第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

① 経営基本方針

当社グループは、経営理念に「世界に貢献する企業に向かって『尊重 信頼 挑戦』そこから生まれる夢の実現」を掲げ“多様な文化や価値観を持つ国際社会と協調・協力しながら社会ニーズに応えられる企業として発展していくこと”“先進的な加工技術への挑戦と技術の蓄積によって、期待を超える魅力あふれる製品を素早く提供し、世界中から信頼される企業となること”を目指しております。
 これら経営方針とビジョンのもと、株主、顧客、従業員、社会など全てのステークホルダーから信頼される企業であり続けられるよう企業価値、株主価値の向上に努めてまいります。

 

② 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

CASE革命と呼ばれる100年に一度の自動車業界の変革期にあって、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しております。当社グループでは、強みとする研究から量産までの一貫体制による開発力及び生産力(自動車フレームの性能解析や金型技術、超ハイテン材のプレス・溶接加工技術)に関する多岐にわたる技術を基軸に、急速な変化にも即応しながらゆるぎない成長を遂げていくための戦略基盤となる、2030年を最終年とする長期ビジョン「2030年VISION」を策定し、2024年度を初年度とする中期経営計画「Change 2027」(2024年4月~2027年3月)とともに、当社グループの中長期経営方針として掲げ、企業としての持続的成長の実現とともに、持続的に成長する社会の実現へ貢献、新たな価値を提供できる企業として事業成長を遂げてまいります。

 

◇2030年VISION

2030年VISION:「Be a Value Creator(価値創造者になる)」

コーポレートスローガン:「Exceed expectations(期待を超える)」

※ なお、2030年VISIONに関して、当社グループのコア・コンピタンス(強み・魅力)を、「テクノロジー(お客様のニーズを具現化するものづくり技術)」と「ホスピタリティ(お客様のニーズをお客様と一緒になって実現する)」と定義しております。

2030年VISIONに向けて当社グループは、ESGの取組みと価値創造文化の醸成を基盤に、既存事業の強化と新商品の開発を進めてまいります。そして、当社グループのコア・コンピタンスとESGを礎としつつこれに全員の「Think Value」を加え、新たな価値を生み出してまいります。そのプロセスでは、自動車業界で存在感を示すとともに、社会に必要とされそして社会に役立つ価値を創出し、これらを通じて期待を超える「Value Creator」を目指しております。

 


◇Change 2027(2024年4月~2027年3月)

経営方針:ビジネスポートフォリオと事業構造の転換・組み換え

重点施策:


 

経営指標:

 

2025年3月期

2026年3月期

2027年3月期

営業利益

110億円

135億円

160億円

投下資本利益率(ROIC)

7%以上

 

 

なお、同期間の売上収益及びROEは次のとおり計画しております。

 

2025年3月期

2026年3月期

2027年3月期

売上収益

2,300億円

2,200億円

2,400億円

親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)

10%以上

 

 

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(収益力の強化)

技術価値に見合った適正な製品価格設定に努めるとともに、省人化等の原価低減策を推進し収益力を強化してまいります。特に重要地域である北米及び中国地域拠点の収益力強化に注力してまいります。

 

(主力得意先向け売上の確保と拡販に向けた取り組み)

主力得意先の新車種開発の早期から技術提案営業を進め新規部品の受注獲得を目指すとともに、既生産部品の継続受注を図ります。拡販においても技術提案営業のほか当社グループの供給体制を活かし、国内外で受注活動を積極的に進めてまいります。また、金型や鋳物についても受注拡大とこれまでに培ってきた技術や知見を活かした自動車フレームの受注活動を進めてまいります。

 

(新技術及び新商品の開発推進)

自動車フレームの製造で培った優れた技術とアイデアで夢のある技術開発や商品開発を進め、より多くのお客様に新たな価値を提供し売上収益の拡大を図ってまいります。

 

(サステナビリティの強化)

環境やLCAに配慮した生産活動や環境に配慮した活動に積極的に取り組み、脱炭素社会の実現を目指し、地球環境保全へ貢献してまいります。

また、女性の新規採用者における比率の向上や管理職への登用をはじめとした、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、男性の育児休業取得を推進するワークライフバランスへの取組み、安全で働きやすい職場環境づくり、健康経営、人権に関する取組み、ガバナンス強化などESG各領域の施策を推進し、サステナビリティを強化してまいります。

 

(品質高位安定化)

