第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社グループは、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、経営理念および以下の基本方針に基づき、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築並びに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に取り組んでまいります。

 

<経営理念>

「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」

1.規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。

2.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。

3.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。

4.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します。

 

<コーポレートガバナンス基本方針>

1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。

2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。

3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。

4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上ならびに収益力および資本効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。

5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の改善に繋げるなど適切な対応に努める。

 

(2) 経営環境

米国・イスラエルとイランの軍事衝突やウクライナ情勢等の不安定な国際情勢、原材料・エネルギー価格高騰、世界各地で発生する自然災害、米国の関税措置等、当社グループを取り巻く経営環境は一層不確実性が高まっております。また、近年著しい進展を見せているAI技術は、人や組織、オペレーションの在り方そのものを抜本的に変える可能性を有し、企業の事業運営の前提条件にも大きな変化をもたらしています。自動車市場においては、カーボンニュートラル実現に向けEVは重要な役割を果たす技術の一つと認識しているものの、その普及状況は地域ごとに差が見られ、政策動向の影響も受けながら、EV市場拡大のスピードにも変化が生じています。さらに、モビリティは社会インフラやデジタル技術との連携を深め、従来の移動手段としての役割を超えた新たな価値創出が求められる段階へと移行しています。建設機械市場においても無人化や省エネ化といったトレンドが広がりつつあります。そのほか、脱炭素化に向けた取り組みをはじめとする地球環境保護に対する社会的要請も一段と高まりを見せており、企業が対応すべき課題も多様化しております。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「KYB GROUP VISION 2035」

当社は2025年に創立90周年を迎えました。2035年には創立100周年という大きな節目を迎えるにあたり、その先も企業発展の基盤となる終わりなき技術・製品開発へのこだわりを通して、社会課題の解決に貢献するとともに持続的な企業価値の向上に挑み続けることを目的として、「KYB GROUP VISION 2035」を策定し、2025年11月に公表いたしました。

当社は、モビリティ・インフラ・リビングにおける安全性と快適性を支える力として、社会に不可欠な存在を目指し、長期ビジョンに「人々の暮らしの未来を支えるパートナー」を掲げるとともに、スローガンとして「夢ある明日をつくる。Inspiring Dreams, Shaping the Future.」を設定しております。

一方で当社はこの10年間、複数の不適切事象を踏まえ、信頼回復に向けた取り組みを進めてまいりました。今後の10年を「成長の10年」と位置づけ、これまでの取り組みを礎に「新たなるカヤバ」の姿を明確に示すとともに、お客様、株主様、お取引先様、従業員をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様と当社の目指す方向性を共有し、着実な成長と企業価値の向上を実現していくことが重要な課題であると認識しております。その実現に向けては、迅速な意思決定と実行が不可欠であると考えております。

 

長期ビジョンの実現に向け、次の3つの挑戦を実践します。

1.事業ポートフォリオの最適化

成長事業・製品への「選択と集中」を通じて事業ポートフォリオの最適化を推進し、付加価値の創出と資本効率の向上を追求する、活力ある企業風土の構築を目指します。

 

2.新規事業創出

コア技術を起点とした独創的な新規事業を創出し、新領域への進出および収益基盤の安定化を目指します。

 

3.モノづくり革新

現場力とデジタル技術を融合したモノづくりの革新に加え、環境および働く人の双方に配慮したモノづくりを推進し、工場の変革を進めます。


 

今後10年間を3回の中期経営計画、「構造改革」「成長加速」「新事業拡大」に区分し、段階的に変革を進めてまいります。2026中期経営計画では、長期ビジョン実現に向けた第一歩として、未来の土台を築くために、事業ポートフォリオの最適化、モノづくり革新、経営インフラ改革に取り組みます。あわせて、新規事業創出に向けた取り組みを着実に進め、2029年度以降の成長に向けた基盤を構築するとともに、自律的に挑戦する企業風土の構築を図ってまいります。2026中期経営計画の遂行にあたり、当社は次の項目を「26中期基本方針」として定め、重点的に取り組んでまいります。

 

「中期基本方針」

1.挑戦する企業風土の構築

人的資本の高度化に向け、人財要件・スキルの可視化を基盤として、ローテーションや経営幹部育成等を通じ、将来を担う人財を計画的に育成するとともに、従業員の主体的な成長を促す仕組みを整備してまいります。また、新規事業では仮説検証の進捗に応じたマイルストーンを設定し、各段階で客観的な評価と投資判断を行う仕組みを整備することで、経営資源の最適配分を図り、新たな収益機会の創出に取り組んでまいります。

 

 

2.事業ポートフォリオの最適化

2026中期経営計画は「構造改革」の期間に位置づけています。成長事業・製品への選択と集中を徹底し、成長性および収益性を踏まえた事業ポートフォリオの最適化を推進することで、資本効率を重視した経営資源配分を進めてまいります。

オートモーティブコンポーネンツ事業(AC事業)では、OEM市場におけるグローバルプレゼンスの再強化に向け、高付加価値製品である高機能コンベンショナルタイプのショックアブソーバについて、四輪・二輪の既存のお客様への拡販に加え、新規のお客様の獲得に向けた受注活動を推進してまいります。また、電子制御ショックアブソーバの拡販に向け、地域・市場特性に応じたラインナップ拡充や、地域別の最適生産ライン構築等、生産・販売・技術が一体となった取り組みを進めてまいります。さらに、成長著しいインド市場においては、2027年度からインド現地でのショックアブソーバ生産開始を予定しております。二輪市場の旺盛な需要に対応するため、既存工場の能力増強を検討するとともに、競争力あるコスト構造の確立と体制整備を進めてまいります。

ハイドロリックコンポーネンツ事業(HC事業)では、市場競争力の強化が必要な「守り」の製品群であるシリンダおよび走行モータについて、徹底した原価低減を継続しつつ、生産拠点の集約等を含む再編の検討を進め、収益基盤の強化を図ってまいります。一方、「攻め」の観点では、AC事業のインド拠点を通じてインド市場での在庫販売を開始し、販売拡大に取り組んでまいります。あわせて、CTL(Compact Track Loader)やマイニング等の商品ラインナップ拡充ならびに新規顧客開拓を推進し、建機ショベルに次ぐ第二の成長の柱の育成を目指してまいります。

特装車両事業では、既存のミキサ車について改良を継続しつつ、EVミキサの市場投入に向けた開発を進めてまいります。また、環境配慮型の電子制御ミキサ車であるeミキサについては、将来のEVミキサにつなげる取り組みとして、拡販を推進してまいります。

 

3.新規事業創出

コア技術を起点とした独創的な新規事業機会の発掘および事業化を加速し、持続的な成長につながる新たな価値創造を推進するため、2026年4月に新事業イノベーション企画部を新設しました。長期ビジョンで掲げる熱マネジメント、スマートマシナリー、レジリエンス、計測ソリューション領域における事業化モデルの確立と実行を推進してまいります。計測ソリューション領域では、油状態診断システムの上市や、スマート道路モニタリングの行政機関向け有償サービス開始等を通じて顧客基盤の拡大を進めてまいります。さらに、社内外からのアイデア募集に加え、M&AやCVCの活用も通じ、顧客価値起点でスピード感のある事業創出を進めてまいります。

 

4.モノづくり革新

現場力とデジタル技術の融合により、生産性と品質の向上を図るとともに、環境および働く人の双方に配慮したモノづくりを推進してまいります。加工から組立まで連続した一貫生産をコンセプトに、生産工程革新による「運搬・在庫・作業・検査・管理」の極少化と、データ連携されたスマート工場の実現により、生産リードタイムの短縮に取り組みます。また、開発から生産準備に至るプロセスにおいては、デジタル技術活用に向けた検証を進め、設計情報と製造情報の連携を強化することで、エンジニアリングチェーンを起点とした開発リードタイム短縮を進めてまいります。環境負荷低減の観点では、2035年のCO₂排出量71%削減(2018年対比)の達成に向け、CO₂排出量削減ロードマップに基づく取り組みを推進するとともに、Scope3の削減目標達成に向けた活動を進めてまいります。

