第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「環境との共生」、「品質優先」、「人間性尊重」を経営の基本理念とし、企業の発展を通じて社会に貢献するとともに、顧客の信頼に応え、職場の活性化を通じて株主の皆様の投資期待に応えるべく常に企業経営の強化をめざしております。

当社の経営理念は下記の3項目であります。

① 環境との共生のもと企業の発展を通じて社会に貢献する

② 品質優先に徹し、顧客の信頼に応える

③ 人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する

 

(2) 会社のパーパス

当社の中長期経営ビジョンであるNITTAN Challenge 10(以下、NC10という)では、2030年の目標達成(売上高1,000億円以上/営業利益額100億円以上/売上高営業利益率10%以上)を掲げております。NC10達成のための『VISIONⅠ』(ICE領域)では、既存技術を活かし更なる燃費等の付加価値向上製品の開発を進めております。また、『VISIONⅡ』(EV領域)では、主に先進国を中心に脱炭素を背景としたEV化に関わる新たな開発と商品化への挑戦をしております。
 すなわち、ESGにも関わる中長期経営ビジョンであるとも言えます。そのため、「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」ことを当社グループの「パーパス(意義)」として打ち出しました。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社は、「基盤強化」、「永続的発展」、「企業風土改革」を経営戦略の柱とし、その実現のため、2025年度を初年度とする5ヵ年のグローバル中期経営方針を策定いたしました。経営方針の具体的内容は次のとおりであります。

  <2025-2029年度 グローバル中期経営方針>

 1.基盤強化・・・事業の収益性と将来性を伸ばす

 (1)事業環境の変化を正しく理解し、事業の再編・成長戦略を具現化する

 (2)弱点分析とNPM改善活動を通じて、収益力を強化する

 (3)安全と品質に重点を置き、お客様から常に選ばれる企業を目指す

 2. 永続的発展・・・NC10達成の道筋を作る

  (1)NC10 VISIONⅠアイテムの商品価値を高め、成長事業化する

  (2)NC10 VISIONⅡアイテムの発掘と基礎開発により、新規事業化する

 (3)CSR活動及びNCN活動を展開し、企業の社会的価値を高める

 3. 企業風土改革・・・従業員の成長こそ企業の成長

 (1)教育に力を入れ、全社員がプロフェッショナルを目指す

 (2)手作業や煩雑業務を見直し、業務効率改善とDX化を加速させる

 (3)コンプライアンス意識を高め、心も体も健やかに働ける企業体質にする

 

 

 

(4) 会社の対処すべき課題 

  当社グループを取り巻く事業環境においては、バッテリーEV(BEV)の販売が一服する一方で、中国を中心にソフトウェア定義型車両(SDV)の開発が進展しており、今後の競争の新たな軸となることが見込まれます。SDVは従来車とは異なる付加価値を提供し、パワートレインの多様性が維持されることから、内燃機関にとって有利な市場環境が継続するとの見方もあります。また、BEVの販売鈍化を背景に、各自動車メーカーがハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)へのシフトを進めており、当社が注視している市場においても、2040年まで内燃機関(ICE)車の需要は継続するとの予測がなされています。

 当社グループは、このような経営環境を踏まえ、パーパス「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」を掲げ、その実現に向け、コア技術を活用した既存の内燃機関向け製品にとどまらず、新規事業領域への挑戦を加速しております。また、全社一丸となって中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10」の実現に邁進しております。「VISIONⅠ」では、既存の内燃機関部品における付加価値を高め、事業の拡大を図っており、自動車に加え、二輪車、船舶、発電機など幅広い用途の内燃機関向けに、燃費改善に貢献する製品開発を進め、受注獲得を目指しております。「VISIONⅡ」では、電動化領域および異業種領域への挑戦を本格化させており、一部製品においてはすでに受注を獲得しております。引き続き、新規事業につながる開発活動を継続してまいります。さらに、昨年実施したM&Aにより、NITTAN恵那金属を完全子会社化いたしました。本M&Aの目的は、両社の技術と資源を統合することで既存事業の競争力を強化するとともに、新規事業への参入障壁を下げることにあります。具体的には、同社が保有する切削加工技術や表面処理技術を活用することで、生産性の向上とシナジー効果の創出を図ります。また、NITTANを通じた海外展開の加速も見込んでおります。これらの取り組みにより、中長期経営ビジョンの達成と、持続的な収益拡大を目指してまいります。
 次年度につきましては、基幹システムの刷新を通じてIT化、DXの推進を行い、製造工程の「見える化」やトレーサビリティの強化を図り、業務効率と品質管理の高度化を進めてまいります。また、「基盤強化」、「永続的発展」、「企業風土改革」を柱とする2025年度グローバル経営方針の実現に向けた施策や取り組みを展開してまいります。

 

  <2025年度 グローバル経営方針>

 1.基盤強化・・・既存事業をより強く
 (1)既存事業の付加価値を高め、事業の将来性を伸ばす
 (2)事業別再編を進め、競争力と収益力を強化する
 (3)NPM活動と職場環境を改善し、生産性を高める
 2.永続的発展・・・今進めているNC10を完遂する
 (1)NC10 VISIONⅠアイテムの拡販を成功させ、売上を伸ばす
 (2)NC10 VISIONⅡアイテムを商品化させ、新規事業化する
 (3)NCN活動を愚直に進め、CO₂削減目標を達成する
 3.企業風土改革・・・ 改革、それは全てを変えてみること
 (1)今までのやり方を変え、効率と成果をさらに追求する
 (2)万が一を気にせず、何事にも果敢に挑戦する
 (3)お互い称え合いながら切磋琢磨し、健やかに人が育つ企業体質にする

 

 

