第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものです。

 

当社グループは、2021年5月に中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告を行い「STEP2.0」として公表しました。これを機に、従来の企業指針である企業理念、経営理念、行動規範などを整理し、以下のとおり改定しました。事業環境が大きく変化する中、ありたい姿「笑顔をつくる会社」に向けて、私たちがお客様に提供する価値である「安心と愉しさ」と経営理念である ”お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、SUBARUを自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドとして持続的に成長させ、中長期的な企業価値の向上を図っていきます。

 

(1) ありたい姿、提供価値、経営理念

<ありたい姿>  笑顔をつくる会社
 <提供価値>   安心と愉しさ
 <経営理念>  “お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す

 

(2) 基本方針

<品質方針>

 私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます

 1.お客様に安心して長くお使いいただける商品をお届けします
 2.お客様の声に常に耳を傾け、商品とサービスに活かします
 3.法令・社会規範・社内規則を遵守し、お客様に信頼される仕事をします

 

<SUBARUグローバルサステナビリティ方針>

 私たちSUBARUグループ※は、人・社会・環境の調和を目指し、
1.事業を通じて、地球環境の保護を含む様々な社会課題の解決と、持続可能な社会の実現に貢献します。
2.高品質と個性を大切にし、先進の技術で、SUBARUならではの価値を提供し続け、SUBARUグループ

  に関わるすべての人々の人生を豊かにしていきます。

3.国際社会における良き企業市民として、人権および多様な価値観・個性を尊重し、すべてのステークホルダー

  に誠実に向き合います。

4.従業員一人ひとりが、安全に安心して働くことができ、かつ働きがいを感じられるよう職場環境を向上させま

  す。

5.国際ルールや各国・地域の法令を遵守するとともに、その文化・慣習等を尊重し、公正で透明な企業統治を行 

  います。

6.ステークホルダーとの対話を経営に活かすとともに、適時かつ適切に企業情報を開示します。

 

 ※ SUBARUグループ:株式会社SUBARUおよびすべての子会社

 

(3) 中期経営ビジョン「STEP」

自動車業界が大変革期にある中で、この大きな事業環境の変化を見極め、スピード感をもって対応していくことが必要であると認識しています。当社グループは「安心と愉しさ」の提供を通じてお客様から共感され信頼していただける存在となることを目指し、2018年7月に中期経営ビジョン「STEP」を公表し、その実現に向け2025年ビジョンとして次の3項目を掲げ、「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」を重点取り組みとして活動を進めてきました。

 

<2025年ビジョン>

1.個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる
2.お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する
3.多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす

 

中期経営ビジョン「STEP」取り組み全体像(9Box+1)


 

「STEP」で掲げた重点取り組みは、確実に進捗しています。また、事業環境が変化する中で「SUBARUらしさ」を進化させることについても、「SUBARUづくりの刷新」の活動を通じて取り組んできました。そして、改めてお客様あってのSUBARUブランドであることを再認識し、お客様とともに新たな時代に向き合っていかなければならないと強く認識しています。

 


 

   ありたい姿の実現に向けて

2025年の「ありたい姿」を示した中期経営ビジョン「STEP」も、2018年の発表から約3年が経過しました。

「組織風土改革」については、「個の成長」に焦点を当てた活動を推進し、従業員一人ひとりが成長や働き甲斐を実感できるよう、エンゲージメントを高めるフェーズへ移行していきます。

「品質改革」については、品質の高さはSUBARUブランドの大事な根幹、付加価値の源泉であると位置づけ、新技術への対応を含め、品質改革の取り組み結果を実績で示すフェーズを目指していきます。

「SUBARUらしさの進化」については、2020年1月の技術ミーティングで発表した死亡交通事故ゼロと脱炭素社会への貢献に向け、「安心と愉しさ」を支える技術をさらに進化させ電動化の時代においても「SUBARUらしさ」を強化していきます。

これらの取り組みを通じて「個性を磨き上げお客様にとってDifferentな存在になること」を目指し、SUBARUとお客様との深い関係性をさらに深化させていきます。また、これを機に人、社会、地球までをも笑顔にしたい、そのようなSUBARUでありたいとの想いから、「笑顔をつくる会社」をありたい姿としました。そして、お客様の生活に寄り添い、お客様とともに「愉しく持続可能な社会の実現」に向けて取り組んでいきます。

 

(4)SUBARUグループのCSR

当社グループは「"お客様第一"を基軸に『存在感と魅力ある企業』を目指す」という経営理念のもと、ありたい姿「笑顔をつくる会社」の実現に向け、CSR重点6領域の考え方を取り入れ、SUBARUグローバルサステナビリティ方針に基づいた取り組みを推進しています。これからも企業としての社会的責任を果たし、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様に「安心と愉しさ」を提供していきます。

 


 

(5) 対処すべき課題

 ① コロナ禍での事業継続計画(BCP)への対応
 当社は新型コロナウイルス感染症発生の初期から、CEOをトップとした「新型肺炎特別対策本部」を設置し、CRMOの全体統括のもと、お客様やお取引先様、当社グループの従業員の感染防止と安全確保に努めつつ、事業活動の継続への対応も行っています。

  従業員の感染予防については、業務出張等往来の禁止及び抑制、大人数が集まるイベントへの参加の自粛ならびに従業員とその家族に対しての健康状態の把握や支援など、健康と安全確保を最優先に取り組んでいます。また、リスクマネジメント・コンプライアンス室、人事部、総務部、IT戦略本部等の関係部門が連携し、ITインフラの強化やコアタイムの廃止を含む就業規則の変更等ニューノーマルな執務体制への移行を進め、東京地区を中心に在宅勤務を積極的に導入し、安全確保と働き方改革の両立を行ってきました。さらに、新車発表イベント等をオンライン化することにより、感染予防だけでなく、SUBARUの提供価値をより多くのお客様に直接触れていただく機会を創出しました。今後も新型コロナウイルス感染症の状況を注視し、ステークホルダーの安全確保とSUBARUブランドの発信強化に努めていきます。

