第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、理念の共有化・浸透を図り、行動のべクトルをあわせることを基本方針とし、経営や商品・サービスの品質向上により、選ばれる企業集団を目指し、積極的な事業展開による企業価値の増大を図ります。

また、事業展開にあたっては「技術」をドライビングフォースとし、新たな価値を生み出し、市場の創造に挑戦し続けます。そして一人ひとりの社員が、企業革新の担い手となることによって成長し、人と企業が共に生かされる経営を目指します。

 

(2)会社の対処すべき課題

当社グループは、原材料高騰や賃金上昇、自動車業界の電動化に向けた商品変化などの厳しい経営環境がある一方で、当社のコア技術が活かせる電動化ニーズの高まりを機会と捉え、2023年度より新たな中期経営計画をスタートしました。その中期経営計画では、「モビリティ社会の期待に応え持続的成長企業へ」をスローガンとして、①モビリティ進化への対応、②経営基盤の強化、③財務体質の健全化を柱とする3つの経営方針を定め、ミツバビジョン2030の実現に向け、グループ一丸となり推し進めております。

 

①モビリティ進化への対応

技術の進化、ライフスタイルの変化に対応し、モビリティに求められる要求も高度化されてきています。特に電動化分野においては、従来にはなかったニーズや新たなプレイヤーが出現していることで、新規のビジネスチャンスが拡がっております。一方、CASE対応はエリア別での時間軸の差が顕著になっておりますが、将来的には着実に進む領域と捉え、当社のコア技術であるモーター技術と制御技術の進化・融合によりこれらの期待に対応してまいります。

 

②経営基盤の強化

これまでも収益管理の高度化や構造改革による企業体質の強化を進めた結果、一定の成果が出てまいりました。引き続き、グローバル品質コストの最適化やPSI(生産、販売、在庫)管理の高度化といった基本的な管理体制の強化や、グローバルでの生産供給体制の再構築により、強固な経営基盤を築いてまいります。

 

③財務体質の健全化

モビリティ進化への対応や製品競争力の向上、経営基盤の強化によりキャッシュ・フロー改善を図り、財務の健全化に取り組んでまいります。財務規律を維持しながら、成長分野への経営資源シフトを推し進め、将来の事業を支える強い財務基盤の構築を継続してまいります。

 

世界のモビリティ進化やモーター需要は益々拡大・複雑化し、当社にとってはビジネスチャンスに繋がる新しいテーマも増えてまいりました。一方、モビリティ進化のスピードや求められる製品はエリアごとの取り巻く環境により変化が生じております。今後も「世界の人々に喜びと安心を提供する」という当社理念のもと、脱炭素社会への貢献を掲げたミツバビジョン2030の達成に向け、コンプライアンスの徹底とコーポレート・ガバナンスの強化により、社会の期待に応え、信頼される企業となるよう努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、次のとおり「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」及び「指標及び目標」の観点からサステナビリティに関する考え方を整理し、取り組んでおります。

なお、文中に記載の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在(2024年6月20日)において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社はサステナビリティに関する重点課題を確認し、適切な運用を推進・統制するため、取締役会及び経営会議の下、副社長執行役員を議長とするESG会議を年4回開催し、当社グループにおいて発生し得るリスク及び機会に対する分析及び評価を行い、サステナビリティ経営の方針、戦略及び推進計画策定のための議論を行っております。また、推進計画の進捗状況をモニタリングし、改善を指示しております。また、ESG会議の下部会議体として、各領域別に課題解決のための委員会を設置し、各分野のエキスパートが活動しております。特に気候変動問題は最重要課題の1つと考え、サプライチェーン全体で取り組むべく、執行役員を委員とするカーボンニュートラル委員会(年4回)を設置し、脱炭素社会への貢献に積極的に取り組んでおります。

 


 

(2)戦略

サステナビリティに関する課題は、社会や企業のリスクを減少するだけでなく、収益向上の機会につながる重要な経営課題であると認識しております。そのため当社事業及びステークホルダーの双方の観点から様々な社会課題の重要度を検討し、マテリアリティ(重要課題)を特定しております。

このマテリアリティに基づき、着実に取り組みを推進し、企業としての持続的な成長と、社会課題の解決・社会的責任を果たすことを両立させてまいります。詳細は、サステナビリティ報告書2023に記載しております。

特にミツバビジョン2030で掲げる脱炭素社会の実現への貢献に向けて、カーボンニュートラルの推進を目指し、従来のグループCO2排出量の削減から、材料調達から製品・部品の輸送、さらに製品の使用段階まで拡大し、サプライチェーン全体での削減に挑戦していきます。

