当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
NOKグループは、2023年に従来の「経営理念」を現在の社会環境と照らし合わせて再考し、新たにパーパス・バリューを策定しました。社会における存在意義であるパーパスと社員の信条や行動指針となる4つのバリューをグループ全体の共通の価値観として、常に変革を推進しながら、持続可能な企業となることを目指します。当社グループは、積み重ねた基礎研究に基づく製品開発、高品質での大量・安定生産を強みとして、「Essential Core Manufacturing ― 社会に不可欠な中心領域を担うモノづくり」を掲げ、豊かな社会の根幹となる「安全」と「快適」を支えています。ステークホルダーに対して経済的な利益をもたらすだけではなく、誇りを感じてもらえる企業としてグローバルな成長を遂げてまいります。
■パーパス・バリュー
(2)目標とする経営指標
持続的な成長を実現するための収益力の指標として売上高営業利益率を重視し、各セグメントにおいて利益率の向上に取り組んでおります。また、利益成長とあわせて資本効率の向上を目指しており、50%以上の自己資本比率を維持しながらROA、ROE、ROICなど資本効率指標の改善を図ります。
2026年3月期を最終年度とする中期経営計画(2023年4月1日~2026年3月31日)(以下、中期経営計画)においては、最終年度の目標値として、売上高営業利益率6.8%、ROA4.6%、ROE8.0%、ROIC6.5%を掲げております。
(3)経営環境及び対処すべき課題等
今後の当社グループを取り巻く経営環境につきましては、米国の外交政策動向及びそれを受けたサプライチェーンの混乱、欧米での金融政策動向、中東・東欧での地政学リスク等、先行き不透明な状況が続いております。国内では、物価高を受けた賃上げの動きが広がり、人件費の上昇も継続して見込まれております。このような環境の中、各事業の見通しは以下のとおりです。
シール事業では、自動車向けについては、日系自動車メーカーによる自動車生産は減産が見込まれ、中国においては電気自動車の販売シェア拡大、ASEANでは主要市場のタイにおける新車需要の鈍化及び中華系自動車メーカーによる進出本格化等の影響が予想されます。また、一般産業機械向けについても、景気低迷等の影響を受けております。事業全体を通じて依然として厳しい外部環境が続くと見込まれる中、電気自動車等の新領域向けの製品や、非日系自動車メーカーへの拡販による販売拡大、適正価格に向けた価格改定活動等による収益性向上に取り組んでまいります。
電子部品事業では、自動車向けについては、電気自動車市場は長期的な成長トレンドに変わりはないものの、短期的な成長は想定よりも鈍化しております。電気自動車に留まらず、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車等を含む新エネルギー車市場に対しても継続して拡販に取り組んでまいります。スマートフォン向けは、買い替えサイクルの長期化により市場全体の需要は横ばいとなる見込みです。現在の生産能力を有効に活用し、生産性の向上を図ります。ハードディスクドライブ向けについては、データセンター向けの需要増加に対し、動向を注視しながら対応してまいります。領域毎に需要動向は様々であるため、事業全体を通じて、比較的需要変動の少ない自動車向け等の事業領域の拡大等により生産の平準化を図り、需要変動の影響を受けにくい体質作りを推進してまいります。
上記のとおり、各事業において収益拡大の取り組みを推進する一方で、今後ますます社会的な要請が高まることが見込まれる脱炭素をはじめとする環境課題への対応や、持続的な成長基盤構築に向けた人財への投資およびDE&Iへの対応等、事業の持続可能性を確保するための投資も進めてまいります。
また、経営環境が今後もスピードを増して大きく変化していくことが見込まれる中、自らも変革することにより、中長期にわたる持続的な成長と企業価値の向上を実現できる事業基盤の構築を目指します。中期経営計画においては、「変革基盤の構築」を基本方針として重点項目に取り組んでおります。
中期経営計画の概要は以下のとおりです。
■4つの重点取り組み項目
1.新たな成長ドライバーの創出
電動自動車(EV)向け製品の機能別開発・拡販、グリーンエネルギー関連の製品開発・拡販、半導体装置向け製品の拡販
2.グローバル成長への事業運営体制の整備
監査等委員会設置会社への移行検討、取締役会のダイバーシティ拡充等、データ利活用の拡大・迅速化、ESG項目への着実な取り組み
3.多様な人財を活かす基盤の構築
新人事制度導入、人材育成への投資、DE&Iへの取り組み
4.経営資源の最適運用
適正価格による受注の徹底、資本政策の実行(自己株式取得、DOE(株主資本配当率)に基づく配当、政策保有株式の売却)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
[NOKグループサステナビリティ基本方針]
NOKグループは、私たちのステークホルダーに経済的な利益をもたらすだけではなく、誇りを感じてもらえるような企業でありたいと願い、創業時から事業と共に社会への貢献に取り組んできました。
“可能性を技術で「カタチ」に”というパーパスには、まだ見ぬ可能性や多様性を研究開発と独自技術で生み出される製品によって「カタチ」にし、人々の安全で快適な暮らしの土台を支えたいという、私たちの志が込められています。
地球環境や社会の課題に真摯に向き合い、自社の有する価値を活用して、サステナブルな社会の実現を目指していきます。
① ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関する議論を行い、方針・意思決定する組織として、「サステナビリティ委員会」を設置しています。
サステナビリティ委員会は、委員長をグループCEO、委員をグループCFO、他経営層で構成され、サステナビリティ施策推進に関する議論及び方針・意思決定の他、経営の根幹にかかわる重要事項を議論、経営層での共有、更には審議をし、取締役会に提案・報告を行っています。
事務局はサステナビリティ推進室が担当し、定期開催します。
また、サステナビリティに関するリスクについては当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、リスクマネジメント委員会と連携して対処しています。
② リスク管理
当社グループは、グループ全体にかかわるリスク管理の基本方針や管理体制について「リスク管理規程」で定め、委員長をグループCEO、副委員長をグループCFO、委員を経営層、事業企画、法務部門等で構成した「リスクマネジメント委員会」を設置し、当社グループのリスク管理を推進しています。同委員会では、会社経営に影響を及ぼす可能性がある事業戦略リスクや損失発生リスクに関する事象・課題を審議するとともに、リスクマネジメントやコンプライアンスに関する方針の検討・決定を行っております。
詳細につきましては、「
③ 戦略、④ 目標
当社は、創業90周年にあたる2031年に「売上高1兆円、営業利益率8%以上」とする目標を掲げました。2023年度からの9か年を3つに分け、段階的に目標を達成していくこととし、現3か年 中期経営計画を策定、「変革基盤の構築」を基本方針として重点項目に取り組んでおります。
経営環境が今後もスピードを増して大きく変化していくことが見込まれる中、自らも変革することにより、中長期にわたる持続的な成長と企業価値の向上を実現できる事業基盤の構築を目指します。
