第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものでありますが、予測しえない経済状況の変化等、様々な要因があるため、その結果について、当社が保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社は、企業理念を、「私達は、『摩擦と振動、その制御と解析』により、ひとつひとつのいのちを守り、育み、支え続けて行きます。」と定めています。この企業理念のもと、モノづくりを通じた新たな価値の創出と、企業価値・株主価値のさらなる向上を目指すとともに、重要保安部品メーカーとして、お客様、株主様、お取引先様、社員、地域社会を含む全てのステークホルダーと、健全で良好な関係を維持・促進し、持続可能な成長、発展を遂げていくことが重要だと考えています。

 

(2) 対処すべき課題

① 今後の持続的な成長に向けた取り組み

当社グループは、2019年より、事業再生ADR手続における事業再生計画の下、事業構造改革の各施策に取り組んでまいりました。事業再生計画の中では想定していなかった新型コロナウイルス感染拡大の影響や、半導体不足による受注変動の影響、原材料・エネルギーコストの市況高騰の影響などを受け、事業再生計画の数値計画は未達であったものの、前連結会計年度には市況高騰による影響について販売価格への転嫁を進めたことや生産性向上などの合理化の効果により営業利益は32億円まで回復しました。

このような中、当連結会計年度には、6月14日付「リファイナンス資金の借入及び支援後債権の完済、並びに事業再生計画期間終了に関するお知らせ」にて公表したとおり、ドイツ銀行東京支店をアレンジャーとするリファイナンス資金、320億円の借入契約を締結し、これらを返済原資として、事業再生計画に定められていた2024年6月30日を期限としていた既存の借入金を完済いたしました。これにより、同月28日をもって事業再生計画期間は終了いたしました。今後は、事業再生計画の残る最後の施策である北米事業の再構築の完了に向け、米国2工場のうち1工場を閉鎖し、米国1工場体制を確立することにより、北米事業の黒字化を実現するべく取り組みを進めてまいります。

このような状況下、当社を取り巻く外部環境は、物価の上昇や地政学的リスクの影響を受けて依然として不安定な状況が続いております。自動車業界では、原材料価格の高騰が課題となる中、電動化や自動運転技術の進展が求められ、さらに環境規制の強化により、持続可能な社会の実現に資する製品開発が急務となっています。加えて、米国の関税政策により国際貿易のコスト増加が予想されるなど、自動車業界は厳しい経営環境に直面しております。

当社はこのような外部環境の変化に左右されない自立した強固な企業基盤の構築を目指し、翌連結会計年度(2026年3月期)に重点的に取り組むこととして、以下の2つの方針を掲げました。

i) 強い経営体質の実現

地域・事業ごとの徹底的な見える化から問題・課題を見極め、対策・施策を検討し実行

対策・施策の進捗をフォローし着実な実行に繋げ、自立的な経営、営業利益を稼げる会社へ変化

ⅱ) 生き残るために進むべき方向の明示

厳しい競争環境、変化の激しい市場で生き残るべく、かつ再成長に向けた明確な方向性を明示

中長期経営計画を策定し、経営資源を集中すべき事業を見極め、企業価値を向上

今後はこれらの方針に基づき、持続的な成長の実現に向け取り組んでまいります。

 

 

② 上場維持基準への適合

当連結会計年度末において、当社の流通株式比率は、東京証券取引所プライム市場の流通株式比率の上場維持基準(35%以上)に適合しておりません。通常、1年以内に上場維持基準に適合することが必要となりますが、当社は、事業再生支援目的でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合(以下「JISファンド」といいます。)との出資契約を締結し、JISファンドと連携しながらリファイナンス資金320億円の借入契約の締結にあたって当社が策定した事業計画(以下「本事業計画」といいます。)の達成に向けて経営体質の改善を進めている最中であることから、東京証券取引所より2030年3月末までを適合に向けた計画期間とする特例適用が認められており、同計画期間内での流通株式比率の上場維持基準適合に向けて取り組んでおります。

上場維持基準適合のために、以下の取り組みを通じて企業価値を向上させてまいります。

ⅰ) 企業価値向上の実現に向けた事業運営

JISファンドは、当社とより一体となって事業運営を図り、全てのステークホルダーに資する企業価値向上を実現していく意向であり、当社としても、新たな経営体制のもと、JISファンドとの連携及び信頼関係をより一層強化してまいります。

ⅱ) 本事業計画の遂行及び中期経営計画の策定とその遂行

当社は、JISファンドのモニタリングのもと、本事業計画の達成に向けた施策を進めております。また、策定を進めている中期経営計画の着実な遂行に向け鋭意取り組んでまいります。

ⅲ) IR活動の強化

経営トップのIR活動への積極的な関与により、投資家と当社経営層の対話を促進してまいります。また、IRサイトによる情報発信をより充実させることにより、企業としての透明性を向上させてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、サステナビリティ方針を「曙ブレーキグループは、サステナビリティを経営の基軸と位置づけ、『曙の理念』のもと、持続可能な社会の発展に貢献していきます。」と定め取り組んでいます。

取り組みの体制につきましては、事業管理部門長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、また、委員会のもとに「地球環境ワーキンググループ」、「社会課題ワーキンググループ」、「ガバナンスワーキンググループ」を組織し、サステナビリティに関する取り組みを検討・審議しています。

なお、サステナビリティに関する当社グループの取り組みにつきましては、当社ウェブサイト(https://www.akebono-brake.com/)のサステナビリティをご参照ください。

 

(1) ガバナンス

サステナビリティ委員会において検討・審議された内容や取り組みの進捗状況につきましては、経営会議での審議を経て、1年に1回以上取締役会において報告又は審議され、取締役会による監督が行われています。なお、当事業年度は1回の審議・報告を実施いたしました。

 

(2) 戦略

サステナビリティ委員会において、地球環境を含む社会的課題から当社におけるリスクと機会の検討を行い、以下の3項目をESG課題におけるマテリアリティ(重要課題)として特定し、取り組んでおります。

