第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、経営方針として『グローバル企業として成長・進化し、持続可能な社会の実現に貢献する(サステナビリティ)』を掲げています。また、「喜びの創造(お客様の喜び、社会の喜び、私たちの喜び)」という企業理念を実践し、経営方針・長期ビジョン・連結中期経営計画を実現する為の大事な基盤である7つの柱(7 Values:「安全最優先」「最高品質」「納期厳守」「競争力あるものづくり」「スピード」「働いてよかったと思える会社」「ESG重視(環境・社会的課題・経営管理体制)」)のもと、お客様に満足していただける商品をグローバルに提供していくことを目指しております。

 

(2) 経営環境および優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 地政学リスクの高まりや、米国の関税政策の変更など世の中は急激に変化しており、自動車業界においても100年に1度の大変革期は続いております。

 一方、地球温暖化防止や国内における少子高齢化に伴う労働力人口の減少等への対応は引き続き重要な課題です。当社ではPEST分析手法を用いて未来予測を行い、リスクと機会を特定の上、当社グループの優先取組課題(マテリアリティ)を洗い出し、同課題解決に向けた長期ビジョン(2050年度までに実現を目指す姿)を策定しています。

 

優先取組課題(マテリアリティ)

長期ビジョン(2050年度までに実現を目指す姿)

地球温暖化防止

環境順法・コンプライアンス

サーキュラーエコノミー

脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献する

<企業理念:社会の喜び>

動力を効率的に伝達する新たな製品の提供

技術革新による新たな価値の提供

新たな価値を創造し提供する

<企業理念:お客様の喜び>

働いてよかったと思える会社の実現

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

健康/労働安全衛生

人権の尊重

ときめきと情熱を感じられる魅力的な会社になる

<企業理念:私たちの喜び>

コンプライアンス

ガバナンス

持続可能な調達

強固なガバナンスを基盤として安定した経営体制を維持する

 

 長期ビジョンの実現に向けた具体的な取組みとして、2024年4月に当社グループの中長期戦略を策定し、事業戦略上のKPI(2030年度目標)を定めるとともに、下記の事業戦略の骨子を定めました

 

事業戦略の骨子

主な取り組み

事業ポートフォリオの転換

現行ビジネスにおける稼ぐ力を改善し、新事業の創出に人財&資金を集中投入

現行ビジネスの収益力の確保・向上

MT    :新興国の補修部品市場の開拓、製品ラインの拡充等による収益性の更なる向上

AT・TS :生産体制の最適化を含めた効率経営の追求

2輪    :インドをはじめ、新興国市場における需要拡大を取り込む

新事業の創出・育成

協業等により不足資源を外部から獲得し電動化戦略を加速

プロジェクトへの経営資源の優先投入、早期実現

さらなる新事業の創出

 

 

 

 

 

 また、2030年度を見据え、2026年度までの中期経営計画「変革/REVOLUTION 2026」を策定しました。当該中期経営計画においては以下のような中期課題があると認識しており、同課題解決に向け、2025年4月1日付で機構改革を実施いたしました。

 既存事業の効率運営を実現するため、開発本部及び生産技術本部の既存事業部門、MT製造本部・TS製造本部・AT製造本部を統合した基幹事業本部を新設いたしました。また、新事業の早期育成と更なる新事業の創出の実現に向け、戦略事業本部を新設し、新規事業関連部門を新設・統合いたしました。2025年4月から新体制にて現行ビジネスの収益力の確保・向上と、新事業の創出・育成を急ぐべく、下記施策を推進してまいります。

 

中期課題

中期施策

内燃機関車減少によるAT事業における需要減少

BEVやHEVへの需要シフト対応

現行ビジネスの増減産への効率的な対応

・AT事業において日・中・米・メキシコ・タイのグローバルベースで生産能力の再編を継続

・新興国の補修部品市場(アフター)の開拓、製品ラインの拡充等による収益性の更なる向上

新事業の創出及びそのための更なる体制整備

・協業等により不足資源を外部から獲得し電動化戦略を加速

・プロジェクトへの経営資源の優先投入、早期実現

・専任部署を設置し、M&Aの積極活用等によるさらなる新事業の創出

最適なキャッシュアロケーション

・成長投資と株主還元を積極的に実行しつつ、最適な資本構成を追求・維持

カーボンニュートラルに向けたCO2排出量削減、

環境負荷の最小化

省エネ・再エネ・環境負荷低減活動の推進

新たな価値を創造する人財の育成

DX人財、電動関連、新規ビジネス創出等 価値創造に資する研修の継続実施

ダイバーシティ&働き方改革の推進

多様な従業員が働きがい(エンゲージメント)を感じる職場づくり

 

 以上の中期課題への取組みに加えて、財務・非財務取組みの開示充実による資本コスト低減を進め、結果としての企業価値向上を目指してまいります。

 なお、各セグメントにおける課題は下記のとおりです。

・MT(手動変速装置関連事業)

 補修用部品についても世界11ヶ国・14社の販売会社を通じたグローバル販売網と、独自の受発注システム(EXEDY Express Delivery)の構築による即納体制を活かし、重点市場において積極的な販売拡大活動を行うとともに、製品ラインの拡充等による収益性の更なる向上に取り組んでまいります。

