第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、次の社訓、経営理念、経営方針及び行動指針を経営の基本方針として掲げ、企業活動を行っております。

 

<社訓>

1.社会の信用を "Gain Trust from Society"

2.企業の繁栄を "Seek Prosperity for Company"

3.相互の幸福を "Share Happiness with Everybody"

 

<経営理念>

当社グループは、誠意と新しい技術の創造によって、価値ある商品、サービスをグローバルに提供し、顧客・株主・従業員をはじめ、全ての関わる人々の幸福を実現します。

 

当社グループは、過去数年間で毀損した経営基盤を再構築するため、2027年度を最終年度とする中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration ("KTA")」を策定し、2025年4月28日に発表しました。

 

<目指す姿>

当社グループは、不透明な事業環境の中、KTAにて以下の三領域を柱に、主要経営課題(収益・財務・ガバナンス)の解決に取り込むことにより、経営再建を果たし、成長軌道へのスタートラインに立つことを目指します。

1. 北米事業構造改革を中心とした収益改善により2027年度営業利益4~5%

2. キャッシュコンバージョンサイクルの改善によるフリーキャッシュフロー創出

3. グローバル組織、グローバルプロセスの構築

 

また、当社の持続的な成長に向けて、新規事業創出とイノベーション開発投資へのシフト、及び人的資本経営を推進します。当社グループは、このKTAを着実に実行することにより、経営の再建と将来の成長への基盤を確かなものとし、企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2) 当社グループを取り巻く経営環境

<企業構造>

当社グループは、自動車分野を事業領域と位置づけ、研究開発・生産技術開発・営業活動を担っている当社を中心に、世界各国において製造・販売を行う各事業会社で構成されております。各事業会社は、それぞれの国において、得意先への納入体制を確立し、自律した形で事業運営を行っております。

 

事業を行う市場の状況

当社グループの事業領域である自動車業界では、企業間の競争が世界規模でますます激しくなっております。原材料費やエネルギー価格の高止まり、人件費の上昇が続いており、市場の回復は依然として緩やかなものとなっております。さらに、地政学リスクの高まりや米国の関税政策の影響もあり、グローバルサプライチェーンに不確実性が増しております。また、電動化へのシフトは一時的には停滞しているものの、中長期的には技術革新と共に普及していく大きな流れは変わらないと思われ、各メーカーは新型電動車の投入を進めております。

このような経営環境の中、市場の回復は見通しにくい状況ではございますが、当社グループは経営再建を目指して、事業構造改革の取り組みを進めているところであります。

 

主要製品・サービスの内容

当社の主力事業は、ドアトリム・ルーフトリムをはじめとする自動車内装トリムシステム部品の企画・開発・生産であります。当社は独立系部品メーカーとして、全自動車メーカー(OEM)に対しビジネスの門戸を拡げ、高級ブランド車から軽自動車、商用車に至る幅広い得意先ニーズにお応えするために、企画・開発・設計・実験、そして生産に至る一貫した体制で高品質、低コストの製品づくりを追求しております。

 

 

顧客基盤

主得意先は、日本の自動車メーカーであります。自動車メーカー各社の海外現地生産に追従し、当社は1986年(昭和61年)の北米を皮切りに、積極的な海外展開を進めてまいりました。近年、飛躍的な成長を遂げている中国やアジア諸国においてもすでに供給体制を構築しており、全世界にネットワークを確立しております。製品の現地開発・生産を進めるとともに、非進出国における現地部品メーカーとの技術援助契約の締結、そしてこれらを統括管理するワールドワイドな経営の確立にも努め、グローバルな競争力強化を図っております。

 

<競争優位性>

当社は内外装トリムシステムサプライヤーとして、キャビントリム・ラゲッジトリム・防音部品など取扱製品の性能向上に取り組むとともに、「快適な移動空間の創造」をありたい姿としてイノベーション開発ロードマップを策定し、未来を先取りする付加価値の高い製品づくりに取り組んでおります。当社は世界各地に生産拠点があり、それぞれの地域や得意先に対応するための開発機能を持っております。製品設計から制作までを一貫して行う開発体制と、お客様にご満足いただける製品を提供するためのグローバルに統一・強化された生産体制で、自動車内外装部品の新しい価値を創造する製品を提供してまいります。

 

<販売網>

当社グループは高い技術力とともに、最高の品質と価格競争力をもった製品をグローバルに供給するために、国内はもとより、世界9か国に所在する子会社等を通じて販売網を確立しております。

 

(3) 会社の対処すべき課題

当社グループは、販売先OEMの減産や生産の不安定化等の厳しい環境変化に直面した結果、2021年3月期以降は売上高が大幅に減少し固定費の負担も大きくなり、3期連続で大幅な営業損失を計上しましたが、2024年3月期に4期ぶりに営業利益を黒字化しました。しかしながら、2025年3月期は、北米地域では依然として赤字が継続していることから、営業赤字となりました。これが今後の課題となっています。

今後の見通しにつきましては、足元では米国における関税政策、為替変動、原材料・エネルギー価格の高止まりや賃金上昇の影響等により、厳しい外部環境が継続すると予想されます。

このような経営環境下、グループの収益力向上及び財務体質の改善・強化を図り、安定した経営基盤を築くべく、 北米地域を中心とした事業改革の継続や不採算事業の撤退等も含めた拠点再編などの抜本的な経営再建策を策定し、実行に取組んでおります。その結果、足元では着実に諸施策の効果が発現し、業績の改善が進んでおります。

経営体制につきましても、2024年11月1日に日産自動車株式会社を割当先とする第三者割当の方法による優先株式の発行(以下、「本第三者割当増資」といいます。)に係る払込みが完了し、日産自動車株式会社が指名する者2名が当社取締役に就任しております。このうち1名は当社の代表取締役社長 社長役員に、他の1名は、製造部門、北米地域統括を担当する取締役 副社長役員に就任しております。2025年4月に公表した中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」(以下「KTA」)の策定を主導するなど、経営再建に向けた新たな体制をスタートしております。新経営体制の下、事業構造改革への取組みを更に加速し、経営再建の早期達成に邁進していく所存でございます。

なお、2026年3月期の連結業績予想を以下のとおり見込んでおります。為替レートにつきましては、1米ドル150円を想定しております。
 

(連結業績予想)

売上高

200,000

百万円

営業利益 

3,500

百万円

経常利益

1,500

百万円

親会社株主に帰属する当期純損失(△)

△2,000

百万円

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

KASAIグループは、環境にやさしい製品開発に取り組むことをグループ経営の重要な課題と位置付け、代表取締役を筆頭に会社を挙げて、企業活動における環境負荷を低減するための活動に取り組んでおります。

当社ホームページ(https://www.kasai.co.jp/sustainability/sustainability/)においても詳細を掲載しております。


 

 これらの重要課題の解決にあたって関連性の強い主管部署を定め、各々に目標を設定して課題解決に取り組んでいます。世界的な情勢や社会の要請、または経営の観点から、特に脱炭素社会の実現・人的資本経営の取り組みを拡充しております。

