第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

 2030年度に向けた主な取組み

<連結売上収益目標>

2030年度の経営目標を売上収益8兆円、営業利益8,000億円、営業利益率10%、ROE13%としました。BEV比率の増加や労務費の上昇、原材料費が高騰する中でもしっかりと収益体質を改善させ、2030年代前半にはROE15%を達成することを見据えながら、必要な投資を進めていきます。

 

<各事業>

○四輪事業

各国の規制に対応すべく、適切なBEVモデルを投入していきます。

それぞれの国、地域のエネルギー事情等に応じて、お客様がご自身に合った商品を選んでいただけるよう、CNG(CBG)車・エタノール混合燃料対応車(FFV、E20)などの商品も投入していきます。

 


(注)CNG:圧縮天然ガス、CBG:圧縮バイオメタンガス、FFV:フレックス燃料車、E20:エタノール20%混合

 

日本

スズキにとって成長市場と捉えています。登録車販売を伸ばし、収益を高めていきます。

お客様と社会に必要とされる会社となることを目指し、日常の足として軽自動車をお使いのお客様の生活を守っていきます。商品に込めた想い、こだわりを丁寧に発信し、お客様が感じるスズキの価値を向上させ、商品価値に見合う、適正な価格で商品を販売していきます。また、お客様に寄り添った営業活動により、新たなお客様の獲得、代替の増加、サービス売上の増加により利益を増やし、お客様とともに成長していきます。

 

インド

今後も成長が続くスズキにとっての最重要市場です。自動車のリーディングカンパニーとしてシェア50%、BEVの生産・販売・輸出1位を目指します。SUVやMPVセグメントでの商品力を強化しつつ、中間層のお客様が初めて購入する車として、エントリーモデルの開発にも注力します。

インド各地の事情に合わせて、BEV・HEV・CNG(CBG)車・FFVなど選択肢を示していきます。そのためにも、お客様との物理的な距離が近いマルチ・スズキの商品企画・開発能力を向上させ、インドのお客様の嗜好に合った商品をタイムリーに提供する体制にしていきます。

販売については、NEXA店を上級志向、ARENA店を幅広いお客様向けとして、役割を明確化し2つのチャネルをさらに磨きあげていきます。

 

 

欧州

要求性能が極めて高く、先進的な環境・安全規制が導入される市場です。欧州のお客様が必要とする商品を供給することで、スズキの技術・製品を磨いていきます。

インド生産のモデルも活用し、必要な商品ラインアップを揃え、販売・サービス網を維持していきます。また、デジタルを活用した営業活動強化も進めていきます。

 

中東・アフリカ

大きな成長可能性を秘めた市場です。インドと地理的な距離が近く、道路事情などお客様のニーズがインドと似ているため、インド製モデルを活用して開拓し、販売・利益を増やすことを目指します。スズキの得意とする小型車の需要が見込める国で、お客様満足度の向上を図りながら、販売増を目指します。

 

アジア(インドを除く)

ASEAN市場については、インドネシアを中心に事業を再構築し販売台数を伸ばすことを目指します。インドネシアの生産・販売のボリュームを増やし、競争力の高い商品をインドネシアからASEAN各国に供給できる体制を構築していきます。

45%のシェアを持つパキスタンでは、さらなる事業規模拡大を進めることに取り組みます。パキスタンでは、日本の軽自動車が受け入れられていますので、軽自動車のグローバル化の一拠点として、商品ラインアップを充実させ、スズキの強みである販売網も駆使して、拡販していきます。

 

中南米・大洋州

中南米では、小型SUVのさらなる拡販をしていきます。インド製商品を拡充し、より市場における競争力を高めていきます。

大洋州では、低燃費商品の拡充をしていきます。各国で進む燃費規制の動向を踏まえ、スズキらしい“小型で低燃費”の機種を売り込むことで、スズキの存在感を高めていきます。

 

○二輪事業

妥協しない商品づくりを通じてお客様が求める「価値ある製品」を提供し、作り手の想いを伝え、お客様の信頼獲得を推進していきます。欧米を中心とした趣味嗜好で使用する商品とインド等の市場で生活の足、業務に使用する商品に層別し、商品づくりや販売・サービス活動を強化していきます。

 

○マリン事業

世界中のお客様に耐久性と信頼性に優れた製品を提供し、お客様にとって、水上の「楽しむ」と「働く」を支える頼れるパートナーとなれるよう取り組みます。「楽しむ」お客様と、「働く」お客様とで層別し、商品づくりや販売・サービス活動を行います。

マイクロプラスチック回収装置などマリンのお客様の大切な場所である水辺の環境を整備する活動にも力を入れていきます。

技術について、カーボンニュートラルに取り組むのはもちろんのこと、船体の統合制御、操作支援の技術開発、商品化も進め、お客様が求める、より高い価値を提供していきます。

 

○新事業

既存事業の強みを活かし、サービスモビリティやエネルギー分野で新規事業を立ち上げ、事業規模の拡大と収益化を目指します。スズキに足りない技術やノウハウは、他社との積極的な協業により実現していきます。

スズキの強みを生かし、インドの社会課題を解決することでともに成長する取組みであるバイオガス事業では、牛糞からバイオメタン、CBGを精製し、エネルギーが乏しいルーラルエリアの方の生活・炊事に、また、CNG(CBG)車の燃料として使っていただき、移動の自由を提供する取組みを推進していきます。

 

 

<技術戦略>

製造からリサイクルまで「エネルギーを極少化させる技術」を実現し、世界中の人々に移動する喜びをご提供しつつ、カーボンニュートラルな世界を目指します。

上記実現のため、全ての基本として全体を支える「軽くて安全な車体」、お客様の用途に合わせた適所適材な「バッテリーリーンなBEVとHEV」、「効率良いICEとCNF技術の組み合わせ」、アフォーダブルな仕組みでクルマの価値を創造する「SDVライト」、サーキュラーエコノミーに向けた「リサイクルしやすい易分解設計」、これらを5つの柱として技術開発を進めます。


(注)ICE:ガソリン等を燃料としたエンジン(内燃機関)

   CNF技術:バイオエタノールやCBGなどカーボンニュートラル燃料を少量で上手く燃やす技術

   SDV:ソフトウエアの追加・更新により販売後にも機能を拡張・変更できる自動車

 

<カーボンニュートラル>

事業活動からのCO2排出[Scope1,2]について、グローバル(インド含む)で2050年までのカーボンニュートラル達成を目標に取り組みます。パリ協定の1.5℃水準に沿った目標に移行し、中間目標として、総量で2030年度に2022年度比42%削減を目指します。

 


<研究開発・設備投資>

収益性・効率性を改善させ投資資金を最大限確保し、積極的に成長投資を実行していきます。企業価値を最大化できるように、外部状況に応じて柔軟に経営資源を適所適材に振り分けていきます。成長投資は主にインドの需要拡大に応える生産能力増強とエネルギー極少化に向けた技術開発に取り組みます。

具体的には、成長投資として、2030年度までに、設備投資に2兆円、研究開発費に2兆円、あわせて4兆円を計画しており、設備投資のうちインド関連で1兆2,000億円、研究開発費のうちエネルギー極少化に向けたもので1兆3,500億円を計画しています。

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。また、当該事項については、取締役会等の社内会議体で合理的な根拠に基づき適切な検討を行ったものです。これらの記載は実際の結果と異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)サステナビリティ全般の方針

①ガバナンス

代表取締役及び関係役員が出席する「経営・業務執行会議」と「コーポレートガバナンス委員会」において、サステナビリティ(環境・社会・ガバナンス)に関する課題や方針、対策等について議論しています。特に重要な議題については取締役会に上程・報告します。経営と一体となった、実効性のある活動の推進を目指しています。

具体的な施策については、経営企画本部に設置したサステナビリティ推進の専門部署を中心に、社内各本部/グループ会社と連携し、社会課題の解決に向けた取組みを社内横断的に推進しています。

 

 


 

 

②リスク管理

各部門で発生又は認識した課題の審議、並びに潜在リスクの洗い出し、把握をコーポレートガバナンス委員会で実施しています。特に環境関連リスクについては、テーマに応じてカーボンニュートラル推進会議や環境委員会で集中検討し、各部門への指示や管理を行っています。

詳細につきましては、「(2)気候変動への対応 ③リスク管理」「(3)人的資本に関する取組 ③リスク管理」「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

③戦略

a. マテリアリティ(重要課題)の特定

当社のマテリアリティは、社是「お客様の立場になって」を念頭に、課題解決によって社会やお客様にどのように貢献していくかを意識して特定し、「事業を通じて解決する課題」とそれらを支える「事業基盤の強化のための課題」に大別して整理しています。

特定・整理したマテリアリティを、当社のサステナビリティ方針の基本として定め、取組みを推進しています。なお、2025年2月に発表した中期経営計画の策定に伴い、事業を取り巻く環境の変化を踏まえて、現在マテリアリティの見直しを進めています。

 

 


 

b. サステナビリティ戦略

2025年2月、当社は中期経営計画「By Your Side」を発表しました。経営基盤の強化に向けた取組みとして、カーボンニュートラル、人材育成などに積極的に取り組んでいきます。社是・行動理念に基づいたスズキらしい解決策で様々な社会課題に取り組み、お客様の立場になった製品・サービスづくりで進出国・地域とともに成長していきます。

詳細につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

 

(2)気候変動への対応

①ガバナンス

スズキは、グループ全体の環境管理を目的として、取締役会直下に経営・業務執行会議である「カーボンニュートラル推進会議」「環境委員会」と、「コーポレートガバナンス委員会」を設置しています。

取締役会は「カーボンニュートラル推進会議」「環境委員会」及び「コーポレートガバナンス委員会」に対して指示・監督を行うとともに、両会議体からの報告を受け最終的な意思決定を行います。

「カーボンニュートラル推進会議」は気候変動(カーボンニュートラル)にテーマを絞り、より機動的に会議運営ができるように毎月1回、脱炭素に向けた集中審議を行っています。「環境委員会」は、カーボンニュートラル以外の環境問題、すなわち大気保全、水資源、資源循環などをテーマに年2回開催しています。

「コーポレートガバナンス委員会」は、コンプライアンスの徹底やリスク管理等に関する事項を検討し、関係部門と連携しながら組織横断的な課題への対策や施策を推進しています。

三つの会議体のテーマを明確に分けることで会議の実効性を高め、脱炭素に向けた意思決定を一層加速させています。

 

 


 

 

②戦略

 a. TCFD提言への対応

2020年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の趣旨に賛同・署名しました。ステークホルダーに分かりやすい情報開示を進めるとともに、気候変動に対する強靭性をより強化するため、シナリオ分析の高度化や開示情報の充実化に努めていきます。

 

 b. 気候関連リスクと機会、シナリオ分析

当社は、持続可能な事業活動を進めるために事業リスクや機会の特定を進めています。特に、気候変動の影響は根源的に不確実であるため、将来を幅広に捉えた上でリスク・機会の影響度を評価し、適切に対応することが重要であると認識しています。

この認識のもと、気候変動の物理影響が顕著になる「4℃シナリオ」と、パリ協定の実現に向けて気候変動対策が加速する「1.5℃/2℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、リスクと機会の影響の差異を評価しました。シナリオの想定にあたっては、IEA※1やIPCC※2等の科学知見に基づく、外部シナリオを参照しました。

※1 IEA:International Energy Agency の略。国際エネルギー機関。

※2 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change の略。気候変動に関する政府間パネル。

 

■当社の気候関連リスクの一覧とシナリオ別の影響差異


 

 

 c. スズキの気候関連リスクと機会

気候変動の緩和策として、排出ガスやCO2・燃費規制などさまざまな法規制の強化が進められる中、これらの規制を遵守するための開発費用の負担増加は当社の業績に大きな影響を与える可能性があります。一方で、当社が得意とする「小さなクルマ」は、生産に必要な材料やエネルギーが少なく、また使用時のCO2排出量も抑えることができます。こうした当社独自の強みを活かし、リスクに適切に対処していくことで機会の創出につなげていくことができると考えます。