お客様の期待を超える品質水準の達成、安定化に取り組んでまいります。

 

(人材開発)

グローバルに活躍できる人材の採用、育成、選抜に向けた諸施策を国内外で進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティへの対応体制(ガバナンス/リスク管理)

当社は、経営理念に立脚し、ESG(環境・社会・ガバナンス)各領域の諸施策を推進することを通じて「世界に貢献する企業になる」ことをサステナビリティの基本方針としています。

当社組織の最上位階層にあたる事業統括本部、開発事業本部、日本事業本部、北米事業本部、中国事業本部、アジア事業本部は、年度事業計画において、自己の事業活動と連鎖してサステナビリティの取組みを展開するとともに、その実績を取締役会や経営会議等が監督しております。

また当社は、事業統括本部 IR・ESG・法務担当をサステナビリティ推進責任者と定め、当社グループのサステナビリティ機能を統括し、あわせて当社グループにおけるサステナビリティ推進の専任部署としてIR・ESG・法務部を設置し、IR・環境・ガバナンス・法務・リスクマネジメント・人権問題など、多岐にわたるサステナビリティ施策の立案及び推進に係る機能を担っております。サステナビリティに係る諸活動については、専門委員会や担当部門が実行し、グローバルに展開しております。

さらに、サステナビリティの施策推進に関して経営層との連携を強化することを目的に、ESG委員会を設置しております。ESG委員会は、ESG全般の統括・諮問機関として、ESGに係る目標設定や活動推進について、主管部門に対して経営者の視点から助言を行っております。また、必要に応じて、ESG委員会における活動内容は、取締役会に報告されます。なお、2025年3月期におけるESG委員会の開催数は4回であります。

このような体制を基にして、当社はサステナビリティに係るリスク及び機会を識別し、管理しております。

 

(サステナビリティ推進体制)


 

 

(2)サステナビリティに係るリスク及び機会への対応(戦略)

当社は、当社グループにおけるサステナビリティの強化にあたり、事業課題及びステークホルダーとの関係性等を考慮して、サステナビリティ重要課題を以下のとおり認識しており、ESG各領域の施策を通じて、持続的な企業価値の向上に努めております。

 


 

a. 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえた取組み

当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づき、気候変動によるリスクと機会が当社の事業に与える影響を、TCFDが提唱するフレームワークに沿って分析いたしました。

(a)ガバナンス/リスク管理

気候変動を含む環境領域は、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)が全社の活動を統括するとともに、ISO14001:2015に基づくリスク・機会の特定、影響の分析や対応策の実施等を行っております。EMSは事業統括本部 IR・ESG・法務担当をその責任者とするとともに、事業所でそれぞれ環境マネジメント組織を整備し、CO2削減に向けた取組みと、省エネ、省資源、廃棄物の削減に向けた環境活動を推進しております。

このようなEMSの体制と、「(1)サステナビリティへの対応体制(ガバナンス/リスク管理)」に記載の体制を基にして、TCFDが提唱するフレームワークに沿って特定した気候関連のリスク及び機会についても、環境活動と連動させた施策を行うことで、リスク低減及び機会の確保につなげております。

 

(b)戦略

当社は、TCFD提言に基づき、産業革命前に比べて、世界の気温が3.2℃~5.4℃上昇する「4℃シナリオ」、厳しい対策により0.9℃~2.3℃上昇に抑えられる「2.0℃シナリオ」および抜本的な対策により1.5℃未満に抑えられる「1.5℃シナリオ」の各々のシナリオについて、リスク及び機会の検討等を行っております。

なお、リスク及び機会の検討にあたっては、以下に示す政府機関及び研究機関が開示するシナリオを参照しました。

(参照した文献/シナリオ例)

・ IEA「World Energy Outlook」

 公表政策シナリオ(STEPS)、持続可能な開発シナリオ(SDS)、ネットゼロシナリオ(NZE)

・ IPCC「AR5」「AR6」

 RCP8.5、RCP2.6、RCP1.9

 

リスクタイプ

ジャンル

主要インパクト

H-oneグループ

への影響

主要な対応策

4℃シナリオにおける影響が顕著なリスク(物理リスク)

急性

サイクロンや洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇/山火事の可能性と重大性の上昇

客先稼働停止またはサプライチェーン分断影響による売上減少

・災害経験を踏まえた継続的なBCP見直し

・サプライヤー稼働状況の確認および代替先の確保

2.0℃/1.5℃シナリオにおける影響が顕著なリスク(移行リスク)

