当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、信頼される企業として、グローバルな環境の変化に対応し、お客様に魅力ある質の高いクルマとサービスをタイムリーに提供し、企業の存在意義を明確にするコーポレートパーパス「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」を実現することを経営の基本としております。
また、当社は環境保全に対する重要性を認識し、人・社会・自然にやさしいクルマづくりに努め、地域環境の保全と豊かな社会の発展に貢献します。更に、社会で共生できる企業を目指して、地域社会との交流を積極的に行うと同時に、地域の医療・福祉活動や災害の復興などに向けて支援活動を実施しています。これらの方針に基づき、安定的かつ持続的な企業基盤の強化に努めてまいります。
(2)経営環境
2024年度の我が国経済は、コロナ禍から脱し雇用情勢の持ち直しや需要環境の変化により、緩やかに景気回復の基調にあるものの、世界的なエネルギー・原材料価格の高騰や海外景気の下振れなど、当社グループを取り巻く経営環境は引き続き厳しく、予断を許さない状況です。
(3)中期的な会社の経営戦略、優先的に対処すべき課題
当社は、「気候変動への対応の必要性」、「市場のニーズの変化」、「企業に求められる社会的責任の高まり」、「労働人口、従業員の意識の変化」、これらの環境変化を認識し、2023年度に2023-2027中期経営計画をスタートしました。目指す姿を「商用車とプレミアムカー、特装車、サポート事業で社会に貢献し、お客さまから頼られる唯一無二の存在となる」と定め、「持続可能な企業基盤」、「魅力ある商品の創出」、「独自性の進化と深化」の3つを重点課題として取り組んでおります。
「持続可能な企業基盤」
2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みでは、工場やオフィスに設置した電力使用量監視モニターを活用し電力使用量の削減を図ると共に、社用車や工場見学車両のEV化を実施しました。
2025年度は、発電時にCO2を排出しない「グリーン電力」の活用拡大に向けてトライアルを計画しています。
DE&Iの取り組みでは、女性が活躍できる就業環境が評価され「えるぼし認定」の最高位である3段階目(3つ星)を取得しました。
また、近年急増しているサイバー攻撃への備えが重要課題と認識し、デジタル化の推進を加速しながらもサイバー攻撃に備えた対策を強化すると共に、発生を想定した訓練を計画しています。
「魅力ある商品の創出」
2024年度は、新型インフィニティQX80、日産パトロール・アルマーダの3車種のフルモデルチェンジを実施しました。
特装車では、高規格救急車(パラメディック)において、販売会社向けの研修会の開催や、自治体への働きかけ強化などにより過去最高の受注台数を達成しました。また、車中泊シリーズのキャラバンMYROOMに続いて、コンパクトなサイズのNV200バネット MYROOMの生産も開始しました。
「独自性の進化と深化」
湘南工場では、2025年にADの生産終了を予定しており、NV200バネットの単独生産に対応した最適な工程の構築を図っていきます。
日産車体九州株式会社では、2024年度に生産を開始した新型車3車種の高い市場要望に応えるため、さらなる生産性の向上と生産能力を上げる取り組みを進めています。
サービス部品生産業務では、少量生産に対応する工法などの技術開発を推進し事業拡大と収益改善を図っていきます。
2023-2027中期経営計画の折り返しの年に当たり、引き続き当社の強みである開発から生産まで一貫したモノづくり体制を活かし、市場の動向に柔軟に対応できる生産運営の構築、並びに法令遵守やコーポレート・ガバナンス強化に取り組んでいくことで、お客様、株主様、取引先様、地域社会の皆様、そして従業員を含むすべてのステークホルダーの皆様からの信頼を高められるよう、全社一丸となって努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社及び日産車体九州株式会社はサステナビリティに関する事項から、環境・社会・従業員・人権の尊重を経営課題と位置づけ、2023-2027中期経営計画における柱の一つに「持続可能な企業基盤」を掲げております。この「持続可能な企業基盤」では、主に、2050年におけるカーボンニュートラルの実現、誰もが働きがいを持って安心して働くことができる企業・風土の実現に向けた取り組みを推進してまいります。
<ガバナンス>
サステナビリティに関する取組について、適宜、取締役会に報告しております。
<リスク管理>
リスク管理の推進にあたって、取締役社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会を設置し、事業の継続を阻害する事項やステークホルダーの安全・安心を脅かすリスクを早期に発見・特定し、必要な対策を検討・実行することにより、発生の未然防止に努めるとともに、万が一発生した場合の被害の最小化や再発防止に努めています。リスクについては、発生頻度と被害規模からリスクの識別・評価を行い、重大なリスクについてはリスクマネジメント委員会で管理をしています。
(2)環境
当社グループにおける環境への取り組みでは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に基づき、気候変動に関わるガバナンス及びリスクマネジメント体制の構築、気候変動シナリオに基づくリスクと機会・対応策の検討を進めております。今後、認識したリスクと機会への対応策を進捗させ、「持続可能な企業基盤」を実現する取り組みを推進してまいります。
<ガバナンス>
環境委員会を設置し、環境方針や目的・目標の展開、各部環境マネジメント計画の進捗状況確認、環境マネジメントシステムの見直し論議を行い、組織的な環境負荷低減活動を推進しております。環境委員会は環境統括責任者である取締役専務執行役員が委員長を務め、環境委員会の内容は取締役社長が議長を務める執行役員会議で定期的に報告しております。また、取締役会においても環境委員会での論議・決定事項を報告しております。