・AT(自動変速装置関連事業)

 事業環境の変化に合わせ、グローバルベースでの生産能力再編を引き続き進めてまいります。また適切な売価設定を通じ採算性向上に取り組んでまいります。

・TS(産業機械用駆動伝動装置事業)

 建設機械、フォークリフト向け製品分野では、コスト競争力強化により収益力確保を目指してまいります。

・その他

 2輪用クラッチでは、インド及びアセアン市場向けに開発機能を充実させ、現地調達化をはじめとしたコスト競争力強化による収益力確保を目指すほか、プロジェクト化した新規事業の収益化に取り組んでまいります。

 

(3) 目標とする経営指標

 当社グループでは、2030年度の目標とする、主たる経営指標はROE8%としております。(売上高3,300億円、営業利益300億円、新製品売上高比率30%)またROEについては2026年度で6.7%を目標としております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社は外部環境の変化等を踏まえ、2021年にサステナビリティ宣言及び長期ビジョンを策定・発表しました。サステナビリティ宣言は、持続可能な社会の実現及び当社の持続的成長に向けた活動(サステナビリティ活動)に取り組んでいくことを宣言したものです。長期ビジョンは企業理念に基づき、当社が2050年度までに目指す姿を明文化したものです。同ビジョンに掲げている通り、当社は社会の喜びとして「脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献する」、お客様の喜びとして「お客様に新たな価値を創造し提供する」、私たちの喜びとして「ときめきと情熱を感じられる魅力的な会社になる」、それらを支える経営基盤として「強固なガバナンスを基盤として安定した経営を維持する」ことを目指していきます。

 

(1)ガバナンス

 当社はサステナビリティを経営方針化しており、事業環境認識及び企業理念を踏まえ、取締役会で審議の上、長期ビジョン、同ビジョンに対する重要経営指標(KPI)、2030年度・2050年度目標を設定しています。

また、長期ビジョン及びKPI達成に向けたサステナビリティ活動計画の策定、進捗管理等を行う会議体としてはサステナビリティ会議を設置しています。同会議の議長は代表取締役社長が務め、全執行役員(含む、海外駐在)及び常勤監査役が出席し、年2回開催しています。同会議では中長期目標の策定や法規制・利害関係者のニーズ等から必要とされる対応について審議・決定を行い、事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件については経営会議や取締役会で審議しています。加えて、サステナビリティ活動を推進する実働部隊としてサステナビリティワーキンググループを組成しております。同グループの議長は代表取締役専務執行役員が務め、構成員は各本部から選出されており、全社横断で同活動を推進しています。

 

(2)リスク管理

 地球温暖化の防止に対する国際協調の加速、新興国経済の伸長、少子高齢化に伴う労働力人口の減少等、世の中は急激に変化しています。また、自動車業界においてもIoT やAI の進化に伴うCASE の進展により、100 年に1 度の大変革期を迎えています。

 当社では(1)ガバナンスにおいて記載の事業環境認識として、PEST 分析手法を用いて未来予測を行い、サステナビリティ関連のリスクと機会を特定及び評価の上、事業に与える影響度が大きいと考えるものを優先取組課題(マテリアリティ)に選定しています。また、優先取組課題の解決のために設定された長期ビジョン及びKPI達成に向けたサステナビリティ活動の進捗状況については、サステナビリティ会議にて管理しております。

 

 

 

Politics(政治)

Economy(経済)

Society(社会)

Technology(技術)

未来予測

・地球温暖化防止に対する国際協調の加速

・温室効果ガス排出に対する政府規制の強化

・米中貿易摩擦の激化

・サプライチェーンにおける人権・環境問題への取組強化に係る法律の策定

・新興国経済の伸長、世界の更なる多様化

・カーシェア等、自動車所有形態の変化

・ESG を意識した投資の拡大

・世界的な少子高齢化に伴う労働年齢人口の減少

・ダイバーシティの進展

・AI、ロボット等による労働代替の進展、労働観の変革

・企業へのガバナンス強化要請の高まり

・新技術(IoT、AI 等)における技術革新、及び社会への実装

・コネクテッド技術の加速

・電気自動車を含めた充電&蓄電技術の進化

リスク

・内燃機関車の販売停止による売上減少

・再エネ導入に伴う直接費の増加

・人権、環境問題への対応不足による顧客や投資家の喪失

・シェアリング経済への移行による自動車販売の減少

・ESG 取組の欠如に伴うダイベストメント

・労働力の不足

・ダイバーシティへの対応不足による離職率の悪化

・ガバナンスの欠如に伴う経営悪化

・内燃機関車から電気自動車へのシフトに伴う売上減少

機会

・BEV&HEV向け製品の需要増に伴う売上増加

・省エネ製品ニーズの更なる高まり

・新興国市場の拡大に伴う売上増加

・人材の多様化による技術革新創出

・企業統治の強化による強固な経営基盤の構築

・技術革新を通じた新製品の開発による売上増加

優先取組課題

(マテリアリティ)

