第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営の基本的な考え方は、以下のとおりであります。

1. お客様第一の心で商品を創り

2. 知恵と技術で高品質を実現し

3. 人を大切にする明るい職場を築いて

企業の繁栄と豊かな環境作りで社会に貢献する

 

(2) 中長期的な目標指標

当社グループは、中期的な経営方針として、既存事業の競争力強化と更なる成長、新規領域の事業育成を掲げております。安定的成長と持続的収益性を中期的な目標指標として掲げており、2025年2月25日に公表しました中期経営計画では、2025年度から2027年度の期間において、売上高3,500億円、営業利益率7.7%、ROE12.0%を目標として設定しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、持続可能(サステナブル)な社会の実現に事業活動を通して貢献していくことをめざし、「VISION2030」を掲げています。企業グループのめざす姿の実現に向けた活動に全力で取り組んでまいります。

・ビジョン:「この手で笑顔の未来を」

・めざす姿:「確かな技術と品質で 豊かな社会へ新たな価値を創造」

「今をもっと快適に」

「未来の子どもたちに安心と笑顔を」

 

(4) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題


 


 

これらの活動を通じて、当社グループは、世界のお客様に感動いただける商品・サービスを提供できる企業をめざして努力する所存です。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、持続可能な社会の実現に向けてサステナビリティ基本方針を策定するとともに、VISION2030を基に、2050年以降を見据えた長期視点で事業、環境、人財・風土、社会、ガバナンスの5つの観点から当社の取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。特定したそれぞれのマテリアリティを経営戦略や方針へ反映させ、ありたい姿と具体的なKPIを設定しました。


 

≪ガバナンス≫

CROを議長とするサステナビリティ委員会において、サステナビリティ基本方針に基づき、経営層がESG分野全般の方向性、適正性について、2回/年以上のマネジメントレビューを実施しています。年2回開催するサステナビリティ委員会において、下部委員会から報告を受け、内容を審議しています。これらの審議の結果のうち、重要事項は取締役会や経営役員会に報告されています。

 

≪リスク管理≫

当社グループでは、サステナビリティ委員会において、下部委員会(※)から報告を受けた経営に重要な影響を与えるリスクに対して、総合的な管理を実施しています。下部委員会から報告されてきたリスクは、抽出・分析・評価を行ったうえで優先的対応リスクを選定し、所管部署が中心となってリスク低減に関する各種施策を実施しています。

下部委員会では、各種施策の進捗状況やリスクの最新状況を確認するとともに、サステナビリティ委員会に報告します。サステナビリティ委員会は、報告に基づいてリスク管理に関する指示・監督を行っています。

※ 下部委員会:TCFD委員会、CN委員会、安全衛生委員会、働き方改革委員会、BCP委員会およびガバナンス委員会

 

 

≪人財の育成および社内環境整備に関する方針、戦略≫

当社は、『「自律的に学び、考え、果敢に挑戦する」人財が、「認め合い、活かしあい」ながら、ともに成長し続けるチーム・組織をめざす』をスローガンに風土改革、人財変革、多様な人財活躍の3本柱で人財基盤を強化する取り組みを推進しています。

(1) 風土改革

当社では、経営理念の中に「人を大切にする明るい職場を築く」ことを掲げ、従業員ひとりひとりが高い志とやりがいを持ち、イキイキと仕事することを通じて個人も会社も成長を実感できる風土づくり、職場づくりに取り組んでいます。

VUCA(※)といわれる環境下において、企業が健全に成長するためには従業員エンゲージメントを向上させることが重要であるとの認識に立ち、2022年より半期ごとにサーベイを実施し、組織・従業員の状態を可視化しています。

調査結果を踏まえ、2023年には会社・経営陣が本気で会社風土を変えるための意思を示すための全社アクション「働きがい改革」の一環として、役員・幹部と従業員の対話会「愛三カタリバ」を開催し、2024年には、第2弾として「愛三カタリバ キャリア編」を開催しました。この試みでは、従業員が自身のキャリアについて経営陣や自身以外の従業員と対話を深めることで、自己成長やキャリア形成に対する意識を高める機会を提供しました。

これらの取り組みや、各部門でのエンゲージメント結果を踏まえた施策の効果もあり、2024年のエンゲージメントスコアは全社で1ポイント上昇し、53Pts.に達しました。(23年実績:49Pts. ⇒ 52Pts.)