  また、当社の主力である海外市場を中心に、新型コロナウイルスによる自動車需要の減少が第2四半期以降、徐々に回復する一方で、自動車業界を含む世界的な半導体不足に直面しています。当社においても、お取引先様から調達している部品の一部で供給に支障が出ており、一部の工場で2021年1月には2日間、また、2021年4月10日以降に操業を停止する等の生産調整を行いました。今後の部品の供給は不透明な状況ですが、生産する車種を柔軟に変更する等の対応で、お客様への商品の提供に努めていきます。

  需要が激減した航空宇宙事業部門につきましては、事業部門を越えた一時的な人員の配置転換のほか、事業部門内における固定費の圧縮と雇用の確保の両立を強力に推進しております。今後、航空機需要が回復した際には速やかに対応します。

 

 ② 中期経営ビジョン「STEP」の推進
 当社は2018年7月に発表した中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告を2021年5月に行いました。「STEP」の各取り組みの中で重点取り組みとした「組織風土改革」「品質改革」「SUBARUづくりの刷新」について、これまでの実績と今後の取り組みの方向性は以下のとおりです。

 

(組織風土改革)

 「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を合言葉として、全社での活動を推進しています。具体的には「風通しの良いなんでも言える会社」を目指し、「役員講話リレー」「部長対話リレー」「職場対話」を2018年7月以来、継続して実施しています。「意識を変える」については、コロナ禍を契機としたITツールの急速な活用が追い風になった側面もあり、部門を越えたコミュニケーションが自発的に活性化しています。経営課題の共有から、外を知るための勉強会等従業員が意識を変えるための気付きの場が急速に増えました。今後は、個の成長を促し、業務のアウトプットの向上につなげることを通して、従業員一人ひとりに自らの成長や働き甲斐を実感させ、従業員とのエンゲージメントを高めるフェーズに移行していきます。

  Withコロナ時代の新たな働き方にも柔軟に対応しつつ、デジタル技術やスキルアップのための人財投資も積極的に実行していきます。組織風土についても、単に「風通しの良い」だけでなく「チャレンジする風土」に変えるべく、2021年度より新人事制度を導入しました。これらの活動をさらに加速させていきます。

 

 (品質改革)

  品質改革は3つの切り口で活動を推進しています。1つ目は、品質改革の土台としての「品質最優先の意識の徹底と体制強化」。2つ目は、生産準備段階以降の領域において、不具合の流出防止を目指す「つくりの品質の改革」。この領域には市場で発生してしまった不具合に対していかに早く解決策を打つか、といったアフター領域での対応スピードも含まれます。3つ目は、初期の検討段階から開発・設計に至るプロセスを改革する「生まれの品質の改革」です。これら3つの領域での品質改革は着実に進んでいますが、まだ課題は残っており、お客様や販売店に対してその成果を十分に示すことができていない状況にあります。品質の高さはブランドの根幹であり、付加価値戦略の源泉でもあります。新技術への対応を含めてさらに活動を推し進め、必ず実績として示していきます。

 

 (SUBARUづくりの刷新)

 当社は2020年1月の技術ミーティングにおいて、「2030年死亡交通事故ゼロを目指す*」「個性と技術革新で脱炭素社会へ貢献していく」ことを発表しました。死亡交通事故ゼロに向けては予防安全、衝突安全を進化させるとともに、事故自動通報の高度化で「つながる安全」も強化し、一人でも多くの命を守ることに邁進していきます。今後は知能化をさらに進め、高度なセンシング技術とAIの判断能力を融合し、あらゆる場面での安全性を高めていきます。

 また、脱炭素社会への貢献については、同ミーティングで設定したCO2削減に向けたロードマップをベースとしつつ、カーボンニュートラル実現への貢献を目指し、取り組みを加速させていきます。併せて、モーター駆動が主流となる電動化の時代においても、AWD(全輪駆動)性能、動的質感をさらに進化させることで「SUBARUらしさ」を強化していきます。

*: SUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自転車等の死亡事故をゼロに

 

③ アライアンスの深化

  トヨタ自動車株式会社とは協業を通じて刺激を与えあい、切磋琢磨する関係を深化させています。

  共同開発車の新型「SUBARU BRZ」及び2022年の年央ごろに販売予定のSUBARU初のグローバルEV 「SOLTERRA(ソルテラ)」は、両社の強みを持ち寄り、共通の想いである「もっといいクルマづくり」を具現化しています。

  自動車業界を取り巻くイノベーションの進化が加速しており、いわゆる「CASE」領域での対応が求められています。電動化技術、コネクテッド領域、自動運転領域等では協業を深化・拡大させ、変化への柔軟な対応を図っていきます。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループでは緊急事態発生時の対応だけでなく、日々の企業活動において重大な影響を及ぼす様々なリスクに対し、リスク発生時のダメージを最小化するためのリスクマネジメントの実践を経営の最重要課題の一つとして推進しています。

自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、グローバルに事業を展開する当社グループは、世界情勢の変化に素早く対応し、経営の持続性の確保と経営基盤の強靱化を図りながら、人的、社会的及び経済的損失の最小化にこれまで以上に取り組んでいく必要があります。このような環境の中で事業活動を行っていくうえで、グループワイドでの戦略的なリスクマネジメントの推進が不可欠であり、当社グループをリスクに強い体質にし、企業価値の向上を図ることが重要であると考えております。

 

 当社グループのリスクマネジメント体制

 当社は、グループのリスク顕在化と拡大を防止するため、取締役会が選任したCRMO(最高リスク管理責任者)が、リスクマネジメント・コンプライアンス活動を統括し、活動状況等を取締役会に報告しています。

具体的な推進体制として、各部門に本部長クラスのリスク管理責任者を置き、取締役会で指名された業務執行取締役(CRMO)を委員長、リスクマネジメント・コンプライアンス室及び法務部からなるリスクマネジメントグループを業務執行責任範囲とする執行役員を副委員長とする「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」において、重要事項の審議・協議、決定及び情報交換・連絡を行っています。

