第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、企業理念として、『PURPOSE』『PROMISE』『VALUES』を定めております。

また、当社は、未来に向かってステークホルダーの皆さまと共に価値創造を進めていくべく、2030年時点の当社のありたい姿を「2030 VISION」として定めております。

 

企業理念

PURPOSE:前向きに今日を生きる人の輪を広げる

PROMISE:いきいきとする体験をお届けする

人の頭、身体、心を活性化する

コミュニティと共に

VALUES :ひと中心 / 飽くなき挑戦 / おもてなしの心

 

2030 VISION

「走る歓び」で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる。

1. マルチソリューションで温暖化抑制に取り組み、持続可能な地球の未来に貢献する。

2. 心と身体を見守る技術で、誰もが安全・安心・自由に移動できる社会に貢献する。

3. 日常に動くことへの感動や心のときめきを創造し、一人ひとりの「生きる歓び」に貢献する。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

① 中期経営計画(2020年3月期~2026年3月期)

当社は、企業として存在し続け、持続的な成長を遂げるために「人と共に創るマツダの独自性」を基本方針として中期経営計画を策定し、それに基づいた施策を着実に進めております。

 

中期経営計画 主要施策

■ブランド価値向上への投資 -独自の商品・技術・生産・顧客体験への投資-

・効率化と平準化による継続

・段階的な新商品/派生車の導入

・継続的な商品改良の実行

■ブランド価値を低下させる支出の抑制

■固定費/原価低減を加速し損益分岐点台数を低減

■遅れている領域への投資、新たな領域への投資開始

■協業強化(CASE対応(*1)、新たな仲間作り)

 

これまでに築いてきた資産を活用して本格成長を図り、時代の大きな変化に耐えうる強靭な経営体質の実現に向けて取り組みを加速してまいります。また、グローバルでの環境規制の強化・加速などによる経営環境の変化やCASE時代の新しい価値創造競争を踏まえ、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の実現に向けて2030年を見据えた事業構造の転換に取り組んでおります。

 

中期経営計画 財務指標

売上

・約4.5兆円

収益性

・売上高営業利益率(ROS)5%以上

 

・自己資本利益率(ROE)10%以上

将来投資

・設備投資+開発投資:売上高比7-8%以下

 

・電動化・IT・カーボンニュートラル実現に向けた対応

財務基盤

・ネットキャッシュ維持(*2)

株主還元

・安定的に配当性向30%以上

損益分岐点台数

・約100万台(出荷台数)

 

 

(*1)コネクティビティ技術(connected)/自動運転技術(autonomous)/シェアード・サービス(shared)/電動化技術(electric)といった新技術の総称。

(*2)現金及び現金同等物から有利子負債を差し引いた金額がプラスの状態を維持すること。

 

 

② 2030年に向けた経営方針(2030経営方針)

現在、当社は2026年3月期までの財務目標達成に向けて中期経営計画の取り組みを推進しておりますが、各国の環境規制動向、社会インフラ整備をはじめ、電源構成の変化、そして消費者の価値観の多様化など、経営を取り巻く環境の不確実性が高まっていることを受け、視点を2030年まで延ばし、世界の潮流を想定した経営方針と主要な取り組みを以下のとおり定めております。

 

経営基本方針

1. 地域特性と環境ニーズに適した電動化戦略で、地球温暖化抑制という社会的課題の解決に貢献すること

2. 人を深く知り、人とクルマの関係性を解き明かす研究を進め、安全・安心なクルマ社会の実現に貢献すること

3. ブランド価値経営を貫き、マツダらしい独自価値をご提供し、お客様に支持され続けること

 

未来を拓く主な取り組み

1. カーボンニュートラルに向けた取り組み

当社が目標とする2050年のカーボンニュートラル(*3)(以下、「CN」)実現に向けては、まず自社のCO2排出について、「2035年にグローバル自社工場のCN実現」と中間目標を定め、省エネ、再エネ、CN燃料活用の3本柱で取り組みを進めてまいります。加えて、サプライチェーン(*4)への対応も必要であり、輸送会社様や購買お取引先様と共にCO2排出量を削減する活動を段階的に進めてまいります。国内においては、サプライチェーンの構造改革に取り組むほか、CN燃料の活用拡大を進めてまいります。

 

2. 各フェーズにおける電動化の取り組み

電動化時代への移行期間には、地域の電源事情に応じて、適材適所で内燃機関、電動化技術、代替燃料など様々な組み合わせとソリューションを提供していく「マルチソリューション」のアプローチが有効と考えております。当社は各国の電動化政策や規制強化の動向を踏まえ、2030年のグローバルでのバッテリーEV比率の想定を25–40%としており、パートナー企業と共に段階的に電動化を進めてまいります。

 

第1フェーズ(2022–2024年):蓄積した資産を活用したビジネス基盤強化

既存の技術資産であるマルチ電動化技術をフル活用して魅力的な商品を投入し、市場の規制に対応してまいります。ラージ商品群を投入し、プラグインハイブリッド車やディーゼルのマイルドハイブリッド車など、環境と走りを両立する商品で収益力を向上させつつ、バッテリーEV専用車の技術開発を本格化させます。

 

■ 第2フェーズ(2025–2027年):電動化へのトランジション

電動化への移行期間における燃費向上によるCO2削減を目指し、新しいハイブリッドシステムを導入するなど、これまで培ってきたマルチ電動化技術をさらに磨きます。電動化が先行する中国市場においてバッテリーEV専用車を導入するほか、グローバルにバッテリーEVの導入を開始します。内燃機関における再生可能燃料の利用可能性を踏まえ、熱効率の更なる改善技術の適用等により、内燃機関の性能についても極限まで進化させてまいります。

 

■ 第3フェーズ(2028–2030年):バッテリーEV本格導入

バッテリーEV専用車の本格導入を進めるとともに、外部環境の変化や財務基盤強化の進捗を踏まえ、電池生産への投資なども視野に入れた本格的電動化に軸足を移してまいります。

 

3. 人とITの共創による価値創造への取り組み

自動車技術の改良を進め、クルマを取り巻く様々な人々や社会の声に耳を傾けつつ、人の幸せを第一に、事故のない安全・安心な社会づくりに貢献していくことは私たちの重要な責務です。安全技術開発に加え、地域や社会と連携し「死亡事故ゼロ」を目指し取り組んでまいります。安全技術開発については、独自の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」のもと、これまで大事にしてきた「ひと」を中心としたものづくりに、デジタル技術を掛け合わせた高度運転支援技術の開発を継続し、運転者も同乗者も周囲の人も安全・安心なクルマづくりを進め、2040年を目途に自動車技術で対策が可能なものについては、自社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指します。

 

(*3)地球上の炭素(カーボン)の総量に変動をきたさない、二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方やシステム。

(*4)商品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れ。

 

 

4.原価低減とサプライチェーンの強靭化

原価低減は、従来の商品原価や、製造原価だけにとどまらず、その範囲を拡大し、サプライチェーンとバリューチェーン(*5)全体を鳥瞰し、商品ラインアップの見直し等による投資効率・在庫回転率の向上を図るなどムリ・ムラ・ムダを徹底的に取り除く取り組みを通じて原価の作りこみを行うよう変えてまいります。