① 「安全・安心な製品・サービスの提供」

安全・人権が確保された職場環境での生産活動と、地球環境やお客様の安全に配慮した製品・サービスの提供を継続してまいります。

② 「誰もが活躍できる会社の実現と社会への貢献」

サプライチェーンを含めた人権尊重に取り組み、多様性を尊重し、ワークライフバランスを推進するとともに会社の持続的成長を実現する人財を育成してまいります。

③ 「地球温暖化防止への貢献と環境負荷低減の推進」

地球環境の保全に努め、環境と調和した持続可能な社会の発展に継続的に取り組んでまいります。

 

なお、リスクの重要度と機会の検討は、国連をはじめとする国際的な機関や業界団体からの情報及び従業員、お取引先様、お客様、投資家等とのコミュニケーションを通して得られた情報をもとに行われます。

 

人財の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

人財育成方針

当社グループは、「会社を成功に導く最も重要なファクターは『人財(社員)』である」という考えのもと、理念の実現に向けて、社員一人ひとりが活躍するために必要な知識やスキルを自発的に学べる機会と環境を提供し続け、「自律型人財」の育成を進めていきます。また、事業のグローバル展開において「社員一人ひとりの能力を最大限発揮できる組織づくり」が必要不可欠と考え、その人らしい働き方や生き方を尊重し、それぞれが活躍できる機会を提供していきます。

 

 

社内環境整備方針

当社グループは、人財育成の再構築とキャリア支援、多様化推進、ワークライフバランス推進、健康経営に取り組んでいきます。

ⅰ)人財育成の再構築とキャリア支援

事業環境の変化に対応し、かつ一人当たりの生産性向上に向けて、社員一人ひとりが自ら学び成長できる仕組みの構築を目指しています。具体的には、選抜型研修によるプロアクティブな教育体系の構築や外部環境変化への対応に必要な教育プログラム(ITリテラシーやDX推進等のリスキリングプログラム)の拡充、社員の自律を促す人財育成マップに基づき、社員一人ひとりが自身のキャリアを選択し実現するための研修・キャリア支援を行っています。例えば、公開講座「Ai-Campus」は、全社員が受講できる教育カリキュラムで、安全・品質、生産・製品などの基礎知識やマネジメント層向けの管理者知識を学べる約60の講座を提供しています。また、「あけぼのビジネススクール」は、業務に必要な知識・スキルの習得を目的に社員が受講できる通信教育講座で、指定期間での修了を条件に、当社が受講料の一部を補助しています。

 

ⅱ)多様化推進

年齢、性別、国籍を問わず、多様な人財の採用活動を行っており、新卒採用のみならず、多様なスキル・経験を有する人財を確保するための経験者(キャリア)採用にも力を入れています。また、管理職登用・昇格候補者を対象としたアンコンシャス・バイアスやダイバーシティ・マネジメントに関する研修等を実施し、多様な人財が活躍できる環境づくりを推進しています。特例子会社であるあけぼの123㈱では、障がいを持つ社員一人ひとりの特性(個性)を認め合って強みを活かし、従来実施していた本社敷地内の清掃業務や名刺印刷に加え、職域の拡大を進めています。製造現場での部品の梱包業務等において継続的な業務改善や多能工化に積極的に取り組み、当社グループ全体の競争力向上に貢献しています。

 

ⅲ)ワークライフバランス推進

多様な働き方の実現を目指し、育児や介護と仕事の両立を多方面からサポートする様々な制度を設けています。一度退職した社員に復職の機会を提供するキャリアパートナー制度やコアタイムなしのフレックス勤務制度及び在宅勤務制度等を導入している他、事業所内保育所「あけぼの保育園 Ai-Kids(アイ・キッズ)」を運営しています。また、育児・介護休業法の改正に伴い、休暇制度の拡充など男女とも仕事と育児が両立できるように各種制度の継続と改善に努めています。今後も全ての社員がいきいきと働ける企業を目指し、取り組みを継続していきます。

 

ⅳ)健康経営

当社は、社員とその家族の健康維持・促進を、重要な経営課題のひとつであると考えております。2017年に「健康経営宣言」を制定し、社員が心身ともに健康で充実した生活を送るとともに、社員と会社がともに成長し、社会に貢献し続けていくために、健康づくりに資する様々な施策を積極的に推進することを宣言しています。具体的には、働き方改革、心身両面の健康促進、ヘルスリテラシーの向上を3本柱として、健康経営を推進していきます。全社一体となった健康づくり活動が実を結び、2025年には、経済産業省と日本健康会議が共同で推進する優良な健康経営を実践している大規模法人を顕彰する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を受けました。今回の認定は、8年連続8回目となります。

 

(3) リスク管理

サステナビリティ委員会では、「地球環境ワーキンググループ」、「社会課題ワーキンググループ」、「ガバナンスワーキンググループ」を設置し、将来の地球環境を含む社会的課題からバックキャストの考え方により当社におけるリスクと機会の検討を行うとともに、取締役会におけるガバナンスと情報開示の向上についても検討を行い、ESG課題におけるマテリアリティ(重要課題)の特定と当社の目指す姿、取り組みの検討を適宜行っております。

 

 

(4) 指標及び目標

① 「安全・安心な製品・サービスの提供」

サプライチェーンマネジメントによる人権尊重への取り組みや安全な労働環境の整備により、人権課題や重大災害の発生ゼロを目指します。品質マネジメントシステムの継続的改善や、予防安全に親和性の高い電動ブレーキの開発の推進により当社製品に起因する重大事故のゼロを目指します。また、シミュレーション技術や、レース活動を通した先端技術を一般車両向け製品に応用することで、社会やお客様ニーズの早期対応の実現とともに、安全はもとより、生産工程での二酸化炭素(CO)排出の削減や軽量化による車両の燃料消費低減への貢献を目指します。なお、開発戦略につきましては「6 研究開発活動」も合わせてご参照ください。