・地球温暖化防止

・人権の尊重

・環境順法・コンプライアンス

・持続可能な調達

・動力を効率的に伝達する新たな製品の提供

・サーキュラーエコノミー

・働いてよかったと思える会社の実現

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・ガバナンス

・コンプライアンス

・健康 / 労働安全衛生

・技術革新による新たな価値の提供

 

なお、優先取組課題に対応する長期ビジョン及びKPIについては統合報告書2024 24~25ページをご覧ください。

https://www.exedy.com/ja/assets/pdf/stockholder/Report2024.pdf

 

(3)戦略

 当社では、上述の通り、世界的なカーボンニュートラルの流れ、BEV化の進展、内燃機関車向けビジネスの縮小を影響度の大きなリスクと機会に特定の上、経営戦略等に与える影響度が特に大きな優先取組課題を「地球温暖化防止」と認識しております。こうした認識の下、経営会議及び取締役会にて審議し、2024年4月に中長期戦略及び中期経営計画「変革/REVOLUTION2026」を策定・公表しました。

 中長期戦略は事業戦略・財務戦略・ESG戦略から構成されており、2030年度に向けた事業戦略の骨子は事業ポートフォリオの転換となっております。現行ビジネスにおける稼ぐ力を改善し、新事業創出に人財&資金を集中投入していく戦略であり、2030年度目標はROE8%、売上高3,300億円、営業利益300億円、新製品売上高比率30%となっております。

 中期経営計画「変革/REVOLUTION2026」は2030年度を見据えた2026年度迄の中期計画であり、同3年間で時間軸・取り組み方法・ビジネスモデル等を変革する計画です。本計画における事業戦略の骨子は①痛みを伴う構造改革、②生産体制の最適化、③新事業の創出・育成であり、③については更に加速させるべく、プロジェクト制の導入、インド&英国へのR&Dセンターの設置、シリコンバレーオフィスの増員を実施しております。また、ESG戦略の骨子は外部評価機関からの評価向上活動を通じたサステナビリティ活動の推進であり、その推進部署としてESG・IR推進部を2024年4月に新設しております。

 

 

また、当社では「働いてよかったと思える会社の実現」「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を優先取組課題に掲げ、人的資本の強化も重要な課題と認識しております。人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については以下の通りです。

当社は培ってきたコア技術を更に研鑽しつつ、電動化製品等の新たな製品を創出し、グローバル企業として成長

し続けるために、人財育成に力を入れています。従業員に学びの機会を提供すべく、一人当り年間研修時間を KPI

に設定し、2030 年度に向けて大幅に伸ばす計画を策定しています。当社の持続的成長に貢献する人財の育成を目

指し、各階層や目的を考慮した階層別教育・研修プログラムを整備しています。

 当社の人財育成の取り組みについては、統合報告書2024 50~53ページをご覧下さい。

https://www.exedy.com/ja/assets/pdf/stockholder/Report2024.pdf

また、当社はグローバルに拠点展開しており、働く仲間は多様です。その多様性を活かし、新たな価値を創造す

べく、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、社内環境の整備を進めています。女性活躍の推進について

は、管理職における女性比率をKPIに設定の上、女性従業員向けに3段階の育成研修コースを設け、対象者のキャ

リアプランの実現を支援しています。ワークライフバランスの実現については、総労働時間及び有給休暇取得率を

KPI に設定の上、休暇制度の見直しや休暇を取り易い体制づくりを推進しています。更に、在宅勤務・フレックス

タイム勤務・勤務時間限定制度等、勤務制度を拡充することにより、多様な人財がその能力を最大限に発揮できる

よう、社内環境の改善を進めています。

 当社のダイバーシティ&インクルージョンの推進(社内環境整備)の取り組みについては、統合報告書2024 50~53ページをご覧下さい。

https://www.exedy.com/ja/assets/pdf/stockholder/Report2024.pdf

(4)指標及び目標

 当社では(2)リスク管理に記載の通り、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する重要経営指標(KPI)と目標を設定し、サステナビリティ会議において活動計画の策定、進捗管理を行っています。

  当社では2050 年度迄のカーボンニュートラル達成に向けた活動を進めており、本KPIの内、「NETGHG(温室効果ガス)排出量削減率」を重要なものと位置付けており、その目標と実績は以下の通りです。

指標

目標

実績

(2023年度)

実績

(2024年度)

NET GHG 排出量削減率

スコープ 1(直接排出)

+ 2(間接排出:電気等)

2030 年度 △ 46%

< 2019 年度比>

2050 年度 △ 100%

<同上>

削減率 △ 20.3%

< 2019 年度比>

排出量(千 t-CO2)

スコープ 1: 31.3

スコープ 2:164.5

削減率 △ 32.0%

< 2019 年度比>

排出量(千 t-CO2)

スコープ 1: 28.7

スコープ 2:138.2

 

 また、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については以下の指標を用いており、それら指標に対する目標及び実績は下記の通りです。尚、当社では取締役会における多様性の推進についてもKPIを設定しております。

 

指標

目標

実績

(2024年度)

人財育成(研修時間/人/年)

2030年度 48時間

2050年度 同上

38.9時間

総労働時間

2030年度 1,900時間以下

2050年度 同上

1,940.1時間

有給休暇取得率

()内は全取得人数割合

2030年度 100%

2050年度 同上

93.8%(44.1%)

