当社グループでは、高品質・高付加価値製品を提供することによる競合優位を目指すと共に、生産性向上などを通じた継続的な原価低減によるコスト競争力向上に努めております。

 

4.原材料・部品等の調達価格

当社グループは、原材料、構成部品等を多数の取引先から購入しておりますが、調達する原材料等は国際商品市況等の影響を大きく受けます。複数購買の実施や購買機能の集約等による原価低減を図っておりますが、原材料等の価格上昇を当社の販売価格に十分に反映出来ない場合、あるいは、販売価格引下げを原材料および構成部品価格に十分に反映出来ない場合、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。
 

5.資金調達

当社グループは、主に国内外の金融機関等より設備資金ならびに運転資金の借入を実施しております。金融市場の動向には十分留意しておりますが、全般的な市況および景気の後退、金融収縮、当社グループの信用力の低下等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性もあります。その結果、当社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

6.為替相場変動・金利上昇

当社グループは、海外売上高が59.6%と海外市場に大きく依存しているため日本からの輸出はもとより在外関係会社の経営成績等も為替の影響を大きく受けます。このような為替変動リスクに対してはグローバルな生産拠点の配置や為替予約等によりリスクの軽減を図っておりますが、想定を超えた為替相場の変動は、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは有利子負債を有しており、固定金利での調達により金利変動リスクの軽減に努めておりますが、日本および海外における将来の金利上昇は、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

7.得意先の信用リスク

当社グループは、自動車並びに建設機械メーカー各社をはじめ多くのお客様と取引を行っております。取引先の予期せぬ信用リスクにより、経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、取引先の信用リスクについては細心の注意を払い、与信管理や取引先との関係強化等を通じてリスク管理を行っています。

 

8.重要な訴訟等の発生

当社グループを相手とした訴訟が起こされ、当社の主張と相違する結果となった場合には、その請求内容等によっては、当社グループの経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応しております。

 

③ 建築物用免振・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について

当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)は、建築物用の免震・制振部材としてオイルダンパーを製造・販売してまいりましたが、その一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実(以下、「本件」といいます。)が判明し、国土交通省に報告を行うとともに、対応状況について、2018年10月16日に公表いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。

本問題に関する再発防止策および対応についての進捗状況は、2019年7月5日以降、以下の当社ホームページ上で3か月に1回、公表しておりますのでご参照ください。

なお、2022年3月末時点で、再発防止策の具体策全67項目の内、全項目を「完了」しており、引き続きその維持・定着の取り組みを継続しております。

再発防止策の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/prevent.html

対応の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/exchange_progress.html

本件に関し、現時点において収集可能な情報、及びその情報が合理的な事実に基づくものであると判断された免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等について、製品保証引当金を計上しております。

なお、本件に関連して訴訟を提起されている案件もありますが、一部案件においては追加費用の発生なく終了し、またその他案件の訴訟手続きも進んでおり、現時点においては経済的便益の流出の可能性は低下していると判断しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(百万円未満四捨五入)

 

売上高

(百万円)

セグメント利益

(百万円)

営業利益

(百万円)

税引前利益

(百万円)

親会社の所有者に

帰属する当期利益(百万円)

2023年3月

431,205

25,500

32,547

31,770

27,210

2022年3月

388,360

24,713

30,001

28,817

22,549

増減

42,845

787

2,545

2,953

4,661

増減率(%)

11.0

3.2

8.5

10.2

20.7

 

 

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動制限の緩和が進み景気回復の動きが見られましたが、一方で地政学リスクの高まりによるエネルギー価格の高騰、インフレ加速に対する各国金融政策等、景気悪化の懸念がぬぐい切れない不透明な情勢となりました。

こうした中、わが国経済は、長引く円安基調による物価上昇、人手不足による物流コスト上昇等により、景気の先行きについては依然として見通しづらく、将来予測は困難な状況と言えます。

このような環境のもと、当社グループの売上高は4,312億円と、前連結会計年度に比べ428億円の増収となりました。

営業利益につきましては325億円前連結会計年度営業利益300億円)、税引前利益は318億円前連結会計年度税引前利益288億円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は272億円前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期利益225億円)となりました。

 

(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)