昨年、NOKグループのサステナビリティ経営の推進に向け、4つのマテリアリティを特定しました。マテリアリティは「事業」「環境」「社会」「ガバナンス」のそれぞれの分野で重要と評価されたものです。
なお、「気候変動」及び「人的資本」については特に重要なサステナビリティ課題と認識し、取り組んでおります。詳細の取り組みは各項目をご参照ください。
(2)気候変動
近年の世界的な脱炭素化の流れを受け、当社グループは2022年4月に、金融安定理事会(FSB)により設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。TCFDの提言に基づき、気候変動が及ぼす事業活動へのリスクや機会を把握し、事業戦略に反映させていくとともに積極的な情報開示を行い、企業価値の向上に努めます。
① ガバナンス(気候変動)
当社グループでは、気候変動対応を含むサステナビリティに関する議論を行い、方針・意思決定する組織として、サステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、NOKグループCEOを委員長に、年4回定期開催され、サステナビリティ施策推進に関する議論及び方針・意思決定のほか、経営の根幹に関わる重要事項の議論、経営層での共有、審議を行います。これらの審議内容は取締役会に定期的に報告されており、取締役会で報告内容の審議・承認をしています。このような仕組みで、取締役会が気候変動取り組みを監督する体制を構築しております。
② リスク管理
サステナビリティに関するリスクについては当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、サステナビリティ委員会とリスクマネジメント委員会で連携して対処しています。
サステナビリティ委員会の下部組織である気候変動「シナリオ分析」実践分科会が社内業務執行部門と連携し、気候変動リスクや機会を抽出、事業影響への大きさや影響期間からそれらリスク・機会を識別します。識別した結果をサステナビリティ委員会で評価・審議し、対応策の検討及び事業戦略に反映されます。
③ 戦略
気候変動は将来にわたって当社の事業に影響を及ぼす重要な経営課題と認識しています。その影響を評価し、気候変動対策を経営戦略に反映させるためTCFD提言に則ってシナリオ分析を実施しました。今回(2024年度)のシナリオ分析では、2050年までの期間を対象に1.5/2℃および4℃シナリオを設定、「政策/規制」、「技術」、「市場」、「評判」、「物理リスク(急性/慢性)」などの観点を踏まえた事業リスク・機会を評価しました。
本シナリオ分析の結果を踏まえ、NOKグループとして抽出されたリスク、機会への対応策を推進していきます。また、引き続きシナリオ分析を拡充し、その分析結果を事業戦略や経営計画に反映させることで、当社経営戦略のレジリエンス向上を図っていきます。
対象期間:2050年 対象範囲:連結
参照シナリオ:WEO STEPS、WEO APS、WEO NZE、RCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5など
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項目 |
1.5℃/2℃シナリオ |
4℃シナリオ |
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規制や政策(法規) |
炭素税の導入等、脱炭素シフトが加速 経営への影響大 |
脱炭素政策は大きく進展せず、 経営への影響は限定的 |
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調達 |
脱石油の進展により石油由来原料の代替圧力高まる 森林破壊への規制強化等により天然ゴム価格上昇 脱炭素シフトにより、鉄鋼、銅の需給がひっ迫 上記により調達コスト増加・供給に影響生じる |
調達コスト増加や供給への影響は限定的 |
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製造 |
電化の進展により電力需要増加 再エネ導入も大幅に拡大し、対応を迫られる |
電力需要の増加、再エネ導入とともに進展はするものの、1.5/2℃シナリオに比して変化は穏やか |
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販売(自動車) |
販売台数は中期で増加が見込まれるものの、長期的には多くの地域で減少 ZEV化は総じて急速に進展、普及のスピードや構成は地域により異なり、地域に合わせた販売戦略が必要 |
1.5/2℃シナリオに比して販売台数減少、ZEV化の動きは緩やかながら、相応に進展する |
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その他市場動向 (自動車以外) |
水素需要は2030 年までは限定的であるものの、2050 年までには大幅拡大 脱炭素化にともない半導体需要も増加 |
新規グリーン市場の拡大は限定的 |
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物理(慢性): 気候パターン変化 |
変化はあるが、比較的小さい |
大幅な変化が発生 |
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物理(急性): 異常気象 |
変化はあるが、影響は限定的 |
大幅な変化が発生 |
<リスクと機会>
a.物理的リスクと対応
NOKグループの生産拠点の9割以上が日本を含むアジア圏に位置し、AQUEDUCT※の洪水(河川、沿岸)リスク評価において、全拠点76拠点のうち8拠点が高リスクと評価されています。今後、気候変動が深刻化することでアジア圏の洪水や台風被害の規模や頻度が大きくなることが想定されており、現状の高リスク拠点だけでなくNOK全拠点において操業ならびに上流、下流のサプライチェーンにマイナスの影響を与えるリスクがあります。今回のシナリオ分析結果においても、4℃シナリオの急性物理リスクは、2030年から2050年にかけて中から大程度のインパクトがあると示唆されました。そのリスクへの対応策として、各拠点の自然災害によるハザードリスク評価を行い、拠点ごとの洪水リスクに合わせ、中長期的(5年以上)に、止水などの災害対策を実施しています。また、リスクに応じた原材料、製品在庫の確保を行い、上流、下流のサプライチェーンへの影響低減を図っています。
※ AQUEDUCT:世界資源研究所(WRI)が発表した水リスク評価ツール。「水の量」「水の質」「規制」「評判」などの水リスクを世界地図情報として提供しています。
b.移行リスクと対応
■販売リスクと機会
NOKグループの代表的な製品であるオイルシールは過去から自動車の内燃機関に多数採用されてきました。低炭素社会への移行が電動車の普及及び内燃車の需要減少を加速させることで、内燃車向けオイルシールの販売が減少するリスクを想定しています。今回のシナリオ分析結果においても、1.5/2℃、4℃シナリオともに内燃車の需要減少によるネガティブインパクトは大きいことが判明しております。一方、電動車の需要増加は電動車向け電装ユニット、バッテリー向けのシール製品、フレキシブルプリント基板(FPC)など販売増加の機会でもあり、大きなポジティブインパクトが見込めます。そのため、今後市場が拡大する電動車向けの製品開発・拡販を進めることで、リスクへの対策としていく考えです。また、半導体や再生可能エネルギーなど今後需要増加が見込める成長産業向けの製品開発や拡販を合わせて推進していきます。
■政策/規制リスク