 

 

●脱炭素社会の実現に向けた取り組み

当社は、「美しい地球を次世代へ、人と環境にやさしいモノづくりを目指して」をスローガンに環境負荷の低い製品の開発を継続的に取り組むことをグループ経営の重要な課題と位置付け、脱炭素社会に向けて環境負荷を低減するための活動に取り組んでおります。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が推奨する情報開示の枠組みである「測定基準と目標」・「気候変動が与えるリスクと機会」などを活用して目標を設定し、その目標を達成させるための活動による自社のリスクや機会の抽出・評価を行い、その対応策を事業戦略に反映させていきます。

 

ガバナンス

環境マネジメント推進体制

取締役会の定めた環境保全活動の方針や設定目標を設定します。執行組織として設定された目標を実現するために「経営会議」で環境業務計画の策定・監督、「全社環境会議」で環境業務計画の達成度の評価を行い、「EMS推進会議」で環境業務計画の推進を行っております。

 

環境マネジメント推進体制

当社ホームページhttps://www.kasai.co.jp/sustainability/environment/organization/においても詳細を掲載しております。


 

リスク管理

気候変動による経営に与えるインパクトを調査し、インパクトに対するリスクと影響度を評価、更にリスクへの対応策と機会への施策を策定し、環境活動の年次計画・中期計画に取り入れ全社活動で進めております。施策として省エネルギー、産業廃棄物削減、環境負荷の高い化学物質の使用削減等、サステナビリティに係る環境活動の実績を月次で管理し、全社環境会議(1回/6カ月)にて実績報告を行い、環境管理統括責任者判断の下、環境負荷の削減に向け全社で取り組みを進めております。
 

戦略

気温上昇を1.5℃以内に抑えて脱炭素社会へ移行するシナリオ、および気温上昇が4℃に達するシナリオの2つのシナリオで2030年の社会を想定し、気候変動のリスクと機会を分析しております。その分析を基に事業インパクトを想定しリスクと機会への対応策を策定しました。

シナリオ分析の検討に際しては、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)および国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)等を参照しております。

 

事業インパクトに対するリスクと機会の対応策

当社ホームページ(https://www.kasai.co.jp/sustainability/environment/carbonneutral/)にも本頁の詳細を掲載しております。


 

指標と目標

中期目標

2030年度までにCO2排出量を2019年度比で30%削減(年に2019年度比3%削減)する。

(GHG Scope1,2)

 

CO2削減のパフォーマンスデータ(2024年度)

河西工業グループ(日本)CO2年間総排出量

 


 Scope1とScope2の値の合計とは、
四捨五入の関係で必ずしも一致しません。

 

日本CO2排出量実績(Scope1 + 2)

 


 

 

 

●人的資本経営に関する取り組み

(1) 経営戦略と人的資本経営

当社は、2025年4月28日付で発表した中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration (KTA)」の中で、6本の柱の一つに「人的資本経営」を掲げ、「再建の成功と将来の成長の推進役となる人財の価値が最大限発揮されるための人的資本経営の実践により、パフォーマンスとエンゲージメントの向上を実現」を宣言しております。

従業員のエンゲージメントレベルをKPIとするため、手始めに直接雇用の従業員を対象とした「エンゲージメントカルテ(診断)」を導入し、現状把握と目標値設定を図ってまいります。

当社は社訓「社会の信用を、企業の繁栄を、相互の幸福を」および経営理念「当社グループは、誠意と新しい技術の創造によって、価値ある商品、サービスをグローバルに提供し、顧客・株主・従業員をはじめ、すべての関わる人々の幸福を実現します。」のもと、人的資本経営を推進します。100年に一度と言われる自動車産業の大変革期において、「快適な移動空間」を実現し続けるため、多様な人財が「One Kasai」で最大の力を発揮できる環境を整備し、事業競争力と持続的な企業価値向上につなげます。これらの実現のための具体的な取り組みは以下の通りです。

 

(2)中核人材の登用等における多様性の確保について

 当社は、社内における人材の多様性を確保し、多様化する顧客ニーズに対応すべく、国籍・性別・年齢・学歴を問わず、人材採用を継続的に進めており、グローバルで活躍できる高度な専門スキルを有する社員を育成するための教育体系を整え、一人ひとりがキャリアを築けるよう取り組んでおります。

 なお、海外拠点においては、管理職区分の定義や人事制度が異なるため、統一的な集計が困難でありますが、グローバル本社として、多様性ある人材が活躍する組織づくりを率先して進めることが重要であると考えております。まずは日本地域において多様な人材が活躍できる環境整備を進め、ダイバーシティ推進の基盤を構築してまいります。

 

<女性の管理職への登用>

当社グループは、女性活躍推進を積極的に行っており、近年、女性管理職比率も向上し、様々な場で重要な役割を担っており、多数活躍しております。今後とも能力ある女性を積極的に管理職に登用し、中長期的な女性管理職比率の更なる向上を目指し、2026年3月期までに当社の女性管理職比率を9%に向上させることを目標として掲げております。また、連結子会社である河西工業ジャパン株式会社においては同比率を3%に向上させる目標を掲げております。

女性管理職比率の詳細については「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照ください。

なお、海外事業会社においては、性別に関する考え方や文化的背景が日本とは異なる場合が多く、現時点では一律の数値目標設定は行っておりません。各地域の法令や文化、価値観を尊重しつつ、多様性推進の取り組みを進めてまいります。

 

 <外国人の管理職への登用>

当社グループでは、毎年国籍を問わない多国籍な人材採用を継続的に進めてきており、当社グループを支える海外事業会社においては、事業運営の中核を担う外国人管理職が多数活躍しております。今後も海外拠点での現地外国人の積極的な人材採用を進めてまいります。

なお、外国人管理職の登用に関しては、各国・地域における法制度や文化的背景の違いを尊重し、現時点ではグローバルで統一的な数値目標の設定は行っておりません。今後も、現地主導の経営体制を支援する観点から、現地外国人の積極的な登用を推進してまいります。

 

 <中途採用者の管理職への登用>

当社は、人材の多様性を強化する方針のもと、管理職における中途採用者の登用を積極的に進めております。現在、日本国内における管理職における中途採用者の割合は50%を占めております。今後も引き続き、当社の成長を促進させるために必要な多様性を確保するため、中途採用を進めてまいります。

なお、連結子会社である河西工業ジャパン株式会社においては、製造現場である工場主体の組織であり業務の習熟に一定の期間を要することから、管理職に占める中途採用者の目標比率は定めておりません。なお、当社グループでは、日本国内においては新卒一括採用の慣習が根強く残っていることから、中途採用者比率を人的資本指標の一つとして管理しております。一方、海外拠点においては、採用慣行や人事制度が国・地域ごとに大きく異なり、中途採用という区分自体が存在しない場合もあるため、当該指標は日本地域におけるものとして開示しております。今後も、地域ごとの実情を踏まえつつ、グローバル全体で多様性ある人材が活躍できる環境づくりを推進してまいります。

 