政策および規制

内燃機関(車)等に対する規制の強化

EV/FCV対応に遅れた部品・サービスの売上減少

・EV/FCV関連製品の研究/開発の実施

政策および規制

GHG排出の価格付け進行・GHG排出量の報告義務の強化

炭素税が導入された場合の原材料コストの増加

・軽量化の推進

・サプライヤーとも連携した排出削減の推進

省エネ政策の強化

低効率設備から高効率設備への更新に伴う設備投資コストの増加

・高効率設備への計画的更新

機会(共通)

製品およびサービス

低炭素商品・サービスの開発/拡大、R&Dとイノベーションを通じた新製品・サービス開発

環境対応製品の開発による新規ビジネス立上げ等売上の増加

・EV/FCV関連製品の研究/開発の実施および新規顧客の獲得活動の実施

市場

新たな市場へのアクセス

新市場における売上の増加

・自動車以外の製品分野への参入検討

資源の効率

 効率的な生産・流通プロセス

生産コストの減少

 

 

(c)指標及び目標

当社は、中長期的な環境目標として、Scope1+2のCO2排出量におきましては、2030年度に2019年度比 連結でCO2排出量46%削減、2050年度にはScope1~3でカーボンニュートラルという目標を設定しております。目標に対する実績は、統合報告書及び当社ウェブサイトにて開示しております。

URL: https://www.h1-co.jp/sustainability/environment/

 

b.多様な働き方実現、多様な人材の確保(人的資本経営への取組み)

(a)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針(戦略)

(人材育成方針)

当社は尊重、信頼、挑戦の経営理念に基づき、人材こそが価値を生み出す資本であるとの認識に立ち、企業の価値創造力の向上及び持続的成長のため、社会課題解決の視点で自ら考え行動を起こし、周囲を巻き込んで新たな価値を生み出す多様な人材を採用し、育成します。

(社内環境整備方針)

性別・年齢・出身国等に関わらず、すべての個人が能力、キャリア開発できるように、上司・先輩からの日常業務を通じた指導やOJTを基本として、新価値創造に向け、主体性・思考力・行動力等の向上研修や社内外交流を促進します。また、管理監督者のマネジメント力向上、多様な働き方の導入、健康経営の推進など、各個人が活き活きと働ける環境整備を推進します。

これらの方針に基づき、当社は、従業員の能力開発のための教育・研修機会を充実させることはもとより、外国出身者の日本語学習支援制度、女性社員向けのキャリアデザイン研修、管理職向けのダイバーシティ・マネジメント教育などの取組みを積極的に推進しています。

なお、多様な働き方の導入事例は以下のとおりであります。

・年次有給休暇取得の促進

当社は従来から年次有給休暇所得の促進に努めており、一般職の年間付与日数(最大20日)に対し毎年90%以上の取得を継続しております。

・男性育児休業取得の推進

当社は企業には男性が育児休業を取得しやすい環境を整備し、男性労働者の育児休業取得率は2023年3月期から90%以上の取得を継続しております。

・在宅勤務制度、フレックスタイム制度の適用職場拡大

当社は新型コロナ感染防止対策で始まった在宅勤務を恒久制度化し、フレックスタイム制度の適用職場拡大も図っております。

さらには、不妊治療を行う従業員への配慮や女性の健康管理に関する管理監督者教育、LGBTQへの配慮を含むハラスメント防止教育等を実施しております。

こうした結果、女性活躍推進法に基づく優良企業として厚生労働省より3段階の認定のうち最高位の「えるぼし」(3つ星)認定、次世代育成支援対策推進法に基づく子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を取得しております。また、障害者雇用に関しても積極的に取り組んでおり、2022年5月には「埼玉県障害者雇用優良事業所」認証を取得しております。さらには、人権に対する社会的な意識の高まりと企業の社会的責任を踏まえ、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、2023年3月にエイチワン人権方針を策定致しました。同方針をもとに、人権尊重の取組みをグループ全体でより強力に推進し、社会的責務を果たしてまいります。

 

(b)方針に関する指標の内容、目標及び実績(指標及び目標)

第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。

 

c. 持続的成長につながる事業基盤の確立

当社は、今後の自動車業界の変革、顧客における事業戦略の変化という課題に対して、これまで以上に監督機能が働くガバナンス体制の構築に努めております。

ガバナンスについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の内容、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、以下に記載してある将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。

