足許の環境変化を踏まえた経営課題の認識と、今後の経営戦略の考え方は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と異なる可能性がありますので、ご留意ください。
自動車業界は、地球温暖化対策としての電動化に加え、AI技術等の進化を取り込み知能化が進むなど、人の移動とモノを運ぶための手段であった自動車の概念が大きく変わり、「100年に一度」の大変革の時代を迎えています。
当社グループは2023年3月に、2023年度から2025年度までの中期経営計画「Challenge 2025」を発表しました。「Challenge 2025」では、これまで行ってきた構造改革による強靭かつ機動的な経営体質を基盤とし、地域や国の独自性に適した事業の拡充を図り、全社的な「手取り改善活動」の継続により、安定的な収益基盤の確立に取り組みました。そのうえで、更なる成長と次の時代へのチャレンジを実現するため、研究開発費や設備投資を安定的に増加させることを計画いたしました。
一方、中期経営計画「Challenge 2025」の発表から2年が経過し、一部に当初想定していた事業環境からの変化が生じ、主要施策の進捗にも差異が出ています。
まず、電動車開発に関しては、昨年来、全世界的に電気自動車(バッテリーEV)の成長が踊り場に差し掛かり、より現実的な環境技術としてプラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)が再評価されています。この環境変化を踏まえ、当面、自社製バッテリーEVの開発は見送り、バッテリーEVが必要な市場への対応については、主にパートナーとの協業による商品を活用、当社グループは優位性を持つプラグインハイブリッド車とハイブリッド車の開発に専念することにいたしました。
次に、アセアン地域での新商品連続投入による収益基盤の強化です。アセアン地域は中長期的には成長が期待できる当社グループの重点市場ですが、タイやインドネシアでは景気の冷え込みが継続、想定した市場成長からは大きく乖離した状況となっています。市場が好調なフィリピンや、力強い回復を見せるベトナムでは台数・シェアを大きく伸ばすことができましたが、アセアン全体としては中期経営計画で目論んだ台数・収益目標の達成に遅れが生じています。依然、本格的な景気回復には時間を要する状況と想定されますが、中期経営計画で準備してきた新商品の市場投入が2025年度も続くことから、これら新商品を梃に、アセアン地域の販売伸長を目指していきます。
「三菱自動車らしい」クルマの投入によるブランド力強化に関しては、近年、アセアンなどの新興市場を中心に、中国勢を含む多くの新規ブランドが参入し、競争が激化しています。そのため、従来以上にブランド力の強化が求められています。当社グループは、「三菱自動車らしさ」を具現化したモデルの投入を通じてブランド力を強化してきました。特にホームマーケットである日本では、『デリカミニ』や『トライトン』の投入を契機に、ブランド力が大きく向上し、マーケットシェアも着実に伸ばすことができました。この日本での成功事例を他国にも展開し、グローバルにブランド力を磨いていきます。
今後の商品投入については、クルマの知能化を含めクルマに対する要望が高度化することで、開発工数が増加し、中期経営計画で予定していた新型車の投入に一部遅れが生じましたが、引き続きアセアン戦略車の強化を継続いたします。そして、これら新型車をアセアンだけでなく、中南米・中東やオセアニア、日本へも展開拡大し、これら地域でも収益力向上を図ります。一方、欧米等のグローバルモデルについては、自社開発モデルに加え、様々なパートナーとの協業により、地域に応じたラインナップの強化・拡充を図ります。これにより、経済変動にも柔軟に対応できる強靭なグローバルポートフォリオを築いてまいります。
新事業形態へのチャレンジとしては、フィリピンにおいて新たに販売金融会社「ミツビシ・モーターズ・ファイナンス・フィリピンズ・インク」を設立いたしました。オーストラリアでは、自動車関連金融サービス会社大手の「FLEETPARTNERS GROUP LTD」に出資し、法人向け事業の拡大等、更なる販売台数及び収益拡大を目指します。日本でもスマート充電サービス事業など、新たな取組みを進めています。
資本コストや資本収益性を意識した経営への取組みについては、2024年11月に、資本効率の向上と株主還元の拡充を図ることを目的とし、自己株式の取得及びその一部の消却を実施しております。今後も、資本構造の最適化や株主還元の拡充を図り、企業価値の向上を目指します。
2025年度業績見通しにおいては、中期経営計画で目標とした一部指標を下回る見通しとなっておりますが、環境変化には柔軟に対応しつつも、これらの主要施策を着実に実行し、経営体質の更なる強化と将来に向けた成長の礎を築いてまいります。
今後も、「モビリティの可能性を追求し、活力ある社会をつくります」という当社グループビジョンのもと、お客様や株主様をはじめとしたすべてのステークホルダーの皆様のご期待を超える価値を創造し続けることで、企業価値の向上に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と異なる可能性がありますので、ご留意ください。
(1)ガバナンス及びリスク管理
① ガバナンス
当社では、グループ全体でサステナビリティの取り組みを推進することを目的に代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、年3回開催しています。
② リスク管理
同委員会では、環境、社会、ガバナンス各分野の様々な課題から当社グループが優先的に取り組むべき重要課題として特定したマテリアリティに関して、各取り組み責任者が長期視点で洗い出したリスクと機会を確認しています。また、これらのリスクと機会の評価・管理を行うとともに、中期視点による外部環境及びステークホルダーのニーズと期待を踏まえた取り組み目標やKPIを審議・決定し、それらの進捗を確認することによりPDCAを回しています。
さらに、マテリアリティの見直しなどの重要事項やサステナビリティ全般の活動状況は、取締役会で審議・報告する体制としています。
|
当社のマテリアリティ(重要課題) |
|
● 気候変動・エネルギー問題への対応 |
|
● 資源循環の取り組み |
|
● 環境汚染の防止 |
|
● 水資源の保全 |
|
● 生物多様性の保全 |
|
● 持続可能なサプライチェーンの実現 |
|
● 道路交通事故の削減に寄与する製品の提供 |
|
● 製品品質、セールス・サービス品質の向上 |
|
● 事業を通じた地域経済への貢献 |
|
● 多様な人材が能力を発揮し、誇りとやりがいをもって働ける環境の構築 |
|
● 人材育成の強化 |
|
● 労働安全衛生の推進 |
|
● 社会貢献活動の推進 |
|
● ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底 |
(2)気候変動対応
① ガバナンス
当社は、「気候変動・エネルギー問題への対応」を重要な経営課題と認識し、マテリアリティとして特定しています。取締役会は気候変動関連を含む環境取り組みに関する重要な事案について意思決定し、また執行状況を監督しています。また、サステナビリティ委員会にて、気候変動リスクと機会の評価や対応策などを審議するとともに、「環境ターゲット2030」の進捗状況・実績などを確認しています。さらに、サステナビリティ委員会のもとに、経営戦略・商品・生産・調達・物流などを担当する責任部門の長が参画し、代表執行役副社長が議長となるカーボンニュートラル協議会を設置し、気候変動リスク及び機会の評価を踏まえつつ、各領域における具体的な対応策を検討するとともに、中長期的な対応方針・目標などを立案しています。立案した方針・目標はサステナビリティ委員会で審議する体制としています。特に重要な事案が生じた場合は取締役会にて審議・決定しています。
|
取締役会で審議又は報告された気候変動関連の事案例 ・TCFD(注)提言への賛同表明 ・TCFD提言に沿った情報開示 ・2050年カーボンニュートラル宣言と環境ビジョン2050の改定 ・環境ターゲット2030の改定 |
