文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「独創的なアイデアと技術でお客様に喜ばれる製品・サービスを供給することで社会へ貢献する」ことを企業理念の基本方針としております。
そのために、「安全と環境に配慮した企業活動を行う」「独創性を生かして積極的に活動する」「常に自己研鑽に励み、改革・改善を行う」「スピーディーかつタイムリーに行動する」「人の和を大切にし、明るい職場をつくる」ことを当社グループの役職員の行動指針としております。
(2) 経営環境、経営戦略及び対処すべき課題等
今後の経営環境は、各種政策の効果もあり景気は緩やかな回復が継続することが期待されます。一方、米国における関税や物価上昇、不安定な国際情勢、金融資本市場の変動等の影響による景気下振れリスクに留意する必要があり、先行きの不確実性が高まることも想定されます。
中長期では、サステナビリティへの意識の高まりやデジタル技術の進展が今後一層加速することが予想され、「電動化」をはじめとするCASE時代において新たな価値を提供できるよう、会社・事業の変革が求められる状況となっております。
このような経営環境の中、当社グループは2023年度を初年度とし2025年度が最終年度となる第12次中期経営計画で掲げた「第二の創業 新しいFCCへ」の事業方針のもと、事業構造の転換と経営基盤の強化を進め、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
■中期経営計画の進捗
基幹クラッチ事業を中心とする経営基盤の強化は計画通り前進しており、売上収益や営業利益等、主要指標は1年前倒しで目標値を達成しております。事業ポートフォリオ転換についても、成長領域へ積極的にリソースの投入を進め、モビリティ(EV/CASE)領域が先行して前進、受注・量産開始フェーズへ移行しております。
■事業別の状況
〇二輪事業
基幹クラッチ事業では、主にインドを中心としたグローバルサウスの市場成長へ確実に追従し、売上収益は堅調に推移しました。特にインドにおいては、目標値であるマーケットシェア70%以上を達成しております。今後は更なる拡販活動と、高付加価値技術の投入を加速させ、グローバルマーケットリーダーの地位強化と収益の最大化を図ってまいります。
新規事業では、インド、インドネシアにおいて電動基幹部品の主力となる積層モータコアの量産を開始いたしました。今後は量産熟成をはかり、インド、アセアンをはじめとする生産拠点拡大に向け取り組んでいくとともに、他の電動基幹部品においても開発および拡販を推進してまいります。また、パワーユニット領域ではベトナム二輪EVメーカーであるDAT BIKE社と資本業務提携に関する基本合意を締結し、独自e-Axleの受注を獲得いたしました。今後は量産開発と量産準備を進め、ベトナムからアセアン各国への事業拡大を共に進めてまいります。
〇四輪事業
基幹クラッチ事業では、当社グループの四輪主要市場である米国において、当初予想されていたよりも、BEVシフトは鈍化が見られる一方、HEVやICEの需要が高まっております。そのような環境の中、HEVの開発リソースの投入を行い、最適生産と拡販を進めキャッシュ創出を推進してまいります。
新規事業では、中国で積層モータコアの量産準備を開始いたしました。今後は米国、インド、日本を中心に更なる受注獲得に向けた顧客アプローチを継続してまいります。またアルミダイキャストを中心とした熱マネジメント領域についても推進をしており、米国や中国において受注獲得にいたりました。
継続して、ICE・HEV・BEVの動向に応じた対応力を強化してまいります。
〇非モビリティ事業
非モビリティ事業においては、2030年新規事業創出に向け、当社のコア技術の深掘と狙うべき領域を定義し、改めて短期から長期でのリソース配分を再設計しております。その中でも、成長市場である半導体業界においては、セラミックセッターの量産を開始し、LiB用導電助剤は量産準備フェーズに移行いたしました。今後はFCCが保有しているコア技術の融合と積極的な協業を推進し、さらなる事業拡大を図ってまいります。
■財務指標・株主還元
2024年度は主に二輪事業を中心とする基幹クラッチ事業の収益力の向上により、財務指標の良化に繋げることができました。中期経営計画進捗状況と上場20周年記念を踏まえ、中間配当を、普通配当38円、記念配当63円を合わせた101円とし、期末配当を、普通配当38円、記念配当63円を合わせた101円へ増配といたしました。併せて自己株式取得を実施いたしました。今後も引き続き基幹クラッチ事業で創出したキャッシュを成長投資に重点的に配分するとともに、株主還元の充実を図ってまいります。
■サステナビリティへの取組み
〇気候変動
当社グループは、カーボンニュートラルの実現に向けて、事業活動から直接排出される温室効果ガス(GHG)排出量を、2013年度比で2030年度までに50%削減、2050年にはカーボンニュートラル(実質排出量ゼロ)にすることを目指し、省エネ活動や再生可能エネルギー由来の電力への切り替え等の再エネの積極的な利活用を推進しております。主な取り組みでは、当社の浜北工場や渡ケ島工場、子会社のFCC CLUTCH INDIA PRIVATE LIMITEDや佛山富士離合器有限公司、台灣富士離合器股份有限公司における太陽光発電設備の導入を行いました。また当社の浜松や鈴鹿地域においてはCO2フリー電気の100%導入を行いました。