2019年3月期において、当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。

(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。

当連結会計年度においては、2023年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び性能不明品(性能検査記録のデータ書き換え有無が確認できないもの)の全数(免震用オイルダンパー71本、制振用オイルダンパー359本の合計430本)を対象として、交換用免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等を製品保証引当金に計上しており、当該製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は44億円であります。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

なお、当社グループ再編に伴いセグメント管理区分の見直しを行った結果、従来「HC事業」に含まれていた鉄道機器を「AC事業」に含めて開示しております。このため、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値で比較しております。

 

(a) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業セグメント

当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。

ⅰ) 四輪車用油圧緩衝器

四輪車用油圧緩衝器は、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動停滞や半導体不足からの回復、中東での市販製品の好調、円安による為替影響により、売上高は2,022億円前連結会計年度に比べ19.5%の増収となりました。

ⅱ) 二輪車用油圧緩衝器

二輪車用油圧緩衝器は、東南アジア、インド及び中国での販売好調により、売上高は459億円前連結会計年度に比べ31.6%の増収となりました。

ⅲ) 四輪車用油圧機器

パワーステアリング製品を主とする四輪車用油圧機器は、電動パワーステアリングやCVT(無段変速機)用ベーンポンプの販売減少により、売上高は210億円前連結会計年度に比べ11.9%の減収となりました。

ⅳ) その他製品

鉄道車両用オイルダンパを中心とするその他製品の売上高は94億円前連結会計年度に比べ4.9%の減収となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は2,785億円前連結会計年度に比べ17.1%の増収となり、セグメント利益は187億円前連結会計年度に比べ27億円の増益となりました。

 

(b) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業セグメント

当セグメントは、産業用油圧機器、システム製品、その他製品から構成されております。

ⅰ) 産業用油圧機器

建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、主要な市場である中国での需要は減少したものの、北米市場の堅調な需要を背景に、売上高は1,303億円前連結会計年度に比べ1.3%の増収となりました。

ⅱ) システム製品

舞台機構、艦艇機器、免制振装置を主とするシステム製品の売上高は40億円前連結会計年度に比べ13.1%の減収となりました。

ⅲ) その他製品

その他製品の売上高は35億円前連結会計年度に比べ6.6%の増収となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は1,379億円前連結会計年度に比べ0.9%の増収となりましたが、光熱費等のエネルギー価格の高騰によりセグメント利益は75億円前連結会計年度に比べ43億円の減益となりました。

 

(c) 航空機器事業

当セグメントは、航空機器用離着陸装置、同操舵装置等から構成されております。

航空機器事業は、売上高は44億円前連結会計年度に比べ20.8%の増収となり、セグメント損失は14億円前連結会計年度に比べ25億円の増益となりました。

 

(d) 特装車両事業及び電子機器等

当セグメントは、特装車両及び電子機器等から構成されております。

ⅰ) 特装車両

コンクリートミキサ車を主とする特装車両の売上高は92億円前連結会計年度に比べ0.7%の増収となりました。

ⅱ) 電子機器等

電子機器等の売上高は12億円前連結会計年度に比べ4.4%の増収となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は104億円前連結会計年度に比べ1.1%の増収となりましたが、セグメント利益は7億円前連結会計年度に比べ2億円の減益となりました。

 

(百万円未満四捨五入)

 

資産合計

(百万円)

負債合計

(百万円)

資本合計

(百万円)

親会社の所有者

に帰属する持分

(百万円)

親会社所有者

帰属持分比率

(%)

2023年3月

446,836

255,800

191,036

182,830

40.9

2022年3月

434,187

273,273

160,914

153,411

35.3

増減

12,649

△17,473

30,122

29,419

5.6

増減率(%)

2.9

△6.4

18.7

19.2

 

 

流動資産は、現金及び現金同等物が減少する一方、営業債権及びその他の債権が増加しました。また、非流動資産につきましては、その他の金融資産が増加しました。この結果、総資産は126億円増加し、4,468億円となりました。

負債につきましては、社債及び借入金が減少したことにより、負債総額は175億円減少し、2,558億円となりました。

資本は、当期利益に伴う利益剰余金の増加、為替影響によるその他の資本の構成要素の増加により、301億円増加し、1,910億円となりました。

親会社所有者帰属持分比率は、資本が増加したことから40.9%と前連結会計年度末に比べ5.6ポイント好転しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

(百万円未満四捨五入)

 

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

現金及び現金同等物

期末残高

(百万円)