 

5.経営インフラ改革

当社を取り巻く環境は絶えず変化しており、意思決定の迅速化や業務の効率化のための経営管理の高度化が重要な課題と捉えています。基幹システムの刷新と高度化を進め、業務プロセスの標準化・効率化を推進してまいります。また、全社横断でのデータ活用基盤を整備することにより、データに基づく迅速な意思決定体制を構築し、経営の可視性向上および資本効率の向上につながる経営基盤の強化を図ってまいります。

 

<その他>

当社は2025年4月24日に公正取引委員会から下請代金支払遅延等防止法(現:中小受託取引適正化法。以下、「下請法」)に基づく勧告(以下、「本勧告」)を受けました。当社は2025年5月12日開催の取締役会において、本勧告を受けた行為が下請法に違反するものであること、今後、自己のために経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害さないことを決議いたしました。また、当社は本勧告の対象となった下請事業者と個別に協議を行い、当事業年度内に必要な支払いを実施することにより、金銭的な回復措置を講じました。さらに、再発防止に向けた取り組みとして、下請法に関する法令教育を全社員に実施するとともに、社内規程・運用ルールの見直しを行いました。これらの改善措置および再発防止策を取りまとめ、2026年3月25日に公正取引委員会へ改善報告書を提出し、同委員会の承認を受けております。当社は本件を厳粛に受け止め、今後も法令遵守を最優先事項とし、お取引先との継続的かつ誠実なコミュニケーションを通じて、より一層信頼される企業を目指してまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、3年間(2027年3月期~2029年3月期)の2026中期経営計画を策定しております。2026中期経営計画期間における2027年3月期および最終年度の2029年3月期の目標数値は以下のとおりです。

 

2026年3月期実績

2027年3月期目標

2029年3月期目標

売上高

4,815億円

4,890億円

5,140億円

セグメント利益 (注)

294億円

200億円

250億円

セグメント利益率

6.1%

4.1%

4.9%

ROE

12.2%

6.6%

8.1%

 

(注) セグメント利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出したもので、日本基準の営業利益に相当いたします。

 

当社グループは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、重要な経営指標の一つとしてROEを位置付け、その向上を目指して取り組みを進めております。収益力向上については、成長事業・製品への選択と集中により事業ポートフォリオ最適化として、AC事業では、OEM市場におけるグローバルプレゼンスの再強化に向け、高付加価値製品である高機能コンベンショナルタイプのショックアブソーバについて、四輪・二輪の既存のお客様への拡販に加え、新規のお客様の獲得に向けた受注活動を推進してまいります。HC事業では、市場競争力の強化が必要な「守り」の製品群であるシリンダおよび走行モータについて、徹底した原価低減を継続しつつ、生産拠点の集約等を含む再編の検討を進め、収益基盤の強化を図ってまいります。資本効率の向上および財務体質の強化については、政策保有株式の縮減、全社的な棚卸資産や固定資産の圧縮、ならびに自己株式の取得による株主還元の強化を実施してきました。配当性向30%以上を配当方針とし、今後も安定的・継続的な配当の実施を目指してまいります。また、当社グループは、中期経営計画の目標達成と企業価値向上に向け、引き続き資本効率の向上および収益力改善に向けた取り組みを加速させてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

当社グループは、環境・社会課題の解決および持続可能な社会の実現への貢献に向けた取組みを推進しています。経営理念である「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」を根幹とし、創業者から受け継がれてきた独創の精神に立ち返り、豊かな未来の実現に向けて新たな価値創造に取り組んでいます。

気候変動問題への対応としてCO2排出量の削減活動を進めています。削減目標については2024年12月にSBTiへコミットメントレターを提出しており、認証取得を計画しています。地球温暖化の防止および循環型で持続可能な社会の実現に向け、人と地球にやさしい製品の開発に取り組むとともに、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの導入、廃棄物の削減等を進めています。

人権尊重に関する取組みとしては、2025年3月に人権基本方針を制定し、2025年度より人権デュー・ディリジェンスを実施しています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは持続可能な社会の実現へ貢献すべく各種取り組みを推進しており、会社全体を取りまとめる組織として、サステナビリティ企画部が事務局、社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティに関する取り組みを討議の上、取締役会へ3か月に1回報告または上申しております。

取締役会では、社外取締役及び監査役を含めサステナビリティ委員会からの報告または上申を受けてプロセスを監督し、必要に応じた決議を行っております。

また、気候変動や環境保全に関連して業績に影響を与える事項は、上述サステナビリティ委員会に加え、機能部門および事業部門が業務執行状況を報告する「経営報告会」や、安全・環境部による「環境安全監査」等においても監視を行っております。

サステナビリティに関する体制図は、以下のとおりです。


 

(2) リスク管理

会社全般のリスクへの対応については、取締役会の下部組織であるリスク管理委員会において、全社的な対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行い、四半期毎に取締役会へ報告しています。詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

気候変動に関するリスクについては、気候変動課題への対応を事業で推進するチームである事業ESGワーキングチームで、AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業、特装車両事業のそれぞれでTCFDの推奨するシナリオ分析を活用して気候変動リスクや機会の抽出、対応策の検討を実施し、サステナビリティ委員会で討議し、取締役会へ報告しています。また、リスク管理委員会とサステナビリティ委員会は連携しながら活動を行なっております。

 

<気候変動>

(1) 戦略

当社グループは2050年カーボンニュートラル達成を目標として、温室効果ガス排出量削減の活動、製品の環境負荷物質低減のための対策、CO2低排出・省エネルギー製品の開発を行っています。気候変動に関するリスクとその影響から見えるビジネス機会に関しては、受注減や工場の操業が停止する事態に陥ることが重大な財務的影響の定義とし、発生の可能性、影響の大きさ、質的影響で分類し、どのくらいのインパクトがあるかを定義しています。下表に示すシナリオ分析により影響度を評価し、事業戦略や経営計画に反映させていきます。

リスクの分類

特定されたリスク

取組・対応策

物理

急性

気候変動に起因する自然災害の激甚化

2010年7月に東海地区を襲った集中豪雨において、工場の近くを流れる河川が氾濫し被害が生じた。

今後さらに地球温暖化が進むと大型化する台風、高潮などによる水害のリスクが高まることが想定されるとともに、WRIアキダクトでの分析でも一定のリスクがあることが判明している。

過去の大水害被害と将来予測を考慮しつつ、考えられる降水量に対する工場敷地内の浸水防止や排水機能強化に向けた取り組みを計画的に毎年継続で行っている。また、河川水位による移動処置のマニュアル化等、災害発生時に備えた活動を進めている。

長期的にはカーボンニュートラル達成による気候変動対応が必須であり、生産活動におけるCO2排出量(Scope1・2)を指標として目標達成に貢献していく。

移行

規制

温室効果ガス排出削減に関する規制強化

脱炭素へ向けた自動車のEV化が加速する中、ショックアブソーバへは、客先の多様化による要求仕様の多様化や部品のCO2排出量削減、バッテリー搭載による重量増加からの軽量化が、車両の静音化に伴う静音(無音)化への要求などが加速すると想定され、ニーズに応えられない場合、市場から取り残されるリスクがある。

技術戦略として、自動車の次世代プラットフォームへの対応、コア技術である振動制御やパワー制御をより深化させ対応を進めている。特に軽量化に関しては、鋼材のハイテン化、アルミ化、樹脂化などの材料置換や、構造的な軽量化などの技術の追求に取り組んでいる。

製品の製造におけるCO2排出量(Scope1・2)を指標とするとともに、製品のライフサイクルのCO2排出量としてScope3排出量を今後指標として設定していく。

 

 

機会の分類

特定された機会

取組・対応策

製品・

サービス

商品とサービスに対する需要増加に起因する売上増加

自動車、建設機械メーカーの電動化への進展、省エネ、GHG排出削減に貢献する技術や製品・サービスの需要拡大による機会がある。予知保全,予防保全可能な製品・システムの開発による機会がある。