2023年度から、すでに開示している気候変動に伴うシナリオ分析をベースとした財務インパクト分析に着手しています。気温上昇による台風や洪水、高潮など自然災害リスクの影響度をグローバルベースで評価し、リスクの低減や回避、事業継続につなげることを目的とした取組みです。まずは国内及びインドの自社拠点に加えて国内一次取引先様の影響度評価を実施しました。

気候変動によるリスクの低減や回避、将来の機会獲得や競争力強化に向けて、今後も引き続き十分な検討を重ね、事業戦略への反映を進めていきます。

 

■特に重要なリスク項目の詳細と創出機会、当社の対応状況


 

 

③リスク管理

 a. リスク管理体制

気候関連のみならず、各部門で発生又は認識した課題の審議、並びに潜在リスクの洗い出し、把握をコーポレートガバナンス委員会で実施しています。環境関連リスクについては、テーマに応じてカーボンニュートラル推進会議や環境委員会で集中検討し、各部門への指示や管理を行っています。

各会議体の扱うテーマ

●コーポレートガバナンス委員会:

各部門で発生又は認識したリスクを把握し、審議のうえ各部門へ指示を出し解決につなげる。

●カーボンニュートラル推進会議:

環境関連リスクのうち、気候変動(カーボンニュートラル)に関するリスクと機会を審議し、解決並びに推進を行う。

●環境委員会:

水資源や生物多様性等、気候変動以外の環境関連のリスクと機会を審議し、解決並びに推進を行う。

 

 b. 気候関連想定リスク

気候関連リスクにおいては、気候変動影響を「4℃シナリオ」「1.5℃/2℃シナリオ」の2つのシナリオを想定し、リスクと影響を評価しています。リスクの種類として、政策規制等の「移行リスク」と自然災害等の「物理リスク」の2つの観点からリスクと影響を考察しています。

リスクの詳細は、「②戦略 b. 気候関連リスクと機会、シナリオ分析」の当社の気候関連リスクの一覧をご参照ください。

 

④指標と目標

a. 環境目標

昨今、地球温暖化が要因とされる異常気象が頻発しています。こうした気候変動の影響を抑えるために、世界の平均気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えることを目的に、今世紀後半に温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す「パリ協定」が採択されました。

スズキは以前から、「小・少・軽・短・美」の理念に沿って、製造時、使用時ともにCO2排出の少ない製品を作り続けてきましたが、いわゆる1.5℃目標の達成に向けて、より一層のCO2削減に努めなければならないという課題意識のもと、気候科学と整合した削減目標を掲げ、取組みを推進していきます。

また、新興国は気候変動対策だけでなく経済成長との両立を求めています。新興国とともに成長を目指すスズキは、新興国の人々の暮らしを豊かにしつつ、気候変動対策を推進していきます。

スズキでは気候関連の目標と指標を複数設定し、推進並びに進捗管理しています。

指標にはCO2排出量のほか、気候変動と関連するエネルギー、大気保全、水資源保全等についても設定しています。

指標はターゲットに応じて大きく3つ設定しており、それぞれ目標達成を目指しています。

・ 長期:スズキ環境ビジョン2050

・ 中期:マイルストーン2030

     2030年度に向けた成長戦略

・ 短期:スズキ環境計画2025

 

 

■スズキの環境目標


 b. バリューチェーン全体が排出する温室効果ガスの開示

スズキは、原材料・部品の購買や製品の製造・販売を通した事業活動に伴い排出される温室効果ガスの低減に向け、温室効果ガス排出量の把握・開示が必要であると考え、事業活動に伴い排出される温室効果ガスだけではなく、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を把握する取組みを2013年度より行っています。

2023年度にバリューチェーン全体が排出した温室効果ガス排出量10,871万t-CO2のうち10,775万t-CO2がスコープ3(その他の活動に伴う間接排出)に相当し、中でも「カテゴリー11 スズキが販売した製品の使用」による排出量が8,558万t-CO2とバリューチェーン全体の78.7%を占めています。

このことからスズキは、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を低減させるには製品の使用に伴う排出量を低減させることが重要であると考え、引き続き燃費向上を重視した製品の開発・改良に取り組んでいきます。

 

 

■バリューチェーン全体が排出する温室効果ガスの開示 スコープ1・2・3 (単位:万t-CO2


※1 《スコープ1・2》

●算定範囲

-国内:スズキ株式会社、及び国内製造・非製造子会社66社

-海外:海外製造・非製造子会社32社

●対象ガス:温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、

      六フッ化硫黄、三フッ化窒素の7つのガス)

●排出係数

-電力:国内は電気事業者別の直近の調整後排出係数、海外はIEA Emissions Factors 2022

-燃料:国内は算定・報告・公表制度における排出係数、海外はIPCCガイドライン2006。

    なお、都市ガスの単位発熱量は供給会社の公表値。

※2 《スコープ3_ カテゴリー11》

●算定範囲:スズキ株式会社グループ

●算定対象製品:四輪車、二輪車、船外機、電動車いす他の自社製品を対象

●算定方法概要

-当該年度に販売した製品の想定される生涯走行距離に、機種別の排出原単位を乗じて算出。

-年間走行距離、使用年数については、主にIEA SMP Model 等の公表情報を基に設定。

-機種別の排出原単位は、原則として各国規制に基づく認証値を採用し、WTW(Well to Wheel)に換算したものを設定。

 

詳細は、ウェブサイト「サステナビリティ」をご参照ください。

 

 

(3)人的資本に関する取組

①ガバナンス

取締役会の監督の下、業務執行取締役及び関係する部門責任者(執行役員・本部長)が出席する経営会議において、人的資本に関する課題や方針、対策について議論しています。特に重要な課題については取締役会においても議論されます。経営と一体となった実効性のある活動を目指します。

社長に対して人事部門が定期的に状況報告を実施し、経営トップと近い距離で活動を行っています。

 


 

 

 

②戦略

<基本動作>

社是と行動理念「小・少・軽・短・美」、「現場・現物・現実」、「中小企業型経営」に則り、人財育成方針及び社内環境整備方針に基づき、社員の能力発揮、価値創造を後押しします。社員一人ひとりが自身の能力を最大限に発揮することで、2030年度に向けた成長戦略の達成及び持続的成長を実現します。人と社会に必要とされる存在となるべく、“生活に密着したインフラ企業”を目指していきます。

 

 


 

 

 

 

 

<新中期経営計画(2025~2030年度)>

経営基盤の強化に向けた取組み:人財育成

従業員の職務能力向上、個の成長とウェルビーイングを目指し、2024年4月に新人事制度を導入しました。適宜、取組みや制度のアップデートを行い、従業員一人ひとりが、社是と行動理念を実践し、個の成長に注力できる環境を整備していきます。

 


 

<人財育成方針>

スズキグループの全社員が理解し実践すべき社是では、①企業の社会的使命を果たすことへの努力目標(製品づくり)、②自分が所属する会社という組織に対する努力目標(会社づくり)、③自分自身に対する努力目標(人間づくり)の三つの努力目標を掲げています。社是の精神とそれを実践するための行動理念に基づき、「人財開発は会社の一丁目一番地」との思いで、社長自らが先頭に立って人財開発に関する諸改革をリードし、2022年10月には組織体制を人事総務本部から人財開発本部へと改編し、社是や行動理念を体現できるスズキらしい人財づくりに注力しています。そして、自動車の100年に一度の大変革と言われるCASE対応や、社会的使命であるカーボンニュートラル社会の実現等、従来の自動車メーカーのままでは到底対処できない大きな変化を乗り越えるために、既存の業務や考え方にとらわれず、新しいことに果敢に挑戦する人財、新たな発想を生み出す多様な経験・価値観を持つ人財、高度な専門性を持つ人財、グローバルに活躍できる人財など、多様な人財を採用、育成することに努めています。

 

<社内環境整備方針>

社是にあるとおり、高い目標への挑戦と自身の努力を促す風土醸成により、一人ひとり個性の異なる人財が共通の目標に向かって能力を発揮し、より付加価値の高い成果を創出し、働き甲斐・やりがいを感じながら生き生きと働き続けることができる会社づくりに取り組んでいます。今後も継続して、社員の声を吸い上げ、労使で丁寧な対話を重ね、人事制度改革、大胆な業務改廃・働き方変革、労働諸条件の改善、職場の環境づくりなど、人事総務諸施策の改革を進めて、社員一人ひとりがスズキで働いて良かったと思える会社にしていきます。

 

 


 

 

a. 人財育成

経営基盤の強化に向け「個の成長」と「個の稼ぐ力」の強化を掲げ、自己成長を促す環境と風土を醸成すると共に、社員の自主的な学びを奨励、支援することで、全社的な人財育成に取り組んでいます。

 

社是と行動理念の浸透

お客様に満足し続けていただき、スズキへの信頼が得られるよう、全社員一人ひとりが創業の精神、モノづくりの精神を再確認し、スズキのOS(Operating System)である社是と行動理念を業務で常に実践できるよう、新入社員から役職者までの階層別研修、各職場での実務などを通して確実な浸透を図っています。

 

階層別の職務能力向上

全部門に共通し、職能資格に応じて必要な基礎スキルや職務遂行能力が習得できるよう、社内外の講師による職能資格ごとに対象者を集めた集合研修を実施しています。各自が職務遂行に必要な能力の気づきと習得ができるよう取り組んでいます。

 

部門別の職務能力向上

職場の上司や先輩の指導を通したOJTや、社内研修や外部セミナーなどによるOFF‐JTを通し、専門知識とスキルの習得に取り組んでいます。また、技術及び生産技術部門では、部門で必要な全スキルを可視化し(スキルマップ)公開することで、各自のキャリアプラン構築やリスキリングを支援しています。

 

学習支援

Eラーニングによる各種研修コンテンツをオンデマンドで受講可能なシステム(研修ライブラリー)の導入や、福利厚生制度(カフェテリアプラン)による自己啓発書籍購入や語学スクール費用などに対する一定金額の補助を通し、社員の自主的な職務能力向上、専門知識の習得、学び直しを支援しています。

 

スタートアップ企業への派遣

スズキ本来の「困難に立ち向かい自ら切り開く起業家精神」に立ち返り視野・知見を広げ、社員一人ひとりが社外へのアンテナを高めることを目的に、当社の若手人財を、業種や企業規模を問わず、スタートアップ企業へ派遣しています。国内では、2020年より株式会社エムスクエア・ラボへ「モバイルムーバー」の共同開発などスズキのモビリティ開発のノウハウと、エムスクエア・ラボの農業や地域における課題解決型事業を創造してきたノウハウを融合し、新たなビジネスモデル創造として、また2022年8月より株式会社SkyDriveへ「空飛ぶ車」を四輪・二輪・マリンに次ぐ新たなモビリティ事業の一つとして、種をまき、育成するために派遣しています。海外では、デジタル化が急速に進んでいるインド工科大学内に、2022年11月よりSIC(スズキ・イノベーション・センター)を設置しました。SICに社内各本部の若手社員を派遣し、人々の日常にある課題解決を目指し、インド工科大学の学生と一緒にアイディアを出し合い、ITプロダクトの開発、社会貢献に繋げるイノベーション創出活動を開始しています。2024年11月より、インドのジュガード(今ある資源で創意工夫し問題解決を図る)思想やDPCA(まずはやってみる)精神を学び、インドの皆様と協業できる社員を育成するため、インド経営大学院アーメダバード校での集中研修を開始しました。インド最高峰の経営大学院である同校の教授陣より社会や経済について講義を受けるとともに、農村やスタータップ企業を訪問してインドの現場にふれ、モビリティを超えてインドと成長する熱い想いを醸成します。2024年-2025年には2回実施し、全社各部門から計25名が参加しました。

 