(3)人的資本への投資等

当社グループは、様々な教育・研修などのサポートプログラムを整え、一人ひとりがキャリアを築けるよう人的資本強化に努めており、全社員を対象とした階層別研修や語学教育、専門スキルを磨く職種ごとの教育等を下記体系図のように整備し、実行しております。

当社ホームページ(http://recruit.kasai.co.jp/education/)においても詳細を掲載しております。


 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況等

当社グループの連結売上高は、今日までの積極的な海外展開と得意先の海外生産のシフトにより、その海外売上比率は76.1%と高い水準にあります。したがって、当社グループの自動車関連製品の需要は、進出先の国及び地域の経済状況の影響を受けます。特に北米地域の売上高は53.4%と連結売上高に占める割合が高く、同地域の自動車市場の景気動向と需要変動が、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、北米地域のほか、欧州、アジア地域、を含めたバランスの取れた経営体制を目指してまいります。

 

(2)グローバル展開

当社グループは、前述のとおり海外売上比率は76.1%と高い水準にあります。そのため、海外生産拠点に予期しない政治・経済の不安定化、法律又は税制の変更、或いはテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等により事業の遂行に問題が生じる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)特定の取引先への依存

当社グループの現在の主な販売先は、日産自動車㈱グループと本田技研工業㈱グループであり、当連結会計年度における連結売上高に占める割合は71.7%となっております。当社グループは、両社の自動車販売動向が、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、両グループとの取引関係を維持発展させつつ、販売先の多様化を推進し、安定した事業運営を目指してまいります。

 

(4)為替レートの変動

当社グループの連結売上高に占める海外売上高比率は、当連結会計年度で76.1%(前連結会計年度72.7%)となっており、為替相場の影響を受けやすい状況になっております。当社グループの想定を超えた為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

当社グループの想定を超えた為替レートの変動に備え、各地域において現地通貨による取引・決済等を進めてまいります。

 

(5)製品の欠陥・品質

当社グループは、予期せぬ製品の欠陥や品質面の不備が発生した場合、その欠陥や不備の内容によっては多額のコストが発生したり、当社グループの評価が低下したりすることにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格(IATF16949)を国内・海外拠点において取得し、グローバルで品質保証体制の強化に努めております。このシステムを継続的に実践し、製品品質の安定と向上を図るために、マネジメントシステムの定期的な監査と経営層による診断を実施しております。

 

(6)原材料等の供給不足・供給価格の高騰

当社グループの事業にとっては、十分な品質の原材料、部品、サービス等を調達することが不可欠であります。しかし、供給業者での不慮の事故、震災などにより供給が中断した場合や不安定となった場合、当社グループの事業が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループと供給業者は、契約によりその供給価格を決定しておりますが、原油価格上昇等により原材料・部品価格が高騰する可能性があり、この場合には当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

当社グループにおきましては、不測の事態に備え、複数の供給網を構築し、原材料等の供給不足への対策を講じております。

 

 

(7)自然災害等

当社グループの生産拠点において、大規模な地震、台風による水害、昨今の気候変動による洪水・大寒波などの自然災害、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック等は、経済活動に大きな影響を及ぼしております。これら異常事態が発生した場合、一時的な操業停止や減産対応、サプライチェーンへの影響による製品部材等の調達遅延や価格高騰、経済活動の停滞による製品やサービスの受注・売上の減少など、当社グループの経営成績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティ

当社グループは、製品の開発、生産、販売など、事業活動において情報技術やネットワーク、システムを利用しております。これらの情報技術やネットワーク、システムには安全な対策が施されておりますが、サイバーテロ、不正アクセス、コンピューターウイルスへの感染等により、情報システム障害による業務の停止、重要なデータの喪失、機密情報や個人情報の漏洩などが発生する可能性があります。この結果、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、一般的なセキュリティ対策とされる外部からの不正アクセスを防ぐファイヤーウォールの設置、リアルタイムでのウイルスチェックによる検疫、サーバーやネットワーク回線の冗長化に加えクラウドサービスの利用促進、サイバー攻撃を考慮したバックアップシステムの確立、生産系とOA系のネットワークの論理的分離の対策により不測の事態による業務停止リスク軽減など取引先への影響極小化に向けた各種の対策を講じております。

 

(9)価格競争

当社グループの製品は、価格的、品質的、技術的に十分競争力を有していると考えておりますが、新たな競合先の台頭や、既存競合先による市場シェア拡大を目的とした低販売価格に対して、販売を維持、拡大し、収益性を保つことができなくなる可能性があります。この場合には、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、ユーザー及び自動車メーカー各社のニーズに積極的に応える新製品・新工法を提供するため、強力に研究開発を進め、競争力確保に努めてまいります。

 

(10)有利子負債依存度、支払利息の増加並びに財務制限条項への抵触

当社グループは、設備投資、システム投資及び研究開発投資等のための資金調達を主に金融機関からの借入金に依存しており、当連結会計年度末現在における有利子負債依存度(有利子負債額/総資産額比率)は53.3%であります。適切な設備投資計画の策定や資産の効率化を図ることで、これ以上有利子負債依存度を高めないように取り組んでおります。しかしながら、現時点における有利子負債依存度は相当程度高く、今後有利子負債依存度がさらに増加した場合には、期待した金利・時期・金額での資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

また、市場金利の上昇から、今後借入金利の上昇等により支払利息が増加した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループの借入契約には財務制限条項が付されております。これに抵触した場合、貸付人の請求があれば本契約上の期限の利益を失うため、ただちに当社の財務状況、キャッシュ・フロー、事業継続性等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

第90期

2021年3月期

第91期

2022年3月期

第92期

2023年3月期

第93期

2024年3月期

第94期

2025年3月期

総資産額 (百万円)

145,327

141,461

148,500

142,738

144,831

有利子負債額 (百万円)

60,393

71,124

79,835

74,179

77,126

有利子負債依存度 (%)

41.6

50.3

53.8

52.0

53.3

売上高 (百万円)

152,755

146,375

175,430

214,239

218,801

支払利息 (百万円)

550

582

1,185

1,912

2,049

支払利息/売上高 (%)

0.4

0.4

0.7

0.9

0.9

 

 

(11)希薄化及び流動性に関するリスク

当社は、2024年11月1日付で、第三者割当の方法により日産自動車株式会社(以下「日産自動車」といいます。)に対してA種優先株式を5,827,274株発行しました(以下「本第三者割当増資」といいます。)。A種優先株式には、発行後原則として1年経過後に行使可能な普通株式を対価とする取得請求権が付されており、A種優先株式の累積未払配当金相当額及び日割未払優先配当金額がいずれも存在しない前提でA種優先株式全てについて当初取得価額をもって当社普通株式に転換された場合、2025年3月31日現在の当社発行済株式総数に係る議決権の数を分母とする希薄化率は260.97%となります。したがって、A種優先株式の当社普通株式への転換に伴い、当社普通株式の1株当たりの株式価値及び持分割合が希薄化する可能性があり、また、A種優先株式の累積未払配当金相当額及び日割未払優先配当金額の増加に伴い希薄化規模は増加し、当社株価に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、全てのA種優先株式が一括して当社普通株式に転換された場合には、株式会社東京証券取引所がスタンダード市場の上場維持基準として定める流通株式比率25%以上の水準に抵触する可能性があります。また、この場合には、当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)大株主との関係に関するリスク