2023年3月

23,914

△13,517

△20,180

43,585

2022年3月

24,247

△10,871

△32,711

52,118

増減

△334

△2,646

12,530

△8,534

増減率(%)

△1.4

24.3

△38.3

△16.4

 

 

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて104億円の資金流入、また財務活動によるキャッシュ・フローは202億円の資金流出となり、為替換算により12億円増加した結果、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比85億円減少し、436億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により当連結会計年度は239億円の資金流入(前連結会計年度比3億円の減少)となりました。これは主に税引前利益318億円、減価償却費及び償却費187億円、営業債権及びその他の債権の増加78億円、製品保証引当金の減少93億円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は135億円(前連結会計年度比26億円の支出増加)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出116億円、定期預金の預入による支出14億円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により流出した資金は、202億円(前連結会計年度は327億円の支出)となりました。主な流出は、長期借入金の返済による支出121億円、主な流入は、長期借入金による収入18億円です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績

当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

284,068

11.5

HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

137,288

△1.4

航空機器事業

3,562

△15.6

報告セグメント計

424,918

6.7

特装車両事業及び電子機器等

10,868

6.6

合計

435,785

6.7

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

(b) 受注実績

四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびパワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器およびシステム製品を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。航空機器用離着陸装置、同操舵装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。

特装車両事業及び電子機器等についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。

 

(c) 販売実績

当連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

278,511

17.1

HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

137,876

0.9

航空機器事業

4,416

20.8

報告セグメント計

420,803

11.3

特装車両事業及び電子機器等

10,402

1.1

合計

431,205

11.0

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものは、ありません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、新型コロナウイルス禍からの世界各国での経済活動再開により当社製品の主要な需要先である自動車市場はグローバルで回復傾向にあり、建設機械市場は中国地域での受注減により前年同等の売上高となったものの、全般としては為替円安基調の影響も受けて、売上高は前連結会計年度比11.0%増加4,312億円セグメント利益は前連結会計年度比3.2%増加255億円となりました。また、免震・制振用オイルダンパーの適合化が進み製品保証引当金の取崩しを行ったことにより、営業利益は325億円となり、セグメント利益・営業利益ともに過去最高となりました。

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

全般的に経済回復傾向にあるものの、一方で地政学リスクの高まりによるエネルギー資源の高騰、インフレ加速に対する各国金融政策等、景気悪化の懸念がぬぐい切れない不透明な情勢が続くものと思われます。

なお、不適合オイルダンパーの適合化につきましては、2023年3月末時点で約98%が完了、100%完了に向け引き続き適合化を進めて参ります。

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債の発行および金融機関からの長期借入を基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,147億円となっております。

また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は436億円となっております。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。当社グループでは、3年間(2024年3月期~2026年3月期)の2023中期経営計画を策定しており、売上高4,700億円、セグメント利益380億円(セグメント利益率8.0%以上)、親会社所有者に帰属する持分比率45.0%以上、ROEは12.0%以上を2026年3月期に達成することを目標としております。

2023年3月期の経営成績は、それぞれ売上高4,312億円、セグメント利益255億円(セグメント利益率5.9%)、親会社所有者に帰属する持分比率40.9%となっており、更なる業績向上に向けた努力を行って参ります。

また、2023中期経営計画では、品質経営を極める、をスローガンに掲げ、顧客価値創造を目指した人財・情報・仕事の質を高めることで製品・サービスの質を向上させて参ります。当社を支える2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の成長戦略を確実に推進し、革新的モノづくりと変化に対応した絶え間ない原価低減活動に取り組むことで、2026年3月期の目標達成に向けてグループ会社総力を挙げて取り組んで参ります。

 

なお、2大コア事業であるAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業とHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の2022年度の基本方針、及び2023中期経営計画の目指す姿と基本戦略は以下の通りです。

AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業は、2022年度は「真価の発揮」をスローガンに、コスト削減の継続、各拠点単体での利益確保、新市場・新製品開発を3本柱にして、顧客に選ばれる技術開発を推進し、市販を含めた事業体制の強化を図る活動に取り組んで参りました。2023中期経営計画では、新市場進出や新興メーカへの参入を成長戦略として掲げ、高付加価値製品の拡充と市場投入、及び電動化への取組みを進めて事業の地盤固めと更なる飛躍を目指します。

HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、2022年度は「お客様に信頼され世界で採用され続けるメーカ」を目指す姿とし、原価低減・現調化の推進活動や生産性向上を行い、電子化・電動化・システム化を活用した拡販戦略に取り組んで参りました。2023中期経営計画では、建機需要への現地対応や農機向け製品の拡販、地場サプライヤに対抗できる原価作り込みによって利益確保を行い、電動油圧システムの最適化制御技術を構築することにより、付加価値を創造して参ります。

この他、航空機器事業については、2018年度に判明いたしました防衛装備品の不適切事項からお客様からの信頼を取り戻すべく、コンプライアンス強化のもと、生産のしくみ改善に継続して取り組んでおります。

特装車両事業については、市場ニーズに資する高付加価値製品の開発による利益体質の強化に加えて、既存製品の拡販を行い、またトラックEV化に向けた製品仕様や脱炭素社会に貢献できる新製品及び他事業との連携による次世代製品の研究開発を推進し、特装事業の基盤強化を戦略として取り組んでおります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(連結子会社の吸収合併)

当社は、2023年2月8日開催の取締役会において、2023年4月1日を効力発生日として、当社を存続会社、当社の完全子会社かつ特定子会社であるKYB-YS株式会社(以下、「YS」といいます。)を消滅会社とする吸収合併(以下、「本合併」といいます。)を行うことを決議し、同日付で合併契約を締結いたしました。

(1) 本合併の目的

当社は、油圧機器の製造・販売子会社であるYSを合併することにより、営業収益力の向上を図り、また、当社の財務基盤の強化を目指します。

併せて、本合併により両社が保有する経営資源の有効活用など経営効率化の促進、本社機能部門との連携強化を通じたグループガバナンス体制の強化にも努めてまいります。

(2) 本合併の概要

① 本合併の日程

合併契約締結日    :2023年2月8日

合併期日(効力発生日):2023年4月1日

② 本合併の方法

当社を存続会社とする吸収合併方式で、YSは解散いたします。

③ 本合併に係る割当ての内容

本合併は、当社の完全子会社との吸収合併のため、株式その他の金銭等の割当ては行いません。

(3) 引継資産・負債の状況

当社は、YSの資産及び負債、契約上の地位等の権利義務を、合併契約書に従い継承いたします。

(4) 吸収合併存続会社となる会社の概要

商号   :KYB株式会社

資本金の額:27,647百万円

事業の内容:油圧緩衝器・油圧機器等の製造・販売ならびに各事業に関連するサービス業務等

 

 

6 【研究開発活動】

(1) 目的

当社では、モノづくりを通して豊かな社会づくりに貢献する信頼のブランドを確立していくため、今年度よりスタートした2023中期経営計画の「品質経営を極める」をスローガンとして、カヤバグループ一丸となり研究開発活動を今後も精力的に推進してまいります。

現行製品の性能向上はもとより、高機能化やシステム化への対応および軽量化や省エネルギー、CO2削減への貢献、環境負荷物質削減などを通して世界中の至る所で地域の人々の暮らしを支え、安心・安全・快適さを提供するための新製品開発と革新的なモノづくりに挑戦し続けています。また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成やマネジメントシステムの構築も進め、グローバル生産・販売・技術の一体活動でイノベーションを起こすことによってカヤバグループの新しい価値を創造し、企業価値の向上に繋げ、技術の持続的成長を目指します。

 

(2) 体制

当社では、基盤技術研究所と生産技術研究所を中核として、独創性に優れた先行技術の研究開発を行っています。

研究所では基礎研究や要素技術開発を、各事業の技術部門は新製品および性能向上や低コスト化など商品力向上のための開発を担うとともに、全社を横断して研究所と各事業技術部門が一体となったプロジェクト活動も推進しています。また、研究開発からモノづくりまでを無駄なく連続的に、スムーズかつタイムリーに実施していくために、長期的な環境変化とそれに伴う社会ニーズや顧客ニーズの調査、分析、予測に基づいた将来技術のあるべき姿とそこに向けた持続的成長戦略を、ロードマップとして明確に定め、活動を進めています。また、欧州技術者駐在員事務所(欧州テクニカルセンターと同敷地内)を活用し、自動車、油圧機器を問わず、欧州地区をはじめとする世界の最先端情報を収集し、技術トレンドの把握と社内の研究開発テーマへのブレークダウンを行っています。

