当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは「お客様に喜んで頂く商品をつくり、社会に貢献する。」を経営理念に掲げております。技術革新と環境対応の両面で大きな変革期にある自動車業界において、社会的課題の解決に寄与する製品開発を進め、安全で高品質な製品を提供し続けることにより持続的な成長と価値創造を実現します。この実現のために様々な変革を実行し、社会にとって必要な企業であり続けることが株主の皆様をはじめ、当社を取り巻くすべてのステークホルダーにとって真の企業価値の向上をもたらすものと考えております。
(2)経営環境、経営戦略等
2022年4月よりスタートした「第15次中期経営計画」は、新型コロナウイルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰など様々な要因で経済の不確実性が高まり、需要の減少を補えずに売上、営業利益とも当初の目標は未達となりました。一方、国内会社の経営統合による経営効率の改善や北米事業の整理、原材料及びエネルギーコストの上昇分の販売価格への転嫁など様々な変革を実行し、より安定的に利益を稼げる構造に転換することができました。これらを踏まえ、2025年4月にスタートした第16次中期経営計画では、「コア技術・コア製品の強化」「事業基盤の変革」「新領域への挑戦」この3つを基本方針に定め、We Are One TBKをスローガンに顧客満足と価値創造でアジアのリーディングカンパニーを目指してまいります。
①コア技術・コア製品の強化
EV市場の停滞は見られるものの、環境問題への対応やカーボンニュートラルの目標達成に向けて長期的には電動化への対応は不可避です。しかし、国ごとに異なる政策や消費者のニーズに応じた柔軟な対応が求められる現状では、当社グループの主力製品であるドラムブレーキやポンプ類などのエンジン部品には、まだ多くの可能性が残されています。当社グループの強みであるこれらのコア技術・コア製品をさらに進化させ、高効率化や環境対応などの付加価値を高めた製品開発に取り組みます。また、当社グループが培ってきた保有技術、特に鋳造関連の技術に更なる磨きをかけてアルミ製品の事業を拡大します。具体的には、アルミダイカスト(ADC)やグラビティダイカスト(GDC)製品を拡充し、加えて金型を内製することで一貫生産を実現します。これらを素形材事業として再定義し、収益力の強化を図ってまいります。
②事業基盤の変革
前述の通り、素形材事業は積極的な展開を進め、付加価値の高い製品を生産してまいります。市場と生産能力の需給バランスの変化に迅速に対応するため、素形材事業部を強化しました。鋳物事業全体を対象として、変化に適応しながら最も効率的な生産体制がとれるよう最適化を図ります。また、景気低迷が続く中国では、需要に見合った生産体制の再構築を実施します。このような様々な課題に対して、グローバルで事業の変革を迅速に実行するために、責任権限を明確にした本部制度を導入しました。
③新領域への挑戦
持続的な収益向上のために新規マーケット顧客の獲得、グローバルアライアンスの強化、システム領域への挑戦を実行してまいります。第一に、新規マーケット顧客の獲得は、地域と分野の二つの面で新領域への挑戦に取り組みます。地域戦略では、ヨーロッパをはじめとした当社グループの未開拓地域において、主力事業やアフター事業での新たな販路拡大に注力します。また、分野としては、電動化、自動運転技術、環境性能などの高付加価値製品を営業戦略上の重要アイテムとして新規拡販に注力します。第二に、グローバルアライアンスの強化では、技術革新と市場の変化が著しい自動車産業において、単独で先端技術や新たなサービスへの投資を行うには限界があり、これらを持つ国内外の企業とアライアンスを組むことで市場競争力の強化を図ります。第三に、システム領域への挑戦では、電動化や自動運転技術、環境対応に訴求する高付加価値製品の開発及び製品化をさらに進め、単独の部品だけでなく総合的なソリューションを提供できるシステムサプライヤーとしての事業に挑戦してまいります。
④ESG経営の取り組み
第16次中期経営計画の基本方針を支える礎として、更なるESG経営の推進を図ります。サステナビリティ基本方針に基づきマテリアリティ(重要課題)を明確にし、アクションプランを策定したうえで実行してまいります。
E :事業を通じた社会と環境への貢献
・バリューチェーン全体で、2030年度までにCO2排出量の46%削減(国内)を目指します。
・ブレーキダストの排出を抑制する環境製品の開発に取り組みます。
S :製品品質、労働安全の維持向上
・重大品質不具合及び重篤災害発生件数ゼロを目指します。
多様性のある人材の確保・活用
・グローバル人材及び女性管理職の育成に取り組みます。
働きがいのある職場づくり
・年次有給休暇の取得率80%以上を目指します。
・健康優良法人の取り組みを推進します。
G :コーポレートガバナンスの持続的強化
・知財戦略の確立及び実行、コンプライアンスの強化に取り組みます。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
インド、タイを中心として成長を続けるアジア事業の収益強化により財務体質の健全化を推進します。
しかしながら、中国事業不振の長期化、2024年問題に起因する物流費の上昇、賃上げ実施による人件費の上昇等の課題に対し、コスト削減やサプライチェーンの全体の中で解決してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、第16次中期経営計画最終年度となる2028年3月期は、「連結営業利益率3~5%」
「ROE5.0%」を財務指標としております。
また、今中期経営計画より非財務指標についても目標設定しております。ESG経営の取り組みの中で進捗管理をしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。
当社グループは、サステナビリティを中長期的な企業価値向上の重要な要素と位置づけており、事業活動と一体となった取り組みを進めています。また、将来的にはサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月に公表したサステナビリティ開示基準等にも留意しながら、開示内容のさらなる充実を図ってまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、当社グループは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース<Task Force on Climate-related Financial Disclosures>)提言で開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つの区分に基づいて、以下の記載を行います。なお、未充足の部分については、今後継続的に拡充してまいります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティへの全社的な取り組みや推進戦略に関する立案及び推進体制を強化するため、サステナビリティ委員会を2022年7月1日付にて設置しています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、委員は経営層である地域統括、機能統括、子会社社長より主に構成されており、年4回開催され各種施策の進捗状況を定期的にモニタリングしています。