1.5/2℃シナリオにおいては、世界的な脱炭素の潮流がもたらす各国の炭素税規制の制定・強化の動向により、炭素税による操業コストのインパクトが大きいことが分かりました。NOKグループのCO2排出量の9割程度は電力由来によるものであり、NOKグループが直接排出するCO2排出量への課税だけでなく、電力費用に炭素税が課されることで、事業コストが増加する懸念があります。そこでNOKグループとしては、自社の排出するCO2排出量を削減するため、CN燃料の活用や再生可能エネルギーの導入拡大など推進するとともに、CNロードマップを策定し、製造における脱炭素化を推進していきます。
④ 指標と目標
NOKグループでは気候変動への対策として「NOK Twin Green Plan 2030」を策定し、CO2排出量削減と次世代エコ技術の開発を進めてきました。今回のシナリオ分析の結果より、気候変動におけるインパクトが明確になり、2030年以降のCO2排出量削減に向けた取り組みの必要性が示唆されております。これらの結果や社会情勢を踏まえ、2030年以降のCNロードマップや脱炭素移行計画の策定、及びCO2排出量削減目標のアップデートを行っていく予定です。
[目標]
2050年 カーボンニュートラル達成を目指す
2030年 NOK連結国内 CO2排出量50%削減(2018年対比)
NOK連結海外 CO2排出量原単位30%削減(2018年対比)
(3)人的資本に関する取り組み
当社では、2023年度からの中期経営計画期間中に、「多様な人材を活かす基盤の構築」に取り組んでいます。重点取り組み項目として、新人事制度導入、人材育成への投資、DE&Iへの取り組みを推進します。
a. 新人事制度導入
一人ひとりが主体性やチャレンジ意欲を持ち会社への貢献と自身の成長を実感できること、貢献と処遇の連動の強化、多様な働き方の支援を柱とする人事制度を導入しました。また、社内公募制度(キャリチャレ)を導入して、第一期は15名の異動が実現しました。
また、今後増加が見込まれる再雇用従業員の更なる活躍推進を目的に再雇用制度の見直しを行っています。2026年度に新たな再雇用制度の導入に向けて検討を進めています。
b. 人材育成への投資
従来の人材育成プログラムをリニューアルして、「ラーニングステーション」をスタートしました。選抜型の次世代リーダー育成、DX人材育成に加えて、コミュニケーションや論理的思考などのBasic Learningプログラムの動画コンテンツも拡充して、学びたい従業員がいつでも学べる環境を整えました。
c. DE&Iへの取り組み
多様な人材が能力を発揮できる制度や組織風土への変革を行うために、女性をメンバーとするイニシアチブグループを立ち上げて活動を行っています。2024年度は、管理職層の全員に対してDE&I教育を開始しました。一人ひとりが活躍できるDE&Iの考え方をマネジメントに取り入れて変革のモメンタムを加速させます。
制度面では、フレックスタイム制度を育児介護短時間勤務者にも適用拡大しました。また、在宅勤務制度の更なる拡充を行いました。転勤を一時的に猶予する制度の活用実績もあり、多様な人材が仕事と私生活の調和を図り更に能力を発揮できる環境整備を進めています。
d. 指標及び目標
当社がグローバルで成長していくには多様な視点や発想を持つ人材の活躍が不可欠ですが、特に日本国内において、女性管理職数が少ないという課題があります。また、キャリア志向に関する調査の結果、リーダーや専門職へのキャリアを志向する女性の割合が少ないという結果が出ています。女性従業員それぞれの能力・意欲に応じた職域の拡大・職掌の転換、キャリア形成に関する教育の実施、今回新人事制度で、複数のキャリアコースを設けて個々の強みを活かした自律的なキャリア形成を支援することで、これらの指標の目標達成を目指します。
また、2022年度よりエンゲージメントサーベイを定期的に実施しています。この中期経営計画期間中のエンゲージメントの目標スコアを定め、エンゲージメント向上に向けた取り組みを進めます。2024年度は重点項目を定めてその向上に取り組み、各項目のスコアが上昇していることを確認しました。
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2022年度末 (実績) |
2023年度末 (実績) |
2024年度末 (実績) |
(目標) |
2031年度末 (目標) |
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11名 |
17名 |
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50名 |
※NOK単体及び主要な国内グループ会社
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2023年度 (実績) |
2024年度 (実績) |
2025年度 (目標) |
2031年度 (目標) |
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リーダーや専門職へのキャリアを志向する女性の割合 |
23% |
24% |
30% |
50% |
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エンゲージメントスコア |
66 |
67 |
72 |
- |
※NOK単体
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のものがあると考えております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社では、グループ全体に関わるリスク管理の基本方針や管理体制について「リスク管理規程」で定め、その規定に基づき、社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、グループのリスク管理を推進しています。当社の考える、会社経営に影響を及ぼす可能性がある事業等のリスクには、企業価値向上のためリスクとのバランスを図りつつリターンの最大化を図っていく「事業戦略リスク」と、企業価値の維持のためにその発生防止もしくは発生確率・損失の極小化を図るべき「損失発生リスク」があると考えています。更に前者の「事業戦略リスク」は、戦略リスク・投資リスク・市場リスクに区分し、後者の「損失発生リスク」は、法的リスク・カントリーリスク・災害リスク・信用リスクに区分してリスクマネジメントを実施しています。
「事業戦略リスク」については、リスクマネジメント委員会において、グループにおける事業の推進、新規案件等でのリスクを洗い出し、グループの経営戦略を検討する会議や案件に応じた個別の委員会等にて、最大のリターンが適時・適切に得られるよう具体的な対応策の審議を行なっています。「損失発生リスク」については、リスクマネジメント委員会の分科会として「リスク・クライシスマネジメント分科会」を設置し、定期的にグループの当該リスクの洗い出し、分析、発生頻度(時期)や損失規模(損害額)を想定したリスクレベル評価による定量化を行ない、その重要性・緊急性を考慮し優先順位を付けて課題・対応策の検討を行なっています。
NOKグループ リスクマネジメント体制(当連結会計年度末現在)
(1)事業戦略リスク
①戦略リスク
a.顧客の業績への依存について