〇人的資本
モビリティと非モビリティ領域で新たな価値を提供し続ける企業へ転換を図るため、必要となる人材要件を定義し、人材ポートフォリオ策定に着手していきます。また、「新しいFCC」を自ら実現していく人材を育成し、イノベーションを生み出す基盤をつくるため、従業員の「エンゲージメント向上」「多様性の推進」「人材育成・能力開発」の3つの柱を施策の中心に推進しております。「エンゲージメント向上」は、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度の導入を行いました。「多様性の推進」では柔軟な働き方を支える制度強化として、主に育児と介護と仕事を両立できる柔軟な制度の整備やライフイベントとキャリア形成の両立を支援する施策を実行しました。「人材育成・能力開発」は、新しいFCC実現に向けた人材育成の再設計として事業変化に対応できる柔軟な学びの場の提供や女性のキャリア形成と意識改革を促す研修を展開してまいりました。今後も、多様な人材がその能力を最大限に発揮し、安心して働ける環境を整備することで、持続可能な成長とイノベーションの創出を支えてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
・ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制は、取締役会が監督し経営会議が業務執行する体制となっております。サステナビリティ関連のリスクと機会については、中期経営計画策定時に抽出し、それに基づき中期経営計画を作成しております。中期経営計画は年次の事業計画に細分化され落し込まれます。年次の事業計画は戦略・施策・目標を定めたもので大区分は、財務、事業(二輪、四輪、非モビリティ)、ものづくり競争力、基礎研究、ESG、人材・業務となっております。
① 取締役会(監督側)
サステナビリティ関連項目を含む中期経営計画の業務執行は経営会議が主体として行われており、取締役会は当該事項の報告を受けてサステナビリティ関連項目を含む中期経営計画の審議と承認を行っております。また3月の取締役会で次年度の事業計画を承認し、年次の事業計画の実績を四半期毎に年4回審議、監督しております。
② 経営会議(執行側)
経営会議は代表取締役社長が議長を務め、執行役員を含む各担当役員から構成されており、サステナビリティ関連項目を含む中期経営計画及び年次の事業計画の作成を統括する責任と権限を有しております。また経営会議では、年次の事業計画の進捗状況について、四半期毎に年4回と必要がある場合は随時開催してモニタリングしております。
・リスク管理
① リスクおよび機会の抽出
サステナビリティ関連のリスクと機会の抽出は、業界動向、顧客動向、規制動向等の外部環境、経営資源、対応技術等の内部環境の情報をもとに、経営方針を踏まえて中期経営計画立案時に抽出しております。
② リスクおよび機会の分析評価
抽出されたリスクと機会に対する財務的影響を分析・評価し、それに基づいた経営戦略を策定し、施策と目標値を設定しております。
③ リスクおよび機会の管理
当該施策の進捗状況と目標値については、中期経営計画から年次の事業計画に細分化され落し込まれます。サステナビリティ関連項目を含む年次の事業計画において、四半期毎に経営会議でモニタリングされ、取締役会へ報告されることで審議、監督されております。
・戦略と指標目標
外部環境および内部環境においての最大のリスクは、内燃機関車の規制と気候変動問題による市場の価値観の変化に伴う基幹クラッチ事業の構造的売上の減少が挙げられます。さらにそれにまつわる電動化、自動化技術革新への対応遅れによるリスク、また、社会および経済を取り巻く環境におけるリスクが挙げられます。そのような状況の中、機会として捉えているのはカーボンニュートラル化に向けたEV/CASEおよび環境とエネルギー分野への事業化の促進です。そのための技術革新、人材育成への取組み、デジタル活用なども機会として認識しており、第12次中期経営計画に織り込んでおります。さらに計画内容を具現化すべく、2026年度を初年度とする第13次中期経営計画に向けて、マテリアリティの特定およびそれに向けたビジョンの策定、推進をする方針です。
(2)気候変動
気候変動におけるリスク管理の取り組みについて当社グループは、気候変動がもたらすリスクと機会を認識し、持続可能な未来の実現に向けた取り組みを強化しています。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、当社のガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に関する情報開示に取り組んでいます。
・ガバナンス
当社グループにおける気候変動関連の推進体制として、環境管理責任者を委員長とする国内拠点の全社環境保全委員会および海外拠点の海外環境保全委員会を設置しています。これらの委員会は定期的に開催され、気候変動対応を含む環境領域の中長期目標達成に向けた取り組み、リスクと機会の特定、影響の分析、対応策の推進・モニタリングを行っています。また、「環境保全委員会」を通じて付議・報告される気候関連の重要事項については、必要に応じて年次の事業計画を変更し、経営会議へ報告、取締役会で承認する体制をとっております。さらに、各事業所でも環境マネジメント組織を整備し、全社委員会等で決定された方針や取り組みを反映させ、CO2削減に向けた省エネ、省資源、廃棄物削減活動を目標達成に向けて積極的に推進しています。