<戦略、リスクと機会>
事業に影響を及ぼす気候変動のリスクと機会の検討にあたっては、IEAが提示した4℃と2℃シナリオ、及びIPCCの1.5℃特別報告書に基づいた社会を想定しました。認識したリスクと機会については、下表のとおりです。なお、財務への影響については慎重に検討してまいります。
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カテゴリ |
リスクと機会 |
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リスク |
政策と法規制 |
さらなるクルマの燃費/排出ガス規制強化へ対応するための技術開発や生産コストに影響 |
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炭素税の導入・拡大によるエネルギーコストの負担増加 |
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市場変化 |
公共交通機関や自転車、モビリティサービス利用増など消費者の意識変化による新車販売台数の減少 |
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価格高騰 |
環境対応に関連した需要拡大に伴う原材料価格の高騰 |
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異常気象 |
気温上昇に関連した異常気象に伴う工場罹災(操業停止、復旧投資など) |
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気温上昇に関連した異常気象に伴うサプライチェーンの寸断 |
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機会 |
CASEに対応した商品開発による需要拡大 |
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省エネルギー対策への投資拡大によるエネルギーコストの削減 |
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※IEA:International Energy Agency 国際エネルギー機関
IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change 国連気候変動に関する政府間パネル
CASE:Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric
<リスクと機会への対応策>
認識した気候変動リスクの最小化と機会の最大化に向けて、2023-2027中期経営計画では以下の活動に取り組みます。
■ カーボンニュートラルによる地球環境改善及びお客さまのニーズに応える技術の実現
◇ 既存技術アイテムの確実な実行
・ 全照明のLED化推進、省エネルギー設備への更新、エネルギー消費の更なる可視化、
オフィスのエコ化推進、社用車のEV化
◇ クリーンエネルギーの導入
・ 太陽光発電等の再生エネルギー導入
◇ 将来のCASE等の対応に必要な技術開発
◇ お客さまの期待を超える品質の実現
◇ 法規/社会要件への対応
■ 災害への備え・BCP(事業継続計画)
◇ 激甚災害への備え
◇ 部品供給対応
<リスク管理>
気候変動に関連するリスクは、リスクマネジメント委員会や環境委員会、環境マネジメントシステムの運用を通じて、課題や対応策の検討及び進捗を図ります。
<指標と目標>
気候変動に関する目標は、2050年カーボンニュートラル達成を前提とし、2018年度を基点に台当りCO2排出量を2030年までに52%削減することで設定しています。当社及び日産車体九州株式会社におけるスコープ1と2のCO2排出量は以下のとおりです。引き続き、再生エネルギーへの切り替えや、省エネ設備への変更等、優先順位を付けて方策を推進してまいります。
※日産車体㈱の対象事業所:本社・湘南工場、テクノセンター、秦野事業所の3事業所を示す。
(3)人的資本
企業の成長・発展の原動力になるのは従業員です。そこで当社グループでは、従業員を「人材」ではなく「人財」と考えます。働く従業員は何よりの財産と考え、社会や環境、自然と共生できる企業を目指し人財の育成・教育に努めています。また、多様な価値観を持つ人たちがいきいきと活躍することで企業の力を最大限に発揮し持続的な成長を維持することができます。当社及び日産車体九州株式会社では2015年度より「ダイバーシティの促進」を中期経営計画の重点項目に掲げ、「働く人すべてが、その能力を十分に発揮できる会社となること」を基本方針として、育児や介護を行う者だけでなく従業員全員が健やかな生活を送ることでより成果が出せるよう継続して取り組んできました。
2023-2027中期経営計画より「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」へ広げ、多様性だけでなく公平性・受容性をより促進する活動に力を入れていきます。「女性活躍推進」「育児・介護と仕事の両立支援」に加えて、「年齢」「国籍」「性的指向・性自認」など、より多様な価値観・考え方を受容し、従業員全員が働きやすい企業風土づくりを行います。
<ガバナンス、リスク管理>
当社では人的資本に関する重要事項を社長及び専務執行役員からなる会議で論議し、執行役員会議に必要な提案を行い決定しています。ダイバーシティ、女性活躍、長時間労働、休暇取得等に関してはKPIを設定し進捗を確認し、適宜、取締役会にも報告しています。またリソース不足による業務への影響等のリスクと対応については、リスクマネジメント委員会で論議しその結果を取締役会へ報告しています。
<戦略、指標と目標>