当社グループでは、シール製品及び電子機器部品の製造・販売が事業の大部分を占めており、これらの分野においては国内外の主要な自動車メーカー、建機メーカー、及び電子機器メーカー等を主な得意先としております。これらの顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や予期しない契約の変更等、当社グループにて管理できない要因により影響を受ける可能性があります。このような顧客への売上減少により当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。当社グループではバランスの取れた顧客構成を志向し、当該顧客企業への売上減少のリスクが最小限となるよう努めております。
b.他企業との提携について
当社グループは、事業を展開する上で、他社と様々な提携活動を行っておりますが、提携先固有の事情による提携の解消等、当社グループで管理できない要因により業績及び財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
とりわけ、当社は1960年よりフロイデンベルグ社(以下同社)との間で、資本及び技術提携を行っており、当社グループの事業展開において、同社(グループ企業含む)は、パートナー企業として重要な位置付けを有しております。
現在同社は、投資会社であるフロイデンベルグ・エス・エーを通じて当社発行済株式の25.1%を保有する筆頭株主であり、1960年の提携以降、同社との関係は継続しております。今後においても、同社との提携関係は安定的に継続していくものと当社グループは認識しておりますが、同社との提携関係又は同社の事業戦略等に変化が生じた場合においては、当社グループの事業に対して影響を及ぼす可能性があります。
②投資リスク
a.需要動向の変化による影響について
当社グループの主要製品であるオイルシール等については、主に内燃機関(エンジン)に用いられるものでありますが、近年においては燃料電池自動車、及び電気自動車も市場投入されております。そのため当社グループでは将来の普及に備え、燃料電池自動車や電気自動車に搭載可能な新製品等に関する研究開発も進めております。しかしながら、現時点において将来、燃料電池自動車、及び電気自動車の普及が当社グループの業績及び財務状況に与える影響を見通すことは困難であります。
また、自動車、建機、電子機器製品、及び事務機のコモディティ化の流れの中で、新興国等での現地メーカーの台頭もあり、今後より一層の競争激化とそれに起因する価格下落が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③市場リスク
a.為替変動の影響について
当社グループの当期連結売上高に占める海外売上高比率は約7割であり、各地域における為替動向が、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。このため為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、当社グループの業績及び財務状況は為替変動の影響を受ける可能性があります。
b.金利変動の影響について
当社グループは、資金需要、調達手段、及び金融情勢を勘案し資金調達をしておりますが、金融情勢の変化により調達金利が変動した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
c.株式市場の動向による影響について
国内外の株式市場の動向は、当社が保有する投資有価証券の評価額、及び当社グループの年金資産の運用状況に影響を及ぼします。株式市場が低迷した場合、投資有価証券の評価損が発生する可能性、及び年金資産が目減りし、会社負担が増大する可能性があります。
d.原材料の価格変動について
当社グループの製品の主要原材料である鋼板・合成ゴム・銅箔・樹脂フィルム・金等の価格は、需給動向等により変動しております。これら原材料価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、原材料価格の変動により、当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。原材料価格変動の状況を鑑み、当社グループでは原材料を安定且つ継続的に供給いただける事業パートナーを国内に限らず広く世界中に求めております。
(2)損失発生リスク
「損失発生リスク」については、会社経営に重大な影響を及ぼす可能性のある危機の種類、及びそれを発生させる原因に基づき下記の通り区分を行なっております。
<会社経営に重大な影響を及ぼす可能性がある危機・リスク区分>
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危機の種類 |
原因 |
リスク区分 |
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操業停止 |
火災・爆発 |
・災害リスク ・信用リスク ・カントリーリスク |
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自然災害(地震・水害・火山噴火等) |
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病気(新型コロナウイルス、新型インフルエンザ、SARS等) |
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材料供給停止 |
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サイバー攻撃 |
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不法な業務妨害 |
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ライフライン途絶 |
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法令違反等の発生 |
司法(犯罪・利益供与等) |
・法的リスク ・信用リスク |
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税務(税法違反等) |
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会社法・金融商品取引法(株主代表訴訟等) |
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環境(汚染等) |
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労働法(労基法違反・セクハラ等) |
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従業員の死亡、重大な障害の発生、又はその恐れがある場合 |
労働災害 |
・災害リスク ・カントリーリスク |
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交通事故 |
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自然災害(地震・水害・火山噴火等) |
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火災・爆発 |
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海外での戦争・暴動・テロ・誘拐等 |
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訴訟 |
・法的リスク |
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その他会社経営に重大な影響を及ぼす事項 |