A種優先株式には当社普通株式と同等の議決権が付されており、2025年3月31日現在の総議決権数に占める割合は13.05%となります。また、A種優先株式には普通株式を対価とする取得請求権が付されており、全てのA種優先株式が一括して普通株式に転換された場合には、当社の議決権の3分の2を超える議決権を有する支配株主となります。さらに、日産自動車との投資契約においては、当社の重要事項について日産自動車の事前の承諾を要することとされており、当社の意思決定に対し影響力を持つことになります。
 また、日産自動車は、A種優先株式発行後2028年3月31日までは、原則としてA種優先株式(A種優先株式の取得請求権の行使により当社普通株式を取得した場合には、当該普通株式)を譲渡することができませんが、かかる譲渡制限期間経過後、日産自動車が当社株式の一部又は全部を売却する可能性があり、市場で売却した場合には、売却の規模等によっては、当社株式の需給関係及び市場価格に影響を与える可能性があります。
 さらに、本第三者割当増資の実施を条件として、日産自動車から2名の取締役が派遣されております。当社は、日産自動車との人的関係を維持する方針ではありますが、何らかの要因により日産自動車の方針等の変更が生じ、人的関係が見直された場合には、当社の経営・事業戦略に影響を及ぼす可能性があります。
 

(13)金銭を対価とする取得請求権に関するリスク

当種優先株式においては年率7.0%の優先配当条項(複利、累積型)が定められており、当該配当が行われなかった場合には翌期に複利で累積することとなります。また、A種優先株式には、2028年4月1日以降行使可能な金銭を対価とする取得請求権が付されており、その対価の金額はA種優先株式の払込金額相当額並びにA種累積未払配当金相当額及びA種日割未払優先配当金額の合計額となります。したがって、A種優先株主が金銭を対価とする取得請求権を行使した場合、一括して上記の金銭の支払いを行う必要があり、当社グループの財政状態及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、①当連結会計年度末において自己資本が低い水準に留まっていることから、収益力向上、財務体質の改善・強化、安定した経営基盤の構築及び安定的な資金繰りの確保を求められていること、②2023年度に策定した経営再建策に従い、当連結会計年度において営業利益48億円を見込んでおりましたが、北米事業は継続的な再建への取組みの遅延などの影響により経営再建策を大幅に下回り、2億89百万円の連結営業損失となったこと、③当連結会計年度の業績には販売先OEMによる支援も含まれていること、④下記のとおり各取引金融機関と締結しております借入契約における確約条項及び財務制限条項に抵触していることから現時点では依然として継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しております。

これに対して、当社グループでは当該事象又は状況を改善、解消すべく、当連結会計年度も引き続き、全社を挙げて以下の取組みを実行しております。

 

(1) グループの収益力向上

① 取引先との販売価格・数量等の改定交渉、材料の市況変動による高騰や労務費高騰の販売価格への転嫁、生産現場における生産ロスの圧縮、人員体制の最適化等による人件費抑制の継続などの経営改革を断行し、グループ収益力の向上を引き続き取り組んでまいります。

② 取引先との販売価格等の改定交渉は、着実に合意形成が図られており、グループ収益力の向上に取り組んでおります。

③ 特に課題である北米拠点においては、上記取組みに加えて、主要販売先OEMのご協力による生産現場改善や、間接部門における早期退職の実施、並びに事務のメキシコへの集約によるコストダウンなどの経営改革を着実に実行しております。

④ 米国関税の影響に関しては、販売先OEM等との交渉を通じて、利益圧迫を最小限にすべく取り組んでおります。

⑤ 欧州拠点においても、拠点再編・不採算事業の撤退による収益改善施策を実行しております。

 

(2) 財務体質の改善・強化と安定した経営基盤の構築

① 当社グループの安定的な事業運営の継続、自己資本の充実による財務体質の改善・強化及び経営再建を確実とするための抜本的な構造改革施策の実施に必要な資金を確保することを目的とした、第三者割当増資による総額60億円の資金調達(以下、「本第三者割当増資」)が2024年11月1日に完了しております。

② 2024年11月1日に本第三者割当増資に係る払込みが完了したことで、古川幸二が当社の代表取締役社長 社長役員に新たに就任し、稲津茂樹が当社の取締役 副社長役員に新たに就任しております。2025年4月に公表した中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」の策定を主導するなど、経営再建に向けた新たな体制をスタートしております。

 

(3) 安定的な資金繰りの確保

① 2024年11月1日に株式会社りそな銀行との間の、2024年5月9日付劣後特約付準金銭消費貸借契約書に基づく、デットデットスワップ(以下、「本DDS」といいます。)の効力が生じております。本DDSは、当社の既存借入金(総額約176億円)の一部(総額60億円)について2033年3月31日を返済期限とする資本性劣後ローンへ転換するものであり、当社の資金繰りの安定化に大きく寄与するものです。

② 当社は2022年5月26日に締結したシンジケートローン契約について、2024年10月23日付で変更契約を締結し、これにより最終返済期限を2028年3月31日に変更しており、短期的な債務返済に関する懸念は解消されています。

③ 当社は2022年9月30日に締結したコミットメントライン契約について、2024年10月23日付で変更契約を締結し、コミットメント期日を2028年3月31日に変更すると共に、2024年11月1日より貸出コミットメントの総額を55億円に増額しております。

④ 当社は2024年10月23日付で全取引金融機関との間で、「債権者間協定書」を締結しており、新たな財務制限条項を設定すると共に、同「債権者間協定書」において定められた新たな弁済条件に基づく金銭消費貸借契約書を併せて締結しております。

⑤ 上記に加えて、投資案件の厳選及び抑制等を図るとともに、グループ収益力の向上による営業キャッシュ・フローの獲得により、事業及び運転資金需要の抑制に努めてまいります。

 

しかしながら、現在進めている経営再建策の進捗のみならず、主要販売先の生産台数の動向による売上減少要因や原材料等の供給価格の高騰によるコスト増加要因などの外部環境の急激な変化により当社の業績に影響を及ぼす可能性があることから、計画している業績の回復が早期に達成できない可能性があります。さらに、当社は2025年3月期有価証券報告書の提出が法定期限内に行えなかったことにより、各取引金融機関と締結しております借入契約における確約条項に抵触していることに加え、当連結会計年度において営業赤字となったことにより借入契約の財務制限条項に抵触しております。この結果、当該契約に基づき、金融機関からの請求により期限の利益を喪失する事由に該当する可能性があります。現時点において、金融機関からの期限の利益喪失に関する請求は受けておりませんが、当社としては、金融機関と協議を進めており、有価証券報告書提出遅延の原因となった事象の解消及び再発防止策の策定・実施を講じること及び、グループの収益力向上へのさらなる取組みを実施することにより、期限の利益喪失請求等の権利を放棄いただくことに理解を得られるよう努めております。これらの取組みに対して金融機関の理解が得られず、期限の利益を喪失する事態となった場合には、当社の財務状況、キャッシュ・フロー、事業継続性等に重大な影響を及ぼす可能性があります。上記のとおり各金融機関に期限の利益喪失請求等の権利を放棄いただくことが確定していないため、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。