② 「誰もが活躍できる会社の実現と社会への貢献」

サプライチェーンも含めた「曙ブレーキグループ人権方針」の推進により、社会的な「人権尊重の責任」を果たしてまいります。内部統制システムの継続的改善を通し、取締役会によるガバナンスの強化を図るとともに、コンプライアンス活動や教育により、重要コンプライアンス違反の発生を防止します。また、「多様化促進」「キャリア支援」「ワークライフバランス」「健康経営」の推進により一人ひとりが働きやすい制度の拡充と活用しやすい環境の整備、生産性、創造性の向上を目指し、自律型人財の育成と確保を目指します。

③ 「地球温暖化防止への貢献と環境負荷低減の推進」

省エネルギーへの取り組み、再生可能エネルギーの積極利用等を通し、2030年にはScope1,2において、2013年度比50%のCO排出量削減を目指します。また、国内外の環境規制に対し、より厳しい自主規制とライフサイクルアセスメントにより開発段階から環境負荷物質の削減に取り組み地球環境の保全に貢献します。

 

人財の育成及び社内環境整備に関する方針に係る指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績の一部は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

リスキリングプログラムの受講者数

2027年度まで50

3

2023年度以降の延べ12名

管理職に占める女性労働者の割合(提出会社)

2030年度まで10

5.7

管理職に占める中途採用者の割合(提出会社)

28程度(2021年度実績)を維持

26.9

男性労働者の育児休業取得率(提出会社)

2030年度まで85

83.3

メンタルヘルス(セルフケア)研修受講率

毎年度の受講率100

100.0

 

 

 

3 【事業等のリスク】

(1) リスク管理体制

当社は、リスク管理活動の推進組織として、内部統制委員会の下部組織としてリスク管理委員会を設置しています。

リスク管理委員会は、企業活動に潜在する様々なリスクに対処するため、事業環境の変化に対応して、当社に関連するリスクを洗い出し、影響度や発生頻度に応じてマッピングを行い、定期的に点検しております。事業継続マネジメントやサプライチェーンマネジメントなど、当社全体の重点リスクについて対処方針を決定し、対処策の指示やその実施状況と有効性の監視を行い、活動内容は定期的に内部統制委員会を通じて取締役会に報告しております。

体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要」に記載しておりますコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。

 

(2) 事業等のリスク

当社グループの事業において、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると考えるリスクには、主として次のようなものがあり、会社運営にあたり注意を払っております。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの事業、業績及び財政状態に与える影響につきまして、合理的に予見することが困難であるものは記載しておりません。

 

① 技術革新・新製品開発に関するリスク

当社グループは、真のグローバリゼーションの中での事業拡大を目指し、将来のニーズを予測し、必要な経営資源を技術革新・新製品開発に投入しておりますが、市場、お客様ニーズ及び業界の技術の急激な変化等により、お客様の必要とする新技術・新製品がタイムリーに開発できなかった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

現在、急速な普及拡大がみられる電動パーキングブレーキについては当社の独自技術を活かした商用車等の高出力発生可能な重車両向け、高性能車両をターゲットとした軽量、コンパクトな電動パーキングブレーキの開発に取り組み、既存の製品ではカバーできない領域の商品化を実現しました。また電動サービスブレーキについては競合他社に先行した市場投入を図るべく開発を進めており、安心安全な社会づくりに寄与すべく、応答性の速さ、コントロール性の良さ、小型・軽量化を重点課題として電動化開発の推進を図っております。

一方で、従来ブレーキの改良も進めxEVへのシフトに対応していきます。航続距離に貢献するさらなる軽量化、低引き摺り化を図りつつ、xEVの特徴である回生制動に伴う摩擦ブレーキ使用頻度低下にも対応したブレーキ摩擦面の防錆技術、貼り付き抑制技術開発、また昨今のプレミアムEVで需要が旺盛な意匠性、見栄えを向上した製品の開発も進めてまいります。

摩擦材開発については銅フリー摩擦材のシェア拡大に向けた取り組みとともに積極的な持続可能資源の活用のもと、欧州EURO7にて具体的な規制が示されたブレーキ摩耗粉塵排出の抑制、xEVへのシフトで着眼されている回生ブレーキとの協調、さらには原材料や製造プロセスを抜本的に見直し製造過程でのCO発生量を従来比で50%削減できるブレーキパッド開発を含め、今後の市場の変化に対応した次世代摩擦材の開発を推進しております。

これらに加えて、これまで当社が培ってきた技術をベースに、コンピュータシミュレーションを活用した技術開発の強化を図っております。これにより、品質向上と同時に開発リードタイムの短縮も可能となり、お客様へタイムリーに新製品を提案することで、多くのビジネスチャンスを得ることが可能となります。

当社はこのような将来の環境対応を軸として、お客様ニーズに沿った開発を進めることで、新技術、新製品で他社に先行されるというリスクを抑制しながら社会貢献を図ってまいります。

 

 

② 生産技術・設備に関するリスク

当社グループは、事業再生計画に基づく生産拠点の再編を実施しており、その基盤となっているのは最適生産への取り組みです。余剰設備の有効活用、工場間及び工場内での寄せ止め、生産設備の稼働率向上を進めており、国内は専門工場化しております。その結果として、地震、台風、洪水等の自然災害や大規模な火災・爆発などの事故等により建屋や設備の損壊が発生した場合、生産補完ができないため、顧客への製品供給に遅延や不能が生じることで当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

国内での補完はできなくとも海外工場との補完は以下のように可能となっております。補完関係にある工場が海外にあることによってリードタイムが長くなることについては、事業継続マネジメント(BCM)の危機発生時の対応として必要な措置を実行します。

 

海外補完体制

製品・主要部品

国内生産工場

海外生産工場

ディスクブレーキ

岩槻製造(埼玉県)

エリザベスタウン(米国)、メキシコ、
広州(中国)、チョンブリ(タイ)、インドネシア

ドラムブレーキ

山陽製造(岡山県)

インドネシア

ブレーキパッド

山形製造(山形県)

グラスゴー(米国)、蘇州(中国)、
チョンブリ(タイ)、インドネシア

ブレーキライニング

福島製造(福島県)