工機センターでは、先進性に溢れた信頼性の高い設備や金型の内製化に取り組んでおり、生産技術研究所で開発された新しい工法や各工場で培われたノウハウの具現化を推進しています。各部門でAIやIoTなどのデジタル技術の全社的活用・推進を行っています。

一方で、従来からの研究開発および製品化に向けた体制に加え、新しい時代に対応するための取組みも進めております。

まず、持続的成長のための商品開発として、EV化や自動化に対応すべく当社のコア技術である振動制御・パワー制御と電子制御、センサ、電動機・インバータ等の技術を高度に融合させ、EV、建機、産業用車両の安全・快適性能の追求、エネルギー消費低減、自動運転へ貢献する製品の開発を進めております。また収益力強化としてShip’30活動としてデジタル技術を軸にしたカヤバ生産方式の追究と進化による次世代革新工場を目指し、生産工程・設備管理革新のためのデジタル技術やAI技術の研究開発も進めております。

製品開発や新サービスの展開、生産工程・設備管理革新により、今まで以上にお客様に安心してお使いいただける製品のご提供を目指していきます。

当社グループの関係会社は、主に自動車機器・油圧機器・電子機器の製造販売および製品の改良開発を行っています。そして、課題の解決にあたっては、当社の研究所をはじめとする機能部門や、各事業の技術・生産・品質部門が支援、協業する体制をとっています。

製品の高機能化やシステム化におきましては、当社独自の取組みは勿論のこと、お客様あるいは関連機器サプライヤーとの共同研究開発を推進するとともに、効率的な研究開発推進のために産学交流による最先端技術開発にも積極的に取り組んでいます。また、昨今、製品機能の高度化・複雑化に対応すると共に、開発効率の向上を図るため、全社的にモデルベース開発(MBD)の推進に取り組んでいます。これにより、開発期間の短縮と共にお客様からのニーズに素早く対応し、ご高評をいただけるように努めていきます。

 

(3) 成果

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は6,110百万円であります。

① AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

四輪車用の油圧緩衝器では、極微低速域における作動時の摩擦力をコントロールしたProsmooth™(プロスムース)が、トヨタ自動車株式会社様のプリウスに採用されたほか、米州拠点への技術展開を図ったことで、北米生産のカローラ/カローラクロスにも採用されました。また、同作動時の油圧力をコントロールしたSwing Valveが、トヨタ自動車株式会社様のLexus RXおよびGRカローラに採用されるなど、お客様が求める上質で滑らかな走りと乗心地を提供するこれらの製品は、引き続きご好評を頂きながら採用を拡大しております。また、緩衝器を構成する一部の樹脂部品に対して、製造時に排出される端材を再利用するリサイクル材の適用を実現し、環境に配慮した取り組みを開始しています。電動化・自動運転化に向けては、比例ソレノイド(連結子会社である株式会社タカコと共同開発による内製)を搭載した電子制御減衰力調整式ショックアブソーバを含む付加価値製品の採用拡大を図ると共に、更なる快適性と安全性の追求に向け技術提案および新製品展開を進め、持続可能なモビリティ社会への貢献を果たしてまいります。

欧州テクニカルセンターでは、電子制御減衰力調整式ショックアブソーバを制御ソフト含め、システムで開発しています。更なる性能向上のためシステム最適化を行い、第13回ミュンヘンシャシーシンポジウム(Chassis. tech plus 2022)にて発表を行いました。自動車メーカ様だけでなくサプライヤー様にも高評価を頂き、多くの問合せを頂いております。また、欧州発信のアイテムとしてショックアブソーバのストロークエンドでの衝撃を油圧力で適切に吸収可能なDHS(Double Hydraulic Stop)は電動化に伴う重量増によるボデー強度や乗り心地への影響を緩和するアイテムとして高い評価を頂いており、Stellantis社様の新たな車両等採用車種が益々拡大しております。引き続き高付加価値製品の開発を通し、各欧州顧客様へのアプローチを推進していきます。