CRMO(最高リスク管理責任者)は、リスクマネジメント・コンプライアンス室や法務部等の全社共通部門の専門的見地からの支援を受けつつ、各事業に横断的な役割を担う経営企画部や各部門・カンパニーと密接に連携し、企業集団を通じたリスク管理の強化を推進しております。さらに、監査部が各部門及び各子会社の業務遂行について計画的に監査を実施しています。

 


 

 リスクマネジメントの取り組み

2020年度は平時の取り組みとして、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会において、グループ全体の「リスクマネジメント方針」を定めるとともに、当社をめぐる諸条件や企業特性を踏まえ、リスクが顕在化した場合の損失の大きさを加味し、優先的に対処すべき課題を全社視点で整理した「リスクマップ」を作成しました。さらに、影響度の大きな課題について優先的に対応するという視点を持ち、各部門が「リスクマネジメント行動指針」を策定し、当該行動指針に従い日常業務として潰し込みを行うリスク管理活動と組み合わせることで、全社最適なリスク管理を推進しました。

また、有事の取り組みとしては、新型コロナウイルスへの対応として、2020年2月に「新型肺炎特別対策本部」を設置し、社内外の関係情報を収集・共有するとともに、緊急時対応の内容と実施主体の特定、実効性に関する確認を行う等適時適切な対応をしました。さらに、新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴い、関係部門が連携した新常態の執務体制への速やかな移行等を推進しました。

また、全社的な緊急連絡体制を定期的に点検し、当社に影響を及ぼすおそれのある災害等の発生時には「緊急事態対応基本マニュアル」に基づき「安否確認システム」等を使用した情報共有を行っています。

 

 

 主要な事業等のリスク

 

当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に数百億円以上の大きな影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクと対応策は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、当社グループに関するすべてのリスクを列挙したものではありません。

 

 経済・金融環境の変動に関連するリスク

 

 (1) 主要市場の経済動向

当社グループの主要な市場である国及び地域の経済情勢は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内はもとより当社グループの売上収益の約7割を占める北米における景気後退及び需要減少、価格競争の激化等が進むことにより、当社グループの提供する商品・サービスの売上収益や収益性において悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2) 為替の変動

当社グループにおいて北米売上収益は約7割を占め、売上収益、営業利益、資産等の中には、米ドルを中心とした現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しております。通期の業績見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面では当社グループの売上収益と財務状況はマイナスに作用し、円安局面ではプラスに作用する可能性があります。当社では為替リスクを最小限にすべく、状況に応じ為替予約等によるヘッジを実施しておりますが、期末日に極端な為替変動が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3) 金融市場の変動

 当社グループは、事業活動の資金を内部資金及び金融機関からの借入や社債の発行によって確保しております。また、十分な手元流動性を確保するために一定額の現金及び現金同等物残高の確保を行っております。しかしながら、経済・金融危機等の発生により金融市場から適切な条件で資金調達が出来なくなった場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは市場性のある証券や債券等の金融資産を保有しており、金融市場の影響により公正価値や金利等が著しく変動した場合、金融資産の減損及び年金資産の減少による従業員給付債務の増加により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 原材料価格の変動

当社グループは、原材料を多数のお取引先様から適時適切な量で調達しておりますが、特定の原材料及びお取引先様に依存している場合があり、需給状況の逼迫等により安定したコストで調達できない場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 業界及び事業活動に関連するリスク

 

 (5) 特定の事業及び市場への集中

当社グループは、主に自動車と航空宇宙の2つの事業で構成され、“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指し、選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開しています。自動車事業の売上収益が9割以上を占め、販売市場は主に北米を中心とした先進国となります。主要拠点である国内の群馬製作所及び米国のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インク(SIA)においてはSUV(多目的スポーツ車)を中心とした生産をしています。このため、自動車事業に関わる需要や市況、同業他社との価格競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (6) 市場における需要・競争環境の変化

当社グループの主力事業である自動車業界は大きな環境変化を迎えています。このような状況の中、当社グループは中期経営ビジョン「STEP」を推進し、安心・安全への取り組みやアライアンスの強化、強固なブランドの構築を推進することで新たなモビリティ領域への対応、商品の環境性能向上を強化しています。常に市場の需要動向、お客様ニーズに基づく商品企画を行い、適切なタイミングと価格で新商品を開発・製造し、市場に投入することに努めています。また、デジタルイノベーションの強化に向け最新のデジタル技術やデータの戦略的活用によるビジネスプロセスの改革、新たなビジネスイノベーションの機会創出と推進を行っています。しかしながら、モビリティサービスの普及に伴う異業種からの参入や環境対応に伴うガソリン車以外の自動車へのシフト、シェアリングや自動運転普及に伴う移動手段の多様化によって、お客様の価値観や嗜好ニーズはさらに多様化していくことが予想されます。今後、当社グループの新型車や新商品が販売計画に満たない場合、デジタルイノベーションに遅れが生じた場合、現行の商品の陳腐化等が想定以上に進んだ場合には、販売台数の減少等により当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (7) 商品ならびに販売・サービスに関する責任

当社グループは、中期経営ビジョン「STEP」において、「品質改革」を最重要テーマの一つとして、品質マネジメントの強化を図っております。2019年4月には品質方針を「私たちは何より品質を大切にしてお客様の信頼に応えます」に改定しました。商品の企画から生産・販売・サービスに至るまであらゆるプロセスにおいて質の向上を図り「お客様が安心して長く使い続けることが出来る品質」№1を目指して品質改革を進めています。「生まれの品質」の向上を図るべく、これまで以上に開発の上流の段階から品質を向上させる開発プロセスの改革に取り組んでいます。CQO(最高品質責任者)が中心となり、お客様に当社製品を安心して長くお使いいただけるよう「品質を万全に仕上げる」、そして万が一品質問題が生じた際は「早く、正確に改善する」との方針のもと、抜本策に取り組んでおります。また、品質最優先の徹底に向けて従業員一人ひとりの品質意識をさらに高めるための取り組みを進めています。具体的には、全従業員へ品質意識醸成講座等を通じた啓蒙活動や、全従業員に加えお取引先様も対象とした「品質キャラバン」を開催し、SUBARUの品質の現状やお客様の声を直接伝える取り組みを行っています。さらに、2020年4月よりCQO直属の組織として当社グループ全体の品質保証を統括する品質保証統括室を設置し、グローバルレベルでの品質改革を加速しています。このような品質改革への取り組みの一方で、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用等が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8) サプライチェーンの分断