インドネシア

鋳物部品

館林鋳造所(群馬県)

ラチャブリ(タイ)

ピストン

岩槻製造

チョンブリ(タイ)、インドネシア

 

 

③ 品質に関するリスク

当社グループでは、安全・安心を支える上で品質は最も重要であると考え、常に、より高度な品質保証体制の構築を目指しております。自工程での品質保証、過去の不具合に学び失敗を繰り返さないなどの活動の浸透を進め、万全の体制をもって製品の生産に努めております。ただし、当社グループの製品は直接安全に関わる製品であり、万が一、製品の欠陥等が発生し、お客様への流出が防止できなかった場合、多大な費用の発生と社会的信用の低下により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社国内生産子会社が製造する一部製品の定期検査報告における不適切な行為について、再発防止策を今後も着実に実行することにより、信頼の回復に全力で取り組んでおります。

 

④ 災害等に関するリスク

当社グループは、国内外に多くの拠点を有しており、地震、台風、洪水等の自然災害、感染症などのパンデミック、大規模火災や爆発のような事態が発生した場合、人的資源への影響、建屋や設備の損壊、ライフラインや情報インフラの寸断などにより生産活動が困難となり、顧客への製品供給に遅延や不能が生じることで当社グループの財政状態や業績、ひいては事業の継続に悪影響を及ぼす可能性があります。

その対応策として当社グループでは、危機管理マニュアルの整備、従業員の安否確認方法の整備、事業継続マネジメント(BCM)の啓蒙活動とこれらに基づいた防災訓練、さらに、防災、減災の取り組みや早期復旧を目的とした建屋の耐震補強、生産設備の転倒防止などを、安全・BCM推進部署を中心として独立した組織で毎年チェックと評価、改善を行っています。

危機が発生した場合は、安全・BCM推進部署が中心となって関係する国内外の拠点を網羅して速やかに対策本部を立ち上げ、必要な措置を実行しております。

 

 

⑤ 原材料等の調達に関するリスク

当社グループは多数の外部取引先から原材料・鋼材・部品等を調達しておりますが、市況変化による価格の高騰や品不足、取引先が製造した製品の欠陥、経営状態の悪化、不慮の事故、自然災害等に伴う原材料・鋼材・部品等の供給停滞によって、当社グループの製造コストの上昇、生産遅延・停止が起こり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、市場における電動化の促進に伴い、より高度で複雑な技術を利用する部品の取引が増えることによるサプライチェーンの複雑化や製造コストの上昇などによって当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

自然災害(地震、豪雨浸水など)や事故(火災、爆発など)による事業継続性への影響を考慮したサプライチェーンにおける適正な在庫量の再検証や、サプライヤーマップの作成など有事発生による供給影響度の確認プロセスの迅速化に取り組んでまいります。

 

⑥ コンプライアンスに関するリスク

当社グループでは、様々なコンプライアンス活動を通じてコンプライアンス上のリスクの回避を図っておりますが、法令違反を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合には、法令による処罰や訴訟の提起、損害賠償請求、ステークホルダーからの信頼低下などにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

その対応策として、当社グループでは、akebonoグローバル行動規範、akebonoグローバル行動基準やコンプライアンス規定等の整備によりコンプライアンス推進体制を構築するとともに、各事業部門・製造拠点が自ら施策を立案し、コンプライアンス委員会において承認されたそれぞれの年間活動計画に沿ってコンプライアンス活動を推進することを中心に、ハラスメントや長時間労働防止のための労務研修、下請法違反防止・インサイダー取引防止を目的とした各種研修を行うなど、社員のコンプライアンス意識向上のための各種施策を実施しております。

また、内部通報制度として社外相談窓口と社内相談窓口を設置しており、それぞれの窓口に寄せられた相談については、適宜必要な調査を実施し、適切に対応しております。外部相談窓口への相談については、対応部署のみならず全ての取締役が受領することとしており、その対応と進捗については毎月取締役会に報告しております。

 

⑦ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループでは製品開発や製造、経営等に関わる機密情報や個人情報等の重要情報を保有しており、サイバー攻撃や情報機器の盗難・紛失、社内における誤操作・管理ミス等によりこれら重要情報が漏洩するリスクがあります。

これらの情報が漏洩した場合、会社の信用失墜、損害賠償・法的罰則・競争力低下等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報セキュリティに関しての最高意思決定機関としてISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)委員会を設置し、その配下に各業務部門・製造拠点責任者及び担当者を配置し、情報システム管理部署と連携し、海外子会社とも連携して、漏洩防止等の情報管理徹底に努めております。

平時は、ネットワーク・サーバー等の物理的防御に加え、外部専門家による常時セキュリティ監視をグローバルで行うと同時に、人に対する情報セキュリティレベルの向上を行うために教育・訓練・啓発活動を行っています。

また有事の際は、ISMS委員会、各業務部門・製造拠点責任者及び担当者が情報システム管理部署と連携し、初動から封じ込め、対策までを短時間で行えるよう有事フローを作成し備えています。

新型コロナウイルス感染症の蔓延防止策として利用拡大されたテレワーク・在宅勤務は働き方のひとつとしても定着しており、これに対応するため、ソフト面ではテレワーク・在宅勤務時のガイドライン等による啓発活動を実施すると同時に、ハード面では外部からの不正アクセスを防止するための暗号化通信の必須化、セキュアなネットワーク環境の提供、会社貸与デバイス以外でのネットワークアクセスの制限等により、リスクの低減を図っております。

 

 

⑧ 環境に関するリスク

当社グループでは、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に向けて様々な環境対策を進めておりますが、環境問題への対応の遅れや適応が難しい場合、当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、地球環境保全の見地から環境問題への対応は企業としての重要な社会的責任であると考えており、SDGsの推進に向けて、環境に配慮した製品の開発、生産設備の改善、CO排出量削減を始めとして様々な環境対策を進めております。