サステナビリティに関連する重要なリスクなどについては、全社リスク管理のプロセスと同様に、適宜取締役会への付議/報告を行っております。
サステナビリティ推進体制図
サステナビリティリスク対応図
②リスク管理
当社グループでは、リスク管理・コンプライアンス規則に基づき、代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。本委員会は、四半期ごとに各部門から提出されるリスク評価を基に、経営への影響度合いや期間に応じて重要リスクを特定しています。また、当社ではリスクのみならず、サステナビリティ関連の機会についても、事業環境分析を通じて識別・評価し、必要に応じて経営戦略に反映しています。さらに、リスク・コンプライアンス関連の報告をグループ会社から受け、重要な案件については取締役会での審議と決定を行います。
(2)気候変動に伴う対応
①ガバナンス
気候変動に関する具体的な分析や施策については、サステナビリティ委員会の監督の元に実施しています。また、各拠点における環境委員会が当社グループ内の各社と連携し、気候変動関連課題への対応策の推進、目標管理を行い、サステナビリティ委員会へ上申、報告を実施しています。
②戦略
当社グループは、気候変動が事業・業績に与える影響について、定性的なシナリオ分析を行いました。シナリオ分析では様々な事態を想定し備えることが重要と考え、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)及び国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)を参照し、「2℃未満」シナリオと「4℃」シナリオを用い分析を行いました。
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2℃未満シナリオ (低炭素経済へ移行するシナリオ) |
政府目標が推進され、カーボンニュートラルな世界が実現されている社会となります。国際社会や日本政府により環境対応規制が強化され、新しい技術革新が進むことで、社会や産業の構造が大きく変化していることが想定されます。 |
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4℃シナリオ (物理的気候変動リスクが高まるシナリオ) |
低炭素/脱炭素化の取り組みによる効果は限定的に留まり、気候変動の深刻化した物理的リスクが高い社会となります。自然災害が頻発することで、当社グループのサプライチェーンや生産現場に対する望ましくない影響が想定されます。 |
気候変動に関するリスクと機会は、政策や技術等による社会変化によって生じる「移行」側面と、自然災害や気温上昇などによって生じる「物理」側面を考慮しております。なお、分析の時間軸は、基本的に移行リスクは2030年、物理的リスクは2050年を基準としています。
特定した気候変動に関連するリスクと機会及び現在行っている対応策は、下表のとおりです。
特定した気候変動に関するリスクと機会
2℃未満シナリオ
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世の中の変化 |
時間軸 短期:2025 中期:2030 長期:2050 |
リスク |
機会 |
対応策 |
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政策・規制 |
炭素税・GHG排出量規制の導入 |
中期 |
・炭素税などGHG排出量に比例するコスト増加 |
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・規制に先行した排出量削減への取り組み |
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技術開発 |
内燃機関車の低燃費要請 |
中期 |
・競合企業の先行した低燃費配慮製品開発による売上減少リスク |
・顧客のニーズを充足した低燃費配慮型製品の売上拡大 |
・低燃費など、顧客ニーズに対応した製品の開発 |
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商用車のEV化 |
中期 |
・EV化の進展による内燃機関関連商材の需要減少(ウォーター/オイルポンプなど) |
・EV対応型製品のラインナップ拡充による売上拡大 |
・EV対応型製品の開発加速 |
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市場動向 |
グリッドパリティ未到達 |
中期 |
・再生可能エネルギー電力の導入(購入)による電力コストの増加 |
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・工場への太陽光発電システムの導入 ・省エネ設備導入による電力消費量削減 |
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原材料価格の高騰 |
中期 |
・金属、樹脂などの原材料単価の値上がり |
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・原材料コスト上昇分の販売価格への転嫁交渉 |
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サプライチェーンにおけるCN*要請 |
中期 |
・省エネ、再エネ設備に関する投資コストの増加 |
・顧客のScope3におけるCN*貢献による販売機会の拡大 |
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CN*:カーボンニュートラル
4℃シナリオ
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世の中の変化 |
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リスク |
機会 |
対応策 |
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物理的(慢性) |
平均気温の上昇 |
長期 |
・工場内の高温化に伴う労働生産性の低下(人件費の増加) |
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・工場における労働環境の整備(空調設備、休憩時間確保等) |
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物理的(急性) |