「① 女性活躍の推進」及び「④ 健康経営」に記載した内容については、当社グループ会社においてそれぞれ取り組みは行われているものの、連結グループ各社の現況が異なり統一的な指標や目標の設定をしていないため、当社単体または、当社及び日産車体九州株式会社の数値を記載しております。
① 女性活躍の推進
当社グループでは女性活躍推進のための風土づくり、制度設計に精力的に取り組んでいます。女性の新卒採用比率を拡大するとともにキャリアを継続していけるよう就業環境の改善を図っております。さらに管理職登用を促進するためにキャリアプランに基づいた育成に取り組み、当社では2025年3月末時点で全管理職の約6%の女性管理職が活躍しており将来的には10%を目標に女性活躍の推進に取り組んでいます。
当社の2023-2027中期経営計画では「えるぼし」の認定取得に向けた取り組み計画の策定と実践を目標に掲げ、2024年度に「えるぼし認定」の最高位である3段階目(3つ星)を取得しました。認定継続のための取り組み・実践を今後も進めてまいります。さらにキャリア採用の強化やより多様な人財の採用に向けて、新卒採用においても幅広い層への企業PRと雇用へつなげる活動を強化します。
・各種制度の充実・環境の整備
従来からあるフレックス勤務や時短勤務、年次有給休暇の取得促進に加え、育児や介護などの用途に利用可能なファミリーサポート休暇や在宅勤務の導入、出生時育児休職の休暇化などより取得しやすく制度を見直し、仕事と育児・介護の両立支援を行っています。また、技能職場においても女性が活躍できるようにすべく、重量物を持ち上げる負担を軽減する助力装置の採用や自動化も進めています。
出産や育児を経てもキャリアを継続し、パフォーマンスを発揮できる環境を充実させると共に、男性も育児に参加しやすい社内風土を醸成するための教育等を継続して実施しています。2019年4月に社内保育園「キッズきゃらばん」を開園し、子育てをしながらでも働きやすい環境をつくりました。
こうした取り組みを継続するため、DE&Iに関する社内アンケートを実施し、従業員の意見を取り入れ、活動の充実に努めています。今後も定量的にその効果を測っていきます。
(DE&Iに関する社内アンケート結果)
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2024年度アンケート(当社及び日産車体九州㈱) |
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浸透度・肯定回答率 72.7% |
・プラチナくるみん
当社では、2017年5月に次世代育成支援対策推進法第13条に基づく認定、通称「くるみん」認定を平塚市内の従業員300名以上の企業として初めて取得しました。 さらに「くるみん」認定企業のうち、より高い水準の取組を行った企業が受けることのできる「プラチナくるみん」認定を2020年7月以降、継続取得しております。
・えるぼし
当社では、2025年1月に女性活躍推進法に基づく行動計画の策定と届出を行った企業のうち、女性活躍に関する取り組み状況が優良な企業に対して厚生労働大臣が認定する「えるぼし認定」の最高位である3段階目(3つ星)を取得しました。
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項目 |
取組内容 |
2024年度目標 |
2024年度実績 |
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キャリア面談の実施 |
- |
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管理監督者説明会実施 社内報による制度周知 産後パパ育休(休職)の休暇化 |
- |
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毎月の管理職宛通知・取得促進の実施 |
全社平均14日 |
全社平均 |
② 多様な人財の活躍
当社グループでは外国籍従業員や中途採用従業員については管理職登用の数値目標は設定していませんが、「個人の能力や資質に応じた適材適所の配置と登用を行う」という考え方に基づき採用区分や属性によらない管理職登用を行っています。
障がい者雇用においては、当社グループとして法定雇用率を上回る雇用の維持を目標に掲げ、積極的な採用活動を実施しています。新卒採用に加えてハローワークが主催する企業説明会へ参加し、毎年数名の中途採用を行っています。2021年度からは職場環境整備を行うチーム「サンシャイン」を立ち上げ、働きやすい職場づくりに貢献しています。
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項目 |
取組内容 |
2024年度目標 |
2024年度実績 |
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新卒・中途採用 「サンシャイン」の拡大 |
2.70% |
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③ 人財育成
当社グループでは、個々人が成長の度合いに応じて受講できる研修体系を整備し、社会人として必要な基礎的な知識から幅広い視野を持ったマネジメント人財の育成のための研修を行っています。
また、常に改善する風土を醸成することを目的に、技能職場においてはQCサークル活動による製品及び業務プロセスの品質向上を強力に推進し、事務・技術職場においては、課題を可視化し解決する活動や品質機能展開手法を用いたQFD(Quality Function Deployment)活動も進めています。管理職に求められるマネジメント力、ファシリテーション力やデジタルツールを用いて従業員自身がプログラムを作成して業務効率化につなげるためのスキル教育にも力をいれています。
人事評価制度においては従業員の成果・貢献に応じた処遇をすることで、従業員と会社がともに成長していくことを目指しています。さらに、従業員の努力と成果に対しては社内表彰を行い、一層の精励とモチベーション向上を図っています。
④ 健康経営