天然由来のベースオイルを使用した環境作動油サステナルブなどの開発を進めるとともに、建設機械や工場設備などの油圧機器の作動油状態をリアルタイムに診断する油状態診断システムのサービス提供を開始した。製品の付加価値を高めることに、より差別化を図り、優位性を確保し消費者に満足していただけるものづくりを目指している。
製品のライフサイクルのCO2排出量としてScope3排出量を今後指標として設定していく。

 

 

 

(2) 指標及び目標

当社グループでは、上記「戦略」において記載した、気候変動について、当社及び連結子会社の生産拠点において次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標 注1

2025年度(実績) 注2

年度

目標値

実績

評価

CO2総排出量(Scope1・2)

2025年度

202,091 tCO2

191,938 tCO2

達成

2030年度

142,652 tCO2

(取組中)

2035年度

82,738 tCO2

(取組中)

2050年度

0 tCO2 カーボンニュートラル

(取組中)

再生可能エネルギー導入率

2025年度

15%

18.8%

達成

 

 

 


 

注1)知多鋼業株式会社の連結子会社化、およびKYB Conmat Pvt. Ltd.の合弁解消により、再計算を実施しました。

注2)2026年度5月末時点の社内算定値です。実排出量については、第三者検証による保証取得をもって確定する予定です。なお確定した実排出量については、当社ウェブサイト(https://www.kyb.co.jp/company/csr/env_climatechange.html)のCO2排出量をご参照ください。なお、当該サイトは2026年11月に更新予定です。

注3)第三者検証による限定的保証(知多鋼業株式会社を除いた保証)を取得し、指摘事項などを反映した信頼性のある実排出量に知多鋼業株式会社を加え、またKYB Conmat Pvt. Ltd.を除外しています。

 

<人的資本>

(1) 戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は次のとおりです。

当社グループでは、「組織をつくるのは人であり、人は組織の財産」という考えのもと、人材を「人財」と表現しています。当社グループの人財戦略においては、人財を企業価値創造の基盤と位置付け、従業員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきと働くことができる環境づくりと個人の資質・スキルの向上によるキャリア自律支援を推進しており、2023年中期経営計画においては全員参加のTQM活動ならびに多様性推進に注力して取り組んできました。

今後は、長期ビジョンにて掲げる2035年のありたい姿の実現を支える人財ビジョン及び組織ビジョンを2026年度中に策定し、各種人財マネジメント施策に反映していくことで、従業員一人ひとりのエンゲージメント向上と人的資本の最大化を進めていきます。

 

①人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

当社グループは、各国の法令、文化、慣習に基づく人事制度のもと、「人財採用」「人財配置」「人財育成」の3つの人事施策が連動して機能することが従業員一人ひとりのエンゲージメント向上に資する重要な取り組みであると考え、個人の成長に繋がる人財戦略の構築を目指します。

ⅰ)人財採用

将来的な生産年齢人口の減少や雇用流動性の高まりが予測される環境において、既存事業の成長や新規事業創出に挑戦できる人財の持続的な確保が重要であるとの考えのもと、将来の中核人財となりうる若手人財および即戦力人財の積極的な採用を進めています。

ⅱ)人財配置

当社グループでは、「人財固定化による内部統制リスク防止」「組織活性化」「後継者育成」の観点から人事ローテーション施策を進めていますが、人財ビジョン策定と併せて求める人財像と人財ポートフォリオの再定義を行い、経営戦略と連動した最適な人財配置を実現するための仕組みを構築していきます。

ⅲ)人財育成

「経営理念(規範、活気、愛、独創)の実現に貢献する人財の育成」に必要な資質とスキルを定め、階層や目的別の教育体系を構築し、個人の資質・スキルの向上ならびにキャリア自律実現に向けた各種人財育成プログラムを従業員に提供しています。また、規範意識教育については、従業員一人ひとりに規範意識が浸透し、風通しの良い職場にするため、内容や教材を毎年ブラッシュアップし、10月の全従業員繰り返し教育や昇格時の研修などを継続して行なっています。

 

②社内環境整備に関する方針

当社グループは、人財戦略を支える基盤として、従業員一人ひとりの価値観を受容・尊重し、働きがいのある職場を創出するとともに、風通しの良い職場風土の構築を目指します。

ⅰ)人権尊重

当社グループで働くすべての人財を尊重し、人権基本方針に基づく人権デューディリジェンスにおける「労働と人権」に関する項目について各国の法令やガイドラインの遵守を担保できるグループ共通の仕組みづくりと定着を目指します。

ⅱ)心身の健康

当社グループは、従業員や家族の健康を重要な経営資源、企業活力の源泉と位置付けた「健康経営」を推進しており、当社では7年連続「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定を取得しています。当社における健康経営の目指す姿である「従業員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮し働きがいを感じられる会社の実現」に向けた施策として、従業員が自律的に健康を管理・改善できるリテラシーの向上、健康診断結果における有所見者を減らす活動(改善活動)と有所見のない従業員が有所見者にならないようにする活動(未然防止活動)の両輪による従業員のこころとからだの健康増進を図っており、実績の継続的なモニタリングによる定量・統計的な検証から更なる改善実施を進めています。

ⅲ)ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループは、多様な人財が心理的安全性を感じ、安心して働ける職場環境のもとで、成長と挑戦を重ねながら個々の能力を発揮できる職場の実現に向けた施策を進めています。具体的な施策として、障がい者雇用においては担当業務領域の拡充と受け入れ職場の拡大等により障がい者雇用率の向上が進んでいます。また、女性活躍推進においては、女性従業員の管理職登用を推進しており、当社における女性の活躍推進の目標値は女性従業員全体に占める管理職の割合を男性従業員全体に占める管理職の割合と同水準まで引き上げることを長期的な目標としています。昨今の管理職登用を志望する従業員の減少に対する意識改革として、同業他社との情報交換会や、2025年度から当社の女性社外取締役や女性社外監査役による講話や意見交換も実施しています。

 

 

 

(2) 指標及び目標

当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。

指標

2024年度実績

2025年度実績

目標

健康経営(※)

有所見者率

65.2%

64.1

2026年3月末まで60.0

喫煙率

30.6%

29.0

2026年3月末まで25.0

肥満該当率

29.3%

29.4

2026年3月末まで27.0

高ストレス者率

17.1%

17.8

2026年3月末まで17.5

睡眠充足率

64.8%

65.4

2026年3月末まで66.0

仕事満足度

59.8%

60.5

2026年3月末まで60.0

女性管理職比率

4.1%

4.3

2029年3月末まで5.0%以上

障がい者雇用率(※)

2.66%

2.88

2029年3月末まで2.90%以上

年次有給休暇取得率(※)

80.3%

84.3

2029年3月末まで80.0%以上

 

 

※健康経営、障がい者雇用率及び年次有給休暇取得率の実績及び目標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、当該指標に関する実績及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) リスク管理の仕組み

① 「リスク管理委員会」について

当社グループでは、経営目的の達成および事業の運営を阻害する可能性のある事象をリスクと定義し、リスク管理に取り組んでおります。また、全社的リスク低減のため、「リスク管理委員会」を取締役会の下部組織として設置しております。リスク管理委員会において、全社的に対策を講じる必要のある重点リスクと責任部署を決定し、各責任部署がリスク管理活動を行っており、大規模災害等のBCPについても同様に活動しています。また、事業リスクに関しては当該リスクを抱える事業部が責任をもって取り扱う一方、リスク管理委員会はモニタリングを行います。

体制については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。

また、リスク管理委員会の構成は、以下のとおりです。

委員長

ESG担当役員

委員

本社機能部署、事業(本)部の責任者

事務局

ESG本部 内部統制部

 

 

② リスク管理の流れ

1年単位でリスク低減活動を行なっております。

11月:リスク抽出

12月~2月:重点リスク選定、委員会審議、取締役会決議

3月:計画策定

4月~:活動

活動状況は、四半期毎に委員会報告および定期的に取締役会、執行役員会へ報告を実施しております。

 

③ リスク評価方法

リスクを、財務、人的被害、操業停止、法令違反、評判などの視点から事業の運営に及ぼす影響度と、発生する可能性から、リスクの大きさを評価しております。

 

 

(2) リスク管理の現状

① 全社リスクの内容と対応状況

2026年度のリスク管理活動では、子会社を含む全拠点から抽出したリスクから、リスクが大きいと評価した以下7件を重点リスクとして選定しております。これらについては、それぞれの責任部署が、年度活動計画を策定し、それに基づいてリスク低減活動を行なっており、活動の進捗や、リスクの状況については、定期的に取締役会、執行役員会へ報告しております。

No.