サプライチェーンについては、材料調達からお客様へのデリバリーに至るまでの全ての工程における個々の改善にとどまらず、モノがよどみなく流れ、しかもそのスピードが最大化される「全体最適の工程」を実現するよう取り組みます。また、材料・部品調達の階層を浅くし、種類を産む場所を近場に寄せていくなどの調達構造の変革や、汎用性の高い材料や半導体の活用拡大に取り組み、地政学的リスク、地震といった大規模災害などの外部環境の変化に対する影響も最小限にとどめてまいります。

 

③ 企業価値向上に向けた「ライトアセット戦略」

電動化を取り巻く環境は、インフレによる投資コストの増加や地域毎の電動化進度の違いなど多くの不確実性を抱えています。当社は2030年までを「電動化の黎明期」と捉え、2030経営方針のもと、多様化するお客様ニーズや環境規制に柔軟に対応すべくマルチソリューションで電動化を進めます。その具現化に向け、本年3月、既存資産の活用度を高めることで、スモールプレーヤーとしての企業価値を向上させる実行戦略として「ライトアセット戦略」(*6)を公表しました。その主な内容は以下のとおりです。

■ ものづくり領域では、独自の開発・生産プロセス革新を展開し、開発領域においては、より複雑な開発に対し、既存リソース水準を維持しつつ、生産性を3倍に向上させて対応してまいります。

■ 2027年に導入予定のバッテリーEVについては、協業・パートナーシップによって、従来と比較し開発にかかる投資と工数を大幅に低減させる見通しです。

 電池投資については、当初見込みにインフレ影響を加味した投資総額から半減できる見込みです。

■ 生産においては、既存資産を活用してバッテリーEVとエンジン車を混流生産することにより、バッテリーEV専用工場新設と比較し、初期設備投資と量産準備期間を大幅に低減できる見通しです。

■ 上記の取り組みを通じて、低投資で高い資産効率を確保の上、競争力ある技術・商品を提供し、資本コストを上回るリターンを創出することで、持続的な成長と企業価値向上を実現してまいります(*7)。

 

④ 2030経営方針の進捗

当期が最終年度となる第1フェーズでは、成長投資の資金を確保すること及び将来の電動化やカーボンニュートラルなどへの準備を行うことを目標としており、その主な進捗は以下のとおりです。

 

売上高の成長

■ 第1フェーズの3年間で、出荷台数は25%増加し、売上単価の増加と併せて売上高は過去最高を更新しております。

■ ラージ商品4車種や販売が好調な北米市場の牽引により、第1フェーズの3年間におけるネットキャッシュは4,000億円余りとなるなど、財務体質の強化も進捗しております。

 

サプライチェーン・バリューチェーン全体での原価低減推進

■ パワートレインの種類数をお客様が選択しやすい仕様に絞り込み、増加傾向にあったサプライチェーンの在庫を改善することなどにより、原価低減活動に取り組んでおります。

■ サプライヤーから調達する部品種類数を適正化することでサプライチェーンの構造改革を推進するとともに、マツダの強みである混流生産ラインに無人輸送車を採用した効率性の高い生産設備を導入するなど、部品調達コストや輸送費等の固定費低減に取り組んでおります。

■ 原価低減に向けたコスト構造改革活動を加速するため、本年4月より新たに「コスト低減統括役員」及びその実務を担当する原価企画変革室を設置し、コストガバナンス体制の整備と原価企画機能の抜本的な見直しに着手いたしました。

■ 経営の適応力・回復力の強化に向けて、サプライチェーン、バリューチェーンの最適化を含めた構造的原価低減で1,000億円、加えて業務の選択と集中、投資効率化、DX活用などによる生産性向上によって固定費1,000億円の削減を目標とし、取り組みを進めております。

 

(*5)商品の付加価値を創出するための、商品企画、デザイン、開発、生産技術、製造、販売、サービスといった一連の事業活動の流れ。

(*6)ライトアセット戦略を説明したマツダ・マルチソリューション説明会2025の様子はこちらをご参照ください。
https://www.mazda.com/ja/about/vision/multi-solution-briefing-2025/

(*7)企業価値向上に向けた取り組みの全体像については、マツダ統合報告書2024「CFOメッセージ」をご参照ください。
https://www.mazda.com/ja/investors/library/integrated-report/

 

 

人への投資

■ 今後一層重要となるより高度なソフトウェア技術の開発やイノベーションに対応するため、ソフトウェア技術者の獲得に向け、2025年7月に麻布台ヒルズに「マツダR&Dセンター東京」を新たに開設するとともに、東京本社を移転いたします。

■ 従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮し、自由にアイデアを出し、活発に意見交換できる風土づくりに注力しており、その一環として2023年11月から全社的に「BLUEPRINT」プログラムを展開しております。本年5月までに全間接・直接従業員が同プログラムに参画し、今後は全従業員への浸透定着ステージに移行し、全社的な取り組みをさらに進めてまいります。

 

電動化技術・電池の準備

■ 2024年9月、パナソニックエナジー株式会社と当社は、バッテリーEV向け電池供給に合意し、本年1月には、車載用円筒形リチウムイオン電池のモジュール・パック工場を山口県岩国市に新設することを公表いたしました。2027年度の工場稼働開始を目指しており、完成した電池パックは、マツダの国内車両工場にて、マツダ初のEV専用プラットフォームを採用するバッテリーEVに搭載予定です。生産能力は年間10GWhを予定しております。

■ 次世代電池技術の自社開発を、GI基金(*8)事業として推進しており、社内に試験ラボを開設するなど、研究開発は予定通りに進捗しております。

■ 商品に関しては、多様なお客様のニーズに対応すべく、昨年11月には「MAZDA CX-50」にトヨタ自動車株式会社の技術を活用したハイブリッドモデルを追加いたしました。また、第2フェーズに導入予定の次期「MAZDA CX-5」には、電動化時代の主軸エンジンとして開発中のSKYACTIV-Zをマツダ独自のハイブリッドシステムと組み合わせて2027年中に搭載する予定です。

■ 電動化の進展が早い中国市場においては、昨年10月よりバッテリーEVとプラグインハイブリッドの2つのモデルを用意した「MAZDA EZ-6」の販売を開始しております。欧州やタイでは「MAZDA6e」として市場導入を予定しており、欧州向けは本年4月に生産を開始いたしました。また、中国では、本年中に「MAZDA EZ-60」を発売予定です。

 

⑤ コンプライアンス及びガバナンス強化の取り組み

2024年6月3日公表の型式指定申請における不適切事案については、再発防止策の一環として、次の取り組みを行っております。

 

1. 試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み及びガバナンス体制の再整備

2. 認証法規に準拠した試験を適正に実施するための手順書の見直し・教育・実践の徹底

3. 認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備強化

 

当社に関係するすべてのステークホルダーの皆様からの信頼回復に向けて、コンプライアンス及びガバナンスの更なる強化を図ってまいります。

 

(*8)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーン・イノベーション基金。

 

※文中における将来に関する事項につきましては、本報告書提出時点において当社グループが判断した一定の前提に基づいたものであります。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ基本方針

企業理念に基づき、私たちマツダグループは、すべてのステークホルダーの要望や期待に誠実に応えるよう努力しながら、グローバルな事業活動を通じて企業としての持続的な成長を目指すとともに、自社の強みを生かしてさまざまな社会課題の解決に向け取り組むことにより社会の持続可能な発展に貢献していきます。

 