重要な機密情報の紛失・漏洩 |
・信用リスク |
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重大な品質問題 |
・信用リスク |
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その他 |
・各種リスク |
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各業務統轄部門は、想定される各リスクの評価について、予防対策を行なう前の素のリスクのことを「固有リスク」として、発生頻度を1年あたりの平均発生回数をもとに4段階で評点化し、それに損失規模を1回あたりの損害金額(直接の経済的損失額)をもとに5段階で評点化したものを乗じて算出しています。また、予防対策(ソフト面・ハード面)、保険・その他のヘッジについて有効性の評価(4段階にて評点化)を行ない、「固有リスク」からそれを除したものを対策後の「残余リスク」※1として定量評価を実施しています。この「固有リスク」と「残余リスク」の評点を踏まえ重要性・緊急性を考慮し、抑え込みたいリスク項目に優先順位付けを行ない、重要なリスクについては各部門にてリスク管理項目に掲げて対策を実施しています。また、定期的に各リスク項目の評価を行ない、管理項目および対策内容の見直しを実施し、継続的にリスク管理を行なっております。
(注)※1:残余リスク = 固有リスク(発生頻度×損失規模)- 対策の有効性
各区分における重要なリスクが現実化し損失が発生する可能性、ならびに現在実施している予防対策・リスクヘッジは以下の通りです。
①法的リスク
a.法的規制等の影響について
当社グループは、事業を展開する各国において様々な法規制の適用を受けております。法令に準じた社内規程やマニュアルの整備、各種教育によるコンプライアンス意識の醸成・周知徹底、外部専門家との連携体制の構築を図っておりますが、将来においてこれらの法規制が改正・強化された場合、新たな規制を遵守するために発生する追加コストの負担は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.訴訟その他の法的手続にかかわるリスクについて
当社グループが、各国で事業を遂行する上で、グループ内部統制の体制の整備、外部専門家との連携体制の構築、各種保険への加入等によるリスクヘッジを行なっておりますが、訴訟や規制当局による措置その他の法的手続の当事者となる可能性があります。これらの法的手続の結果、当社グループに対して金銭的な賦課や事業遂行に関する制約が課された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
c.知的財産権侵害の影響について
当社グループは、特許権その他の知的財産権の取得により自社の保有技術を保護すると共に、第三者の知的財産権に対する侵害の予防にも注意を払っております。しかし、国情の相違等から当社グループの知的財産権の保護が十分に得られず販売減少や訴訟費用が発生した場合や、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害したために販売中止や賠償金支払が必要となった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
d.環境規制が及ぼす影響について
当社グループは、各拠点における環境関連法令を遵守し、かつ顧客からの環境に関わる要請に対応するために必要な処置を講じておりますが、将来において法令や顧客要請が強化される、環境責任が発生する、事業活動が制約を受ける等の可能性があります。その対応の費用が多額となる場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②カントリーリスク
a.政治経済情勢について
当社グループは、日本、北米、欧州、中国、その他アジア諸国等において事業を展開しております。そのため、当社グループが製品を製造・販売している国や地域の政治情勢や経済状況の変動により、当社グループの業績及び財務状況は影響を受ける可能性があります。
③災害リスク
a.自然災害等について
当社グループは、地震・台風・洪水・火山の噴火等の自然災害や火災等の事故の発生により、当社グループの生産活動や物流活動に支障をきたす事態に備えて、生産拠点の分散化や安全対策を行い事業継続のためにリスクの最小化に努めており、また各種保険の加入等によりリスクヘッジを行っております。しかしながら、これらの事態の発生を完全に防止または軽減することができない可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.感染症等について
当社グループは、感染症等のパンデミックによる生産活動や物流活動に支障をきたす事態に備えて、生産拠点の分散化や安全対策を行い事業継続のためにリスクの最小化に努めております。
その中でも、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大以降、対応マニュアルの策定、在宅勤務や時差出勤等の実施、リモートワークツール等の活用により業務を継続できる環境を確保する等、各種対策を講じて感染症等の影響の極小化を図っています。今後の状況により感染症等の感染拡大が発生した場合は、当社グループを取巻く経済環境または事業環境が悪化することにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④信用リスク
a.情報流出の影響について
当社グループは、事業を遂行する上で、技術情報や個人情報等の機密情報を有しております。これらの情報の外部流出防止のため社内体制・手続を構築しておりますが、予期せぬ事態により情報が外部に流出した場合、社会的信用の低下や賠償金支払等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
b.サイバー攻撃等の影響について
当社グループは、悪意のあるサイバー攻撃等による、操業停止、重要データの喪失、情報漏洩に対して、外部機関等を活用した調査・予防措置を実施しておりますが、未知の方法のサイバー攻撃により操業に影響を及ぼす可能性があります。
c.製品の品質問題が及ぼす影響について
当社グループは、各生産拠点において世界的に認められた品質管理基準に従って製品を製造しておりますが、予測できない原因による製品の品質不具合の発生を皆無にすることは困難であります。万が一大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の不具合が発生した場合、多大な対応コストや社会的信用の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、各リスクに対する上記の予防対策にもかかわらず、顕在化された「損失発生リスク」が会社経営に重大な影響を及ぼす緊急事態が発生した場合は、直ちに緊急対策本部を設置しグループ全体で迅速に対応を行うことにより、可能な限り事業継続を図り、顧客等のステークホルダーへの影響を最小化することに努めています。