取締役会は、気候変動に関連するリスクと機会についての報告を受けて、適切な対応がなされているかを監督しています。
・戦略
気候変動が当社グループの事業に及ぼす気候関連のリスクと機会を具体化するため、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の外部シナリオをベンチマークとして参照しました。また、自動車産業に係るシナリオ分析も確認し、当社グループの長期ビジョンVISION2035「社会に求められる価値を生み出し続ける企業へ」における事業環境認識と照合しながら総合的にシナリオを想定し、シナリオと中長期ビジョンとの差異分析により気候関連のリスクと機会を抽出しました。シナリオの定義は、海外・子会社を含めた全事業を分析対象とし、移行リスク及び物理的リスクの2軸に対し、4℃シナリオ(温暖化が進行する世界)及び1.5℃シナリオ(低炭素社会への移行した世界)を想定した2つの分類としました。
気候変動のリスクと機会(主に1.5℃/4℃シナリオに至るリスク)
|
区分 |
リスク・ 機会の種類 |
主なリスク/機会 |
影響度 |
時間軸 |
主な対応 |
具体的な取組み |
|
移行 リスク |
政策 法規制 |
炭素税や再生可能エネルギー導入などの政策による事業コスト負担増
サプライヤーの環境配慮型原材料への変更・価格転嫁による事業コスト負担増 |
大 |
短~長期 |
サプライヤーを含めた生産・輸送時の脱炭素化の推進
インターナルカーボンプライシング導入検討 |
・生産、輸送などの効率化 ・脱炭素・低炭素エネルギー利用 ・高効率設備導入促進 ・国内外における再エネ・非化石証書・クレジットなどの選択肢情報の収集、検討 ・サプライヤーを含めた省エネ活動の継続推進 ・省エネ活性化・省エネ設備導入促進に向けたインターナルカーボンプライシング導入検討 |
|
|
技術 |
技術開発の遅れによる、販売機会の逸失
脱炭素化に向けた設備等の対策コスト負担増 |
大 |
中~長期 |
FCCコア技術を生かし、モビリティ電動化への新たな価値の提供
省エネ設備の導入による脱炭素化の促進
環境配慮設計の促進 |
・二輪EV/CASE事業領域の量産準備開始 ・四輪モータコアSUBモジュール事業領域の量産準備開始 ・次世代モビリティのニーズに応える様々なアルミダイカスト製品の開発 ・生産省人化・効率化によるエネルギー使用量の最小化 ・製品・サービス設計時に軽量化、化学物の使用量低減などの「環境配慮設計」による使用原材料の削減 |
|
|
市場動向 |
LCA対応の遅延による顧客からの需要低下
化石燃料から再生可能エネルギーへの転換による電源及び電力量の確保 |
中 |
中~長期 |
市場動向・顧客要求からLCA観点でのCO2削減対応強化 |
・サプライチェーン全体でのLCA対応の強化、CO2排出量削減にむけた省エネ展開 ・FCC拠点所在地の地域特性を生かした太陽光発電などクリーンエネルギー・再生可能エネルギーのグローバル導入実施 ・エネルギーソリューションでカーボンニュートラルへ貢献する製品の拡販 |
|
|
評判 |
気候変動問題への取組みに関する評価や市場の価値観の変化に伴う売上減少 |
中 |
中~長期 |
策定したロードマップの実行及び目標達成状況のモニタリング |
生産活動に伴う省エネ活動、再生可能エネルギー導入、製品を通じたCO2削減、環境貢献 |
|
区分 |
リスク・ 機会の種類 |
主なリスク/機会 |
影響度 |
時間軸 |
主な対応 |
具体的な取組み |
|
物理的 リスク |
急性・ 慢性的な 物理リスク |
気候変動や気象災害による事業継続リスク |
大 |
短~長期 |
各リスク想定からの対応計画の立案・対応強化 |
・工場新設時には洪水被害を念頭に置いて立地条件や設備の配置、気候パターンの変化などを考慮 ・リスク評価の結果をもとに、製造拠点ごとのリスクに応じた対策を強化 ・サプライチェーンのBCP強化 |
|
機会 |
製品 サービス 市場 |
・電動化の推進による関連製品の需要拡大 ・カーボンニュートラル達成に向けたCO2などの大気浄化製品のニーズ増加 ・再生可能エネルギービジネスの拡大 ・低炭素・省エネルギー製品の需要拡大 |
大 |
中~長期 |
当社のコア技術及び他社との協業による、カーボンニュートラルに貢献する新製品の開発 |
・発電効率が高く、バイオ燃料による発電が可能な改質一体型SOFCの開発 ・カーボンナノチューブ活用によりバッテリーの高効率化に貢献(導電助剤等) ・独自の抄造・塗膜・触媒技術(ハニカム構造)を活かした気体(CO2など)吸着などの大気浄化技術及び熱効率の良い焼成用治具の開発 ・高効率で長寿命の水処理膜(UF膜/RO膜)の開発 ・基幹事業で培った接合技術を活かした、異種材接合による車両などの軽量化やサイクルタイム短縮による省エネに貢献する技術の提供 |
※影響度
大:事業が停止、または大幅な縮小・拡大の影響が想定される。
中:事業の一部への影響が想定される。
小:開示対象から除外
※時間軸
短期:1年以内、中期:1年~3年、長期:5年以上
・リスク管理
当社グループは、ISO14001の環境マネジメントシステムを活用して、気候変動リスクの評価と管理を行っています。これにより、物理的リスク(自然災害など)や移行リスク(規制の変化など)を特定し、適切な対策を講じています。
