(1) 経営の基本方針
当社グループの主力事業分野である自動車産業は、モビリティ社会に向けた大変革期にあります。
そうしたなか、多様な従業員が力を発揮し、新しい価値を創造することが当社の社会的存在意義であると考え、2023年4月に「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスと位置付けました。
これに併せて、中長期経営構想としての「Beyond the OCEAN」、そのマイルストーンとしての中期経営計画「NEXUS-26」を発表し、その方針に基づいて取り組みを進めています。詳細は、当社WEBサイト(https://www.pacific-ind.co.jp/company/our_way/management_plan/)に記載しています。
当社グループは、これからも社会から必要とされる存在であり続けるため、ステークホルダーの皆様との信頼を醸成し、太平洋工業グループの世界中の仲間たちと新たな価値づくりを進め、持続可能な社会の実現に貢献する企業をめざしています。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中長期経営構想「Beyond the OCEAN」
長期的なトレンドと、モビリティ価値の変容のなかで、当社が生き残っていくためには、「技術×現場力」と「信頼とNo.1シェア」といった当社の強みを徹底的に活かすことが重要となります。そのための鍵は、一人ひとりの従業員が力を発揮して新しい価値づくりにチャレンジしていくための「パーパスを実現する人財戦略」です。そのうえで、長期的な基本戦略として、「売上と利益の共成長」「多様な技術による価値創出」「サステナビリティと経営の統合」の4つの注力テーマで、取り組みを進めます。
中長期的な成長の前提として、サステナビリティに関する課題を経営に統合することが重要です。これは、当社と社会・環境のつながりを経営基盤としてとらえ、事業成長との相乗効果を創出するということです。その要となるのが、従業員です。従業員が力を発揮して、技術やデジタルといったツールを駆使することで、「売上と利益の共成長」を実現し、財務価値とともに非財務的な価値を創造していきます。
事業戦略としては、多様な技術を活かし、主力のプレス製品の収益力をさらに高めていきます。また、バルブ製品と樹脂製品で新市場を積極的に開拓し、資本効率を高めつつ成長をめざしていきます。さらにモビリティ以外の分野にも果敢に挑戦し、次世代の柱を創造する芽を育てていきます。
これらは当社のサステナビリティ経営におけるマテリアリティとも合致しています。(マテリアリティについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略」に記載しています。)
経営目標としては、財務的な価値のみでなく、非財務的な価値も踏まえた目標を策定しました。
財務価値目標は、資本効率を高め、持続可能な成長を実現するべく、売上高を2026年度 2,100億円とし、その後も持続的な成長をめざしていきます。また、2026年度の営業利益率を7%以上、ROEを8%以上としましたが、2030年度には、それぞれ10%以上に高めることを目標としています。
非財務価値目標として、製品を通して社会・顧客課題を解決するというマテリアリティも踏まえ、主力事業のモビリティ分野では、2026年度の電動車向け売上比率を50%、2030年度には70%に高めていきます。新事業では、2026年度までの新規商品・サービス上市件数を15件、2030年度には35件をめざしていきます。
また、サステナビリティ価値の目標として、従業員が力を発揮し、持続可能な成長を実現するため、従業員エンゲージメントを指標としました。2023年度に第1回の調査を実施し、肯定的回答率を48.2%から2026年度に60%向上、2030年度に70%に向上することを人的資本の目標としました(対象は単体)。自然資本では、既に長期目標として、CO2排出量の削減を2030年度に2019年度比50%にすることを掲げていますが、そのマイルストーンとして、2026年度には30%削減をめざしていきます。



中期経営計画「NEXUS-26」
「NEXUS-26」では、まずはパーパスとして多様な人財が活躍できる企業となる人財戦略を基盤としています。その人財が、当社の強みである多様な技術のポテンシャルを引き出し、既存の顧客基盤の深耕に加え、新市場を開拓していくこと、さらにサステナビリティも踏まえた価値を一体的に創造していくことで、売上と利益の共成長を図っていくというのが、基本的な考え方となります。
プレス事業については、超ハイテン技術を活かした電動車向け新製品や既存ボデーシェル部品の拡販による受注の拡大をめざしています。開発、拡販は順調に進んでおり、昨年立ち上げたプレスの新工場は、順次稼働率を上げていき、売上・利益に寄与する計画です。樹脂事業についても、BEV(電気自動車)向けの製品開発・拡販は順調に進んでおり、物量増加に向けた生産体制の構築に取り組んでいます。今後のBEV動向も見極めながら、需要に合った生産能力の増強を進めていきます。
バルブ事業では、熱マネジメントシステム用電子膨張弁をはじめとした、電動車向けバルブの開発、拡販を進めています。昨年は新たな車型での採用も決定しました。今後の市場拡大を見据え、事業拡大と競争力強化のため、電動車向けバルブを生産する工場を建設します。
新事業では、モビリティ以外の分野で長期的な当社の事業の柱を作っていくために、社会課題解決に貢献する商品を軸に開発を進めており、昨年度には7件の新商品・サービスをリリースしました。これまでにリリースしてきた、牛体調モニタリングシステムや、物流管理システムなど、ポテンシャルのある商品を、いかに認知度を高め、拡販していくかが課題だと考えており、それぞれの製品特性に合わせた効果的な拡販活動を進めていきます。
サステナビリティに関する取り組みは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。
財務戦略としては、当社は財務価値目標として、ROEを、2026年度8%以上、2030年度10%以上をめざしています。
収益体質基盤の強化、投資効率の向上、バランスシートマネジメントを進めることで、資本効率を向上しつつ、持続的な成長を進め、継続的に株主に還元していきます。基本的な考え方は、以下のとおりです。

(3) 経営環境、中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社では、中期経営計画「NEXUS-26」で、以下の4つのテーマを主要課題としてとらえ、取り組みを進めています。