   (注)1 NPMは、「NITTAN Total Productive Management」の略称で、当社グループで展開している生産システ

      ム効率化を極限まで追求する企業体質づくりを目標とするNITTAN流の改善活動です。

    2 NC10 VISIONⅠは、ICE領域において既存事業の付加価値追求を目指す取り組みです。

    3 NC10 VISIONⅡは、EV領域において新規事業化や商品化によるSDGsへの貢献を目指す取り組みです。

    4 NCNは、NITTANカーボンニュートラルの略称で、当社グループの事業活動で発生する温室効果ガス排出

      量の削減を目指す取り組みです。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社は、企業理念の実践を通じて、コーポレートスローガン「CHALLENGE・CREATION・SPEED(挑戦・創造・スピード)」のもと、当社のパーパスを「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」と定め、当社の保有する既存の技術力と新商品開発力を駆使し、時代のニーズを先取りした高品質な製品・技術やアイディアを提供し続けることが社会課題の解決につながり、ひいては社会の豊かさの追求につながると考えております。

当社グループは全社的なリスクとして、「外部環境リスク」、「経営プロセスリスク」、「支援プロセスリスク」、「基幹プロセスリスク」のカテゴリーに分けて管理しております。気候変動を含むサステナビリティに関するリスクにつきましては、後述するガバナンス委員会にて社内関係部署が行った評価結果を定期的に検討及び審議し、リスクの把握と適切な対応を決定のうえ取締役会へ報告することで管理する体制としております。具体的なリスク及び対応策につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

 

 ① 環境への取り組み

  ② 社会への取り組み

  ③ ガバナンスへの取り組み

 

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 

① 環境への取り組み ~NITTANカーボンニュートラルを通じ、CO2削減を積極的に推進~

当社は、企業理念の冒頭に、「環境との共生のもと企業の発展を通じて社会に貢献する」を掲げており、持続的な事業活動を行うためには、環境保全への取り組みが重要課題であると捉えております。この社会的な課題を解決するため、これまで省資源化、廃棄物やエネルギーの削減に取り組んでまいりました。

また、地球温暖化対策への社会的要請の高まりを受け、自社の事業活動で発生する温室効果ガス排出量の削減を宣言し、下記に示す「環境方針」を策定・実行するだけでなく、2022年より新たな取り組みとして「NITTANカーボンニュートラル」(以下、NCNといいます。)を始動しております。NCNは、当社が新たな企業価値の創造を実現するためにも必要な取り組みであると考えております。

 

<環境方針>

 グローバルな事業活動を通じて地球環境保護及び地域社会との共生を果たしていきます。そして、自律した企業人として積極的に地域社会への貢献、環境保護への支援協力活動に取り組みます。更に、NITTANカーボンニュートラルの推進により、脱炭素社会を目指すことで、地球環境保護に貢献します。

 

 1. 環境保護に関する活動は技術的経済的に広く真摯に取り組み健全な環境の維持向上に努める

 2. CO₂を主とする温室効果ガス削減に寄与する技術開発や商品化を推進する。

 3. ものづくり改善と革新を進め、省エネ、省資源、省廃棄を加速する。

 4. 環境関連法令や規制、国際社会における合意等を遵守し、環境保護の意義を浸透させる。

 5. 環境汚染の防止に徹し、地域環境保全と企業のESGを遂行する。

 6. 地球環境保護を目的に、目標・施策を定め継続的改善を推進する。

 7. 環境教育・広報活動を通じ、地球環境問題・地域社会との共存の意識向上を図る。

 8. この「環境方針」を、一般に開示し、地域社会との共生を図る。

 

当社は、上記の環境方針に基づき、「環境保護」、「環境負荷低減」、「環境啓蒙」の3つを主軸に、以下の取り組みを実施しております。

 

  「環境保護活動」

      1. 環境保護活動及び法規制の遵守

          地域環境汚染の予防

          健全な環境維持活動の実践

      2. 環境に配慮した製品づくり及び技術開発

          環境負荷物質の低減

          省資源型の製品開発

          省エネ・省資源に寄与する製品開発を積極的に取り組み、環境保護につなげる。

      3. 環境保全を意識した業務の遂行

          クリーン&グリーン活動を展開し、環境負荷物質の使用を制限する。

          環境美化活動を積極的に参加し、地域環境保全に努める。

 

  「環境負荷低減活動」

当社の環境方針に掲げているネットシェイプ活動を積極的に展開し、材料・エネルギー使用量を削減する。また、3R活動(リデュース、リユース、リサイクル)を徹底し、廃棄物の再資源化を図る。

 

  「環境啓蒙活動」

環境保全意識の高揚を目的に、全従業員に対し環境保護に関する教育を実施し、業務に関連した環境活動を認識させ、環境マネジメントシステムの定着と運用を実施する。

 

<環境マネジメントシステム>

当社は、環境国際規格である「ISO14001」を認証取得し、国内製造拠点において、生産活動を進める上での「環境負荷」を、製品開発から生産・出荷に至るまで徹底的に洗い出し、継続的改善を進め、環境負荷低減に取り組んでおります。

また、当社は、社長を最高責任者とする推進組織と環境委員会等により、環境マネジメントシステムに基づく環境改善活動も推進しております。

 

<NCN>

2022年4月より全社をあげてNCN活動を本格始動しております。日本政府が掲げた「2030年でCO₂排出量を46%以上削減」の達成を指針とし、排出枠取引等を含め、CO₂排出量50%削減を目標としております。また、当該活動の進捗、具体的な施策内容は当社ホームぺージで公表している決算説明会資料にて適宜公開しております。なお、各スコープ、カテゴリーごとのCO₂削減のロードマップ策定を現在進めており、活動の進捗に合わせホームページ等に適宜公表する予定であります。

 

② 社会への取り組み ~“NITTANグループ”らしい文化と社会の構築実現へ~

ものづくり企業である当社にとって、「品質」は、サステナビリティを実践する上での「生命線」であると考え、品質保証の基本方針として、「品質優先」を掲げております。顧客の品質(製品、納期、コスト、サービス)への期待やニーズを理解し、法令・規制を遵守し顧客の満足度を満たし、社会的責任を果たすことを目指しております。この基本方針を実現させるため、品質方針を定め、当社グループ一丸となって取り組みを推進しております。また、会社に取って一番大切な資本は「人材」であり、その人材が安全・安心で快適な職場環境の下で活躍できるようにする事が企業としての使命とも言えるため、当社の経営理念として、「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」を掲げております。当社の「健康経営」に向けた取り組みを通じて、従業員一人ひとりが心も体も健やかに働ける企業体質を目指しております。