管理職における女性の比率

2030 年度  7.0%

2050 年度 13.9%

4.0%

女性・外国人取締役

2030 年度 2

2050 年度 3名

2

 

 上記を含めた各KPIの詳細については「https://www.exedy.com/ja/csr/activity.html」において公開し実績は適宜更新しています。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであるため、不確実性を内在しており、実際の結果と異なる可能性を含んでおります。

(1) 自動車メーカーの生産動向の影響について

 当社グループは、自動車用伝導装置(MT及びAT)の製造販売を主な事業としており、自動車用伝導装置事業の外部顧客への売上高の連結売上収益に占める割合は、2025年3月期で88.4%と高い割合となっております。

 従って、自動車の電動化の進展や主要な顧客である自動車メーカー全般の生産動向及び販売動向の影響を受け、特に自動変速装置関連事業(AT)は縮小する蓋然性が高い状況にあります。

 また、当社は技術動向、市場の変化を注視し、環境変化に適応した製品開発を進めておりますが、市場ニーズを捉えた電動化への対応が遅れる場合、売上高が減少する等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 海外展開について

 当社グループは、自動車メーカーの世界最適調達方針に応じ、現地生産への対応を進めております。2025年3月期における所在地別の概況は次のとおりであります。

 

日本

米州

アジア・

オセアニア

その他

消去又

は全社

連結

売上収益(百万円)

123,589

56,706

116,959

12,309

309,564

構成比(%)

39.9

18.3

37.8

4.0

100.0

営業利益(損失)(百万円)

10,401

△1,446

12,014

774

103

21,845

 

 当社グループの海外展開において、アジア・オセアニアは、自動車生産台数が大きく伸びる可能性のある有望なマーケットであり、今後、積極的に事業展開を行う方針ではありますが、それらの地域の政治動向及び金融情勢の変化に伴うマーケットの変動が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替リスクについて

当社グループは、全世界において製品の生産と販売を行っております。海外各国における収益、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成時に円換算されていますが、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動がなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループの業績及び財政状態は、為替変動による影響を受け変動する可能性を含んでおります。

 

(4) 原材料・部品の調達リスク

 当社グループの製品は、原材料の大部分と一部の部品をグループ外部より調達しております。調達先と安定的な取引が行えるよう努めておりますが、価格高騰や需給逼迫、調達先の不慮の事故等により、原材料・部品不足が生じ、結果として当社グループの業績に悪影響を与えるリスクが存在します。

 

(5)新製品開発

当社グループは、高い環境性能を有したコスト競争力のある製品を開発するよう努めております。今後も、魅力的な製品の開発を進めてまいりますが、当社の開発した製品が顧客や市場のニーズに合致しない、或いはタイムリーな開発と市場への投入ができない場合、特に自動車業界の電動化の流れに対応した新製品開発が出来ない場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

これに対応するため、営業本部のビジネス開発部において新規ビジネスの企画をおこない、開発効率向上のために開発本部を再編するなど、新規ビジネスの創出、オープンイノベーションを通じ、脱炭素社会へ向けた商品開発を行っております。

 

(6) 製品の品質不具合

当社グループは、品質維持が事業を支える最重要項目と位置づけ、世界中の工場で製造される各種の製品に対して品質管理を行っております。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、多額の対応コストや当社グループの品質管理に対する評価の低下による取引の減少等が、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

(7)新規事業を含む事業投資リスク

 当社グループでは、電動化の進展に伴い既存事業の一部が減少する蓋然性が高いとの認識の元、中長期的な企業価値の向上に向け、脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献すると共にお客様に新たな価値を創造し提供する製品を創造するため、既存事業の枠組みに捉われない新規ビジネスの創出に取り組んでおります。

 これらの活動の中では、新たな技術の獲得や、新規事業における開発スピード向上のために、M&Aやスタートアップ企業への出資を伴う共同開発なども行っております。

 投資先企業の事業活動が想定通りに推移しない場合、また投資先企業に想定しなかった問題点が発見された場合などには、減損損失の発生などによって当社の業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループは新規事業立ち上げのため積極的な投資を行っていることから当該リスクが顕在化する可能性を常に認識しておく必要があります。

 当社グループは当該リスクを軽減するため、ステージゲート法による新規ビジネスへの投資継続可否の検証をおこなっております。

 また、当社グループの中長期の方向性及びグループを含めた意思決定については、取締役会にて審議・決議するとともに経営会議やサステナビリティ会議等でKPIのモニタリングを実施しております。

 

(8)固定資産に関する減損のリスク

 当社グループが使用する固定資産は、事業環境の変化を背景とした収益性の低下が生じた場合に減損損失を計上する潜在的なリスクにさらされています。

 今後、想定以上に電動化が急激に進展する等の経営環境の著しい悪化等により収益性が低下し減損損失が発生した場合には、連結財務諸表に対して影響を生じさせる可能性があります。

 