また、設問項目別に見ると「自社への将来性」が5Pts.、「キャリア実現」が2Pts.増加しました。

今後も従業員ひとりひとりが働きがいを実感できる職場環境の実現を目指し、さらなる取り組みを推進してまいります。

※ Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取り、将来の予測が困難な状態のことを指します。

(2) 人財変革

CASE(※1)、MaaS(※2)、カーボンニュートラルへの対応など、変化が速く、大きく、激しい現在の自動車業界において、当社の持続的成長には、既存のパワートレイン製品事業の競争力強化はもとより、電動化対応や、非モビリティ領域へのチャレンジが欠かせず、その基盤となる人財育成が不可欠です。従業員のスキル向上(リスキリング、アップスキリング)に向けて、ソフトウェア教育やDX教育の実施、企業内訓練校(愛三学園)での電子テクノロジー講座の開設など、積極的な投資を行っています。

また「自律的に学び、考え、果敢に挑戦する」人財育成にも注力しています。2023年にはオンデマンド型学習ツールや学習管理システム「愛三マナビバ」を導入し、2024年には従業員の自律的なキャリア形成を支援する「世代別キャリアデザイン研修」を開催しました。さらに2025年には教育体系を「選抜型」から「自律型」へ全面改訂する予定です。

従業員ひとりひとりの成長を支えるため、マネジメントスタイルも「管理型」から「支援型」へ転換を進めています。具体的には、コーチング研修の強化や1on1ミーティングの拡大を実施し、個々の従業員に寄り添った支援を強化しています。

また、変革に向けてチャレンジする従業員を適正に評価・育成していくため2020年度から新人事制度を段階的に導入しています。2024年10月から従業員の会社貢献度を従来以上に反映できるよう退職金制度を改訂いたしました。2025年4月からは経営と執行を分離し、経営のスピードと内容の充実を図るため、「経営役員」を設置し、経営戦略の策定および業務執行の監督を担当するとともに、執行職に「執行幹部」を新設し、経営戦略に基づいた業務の執行を担当するように役員体制ならびに執行職体制を見直しました。

※1 Connected、Autonomous/Automated、Shared、Electricの頭文字

※2 Mobility as a Serviceの略 あらゆるモビリティ(移動)をひとつのサービスととらえる新たな「移動」の概念

 

(3) 多様な人財活躍

取り巻く環境が激しく、価値観が多様化している現在において、新たな価値を生み出し社会に貢献していくためには、これまでの意識や働き方を変える必要性があります。

とりわけ、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)推進は当社の持続的成長に欠かせない経営戦略であるとのダイバーシティ宣言を発出以後、「認め合い、活かし合う」をキーメッセージに、年齢・性別・国籍・障がいの有無・時間的制約の有無に関係なく、多様な価値観を持つ人財が個性や能力を最大限発揮できるフィールドを整備しています。

当社では、女性活躍を重点課題と位置づけ、管理職を対象にしたアンコンシャスバイアス研修や女性技能職の社外交流会、外部有識者を招聘した健康推進セミナー、育児休業取得者を対象とした育児者交流会「愛三パパママサロン」などに継続的に取り組んできました。

 

こうした活動が評価され、2022年7月には女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優秀な企業に与えられる「えるぼし(2つ星)」に認定されました。また、2023年7月には仕事と育児の両立サポート企業として「くるみん」に認定されました。

2023年4月からはDEI推進における行動改革期の活動として、職場課題の解決に向けてワンチームとなるDEIイキイキ職場づくり活動”をスタートし、これまでに14職場が参加しました。

なお、男性育児休業取得の理解度向上をねらいとしたマネジメント勉強会や、工場で働く従業員へのDEI教育の実施などの取り組みを継続した結果、2024年度の男性育児休業取得率は76.9%となり、前年度に引き続き高い水準を維持しています。

 

また、今後も海外売り上げの拡大が進んでいく中、海外現地でパフォーマンスを発揮できる駐在員や、日本から現地をサポートすることができる人財の需要が拡大していることから、当社グループとしてグローバル人財の育成が急務であるとの認識のもと、言語力・異文化理解・関係構築・グローバルビジネス意識の4要素の向上を目指し、意欲・素養のある人財に短期間の海外勤務機会を提供する海外トレーニー制度を立上げ、2024年1月よりトライアルを実施しています。