シリコンバレー研修

2017年9月より、失敗を恐れず挑戦する「ベンチャー精神」に触れ、問題解決手法「デザイン思考」を学ぶことを目的にシリコンバレーへの社員派遣を開始しました。スズキの社是である「お客様のために」の精神を体現している現地スタートアップ企業から学ぶべく、役員から若手までの男女様々な社員を、これまでに19回、延べ192名をシリコンバレーへ派遣してきました。コロナ感染症拡大中も加えて、オンラインや国内派遣によりさらに15回、延べ146名に対し研修を実施してきました。役員から若手までの男女様々な社員が研修に参加し、現地の研修で学んだデザイン思考や、失敗を恐れず挑戦するマインドセットを日々の業務や人財育成に活かしています。

 


 

 

デジタル教育

デジタル教育は全社員、DX推進人財、経営層及び管理職の3層に分けて教育を実施しています。全社員を対象に、DXリテラシー教育を実施し、業務効率化と付加価値の創出、各部門におけるデジタルツールの積極的な活用を促進することを目指しています。

DX推進人財には、DX推進スキル教育を実施し、より高度なデータ分析スキルの習得、デジタルツールの導入と社内展開を進めています。これにより、DX推進人財が社内でのデジタル化をリードする体制を整えています。

経営層及び管理職には、DXマネジメント教育を実施し、デジタル技術を活用した競争優位性の確保と変革を目指しています。

 


 

 


 

 

主な教育内容

・ DXマネジメント研修

DXは経営課題であるという認識のもと、経営層が自ら「役員・本部長が業界No.1デジタルチームになる」というスローガンを掲げ、DXを積極的に推進しているITトップベンダー各社との交流会や社内外の講師によるDX研修を開催しています。この研修では、役員及び本部長が直接手を動かし、ソフトウェアやネットワーク、セキュリティ等の分野についての原理・原則を理解するために取り組んでいます。3年目となる2024年度は、生成AI、データ活用、セキュリティをテーマに実際に手を動かすハンズオン形式で計6回を開催しました。生成AI、データ活用については、同様の内容を約200名の部長級管理職にも実施し、さらに生成AIについては、Eラーニングのコンテンツとして全社員に公開し、2025年3月時点で3,500名が受講済です。

 

・ 市民開発者の育成・支援

全社員がデジタルツールを使いこなし、自部門の課題を自らの手で解決することを目指しています。そのために、ローコード開発とBIの市民開発者を育成するとともに、各部門の個別最適にならないように、社内コミュニティの運営を通じて、ノウハウと成果物を共有し、全社最適のデジタル化に取り組んでいます。

1.  伴走支援型のスキルアップ機会の提供

ローコード開発ツールの教育と、自部門の課題解決を目的としたワークショップを実施し、2024年度は19本部100名の社員が参加しました。ここで学んだ市民開発者はエバンジェリストとして、自部門における市民開発の拡大の役割も担っています。

2.  市民開発者向けコミュニティの運用

(コミュニティTeam参加者 ローコード開発:846名、BI:967名)

・ 開発手法や手順・自習教材の共有

・ チャットベースの技術QAの投稿・共有

・ オンラインでの技術相談会、対面・集合形式での開発サポート

・ 開発されたアプリのカタログ化、情報の共有

3.  開発状況


 

 

・ データ分析・活用教育

データ活用の基礎理解を養う概念教育、データ活用の判断力を養うマネジメント教育、データの分析力を高める教育を実施しました。データの分析力を高める教育は、基礎編、応用編、実践編の3コースを開催しました。2024年度までの受講者数は、概念教育12,057名(全社員の71%)、マネジメント教育736名、分析力を高める教育1,398名となりました。また、研修以外にも「データ活用Quiz」を用意し、全社員がいつでも楽しみながら自己啓発・スキルアップできる環境を提供することでデータ分析に対する理解向上と定着を図っています。

i.  データを活用する概念の教育(全社員の80%目標)

データを分析することで何ができるようになるのかイメージできるようにする。

ii.  データの分析力を高める教育(DX推進人材:データ分析人材の80%目標)

基礎編:データの傾向/特徴から事象を予測できるようにする。

応用編:分析結果を考察し、結果の確からしさを判断できるようにする。

分析失敗事例から次分析に活かすポイントを見つけることができるようにする。

実践編:AIに触れることのハードルを下げ、自身の業務で活用できるようにする。

 

・ 生成AIの活用基盤の構築・活用

生成AIの大規模言語モデル(LLM)を同業他社に先駆け2023年3月21日に導入し、現在は10種類近くの内製アプリが稼働しています。2025年3月末時点で、8,787名の社員が生成AIを活用しています。生成AIを活用することで、アプリケーションの内製開発を加速させるとともに、社員自らが生産性を向上できる環境を維持します。

今後も、生成AI技術の活用範囲をさらに拡大し、業務効率化や新たな価値創出に取り組む予定です。

i.  生成AIを用いたアプリケーションの内製開発

長文要約、文章生成、コード生成といった生成AIの一般的な使い方の他に、社内ノウハウ(文書・社内公開WEBページ)を参照して回答するチャットボットを作成できるアプリケーションを開発しました。また、これらのチャットボットをツールとして使って回答を生成できるAIエージェント機能も実装しました。900以上の社内業務に対応したチャットボットを導入し、業務効率向上を実現しています。

ii.  生成AI技術の活用範囲の拡大

社員が自ら生成AIを業務フローやアプリケーションに組み込む事ができるように社内用のAPIを提供しています。これにより、専門知識がなくても、誰でも開発に取り組める環境を整えています。

 

b. エンゲージメント

社長職場対話

上司や部下、同僚、部門間でのコミュニケーションを円滑にし、問題を報告・連絡・相談しやすい土壌をつくるため、2021年より、社長による職場対話を全本部対象に、職場ごとに実施しています(実施対象:29本部、40職場)。職場対話では、社長自らが従業員に直接思いを伝え、また従業員は日々の困りごとや意見を述べ、対話を行っています。特に若手から中堅の従業員にとっては、自分の思いを自分の言葉で社長へ直接届けることができる機会となっています。また、職場対話の内容(抜粋)を社内ホームページで公開して全社員に共有することで、職場対話がより活発になるとともに、社員のモチベーションアップ、全社員のベクトル合わせにつなげています。

 

 

人事制度

2024年4月から人事制度を全面的に刷新しました。多様な社員一人ひとりが社是と行動理念を実践できるように、個の成長を促します。一人ひとりが自らの職務を遂行するために必要な職務遂行能力、すなわち職能を伸ばすことで、個の稼ぐ力が向上し、会社の持続的な成長につながります。同時に社員個々の価値創造を通じて、人と社会に必要とされる存在となるべく、“生活に密着したインフラ企業”を目指し、社会貢献に寄与していきます。多様な社員一人ひとりがやる気をもって「挑戦と行動」に取り組み、能力を発揮した結果について上司と部下で対話を重ねながら、評価・フィードバックする。このことでモチベーションを向上させて、さらなる「挑戦と行動」に取り組み、能力の更なる向上につなげていきます。この人財育成サイクルを繰り返すことで個の成長を促します。原理原則を理解し、職務遂行に求められる知識とスキルを自ら学び、上司や先輩社員からノウハウを受け継ぎ、自ら現場を経験することで職務能力を向上させることに取り組んでいます。

 

・ 職務系統・職能資格

各職系・各階層における職能資格を見直し、職務遂行に必要な役割・能力・行動要件を明確化した「職能資格制度」を導入しました。各部門の職務で必要とされる知識・スキル・ノウハウ・経験を明確にし、同時に各職系に求められる職務内容を整理することで、上司と部下の相互コミュニケーションを通じて、上司と部下の双方が共通理解にたって職務に取り組むことで、効果的な職務能力向上に取り組みます。

 

・ 評価

これまで一括実施していた業績評価と能力評価を個別に評価し、短期の業績は賞与に、職務能力は昇給・昇格に反映するようにしました。これにより、各職系・各階層に求められる能力を正しく評価できるように変更し、さらなる「挑戦と行動」を促す環境の醸成を図ります。また、半期に1回の目標を掲げ、目標達成度により業績考課を決める従来の「目標チャレンジ制度」に加えて、「職能育成制度」を導入しました。各資格で定義した評価項目(能力基準)に基づき、1年間における能力発揮・向上について評価し、上司と部下の相互コミュニケーションで個の成長を促す人財育成サイクルを回しています。

 

・ 賃金

各職能資格に応じて「挑戦と行動」を促し、個の能力発揮・向上を適切に賃金へ反映するように、賃金体系と賃金等級を見直しました。各職能に必要となる研修を実施し、勤務年数に応じて昇給するのではなく、求められている役割や能力に応じた昇給とすることで、さらなる個の成長を促します。また、従業員が安心してモチベーション高く業務に専念できるように、子育て支援手当や単身赴任手当、単身赴任帰省旅費手当等、各種手当を拡充しました。

 

・ 再雇用制度

60歳を迎えた社員の内、希望者には、年齢に関わらず「挑戦と行動」に取り組めるように、正社員と同様の業務で活躍し、60歳時点の給与を維持する制度に見直しました。また全社における人財マッチングと再教育による個の職務能力に最適な配置を実現し、生き生きと働くことができる環境を整備しました。

 

c. 流動性

人財の流動性や人手不足が加速している社会情勢において、スズキで働くことが魅力的であり、かつ個人の成長につながると感じてもらえるような会社づくりや職場環境整備に努めています。

 

キャリア採用

多様な人財を確保するべく新卒採用に加え、近年はキャリア採用に注力しています。2024年度は262名(前年度比145%(181名))を採用しました。また、社内に蓄積のない新しい分野の知見・経験をもった人財の方を対象に、既存の人事制度にとらわれない雇用形態を新設し、2023年6月より導入しています。

 

 

アルムナイ採用

スズキを退職された方を対象に「アルムナイ採用」に取り組んでいます。在職時の知見を活かし、社外で新たに学び得た知識や経験を持ち合わせ、慣れ親しんだ職場環境であるスズキで再び即戦力として活躍していただくこと、また、転職を経験したことにより、スズキの強み・弱みを再認識し、強みは伸ばし、弱みは改善することでスズキの更なる成長に貢献していただくことを期待しています。

 

リファラル採用

スズキに在籍している社員から知人・友人を紹介いただく「リファラル採用」に取り組んでいます。事前に社員がスズキのことを詳しく説明することで、応募者の方はスズキに対する理解が深まり、スズキを良く知った上で入社していただくことで、入社後の定着性向上に寄与すると考えています。

 

次世代技術開発に向けたデジタル人財の採用

CASEを始めとする次世代技術開発に必要なデジタル人財の確保が喫緊の課題となっています。日本国内のデジタル人財が不足する中、当該分野の人財を多数輩出するインドに着目し、2018年よりインド工科大学ハイデラバード校からの直接採用に取り組んでいます。(2024年5月時点 累計26名)またスズキが得意とするインド市場において、当社子会社のMaruti Suzuki India Ltd.との人財交流で日印一体となって競争力の向上に取り組んでいます。

 

人財可視化

部門ごとの業務を分解し、業務の流れと必要となるスキルを見える化し、社員一人ひとりが業務遂行に必要となるスキルを関係づけすることで、属人化されている業務が可視化され、自部門の人財配置状況を把握した上で、欠員を見越した補充や育成計画を明確にします。目標チャレンジや職能育成面接時に上司と部下との対話を通して育成計画やキャリアパスと実績を共有し続け、個の成長を促進・評価して、チーム・会社の成長・増強につなげます。将来的には各部門で作成した「タスク分解表(スキルマップ)」を人事データとして人財基盤システムに取り込み、人的資本状況の把握、採用と配置、リスキリング、タレントマネジメント等に活用していきます。

 

サクセッションプラン

当社は持続的な企業成長を目指し、次世代リーダー(役員、本部長、部長)のサクセッションプラン策定に取り組んでいます。2024年4月の人事制度改革に伴い役職ごとに求められる能力要素、人物・行動要件を定義し、役職者の役割を明確にしました。また、幹部級・管督級の人財プールを設け、組織のマネジメントを担うポスト長への配置をフレキシブルに行っています。役職昇格は上司からの推薦だけでなく人事部門が考える後任候補者リストを参考に、経営会議にて社長を始めとする経営幹部が意見を出し合って決定しています。また、管理職を対象とした多面評価を行い、あらゆる側面からリーダーとしての適性を見極め、適切な人財配置及び人財育成に取り組んでいきます。