また、気候変動を含む環境に関わる課題はサステナビリティ経営推進のための重要なテーマと捉えており、カーボンニュートラルに向けた中長期目標を設定、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報を開示し、将来を見据えた取り組みを進めております。環境に関わる課題はサステナビリティ委員会にて取り組み方針・施策を策定し、事業に重要な影響を及ぼすと判断されたテーマについては、経営会議で検討の上、取締役会へ報告し監督を行っております。

 

⑨ 為替・金利変動に関するリスク

当社グループの事業は、地域ごとに原材料・部品の輸入、製品等の輸出の取引があります。また、当社グループの資産及び負債の一部は外貨建てであり、適宜、為替バランスの監視を行っておりますが、全てのリスクをヘッジすることは難しく、その変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社の海外関係会社財務諸表は現地通貨で作成されておりますが、当社グループの連結財務諸表作成時においてこれらの財務諸表は円換算されるため、現地における通貨金額が変わらない場合においても、換算時の為替レートにより円換算後の連結財務諸表上の金額が悪影響を受けることがあります。また、金利情勢や証券市場の変動が当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 経済状況の変動に関するリスク

当社グループにおける営業収入は、当社グループが製品を生産・販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。当社グループの主要市場において、以下の事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律や規制の変更

・戦争、内乱、紛争、暴動、テロ、疾病等による社会的又は経済的混乱

・深刻な景気後退による自動車需要の減少とそれに伴う完成車メーカーの生産計画変更

また、将来の脱炭素社会を目指す各国政府方針や各完成車メーカーにおける社会全体のモビリティ変革への取り組みによる業界の構図の変化等、国内外の競合他社との競争環境の変化により、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 人財に関するリスク

当社グループは、人財は経営の基盤と考え様々な人事施策を行っておりますが、若手社員の人財育成・確保ができなかった場合や、特定のスキルを持った社員が流出した場合、適材適所の配置が計画どおり進まなかった場合の社員のモチベーション低下や、急速な事業環境の変化によるストレス増大等からくる休職や退職者が増加した場合、長期的視点から当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの競争力を維持・向上し続けるためには、高度な専門技術に精通した人財、経営のマネジメント能力に優れた人財を採用し、高齢化が進む中で技術を伝承する人財を計画的に育成することが重要であると考えております。特に近年、グローバルな事業活動を一層進めるなかで、それらの環境で活躍できる人財の育成・確保が急務であり、国内外での積極的な採用活動、研修・教育の充実、コア人財の流出防止などの施策を講じています。

 

 

⑫ 知的財産に関するリスク

当社グループが事業を遂行する上で必要な技術を、他者に特許出願等されてしまうと、市場における自社事業の自由度が確保できなくなり、その結果、特定の技術、製品又はサービスを提供できなくなる可能性があります。

この対策として、当社グループの発展に寄与できるよう積極的な発明提案の発掘活動を行い特許権等の権利を確保することにより、市場における事業の自由度の確保に努めています。

また、当社グループが事業を遂行するなかで、当社グループの事業が他者の知的財産権を侵害したとして、損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この対策として製品開発時に他者の知的財産権とのクリアランスの調査が義務付けられており、他者の知的財産権を侵害しないことを確認しています。

 

⑬ 上場維持基準に関するリスク

当連結会計年度末において、当社の流通株式比率は、東京証券取引所プライム市場の流通株式比率の上場維持基準(35%以上)に適合しておりません。通常、1年以内に上場維持基準に適合することが必要となりますが、当社は、事業再生支援目的でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第弐号投資事業有限責任組合(以下「JISファンド」といいます。)との出資契約を締結し、JISファンドと連携しながら経営体質の改善を進めている最中であることから、東京証券取引所より2030年3月末までを適合に向けた計画期間とする特例適用が認められており、同計画期間内での流通株式比率の上場維持基準適合に向けて取り組んでおります。

上場維持基準適合のためには、2025年3月31日時点で50.32%の当社普通株式を保有するJISファンドの持株比率低下を図ることが必要となります。また、JISファンドが保有する当社のA種種類株式の普通株式を対価とする取得請求権の行使がなされた場合、一時的に流通株式比率が一層低下する可能性があります。

このため、当社は、JISファンドと持株比率の低下等について協議をしていくためにも、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 対処すべき課題 ② 上場維持基準への適合」に記載の取り組みを実施してまいります。

しかしながら、こうした取り組みをもってしても、2030年3月末までの計画期間内に流通株式比率の上場維持基準に適合しない場合、プライム市場の上場は廃止となります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当社グループを取り巻く事業環境は、エネルギー価格の高止まりや各国経済の減速リスク、不安定な為替相場の影響などにより、依然として不透明な状況が続いております。

このような状況下、当連結会計年度(注)における当社グループの業績は、円安の影響がありましたが、米国における一部車種の生産終了や日本・欧州における完成車メーカーの生産量減少などにより、売上高は1,617億円対前期比46億円(△2.8%)の減収となりました。

利益面では、賃金上昇による労務費の増加や受注減少の影響があったものの、資材調達・生産性向上などの合理化や販売価格の見直しにより、営業利益は31億円対前期比0.3億円減(△0.9%)で横ばいとなりました。経常利益は、リファイナンス資金の借入に伴う資金調達費用や為替差損などにより23億円の経常損失(前期は経常利益38億円)となりました。

特別損益において投資有価証券売却益を計上しましたが、経常損失の影響が大きく、親会社株主に帰属する当期純利益は2億円対前期比33億円(△95.1%)の減益となりました。

 

(単位:億円)

 

前期

当期

増減

増減率

売上高

1,663

1,617

△46

△2.8%

営業利益

32

31

△0

△0.9%

経常利益

38

△23

△61

-%

税金等調整前当期純利益

41

40

△1

△2.2%

親会社株主に帰属する当期純利益

35

2

△33

△95.1%

 

 

地域セグメントごとの業績は次のとおりです。

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減

増減率

為替換算
影響

売上高

日本

676

650

△26

△3.8%

 

北米

506

498

△7

△1.5%

36

 

欧州

140

127

△12

△8.9%

5

 