リスク・概要

方策

1.

品質不正

品質記録の改ざんによる法令および客先合意違反リスク

全拠点に対する品質管理部による品質体制と、品質不正再発防止活動の監査の実施

2.

大規模災害

BCP活動管理不備による操業停止リスク

地震BCP訓練、サイバーBCPインシデント対応訓練

3.

人権問題

ハラスメント管理不備による事業活動鈍化リスク

ハラスメント防止教育、海外拠点ハラスメント相談状況の把握

4.

サイバー攻撃

サイバーセキュリティ管理不備による操業停止リスク

教育訓練、サプライチェーンセキュリティ対策強化、インシデント対応マニュアルの整備、セキュリティレベル共通ガイドライン設定

5.

労働災害

労働災害予防管理不備による人的被害リスク

重点災害発生拠点に対する特別管理および再発防止策の水平展開

6.

火災

火災予防措置管理の不備による操業停止リスク

防火体制の点検、設備・購入品の火災リスク確認

7.

サプライチェーン寸断

大規模災害以外での仕入先理由による供給停止リスク

供給停止が懸念される仕入先を調査し、協議や代替等の対応

 

なお、2025年度に重点リスクであった「人財不足」は、目標としていた採用計画充足率を達成したため、全社的な重点リスク管理活動は完了とし、今後は中長期方針活動として定期的に執行役員会へ報告する活動へ移行しております。

また、2025年度に重点リスクであった「サプライヤーとの適正取引」は、公正取引委員会からの勧告に対する取り組みが完了したこと、改正された取適法(旧 下請法)遵守に向けた対応が完了したことから、全社的な重点リスク管理活動は完了とし、今後は監査部による運用状況の確認を行う活動へ移行しております。

 

各全社リスクの詳細は以下のとおりです。

1.品質不正

品質不正による法令違反やお客様との契約違反は、お客様からの損害賠償請求や是正対応費用などにより、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、品質不正に直結する品質記録の改ざんなどを防止する活動を行っております。具体的には、拠点が自主監査で使用するマニュアルの見直し/改定を行い、拠点自身での発見力強化を行います。また拠点自主監査後の品質管理部による現地又はWeb監査により、品質不正の懸念事項の発見漏れを防ぎ、是正を行うことで品質不正リスクを低減してまいります。

 

2.大規模災害

当社グループでは、地震、火災、風水害での自社生産設備の損傷やサプライヤーチェーンの寸断などによる操業停止の可能性があるため、災害発生時の被害を最小化する活動や災害発生時の復旧訓練の実施など、生産能力早期復旧のための対策をとっております。特に発生の可能性が高いと推測される国内地震を中心に、BCP訓練の実施に取り組み、大規模災害時の操業停止リスクを低減してまいります。

 

3.人権問題

職場でハラスメントが発生した場合、職場環境悪化による生産性低下や人財流出によって事業活動が鈍化し、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、労務訴訟などで賠償請求を受けるリスクもあります。

当社グループでは、いきいきと働くことのできる職場環境の土台づくりの一環として、従業員へのハラスメント防止教育の実施、ハラスメント防止への仕組み・体制を整備し、多様な価値観を尊重する職場づくりをすすめ、ハラスメントによる事業活動の鈍化や労務訴訟リスクを低減してまいります。

 

4.サイバー攻撃

近年の情報システム環境の進化・複雑化に加え、テレワークの普及による従業員の外部からのアクセス機会が増える一方、サイバー攻撃は急増し、複雑・高度化しており、情報セキュリティに係るリスクが高まっています。これらにより、情報漏えいやシステム障害等が発生した場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループ共通のサイバーセキュリティ教育・訓練、サプライチェーンセキュリティ強化、サイバーインシデント対応マニュアルの整備、セキュリティレベル共通ガイドライン設定等を実施することで、グループ全体の防衛力を強化し、サイバー攻撃による操業停止リスクを低減してまいります。

 

5.労働災害

労働災害の発生は、従業員の生命を脅かすだけでなく、是正対応などのために操業停止又は、生産能力が著しく低下する可能性があります。過去に発生した重点災害の再発防止策をグループ内へ水平展開し点検、対策を実施することで、労働災害の人的被害リスクを低減してまいります。

 

6.火災

当社グループの多くの工場では、油の特性を利用した油圧製品の生産を行っており、有機溶剤を使用する塗装設備、作動油・化学薬品等を貯蔵するタンク等が設置されていることから、火災の発生や有害物質が流出する可能性があり、万が一、事故が発生した場合には生産活動が一時的に停止する可能性があります。過去事例を反映した防火体制チェックリストによる点検の実施、防火フォローパトロール、設備仕様・購入品の火災リスク確認にて、火災による操業停止リスクを低減してまいります。

 

7.サプライチェーン寸断

当社グループのサプライチェーンには、後継者不足、設備老朽化などによる廃業、事業撤退が懸念される仕入先があります。予期せず仕入先からの部品供給が停止した場合、一時的に生産活動が停滞し、事業継続に影響する可能性があります。仕入先の状況を注視し、コミュニケーションを深めるとともに、懸念仕入先とは丁寧な協議を行うも、供給継続が困難な際は仕入先変更等の代替手段により供給停止リスクを低減してまいります。

 

② 各事業の個別リスクの内容と対応状況

全拠点から抽出したリスクのうち、各事業や各拠点で個別に対応するリスクについてはリスク管理委員会の活動に依らず、各事業等で対応しており、以下のものがあります。これらは、2026中期および2026年度方針に掲げ、各事業等の日常の管理活動の中でリスク低減活動を実施しております。その進捗については経営報告会等の会議体を通じて定期的に報告されております。

リスク分類

リスク項目

方策

生産・販売

数量減少

需要動向

グローバルでの情報収集・分析

生産活動の停止

品質リスク

品質不良の発生

品質経営を基盤とした品質管理体制強化

価格リスク

製品販売価格の価格競争等

高品質・高付加価値製品の提供等

原材料・部品等の調達価格上昇

複数購買の実施・適正価格での調達

財務リスク

資金調達

金融市場の動向を注視

為替相場の変動

グローバルでの生産拠点の配置等

金利上昇リスク

固定金利での調達

その他

得意先の信用リスク

与信管理や取引先との関係強化等

重要な訴訟等の発生

国内外の弁護士と連携

 

 

上記のリスクに関する詳細は以下のとおりです。

1.需要動向・生産活動停止

当社グループのAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業およびHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業の主要製品は自動車、二輪車、建設機械および産業車両メーカー等(以下、お客様といいます)へ供給する組付用部品であり、世界的な自動車生産台数や建設機械生産台数の動向に大きく左右されます。当社は海外売上高比率が60%を超え、グローバルな供給体制を構築しておりますが、各市場における景気悪化を背景とした自動車および建設機械需要の減退等が生じた場合には、これらの事業の収益性に大きな影響を与える可能性があります。

また、国際情勢は急速に変化しており、ロシアによるウクライナ侵攻に加え、米国・イスラエルとイランとの間で軍事衝突が発生しております。このような地政学リスクの高まりを受け、当該地域を中心に生産・販売活動の停止、あるいは事業撤退等が生じた場合には、当社グループの事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。さらに、原油等の原材料における供給制約や供給正常化の遅れにより、原材料価格の上昇や、サプライチェーンの停滞が発生し、お客様および当社の生産調整や生産稼働の停止が生じた場合には、当社グループの収益性に重大な影響を及ぼす可能性があります。