また一方で、海外拠点が自立的に施策を実行できる体制を目指し、グループ全体で強固な人財基盤の構築に取り組んでいます。海外拠点のナショナルスタッフの幹部職充足率の目標値を設定し、幹部候補の明確化と日本への短期留学制度や指導者による出前教育制度の構築、拠点毎のニーズに合わせた受入れ教育などを推進しています。

 

愛三グループにとって従業員は「財(たから)」であり、企業の持続的成長には欠かせない貴重な財産であると考えています。ひとりひとりの人権を尊重することは、経営理念やサステナビリティ基本方針における重要な取り組み課題であると捉え、「人権方針」を2022年8月に策定しました。人権DD(デューデリジェンス)のフレームワークを策定し、社内アンケート調査や法務省の指針、および外部評価機関の調査項目を基に当社の優先課題を特定し、具体的な取り組みを推進しています。2024年9月には取引先研修会にて、当社の人権尊重経営×ダイバーシティの取り組みを報告し、グループディスカッションを通してお互いに理解を深めました。また、取引先を訪問し技能実習生を含む人権課題について共有と生産現場の皆様から日頃の活躍を伝えていただきました。

 

2018年6月に「健康宣言」を制定し、当社・健康保険組合・労働組合が一体となって健康経営推進体制を整備し、従業員が健康に高い意識を持てるように「健康チャレンジ活動」を積極的に推進してまいりました。今回、健康経営の実践に向けた積極的な土台作りや、従業員だけでなく他社・地域社会への健康経営の普及を目指した活動が高く評価され「健康経営銘柄2025」に初選定 「健康経営優良法人-ホワイト500-」にも7年連続で認定されました。今後も「従業員がイキイキと輝き、働きがいを感じ続けながら活躍し、地域・社会へ貢献できる企業」を目指してさまざまな取り組みを行い、従業員の健康保持・増進に努めてまいります。

 

 

(4) 指標および目標

当社では、上記「人財の育成および社内環境整備に関する方針、戦略」において、次の指標を用いています。

指標

目標

当期実績

ソフトウェア・電子人財育成

単独

2030年まで270

105

デジタル人財

単独

2030年まで220

53

女性管理職
 (女性マネージャー)

単独

2030年まで10

6

連結

2030年まで110

89

海外拠点幹部(部長以上)ポスト
ナショナルスタッフ充足率(※)

連結

2030年まで90

73.1

従業員エンゲージメント

単独

2030年まで60Pts.

53Pts.

男性育休取得率

単独

2030年まで90

76.9

災害発生度数率
(2023年産業別実績 製造業:1.29)

単独

2030年まで0

1.07

人間ドック受診率

単独

2030年まで100

82

 

※ 海外グループ会社の目標値です。

 

なお、当社はグループ各社と連携し、人的資本経営における重要課題への取り組みを推進しておりますが、全ての会社で同一の取り組みが行われているものではないため、当社のものを記載しております。

 

 

≪TCFD提言に基づく情報開示≫

当社グループでは、気候変動問題を重要な経営課題の1つとして認識し、2022年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し開示を行いました。

TCFDの提言内容を踏まえ、気候変動が事業に与えるリスクや機会についての分析と対応を進め、関連する情報の開示とその充実に努めています。

(1) ガバナンス

CROを委員長とするサステナビリティ委員会において、気候変動問題を含むサステナビリティ分野全般の方向性や適正性を確認しております。気候変動問題については、サステナビリティ委員会の下部委員会であるTCFD委員会(3ヶ月に1回以上開催)において、気候変動問題に関連する計画の策定、実行および管理を行います。

年2回開催するサステナビリティ委員会において、TCFD委員会やその他の委員会から報告を受け、内容を審議しています。これらの審議の結果のうち、重要事項は取締役会や経営役員会に報告されています。

(2) 戦略

① シナリオ分析の前提

当社グループは、車の電動化の普及の節目となりうる2030年時点に加えカーボンニュートラル目標の2050年の事業影響について、愛三グループ(連結)を対象としたシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析は、不確実な将来に適切に対処することにより、持続可能な競争力の強化を図ることを目指して、1.5℃/2℃および4℃の複数のシナリオを採用しました。この2つのシナリオについて、移行リスクの分析では、主に国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2022などを参照し、物理リスクの分析では、主に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書などを参照しました。