 当社グループは、自動車や航空機等の製造にあたり、多数のお取引先様から部品や材料を調達しています。定期的にお取引先様の品質保証力や供給能力のチェックを行うとともに、必要に応じお取引先様の経営状況のチェックも行い、安定調達に努めています。また、有事が発生した際は、平時より整備をしている一次・二次お取引先様の部品ごとの「サプライチェーン情報データベース」に基づき、影響を受ける可能性のあるお取引先様や部品を早期に特定することにより、生産継続に必要な在庫数の確認や代替品の生産検討、さらには生産設備の復旧支援を行う等、サプライチェーン分断の影響を最小限に留める対応を取っています。しかしながら、大規模な地震や台風等の自然災害、新型コロナウイルス等の感染症の発生やその他の要因により、サプライチェーンの分断や需給の逼迫が発生した場合、安定したコスト・納期・品質で調達が維持出来ず、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

なお、2020年度については世界的な半導体の供給不足に伴い、当社においてもお取引先様から調達している部品の一部で供給に支障が出たことから、一部の工場で2021年1月には2日間、また、4月10日以降に操業を停止するなどの生産調整を行いました。半導体製品の供給状況に合わせて生産する車種を変更する等の対応により、お客様への商品の提供に努めていますが、今後も半導体及び一部の部品の供給不足は続くと見込まれ、操業停止や稼働調整を通じて、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

 

  (9) 知的財産の侵害

当社グループは、「安心と愉しさ」等のSUBARUらしさを際立たせるため、他社製品と差別化できる技術を知的財産として保護するとともに、コーポレートブランド管理規程を定め、SUBARUのブランド価値を維持・向上させることに努めています。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似製品を製造した場合、知的財産に係わる紛争が生じて当社に不利な判断がなされる場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (10) 情報ネットワークセキュリティ

当社グループは、製品の開発・生産・販売等、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しています。これらの資産を守るためにサイバーセキュリティ基本方針を定め、従業員のセキュリティ意識向上に向け、セキュリティ教育を定期的に実施するとともに、IT戦略部門が中心となり、サイバー攻撃検知の迅速化を図るための監視とセキュリティインシデント発生時のSIRT(Security Incident Response Team)体制を整備しています。データのバックアップ体制につきましては、当社データセンター内の自社運用ならびにクラウド環境において、複数個所に分散しバックアップが取れる体制を整えており、局所的な災害等においても、事業継続や復旧の早期化に向けた対策を講じています。当社グループの情報技術やネットワーク、システムは、安全対策が施されているものの、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスによる攻撃や大規模な停電、火災等が発生した場合、重要な業務やサービスの中断、データの破損・喪失、機密情報の漏洩等が発生し、ブランドイメージの毀損や当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (11) コンプライアンス

当社グループは、中期経営ビジョン「STEP」において、「組織風土改革」を最重要テーマの一つとして掲げ、「正しい会社をつくる」活動を加速してきました。特に、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、企業活動上求められるあらゆる法令・社内諸規程等の遵守はもとより、社会規範に則した公明かつ公正な企業活動を遂行することを従業員一人ひとりに浸透させ、行動の実践につなげるべく、コンプライアンス体制・組織の構築および運営、ならびに各種研修等の活動を行うことにより、コンプライアンスリスクの回避または最小化に努めています。それにも関わらず、当社グループ及び委託先等において重大な法令違反等が発生した場合、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 (12)ステークホルダーコミュニケーション

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、全てのステークホルダーから満足と信頼を得るために、コーポレートガバナンスガイドラインを定め、コーポレートガバナンスの強化を経営の最重要課題の一つとして取り組んでいます。また、ディスクロージャーポリシーに基づき、フェアディスクロージャーに努め、法令に基づく開示、さらに経営戦略や事業活動等の当社を深く理解していただくために有効と思われる会社情報を、迅速、公正公平、適正に開示しています。また、株主・投資家等と中期経営ビジョン「STEP」の進捗やESG情報について建設的な対話を図るとともに、社内関係者へのフィードバックを行う等ステークホルダーコミュニケーションの向上に努めています。しかしながら、インサイダー取引等の不公正取引や虚偽記載等の法令違反行為による巨額の課徴金支払い等が発生した場合は株主や投資家をはじめとしたステークホルダーからの信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (13) 人権尊重

当社グループは人を第一に考え、「人を中心としたモノづくり」を行っています。「一人ひとりの人権と個性を尊重」することは、SUBARUの重要な経営課題と捉え、「SUBARU人権方針」を策定するとともに、デュー・ディリジェンスを実施しています。また、サプライチェーンを含め、事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者にも、本方針に基づく人権尊重の働きかけを行い、リスク低減のための対応策を実施することで、人権尊重の取り組みを推進しています。それにも関わらず、当社グループ及び上記関係者において、労働環境・労働安全衛生上の問題、様々なハラスメント、人権上の問題のある調達を行った場合等には、お客様の信用・信頼を失うことや社会的評価・評判の低下等によるブランドイメージの毀損等が事業基盤に重大な影響を与え、経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (14) 人材の確保と育成

当社グループは持続的な成長に向けて中期ビジョン「STEP」で掲げたありたい姿「笑顔をつくる会社へ」の実現に向けて人材育成を極めて重要なテーマと位置付けています。企業としての競争力強化を高めていくために、「SUBARUへの共感のもと自律的に行動しチャレンジし続ける人財」を求める人財像とし、会社の風土や社員の意識・行動の変革を目指して自律的な能力開発と自発的なチャレンジにより個人の成長を促す体制を整備しています。また、業界を取り巻く激しい環境変化に迅速に対応できる多様な価値観や専門性を持った人材の確保を行っています。しかしながら、労働市場の逼迫により人材確保が出来ない場合、専門性の高い人材の流出が続いた場合等、長期的に当社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (15) 気候変動