(注)Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略称。気候関連財務情報開示タスクフォース
カーボンニュートラル推進体制(2025年3月末時点)
|
|
役割 |
開催頻度 |
|
サステナビリティ委員会 |
環境ターゲット2030の進捗状況のモニタリング 等 |
年3回 |
|
カーボンニュートラル協議会 |
2050年カーボンニュートラル実現に向けた中長期的な対応方針や目標の立案 等 |
年3回 |
|
事業活動CO₂削減推進分科会 |
事業活動領域におけるCO₂削減の実行計画の立案、具体的な対策の推進 等 |
年2回 |
|
TCFD検討チーム |
気候変動リスク及び機会の特定・評価、シナリオ分析の検討 等 |
適宜開催 |
② 戦略
当社は、気候変動リスク及び機会を、事業戦略策定上の重要な観点の一つとして捉えています。短期・中期・長期のリスク及び機会の洗い出し・評価を行い、特に影響度の大きい項目として、「燃費/CO2、ZEV(注)1規制などの強化」、「カーボンプライシングの導入・拡大」、「気象災害の頻発・激甚化」、「電動車(注)2の需要拡大」を特定しました。これらの項目については、IEA(注)3やIPCC(注)4などが公表している複数のシナリオを参照し、当社事業への影響の分析及び対応策を検討しています。また、気候関連事項が事業や戦略及び財務計画に影響を及ぼす可能性があることを認識し、気候変動リスクや機会を踏まえて、適宜戦略や計画などの見直しを行っています。
<特に影響度の大きいリスク・機会と当社事業への影響、対応策>
|
シナリオ |
リスク・機会 |
当社事業への影響 |
対応策 |
||
|
2℃未満 |
燃費CO2/ZEV規制などの強化 |
リスク |
・先進国・新興国とも、厳格化された規制への対応が必要となる |
・開発・調達・生産コストが増加する |
・アライアンスを活用したコンポーネントの共通化などによるコスト低減 |
|
機会 |
・電動車の需要が増加する |
・電動車の販売及び電動車関連のバリューチェーンが拡大する |
|||
|
カーボンプライシングの導入拡大 |
リスク |
・炭素税などが導入・拡大され、炭素価格が上昇する |
・調達、生産及び物流の各段階で、直接的・間接的に税負担などが増加し、コストが上昇する |
・省エネルギー活動・再生可能エネルギー導入の推進 |
|
|
機会 |
・省エネルギー技術が進展する |
・エネルギーコストが低減する |
|||
|
成行 |
気象災害の頻発・激甚化(洪水・浸水) |
リスク |
・大雨・洪水などの頻発・激甚化により工場被災やサプライチェーン寸断の可能性が高まる |
・生産・開発設備などが損害を受ける |
・大雨・洪水などを想定したBCPの見直し |
|
機会 |
・災害時の非常用電源確保のニーズが高まり、電動車の需要が増加する |
・非常用電力供給に貢献できる電動車の普及が拡大する |
・アライアンスを活用したコンポーネントの共通化などによるコスト低減 |
||
当社は、気候変動リスク及び機会への対応策を、環境への取り組みの方向性と目標を定めた「環境計画パッケージ」(注)5や事業戦略に反映させることで、事業の持続的な成長や将来リスクの低減に繋げ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを推進しています。
2022年9月には、当社としてサプライチェーン全体で2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、あわせて「環境ビジョン2050」を改定しました。2023年2月には、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたマイルストーンとして、「環境ターゲット2030」の目標を見直しました。
製品においては、当社独自のプラグインハイブリッド車(PHEV)と軽商用EVを起点に、アライアンスの技術を活用しながら電動車の開発や内燃機関車の燃費改善などを推進し、各国・地域のエネルギー事情やインフラ整備状況、お客様のニーズに応じた最適な電動車を積極的に投入していきます。2023年3月に公表した新中期経営計画「Challenge 2025」では、主要なChallengeの一つにカーボンニュートラル対応を掲げ、電動車強化第2フェーズ(2026-2028年度)に向けた電動車開発とアライアンスの強化に取り組むとともに、2028年度までに9車種の電動車を投入する計画であり、これまでに『ASX』(PHEV/HEVモデル)、『コルト』(HEVモデル)、『エクスパンダー』(HEVモデル)、『エクスパンダー クロス』(HEVモデル)、『エクスフォース』(HEVモデル)の5車種を投入しました。2023年2月以前に投入した車種(ミニキャブEV/L100 EV・eKクロスEV・アウトランダー・エクリプス クロス)を含め、2025年3月時点で9車種の電動車を販売しています。なお、昨年来、全世界的にBEVの成長が踊り場に差し掛かっているという環境変化を踏まえ、当面、BEVについては、主にパートナーからのOEM受け商品を活用する方針とし、当社は優位性を持つPHEV/ハイブリッドの開発に専念することといたしました。事業活動においては、エネルギーミニマム化と再生可能エネルギーへの転換を推進し、CO2排出量の削減に取り組みます。サプライチェーン全体においては、取引先での原材料・部品の生産や製品・部品などの物流からのCO₂排出量の低減、再生可能エネルギーや充電インフラの普及、カーボンニュートラル燃料の活用、V2Xの推進など、取引先や関連企業・団体、政府・自治体と連携していきます。
(注)1.Zero Emission Vehicleの略称。排出ガスを一切出さない電気自動車(バッテリーEV)や燃料電池車
2.電気自動車(バッテリーEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)
3.International Energy Agencyの略称。国際エネルギー機関
4.Intergovernmental Panel on Climate Changeの略称。国連気候変動に関する政府間パネル
5.「環境計画パッケージ」の詳細は当社ホームページをご覧ください。
https://www.mitsubishi-motors.com/jp/sustainability/environment/initiatives/
③ リスク管理
当社は、サステナビリティ委員会のもとで全社横断的な検討チームを立ち上げ、TCFD提言に基づいたシナリオ分析を行い、IEA等の外部シナリオや各国の政策・規制等を考慮しつつ、事業に影響を及ぼす可能性のある気候変動リスク及び機会を抽出・特定し、発生時期と影響度による評価を行っています。特に影響度が大きい気候変動リスク及び機会への対応については、目標・実行計画に落とし込み、サステナビリティ委員会でその進捗を確認しています。また、当社の事業に影響を与えるリスクは、内部統制委員会等にて当社グループ全体で管理しており、気候変動の影響に関連するリスクも対象に含んでいます。
④ 指標及び目標
・指標
当社グループは、リスク・機会を管理するため、スコープ1、2(注)については「事業活動からのCO₂排出量」を、さらに、スコープ3(注)のカテゴリ11(販売した製品の使用)に係る温室効果ガス排出量については 「新車からの平均CO₂排出量」と「電動車販売比率」を、主な指標として設定しています。サステナビリティへの対応が当社グループの経営上の重要課題であるとの認識のもと、執行役の中長期業績連動報酬を決定する指標として「事業活動からのCO₂排出量」などのESG関連項目を組み込んでいます。
(注)スコープ1、2、3についてはGHGプロトコルに準拠
スコープ1:事業者自らによる直接排出(燃料の燃焼など)
スコープ2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社などの排出)
・目標