② シナリオにおける社会像

1.5℃/2℃シナリオでは、炭素税の導入やGHG排出規制の強化・厳格化など、現在よりも社会の脱炭素に向けた政策・法制度が整備され、当社を含む自動車業界では製造工程のみならず、素材や走行時から廃棄に至るまでの製品ライフサイクルでのCO2排出削減が強化・厳格化されることを想定しています。その結果、新車販売の中で、電気自動車(BEV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)・燃料電池車(FCV)のシェアが広がることを想定しています。

一方で、4℃シナリオでは、地球温暖化が進行することで、自然災害の頻発化・激甚化・長期化が進み、被災によりサプライチェーンが寸断され、生産の一時停止などが発生することを想定しています。

③ 気候変動に伴い想定されるリスクと機会

当社グループでは、シナリオにおける社会像に基づき、「ステークホルダーにとっての重要性」と「愛三グループにとっての重要性」を考慮した上で、当社グループにとってのリスクと機会を整理しました。長期時間軸として2050年を想定した、各国・地域の状況や事業内容を踏まえたリスク・機会の抽出を行いました。その中で、特に重要度が高いと判断した項目についてそれぞれの2030年度における財務的影響の評価を行い、リスク軽減と機会創出の対応に取り組んでいます。

 

■気候変動リスク・機会と対応


※1 台数前提は2℃シナリオにて算出 ※2 FFV : Flexible-Fuel Vehicle

注1 時間軸

短期:~2025年  中期:~2030年  長期:~2050年

注2 影響度

単年度の営業利益に与える影響:大 20億円以上、中 1億円~20億円未満、小 1億円未満

注3 当社グループの対応

2025年2月に発表した中期経営計画に脱炭素に向けた計画及び気候関連リスクの軽減と機会創出の取り組みを織り込んで活動を推進しています。詳細は、当社HPに掲載しております。

https://www.aisan-ind.co.jp/article_source/data/ja_news/files/8291852a00beeac61bbcb4574d84152f472efa36.pdf

 

 

■財務影響

〈1.5℃(2℃未満)シナリオ:脱炭素社会への移行が進む〉

炭素税導入によるコスト増、エンジン部品の販売量減少他による2030年の影響額(リスク)を約310億円と想定しました。一方で電動化の加速による業界再編や低炭素製品の拡張・開発による2030年の影響額(機会)を約250億円と想定しました。

〈4℃シナリオ:地球温暖化が進む〉

自然災害の頻発・激甚化等による2030年の影響額(リスク)を約6億円(※1)と想定しました。

※1 愛三単独の影響

 

 

(3) リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会において、TCFD委員会から報告を受けた経営に重要な影響を与える気候変動リスクの他に、各委員会(※)から報告されてくるその他の経営に重大な影響を与えるリスクを含めて、総合的なリスク管理を実施しています。各委員会から報告されてきたリスクは、抽出・分析・発生の可能性と影響度を考慮し評価を行ったうえで優先的対応リスクを選定し、所管部署が中心となってリスク低減に関する各種施策を実施しています。具体的には欧州等の電池規制に向けたカーボンフットプリント(CFP)への対応や当社製品の環境リスク把握と低炭素製品に向けた付加価値向上等を進めています。

各委員会は、各種施策の進捗状況やリスクの最新状況を確認するとともに、サステナビリティ委員会に報告しています。サステナビリティ委員会は、報告に基づいてリスク管理に関する指示・監督を行っています。

ガバナンス委員会において気候変動を含めた全社リスクアセスメントを実施しており、「重点リスク」を特定しています。

※ 各委員会:CN委員会、安全衛生委員会、働き方改革委員会、BCP委員会およびガバナンス委員会

(4) 指標および目標

2024年度は、気候変動への国際的な対応が新たな局面を迎え、COP29では、パリ協定で定めた1.5℃目標達成に向け、各国が定める削減目標の引き上げの必要性が求められました。また、日本の第7次エネルギー基本計画では、2040年やその先のカーボンニュートラル実現に向けた今後取り組むべき政策課題や対応の方向性がまとめられ、エネルギーの安定供給、経済成長、そして脱炭素の三つを同時に実現していく必要性が示されました。

こうした外部環境を踏まえ、当社の中期経営計画(2025年~2030年)では、持続可能な循環型社会の実現に向け、気候変動リスクに対応するための移行計画を策定し、インターナルカーボンプライシング(ICP)を活用したCN関連投資など温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。また、新分野・将来製品への足掛かりとして、あらゆるエネルギー・モビリティの進化と、モビリティの枠を超えた領域でも社会課題解決に貢献してまいります。