当社グループでは「健全な心と身体が備わってこそ、人は活き活きと安心して誠実に仕事が出来る」の全社方針の下、産業医、保健師、看護師、社内相談員等の体制を整え、外部専門機関とも連携し、組織的な活動を行い健康保持増進活動に取り組んでいます。
健康診断結果に基づく保健指導をはじめ、食事セミナーなど生活習慣病の予防、ストレスチェック結果に基づく高ストレス職場に対する職場環境改善活動や研修を通じたメンタルヘルス対策等、データに基づく課題の見える化と、心身不調の未然防止活動を継続して行ってきました。これらの活動に毎年PDCAのサイクルを回すことにより、成果を検証し、活動を深化継続していきます。その結果、経済産業省と日本健康会議の「健康経営優良法人~ホワイト500」に当社及び日産車体九州株式会社が認定されています。
[ご参考:健康経営活動]
⑤ 従業員エンゲージメント
当社グループでは、職場の困り事、要望に応える職場環境改善活動を行っています。暑熱対策、トイレ、更衣室、厚生棟、共用エリア、独身寮など多くの要望の中から優先順位をつけて改善に取り組んできました。引続き従業員とのコミュニケーションを密にとり、要望を確認しながら進めていきます。また会社の各種トピックスやSDGsとの繋がり、地域社会貢献、外部大会での受賞結果など従業員の頑張りや誇れる成果をまとめた冊子を作成して配布しています。こうした会社の取り組みを全従業員で共有・理解することで、会社で働く喜びや誇りを感じてほしいという思いを込め作成しており、今後も継続していきます。
(4)人権の尊重
・人権に関する考え方
当社グループは、適用される法律や慣例、企業の規則を遵守することが事業活動を行う上での基本であると考え、すべてのステークホルダーの人権が尊重されること、ならびに従業員が最高の倫理基準に基づいて行動することが不可欠であると認識しています。
当社グループは、人種、国籍、性別、宗教、障がい、年齢、出身、性自認、性的指向、その他の理由に基づくいかなる差別もせず、さらにはサプライチェーンにおける強制労働や児童労働といった人権侵害も容認していません。
・人権に関する取り組み
当社及び日産車体九州株式会社は、日産グループの一員として、すべてのステークホルダーの人権を尊重すべく、以下の行動規範、ガイドラインに基づいた人権に関する取り組みを行っております。
●グローバル行動規範
https://www.nissan-shatai.co.jp/ENVIRONMENT/HUMANRIGHTS/PDF/NISSAN_GCC_J_2401.pdf
●日産取引先サステナビリティガイドライン
https://www.nissan-shatai.co.jp/ENVIRONMENT/HUMANRIGHTS/PDF/Supplier_Sustainability_Guidelines_j.pdf
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外の予見しがたいリスクも存在します。
なお、以下の事項のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループでは、リスクマネジメント委員会にて戦略・事業遂行上でのリスク及び自然災害・新型ウイルス・テロなどによる企業収益や企業活動に重大な影響を及ぼすリスクについて、「発生の未然防止」、「被害の最小化」及び「再発防止」の活動を行っています。
<事業戦略や競争力維持に係るリスク>
(1)親会社との取引
当社グループは、親会社である日産自動車株式会社からの自動車の生産受託など自動車関連の事業セグメントなどにおいて、当連結会計年度の売上高の97.7%を同社に依存しております。そのため、同社の販売戦略や生産体制に関する方針の転換等があった場合には、当社グループの経営方針や財政状態及び経営成績などに大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、親会社の経営方針を勘案し、中期経営計画を策定し、また環境の変化に応じて必要な場合は適宜見直しを行い、策定プロセス及び基本方針を取締役会で確認しております。なお、親会社との主な取引関係は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (関連当事者情報)」に記載しております。
(2)親会社グループにおける競合
当社グループの事業が属する国内自動車生産は、長期で減少傾向であるのに対して、より生産コストの安い新興国や、輸送コストのかからない海外現地工場など、海外に生産を移す動きが現在もなお続いております。そのため、親会社グループにおいても、グローバルでの勝ち残りをかけた競争が続いております。このような環境において、当社グループの自動車関連事業は親会社グループの国内外の生産拠点と競合する場合があります。今後の同社の製品戦略の変更等によって、競合関係に大きな変化が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そこで、当社は強みであるモノづくり一貫体制を更に磨いていくことや、グローバルで必要とされる明確なコア技術を向上させていくことが重要な課題と捉えております。2023-2027中期経営計画では、目指す姿を「商用車とプレミアムカー、特装車、サポート事業で社会に貢献し、お客さまから頼られる唯一無二の存在となる」と定め、「持続可能な企業基盤」、「魅力ある商品の創出」、「独自性の進化と深化」、この3つの重点課題に取り組みます。中期経営計画の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(3)サプライチェーン