当社グループは気候変動を最も重要な課題の一つと認識し、21世紀後半の早い段階で脱炭素社会を目指す「パリ協定」の趣旨を支持し、SCOPE1・2及びSCOPE3(商品)に関する中長期目標を掲げ、取り組んでいます。SCOPE1・2に関しては、2050年度にカーボン・ニュートラルを目指し、そのマイルストーンとして2030年度までに2016年度比で30%(総量ベース)のCO2削減に取り組みます。SCOPE3(商品)に関しては、2050年にWell to Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を2010年比で90%以上削減を目指し、2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(EV)+ハイブリッド車とし、2030年代前半には生産・販売するすべてのSUBARU車への電動技術の搭載に取り組みます。しかしながら、これらの取り組みが適切に進まない場合、異常気象による調達・生産・物流活動の停滞等が生じた場合、現時点での将来予測が極めて困難な移行リスク・物理的リスクの影響及び発現度によっては、研究開発費用等の増加、顧客満足やブランドイメージの低下等による販売機会の逸失、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 その他事業活動に影響を与える各国規制やイベント性のリスク

 

  (16) 事業活動に影響を与える各国の政治・規制・法的手続き

当社グループは米国を中心に世界各国において事業を展開しています。海外市場での事業活動には、以下のようなリスクが内在しており、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・不利な政治、経済的要因

・法律または規制の変更による障害
・課税、関税、その他の税制変更

また、環境等に関して当社グループが受ける主な法的規制は、国内外ともに自動車の燃費、排出ガス、省エネルギーの推進、騒音、リサイクル、製造工場からの汚染物質排出レベル及び自動車等の安全性に関するものです。今後、法的規制が強化されることによるコスト等の増加が、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

  (17) 災害・戦争・テロ・感染症等の影響

当社グループは特に経営に重要な影響を及ぼしかつ通常の意思決定ルートでは対処困難な緊急性が求められるクライシスリスクについては、自然災害、事故、内部人的要因、外部人的要因、社会的要因(国内・海外)、コンプライアンスリスクに分類し、有事の際に最適な対応ができる体制を整備しています。しかしながら、事業継続に影響を及ぼす災害・戦争・テロ・感染症等の発生により、当社グループの事業活動が妨げられ、原材料・部品の購入、生産、製品の販売及び物流、サービスの提供等に遅延や停止が生ずる可能性があります。このような遅延や停止が長期化する場合、当社グループの経営成績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 中期経営ビジョン「STEP」の進捗報告

2018年7月に「STEP」を公表して以来、事業を取り巻く環境も急速に変化しています。気候変動への対応を含む持続的な社会の実現に向けた企業の貢献への関心の高まりや自動車業界を取り巻く「CASE」領域での急速なイノベーションの進化等です。加えて、新型コロナウイルス拡大により働き方が変化し、人財育成や働き甲斐の向上も重要性を増してきました。その中でSUBARUらしい次世代技術を実現しながら、企業姿勢や存続意義が問われる時代に変化してきたと捉えています。

 

① 販売の振り返り

 2020年は新型コロナウイルスの影響により各市場の販売台数の絶対値は落ち込みましたが、当社の重点市場である米国では、暦年のマーケットシェアで過去最高となる4.2%を記録し、9年連続でシェアは前年を越えています。「STEP」でも目標の一つに掲げました米国シェア5%の将来目標に向け、着実に歩みを進めています。

 

② 収益の振り返り

業績は様々な要因があったものの、2018年7月に掲げた3年間の目標に対しては未達となりました。四半期単位ではまずまずの期はあるものの、一年を通した品質費用の抑制や半導体の供給不足への対応など不測の事態を乗り越えるには、まだ力不足だと実感しています。「STEP」の取り組みはいまだ道半ばであり、業績としてしっかり結果を示せるよう、今後も取り組みをさらに深めていきます。

 

③ 今後の収益イメージ・資本政策

 2018年7月に「STEP」を公表してから、今後の収益と資本政策についての基本的な考え方に大きな変更はありませんが、昨今の事業環境の変化や足元の状況を踏まえ、一部見直しを行いました。

付加価値戦略を核としたビジネスモデルを推進することでお客様への提供価値を高め、SUBARUのブランド力を上げることによって、重点市場である米国でのシェア5%の獲得に挑戦し、業界高位の営業利益率(8%)、ネットキャッシュは2月商分、自己資本比率は50%を確保し、ROEは10%以上を目指します。「2030年に死亡交通事故ゼロ」、「個性と技術革新による脱炭素社会実現への貢献」に向けて、「SUBARUらしさ」を進化させる取り組みをより加速させるために必要な設備投資・研究開発支出を着実に進める計画とし、合わせて人財投資にも注力していきます。株主還元の考え方は不変とし、配当を主に継続的かつ安定的な還元を基本としつつ、業績連動の考え方に基づき、毎期の業績、投資計画、経営環境を勘案して決定(連結配当性向:30%~50%)します。

なお、自己株式取得については、キャッシュ・フローに応じて機動的に実施します。

 

 <今後3年間> ※( )内は2018~2020年度実績

 設備投資  :売上収益比 3.5~4.0%(3.5%)

 研究開発支出:1,200億円レベル/年(1,077億円/年)

 

(2) 経営成績

当連結会計年度の世界経済は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響によって厳しい状況が続きました。経済活動の段階的な再開とともに一部では持ち直しの動きがみられるものの、自動車業界では第4四半期以降の世界的な半導体の供給不足などにより、依然として先行きの見通せない不透明な状況が続いています。