中国

132

119

△13

△9.9%

7

 

タイ

73

73

1

0.7%

5

 

インドネシア

249

245

△4

△1.7%

8

 

連結消去

△113

△96

16

-%

 

連結

1,663

1,617

△46

△2.8%

60

営業利益

日本

28

27

△1

△3.1%

 

北米

△32

△32

0

-%

△2

 

欧州

5

3

△2

△32.3%

0

 

中国

1

6

5

575.9%

0

 

タイ

7

6

△0

△5.1%

0

 

インドネシア

21

18

△2

△10.9%

1

 

連結消去

3

2

△1

△24.9%

 

連結

32

31

△0

△0.9%

△1

 

 

① 日本

一部完成車メーカーの生産量減少などにより、売上高は650億円対前期比26億円(△3.8%)の減収となりました。

利益面では、生産性向上などの合理化や前期に引き続き販売価格の見直しを進めたものの、受注減少や原材料価格の市況高騰影響などにより、営業利益は27億円対前期比1億円(△3.1%)の減益となりました。

 

 

② 北米

前期末に立ち上がったメキシコにおける新型車向け製品や円安の影響はあるものの、米国における一部車種の生産終了などにより、売上高は498億円対前期比7億円(△1.5%)の減収となりました。

利益面では、販売価格の見直しや新型車向け製品の受注はありましたが、賃金上昇による労務費の増加や米国における生産終了に伴う受注減少の影響などにより、営業損失は32億円(前期は営業損失32億円)となりました。

 

③ 欧州

完成車メーカーの生産量減少や一部車種のモデルチェンジに伴う販売終了により、売上高は127億円対前期比12億円(△8.9%)の減収となりました。

利益面では、資材調達・生産性向上などの合理化に取り組んでいるものの、受注減少の影響により、営業利益は3億円対前期比2億円(△32.3%)の減益となりました。

 

④ 中国

円安の影響があった一方で、主要な日系完成車メーカーを中心に受注が減少したことにより、売上高は119億円対前期比13億円(△9.9%)の減収となりました。

利益面では、受注減少の影響があったものの、経費削減や資材調達・生産性向上などの合理化に取り組んだことにより、営業利益は6億円対前期比5億円(+575.9%)の増益となりました。

 

⑤ タイ

金利上昇やローン審査厳格化を主とした国内需要減退がありましたが、前期の後半に立ち上がった日系完成車メーカー向け製品の受注増加や円安影響などにより、売上高は73億円対前期比1億円(+0.7%)の増収となりました。

利益面では、販売価格の見直しや、資材調達・生産性向上などの合理化に取り組んでいるものの、国内需要減退による受注減少により、営業利益は6億円対前期比0.3億円(△5.1%)の減益となりました。

 

⑥ インドネシア

金利上昇やローン審査厳格化により小型車用製品を中心に受注が減少し、売上高は245億円対前期比4億円(△1.7%)の減収となりました。

利益面では、原材料価格やエネルギーコストの市況高騰影響を販売価格へ転嫁したことや資材調達・生産性向上などの合理化はありましたが、受注減少や賃金上昇による労務費の増加により、営業利益は18億円対前期比2億円(△10.9%)の減益となりました。

 

(注)当連結会計年度とは

(1) 北米・中国・タイ・インドネシア:2024年1月~2024年12月

(2) 日本・欧州                    :2024年4月~2025年3月 となります。

 

 

(2) 財政状態

当期末の総資産は、前期末比221億円減少1,283億円となりました。

(単位:億円)

(資産の部)

前期末

当期末

前期末比

(負債・純資産の部)

前期末

当期末

前期末比

流動資産

755

650

△105

流動負債

814

313

△500

現金及び預金

269

183

△86

仕入債務

198

182

△15

売上債権

299

274

△25

有利子負債

491

30

△461

棚卸資産

163

172

9

その他

125

101

△24

その他

23

21

△3

固定負債

86

410

324

固定資産

750

634

△116

有利子負債

2

322

319

有形固定資産

498

502

4

その他

84

89

5

投資有価証券

131

1

△130

負債合計

900

724

△176

その他

121

131

10

純資産

605

559

△45

総資産

1,505

1,283

△221

負債・純資産

1,505

1,283

△221

 

 

 (3) キャッシュ・フローの状況

当期末の現金及び現金同等物は、前期末比86億円減少183億円となりました。

(単位:億円)

 

前期

当期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

76

14

△62

投資活動によるキャッシュ・フロー

△35

60

95

 

 

 

(フリー・キャッシュ・フロー)

41

74

33

財務活動によるキャッシュ・フロー

△19

△185

△166

換算差額

△7

27

35

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

主な要因として、投資有価証券売却損益△90億円や2020年3月期に計上したリコール関連損失に係る未払金の支払額23億円などがあった一方で、税金等調整前当期純利益40億円減価償却費66億円などがあり、資金が増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

主な要因として、インドネシアにおける工場移転などの設備投資により有形及び無形固定資産の取得による支出59億円があった一方で、投資有価証券の売却による収入116億円があり、資金が増加となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

主な要因として、長期借入れによる収入310億円があった一方で、長期借入金の返済による支出498億円などがあり、資金が減少となりました。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

58,862

△2.5

北米

49,194

0.3

欧州

11,670

△14.1

中国

10,570

△10.0

タイ

6,603

3.3

インドネシア

24,788

2.3

合計

161,687

△2.2

 

(注) 金額は、販売価格によるものであります。

 

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

58,607

△2.5

4,509

△4.9

北米

49,416

0.4

2,178

20.1

欧州

11,978

△10.9

867

△22.2

中国

10,296

△16.8

765

△30.8

タイ

6,643

0.3

533

6.0

インドネシア

24,346

0.6

1,981

2.0

合計

161,287

△2.8

10,833

△3.4

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

58,839

△2.9

北米

49,051

△0.4

欧州

12,225

△9.6

中国

10,637

△11.1

タイ

6,613

△0.6

インドネシア

24,307

0.1

合計

161,672

△2.8

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものでありますが、予測しえない経済状況の変化等、様々な要因があるため、その結果について、当社が保証するものではありません。