 

部門人事

現場の困りごとを、現場により近くで正確かつ迅速に対応するため、2023年より四輪技術部門と生産部門に人財開発本部から独立した部門人事を新設しました。現場の声を拾い上げ、従業員個々の困りごとや相談ごとを一緒になって解決したり、部門で解決できない課題は人財開発本部へ届け、職場改善・問題解決をしています。社員が生き生きと働けるようにモチベーションを高め、定着率向上につなげています。

 

d. ダイバーシティ

スズキでは、性別、年齢、国籍、人権、宗教、障がいの有無などのみならず、社員一人ひとりの個性や意思を尊重し、一人ひとりが仕事と生活の調和を図りながら、多様な働き方を通じて、能力発揮・能力向上で最大限に活躍できる環境整備と風土醸成に取り組んでいます。

 

 

女性活躍推進

これまで以上に女性が活躍できる会社となるよう、2020年度からは、2025年度の女性役職者数を2015年度の3倍にする計画を掲げ、管理職並びにその候補者を含む女性役職者数の増加に取り組んだ結果、2024年度の女性役職者は2015年度比で4.2倍の223名まで増加し、計画を達成しました。一方で、女性管理職数は2024年度末時点で31名(女性比率2.18%)となっています。将来的には女性管理職比率を女性従業員比率と同じにするため、まずは2030年度までに女性管理職比率を5.0%とすることを目標とし、両立支援にとどまらず、キャリア形成支援に取り組んでいきます。また、自動車産業の女性比率が低いことも課題と捉え、生産工場をはじめとする社内のすべての職場が、性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がいの有無などを問わず、すべての人にとって働きやすいものとなるよう、生産技術の革新、各種設備の更新によるすべての職場の根本的な作業環境の改善等、働きやすさの実現にも取り組んでいきます。

 

両立支援

従業員が多様な働き方を選択できる制度をつくることで、意欲と能力を持った従業員が継続して働ける環境を整えています。また、職場全体でワークライフバランスへの意識を高め、「働きやすい職場」づくりを推進していきます。

 

・ 短時間勤務制度(育児・介護)

小学生以下の子供を養育する従業員もしくは家族の介護を必要とする従業員に対し、本人の申し出により1日の所定労働時間を6時間又は7時間に短縮する制度を導入しており、2024年度は394名が利用しました。

 

・ 休暇・休職制度(育児・介護)

育児・介護に専念するための休職制度は、男女を問わず多くの従業員が利用しています。2024年度は372名がこの制度を利用しました。2022年4月からは、男性が育児参加しやすい風土とするために、従来の配偶者の出産時に2日間取得できる「配偶者出産休暇」に加え、子の出生から8週間以内に5日間取得できる「出生時育児休暇」を新設しました。2024年度の男性の育児休職取得者は267名(取得率65.7%)と着実に風土醸成が進んでいます。

 

・ ライフサポート休暇

付与後2年間の有効期限を過ぎた有給休暇日数は最大40日までストックすることができ、傷病、親や子供の介護、不妊治療、骨髄提供において利用できるライフサポート休暇制度を導入しています。

 

・ 2024年プラチナくるみん認定を取得

次世代育成支援対策推進法に基づき、「子育てサポート企業」として「プラチナくるみん」の認定を受けました。「プラチナくるみん」は、「くるみん」認定企業のうち、子育てなどの両立支援制度導入や利用が進み、高い水準の取組みを継続して行うなど、一定の基準を満たした場合に受けることができる認定です。スズキは2022年に「くるみん」認定を取得し、男性育児休職の取得促進や女性の就業継続・活躍の推進を行っていることが評価された結果、「プラチナくるみん」認定の取得となりました。

 

・ パパママ情報交換会

パパママ情報交換会は、育児休職中の従業員とその配偶者を対象にしており、育児休職からの復帰経験を持つ社員からの経験談や、社員同士の交流を通して、不安なくスムーズに職場に復帰できること、復帰後も気軽に相談できる体制を築くこと、共働きの子育てについて夫婦で理解を深めることを目的に開催しています。

 

・ 小児科・産婦人科オンライン相談サービス

妊娠、不妊、出産、子育て、女性の健康について「いつでもどこでも」「スマホからオンラインで」「専門家に」気軽に悩みを相談できるサービスを導入しています。日本にいる従業員・家族に限らず、駐在員や帯同家族の悩みが解消され、より一層安心して働ける環境となることを目指しています。

 

LGBTQ

スズキでは就業規則において、性的指向・性自認に関する嫌がらせ・差別的言動を禁止するとともに、全従業員に配布している「コンプライアンス・ハンドブック」でアウティングを取り上げて理解促進を図る等、従業員が「性の多様性」を理解し、受容する風土の醸成に取り組んでいます。また、ユニフォームの男女統一化や「誰でもトイレ」の増設も実施しました。

 

障がいのある方の雇用

人事部内に専任担当者、精神保健福祉士を配置し、定期的に個別面談を実施している他、職場にも障害者職業生活相談員を置き、障がいを持つ従業員の悩みや問題のケアを行うなど、長く安心して働くことができる環境づくりに取り組んでいます。

2005年2月に設立した特例子会社「スズキ・サポート」は、事業をスタートして21年目を迎えました。2025年3月末現在で、障がいのある方(重度の障がいを含む)の社員数は89名となり、指導員と一体となってスズキ本社内事務所、社員寮、関連施設の清掃業務、社内の文房具管理業務、及び農園作業に携わっています。全員が明るく元気に働く姿は、スズキの従業員からも共感と喜びをもって迎えられています。スズキでは、スズキ・サポート設立の理念である社会貢献の一環として、障がいのある方々が働くことのできる喜びや社会参加によって人間的成長を感じることができるよう、今後も障がいのある方の雇用に取り組んでいきます。

 

e. 健康・安全

健康経営:

健康宣言

スズキでは「お客様の笑顔は社員の笑顔から生まれる」をキャッチフレーズに、スズキグループで働くすべての従業員が社是を実践し、心も身体も健康で明るく生き生きと働くことができ、その結果、お客様が笑顔になるような製品をご提供できるよう、チームスズキ一丸となって、健康経営活動に取り組んできました。これまでの継続した取組みにより、スズキは2021年から毎年、健康経営優良法人へ認定され、2025年には、健康経営優良法人ホワイト500に認定されました。これからもお客様の笑顔を、社員の笑顔を生み出し続けるため、健康経営活動への取組みを続けます。

 

社内浸透の取組み

「お客様の笑顔は、社員の笑顔から生まれる!」を健康経営キャッチフレーズとして、「チームスズキ一丸で健康経営を推進していこう!」と社長から全従業員に対しメッセージを発信しました。また毎月1回「健康経営ニュース」を発行し、従業員へ健康経営活動についての情報発信をするとともに、活動に対するアイディアや意見を募集する取組みを実施しています。

 

ヘルスリテラシー向上の取組み

社長をはじめ経営層と従業員が健康管理をテーマに座談会を定期的に開催し、その様子を動画で社内へ発信することで、従業員のヘルスリテラシー向上を図っています。また毎月1回「今は興味のないあなたにも、何かの時にお役に立てる」をコンセプトに、医務室通信「はなえみ」を発行しています。

 

浜松ウエルネスアワード2025

浜松市が目指す予防・健幸都市の実現に向けた浜松ウエルネスプロジェクトの推進に寄与し、他の企業や団体等の模範となる事業・取組みとして、「浜松ウエルネスアワード2025」健康経営部門にて、優秀賞を受賞しました。

 

メンタルヘルス対策

メンタルヘルス対策として、各種階層別教育、セルフケア・ラインケア教育などの実施に加え、事業所ごとに独自のセルフケア教育やラインケア教育を実施しています。また、相談体制として社内医務室や心の相談室(外部精神科医や臨床心理士によるカウンセリングを無料で受けられる相談室)に加え、仕事上のストレスのみならず私生活上の悩みにも相談できるよう社外のEAPサービスを導入し、従業員だけでなくその家族も利用できる環境を整備しています。

 

運動習慣促進の取組み

スズキアスリートクラブの選手がアイディアを出し、簡単な動きで運動効果の高い「スズキオリジナル体操」を作成しました。スズキオリジナル体操を全社に広める活動として、アスリートクラブ選手が職場のフロアに出向き、就業時間内に体操指導を実施しています。また、浜松市と連携し、浜松市の提供する健康管理アプリ「はままつ健幸クラブ」を社内へ紹介しています。誰でも参加ができ、月間の歩数、消費カロリーの管理・歩数ランキングなど、日々の健康づくりの見える化を実施しています。

 

安全衛生:

安全基本理念

・ 「安全は全てに優先する。」~Make Safety as first priority.(Safety First)~

企業活動の根幹は「人」である。その「人」を守る安全はいかなる時にも一番の優先順位を与えなければならない。

 

・ 「労災はすべて防ぐことができる。」~All accidents are preventable.~

管理者は、「労災は必ず防げる」という強い信念をもって、日々職場をリードしなければならない。

 

・ 「安全はみんなの責任である。」~Safety is everyone’s responsibility.~

会社がやるべきことを行うと共に、一人ひとりが、自分の身を自分で守る、責任ある行動を取らなければならない。みんなが、ルールを守り、注意し合える職場風土を全員でつくろう。

 

リスクアセスメント活動

スズキでは予防を中心とした安全先取り活動として「リスクアセスメント」を実施しています。作業におけるリスクを洗い出し、その対策を進めることで安全性の向上を図っています。2001年よりヒヤリ・ハット事例のリスクアセスメントを導入し、2013年より定常作業のリスクアセスメントに取り組んでいます。また、2016年より化学物質のリスクアセスメントを実施しています。2017年にはリスクアセスメントの評価方法を見直し、リスクの高い作業について再評価し、リスク低減を進めています。

 

f. 労働慣行

人権の尊重:

人権に関する法令や国際規範の尊重

スズキグループは、「世界人権宣言」(UDHR)、国際人権規約(「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(ICESCR)、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(ICCPR)」)及び「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」(ILO中核的労働基準)など、国際的な人権規範に規定された人権(結社の自由・団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別の排除、安全かつ健康的な作業環境など)を尊重します。「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)、責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針、責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス、我が国の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」等を参照し人権尊重の実践に取り組みます。また、スズキグループが事業展開する世界各国・地域の人権関連法令を遵守します。人権についての国際規範と各国・地域の法令の間に差異がある場合は、より高い基準を尊重することに努め、相反する場合には、国際的に認められた人権の原則を最大限尊重する方法を追求します。

 

是正と救済

スズキグループの企業活動が人権に対する負の影響を引き起こした、又は助長したことが明らかになった場合は、適切な手段を通じて、その是正・救済に取り組みます。さらに、スズキグループの事業、製品又はサービスが、人権に対する負の影響と直接関連する場合、ビジネスパートナーと協力し、その影響の是正を図ります。その一環で、スズキグループはホットラインを設け、人権への負の影響を受けたスズキグループの全役員・従業員、取引先、請負事業者等社外の関係者が利用できる相談窓口を整備します。

 

 

福利厚生:

従業員持株制度

従業員持株制度は、毎月の給与から一定の金額を天引きして会社の株式を継続的に購入する制度です。毎月の拠出金額に応じて無理なく株式が取得でき、財産づくりを支援するため、拠出金に会社から奨励金も付与されます。福利厚生のみならず、従業員が自社の株を持つことで、会社業績の向上が株価を押し上げ、その結果として自身の資産価値が増大するというモチベーションアップが期待でき、経営参画意識の醸成にもつながります。

またスズキでは、人的資本投資の取組みの一環として、2023年4月より従業員持株会の奨励金付与率を従来の5.6%から100%(奨励金額上限10,000円)へ引き上げました。魅力的で加入しやすい制度とすることで、さらに多くの従業員が持株会へ加入することで資産形成を後押しするとともに、経営参画への意識を向上していきます。

