第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下に記載している将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、次の経営理念とそれらを実現するための経営ビジョン(当社の進むべき方向性)を策定し、これらの経営方針とビジョンの下、グローバル競争に打ち勝つ企業規模と展開力を実現し、安全・環境に即した先進技術の追求を通じ、車体部品とトランスミッション部品の専門メーカーとして世界TOPを目指し、企業価値・株主価値の向上に努めてまいります。

<経営理念>

社是

・人間性尊重

・技術革新

・堅実経営

 

行動指針

・愛情と相互信頼をモットーに自己啓発に努めよう

・先進技術を追求し良質廉価な製品を提供しよう

・自主性をもち英知と機敏さで社会に貢献しよう

 

<経営ビジョン>

 先進技術と良質廉価技術の融合で低炭素社会に貢献し、世界中のお客様に満足される企業

 

(2)経営指標

 当社グループは、健全な財務体質を維持しつつ、自己資本に対する収益性を高めること、そのために、売上・利益の持続的な拡大を図ることを目指しています。

 健全な財務体質を維持向上するため、自己資本比率は50%以上を維持すること、同時に、資本効率の面では資本利益率(ROE)は10%以上を目指します。そのためには、安定した利益成長が求められます。当社は売上・利益の拡大を図るため、売上高成長率及び売上高営業利益率の向上を目指します。また、設備産業の特性から、売上拡大のための設備投資と資産は効率性を重視し、総資産利益率(ROA)、投下資本利益率(ROIC)の向上を目指します。

 

(3)会社の対処すべき課題

 CASE革命と呼ばれる100年に一度の変革期にあって、自動車業界を取り巻く環境は大きく変化しています。当社は、人類全体の課題である脱炭素社会実現への貢献を最重要課題の一つとして認識し、事業活動におけるCO₂排出量の削減を図るとともに、EVシフトによって誕生する次世代市場を開拓する準備を業界に先駆けて行っています。この課題を解決するためには、当社の従来の事業モデルを変革し、さらなる進化を図るとともに、変革の担い手となる多様な人財の発掘・育成が必要であると考えています。

 当社グループでは、4つの新経営戦略として「地球環境への対応(気候変動対応)」、「EV関連事業の確立」、

「人財の多様性向上」、「既存事業の変革」を掲げて中長期的な成長を目指した取り組みを推進しています。

 

① EV関連事業の確立

 加速するEVシフトの潮流を当社の事業拡大の機会と捉え、EVに用いられるモーターコアとバッテリーハウジングを主軸としたEV関連事業の確立に取り組んでいます。

 モーターコアの領域では、既存のトランスミッション事業で培ってきたノウハウ・技術を駆使した事業展開を企図して、東京都に所在する拠点に実証ラインを導入し、量産を想定した技術開発を進めています。

 バッテリーハウジングの領域では、ドイツのエンジニアリング会社と提携して軽量かつリサイクル性の高いアルミ材を適用材としたバッテリーハウジングの開発を進めています。さらに、当社がこれまで培ってきた車体一台解析技術を基礎として、高剛性と軽量化を高次元で両立したEVの最適プラットフォームを提案するサプライヤーを目指します。

 

② 人財の多様性向上

 当社は、人財こそが最も重要な経営資源であると位置づけています。当社の課題解決を担う国内外の多様な人財が自ら学び、考え成長することを支援する環境作りと企業風土の醸成に努めています。

 従来から採用してきた工業系・機械系の人財のみならず、EV関連事業等の新事業領域の専門人財の採用に注力しているほか、これまでにないイノベーティブな事業創造あるいは巧妙化するサイバー攻撃への対応等の必要性を認識し、IT・データサイエンスなどの最先端領域においても有能な人財の獲得を進めます。

 

③ 既存事業の変革

 現在、完成車メーカー各社は急速なEVシフトへの対応としてEV車開発を行うのと同時に、新たなサプライチェーンの構築にも取り組んでおり、業界全体として開発リソース、調達リソースが逼迫しています。このような状況下で当社は、これまで培った車体一台解析技術と生産技術を駆使して、開発から一括受注する車体領域のシステムサプライヤーを目指します。地域や製品に応じた外部とのアライアンスをジーテクトネットワークとして新たに構築し、必要に応じて生産の外部委託を活用することで、車体一台分の生産・販売を行います。

 

④ 気候変動問題への取組み

 2050年度カーボンニュートラルを目指す当社としては、製造と製品のライフサイクルに関連するCO₂の排出量を削減していく事が重要だと考え戦略を立案して取り組んでおります。「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ① 気候変動問題への取組み」に詳細を記載しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

 当社グループにとってのサステナビリティとは、本業を通して様々な社会課題の解決に寄与することとともに、当社グループが持続的な成長と進化を遂げながら、社会の持続的な発展に貢献していくことであると考えています。経営戦略の中に「地球環境への対応(気候変動対応)」と「人財の多様性向上」を重点施策として掲げ、あらゆるステークホルダーとの関係性を重要視し、サステナビリティに関する取組みを推進しています。現代の様々な深刻な社会問題に対して対応していくため、当社はサステナビリティに関する基本方針を以下のとおり定めています。

 

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(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティの実現に向けて、株主、得意先、社員、地域社会を含むステークホルダーへの情報提供や対話を実施し、企業としての透明で健全な組織体制の下での継続的な事業活動を可能とする、適切なコーポレートガバナンスの確立を目指しています。