当社グループは、2050年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルの実現を目指し、そのマイルストーンとして2030年度に向けた目標を設定しています。
<主な2030年度目標と進捗>
|
指標 |
2030年度目標 |
実績(2023年度)(注)1 |
|
新車からの平均CO2排出量 (Tank to Wheel) |
▲40% (2010年度比) |
▲17% (2010年度比) |
|
電動車販売比率 |
50% (2035年度100%) |
15% |
|
事業活動からのCO2排出量 (スコープ1、2総量) |
▲50%(注)2 (2018年度比) |
▲35% (2018年度比) |
<スコープ1、2のCO2排出量の実績> (単位:千t-CO2)
|
|
2018年度 (基準年) |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 (注)1 |
|
スコープ1 |
|
|
|
|
|
|
スコープ2 |
|
|
|
|
|
|
合計 |
(注)2 |
|
|
|
|
2.2018年度の排出量実績である588千t-CO₂には、一部の持分法適用関連会社の排出量43千t-CO₂が含まれております。2023年2月の目標見直しにおいては、当時の環境マネジメント対象会社選定の考え方に沿って、当該持分法適用関連会社の排出量を除いた545千t-CO₂を基準値として2030年度目標である▲50%を設定しております。
(3)人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標
① 戦略
当社グループでは、三菱グループ共通の基本理念として位置づけられている「三綱領」を企業活動の指針としております。事業環境が急速に変化する中、当社グループが持続的に成長し、企業価値の向上を実現していくための鍵は「人材」であると考え、「ビジョン」「ミッション」を遂行するための行動指針である「MMC WAY」
2023年度に始動した中期経営計画「Challenge2025」を力強く推進し、持続的な成長を実現するためには、「より一層働きやすい職場への改革」、「教育・リスキリングプログラムの充実」、「多様で幅広い人材確保の推進」の3つを据え、これらを重点項目として掲げ、取り組んでいきます。また、こうした経営戦略に基づく人材戦略並びに施策については、代表執行役社長及び執行役等から成る人材開発会議を設置、月例で議論し、立案・実行しています。
② 指標及び目標
「より一層働きやすい職場への改革」
-フリーロケーション化の更なる推進 / 育児や介護に配慮した柔軟な勤務体制
当社では、社員がより効率的かつ、柔軟な働き方を実現することで、1人ひとりのワークライフバランスの確立に寄与するよう、リモートワーク制度を導入しています。リモートワークの場所については、従来自宅のみとしていましたが、セキュリティ面、また集中して業務に臨める等の環境を満たす場所であれば認めることとしました。
また、リモートワーク制度では原則週2回以上出社することとしていますが、育児や介護といったやむを得ない理由によりこれを満たすことが難しい社員に対しては、出社日数の制約を緩和しています。また、「両立支援コンシェルジュ」を社内に設置し、育児や介護など社員の個別相談に対応する等のサポートも行っています。
「教育・リスキリングプログラムの充実」
- 海外との相互社員派遣研修制度の拡大
当社では注力地域であるアセアンを中心に若手社員を1~2年派遣する海外業務研修プログラムを実施しております。それまでは職場推薦を条件としていましたが、2022年度からは公募枠を新設し、要件を満たす社員は誰でも応募できるようにしました。2024年度には1年プログラム10名、2年プログラム3名の計13名を派遣しました。また、2023年度からは関係会社からの受け入れを開始し、本社と海外関係会社相互の派遣研修による継続的な人材育成を進めています。
- DXリスキリングプログラム
中期経営計画「Challenge 2025」の中核となる取り組みの一つである「デジタル化推進・新ビジネス領域への進出」においても、デジタル人材の育成は極めて重要なテーマです。
2023年度には、デジタル人材育成の第一歩として、全役員及び間接従業員を対象に「IT/Digitalリテラシー向上研修」(計6時間)を実施し、全役員・社員の変革マインドの醸成に取り組みました。2024年度からは、加速度的に普及が進む生成AIの基礎知識習得及び業務活用に関するセミナーを開講するなど、社員がAIを適切に活用できる環境の整備を進めています。さらに、業務効率化を加速するノーコード・ローコードツールの活用を促進するとともに、それを支える教育プログラムを段階的に展開しており、社員の生産性向上を支援しています。
今後も、当社グループに必要なIT・デジタル人材像を明確に定義し、最先端のデジタルスキルを備えた人材の育成に向けた取り組みを着実に推進していきます。
- 専門性評価と昇給/昇進システムとの連動
2022年度の人事制度改正において、社員の行動評価項目として従来の「MMC WAY体現度」に「人材育成・組織管理」と「専門性」を新たに加えました。これは組織の持続的なパフォーマンス発揮には、管理職等の「人材育成・組織管理」能力と、専門知識と能力が不可欠との問題意識に基づくものです。導入当初の2022年度は、暫定的な全社基準のもとで評価を実施しましたが、2023年度には部門ごとに、それぞれの職務区分で必要な専門知識とスキルを定め、その発揮具合を昇給/昇進に反映させる仕組みをスタートしました。
2024年度は、部門で定めた「専門性」に基づき、職種別スキルマップと体系的な教育プログラムの整備を進め、各部門において、Off-JT(Off-the-Job Training)とOJT(On-the-Job Training)を連動させた育成体制をスタート、組織の持続的なパフォーマンス向上に努めています。
「多様で幅広い人材確保の推進」
- よりフレキシブルな給与体系の導入
当社では2023年度より管理職層を対象に「役割グレード制」を導入、職務や役割に応じた処遇を可能としましたが、これにより、多様な能力を有する人材の維持・獲得がしやすくなりました。今後は「役割グレード制」の運用を通じてよりフレキシブルな処遇を実現し、外部環境や事業戦略の変化に対応していきます。
- 多様な人材が活躍できる職場の構築
当社は、多様な人材が活躍する風土づくりを目指し2014年にダイバーシティ推進方針を定め、年齢・性別・障がいの有無等に関わらず、一人ひとりが能力を最大限発揮する環境整備に努めています。
例えば、生産部門においては、工程ごとの体力的な負荷等を定量化・可視化し、シニア・女性・障がい者なども無理なく働ける人にやさしい職場づくりを実現しています。
また、定年後も勤務するシニア人材については、多様な雇用・就業ニーズに対応したフレキシブルな勤務態様とし、パートタイム型・隔日勤務型の社員には、自己実現やキャリア形成に資することを企図して副業も可能としています。
また「女性活躍推進」にも積極的も取り組んでおり、2024年度期初には女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定、2028年度末までに女性管理職比率を上げていく目標を掲げています。2024年度末においては女性管理職比率は6.4%(前年度比+0.1%)ですが、ライフイベント等に左右されず、実力や意欲に見合ったキャリアが形成できるよう引き続き支援を行います。
障がい者の雇用においては、全社として雇用を促進していくため当社生産部門、特例子会社での採用促進を進め、2024年度は年度を通じて法定雇用率2.50%を超える雇用を達成しています。また地区状況を踏まえた雇用促進セミナーを実施する等、製作所・部門とも連携し、障がいが活躍できる職場づくりを進めています。
「労働安全衛生の推進」
従業員の安全と健康の確保は企業活動の基盤と考え、「全社安全衛生管理方針」をもとに、構内協力事業場も含め、継続して対策に取り組んでおります。