 

 

・マテリアリティ特定プロセス

<STEP1>

GRIスタンダード等が重視する項目のうち、当社グループに関わる社会課題及び自主的に取り組んできた社会課題を抽出

<STEP2>

ステークホルダーの重要度及び当社グループの重要度から、マテリアリティを特定


<STEP3>

副社長執行役員を議長とするESG会議にて特定したマテリアリティを決裁

 

また、当社における人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、ミツバグループ人権労働方針を策定しております。詳細は、サステナビリティ報告書2023に記載しております。

その方針を受けて、安全衛生や健康経営については安全衛生・防災委員会及び健康経営推進委員会を通じて、職場環境の整備に取り組み、人材育成や多様性等については人事機能が戦略や計画を議論しております

サステナビリティ報告書2023

https://www.mitsuba.co.jp/jp/sustainability/files/sustainabiility-report_2023.pdf

 

(3)リスク管理

当社グループは、大規模地震をはじめとした自然災害や感染症の拡大、地政学的リスクなど、多様化するリスクを最小化するために、総合的なリスク管理の充実・強化に取り組んでおります

サステナビリティに関する課題を含む事業のリスクについて、ESG会議にて定期的(年1回)に発生可能性及びさまざまな影響度から評価しております。特に重点となるリスクを洗い出し、責任部門や会議体を明確にし、軽減措置の立案及び取り組みを進めております。

また、経営に大きな影響を及ぼすリスクは「事業に関するリスク」「サステナビリティに関するリスク」「経営基盤に関するリスク」に分けて管理しております。詳細は、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4)指標及び目標

当社は、サステナビリティに関する課題を各機能の方針及び業務計画、又は課題解決のための会議体計画に指標及び目標を織り込み、取り組んでおります

特にカーボンニュートラルに関しては、脱炭素社会の実現に貢献するために2030年にScope1,2グループCO2排出量を50%削減する中期目標を掲げ、その達成に向けて意欲的に推進しております

指標

目標

2023年度実績

グループCO2排出量

6.0(2018年度比)の

削減施策の立案及び推進

9.5%の施策積上げ完了

(実排出量は10.0%削減)

 

また、当社では、上記(2)戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する主な目標及び実績は、次のとおりであります。詳細な情報については、サステナビリティ報告書2023をご参照ください。

指標

目標

2023年度実績

グループ労災発生件数

休業災害0

休業災害3

不休業災害10以下

不休業災害11

健康診断受診率

100(休職者除く)

100%(休職者除く)

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社は、当社グループ標準である「グループコンプライアンス・リスクマネジメント規定」に基づき、業務上のリスクの予見、評価、回避又は軽減等に関する措置を講じると共に、当社「ESG会議」において、かかるリスク項目の見直しと自己点検及び評価を定期的に実施しております。

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。なお、文中に記載の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在(2024年6月20日)において当社グループが判断したものであります。

発生可能性のレベル選択の目安

レベル

発生可能性

極大

1年以内に発生する

3年以内に発生する

6年以内に発生する

10年以上先に発生する

 

 

影響度のレベル選択の目安

レベル

売上への影響

社会評価への影響

甚大

売上900億円以上

信頼の極めて大幅な失墜

売上100億円以上

信頼の大幅な失墜

(信頼回復に3年以上要する)

売上10億円以上

信頼の失墜

(信頼回復に1~3年要する)

売上10億円未満

信頼の失墜の可能性は低い

 

 

当社における主要なリスクとその軽減措置等

リスク項目

主な内容

可能性

影響度

主な軽減措置等

事業に関するリスク

経済状況・為替の変動

・原材料、エネルギーコストの高騰

・新興国通貨の価格下落

・外貨建て調達資材の急激な価格アップ

 