(9)同業他社との間で生じ得る需要獲得のための価格競争リスク

 当社グループの連結売上収益の大部分を占める自動車部品事業における価格競争は大変厳しいものとなっています。

 当社グループでは「最高品質なものづくり」・「技術開発力」・「顧客ネットワーク」という、3つの強みを構築し、世界中のお客様に喜んで頂ける最高品質製品の提供に努めており、クラッチ及びトルクコンバータ製品において、世界トップレベルのシェアを有しております。

 しかしながら、将来において、価格競争力や当社の優位性を維持できない場合、顧客離れや製品価格の低下を通じて、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)取引先への依存リスク

 当社グループは資本関係の有無にかかわらず、世界の主要自動車メーカーグループに対して製品を供給しており、特定顧客に対する依存度が集中していることはありませんが、多数の顧客において、内燃機関のみを搭載した車両の生産及び販売が当社の想定を超えた速度で減少し電動化が進展した場合、その影響を受けて業績が変動する可能性があります。

 

(11)災害や停電等による影響

 当社グループは、生産設備に対し定期的な修繕及び点検を行うことで、故障等による製造ラインの中断ロスを最小限に抑制するように努めております。しかし、当社グループの生産施設で発生する災害、電力供給等のインフラの中断による影響を完全に防止又は軽減できる保証はなく、その結果、生産・納入活動が停止するリスクが存在します。

 特に、日本における風水害リスクに対し、設備のかさ上げや工場移転等の対策実施してまいります。

 

(12)環境規制に関するリスク

 当社グループが事業を展開する多くの国又は地域において、製品の安全性、燃費、排ガス規制、工場からの汚染物質排出制限等の広範囲な環境規制及びその他の法規制を受けています。これらの規制は今後厳しくなることが想定されます。

 当社グループは、「脱炭素社会づくりをはじめ、環境負荷の最小化に貢献する」を長期ビジョンとして掲げ、脱炭素に貢献する製品を拡充すると共にカーボンニュートラル及び環境負荷の最小化を実現する生産体制を構築するための活動を推進しています。

 しかしながら、当社グループが事業を展開する国又は地域における環境規制の厳格化があった場合には、規制に適合するための開発費用や設備投資などにより相当の費用が増加するほか、当社グループがこれらの規制を遵守できない場合には当該市場での製品販売ができなくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13)気候変動による影響

 当社グループは気候変動への対応を重要な課題の一つととらえ、シナリオ分析(2℃、4℃シナリオ)を通じた気候変動リスクを特定し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下のリスクが顕在化する可能性があります。

① 気候変動によるリスク

(移行リスク)脱炭素社会への急速な移行による、炭素規制等の導入による操業コスト増加や、内燃機関車の販売停止や電気自動車への移行の加速に伴う当社の既存製品への需要の変化に対応できず、企業価値の低下を招くリスクが存在します。

 

(物理リスク)異常気象による工場操業停止や、サプライチェーンの寸断による製品サービスの供給停止が起こるリスクが存在します。

② リスクへの対策

(移行リスク)脱炭素社会への移行に対処すべく、代表取締役社長を委員長とする、環境・気候変動に関する基本方針や重要事項についての審議推進委員会を設置し、変化する国際情勢を常に確認し、リスクの未然防止・迅速な対処に努める体制を整備しております。

また、製品需要の変化に対応するため、社内にプロジェクトチームを設置し、未来商品の創出、オープンイノベーションを通じ、脱炭素社会へ向けた商品開発を行っております。

(物理リスク)サプライヤーも含めたBCP(事業継続計画)を策定、ハザードマップを活用した事業所ごとのリスク評価などを行い、ハード・ソフトの両面での対応や、有事を想定した訓練などを実施し事業継続能力向上に取り組んでおります。

 

(14)知的財産権に関するリスク

 当社グループは、事業活動を展開する上で、製品、製品のデザイン、製造方法などに関連する特許や商標などの知的財産権を、海外を含め多数取得しておりますが、出願したものすべてが権利として登録されるわけではなく、特許庁で拒絶されたり、第三者からのクレームにより無効となったりする可能性があります。

 第三者が当社グループの特許を回避して競合製品を市場に投入する可能性もあります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、第三者の知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。

 

(15)人財確保に関するリスク

 当社グループでは長期ビジョンに「ときめきと情熱を感じられる魅力的な会社になる」を掲げ、従業員の成長を促す挑戦や提案を活発にできる環境を整備し、多様な従業員が安心して働ける制度を拡充することを通じ、働いてよかったと思える会社を実現させ、企業の長期的な価値創造に繋げていきます。

 また、新規ビジネス創出に向け、キャリア採用も積極的に行ってまいります。

 しかしながら労働市場のひっ迫、異業種も含めた人財獲得競争の激化等により人財の育成・確保ができない場合、中・長期経営計画の戦略を実行しその目標を達成することが困難になる可能性があります。

 

(16)情報セキュリティリスク

 当社は、サイバー攻撃などの脅威から、機密情報や個人情報を適切に保護するため、情報セキュリティに関する方針および規程類を整備・展開し、定期的に社員の教育を行うなど情報セキュリティの強化を図り、情報漏洩の防止に努めています。

 しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、情報システムに障害が生じる可能性、機密情報及び個人情報が外部に流出する可能性、サプライチェーンを含む事業活動が一時的に中断する可能性等があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞やレピュテーション低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)世界的な感染症の流行による影響

  新たな種類の感染症が世界規模で流行した場合、生産・納入活動が停止する可能性があり当社グループの業績

 及び財務状況に悪影響を与えるリスクが存在します。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

 当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的にIFRSを適用しております。

(1)経営成績の状況

 当連結会計年度におきましては、コスト上昇分の売価への転嫁をすすめたことや前連結会計年度と比べ円安に推移

したことに伴う為替換算影響などにより、売上収益は増加いたしました。利益面におきましては、労務人件費などの

コスト上昇要因はあるものの、減損損失計上額の減少及び減価償却費負担の減少などにより、営業利益は増加いたし

ました。

 当連結会計年度の業績は、売上収益 3,096億円(前年同期比 0.4%増)、営業利益 218億円(前年同期は154億円の

営業損失)、税引前利益 204億円(前年同期は133億円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益 127億

円(前年同期は100億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

(セグメント情報)
 報告セグメントの種類別の概況は下記のとおりであります。

〔MT(手動変速装置関連事業)〕
 売上収益は 738億円(前年同期比 3.1%増)となりました。セグメント利益は、補修用製品販売の増加や前連結会

計年度と比べ円安に推移したことに伴う為替換算影響などにより 108億円(前年同期比 13.0%増)となりました。

 

〔AT(自動変速装置関連事業)〕
 売上収益は 1,997億円(前年同期比 1.0%減)となりました。コスト上昇分の売価への転嫁や前連結会計年度と比

べ円安に推移したことに伴う為替換算影響などはあるものの、受注減少により売上収益は減少いたしました。セグ

メント利益は減損損失計上額の減少及び減価償却費負担の減少などにより 124億円のセグメント利益(前年同期は

259億円のセグメント損失)となりました。

 

〔TS(産業機械用駆動伝動装置事業)〕
 売上収益は 139億円(前年同期比 7.3%減)となりました。セグメント利益は経費節減につとめたものの売上収益の減少などにより 17億円(前年同期比 19.9%減)となりました

〔その他〕
 売上収益は 222億円(前年同期比 10.8%増)となりました。セグメント利益は、インド・アセアン地域での2輪用クラッチの売上収益の増加はあるものの、研究開発費用の増加などにより 3百万円(前年同期比 99.7%減)となりました。

 所在地別の概況は下記のとおりであります。

〔日本〕
 売上収益は 1,236億円(前年同期比 1.6%減)となりました。コスト上昇分の売価への転嫁をすすめたものの受注の減少に伴うAT事業の売上収益の減少などによるものです。営業利益は減損損失計上額の減少及び減価償却費負担の減少などにより 104億円の営業利益(前年同期は 64億円の営業損失)となりました。

〔米州〕
 売上収益は 567億円(前年同期比 4.4%減)となりました。前連結会計年度と比べ円安に推移したことに伴う為替換算影響などはあるものの、北米子会社の受注の減少に伴うAT事業の売上収益の減少などによるものです。営業利益は、生産性向上などの合理化に取り組んだものの、米国子会社の清算に伴う費用の発生などにより 14億円の営業損失(前年同期は 42億円の営業損失)となりました。

〔アジア・オセアニア〕
 売上収益は 1,170億円(前年同期比 4.3%増)となりました。コスト上昇分の売価への転嫁をすすめたことや補修用製品販売の増加などによるものです。営業利益は、売上収益増加、減損損失計上額の減少及び減価償却費負担の減少などにより 120億円(前年同期は 53億円の営業損失)となりました。

〔その他〕
 売上収益は 123億円(前年同期比 9.2%増)、営業利益は、売上収益の増加などにより 8億円(前年同期比 49.2%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金は、前年同期(376億円)から 61億円

(16.3%)減少し 315億円となりました。これは、税引前当期利益が 337億円増加となった一方、減損損失が 306億

円減少、減価償却費及び償却費が49億円の減少、営業債権及びその他の債権の増減額が 19億円の減少、法人所得税

の支払額の増加により 17億円減少となったことなどによるものです。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローで使用した資金は、前年同期(134億円)から 47億円(34.9%)減少し 87億円

となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が 13億円の減少、米国子会社の清算に伴う有形固定資産の

売却による収入が 34億円増加、投資有価証券の取得による支出が 26億円減少となった一方、子会社株式の取得によ

る支出の増加が12億円、持分法で会計処理されている投資の取得による支出の増加が 7億円となったことなどによる

ものです。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローで使用した資金は、前年同期(114億円)から 173億円(151.8%)増加し 287

億円となりました。これは、自己株式の取得による支出が 448億円増加、配当金の支払額が 21億円増加となった一

方、長期借入れによる収入が 298億円増加したことなどによるものです。

 

 上記に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額による増加 1億円(前年同期は 17億円の増加)があり、当連結

会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末(740億円)から 59億円(7.9%)減少し、682億

円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

MT(百万円)

73,425

103.7

AT(百万円)

199,977

99.0

TS(百万円)

13,656

90.2

報告セグメント計(百万円)