 

 

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)  経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

世界経済は緩やかな回復となりつつあるものの、米国トランプ政権の関税政策、中東やロシア・ウクライナでの不安定な国際情勢による地政学的リスクや下振れ要因が多く、先行き不透明感が増してきております。

わが国の経済も、物価上昇により内需の中心である個人消費の落ち込みが続くと予想されます。こうした中、当社グループの関連する自動車業界は、中国市場などでの電気自動車(BEV)へのシフト、トランプ政策を巡る不確実性の拡大により、市場の回復は見通しにくい状況が続くものと予想されます。

このような経営環境の中、当社グループは経営再建を目指して、100年に一度と言われる変革に対応すべく事業構造改革の取り組みを進めているところであります。

 

a.財政状態

総資産は1,448億31百万円と前連結会計年度末に比べ、20億93百万円の増加(+1.5%)となりました。

負債は1,219億22百万円と前連結会計年度末に比べ、5億70百万円の減少(△0.5%)となりました。

純資産は229億9百万円と前連結会計年度末に比べ、26億64百万円の増加(+13.2%)となりました。

 

b.経営成績

売上高は2,188億1百万円と前連結会計年度に比べ45億61百万円(+2.1%)の増収となりました。営業損失は2億89百万円(前連結会計年度は16億53百万円の営業利益)、経常損失は12億88百万円(前連結会計年度17億22百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は91億82百万円前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失15億59百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 (日本)

売上高は522億6百万円前連結会計年度に比べ63億10百万円(△10.8%)の減収となり、セグメント利益は47億54百万円前連結会計年度に比べ7億11百万円の増益となりました。

 

(北米)

売上高は1,168億88百万円前連結会計年度に比べ110億38百万円(+10.4%)の増収となり、セグメント損失は63億25百万円前連結会計年度に比べ7億50百万円の損失の増加となりました。

 

(欧州)

売上高は275億49百万円前連結会計年度に比べ48億9百万円(+21.2%)の増収となり、セグメント損失は2億94百万円前連結会計年度に比べ6億96百万円の損失の減少となりました。

 

(アジア)

売上高は221億56百万円前連結会計年度に比べ49億76百万円(△18.3%)の減収となり、セグメント利益は14億98百万円前連結会計年度に比べ23億23百万円の減益となりました。

 

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、267億30百万円(前連結会計年度末比48億31百万円の増加)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失69億22百万円となりましたが、減価償却費73億16百万円、減損損失42億13百万円等による資金の増加があり、一方で、仕入債務の減少39億60百万円等により、9億11百万円の収入(前連結会計年度は5億47百万円の支出)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出56億37百万円等により、51億70百万円の支出(前連結会計年度は8億71百万円の収入)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少135億9百万円、長期借入れによる収入235億39百万円、長期借入金の返済による支出67億83百万円、株式の発行による収入60億円等により、73億2百万円の収入(前連結会計年度は107億42百万円の支出)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高
(百万円)

前年同期比
(%)

日本

52,241

△10.1

北米

116,861

+10.6

欧州

27,544

+19.9

アジア

22,174

△17.4

合計

218,822

+2.5

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によるものであります。

3 当連結会計年度において、日本セグメントの生産高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

4 当連結会計年度において、北米セグメントの生産高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

5 当連結会計年度において、欧州セグメントの生産高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

6 当連結会計年度において、アジアセグメントの生産高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前年同期比
(%)

受注残高
(百万円)

前年同期比
(%)

日本

51,756

△16.1

3,617

△52.6

北米

117,933

+11.1

9,433

+12.5

欧州

28,281

+22.9

2,384

+44.4

アジア

21,544

△21.5

1,307

△31.9

合計

219,516

+0.5

16,742

△14.5

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、日本セグメントの受注高及び受注残高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

3 当連結会計年度において、北米セグメントの受注高及び受注残高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

4 当連結会計年度において、欧州セグメントの受注高及び受注残高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

5 当連結会計年度において、アジアセグメントの受注高及び受注残高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

 

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高
(百万円)

前年同期比
(%)

日本

52,206

△10.8

北米

116,888

+10.4

欧州

27,549

+21.2

アジア

22,156

△18.3

合計

218,801

+2.1

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、日本セグメントの販売高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

3 当連結会計年度において、北米セグメントの販売高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

4 当連結会計年度において、欧州セグメントの販売高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の増産や新車立上げによるものであります。

5 当連結会計年度において、アジアセグメントの販売高に著しい変動がありました。
これは当連結会計年度の当社受注車種の減産によるものであります。

6 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高
(百万円)

割合
(%)

販売高
(百万円)

割合
(%)

日産自動車株式会社

114,055

53.2

111,331

50.9

本田技研工業株式会社

41,023

19.1

45,456

20.8

 

7 上記の日産自動車株式会社の販売高には、同社の関係会社(NISSAN NORTH AMERICA,INC.、NISSAN MEXICANA S.A. de C.V.、NISSAN MOTOR MANUFACTURING (UK) LTD.、日産車体株式会社、東風日産乗用車公司、鄭州日産汽車有限公司、日産 (中国) 投資有限公司、Nissan Motor (Thailand) Co.,Ltd.、Renault Nissan AutomotiveIndia Private Limitedの9社)向けの販売高を含めております。

8 上記の本田技研工業株式会社の販売高には、同社の子会社(Honda of America Mfg.,Inc.、Honda Canada Inc.、Honda Manufacturing of Alabama,LLC、Honda Manufacturing of Indiana,LLC、Honda de Mexico.S.A.de C.V.、株式会社本田技術研究所、広汽本田汽車有限公司、東風本田汽車有限公司、Honda Automobile (Thailand) Co.,Ltd.、P.T. Honda Prospect Motorの10社)向けの販売高を含めております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
 (a)財政状態の分析
(資産の部)

総資産は1,448億31百万円と前連結会計年度末に比べ、20億93百万円の増加(+1.5%)となりました。この主な要因は、原材料及び貯蔵品16億46百万円減少、現金及び預金が37億77百万円増加したことによるものであります。

(負債の部)

負債は1,219億22百万円と前連結会計年度末に比べ、5億70百万円の減少(△0.5%)となりました。この主な要因は、長期借入金が651億37百万円増加、短期借入金が616億39百万円減少、支払手形及び買掛金が20億52百万円減少、固定負債リース債務が3億48百万円減少、流動負債その他が17億68百万円減少したことによるものであります。

 

(純資産の部)