極大

・原材料使用量の削減及び売価反映の継続並びにカーボンニュートラル活動によるエネルギーの効率的利用

・新興国現地通貨建て取引の極小化

・効果的な為替予約の実施

感染症・自然災害等

感染症拡大による事業停止、操業率低下、資金ショート

・サプライチェーンの分断

→一極集中生産拠点における天災地変等の発生

→パンデミックに起因するロックダウン等による部材供給のボトルネック発生

→BCP(事業継続計画)実施マニュアル等の不整備

・グローバル生産管理体制を通じた最適マネジメントの実行

・材料調達のセカンドソース開拓

・複数国・地域・工場での生産による供給ダブルソース化の推進及び事業継続計画(BCP)の策定

・グローバルでのグループBCPマニュアル類の整備、訓練実施

・金融機関との協調による効率的な資金調達

カントリーリスク

・予期しない法規制の強化

・対象国又は地域における政治あるいは経済状況の変化

・戦争・紛争・テロ等の発生による社会的又は経済的混乱

極大

・重点管理リスクの絞込み及びリスクシナリオ分析の実施

・定期的なモニタリングを通じたタイムリーな経営判断

自動車電装部品業界の競争激化

・メガサプライヤーとの価格競争

海外ローカルサプライヤーとの価格競争

・異業種からの新規競合参入

・顧客購買方針の変更

極大

・コンピタンス技術の更なる磨き上げによる差別化

・コンピタンスを核とする新商品創出

 

 

リスク項目

主な内容

可能性

影響度

主な軽減措置等

事業に関するリスク

 

 

 

 

新商品開発

・市場環境の変化に対する付加価値の高い商品開発の遅れ

既存商品の衰退と新商品の欠如による売上減少

極大

・電動化における商品・技術戦略の強化

・技術開発と商品開発の連携強化

開発人員確保のための新たな採用制度の導入

品質不良問題

・予見出来ない品質問題の発生による多額の費用負担

・仕入先含む検査データねつ造及び改ざん又は検査不履行

極大

甚大

・製品開発プロセスにおける品質保証の観点での牽制機能強化

・品質風土教育とコンプライアンス監査の継続

サステナビリティに関するリスク

気候変動等に関する環境規制への対応

・気候変動への適応失敗又は規制への対応遅れ

・土壌汚染の発生

・製品有害物質規制への違反

・環境対応製品の需要増に向けた技術開発

・グループ全社でのカーボンニュートラル活動の推進

・禁止予定物質の計画的な自主切替

経営基盤に関するリスク

コンプライアンスリスク

・競争法違反行為の発生

・労働法違反及びハラスメント問題の発生

・外為法違反又は原産国表示偽装問題の発生

インサイダー情報の漏洩、取引の発生

・グループ全社におけるコンプライアンス啓蒙活動の徹底

人事労務に関する法規・労使協定変化点の全社周知

・業務マニュアルの整備及び正しい運用の徹底

・内部監査を含めたモニタリングの仕組み及び機会の確保

情報セキュリティリスク

・サイバー攻撃による情報漏洩

・システム障害による生産停止

・サイバー攻撃に対するセキュリティの強化及び情報セキュリティに関する社内教育、内部監査

・システムによる情報漏洩対策及び監視の強化

重要なシステムのバックアップ、冗長化

知的財産リスク

・特許保証体制の不備

・第三者による知的財産権の不正使用

 

・新規立上げ商品における他社特許調査の強化

・パテントポートフォリオの適用強化

・他社製調査の強化

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度における世界経済は、成長軌道を維持しているものの、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東での紛争によるサプライチェーンの混乱、また世界的な金融引き締めによる景気減速懸念、円安進行などが影響を及ぼしました。国内においては、材料・エネルギー価格の高止まりと円安に伴う物価上昇があるものの、経済対策により民間投資や個人消費が拡大し、緩やかな回復基調を維持しました。

自動車業界におきましては、2023年のグローバル四輪車販売が暦年で90,079千台(前年比11.2%増)となりました。米国は、暦年で15,608千台(前年比12.3%増)と2年ぶりに前年を上回りました。欧州は半導体供給不足からの回復により、暦年で12,847千台(前年比13.6%増)と2年ぶりに前年を上回りました。中国は政策支援や販促活動の活発化などにより、暦年で30,094千台(前年比12.0%増)と3年連続で前年を上回りました。日本においては、2023年度は4,529千台(前年度比3.3%増)と2年連続で前年を上回りました。登録車は2,903千台(前年度比7.8%増)と2年連続で増加、軽自動車は1,625千台(前年度比4.0%減)と2年ぶりに減少となりました。

また、グローバル二輪車販売は、最大市場であるインドが新型コロナウイルス感染症の収束などにより、暦年で17,075千台(前年比9.4%増)と3年連続で前年を上回りました。インドネシアは下期に挽回し、暦年で6,237千台(前年比19.5%増)と3年連続で前年を上回りました。

日本は、原付第二種と軽二輪車の増加により、2023年度で377千台(前年度比3.9%増)と2年ぶりに前年を上回りました。

このような状況の下、当社グループにおきましては、当期から新たな中期経営計画(2023年度-2027年度)をスタートし、「モビリティ進化への対応」、「経営基盤の強化」、「財務体質の健全化」を重点施策として、計画達成に向け諸施策を推進しております。