このような環境の中、当社グループではお客様やお取引先様、従業員の健康と安全を第一に新型コロナウイルス感染症の予防と拡大防止にグループ一丸となって取り組むとともに、中期経営ビジョン「STEP」を推進してきました。最重要テーマの一つである「組織風土改革」では、「意識を変え、行動を変え、会社を変える」を行動指針として掲げ、コロナ禍による働き方改革等の環境変化を従業員一人ひとりの意識変革につなげています。また、ブランドの根幹である信頼をより強固にするための「品質改革」では、品質最優先の意識の徹底と体制強化を土台として、開発・生産の各段階においてプロセスの変更や新たな仕組みの構築などの取り組みを進めています。「SUBARUづくりの刷新」では、安心と愉しさを支える安心・安全性能のさらなる進化や環境対応等への取り組みを進め、昨年の秋に発売した新型「レヴォーグ」に安全機能をさらに高度化した新世代の「アイサイトX」を搭載しました。

当連結会計年度の連結決算は、重点市場である北米の販売を中心に第2四半期以降は新型コロナウイルス感染症の影響から回復傾向となり、第3四半期には前年を上回る水準で推移しましたが、第4四半期には半導体の供給不足により生産が減少しました。

(売上収益)

自動車売上台数の減少により2兆8,302億円と前連結会計年度に比べ5,139億円15.4%)の減収となりました。

(営業利益)

販管費の圧縮や保証修理費の減少により諸経費等が減少したものの、自動車売上台数の減少により、1,025億円と前連結会計年度に比べ1,079億円51.3%)の減益となりました。

(税引前利益)

1,140億円と前連結会計年度に比べ937億円(45.1%)の減益となりました。

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

765億円と前連結会計年度に比べ761億円49.9%)の減益となりました。

 

(単位 金額:百万円、比率:%)

 

売上収益

 

 

親会社の所有者

為替レート

営業利益

税引前利益

に帰属する

(利益率)

(利益率)

当期利益

 

 

 

 

(利益率)

 

2021年3月期

2,830,210

102,468

113,954

76,510

  106円/米ドル

 

3.6

(4.0)

(2.7)

  123円/ユーロ

2020年3月期

3,344,109

210,319

207,656

152,587

 109円/米ドル

 

6.3

(6.2)

(4.6)

 121円/ユーロ

増減

△513,899

△107,851

△93,702

△76,077

 

増減率

△15.4

△51.3

△45.1

△49.9

 

 

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

(単位 金額:百万円、比率:%)

 

売上収益

セグメント利益

2020年3月期

2021年3月期

増減

増減率

2020年3月期

2021年3月期

増減

増減率

自動車

3,193,949

2,737,503

△456,446

△14.3

200,263

109,067

△91,196

△45.5

航空宇宙

142,141

87,693

△54,448

△38.3

5,065

△9,811

△14,876

その他

8,019

5,014

△3,005

△37.5

3,577

3,070

△507

△14.2

調整額

1,414

142

△1,272

△90.0

合計

3,344,109

2,830,210

△513,899

△15.4

210,319

102,468

△107,851

△51.3

(注)1.売上収益は、外部顧客への売上収益です。

   2.セグメント利益の調整額は、セグメント間取引消去です。

 

 
(自動車事業)

当社の重点市場である米国の自動車全体需要は、約1,500万台と前期を10%弱下回りました。また、国内の自動車全体需要は、約470万台と前期を8%弱下回る結果となりました。このような事業環境の中、第1四半期に受けた新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は大きいものの、海外では重点市場である北米で「クロストレック(日本名:SUBARU XV)」等を中心に小売販売は堅調に推移しております。また、国内においては「2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した新型「レヴォーグ」が販売に寄与しました。以上の結果、売上台数につきましては、海外は75.8万台と前期比15.0万台16.5%)の減少、国内は10.2万台と前期比2.4万台19.1%)の減少、海外と国内の売上台数の合計は86.0万台と前期比17.4万台16.8%)の減少となりました。売上収益は2兆7,375億円と前連結会計年度に比べ4,564億円14.3%)の減収となりました。また、セグメント利益も1,091億円と前連結会計年度に比べ912億円45.5%)の減益となりました。

 

なお、当連結会計年度の連結売上台数は以下のとおりです。

 

(単位 台数:万台、比率:%)

 

2020年3月期

2021年3月期

増減

増減率

国内合計

12.6

10.2

△2.4

△19.1

 

登録車

10.2

8.2

△2.0

△19.7

 

軽自動車

2.4

2.0

△0.4

△16.7

海外合計

90.8

75.8

△15.0

△16.5

 

北米

76.2

66.1

△10.1

△13.2

 

欧州・ロシア

4.6

1.8

△2.7

△60.0

 

豪州

4.3

3.1

△1.2

△27.3

 

中国

2.1

2.4

0.4

18.7

 

その他地域

3.7

2.3

△1.4

△37.5

総合計

103.4

86.0

△17.4

△16.8

 

 

(航空宇宙事業)

新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け、「ボーイング787」及び「ボーイング777」などの引き渡しが減少したため、売上収益877億円と前連結会計年度に比べ544億円38.3%)の減収となりました。また、セグメント損失は98億円と前連結会計年度に比べ149億円の減益となりました。

 

(その他事業)

売上収益は50億円と前連結会計年度に比べ30億円37.5%)の減収となりました。また、セグメント利益は31億円と前連結会計年度に比べ5億円14.2%)の減益となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。

 ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。なお、自動車の生産台数は、新型コロナウイルス感染症拡大や半導体供給課題等の影響を受け、前期を下回りました。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

前年同期比(%)

自動車

 

 

 

小型・普通自動車

(万台)

81.0

△21.4

航空宇宙

(百万円)

87,000

△32.9

 

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 ② 受注状況

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 なお、自動車事業については見込生産を行っております。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

航空宇宙

55,843

△46.1

214,551

△18.9

 

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

前年同期比(%)

自動車

(百万円)

2,737,503

△14.3

航空宇宙

(百万円)

87,693

△38.3

その他

(百万円)

5,014

△37.5

合計

(百万円)

2,830,210

△15.4

 

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

  

(3) 財政状態

当連結会計年度末の資産は、3兆4,117億円と前連結会計年度末に比べ1,178億円の増加となりました。主な要因は、非流動資産の「その他の金融資産」の取得等により817億円、「現金及び現金同等物」が484億円、それぞれ増加したものの、「棚卸資産」が自動車販売の回復がある一方で半導体供給不足による生産調整をしたため409億円減少したこと等です。