純資産は229億9百万円と前連結会計年度末に比べ、26億64百万円の増加(+13.2%)となりました。この主な要因は、利益剰余金が31億82百万円減少、為替換算調整勘定が53億82百万円増加、非支配株主持分が3億87百万円増加したことによるものであります。

 

(b)経営成績の分析

(前連結会計年度と当連結会計年度の増減分析)

当連結会計年度の売上高は、日本・中国を始めとするアジア地域で主要得意先の生産台数が減少したものの、北米地域、欧州地域における主要得意先の生産台数の増加に加え円安による為替影響により、2,188億1百万円と前連結会計年度に比べ45億61百万円+2.1%)の増収となりましたが、急激なインフレ率の上昇による諸費用(労務費、材料費、物流費、電力料等)の高騰や、新規車種立上げ関連費用の増加、為替の影響により2億89百万円(前連結会計年度は営業利益16億53百万円)の営業損失となりました。また経常損失は12億88百万円(前連結会計年度は経常利益17億22百万円)となりました。なお、不採算事業からの撤退に伴う特別損失等を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は、91億82百万円前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失15億59百万円)となりました。

 

(計画値と実績値の増減分析)

売上高は主要得意先の生産台数等の増加や改善、円安影響などにより予想値に比べ4.2%増となりました。取引先への販売価格の改定交渉、材料の市況変動による高騰や労務費高騰の販売価格への転嫁、生産現場における生産ロスの圧縮、人員体制の最適化等による人件費抑制の継続などの経営改革の断行を行いましたが、営業利益は、KMEXの買掛金処理等を見直した結果、予想値より約8億円減少しました。一方、経常利益は、本業外での為替差益を計上したこと等により、予想値より約2億円増加 いたしました。親会社株主に帰属する当期純利益は、主に米国子会社の事業用資産について、正味売却価額を再評価した結果、減損損失を約31億円計上したため、約90億円の損失となりました。

 

2025年3月期
 (計画)

2025年3月期
    (実績)

2025年3月期
(計画比)

売上高

210,000百万円

218,801百万円

 8,801百万円増 (4.2%増)

営業利益又は営業損失(△)

500百万円

△289百万円

△789百万円減      (-)

経常損失(△)

△1,500百万円

△1,288百万円

212百万円増      (-)

親会社株主に帰属する
当期純損失(△)

△11,000百万円

△9,182百万円

1,818百万円増      (-)

 

(注)  計画値は、2025年4月28日付け「通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」にて公表した数値であります。

 

(c)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(d)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 会社の経営の基本方針」に記載のとおりであります。

 

 

(e)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

(日本)

物価上昇により内需の中心である個人消費の落ち込みからの新車購買意欲も落ち込み、売上高は522億6百万円前連結会計年度比63億10百万円の減収△10.8%)となりましたが、経営改革の断行の効果によりセグメント利益は47億54百万円と前連結会計年度比7億11百万円の増益+17.6%)となりました。

(北米)

主要得意先の生産台数の増加や為替の影響により、売上高は1,168億88百万円前連結会計年度比110億38百万円の増収+10.4%)となりました。ただし、原材料費・労務費・物流費の高騰により、セグメント損失は63億25百万円(前連結会計年度はセグメント損失55億74百万円)となりました。

(欧州)

好調な主要得意先の生産台数に支えられ、売上高は275億49百万円と前連結会計年度比48億9百万円の増収+21.2%)となりました。セグメント損失は2億94百万円(前連結会計年度はセグメント損失9億91百万円)となりました。

(アジア)

アセアン地域は生産台数回復傾向にある一方、中国地域は期初からの主要得意先の販売不振が回復遅れに影響し、売上高は221億56百万円と前連結会計年度比49億76百万円の減収△18.3%)となり、セグメント利益は14億98百万円と前連結会計年度比23億23百万円の減益△60.8%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(a)キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(b)当社グループの資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要は、材料費、経費、労務費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、新規車種の生産準備に係わる金型、生産設備、新工場の増新設及び設備の更新等の投資資金であります。

当社グループは事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本としており、これら資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フローを主とし、必要に応じて金融機関からの借入等により資金を充当しております。また、国内連結子会社にCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入、海外連結子会社についても当社がグループ資金を一元管理することで資金の効率化を図っております。さらに、当社は適時に資金繰り計画を作成・更新し、手元流動性を検証することなどにより流動性のリスクを管理しております。

当社は、2024年11月1日、当社グループの安定的な事業運営の継続、自己資本の充実による財務体質の改善・強化及び経営再建を確実とするための抜本的な構造改革施策の実施に必要な資金を確保することを目的として、日産自動車株式会社より、総額60億円の本第三者割当増資を実行いただきました。また、2024年11月1日、株式会社りそな銀行はデットデットスワップ(以下、「本DDS」といいます。)を実行しました。このように、急速な外部環境の変化に対応するため手元流動性を高め、緊急時の資金対応に備えております。

 

(c)資金配分について

当社グループ全体として得られた資金は、設備投資、株主還元、手元資金に振り分けております。設備投資については、経営戦略を踏まえた投資意義や投資資金の回収可能性を検討の上、投資の可否を判断しております。また、業績に応じた株主還元を実施することを基本方針としており、配当政策については、継続的かつ安定的な配当の維持を目指しております。手元資金については、適切な事業環境に応じて一定の水準に抑えることでグループ全体の資金効率を高めていくよう努めております。

なお、翌連結会計年度の設備投資予定額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 

(固定資産の減損処理)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

(借入に関する契約)

1.金銭消費貸借契約(コミットメントライン)

貸付人

株式会社りそな銀行

貸付極度額

総貸付額 3,000百万円

債務の期末残高

3,000百万円(2025年3月31日現在)

契約締結日

コミットメントライン契約書:2022年5月26日

コミットメントライン契約書に関する変更契約書:2024年10月23日

返済期日

2028年3月31日

担保等の状況

担保:当社及び河西工業ジャパン株式会社が所有する不動産に根抵当権を設定

保証:該当事項なし

財務制限条項

該当事項なし

 

 

2.金銭消費貸借契約(コミットメントライン)

貸付人

株式会社りそな銀行

貸付極度額

総貸付額 5,500百万円

債務の期末残高

732百万円(2025年3月31日現在)

契約締結日

相対型コミットメントライン契約書:2022年9月30日

相対型コミットメントライン契約書に関する変更契約書:2024年10月23日

返済期日

2028年3月31日

担保等の状況

担保:当社が所有する工場財団に根抵当権を設定

保証:該当事項なし

財務制限条項

(1)   利益維持条項

2025年3月期以降、各事業年度の連結の損益計算書における営業利益を正の数値に維持すること。

(2)   現預金維持条項

2024年6月以降、各暦月末日における当社の貸借対照表における現金及び預金(現金同等物を含む。)の合計額に、当社の相手方当事者としての金融機関が貸付義務を有するコミットメントライン契約の未使用貸付極度額を加算した金額を20億円以上に維持すること。

(3)   純資産維持条項

2025年3月期以降、決算期末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を101億3,000万円以上に維持する。ただし、純資産の部の金額については、連結子会社に対する貸付等債権に係る「為替差損益」の額及び「為替換算調整勘定」の額を差し引いた額とする。