また、当社グループの事業の継続に障害となる事象(災害リスク)が発生した場合に、事業継続を確実にすると共に事業継続活動を継続的、かつ効果的に推進するための「事業継続マネジメントシステム」を構築し、その推進機関である「NOKグループBCM委員会」を設置して、事業継続計画(BCP)の立案、及び事業継続マネジメント(BCM)活動を推進しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社の当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、898,667百万円となり、前連結会計年度末対比で53,711百万円の減少となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が減少したことと、保有株式の時価下落により投資有価証券が減少したことによるものです。
負債合計は、275,245百万円となり、前連結会計年度末対比38,131百万円の減少となりました。これは主に、短期借入金、未払法人税等と買掛金が減少したことによるものです。
純資産は、前連結会計年度末対比15,579百万円減の623,421百万円となり、自己資本比率は64.4%となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上はあったものの、配当の支払いや保有株式の時価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したことによるものです。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高は766,859百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益は37,264百万円(前年同期比62.6%増)、経常利益は48,057百万円(前年同期比19.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は30,320百万円(前年同期比4.1%減)となりました。
前年同期比で、シール事業の売上高は横ばい、電子部品事業は増収となりました。営業利益段階においては、シール事業、電子部品事業ともに増益となりました。
各事業セグメントの事業概況は次のとおりです。
<シール事業>
売上高は362,742百万円(前年同期比0.0%増)、営業利益は26,214百万円(前年同期比12.4%増)となりました。
自動車向けは、日系自動車の国内での生産台数減や中国での販売不振、タイで継続している自動車ローンの厳格化等の影響を受け、販売は減少しました。一般産業機械向けは、欧米のインフレーションや中国の不動産不況等により、消費や設備投資が影響を受けたものの、建設機械向けの補修用部品の増加や農業機械向けの需要回復等により、販売は増加しました。セグメント全体の売上高は、為替による押し上げ効果があったこともあり、横ばいとなりました。
一方、売価転嫁等の価格改定活動の推進に加え、原材料価格等の変動費の良化により、営業利益は増加しました。
<電子部品事業>
売上高は為替による押し上げ効果があり、370,952百万円(前年同期比3.1%増)となりました。営業利益は、前年同期の1,023百万円の営業損失から大幅に増加し、8,927百万円となりました。
為替影響を除くと減収となりますが、売上に含まれる外部購入部品代が減少しており、それを除く実質的な売上は増加しました。用途別の状況は次の通りです。
-スマートフォン向けは、外部購入部品代の減少により販売が減少しましたが、実質的な販売は増加しました。
-自動車向けは、グローバルの自動車メーカーに対する電動自動車のバッテリー用途向けの販売が増加したものの、他の用途向けが減少しました。
-ハードディスクドライブ向けは、データセンター向けの需要回復等により、販売は増加しました。
売上高の増加ならびに品目構成の変化などにより、営業利益は大幅に増加しました。
<その他事業>
売上高は33,164百万円(前年同期比18.2%増)、営業利益は前年同期の626百万円から大幅に増加し、2,127百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は、前連結会計年度末に比べ106百万円減少し136,149百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
営業活動の結果、得られた資金は、91,594百万円(前年同期比2.7%の増加)となりました。これは、非資金取引である減価償却費と税金等調整前当期純利益を計上したことが主たる要因です。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資活動の結果、使用した資金は、43,183百万円(前年同期比45.3%の増加)となりました。これは、保有株式の売却があったものの、有形固定資産を取得したことが主たる要因です。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
財務活動の結果、使用した資金は、48,162百万円(前年同期比41.5%の増加)となりました。これは、短期借入金の返済と配当金の支払が主たる要因です。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
シール事業 |
364,353 |
101.0 |
|
電子部品事業 |
364,032 |
101.2 |
|
その他事業 |
33,253 |
118.6 |
|
合計 |
761,639 |
101.7 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
2.上記中には商品仕入高を含んでおりますが、当社グループにおいては仕入販売事業の事業規模には金額的重要性はありません。
b.受注実績
当社グループは、主として得意先より生産計画の内示を受け、それに基づく見込み生産を行っているため記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
シール事業 |
362,742 |
100.0 |
|
電子部品事業 |
370,952 |
103.1 |
|
その他事業 |
33,164 |
118.2 |
|
合計 |
766,859 |
102.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
Apple Inc. |
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
112,927 |
15.0 |
117,438 |
15.3 |
|
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
<シール事業>
自動車向け販売においては、主要顧客である日系自動車メーカーの生産台数が重要な指標になりますが、当連結会計年度においては日本国内を中心に生産台数が減少しました。また、海外市場においては、中国市場では現地の自動車メーカーを中心とする電気自動車の伸長に伴い、日系自動車メーカーの販売が低調に推移しております。ASEAN市場では、主要市場であるタイにおいて金利上昇に伴って自動車ローンの審査が厳格化したことなどが、自動車の需要に影響を与えております。当社グループでは中国において非日系顧客に向けた拡販を強化しているほか、今後中国系の自動車メーカーによる進出が拡大すると想定されるASEAN市場においても、同様に非日系顧客に対する取り組み強化を通じて、自動車向けの販売拡大を図ってまいります。
一般産業機械向けにおいては、中国での不動産不況をはじめとした世界的な景気低迷が長期化していることから、建設機械の生産台数が低調となるなど、売上に影響を与えております。一方で、建設機械向けの補修用部品や農業機械向けなどの需要が増加したこともあり、一般産業機械向け全体の販売は増加しました。
