第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当期における世界経済は全体としては回復基調で安定推移したものの、勢いに欠ける結果となりました。
 足元の経済環境は、自国第一主義を掲げる米国政権の関税強化とドル安誘導政策の影響を受け混迷しています。二転三転する関税措置の迷走で、多くの国で物価の上昇や景気後退の脅威にさらされるリスクの高まりから、世界経済が一気に後退する可能性を秘め、過去に類を見ないほどの不確実性の高まりを見せています。更に現在の状況は、長年培った自由貿易の規律を崩し世界貿易構造の瓦解さえ生みかねない最大のリスクを抱える問題に発展しつつあります。
 当社グループが属する自動車業界においては、需要の回復基調が継続すると見込まれるものの、地域による市場の変容や構造変化に加え、上述のとおり米国の関税・為替政策の転換とそれに起因する米中の貿易対立が世界全体の自動車需要に影響を与えかねない状況が続くと思われます。また深刻化する気候変動に対しては、自動車メーカー各社ともカーボンニュートラルの実現を目指し電動車の市場投入を進めています。当期においては市場特性や各国の環境政策の変化を受け、電気自動車(BEV)の成長に減速感がでたものの、中長期では伸長することに疑いはないと考えています。更に、車づくりにおいては、市場の選択肢を残すための様々なパワートレインの開発や自動運転技術、ソフトウェア等の付加価値競争が激化し、自動車メーカー間の提携や他業種協業の動きも活発化しています。
 このような環境の下、当社グループは、電動化時代を支える存在となり、全てのステークホルダーから「選ばれる会社」を目指し、新中期経営計画『Yorozu Sustainability Plan 2026(YSP2026)』(計画年度:2024~2026年度)を2024年5月に公表いたしました。ESG経営のE(環境)経営を武器とし、成長と収益力の取組みと融合することで、事業基盤を強化し、一方ではESG経営のS(社会・人)、G(ガバナンス)を柱に、財務戦略も加えた全体最適化により、経営基盤を強化することで企業価値の向上を目指すものであります。
 初年度である当期は、この方針に沿って取組みを進めたものの、取り巻く自動車業界の構造変化が想定以上に加速し当社の経営を圧迫するとともに、世界の市場での中国メーカーの台頭などビジネス上の新たな脅威を生みました。また新車立上げ時の混乱や品質問題、サイバー攻撃による改善活動の停滞等、自社の弱点を顧みる機会にもなりました。
 これらの外部環境の大きな変化と自社の課題に対応するため、2年目となる2025年度は、YSP2026の基本方針について、対処すべき方向性をより明確化するためにYSP2026を追補するとともに、足元の環境の変化にも負けない企業体質を作るべく各種取組みを行ってまいる所存です。

 

■YSP2026の追補
 追補を要するYSP2026策定時からの変化


 

 

基本方針の見直し(追補)

YSP2026策定時に掲げた最終年度の業績目標を達成すべく、経営方針は不変のまま追補を要する変化を踏まえ、対処すべき方向性をより明確化するために、6つの主要方針について見直しをいたしました。


 

見直し内容


 

 

■2025年度の活動方針

2025年度の活動方針の2本柱は、「収益のV字回復」によるYSP2026の最終年度の目標必達に向けた活動を最優先としつつ、その先の成長に向けた「将来への布石」の検討も加速すべく事業基盤の強化に一層取り組んでまいります。


 

収益のV字回復(1つ目の活動方針)

逆風の事業環境の下、「収益のV字回復」に向け全社一丸となった“Success 25V“と銘打った合理化活動を推進し、生産台数減に対しても、抵抗力を持った損益分岐点の改善を目指してまいります。


 

 

将来への布石(2つ目の活動方針)

今後の収益の安定性、事業の成長を見据えたマネジメントとテクニカルの2つの領域に加え、企業価値の向上に向けた体制強化を見据え「将来への布石」に向けた取組みを実施してまいります。