異常気象の激甚化 |
短期 |
・風水害の頻発化による自社拠点への被害 |
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・各拠点におけるBCPへの取り組み ・被災に対応した損害保険への加入 ・BCPリスクを考慮した複数購買の実施 |
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短期 |
・サプライチェーン分断に伴う工場の操業停止 |
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③リスク管理
気候変動に関連する重要なリスクについても、全社リスクマネジメント管理のプロセスと同様に、リスク・コンプライアンス委員会がサステナビリティ委員会と連携し、その影響度や管理状況について適宜取締役会への報告を行ってまいります。
④指標及び目標
当社国内グループにおける、GHG排出量は以下のとおりです。ESG経営への取り組みを重点目標として定め、国内では2050年のカーボンニュートラル目標を設定いたしました。今後、カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ改善活動、再生可能エネルギー導入などの取り組みを加速させていきます。また海外グループ各社については、GHG排出量の捕捉を進め、各国の目標に鑑みながら、グループ全体でのScope1,2のGHG排出量削減目標を策定中です。なお、2024年度の国内グループGHG排出量実績は21,981トンとなり、2013年度比で▲15%の削減目標を達成し、2027年度の目標である▲30%の削減も前倒しで達成しております。
さらに、当社グループ全体における、Scope3のGHG排出量計測や、特定した事業機会に関する目標の設定なども、今後具体化に向け社内での検討を続けてまいります。
(3)人的資本
①戦略
外部環境の変化に対応しながら企業価値を高めていくには、多様な価値観を持った従業員が主体性や創造性を持ち、経営Visionを実現させることが重要であると考え、それぞれのキャリア階層で求められるスキルを習得できる教育体系を整備し、個々の能力を発揮できる体制を目指します。当社が目指す人材像を「主体性・創造性・責任感・実行力を持った人材」と定め、これを実現するため、下記の3つ方針の下、人材戦略を進めていきます。
<キャリア形成に向けた計画的育成>
TBKが目指す人材像を体現するため、若年層から管理職までの各キャリア階層に求められるスキルを明確にし、従業員がそのスキルを習得できるよう計画的・体系的な教育を実施します。さらに、次世代のリーダー教育として、従業員の総合力を強化するため、多様な価値観や経験を得られるよう、人事ローテーションや国内外グループ会社への出向などを積極的に行います。
また、部門や拠点を越えた研修を通じてグループ内でのコミュニケーションを促進し、組織の活性化や新しいことにチャレンジしていく企業風土の醸成を目指します。
<グローバル人材の育成>
日本国内のみならず、海外グループ会社も含めたグローバルでの人材育成、多様な人材の活用に取り組んでいきます。さらに、グループ内での人事ローテーションや研修による人材交流を行い、多様な価値観を持った社員が個々の力を発揮し、イノベーションが生まれる環境を目指します。
<人材の多様性>
人材の多様性を尊重し、グループ全体でダイバーシティへの理解を深めるとともに、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づき女性従業員を増やし、性別等に関わらず育児・介護等を含めた多様なライフスタイルや価値観を尊重し、長く働き続けられる環境の整備に取り組みます。
これらを実現するため、当社は、働きがいのある職場づくりを目指し、従業員の健康及びワークライフバランスの推進、従業員満足度の向上に取り組みます。また、この取り組みの一環として、当社は以下のとおり「健康経営宣言」を行い、経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。
「健康経営宣言」
当社は、「持続可能な成長を通して社会に貢献する」を長期目標として掲げています。従業員の健康を促進し、また、それぞれの力を最大限に発揮できる、健康で働きがいのある職場環境を実現することが、組織の活性化及び持続的な成長につながると考えています。従業員の生活を豊かなものとするため、そして企業として成長し続けるために、従業員の健康推進を経営戦略上の重要課題と位置づけ、従業員の心と体の健康づくりを推進していきます。
②指標及び目標
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方針 |
戦略的取り組み |
指標 |
2024年度 目標値 |
2024年度 実績値 |
目標値 |
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キャリア形成に |
体系的な階層別 教育の実施 |
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100% |
100% |
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100% |
100% |
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グローバル人材 |
人事交流の促進 |
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8名 (注)2 |
9名 (注)2 |
- |
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語学スキルの向上 人事交流の促進 |
英語教育制度の導入 海外トレーニー派遣 |
- |
- |
制度導入 5名(連結) (注)3 |
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人材の多様性 |
女性活躍の推進 |
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15.0% (注)4 |
15.0% (注)4 |
- |
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管理職候補者の育成 |
- |
- |
育成計画の実行 女性役員の登用 (連結) |
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働きがいのある 職場づくり |
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80.0%以上 (14.0日) |
75.4% (12.1日) |
(14.0日) |
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25.0%以下 |
12.8% |