・指標及び目標
当社は、カーボンニュートラルの実現に向けて、事業活動から直接排出される温室効果ガス(GHG)排出量を、2013年度比で2030年度までに50%削減、2050年にはカーボンニュートラル(実質排出量ゼロ)にすることを目指し、省エネ活動や再生可能エネルギー由来の電力への切り替え等の再エネの積極的な利活用を推進しています。
2024年度のGHG排出量は139,040トンとなり、基準年(2013年度比)より増加しましたが、省エネ施策をはじめ、再生可能エネルギーの導入などにより前年度比に対し8%削減することができました。当社は、GHG排出量の削減目標達成に向けたさらなる対応策を継続的に推進してまいります。
2024年度温室効果ガス(GHG)排出量実績
|
区分 |
2024年度実績 |
|
Scope1※自社での燃料の使用などによる温室効果ガスの直接排出量 |
|
|
Scope2※自社で他社から供給された電気などの使用による温室効果ガスの間接排出量 |
|
|
合計(Scope1+2) |
|
(注)1.当社グループ基準にて算定しています(国内マーケット基準、海外は一部ロケーション基準にて算定)。今後、排出量実績額は、第三者検証受審予定のため数値が変動する可能性があります。
2.当社のScope2排出量には、非化石証書や再生可能エネルギー等による削減効果含がまれています。
2024年度温室効果ガス(GHG)削減量実績
|
区分 |
2024年度実績 |
|
省エネルギー活動における削減 |
1,604t-CO2 |
|
再生可能エネルギーにおける削減 |
23,196t-CO2 |
|
施策によるCO2総削減量 |
24,800t-CO2 |
(3)人的資本
当社グループは、持続可能な成長を実現するため、人的資本の強化を経営戦略の中核と位置付けています。事業環境の変化が加速する中で、新たな価値を創出し、競争力を高めるには、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境の整備が不可欠です。当社は企業理念の行動指針として、「常に自己研鑽に励み、改革・改善を行う」こと、そして「人の和を大切にし、明るい職場をつくる」ことを掲げています。この指針のもと、人権尊重方針、安全衛生方針、人事方針を定め、「健康で災害のない明るい職場」の実現を目指すとともに、人材育成を企業の持続的成長の源と位置付けています。これに基づき、働く人の能力を高め、多様性・人格・個性が尊重される働き方の実現を重要な経営課題としています。このため、当社は第12次中期経営計画において、従業員の「エンゲージメント向上」「多様性の推進」「人材育成・能力開発」の3つを柱とし、組織全体で人的資本の強化に取り組んでいます。従業員が自律的に成長し、挑戦できる環境を提供することで、企業の持続可能な成長を支える人材基盤を構築してまいります。
・戦略
■人材育成方針
当社グループは、事業環境の変革を見据え、持続可能な成長を実現するためにVISION2035を掲げ、「社会に求められる価値を生み出し続ける企業へ」というありたい姿を明確にしました。さらに、第12次中期経営計画では、新たな事業環境に適応し、「第二の創業 新しいFCCへ」という事業方針を掲げ、会社・事業の転換期としての変革を推進しています。このビジョンの実現に向け、「新しいFCC」を自ら創り上げ、イノベーションを生み出す人材育成を重要課題と位置付けています。そのための基盤として、「エンゲージメント向上」「多様性の推進」「人材育成・能力開発」の3つを柱とした施策を推進しています。特に、多様な個性と能力を持つ従業員の主体性を尊重し、挑戦意欲を引き出す文化を醸成することを重視し、自律的なキャリア形成を支援するとともに、組織全体のポテンシャルを最大限に引き出すことを目指しています。そのため、人材ポートフォリオの策定に着手し、求められる人材要件を定義するとともに、現状とのギャップを明らかにし、適切な対策を講じてまいります。
■社内環境整備方針
<従業員エンゲージメント>
組織風土の実態を把握し、従業員の働きがいや満足度を向上させるため、当社グループでは2023年度より全従業員を対象としたエンゲージメント調査を開始しました。調査結果から、「人事評価の納得度向上」「キャリア支援」「経営層との対話機会の増加」が課題として浮き彫りとなりました。これを受け、キャリア支援の強化を目的に、社内各組織の業務理解を促進する「お仕事図鑑」の全社共有や学習支援サービスの導入を進め、従業員のキャリア形成を支援する環境を整備しました。こうした取り組みにより、2024年度の調査では前年よりスコアが改善されています。一方で、依然としてスコアが低い項目もあり、特に「人事評価の納得度」「キャリア支援」「経営層との対話機会の増加」は、依然として優先課題として継続的に対応する必要があると認識しています。今後もエンゲージメント調査のスコア改善に向け、従業員が働きやすく、やりがいを感じられる職場づくりを推進してまいります。
<多様性の推進>