(2) ガバナンス

当社グループは、社会環境の変化を踏まえ、当社の長期及び短中期の視点から、サステナビリティ取り組みの方向性を討議するため、「サステナビリティ委員会」を設置し、定期的に開催しています。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ担当役員を委員長とし、経営会議メンバーで構成されており、重点課題(マテリアリティ)の見直し・特定及び社会からのニーズやトレンド、社外評価分析結果などを討議しています。サステナビリティ委員会で決まった取り組み方針やガイドラインを理解した上で、社内各部門は、業務目標や計画などを策定し、グループ会社と連携を図りながら、業務を行っています。また、取締役会で適時・適切にサステナビリティを巡る課題の報告と討議を行っています。

 

サステナビリティ推進体制


 

(3) 戦略及びリスク管理

当社グループは、国連が定めるSDGsや、グローバルなESG評価機関の調査項目などを参考としたステークホルダーにおける影響度、2030年に向けた経営計画の実現に向けた事業取り組みなどの当社グループにとっての影響度(リスクと機会)の2つの視点を考慮し、重点課題を見直し・特定しました。特定したマテリアリティの項目に対し、着実な実行とフォローアップを行うための具体的な取り組み計画を策定中です。今回特定したマテリアリティと今後策定する取り組み計画をステークホルダーへ開示するとともに、定期的に評価し、見直すことで、計画・実行・評価・改善というPDCAプロセスを構築していきます。

 

 

[マテリアリティの8つの項目及び関連取り組み]

マテリアリティの

8つの項目

社会課題

 

取り組み/目標
 

「地球」

2050年
カーボン
ニュートラル
への挑戦

気候変動問題

(カーボン
ニュートラル)

・Well-to-Wheel、ライフサイクルアセスメント(LCA)視点での、クルマのライフサイクル全体のCO2排出削減

・ビルディングブロック構想による技術資産の積み上げと、それを活用した高効率なものづくり

グローバル自社工場でのカーボンニュートラル(以下、CN)の実現に向けた3本柱「省エネルギーの取り組み」、「再生可能エネルギーの導入」、「CN燃料の導入等」の取り組み

[ 目標 ]

・2050年にサプライチェーン全体でのCN実現

・2035年にグローバル自社工場でのCN実現

・2030年度に当社国内自社工場・事業所でのCO2排出量を2013年度比69%削減、非化石電気使用率75%(*1)

資源循環

資源需要、廃棄物量
の増加

 
水資源問題

 
サーキュラー・
エコノミー

・新車のリサイクル性の向上

・工場での3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組み、グローバルでゼロエミッション・資源再生化の拡大

[ 目標 ]

・資源循環(資材):2030年にグローバルで生産・物流工程についてゼロエミッションを達成

・資源循環(水):2030年に水資源の再生・循環の取り組みを国内モデルプラント(*2)で実現

 

「人」

心と身体の
活性化

精神的・社会的な健康への価値観の変化

・「ひと中心」の価値観のもと、人々の日常に運転すること、移動することの感動体験を創造

人的資本の
強化

 

労働人口の減少

 
市場のグローバル化、

顧客ニーズの多様化

 
ダイバーシティ&
インクルージョン

・従業員の多様性を尊重すると同時に従業員一人ひとりが個性を発揮しながら、力を合わせて会社や社会に貢献する企業風土の醸成

・多様な価値観やライフスタイルを持つ社員が、プライベートと会社生活とを両立させ活躍できるよう、ワークライフバランスを促進・充実

[ 目標 ]

女性管理職数:2024年度80人、2025年度100人、2026年度110人

・男性育児休職(産後パパ育休含む)取得率:2024年度60%、2025年度70%、2026年度75%

「社会」

安全・安心なクルマ社会の実現

交通死亡事故

・独自の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY」に基づく技術開発の推進

[ 目標 ]

・2040年を目途に自動車技術で対策が可能なものについては、自社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指す

心豊かに

生活できる
仕組みの創造

人口減少、少子高齢化、都市部への人口集中
 

都市部での渋滞や混雑、地方での交通空白地帯の拡大(MaaS)

・安全・安心で自由に移動することが可能な、心豊かな暮らしにつながる社会貢献モデルの構築

・モビリティ関連技術を活用した乗り合いサービスの実証実験

「地球」

「人」

「社会」

共通

品質向上

品質問題

・企画から製造まで一気通貫した品質のつくり込み

・市場問題の早期把握・早期解決

・お客様との特別な絆の構築

「人と共に創る」仲間づくり

100年に一度の変革期

(CASE)

・企業間連携:次世代車載通信機の技術仕様を共同開発

・産学官連携:ひろしま“Your Green Fuel”プロジェクト

 

マテリアリティの見直し・特定プロセスにつきましては、2024年10月公表「マツダサステナビリティレポート2024」(P10)をご参照ください。

https://www.mazda.com/content/dam/mazda/corporate/mazda-com/ja/pdf/sustainability/report/2024j_all.pdf

 

(*1)最新動向を踏まえ再評価中。

(*2)新しい試みなどを先行して実施する施設。

 

 

(4) 気候変動への取組-TCFD提言(*3)への対応

TCFD推奨開示項目(*4)に沿った概要は次のとおりであります。詳細につきましては、以下のWebサイトをご参照ください。

https://www.mazda.com/content/dam/mazda/corporate/mazda-com/ja/pdf/sustainability/tcfd_20250606j.pdf

 

[基本的な考え方]

当社グループは2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明して「TCFDコンソーシアム(*5)」に参加し、気候変動への取り組みを強化していく姿勢を示しました。また、2021年1月には、2050年サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルへの挑戦を宣言しました。TCFD推奨開示項目に沿って、気候変動への取り組みを進めていきます。

 

①ガバナンス

<移行リスク>

2050年サプライチェーン全体でのCNへの挑戦にあたり、取締役がCN戦略を統括し、CN担当役員を任命しています。2021年、CN担当役員の下、経営戦略室が気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)のシナリオや動向をもとに選別したリスクと機会へのライフサイクルアセスメント(LCA)視点での対応戦略、取り組みに必要な投資や経費、対応スケジュールなどを立案・推進してきました。

2023年4月、経営戦略室と商品戦略本部の一部機能を統合した経営戦略本部を新設し、その中にCN戦略を推進する部署を新たに設置しました。この部署のリードの下、それぞれの専門領域にて、戦略を立案するとともに、これまで立案された戦略に基づいた計画を実行に移しています。また、計画実行を全社で推進するために、従来のISO14001環境マネジメントシステム(EMS)にCNを融合させる管理を開始し、年2回開催されるカーボンニュートラル全社推進会議にて、計画実行の進捗を共有しています。また、商品・技術の領域においては、経営戦略本部内に新設された部署にて、全社戦略と整合した計画立案を推進していきます。

こうした戦略は、代表取締役社長も出席する経営会議や取締役会で報告・審議(*6)しています。また、気候変動を含むサステナビリティを巡る課題への対応については、取締役会へ適時・適切に報告しています。

 

<物理的リスク>

気候変動に伴う急性の物理的リスクである豪雨災害対応などについては、事業継続計画(BCP)の一環として緊急時のリスクマネジメント体制の中で管理しています。

また、慢性の物理的リスクである高潮や水の枯渇への懸念に対しては、護岸インフラの補強や水保全の取り組みを専門部門の実務の中で進めています。

 

<移行リスク>

<物理的リスク>

カーボンニュートラル推進のマネジメント体制

緊急時のマネジメント体制


 

 

 

②戦略

IPCCやIEAのシナリオ、政策や規制動向、業界動向をもとにした検討から、当社独自の前提を置いたシナリオを策定し、この中から主なリスクと機会として以下を認識しました。