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(注)1.上記の戦略に関する指標、目標及び実績については、提出会社を対象範囲としているため、特段の記載がない限り連結子会社は含んでおりません。まずは提出会社において人的資本の戦略に関する取り組みを実践し、実績を積み重ね、その後、連結子会社にも同様の取り組みを展開してまいります。
2.2022~2024年度の延べ人数
3.2025~2027年度の延べ人数
4.2025年3月31日時点の人員により集計
これら、サステナビリティに関する事項の詳細につきましては、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)国内外の経済状況に関わるリスク
米国が発表した相互関税により、北米向けに輸出される当社製品を使用したすべての自動車や建設産業機、農機などはコスト増となり得る可能性があり、当社製品の利益率に影響を与える可能性があります。
当社グループの製品の需要は、国または地域の経済状況の影響を受ける可能性があるため、日本はもとよりタイ、中国、インド及びアメリカ等における景気悪化及びそれに伴う需要減少が当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
自動車業界を中心とする当社グループの取引先は、新しい市場への対応やコスト削減のために今後もますますグローバル化が進展していくものと思われます。これにより、自動車部品のコモディティ化がより一層進めば、さらなる価格競争の激化が生じ、当社グループの利益率に影響を及ぼす可能性があります。
タイにおいてはローン審査厳格化により、特に中低所得層の新車購入が難しくなり販売台数が大幅に減少しています。これが引き続き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
中国においては不動産市場の低迷や若年層の失業率は依然として高く、中国国内での需要の減少が引き続き当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2)トラック及び建設・産業機械需要の動向に関わるリスク
当社グループの国内普通トラック(積載量4トン以上)関連事業への依存度は依然として高く、また、当社製品のマーケットシェアも高いため、当社グループの業績及び財務状況は当該市場の動向に左右される可能性があります。
さらに、建設・産業機械関連事業についても、当社グループの業績及び財務状況は、インフラ整備等の公共投資、資源開発や不動産などの民間設備投資等の需要動向に大きく影響を受ける可能性があります。
(3)製品構成の変化に関わるリスク
当社グループの主要な販売先は、国内普通トラック(積載量4トン以上)メーカーの他、海外の顧客も増えてきております。これら各社の技術開発の動向や調達方針の変更、市場・業界環境の急変等が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
トラックに搭載されている当社主力製品のドラムブレーキは、日本において独自に進化したドラムブレーキの一種であり、北米やアジアなどでは従来のドラムブレーキが主力となっております。昨今、中国では、ブレーキ規制強化により、欧州で主力のディスクブレーキが一部車種に導入されつつあり、国内においても、性能面で同等の当社主力のドラムブレーキがディスクブレーキと競合するリスクが存在します。今後、国内普通トラック市場においてディスクブレーキが普及すると、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、商用車においてもバス・中小型車にEV化への動きが出てきており、当社のポンプ製品の需要が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらの変化に対応するため、2019年に韓国のSangsin Brake Co., Ltd.と技術提携契約を締結し、ディスクブレーキ化への流れにも対応しております。また、商用車のxEV(各種電動車)化に対応するため、冷却・潤滑用電動ポンプの高圧力・高効率化、サーマルマネージメント(熱コントロール)システム等の新しい製品の開発を推進しております。
(4)為替相場の変動に関するリスク
当社グループでは、タイ、中国、インドに生産拠点を有しておりますが、主に現地製造・現地販売を行っているため、輸出入に伴う為替リスクは軽微です。しかしながら、海外各国における現地通貨建ての財務諸表は連結財務諸表作成時に円換算されるため、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(5)製品の品質・安全性に関わるリスク
当社グループの製品は開発から生産まできめ細かい管理体制を敷き、品質向上及び安全性の確保に努めておりますが、予期せぬ品質不良が発生する可能性があります。このような品質不良は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループの主力製品である商用車用ブレーキは、重要保安部品に該当し、品質不良が発生すると重大事故につながり、社会的な信用を損なうリスクがあります。
これらを軽減するために、IATF16949(自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格)に準拠した体制・仕組みを構築しており、さらには、定期的に社内の品質マネジメントシステム内部監査を実施する監視体制を確立しております。製品の出荷検査は社内認定検査員が行っており、また、重要保安部品を扱う工程は、社内認定作業者が従事しております。
(6)原材料・部品等の調達に関わるリスク
当社グループの生産活動における資材、部品その他の調達品につきましては、現在その必要量が十分確保されております。しかしながら、需要増加等の要因により、資材の調達遅延や、調達不足が生じた場合には、当社グループの生産活動に影響を及ぼす可能性があります。また、市場の急激な変化に伴う、資材、部品その他の調達品の価格上昇やサプライヤーの設備事故・自然災害等による操業停止あるいは倒産等により、諸資材等の調達に支障を来たす場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、二社発注など調達先の多様化の推進や、サプライチェーン情報の定期的な把握など、リスクの低減に努めております。
(7)自然災害や事故等に関わるリスク
当社グループは、日本、タイ、中国及びインドに生産拠点を有しており、地震・台風などの大規模自然災害、感染症によるパンデミック、火災その他の事故の影響により、工場の操業度が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模災害の発生に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、迅速かつ適切に情報を伝達する緊急体制を整備し、定期的に危機対応訓練や避難訓練を行っております。また、消火設備を定期的に点検し、リスク軽減を図っております。その他、大規模災害やパンデミック対策として、テレワークや時差出勤等を整備しております。