二輪車用の油圧緩衝器では、2022年にヤマハ発動機株式会社様のオフロードレース用車両に開発した新構造手回し式圧側減衰力アジャスタが採用されました。また、海外のお客様であるDucati様の新規アドベンチャーモデルに当社製フロントフォークとリアクッションが採用されました。当社の強みであるオフロード車両向けの実績と技術を評価いただき、車両発表のワールドプレミアで、『当初からオフロードで実績のあるカヤバに依頼することを決めていた』とご紹介いただきました。国内の二輪車レースシーンにおいては、全日本ロードレース選手権(JSB 1000)及び、全日本モトクロス選手権において、当社製のフロントフォークとリアクッションを装着した選手がいずれも総合優勝を収めました。今後も高い技術力でお客様に喜ばれる製品開発を目指します。

四輪車用電動パワーステアリング機器では、連結子会社であるKYBトロンデュール株式会社で生産するコントローラ一体型モータ(PowerPack)をベースに、要求が高まる自動運転やステアバイワイヤに対応可能なステアリングアクチュエータを開発しております。機能失陥後も作動が継続可能な冗長機能を有した次世代PowerPackを採用し、2024年量産開始に向け開発に力を入れています。

四輪用オイルポンプ製品では、これまでのトランスミッション用製品で培った静粛性や効率に優れるベーン式などのポンプ部分とモータを組合せた電動オイルポンプを開発し、お客様へ試作品提供を始めました。需要が増えているe-AxleなどのEV基幹部品へ幅広く供給することを目指し、展示会への出展など幅広く開発・受注活動を推進して参ります。

電動化・自動運転の拡大や様々な情報流通インフラ整備を踏まえ、自社製品の作動状況(情報)を活用する道路モニタリングシステムの開発も進めており、電子制御を始めとしたシステム製品を応用することでCASE/MaaSに向けた新用途・新商品開発を推進しています。

当セグメントにおける研究開発費の金額は4,093百万円であります。

② HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

建設機械市場では、建設労働者不足やSDGsを背景に省人化、生産性向上、CO2削減を目的とした機体の自動化・電動化・遠隔操作・IoT化がトレンドとなっており、油圧機器に対する電子制御化ニーズが高まっています。HC事業では、これに対応する電子制御化油圧機器、センサ類、またシステムの開発を進めています。ミニショベル向けでは、ロードセンシングシステム用ポンプ・コントロールバルブや走行/旋回モータのシリーズ拡大・モデルチェンジ開発を引続き進めており、電子制御化ニーズにも対応したラインナップ拡大を順次図って参ります。今年度は、「3~6tonクラス油圧ショベル用電子制御コントロールバルブ」の開発を完了し量産を開始、操作性の更なる進化、作業効率の向上に貢献する電子制御技術を盛り込んだ製品としてお客様へ提供していきます。また「7~8tonクラス油圧ショベル用走行モータ」の改良モデル(低コスト版)の量産を開始しました。IoTを活用した状態監視製品としては、「シリンダ油漏れ検知システム」の開発を継続しています。油圧機器にセンサ・受信端末を加え、従来の機器単体の「モノ売り」から、「モノ+コト売り」へ向けたシステム製品として、経年劣化等での油漏れを適宜診断・事前予知することで機体の稼働停止ロス予防、ライフサイクルコスト低減、メンテナンス事業の効率化への貢献を目指します。

舞台装置の製品に関しては、過去に納めた舞台装置の性能維持または性能向上を目的とした制御機器の後継機開発を実施しております。

当セグメントにおける研究開発費の金額は1,895百万円であります。

③ 航空機器事業

航空機器事業は、防衛省および民間航空機向けの製品開発を実施しておりますが、事業ポートフォリオの全面的な再検討の結果、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、航空機器事業から撤退することを基本方針として決定し、2022年2月9日に公表いたしました。今後修理を含めたすべての事業を段階的に終了させる予定です。

当セグメントにおける研究開発費の金額は49百万円であります。

④ 特装車両事業及び電子機器等

特装車両事業は、環境対応型(省エネ・低騒音・排ガス削減)電子制御ミキサ車をモデルチェンジしたeミキサⅢの開発を完了し販売を開始しました。機器のメンテナンス時期や現在の車両の状況を通知できる表示機を搭載しています。

また、新たな取り組みとして、キャンピングカーのコンセプトモデルを製作し展示会に出展しました。カヤバのサスペンション技術と油圧技術で、走行性(安全性)と快適性(居室の空間拡張・使いやすさ)を追求したモデルにしています。さらに、安心安全快適を届けられますよう活動を推進してまいります。

当セグメントにおける研究開発費の金額は73百万円であります。