負債は、1兆6,253億円と前連結会計年度末に比べ515億円の増加となりました。主な要因は、流動負債及び非流動負債の「資金調達に係る債務」が社債発行や長期借入金等で947億円増加したものの、「営業債務及びその他の債務」が半導体の供給不足に起因した生産調整によって684億円減少したこと等です。

資本は、1兆7,864億円と前連結会計年度末に比べ663億円の増加となりました。主な要因は、「利益剰余金」が381億円、「その他の資本の構成要素」が為替換算の影響等により266億円、それぞれ増加したこと等です。

 

                                          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

増減

資産合計

3,293,908

3,411,712

117,804

負債合計

1,573,785

1,625,329

51,544

資本合計

1,720,123

1,786,383

66,260

 

 

(4) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、9,073億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は2,894億円(前連結会計年度は2,101億円の増加)となりました。主な要因は、税引前利益1,140億円、減価償却費及び償却費2,063億円、営業債務及びその他の債務の減少620億円、棚卸資産の減少396億円等です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は2,722億円(前連結会計年度は258億円の減少)となりました。主な要因は、その他の金融資産の取得による支出3,287億円、有形固定資産の取得による支出1,247億円、その他の金融資産の売却または回収による収入2,475億円等です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の増加は140億円(前連結会計年度は158億円の減少)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入655億円、親会社の所有者への配当金の支払429億円等です。

 

 

 

                                          (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

   至 2021年3月31日)

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

210,134

289,376

79,242

投資活動によるキャッシュ・フロー

△25,844

△272,174

△246,330

財務活動によるキャッシュ・フロー

△15,818

13,966

29,784

現金及び現金同等物の期末残高

858,966

907,326

48,360

 

 

(5)資本政策の方針

① 財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、お客様第一を基軸に選択と集中を進め、経営資源を最大限活用することで高収益なビジネスモデルを展開し、強固な財務体質と高い資本効率を維持し、中長期的な企業価値の向上を図っています。中期経営ビジョン「STEP」において、「資本収益性」「財務健全性」「株主還元」の3つの要素を資本政策の重要な指標とし、中長期的に自己資本利益率(ROE)と自己資本比率のバランスを高次元で保ちつつ、適切な株主還元を行うことを基本方針としております。具体的には、自己資本比率50%を下限とし、ネットキャッシュについては売上収益2月商分の確保を行い、ROE10%以上を目標としています。

 

② 経営資源の配分に関する考え方と資金調達及び資金の流動性に係る分析

 当社グループは、経営環境を考慮しつつ、適切な手元資金水準を維持しながら、資金調達計画を経営会議において審議し、戦略的投資と研究開発費等の成長に向けた経営資源の適切な配分を安定的に行っております。当社グループの資金調達及び資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、主要銀行からの借入とコミットメントライン契約の締結、ならびに社債の発行を行っており、現在必要とされる流動性の水準を満たしていると考えております。当連結会計年度末における有利子負債の残高(リース債務を含まず)は3,339億円と、前連結会計年度に比べて947億円の増加となりました。デット・エクイティ・レシオは0.19になり、安全性を維持しています。今後の設備投資や研究開発の投資計画によっては資金の追加調達、現預金残高の取り崩しをする可能性があります。

 なお、当社は新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴う資金需要に備え、2020年4月から5月にかけて運転資金として金融機関から資金調達を行いました。またコミットメントライン約2,000億円(既借入分を含む)に加え、社債ならびにコマーシャル・ペーパー発行枠を設定する等、合計約3,400億円の資金調達枠を確保し、資金需要に機動的に対応できる体制を整えております。

 また、当社は 国内の格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、本報告書提出時点においての格付は 「 シングルAマイナス(安定的) 」となっております。強固な財務体質を維持し、上記資金調達枠を保持していることから、当社グループの事業運営に必要な運転資金及び投資資金に関しては問題なく確保できるものと認識しています。

 

 (6) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、様々な見積りによる判断が行なわれておりますが、見積りに内在する不確実性により、実際の結果は異なることがあります。

連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しており、特に重要な見積りを伴う会計方針は以下のとおりです。

① 損失評価引当金

当社グループは、各報告日において、金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大したかどうかを評価 しており、当該信用リスクが当初認識以降に著しく増大していない場合には、当該金融商品に係る損失評価引当金を12ヶ月の予想信用損失に等しい金額で測定しております。また、当該金融商品に係る信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合には、当該金融資産に係る損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しております。ただし、営業債権、リース債権及び契約資産については、常に損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しております。

将来、取引先等の財務状況が悪化するなどにより支払能力が低下した場合、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えております。

 製品保証引当金

当社グループは、製品販売時に付与した保証約款に基づく製品保証とともに、主務官庁への届出等に基づいて個別に無償の補修を行っております。

保証約款に基づく製品保証の対象は、各国における保証約款に基づき、期間および走行距離や不具合の原因等により決定しております。

保証約款に基づく製品保証の保証修理費用は、製品を販売した時点で引当金を認識しており、保証期間内に不具合が発生して部品を修理または交換する際に発生する費用の総額について、過去の補修実績、過去の売上台数を基礎として将来の発生見込みに基づく最善の見積りにより引当計上しております。

主務官庁への届出等に基づく個別の保証修理費用は、経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額について信頼性をもって見積ることができる場合に引当金を認識しており、製品の不具合に関する過去の経験を基礎として算定した1台当たり将来保証修理費用等及び対象台数に基づく最善の見積りにより引当計上しております。

当社グループは、発生が見込まれる保証修理費用について、現在入手可能な情報に基づき必要十分な金額を引当計上していると考えていますが、製品保証引当金の計算では将来複数年にわたり生じる保証修理費用を予測しているため、実際の保証修理費用が見積りと乖離することにより、製品保証引当金を追加計上する必要が生じる可能性があることから、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えております。