(8)海外拠点の動向に関わるリスク
当社グループの海外拠点であるタイ、中国及びインドにおいて、法律・規制・税制等の大幅な変更、労働争議、電力等の社会インフラ面の障害、政治的不安定や戦争・テロ等による混乱、その他事故等の影響により、事業活動を停止する可能性があります。
当社グループの事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき、事業継続計画(BCP)を策定し、重要事業の継続と復旧にかかる体制整備の強化を図っております。
(9)コンプライアンス違反によるレピュテーションリスク
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、各国で適用される関連法令の遵守に努めております。また、コンプライアンス違反案件が発生した場合には、迅速に対処する体制を構築しております。しかしながら、今後コンプライアンス違反が発生しない可能性は皆無とは言えず、違反内容の重大性が大きい場合や、事後の対処方法・対処時期が的確性を欠く場合には、当社グループの社会的信用が著しく低下し、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、ガバナンスに関わる不祥事や法令違反を未然に防ぐべく、グループ会社管理体制、リスク・コンプライアンス体制及び内部通報体制を整備する等、リスクの軽減を図っております。
(10)人材の確保・育成に関わるリスク
当社グループは、企業の競争力の源泉は人材にあるとの認識のもと、グローバルにも活躍できる、より優秀な人材を安定的に確保・育成できる基盤を構築することが重要であると認識しております。しかし、今後の人材獲得競争の一層の激化や従業員の高齢化により、当社グループ内の人材確保・育成・技能伝承が遅れた場合には、将来的な事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
その対策として、働きがいのある職場づくりを目指し、従業員の健康及びワークライフバランスの推進、従業員満足度の向上や報酬制度の整備に取り組んでおります。また、従業員のキャリア形成に向け、計画的な育成を進めています。
(11)気候変動によるリスク
当社グループは、経営理念に基づいた事業活動を通じてサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)に取り組むことで持続可能な社会の実現に寄与し、企業価値の向上を目指します。しかしながら、世界的な気候変動による事業活動や地球環境の変化及び温室効果ガス排出削減のための法的な規制強化などにより、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動から生じた重大災害によって、当社グループ及びサプライチェーンの拠点・設備・システム等が被害を受けた場合、営業・生産活動に支障をきたし、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、事業を通じた環境保全活動の一環として、日本におけるCO2排出量を2030年までに2013年度比で46%削減することを目標に定め、その削減に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(財政状態の状況)
総資産については、前年度末比6.0%減の53,125百万円(前連結会計年度末は、56,536百万円)となり3,411百万円減少いたしました。この主な要因は、前年度末に比べ、現金及び預金の減少130百万円、売掛金の減少892百万円、棚卸資産の減少1,131百万円、有形固定資産の減少538百万円及び出資金の減少401百万円を加味したことによるものであります。
負債については、前年度末比11.6%減の24,013百万円(前連結会計年度末は、27,178百万円)となり3,165百万円減少いたしました。この主な要因は、前年度末に比べ、支払手形及び買掛金の減少1,033百万円、電子記録債務の減少399百万円、短期借入金の減少1,007百万円及び設備関係支払手形の減少252百万円を加味したことによるものであります。
純資産については、前年度末比0.8%減の29,112百万円(前連結会計年度末は、29,358百万円)となり245百万円減少いたしました。この主な要因は、為替換算調整勘定の増加814百万円及び退職給付に関わる調整累計額の増加317百万円に、親会社株主に帰属する当期純損失計上等に伴う利益剰余金の減少1,460百万円を加味したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末50.6%から53.2%となりました。
(経営成績の状況)
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善から個人消費の回復が見られましたが、年度後半では円安や人手不足、輸出の落ち込みの影響から個人消費の伸びは減速し、低成長にとどまりました。また、米国経済政策の動向や中国経済の停滞、ロシアのウクライナ侵攻、中東情勢等により先行き不透明な状況が続いております。
当社グループの関連するトラック製造業界は、部品供給の改善等に伴い生産台数が回復したことにより、普通トラック(積載量4トン以上)の国内登録台数は、74,563台と前年度比10.3%の増加となりました。一方、タイを中心としたアセアン諸国では、金融機関のローン審査厳格化の影響が続き、新車販売台数は伸び悩んでいます。また、中国においても経済の低迷が続き、企業の投資意欲の回復には時間を要する見通しです。
このような状況のもと、当社グループの当連結会計年度における売上高は54,415百万円(前年度比4.0%減)となりました。損益面におきましては、営業利益は941百万円(前年度比4.2%増)、出資先の業績悪化に伴い持分法による投資損失481百万円を計上したことにより経常利益は309百万円(前年度比63.3%減)、海外連結子会社である TBK America, Inc.を解散及び清算することに伴い減損損失333百万円及び事業再編損775百万円、当社においても特別損失に固定資産の減損損失126百万円、持分法適用関連会社の株式一部譲渡による関係会社出資金売却損失引当金繰入36百万円を計上したことにより親会社株主に帰属する当期純損失1,204百万円(前年度は親会社株主に帰属する当期純利益332百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
日本における売上高は、29,848百万円(前年度比4.5%減)、営業利益は、154百万円(前年度比1.3%増)となりました。収益体質の改善のため、原材料・エネルギー価格高騰によるコスト上昇分の販売価格への転嫁に注力しましたが、アセアン向け輸出が低調であったため減収となり、営業利益は前年並みにとどまりました。