その一方で、企業を永続的に発展させるためには、従業員、顧客のみならず地域社会との共生も必要不可欠であると考えております。そこで、環境にやさしい製品・技術の提供を実践するだけでなく、地域社会と連携し環境保護活動の一翼を担えるよう努め、地域環境との調和及び地域社会との共生を大切にしております。

 

 

 

<品質方針>

1. 全従業員は、一貫して品質優先に徹し適用される要求事項及び法令・規制への適合を維持すると共に、

  顧客の要望を満足させる。

2. 品質保証体制を整備し、維持するとともに、継続的改善により向上させる。

3. 挑戦と創造のできる人づくりに努める。

4. 安全で快適な職場づくりを目指す。

 

<品質マネジメントシステム>

当社は、上記記載の独自の品質方針に加え、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO9001」及び自動車産業に特化した品質マネジメントシステムの国際規格である「IATF16949」を認証取得し、当該規格に基づいた品質マネジメントシステムを構築、運用しております。

  また、当社はグローバルに製造拠点を展開しておりますが、各拠点に最適な作業内容・手順を十分に検証し、採用・運用しております。

 

<健康経営>

  当社は、「お互い称え合いながら切磋琢磨し、健やかに人が育ち、活躍できる企業体質にする」を健康経

 営の取り組み方針として掲げております。 『ワークライフバランス』『メンタルヘルス』『食環境整備』

 『運動支援』 の4つを重点項目として位置付け、健康啓蒙動画の製作・放映や社員食堂を活用した施策の企

 画と取り組みを推進しております。

 

<地域環境・地域社会との共生>

近隣住民や従業員家族を招き、毎年夏に納涼祭を本社工場及び山陽工場でそれぞれ開催しております。また、その他にも寄付を通じた地域社会活動の支援等、地域に根差した取り組みを行っております。

特に、当社は、アジア・北米・欧州の海外9か国で、地域社会の人々に支えられ、長年事業活動を行ってまいりました。海外においても子会社を通じ、各地で社会貢献活動を推進しております。

 

③ ガバナンスへの取り組み ~経営の健全性、透明性、効率性の確保に向けて~

  当社は、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図るために、コーポレート・ガバナンスに関する基本的

 な考え方とその枠組み、運営に係る方針を示すものとして、「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」

 を制定しております。

  また、当社は、企業理念の実践を通じ、社会の要請に応えられる企業を目指すには、各国・地域の法令遵守

 に加え、従業員一人ひとりが、人間として求められる道徳心、倫理観を養うように努力し、常に良識と責任を

 持った行動をすることが必要であると考えております。

  この基本的な考え方とその枠組みを示す方針として、「NITTANグループ・グローバル行動規範」を制

 定しております。

 

<コーポレート・ガバナンス体制の概要>

当社は、監査役会設置会社であり、会社の機関として株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人を設置しております。取締役会の経営監督機能の客観性及び中立性を一層高めるために、一般株主と利益相反のおそれのない独立社外取締役を3名選任しております。

また、独立社外取締役が半数を占める指名・報酬諮問委員会を設置し、役員指名や報酬決定等について取締役会へ助言及び提言を行っております。取締役の監督機能と業務執行を分離し、迅速かつ的確な意思決定を行うために執行役員制度も導入しております。監査役は、内部監査部門と随時、情報・意見交換を行うことにより相互連携を図っており、また会計監査人及び取締役と定期的な意見交換を実施し、適切、適正な監査を行うことでコーポレート・ガバナンスの充実を推進しております。

 

<コンプライアンス体制の概要>

当社はグローバル・コンプライアンス・プログラムを策定し経営トップがコンプライアンスに関するコミットメントを行い当社グループ全体にわたる管理体制を構築しております。コンプライアンス意識の向上と法令遵守を保証する仕組みとして、ガバナンス委員会を設置しております。関係会社及び各部門にコンプライアンス責任者を設置することで責任を明確化しきめ細かな管理体制を構築しております。また、内部監査部門であるコーポレートガバナンス部を社長直轄の独立部門として設置し、定期的に関係会社及び各部門に対し監査を行うことで効率的な内部監査を実現しております。さらに、当社グループの全ての役員及び従業員が利用可能な内部通報制度を導入しコンプライアンス違反等に迅速かつ適切な対応を図ることができる体制を構築し、推進しております。

 

<ガバナンス委員会>

当社は、当社の取締役(社内)、監査役(社内)及び必要に応じ任命された執行役員で構成されるガバナンス委員会を設置すると共に、国内外の関係会社及び各部門にコンプライアンスの責任者及び担当者を設け、コンプライアンスを推進する体制を構築しております。関係会社及び各部門のコンプライアンス責任者には、当該委員会に対して自ら定めた推進計画につき定期的に進捗報告を行わせており、当該報告に加えて、当社の内部監査部門が行った監査結果について当該委員会で審議を行った上で、取締役会及び監査役会へ報告を行っております。また、当該委員会のグローバル事務局が、円滑な運営を図るとともに啓蒙活動にも注力しております。

 

<グループ内部通報制度>

法令違反・不正行為・ハラスメント行為に対して、当社グループに従事する全ての役員及び従業員が通報できるグループ内部通報制度を設け、当該制度に基づく通報窓口は、社内「コーポレート・ガバナンス部」及び社外「外部の法律事務所の弁護士」としております。通報は、「電話」「電子メール」「郵便」「FAX」のいずれによっても受け付けることで利便性を確保し、また通報者保護も周知しております。国外からの通報手段は電子メールに限るものとしておりますが、使用言語は、日本語、英語、中国語とすることで、グローバルでの運用を可能としております。なお、内部通報については、定期的に取締役会に報告し、取り組みのモニタリングを行っております。