従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが、企業価値向上と持続的成長の実現に向けた原動力となります。当社は、従業員の健康を保持・増進させることを重要な経営課題の一つと位置付け、「健康宣言」
当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況等(以下「経営成績等」という。)に重要な影響を与える可能性がある主要な事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下はそのすべてを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスクのいずれによっても、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、以下の記載において将来に関する事項は、本有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と異なる可能性がありますので、ご留意ください。
<事業等のリスクのうち現在特に影響が懸念されるリスク>
後述します事業等のリスクのうち、足許で顕在化しており、今後も影響が懸念されるリスクは以下のとおりです。
(1)市場環境変化の影響
当社グループは、米国現地での生産・調達の割合は高くないため、米国関税政策により、米国での事業活動に対し相応の損益影響を受ける可能性があります。また同関税影響に伴う世界的な景気減速も懸念されることから、米国事業のみならず、当社グループ全体の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社グループは、世界各国において事業を展開しており、様々な地域、国で部品を調達し、生産活動を行い、製品を販売しております。同関税の間接的影響、各国の経済安全保障政策、国家間・地域紛争等により世界経済の先行き不透明な状態が続いていることから世界経済動向を注視し、柔軟かつ迅速な対応に取り組んでいますが、各国における景気後退、サプライチェーンの混乱、金融市場・為替市場の混乱等が発生した場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
<事業等のリスク>
(1)市場及び事業に係るリスク(オペレーショナルリスク)
① 部品・原材料調達の影響
当社グループは、製品の品質、コスト競争力向上の観点からグローバルに原材料、部品等を調達しており、部品・材料により集中発注、複数発注等、最適な発注形態を取ることとしておりますが、パラジウムやロジウム等、産出量が少ないだけでなく、産出が特定の国や地域に限られる希少金属も使用しております。
そのため、原材料、部品等の需給状況の急激な変動、調達先の国における政情の変化・経済安全保障に関わる輸出入規制の強化、自然災害の発生等の理由により、それらの調達先からの供給が停止した場合、又は適時に競争力のある価格で調達ができない場合には、当社製品の生産の遅延・停止やコストの増加が生じるおそれがあります。
また、各国において、企業に対して人権の取組みを求める法規の制定が進み、サプライチェーン上の人権リスク対応の必要性が急速に高まっており、これら法規に対して適時適切な対応ができない場合には、法令違反、輸入禁止や罰金などの罰則、社会的信用の低下によるブランド・イメージの毀損等により、生産・開発・購買・営業等の事業活動に影響し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクは、当社グループの中長期的な事業計画に与える影響も大きいため、事業活動・経営成績への影響を最小化すべく、サプライチェーン上のリスク対応の強化に努めていますが、将来顕在化する可能性はあります。
② 製品の品質・安全性の影響
当社グループは、製品品質の改善のため、市場からの情報に基づき関連部門が連携して迅速に不具合原因の究明及び対策を実施すること、また、潜在リスクの検証を適切に行うことに努めております。
当社グループによる製品及びサービスの品質向上及び安全性の確保の努力にかかわらず、製品の欠陥又は不具合によるリコール又は改善対策等が大規模なものとなる場合、あるいは製品の欠陥又は不具合による大規模な賠償請求がお客様からある場合には、多額の費用負担、当社製品への評価、ブランド・イメージの毀損及び販売の低下等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法規制等の影響
当社グループは、事業を展開する各国において自動車業界に関連する排出ガス、燃費、騒音、化学物質、リサイクル、水資源等の環境に係る様々な法律や政府による規制の適用を受けています。
また、消費者保護規制、事業及び投資に対する許認可、労働規制、外国為替規制、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、各種税法(関税含む)、独占禁止法、贈収賄防止法、下請法等内外の広範な法令の適用を受けております。
これらの規制や法令に対応するため、当社グループは、規制や法令の遵守体制を整え、各担当部門が違反の未然防止の対策を講じ、コンプライアンスに係る案件を察知した場合には速やかに対応する体制を整備するよう努めております。しかしながら、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反が生じ、あるいは対応の内容、効果、迅速性等が不十分との指摘を受ける可能性があります。その場合、規制当局による行政調査の対象となったり、罰則を受けたり、あるいは関連する訴訟の当事者となるなどの可能性があります。これらの可能性が現実に生じた場合には、当社グループのコンプライアンス・レピュテーションや経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟その他の法的手続の影響
当社グループは、事業活動を行っていく中で、ユーザー、取引先、第三者などとの間で様々な訴訟その他の法的手続の当事者となる可能性があります。それらの法的手続において、あるいは現在進行中の法的手続において、当社に不利な判断がなされた場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、法的手続きのうち製造物責任に関する損害賠償請求訴訟については、敗訴等の場合の損害賠償金等をカバーすべく一定の限度額で製造物責任保険に加入していますが、必ずしもすべての損害賠償金等が保険でカバーされるとは限らず、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。個別の製造物責任訴訟の状況については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(連結貸借対照表関係)6 偶発債務」を参照ください。
⑤ 知的財産権侵害の影響
当社グループは、技術・ノウハウ等の知的財産の保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権の侵害防止の対策を講じております。しかしながら、当社グループの知的財産権が不法に侵害されて訴訟費用が発生した場合、又は、第三者から予期せぬ知的財産権侵害の指摘を受けることに伴い、当社グループの製品の製造販売の中止、想定外のライセンス料支払、賠償金支払、当社製品への評価及び需要の低下等が生じた場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 情報技術及び情報セキュリティの影響