この結果、当連結会計年度の連結業績は、半導体供給の改善による自動車生産の回復を背景とした販売増に加え、為替影響もあり、連結売上高は344,154百万円(前期比7.7%増)、連結営業利益は21,152百万円(前期比214.8%増)、連結経常利益は22,344百万円(前期比269.4%増)といずれも前年を上回りました。また、トルコの子会社について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い、当期より会計上の調整をした結果、3,040百万円の特別損失を計上しております。一方、政策保有株式の売却益として1,147百万円などの計上があったため、税金等調整前当期純利益は18,516百万円(前期比216.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は13,741百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1,185百万円)と前年を大きく上回りました。

事業の種類別セグメント業績は次のとおりであります。

輸送用機器関連事業は、前述のとおり、売上高は323,298百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益は18,614百万円(前期比307.8%増)といずれも前年を上回りました。

情報サービス事業は、警察向け、自治体向け、ガス事業者向け、製造業向けのソフトウエア開発・システム販売が堅調に推移したことから、売上高は18,171百万円(前期比5.4%増)となり、セグメント利益は1,834百万円(前期比4.2%増)となりました。

その他事業は、主に用品販売事業の売上減少により、セグメント全体では、売上高は6,444百万円(前期比3.8%減)となり、セグメント利益は697百万円(前期比84.9%増)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フロー

当社は、現在及び将来の事業活動のための適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の基本的な方針とし、連結営業利益計画の達成と、営業キャッシュ・フローの確保を優先に活動しております。

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ27,189百万円増加し、当連結会計年度末は101,490百万円となりました。

なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは、36,267百万円のプラス(前期は20,449百万円のプラス)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、41,509百万円(前期比40.1%増)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益18,516百万円及び減価償却費16,179百万円、売上債権の減少5,302百万円、棚卸資産の減少9,101百万円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用した資金は、5,241百万円(前期は9,168百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出10,276百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動に使用した資金は、13,793百万円(前期は20,677百万円)となりました。これは主に短期借入金の増加額17,073百万円、長期借入金の返済による支出27,167百万円及び配当金の支払額3,259百万円(非支配株主への配当金含む)によるものです。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前期比(%)

輸送用機器関連事業(百万円)

321,046

107.7

情報サービス事業(百万円)

15,798

106.7

その他事業(百万円)

5,224

94.1

合計(百万円)

342,069

107.4

 

(注) 金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 受注状況

 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

輸送用機器関連事業

323,004

107.9

9,026

103.3

情報サービス事業

16,206

100.8

3,286

99.8

その他事業

6,022

97.2

2,520

146.5

合計

345,233

107.3

14,834

107.8

 

(注) 金額は販売価格に換算しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

前期比(%)

輸送用機器関連事業(百万円)

322,719

108.0

情報サービス事業(百万円)

16,213

106.9

その他事業(百万円)

5,221

94.1

合計(百万円)

344,154

107.7

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

本田技研工業㈱

18,686

5.9

20,790

6.0

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、資産、負債及び収益、費用等の額の算定に際して、過去の実績や状況を分析し、様々な要因を考慮して、その時点で最も合理的であると考えられる基準に基づいて見積りや判断を行っておりますが、実際の結果は、見積りに内在する不確実性があるため、これら見積り時の計上金額と大幅に異なる結果となる可能性があります。

連結財務諸表に関して、当社グループが認識している特に重要な会計方針は、以下のとおりです。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

繰延税金資産は、主として将来の課税所得の見込みに基づき、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収の実現性が低いと判断した場合には、適正と考えられる金額へ減額する可能性があります。

 

(製品保証引当金)

製品保証引当金は、販売された製品のうち、返品による交換費用や再生産出来なくなった場合に発生する廃棄費用、さらに取引先において当社製品取り付け後に不具合が生じた場合に発生する取り外し工賃等に備えるため、過去3年間の製品保証費及び売上高から計算される平均返品率に基づき計上しております。また、発生額を個別に見積ることができる費用については、販売台数や販売単価、回収可能率に基づき見積額を試算し、計上しております。

当社及び連結子会社は、製品保証引当金が適切な金額かどうかを常に確認しており、発生が見込まれる製品保証関連費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えております。

実際に発生する製品保証関連費用は、それらの見積りと異なることがあり、製品保証引当金の計上が大きく修正される可能性があります。

 