加えて、米国における関税措置を背景とした生産体制の見直し、世界経済の減速、更には他国による報復措置等に起因する通商リスクが顕在化した場合には、当社グループの収益性や生産活動に影響を及ぼす可能性があります。

2022年に撤退を表明した航空機器事業については、お客様等との調整を進め、ご迷惑をおかけすることの無いよう適切な管理に努めているものの、その過程において予見し得ない費用や損失が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特装車両事業において、特にコンクリートミキサ車を主力とする特装車両については、景気動向と相関性の高い建設工事量の増減により需要が変動する可能性があります。

当社グループは、これらのリスクに対し、グローバルに情報収集および分析を行い、状況に応じた対応をしております。

 

2.品質不良の発生

品質に関しては、自動車では操縦安定性を支えるショックアブソーバや操舵力を補助するパワーステアリング等の重要な部品を供給しており、建設機械・産業車両等では母機を駆動させるコントロールバルブ、ポンプ、シリンダ、モータ等の主要な機能部品を供給しております。また、特装車両事業部ではコンクリートミキサ車などの特装車両をお客様へ納入しております。仮に当社グループが供給した製品に品質不良が発生した場合、その損害賠償をお客様から求められる等で多額の費用が発生する可能性があります。当社グループでは、品質経営を基盤に品質管理体制強化など品質向上を継続して追求し、品質不良発生の未然防止に努めております。また、グループ全体での不正防止活動への取組やコンプライアンス教育を通じ、問題が発生した際には対応が迅速且つ確実に行われるよう体制を整備しています。

 

3.製品販売価格

価格に関しては、国内・海外市場共に熾烈な価格競争にさらされており、お客様からのコスト低減、価格引下げ要請が常に存在します。当社グループでは、高品質・高付加価値製品を提供することによる競争優位を目指すと共に、生産性向上などを通じた継続的な原価低減によるコスト競争力向上に努めております。その一方で人件費は上昇を続けており、適正に価格の見直しを実施してまいります。

 

4.原材料・部品等の調達価格

当社グループは、原材料、構成部品等を多数の仕入先から購入しておりますが、調達する原材料等は国際商品市況や為替等の影響を大きく受けます。複数購買の実施や購買機能の集約等による原価低減を図っておりますが、原材料等の価格上昇を当社の販売価格に十分に反映出来ない場合、あるいは、販売価格引下げを原材料および構成部品価格に十分に反映出来ない場合、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

5.資金調達

当社グループは、主に国内外の金融機関等より設備資金ならびに運転資金の調達を実施しております。金融市場の動向には十分留意しておりますが、全般的な市況および景気の後退、金融収縮、当社グループの信用力の低下等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性もあります。その結果、当社グループの財政状況や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

6.為替相場変動・金利上昇

当社グループは、海外売上高が61.8%と海外市場に大きく依存しているため日本からの輸出はもとより在外関係会社の経営成績等も為替の影響を大きく受けます。このような為替変動リスクに対してはグローバルな生産拠点の配置や為替予約等によりリスクの軽減を図っておりますが、想定を超えた為替相場の変動は、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは有利子負債を有しており、固定金利での調達により金利変動リスクの軽減に努めておりますが、日本および海外における将来の金利上昇は、経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

7.得意先の信用リスク

当社グループは、自動車、トラック並びに建設機械メーカー各社様や系列販売会社様をはじめ多くのお客様と取引を行っております。取引先の予期せぬ信用リスクにより、経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、取引先の信用リスクについては細心の注意を払い、与信管理や取引先との関係強化等を通じてリスク管理を行っています。

 

8.重要な訴訟等の発生

当社グループを相手とした訴訟が起こされ、当社の主張と相違する結果となった場合には、その請求内容等によっては、当社グループの経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応しております。

 

③ 建築物用免振・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について

当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)は、建築物用の免震・制振部材としてオイルダンパーを製造・販売してまいりましたが、その一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実(以下、「本件」といいます。)が判明し、国土交通省に報告を行うとともに、対応状況について、2018年10月16日に公表いたしました。(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。

本問題に関する再発防止策および対応については、以下の当社ホームページ上で公表しておりますのでご参照ください。

なお、2022年3月末時点で、再発防止策の具体策全67項目の内、全項目を「完了」しており、引き続きその維持・定着の取り組みを継続しております。

再発防止策の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/prevent.html

対応の進捗状況:https://www.kyb.co.jp/company/progress/exchange_progress.html

本件に関し、現時点において収集可能な情報、及びその情報が合理的な事実に基づくものであると判断された免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等について、製品保証引当金を計上しております。

なお、本件に関連して訴訟を提起されている案件もありますが、一部案件においては追加費用の発生なく終了し、またその他案件の訴訟手続きも進んでおり、現時点においては経済的便益の流出の可能性は低下していると判断しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(百万円未満四捨五入)

 

売上高

(百万円)

セグメント利益

(百万円)

営業利益

(百万円)

税引前利益

(百万円)

親会社の所有者に

帰属する当期利益(百万円)

2026年3月

481,529

29,385

34,932

34,928

29,036

2025年3月

438,316

19,825

22,671

21,989

14,899

増減

43,213

9,560

12,261

12,939

14,137

増減率(%)

9.9

48.2

54.1

58.8

94.9

 

 

当連結会計年度における世界経済は、インフレ圧力の緩和や主要国での金融政策の効果もあり底堅さが見られたものの、中東情勢の緊迫化などの地政学的リスクの高まりにより、先行き不透明な状況が継続しました。

こうした中、わが国経済は、堅調な設備投資に加え、輸出も総じて増勢を維持したことから、緩やかな回復傾向で推移しました。一方で、米国の政策動向や中東情勢を巡る不透明感などにより、先行きを見通しづらい状況が続きました。

当社グループの事業につきましては、自動車向け製品において需要が底堅く、生産は堅調に推移しました。また建設機械向け製品においては、米国関税政策の影響を受けたものの、当初想定を上回る出荷となり、各事業の業績は堅調に推移しました。

このような環境のもと、当社グループの売上高は4,815億円と、前連結会計年度に比べ432億円の増収となりました。営業利益につきましては売上高が堅調に推移したことに加え、知多鋼業株式会社の完全子会社化に伴う負ののれん発生益を認識したこと等により349億円前連結会計年度営業利益227億円)、税引前利益は349億円前連結会計年度税引前利益220億円)となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は290億円前連結会計年度親会社の所有者に帰属する当期利益149億円)となりました。

 

(建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程等における不適切行為の影響について)

2019年3月期において、当社及び当社の子会社であったカヤバシステムマシナリー株式会社(当該子会社は2021年7月1日をもって当社を存続会社とした吸収合併により解散しております)にて、製造・販売してきた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準(※)に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品(以下、「不適合品」といいます。)を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。

(※)制振用オイルダンパーについては、大臣認定制度はありません。

当連結会計年度においては、2026年3月31日時点で交換が未完了の不適合品及び性能不明品(性能検査記録のデータ書き換え有無が確認できないもの)の全数(免震用オイルダンパー50本、制振用オイルダンパー11本の合計61本)並びに関連する物件を対象として、交換用免震・制振用オイルダンパーの交換工事に要する費用及び営業補償等を製品保証引当金に計上しており、当該製品保証引当金の当連結会計年度末の残高は15億円であります。

 

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

また、各セグメントにおける製品別売上高については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 22.売上高」をご参照ください。

 

(a) AC事業

当セグメントは、四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器とその他製品から構成されております。四輪車用油圧緩衝器は、国内及び欧米でのOEM製品の販売増加等により、売上高は2,546億円前連結会計年度に比べ11.7%の増収となりました。二輪車用油圧緩衝器は、国内及び欧州向け製品の受注が好調だったことにより、売上高は510億円前連結会計年度に比べ16.6%の増収となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は3,441億円前連結会計年度に比べ11.8%の増収となり、セグメント利益は234億円前連結会計年度に比べ62億円の増益となりました。

 

(b) HC事業

当セグメントは、産業用油圧機器、システム製品、その他製品から構成されております。建設機械向けを主とする産業用油圧機器は、建設機械の輸出が欧米向けを主として比較的堅調に推移したことから、売上高は1,126億円前連結会計年度に比べ5.8%の増収となりました。