① パーパスを実現する人財戦略
人財戦略は、パーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」に込められた、全ての働く人が、「思い」をもち、活躍できる企業となることをゴールとしています。そのためには、従業員エンゲージメントを把握し、高めていくことで、挑戦できる風土を醸成していくことが必要となります。挑戦できる風土を醸成していくことが、人権の尊重、安全と健康、労働環境改善といった基盤整備と、人財育成・ダイバーシティ&インクルージョンといった事業成長に結びつく施策の強化を促し、それ等がさらに従業員エンゲージメントを高めるという好循環を生み出すものと考えています。
具体的な人財戦略の考え方は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)戦略 人財戦略の考え方(環境整備方針)」を参照ください。

② 売上と利益の共成長
前中期経営計画「OCEAN-22」の財務目標のうち、営業利益とROAが未達であったこと、資本市場から資本効率に対する要求が強まっていることなどから、当社では資本効率を意識しながら、営業キャッシュ・フロー内で成長投資を果敢に実施し、「売上と利益の共成長」を実現していきたいと考えています。各事業の成長戦略の基本的な考え方は以下のとおりです。
・プレス製品は、生産変動に耐えうる改善に支えられた現場力をベースに、軽量化や生産時のCO2削減など脱炭素への寄与を踏まえ、ボディ骨格の構造提案により大物部品の一括受注を増やし、付加価値を高めることで売上も利益も高めていきます。
・樹脂製品は、強みである防音防振・加飾技術を応用し、新規顧客への拡販を強化するとともに、サーキュラーエコノミーを踏まえた材料・製品開発で、持続可能な成長をめざしていきます。
・バルブ・TPMS製品は、無線通信技術や高品質といった強みを活かし、電動化時代に選ばれる高い付加価値を生み出す、スピード感ある開発型事業展開の実現をめざしていきます。
・新製品は、これまで開発した製品をバージョンアップして深化を追求しつつ、新分野への探索を強化し、社会課題を解決するデータビジネスを柱へ育てていきたいと思っています。
③ 多様な技術による価値創出
当社全体の技術開発戦略としては、「既存事業の多様なコア技術を深化、新価値創造」と、「開発環境を整備し、新規事業の創出加速」の2軸で取り組みつつ、既存事業と新規事業の開発連携を図っていきます。2025年7月には東大垣工場に開発センターを稼働させ、「共創空間」をテーマに、開発・生産技術の一体的な研究開発と、将来の新規事業創出の実現を図っていきます。
また、知財戦略として、新価値創造に資する効果的な知財を生み出すべく、知財分析・人財育成・体制整備を進め、グループ全体の知財マネジメント力強化を図っていきます。
これらの取り組みが一体となり、高付加価値で社会に資する事業成長を推し進めていきます。
④ サステナビリティと経営の統合
当社は、サステナビリティに関する15の重要課題(マテリアリティ)を特定し、KPIを定め取り組んでいます。また、「PACIFIC環境チャレンジ2050」を公表し、2050年のカーボンニュートラルを含む長期目標を掲げ、取り組みを加速しています。こうした取り組みを経営課題と位置付けるため、「Beyond the OCEAN」「NEXUS-26」について、あるべき姿からのバックキャスティングの視点を踏まえ、時間軸を長期におきつつ策定を進めました。その過程で、あるべき姿として、「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスと位置付けるとともに、マテリアリティとの整合性を確認しています。「NEXUS-26」は、「人財の尊重と活躍」、「環境負荷の極小化」、「ステークホルダーとの信頼醸成」といったマテリアリティを基盤としており、事業においても、プレス製品やバルブ製品を通じた脱炭素への貢献、樹脂製品におけるサーキュラーエコノミーへの取り組み、社会課題解決を意識した新事業開発と、それぞれサステナビリティの視座が含まれています。さらに、経営目標の非財務価値目標では、マテリアリティに関連して事業価値目標として、電動車向け売上比率、新規商品・サービス上市件数、サステナビリティ価値目標として、従業員エンゲージメント、CO2排出量を掲げ、サステナビリティと経営の統合を図っています。
当該情報は、有価証券報告書提出日時点での情報に基づいて開示しています。
当社グループは、サステナビリティ経営にとって重要な15のマテリアリティを特定し、4つのテーマ「ステークホルダーとの信頼醸成」「製品を通じた社会・顧客課題の解決」「環境負荷の極小化」「人財の尊重と活躍」に区分しています。マテリアリティに関する取り組みは、ありたい姿とKPIを定めて進めており、重要課題は個別に毎週開かれる戦略会議で適宜議論を行い、サステナビリティ推進会議で統括審議し、特に重要な課題は取締役会に諮っています。その進捗を年1回発行されるサステナビリティデータブックおよび当社WEBサイトで報告しています。
マテリアリティの中でも最重要課題が「気候変動の緩和および適応」であり、長期目標「PACIFIC環境チャレンジ2050」を定めて、グループ全体で取り組んでいます。また、マテリアリティの4つの柱の1つ「人財の尊重と活躍」については、5つのマテリアリティすべてが当社のパーパスと結び付く人財戦略と関連しており、取締役を含む議論のうえ策定を行っています。
当社グループは、価値観やビジョンを実現し、SDGs(持続可能な開発目標)を達成するため、2020年に2030年を目安としたサステナビリティに関する当社グループの重要課題(マテリアリティ)を特定し、4つの柱となるテーマと、15のマテリアリティ、注力するSDGsテーマを特定し、ありたい姿、主な取り組み、KPIを定めて取り組み、その内容をサステナビリティデータブックおよび当社WEBサイトで開示しています。
当社のサステナビリティに関するマテリアリティは、以下の通りとなります。
*ステークホルダーとの信頼醸成
・企業倫理・コンプライアンス ・責任ある調達 ・顧客満足度の向上 ・地域社会の発展
*製品を通じた社会・顧客課題の解決
・持続可能なモビリティ社会と豊かな暮らしへの貢献
・モビリティの安全性向上 ・環境配慮製品の開発
*環境負荷の極小化
・気候変動の緩和および適応 ・持続可能な資源の利用 ・水資源の保全
*人財の尊重と活躍
・人権の尊重 ・安定した雇用と働きやすい職場 ・従業員の安全と健康