前述のように、グローバルでの勝ち残りをかけた競争が続く中、継続的かつ安定・拡大した取引を確保するためには、品質、コスト、納期遵守の高い目標を掲げ、高効率な生産運営を追求しなければなりません。そのため、より高い品質や技術をより競争力ある価格で調達しようとすると、発注が特定のサプライヤーに集中せざるを得ないことがあります。また、特別な技術を要するものについてはそもそも提供できるサプライヤーが限定されることもあります。例えば、世界的な半導体供給のひっ迫が当社の生産計画に対して大きな影響を与えることもあります。当社では、リスクを最小化するため、2次3次以降のサプライヤーを含めた代替サプライヤーの検討、サプライチェーン全体での在庫の確保など、サプライチェーンの見直しと強化に継続的に取り組んでいます。しかし、大規模災害やサイバー攻撃などの事由によりサプライヤーからの供給停止・遅延や、人員不足等でサプライチェーンが断ち切れた場合には、操業停止するという脆弱性を内包しており、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そこで、当社ではサプライヤーの財務情報をもとにした継続的な評価に基づく信用リスクの管理や、災害の想定など、自社だけでなく広い範囲で事業継続計画(BCP)を策定し、それらのリスクに備えるための検討を進めております。
(4)特定の市場
当社グループの製品の需要は、主な販売先である日産自動車株式会社の販売動向の影響を受けており、自動車の売上については販売台数の過半数が海外向けであり、その大半の仕向地は北米・中南米地域、中東地域です。よって、それらの国、または地域の経済状況の悪化や政府による通商規制、政治的不安等に伴い、予測を超えた急激な需要変動が顕在化した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。そこで、当社では、多様化するお客様のニーズに応えるため、モデルイヤーイベントを通じて先進安全装備や運転支援の装備をタイムリーに採用することで高品質で魅力ある商品を創出し、顧客満足度を向上することで台数と売上の拡大を目指しています。
(5)自動車産業の変化
自動車産業は、カーボンニュートラルやCASE(Connected「コネクテッド」、Autonomous「自動運転」、Shared & Service「シェアリング&サービス」、Electric「電動化」)を中心として、100年に一度と言われる大きな変革期を迎えていますが、これらの変化が想定される環境下において、従来型の自動車の生産を担う当社が持続的な成長を実現するためには、長いライフサイクルを迎えた多くの当社生産車について、パワートレインの次世代化や、先進技術への対応などが、課題であります。次世代技術への対応が出遅れた場合には当社生産車は市場での優位性を失い、あるいは異業種企業が自動車業界に参入する中で新たな競合者との競争に巻き込まれるリスクが存在し、結果として、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、当社は当社生産車の次世代化に確実に対応できる技術の確立を目指しております。具体的には来たる商品イベントに向けて、各年度で必要とされる技術ノウハウやプロセスをマップ化し、それらを確実に充足させていきます。これまでの成果として、当社生産車に衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い防止機能などの先進安全装備を採用し、市場に投入いたしました。引き続き、プレミアムカー・商用車の将来を見据えて、必要な社会要件や商品競争力向上アイテム、先進ITS技術等の適用に向けた技術課題に取り組んでまいります。
(6)気候変動
気候変動のリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 環境」に記載のとおりです。
<事業継続に係る外的なリスク>
(7)大規模災害
地震・火災・洪水・火山噴火等の災害により、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があります。事業継続計画(BCP)の策定及び維持改善活動の推進、工場などの建屋や設備などの耐震補強対策、社員安否確認システムの整備等を通じた対策を行っておりますが、大規模な災害が発生した場合には当社グループの生産拠点及び設備等が壊滅的な損害を被る可能性があります。この場合は当社グループの操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高が減少し、生産拠点等の復旧または代替のために巨額な費用を要し、財政状態及び経営成績にも悪影響を与える可能性があります。そこで当社は、内部留保資金を新車や生産性向上のための設備投資の他、このような予期しない大事故や災害が発生した際に活用するよう確保しております。
事業継続に影響を及ぼすような様々なリスクが発現した場合であっても、業務を堅実かつ安定的に継続できる体制の整備に努めております。具体的にはリスクが発現した場合の業務継続に関する基本方針、体制、手順等を定めた事業継続計画(BCP)を策定しております。
(8)パンデミック
新たなウイルス等の発生による急激な感染拡大(パンデミック)が発生すると、当社グループの生産拠点やサプライチェーンで、集団感染やロックダウンによる部品供給遅延が発生し、一時的な操業停止、減産調整が生じる可能性があります。このような車両生産が制約される状況が続くと、財政状態及び経営成績にも悪影響を与える可能性があります。
パンデミックについても、大規模災害と同様に、事業継続計画(BCP)を策定しており、事業所内の感染予防対策は、国や経団連の指導要領を順守し継続実施しております。今後も従業員の安全を最優先に考えつつ安定した操業を継続してまいります。
(9)情報セキュリティ
当社グループの殆ど全ての業務は情報システムに依存しており、システムやネットワークも年々複雑化高度化しております。
今やこれらシステムネットワークのサービス無くしては業務の遂行は不可能であります。この状況に対して、大規模な自然災害、火災、停電等の事故は引き続き当該システムに対して脅威であり、更にコンピュータウイルスへの感染やランサムウェアなど悪質化したサイバー攻撃による脅威も急激に高まっております。その場合には、システムダウンによる業務の停止、重要なデータの消失、機密情報や個人情報の盗取や漏えい等のインシデントを引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績や信頼性に対する評判、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社ではそれらのリスクに備え事業継続計画(BCP)の策定に向けた検討を進め、セキュリティ対策の向上等、サーバー設置を地理的に分散させるなどのハード面対策からソフト面にわたる様々な対策を実施しております。