以上の結果、当セグメントの売上高は1,239億円前連結会計年度に比べ6.6%の増収となり、セグメント利益は45億円前連結会計年度に比べ27億円の増益となりました。

 

(c) 航空機器事業

当セグメントは、航空機器用油圧機器から構成されております。当セグメントは、販売製品の構成が変動したことに伴い、売上高は67億円前連結会計年度に比べ82.7%の増収となり、セグメント利益は4億円前連結会計年度に比べ8億円の増益となりました。

 

(d) 特装車両事業及びその他

当セグメントは、特装車両等から構成されております。コンクリートミキサ車を主とする特装車両において、前連結会計年度にインドから事業撤退したことに伴い、当セグメントの売上高は69億円前連結会計年度に比べ36.6%の減収となり、セグメント利益は11億円前連結会計年度に比べ2億円の減益となりました。

(百万円未満四捨五入)

 

資産合計

(百万円)

負債合計

(百万円)

資本合計

(百万円)

親会社の所有者

に帰属する持分

(百万円)

親会社所有者

帰属持分比率

(%)

2026年3月

493,726

233,822

259,904

249,785

50.6

2025年3月

463,112

228,089

235,023

225,537

48.7

増減

30,614

5,733

24,881

24,248

1.9

増減率(%)

6.6

2.5

10.6

10.8

 

 

流動資産は、子会社株式取得のための預託金等のその他の流動資産が減少したものの、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の増加等により179億円増加しました。また、非流動資産につきましては、企業結合により有形固定資産が増加したことや、持分法で会計処理されている投資が増加したこと等により127億円増加しました。この結果、総資産は306億円増加し、4,937億円となりました。

負債につきましては、営業債務及びその他の債務等が減少したものの、社債及び借入金が増加したことにより、負債総額は57億円増加し、2,338億円となりました。

資本は、自己株式の取得があった一方、当期利益に伴う利益剰余金の増加や為替影響等によるその他の資本の構成要素の増加により、249億円増加し、2,599億円となりました。

親会社所有者帰属持分比率は、資本が増加したことから50.6%と前連結会計年度末に比べ1.9ポイント好転しました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

(百万円未満四捨五入)

 

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

現金及び現金同等物

期末残高

(百万円)

2026年3月

19,506

△6,616

△12,320

50,176

2025年3月

43,847

△34,133

△9,099

47,428

増減

△24,341

27,517

△3,221

2,747

増減率(%)

△55.5

△80.6

35.4

5.8

 

 

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせて129億円の資金流入、また財務活動によるキャッシュ・フローは123億円の資金流出となり、為替換算により22億円増加した結果、現金及び現金同等物は前連結会計年度末比27億円増加し、502億円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により当連結会計年度は195億円の資金流入(前連結会計年度比243億円の減少)となりました。これは主に税引前利益349億円、減価償却費及び償却費194億円、営業債権及びその他の債権の増加額106億円、営業債務及びその他の債務の減少額169億円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は66億円(前連結会計年度比275億円の支出減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出223億円、その他の金融資産の売却による収入91億円、連結範囲の変更を伴う子会社株式取得による収入89億円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により流出した資金は123億円(前連結会計年度は91億円の支出)となりました。主な流出は、自己株式の取得による支出125億円や配当金の支払額71億円です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
(a) 生産実績

当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

353,124

15.6

HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

124,674

8.3

航空機器事業

1,217

△77.2

報告セグメント計

479,014

12.5

特装車両事業及びその他

6,933

△28.0

合計

485,947

11.6

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

 

(b) 受注実績

四輪車用・二輪車用油圧緩衝器およびベーンポンプ・パワーステアリング製品を主とするAC(オートモーティブコンポーネンツ)事業、建設機械向け産業用油圧機器およびシステム製品を主とするHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業は、見込み生産を行っております。航空機用離着陸装置、操舵装置等を主とする航空機器事業についても、一部製品においても正式受注が納期間際であることから、その殆どが内示に基づく見込み生産となっております。

特装車両事業及びその他についても、同様にその殆どが内示に基づく見込み生産となっております。従って、受注高および受注残高を算出することは困難であることから、記載を省略しております。

 

(c) 販売実績

当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

344,066

11.8

HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

123,869

6.6

航空機器事業

6,721

82.7

報告セグメント計

474,657

11.0

特装車両事業及びその他

6,873

△36.6

合計

481,529

9.9

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車株式会社

48,589

11.1

50,427

10.5

 

(注)上記金額には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要性がある会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記事項 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は前連結会計年度比9.9%増加4,815億円、セグメント利益は前連結会計年度比48.2%増加294億円、営業利益は前連結会計年度比54.1%増加349億円となりました。前連結会計年度比、自動車向けOEM製品および建設機械向け製品の販売増や知多鋼業株式会社の連結子会社化により増収、販売増や米国の生産性改善によるコスト低減、知多鋼業株式会社取得による負ののれん発生益計上により増益となりました。 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。また、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

当社グループは幅広い製品群の事業を展開しており、各事業及びその製品群のポートフォリオ評価や計画に対する進捗や見通しを把握するため、売上高、セグメント利益及びセグメント利益率、また後述の通りROEの分析を重視しております。

2023中期経営計画における、経営上の目標とした指標とその実績は以下の通りになります。

 

2026年3月期目標

2026年3月期実績

売上高

4,700億円

4,815億円

セグメント利益

380億円

294億円

セグメント利益率

8.1%

6.1%

自己資本比率

45.0%

50.6%

ROE

12.0%

12.2%

 

 

当期は2023中期経営計画最終年度にあたります。2025年度目標として、売上高4,700億円、セグメント利益率8.1%とあわせ、品質経営を進める中で資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を進めるべく、ROE12.0%を定めています。

東京証券取引所からの要請である「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」も踏まえ、収益力向上については、電子制御ショックアブソーバの量産拡大、塗装・部品溶接・組立・検査工程を集約・自動化した革新ラインの導入、高価格帯ショックアブソーバであるプレミアム市販製品の販売開始、HC事業における構造改革としての油圧ショベル向け製品群別戦略の推進、重要な取引先であった知多鋼業株式会社の公開買付けを通じた完全子会社化等、改善を進めてまいりました。資本効率の向上および財務体質の強化については、政策保有株式の縮減、全社的な棚卸資産や固定資産の圧縮、ならびに自己株式の取得による株主還元の強化を実施してまいりました。配当については、連結配当性向30%以上を目安に安定的かつ継続的な株主還元を行うことを基本方針としております。当期において1株当たり配当金の増額を実施いたしましたが、負ののれん発生益の計上により連結配当性向は24.7%となりました。なお負ののれん発生益を除いた場合の連結配当性向は31.6%となり、方針に沿った水準を確保しております。今後も安定的かつ継続的な配当の実施に努めてまいります。さらに、株式会社格付投資情報センター(R&I)による、債務履行能力を示す格付けがBBB+からA-に格上げされ、当社の収益力および財務の健全性については一定の評価をいただいております。これにより、財務の安定性は着実に向上しているものと認識しております。2035年に迎える創立100周年、そしてその先の未来においても、持続可能な企業として社会に貢献し続けるために、持続的な成長と企業価値向上を目指していきます。

 

また、当社グループの資金需要、資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりです。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、鋼材等の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、社債の発行および金融機関からの長期借入を基本としております。本連結会計年度におきましては、運転資金及び設備投資等のため借入及び社債の発行を行いました。当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は1,215億円となっております。

また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は502億円となっております。

 

5 【重要な契約等】

当社は、2021年5月13日開催の当社取締役会において、第三者割当の方法によりA種優先株式(以下、「本優先株式」という。)を発行することを決議し、2021年5月13日付で当社及び本優先株式割当先との間で株式引受契約(以下、「本引受契約」という。)を締結しました。なお、2026年4月8日開催の当社取締役会の決議により、2026年6月29日付で当社定款第10条の6の規定に基づき本優先株式の全部を取得し、会社法第178条の規定に基づき本優先株式の消却を行う予定です。