アジアにおける売上高は、18,665百万円(前年度比5.7%減)、営業利益は、946百万円(前年度比5.6%減)となりました。タイにおいては、金融機関のローン審査厳格化と経済の低迷が続いたことによる需要減少の影響が大きく、新規商権の獲得により売上を確保したものの、減収減益となりました。インドにおいては、堅調な経済成長に加え、当社の北米子会社からの生産移管が順調に進み増収増益となりました。
中国における売上高は、5,109百万円(前年度比13.7%減)、営業損失は、107百万円(前年度は営業損失69百万円)となりました。当社グループの製品が強みを持つ中国国内向けの大型トラックの需要は引き続き低迷しました。これに対し、製造ラインの省人化や材料費低減などの対策を講じましたが、減収減益となりました。
北米における売上高は、4,371百万円(前年度比4.6%増)、営業利益は、16百万円(前年度は営業損失34百万円)となりました。生産の最適化を目的として、2024年9月に北米での生産を終了し、主力製品の生産はインド子会社へ移管しました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,123百万円となりました。なお、当連結会計年度における連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、3,894百万円(前年度は3,163百万円の収入)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純損失917百万円に減価償却費3,168百万円、仕入債務の減少1,754百万円及び売上債権の減少1,153百万円を加味したことによるものであります。
(投資活動におけるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、2,323百万円(前年度は2,521百万円の使用)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出2,409百万円によるものであります。
(財務活動におけるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、1,885百万円(前年度は372百万円の使用)となりました。この主な要因は、短期借入金及び長期借入金の有利子負債が合計で1,568百万円減少したことと配当金の支払額254百万円によるものであります。
(キャッシュ・フローの指標)
|
|
第85期 2021年3月 |
第86期 2022年3月 |
第87期 2023年3月 |
第88期 2024年3月 |
第89期 2025年3月 |
|
自己資本比率(%) |
52.7 |
55.4 |
51.6 |
50.6 |
53.2 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
26.0 |
20.9 |
15.2 |
19.0 |
15.9 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.5 |
1.7 |
3.5 |
2.9 |
2.0 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
31.2 |
31.4 |
12.5 |
10.7 |
14.6 |
(注)上記各指標の算式は次のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー / 利払い
③生産、受注及び販売の実績
イ 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年度比(%) |
|
|
日本 |
ブレーキ(百万円) |
10,618 |
△26.1 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
13,584 |
△21.4 |
|
|
アジア |
ブレーキ(百万円) |
3,964 |
6.6 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
17,727 |
12.1 |
|
|
中国 |
ブレーキ(百万円) |
2,439 |
19.9 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
100 |
△22.6 |
|
|
北米 |
ブレーキ(百万円) |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
4,302 |
0.5 |
|
|
合計(百万円) |
52,738 |
△8.5 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
ロ 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||||
|
受注高 (百万円) |
前年度比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年度比(%) |
||
|
日本 |
ブレーキ |
13,911 |
△7.5 |
1,035 |
4.6 |
|
エンジンコンポーネント他 |
15,432 |
11.9 |
952 |
5.0 |
|
|
アジア |
ブレーキ |
3,210 |
6.6 |
448 |
6.6 |
|
エンジンコンポーネント他 |
17,108 |
12.3 |
1,147 |
6.6 |
|
|
中国 |
ブレーキ |
3,590 |
23.1 |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他 |
120 |
△15.7 |
20 |
48.7 |
|
|
北米 |
ブレーキ |
- |
- |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他 |
4,354 |
4.8 |
- |
- |
|
|
合計 |
57,728 |
6.3 |
3,605 |
5.8 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
ハ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年度比(%) |
|
|
日本 |
ブレーキ(百万円) |
13,602 |
△8.3 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
15,103 |
1.5 |
|
|
アジア |
ブレーキ(百万円) |
2,041 |
△41.4 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
15,978 |
1.4 |
|
|
中国 |
ブレーキ(百万円) |
3,219 |
5.2 |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
126 |
△72.3 |
|
|
北米 |
ブレーキ(百万円) |