 

選択型福利厚生制度

・ カフェテリアプラン

勤務地・環境にかかわらず、社員が公平に福利厚生を受けられること、並びに多様な社員一人ひとりの嗜好を幅広く支えるため、会社が設定した福利厚生メニュー(両立支援、健康支援、能力支援、余暇支援、生活支援、等)の中から社員が自由に選択し、付与されたポイント(カフェテリアポイント)を上限に、補助を受けることができる仕組みです。

 

・ ベネフィット・ステーション

会社が設定したメニュー(旅行、レジャー、グルメ、スポーツ、ショッピング、学習、等)を会員優待価格で、制限なく利用できるサービスです。さらにカフェテリアプランで認められているメニューに関しては、そのポイントを併用して利用することができる仕組みです。

 

社内食堂・キッチンカー

昼食時間帯には社員食堂の他、曜日によっては本社構内にてキッチンカーの営業も行っています。クレープやかき氷などのスイーツやドリンクといったカフェメニューだけでなく、ハンバーガー、プレートランチ、スープなどランチメニューもあり、天気の良い日は芝生広場のベンチで喫食が可能です。2024年1月15日から本社社員食堂で新しいインドベジタリアン料理の提供を開始しました。この料理は浜松市でレストラン事業などを展開する企業様にご協力いただいたもので、味の開発にはインド出身のスズキの従業員も協力し、現地の味と同等にしています。本社以外の拠点では、予約制で提供を行っています。キッチンカーは本社以外からの出店希望も多いため、工場等の他拠点にも出店を広げています。

 

労使関係:

2022年以降の交渉スタイルの変革

労使交渉については、年1回の春季労使交渉(いわゆる春闘)の場が主となっていましたが、昇給・賞与に主眼が置かれてしまい、それ以外の課題については、労使間での情報共有・意見交換が尽くされておらず、お互いの主張を伝える形式的な場になりがちでした。こうした状況を踏まえ、労使信頼関係の根幹である職場単位での上司・部下コミュニケーションを活性化させ、層別で議論をしていくことを目指し、2022年の春季労使交渉では、これを実現させるための施策を実施しました。2023年以降も継続して取り組んでいます。

 

春季労使交渉での取組み

会社から組合に対して、将来に向けての取組みを伝え、課題を共有し、労使でベクトルを合わせながら解決に向けて話しあう「対話の場」としました。組合員だけではなく、管理職も一体となって労使交渉に臨むことが効果的と考え、管理職に向けた社長メッセ―ジも交渉に合わせて発信して、このメッセージを含めた対話内容を労使全体に向けて情報発信しました。

 

 

労使交渉後の継続的な取組み

職場の課題はまず職場で解決すべく、部門単位の「労使懇談会」を定期的に開催し、コミュニケーションを活性化させています。職場だけでは解決が難しい課題は、毎月1回開催する「支部労使協議会」、「中央労使協議会」の場で3月の春季労使交渉まで継続的に議論することで、春季労使交渉を労使対話の集大成の場とすることを目指しています。

 

g. コンプライアンス

不適切事案に関する再発防止策の実施状況

2016年の燃費・排出ガス試験問題及び2018年の完成検査問題を起こした反省から、その事実を決して忘れることなく後世へと伝え続けるために、毎年5月18日を全従業員が改めて自部門に関わる法令を総点検し、その遵守を再認識する日としました。2017年に技術部門より開始し2018年以降は社内の全ての部門で自分達の業務に関連する法令の棚卸しと総点検する活動を実施しています。

 

コンプライアンス・ハンドブック

2020年には、行動指針に基づいて、コンプライアンスの視点からスズキグループで働く人々が実践しなければならないことや、やってはいけないことを具体的にまとめた「コンプライアンス・ハンドブック」を発行して国内の全従業員に配布しています。日本語版の他、英語版・ポルトガル語版を作成して、国籍を問わず、日々の業務において随時確認・振り返りができるようにしています。2023年度には内容の見直しを行って改訂版(第2版)を再配布しています。

 

毎日コンプライアンスクイズ(毎コンクイズ)

日常的にコンプライアンスを意識する風土を作るため、毎日1問、役員・従業員のPC立ち上げ時に表示されるコンプライアンス関連のクイズに各人が回答する形式のEラーニングを2017年6月から実施しています。

 

③リスク管理

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(1)事業に関するリスク⑤人財確保及び人財育成」に記載しています。

 

 

④指標及び目標

 

指標

2022年度

2023年度

2024年度

目標

 

新卒採用数

719

734

723

 

キャリア採用

105

181

262

 

パート・有期社員採用数

140

164

180

 

障がい者雇用率

2.44

2.35

2.45

2.5

 

デジタル人材インド直接採用数

4

6

10

 

有給休暇取得率

81

81

81

 

女性管理職数(人)及び

比率(%)

21

1.61

25

1.85

31

2.18

2030年までに

5.0%

 

女性役職者数(人)及び

比率(%)

156

3.09

182

3.49

223

3.98

 

男性育休取得率

43.5

63.1

65.7

 

男女間賃金差(%)

全労働者

64.4

64.5

64.5

 

正社員

64.0

64.4

65.1

 

パート・

有期社員

67.5

61.2

55.3

 

育児短時間勤務利用者数

323

346

394

 

育児休職利用者数

299

390

368

 

介護短時間勤務利用者数

9

9

10

 

介護休職利用者数

3

5

4

 

定期健康診断 受診率

100

100

100

 

定期健康診断 再検査受診率

59

57.6

100

 

特定健診実施率

99.5

99.0

100

 

特定保健指導実施率

57.8

59.0

60

 

研修費用千円

433,512

643,291

690,758

 

 

なお、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理ととともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクは次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです

 

<リスク管理体制>

取締役会の下に、コーポレートガバナンス委員会を設置しています。コーポレートガバナンス委員会は、コンプライアンスの徹底やリスク管理に関する施策を展開し、また、関係部門との連携により組織横断的な課題への取組みを推進しています。

詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

 

 


 

<事業等のリスク>

(1) 事業に関するリスク

 ① 気候変動及び低炭素社会への移行

気候変動リスクは、日本及び世界各国・各地域で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、低炭素社会への移行リスク及び気候変動による物理リスクが含まれます。

低炭素社会への移行リスクのうち、当社グループが特に重要度の高いリスクと認識しているものは、自動車のCO2・燃費規制の強化に伴う罰金発生や販売機会の逸失、規制遵守のための研究開発費用の負担増加等、及び炭素税等の導入・強化に伴う操業コストの増加等です。これらは、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客様の嗜好や投資家行動の変化による企業価値低下等の可能性があります。

気候変動による物理リスクには、平均気温の上昇に伴うエネルギーコストの増加等、及び水資源リスクの変化に伴うサプライチェーンの停滞や生産コストの増加等の長期的な気候変動による影響と、自然災害の頻発・激甚化に伴う事業拠点の被災や事業活動の停止等の突発的な気象変化による影響の両方が含まれます。突発的な気象変化に対応すべく、水災に特化したBCPの策定に取り組んでいますが、気候変動による物理リスクは当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動への対応」をご参照ください。

 

 

 ② 商品の開発・投入力

お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化に迅速に対応し、お客様に満足していただける魅力的な新商品を市場に投入するために、継続的な技術革新と商品開発に取り組んでいます。これには、安全・環境性能の向上や先進技術の導入など、将来に向けた開発力の強化が含まれます。また、優秀な人財の確保と育成、その安定的な供給のための効率的かつ持続可能な部品調達・生産・物流体制の構築など、幅広い分野での取組みを進めています。

しかしながら、これらの環境変化を的確に捉え、新商品を適時に開発・投入し安定的に供給することができなければ、販売シェアや売上が低下する可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 ③ 特定の事業及び市場への集中

当社グループは、継続的・安定的な収益拡大を目指し、各事業及び各地域において収益改善の取組みを行っています。

しかしながら、当連結会計年度において、連結売上収益のうち、インドでの売上収益が四輪事業・二輪事業・その他含めたインド事業全体にて4割強を占めています。これら事業に関わる需要や市況、同業他社との競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ コンプライアンス

当社グループでは役員及び従業員が健全に職務を遂行するための「スズキグループ行動指針」を制定し、業務に関連する法令、企業倫理や社会的責任を包含したコンプライアンスの取組み全般を推進しています。具体的には、コーポレートガバナンス委員会の設置、承認・決裁手続、他部門による確認手続などを含む業務規程・マニュアル類の整備、コンプライアンス研修や個別の法令等の研修の実施、内部通報窓口(スズキグループ・リスクマネジメント・ホットライン)の設置などを通じて、違反の未然防止並びにコンプライアンス案件への速やかな対策を講じています。

しかしながら、不測の事態によりコンプライアンス違反の事実や不十分な対応があった場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 人財確保及び人財育成

電動化技術、先進安全技術、デジタル技術の強化等の専門領域の人財を中心として、日本国内のみならずインドを含め、これまで以上に積極的な採用を行うとともに、採用後の人財育成にも力を入れています。また、社員一人ひとりの学びの機会を増やし、挑戦と行動を支え、個の職務能力を向上させることで、会社の創造価値を高めていく環境を整えるため、2024年4月より人事制度を全面的に刷新しました。さらに、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がいの有無等の多様性を尊重するとともに、分け隔てなく公平に登用し、働きやすい職場環境の整備に努めています。

しかしながら、労働市場のひっ迫や人財獲得競争の激化等により、人財の確保ができない場合、人財の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された職場環境が実現できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する取組」をご参照ください。

 

 ⑥ 取引先からの部品調達

技術力、品質、価格競争力などの要素を総合的に踏まえ、部品調達先の分散に向けた取組みをしています。

しかしながら、部品によっては調達が特定の取引先に依存している場合や、当社グループが一次取引先を分散していたとしても、一次取引先が部品調達を二次以降の特定の取引先に依存しているものがあります。これらの部品について、火災・自然災害、設備の故障、需給バランスの急激な変化、経済安全保障の動向、人権侵害の発覚等により、継続的・安定的に確保できない場合、当社グループの生産に遅延や休止又はコストの増加を引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 ⑦ 人権の尊重

当社グループは、国際的なビジネスを展開する中で、サプライチェーンにおいて人権尊重の原則に基づいた活動を行っています。

しかしながら、当社や製造・非製造子会社、販売子会社を含むグループ会社のみならず、取引先やその二次取引先以降も含むグローバルなバリューチェーン全体の労働環境や人権状況に関する完全な管理は困難であるという課題があります。児童労働や強制労働、差別的な労働慣行、労働者の健康と安全に関する問題などの人権侵害は、法的な責任や罰金、賠償責任などの経済的な損失などに加え、ブランドイメージの損傷やお客様からの信頼喪失などの当社グループの社会的信用に重大な影響が生じることにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑧ 品質保証

当社グループは、優れた品質の製品をお客様に提供することを最優先事項としており、開発・製造から販売・サービスに至るまで適正な管理体制を敷き、品質向上に努めています。

しかしながら、電動化や自動運転技術などの新技術に伴う品質要求は複雑化・高度化しています。予期せぬ品質に係る問題により大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑨ 情報セキュリティ・サイバーセキュリティ

当社グループは、事業活動全般にわたり、電子データを用いた設計開発、生産、販売、会計などの作成・処理・蓄積を行っており、これらのシステムは適宜更新・変更されています。また、製品には多様な電子制御装置が組み込まれており、これらは車両や装備の制御に不可欠です。

これらのシステムと装置には安全対策が施されていますが、それでもなお、ハッカーやウィルスによるサイバー攻撃、システム障害、インフラの停止などのリスクが存在します。特にサイバー攻撃はその脅威が増しており、過去には当社海外子会社が標的とされた事例もあり、同様の事態が発生した場合には業務の中断、データの破損や喪失、機密情報の漏洩などが起こる可能性があります。

さらに、当社グループは、個人情報や経営・業務・技術に関する機密情報の保護に努めていますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出したり不正に使用されたりするリスクがあります。そのような場合、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払いなどが生じ、これもまた当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑩ 他社との提携