 

(1)当該契約の概要

契約を締結した年月日

2021年5月13日

契約の相手方、住所

株式会社みずほ銀行

東京都千代田区大手町一丁目5番5号

株式会社日本政策投資銀行

東京都千代田区大手町一丁目9番6号

明治安田生命保険相互会社

東京都千代田区丸の内二丁目1番1号

株式会社大垣共立銀行

岐阜県大垣市郭町三丁目98番地

株式会社七十七銀行

宮城県仙台市青葉区中央三丁目3番20号

損害保険ジャパン株式会社

東京都新宿区西新宿一丁目26番1号

芙蓉総合リース株式会社

東京都千代田区麹町五丁目1番1号

みずほリース株式会社

東京都港区虎ノ門二丁目2番3号

契約内容

A種優先株式の発行及び引受(発行価額125億円)

合意の内容

事前承諾事項

当社は、引受人の多数(参加割合の合計が50.1%以上を占める一又は複数の割当先をいい、以下、「多数引受人」といいます。)が書面により事前に承諾しない限り、(1)会社法及び定款上、当社の株主総会における特別決議が必要とされている事項(A種優先株式に関する規定の新設等に係る定款の一部変更及び軽微な変更を除く定款変更、並びに、合併、会社分割、事業の譲渡、事業の譲受け、株式交換、株式移転、組織変更その他の組織再編行為を含みます。)、(2)事業の全部又は重要な一部の譲渡又は譲受け、(3)一定の子会社又は関連会社の異動を伴う株式及び新株予約権の取得、(4)一定の子会社又は関連会社の異動を伴う株式及び新株予約権の譲渡等、(5)現金の交付を伴う株式併合又は株式分割、(6)解散、倒産手続開始の申立等、(7)自己株式の取得、(8)単元株式数の変更、(9)資本金又は資本準備金の増加、(10)普通株式を保有する株主に対する一定の配当、(11)債務負担行為等、(12)投機目的のデリバティブ取引、(13)一定の担保提供行為、(14)事業計画の重要な変更等、(15)本第三者割当の前提となった会社法上の決議の変更等、(16)一定の重要な会計方針の変更、(17)A種優先株式の経済的価値又は当社等の支払能力に重大な悪影響等を及ぼすと合理的に見込まれる行為等を行うことはできません。但し、多数引受人は不合理に承諾につき遅延、留保又は拒絶しないことについて合意しております

その他

普通株式を対価とする取得請求権及び金銭を対価とする取得条項に関する規定が設けられております。但し、普通株式を対価とする取得請求権は割当予定先との間で取得請求の行使条件に合意しており、本引受契約上の義務の違反又は表明保証条項の違反(但し、義務の違反に関しては、重大な義務違反に限ります。)に該当しない限り行使できない設計となっているため、かかる事由が生じない限り、普通株式1株当たりの持ち分の希薄化は生じません。また、議決権を有しておらず、譲渡を行う場合には当社取締役会の承認を要します。詳細については「第4 提出会社の状況 1株式等の状況 (1)株式の総数等 ②発行済株式」の記載をご参照ください。

 

 

(2)当該合意の目的、意思決定に至る過程及び企業統治に及ぼす影響

当社は、①2018年10月16日に公表いたしました当社及び当社の子会社が製造した建築物用免震・制振用オイルダンパーの検査工程における不適切行為に係る関連損失、②2020年1月24日に公表いたしました防衛省に対する不適切行為に関連する返納金等、③世界的な新型コロナウイルス感染症を契機とした2020年3月期の減損損失及び繰延税金資産の取崩し等を主要因として、資本の大幅な減少が生じました。一方、大変革期にある事業環境の中で安定的かつ成長性を有する事業基盤を実現するためには、戦略的な設備投資及び研究開発投資を継続的に実行し、一層の拠点戦略の進捗及び製品の性能向上とシステム化を図っていく必要があります。これらに対応すべく、資本増強による安定的な財務基盤への回帰と中長期の事業環境を見据えた設備投資及び研究開発への資金投下に資する資本調達手法、具体的な商品設計等について検討を重ねてまいりました。当社を取り巻く経営環境を理解した上で中長期的に支援いただける投資家の選定、投資家への第三者割当に関する検討依頼、デュー・ディリジェンスの実施、商品設計等の最終協議を経て、当社は本第三者割当による種類株式の発行について決定し、本引受契約及び合意を締結いたしました。なお、引受人は当社の主要取引金融機関が中心であり、当社の事業目的、経営方針及び当社事業の強み等について深く理解し、一時的に悪化した財務基盤を早期に安定的な水準まで回復させ、中長期の事業環境を見据えた事業設備及び研究開発による成長投資資金を確保するという本第三者割当の主旨にもご賛同いただいております。引受人は不合理に承諾につき遅延、留保又は拒絶しないことに合意していることからも、当社の企業統治に及ぼす影響は軽微と考えております。
 

 

 

6 【研究開発活動】

(1) 目的

当社は、「人々の暮らしの未来を支えるパートナー」という長期ビジョンの実現に向け、創業以来培ってきた油圧技術、振動制御技術、パワー制御技術に電子制御技術を融合したコア技術を進化させ、モビリティ・インフラ・リビング分野における安全性・快適性の向上に貢献する研究開発活動を推進しております。

2026年度を起点とする中期経営フェーズにおいては、「事業ポートフォリオの最適化」「新規事業創出」「モノづくり革新」を三本柱とし、既存事業における競争力強化とともに、コア技術を起点とした独創的な新規事業の創出を加速させる研究開発を行ってまいります。

具体的には、電動化・自動化・知能化が進展する市場環境に対応するため、現行製品の高性能化・高付加価値化に加え、システム化・電子制御化への対応、さらには軽量化、省エネルギー、CO2排出量削減など環境負荷低減に資する技術・製品の開発を推進しております。また、社会インフラの高度化・レジリエンス強化に貢献する製品・システムの開発にも注力し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

あわせて、新規事業創出に向け、電子システム分野をはじめとする先行開発機能を強化し、将来の事業の柱となる製品・サービスの事業化を見据えた研究開発に取り組むことで、企業価値の持続的向上を目指しております。

 

(2) 体制

当社の研究開発体制は、先行技術・基盤技術を担う研究部門と、各事業本部における商品開発部門が緊密に連携する体制を基本としております。

2026年4月1日付の組織変更により、技術本部傘下の基盤技術研究所は「先進技術研究所」として再編され、事業領域との連携を一層強化するとともに、将来の事業化を見据えた先行技術・システム技術の研究開発を推進しております。

また、生産技術研究所は生産本部へ移管し、研究開発から生産、製品化までを一体で捉えたモノづくり革新を実現する体制へと移行しております。

各事業本部(AC事業本部、HC事業本部)においては、営業、調達部門の再編により、市場・製品軸での意思決定を迅速化し、事業部門が研究所と連携しながら、新製品開発、性能向上、コスト競争力強化に取り組んでおります。

さらに、事業部門と研究所が横断的に参画するプロジェクト活動を通じ、開発スピードの向上と価値創出力の強化を図っております。

新規事業領域においては、経営企画本部傘下に新設した「新事業イノベーション企画部」が中心となり、研究所と連携しながら事業機会の探索および事業化検討を推進するとともに、「電子開発本部」の設置により、電子制御・エレクトロニクス領域における先行開発体制を強化しております。

加えて、産学連携や他社との協業、モデルベース開発(MBD)やAI・デジタル技術活用の全社的推進、欧州テクニカルセンターを通じた先端技術情報も活用することで研究開発効率の向上とグローバル競争力の強化を図っております。

 