・人財育成と挑戦できる風土の醸成 ・ダイバーシティ&インクルージョン
また、2023年4月には、「思いをこめて、あしたをつくる」を当社の存在意義として「パーパス」と改め、従業員一人ひとりが活躍し、新たなる価値を創造していくことをめざしています。同時に策定した中長期経営構想「Beyond the OCEAN」の経営目標である非財務価値目標および気候変動、人的資本に関しては、マテリアリティの中でも特に重要と思われ、財務的価値とも関連が深いと考えられます。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
◆人的資本
人財戦略の考え方(環境整備方針)
当社グループは、パーパス「思いをこめて、あしたをつくる」を実現するために、多様な従業員が「思い」をもって活躍できる企業となることが必要だと考えています。そのために、基盤充実施策としての「人的リソースと労働環境の改善」「人権の尊重」「安全と健康」、事業成長施策としての「人財の成長」「挑戦できる風土への変革」といった課題への取り組みを両輪で進めていきます。
これらの基盤充実と事業成長を効果的に推進するには、エンゲージメントの向上が特に重要と考えます。そのため、継続的に従業員エンゲージメントを測定し、高める取り組みを推進していきます。
併せて「ダイバーシティ&インクルージョン」を重視し、性別・外国人・障がい者・高齢者などの属性や、個性や強み・弱み、健康状態・性格・信条・性的指向など、一人ひとりの違いを認め、誰もが能力を発揮できる、心理的安全性が高い職場環境を整えていきます。
これらの取り組みにより、従業員のウェルビーイングと企業価値の向上の相乗効果を生み出していきたいと考えています。
従業員エンゲージメントの向上
当社グループは、従業員エンゲージメントの向上を人財戦略の要と位置づけ、2023年度に初回の測定を実施しました(対象は単体)。結果と目標については、「指標と目標」を参照ください。従業員エンゲージメント向上の取り組みで特に重要視しているのは、経営ビジョンへの共感、上司・同僚との関係性、仕事のやりがい、成長・学びの実感であり、これらを重点取り組み事項として、全体的に取り組みを進めています。
「経営ビジョンへの共感」については、ビジョン説明会を実施し、経営陣と直接意見交換をするグループディスカッションの場を設けたり、サステナビリティ教育の強化等を行っており、成長・学びの実感については、誰もが自由に学べるWEB教育を導入するなど、積極的に教育に投資しています。上司・同僚との関係性につながる心理的安全性の向上についても、誰もが意見を言いやすい職場風土づくりや、ハラスメント防止教育等含め、地道な取り組みを進めています。また、課題のある部門については個別で改善策を実施しているほか、順次空調設備の導入、残業時間の圧縮・平準化などにも取り組み、働きやすい職場づくりを進めています。

人財育成方針
当社グループは、従業員一人ひとりが「思いをこめて、あしたをつくる」ために、自ら考え行動できる意欲ある人財を育成していきます。
特に必要とするのは、グローバルに活躍できる人財、中核を担う人財、高い目標を掲げ挑戦する人財、持続可能な社会の実現に向け課題解決できる人財です。
そのために必要なスキル・人数を見える化し不足している部分を計画的に強化していきます。
また、チームで仕事の成果を出すために必要な「人間力」を高める教育も積極的に行っていきます。
誰もが力を伸ばし、発揮していけるよう、性別・国籍・年齢・働き方等に関係なく、個性や特長を伸ばしていける学びの場の提供やキャリア支援を行っていきます。
人財戦略の考え方は、
◆環境負荷の極小化(及び気候変動)
当社グループは、地球環境への取り組みについて、中長期の視野で検討し行動する必要性を認識し、2050年までの方針と目標を定め、挑戦目標として掲げています。当社グループは、地球環境のめぐみをもとにグローバルに事業を行う企業として、将来世代が変わらず自然のめぐみとともに生きているように、限りなく地球環境の負荷を下げ、気候変動の緩和と適応に努め、持続可能な社会の実現に向け、グローバルで取り組んでいきます。
気候変動
当社は、2022年度にTCFDに基づき、気候変動に関する当社グループのリスクと機会を、1.5度シナリオ、4度シナリオを参照して把握し、リスクと機会認識を精緻化しました。これらのリスクと機会に関する戦略は、主に「移行策」「適応策」「環境配慮製品の開発」として取り組みを進めています。以下に、2023年に開示した更新版の情報を掲載しています。
なお、気候変動の緩和に関する脱炭素への移行イメージは以下のとおりです。

2050年度のカーボンニュートラル(スコープ1、2、グループ)に向けて、非電力の電力化を進めるとともに、省エネルギー、再生可能エネルギー利用をベースに取り組みを進めていきます。マイルストーンとして、2030年度にはCO2排出量の50%削減(2019年比)、再エネ利用比率20%をめざしています。
エネルギー削減構成
<省エネルギー>
・既設設備:省エネ・日常改善活動
・設備導入・更新
工程別
溶接、照明LED化、空調、プレス/塑性加工
<再生可能エネルギー>
・電力:太陽光発電(オンサイトPPA)
再エネ証書、CO2フリー電力購入
・重油:LNGガスへの燃料置換
・ガス:CNガス購入
<カーボンオフセット>
・森林由来等のクレジットによるオフセット
・CO2回収によるCO2直接削減
気候変動に関するTCFDに基づく開示(2023年10月開示)の詳細は
https://www.pacific-ind.co.jp/sustainability/environment/climate/
◆その他、サステナビリティ関連で認識している課題について
当社グループは、サステナビリティに関するマテリアリティを特定し、それを参考にしてリスクを抽出しています。特に、人的資本(労務・安全等)、気候変動、人権、コンプライアンス、情報セキュリティ、BCP(自然災害)等をサステナビリティに関連するリスクと認識しています。人的資本、気候変動については、前述のとおりです。
人権およびコンプライアンスについては、国内・海外の子会社および仕入先に「行動ガイドライン」や「仕入先サステナビリティガイドライン」を展開し、自己点検を実施することにより周知、浸透、定着を図っています。2023年度の従業員向けの「行動ガイドライン」の自己点検実施率はグループで74%となっています。また、仕入先向けの「仕入先サステナビリティガイドライン」については、当社国内購入金額全体の80%以上となる仕入先に対して自己点検を実施し、平均遵守率は94%となっています。海外会社については2022年度に実施し、11社中7社にて購入金額全体の80%以上となる仕入先に実施し、平均遵守率93%となっています。今後、サステナビリティ・デューデリジェンスの一環で、インパクトやリスクを特定し、より踏み込んだ取り組みをしていきます。