<主なリスクと機会>

移行
リスク

政策・法規制

・燃費や排出ガス規制の強化、炭素税導入などのカーボンプライシングの厳格化

技術

・電動駆動や電池など、電動化技術開発リソースの拡大

市場

・電動化や軽量化のための原材料価格の高騰や半導体部品調達の逼迫

・政情や市場の影響による化石燃料及び再生可能エネルギーの逼迫によるエネルギー価格の高騰や供給不安定化

評判

・投資家によるESG投資判断への影響

物理的
リスク

急性

・甚大化する豪雨による災害やサプライチェーン寸断に伴う生産停止、熱波による健康被害

慢性

・自然災害の激甚化や災害の頻発、海面上昇に伴う高潮発生頻度の高まりなどによる生産停止影響の拡大、操業に必要な水の枯渇や水価格の上昇、熱帯性の疫病の蔓延

 

 

 

機会

資源の効率性

・マテリアルリサイクルの徹底による原材料の効率的活用

エネルギー源

・地域と連携した電力需給推進によるCN電力の安定受給

・再生可能エネルギー源の多様な選択

製品/サービス、市場

・ビルディングブロック構想(*7)、マルチソリューションによる適材適所の商品展開

・自動車用次世代燃料(バイオ燃料、合成燃料などの代替燃料)に適応した商品の多様化

・適材適所の商品展開及び商品の多様化による市場機会の拡大

 

 

③リスク管理

<移行リスク>

IPCCやIEAのシナリオ、政策や規制動向、業界動向をもとにした検討から主なリスクと機会を抽出し、移行リスクの回避と機会の獲得に向けた取り組みを推進しています。検討した戦略は、代表取締役社長も出席する経営会議や取締役会で報告・審議しています。

また、お取引先さまに対しては、当社から定期的に共有プラットフォームで気候関連リスクに関する情報を共有しています。

 

<物理的リスク>

豪雨災害などへの迅速な対応体制を整備し、事業継続計画(BCP)の一環として緊急時のリスクマネジメント体制の中で管理しています。こうした取り組みに加え、近年において豪雨災害が激甚化・頻発化していることから、気象予報収集力を高め、予め設定したタイムスケジュールに基づき迅速な防災対応意思決定ができるようにしています。また、大雨シーズン毎に対応の振り返りを行い、対応力の改善を行っています。

高潮や水の枯渇への懸念に対しては、護岸インフラの補強や水保全の取り組みを専門部門の実務の中で進めています。

近年頻発化している熱波に対しては、従業員の健康管理として、定期的に職場ごとの暑さ環境を計測・評価し、適切な空調設備などの維持管理につなげています。また、建屋においては断熱材・断熱塗料などを活用し、環境に配慮した対策を取り入れています。

疫病蔓延への防備として、従業員をはじめ同居する家族の方々が感染した場合も想定した就業環境を整備・運用しています。

 

 

④指標と目標

<温暖化対応>

 

2050年目標

サプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現

2035年目標

グローバル自社工場でのカーボンニュートラル実現

2030年目標

国内自社工場・事業所でのCO2排出量を69%削減(2013年度比)(*8)

 

国内自社工場・事業所における非化石電気使用率75%(*8)

2025年目標

国内自社工場・事業所でのCO2排出量を27%削減(2013年度比)

 

 

温室効果ガス(GHG)排出量 Scope1、2、3(*9)の実績

 

 

 

 

(千t-CO2e)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope1(直接排出)

122

97

97

113

112

Scope2(間接排出)

862

736

739

754

815

Scope3(その他間接排出)(*10)

36,336

31,603

29,797

30,522

60,049

合 計

37,320

32,436

30,633

31,389

60,976

 

 

<水資源保全>

2030年目標     国内のマツダグループの取水量を38%削減(2013年度比)

 

・取水量の実績

 

2013年度

(基準年)

2019年度

 

2020年度

 

2021年度

 

2022年度

 

2023年度

 

取水量(1,000㎥)

9,244

7,576

6,659

6,424

6,402

6,475

削減率(2013年度比)(%)

-

18

28

31

31

30

 

 

2023年度実績及び対象範囲の詳細につきましては、「環境データ」をご参照ください。

https://www.mazda.com/content/dam/mazda/corporate/mazda-com/ja/pdf/sustainability/esg-data/Environmental_data_FY_March_2024.xlsx

 

(*3)TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures の略。G20 財務大臣及び中央銀行総裁からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した、民間主導の組織

(*4)出典:https://tcfd-consortium.jp/about

(*5)気候変動に関して「企業の効果的な情報開示」や「その開示情報を金融機関などが適切な投資判断につなげる取り組み」について議論することを目的として国内で設立された団体。経済産業省・金融庁・環境省がオブザーバーとして参加。

(*6)2025年5月時点、取締役会で累計9回報告・審議。

(*7)基盤となる技術群をブロックとして段階的に積み上げることで優れた技術を効率的にお届けする技術開発構想。

(*8)最新動向を踏まえ再評価中。

(*9)Scope 1:燃料の使用や工業プロセスにおける排出量などの直接排出、Scope 2:購入した熱・電力の使用に伴う排出(エネルギー起源の間接排出)、Scope 3:Scope 1, 2を除く、その他の間接排出。

(*10)2023年度より、以下の通り算定方法を見直すことで、データの網羅性と正確性を向上。

・2022年度以前:国内及び主要販売地域(北米、欧州、中国)の販売台数を基に、Tank to Wheel(走行時の燃料消費)で算出。

・2023年度以降:グローバルの生産台数を基に、Well to Wheel(燃料の採掘・精製と電力生成 + 走行時の燃料消費)で算出。
なお、2023年度を2022年度以前の算定方法で算出した数値は、29,763(千t-CO2e)。排出量の増加要因は、販売台数の増加(前年比約12%増)によるもの。

 

 

(5) 人的資本(人材の多様性含む)への取組

①戦略

当社グループは「最大の経営資源は人である」と考えており、どこよりも「人」がいきいきしている企業を目指しています。「人と共に創る」という考えのもと、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、年齢、精神もしくは身体の障害、性的指向、性自認など、さまざまな背景を持った従業員の多様性を尊重します。また、働き方/処遇/働く環境改善を含めた取り組みを行い、従業員のモチベーションの向上と全体最適の視点による業務の効率化を推進していきます。

そして、成長・雇用・分配の好循環を回す観点から、雇用を維持しつつ、成長による成果をステークホルダーに還元するとともに、従業員への持続的な還元にも繋げていきます。

具体的には、雇用の安定、生活の質の向上、人材育成の観点から、会社の現状を考慮し、柔軟に賃金の引き上げを含めた従業員への還元を行っていきます。

還元の1つとして、処遇改善だけでなく、教育を含めた人への投資も実行中であり、その一例として、「デジタル人材」育成投資に取り組んでいます。今後も、企業の成長につながる能力開発支援を始めとする投資を進め、従業員の活躍や成長を後押ししていきます。

これらに向けた人材育成体制・社内環境整備の実施状況については、2024年10月公表「マツダサステナビリティレポート2024」(P59-P66/P117)をご参照ください。

https://www.mazda.com/content/dam/mazda/corporate/mazda-com/ja/pdf/sustainability/report/2024j_all.pdf

 

②指標と目標(提出会社)(*11)