当社グループの運営や製品・サービス等に利用する情報及びこれを保存するネットワーク、システム等の情報技術は、委託先管理のものを含めて多岐にわたります。当社グループは、ハードウェア・ソフトウェアの安全管理対策を、個人情報保護対策を含めて実施するほか、当社グループ従業員への情報セキュリティ教育を実施しております。しかしながら、サイバー攻撃は攻撃手法の高度化・複雑化が進んでおり、当社グループ又は取引先へのハッカーによる不正アクセス・サイバー攻撃(コンピュータウイルス感染等)、当社グループ内部若しくは委託先での管理不備ないし人為的な過失、自然災害等の発生により、当社技術情報等の機密情報・個人情報等の漏えい、重要な業務システムやサービスの停止、当社製品の電子制御機能への悪影響、不適切な事務処理、又は重要データの破壊・改ざん等が発生することが考えられます。その結果、当社グループのブランド・イメージや社会的信用の低下による販売の減少、法的請求、訴訟、賠償責任若しくは制裁金や罰金の支払義務発生、又は生産停止等により運営に支障が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業戦略や競争力維持に係るリスク(戦略リスク)
① 営業戦略、競合他社動向への対応の影響
自動車業界は、地球温暖化対策としての電動化に加え、AI技術等の進化を取り込み知能化が進むなど、人の移動とモノを運ぶための手段であった自動車の概念が大きく変わり、「100年に一度」の大変革の時代を迎えています。当社グループは2023年3月に、2023年度から2025年度までの中期経営計画「Challenge 2025」を発表し、これまで行ってきた構造改革による強靭かつ機動的な経営体質を基盤とし、地域や国の独自性に適した事業の拡充を図り、全社的な「手取り改善活動」の継続により、安定的な収益基盤の確立に取り組んでいます。そのうえで、更なる成長と次の時代へのチャレンジを実現するため、研究開発費や設備投資を安定的に増加させることを計画しました。しかしながら、今後、そういった戦略が想定通りに進まず、競合他社に対して優位な施策を講じることができない場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 製品・技術開発の影響
当社グループは『環境×安全・安心・快適』を実現する技術に裏付けられた信頼感により『冒険心』を呼び覚ます心豊かなモビリティライフを提供するために、地域ごとの多様な要請、カーボンニュートラル対応等、自動車メーカーに求められる技術や姿勢が急激に変化している中において、お客様の価値観とニーズに対応した有用かつ現実的で使いやすく、「三菱自動車らしさ」を具現化した新技術や新製品をタイムリーに投入することが重要と考え、開発に日々取り組んでおります。しかしながら、きめ細かな調査に基づく研究・開発であっても、お客様の価値観とニーズを十分に捉えることができない場合、又は内部・外部的な要因により、新技術や新製品を、タイムリーに開発しお客様に提供することができない場合には、販売シェアの減少、売上高及び収益力の低下を引き起こす可能性があります。
③ 他社との提携等の影響
当社グループは、経営資源の効率化や相乗効果を期待し、研究開発、生産、販売等の分野において共同出資関係を含む他社と業務提携・合弁による事業運営を行っておりますが、市場環境・規制変化に伴う事業構造の変化、相手先の事業戦略の変更、当事者間の提携方針の不一致、出資比率の変更等により、提携・合弁関係を変更する又は維持できなくなる可能性や期待どおりの成果を生まない可能性があります。期待どおりの成果を生まない場合、提携・合弁先の財務状態が悪化した場合、又は出資関係の変更・大幅な提携の変更・提携の解消が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人事労政戦略の影響
当社グループは、高度な専門性を持つ人材の確保と、活躍機会の提供が極めて重要であると考えており、要員構成の是正による適切な人員配置、役割に基づいた処遇制度の整備、多様な働き方を支える風土の醸成と、個々の成長を促す仕組みづくりを推進しております。
しかしながら、採用難や労働市場の流動性の高まりにより、計画通りの採用や定着化が進まなかった場合には、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性があります。
また、当社グループではグローバルに事業を展開し、持続的に成長するためには、人権尊重の取り組みが社会的責任を果たしていく上で不可欠な要素であると認識しており、「人権方針」で制定した差別の禁止や不当な労働慣行の排除等に取り組んでいます。しかしながら、当社グループ及び関係者が人権上問題のある行動を取った場合には、お客様の信用・信頼を失う、又は社会的信用の低下等によるブランド・イメージの毀損等が事業基盤に影響を与える可能性があります。
⑤ 気候変動の影響
当社グループは、燃費/CO2排出規制やZEV規制の強化、カーボンプライシング等の導入拡大を想定し、当社グループの環境への取り組み方針と目標を定めた「環境計画パッケージ」に基づき、電動化の推進や各拠点での省エネルギー活動と再生可能エネルギーの導入等を進めております。しかしながら、想定を超えて気候変動政策が強化され、燃費/CO2排出規制やその他規制の更なる強化への対応により原価が高騰する場合、又はカーボンプライシングなどの導入拡大によって生産や調達の原価が高騰する場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、グローバルでのCO2の削減が進まず、気温が上昇し続け、現在よりも広域で台風、豪雨等の自然災害が頻発・激甚化することに備えて、事業継続計画の策定などの適応策の推進にも努めております。しかしながら、当社グループや取引先の生産拠点等が所在する国・地域において、想定以上の洪水等の自然災害の頻発や激甚化により、部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延又は停止する場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)金融・経済に係るリスク(財務リスク)
① 為替変動の影響
海外売上高比率が約8割を占める当社グループでは米ドル、ユーロ、豪ドル等の外貨建債権を有しており、また、タイ子会社にてグローバルでの輸出生産を行っていることから、タイバーツを中心に外貨建債務も有しております。
円と外国通貨の為替相場が変動すると、外貨建資産(売掛金等)や外貨建負債(買掛金等)の価値が増減するため、当社グループの円ベースの損益に影響を及ぼします。
現在、インドネシア生産車の輸出、タイ生産車の現地販売拡大等、為替影響低減のために必要な措置を適宜進め、為替相場変動の影響削減に中長期的に取り組んでおりますが、大幅な為替変動が発生した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 市場環境変化の影響
当社グループは、世界各国で事業を展開しており、様々な国、地域で生産活動を行い、製品を販売しております。これらの事業活動は、それぞれの国、地域の経済低迷、金融危機などにより影響を受ける可能性があり、また、地政学リスクによって、輸送費の上昇や、船腹が確保できない、又は輸送に遅れが生じることにより生産・販売活動に影響を及ぼし、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 取引先等の信用リスク
当社グループは、事業活動を行っていく中で、販売業者や、販売金融事業による顧客・リース先等の取引先の信用リスクを伴っております。
販売業者等の取引先に対する信用リスクについては、カントリーリスクや取引先の財務状況に対する継続的な評価を行いながら適切な債権保全を図ることで、その抑制に努めております。また、販売金融事業から生じるリスクに対しては、厳格な審査・回収管理を行い、破綻の発生及び回収不能額の抑制に努めております。しかしながら、外部環境等の悪化等を要因とし、これらのリスクに基づく損失が当社グループの想定を上回る場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 資金の流動性の影響
当社グループは、金融機関からの借入に加え、コマーシャル・ペーパーの発行等により資金調達を行っております。当社は事業環境の悪化による資金需要の増加に備えるべく、コミットメントライン2,720億円に加えて、海外子会社においても資金調達枠を設定することで十分な流動性を確保するとともに、メインバンクをはじめ取引金融機関との良好な関係性の維持に努めております。しかしながら、経済・金融危機等の発生、又は当社グループの信用格付けの引き下げ等により、金融市場から適切な条件で必要とする金額の資金調達ができなくなった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事業の継続に係るリスク(ハザードリスク)