情報セキュリティ、BCPについては、
なお、上記に記載のないマテリアリティに関するテーマについても、今後の状況や課題認識の変化により、有価証券報告書に記載すべきと判断される場合は、その期の有価証券報告書に記載します。
当社グループは、サステナビリティに関するマテリアリティを特定し、それを参考にしてリスクを抽出しています。このうち全社経営レベルのリスクについては戦略会議でリスク項目の選定、実施策を議論・審議しています。当社は、気候変動・社会課題等サステナビリティに関わるものを含め、重大なリスクを組織横断的に評価・管理するとともに、万一当該リスクが顕在化した際には迅速かつ適切な措置を講じることで、影響の軽減を図っています。この中には、人的資本についての要素も含まれており、人権・労務・安全といったテーマを重要な経営リスクとして認識しています。
気候関連のリスクと機会については、担当執行役員・経営企画部門・総務部門・環境部門等で構成されたチームで特定・評価・更新を行い、その結果を戦略会議に諮っています。カーボンニュートラルや、電動化などすでに重大な影響があると認識している課題は、随時戦略会議、取締役会で議論し、戦略への織り込み、対策の立案と実施を行っています。
サステナビリティに関するマテリアリティは、それぞれ中長期のKPIを定め、
また、パーパス実現のための核となる人財の活躍を見える化するため、従業員エンゲージメントを測定し、その質問で肯定的な回答比率を2023年度の48.2%から2026年度に60%、2030年度に70%まで高める事を目標としました(対象は単体)。最重要課題の一つである気候変動に関するCO2排出量と併せて、「NEXUS-26」の経営目標として取り組んでいきます。また、事業に関するサステナビリティの重要課題として、「電動車向け売上比率」、「新製品・サービス上市件数」を経営目標としています。当社の「新商品・サービス」は「社会課題解決」が主要テーマになっており、SDGsやカーボンニュートラルへの貢献と関連が強いものとなっています。
そのほか、当社の重要目標としての「PACIFIC環境チャレンジ2050」と、人的資本に関する目標と実績を以下に記載します。
(注)1 「非財務価値目標」は、中長期経営構想「Beyond the OCEAN」の経営目標です。「非財務価値目標」は、「事業価値目標」と「サステナビリティ価値目標」から成りますが、「事業価値目標」も当社グループのサステナビリティに関するマテリアリティと結び付いていることから、目標と実績を記載しています。
2 グループは、持分法適用会社であるPECホールディングス株式会社は含まれていません。
3 実績値ではない想定が含まれた試算値となります。また、2023年3月期有価証券報告書の開示から計算方法を一部見直しています。
4 目標は2019年度比となります。国内子会社2社(太平洋産業株式会社、ピーアイシステム株式会社)を含んでいません。
5 CO2排出量算出時の排出係数は、日本国の環境省・経済産業省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を採用しています。
6 当社グループは、CO2排出量についてデータの信頼性を向上するため、SGSジャパン株式会社による第三者検証を受審しています。前連結会計実績のCO2排出量について、2024年1月に第三者検証を受け、それに伴い数値を修正(国内:36.5削減%から36.1%削減に、海外:3.5%削減から4.4%削減に、グループ:18.4%削減から18.7%削減に修正)しています。当連結会計年度につきましても、第三者検証実施後、当社WEBサイトの「
7 これまで海外会社の一部を実施率の分母から除外しておりましたが、グループ全従業員数を分母に変更しています。また、海外会社の全従業員を分母に含めた目標と実績に変更しています。
8 正社員の自己都合退職者を対象としており、定年退職者は除いています。
9 労働災害による死傷者数(休業災害)÷延べ実労働時間数×1,000,000。臨時、派遣社員を含んでいます。
10 OJTは含んでいません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
記載したリスクは全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
① 世界経済情勢・グローバル展開
当社グループは、日本・アジア・欧米に生産拠点を有して事業展開しており、海外売上高は連結売上高全体の約67%を占め、今後も増加が見込まれます。グローバルな事業展開を推進するにあたり、予期せぬ法令・税制・輸出入その他各種の規制の変更、戦争・テロ・感染症などの政治的・社会的混乱の発生により、当社グループにおいて生産・販売活動の縮小を余儀なくされるおそれがあります。こうした事態に適切に対処できない場合、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、事業展開する国または地域の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集し、グローバルな視点でリスクマネジメントを強化する体制を構築し、適時適切な取り組みを行っています。また、グループ内資金を有効活用する資金マネジメント、地域社会・行政との連携などを実施し、有事に強い企業として顧客の信頼を得るべく取り組みを進めていきます。
当社グループは、トヨタ自動車株式会社をはじめとする、自動車部品が連結売上高の大半を占め、特定得意先への依存度が高くなっています。これら主要得意先の生産動向・方針変更による受注の減少等により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、新規顧客の獲得に注力するとともに、得意先との長年の信頼関係を礎に、得意先のニーズを先取りした製品や新工法の提案による新規製品の受注獲得に努めています。また、モビリティ分野以外の新事業の推進を図っています。