このような状況下、当社グループでは労務費など上昇しているコストの販売価格への転嫁をはじめ、適正価格での取引に向けた顧客との価格改定交渉活動を積極的に推進しております。これらの結果、為替による押し上げ効果もあり売上高は前連結会計年度比較で横ばいを維持、営業利益段階では増益となりました。
<電子部品事業>
当連結会計年度においては、需要の低迷が続いていたハードディスクドライブ向けにおいて、データセンターへの投資回復を受けて、販売が増加しました。また、電子部品事業の売上のおよそ半分を占めるスマートフォン向けについては、売上に含まれる外部購入部品代が減少した一方で、付加価値を生む実質的な売上は増加しました。
一方、今後の成長ドライバーとして期待している自動車向けにおけるバッテリー用途向けの販売は、電気自動車市場の成長が減速したこともあり、前連結会計年度比較で増加はしたものの、バッテリー用途以外の販売減少を補うには至らず、自動車向け全体の売上は減少しました。
電子部品セグメント全体としては、為替による押し上げ効果もあり売上高が増加したことに加え、過去数年にわたり収益性向上に向けて実施してきた構造改革や、生産の季節変動が損益に与える影響の低減を目指した取り組みの推進などにより、営業利益段階において、2018年3月期以来の黒字となりました。
当社グループは2023年4月を起点とする3か年の中期経営計画を推進しており、当連結会計年度はその2年目にあたります。中期経営計画の概要は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
本中期経営計画においては、売上高や営業利益に加え、営業利益率を重要な指標の一つとして掲げ、収益性の強化に取り組んでおります。2026年度3月期の連結営業利益率目標6.8%に対し、2025年3月期の実績は4.9%となりました。中期経営計画立案時の前提と比較した外部環境の変化などにより、計画目標に対して売上高、営業利益は厳しい推移をしている中、営業利益率の目標についても達成のハードルが高くなっておりますが、引き続き適正価格での取引に向けた価格改定活動や経費の効率的使用などを推進することにより、利益率の向上を図ってまいります。
また、資本収益性も重要な指標と位置付けて持続的な向上を目指しており、ROEについては最終年度8.0%の目標を掲げております。利益拡大の取り組みとあわせ自己株式取得なども実施しておりますが、2025年3月期の実績は5.2%となりました。上述のとおり利益目標に対して厳しい推移となっておりますが、引き続き収益性の向上に取り組んでまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.契約債務
2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
44,067 |
44,067 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
17,623 |
- |
14,198 |
3,425 |
- |
|
リース債務 |
2,661 |
686 |
986 |
342 |
646 |
c.財務政策
財務政策として、良好な財務体質と資本経営を両立しつつ、企業価値向上のために経営資源を配分することを基本方針としており、50%以上の自己資本比率を維持しながらROA、ROE、ROICなど資本効率指標の改善を図ります。現3か年 中期経営計画においては、最終年度である2026年3月期の目標値として、ROA4.6%、ROE8.0%、ROIC6.5%を掲げております。
経営資源の配分については、安定的な経営に必要な手元現預金水準を維持しつつ、設備投資等、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。
設備投資等は、将来にわたり長期安定的な利益を生み出すため、新商品・新事業創出への対応や、付加価値の内部取り込みといった目的の投資の他、品質向上及び省人化の投資、また計画的な設備の老朽化更新といった投資が主な内容となっております。
各年度の設備投資額はフリーキャッシュ・フロー黒字の範囲内を原則とし、十分な水準の手元流動性を確保するよう努めておりますが、不足する運転資金、設備投資資金については金融機関からの借入により調達しております。
株主還元につきましては、2023年度~2025年度の3か年で総額675億円を下限とした株主還元(自己株式の取得、配当)を実施いたしますが、中長期的な事業成長に基づき、1株当たりの配当額を段階的に向上させることを目指す方針としております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社グループ(当社及び連結子会社)が締結している重要な契約は次のとおりであります。
提出会社
①技術提携契約
|
相手先 |
国名 |
内容 |
契約日 |
|
フロイデンベルグ社 |
ドイツ 連邦共和国 |
オイルシール、Oリング等のシール製品及びそれに関連する技術の共同開発 |
2017年12月21日 |
②合弁契約
|
相手先 |
国名 |
内容 |
合弁会社名 |
契約日 |
|
フロイデンベルグ社 |
ドイツ 連邦共和国 |
米国子会社(NOK Inc.)とフロイデンベルグ社の米国子会社によるオイルシール、Oリング等のシール製品並びに関連製品事業の合弁 |
フロイデンベルグ NOK ジェネラルパートナーシップ |
1989年3月23日 |
当社グループは、当社及び連結子会社の各技術部門を中心に、相互連携を図りながら、担当分野に係る新技術・新製品等の開発活動を進めております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、
(1)シール事業
「環境」、「安全」及び「自動運転」対応を重点として、継続的に技術・製品開発を進めております。
環境関連では、低摩擦損失による省エネルギー効果に寄与する製品、電気自動車(BEV)・ハイブリッド(HEV)・燃料電池自動車(FCV)向けにクリーンな社会に貢献する製品の開発を進めております。
安全や自動運転対応では、自動車制動関連の製品や電子部品との複合等による高付加価値製品の開発に取り組んでおります。
オイルシール製品では、カーボンニュートラル社会の実現と、サステナブルな未来に向け、水素関連シールの開発や、オイルシールの低フリクション技術応用により、e-Mobility、ロボット用減速機をはじめ、建機・農機用シールの長寿命化など、環境負荷低減に向けた取り組みを進めております。
ラバーオンリー製品においては、CV/BEV/HEV/FCVの各種ニーズにお応えし、低燃費、寿命向上、難燃性など、お客様の機能向上に寄与する製品開発を進めております。自動車以外の分野では、各社のCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)への取り組みが活発化しており、製造設備用のラバーオンリー製品を通じてカーボンニュートラルへの貢献を目指しております。さらに、環境にやさしいエアコン用自然冷媒に対応したOリング材料をラインナップし、環境に配慮した製品開発を推進しております。
樹脂加工品では、自動車用自動変速機の回転軸用シールリングで、更なる省燃費・省電費に貢献するため低トルクと低リークを両立する仕様開発を進めております。また、電動ユニット向けに放熱をサポートする絶縁・高熱伝導樹脂部品に加えて、断熱性に優れるウレタン緩衝材の製品開発を進めております。
材料では、環境にやさしいバイオマス材の製品適用を進めており、一般道や高速道路などで使用されるNOKのラバーポール「ポストコーン」にバイオマスタイプを開発し販売を開始しました。バイオマス材については、他の製品用途向けでも開発を進めております。