 

 

3.債権者間協定書

対象となる借入

上記1及び上記2に記載する金銭消費貸借契約(コミットメントライン契約)に基づく借入債務及び後記の劣後特約付準金銭消費貸借契約の対象となる債務を除く、当社の全取引金融機関(都市銀行、地方銀行、政府系金融機関、信託銀行、保険会社、サービサー)に対する一切の借入債務

債務の期末残高

合計63,790百万円(2025年3月31日現在)

契約締結日

2024年10月23日

最終返済期日

2028年3月31日

担保等の状況

各借入契約による

財務制限条項

(1)   利益維持条項

2025年3月期以降、各事業年度の連結の損益計算書における営業利益を正の数値に維持し、これを損失としない。

(2)   現預金維持条項

2024年6月末日を初回とし、各暦月末日における借入人単体の貸借対照表における現金及び預金(現金同等物を含む。)の合計額に、借入人の相手方当事者としての金融機関が貸付義務を有するコミットメントライン契約の未使用貸付極度額を加算した金額(以下「最低現預金」という。)を20億円以上に維持する。

(3)   純資産維持条項

2025年3月期以降、決算期末日の連結貸借対照表における純資産の部の金額を101億3,000万円以上に維持する。ただし、純資産の部の金額については、連結子会社に対する貸付等債権に係る「為替差損益」の額及び「為替換算調整勘定」の額を差し引いた額とする。

 

 

 

(第三者割当による優先株式の発行に係る投資契約の締結)

当社は、2024年5月9日付けで、日産自動車(住所:神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地)との間で、第三者割当の方法により日産自動車に対して総額6,000,000,000円のA種優先株式(以下「A種優先株式」といいます。)を発行すること(以下「本第三者割当増資」といいます。)等に関して投資契約(以下「本投資契約」といいます。)を締結し、2024年11月1日付けで本第三者割当増資に係る払込手続が完了いたしました。本投資契約において、当社の取締役の指名等に関する合意及び当社の株主総会又は取締役会において決議すべき事項等について日産の事前の承諾を要する旨の合意が含まれており、当該合意に係る内容は以下のとおりです。

1.本投資契約の目的、取締役会における検討状況その他の当社における合意に係る意思決定に至る過程及び当該合意が当社の企業統治に及ぼす影響

     当社グループは、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症、及び世界的な半導体不足の影響により、主要販売先OEMの減産や生産の不安定化等の厳しい環境変化に直面しております。その結果、2020年度以降は売上高が大幅に減少し、固定費の負担が大きくなったことから大幅な営業損失を計上し、2023年3月期には、14,925百万円の営業損失を計上しました。これに伴い、財務の健全性を示す自己資本比率は2023年9月末時点で7.8%と2019年12月末時点の38.8%から低下するに至りました。

     このような状況において、当社グループは当該事象又は状況を改善・解消すべく、収益力向上及び財務体質の改善・強化を図り、安定した経営基盤を築くために、さまざまな対応策を実施しております。これらの取組みは一定の成果を上げているものの、当社グループとしては、中長期的な企業価値向上を実現するためには、不採算拠点の再編を含む拠点の最適化による固定費の抜本的な削減等の早期の構造改革の断行が不可欠であると考えております。当社グループは、このような状況において、当社グループの安定的な事業運営を継続し財務体質の抜本的な改善を図りつつ経営改革を実行していくためには、スポンサーからの早期の資本性資金の調達が必要であると判断しました。

     当社グループは2022年11月以降、スポンサー候補との接触を開始しました。また、フィナンシャルアドバイザーを起用した上で、当社グループとのシナジーが見込める事業会社28社、及び事業規模等の観点から当社グループへの出資が検討可能であると想定されるファンド21社をリストアップし、スポンサー支援の打診を行いました。一方で、各スポンサー候補としては、当社グループの借入金残高が収益力対比で過大であると判断し、複数のスポンサー候補から、借入金の大幅な軽減を前提としない限り本格的な検討は難しいという趣旨の回答が得られました。

     こうした状況の中、当社グループは最大の販売先OEMである日産自動車に対して、スポンサー支援の打診を行い、協議を継続してまいりました。その結果、今般協議がまとまり、2024年5月9日開催の取締役会において、日産自動車との間で本投資契約を締結し、第三者割当の方法により日産自動車に対して総額60億円のA種優先株式を発行することを決議いたしました。本投資契約を通じて日産自動車との連携を深めつつ、早期の経営再建を実現することで、当社グループの企業価値向上を実現してまいります。併せて当社といたしましては、日産自動車による当社経営への寄与によりガバナンス体制の向上が図れるものと考えております。

2.本投資契約の内容

(1)取締役の指名等に関する合意内容

     当社は日産自動車との間で、当社が取締役(監査等委員である取締役を含みます。)の定数を15名から10名以内に変更すること、日産自動車が、(i)日産自動車が完全希釈化ベースで10%以上の議決権を保有する限り、当社の取締役候補者2名を指名する権利を、(ii)日産自動車が完全希釈化ベースで5%以上の議決権を保有する限り、当社の取締役候補者1名を指名する権利を有することを合意しております。なお、当社には、日産自動車が指名する取締役候補者が株主総会において選任されるよう最大限努力する義務が課されております。上記(i)の場合において、日産自動車が指名する取締役候補者2名が当社取締役に選任されたとき、2名のうち、1名は当社の代表取締役兼CEOに、他の1名は、製造部門を担当する取締役となります。上記(ii)の場合において、日産自動車が指名する取締役候補者が当社取締役に選任されたとき、当該取締役は、製造部門又は当社及び日産自動車の間で合意する他の部門を担当する取締役となります。また、当社には、りそな銀行が指名する取締役候補者1名が株主総会において選任されるよう最大限努力する義務が課されており、りそな銀行が指名する取締役候補者1名が当社取締役に選任された場合、当該取締役は当社のCFO(取締役企画本部長)となります。

(2)事前承諾事由に関する合意内容

    当社は日産自動車との間で、日産自動車が完全希釈化ベースで5%以上の議決権を保有する限り、当社グループに関して、日産自動車による事前の承諾なく、以下の事項を行わないことを合意しております。

(i)     定款又はその他重要な組織規程の改訂

(ii)    株式等の発行

(iii)   剰余金の配当又は自己株式の取得

(iv)    負債等の負担、引受け、保証

(v)     資産の売却若しくは処分又は担保権の設定(総額が10億円未満の資産を除きます。)

(vi)    10億円を超える設備投資又は資本支出の実施(本再建計画に記載の事項を除きます。)

(vii)   吸収合併、新設合併、組織再編、清算、解散又は倒産手続の決定

(viii)  負債等の期限前弁済又はローン契約等の契約条件の変更

(ix)    当社の取締役を9名を超えて選任すること

(x)     日産自動車による普通株式対価の取得請求権の行使に必要な相手方の承認又は同意を得るこ となく、チェンジオブコントロール条項を含む重要な契約を締結すること