 

(1) 依存度の高い販売先

当連結会計年度末日現在、本田技研工業株式会社は当社の発行済株式の20%以上を保有しており、同社は当社のその他の関係会社に該当しております。

当社グループは、主に自動車の車体フレームを製造し、複数の自動車メーカー等に販売しておりますが、その最大の販売先はホンダグループ(本田技研工業株式会社、同社の連結子会社及び持分法適用会社)であります。当連結会計年度の連結売上収益における同グループ向けの販売実績は約90%を占めていることから、今後、同グループからの受注量が低下した場合、売上収益の減少を通じて当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、主に前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題(主力得意先向け売上の確保と拡販に向けた取り組み)」のとおりホンダグループからの受注獲得に努めると同時に、他の自動車メーカーとの取引拡大にも注力しております。

 

(2)市場、顧客ニーズに基づく新技術の開発

自動車業界は、電動化の進展並びにCASEやMaaSの拡大といった変革期にあり、技術開発に対する顧客ニーズも多様化してきております。そのような中で、当社グループの既存の製品や製造方法に取って代わる新素材を用いた製品や新しい製造技術が市場や得意先に受け入れられた場合には、シェアの低下を通じて当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」のとおり中期経営計画Change 2027の重点施策に「技術・開発への資源シフト」を据え、より高性能な自動車フレーム並びにその製造技術の研究開発に経営資源を積極的に投入するとともに、中長期で顧客の多彩なニーズにお応えするため新たな技術開発や商品開発を通じた新価値創造を図っております。

 

(3) 製品の品質

当社グループは、国際的な品質管理基準に基づいた品質保証体制を構築し、製品の品質の維持と向上に努めております。しかしながら、当社グループの製品に重要な不具合が存在し、重大な事故やクレーム、リコール等の責任に問われた場合、多額の対策費用の発生や当社グループの評価の低下による受注の減少を通じて当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等  (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題(品質高位安定化)」のとおり、品質向上にたゆまず取り組んでいるほか、不測の事態に備えリスクの一部を生産物賠償責任保険でカバーしております。

 

(4) 気候変動・環境規制への対応

温室効果ガス排出等による温暖化の深刻な影響に対し、地球環境の保全を喫緊の課題として取り組むことが求められています。各国が強化する環境規制や、ステークホルダーが求める脱炭素への事業を通じた貢献の要請に適切に対応できない場合、社会評価の低下等による機会損失により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、主に前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題(サステナビリティの強化)」を据え、「2050年度カーボンニュートラル実現」を目指し、生産時(Scope1+2)における温室効果ガス排出量を省エネ施策の実行と再生可能エネルギー由来の電力への切り替えによって削減する取り組みを行っております。製品のライフサイクル(Scope1~3)における温室効果ガス排出量は、購入した鋼板が大部分を占めていることから、より環境負荷の少ない方法で製造された鋼板への切り替えの検討や、リサイクルアルミ加工技術の活用といった技術開発をすすめています。

 

(5) 財務会計上の見積り

当社グループの財政状態及び経営成績は、以下の財務会計的な要因を含む資産及び負債への財務会計上の評価、会計基準の変更及び新たな適用により影響を受ける可能性があります。

① 有形固定資産及び無形資産

事業に供する有形固定資産及び無形資産は事業環境の変化等によって、帳簿価額の回収が見込めなくなった場合には、対象資産に対する減損損失の計上により当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」のとおり中期経営計画Change 2027の重点施策に「既存事業の採算性改善」を据え、当社、連結子会社及び持分法適用会社の業績向上を図るほか、各社の事業計画の月次モニタリングを通じてリスクの早期把握に努めております。

 

 ② 退職給付関係

退職給付に係る負債は、退職給付債務と年金資産の動向によって変動しますが、数理計算上の仮定に変動が生じた場合、又は運用環境の悪化等により年金資産が減少した場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

なお、数理計算上の仮定の影響については、後記 「第5 経理の状況 Ⅰ 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 22.従業員給付」に記載しております。

 