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

 <ガバナンス>

 当社は2024年5月に発表した中期経営計画(YSP2026)の経営方針で「企業価値の向上」として E、S、Gの強化を掲げて、それぞれの諸課題について経営の柱として取り組んでおり、ESG推進室がサステナビリティ全般の機能軸としてサステナビリティ活動を推進しています。機能軸長の代表取締役社長/社長執行役員(COO)はサステナビリティ活動の進捗・パフォーマンスの評価・年度の活動計画のレビュー・見直し等の執行を行っています。活動の統制としては、月1回の経営会議に代表取締役社長、ESG推進担当執行役員が参加し、月次の報告を実施しております。また、その他サステナビリティ活動に関する重要課題は、取締役会において、審議・決定を行っております。

 <リスク管理>

 当社は、企業理念に基づき、業務の適正を確保し企業価値の向上を図るため、内部統制システムの整備に関する基本方針を取締役会で決議しており、その方針に基づいて全社的リスク管理活動を推進しています。リスクは、事業機会に関連するリスクと事業活動の遂行に関するリスクとして、各部門から抽出したリスクを集約し、経営会議で議論され、サステナビリティに関する内容を含む重大リスクを選定のうえ、年1回、取締役会で決定しております。決定されたリスクは対応部門に割り当てられ、個々の責任と権限を基に、リスク対策実施計画を策定のうえ、リスク低減活動を行っております。活動の進捗は代表取締役社長をトップとした「リスクコンプライアンス委員会」にて報告し検証され、活動の改善を行っております。また、活動の統制として、内部監査室は執行部門を年1回監査し、その結果を取締役会に報告し承認を得ております。なお、その他機会を含む重要課題は課題別の会議体(ステアリングコミッティー)にて、取締役社長をはじめとして各機能軸長、関係者による会議を実施し、進捗確認、活動の方向性の決定を行っております。

 

 

(2)人的資本、多様性

項目

取組状況

ンス

2021年度より社長を委員長とするステアリングコミッティーを立上げ、多様性に関する状況の確認、議論、施策に対する取り組みを実施しております。また、2023年度より多様性にとどまらず、人的資本に関する幅広い内容について議論を進めており、YSP2026ではダイバーシティをさらに深化しDE&Iに取り組んでおります。その他、社外取締役へ年1~2回の状況報告を行い、意見を頂戴しております。

1.人材戦略及び職場環境整備

これまでも経営戦略に沿った適材適所の人財配置を行ない、従業員の能力発揮を後押ししてきましたが、 2023年度より人的資本を把握し、その価値向上をはかるために、新たに 「タレントマネジメントシステム」 を導入しました。今後は、人財ポートフォリオに必要な人財を、コンピテンシーや経歴をもとに選抜し、補いきれない場合にはリスキリングの実施及び外部からの新規採用を行うなど経営戦略に整合した人事戦略を構築してまいります。

 

2.人材育成方針

教育の目的は、組織に価値をもたらす人財(ヨロズパーソン)の育成、従業員の自己実現をサポートしていくことです。ヨロズパーソンは、高い倫理観のもと自ら課題を認識し、問題解決と学びを実践し続ける社員であると考えております。又、会社はキャリアプランを共有し、中長期的な視点に立った教育により、社員の満足度を高める環境整備に取り組んでまいります。

(1)共通教育

   ① 一般教育、② グローバル対応力の向上

(2)専門教育

(3)その他技能訓練・資格取得

 

3.女性の活躍推進

ダイバーシティの推進にあたっては、ダイバーシティ管理職(※)比率を指標として取組を進めてまいりました。その一つである女性活躍推進については、「プラチナえるぼし」を神奈川県で初めて、また製造業でも全国で初めて2021年11月に取得いたしました。これまで、人事部による個別の女性面談や、各職場における育成計画作成などを行ってまいりましたが、今後も、誰もが働きがいを持ち働き続けたいと感じられる職場を目指し、職場環境整備に取り組んでまいります。そして 2030年ダイバーシティ管理職比率30%を目指し、女性管理職比率は現在の1.8倍にあたる22.7%を目標に取り組んでまいります。