(3)日産自動車の新株引受権

    当社は日産自動車との間で、日産自動車が完全希釈化ベースで5%以上の議決権を保有する限り、当社が株式等を新たに発行する場合、日産自動車がかかる株式等について新株引受権を有することを合意しております。

(4)譲渡制限

    本投資契約において、日産自動車は、2028年3月31日までA種優先株式(A種優先株式の取得請求権の行使により当社普通株式を取得した場合には、当該普通株式)の譲渡が制限される旨が定められております。但し、本投資契約において、日産自動車は、上記譲渡制限期間中であっても、保有する当社株式の全てを日産自動車の連結子会社へ譲渡することが認められております。

 

(劣後特約付準金銭消費貸借契約の締結)

当社は、当社の既存借入金(総額約176億円)の一部(総額60億円)を資本性劣後ローンへ転換することを目的として、2024年5月9日付けで、株式会社りそな銀行(以下「りそな銀行」といいます。)との間で、劣後特約付準金銭消費貸借契約(以下「本劣後特約付準金銭消費貸借契約」といいます。)を締結しました。

 

本劣後特約付準金銭消費貸借契約の概要は、以下のとおりです。

弁済期

2033年3月31日

利率

年0.5%

期限前弁済

通常借入金債務(※)に係る債権を有する者の全ての同意を得た場合に限り、劣後債務(デットデットスワップ(DDS)の対象となる借入金債務をいう。以下同じ。)の元本の期限前弁済が可能。

劣後特約

当社について破産手続が開始した場合、劣後債務の元利金に係るりそな銀行の当社に対する支払請求権は、破産法第99条第2項の約定劣後破産債権として扱われる。

当社について特別清算手続が開始した場合、劣後債務の元利金に係るりそな銀行の当社に対する支払請求権は、その他の一切の債権(但し、劣後債権(デットデットスワップ(DDS)の対象となる借入金債権をいう。)と同等の条件を付された債権を除く。)に劣後する。

 

※通常借入金債務とは、本劣後特約付準金銭消費貸借契約締結日現在において当社が負担している全ての債務(但し、劣後債務及び劣後債務と同等の条件を付された債務を除きます。)及び再建計画に基づき当社が新たに負担する全ての借入金債務をいいます。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは自動車内装トリム部品の専門メーカーとして、ユーザー及び自動車メーカー各社のニーズに積極的に応える新製品・新工法を提供するため、強力に研究開発を進めております。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は1,398百万円であり、主に日本で発生したものであります。この他に新車開発及び既存製品の改良等で発生した研究開発関連の費用は2,799百万円であります。

主な成果は次のとおりであります。

2024年4月から2025年3月までの主な活動を報告します。

 

(1)産業廃棄物を活用した新材料の開発

 当社は、カーボンニュートラルに貢献できる材料として産業廃棄物となっているウニ殻を利用した機能性フィラーの開発を進めております。現在世界中の沿岸地域においてウニの大量発生による海の砂漠化と呼ばれる「磯焼け」が起こっております。このウニを捕獲・畜養する活動が各地で行われており、陸上の3~6倍のCO2吸収が見込める藻場の回復が促進されております。一方で畜養されたウニは食用となりますが、殻は産業廃棄物として焼却処分されております。当社はウニ殻が多孔質構造を持っていることに着目し、材料化に取り組んでおります。作製されたウニ殻由来機能性フィラーは従来設備による樹脂へのコンパウンド及び成形が可能です。粉体のまま消臭剤としての使用も検討をしております。

ウニ殻由来機能性フィラー「ウニライトⓇ」に期待できる効果

・鉱産物炭酸カルシウムのような補強効果に加え,多孔構造を持つバイオミネラルをフィラーとして活用し

  VOC吸着効果や消臭効果を発揮することが期待できます。

・増量材として使用することで、石油由来樹脂の使用量を削減できます。

本件は「人とくるまのテクノロジー展2024」及び同時開催の「公益社団法人自動車技術会2024春季大会」にて発表いたしました。

 

(2)解析に基づいた新技術開発

 ①流動解析と熱弾塑性構造解析の連成による内装樹脂部品外観不具合発生メカニズムの解明

 自動車内装部品では従来の知見では解決できない白モヤ(外観不良)が課題となっていました。新たなシミュレーション技術により、白モヤ現象は、従来の知見である脱型時の金型との摺動で発生するだけでなく、型内で成形品が冷却される時の固化収縮挙動でも発生することを解明しました。併せて、実部品で発生した固化収縮挙動の発生要因を突き止め、デジタル段階で外観改善の対策が可能となりました。また型内の樹脂挙動を再現できる本手法は、成形工程で発生する様々な不具合現象の未然防止に貢献できます。

本件は「公益社団法人自動車技術会2024春季大会」にて発表いたしました。

 

②HSEAを用いたドア詳細モデル解析から音の流れ可視化技術開発による車室内騒音の効率的低減の検討

電動化・自動運転化に向け、より快適な室内空間として車室内の静粛性向上が求められております。 騒音を低減するには一般的に遮音材など質量増加を招くこともあります。これは電動車両に於いては車両重量が増加することで航続距離の低下を招く事もあり、効率的な騒音低減対策が求められております。当社主力製品であるドアトリムは、車外からの騒音が車室内へ侵入する境界にあり、重要な役割を果たしております。ドアを構成するアウター及びインナーパネル、ドアトリムを音が通過するパネルとしてモデル化すると同時に、それぞれパネル間の空間も詳細にモデル化しました。その結果、騒音がどのように侵入するかを可視化でき、効率的な騒音低減策を可能としました。

本件は「公益社団法人自動車技術会2024春季大会」にて発表いたしました。

 

(3)デジタル技術を活用した新製品開発を推進

 当社のデジタル開発では、デザイン領域や設計領域で用いられる3DCADソフト、3D解析ソフト、3Dビジュアライゼーション(CG)ソフトを、先行開発や製品開発において有効活用しております。新製品の開発において、これまでは原寸大のモックアップ(試作品)を製作していましたが、バーチャルモックアップに移行しております。先行開発品の開発スピード向上はコスト削減に繋がるとともにアウトプット数の増加も可能であり、利点は多くなっております。バーチャルモックアップはデジタル技術であるバーチャルリアリティ(VR)を活用して、現実に近い形でのアウトプットをお客様にご提案しております。

 

(4)アップサイクル製品を初展示

 当社は工場から排出された製品の端材を新しい製品に生まれ変わらせる、3R活動(産業廃棄物削減活動)に取り組んでおります。高機能パーテーションは、災害時の避難所生活でのプライバシー保護を目的とした防音性、断熱性に優れた工具無しで誰でも簡単に組み立てられる端材を利用した軽量パーテーションです。2枚の板をジョイントで組み上げ空気層を持ったパーテーションにする構造体で当社固有の技術として特許出願中です。寒川町の体験型のイベント「さむかわ安全・安心フェア」に出店し、高機能パーテーションの展示と組み立て体験、端材を使用したマスコット工作体験を行いました。