当社グループは、研究開発、生産、販売、金融等、国内外の自動車メーカーをはじめ、他社と様々な提携活動を行っていますが、提携先固有の事情等、当社グループの管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑪ ブランドイメージ

当社グループのブランドイメージは、お客様や社会からの信頼の表れであり、当社グループの持続的成長において極めて重要な要素です。製品の品質向上、コンプライアンス、適切なリスク管理及び内部統制の強化を通じて、ブランドイメージの向上に努めています。

しかしながら、予期できない原因による製品の不具合やサービス品質の問題、コンプライアンスに違反する行為、またそれらの情報開示の遅延等によりブランドイメージが毀損された場合、お客様の信頼を失い、販売の減少や市場での競争力低下を招くおそれがあります。これにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 市場に関するリスク

 ① 経済情勢の変化

経済情勢の変化による販売への影響について、長期間の景気低迷、世界経済の悪化や金融危機、経済情勢の急変などの不測の事態は、四輪車、二輪車、船外機等の当社グループ製品の需要の大幅な低下につながり、例えば金利上昇によるお客様の購買意欲低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

経済情勢の変化による生産への影響について、当社グループは、世界各国・各地域において事業を展開しており、特に、アジア地域の新興国を中心とした海外生産工場への依存度も年々高まってきています。これらの国・地域での経済情勢の急変などの不測の事態や、各国・各地域の税制や金融政策などの予期せぬ変更や新たな適用があった場合は、例えば政府の外貨不足により当社の部品輸入が制限され計画通り生産ができなくなる等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 他社との競争激化

当社グループは、競争力の維持・向上のための施策に取り組んでいますが、事業を展開する世界各国・各地域の市場において他社との競争にさらされています。世界の四輪車・二輪車・船外機産業の国際化及び異業種参入が今後ますます進展することによって、競争はより一層激化する可能性があります。製品の品質、安全性、価格、環境性能等のほか、製品の開発・生産体制の効率性や販売・サービス体制の整備、販売金融など様々な項目において優位に競争することができなくなった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金融・経済のリスク

 ① 為替及び金利の変動

当社グループは、日本から世界各国・各地域へ四輪車、二輪車、船外機並びにそれらの部品などを輸出するとともに、海外の生産拠点からも、それらの製品や部品を複数の国・地域へ輸出しています。現在では連結売上収益に占める海外売上収益の割合は7割以上を占めます。特に、新興国を中心とした海外生産工場への依存度が高いことから為替変動の影響を受けやすく、為替変動リスク軽減として為替予約等のヘッジや、生産拠点を分散してグローバルに最適化を図るなどの対策を行っています。また、資金の多くを日本で調達していることから、為替及び金利変動リスクの軽減を図るため為替予約等のヘッジや、生産拠点を分散してグローバルに最適化を図るなどの対策を行っています。

しかしながら、全てのリスクをヘッジすることは不可能であり、為替及び金利の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 原材料・部品価格の変動

当社グループは、原価低減活動の実施や、原材料価格の変動及び取引先基盤強化の取組みによるインプットコストの変動を考慮した製品価格の適正化など、収益改善の取組みを実施しています。

しかしながら、原材料及び部品の購入価格が急激に上昇し、これらのコストを製品の販売価格に十分に転嫁できない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク

 ① 政府規制等

国際情勢の変化に対応するため、情報収集やモニタリング活動を行っています。排出ガス、燃費、騒音、安全性及び製造工場からの汚染物質排出に関する厳格な法規制に対応するため、環境技術の開発と製品の改良に積極的に取り組んでいます。また、消費者保護、労働、独占禁止など、国内外の広範な法規制に適応するためのコンプライアンス体制を強化しています。

しかしながら、国際情勢の急激な変化による環境規制や貿易政策、労働法制などの予期せぬ変更は、当社の事業環境に影響を与える可能性があります。また、規制の改正により費用負担が増加した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 知的財産の保護

当社グループは、他社製品との区別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を蓄積しており、その保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権侵害防止の対策を講じています。

しかしながら、当社グループの知的財産が不法に侵害され、あるいは第三者から知的財産侵害の指摘を受け訴訟、製造販売の中止、損害賠償等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③ 法的手続

訴訟リスクや法的手続きに対応するため、関連法規に基づく調査にも迅速かつ適切に対応しています。

しかしながら、現在進行中の訴訟や将来発生する可能性のある法的手続において、不利な判断が下され罰金や損害賠償金が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ 世界各国・各地域での事業展開

当社グループは、世界各国・各地域において事業を展開しており、また、いくつかの国・地域においては、その国・地域の法律又はその他の要件に従い、現地企業との間で合弁による事業を行っています。これらの事業は、各国・各地域の様々な法律上その他の規制(課税、関税、海外投資及び資金の本国送金に関するものを含みます。)を受けています。これらの規制、又は合弁相手の経営方針、経営環境などに変化があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

また、多くの政府は、関税の賦課や、価格管理規制及び為替管理規制を定めています。当社グループは、これらの規制を遵守するために費用を負担してきており、今後も負担することになると予想しています。新たな法律の制定又は既存の法律の変更によっても、当社グループが更なる費用を負担する可能性があります。さらに、各国・各地域の税制や景気対策等の予期せぬ変更や新たな適用が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 自然災害・パンデミック・戦争・テロ・暴動・ストライキ等の影響

日本では、地震・津波、台風、洪水などの自然災害や原子力発電所の予期せぬ事故など様々なリスクにさらされています。特に、当社の本社をはじめとする主要施設や研究開発拠点、主要生産拠点は周期的な巨大地震が発生する可能性が高い静岡県に集中しています。当社グループでは、東海地震・東南海地震などの自然災害による被害の影響を最小限に抑えるべく、建物・設備等の耐震対策、防火対策、事業継続計画の策定、地震保険への加入等、様々な対策を講じていますが、災害等の規模がその想定を超える場合には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

海外においても、当社グループは世界各国・各地域において事業を展開しており、海外での事業展開に関連する様々なリスクにさらされています。

これら国内外のリスクには自然災害、パンデミック、戦争、テロ、暴動、ストライキ、さらには政治的・社会的な不安定性や困難に起因するもの等があります。これらの予期せぬ事象が発生すると、原材料や部品の調達、生産、販売及び物流やサービスの提供などに遅延や停止が生じる可能性があります。これらの遅延や停止が起こり、長引くようであれば、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。これらの記載は実際の結果とは異なる可能性があり、その達成を保証するものではありません。

※当社グループは当連結会計年度(自2024年4月1日 至2025年3月31日)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度(自2023年4月1日 至2024年3月31日)の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っています。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度の業績は、売上収益は5兆8,252億円となり前期に比べ4,676億円8.7%)増加しました。営業利益は6,429億円となり前期に比べ1,490億円30.2%)増加しました。税引前利益は7,302億円となり前期に比べ1,385億円23.4%)増加しました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、4,161億円となり前期に比べ990億円31.2%)増加しました。

売上収益は販売台数の増加、価格改定、及び為替影響等により増収となりました。営業利益は、研究開発費や労務費等の固定費の増加、及び取引先基盤強化の取組みによる影響等を、増収効果や原価低減等によりカバーし、増益となりました。収益性に関して、当期の営業利益率は11.0%となり前期9.2%から改善、また、ROEは14.6%となり前期12.6%から改善し、稼ぐ力の向上に取り組んできた成果が出たと認識しています。

 

事業別セグメントの業績は、次のとおりです。

 

① 四輪事業

 売上収益は5兆3,052億円と前期に比べ4,356億円8.9%)増加しました。営業利益は5,676億円と前期に比べ1,437億円33.9%)増加しました。

 

② 二輪事業

 売上収益は3,981億円と前期に比べ331億円9.1%)増加しました。営業利益は408億円と前期に比べ17億円4.4%)増加しました。主にインドでの販売拡大が増収増益に寄与しました。

 

③ マリン事業

 売上収益は1,097億円と前期に比べ20億円1.8%)減少しました。営業利益は306億円と前期に比べ31億円11.4%)増加しました。

 

④ その他事業

 売上収益は121億円と前期に比べ9億円7.9%)増加しました。営業利益は38億円と前期に比べ5億円13.5%)増加しました。

 

 

生産、受注及び販売の状況は、次のとおりです。

 

 ① 生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度(千台)

前年比(%)

四輪事業

3,296

+0.9

二輪事業

1,530

+12.6

マリン事業

110

△1.8

 

 

 

 ② 受注実績

当社グループは主に見込み生産を行っているため、受注生産について該当事項はありません。

 

 ③ 販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度(億円)

前年比(%)

四輪事業

53,052

+8.9

二輪事業

3,981

+9.1

マリン事業

1,097

△1.8

その他事業

121

+7.9

合計

58,252

+8.7

 

(注) 販売実績は外部顧客への売上高を示しています。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産は、5兆9,937億円(前期末比2,360億円増加)となりました。

負債は、2兆3,056億円(前期末比676億円減少)となりました。借入金につきましては、世界情勢の不安定さを踏まえ、現在の借入水準を当面維持していく考えです。

資本は、3兆6,881億円(前期末比3,036億円増加)となりました。その内、親会社の所有者に帰属する持分は、主に当期利益の計上等により利益剰余金が3,779億円増加したこと、及び為替換算調整勘定の減少等によりその他の資本の構成要素が1,182億円減少したことに伴い、2兆9,707億円(前期末比2,509億円増加)となりました。

これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は49.6%(前期末:47.2%)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュフローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は8,427億円となり、前連結会計年度末に比べ27億円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

(ⅰ)営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動による資金の増加は、6,698億円(前年同期は5,018億円の増加)となりました。主な要因は、税引前利益7,302億円等です。

 

(ⅱ)投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動による資金の減少は、4,756億円(前年同期は4,774億円の減少)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出3,447億円等です。

 

(ⅲ)財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動による資金の減少は、1,860億円(前年同期は929億円の減少)となりました。主な要因は、親会社の所有者への配当金の支払額709億円、及び非支配持分への配当金の支払額299億円等です。

 

② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、2025年2月に発表した中期経営計画のなかで、2026年3月期から2031年3月期の6年間のキャピタル・アロケーションを示しました(下図参照)。資金使途に関しては、主に設備投資と研究開発費の成長投資に計4兆円を配分し、中期経営計画の実現を通して企業価値を向上させていく考えです。財源に関しては、主に営業活動から得る現金により調達していく考えです。外部調達に関しては、資金調達の多様化の観点から様々な手法を検討しており、そのひとつとして社債発行枠2,000億円を設定しています。

当社グループの資金の流動性管理にあたっては、急激な外部環境変化に対応できるよう、一定水準の手元流動性を確保する方針としています。また、国内及び欧州においてはキャッシュプールシステムを通してグループ内で機動的に対応できる体制を構築しています。

加えて、当社は取引銀行6行と総額3,000億円のコミットメントライン契約を締結しています。なお、当連結会計年度末においてコミットメントラインは未使用となっています。

 

当社の当連結会計年度末の現金及び現金同等物は5,743億円(単独ベース)で、これは月商2.6ヶ月に相当し十分な流動性を確保しています。流動性向上の取組みのひとつとして、子会社から受け取る配当金について一定のルールにて本社への還元を図っており、当連結会計年度では464億円のキャッシュインがありました。

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は8,427億円(連結ベース)です。更にこれとは別に、インドの子会社マルチ・スズキ・インディア社では営業活動から得た現金を主にオープンエンドの投資信託にて運用しており、その残高は約1兆円規模であり、十分な流動性を確保しています。今後の主な設備投資としてインドでの四輪車の生産能力増強投資がありますが、マルチ・スズキ・インディア社の資金にて実施していく考えです。

また、当社グループは国内格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、当報告書提出日現在における格付は「シングルAプラス(安定的)」となっています。2024年9月実施の格付にて、前回の格付「シングルA(ポジティブ)」から1ランクアップとなりました。

 