 

 

(3)人的資本

①  人材育成方針

当社は「基盤強化」「永続的発展」そして「企業風土改革」を方針の三本柱と定め、企業及びグループ統治に努めてきました。その核にあるのは、“ひと”であり、“ひと=従業員”の成長が企業の発展と成長に繋がるという考えに基づき、コーポレートスローガンである「挑戦 × 創造 ×スピード」を体現し、“常に努力をし続け、感謝の気持ち・謙虚な姿勢・情熱”をあわせ持つ「誠実」な「NITTAN人材」の育成を進めております。

 

<戦略>

     1. 多様な人材の活躍推進

 当社では、多様な人材の活躍が中長期的な企業価値向上に繋がるものと捉えております。女性や外国籍社員の管理職登用に向けた育成や、女性の製造現場への積極的な配属の展開、正社員登用制度の拡充、高年齢者の活躍推進、キャリア人材やハンディキャップ人材の積極的な採用等、多様性を視野に入れた人材の確保と育成を推進していきます。

     2. マルチスキル人材・専門人材の育成

  職場異動を通じた育成やリスキリングによる新たなスキルの獲得を支援し、マルチスキルを備えた人材を育成していきます。また、従業員の適性を見極めながら、特定の専門領域に特化した経験を積んだ専門人材の育成も進めていきます。

     3. 中核人材・後継者の育成

 持続的な成長を実現するために、抜擢制度による若手人材へのチャレンジングな機会の提供やリーダーシップ研修等の選抜型教育による育成を強化し、計画的に中核人材や次世代を担う後継者の育成を進めていきます。

       4. 従業員の自律的なキャリア形成の支援

  従業員の自律的な意識を醸成するために、従業員が自律的に自身のキャリアを考え、自らの意思で希望する仕事や職場や伸ばしていきたい能力等について申請できる制度や、社内における人材の募集に対し自ら手を挙げて希望する職場や業務へ挑戦できる制度を整備していきます。

 

 

② 社内環境整備に関する方針

当社は経営理念で「人間性を尊重し、夢と活力ある職場を創造する」としており、人権を尊重し、差別のない多様な人材が活躍できる職場環境の確保に取り組んでおります。また、「安全」「安心」「安定」が実現できる企業づくりを進めており、職場の安全と従業員の心身の健康を守ることで、組織活力と創造力を最大化し、企業価値向上に繋げていきます。

 

<戦略>

    1. 健康経営の推進

社外専門家による健康づくりセミナーの開催、産官学連携に基づく健康志向の高い社食提供・健康意識向上施策を実施していきます。また、産業医面談による健康管理や社外の臨床心理士・外部カウンセラーによるメンタルヘルスケアも推進しております。

   2. 安全な職場環境の整備

社外の専門家を交えた定期的な安全教育や安全パトロールを実施し、職場における危険個所の見える化、労働災害や火災の未然防止活動、作業者の身体的負荷軽減活動等、安全で働きやすい職場環境作りに努めております。

   3. 過重労働の防止

毎月、労働組合との時間外労働に関する協議の実施や、会社による定期的な労働時間のモニタリングにより、時間外労働の抑制を進めております。また、労使で一体となった有給休暇取得の推進等を通じて、ワークライフバランスの確保に努めております。

   4. ハラスメント防止

ハラスメント防止に向けて継続的に従業員への教育を実施しております。また、管理職への多面評価による意識の醸成により、上司から部下へのハラスメントの未然防止に努めています。社内相談窓口の他、社内外の内部通報窓口の設置により、ハラスメント防止に向けた体制を整えております。

 

③ 指標及び目標

当社では、上記の「人材育成方針」及び「社内環境整備に関する方針、戦略」において次の指標を用いております。なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

 

指標

2024年度実績

2030年度目標

提出会社

女性管理職の人数

1

15

男性の育児休業等取得率

50.0%

85.0%

男女の賃金の格差(全労働者)

56.0%

65.0%

有給休暇平均取得率

92.5%

100.0%

 

定量的な目標設定につきましては重要な経営課題であると認識し、引き続きその他の目標設定についても進めていきます。

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるリスク及びそれに対する主な対応策は本項に記載のとおりです。ただし、これらのリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営ないし事業リスクを最小化するために様々な対応を行ってまいります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)外部環境リスク

   世界的な経済社会活動の持ち直しの動きが続き、日本経済も雇用・所得環境が改善するなど緩やかに回復していますが、海外景気の下振れリスクの懸念、物価上昇、アメリカ政府の政策動向、ウクライナ・ロシアや中東情勢の影響への留意が必要と考えられます。なお、アメリカ政府による関税政策変更については、当社は海外に15拠点を構え地産地消を実現しており、北米拠点での現地生産を強化することで関税リスクを回避し、競争力を維持しておりますものの、自動車業界全体への影響が当社にも波及するおそれがあります。

   また、自動車用等の内燃機関の電動化の進展、世界的な環境規制の強化等による内燃機関の生産減少は、当社既存事業領域の市場規模縮小につながり、当社グループの経営を圧迫するおそれがあります。

 

リスク要因

リスク要因概要

リスクへの対応策

市場環境変化

地政学・経済・政治を含む、様々な国の市場環境の変化によるリスク

・国内外拠点から入手した情報に基づく対応

・取締役会で課題、対策を報告し、実施

・年度目標値の達成状況の監視、対策実施

為替変動

・為替変動によるリスク

・為替リスクを極小化する取引通貨の選択

・必要に応じた為替予約の実施

革新技術の出現

・当社製品寿命経過(電動化、内燃機関の変化、減少等)によるリスク

・低コストで革新的な技術・製品の出現により 当社の製品が競争力を失うリスク

・将来的なニーズに適合した製品開発の推進

・「NITTAN Challenge 10」VISIONⅠ(ICE領域)及びVISIONⅡ(EV領域)の事業化に向けた開発

法令・規制等の

改正・強化

・工場立地での各種規制、関税・税務制度の変化によるリスク

・法令・規制の変化の定期調査に基づく適時適切な対応、監視監督の実施

・関連する教育の実施

自然災害、戦争、

テロ、疫病

・自然災害・戦争・革命・テロ・疫病等による、地域的ないしはグローバルな事業継続のリスク

・自然災害を想定した防災訓練の実施

・必要に応じたBCPの更新

・自然災害に耐えうる施設等の構築

・複数拠点による供給体制の確保

 