 ③ 繰延税金資産

繰延税金資産は、将来減算一時差異等に対して、将来の課税所得に関する予想等に基づく回収可能性を評価することにより計上されておりますが、経営状況の悪化により回収できないと判断された場合や、税率変更を含む税制改正等があった場合には、繰延税金資産の額が減額され、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針・経営戦略等」のとおり中期経営計画Change 2027の重点施策に「既存事業の採算性改善」を据え、当社、連結子会社及び持分法適用会社の業績向上を図るほか、各社の事業計画の月次モニタリングを通じてリスクの早期把握に努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度(以下、「当期」という。)における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概況

① 経営成績

当連結会計年度における世界経済の情勢は、インフレの鎮静化や個人消費の回復などを背景に緩やかな成長トレンドを維持しました。一方で地政学的な緊張の継続や、米国の新政権発足に伴う政策の転換を発端に世界経済の悪化が懸念され、先行きに対する不透明感が増しています。

自動車業界においては、販売台数は世界的には回復基調を維持しましたが、世界最大の中国自動車市場では電気自動車(EV)需要の伸長が目覚ましく、中国EV専業メーカーが販売を伸ばす一方、日本や欧米の自動車メーカーが苦戦を強いられる状況が続きました。

このような環境下、当社グループは2024年5月に新中期経営計画として「Change 2027」を策定し、「ビジネスポートフォリオと事業構造の転換・組み換え」を企図し、グループ経営管理の強化、既存事業の採算性改善、利益率の高い製品へ選択と集中、技術・開発への資源シフトの重点施策に注力してまいりました。

そのような中での当連結会計年度の経営成績は、販売価格の適正化や為替相場が前年同期に比べ円安水準で推移しましたが、主力得意先向けの自動車フレームの生産台数が前期に比べておよそ14%減少したことを主因に売上収益は2,281億45百万円(前期比2.0%減)となりました。利益面では、製造コストの圧縮を図ったことに加え、前期における有形固定資産の減損処理に伴う償却負担減少などにより、売上総利益は317億5百万円(同42.6%増)、前期における減損損失計上の剥落などにより、営業利益は118億60百万円(前期は営業損失188億26百万円)、税引前利益は108億27百万円(前期は税引前損失193億54百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は107億28百万円(前期は親会社の所有者に帰属する当期損失216億56百万円)となりました。

 

セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。

なお、2024年4月に組織体系の見直しを行い、従来の報告セグメント名「アジア・大洋州」を「アジア」に変更しております。この変更に伴う損益に与える影響はありません。

(日本)

主力得意先向けの自動車フレームの生産量が前期に比べて減少したことから、売上収益は580億33百万円(前期比0.6%減)となりました。利益面では、前期の減損損失計上の剥落(65億57百万円)などにより、税引前利益は51億40百万円(前期は税引前損失20億64百万円)となりました。

(北米)

主力得意先向けの自動車フレームの生産量が前期に比べて減少しましたが、設備売上の増加や販売価格の適正化、為替相場が円安に推移したことなどから、売上収益は1,153億39百万円(前期比15.0%増)となりました。利益面では、人件費高騰などの製造コストの増加などがありましたが、増収効果で補ったことで、税引前利益は36億56百万円(前期は税引前利益4億54百万円)となりました。

(中国)

主力得意先向けの自動車フレームの生産量が前期に比べて減少したことから、売上収益は389億2百万円(前期比24.7%減)となりました。利益面では、資産効率の最大化を目的に不採算事業の売却処分の方針決定に伴う減損損失の計上(8億87百万円)があったものの、生産台数減少を踏まえた固定費の圧縮を徹底的に図ったことや、前期に計上した減損損失の剥落(151億68百万円)などにより、税引前利益は18億77百万円(前期は税引前損失179億27百万円)となりました。

(アジア)

主力得意先向けの自動車フレームの生産量が前期に比べて減少したことから、売上収益は258億4百万円(前期比23.0%減)となりました。利益面では、製造コストの圧縮に努めたことや前期に計上した減損損失の剥落(5億円)などがありましたが減収影響を補えず、税引前利益は2億73百万円(同76.1%減)となりました。

なお、アジアには子会社のH-ONE India PVT., Ltd.の業績が含まれますが、同社株式は2025年3月に譲渡し、3月末時点では連結から除外しております。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末における連結財政状態は、資産合計は1,785億34百万円(前期比30億62百万円減)となりました。これは主に現金及び現金同等物、有形固定資産、退職給付に係る資産などが増加した一方、営業債権及びその他の債権、棚卸資産、その他の金融資産などが減少したことによるものであります。