<自社を原因とする内的なリスク>
(10)コンプライアンス
当社グループの事業活動は、会社法、税法、金融商品取引法、労働諸法令、道路運送車両法、環境諸法令、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法等の各種法令の規制を受けています。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受けることや、当社の社会的信用や評判に悪影響を及ぼし、結果として売上の減少等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。コンプライアンスは全ての従業員のあらゆる行動に関わっており、従業員一人一人がコンプライアンスの重要性を本当の意味で理解し、常に意識して行動することが定着しない限りは案件の発生を完全に防止することは困難であります。さらに守るべき法令やルールは年々増加している一方で企業の社会的責任に対する社会の期待も年々増大しております。
そこで、当社は行動指針並びに中期経営計画管理項目にコンプライアンスを加え、完成検査問題の風化防止に努めると共に、全ての業務において役員・従業員のコンプライアンス意識向上を図っております。
(11)製品の品質
当社グループは、「魅力ある商品の創出」を全社方針に掲げ、優れた品質の製品を提供するため、開発から生産まできめ細かい管理体制を敷き最善の努力を傾けております。しかしながら、より高い付加価値を提案するための新技術の採用は、それが十分に吟味されたものであっても、後に製造物責任や製品リコールなど予期せぬ品質に係る問題を惹起することがあります。製造物責任については賠償原資を確保するため一定の限度額までは保険に加入しておりますが、必ずしもすべての損害が保険でカバーされるとは限りません。またお客様の安全のため実施したリコールが大規模になった場合には多額な損失が発生するだけでなく、ブランドイメージが低下する等、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社は開発、生産、品質保証部門が一体となって品質に関する課題を共有・論議し、早期に最善な方法で解決する活動を行っております。また社長を議長とする品質委員会を開催し、関係する役員・部長が参画し、適切かつ迅速な課題解決を図っております。
<その他リスク>
(12)退職給付債務
当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。年金資産には国内外の株式及び債券等が含まれるため、株式・債券市場の動向によっては資産価値に影響を及ぼします。よって、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があります。
当社は、企業年金の積立金の個別の運用を複数の運用機関に一任しており、その運用状況について、経理部門がモニタリングする体制を採っております。また、人事労務及び経理財務の責任者と労働組合の代表者をメンバーとする企業年金運営管理委員会を設置しており、運用状況のモニタリング結果の報告を受け、アセットミックスの妥当性、資産運用等の確認や運用委託機関の評価などを定期的に行うことにより、年金受益者と当社グループとの間に利益相反が生じないよう努めるとともに年金資産運用の健全性確保に努めております。さらに、この体制を適切に機能させるため、必要な経験や資質を備えた人財を配置し、育成するよう努めております。
(13)固定資産の減損
当社グループは、工場の建物や製造設備など多くの固定資産を保有しております。対象資産の資産価値が下落し、投資金額の回収見込みがたたなくなった場合や、使用している事業に関連して、経営環境が著しく悪化した場合などは、必要な減損処理を行うリスクがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14)繰延税金資産の取崩し
当社グループは、将来の課税所得見込額及びタックス・プランニングを基に、定期的に繰延税金資産の回収可能性を検討しております。収益性の低下に伴い、将来において十分な課税所得が確保できないと判断した場合、繰延税金資産を取崩し、多額の税金費用(法人税等調整額)が発生することになり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の我が国経済は、雇用や所得環境の改善により景気は緩やかな回復基調が続いた一方で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要がありました。
当社グループを取り巻く環境は、原材料価格の高騰や需要の変動など、先行き不透明な状況が続きました。
このような環境において、当社が日産自動車株式会社から受注しております自動車の売上台数は、前連結会計年度と比べ5.3%増加の146,521台となりました。売上高は、主に前型車に比べ売上価格の高い「新型インフィニティQX80」や「新型パトロール」、「新型アルマーダ」による増加等により、16.4%増加の3,505億円となりました。
損益面では、営業利益は上期においては新型車の生産に要した追加コスト等の影響により前年上期と比べ減少したものの、下期で「新型アルマーダ」が立ち上がったことに加え、前第4四半期において発生した能登半島地震の影響による構成部品の供給不足がなくなったこと等から前連結会計年度と比べ425.7%増加の51億円、経常利益は319.9%増加の58億円、親会社株主に帰属する当期純利益は645.1%増加の30億円となりました。