当社グループの主要製品である自動車部品は、国内外で競合他社との厳しい価格競争や、原材料の仕入れ価格高騰等により、価格競争力や製品の優位性が維持できない場合、製品に対する需要の低下により、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、高品質な製品の提供を前提とした原価低減活動を推進し、価格競争力の維持・向上、新技術・新工法を駆使した高付加価値製品の提供に努めるとともに、ニーズのある地域でグローバルに生産できる体制を整備することで、優位性の確保に努めています。
当社グループでは、連結売上収益の大部分を自動車関連部品が占めています。国内外で再編・提携の動きが加速し、技術開発競争が激化する自動車関連業界において、技術の急速な進歩と市場ニーズの変化に十分に追従できず、継続して魅力ある新製品を開発できない場合、将来の成長性と収益性を低下させ、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「思いをこめて、あしたをつくる」をパーパスとして掲げ、将来の飛躍に向けた成長基盤の構築を進めています。プレス・樹脂製品事業では軽量化に寄与する超ハイテン製品やアルミ製品、電動化により求められる快適性能向上のための樹脂製品の開発を進めています。バルブ製品事業では、TPMSの事業領域拡大に向けた開発、センシング技術や流体制御技術などのコア技術を活かした電動車向けの製品開発を加速しています。
また、主力製品への開発投資に加え、長期的な事業領域の拡大を見据え、センシング技術などを活用し、モビリティ以外の分野を含め社会課題や顧客課題を先取りした新事業開発にも果敢に挑んでいます。
2025年7月には新東大垣工場にR&Dセンターを稼働させ、「共創空間」をテーマに、開発・生産技術の一体的な研究開発と、将来の新事業創出の実現を進めていきます。
当社グループは、鉄鋼をはじめ黄銅やアルミなどの金属材料や、ゴム材料、樹脂材料などを原材料として使用しており、これら原材料の価格が資源やエネルギー費などの高騰により上昇し、当社グループで吸収または、販売価格に転嫁できない場合や、需給の逼迫や物流停滞による納入遅延等、供給能力の制約により、生産に必要な量を確保することが困難になった場合、製造コストの増加や売上収益の減少により当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、原価低減等の改善により、価格上昇分を吸収するよう努めています。また、原材料の需要予測に基づく在庫管理、グローバル調達による調達先の多拠点化、物流ネットワークの強化などサプライチェーンの最適化に取り組み、原材料の需給逼迫に備えています。
当社グループは、高度な加工技術や精度の高い品質を要求されるプレス・樹脂製品やバルブ製品を生産しており、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の品質不具合が発生した場合には、多額のコスト負担や売上の減少、当社グループの信用低下による失注などを招き、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、高品質な製品を提供するため、設計・生産準備の段階から品質の造り込みを行うとともに、各工程で徹底した品質チェックと製品データ管理を行い、グローバル基準での品質保証体制を構築しています。
⑦ コンプライアンス
当社グループは、グローバルに拠点を有し、各国の法規制の適用や当局による法的措置による賦課や事業活動の制約、訴訟提起や損害賠償請求など法的手続きの当事者となる可能性があります。また、製品データの改ざんや下請法違反等、重大なコンプライアンス違反が発覚した場合、規制当局・監督官庁からの操業停止命令や社会的信用の失墜による売上低迷など、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、社会から信頼・共感されるために、従業員が高い倫理観を持って公正・誠実に行動することが重要と考えています。「行動ガイドライン」を策定し、全従業員に周知して意識向上を図るとともに、従業員の誰もが前向きな意見を自由に発言できる雰囲気を醸成するなど、心理的安全性の向上に努めています。また、自動車業界全体で注視している取引の適正化についても、公正取引委員会のガイドラインに則り、取引条件の設定には取引先との十分な協議を心掛けることに努めています。海外では、各国・地域の法令・慣習を反映した自国の行動ガイドラインを運用し、各国・地域の実情に即したコンプライアンス活動を行っています。また、「贈収賄・腐敗防止の基本方針」、「仕入先サステナビリティガイドライン」を制定し、従業員への啓発・教育、サプライチェーンへの展開を実施し、コンプライアンスの徹底を図っています。
当社グループでは、大小様々な生産設備を有しており、重大な労働災害が発生するリスクを負っています。重大な労働災害が発生すれば、人的影響はもとより、社会や取引先からの信頼を失い、事業停止を余儀なくされるなど、当社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、重大災害につながるSTOP6災害(挟まれ・巻き込まれ、重量物、車両、墜落・転落、感電、高熱物による災害)の視点に基づき、設備・機械の設計・導入段階からリスクアセスメントを実施し、設備への安全装置の付設や危険エリアの見える化などリスク低減と安全な作業環境づくりを進めています。また、机上・体感教育を通じて、危険予知能力の向上やリスクアセスメント手法・安全な異常処置の体得など、危険感受性を高めるとともに、考えて行動できる高い意識と深い知識を有する人財の育成に取り組んでいます。なお、健康経営にも取り組んでおり、3年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されています。
当社グループでは、事業の持続的な成長には、人財の継続的な獲得・育成が不可欠であると認識しており、計画通りに人財の獲得・育成が進まない場合、競争力の低下を招き、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、海外拠点でローカル人財をリーダー層に積極的に登用するなど、国内外においてダイバーシティ&インクルージョンを積極的に進めています。
また、人的資本経営を推進するため、労働環境を改善するなど様々な施策により会社と従業員との信頼関係を構築することで、心理的安全性を高めるとともに、従業員エンゲージメントを向上させ、従業員自ら挑戦できる風土への変革を進めています。さらには日常業務の改善に全従業員が取り組む改善活動の実施、オンラインビジネスプログラムの導入など、自らがスキルアップを実感できる教育・育成を実施しています。