① 戦争・テロ・政治不安・治安の悪化の影響
当社グループは、日本及び世界各地に開発、製造、販売等の拠点の施設を有しているため、各国・地域でテロ、戦争、内戦、政治不安、治安の乱れ等が発生することにより、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす可能性があります。
かかる状況を想定し、経済安全保障クロスファンクショナルチームで想定される支障の軽減策を準備・実行するとともに、仮にこうした事象が発生した場合には、関係部門が参画した対策会議を立ち上げ、全社横断的な観点で対応を行っております。
しかしながら、想定を超える規模でテロ、戦争、内戦、政治不安、治安の乱れ等が発生し、部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延若しくは停止することにより、収益の減少やコストの増加をもたらした場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 自然災害や事故、感染症等の影響
当社グループは、日本及び世界各地に開発、製造、販売等の拠点の施設を有しているため、各国・地域での大規模な地震・台風・豪雨・洪水等の自然災害や火災等の事故、感染症の発生により、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合があります。
これらに備え、当社グループ事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき、BCM*委員会において事業継続計画を策定するとともに、定期的な訓練による有効性検証を行い、今後の新たな脅威に備えております。
しかしながら、想定を超える規模で自然災害、事故、感染症等が発生し、開発、製造、販売等の拠点の施設の損壊、又は部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延若しくは停止する場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
*:Business Continuity Managementの略
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、本項において含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績
当連結会計年度は、タイ・インドネシアの自動車需要回復の遅れや、世界的な車両供給制約が緩和されたことで販売競争が再び激化するなど、当社グループを取り巻く経営環境は厳しさを増しました。
そのような環境下において、当社グループは、上期までは、インフレ対応など固定費が増加する中でも、為替の追い風もあり収益を伸ばすことができましたが、下期以降は、当社グループにとってコスト通貨であるタイバーツ独歩高もあり、為替もマイナス影響に転じました。厳しい状況下ではありましたが、新型車を主体とした台数増加を着実に収益に繋げると同時に、費用削減の徹底により、2025年2月に修正した通期業績見通しを上回っての着地となりました。
結果、通期販売台数はグローバルで前年度比3%増の84万2千台、通期売上高は前年度比微減の2兆7,882億円となりました。通期営業利益は、1,388億円(前年度比△522億円)となりました。なお、経常利益は986億円(前年度比△1,104億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は410億円(前年度比△1,137億円)となりました。
中期経営計画「Challenge 2025」が始まって2年が経過しましたが、この間の自動車業界を取り巻く環境の変化は極めて大きかったと感じております。そのような状況下においても、当社グループの強い領域に徹底的に注力し、自社だけで取り組むことが非効率な領域は、協業パートナー活用を積極的に進めることで、事業基盤の安定性が徐々に高まってきたのではないかと考えております。
2025年度の経営環境は、米国の関税措置やこれに伴う各国景気への影響など、自動車業界にとって逆風が強く、不可逆的な変化も予想されます。しかし、引き続き変化に機敏に対応し、現中期経営計画で準備してきた新型車を梃に販売、収益を伸ばすとともに、コスト管理を改めて徹底し、投資においても優先順位を明確につけることで、計画の達成に向けて努めてまいります。なお、2025年度の業績については現段階で全てを見通すことが極めて困難であり、今後の様々な変化に対応するため、適宜見直してまいります。
事業別セグメントの状況は以下のとおりです。
(ⅰ)自動車
当連結会計年度における自動車事業に係る売上高は2兆7,578億円(前年度比△138億円)となり、営業利益は1,341億円(前年度比△538億円)となりました。
(ⅱ)金融
当連結会計年度における金融事業に係る売上高は466億円(前年度比+86億円)となり、営業利益は42億円(前年度比△2億円)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の総資産は2兆2,459億円(前期末比△2,086億円)となりました。そのうち現金及び預金は4,525億円(前期末比△2,217億円)となりました。負債合計は1兆2,724億円(前期末比△1,376億円)となり、そのうち有利子負債残高は3,148億円(前期末比△1,776億円)となりました。純資産は9,736億円(前期末比△709億円)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
① キャッシュ・フローの基本的な考え方
当社は、財務規律を維持しつつ健全で持続可能な成長を図り、企業価値を高めることで、株主の皆様への成果配分を安定的に維持することを基本としており、フリー・キャッシュ・フローをそのための経営管理指標の一つとして設定しております。
この考え方に基づき、当社グループにおける自動車の開発・生産・販売等の事業活動における運転資金需要(材料費、人件費、各種経費、金融事業に係る貸付資金等)や、次世代新技術や環境規制対応、生産効率向上に資する設備の維持・更新などの設備投資需要を、毎年当社が新たに生み出すキャッシュ・フローにより賄うことを基本としつつ、必要に応じ過年度までに蓄積した内部資金や金融機関借入等の外部資金を活用しております。
(注)フリー・キャッシュ・フローの算出においては、以下の計算式を使っております。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計です。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により1,747億円の収入超(前年度比339億円の収入増加)、投資活動により1,148億円の支出超(前年度比241億円の支出減少)、財務活動により2,748億円の支出超(前年度比3,125億円の支出増加)となりました。加えて、現金及び現金同等物に係る為替換算差額による93億円の減少もあり、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し2,241億円減少し、4,501億円となりました。