当社グループの報告セグメントにおける自動車関連セグメントの比率が極めて高いため、上記の事業全体に係る記載内容と概ね同一と考えられます。よって、セグメントごとの記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は930億円となり、前連結会計年度末に比べ516億円増加いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、89億円(前連結会計年度に得られた資金は76億円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益40億円、減価償却費98億円、売上債権及び契約資産の増加による減少222億円、仕入債務の増加による増加175億円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、591億円(前連結会計年度に使用した資金は121億円)となりました。これは主に、貸付金の回収による収入700億円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、164億円(前連結会計年度に使用した資金は35億円)となりました。これは主に、リース債務の返済による支出146億円、配当金の支払額17億円によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメント |
台数(台) |
|
金額(百万円) |
|
|
前期比(%) |
前期比(%) |
|||
|
自動車関連 |
146,521 |
5.3 |
343,480 |
16.9 |
|
設備メンテナンス |
- |
- |
1,224 |
40.1 |
|
情報処理 |
- |
- |
3,452 |
△13.5 |
|
人材派遣 |
- |
- |
2,349 |
2.8 |
|
合計 |
146,521 |
5.3 |
350,508 |
16.4 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
自動車関連部門は日産自動車㈱より生産計画を受け、これに基づき当社の生産能力等を勘案して生産計画を立て、生産を行っております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメント |
台数(台) |
|
金額(百万円) |
|
|
前期比(%) |
前期比(%) |
|||
|
自動車関連 |
146,521 |
5.3 |
343,480 |
16.9 |
|
設備メンテナンス |
- |
- |
1,224 |
40.1 |
|
情報処理 |
- |
- |
3,452 |
△13.5 |
|
人材派遣 |
- |
- |
2,349 |
2.8 |
|
合計 |
146,521 |
5.3 |
350,508 |
16.4 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 相手先別の販売実績及び販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
日産自動車㈱ |
294,106 |
97.7 |
342,445 |
97.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中括弧書きにおける増減は前年同期比の値であります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
主たるセグメントである自動車関連事業については、売上台数は前連結会計年度に比べ5.3%増加の146,521台(7,400台増)となりました。売上高は、売上台数の増加や前型車に比べ売上価格の高い「新型インフィニティQX80」や「新型パトロール」、「新型アルマーダ」による増加及び前第4四半期において発生した能登半島地震の影響による構成部品の供給不足がなくなったこと等により、3,434億円(495億円増収)となりました。
|
自動車関連事業の結果 |
当連結会計年度 |
|
|
売上台数(台) |
売上高(億円) |
|
|
第1四半期(4~6月) |
29,281 |
633 |
|
第2四半期(7~9月) |
34,276 |
801 |
|
第3四半期(10~12月) |
43,763 |
1,023 |
|
第4四半期(1~3月) |
39,201 |
976 |
|
通期 |
146,521 |
3,434 |
製品区分では、「魅力ある商品の創出」という中期経営計画の目標のもと、3車種のフルモデルチェンジ及び各種マイナーチェンジを実施しました。国内向けを中心とした商用車・小型バスについては、前第4四半期において発生した能登半島地震の影響による構成部品の供給不足がなくなったこと等により、前期売上台数に対して12.4%の増加となりました。乗用車については、「パトロール(Y61)」を生産終了したものの、2024年4月に生産開始した北米向け「新型インフィニティQX80」が増加したこと等により前期売上台数に対してほぼ横ばいとなりました。
その他事業も含めて、全体では3,505億円(494億円増収)となりました。
b.営業利益
主たるセグメントである自動車関連事業の営業利益は、前連結会計年度に比べ上期に新型車の生産に要した追加コスト等の影響による減少があったものの、下期で「新型アルマーダ」が立ち上がったことに加え、前第4四半期において発生した能登半島地震の影響による構成部品の供給不足がなくなったこと等により、44億円(39億円増益)となりました。
その他事業も含めて、全体では51億円(41億円増益)となりました。
c.親会社株主に帰属する当期純利益
経常利益につきましては、前連結会計年度に比べ大幅な営業利益の増加等により、58億円(44億円増益)となりました。特別損益は、長期貸付の解約に伴う違約金、及び「AD」の生産終了決定に伴う支払補償金の計上等により、特別損失が増加したことから悪化しました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、30億円(26億円増益)となりました。