(※)ダイバーシティ管理職:女性、シニア、外国籍、障がい者など

 

 

2022年度

2023年度

2024年度

2030年度(目標)

女性管理職比率

12.3%

13.0%

12.5%

22.7%

 

 

4.男性育休取得

当社では、従業員の仕事と子育て両立支援として、誰もが働きやすい環境を作ることによって、すべての従業員が能力を十分に発揮することを目的に、男性育休取得促進を行っています。その一環として、管理職向け研修や社内報に育休取得者の実績を掲載するなど、職場環境整備を進めた結果2024年度における男性育児休業取得率は100%となりました。今後も諸施策を実施し継続して男性が育児休業を取得し易い環境整備に取り組んでまいります。

 

[次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画]

計画期間

2025年 4月1日~ 2027年 3月31日までの2年間

目標①

所定外労働を削減するため、ノー残業デーを設定、実施する

目標②

計画期間内に、男性の育児休業取得率を60%以上にする

 

 

5.男女賃金差異

当社の男女賃金差異については、男性の賃金に対する女性の賃金の割合が70.1%となっており、差異の生じている理由としては、若い女性従業員の入社が増えている、また、全従業員における管理職以上の割合が男性23.7%に対し女性11.8%と男性に比べ女性が少ない事が理由と考えられます。評価制度において男女での差は設けていないため、実際に管理職の同職位における従業員の賃金差は無く、制度上の問題は生じていません。今後、差異を改善していくためには、女性の管理職割合を増やしていく事が重要と考えております。

リスク

管理

従業員関連のリスク管理体制としては、エンゲージメントサーベイを実施し、結果を各部署へフィードバック、アクションプランを次年度の業務計画へ織り込みPDCAを回しています。また、労働組合と年2回の事務折衝を行い、組合員の状況を把握、要望を制度化するなどしてリスク管理を行っています

指標と

目標

ダイバーシティの推進においてはダイバーシティ管理職比率2030年30%を目標とし、取り組みを進めてまいります。取り組みを進めることで、職場環境整備、女性管理職比率の向上(目標22.7%)、男性育休取得率の向上(目標60%以上)及び男女賃金差異の改善に繋げてまいります。

 

 

 

 

 

(3)気候変動関連

取組状況

YSP2026の経営方針の1つとして「E(環境)対応を武器にしたものづくり」を掲げると共に、2021年に策定した「ヨロズグローバル環境ビジョン2040」では、「2040年までにカーボンニュートラルにチャレンジいたします」との宣言を、取締役会で決議しております。また、気候変動による事業リスク・機会の共有や対策の決定を経営会議で取り扱い、それらを取締役会に報告・承認するプロセスをとっています。

また、当社では、代表取締役社長が気候変動問題に対する最高責任と権限を有し、気候変動を含む環境マネジメントの有効性について責任を負うものとしています。そして、気候変動関連を含むESG推進担当役員は、環境マネジメントを推進し、進捗状況について経営会議および取締役会へ定期的に報告し、経営課題として審議の上、代表取締役社長の判断を仰いでいます

 

 

 

 カーボンニュートラルへの取り組みは、地球上のすべてに関わる差し迫った課題であることが世界各国の共通認識となっています。そのため、取り組みの遅れはビジネスにおけるリスクを増大させることになり、できる限り早く目標に向けて活動することが有益であると考えています。

 具体的なリスクとしては、中長期的には、気候変動による法改正、税制改正による財務影響が考えられ、また、当社の製品が車両走行時のCO2排出量に影響を及ぼす製品重量の軽減のための軽量化技術の進捗が受注実績に与える影響が考えられますが、積極的かつ意欲的に取り組むことで大きなビジネスの機会になるととらえております。また、中期・短期的には、気候変動による自然災害の増加が、河川等の汚染につながる影響等が考えられますが、これらを速やかに、適正に対処することで、リスク低減を図ることができます。