287,058

99.7

その他(百万円)

22,802

111.5

合計(百万円)

309,859

100.4

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

MT

73,962

102.8

5,756

97.4

AT

201,544

97.9

14,575

86.4

TS

13,688

91.1

1,032

80.3

報告セグメント計

289,194

98.8

21,364

88.8

その他

22,779

112.4

1,925

122.4

合計

311,973

99.6

23,288

90.8

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記はすべて継続的な受注であるため、受注残高は1ヵ月間相当額を記載しております。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

MT(百万円)

73,800

103.1

AT(百万円)

199,715

99.0

TS(百万円)

13,881

92.7

報告セグメント計(百万円)

287,396

99.7

その他(百万円)

22,167

110.8

合計(百万円)

309,564

100.4

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主要な相手先別の販売実績については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、主要な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しております。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は、以下のとおりであります。

 なお、本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであるため、不確実性を内在しており実際の結果と大きく異なる可能性を含んでおります。

 

(1) 重要性がある会計方針及び見積り

 当社グループ(当社及び連結子会社)の連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。その作成に当たり、経営者は会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の各数値を算出するための見積りを行っております。これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断してはいるものの、実際の結果は見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。
 当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に記載しております。

(2) 当連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度末の資産につきましては、資産合計は 3,039億円(前連結会計年度末は 3,219億円)となり、前連結会計年度末比 180億円(5.6%)減少いたしました。主な内容は米国子会社の清算手続きに伴う固定資産の売廃却により、有形固定資産の減少 101億円、自己株式を取得したことなどによる現金及び現金同等物の減少 59億円及び棚卸資産の減少 25億円であります。負債合計につきましては 1,096億円(前連結会計年度末は 884億円)となり、前連結会計年度末比 212億円(24.0%)増加いたしました。主な内容は社債及び借入金の増加 263億円、営業債務及びその他の債務の減少 33億円であります。資本合計につきましては 1,943億円(前連結会計年度末は 2,335億円)となり、前連結会計年度末比 393億円(16.8%)減少いたしました。内訳としては、自己株式の取得による減少 401億円、資本剰余金の減少 34億円、非支配持分の減少 12億円、その他の資本の構成要素の減少 6億円及び利益剰余金の増加 60億円(親会社の所有者に帰属する当期利益による増加 127億円、剰余金の処分(配当金)による減少 70億円)であります。なお、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の 67.9%から 59.4%となりました。

(3) 当連結会計年度の経営成績の分析

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上収益 3,096億円(前年同期比 0.4%増)、営業利益 218億円(前年同期は154億円の営業損失)、税引前利益 204億円(前年同期は133億円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益 127億円(前年同期は100億円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。


 MT(手動変速装置関連事業)における売上収益は 738億円(前年同期比 3.1%増)となりました。セグメント利益は、補修用製品販売の増加や前連結会計年度と比べ円安に推移したことに伴う為替換算影響などにより 108億円(前年同期比 13.0%増)となりました。


 AT(自動変速装置関連事業)における売上収益は 1,997億円(前年同期比 1.0%減)となりました。コスト上昇分の売価への転嫁や前連結会計年度と比べ円安に推移したことに伴う為替換算影響などはあるものの、受注減少により売上収益は減少いたしました。セグメント利益は減損損失計上額の減少及び減価償却費負担の減少などにより 124億円のセグメント利益(前年同期は259億円のセグメント損失)となりました。

 

 TS(産業機械用駆動伝動装置事業)における売上収益は 139億円(前年同期比 7.3%減)となりました。セグメント利益は経費節減につとめたものの売上収益の減少などにより 17億円(前年同期比 19.9%減)となりました。

 

 また、当社グループの当連結会計年度に係る経営指標はROE 6.4%、ROA 4.1%、親会社所有者帰属持分比率 59.4%、固定比率 75.0%となりました。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの連結売上収益の約9割が自動車用部品であり、自動車の電動化や主要な販売先である自動車メーカーの生産・販売動向及び調達方針の影響を受ける可能性があります。特にアジア・オセアニアでの販売拡大は最重要戦略でありますが、それらの地域の政治動向及び金融情勢の変化に伴うマーケットの変動に多大な影響を受けるものと予想されます。また、海外事業の拡大に伴う為替リスクの増加、原材料・部品の調達リスク、製品の品質不具合及び災害や停電等のリスクについても業績に重要な影響を与えるものと予想されます。

(5) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性についての分析

①キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

②財務政策

 当社グループの運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入もしくは社債の発行による資金調達を実施することを基本方針としています。
 当連結会計年度における設備投資等の資金については、自己資金及び借入金により充当しました。
 今後の資金需要の主なものは、環境性能の高い新製品の開発投資や現地でのニーズに対応するための海外投資等であります。これらの資金需要に対しては、主に自己資金で充当する予定ではありますが、資金の不足時に備え、直接金融においては格付機関による企業格付の向上を図ること、また、間接金融では金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しております。さらに金融機関との関係を強化することにより有利な調達条件の維持に努め、負債と資本のバランスに配慮しつつ、適切で柔軟な資金調達体制を構築してまいります。
 従い、当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 

 

 