d.財政状態
流動資産は、前連結会計年度末と比べ341億円増加の1,742億円となりました。これは主に、1年内回収予定の長期貸付金及び投資その他の資産の長期貸付金を解約したことによる現金及び預金の増加700億円、1年内回収予定の長期貸付金の減少400億円によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末と比べ226億円減少の956億円となりました。これは主に、投資その他の資産のうち長期貸付金を解約したことによる減少300億円によるものです。
この結果、資産合計は前連結会計年度末と比べ115億円増加の2,699億円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末と比べ200億円増加の884億円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金の増加140億円によるものです。
固定負債は、前連結会計年度末と比べ107億円減少の48億円となりました。これは主に、リース債務の減少105億円によるものです。
この結果、負債合計は前連結会計年度末と比べ93億円増加の933億円となりました。
純資産合計は、前連結会計年度末と比べ22億円増加の1,765億円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加30億円、剰余金の配当による利益剰余金の減少17億円、退職給付に係る調整累計額の増加9億円によるものです。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の67.5%から65.4%となりました。
② キャッシュ・フローの分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.財務政策
当社グループは、中長期的な企業価値向上に向けた成長投資を確保しつつ、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして考え、安定した配当を継続的に行うことを基本方針としています。そのためにも、企業価値の向上に資する成長のための投資として、新車開発や生産性向上のための設備投資などに有効活用すると同時に、財務体質の充実・強化を進めることとしています。内容については、「6 研究開発活動」及び「第3 設備の状況」に記載のとおりであります。
c.資金運営
運転資金及び投資資金については自己資金とし、日産自動車株式会社のグループファイナンスへ資金を寄託することで、財務部門のスリム化と資金の効率的な運用を行っております。なお、長期貸付としていた700億円は今後の資金需要及び当社を取り巻く環境等を総合的に勘案した結果、銀行預金としております。引き続き財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、将来必要な運転資金及び投資資金を調達することが可能と考えております。
また、当連結会計年度は特記すべき資金調達はありませんでした。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
日産グループ共通のコーポレートパーパス「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」の実現に向け、当社グループは「私たち日産車体は信頼される企業として、独自性に溢れ、お客さまに魅力ある質の高いクルマとサービスを、タイムリーにお届けします。」をミッションとして掲げ取り組んでおります。
具体的にはお客様の安心と信頼を第一とし、商用車、プレミアムカー、特装車を中心に商品開発力の強化に取り組んでおります。
(1)開発体制
当社開発部門は、日産自動車㈱より商用車とプレミアムカー、特装車の車両開発委託を受け開発を推進しております。
また、特装開発の一部を連結子会社の㈱オートワークス京都が担当しております。
(2)新商品の投入状況
国内向けでは、「キャラバン」、「NV200バネット」の一部仕様向上を実施しました。また、特装車では「キャラバン MYROOM」を標準車として発売。また、「NV200バネット MYROOM」も発売しました。
輸出では、「パトロール」(Y62) 、「アーバン」の一部仕様向上を実施しました。
(3)新技術の開発状況
「キャラバン」の一部仕様向上では、各種法規に適合させるとともに、一部グレードにルームミラーに投影されるバックビューモニターを追加し、通常でお使いいただく際にも、後方の映像がミラー左側に映し出されるようにしたことで、後方の状況を確認しやすくなりました。
「NV200バネット」では、音と表示でドライバーに休憩を促す「インテリジェント DA(ふらつき警報)」や、駐車時や低速走行時、ブレーキとアクセルの「踏み間違い衝突防止アシスト」を全車標準装備し、安全装備の拡充を図りました。さらに、商用車初となるフル液晶メーターを採用し、多彩な車両情報が確認できるよう視認性と機能向上を図りました。
特装車「NV200バネット MYROOM」では、「キャラバン MYROOM」同様、木製家具の温かみと優しい間接照明に包まれた新しいくつろぎ空間を提案しました。セカンドシートには、表面と裏面で硬さの異なるクッションパッド構造を採用し、くつろぎモードとドライブモードの切り替えが可能な2 in 1シートを特別装備しました。
輸出向けの、「パトロール」(Y62)のオーストラリア向けについては、ナビ・車両情報システムの刷新及び法規対応を実施しました。
「アーバン」のメキシコ、中近東向けをはじめとする一部輸出車については、排気対応等を実施しました。
新技術開発については、年度毎にテーマを決め開発を進めております。
具体的には、環境対応技術開発、商品力向上技術開発等を重点項目として取組んでおります。
当社グループは、今後とも独自性に溢れ、お客さまに魅力ある質の高いクルマとサービスを、タイムリーにお届けることを目指し、開発活動を積極的に推進いたします。
当連結会計年度における研究開発費は