 世界各国では電動車普及を推進しており、日本においてもHVを含む電動車の拡大が進んでいます。当社で開発・製造を行う部品の軽量化は燃費や走行距離の向上に寄与するため、今まで以上のニーズがあります。軽量化に関する新素材の採用、新技術・新工法の研究開発は事業戦略の中心としています。

[シナリオ分析]

1) 想定される環境

将来の1.5℃上昇、4℃上昇それぞれの世界観を想定するシナリオについて、世の中の脱炭素動向がより明確になる時期、また物理的リスクがより顕著に表れてくる時期を考慮する一方、当社では2040年のカーボンニュートラル実現を目指して活動していることを鑑みて、2040年を迎える前での分析にするべきと考え、2030年代後半の状態で検討しました。

シナリオ

リスク

想定される環境

1.5℃

移行

リスク

(影響:大)世界的に脱炭素社会に向けた政策・規制が強化され、有効に機能している。そのため、企業はその対応、または炭素税等の支払いでいずれも製造コスト増となる。

物理的

リスク

(影響:小)物理的リスクは低い状態が維持・継続される。

4℃

移行

リスク

(影響:小)新たな政策・規制は導入が進まず、CO2排出量増加が続く。そのため、企業の製造コストは現状から大きく変化することがなく移行リスクは低い。

物理的

リスク

(影響:大)気象状況、地球環境が大きく変化し、大規模災害が世界で増加するため当社のみならず、サプライチェーンのいずれかで常態的に大きな操業停止等のリスクが顕在化する。

 

※2つのシナリオに向かう2030年代後半の状況

2)リスク重要度の評価

 

 

特定したリスク

事業イン

パクト※

リスク対応策と機会

移行

リスク

(1.5℃)

炭素価格

(政策)

 

各国政府によりCO2排出量に対する課税が実施・強化され、製造コストが増加、財務指標が悪化する。

・Scope1,2のカーボンニュートラル化を2040年までに確実に達成する(課税の回避)。

・再エネ調達(太陽光発電設備導入、グリーン電力調達)、物流の効率化、など。

脱炭素政策の強化

各種規制で化石燃料が高騰、入手困難となり価格が上昇、コスト増となる。

EVへの急速な変化(市場)

気候変動に関する規制強化に伴い化石燃料の高騰が想定され、EV需要が急増した場合、生産能力が需要に対応しきれず機会を失ってしまう。

・当社製品は自動車に欠かせない機能部品であり、業界の動向、需要を適切に分析し、当社の軽量化技術を拡販につなげる。

・グローバルでの生産能力を最大かつ効率的に稼働させ、収益強化に取り組む。

脱炭素技術の普及(市場)

次世代モビリティに対応する新素材や軽量化開発が遅れることで魅力が低下し主要顧客から選択されなくなる。

・広く市場動向を見極め、当社の開発力を継続的に向上させることがリスク回避につながる。

投資家の行動

(評判)

 

製品の脱炭素化(素材等サプライチェーン全般含む)が遅れると、株主が離れていく。

・長期にわたり、当社の企業力(固有の製品開発力、ものづくりの技術力など)を継続発展していくことでリスク回避が可能。

物理的

リスク(4℃)

気温上昇(慢性)

工場内の気温が上昇し作業環境が悪化すると敬遠され、人が集まらなくなる(高温地域)

・労働環境の整備

・ES向上対策(人に優しい企業)

異常気象(急性)

台風等による集中豪雨で、サプライチェーン寸断、顧客操業停止、生産減少。漏水等で設備故障増。

・地産地消の考え方を継続・推進し、顧客、サプライヤーと協働して、長距離輸送を削減、また地場の自動車産業(顧客・サプライヤー)間の協力関係を強化する。

・サプライチェーンでのBCP対応の強化

 