③ 従業員給付

当社グループは、将来の退職給付の支払いに備えるため、当連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見込額に基づき、退職給付を計上しておりますが、この計算は主として数理計算上で算定される前提条件に基づいて行われております。この前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、死亡率などが含まれており、それぞれの条件は現時点で十分に合理的と考えられる方法で計算されております。当社は、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えております。

④ 金融資産

当社グループは、価格変動性の高い公開会社の株式、株価の決定が困難である非公開会社の株式、国債、社債及び、投資信託等を保有しております。

純損益を通じて公正価値で測定する金融資産については、投資価値の変動により損失が発生することがあるため、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があると考えております。

⑤ 繰延税金資産

繰延税金資産は将来減算一時差異等を使用できるだけの課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で認識し、繰延税金負債は原則としてすべての将来加算一時差異について認識しております。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の有価証券報告書において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

2006年3月 トヨタ自動車株式会社と業務提携

2008年4月 トヨタ自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社と開発・生産における新たな協力関係に合意

2019年9月 トヨタ自動車株式会社と長期的連携関係のさらなる発展・強化を目指し、新たな業務資本提携に合意

 

5 【研究開発活動】

当社グループは中期経営ビジョン「STEP」において、2025 年ビジョンとして次の3項目を掲げています。

1.個性を磨き上げ、お客様にとってDifferentな存在になる

2.お客様一人一人が主役の、心に響く事業活動を展開する

3.多様化する社会ニーズに貢献し、企業としての社会的責任を果たす

 

その実現のため、「会社の質の向上」「強固なブランドの構築」「集中戦略を軸とした持続的成長」の3つの取り組みに集中し、研究開発活動を進めています。当連結会計年度におけるグループ全体での研究開発支出は1,016億円です。セグメントごとの研究開発活動状況及び研究開発支出は次のとおりです。このうち、連結損益計算書の一般管理費に計上されている研究開発費は1,042億円です。

 

(1) 自動車事業

 自動車の研究開発では、中期経営ビジョン「STEP」で掲げる「安心と愉しさ」の提供を通じて、お客様から共感され、信頼していただける存在となることを目指し商品の開発を推進しています。

 

① 安心・安全への取り組み

 SUBARUが米国で販売している2021年モデルが、米国IIHS*1によって行われた2021年安全性評価において、5つの「トップセイフティピックプラス(TSP+)」と4つの「トップセイフティピック(TSP)」の、計9つの賞を獲得しました。

*1:Insurance Institute for Highway Safety(道路安全保険協会)

 

 2021 トップセイフティピックプラス(TSP+)獲得車
  ・クロストレック ハイブリッド、フォレスター、レガシィ、アウトバック、アセント

 

 2021 トップセイフティピック(TSP)獲得車
  ・インプレッサ(セダン、5ドア)、クロストレック、WRX (各アイサイトおよび特定のヘッドライト装着車)

 

② イノベーションの創出に向けた取り組み

 2020年12月、AI開発拠点「SUBARU Lab(スバルラボ)」を渋谷に開設しました。SUBARUは2030年に死亡交通事故ゼロ*2を目指しており、その実現に向け、運転支援システム「アイサイト」にAIの判断能力を融合させることで、安全性をさらに向上させる研究開発を行っています。近年の再開発によりIT企業集積地として進化し続ける渋谷にオフィスを構えることで、AI開発に必要な人材のスムーズかつ的確な採用や、IT関連企業との連携などを可能とし、これまで以上にスピード感のある開発を目指します。

*2: SUBARU乗車中の死亡事故およびSUBARUとの衝突による歩行者・自転車等の死亡事故をゼロに

 

③ 新商品開発状況

 当連結会計年度において、「安心と愉しさ」でお客様の笑顔に応えるべく、以下の商品を展開しました。

i. 2020年10月、新型「レヴォーグ」を発表しました。新型「レヴォーグ」は、SUBARUに脈々と受け継がれる「より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に」というグランドツーリングのDNAを継承しています。そのうえで、SUBARUの最新技術を結集し、「先進安全」「スポーティ」「ワゴン価値」の3つの価値を革新的に進化させたパフォーマンスワゴンです。12月には、日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会が主催する「2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。

 

ⅱ. 2021年3月、北米専用車「Outback Wilderness(アウトバック ウィルダネス)」を米国で発表しました。「アウトバック」は、乗用車とSUVの長所を融合させたSUBARUのフラッグシップクロスオーバーSUVモデルです。2019年に北米市場に導入した現行モデルは、歴代モデルを通じて磨き続けてきた、どこまでも走り続けられるような安心感と快適性、荷物を効率的に積める積載性、質感の高い内装といったクルマとしての本質的価値に、最新の技術を組み合わせることで、唯一無二の個性を持ったクロスオーバーSUVとして、さらなる進化を遂げています。

「アウトバック ウィルダネス」は、これまで「アウトバック」が築き上げてきた本質的価値はそのままに、アウトドアシーンで頼れる走破性と機能性をさらに強化し、タフでラギッドなキャラクターに磨きをかけた、SUBARU SUVの新たな価値を提案するクルマとして北米市場に導入するものです。

 当事業に関わる研究開発支出は1,003億円です。 

 

(2) 航空宇宙事業 

  航空宇宙カンパニーは将来にわたる持続的成長に向け、新規事業開拓及び生産性向上を中心とした以下の研究開発を行っています。回転翼機分野では、新中型ヘリコプターについて、生産性向上活動に加え、安心・安全面でのさらなる機能・性能向上に寄与する装備品の搭載や原価低減に関する研究を継続し、商品価値の向上に取り組んでいます。固定翼機分野では、構造の軽量化、高機能化、及び低コスト加工・組立プロセスの研究開発を行っています。その他、将来モビリティと共存する社会へ向けて、高度な安全性確保のための制御技術の向上、また電動化に関する研究開発に取り組んでいます。さらに、組立・塗装作業の自動化等、生産技術分野においても積極的に取り組み、コスト競争力を高める研究開発を行っています。

 当事業に関わる研究開発支出は13億円です。

 

(3) その他事業 

 株式会社スバルITクリエーションズにおける情報システム開発に係る研究開発費を中心とした、その他事業全体の研究開発支出は46百万円です。