(事業構造改善引当金)

事業構造改善引当金は、事業構造の改善に伴い発生することが見込まれる損失に備えるため、当連結会計年度末で合理的に見積ることが可能なものについて、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。当該見積りには、事業構造改革に基づき実施する、拠点統廃合により発生する設備移設等の業務移管関連費用及び拠点移転等の不動産関連費用、人員異動等の人件費の見込みなどの仮定を用いております。

当社及び連結子会社は、発生が見込まれる事業構造改善費用について、必要かつ十分な金額を計上していると考えておりますが、当該見積り及び当該仮定について、事業戦略の見直しや外部環境の変化等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する事業構造改善引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

(固定資産の減損)

固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローの水準を基に減損の兆候の検討を行い、減損の兆候が認められる場合、減損損失を認識するかどうかの判定を行っております。判定の結果、当初想定した投資回収が見込めなくなり、減損の必要性を認識した場合には、固定資産の減損処理を行う可能性があります。

 

 

(2) 財政状態の分析

(資産・負債・純資産)

当連結会計年度における資産の合計は、357,492百万円(前連結会計年度は328,452百万円)となり、29,040百万円増加しました。流動資産は220,982百万円となり22,792百万円増加し、固定資産は136,510百万円となり6,248百万円増加しました。

流動資産の増加は、現金及び預金が26,453百万円増加したことが主な要因です。

固定資産の増加は、保有株式の時価評価等により投資有価証券が2,585百万円、退職給付に係る資産が3,417百万円、それぞれ増加したことが主な要因です。

当連結会計年度における負債の合計は234,911百万円(前連結会計年度は241,493百万円)となり、6,582百万円減少しました。流動負債は168,575百万円となり38,061百万円増加し、固定負債は66,335百万円となり44,644百万円減少しました。

流動負債の増加は、短期借入金が38,383百万円増加したことによるもので、1年内返済予定の長期借入金が増加したことが要因です。固定負債の減少は、長期借入金が44,704百万円減少したことによるもので、これは、金融機関への返済及び1年内返済予定の長期借入金が短期借入金に振り替わったことが主な要因です。

当連結会計年度における純資産の合計は、122,581百万円(前連結会計年度は86,958百万円)となり、35,623百万円増加しました。これは、利益剰余金が16,990百万円、為替換算調整勘定が12,855百万円増加したことが主な要因です。

 

(3) 経営成績の分析

(売上高・営業利益)

当連結会計年度における連結業績は、半導体供給の改善による自動車生産の回復を背景とした販売増に加え、為替影響もあり、売上高は344,154百万円(前連結会計年度は319,500百万円)となり、24,653百万円増加し、営業利益は21,152百万円(前連結会計年度は6,718百万円)となり、14,433百万円増加しました。

(経常利益)

当連結会計年度は、営業外収益が5,308百万円となり、1,996百万円増加しました。主なものは受取利息1,583百万円、為替差益1,586百万円になります。営業外費用は4,116百万円となり、135百万円増加しました。主なものは支払利息2,361百万円、外国源泉税721百万円になります。経常利益は22,344百万円で、前期比16,295百万円の増加となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度は、トルコの子会社について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件に従い、当期より会計上の調整をした結果、3,040百万円の特別損失を計上しております。一方、政策保有株式の売却益として1,147百万円などの計上があったため、税金等調整前当期純利益は18,516百万円(前連結会計年度は5,855百万円)となりました。

また、親会社株主に帰属する当期純利益は13,741百万円(前連結会計年度は1,185百万円)となり、前期比12,555百万円の増加となりました。

 

(4) 資金の財源及び資金の流動性についての分析

当社の営業活動によるキャッシュ・フローは、主に製品を生産するための原材料や部品調達の支出と、製造費用や販売費及び一般管理費に計上する費用に資金を消費しております。また、設備投資資金は、生産設備を取得し生産体制の構築や情報システムの整備等に支出しております。これらの必要資金は、利益と減価償却費の内部資金により賄うことを基本方針としております。

当連結会計年度におきましては、2023年9月30日に取引金融機関との間のコミットメントライン契約150億円のコミットメント期間の期日更新をおこなっており、直近の資金繰りに支障は生じておりません。当連結会計年度末における当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度の74,301百万円から27,189百万円増加し、101,490百万円となりました。また、流動比率は131.1%となり前連結会計年度に比べ20.8ポイント減少しました。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術援助等を受けている契約

 

   該当事項はありません。

 

(2) 技術援助等を与えている契約

 