- |
- |
|
エンジンコンポーネント他(百万円) |
4,344 |
4.1 |
|
|
合計(百万円) |
54,415 |
△4.0 |
|
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.自動車部品等製造事業はブレーキ、エンジンコンポーネント他で構成されており、これらの業務の意思決定は地域別に一括して決定しております。
3.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
4.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 自 2023年4月1日 至 2024年3月31日 |
当連結会計年度 自 2024年4月1日 至 2025年3月31日 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
いすゞ自動車株式会社 |
10,002 |
17.7 |
10,329 |
19.0 |
|
三菱ふそうトラック・バス 株式会社 |
5,158 |
9.1 |
3,584 |
6.6 |
|
日野自動車株式会社 |
2,249 |
4.0 |
2,006 |
3.7 |
|
株式会社小松製作所 |
1,768 |
3.1 |
1,848 |
3.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、日本セグメントでは、納入先のアセアン向け輸出が低調であったため減収となりましたが、収益体質の改善のため、原材料・エネルギー価格高騰によるコスト上昇分の販売価格への転嫁に注力した結果、営業利益は微増となりました。アジアセグメントでは、タイにおいては、金融機関のローン審査厳格化と経済の低迷が続いたことによる需要減少の影響が大きく、新規商権の獲得により売上を確保したものの、減収減益となりました。インドにおいては、堅調な経済成長に加え、当社の北米子会社からの生産移管が順調に進み増収増益となりました。中国セグメントでは、当社グループの製品が強みを持つ中国国内向けの大型トラックの需要は引き続き低迷しました。これに対し、製造ラインの省人化や材料費低減などの対策を講じましたが、減収減益となりました。北米セグメントでは、生産の最適化を目的として、2024年9月に北米での生産を終了し、主力製品の生産はインド子会社へ移管しました。
ブレーキ部門の売上高は、前連結会計年度に比べて2,517百万円減(前年度比11.8%減)の18,863百万円となり、エンジンコンポーネント他部門の売上高は、前連結会計年度に比べて274百万円増(前年度比0.8%増)の35,552百万円となりました。
主な販売先別の状況につきましては、いすゞ自動車株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて326百万円増(前年度比3.3%増)の10,329百万円、三菱ふそうトラック・バス株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて1,573百万円減(前年度比30.5%減)の3,584百万円、日野自動車株式会社に対する売上が、前連結会計年度に比べて243百万円減(前年度比10.8%減)の2,006百万円、株式会社小松製作所に対する売上が、前連結会計年度に比べて80百万円増(前年度比4.5%増)の1,848百万円となりました。
売上原価につきましては、前連結会計年度に比べて2,053百万円減(前年度比4.1%減)の48,625百万円となり、売上高に占める売上原価の割合は、前連結会計年度に比べて0.1%減の89.4%となりました。その要因として、材料市況高騰による材料費の増加・原油価格高騰に起因するエネルギーコストの上昇による動力費の増加分を販売価格に転嫁したことによるものであります。
販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べて228百万円減(前年度比4.5%減)の4,849百万円となりました。減少の主な要因は、TBK America, Inc.の清算に伴う弁護士費用を始めとした支払手数料等の費用減少によるものであります。
営業外損益につきましては、632百万円の損失(前年度は61百万円の損失)となりました。損失の主な要因は持分法による投資損失及び為替差損の増加によるものであります。
特別損益につきましては、1,226百万円の損失(前年度は324百万円の利益)となりました。これは、固定資産の減損損失及び北米事業の事業再編損が主な要因であります。
税金費用につきましては、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額などを加えた金額は、前連結会計年度では765百万円の費用となっておりましたが、当連結会計年度におきましては182百万円の費用となりました。これは、法人税、住民税及び事業税として317百万円を計上する一方で、繰延税金資産を計上したことによる法人税等調整額として135百万円の利益を計上したことによるものであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料の購入費用及び製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は7,954百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,123百万円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(固定資産の減損処理)
減損損失の認識に際して用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2025年3月期の第15次中期経営計画最終年度の期初時点においては、「連結売上高540億円」、「連結営業利益10億円」、「連結営業利益率1.9%」、「ROE1.4%」を目標財務指標として掲げておりました。目標財務指標に対して、連結売上高の実績は544億円となり達成、総原価活動は進めておりましたが、連結営業利益の実績は941百万円、連結営業利益率は1.7%となり未達、ROEに関しましても、TBK America, Inc.の生産停止に伴い特別損失を計上したことにより▲4.2%となり、未達となりました。
当社グループは、2025年4月を期初とした第16次中期経営計画(2025~2027年度)を策定いたしました。
1.中期経営計画の概要
当社グループは、2030年に目指す姿を「VISION 2030」として「時代の変化に合った価値をスピーディーに創造する企業」としております。
当社グループは、「VISION 2030」の実現に向けて、2030年からのバックキャストに基づき、3年ごとの中期経営計画を3つの段階で設定し、活動を推進しております。この度策定した「第16次中期経営計画(2025年~2027年)」は、「VISION 2030」に向けた第2次中期経営計画として、これまでの活動で得られた新たな技術や知見に基づき、保有しているコア技術・コア製品に更に磨きを掛け、新領域への挑戦を推進することで「イノベーションで未来を切り拓く」ことをテーマとして活動してまいります。