※事業インパクト:大:30億円以上、中:3億円以上~30億円未満、小:3億円未満

※上記金額の算定に基づき、前年から事業インパクトの見直しを行っております。

3)分析の結果

当社ビジネス

への影響

1.5℃、4℃それぞれのシナリオで、2030年代後半での当社ビジネスへの影響を検討した結果、影響が大きいと考えられる項目に対しては、適切なリスク対応で回避可能と考えられ、機会にもなりうることが考えられる。

・2040年カーボンニュートラルの確実な実現

・製品軽量化技術の確実な推進で、モビリティの変化に柔軟に対応

これらの確実な達成が重要と考える。

今後の

取り組み

・今後さらに詳細な分析(定量的な分析)を行い、それに基づく長期的なCO2削減目標を策定して、実行、開示していく。

・また、今回の内容について、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまと対話を通じて議論させていただき、その内容を今後のさらなる分析、開示につなげていく。

 

 

環境関連の課題については当社の環境マネジメントの仕組みを活用し、代表取締役社長をトップとした環境マネジメント管理体制においてリスク管理をしています。また全社的なリスクマネジメントの中においても、リスクとして認識し管理しています。長期、中期、短期のそれぞれのリスクには、その影響等を最小限にする方策を掲げて、活動計画に落とし込んで全社的に活動しております。

気候変動におけるリスクと機会に関する活動は以下の3点です。

1.生産工程におけるカーボンニュートラルへのチャレンジ

[リスク:法規制](中期・長期)CO2排出に課税された場合、支出増により利益が圧迫される。

[機会:エネルギー源](短期・中期)エネルギー安全保障問題に起因してエネルギー価格が高騰しているため、自社内で発電することでコストを抑えることができる(太陽光発電)。

2.製品の軽量化による、車両走行時のCO2排出量の削減

[リスク:技術](中期・長期)走行時の車両影響として、製品重量が大きく関係しているがこの改善が出遅れた場合に事業存続の危機につながる。

[機会:製品](短期~長期)当社で開発・製造する製品は、主にサスペンション部品であり、EV車等でも不可欠である。そのため製品の軽量化は燃費の向上や航続距離に貢献する。

3.激化する台風や豪雨によるリスクの低減

[リスク:法的](短期・中期)台風やゲリラ豪雨による大雨が降り、未処理の工場排水が流出し、近隣の河川や海の汚染につながる。

[機会:レジリエンス](短期・中期)各生産拠点では、自社敷地内にて排水処理を行っており、排水を規制値内に維持することで地域社会との信頼関係を築いている。有事の際は、近隣への影響を最小限とするため日頃より訓練を実施し、迅速に対応できる準備を整えている。

これらの計画や施策については、トップマネジメントへの報告と承認を経て決定しており、決定した内容は全社に展開され、各部門の業務計画または環境活動計画に紐づけされております。

生産工程におけるカーボンニュートラルへのチャレンジ(Scope1,2)については、CO2排出量を「2040年までにカーボンニュートラルにチャレンジ」としており、また、前年度からマイルストーンとしての2030年までの目標を「50%削減」から「60%削減」(2013年比)に引き上げております。

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

1.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動

①当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は2023年3月期72.6%、2024年3月期69.6%、2025年3月期70.5%となっており、連結決算上、為替変動が大きな影響を及ぼします。
 ②当社グループの主力製品である自動車部品の原材料(自動車用鋼板)は、国際市況に大きく影響され、2004年以降急激に上昇した当該市況は高止まり状況にあります。

2.特定の取引先等で取引の継続性が不安定であるものへの高い依存度について

当社グループは、自動車部品等の製造、販売を主な事業内容としており、取引の継続性については他の業界に比べ安定しております。しかし、当社グループの業績は得意先である自動車メーカーの販売動向の影響を受けることがあります。