5【重要な契約等】

(1) 業務提携契約

国名

契約者

契約先

契約内容

契約日

日本

株式会社エクセディ

株式会社アイシン

海外事業を中心とした業務提携

2001年7月3日

日本

株式会社エクセディ

株式会社アスター

次世代モビリティ及び環境対応製品に関する業務提携

2022年1月14日

 

(2) 合弁事業契約

国名

契約者

契約先

合弁会社名称

出資比率

(%)

契約日

 日本

株式会社エクセディ

同心ホールディングス株式会社

PRE-EVモビリティ株式会社

   51

2024年6月28日

(注)出資比率は、当社グループから合弁会社への出資比率であります。

 

(3) シンジケートローン契約

契約会社名

相手方の属性

契約締結日

弁済期限

当連結会計年度末の債務残高

(百万円)

担保

株式会社エクセディ

都市銀行、地方銀行等の

金融機関

2024年12月24日

2029年12月27日

    30,000

なし

(注)本契約には以下の財務上の特約が付されております。

・契約締結日又はそれ以降に終了する各連結会計年度末の連結の貸借対照表における純資産の部の金額を直前期又

は2024年3月期のいずれか大きい方の75%の金額以上にそれぞれ維持することを確約する。

なお、2025年3月に終了する決算期及びそれ以降に終了する各決算期における純資産の部の金額を計算するにあたっては、2024年4月1日から当該決算期の末日までに実施した全ての自己株式取得及び特別配当による、連結の貸借対照表における純資産の部の金額の減少金額を加えて計算する。

・契約締結日以降に終了する各連結会計年度末における連結財務諸表の数値に関し、連結損益計算書の経常損益を

2期連続(初回を2024年3月期及び2025年3月期の2期)で損失としないものとする。

 

 

6【研究開発活動】

当社は企業理念のひとつとして「お客様の喜びを創造しよう」を掲げ、「高い技術力」と「きめこまやかで手際のよい対応」をもった駆動系を中心とする総合メーカーとしてお客様に喜んでいただける高品質、低コストの商品開発のために研究開発活動を強化しております。当社グループの主な研究開発は、当社を中心に国内ではダイナックス、海外ではエクセディ重慶、エクセディダイナックス上海、エクセディフリクションマテリアル、エクセディエンジニアリングアジア、エクセディグローバルパーツ、エクセディクラッチインディア、エクセディクラッチヨーロッパでおこなっております。

現在の当社グループの研究開発活動は、MT事業、AT事業と電動化対応を中心に推進しております。研究開発スタッフはグループ全体で496名にのぼり、これは総従業員数の約5%に当たっております。
 当連結会計年度における各事業セグメント別の研究開発活動の状況は次のとおりであります。なお、研究開発費については、各事業セグメントに配賦できない新製品開発費 3,634百万円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は 7,483百万円となっております。

[MT]

 手動変速装置(マニュアルトランスミッション)では、趣味性の高い車両のクラッチや燃費向上に対応するエンジン及び駆動系の低フリクション化に伴う振動を効率的に吸収する高性能ダンパー付きクラッチを開発しております。

 なお、当セグメントに要した研究開発費は 1,204百万円であります。

[AT]
 自動変速装置(オートマチックトランスミッション)用部品では、トルクコンバータ、ロックアップクラッチ、湿式クラッチ、ハイブリッド車用のダンパーなどを開発しており、トルクコンバータに関しては、流体に係る解析技術の強みを活かした開発を行っています。

 ハイブリッド車用部品では、エンジン/モータ切替え時、およびエンジン走行時に発生する振動を吸収するダンパー装置、タイヤ側からの過大負荷入力を緩和するトルクリミッター付きダンパーを開発し、新たな受注を獲得しております。

 子会社のダイナックスでは、高性能なロックアップクラッチ用摩擦材や自動変速機の部品を開発しております。

 また、2系統のクラッチにより動力を途切れなく伝達出来るデュアルクラッチトランスミッションへの適用部品として、ダイナックスではクラッチ用ディスクとプレートをユニット化したクラッチパックなどの製品を開発しています。
 なお、当セグメントに要した研究開発費は 1,378百万円であります。

[TS]

 建機・産業車両用製品としてフォークリフトやラフテレーンクレーンなどの運転性・作業性向上及び伝達効率の追求を目的とした、トランスミッションの性能向上開発を継続的に行っております。

 なお、当セグメントに要した研究開発費は 292百万円であります。

[その他]

 持続可能(サステナビリティ)な社会実現のため、カーボンニュートラルを目指し、地球環境に配慮した、次世代製品・電動化対応製品の開発を進めています。電気自動車用にはモータに独自のデバイスを組み合わせた駆動システム、電動2輪車用にはモータと変速装置を組み合わせた2輪電動ユニットを開発中です。

 さらに、ドローン用製品や汎用電動駆動ユニット、ロボットシステムなど次世代製品・電動化対応製品のラインナップを拡充しているところです。

 また、アセアン・インドを中心に2輪市場が拡大しつづけております。当社は、独自の技術を生かし、高品質で安価な2輪用クラッチを開発しております。

 なお、当セグメントに要した研究開発費は 974百万円であります。