「①戦略」に記載のとおり、当社は、従業員の属性に関係なく、個人の能力や実績に基づき人材登用することを方針としているため、女性管理職数、男性育児休職取得率以外には、自主的かつ測定可能な目標を定めておりません。

 

<女性雇用の拡大と活躍の場の創設>

当社は、女性のさらなる活躍に向けての1stステップとして、女性管理職及び候補の育成を推進し、マネジメント層の多様化に取り組んでいます。現在、「女性管理職数: 2024年度80人、2025年度 100人」、「男性育児休職(産後パパ育休含む)取得率:2024年度 60%、2025年度 70%」という目標を掲げています。また、2025年3月には新たに「女性管理職数:2026年度 110人」、「男性育児休職取得率:2026年度 75%」として、事業主行動計画を提出しました。

2025年3月末時点における当社の女性管理職数は87名、男性育児休職取得率は60%となり、着実に進捗しています。登用候補となる女性社員の個別育成計画を策定・推進するとともに、男性社員も含めた全社的な育児休職制度の周知・啓発活動を行いながら、女性の活躍をさらに加速させていくよう、今後も取り組みを進めていきます。

 

(*11)指標に関しては、必ずしもすべての連結子会社ですべての指標のデータ管理が行われていないため、当社グループとしての記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、主として以下のようなものがあります。

ただし、以下に記載する事項は、予想される主なリスクを記載したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。なお、文中における将来に関する事項につきましては本報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

 

市場及び事業に関するリスク

(1) 当社グループの事業を取り巻く経済情勢

当社グループは、日本を始め北米、欧州、アジアを含む世界各地域で製品を販売しており、それぞれの市場における景気動向や需要変動に強い影響を受けています。従いまして、当社グループの主要市場において、景気の減速または後退、需要構造の変化、需要減少、価格競争の激化等が進むことにより、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料、部品の調達

当社グループは、原材料及び部品の購入を複数のサプライヤーに依存しています。サプライチェーン全体を鳥瞰し、材料調達のスピードの最大化や種類を産む場所の近場化など、ムリ・ムラ・ムダを徹底的に取り除く取り組みを通じて、環境変化に対する耐性の強いサプライチェーンの構築に取り組んでおります。しかしながら、部品供給元企業が災害等により被災した場合等の供給能力の制約や物流機能の低下、需給の逼迫や契約条件の変更または破棄等により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難になる場合や、調達した原材料または部品の品質が不十分であった場合、また、電動化の進展により、新たに調達を行う電池などの電動車関連部品・材料についてタイムリーに適量を調達できない場合には、製品の生産状況の悪化を招く可能性があり、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 他社との提携、合弁の成否

当社グループは、商品の開発、生産、販売に関し、技術提携や合弁等の形で、他社と共同活動を実施、もしくは検討を行っています。これにより経営資源の最適化、集中化及び相乗効果を期待しています。しかしながら、経営、財務またはその他の理由により当事者間で不一致が生じた場合、あるいは、提携や合弁の変更または解消等により、期待される結果を生まなかった場合には、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、意図しない提携や合弁の変更または解消が、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 市場競争力

当社グループが製品を販売している自動車市場は、コネクティビティ技術、自動運転技術やシェアード・サービス、電動化技術に代表される新たな付加価値ビジネスの拡大、それに伴う異業種からの新規参入が相次ぐなど、産業構造が急激に変化しており、競争環境が激化・多様化しています。ブランド価値の維持発展を含む市場での競争力の維持強化は当社グループの成長にとって非常に重要であり、急激な変化に対応すべく製品の企画・開発・製造・販売等すべての領域において競争力の強化に向けた取り組みを進めています。しかしながら、想定を超える範囲とスピードで競合環境が変化した場合、技術力や生産上の問題、電動化を含めた規制対応等により、魅力ある製品を適切な時期に投入することが出来なかった場合、また、急速に多様化が進むお客様の価値観やニーズの変化に対応した流通網、販売手法を効果的に展開できなかった場合、販売シェアの低下や製品価格の低下を含め、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 知的財産権による保護

当社グループは、事業の優位性を確保するために他社製品と区別化できる技術とノウハウの蓄積、それらの保護並びに、第三者の知的財産権に対する侵害予防に努めています。それにもかかわらず、認識または見解相違により、第三者からその知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、当社グループとして製造販売中止、あるいは損害賠償などが必要となった場合には、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、特定の地域では当社グループの知的財産権が完全に保護されない場合があります。第三者が当社グループの知的財産権を無断使用して類似した製品を製造した場合、多額の訴訟費用のみならず製品区別化が図れないことによる販売減少により、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 製品の品質

当社グループは、市場の要求に応えるべく品質改善に努める一方で、製品の安全性の確保にも最善の努力を注いでいます。しかしながら、電動化等に伴う新技術、機能向上、システムやソフトウエアの複雑化などに対して、予測できない原因により製品に欠陥が生じ、大規模なリコール等が発生した場合、特にサプライヤーではなく当社グループ責任として対応する場合、多額のコストの発生、ブランドイメージの低下、市場信頼性の失墜などにより、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 情報技術への依存

当社グループは、製品の開発、生産、販売など、様々なビジネス活動の遂行において、情報技術やネットワーク、システムを利用しています。また、当社製品にも、運転支援システムなど、これら技術を採用した装備が搭載されています。情報技術やネットワーク、システムには、安全な運用のため対策が施されていますが、インフラ障害、対策を上回るサイバー攻撃、コンピューターウイルスへの感染等によって、各種業務活動の停止、データの喪失、機密情報の漏洩、当社製品の機能低下などが発生する可能性があります。この場合、対策費用の発生、当社製品の信用の失墜やブランドイメージの毀損などにより、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) コンプライアンス、レピュテーション

当社グループは、全てのビジネス領域における法令等の遵守のため、従業員への業務に関連する法令教育や、コンプライアンス意識啓発活動等を通じた、コンプライアンス違反の未然防止対策を講じています。さらに、コンプライアンスに係る案件を察知した場合には速やかに対応する体制も整備しており、当社グループの社会的信用や評判に与える影響を防いでいます。しかしながら、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反の事実、あるいは対応の内容や迅速性等が不十分な場合には、当社グループの社会的信用や評判に悪影響を及ぼし、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 人権尊重

当社グループは、「人と共に創る」という価値観のもと、「人権尊重は全ての企業活動における根幹」と考える人権尊重の基本姿勢と取り組みを内外にコミットする「マツダ人権方針」を2023年8月に策定しました。同方針に基づき、第三者機関のサポートを得ながら、優先人権課題の特定、影響評価、是正・救済措置という人権デュー・ディリジェンス及び苦情処理メカニズムの体制整備、人権教育・啓発活動、並びにサプライチェーンにおける各国法令遵守の取り組みを進めています。しかしながら、グローバルで人権リスクが高まっているなか、法規等への適正かつタイムリーな対応が出来なかった場合には、社会的信用やブランドイメージの低下により、当社グループの事業活動や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 気候変動

気候変動が当社グループの事業に及ぼすリスクについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 気候変動への取組 - TCFD提言 への対応」をご参照ください。

 

(11) 人材の確保と育成

当社グループは「最大の経営資源は人である」と考えており、どこよりも「人」がイキイキしている企業を目指しています。CASEやカーボンニュートラルに代表される時代の要請に応えるため、高度専門的な領域で活躍いただける「人」の確保をより積極的に目指すだけでなく、多様な価値観を持つ従業員が最大活躍できるダイバーシティの理解・浸透、また、働き方の多様化を踏まえた育成強化や自律的に働くことができる制度・環境整備、新たな価値創造に果敢に挑戦できる文化・風土作りを推進していきます。