 

 

(2)経営プロセスリスク

  製造業である当社グループにおいて、製造現場における効率化の遅延は価格をはじめとする製品競争力の低下につながります。間接部門においてもIT化の遅延は効率的な経営の妨げとなり、適時的確な経営判断の障害となる危険性があります。

  また、当社グループは海外関係会社を有し、様々な法制の下で企業運営を行っておりますが、言語の問題や十分な人員配置が困難なことも要因となり、グループ全体に対するガバナンスが不十分となるリスクを有しております。

当社では2024年10月に株式会社恵那金属製作所(現 株式会社NITTAN恵那金属)を子会社化しましたが、引き続きM&Aによる事業拡大を検討しております。M&A実施前のデューディリジェンスが十分でない場合にM&A後に買収先の不正が発覚することや、M&A後の統合プロセスがうまく進まないことにより、期待通りの効果を得られないリスクが考えられます。また、昨今では、同意なき買収(敵対的買収)も目立ってきており、当社がその対象になる可能性も考えられます。

 

リスク要因

リスク要因概要

リスクへの対応策

IT化の遅延

・製造現場におけるIT化の遅延による、コスト削減の停滞、ノウハウ散逸のリスク

・決算や経営判断に必要なデータの正確かつ早期な提供が困難となるリスク

・標準的なIT技術に応じたITシステムの適時の更新及び構築

海外拠点の

ガバナンス不全

・海外の拠点に対する統制が行き届かず、不正が発生し、信用を失うリスク

・決算数値の誤謬が発生するリスク

・現地法人トップとの対話の実施

・定期的な監査の継続実施

・過去の発生事案を活用したリスク回避対策の構築

・海外拠点財務諸表の分析、定期レビューの実施

・内部通報制度の活用、事案発生時の適正な処罰実施

M&A

・M&Aデューディリジェンス時に検知できないリスク

・M&A後の統合プロセス/内部統制リスク

・専門家との協働、表明保証条項によるヘッジ

・PMIの早期検討開始・実行、M&Aマニュアル策定

TOB

・同意なき買収による経営権喪失リスク(企業価値の過小評価)

・NC10活動の推進、IR戦略室中心の積極的なIR活動

・自社株買い、政策保有株の見直しによる企業価値向上

 

 

 

(3) 支援プロセスリスク

当社グループが必要とする各種の優秀な人材の採用が容易ではない状況は継続しております。

また、当社グループは事業活動における法令遵守に努めており、『NITTANグループ・グローバル行動規範』の当社グループ内への浸透、ガバナンス委員会を中心とする当社グループ内のコンプライアンス強化活動の推進をしております。しかしながら、『NITTAN Challenge 10』による新規商品の開発においては知的財産権に関するリスクを十分に考慮して進める必要がある他、製造物責任、独占禁止法等の法的手続に関する当事者になり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。各種のハラスメントが発生した場合には、被害者の労働意欲の低下、休職および離職、職場環境の悪化による生産性の低下、ひいては当社への信用、信頼、イメージの低下を招くリスクがあります。

その他、当社グループでは情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ管理規程等を制定しITセキュリティ対策の推進に努めておりますが、サイバー攻撃を受けた場合やシステムに予想し得ないトラブルが起きた場合、業務への支障をきたし、当社グループの業績および財務状況に大きな影響を与えるおそれがあります。また、情報へのアクセス制御、パスワード管理の徹底等を図り不正アクセス等による情報漏洩対策をしておりますが、予期し得ない事象により個人情報や秘密情報の漏洩が起こるおそれがあります。

そして、当社グループでは環境汚染の防止に努める他、カーボンニュートラルに向けたCO₂削減の為、電力使用量の削減、グリーンエネルギーの活用を主とする「NITTAN Carbon Neutral」活動を実施しておりますが、環境汚染、CO₂削減等の目標の未達成により、環境の悪影響により当社グループへの信用を損なうリスクがあります。

 

リスク要因

リスク要因概要

リスクへの対応策

知財、労務その他の 分野における各種紛争

・労務、規制違反等に起因する訴訟又は争訟が発生するリスク

・知的財産権に関するリスク

・NITTANグループ・グローバル行動規範によるグループの企業倫理確立を通じた健全な企業活動の推進

・社内各種研修による、コンプライアンス意識向上

・他社所有知的財産権調査の適時実施

人材不足

・当社グループが必要とする優秀な人材の確保が困難となるリスク 

・感染症の影響等、当社グループ所在国の事情による採用難により、必要な人材が不足するリスク

・採用体制の強化と採用ツール・施策の充実

・人的資本経営方針の明確化、エンゲージメント向上

・ハラスメント防止等の教育体制と教育計画の強化

・ワークライフバランスや多様な人材に対応した施策の整備と充実

コンプライアンス違反

・独占禁止法違反、不公正取引、ハラスメント等のコンプライアンス違反が発生するリスク

・グローバルコンプライアンスプログラム、NITTANグループ・グローバル行動規範、企業行動規範等の社内規程に基づいたコンプライアンス教育の実施

・独占禁止法遵守マニュアル、グローバル独禁法遵守マニュアル、贈収賄防止に関するガイドラインに基づく教育の実施

・規定違反に対する適正な処罰の実施

サイバー攻撃、

情報漏洩

・サイバー攻撃による事業活動へ影響が発生するリスク

・個人情報、秘密情報の漏洩が発生するリスク

・サイバー攻撃再発防止の為のセキュリティ見直し強化施策の実施、当社グループへの横展開

・専門業者のコンサルティング継続

・情報セキュリティ基本方針に基づいた教育の実施

環境汚染、

CO₂削減の未達成

・事故により環境汚染が発生し信用を損なうリスク

・地球温暖化による被害を及ぼすリスク

・汚染物質の流出防止管理および施策の実施

・環境事故発生を想定した訓練実施

・カーボンニュートラルに向けたCO₂削減活動(NITTANカーボンニュートラル活動:電力使用量の削減、グリーンエネルギーの活用)の実施

 