 

〈カーボンニュートラル目標(2030年)〉


 

〈カーボンニュートラル実績〉

環境データにつきましては、当社HPのこちらのURLをご参照ください。

https://www.aisan-ind.co.jp/news/2025/03/31/4-environment.pdf

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フローおよび株価などに影響を及ぼす可能性のある主要なリスクとしては、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1) 経済状況

当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車部品の需要は当社グループが製品を販売している国または地域の自動車生産台数に影響を受けます。

従って、日本、アジアおよび米州等の当社グループの市場における景気後退、およびそれに伴う自動車生産台数の減少は当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動

当社グループの事業には、世界の各地域における製品の生産・販売が含まれております。一般に現地通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。為替レートの大幅な変動は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料や部品の価格

当社グループは、製品の製造に使用する原材料や部品を複数の供給元から調達しております。これらの供給元とは取引基本契約を締結し、安定的な取引を行っておりますが、市況の変化による価格の高騰や品不足が生じないという保証はありません。その場合、当社グループの製造原価の上昇を招き、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 車の電動化に関する新製品開発

当社グループはお客様が期待される以上の品質・性能・コストの実現、安全・環境を配慮し、あらゆる動力源に対応したシステム・製品の開発を行い、電動化パワートレイン制御分野での世界トップメーカーをめざしております。

当社グループは今後も継続して魅力あるパワートレインシステムや電動化製品を開発できると考えておりますが、当社グループが属する自動車部品業界の電動化の流れの中で、技術的な進歩をはじめとする急速な変化に対応できない場合、将来の成長と収益性を低下させ、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(5) 価格競争

自動車部品業界における価格競争は大変厳しいものとなっており、販売している各製品が各地域においてさらに厳しい価格競争に直面することが予想されます。このような価格競争に対処すべく、生産性向上などの合理化活動や最適調達などによりコスト低減を図っておりますが、全世界の競合他社との価格競争に打ち勝てない場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 特定の取引先への依存

当社グループの主要な販売先として、その他の関係会社であるトヨタ自動車株式会社があります。当連結会計年度における当社グループの売上高の5割程度はトヨタ自動車株式会社向けであり、同社の販売動向は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 国内外グループ経営に潜在するリスク

当社グループは、様々な国で製品の生産と販売を行っております。その国々における予期しない政治的要因、政府の規制(関税、輸入規制、その他の租税を含む)、テロ、戦争などの社会的混乱、経済状況の変化に加え、ストライキによる操業の中断などは、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外グループ会社の経営環境の変化により、グループ事業の再編、撤退などを余儀なくされ、財務的な損失を計上せざるを得ないリスクが生じる可能性があります。

 

(8) 製品の欠陥

当社グループは、世界のお客様に「安心」「信頼」される品質を実現するため、設計から生産、販売をはじめ、あらゆる工程で品質の造り込みに全力をあげて活動しております。しかしすべての製品に欠陥がなく、将来においてリコール等が発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については万が一に備え保険に加入していますが、この保険が、最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコール等や製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストを要するとともに、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、製品品質の重要性を社内で継続的に周知・教育しておりますが、万が一、品質に関する重大なコンプライアンス違反等が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜やブランドイメージの毀損など、当社グループの財政状態と経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 災害や停電、感染症等による影響

当社グループは、製造ラインの中断やサプライチェーンの分断による影響を最小化するために、定期的な災害防止検査と点検を行っております。しかしサプライチェーンを含めた生産施設で発生する災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。従って大規模な地震、気候変動に伴う自然災害やその他の操業を中断する事象が発生した場合、当社グループの生産能力が著しく低下する可能性があります。

感染症の影響が長期化した場合、減産や操業停止など、当社グループ全体の事業運営および業績に影響が及ぶ可能性があります。不可抗力に関する影響は防止または軽減できるものではありませんが、対処可能な事項については、最小化できるような対策を講じます。

(10) 退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等の数理計算上の前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されております。従って、実際の結果が前提条件と異なった場合、または前提条件が変更された場合は、将来の期間に認識される費用および計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 固定資産の減損損失

当社グループが保有する土地・建物等について、時価が著しく下落した場合や事業の損失が継続するような場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12) 繰延税金資産