3.製造者責任について

当社グループは、品質保証体系に基づく全社活動により製品の品質保証と管理を行っております。しかし、当社製品の納入先であります自動車メーカーが市場より受けるクレームやリコール等に伴い、当社もその一部について製造者責任を問われる可能性があります。

4.国際情勢の変動影響について

当社グループは、前述の通り海外売上高比率が70.5%と高い水準にあります。今後もグローバル展開を進めてまいりますので、海外売上高比率は更に高まっていくものと予想しております。そのため、海外における法規または税制の変更、経済情勢の急変、あるいはテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等により、事業の遂行に問題が生じる可能性があります。

5.災害等による影響について

当社グループは、地震等の災害や事故発生に備えて生産拠点の分散化を図っておりますが、実際に各地域での災害や事故が発生し、操業停止等で得意先への製品供給に支障をきたした場合には、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、引き続き緩やかな持ち直しが見られたものの、長期化する原材料や物流費等の高止まりといった世界的なインフレの進行、為替や株式相場の急激な変動など、先行き不透明な状況が続いております。また、中東情勢、長期化が見込まれる中国経済の低迷、米国政権交代による通商政策への影響など、過去にはあまりない不安定な国際情勢による地政学的リスクや下振れ要因が多く存在しています。

 当社グループが関連する自動車産業の生産台数は、回復基調となったものの、中国市場などでの電気自動車(BEV)へのシフトを受け日系OEMの減産が影響し、 引き続き厳しい状況が続くものと予想されます。

このような状況下において当社グループの売上高は、円安に伴う為替換算などの影響はあったものの、日本、米州、アジアの生産台数の減少などにより、前期比1.7%減178,414百万円となりました。営業利益は、操業体制の見直しによる合理化を織り込んだものの、第1四半期に発生した米国における一過性の品質費用や、日本、アジアの生産台数の減少などにより、前期比約93.3%減298百万円となりました。経常利益は、前期比6,595百万円減2,077百万円の損失となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、米州・アジアセグメントにおける固定資産について将来の回収可能性を検討した結果、減損損失及び繰延税金資産の取崩しにより、9,145百万円を特別損失に計上し、前年同期比9,522百万円減13,448百万円の損失となりました。

なお、連結決算における海外子会社損益の円換算には、各子会社決算期の平均レートを使用しており、当連結会計年度の米ドルレート(1~12月)は、151.68円/ドル(前連結会計年度は140.66円/ドル)であります。
 

 
 セグメントの状況は、以下のとおりであります。

 ①日本
 売上高は、生産台数の減少などにより、前期比11.6%減59,799百万円となりました。営業利益は、経費削減などを織込んだものの、金型売上減少、ヨロズサステナブルマニュファクチャリングセンター(YSMC)本社工場の操業開始による初期費用もあり、前期比62.1%減2,341百万円になりました。

 ②米州
 売上高は、生産台数の減少影響はあったものの、新車効果や円安に伴う為替換算の影響などにより前期比12.2%増87,077百万円となりました。営業損益は、新車効果はあったものの、米国における一過性の品質費用の発生などにより前期比1,280百万円減となり、2,610百万円の損失となりました。

③アジア
  売上高は、円安に伴う為替換算の影響などがあったものの、中国の生産台数減少などにより、前期比20.9%減39,043百万円となりました。営業利益は、合理化効果等の影響があったものの、生産台数の減少等により、前期比96.2%減59百万円になりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年度比(%)

日本

60,427

△3.4

米州

87,063

27.6

アジア

39,747

△17.3

合計

187,238

4.7

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

  2.金額は、販売価格によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年度比(%)

受注残高(百万円)

前年度比(%)

日本

53,143

△2.3

18,736

2.6

米州

87,192

10.7

22,014

1.6

アジア

37,335

△17.3

7,629

△17.0

合計

177,671

△0.3

48,380

△1.5

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年度比(%)