しかしながら、採用競争の激化により計画通りの採用が行えなかった場合や、人材流動性の高まりにより離職率が増加した場合、もしくはダイバーシティの浸透や人材育成、職場風土の改善などが計画通りに進まず、当社グループの「人」が活躍できない場合には、中長期的に当社グループの経営や事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

金融・経済に係るリスク

(1) 為替レートの変動

当社グループは、日本から世界各地域へ製品を輸出しているほか、海外の工場で製造した製品を世界の他の市場へ輸出するなど、グローバルな事業活動を展開しています。これらの取引は様々な通貨を通じて行われているため、為替レートの変動は当社グループの経営成績と財政状態に影響を与えます。加えて、海外の現地通貨建の資産・負債等を円換算しているため、為替レート変動により、為替換算調整勘定を通じて自己資本に悪影響を及ぼす可能性があります。また、為替レート変動リスクを最小限にするために為替予約を行っていますが、為替レートの変動状況によっては機会損失が発生する可能性があります。

 

(2) 原材料価格の上昇

当社グループは、原材料及び部品の購入を複数のサプライヤーに依存しています。地政学リスクの高まりや需給の逼迫及び環境規制などの要因による原材料の価格や物流費、エネルギー価格の高騰や人件費の上昇等により、当社グループ及びサプライヤーのコストが上昇し、生産性向上などの内部努力による製造コストの低減や当社製品価格への転嫁などによりその影響を吸収できない場合、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 資金調達環境の変化と金利の変動等

当社グループは、銀行からの借入に加え、株式及び社債の発行等により資金調達を行っています。しかしながら、今後、金融市場が混乱した場合、税制改正や政府系金融機関の制度変更等がなされた場合、もしくは当社グループの信用格付けが引き下げられた場合等においては、資金調達コストの増加や必要とする金額の資金調達が困難となること等により、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの有利子負債には金利変動の影響を受けるものが含まれており、金利上昇により金融コストが上昇した場合には、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの財務内容の悪化が一部借入金等の財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失することとなった場合には、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク

(1) 環境等に関する法的規制

当社グループは、事業展開する各国において、燃費及び排気ガス、車両の安全性、製造工場からの汚染物質排出レベルに関する規制などの環境規制のほか、労働規制など、様々な法的規制を受けています。とくに昨今、カーボンニュートラル化への要求が世界的に急速に高まっています。当社グループとしても、企業としての社会的責任を果たすため、「Well-to-Wheel(燃料採掘から車両走行まで)」視点に加えて、クルマの製造、物流、廃棄、リサイクルまでカバーするライフサイクルアセスメント(LCA)視点でのCO2削減に向けて、各国の電源事情や使用環境、お客様の多様性やご要望を踏まえた、電動化のマルチソリューションにより課題解決に取り組んでおります。しかしながら、今後、欧米等における更なる政策や法的規制の強化によるコストの増加などにより、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 国際的な事業活動に伴うリスク

当社グループは、日本を始め世界各地域で製品を販売しており、米国、欧州及び発展途上市場や新興市場を含む海外市場において事業活動を行っています。これらの海外市場での事業展開には以下のようなリスクが内在しており、当該リスクの顕在化により、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
・不利な政治、経済要因
・法律または規則の変更による障害
・関税などの輸出入規制、不利な税制及びその他の規制
・検疫強化や船舶不足等による製品物流の逼迫
・人材の採用と確保の難しさ
・未整備のインフラ
・ストライキ等の労働争議
・テロ、戦争あるいは新型コロナウイルス感染症のような疾病その他の要因による社会的混乱や規制

なお、米国政府による自動車及び自動車部品等への追加関税については、両国政府間で交渉が継続されており、現時点で合理的な業績影響を精緻に見積もることは極めて困難であると判断しております。今後、追加関税の影響が長期化し、当社が講じる必要な対応策を超えて負担が発生した場合には、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 自然災害や事故に関するリスク

当社グループは、製造設備等の主要施設に関して、防火、耐震対策などを実施すると共に、財務リスクを最小化すべく災害保険加入等の対策を行っています。しかしながら、大規模な地震、台風、豪雨、洪水等の自然災害及び火災等の事故の発生により製品供給に重大な支障を来たした場合、当社グループの経営成績と財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)  経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の当社グループを取り巻く事業環境は、経済環境の緩やかな改善がみられるものの、地政学リスクを背景とした資源価格の高止まり、主要国における高水準の政策金利の継続、急激な為替変動などの影響により、先行き不透明な状況が継続しました。足元では、主要国における政権交代や世界的な貿易摩擦の激化への懸念などにより、地政学的・経済的な不確実性が高い状況が続いております。

このような状況の中、当社グループは、主要市場における販売競争の激化、人件費や調達部品価格の上昇等の影響を受けたものの、機動的な販売促進策の強化、新商品の導入等の取り組みにより、過去最高の販売台数となった北米市場を中心に販売台数及び売上高が増加いたしました。また、将来に向けた電動化・価値創造の取り組みや人への投資を推し進めつつ、機種数の削減やお客様価値に沿った部品・装備の見直し、費用対効果の再精査等による原価低減活動、徹底した業務効率化等による固定費低減活動による経営効率の改善にも取り組んでまいりました。

商品面では、昨年4月、「MAZDA CX-60」、「MAZDA CX-90」に続くラージ商品群の第三弾となる2列シートクロスオーバーSUV「MAZDA CX-70」の販売を北米にて開始いたしました。また、昨年10月には、同第四弾となる3列シートクロスオーバーSUV「MAZDA CX-80」の販売を欧州及び日本にて開始いたしました。「CX-70」と「CX-80」の両モデルは、プラグインハイブリッドシステムなどの電動化技術の採用によって高い環境性能を備えるとともに、各国で高い安全性評価を獲得しております。

急速に電動化が進む中国市場においては、昨年10月、「MAZDA EZ-6」の販売を開始いたしました。「EZ-6」は、マツダと合弁事業のパートナーである重慶長安汽車股份有限公司の協力のもと、当社が出資する現地法人である長安マツダ汽車有限公司が開発・製造を行う新型電動車の第一弾です。また、北米市場においては、昨年11月、米国アラバマ工場で製造する「MAZDA CX-50」にトヨタ自動車株式会社の技術を活用したハイブリッドモデルの販売を開始いたしました。

当社は、「ひと中心」の価値観のもと「走る歓び」を進化させ続け、お客様の日常に移動体験の感動を創造し、「生きる歓び」をお届けしていくことを目指してまいります。

 

[グローバル販売]

当連結会計年度のグローバル販売台数は、米国・メキシコ市場の年間販売台数が過去最高を更新するなど、北米市場での販売が好調に推移したことから、前期比5.0%増1,303千台となりました。

市場別の販売台数は、次のとおりであります。

<日本>

「MAZDA CX-8」の販売終了影響等により、前期比5.2%減152千台となりました。なお、第4四半期としては、新規導入の「CX-80」や「CX-60」及び「MAZDA CX-5」の商品改良モデルの販売が台数増加に貢献したことから、前年同期比24.8%増の49千台となりました。

<北米>

米国は、「CX-50」のハイブリッドモデルの導入やラージ商品群が販売を牽引し前期比15.9%増435千台と過去最高の販売台数となりました。北米全体でも、カナダやメキシコの好調な販売により、前期比20.0%増617千台となりました。