当社グループは、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を合理的に見積もった上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得については、経営環境の変化などを踏まえ適宜見直しを行っておりますが、結果として繰延税金資産の全額または一部に回収可能性がないと判断し、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13) 訴訟および法的手続

当社グループは、ビジネス活動において、継続的な法令遵守に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟および規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には当社グループの業績および財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

また、当社グループは、他社製品との差別化をはかるために、独自の技術ノウハウの蓄積と知的財産の保護に努めておりますが、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、第三者の知的財産権を侵害しているとして、訴訟の当事者となる可能性があります。

(14) 情報セキュリティ

当社グループは、機密情報の保護・管理等のため、情報セキュリティ推進計画に基づき、外部からのサイバー攻撃への対策や従業員への啓発・教育等を実施しております。また、万が一サイバー攻撃等による損害が発生した場合に備え、サイバー保険を付保しております。それにも関わらず、外部からのサイバー攻撃等による情報セキュリティ事故や詐欺による資金流出などが起こった場合、その被害の規模により、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営成績

当連結会計年度の世界経済は、緩やかな持ち直しがみられたものの、各国の政策動向や、中国での景気減速などの要因から不透明な状況が続きました。自動車業界においても、米国の新政権発足による対外政策の影響などがみられましたが、全体として緩やかな回復基調で推移し、北米市場ではEV政策の方針転換等によりハイブリッド車の販売が増加しました。一方、中国市場では市場全体の販売台数は成長しているものの、日系各社は販売台数が低調に推移しており、厳しい状況が続いております。

このような経営環境のなか、当社グループは、パワートレイン事業の競争力強化や電動化製品開発の加速、クリーンエネルギーの活用技術の向上など企業価値向上に取り組んでまいりました。

 

「パワートレイン事業の競争力強化」としましては、従来より進めてきたMMK(もっとものづくり強化)活動のグローバル展開が進み浸透してきたことにより、サプライチェーン全体での競争力を強化し、変化の激しい経営環境下でも柔軟に対応できる体質をつくることができました。

また、2022年9月に株式会社デンソーから譲り受けた燃料ポンプモジュール事業においては、当社へのブランド変更が完了し、2024年度より生産委託から順次自社生産に切り替えるとともに、当社製品との種類統合を進めることにより収益力の向上に努めております。

 

「電動化製品開発の加速」としましては、ハイブリッド車向けバッテリー用バスバーエンド、小型モビリティ用コントローラ、燃料電池自動車用高電圧分岐BOXなどの電動化製品を受注しました。

また、電池システムを含めた電池事業領域の拡大に向けた足掛かりとして、2025年度より電池セルケース/カバーの生産開始を予定しております。

 

「クリーンエネルギー活用技術の向上」としましては、アンモニア・水素発電システムの開発を進めるとともに、燃料電池の発電効率向上・長寿命化・排熱制御など燃料電池発電制御技術の研究開発にも引き続き取り組み、小型FC発電システム開発を進め、2024年5月に開催された“人とくるまのテクノロジー展”にて実機を展示いたしました。

また、2025年5月竣工の「Aisanみらい工場」においても、一部電力を自社開発のアンモニア・水素燃料発電により供給する予定です。

 

当連結会計年度の業績としましては、売上高は337,259百万円と前期に比べて7.3%の増収となりました。利益につきましては、営業利益は18,338百万円と前期に比べて18.3%の増益経常利益は19,292百万円と前期に比べて12.2%の増益親会社株主に帰属する当期純利益は13,234百万円と前期に比べて12.7%の増益となりました。

 

 

地域別の業績は次のとおりであります。なお、売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

[日本]

売上高は、販売数量の増加により133,625百万円(前期比17.3%増)となり、営業利益は販売数量の増加および収益改善により2,318百万円(前期比3.0倍)となりました。

[アジア]

売上高は、販売数量の増加および為替の影響により145,345百万円(前期比6.1%増)となり、営業利益は販売数量の増加および為替の影響ならびに収益改善により7,802百万円(前期比1.9%増)となりました。

[米州]

売上高は、販売数量の増加および為替の影響により77,443百万円(前期比8.8%増)となり、営業利益は販売数量の増加および為替の影響ならびに収益改善により7,154百万円(前期比28.6%増)となりました。

[欧州]