当社グループは、生産管理などの管理業務、会計システム、社内外の情報伝達などにITを活用しています。クラウドサービスの利用増加やデジタルトランスフォーメーションの進展によりIT活用の重要性が高まる中、悪意あるサイバー攻撃や過失によるシステムダウンなどの危険が増大しています。このようなリスクの完全な排除は困難であり、情報システムの障害発生による事業活動の一時的な中断や情報漏洩による信用低下が、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、セキュリティ監視機器の強化、従業員への啓発・教育によるITリテラシーの向上、バックアップ環境の強化、有事に備えた生産継続体制を構築し、仕入先とともにでセキュリティ対策を継続的に推進しています。
⑪ 知的財産管理
当社グループでは、独自性、先進性を有する技術を駆使した高付加価値製品の開発に取り組み、多くの知的財産権を有しています。これら知的財産権が侵害され、または第三者から思いがけない権利侵害の指摘を受けるなど、適切な知的財産管理が行われない場合、経済的損失や信頼失墜など、当社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、当社製品に使用される独自性、先進性を有する技術を特許出願により確実に保護するとともに、他社による権利侵害が持続しないような対策を講じています。また、技術開発・製品設計プロセスの各段階で知的財産権に関する調査を行い、他社の権利を侵害しないよう努めています。
さらに、知的財産として新価値創造に資する効果的な知財を生み出すべく、知財分析・人財育成・体制整備を進め、グループ全体の知財マネジメント力強化を図っています。これらの取り組みが一体となり、高付加価値で社会に資する事業成長を推し進めていきます。
⑫ 為替・金利・有価証券
当社グループは、為替レートおよび金利の変動により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、保有する株式の価格が下落し、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に為替レート変動により、外貨建取引の売上高・原価、資産・負債およびキャッシュ・フローならびに連結財務諸表における売上高・原価、資産・負債の現地通貨の円換算額の二つの側面で影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、為替レート変動の影響を軽減するため、米ドル、ユーロ等の主要通貨では為替予約を中心としたリスクヘッジを行っています。また、グループ間決済の一部について、同一通貨で入金と支払いの相殺を行っています。
⑬ 災害などの影響
当社グループでは、過去の被災経験やハザードマップなどから、国内外の各拠点にて、大規模地震、集中豪雨・河川氾濫等の風水害、火災・爆発等の事故、感染症の蔓延など、人的・物的被害が生じることにより、国内外のサプライチェーンや当社グループの事業活動の停止・停滞などのおそれがあり、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、災害の発生に備え、人命第一・地域復興・早期復旧を柱とするBCPや従業員の行動ガイドラインを策定し、建屋・設備の耐震対策、社員安否確認システムの導入、定期的な防災訓練の実施、応急手当普及員の増員、感染症対策など有事を想定した対策を講じています。
また、一極生産のリスクを回避するため、生産拠点の分散化や各拠点間で設備・生産方法の互換性を担保し、代替生産が可能な体制を構築するなど安定的な供給の確保に取り組んでいます。
当社グループは、気候変動によるリスクへの取り組みを最重要課題の一つとして認識し、グループ全体でCO2削減に取り組んでいます。脱炭素社会への移行リスクとして、カーボンプライシングの導入・再生可能エネルギーへの切替、原材料価格の高騰に伴う製造コストの増加や電動車へのシフトを始めとする市場・顧客ニーズの変化に適切に対処できないことで、競争力や企業価値の低下を招くおそれがあります。また、物理リスクとして、局地的豪雨や洪水、水不足や干ばつなど異常気象の深刻化により、工場の操業停止やサプライチェーンが分断されたり、熱中症の増加等により生産能力の低下や製品供給の遅延が発生する可能性があります。
当社グループは、「PACIFIC環境チャレンジ2050」を策定し、スコープ1、2のCO2排出量を2019年度比で、2050年にネットゼロに、2030年に50%削減する目標を掲げ、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの積極導入、設備投資判断へのICP(社内炭素価格)導入による設備の高効率化など、継続的にCO2削減活動に取り組んでいます。また、TCFD提言に沿ったシナリオ分析の実施により、リスクと機会を明確にし、活動内容の開示を行っています。
⑮ 人権
当社グループは、強制労働、児童労働、ハラスメント等の人権課題を重要なリスクとして認識しています。これらの人権課題に対し、バリューチェーンを通じて適切な行動がとられていないと、顧客との取引停止や行政罰、社会的信用の失墜につながり、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「国際人権章典」や「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」などの国際規範に沿った「太平洋工業グループ人権方針」を策定・開示し、パーパスである「思いをこめて、あしたをつくる」に基づき、人権リスクの低減に取り組んでいます。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢、中東情勢をはじめとする地政学的なリスクやインフレ進行等により先行きが不透明な状況が続きました。米国では個人消費の回復や良好な雇用情勢を背景に堅調に推移しました。欧州では金融引き締めによる内需の落ち込み等を背景に低調に推移しました。日本においては、新型コロナウイルスが感染症法上の5類への移行に伴う行動制限の緩和やインバウンド需要はあるものの、日米間の金利差拡大による円安の進展や、エネルギー価格および材料価格の高止まり等をはじめとする物価上昇などにより景気回復の減速が懸念されています。
当社グループの主要事業分野であります自動車関連業界におきましては、半導体などの部品不足は解消し、主要顧客の自動車生産は順調に推移しました。