<欧州>

「MAZDA CX-30」や「MAZDA2 Hybrid」の販売は増加したものの、「CX-60」や「CX-5」及び「MAZDA6」等の販売減少により、前期比3.4%減174千台となりました。

<中国>

内燃機関車需要の縮小や価格競争激化の影響等により前期比23.1%減74千台となりました。なお、昨年10月より、電動専用モデル「EZ-6」の販売を開始しております。

<その他の市場>

主要市場のオーストラリアでは、新規導入のラージ商品群や「MAZDA CX-3」及び「CX-5」等の販売は増加したものの、「MAZDA CX-9」及び「CX-8」の販売終了の影響等により前期比1.1%減97千台となりました。その他の市場全体では、タイやマレーシアなどASEAN市場の販売減少等により、前期比1.4%減285千台となりました。

 

[財政状態及び経営成績]

a. 経営成績

当連結会計年度の当社グループの連結業績は、次のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

 

 

通期

通期

増減額

増減率

売上高

48,277

50,189

+1,912

+4.0%

営業利益

2,505

1,861

△644

△25.7%

経常利益

3,201

1,890

△1,311

△41.0%

親会社株主に帰属する当期純利益

2,077

1,141

△936

△45.1%

 

 

b. 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より2,983億円増加し、4兆901億円となり、負債合計は、前連結会計年度末より2,457億円増加し、2兆2,801億円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益1,141億円等により、前連結会計年度末より527億円増加し、

1兆8,100億円となりました。自己資本比率は、前連結会計年度末より2.0ポイント減少し43.8%(劣後特約付ローンの資本性考慮後44.7%)となりました。

 

c. セグメントごとの財政状態及び経営成績

当連結会計年度のセグメント別の連結業績は、次のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

 

 

通期

通期

増減額

増減率

売上高

日本

38,680

37,328

△1,353

△3.5%

北米

29,832

32,933

+3,101

+10.4%

欧州

9,267

7,666

△1,601

△17.3%

その他の地域

7,326

6,476

△850

△11.6%

営業利益

日本

1,522

485

△1,037

△68.2%

北米

876

670

△207

△23.6%

欧州

203

192

△11

△5.5%

その他の地域

269

231

△38

△14.2%

 

 

<日本>

売上高は、3兆7,328億円(前期比1,353億円減3.5%減)、営業利益は485億円前期比1,037億円減68.2%減)となりました。これは、主に欧州向け一部車種のモデル切り替えに伴う出荷台数の減少に加え、調達部品価格の上昇影響等によるものです。セグメント資産は、前期比2,252億円増加3兆1,055億円となりました。

<北米>

売上高は3兆2,933億円(前期比3,101億円増10.4%増)、営業利益は670億円(前期比207億円減23.6%減)となりました。これは、主に米国及びメキシコで過去最高の販売台数を記録したことや為替の円安影響があった一方で、メキシコ工場の製造コストが増加したこと等によるものです。セグメント資産は、前期比572億円増加8,745億円となりました。

<欧州>

売上高は7,666億円(前期比1,601億円減17.3%減)、営業利益は192億円(前期比11億円減5.5%減)となりました。これは、主要市場のドイツなどにおいて出荷台数が減少したこと等によるものです。セグメント資産は、前期比87億円増加3,602億円となりました。

<その他の地域>

売上高は6,476億円(前期比850億円減11.6%減)、営業利益は231億円(前期比38億円減14.2%減)となりました。これは、主要市場であるオーストラリアやASEAN市場での販売台数が減少したこと等によるものです。セグメント資産は、前期比18億円増加3,895億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末において、現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,863億円増加1兆1,056億円、有利子負債は、前連結会計年度末より1,374億円増加の7,052億円となりました。この結果、4,003億円のネット・キャッシュ・ポジションとなっております。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,558億円に加え、仕入債務の増加等により、3,056億円の増加(前期は4,189億円の増加)となりました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、2,000億円の減少(前期は1,799億円の減少)となりました。

 

以上により、連結フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、1,057億円の増加(前期は2,390億円の増加)となりました。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及び長期借入金による資金調達に対し、配当金の支払いや長期借入金の返済等により、901億円の増加(前期は847億円の減少)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における車両生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

台数(千台)

前期比(%)

日本

749

△6.3

北米

328

22.1

その他の地域

131

△13.8

合計

1,207

△1.0

 

 

b. 受注実績

当社グループは、主として販売会社の販売実績及び受注状況等を考慮して生産計画を立て、見込生産を行っております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

937,886

△0.5

北米

2,775,314

18.5

欧州

731,439

△17.6

その他の地域

574,254

△12.3

合計

5,018,893

4.0

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)  経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中の将来に関する事項は、本報告書提出日時点において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。なお、当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 」に記載しております。

 

<売上高>

当連結会計年度における売上高は、北米での好調な販売等により、過去最高の5兆189億円(前期比1,912億円増4.0%増)となりました。

仕向地別では、国内は、出荷台数の減少により、5,786億円(前期比617億円減9.6%減)となり、海外は、主として北米での出荷台数の増加に加え、販売単価の改善や為替の円安影響等により、4兆4,403億円(前期比2,529億円増6.0%増)となりました。

製品別では、車両売上高は、出荷台数の増加や為替の円安影響等により、4兆3,624億円(前期比1,723億円増4.1%増)となり、海外生産用部品売上高は、中国向けの出荷が減少したこと等により、149億円(前期比77億円減34.1%減)となりました。そのほか、部品売上高は3,762億円(前期比245億円増7.0%増)、その他売上高は2,654億円(前期比21億円増0.8%増)となりました。

<営業利益>

主力市場である北米での好調な販売やラージ商品群の販売台数の増加、及び、ドルやユーロなどの為替の円安影響が増益要因となった一方で、販売費用の増加や調達部品価格の上昇影響等により、営業利益は1,861億円(前期比644億円減25.7%減)、連結売上高営業利益率は3.7%(前期比1.5ポイント減)となりました。

なお、営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。

 

 

(単位:億円)

 

 

 

通期

台数・構成

+628

販売奨励金

△1,249

為替

+439

原材料・物流費等

△462

コスト改善

+250

固定費他

△250

△644

 

 

<経常利益>

為替差損229億円(前期は542億円の為替差益)の計上に対し、受取利息等の計上により、1,890億円(前期比1,311億円減41.0%減)となりました。

<親会社株主に帰属する当期純利益>

生産終了損失引当金繰入額243億円を特別損失に計上したことや税金費用407億円等により、1,141億円(前期比936億円減45.1%減)となりました。

 

当連結会計年度の財政状態の分析、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

② 資本の財源、資金の流動性

当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、キャッシュ・フローの創出に努めております。また、自動車及び同部品の製造販売事業を行うために必要となる設備投資等に充当することを目的として、銀行借入や社債発行などにより、必要な資金を調達しております。なお、当社は、サステナビリティに関する取り組みを推進するため、資金調達の枠組みとして2024年1月に「サステナブル・ファイナンス・フレームワーク」を策定しました。本フレームワークで調達した資金は、グローバル自社工場のCN、バッテリーEVやプラグインハイブリッド車などの開発・製造、先進安全技術・高度運転支援技術の開発・製造などに活用しております。