(ご参考)中期経営計画スライド資料 37ページ「キャピタル・アロケーション」


 

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものの内容及び金額は「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

(5) 並行開示情報

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(第3編から第6編までを除く。以下、「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、次のとおりです。

なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。

また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、百万円未満を切り捨てして表示しています。

 

① 要約連結貸借対照表

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

資産の部

 

 

 流動資産

2,437,638

2,557,593

 固定資産

 

 

  有形固定資産

1,329,840

1,461,109

  無形固定資産

7,804

12,936

  投資その他の資産

1,610,334

1,554,042

  固定資産合計

2,947,980

3,028,089

 資産合計

5,385,618

5,585,683

負債の部

 

 

 流動負債

1,741,046

1,560,319

 固定負債

506,174

618,216

 負債合計

2,247,220

2,178,536

純資産の部

 

 

 株主資本

2,198,245

2,508,657

 その他の包括利益累計額

292,768

200,221

 新株予約権

41

41

 非支配株主持分

647,342

698,226

 純資産合計

3,138,397

3,407,147

負債純資産合計

5,385,618

5,585,683

 

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書
要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

売上高

5,374,255

5,843,087

売上原価

3,959,818

4,253,829

売上総利益

1,414,437

1,589,257

販売費及び一般管理費

948,874

995,967

営業利益

465,563

593,289

営業外収益

58,111

65,574

営業外費用

35,149

36,775

経常利益

488,525

622,089

特別利益

3,486

44,896

特別損失

2,734

2,186

税金等調整前当期純利益

489,276

664,799

法人税等合計

145,049

190,592

当期純利益

344,227

474,206

非支配株主に帰属する当期純利益

76,509

84,040

親会社株主に帰属する当期純利益

267,717

390,166

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

当期純利益

344,227

474,206

 その他の包括利益合計

377,835

△92,281

包括利益

722,062

381,925

(内訳)

 

 

 親会社株主に係る包括利益

552,832

297,619

 非支配株主に係る包括利益

169,230

84,306

 

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

2,070,363

7,653

41

430,561

2,508,620

当期変動額

127,881

285,114

216,781

629,777

当期末残高

2,198,245

292,768

41

647,342

3,138,397

 

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

2,198,245

292,768

41

647,342

3,138,397

当期変動額

310,412

△92,546

50,883

268,749

当期末残高

2,508,657

200,221

41

698,226

3,407,147

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

446,045

596,949

投資活動によるキャッシュ・フロー

△433,855

△419,630

財務活動によるキャッシュ・フロー

△81,225

△171,108

現金及び現金同等物に係る換算差額

40,526

△4,707

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△28,508

1,502

現金及び現金同等物の期首残高

882,146

853,637

現金及び現金同等物の期末残高

853,637

855,140

 

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(連結の範囲の変更)

新たに設立した1社を連結の範囲に含めました。また、清算結了により2社を連結の範囲から除きました。

 

(持分法適用範囲の変更)

株式の追加取得により1社を持分法適用の範囲に含めました。また、清算結了等により2社を持分法適用の範囲から除きました。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(連結の範囲の変更)

新たに設立した2社を連結の範囲に含めました。

 

(持分法適用範囲の変更)

新たに出資した関係会社等2社を持分法適用の範囲に含めました。

 

(6)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「39.初度適用」をご参照ください。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(有形固定資産)

日本基準では有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、主として定率法を採用していましたが、IFRSでは定額法を採用しています。また、IFRSの適用に伴い、見積耐用年数を見直しています。この処理により従来の方法によった場合に比べて、税引前利益は90億円増加しています。

 

(無形資産)

日本基準では、発生時費用処理していた研究開発費について、IFRSでは資産化の要件を満たす支出額を資産計上しています。この処理により従来の方法によった場合に比べて、税引前利益は246億円増加しています。

 

(負債性金融商品)

日本基準では投資有価証券に含まれる一部の負債性金融商品について、公正価値の変動をその他の包括利益で認識していましたが、IFRSでは「金融収益」及び「金融費用」として認識しています。この処理により従来の方法によった場合に比べて、税引前利益は239億円増加しています。

 

5 【重要な契約等】

2017年2月

トヨタ自動車株式会社と業務提携に向けた覚書を締結。(2019年8月に資本提携)

 

2021年7月

 

トヨタ自動車株式会社、いすゞ自動車株式会社、日野自動車株式会社、ダイハツ工業株式会社と商用事業における協業に関する共同企画契約を締結。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、お客様の立場になった価値ある製品づくりをモットーとし、世界中のお客様の日々の移動を支え、環境にも優しく、いつも身近にあって頼れる生活のパートナーとなる製品・サービスを提供しながら、下記のように研究開発に取り組んでいます。

 

当社は、社是と行動理念「小・少・軽・短・美」、「現場・現物・現実」、「中小企業型経営」を具現化し、モビリティのライフサイクル全体でエネルギー極少化を目指して技術開発を行っています。この理念を基に世界の国・地域に最適な商品を生み出し、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現と世界中の人々に移動する喜びを提供してまいります。

中期経営計画(2025年~2030年度)「By Your Side」を2月に発表し、私たちチームスズキが目指す姿は、お客様の生活に密着したインフラモビリティ、そのものでありたいと示しています。お客様、社会にとって身近で、頼りになる存在であり続けるために今までの事業の延長線、同じやり方のアップデートだけでなく、新しい取組みを行い、非連続へ挑戦し、成長していきます。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は2,656億円であり、セグメントごとの活動状況は次のとおりです。

 

 (1)四輪事業

① 新商品の開発状況

[国内市場]

当社は、2025年3月12日に軽四輪車と登録車を合わせた日本国内の四輪車累計販売台数3,000万台を達成※1しました。内訳は軽自動車が約2,707万台、登録車が約293万台です。当社はこれまで独創的かつお客様に求められる商品を提供してきました。今後も、ものづくりの理念である「小・少・軽・短・美」を通じて、お客様のニーズに合った価値ある商品を開発していきます。

・2024年9月に、ハイトワゴンタイプの軽乗用車 新型「スペーシア ギア」を発売しました。「アウトドアライフに欠かせないアクティブ軽ハイトワゴン」をコンセプトに、2023年11月にフルモデルチェンジしたスペーシア・スペーシア カスタムに採用した使い勝手の良い装備に加え、アウトドアライフに寄り添う専用のデザイン・装備を採用しました。

・2024年10月に、コンパクトSUV新型「フロンクス」を発売しました。「扱いやすいクーペスタイルSUV」をコンセプトに、力強さ・上質さ・洗練さを合わせ持つデザイン、取り回しの良さと快適な室内空間、スムーズかつスポーティーな走りを実現する高い走行性能、毎日の安心・安全をサポートする最新の安全機能を兼ね備えた、新ジャンルのコンパクトSUVです。日本国内専用仕様として4WD車を設定しました。「フロンクス」は、2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー(主催:日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会)の「10ベストカー」に選出されました。グローバルカーとして、インド、中南米、中近東、アフリカなどでも販売し、ご好評いただいています。

・2025年1月に、ジムニーシリーズで初となる5ドアモデル 新型「ジムニー ノマド」を発表しました。「本格的な悪路走破性を持つ5ドア コンパクトクロカン4×4」をコンセプトに、ジムニーシリーズ最大の魅力である悪路走破性を維持しながら、リヤドアの採用やホイールベースの延長などにより、後席の乗降性・居住性向上と荷室空間の拡大を実現し、ロングドライブでの快適性を高めました。走行性能は、ジムニーシリーズの特長であるラダーフレームを「ジムニー ノマド」用に新作し、重量増加に対して必要な剛性を確保したほか、「FRレイアウト」、「副変速機付パートタイム4WD」、「3リンクリジッドアクスル式サスペンション」などの車体構成を継承しました。

・「スイフト」は2025年次RJCカーオブザイヤーを受賞しました。2004年の発売開始から4代目にあたるモデルで、4代連続での受賞です。

 

 

[海外市場]

当社は、海外市場においてもお客様の立場になって、常にお客様の期待を超える価値をもつ商品を開発し、提供してきました。

・2024年5月に、当社のインド子会社Maruti Suzuki India Ltd.(以下、マルチ・スズキ)はインドで新型「スイフト」の販売を開始しました。新型「スイフト」は、マルチ・スズキの子会社、スズキ・モーター・グジャラート社で生産しています。インドの若者世代へ、進化したプレミアムハッチバックという新たな価値を提供していきます。

・2024年11月に、マルチ・スズキはコンパクトセダンの新型「ディザイア」をインド国内で発売しました。「ディザイア」は、2008年3月に販売を開始して以来、これまでにインド国内で累計270万台以上※2の販売を記録している主力モデルのひとつです。新型「ディザイア」は「Progressive Stylish Compact Sedan(先進的でスタイリッシュなコンパクトセダン)」を商品コンセプトに、歴代ディザイアの強みであるセダンらしいフォーマルなデザインと高い経済性に更なる磨きをかけ、伝統的なデザインを求める従来のセダンユーザーだけでなく、先進技術やスタイリングに関心が高い、若いエントリーユーザーにも選んでいただける商品として開発しました。

・当社のパキスタン子会社Pak Suzuki Motor Co.,Ltd.(以下、パックスズキ)は、2024年10月に新型「エブリイ」を発表しました。新型「エブリイ」は、パキスタンで長年ご愛用いただき、仕事でもファミリーカーとしても活躍するワンボックスタイプのコンパクトバン「ボラン」の後継となる新型バンです。日本で販売している軽商用車「エブリイ」と同じボディサイズ及びエンジン排気量を採用しました。パックスズキは、1982年の生産開始以来、日本の軽自動車をベースとしたモデルを中心に、信頼性が高くお求めやすい価格のコンパクトカーを提供してきました。これからも「生活を支えるモビリティ企業」として、地域社会に貢献する企業を目指していきます。

 

② エネルギー極少化への対応

当社は、お客様の選択肢の幅を広げ、地域のニーズに合った製品・サービスをお届けするとの考え方を軸に、各国でのカーボンニュートラル目標達成に貢献します。お客様のニーズや利用スタイルに対応した電動化技術の開発を進めるとともに、既存内燃機関の更なる熱効率改善やCN燃料に対応したCO2削減、水素燃料を使ったエンジンの研究開発など、マルチパスウェイでの取組みを行っています。電気自動車(BEV)の開発・製品化の推進はもちろんのこと、内燃機関の更なる改善にも力を入れ、ハイブリッド車(HEV)の効率を向上させていきます。

また、CO2排出が少なく、安全な軽量ボディを効率的なエネルギーで生産することにも取り組んでいます。具体的には、引張り強さ1.5GPaの超々ハイテン材を用い、生産CO2排出が少ない「冷間での超々ハイテン成形技術」の開発と実用化、複雑形状成形を短工程で実現する「新金型構造工法」の開発、高強度材接合品質を監視する「溶接電流値コントロール技術」の実用化等の活動を進めています。これらの技術を基に、安全でエコなモビリティを提供します。

アルトを100kg軽量化する「Sライトプロジェクト」の活動を開始しました。部品の材料置換や小型化、機能統合だけでなく、ちょうどいいパッケージの探求により、「軽くて安全」を全社で連携して実現していきます。軽量化によって、車両全体にさまざまな良いことにつながる「天使のサイクル」を生み出します。

EV、HEVの取組みにおいてもエネルギー極少化を進めます。国や地域、お客様の使用状況に合わせ、エネルギー効率がベストとなる選択で過剰にバッテリーを搭載しない、「バッテリーリーンな電動車」をお客様にお届けすることを目指し、開発しています。