このような中、当社グループでは、人員・部材の確保等を行い、生産量変動に合わせた生産活動および原価改善活動を行ってきました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、販売物量の増加や円安による為替換算の影響もあり、2,073億48百万円(前期比8.4%増)となりました。利益面では、販売物量の増加や継続的な原価改善活動により、営業利益は144億56百万円(前期比55.5%増)、経常利益は、営業利益の増加に加え、持分法による投資利益および円安による為替差益が大きく、188億36百万円(前期比42.6%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は169億74百万円(前期比82.5%増)となりました。なお、当連結会計年度の売上高および各利益につきましては、過去最高となりました。
なお、当連結会計年度において、特別利益として投資有価証券売却益155億20百万円、特別損失として、主に連結子会社のSCHRADER SASと太平洋エアコントロール工業株式会社のバルブ事業での固定資産の減損損失(のれん含む)75億53百万円を計上しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(プレス・樹脂製品事業)
販売物量の増加や円安による為替換算の影響が大きく、当事業全体の売上高は1,499億52百万円(前期比9.6%増)となりました。利益面では、販売物量の増加や原価改善等の効果により、営業利益は103億93百万円(前期比108.8%増)となりました。
(バルブ製品事業)
円安による為替換算の影響により、当事業全体の売上高は571億50百万円(前期比5.4%増)となりました。利益面では、材料価格の高騰等により、営業利益は41億18百万円(前期比3.3%減)となりました。
(その他)
その他は主に情報関連事業等のサービス事業から成っており、売上高は2億46百万円(前期比2.3%増)、営業損失は98百万円(前年同期は営業利益8百万円)となりました。
なお、セグメント別の金額は、セグメント間取引の消去後の数値であります。
当連結会計年度末の資産合計は2,924億55百万円となり、前連結会計年度末と比較して343億97百万円の増加となりました。
資産の部では、流動資産は1,021億47百万円となり、前連結会計年度末と比較して114億56百万円の増加となりました。これは主に現金及び預金が130億31百万円増加したことによるものであります。
固定資産は1,903億8百万円となり、前連結会計年度末と比較して229億40百万円の増加となりました。これは主に、無形固定資産が54億85百万円減少しましたが、有形固定資産が170億56百万円、時価評価に伴い投資有価証券が68億56百万円、退職給付に係る資産が47億35百万円増加したことによるものであります。
負債の部では、流動負債は536億78百万円となり、前連結会計年度末と比較して10億42百万円の増加となりました。これは主に、その他流動負債が52億44百万円、短期借入金が10億5百万円減少しましたが、未払法人税等が50億3百万円、未払金が14億64百万円、未払費用が12億34百万円増加したことによるものであります。
固定負債は713億80百万円となり、前連結会計年度末と比較して46億79百万円の増加となりました。これは主に、繰延税金負債が27億73百万円、長期借入金が16億8百万円増加したことによるものであります。
純資産の部は、利益剰余金が143億54百万円、円安の進行に伴い為替換算調整勘定が89億40百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末から286億75百万円増加し1,673億97百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は56.9%となり、前連結会計年度末と比較して、3.5ポイント増加しました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて128億96百万円増加し、444億90百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、353億81百万円の収入(前期は241億29百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益264億52百万円、減価償却費179億13百万円、減損損失75億53百万円による増加と、投資有価証券売却益155億20百万円による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、195億77百万円の支出(前期は164億28百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得に伴う支出346億45百万円による減少と、投資有価証券の売却に伴う収入158億10百万円による増加によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、46億60百万円の支出(前期は35億9百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額26億19百万円による減少によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっています。
2 その他については、生産実績の把握が困難でありますのでその記載を省略しています。
当社グループでは、プレス・樹脂製品事業、その他の一部で受注生産を行っていますが、受注額および受注残高が少額であるため、その記載を省略しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
(売上高および利益)
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は前連結会計年度に比べ160億94百万円増加の2,073億48百万円となりました。その主な要因は、プレス鋼材の有償受給化による減収影響はありますが、販売物量の増加や円安基調の継続による為替のプラス影響等によるものです。
営業利益は前連結会計年度に比べ51億57百万円増加の144億56百万円となりました。その主な要因は、物量増加による労務費・経費の増加や材料価格の高騰などのマイナス影響はありますが、販売物量の増加と原価改善の推進等によるものです。