(3) 成果

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は8,087百万円であります。

① AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業

四輪車用の油圧緩衝器では、電動化・自動運転化が進展する将来を見据え、比例ソレノイドバルブ(連結子会社である株式会社タカコとの共同開発による内製品)を内蔵した減衰力調整式ショックアブソーバの量産を開始しました。本製品は、従来の比例ソレノイドバルブ外付け構造と同様に、優れた操舵応答性と快適な乗り心地を高い次元で両立しており、お客様の求める車両性能向上への寄与が非常に高く評価されています。新たに開発した本構造を付加価値製品ラインナップに加え、車両側の多様な搭載ニーズに対応することでさらなる拡販を図ってまいります。また、アフターマーケット向けには、減衰力調整式ショックアブソーバの技術を応用した電子制御サスペンションシステム「ActRide®」の量産を開始しました。専用アプリをインストールしたスマートフォンを用いることで、走行シーンや好みに応じた「走り」と「乗り心地」の設定を車内から容易に行うことが可能です。本製品は市場から高い関心を得ており、今後のニーズを踏まえながら対応車種の拡充を検討してまいります。さらに、環境配慮型技術として、業界初の生分解性を有する作動油「SustainaLub®(サステナルブ®)」については、量産化に向けた造り込みを継続しています。加えて、将来的な作動油リサイクルの実現に向けた取り組みとして、モータースポーツの過酷な使用環境下で使用・回収した作動油を独自技術により再精製し、再びレース用途として問題なく使用可能であることを確認しており、技術的検証が着実に進展しています。今後も、業界をリードする技術の高度化と付加価値の高い新製品の展開を推進し、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献していきます。

欧州テクニカルセンターでは、電子制御減衰力調整式ショックアブソーバにおいて、制御ソフトを含むシステム開発を行っています。また、欧州顧客向けに2つの減衰力可変機構を持つショックアブソーバの量産化を行い、順次採用モデルを拡大、性能向上開発を継続しております。本製品は、伸び側と縮み側の減衰力を独立に、高速かつ精密な応答で調整可能となっており、お客様に対して、路面状況や好みに合わせて車両挙動を常に最適にコントロールすることで、安全でダイナミックな操縦性とかつてない乗り心地の実現に貢献します。今後さらに、欧州顧客に対するプレゼンスを高め、電動化・自動運転化への対応を進めていきます。

二輪車用の油圧緩衝器では、ストリート用モデル向けリアクッションに、大入力時の吸収性能を大幅に改善できる「Hydraulic Compression Stop」を開発し量産を開始しました。国内の二輪車レースシーンにおいては、全日本ロードレース選手権(JSB1000)及び全日本モトクロス選手権IA2クラスにおいて、当社製のフロントフォークとリアクッションを装着した選手がいずれも総合優勝を収めました。また、モーターサイクル技術を応用し、高い吸収性による走行の安心感や操る喜びを実現した電動アシスト付きマウンテンバイク用フロントフォークを開発し発売しました。今後も様々な製品開発を行い、多岐にわたって高い技術力をお届けします。

四輪車用電動パワーステアリング機器では、2024年より内製生産を開始したPowerPack(コントローラ一体型モータ)製品を拡販すべく、新規車両や派生機種への展開提案を行い、新たな受注を獲得しました。受注活動を継続するとともに、次世代PowerPackの開発にも取り組んでおり、評価を進めております。また、ステアバイワイヤシステムの提供を目指し、海外と日本に配置しているデモカーを活用した先行開発や技術提案を積極的に行っています。

四輪用オイルポンプ製品では、電動オイルポンプを開発し2027年より車載機器向けに量産を開始する予定です。本製品では、これまでにトランスミッション用製品で培ってきた技術を活かし、ポンプ部のラインナップを拡充しました。高圧領域で静粛性と高効率に優れるベーン式に加え、低圧領域で高い商品性を持つ内接ギヤ式を展開し、用途や要求仕様に応じた製品提案を可能としています。本開発を起点として、電動オイルポンプのラインナップを順次拡充し、車載用途に限らないさまざまな用途に対応する製品展開を進めてまいります。

鉄道車両用製品では、新型台湾新幹線「N700ST」に、各種オイルダンパ、空気ばね高さ調整弁、差圧弁、踏面清掃装置が採用されました。また、アクティブ制振制御装置用にも当社のマルチモードアクチュエータ、セミアクティブダンパが採用されています。

2023年より全日本ラリー選手権に参戦を開始したカヤバ社員チームは、2024年からは社員ドライバーを起用した、オールカヤバ社員チームにて挑戦を継続しており、好成績(最高位5位)を獲得、2025年シーズンは全戦完走を達成し、シリーズランキング7位を獲得しました。また、実践を通じたフィードバック開発により、各クラスにおけるカヤバサスペンション装着チームが、シリーズチャンピオン獲得など好成績・高評価を証明頂き、カヤバ製品装着ユーザー拡販に寄与しております。2026年は更なる成長を目指し、引き続き、全日本ラリー選手権の最高峰クラスに挑戦しております。実践で得た技術ノウハウをフィードバックし、新たな商品開発を通じ、人財育成も推進してまいります。

当セグメントにおける研究開発費の金額は6,086百万円であります。

② HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業

HC事業では、コア製品である油圧ポンプ、バルブ、シリンダ、モータのラインナップ拡充や省エネ性能向上、コスト低減といった競争力向上に向けた開発と併行し、自動化・遠隔操作・電動化・IoT化等の将来ニーズに対応する電子制御化、省エネシステム、センシング技術、電動ユニット等の新たな付加価値創造に向けた開発を進めています。ショベル向けでは、小型油圧ショベル向けロードセンシングシステムコントロールバルブKVSX-12C-PSLを開発し、量産化しました。ショベルの自動化・遠隔操作や細かな制御が求められるコントロールバルブの需要に対し、2~4t向けKVSX-12Cを電子制御化したモデルです。従来の農機用から建機用に用途を拡大させ、チューニング性、組立性、メンテナンス性の向上を図り、省エネ、CO2低減の環境ニーズを両立した商品としてご採用頂いています。今後もより大きなクラスのバルブに電子化の展開を計画しています。IoTを活用したシステム製品としては、「油状態診断システム」のサービス提供を開始しました。近年、製造業を始めとする各種産業分野では、設備の老朽化や保全人材の不足、さらにはSDGs・カーボンニュートラルへの対応などを背景に、設備メンテナンスの高度化、効率化が求められています。本システムは、工場設備で使用される油圧機器の作動油状態をカヤバ独自の油状態センサでリアルタイムに検知、クラウド上で分析、作動油・機器の劣化異常を診断し、保守・交換の時期を適切なタイミングで提案します。センサ単体の「モノ売り」に加え、サービスを提供する「コト売り」商品として、機械停止ロスの未然防止、廃油量削減、メンテナンス最適化に貢献します。

当セグメントにおける研究開発費の金額は1,906百万円であります。

③ 航空機器事業

航空機器事業は、事業ポートフォリオの全面的な再検討の結果、経営資源の選択と集中による企業競争力強化を図るべく、2022年2月9日に事業の撤退を公表いたしました。その後、航空機器に関わる製品開発ならびに修理を含めたすべての製販活動を段階的に終了させていきます。そのため当セグメントにおける研究開発費の計上はございません。

④ 特装車両事業及びその他

特装車両事業では、主力製品であるコンクリートミキサ車の国内トップシェアメーカーとして、将来の市場環境に応えた製品開発を積極的に進めています。2026年2月に大型車用ミキサをモデルチェンジしました。高張力鋼板の使用による薄肉化とアルミ材の採用により現行比140kgの軽量化を実現し、輸送効率の向上に貢献しています。

また、2026年3月に発表した小型EV車両のコンセプトモデルでは二酸化炭素排出ゼロ、低騒音化を実現しました。今後も継続した研究開発を進め、量産化を目指してまいります。

ミキサ車業界以外の新規分野へも進出するための製品開発に取り組んでいます。レジャー分野へ進出する第一弾として欧州車をベースにしたキャンピングカー「VILLATOR」を2026年3月より量産を開始しました。現在は、「VILLATOR」で得た技術的知見および市場評価を踏まえ、新たな車両の開発を進めています。今後は、お客様の多様化するライフスタイルや用途ニーズに対応した商品開発を推進し、お客様からご高評いただける製品の開発に努めてまいります。

当セグメントにおける研究開発費の金額は94百万円であります。