 

(1) 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度は、売上高は1,617億円対前期比46億円(△2.8%)の減少となりました。日本及び欧州において完成車メーカーの生産量減少などにより26億円12億円とそれぞれ減収となったことが主な要因です。

売上原価は1,455億円対前期比51億円(△3.4%)の減少となり、販売費及び一般管理費は131億円対前期比5億円(+3.7%)の増加となりました。賃金上昇による労務費の増加や受注減少の影響はあったものの、資材調達・生産性向上などの合理化や販売価格の見直しにより、営業利益は31億円対前期比0.3億円減(△0.9%)で横ばいとなりました。経常利益はリファイナンス資金の借入に伴う資金調達費用17億円や為替差損19億円の計上などにより23億円の経常損失(前期は経常利益38億円)となりました。

特別損益については、投資有価証券売却益90億円を計上しましたが、経常損失の影響が大きく、税金等調整前当期純利益は40億円対前期比1億円(△2.2%)の減益となりました。

これらに加えて、投資有価証券売却益に係る法人税等などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は2億円対前期比33億円(△95.1%)の減益となりました。

 

(2) 財政状態の分析

(単位:億円)

(資産の部)

前期末

当期末

前期末比

(負債・純資産の部)

前期末

当期末

前期末比

流動資産

755

650

△105

流動負債

814

313

△500

現金及び預金

269

183

△86

仕入債務

198

182

△15

売上債権

299

274

△25

有利子負債

491

30

△461

棚卸資産

163

172

9

その他

125

101

△24

その他

23

21

△3

固定負債

86

410

324

固定資産

750

634

△116

有利子負債

2

322

319

有形固定資産

498

502

4

その他

84

89

5

投資有価証券

131

1

△130

負債合計

900

724

△176

その他

121

131

10

純資産

605

559

△45

総資産

1,505

1,283

△221

負債・純資産

1,505

1,283

△221

 

 

(資産)

当期末の資産は1,283億円と前期末比221億円の減少となりました。流動資産は650億円と前期末比105億円の減少となりました。これは主に、リファイナンスなどにより現金及び預金が86億円減少したことによるものです。固定資産は634億円と前期末比116億円の減少となりました。これは主に、投資有価証券が売却により130億円減少したことによるものです。

(負債)

当期末の負債は724億円と前期末比176億円の減少となりました。これは主に、リファイナンス資金の借入により、固定負債の有利子負債が319億円増加した一方で、既存の借入金の返済などにより流動負債の有利子負債が461億円減少したことによるものです。

有利子負債残高351億円から「現金及び預金」を控除したネット有利子負債残高は168億円であります。

(純資産)

当期末の純資産は559億円と前期末比45億円の減少となりました。これは主に、円安の影響で為替換算調整勘定が49億円増加した一方で、投資有価証券の売却などによりその他有価証券評価差額金が78億円減少したことや非支配株主への配当金支払いなどにより非支配株主持分が17億円減少したことによるものです。

 

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を資金調達の基本としております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は351億円、現金及び現金同等物の残高は183億円となっております。有利子負債残高から「現金及び預金」を控除したネット有利子負債残高は168億円と前期末と比べ55億円減少しました。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

(1)ローン契約に付される財務上の特約

当社は、2024年6月28日を借入実行日としドイツ銀行東京支店をアレンジャーとするリファイナンス資金の借入契約(以下、「本借入契約」といいます。)を、同月14日付で締結いたしました。本借入契約の概要は以下のとおりです。

(1) 形態:     シンジケートローン(タームローン)

(2) 期末残高:   320億円

(3) 契約日:    2024年6月14日

(4) 借入期間:   2024年6月28日~2029年6月末日

(5) アレンジャー・エージェント: ドイツ銀行東京支店

(6) 担保:     土地、建物、機械装置並びに関係会社株式及び関係会社短期貸付金

(7) 財務上の特約:

① グロスレバレッジ比率(本借入契約に基づき算定される各参照期間(2024年6月末日から2029年3月末日までの各四半期末に終了する12ヶ月の各期間をいう。以下同じ。)末日時点の当社グループの負債総額の、本借入契約に基づき算定される各参照期間の当社グループのEBITDAに対する割合をいう。):

(ア)  2024年6月末日~2025年3月末日の各四半期末: 4.25倍以下

(イ)  2025年6月末日~2026年3月末日の各四半期末: 4.25倍以下

(ウ)  2026年6月末日~2027年3月末日の各四半期末: 3.50倍以下

(エ)  2027年6月末日~2028年3月末日の各四半期末: 3.25倍以下

(オ)  2028年6月末日~2029年3月末日の各四半期末: 3.00倍以下

② デットサービスカバー比率(2026年6月末日以降の各参照期間の当社グループのEBITDAを基礎として本借入契約に基づき算定されるキャッシュ・フローの額の、当該各参照期間における本借入契約に基づき算定される当社グループによる元利金返済等の額に対する割合をいう。):

1.05倍以上

③ 銀行預金残高(本借入契約に基づき算定される当社グループの銀行預金残高をいう。):

(ア)  2025年3月末日: 12,400百万円以上

(イ)  2026年3月末日: 8,900百万円以上

(ウ)  2027年3月末日: 7,950百万円以上

(エ)  2028年3月末日: 7,950百万円以上

(オ)  2029年3月末日: 7,950百万円以上

 

④ 連結純資産:

(ア)  2025年3月末日: 46,092百万円以上

(イ)  2026年3月末日: 44,336百万円以上

(ウ)  2027年3月末日: 48,193百万円以上

(エ)  2028年3月末日: 50,981百万円以上

(オ)  2029年3月末日: 53,498百万円以上

⑤ 連結営業利益:

2025年3月期~2029年3月期の各連結会計年度: 負でないこと

⑥ 年間設備投資金額上限(本借入契約に基づき算定される当社グループの各連結会計年度の設備投資金額の上限をいう。):