 

(4) 基幹プロセスリスク

革新技術の出現による当社グループの既存製品の競合先に対する製品競争力の低下、リコール・品質不良による顧客への損害の発生及び費用求償、工場火災、機械設備の故障等による生産停止、納入遅延・不能による顧客への損害の発生及び費用求償、これらによる社会的評価の低下等を通じて、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。当社グループでは、継続的なコスト削減活動や顧客ニーズに沿った製品開発を進めることに加え、「品質優先に徹し、顧客の信頼に応える」という品質に関する基本方針の実現の為、ISO9001及びIATF16949規格に基づく品質マネジメントシステムの徹底による取り組みを推進しております。

また、特定の取引先への依存度が高い材料・部品の調達等が困難になることによる生産および業績への悪影響を与えるリスクが考えられます。

 

リスク要因

リスク要因概要

リスクへの対応策

製品競争力低下

・競合先に対する競争力(品質、価格、納期、サービス、技術)が劣後するリスク

・コスト削減活動の継続

・顧客ニーズに沿った製品開発の実施

リコール、品質不良

・顧客の信用を失い、多額の費用を求償され取引を打ち切られるリスク

・品質マネジメントシステムの徹底

・製造物責任保険の活用

納入遅延/不能

・工場火災、機械設備の故障、ユーティリティ障害、労働力不足等内部要因に基づく生産停止、納入遅延・不能、費用増加のリスク

・供給者の緊急事態等に基づく生産停止、納入遅延/不能、費用増加のリスク

・工場内における安全・保全・保守に対するルールの教育と徹底

・緊急対応手順書の整備・運用

火災・労災

・火災・労災等の人為災害の発生により生産に支障をきたすリスク

・訓練により洗い出した課題の解決策をBCPに反映教育実施

・複数拠点からの供給体制構築

・設備毎のリスクアセスメント、是正実施

特定の取引先への依存

・材料・部品調達等を特定の取引先へ依存していることにより、材料枯渇、信用不安、事業撤退発生時に材料・部品調達等が困難となるリスク

・取引先との綿密な情報交換と動向把握による早期対応の実施

・特定の取引先以外に対応可能な会社の検討、グループ・社内取り入れの検討

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における世界経済は持ち直しの動きが続いているものの、欧米における高い金利水準の継続や中国経済の先行き不安等による影響が懸念される不透明な状況での推移となりました。日本経済は、雇用・所得環境が改善するなど緩やかに回復していますが、先行きについては米国の通商政策の影響等による海外景気の下振れリスクや物価上昇の継続、金融資本市場の変動等の影響が懸念される状況となっています。また、当社グループが最も影響を受ける自動車業界におきましては、日本市場においては車両認証問題や物価上昇等の影響により低調な推移となりました。グルーバル市場においては、半導体等の部品不足解消に伴う生産の正常化により回復トレンドが継続しましたが、米国の通商政策の影響が懸念されるなど先行きの不透明感が高まっています。

このような状況下、当社グループは、「基盤強化」、「永続的発展」、「企業風土改革」を柱とするグローバル経営方針を掲げ、当社グループのパーパスである「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」ことを目指し、国内外で競争力を高める施策や取り組みを積極的に展開してまいりました。その実現に向けた当社グループの中長期経営VISIONである「NITTAN Challenge 10」につきましても、VISIONⅠ(ICE領域)及びVISIONⅡ(EV領域)における各アイテムの拡大と事業化に向けた開発を着実に進めております。

なお、2023年12月31日に当社堀山下工場(舶用部品工場)において発生した火災に関しましては、関係各位に多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしました。当火災の被害により同工場の稼働及び舶用部品生産への影響が生じましたが、既報のとおり2024年5月に稼働を再開し生産・納品の挽回に努めてまいりました。

このような経営環境のもと、当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高はPBW事業廃止等の減収要因はあったものの、為替換算の円安効果、四輪車用エンジンバルブの受注増加、コスト上昇分の販売価格反映等により、前期に比べ増収となりました。この結果、売上高514億46百万円(前期比4.0%増)となりました。

損益面につきましては、舶用部品事業における火災影響に伴う追加コスト発生や新規製品の立ち上げコスト増加等により、期初計画を下回る結果となる、営業利益15億7百万円(前期比25.5%減)、経常利益18億96百万円(前期比23.6%減)となりました。最終損益につきましては、当社堀山下工場(舶用部品工場)の火災に係る保険金を「受取保険金」として特別利益に計上する一方で、主に歯車事業に係る固定資産の将来の回収不能見込額を「減損損失」として特別損失に計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益6億30百万円(前期比4.9%増)となりました。

なお、株式の取得により株式会社恵那金属製作所(現・株式会社NITTAN恵那金属)及び同社の子会社1社を当連結会計年度より連結の範囲に含めておりますが、2024年12月31日をみなし取得日としており、当連結会計年度においては貸借対照表のみ連結しております。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、従来、「PBW」としていた報告セグメントについて、同事業を廃止したことにより重要性が乏しくなったため、「その他」に含めております。

 

(小型エンジンバルブ)

当セグメントの売上高につきましては、国内事業においては北米向け中空エンジンバルブの受注増加及び販売価格の改定等により、四輪車用エンジンバルブは前期に比べ増収となりました。二輪車用エンジンバルブは主力の北米・欧州向け製品の販売不振等の影響により、前期に比べ減収となりました。