当社グループの資金の流動性管理にあたっては、資金繰り計画を作成し、適時に更新するなどによりリスク管理を行っているほか、急激な外部環境変化に対応できるよう、一定水準の手元流動性を確保する方針としております。また、当社はグループ全体の資金を一元管理し、グループ内での相互貸借機能を保有することで、流動性リスクに対し機動的に対応できる体制を構築しております。加えて、当社は国内金融機関とのコミットメントライン契約の締結により、十分な流動性を確保する手段を保有しております。

当連結会計年度末において、現金及び現金同等物1兆1,056億円に未使用のコミットメントライン2,000億円を加えた流動性は、月商比3.1ヶ月に相当する1兆3,056億円となっております。

なお、当社は、国内2社の格付機関から長期発行体格付けを取得しており、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所:「A-」、格付投資情報センター:「BBB+」となっております。

株主還元につきましては、当期の業績及び経営環境並びに財務状況等を勘案して決定することを方針とし、安定的な配当の実現と着実な向上に努めることとしております。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を行うことが求められます。当期の連結財務諸表の作成において設定した様々な見積り及び仮定は、当社経営者がその内容について合理的であると判断したものであり、実際の業績は、これらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。

当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a. 貸倒引当金

売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検証し、回収不能見込額を計上しておりますが、将来、取引先等の財務状況が悪化するなど支払能力が低下した場合は、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

b. 生産終了損失引当金

特定の製品について、当初の計画から生産終了時期を早期化したことに伴う取引先への補償などに備えるため、当連結会計年度末における発生見込額を計上しておりますが、将来、損失の発生が増加した場合は、引当金の追加計上が発生する可能性があります。

c. 環境規制関連引当金

環境規制に対応する費用の発生に備えるため、各国の環境規制を検証し、当連結会計年度末における発生見込額を計上しておりますが、将来、各国での環境規制がより強化された場合は、引当金の追加計上が発生する可能性があります。

d. 退職給付関係

退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しておりますが、これらの前提条件が変動した場合、あるいは、運用環境の悪化等により年金資産が減少した場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があります。

e. 固定資産の減損

当社グループは固定資産の減損会計の適用に際し、原則として事業会社毎を1つの資産グループとし、遊休資産、賃貸用資産及び売却予定資産は、個々の物件ごとに資産グループとして、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っておりますが、経営状況の悪化等により帳簿価額を回収できないと判断された場合には、対象資産の帳簿価額に対する減損損失の計上が必要になる可能性があります。

f. 繰延税金資産

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り) 1. 繰延税金資産の回収可能性」に記載しております。

g. 製品保証引当金

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 2. 製品保証引当金」」に記載しております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2022年11月に「中期経営計画のアップデートおよび2030年の経営方針について」を公表いたしました。本経営計画に係る経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

 

契約会社名

契約締結先

国名

契約の内容

契約締結日

マツダ株式会社
(当社)

トヨタ自動車株式会社

日本

業務資本提携に関する合意書

2017年8月4日

マツダ株式会社
(当社)

トヨタ自動車株式会社

日本

米国における乗用車共同生産
に関する合弁契約

2017年11月28日

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、2030年までを「電動化の黎明期」と捉え、2030経営方針のもと、多様化するお客様ニーズや環境規制に柔軟に対応すべくマルチソリューションで電動化を進めてまいります。多様な商品・電動化技術をタイムリーに開発・生産し、スモールプレーヤーとしての企業価値を向上させる「ライトアセット戦略」を実行いたします。独自の開発・生産プロセス革新である「マツダ ものづくり革新2.0」を展開し、より複雑な開発に対し、既存リソース水準を維持しつつ、生産性を3倍に向上させます。2027年に導入予定のバッテリーEVについては、協業・パートナーシップによって、従来の開発と比較して、開発投資を40%、開発工数を50%低減し、持続的な成長を実現していきます。

セグメントごとの研究開発体制は、日本では本社R&D部門(e-Mazdaを含む)とマツダR&Dセンター横浜にて新商品の企画・デザイン・設計・実験研究、並びに新技術の先行研究を行っています。海外では、北米は米国のマツダモーターオブアメリカ, Inc.、欧州はドイツのマツダモーターヨーロッパGmbH、その他の地域は中国のマツダ(中国)企業管理有限公司の各R&D部門と連携し、それぞれの市場特性に適合した商品の研究開発に取り組んでいます。

2030経営方針の実現に向けて、当連結会計年度は、長安マツダ汽車有限公司が開発・製造を行う新型電動車「MAZDA EZ-6」の販売を中国で開始しました。「EZ-6」は、マツダのデザインテーマ「魂動(こどう)₋Soul of Motion」にもとづいたスタイリングやマツダらしい人馬一体の走行性能を、マツダと合弁事業のパートナーである重慶長安汽車股份有限公司が有する電動技術やスマート技術と組み合わせた電動専用車です。電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の2機種を設定することにより、中国におけるお客様のニーズや嗜好に幅広く対応します。

また、新世代ラージ商品群の第四弾(*)となる新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-80」の販売を欧州と日本で開始しました。「CX-80」は、圧倒的な運転体験と上質で心豊かな移動体験を両立し、高い環境性能と安心安全なカーライフをお届けすることを目指したマツダの欧州と日本市場におけるフラッグシップモデルです。デザインコンセプトは「Graceful Toughness(グレイスフル タフネス)」とし、空間の豊かさと優雅さを両立した骨格を造り込み、大人の風格とゆとりを感じさせるデザインとしています。インテリアでは、2列目シートは座席間にコンソールがあるセパレートのキャプテンシートを筆頭に、キャプテンシートでコンソールが無くウォークスルーが可能な仕様、そして3人掛けとなるベンチ―シートの3種を設定しました。パワートレインは力強い走りと環境性能を両立したプラグインハイブリッド「e-SKYACTIV PHEV」、俊敏な走りと優れた燃費性能を実現する3.3L直列6気筒ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 3.3」、直列6気筒ディーゼルエンジンにマツダ独自のハイブリッド技術である M HYBRID BOOST(48Vマイルドハイブリッド)を組み合わせ、圧倒的なトルクによる豊かな走りと優れた燃費性能を高いレベルで実現した「e-SKYACTIV-D 3.3」の3種類を設定しました。

更に、本格的な普及に向かう電動化の黎明期に、社会の要請に応えながら走る歓びをお届けすることを目指したマツダの新世代ラージ商品群の第一弾である「MAZDA CX-60」を商品改良し、販売を開始しました。「CX-60」の魅力であるハンドリングの良さを維持しながら、より幅広いシーンで快適に移動を楽しんでいただけるように乗り心地を向上させました。また、お客様のライフスタイルに合わせて選択いただけるよう、スポーティさを際立たせた外装の新グレード「XD SP(クロスディ-エスピー)」と、アウトドアでのレジャーで活躍する装備を充実させた特別仕様車「XD-HYBRID Trekker(クロスディーハイブリッドトレッカー)」を追加しました。

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,680億円で、セグメントごとの研究開発費は、日本は1,608億円、北米は31億円、欧州は33億円、その他の地域は9億円であります。なお、当社のセグメントは、生産・販売の管理体制を基礎とした地域別のセグメントから構成されており、研究開発活動の大部分を日本セグメントで行っているため、セグメントごとの研究開発活動の状況につきましては、記載を省略しております。

 

(*) 第一弾は「MAZDA CX-60」(導入市場:欧州、日本、その他の地域)、第二弾は「MAZDA CX-90」(導入市場:北米、その他の地域)、第三弾は「MAZDA CX-70」(導入市場:北米、その他の地域)となります。