(ア)  2025年3月期: 7,661百万円以下

(イ)  2026年3月期: 8,527百万円以下

(ウ)  2027年3月期: 7,915百万円以下

(エ)  2028年3月期: 6,486百万円以下

(オ)  2029年3月期: 5,035百万円以下

※前連結会計年度の設備投資金額が当該年間設備投資金額上限に満たない場合、その差額についてその翌連結会計年度の年間設備投資金額上限が増額される(但し、当該前連結会計年度の年間設備投資金額上限の30%を上限とし、当該翌連結会計年度の次の連結会計年度への繰り越しは行なわれない。)。

 

(2)企業・株主間のガバナンスに関する合意

2024年4月1日前に締結された企業・株主間のガバナンスに関する契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、コア技術である音・振動解析技術を活かし、自動車のみならず、あらゆる交通機関、産業機械の各種ブレーキ製品を担う摩擦材・ブレーキの開発を進めております。また製品開発を支える基礎技術、解析の深化を重点的に行うため、社会潮流、市場動向、競合他社など動向をグローバルに見据え、研究開発への投資と開発体制の充実を図っております。

開発戦略としては、音・振動に対する知見をさらに深化させ、カーボンニュートラルを見据えたブレーキ低引き摺り化・軽量化・グリーン材料化、摩耗粉塵抑制などの環境対応技術開発、電動ブレーキ開発を始めとした自動運転対応技術開発、高性能車両向けのブレーキ開発を継続し、推進してまいります。これらの開発は日本・米国・欧州・中国・タイの開発拠点が連携し、地産地消を基本に現地調達をさらに促進し、グローバル拠点それぞれの特長を活かしながら、必要な技術を駆使してグローバル競争力を高めた次期製品開発に注力しております。

 

(日本)

ブレーキ摩擦材開発については、カーボンニュートラルを見据えた環境対応技術開発を軸に取り組みを進めております。グローバルなニーズ及び米国ワシントン州を含む複数の州で条例化された銅に関する環境規制に対応する銅フリー摩擦材開発を中心に、高性能で音・振動特性に優れ、かつ昨今欧州EURO7にて具体的な規制が示されたブレーキ摩耗粉塵排出の抑制に挑戦しながら、製造工程でのCO排出量を大幅に削減できる製品の開発を進めております。同時に、低コスト化についても、性能や環境へ配慮しながら開発を進めております。また、xEV車のブレーキ特性に合わせた摩擦材の開発を進めております。

ディスクブレーキの開発においても、高性能車両向け、環境対応、EV(電気自動車)化/自動運転への対応に注力しております。

高性能車両向けアルミ合金製対向型ブレーキにおいては、レース活動で培ったブレーキ開発技術を盛り込み、製品化を実現しております。コスト競争力を向上させつつ、新規開発へのリソースの配分を確保する事によって、差別化製品を提供してまいります。

環境に配慮した製品開発に対しても、車の燃費・電費向上の観点から革新的な軽量化と引き摺り低減に取り組んでおります。また、自動運転に対応するための電動化技術として、パーキングブレーキ機能を電動化した電動パーキングブレーキ製品及びサービスブレーキ機能も電動化した電動サービスブレーキ製品の技術開発を進めております。さらにはEV化で回生制動に伴う摩擦ブレーキ使用頻度低下にも対応したブレーキ摩擦面の防錆技術、貼り付き抑制技術開発、加えて昨今のプレミアムEVで需要が旺盛な意匠性、見栄えを向上した製品の開発も進めております。

グローバルでの供給をさらに強化させるため、技術面とコスト面のベンチマークを徹底して行い、使用地域の独自性や使用状況に応じた製品づくりへの技術開発を進めております。

環境問題に対応できる摩擦材原材料の開発、これによる摩擦材の機能向上、ブレーキの鳴き、振動抑制に向けた要素技術開発、過去の評価や特性データのAI活用などに取り組んでおります。

今後も中長期を見据えた研究開発に取り組み、他社との差別化、優位性確保を図ってまいります。

 

(北米)

北米完成車メーカー向けはもとより、グローバルなニーズに対応できる製品開発に取り組んでおります。日系完成車メーカー向けにおいても、開発から量産までの現地完結型開発を展開しております。国内開発拠点との緊密な連携により、グローバルでの連携を一段と進めております。米国ワシントン州を含む複数の州で条例化された環境規制に対応した、乗用車からピックアップトラック用まで高性能で音・振動特性に優れた摩擦材開発を行っております。

 

 

(欧州)

ドイツに開発機関(現地法人)を置き、よりお客様に密接したディスクブレーキ適用開発を進めております。特に高性能車両向けアルミ合金製対向型ブレーキにおいて、レース活動で培ったブレーキ開発技術を盛り込み、製品化を加速させております。高性能車両向け摩擦材の研究開発活動についても、日本と連携しながらさらなる展開を進めております。

 

(中国)

特に中国にてシェアの拡大が急速に進んでいる新興EVメーカー向けの製品を提供するため、現地のお客様の声を反映させた製品の開発と、それに並行して特にご要望の多い開発期間の半減を目指した開発プロセスの構築を日本と連携しながら進めております。摩擦材においては、部品・原材料の現地調達化と現地の環境に適したつくり方により、中国市場で通用する性能特性を有する製品開発を行っております。ディスクブレーキにおいては、中国においてシェア拡大が著しい高級高性能EVのニーズに合致した、意匠性の高さも盛り込み付加価値の高いアルミ合金製対向型キャリパーの開発と提案を行っております。開発期間の短縮ニーズに対しては、日本と連携したシミュレーション技術・バーチャル技術の活用により試作・評価の点数を削減し、かつ手戻りの少ない効率的な開発プロセスの構築を目指しています。

 

(タイ)

タイのブレーキ開発拠点を軸に、成長著しいASEAN諸国のニーズを的確につかむためのブレーキ評価を基軸とした開発活動を推進しております。

 

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は1,942百万円であり、この他に日常的な改良に伴って発生した研究開発関連の費用は5,022百万円であります。