海外事業においては、アセアン・中国の一部拠点における自動車販売不振に伴う受注減少等による減収要因はあったものの、為替換算の円安効果、北米拠点における受注増加及び販売価格の改定、欧州拠点における中空エンジンバルブの受注増加等により、前期に比べ増収となりました。

汎用エンジンバルブは、海外向け製品の生産調整及び販売不振等の影響により、前期に比べ減収となりました。

損益面につきましては、アセアン・中国の一部拠点における減収影響等による減益要因はあったものの、為替換算の円安効果に加え、国内事業における販売価格の改定や中空エンジンバルブの増収効果、北米拠点の損失幅縮小等により増益となりました。

この結果、売上高446億43百万円(前期比7.1%増)、セグメント利益(営業利益)23億54百万円(前期比29.8%増)となりました。

 

(舶用部品)

当セグメントの売上高につきましては、舶用部品の国内生産拠点である当社堀山下工場(舶用部品工場)における火災の被害により同工場の稼働及び生産への影響が生じましたが、既報のとおり2024年5月に稼働を再開しており、以降の生産・納品の挽回により、前期に比べ増収となりました。

損益面につきましては、当該火災の影響に伴う復旧費用及び生産・納品対応による外注費等の追加コストの発生等により、損失計上となりました。

この結果、売上高38億11百万円(前期比5.1%増)、セグメント損失(営業損失)4億53百万円(前期はセグメント損失(営業損失)1億69百万円)となりました。

なお、当セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高49百万円を含んでおります。

 

(歯車)

当セグメントの売上高につきましては、自動車用製品は販売価格の改定等による増収要因はあったものの海外向け製品の販売不振及び機種変更の影響等による受注減少により、前期に比べ減収となりました。産業機械用製品は販売価格の改定等による増収要因はあったものの他製品の受注減少により、前期に比べ減収となりました。

損益面につきましては、販売価格の改定等による増益要因はあったものの自動車用製品の減収影響等により損失幅が拡大しました。

この結果、売上高22億96百万円(前期比7.9%減)、セグメント損失(営業損失)2億19百万円(前期はセグメント損失(営業損失)1億9百万円)となりました。

 

(その他)

当セグメントの売上高につきましては、PBWは当事業の廃止に伴い減収となりました。バルブリフターは海外向け製品の受注減少により減収となりました。可変動弁は補用品の販売減少により減収となりました。工作機械はグループ内部での取引増加により増収となりました。ロイヤルティーはグループ内部での取引増加により増収となりました。

損益面につきましては、新規製品の立ち上げコスト増加等により、損失計上となりました。

この結果、売上高28億90百万円(前期比18.8%減)、セグメント損失(営業損失)2億39百万円(前期はセグメント利益(営業利益)2億93百万円)となりました。

なお、当セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高又は振替高21億46百万円を含んでおります。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高 (千円)

前年同期比(%)

小型エンジンバルブ

45,362,587

108.9

舶用部品

3,909,622

109.5

歯車

2,285,458

92.1

その他

2,798,182

77.8

合計

54,355,850

105.9

 

(注) 1 金額は販売価格によっております。

 

②受注実績

当社グループは、各納入先より提示された生産計画をもとに、当社グループの生産能力を勘案して生産計画を立てる方法が主体となっている事から、受注実績は生産実績に近似するため、記載を省略しております。

 

③販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

小型エンジンバルブ

44,643,982

107.1

舶用部品

3,811,141

105.1

歯車

2,296,665

92.1

その他

2,890,650

81.2

合計

53,642,439

104.4

 

(注) 1 金額は販売価格によっております。

2 セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、666億13百万円となり、前連結会計年度末と比較して36億31百万円の増加となりました。

資産の部の流動資産は、315億32百万円となり、前連結会計年度末と比較して34億13百万円の増加となりました。この主な要因は、受取手形及び売掛金が8億76百万円、商品及び製品が6億94百万円、原材料及び貯蔵品が6億26百万円増加したことなどによるものであります。

固定資産は、350億80百万円となり、前連結会計年度末と比較して2億18百万円の増加となりました。この主な要因は、建物及び構築物(純額)が10億67百万円、無形固定資産が5億59百万円、土地が3億86百万円増加した一方、投資有価証券が15億61百万円、建設仮勘定が4億39百万円減少したことなどによるものであります。

負債の部の流動負債は、162億30百万円となり、前連結会計年度末と比較して23億74百万円の増加となりました。この主な要因は、短期借入金が16億86百万円、支払手形及び買掛金が5億53百万円増加したことなどによるものであります。

固定負債は、123億36百万円となり、前連結会計年度末と比較して2億57百万円の増加となりました。この主な要因は、長期借入金が6億85百万円増加した一方、繰延税金負債が2億74百万円、退職給付に係る負債が2億67百万円減少したことなどによるものであります。

純資産の部は、380億45百万円となり、前連結会計年度末と比較して10億円の増加となりました。この主な要因は、為替換算調整勘定が9億15百万円、退職給付に係る調整累計額が5億41百万円、非支配株主持分が4億40百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が11億64百万円減少したことなどによるものであります。

なお、通貨別の為替の変動につきましては、当社の連結子会社のある国では、前連結会計年度末と比べ、インドルピーが円高に、米ドル・人民元・台湾ドル・タイバーツ・インドネシアルピア・ポーランドズロチ・ベトナムドンが円安に進みました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は92億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ、2億3百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により、43億4百万円の資金増加(前連結会計年度は、69億61百万円の資金増加)となりました。この資金増加は主に、非資金取引である減価償却費42億27百万円の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により、37億71百万円の資金減少(前連結会計年度は、33億35百万円の資金減少)となりました。この資金減少は主に、有形及び無形固定資産の取得による支出30億68百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出6億1百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により、8億64百万円の資金減少(前連結会計年度は、19億12百万円の資金減少)となりました。この資金減少は主に、非支配株主への配当金の支払額8億77百万円によるものであります。

 