BEVでは、スズキBEV世界戦略車第一弾である「e VITARA」を、2024年11月にイタリア・ミラノ、2025年1月にインドで開催された「Bharat Mobility Global Expo 2025」で公開しました。「e VITARA」は、「Emotional Versatile Cruiser」をコンセプトに、近代的なBEVの先進感とSUVの力強さを併せ持つデザイン、高効率なeAxleと安心・安全を追求したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーで構成するBEVパワートレイン、前後に独立した2つのeAxleを配置した電動4WDモーターで駆動する「ALLGRIP-e」、BEV専用に新しく開発したプラットフォーム「HEARTECT-e」を商品特長としたSUVです。2025年春よりスズキ・モーター・グジャラート社で生産を開始し、2025年夏頃からインド、欧州、日本など世界各国で順次販売を開始します。また、スズキ、ダイハツ、トヨタの3社で共同開発したBEVシステムを搭載したBEV軽商用バンにつきましても、2025年度中の導入を目指しています。

HEVでは、現在主軸の12Vマイルドハイブリッドからモーター出力を向上させつつバッテリーリーンな48Vスーパーエネチャージを開発しています。これは、小さく軽い車を作る当社の特徴を活かしたハイブリッドシステムです。また将来のCN燃料との組み合わせも考慮し、更なるエネルギー極少化に向けて、電動車の開発を積極的に進めていきます。

内燃機関車両の改善としては、2023年12月から販売開始した新型スイフトに搭載したZ12E型新エンジンと高効率の新CVTを2025年1月にマイナーチェンジした新型ソリオにも搭載し、WLTCモード22.0km/L(2WD車)という低燃費を実現しました。このパワートレインは採用を拡大し、車両の環境性能を高めていきます。

新型軽乗用車「ワゴンR スマイル」は、デュアルインジェクションやクールドEGRを採用して燃焼効率を高めたR06Dエンジンと、軽量で高効率な新CVT、マイルドハイブリッドの組み合わせにより、25.1km/L(HYBRID X 2WD車)の低燃費を実現し、走行性能との両立を図りました。

さらに、インドでは多様なニーズに応える環境性能に優れた技術を搭載する自動車をラインナップするため、CNG燃料に対応した自動車をマルチ・スズキと共同で開発しました。実績として2023年度にインド国内で約43万台、2024年度には前年比1.5倍の約60万台を販売しています。

また、牛糞をベースとしたバイオガス事業を推進するため、スズキ、全国酪農開発機構(NDDB)及びアジア最大規模の乳業メーカーであるBanas Dairy社の3社は、2023年9月にバイオガス生産プラント設置(2025年稼働)について合意しました。現在、バイオメタンガス燃料に対応したCNG/CBG車の開発と安定した品質のバイオガス燃料を生産する製造技術開発を推進しています。さらに2024年10月には新たに2つの乳業組合とバイオガス生産プラント設置で合意しました。

加えて、当社が支援しマルチ・スズキが開発した高エタノール混合ガソリン対応エンジンを搭載した車を今年度に市場へ投入できるように開発を進めています。

また、燃料を「つくる」プロセスの効率化を研究することを目的とした「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合」に参画し、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、バイオマスの利用、生産時の水素・酸素・CO2を最適に循環させて効率的に自動車用バイオエタノール燃料を製造する技術研究を進めています。

 

③ 安全・安心技術の開発

当社は、事故そのものを未然に防ぐ予防安全技術と、万一の衝突被害を軽減する衝突安全技術を培い続けています。安心して楽しく車に乗っていただくために、事故の無い未来に向けて、さらなる技術の進化と普及に努めていきます。

特に予防安全技術については、各国の道路環境や運転事情を熟知し、確実にお客様の安全運転をサポートする技術を構築することが重要です。当社にとって重要な市場であるインドは、過度な交通渋滞や特有の運転習慣があり、日本の技術をそのまま適用することは容易ではありません。インドでの40年にわたる市場経験を活かし、インドの街中でも有効に機能する予防安全技術を独自に開発する計画です。

 

④ 環境に優しい生産技術の開発

自動車塗装で塗膜として製品になるのは使用する塗料の約65%です。塗膜にならなかった塗料は回収し、廃棄物として処理しています。廃棄物を減らし、地球に優しい塗装技術へ革新するため、以下の活動を進めています。

・超々近接塗装機を導入し、被塗物と塗装機の距離を250㎜から100㎜に縮め、静電気の力を利用して塗装効率を65%から98%に向上(2025年導入開始)。

・塗装効率の改善により、ブース内の風量を減らし、エネルギー消費を50%削減(2027年開発完了)。

・樹脂塗装をフィルムに置き換えブースや乾燥炉を不要とし、CO2排出を75%低減(2029年開発完了) 。

材料面でも、環境に優しいバイオ樹脂素材「デュラビオ」を用いた樹脂部品の生産技術開発に取り組んでいます。

「デュラビオ」は植物由来のでんぷんを53%配合、また塗装を必要とせず美しい高輝度の外観を実現できる材料です。この材料を使用するため、デザイン意匠を具現化する成形技術及び少ないエネルギーで生産する工法の開発活動を進めています。

この材料を活用することで塗装時に排出されるCO2や大気汚染の原因となるVOCの削減に貢献します。

 

 

⑤ 情報通信・自動化技術の開発

2021年12月より国内向け新型「スペーシア」、2022年2月よりインド向け新型「バレーノ」、2022年8月より欧州向け新型「Sクロス」へコネクテッド技術を搭載して以降、合計16車種に対し「スズキコネクト」サービスを提供し、充実させています。

コネクテッド技術を活用して、緊急時の迅速かつきめ細やかなお客様サポートや、離れた場所で車両の状態確認や操作を可能とするリモート機能など、より安心・快適・便利なカーライフをお客様へ提供しています。

今後も、他地域への展開や他モデルへの搭載を順次進めるとともに、コネクテッドデータを活用した品質向上や設計支援の促進、次世代の通信技術を採用し、通信ナビやBEV向け新機能を実装した、新しい世代のコネクテッド開発を進めていきます。

また、2023年3月より法人向け車両管理サービス「スズキフリート」を開始しており、コネクテッド技術を活用し、車両を日々活用されている法人企業の車両運行管理や社員の安全運転啓発などの業務を支援しています。簡易装着可能な通信機を活用することで、法人企業が既に所有されている車両にも装着することが可能です。今後は、走行データを分析することで、各業種・企業に適したカスタマイズサービスを提供することや、カーボンニュートラル対応のEV導入を支援するサービスへの展開を進めていきます。

四輪車のみならず、二輪車や船外機、セニアカーなど他製品への通信技術の搭載にも取り組むとともに、新しい電動モビリティユニットなどの新製品や、カーボンニュートラルを支えるためのIoT先進技術の検討も進めていきます。

「SDV(Software Defined Vehicle)」に対し、有線と無線(OTA)をベストミックスしたソフトウェア更新、ハードウェアを共用し部品費を抑えるECU統合、ソフトウェアを再利用して開発費を抑えるソフトウェアプラットフォームを柱とした「SDVライト(right)」の開発を進めています。「SDVライト」により、決して過剰ではなくアフォーダブル(手頃)な仕組みで、ソフトウェアによる車の価値を創造し、お客様にお届けします。

高齢化や人口減少により、人や物の移動を支えるドライバの人手不足解消が社会課題となっています。この社会課題を解決する自動運転技術の実用化にチャレンジしています。

人の移動については、「交通空白地における交通弱者の足の確保」を目標に、官民一体のプロジェクト(浜松自動運転やらまいかプロジェクト)に2016年から参画してきました。当社のものづくりの根幹である「現場・現物・現実」に即した自動運転技術、モビリティサービスを実現するため、2017年度、2019年度、2022年度、2023年度、2024年度に実証実験を行い、地域住民や自治体の方々から多くの意見をいただきながら、開発を進めています。2024年度は、利用者の予約情報をもとに運行ルート上の停留所に自動で停車する機能や、ソフトウェアの改善によるスムーズな運行について、3か月間の長期実証実験を通して検証しました。今後、これらの検証結果を精査・分析し、ステップアップで自動運転技術の実用化につなげてまいります。

物の移動については、豪州のスタートアップ企業「Applied EV」と共同でジムニーのラダーフレームを活用した物流向けの自動運転電動台車の開発を進めています。当社が培ってきたものづくりの強みとスタートアップ企業の強みである発想力・柔軟性をかけ合わせることで、さまざまな用途で使える自動運転電動台車のプラットフォームを創造し、新たな価値につなげてまいります。

当社はオーナーカーだけでなく人や物の移動による喜びを皆様に提供していきます。

当連結会計年度における四輪事業の研究開発費は2,391億円です。

 

※1 一般社団法人 全国軽自動車協会連合会及び、一般財団法人 自動車検査登録情報協会データより当社調べ。

※2 2024年9月末までのインド国内販売台数

 

 

 (2)二輪事業

二輪事業では、カーボンニュートラル達成に向けた技術、お客様の望む魅力的な二輪車を提供する技術の開発を行っています。2025年1月にインドで開催された「Bharat Mobility Global Expo 2025」にて、二輪バッテリーEV(BEV)の世界戦略車第一弾となる新型「e-ACCESS(e-アクセス)」、燃費改善した新型スクーター「ACCESS(アクセス)」、及びバイオエタノール燃料対応の「GIXXER SF 250(ジクサーSF250)」の3車種を公開しました。また、2024年7月に行われた鈴鹿8時間耐久ロードレースに、サステナブル燃料を使用したGSX-R1000Rで出場し、8位完走を果たしました。カーボンニュートラル達成に向かい、多様な選択肢の開発を継続して行きます。

また、新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」、及び新型スーパーモトモデル「DR-Z4SM」向けに電子スロットルコントロールシステム「Ride-by-wire Electronic Throttle System」を採用しました。アクセルとセンサーの間にワイヤーを介する事で、アクセル操作に忠実且つ繊細なレスポンスを実現しました。

当連結会計年度における二輪事業の研究開発費は202億円です。

 

 (3)マリン事業

マリン事業において、当社は水上での「楽しさ」と「働く」を支える頼れるパートナーとして、環境保護と利便性の向上に努めています。お客様の生活に密接に関わる水辺の環境をクリーンで持続可能なものにするため、製品の改良や新技術の導入に積極的に取り組んでいます。

主な成果として、全面マットブラック仕上げのデザインが高く評価されている船外機「ステルスラインシリーズ」にDF140BTなど新たな3機種を開発し、全7機種としました。

スズキ船外機の性能向上と持続可能な取組みの一環として、エンジン部品(シリンダーブロック及びシリンダーヘッド)向けのアルマイト処理技術を開発し、2024年8月からDF140BTの一部仕様に採用しました。この取組みは、量産船外機として世界初※3の試みです。その結果、エンジンの冷却水路の耐食性が向上し、従来の表面処理と比較して製造時のCO2排出量を約50%削減することができました。

また、2020年から始まったスズキクリーンオーシャンプロジェクトの一環として、海洋マイクロプラスチックの回収に取り組んでいます。2024年には静岡大学との共同研究により、タンパク質を利用したマイクロプラスチックへの染色に成功し、この技術を活用したマイクロプラスチック判別方法の確立を進めています。さらに、船外機製品や部品のプラスチック梱包資材の削減にも継続的に取り組んでおり、梱包資材を紙や生分解性素材に変更することで、2020年10月から2025年2月までの間に約89トンのプラスチックを削減しました。

当社は、マリン事業におけるすべての活動を通じて、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を実現しています。

当連結会計年度におけるマリン事業の研究開発費は60億円です。

 

※3 2025年2月当社調べ。

 

 (4)その他の事業

その他代表的なものとして、小型低速電動モビリティ事業において、当社がこれまで培ってきた電動車いすの技術を応用し、乗用モビリティから産業用ロボットまで様々な用途で活躍する電動モビリティの技術開発に取り組んでいます。

具体的には、若者から高齢者まで多くの人の生活の足となる新しいモビリティの提案として「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に出展したSUZU‐RIDE等の商品化に向けて開発を進めています。

また、様々な分野の産業用ロボットの足となる電動モビリティベースユニットを2024年9月の国際物流総合展や2025年1月のCES2025など国内外の展示会に出展し、多くのパートナーに共感をいただき各種社会課題解決に取り組んでいます。現在、お待ちいただいているパートナー企業様のために、商品化に向けて開発を進めています。

当連結会計年度におけるその他事業の研究開発費は3億円です。