多様な人材が活躍できる環境を整備することが、持続的な成長とイノベーションの創出につながると考えています。その中でも、特に管理職層における女性比率の向上を重要な課題と位置付け、2026年度までに1つ上位の職階へ昇進する女性社員の割合を男性と同等とする目標を掲げています。この目標の達成に向け、女性のキャリア形成支援や意識改革を促す研修の実施、柔軟な働き方の拡充などを通じて、ライフイベントとキャリアの両立を支援する職場環境の整備に注力し、女性が長期的に活躍できる環境づくりを推進しています。また、男性の育児参画を促進するための風土醸成にも取り組み、性別を問わずすべての従業員が活躍できる環境の構築を目指しています。今後も、多様な人材がその能力を最大限に発揮し、安心して働ける環境を整備することで、持続可能な成長とイノベーションの創出を支えてまいります。
<人材育成・能力開発>
「新しいFCC」の実現に向け、変化する事業環境に適応できる人材を育成するため、体系的な人材教育を実施しています。新入社員研修、昇格時研修、管理職研修など、階層別の教育プログラムを設け、それぞれの成長ステージに応じた学びの機会を提供しています。また、従業員の自律的な学びを支援するため、学び放題サービスの導入を行い、今後はデジタル領域の基礎教育や専門教育の拡充を検討しています。
キャリア形成支援の取り組みとしては、従業員が自身のキャリアを主体的に考え、成長できる環境の提供を目指し、ベテラン層向けのキャリア教育やジョブローテーション制度の充実を進めてきました。さらに、若手層向けのキャリア教育を新たに開始し、支援対象を拡大しています。最近では、「お仕事図鑑」の全社共有を通じ、従業員が社内のさまざまな職種や役割を理解し、キャリアプランを考えるための材料として活用できる環境を整えました。今後も、従業員のキャリア自律を支援し、個々の能力向上やモチベーション向上を図ることで、組織全体の活性化とイノベーションを推進してまいります。
<労働安全衛生>
当社グループでは、「健康で災害のない明るい職場」を目指し、労働安全衛生マネジメントシステム(ISO45001)に準拠し、国内外の社内体制を構築しています。PDCAサイクルの運用を通じて、充実した安全衛生活動を実施しています。国内外の拠点では、内部監査員による三現主義(現場・現物・現実)に基づいた監査を行い、不安全箇所の改善や不安全行動の是正に取り組むことで、安全で魅力ある職場づくりを推進しています。
<健康経営>
「従業員一人ひとりが明るく、楽しく、元気よく働ける環境の実現」を目指し、健康経営を推進しています。企業の持続的な成長には、従業員が心身ともに健康であり、最大限のパフォーマンスを発揮できる職場環境の整備が不可欠であると考えています。そのため、当社では「従業員のパフォーマンス向上」を健康経営で解決したい経営課題として掲げ、「からだの健康」、「こころの健康」、「働き方改革」の3つを主要な取り組みとしてワークエンゲージメントを高めるための職場環境改善に取り組んでいます。これらの取り組みを通して、当社は3年連続で「健康経営優良法人」に認定されております。今後も、従業員の健康維持・向上に向けた施策を強化し、職場環境の継続的な改善を通じて、ワークエンゲージメントの向上と持続可能な企業成長を支える基盤の構築に努めてまいります。
・指標及び目標
第12次中期経営計画において、人的資本の人材戦略として「エンゲージメント向上」、「多様性の推進」、「人材育成・能力開発」の3つの柱を掲げ、施策を推進しています。これらの施策の実効性を高め、人的資本をさらに強化させるため、「指標と目標」の策定が重要な課題と認識しております。現時点では、社内での議論が十分に進んでおらず、定量的な指標と目標の設定はできていない状況ですが、2026年度からはじまる第13次中期経営計画において、経営計画と人的資本を連動させた指標と目標を設定し推進していく方針です。
イノベーションを生み出すための3つの柱
① エンゲージメント向上
当社では「イノベーションを生み出す基盤づくり」のためには、従業員のエンゲージメント向上を重要な指標と位置づけ、2023年度よりエンゲージメント調査を開始し、その結果を踏まえて目標値の設定、施策の方向性を決定していく予定です。
また、従業員が健康で活力にあふれ、高いパフォーマンスを発揮できる環境を築くため、健康経営優良法人認定制度のフレームワークを活用し本格的な取り組みを開始し、2022年度より3年連続で優良法人に認定されました。
② 多様性の推進
管理職層における女性比率の向上を優先課題の一つとし、2026年度までに1つ上位の職階へ昇進する女性社員の割合を男性と同等にする目標を掲げています。また、ライフイベントとキャリアの両立を支援する制度の拡充や柔軟な働き方の導入を進め、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。
なお、「第1 企業の概況」「5.従業員の状況」「(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」の項目において、女性管理職比率が低い要因や男女賃金格差の背景について記載しており、当社の組織全体の人的資本の向上に向けた考え方をご理解いただけます。
③ 人材育成・能力開発
事業環境の変化を確実に捉え、「新しいFCC」を実現していくために必要な人材を育てあげるため、当社では体系的な人材教育の体制を整えております。2024年度からは付加価値の質の変革を目的に、新たに全社的なDX教育を取り入れております。
また、イノベーションを牽引する人的基盤を構築するため、まずはマネジメント層に求められる役割行動の評価基準を見直していき、従業員が意欲高く能力発揮し、課題にチャレンジできる職場環境の形成を目指します。