契約会社名

相手先の名称

相手先の
所在地

契約内容

対価

契約期間

当社

士林電機社

台湾

二輪・四輪車用電装品の製造技術の供与及び実施許諾

売上高に対して一定料率のロイヤルティ

1998年8月
~自動延長

シークス㈱

日本

四輪車用SRモーター第三者販売に係る技術援助契約

同上

2006年4月
~自動延長

エーピーエムオート社

マレーシア

四輪車用ワイパーモーター、ウォッシャー等の技術の供与

同上

1993年2月
~自動延長

ピョンハオートモーティブ社

韓国

四輪車用電装品の製造技術の供与

同上

2015年1月
~自動延長

日立Astemo㈱

日本

二輪車用燃料供給装置の実施許諾

売上数量に対して一定額のロイヤルティ

2015年10月

~2030年2月

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「社会と環境に調和した技術の創造を通して世界の人々に喜びと安心を提供する」という企業理念に基づき、輸送用機器関連事業及び情報サービス事業を中心に、研究開発活動を推進しております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は14,937百万円であり、このうち、輸送用機器関連事業によるものは14,870百万円、情報サービス事業によるものは66百万円であります。

輸送用機器関連事業では、マーケットインをベースに事業拡大を図る為、「オリジナリティのある開発型企業」を目指して、将来における商品及び技術の動向を予測した開発戦略に基づき、研究開発テーマを推進しております。

当社の強みとするモーター技術、制御技術、機構技術を相互に融合したトップランナー商品の開発を強化し、お客様に信頼される製品の研究開発に取り組んでおります。多様化していくモビリティ社会や、国際的に関心の高まっている環境・安全問題への技術的課題に対し、社会のニーズを先取りした独自性や優位性のある魅力的で新しい価値の商品を提供していきたいと考えており、四輪事業・二輪事業・電動化ソリューション事業の三事業制で、研究開発を推進しております。また、社内のリソースを成長領域に優先的にシフトする等の施策も講じております。

四輪事業においては、払拭耐久性と生産性を高めたフラットタイプの新型ワイパーブレードを開発し、量産準備が完了しております。また、既に量産している新型ブラシレス制御ワイパーモーターを含めた新ワイパーシステムにおいても、お客様の多様なニーズに応えてまいります。

二輪事業においては、既にブラジルで実績のあるバイオエタノール対応可能な高品質燃料ポンプについて、今後の主力地域となるインド市場への参入へ向け開発を推進しております。また、ハイブリット車用ACGスターターの量産や、LEDシグナルランプ・リレーなど、内燃機関車でのカーボンニュートラルの実現に貢献しながら、ライダーの利便快適安全性に寄与する電子制御クラッチ用アクチュエーターの上市により、顧客からも高い評価を得ております。EV化への対応としましては、インド拠点への駆動システムの生産準備を推進中であり、コントローラーにおいては、小型軽量化により競争力を強化しており、ACGスターターを用いた小型モーターの開発も推進しております。

電動化ソリューション事業においては、BEV用ブラシレスファンモーターの量産準備と並行し、拡販活動を推進しており、複数のお客様より新たな引合いをいただき、開発を推進中です。また、新規のお客様向けに電動パワーステアリングモーターの量産準備を推進中です。併せて、様々な車両への適用に向けモーター出力のラインナップ充実を図り拡販を目指しております

今後も自動車を取り巻く環境変化への対応、サステナブルな進化に適応する製品開発を通じて、社会のニーズに対応した商品のラインナップの充実を図り、新たな分野へも拡販を目指してまいります。

一方、生産技術分野においては、自社で設備、金型を開発している強みを活かし、製品設計へ造りの技術を反映しながら、高効率で高品質な生産システムの開発を推進しております。

信頼性の高い生産システムを短期間で開発できるよう、デジタルエンジニアリングを活用した開発プロセスの効率化に取り組み、ロボット、AI、IoTなどの先端技術を駆使したフレキシブルで合理的な設備開発を行っております。

社会と環境に調和した技術の進化を目指し、カーボンニュートラル実現に向けた生産設備の省電力化、原材料や副資材の歩留まり向上、サステナブル/リサイクル材の活用など、CO2排出量削減を推進しております。

また、海外拠点における設備・金型製作の自前化を推し進めることにより、グローバルでの生産技術力向上に取り組むとともに、職業訓練校での基礎教育、技能五輪への挑戦など、技術者の育成にも努めております

今後も、安心・安全をお届けするため、日々生産システムの進化を目指した研究・開発を進めてまいります。