経常利益は前連結会計年度に比べ56億26百万円増加の188億36百万円となりました。その主な要因は、営業利益の増加に加え、持分法による投資利益、円安による為替差益や受取利息等の増加によるものです。
親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ76億72百万円増加の169億74百万円となりました。その主な要因は、減損損失および法人税等による減少はあるものの、経常利益の増加や投資有価証券売却益によるものです。
(資産および負債)
当連結会計年度末における総資産は前連結会計年度末に比べ343億97百万円増加の2,924億55百万円となりました。
流動資産は、投資有価証券の売却による現金及び預金の増加等により前連結会計年度末に比べ114億56百万円増加の1,021億47百万円となりました。
固定資産は、戦略的な設備投資の実施による有形固定資産の増加および投資有価証券の時価評価等により前連結会計年度末に比べ229億40百万円増加の1,903億8百万円となりました。
流動負債は、その他流動負債および短期借入金等の減少はあるものの未払法人税等および未払金等の増加により前連結会計年度末に比べ10億42百万円増加の536億78百万円となりました。
固定負債は、繰延税金負債および長期借入金等の増加により前連結会計年度末に比べ46億79百万円増加の713億80百万円となりました。
純資産は、利益剰余金および為替換算調整勘定等の増加により前連結会計年度末に比べ286億75百万円増加の1,673億97百万円となりました。。
なお、有利子負債は、前連結会計年度末に比べ7億20百万円増加の619億38百万円となります。その内訳は、短期借入金10百万円(前連結会計年度末比10億5百万円減少)、1年内返済予定を含む長期借入金619億28百万円(前連結会計年度末比17億25百万円増加)であります。短期借入金は主に運転資金に、長期借入金は主に設備投資資金に充当しています。
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概況 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(財務政策)
当社グループは、運転資金、設備資金および株式取得資金につきましては主に、自己資金、金融機関からの借入、社債発行により資金調達することを基本としています。このうち自己資金につきましては、グループ内資金を有効活用するため、グループ会社間での資金貸借を実施しています。借入につきましては、運転資金は短期借入金で、設備資金や株式取得資金などの長期資金は長期借入金で調達することを基本としています。
④ 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績等を総合的に勘案し合理的に判断していますが、見積りに用いた仮定には不確実性があるため、実際の結果は見積りと異なる可能性があります。
なお、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)、「2 財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
当社グループは、売上高、営業利益率およびROEを重要な指標として位置付けており、長期的なあるべき姿からバックキャスティングする視点を取り入れ、中長期経営構想「Beyond the OCEAN」を策定しました。また、マイルストーンとしての中期経営計画は、2026年度までの4年間を期間とし、「価値をつなぐ」「絆で結ぶ」「グループ経営」という思いをこめて、「NEXUS-26」とし、その目標に向け取り組んでいます。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発組織は、お客様に密着した研究開発を行う各事業本部の技術部門・生産技術部門と、将来を見据えた新規事業の創出、事業推進を行う事業開発センターの開発部門で構成され、社内関連部門間の相互連携を図り、専門メーカー・大学・研究機関など産学官を含めた協業により、新製品開発、新材料、新工法の開発を進めるとともに、開発スピードの向上を図っています。
セグメント別の当連結会計年度の研究開発活動は、次のとおりであります。
(プレス・樹脂製品事業)
プレス製品では、LCA、カーボンニュートラルの観点からホットスタンプに比べ部品生産時のエネルギー使用量が少ない冷間超ハイテン加工を中心に、戦略的に技術開発を進めています。自動車の軽量化・低コスト化に貢献する1180MPa級超ハイテン材がトヨタ自動車株式会社で採用拡大傾向にあり、当社の冷間超ハイテンプレス工法も採用されており、さらに高強度な1470MPa材の冷間プレス部品を量産開始しています。樹脂製品では、電動車向け防音対策製品としてエアコンの電動コンプレッサー用ウレタン製防音カバーの採用が拡大傾向にあります。
研究開発費の金額は、
(バルブ製品事業)
バルブ製品では、カーボンニュートラルに向けた電動化の流れを成長機会と捉え、電動車で重要度を増している熱マネジメントシステム向けの製品開発を進めており、この開発には2018年に買収したSCHRADER2拠点も含めた世界3極が協力して取り組んでいます。2023年にはその一つであるヒートポンプ式エアコン用制御弁の生産を開始しています。TPMS製品では、小型、軽量、低消費電力を実現したスナップインTPMS送信機を開発、量産化しており、次期・新市場向けモデル等の製品開発を進めています。鍛圧プレス製品では、板金成形の持つ生産性と冷間鍛造の持つ高精度を融合した板鍛造技術を使い薄肉で軽量なトランスミッション部品の開発を進めています。
研究開発費の金額は、
(その他)
ソフトウエア関連の研究開発は、IoT技術を応用したマルチセンシングロガー「e-WAVES」や牛体調モニター「CAPSULE SENSE」のシステム開発、QRコードを読むだけで簡単に作業指示書などを閲覧できる「直Q楽R」を開発し、販売しています。また、AI技術を応用したトラックステーション管理システムの社内運用を開始しています。
研究開発費の金額は、
(全社共通)
事業開発センターでは、社会課題解決に結びつくビジネスを軸に、物流、農業、ヘルスケア、スマートファクトリー・DX、防災、カーボンニュートラル等、事業領域を拡大させています。
・無線技術、IoT技術、AI技術を応用した新商品開発
・廃棄ゼロの循環型社会を目指したサーキュラーエコノミーの促進につながる研究開発
・環境負荷物質削減および使用材料低減による環境にやさしい製品の開発
研究開発費の金額は、
以上、当連結会計年度における当社グループの研究開発費総額は、