今後、2026年度から始まる13次中期経営計画において、人的資本に関する「指標と目標」を正式に設定し、年次の事業計画と人的資本を連動させる形で推進を計画しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) クラッチ製品に特化した事業展開について
当社グループは12次中期経営計画で掲げた「第二の創業 新しいFCCへ」の事業方針のもと、基幹クラッチ事業における収益力の向上や新規事業創出を進めておりますが、現状、当社グループの事業展開は基幹事業のクラッチ製品に特化しております。クラッチ製品は、内燃機関を動力とする自動車や二輪車等の動力伝達機構を構成する重要な機能部品の一つでありますが、今後、内燃機関を動力としない自動車や二輪車等の普及および内燃機関車の規制と気候変動問題による市場の価値観の変化により、クラッチ製品が不要となる可能性があります。
自動車業界は現在、大きな構造変化の時代を迎えております。二輪車用クラッチ、四輪車用クラッチともに当面の成長は見込まれますので、基幹事業を確実に進化させて対応してまいります。また、電動化製品やエネルギーソリューション、環境浄化等をテーマとした新事業開発を積極的に進めてまいります。
(2) 特定の産業や取引先への依存について
当社グループが製造販売しているクラッチ製品の大半は自動車産業や二輪車産業向けであり、当社グループの業績は、今後の自動車産業や二輪車産業の動向により影響を受ける可能性があります。また、当社グループの売上収益に占めるホンダグループに対する売上収益の割合は当連結会計年度において約37%を占めており、当社グループの業績は、今後のホンダグループの事業戦略や購買政策等により影響を受ける可能性があります。
当社グループは、ホンダグループ向けの販売に加え、拡販による新規顧客の獲得に注力し、受注につなげてまいりましたが、引き続き積極的な顧客提案を進めてまいります。
(3) 海外展開について
当社グループは、日本、米国、アジアを中心にグローバルな事業を展開しております。このため、当社グループの業績は、各国の政治や経済の動向、為替相場の動向、予期しない法律または規則の変更、移転価格税制等の国際税務リスク、災害の発生等により影響を受ける可能性があります。
当社グループは、カントリーリスクを的確に把握し低減しながら事業を遂行していくため、海外子会社等を通じて現地の情報収集に努めるとともに、グループ間の相互補完体制を活用しながら適切に対処しております。
(4) 競合について
世界の自動車産業や二輪車産業における競合環境は非常に厳しくなっております。当社グループは、製品開発から製造、品質保証に至るまで競争力の維持、強化に努めておりますが、今後、何らかの理由により競争力の維持、強化が困難となった場合、市場シェアや収益力が低下する可能性があります。
当社グループは、品質、コスト、デリバリーをはじめとする製品競争力の向上によりグローバルシェアの更なる拡大に努めております。
(5) 製品の欠陥に対する補償
当社グループは、製品の品質には万全を期しておりますが、全ての製品に不具合、欠陥等が発生しないという保証はありません。当社グループが納入した製品の欠陥等に起因して完成車メーカーが大規模なリコール等を行うような事態が発生した場合、多額のコストの発生や、当社グループの評価が重大な影響を受けることにより、当社グループの業績と財政状態に深刻な影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、事業活動全体を通じて更なる品質向上を目指し、品質保証体制の強化に取り組んでおります。
(6) 災害や地震等による影響
当社グループは、自然災害および人的災害の大規模災害等により製造ラインが中断するといった潜在的なリスクを最小化するため、各種の対策を講じておりますが、それらによって全ての影響を防止または軽減できる保証はありません。特に、国内においては当社グループの主要施設は静岡県西部地域に集中しているため、将来、想定されている東海地震・東南海地震が発生した場合、生産設備に甚大な影響を受け、生産能力が著しく低下する可能性があります。
当社グループは、大規模災害等の非常時に事業継続を図るべく、リスク対応マニュアル等を整備し、サプライチェーンを含めた事業継続計画(BCP)を構築するなどの対応を行っております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における経済状況を概観しますと、緩やかな回復基調にあるものの、中国経済の停滞や不安定な国際情勢、物価上昇、金融資本市場の変動もあり、先行き不透明な状況で推移しました。日本では、景気は足踏みもみられたものの、緩やかに回復しました。海外では、米国の景気は堅調な拡大を維持しました。アジアでは、中国の景気は政策効果により悪化に歯止めがかかったものの足踏み状態となり、アセアン地域では景気は概ね堅調な成長を維持、インドでは景気拡大が継続しました。
自動車業界におきましては、四輪車市場は、日本の新車販売で第4四半期に市場の回復がみられ、通期では前期比微増となりました。海外では、米国は堅調に推移し、3月には関税導入前の駆け込み需要とみられる動きもありました。中国は、電気自動車などの新エネルギー車(NEV)の販売が大幅に伸長した一方でガソリン車(ICE)の販売が減少する傾向が顕著となりました。また、二輪車市場は、インドやインドネシアで需要は堅調に推移しました。