資金調達の基本方針、及び資金調達手段に関して、当社は円滑な事業活動に必要な流動性及び財務健全性の確保を、資金調達の基本方針としております。これに則し、金融機関との間で長期にわたり培った良好な関係に基づき、主として本邦銀行、生保等からの7年程度の長期資金を中心とした資金調達を行っております。同時に長期資金の年度別償還額の集中等を避けることで借り換えリスクの低減を図っております。今期末において予定している次期の設備投資に関しては、自己資金、及び長期借入金による資金調達を行う予定です。

流動性の確保に関しましては、当連結会計年度における流動比率は194.3%、当座比率は113.8%となっており、十分な流動性を確保していると認識しております。

財務健全性に関しましては、当連結会計年度における自己資本比率は43.6%となり、円滑な業務遂行を維持するという点に関して、健全な範囲にあると認識しております。

 

 (4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要と考えている主なものは以下のとおりです。
 
(a) 繰延税金資産の回収可能性
 当社グループは、将来減算一時差異の解消見込額について、収益力やタックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得が十分に確保できることを前提に、繰延税金資産を慎重に計上しております。
 繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに左右されるため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の修正を行うため、将来の税金費用に影響を与える可能性があります。
 
(b) 退職給付債務及び退職給付費用の算定
 当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率等の様々な計算基礎があります。
 当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
 
(c) 減損会計における将来キャッシュ・フロー
 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、管理会計上の区分を基準として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
 固定資産の回収可能価額は、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損損失を計上し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

(提出会社)

外国との技術ライセンス契約

No.

技術供与先

所在地

契約製品

契約期間

U.S.エンジンバルブ
 (パートナーシップ)

アメリカ合衆国

小型エンジンバルブ

自 2019年1月1日

至 2028年12月31日

広州日鍛汽車部件有限公司

中華人民共和国

小型エンジンバルブ

自 2021年4月1日

至 2031年3月31日

日照日鍛汽車部件有限公司

中華人民共和国

小型エンジンバルブ

自 2020年5月8日

至 2030年5月7日

ニッタンタイランドCo.,Ltd.

タイ王国

小型エンジンバルブ

自 2022年2月1日

至 2027年1月31日

PT.フェデラルニッタン    インダストリーズ

インドネシア共和国

小型エンジンバルブ

自 2020年6月1日

至 2030年5月31日

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社中長期ビジョンとして掲げた「NITTAN Challenge 10」により、「VISIONⅠ:既存事業の飽くなき進化と競争力の強化」および「VISIONⅡ:脱炭素化社会に向けた新規事業化」の二つの柱を、市場ニーズ及び顧客戦略に合わせて展開する研究開発活動を実施しています。

当連結会計年度の研究開発活動は、既存事業として、二輪車・四輪車をはじめ、船舶用等の内燃機関の性能向上に寄与する動弁系部品を主要製品と位置づけ、地球環境保護に対するエンジンの低燃費化、排気ガス規制、及び、燃料多様化に対応した製品や、グローバル展開に繋がるコスト低減のための開発を継続しています。

新規事業としては、世の中の電動化シフトのタイミングを見ながら、当社のコア技術を活かしたものづくり開発を推進しています。また、電動アシスト自転車等に照準を当てたユニット開発なども推進しており、量産化と技術の醸成を並行して進めています。当連結会計年度における、既存のセグメントに直接関連しないこれらの新規事業等のための研究開発費の金額は14百万円であります。

なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は566百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) 小型エンジンバルブ

高効率エンジン用バルブとして次世代型冷媒封入中空バルブの開発、カーボンニュートラルに対応した水素燃料、代替燃料エンジン用バルブの顧客への提案・評価に取り組んでいます。

また、市場のEV化ニーズが高まる中、各顧客の動向は必ずしもEV化一辺倒ではなく、内燃機関の活用も見直されており、開発期間短縮を想定し、DXを意識した開発効率の改善活動を進めております。

さらに、顧客エンジン生産拠点の合理化対応に合わせ、当社グローバル複数拠点での最適化に取り組んでいます。

四輪向け・二輪向け・汎用エンジン向けを問わず、多種多様な顧客ニーズに応える体制を構築し、顧客開発期間の合理化に対応した製品開発、試作・評価への取組みを継続し、拡販活動を強化していきます。

当連結会計年度における研究開発費の金額は279百万円であります。

 

(2) 舶用部品

舶用業界各社は、電動化ではなく、GHGフリー燃料を利用した内燃機関の開発を推進しています。そのニーズに応えるべく、長寿命化技術として耐摩耗盛金材などの高付加価値製品を開発しています。また顧客の次世代エンジン開発に向けた舶用中空バルブの開発を推進しており、顧客との評価試験を推進中です。 

当連結会計年度における研究開発費の金額は85百万円であります。

 

(3) 歯車

歯車は、素材投入量の削減、使用電力削減やスクラップ削減等の観点から、更なるニアネット鍛造や金型長寿命化を見据えたものづくり開発と量産適用を継続しています。また、更なる拡販や新規市場への参入を見据え、高強度歯車の開発や熱間鍛造技術を応用した高付加価値製品の開発も推進しています。

当連結会計年度における研究開発費の金額は95百万円であります。

 

(4) その他

リフター事業では、国内外顧客向けHLA(油圧ラッシュアジャスタ)及びRRA(ローラーロッカーアーム)拡販の取組みを継続しています。また、弊社既存技術と生産設備を活用し、産機・農機等の市場に向けて、性能向上やメンテナンスサイクル延長を狙ったHLAの開発を進めています。

工作機械関連では、既存事業のエンジンバルブ外観検査機の量産化を実行しました。本技術を最適かつ安価に展開できるよう小型ユニット化を推進しております、また、AI技術を活用した流出防止や完成検査の製品番号確認装置開発への展開をおこなってます。

一方で、『NITTAN Challenge 10』の事業拡販に向けた必要な製造技術/製造設備の開発に着手し、来年度を目途に量産検証ができるよう推進しております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は91百万円であります。