なお、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは、599億円の収入超(前年度比580億円の収入増加)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動は1,747億円の収入超となりました。この収入超は主として、税金等調整前当期純利益及び減価償却費によるものであります。また、前年度比では、339億円の収入増加となりました。この収入増加は主として、棚卸資産の減少及び仕入債務の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動は1,148億円の支出超となりました。この支出超は主として、設備投資の支払によるものであります。また、前年度比では、241億円の支出減少となりました。この支出減少は主として、設備投資の支払減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動は2,748億円の支出超となりました。この支出超は主として、長期借入金の返済によるものであります。また、前年度比では、3,125億円の支出増加となりました。この支出増加は主として、借入金の返済増加によるものであります。
③ 資金の流動性及び資金調達
当連結会計年度末の連結現預金残高は4,525億円、連結有利子負債残高は3,148億円となりました。また、当社において国内金融機関から2,720億円のコミットメントラインを設定しており、現預金残高にコミットメントラインを加えた流動性は約7,200億円となっております。
また、事業環境の悪化による資金需要の増加に備えて、上記の流動性に加え、海外子会社においても資金調達枠を設定し、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な資金の確保に努めております。
なお、当社グループは、格付機関である格付投資情報センター及びS&Pから格付を取得しており、本報告書提出時点において、格付投資情報センター:「BBB+」、S&P:「BB+」となっております。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
|
|
当連結会計年度 数量(千台) |
前連結会計年度比(%) |
|
国 内 |
478 |
95.8 |
|
海 外 |
431 |
84.4 |
|
アジア |
419 |
84.2 |
|
その他 |
12 |
91.0 |
|
合計 |
910 |
90.0 |
(注)生産実績は当社及び連結子会社の完成車(国内はKDを含む)の生産台数を示し、他社へのOEM供給及び共同
開発車の当社生産分を含んでおります。
② 受注実績
当社は、大口需要等特別の場合を除き、見込生産を行っております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
|
|
当連結会計年度 |
前連結会計年度比(%) |
||
|
数量(千台) |
金額(百万円) |
数量 |
金額 |
|
|
国 内 |
259 |
631,567 |
97.7 |
103.7 |
|
海 外 |
702 |
2,156,664 |
91.9 |
98.9 |
|
北米 |
192 |
734,225 |
104.9 |
103.3 |
|
欧州 |
31 |
127,066 |
40.4 |
59.9 |
|
アジア |
251 |
569,950 |
97.4 |
106.1 |
|
オセアニア |
84 |
321,122 |
94.7 |
100.7 |
|
その他 |
143 |
404,299 |
91.2 |
100.8 |
|
合計 |
961 |
2,788,232 |
93.4 |
100.0 |
(注)1.販売実績は、外部顧客の所在地別の当社及び連結子会社の完成車及びKDパックの卸売り台数を示しております。
2.国又は地域の区分は、「地理的接近度及び事業活動の相互関連性」によっておりますが、社内管理との整合性を図るため、前連結会計年度まで「欧州」に含めておりましたウクライナ及びカザフスタンを当連結会計年度より「その他」に含めて表示しております。当該変更に伴い、前連結会計年度との比較は、変更後の区分に組み替えた数値で算出しております。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績の10%以上を占め
る相手先がないため、記載を省略しております。
(4)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末日における資産・負債の計上及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収益・費用の計上に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積りは、過去の実績や合理的と考えられる方法に基づき行われておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が当社グループの連結財務諸表における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。なお、市場措置に関する負債、偶発債務(訴訟損失引当金)及び繰延税金資産の回収可能性については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。
① 貸倒引当金
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。経済状況の変化等により顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には、追加引当が必要となる可能性があります。
② 製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い過去の実績を基礎に将来の保証見込みを加味して計上しております。実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。
③ 退職給付費用及び債務
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期収益率などが含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
④ 投資有価証券の評価
当社グループは、価格変動性が高い公開会社の株式と、市場価格のない非公開会社の株式を保有しております。当社グループは、投資有価証券の評価を一定期間ごとに見直し、その評価が取得原価又は減損後の帳簿価額を一定率以上下回った場合、減損処理を実施しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失又は帳簿価額の回収不能が発生した場合、減損処理の実施が必要となる可能性があります。
⑤ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損会計の適用に際し、生産用資産は主として事業会社単位、販売関連資産は主として事業拠点単位、賃貸用資産及び遊休資産は個々の資産グループとしてそれぞれグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積もっております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、損益に影響を与えることがあります。
|
契約会社名 |
相手方 |
契約の内容 |
契約締結日 |
|
|
名称 |
国籍 |
|||
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
中国航天汽車有限責任公司 瀋陽建華汽車発動機有限公司 三菱商事株式会社 エムシーアイシー持株有限公司 |
中国
中国
日本 マレーシア |
中国における自動車用エンジン事業に関して瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司を設立する契約 |
1997年5月15日 |
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
日産自動車株式会社 スズキ株式会社 |
日本 日本 |
ジヤトコ株式会社に関する株主間の権利義務等を定めた契約 |
2007年3月15日 |
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