負債合計は、1,129億92百万円(前期比130億48百万円減)となりました。これは主に営業債務、借入金、繰延税金負債などが減少したことによるものであります。

資本合計は、655億41百万円(前期比99億85百万円増)となりました。これは主に利益剰余金が増加したことによるものであります。親会社所有者帰属持分比率は35.8%(同5.4ポイントのプラス)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

日  本

49,579

102.3

北  米

116,589

110.8

中  国

37,001

71.4

アジア

24,982

77.1

合   計

228,153

95.9

 

 

 (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注状況

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比(%)

受注残高
(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

日  本

49,735

103.9

4,416

141.5

北  米

115,364

112.8

11,068

99.5

中  国

36,492

73.1

1,675

44.8

アジア

25,424

75.5

1,699

85.1

合   計

227,017

97.1

18,859

94.4

 

 

 (注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

報告セグメント

日  本

48,439

101.5

北  米

115,425

115.2

中  国

38,557

75.1

アジア

25,722

76.9

合   計

228,145

98.0

 

 

 (注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ホンダオブアメリカマニュファクチュアリング・インコーポレーテッド

49,021

21.1

48,364

21.2

本田技研工業株式会社

36,707

15.8

37,591

16.5

東風本田汽車有限公司

23,330

10.0

15,468

6.8

 

 

④ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、193億10百万円(前期比4億17百万円増)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは税引前利益108億27百万円、減価償却費及び償却費95億82百万円をベースに、営業債務の減少20億15百万円、退職給付に係る負債の減少8億8百万円、利息の支払額16億86百万円、法人所得税の支払額16億87百万円などがありましたが、当連結会計年度は210億79百万円の収入となり、前期に比べ収入が15億84百万円増加しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入(H-ONE India PVT., Ltd.)29億28百万円などがあった一方、有形固定資産の取得による支出161億80百万円などがあり、当連結会計年度は131億49百万円の支出となり、前期に比べ支出が1億9百万円減少しました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは長期借入れによる収入130億68百万円があった一方、短期借入金の減少18億88百万円、長期借入金の返済による支出171億56百万円などがありました。これらの結果、当連結会計年度は73億38百万円の支出(前期は12億79百万円の稼得)となりました。

当期のフリー・キャッシュ・フローは79億30百万円のプラスとなりました。これは、有形固定資産の支出や営業債務の減少があった一方、税引前利益の計上、減価償却費及び償却費、非金融資産の減損損失、金融費用の計上、営業債権及びその他の債権の減少などによるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、上述のとおりであります。

翌連結会計年度は、生産関連設備の更新など一定の設備投資(後記 「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください)を予定しております。

  

 

(キャッシュ・フローに関する補足情報)

 

2023年3月

2024年3月

2025年3月

親会社の所有者に帰属する持分比率(%)

36.6

30.4

35.8

時価ベースの親会社の所有者
帰属持分比率(%)

9.2

10.7

17.6

債務償還年数(年)

3.1

3.8

3.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

18.0

12.5

11.8

 

 

(注) 親会社の所有者に帰属する持分比率(%)

 親会社の所有者に帰属する持分合計/資産合計

時価ベースの親会社の所有者に
帰属する持分資本比率(%)

 株式時価総額/資産合計

債務償還年数(年)

 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ

 営業キャッシュ・フロー/利払い

 

 

(2) 目標とする経営指標等

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、(1) 経営方針・経営戦略等、② 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略」に記載しております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

当社は、2025年2月28日開催の取締役会において、連結子会社であるH-ONE India PVT., Ltd.の株式を譲渡することを決議し、2025年3月3日付で株式譲渡契約を締結しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記7. 企業結合及び非支配持分の取得等」に記載のとおりであります。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は、グローバル展開を視野におき、卓越した技術と製品開発を目指し、積極的に研究開発活動を推進しております。

研究開発は、当社の開発事業本部を中心とし、ホンダグループを始めとした多くの研究開発機関と密接な連携をとり、効果的かつ効率的に進めております。

当連結会計年度における、セグメント別の主要課題及び内容は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,702百万円であり、その大半は自動車部品関連事業に係るものであります。

 

セグメントの名称

 日 本

主要課題及び内容

新規商品の研究開発

・EV最適BODYの研究開発

・精密金属部品のプレス加工技術の開発

・高強度材高精度プレス加工技術の開発
・軽量材料の成形・接合技術の開発

・AICADCAMCAEの技術革新にあわせたシステム開発及び技術者育成