このような状況の中、当社グループは、2023年度を初年度とする第12次中期経営計画に基づき、経営基盤の強化に向けた基幹クラッチ事業の収益最大化と、事業ポートフォリオ転換に向けたEV/CASE領域や非モビリティ分野における新事業開発を積極的に推進してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、インドやインドネシアの二輪車用クラッチの販売が増加したことや円安の影響もあり、売上収益は、256,619百万円(前期比6.8%増)となりました。営業利益は、17,329百万円(前期比14.7%増)、税引前当期利益は20,052百万円(前期比4.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は15,859百万円(前期比29.7%増)となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。
(二輪事業)
インドやインドネシアの二輪車用クラッチの販売が増加したことや円安の影響もあり、売上収益は120,408百万円(前期比12.6%増)、営業利益は、12,083百万円(前期比26.6%増)となりました。
(四輪事業)
中国や米国の四輪車用クラッチの販売が減少したものの円安の影響もあり、売上収益は136,115百万円(前期比2.1%増)となりました。営業利益は、製品保証引当金繰入額の計上などにより、8,101百万円(前期比2.2%減)となりました。
(非モビリティ事業)
売上収益は94百万円(前期比453.5%増)、営業損益は2,855百万円の営業損失(前期は2,732百万円の営業損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は68,496百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は27,930百万円となりました。主な増加の要因は、税引前当期利益20,052百万円、減価償却費及び償却費12,170百万円によるものであります。主な減少の要因は、営業債権及びその他の債権の増加額4,678百万円、法人所得税の支払額7,549百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は25,775百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出14,723百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は14,633百万円となりました。これは主に短期借入金の純減額3,100百万円、自己株式の取得による支出3,800百万円、配当金の支払額7,154百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
イ.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
二輪事業(百万円) |
120,841 |
112.9 |
|
四輪事業(百万円) |
136,211 |
101.9 |
|
非モビリティ事業(百万円) |
80 |
468.8 |
|
合計(百万円) |
257,133 |
106.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
ロ.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
二輪事業 |
121,164 |
112.5 |
9,284 |
108.9 |
|
四輪事業 |
134,751 |
99.8 |
10,907 |
88.9 |
|
非モビリティ事業 |
94 |
553.5 |
- |
- |
|
合計 |
256,010 |
105.5 |
20,192 |
97.1 |
(注)金額は販売価格によっております。
ハ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
二輪事業(百万円) |
120,408 |
112.6 |
|
四輪事業(百万円) |
136,115 |
102.1 |
|
非モビリティ事業(百万円) |
94 |
553.5 |
|
合計(百万円) |
256,619 |
106.8 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
Ford Motor Company |
45,028 |
18.7 |
51,659 |
20.1 |
|
General Motors Company |
24,630 |
10.3 |
23,747 |
9.3 |
|
本田技研工業㈱ |
10,086 |
4.2 |
10,563 |
4.1 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は256,619百万円(前期比6.8%増)となりました。
インドやインドネシアの二輪車用クラッチの販売が増加したことや円安による為替影響等により増収となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は17,329百万円(前期比14.7%増)となりました。