日本

52,668

△4.7

米州

86,846

12.2

アジア

38,899

△20.3

合計

178,414

△1.7

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

メキシコ日産自動車会社

23,965

13.2

26,910

15.1

北米日産会社

24,920

13.7

23,189

13.0

日産自動車株式会社

23,866

13.2

18,163

10.2

東風汽車有限公司

18,819

10.4

14,964

8.4

 

 

②財政状態

(資産の部)

 流動資産は、前連結会計年度末と比べ5,786百万円増加81,159百万円となりました。これは、「現金及び預金」が5,642百万円、「仕掛品」が2,258百万円それぞれ増加したものの、「製品」が1,793百万円、「受取手形及び売掛金」が1,309百万円減少したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末と比べ11,442百万円減少55,441百万円となりました。これは、「機械装置及び運搬具(純額)」が3,851百万円、「建設仮勘定」が2,427百万円、「建物及び構築物(純額)」が2,216百万円それぞれ減少したことなどによります。

この結果、総資産は前連結会計年度末と比べ5,655百万円減少136,601百万円となりました。

(負債の部)

流動負債は、前連結会計年度末と比べ1,477百万円増加51,292百万円となりました。これは、「1年内返済予定の長期借入金」が3,438百万円増加したものの、「電子記録債務」が1,224百万円、「短期借入金」が1,143百万円それぞれ減少したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末と比べ7,155百万円増加24,105百万円となりました。これは「リース債務」が3,692百万円「長期借入金」が3,180百万円それぞれ増加したことなどによります。 この結果、負債合計は前連結会計年度末と比べ8,633百万円増加75,397百万円となりました。

(純資産の部)

純資産合計は、前連結会計年度末と比べ14,289百万円減少61,204百万円となりました。これは、「利益剰余金」が14,227百万円減少したことなどによります。

 

③キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ3,002百万円(13.5%)増加し、25,289百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
 (営業活動によるキャッシュ・フロー)
  当連結会計年度の営業活動により増加した資金は4,742百万円であり、前連結会計年度と比べ7,788百万円の収入減少となりました。営業活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。

「税金等調整前当期純損失」に伴う収入減少                    3,999百万円

「棚卸資産の増減額」に伴う収入減少                      2,951百万円

「減価償却費」に伴う収入減少                                       2,159百万円

「減損損失」に伴う収入減少                           2,655百万円

「売上債権の増減額」に伴う収入増加                      4,756百万円

「為替差損益」に伴う収入増加                           821百万円

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動により減少した資金は11,814百万円であり、前連結会計年度と比べ37百万円の支出減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
  「有形固定資産の取得による支出」の支出減少                    4,294百万円

    「定期預金の預入による支出」の支出増加                     2,505百万円

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動により増加した資金は6,758百万円であり、前連結会計年度と比べ8,499百万円の収入増加となりました。財務活動によるキャッシュ・フローの前年度比における主な増減は次のとおりであります。
  「長期借入れによる収入」の収入増加                         10,758百万円

「セール・アンド・リースバックによる収入」の収入増加             4,010百万円

「短期借入金の増減額」の収入減少                         9,209百万円

「長期借入金の返済による支出」の支出減少                      2,769百万円

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 ①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

  ②経営成績の分析

  当連結会計年度の売上高は前期比1.7%減178,414百万円、営業利益は93.3%減298百万円、経常利益は6,595百万円減の2,077百万円の損失となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比9,522百万円減13,448百万円の損失となりました。以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析します。

 ⅰ)売上高

 当連結会計年度の売上高は、円安に伴う為替換算などの影響はあったものの、日本、米州、アジアの生産台数の減少などにより、前期比1.7%減178,414百万円となりました。当連結会計年度の売上高を得意先別に見ると、日産グループ向けは、前期比4.1%減114,232百万円となりました。トヨタグループ向けは、33.3%増21,875百万円となりました。ホンダグループ向けは、4.9%減20,572百万円となりました。