プジョー・シトロエン・オートモビルズ・エス・エイ |
フランス |
ロシアで車両を生産するための合弁事業に関する基本契約 |
2008年5月19日 |
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
PT Krama Yudha 三菱商事株式会社 |
インドネシア 日本 |
インドネシアで車両を生産するための合弁事業に関する契約 |
2015年3月24日 |
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
日産自動車株式会社 |
日本 |
日産自動車株式会社との資本業務提携に関する契約 |
2016年5月25日 |
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
ダイムラーAG ルノー ルノー・日産会社 日産自動車株式会社 |
ドイツ フランス オランダ 日本 |
自動車事業における戦略的協力に関する提携契約 |
2018年10月3日 |
当社は、日産自動車株式会社(住所:神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地)との間で、2016年5月25日付Strategic Alliance Agreement(以下「戦略提携契約」といいます。)の変更契約(以下「本変更契約」といいます。)を2024年11月7日付で締結しました。
本変更契約において、当社及び日産自動車は、戦略提携契約が終了した場合には、一定の条件の下で、①当社は日産自動車に対しその保有する当社株式の全てを当社に売り渡すことを請求することができる旨、及び②日産自動車は当社に対しその保有する当社株式の全てを買い取ることを請求することができる旨を合意しています。
かかる合意は、戦略提携契約に基づく日産自動車による当社株式の保有は、同契約に基づく両社間の戦略的アライアンスの一環であることを踏まえ、戦略提携契約が終了し両社間のアライアンス関係が終了した場合には日産自動車による当社株式の保有も解消できるようにすることを目的としたものです。
当社は、取締役会において、日産自動車の役職員を兼務する取締役を除いた取締役によって本変更契約の締結を審議し、承認しております。
なお、2024年4月1日前に締結された契約(戦略提携契約のうち本変更契約により変更されていない部分を含む。)については、当事業年度においては記載を省略しております。
当社グループは、2023年3月に発表した中期経営計画「Challenge 2025」の実現に向けて、研究開発活動に取り組んでいます。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費(自動車事業)は
当社グループの研究開発体制、次世代技術の開発状況及び2024年4月から2025年3月にかけて発売した主な新商品は次のとおりであります。
(1)研究開発体制
日本では、「技術センター」及び「EV技術センター」を中心に、デザイン・技術の先行技術開発・設計・実験を行っております。海外では、北米・欧州・中国・タイに研究開発拠点を置き、地域ごとの市場特性を踏まえた技術/商品開発を連携して行っております。また、ルノー・日産とのアライアンスを活用しながら、技術/商品開発を進めております。
(2)次世代技術の開発状況
中期経営計画で定義づけした、三菱自動車らしさ「『環境×安全・安心・快適』を実現する技術に裏付けられた信頼感により、『冒険心』を呼び覚ます心豊かなモビリティライフをお客様に提供すること」を具現化する魅力ある商品を実現するための技術開発を推進しております。
① 環境技術の開発
2023年3月に発表しました「Challenge 2025」で掲げた2030年までの電動車販売比率50%達成に向けて、当社独自の『プラグインハイブリッドEVシステム(以下、PHEVシステム)』をコア技術として、PHEV用コンポーネント・バッテリーを電気自動車(バッテリーEV)やハイブリッド車(HEV)に活用し、電動車ラインナップを拡大します。コアモデルの『アウトランダーPHEV』は2024年10月日本向けを皮切りに、駆動用バッテリーを大容量・高出力化することで、EV航続距離を大幅に延長する改良を実施し、欧州向けも追加しました。重点戦略地域であるアセアン向けにおいては、2024年2月タイ向けにPHEVシステム技術を活用し新開発したHEVシステムを搭載する『エクスパンダー(HEV)』『エクスパンダー クロス(HEV)』を発売し、『エクスフォース』シリーズにも展開しました。バッテリーEVは、2023年12月に国内向けに電池搭載量を増やし商品力を強化した『ミニキャブEV』を発売し、24年7月には日本郵便向けに3,000台受注するなど販売を伸ばしております。すでに販売中の軽乗用EVに加え、先進国向けにはアライアンスを活用したバッテリーEVを投入し、ラインナップを拡充していきます。なお、今後の電動化の急速な進化(バッテリー、モーター等)に対して、迅速かつ効率的に技術開発を進めるため、アライアンス間の電動コンポーネントやパワートレインの相互活用を推進していきます。
② 安全・安心技術の開発
・安全技術の開発
当社は、交通事故ゼロのクルマ社会に向けた安全理念を掲げ、安全技術の考え方として自動車安全フレームワークを策定しました。ここでは、1.交通事故を未然に防止する技術(予防安全)、2.交通事故の被害を軽減する技術(衝突安全)、3.工業製品としてハードウェア・ソフトウェア両面から想定される危険の回避(製品基本安全)の3点を軸として取り組んでおります。様々な安全技術を製品に反映することによって、お客様に安全、安心かつ快適な運転をしていただけることを目指しています。代表例として、先進予防安全技術『三菱e-Assist*1(イーアシスト)』や衝突安全技術『衝突安全強化ボディRISE*2(ライズ)』があります。また、アセアンの交通環境で、より効果を発揮する安全技術の開発を推進しております。
・4WD技術・オフロード性能による安心感
どんな路面でも安心して走れる圧倒的な走破性を提供するため、当社の強みである四輪制御技術『S-AWC*3』の進化に継続して取り組んでおります。特に電動技術とS-AWCとの融合は、当社が目指す環境×安全・安心・快適な特性をさらに向上させる技術として開発を推進しており、世界中のお客様に安心・快適で、さらにワクワクする走りを提供するために活用・展開してまいります。
・堅牢なボディとシャシーによる耐久性・信頼性
日々変化する市場の使用環境や路面性状、お客様のクルマの使い方について毎年グローバルに調査を実施し、世界の厳しい環境や路面を再現したコースや試験設備で実験条件をアップデート、設計へのフィードバックをしています。これにより「お客様が遭遇するどんな環境においても、必ず無事に帰ることができる」堅牢なクルマづくりを追求しています。昨今は長年使用したクルマでも「安心・快適」に使用してもらえるための経時劣化品質の取り組みも強化しております。当社の継続した耐久信頼性技術開発の取り組みにより、新型『トライトン』でアジアクロスカントリーラリー2024に参戦し、上位入賞を果たしました。
③ 快適性技術の開発
当社は、製品・サービスをご利用いただくお客様一人ひとりのニーズへの理解を深め、運転しやすい環境と心地よい車内空間で、行動意欲を高め、乗る人全員にワクワク感を提供していくことを目指しています。その実現に向けて、社会環境や生活スタイルの変化を反映し日々進化するIT技術等を取り入れ、情報提示や運転装置、運転支援機能などを先進的に進化させると同時に、居住性、利便機能やコネクテッド及びおもてなし機能などの性能向上や機能性の更新・充足を図っていきます。
*1:三菱e-Assist:電波レーダーやカメラなどによって、安全かつ快適なドライブをサポートする予防安全技術
*2:RISE:Reinforced Impact Safety Evolution
*3:S-AWC:Super All Wheel Control
(3)2024年4月から2025年3月に発売した主な新商品
・ コンパクトSUV『エクスフォース』HEVモデル