営業利益は、製品保証引当金繰入額の計上があったものの、増収効果もあり増益となりました。
(税引前当期利益)
当連結会計年度の税引前当期利益は20,052百万円(前期比4.6%増)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は15,859百万円(前期比29.7%増)となりました。
財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は162,913百万円となり、前連結会計年度末に比べ80百万円増加しました。これは主に、現金及び現金同等物が13,532百万円減少したものの、その他の金融資産が8,999百万円、営業債権及びその他の債権が3,274百万円増加したことによるものであります。
(非流動資産)
当連結会計年度末の非流動資産は83,294百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,123百万円増加しました。これは主にその他の金融資産が1,844百万円減少したものの、有形固定資産が2,995百万円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は48,517百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,333百万円増加しました。これは主に借入金が3,100百万円、引当金が1,021百万円減少したものの、営業債務及びその他の債務が7,074百万円増加したことによるものであります。
(非流動負債)
当連結会計年度末の非流動負債は12,246百万円となり、前連結会計年度末に比べ28百万円増加しました。これは主に繰延税金負債が2,711百万円減少したものの、退職給付に係る負債が1,764百万円、その他の金融負債が730百万円増加したことによるものであります。
(資本)
当連結会計年度末の資本は185,444百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,157百万円減少しました。これは主に利益剰余金が6,887百万円増加したものの、その他の資本の構成要素が5,369百万円減少、自己株式が2,618百万円増加(資本は減少)したことによるものであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動のための資金を確保する上で、適切な流動性等を勘案しつつ健全なバランスシートを維持することを財務方針としております。運転資金、設備投資、研究開発投資につきましては、主として営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする内部資金および銀行借入により調達しており、現在必要とされる資金水準を十分確保していると判断しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 重要な会計上の見積り及び判断、3.重要性がある会計方針」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、輸送機器の機能部品メーカーとして顧客ニーズを捉え、独創的なアイデアと技術で性能の優れた製品を供給することを基本方針に、二輪車・四輪車用クラッチおよび汎用機用クラッチの摩擦材に関する基礎研究から生産技術を含むコンポーネントとしてのクラッチの研究開発を進めております。
また、既存製品の改良および摩擦材を含めたクラッチの製造で蓄積された技術を活かし、多孔質ファイバー触媒シート(ペーパー触媒)の研究とその応用としてエンジンの排ガス浄化用ペーパー触媒の研究開発を行ってまいりました。現在は、クラッチ以外の事業分野への展開を目指し、電動化製品やエネルギーソリューション、環境浄化等をテーマとした新事業開発に積極的に取り組んでおります。
当連結会計年度の研究開発費の総額(開発資産として資産計上したものを含む)は
当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発費は次のとおりであります。
(二輪事業)
基幹クラッチ事業では、モーターサイクル用湿式摩擦材、スクーター用乾式摩擦材の研究開発を骨格に、クラッチの操作性を含む商品性向上およびコスト低減のための研究開発を行っております。
新規事業では、EV/CASE領域において、モータコア等の電動基幹部品やモータASSY、PCU、e-Axle等の電動パワーユニットの研究開発を行っております。また、デジタルソリューション活用によるコネクテッド・サービス等の更なる付加価値となる研究開発を行っております。
二輪事業に係る研究開発費は
(四輪事業)
基幹クラッチ事業では、オートマチックトランスミッション、CVTおよびハイブリッド用の湿式摩擦材の研究開発を骨格に、小型軽量化、低コスト化及び燃費向上に寄与するクラッチの研究開発を行っております。
新規事業では、EV/CASE領域において、モータコアSUBモジュールの事業化に向けた研究開発やアルミダイキャストを中心とした熱マネジメントの研究開発を行っております。
四輪事業に係る研究開発費は
(非モビリティ事業)
環境分野では水と大気の浄化、循環システムに繋がる製品、エネルギー分野では燃料電池や触媒等の研究開発を行っております。
非モビリティ事業に係る研究開発費は