売上高は、為替の影響により15,992百万円(前期比2.2%増)となり、営業利益は為替の影響および収益改善により1,287百万円(前期比39.0%増)となりました。

 

生産、受注および販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

84,772

106.4

アジア

117,980

105.3

米州

66,447

107.1

欧州

12,908

101.9

合計

282,109

105.9

 

(注) 金額は製造原価によっており、セグメント間内部振替後の数値によっております。

 

② 受注状況

当社グループは、トヨタ自動車株式会社はじめ各納入先よりおおむね四半期ごとの生産計画の提示をうけ、当社グループの生産能力を勘案して、これにより生産計画をたてております。なお、主たる受注先は、トヨタ自動車株式会社で約50%を占めております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

99,929

108.7

アジア

144,054

106.2

米州

77,344

108.8

欧州

15,929

102.1

合計

337,259

107.3

 

(注) 1  セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2  主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

150,053

47.7

158,532

47.0

現代自動車㈱

34,976

11.1

36,232

10.7

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べ28,433百万円増加し、300,982百万円となりました。負債は、長期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ27,653百万円増加し、160,644百万円となりました。

また、純資産は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ779百万円増加し、140,338百万円となりました。

地域別の資産は、次のとおりであります。

[日本]

退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ、26,523百万円増加し、135,713百万円となりました。

[アジア]

現金及び預金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ、7,271百万円増加し、98,850百万円となりました。

[米州]

現金及び預金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ、278百万円増加し、49,345百万円となりました。

[欧州]

現金及び預金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ、1,236百万円増加し、11,994百万円となりました。

 

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、84,131百万円となり、前連結会計年度末に比べ17,636百万円増加いたしました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益および減価償却費により28,222百万円の収入となりました。前期に比べ10,405百万円の収入減少となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、主に固定資産の取得に伴う支出により20,128百万円の支出となりました。前期に比べ10,463百万円の支出増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入れなどにより10,949百万円の収入となりました。前期に比べ22,380百万円の収入増加となりました。

 

資本の財源および資金の流動性については、下記のとおりとしております。

①  資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、当社グループ製品の製造のための材料や部品の購入および新製品生産や増産対応等にかかる設備投資によるものであります。

②  財務政策

当社グループは現在、運転資金については、当社および一部の国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入し、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。また、設備投資資金については、原則内部資金または借入により資金調達することとしております。借入による資金調達に関しては、運転資金としての短期借入金を各連結子会社が、設備等の長期借入金を当社および各連結子会社が調達しております。また、その一部はグループ内資金の効率化を目的としグループ会社間で融資を行っております。

当社グループは財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、当社グループの将来必要な運転資金および設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、企業の持続的成長を目指し策定した『VISION2030 この手で笑顔の未来を』のスローガンのもと、パワートレイン製品事業の競争力強化、電動化製品開発の加速、クリーンエネルギー活用技術の向上など、研究開発活動を進めております。

「パワートレイン製品事業の競争力強化」としましては、従来より進めてきたMMK(もっとものづくり強化)活動のグローバル展開が進み浸透してきたことにより、サプライチェーン全体で競争力をより一層高めることができました。また、2022年9月に株式会社デンソーから譲り受けた燃料ポンプモジュール事業においては、自社製品への統合が完了し、2024年度より生産委託から自社生産による収益力の向上を進めております。

「電動化製品開発の加速」としましては、ハイブリッド車向けバッテリー用バスバーエンド、小型モビリティ用コントローラ、燃料電池自動車用高電圧分岐BOXなどの電動化製品を受注しました。さらに電動化製品の開発経験による技術積上げやソフトウェア開発人財の育成を進め、システム化に向けた技術基盤を構築し、モビリティへの貢献を目指してまいります。

「クリーンエネルギー活用技術の向上」としましては、アンモニア・水素発電システムの開発を進めるとともに、燃料電池の発電効率向上・長寿命化・排熱制御など燃料電池発電制御技術の研究開発を進めております。また、2025年5月竣工の「Aisanみらい工場」においても、一部電力をアンモニア・水素発電により供給する予定です。

創業以来培ってきたものづくり力、エンジンシステム開発力および適合技術を活かし、電池システムの量産化に向けた製品開発、カーボンニュートラル達成に向けた研究開発を加速させてまいります。

当連結会計年度における研究開発費は、日本で12,763百万円、アジアで661百万円、総額で13,426百万円であります。