2.財務指標
|
評価指標 |
2027年度目標 |
|
営業利益率 |
3~5% |
|
ROE |
5% |
なお、2026年3月期、第16次中期経営計画の初年度は、売上高520億円、営業利益11億円、経常利益10億円、親会社株主に帰属する当期純利益6億円を目標としております。
(1)技術提携契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
エアディスクブレーキ |
エアディスクブレーキの共同開発に関する技術提携 |
2019年4月3日 発効日より10年 |
(注)ロイヤリティの支払いについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を支払う契約となっております。
(2)技術援助等を与えている契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
当社 |
TBKK(Thailand) |
タイ |
自動車用ブレーキ、カムシャフト、オイルポンプ、ウォーターポンプ、その他エンジン部品 |
1 工業所有権の実施権の設定 2 技術情報の提供 3 製造権及び販売権の許諾 |
2015年6月23日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
大型車両用ブレーキ |
-同上- |
1994年1月14日 量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Full Win Developments Ltd. (注)2 |
中国 |
ブレーキライニング |
-同上- |
2002年8月1日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Changchun TBK |
中国 |
商用車用ブレーキ摩擦材 |
-同上- |
2016年7月25日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
TBK America, |
米国 |
自動車用ウォーターポンプ、オイルポンプ |
-同上- |
2006年11月15日 頭金支払い後10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
電磁式リターダ |
-同上- |
2010年9月30日 販売開始日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
TBK India |
インド |
自動車用ウォーターポンプ、オイルポンプ |
-同上- |
2011年6月28日 新製品量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Changchun FAWSN (注)2 |
中国 |
商用車用ブレーキ |
-同上- |
2012年7月5日 量産時より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Sangsin Brake |
韓国 |
自己発電型リターダ |
-同上- |
2014年4月30日 発効日より10年 以後1年ずつ自動更新 |
|
当社 |
Hindustan Composites Limited (注)2 |
インド |
商用車用ブレーキ摩擦材 |
-同上- |
2017年8月31日 発効日より7年 以後2年ずつ自動更新 |
(注)1.ロイヤリティの受取りについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を受け取っております。
2.ロイヤリティの受取りについては、対象品目に応じて純売上高の一定率を受け取る契約となっております。
当社グループの研究開発活動は環境と安全、省資源・省エネルギーを追求することを重点に自動車用・建設機械用のブレーキとポンプの先端技術の開発と将来の柱となるべき商品の開発を、セグメント別では「日本」及び「アジア」において行っております。
現在、研究開発は、当社の第一、第二、新製品開発部、実験部及び事業戦略部により推進されており、研究スタッフは88名で、グループ総従業員の約4.7%が従事しております。当連結会計年度の研究開発費総額は
①ブレーキ部門
国内商用車メーカー全社に採用されました当社ドラムブレーキは大幅に軽量・低コスト化し、次世代モデルとして展開拡大を図っております。また、ディスクブレーキは次期ブレーキの1つとして開発を進めており、当社独自開発のパッド、ロータを含めて信頼性の高い商品をご提供できる様に開発を進めております。新興国向けのドラムブレーキも構造合理化を行い、幅広いニーズに対応できる様、開発を進めております。
さらに、安全性向上、環境対応、省エネルギー対応を主眼とした研究・開発に注力し、将来への継承技術を蓄えております。ブレーキ部門における当連結会計年度の研究開発費総額は468百万円であります。
②エンジンコンポーネント他部門
小型、中型、大型トラック・バス用エンジンのウォーターポンプとオイルポンプは、多くの国内外の得意先の性能向上、信頼性向上及び原価低減の要求に対応し、商品の改良・開発を推進し実績をあげております。
また、建機・産機向けOEMエンジンにおいても、欧州 排ガス規制Stage 5への対応を完了し、アジア圏の排ガス規制 中国4次(GB4)、インド5次(BS5)に向けた製品の開発を進めております。
さらに、海外メーカー向けに新規にウォーターポンプとオイルポンプの受注を獲得し、開発を進めております。
また、電動ポンプについても量産化しており、カーボンニュートラルへの取り組みとして新しい用途の要求に対し研究開発を推進しております。
また、これら技術を中心とした商用車向けサーマルマネジメントシステムの開発も進めております。
その他については、リターダは、サスティナブルの観点からのブレーキ摩耗紛抑制対応と、安全性の観点からの補助ブレーキとして中型・大型トラック用に採用いただいております。
さらに、FC商用車に適した補助ブレーキとして小型トラック用に採用をいただいており、さらに拡販を進めてまいります。
リターダ技術を進化させ、回生技術を取り込んだ自己発電型リターダ、その技術にインバータと燃費およびバッテリー制御を取り込み駆動力のアシストを付加した“エンジンアシストシステム(マイルドハイブリッドシステム)”の開発を進め、商用車・建産機のエンジンの燃費向上や出力向上に貢献する商品として、拡販を進めてまいります。
その設計・評価技術ノウハウを活用してe-Axleの開発にも取り組んでいます。
さらに、大型商用車のエアブレーキを扱っているがゆえにわかるエアマネージメントノウハウを活用した電動エアコンプレッサーの開発にも取り組んでいます。エンジンコンポーネント他部門における当連結会計年度の研究開発費総額は721百万円であります。このうち、新商品の開発に係る金額は143百万円であります。