新商品関連では、BEV/HEV/FCVに代表されるエコカーのニーズに対し、従来のシール製品群に加え、電子機器や電動ユニット向けバルブ製品をはじめとするゴム部品、および放熱をサポートする熱伝導性部品の販売拡大を推進中です。また、水素社会への取り組みとして、水電解装置の電解槽用のガスケット開発も進めております。
今後自動運転への発展が期待されている先進運転支援システム(ADAS)に必要とされるドライバーモニタリング技術への適用や、医師不足の解消を担う遠隔医療機器向け等、我々の開発した肌との親和性が高いゴム電極は、心電、筋電位、脳波等の取得を簡便化し、身体の状態を長時間・リアルタイムで把握するデバイスへの適用が期待されています。
自動車以外の分野では、「高齢化」「環境・エネルギー」「情報通信」「ライフサイエンス」に関わる社会課題に注目しており、高齢者のQOLを向上するソリューションや、医療・バイオ分野に向けた解析評価用のデバイスなど、より付加価値の高い製品開発を進めております。また、従来の技術を応用したヘアゴム製品を新たにBtoC 市場向け商品として販売しています。
化学合成品関係では、環境負荷の低減に対応した素材の開発や、機能性化学製品の開発とそれらの新規製造法を検討するとともに、生産プロセス面からも省資源・省エネルギーや環境に配慮した商品開発を推進しております。
なお、当事業に係る研究開発費は
(2)電子部品事業
成長電子市場である、自動車・小型携帯電子機器・GX・ビューティー&ウェルネスの各分野に向けたフレキシブル配線板(以下FPC)の新商品開発を推進しております。
自動車分野向けには、電動車両の拡大に合わせた商品開発を積極的に推進しています。特に、BEV、PHEV、
HEV向けの駆動用バッテリーに焦点を当て、電圧監視FPCおよびそのモジュール製品の開発を行っています。
これらの製品は、従来、ワイヤーハーネスが採用されてまいりましたが、近年FPC化が進み、欧州やアジアに続き
国内でも本格的な生産が始まっております。また、FPCのみならずFPC周辺部品と統合されたモジュール化の要
求も高まってきており、モジュール化の技術向上を図るとともに、バッテリーの大型化、需要増に対応するための製
品開発と生産設備の改良に取り組んでいます。
新しい取り組みとしましては、曲面追従のヒーターFPCがあります。ヒーターFPCはかねてからありました
が、FPCはフィルム状であり、曲面に追従させるとなるとシワが入ってしまいます。そのためスリットを入れて曲
面に沿わせるような工夫が必要でしたが、貼り合わせたい曲面と添わせる形で形状を維持できる加工を施すことで、
曲面に合わせてシワの発生なく組み込みができるようになります。様々な形状に追従できるようになりますと、EV
車での熱源、暖房装置として幅広く採用が見込まれるとともに、意匠としての自由度も増していくと思われます。
これらを受けまして、弊社では、電動車両向けの材料ラインナップ強化を行っております。グローバルの材料についてベンチマークを行い、性能の過不足、コストバランスを見直し、更に競争力のあるFPC材料を開発していく計画です。特に上述の電圧監視FPCでは、バッテリーの効率向上のため電動車両の高電圧化の流れから、耐トラッキング性の要求が始まっております。弊社としましては、現在の要求水準よりも1ランク上の耐トラッキング性のある材料開発に先行して取り組み、技術優位性を確保することを狙っています。
小型携帯電子機器分野については、5Gにより高速・大容量通信が開始されたことから高周波FPCを商品化しています。高周波対応のポイントは材料であり、要望に応じFPC材料としてMPI(モディファイドポリイミド)、LCP(液晶ポリマー)をラインナップ化し、5Gのボリュームゾーンである「SUB-6」から「ミリ波帯」の製品を提供しております。さらに50GHz以上の「超高周波帯」においては、上記材料では達成できない低損失や小型電子機器の省エネルギー化要求に対して、フッ素系材料を適用したFPCの提案や、PFASなどの新たな環境規制にも対応できる新規高周波材料の調査・開発を継続的に進めております。また、これら設計が難しい超高周波帯のFPCに対しては、当社で蓄積したノウハウを活用した材料技術・電磁界解析技術により、効率的で競争力ある設計提案も行っており、本年度の取り組みとして、これら要素技術をブラックボックス化しながら、グローバルのどの拠点でも対応できるよう、社内展開を図って参ります。
中国市場で増加している折り畳みスマートフォン(以下フォルダブルフォン)は、大画面のディスプレイを折り畳むことでコンパクトになるため、持ち運びや収納に便利なデバイスです。当社は、このフォルダブルフォンの折り畳み後の薄さを実現するために、他に先駆けてFPCの高屈曲性と薄型化を実現しました。さらに、高周波特性を向上させた材料も開発しており、今後のフォルダブルフォンの高機能化に貢献できると期待しております。今後、更なる薄型化と高周波特性の向上の要求があると考えており、これに向けた開発や顧客との定期的な交流を行って参ります。その為に、顧客と同等の評価が行えるよう、評価設備もさらに充実させていく計画としています。
GX分野においては、工場配管などの廃熱を熱源とした熱電発電向けに、配管に沿って曲がりかつ耐熱性と熱伝導
性を兼ね備えたFPCをかねてからご採用頂いております。特徴は、熱伝導性であり、元々FPCは薄い材料から構
成されておりますので、熱をよく伝えるのですが、当社のFPCは、独自材料により熱源の熱を熱電変換素子により
効率よく伝えられる高熱伝導素材を使用しております。更に、高温熱源に対応すべく、FPCの耐熱性を上げる取り
組みも併せて進めており、完成時には発電効率向上に貢献できるものと考えております。
ビューティー&ウェルネス分野においては、当社が世界に先駆けて量産実現した伸縮FPCによる脳波取得用セン
サシートの高付加価値化として、人体への装着性を大幅に改善できる導電性粘着剤を開発し、その量産準備を進めて
おります。また同時期に、伸縮FPCの更なる新商品として、美容機器メーカーとともにハイドロゲルを一体化した
EMS(電気筋肉刺激)用電極シートも開発、23年7月より量産を開始、25年度も引き続き生産することとなってい
ます。これら伸縮FPCについては、美容、医療、ヘルスケアなどの分野に向けて積極的な拡販を行っていくととも
に、ウェアラブル市場の活性化に貢献してまいります。
伸縮FPC以外としては、脳動脈瘤治療機器用対電極に当社の生体適合導電性粘着剤が25年度末に採用される見込
みです。ユーザーの特殊な滅菌処理に耐え、毒性残留が無いこと等、生体への適合性と密着力が得られることが採用
理由となっています。
なお、当事業に係る研究開発費は、
(3)その他事業
事務機業界は、リモートワークの普及、デジタル化の進展に伴い、印刷需要が緩やかに落ち込む見通しであり、今後の販売も徐々に減少する予測です。
事務機の開発トレンドは、これまで同様に高速化・高画質化・高耐久化・省エネ化を目的とした機構変更・原価低減の他、PFAS規制強化に備えた製品開発が継続の見通しです。
また、顧客同士の合弁会社・共同出資会社設立に伴い、新規製品開発の減少が懸念されます。
そのため、弊社は顧客ニーズに基づいた協業開発に加え、環境負荷低減を意識した品質向上、原価低減、生産設備の省エネ化等を中心に開発・生産体制の構築に努めてまいります。
潤滑剤関係では、環境対応型特殊潤滑剤や、過酷な条件や高信頼性が求められる用途で使える特殊潤滑剤の製品化と、モビリティ・軸受・半導体・次世代エネルギー分野向けを含めた次世代に貢献するための新製品や新技術の研究開発に取り組んでいます。
なお、当事業に係る研究開発費は