 ⅱ)売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は、前期比0.5%減161,629百万円となりましたが、売上高に対する割合は89.5%から90.6%に増加しました。

  販売費及び一般管理費は、人件費等の増加などにより、前期比13.1%増16,486百万円となりましたが、売上高に対する割合は8.0%から9.2%に増加しました。 

 

  ⅲ)営業外収益、営業外費用

  営業外収益は、為替差益から為替差損に転じたことにより前期比3.4%減1,220百万円となりました。

  営業外費用は、為替差損の計上により前期比198.3%増3,596百万円となりました。

 

 ⅳ)特別利益、特別損失

 特別利益は、前期比33.1%減39百万円となりました。

 特別損失は、減損損失が減少したことにより前期に比べ2,615百万円減9,305百万円となりました。

 

 ⅴ)法人税等

 法人税等は、前期比93.8%増2,963百万円となりました。

 

  ③資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

運転資金需要の主なものは、素材や部分品などの原材料の他製造労務費・経費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資資金需要の主なものは、製造のための基本設備、汎用及び専用設備などの設備投資であります。国ごとに異なる事業運営は、必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は、グループ内余資の有効活用を前提とした自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、調達環境、資本コスト、負債・資本バランスを考慮した長期性資金の調達を基本としております。現時点での長期性資金は、金融機関からの長期借入により調達しております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は42,763百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は25,289百万円となっております。

 

  ④経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

 

5 【重要な契約等】

  技術援助契約

当連結会計年度末現在で継続している技術援助契約は、以下のとおりであります。

契約会社

相手先の名称

国籍

契約品目

期間

契約内容

㈱ヨロズ

Jay Bharat Maruti Limited
(JBML)

印度

サスペンション部品

2017年12月1日~

製品の量産終了まで

技術情報及び

ノウハウの提供

㈱ヨロズ

JBM AUTO LIMITED
(JBM)

印度

サスペンション部品

2020年6月10日~
7年間

 

技術情報及び
ノウハウの提供

 

㈱ヨロズ

Jay Bharat Maruti Limited
 (JBML)

印度

サスペンション部品

2022年2月1日~
7年間

技術情報及び
ノウハウの提供

㈱ヨロズ

Jay Bharat Maruti Limited
(JBML)

印度

サスペンション部品

2023年3月1日~
7年間

技術情報及び
ノウハウの提供

㈱ヨロズ

Jay Bharat Maruti Limited
(JBML)

印度

サスペンション部品

2024年4月6日~
7年間

技術情報及び
ノウハウの提供

 

 

6 【研究開発活動】

当社では、お客さまである自動車メーカー各社のCO2排出量削減活動および電動車開発に貢献するべく、環境・性能・品質・価格を満足し競争力ある製品開発実現に向け、ベンチマーク活動により新技術・新工法の開発と製品化に取り組んでおります。
 当連結会計年度における研究開発活動の主な成果としては、日産「パトロール/アルマーダ」のリンク・フレーム部品、「ムラーノ」のフロントメンバー・ブレーキペダル、「キックス」のフロントメンバー・リアメンバー・リアビーム・リンク、EV車「N7」のフロントメンバー、リアメンバー、リンク、ホンダ「アメイズ」のアーム、EV車「イエP7,S7」のアーム、「HRV」のテールゲートブラケット、VW「ティグアン」のアーム、トヨタ「ランドクルーザー」のキャブマウントブラケットを市場投入いたしました。
 引き続き高品質、低価格、高い生産性のもと、軽量、高剛性の製品開発に取り組み、競争力ある製品を市場に投入すべく、開発中枢であるヨロズグローバルテクニカルセンター(栃木県小山市略称YGTC)で新製品開発活動を推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費用総額は、5,758百万円となっております。