 

<サステナビリティ推進体制>

 当社グループではサステナビリティへの取組み強化を目的として、CSR推進委員会にて自社及びサプライチェーンマネジメントを実施してきました。2022年にはサステナビリティ会議体を定め、サステナビリティに関する施策・方針や取組み状況などについて経営会議や取締役会にて報告を行っています(年1回以上)。

 

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(2)戦略、(3)リスク管理、及び(4)指標及び目標

 CASE革命と呼ばれる100年に一度の変革期にあって、自動車業界を取り巻く環境は大きく変化しています。当社は、人類全体の課題である脱炭素社会実現への貢献を最重要課題の一つとして認識し、事業活動におけるCO排出量の削減を図るとともに、EVシフトによって誕生する次世代市場を開拓する準備を業界に先駆けて行っています。この課題を解決するためには、当社の従来の事業モデルを変革し、さらなる進化を図るとともに、変革の担い手となる多様な人財の発掘・育成が必要であると考えています。

 当社は、4つの新経営戦略として「地球環境への対応(気候変動対応)」、「EV関連事業の確立」、「人財の多様性向上」、「既存事業の変革」を掲げて中長期的な成長を目指した取組みを推進しています。

 

① 気候変動問題への取組み

 2050年度カーボンニュートラルを目指す当社グループとしては、製造と製品のライフサイクルに関連するCO₂の排出量を削減していく事が重要だと考え戦略を立案して取り組んでいます。

 まず、当社グループの生産時(Scope 1+2)における温室効果ガス(以下、GHG)排出量は、省エネ施策の実行と再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来の電力への切替えで削減を行っていきます。日本では先行して2023年5月に工場、自社所有事業所の再エネ由来電力への切替えを完了しました。海外現地法人におきましては、地域特性を鑑みて順次切替えを行っていきます。

 次に、製品のライフサイクル(Scope 1~3)におけるGHG排出量は、購入した鋼板が大部分を占めているため、より環境負荷の少ない方法で製造された鋼板への切替えの検討や、リサイクル性に優れたアルミ製品の開発と生産技術を確立することで、GHG排出量削減に繋げていきます。

 2022年度は製品のライフサイクルにおけるGHG排出に関して、自社加工工程における製品毎のエネルギー使用量を把握する準備をDXプロジェクトチームと連携して推進しました。今後はエネルギー使用量の把握による、省エネ分析とGHG低減を実施していきます。

 

(ⅰ)気候変動に関する情報開示

 当社グループは、環境マネジメントをマテリアリティ(重要課題)の一つとして掲げ、従来より環境経営に取り組んできましたが、今後はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに沿って、投資家をはじめとする幅広いステークホルダーへ、より積極的に情報開示を進めていきます。気候変動に伴う事業活動に与えるリスクと機会を抽出し、経営戦略へ盛り込む活動を推進していきます。なお、今後もシナリオ分析や各リスクと機会の財務への影響等を検証するなど開示内容を充実していきます。

 

(ⅱ)ガバナンス

 気候変動に係わる重要事項に対して、代表取締役社長をTOPとしたGreen Transformation(GX)プロジェクトを2021年度より立ち上げ推進してきました。

 2022年度からは新たに設立された経営企画部内配下のグローバル環境部署へ引継ぎ、経営企画部を担当する専務執行役員がグローバル環境統括責任者を兼任しています。特定した重要なリスクと機会は、環境担当役員を中心に経営企画部門にて、事業戦略や方針管理に落とし込み定期的に経営層へ報告し協議を行っています。加えて案件に応じて、取締役会への報告・提言を行っていくこととしています。

 

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(ⅲ)戦略

 当社グループの事業活動における環境戦略は、①省エネの取組み、②再エネの活用(自家発電を含む)です。今後はグローバルで拠点ごとに戦略の優先順位を付け、積極的に取り組んでいきます。

 自社製品を通じた環境対応としては、①車体軽量化技術による自動車の燃費・電費性能向上への貢献、②EV関連製品(バッテリーハウジング、モーターコア)事業への取組みによるEV普及への貢献が挙げられます。

 なお、関係の深い自動車業界の状況と社会の状況、拠点のある地域の特性などを鑑みてリスクと機会を次の表のとおり抽出しています。

 

<リスクと機会>

物理リスク:4℃以上シナリオに基づいて分析 移行リスク・機会:2℃未満シナリオに基づいて分析

リスク・機会

内容

時間軸

財務影響度

物理リスク

急性

気候変動に伴うサプライチェーンの途絶による売上減少

中期

洪水や海面上昇に伴う工場の操業停止による売上減少

中期

慢性

気温上昇により変化する職場環境の維持対応に伴う費用増加

長期

移行リスク

政策・法規制

カーボンプライシングや国境炭素税を含めたGHG排出量規制強化への対応による投資・費用の増加

短期

技術

EVシフトに関する技術対応の遅れによる失注に伴う売上減少

短期

市場

原材料(鋼板)のCN対応に伴う価格上昇による費用の増加

中期

エネルギー価格の高騰による費用の増加

長期

機会

軽量化技術による自動車の燃費・電費性能向上への貢献に伴う売上の拡大

中期

EV関連製品(バッテリーハウジング、モーターコア)の売上拡大

中期

DXに伴うエネルギー使用の効率化による費用低減

短期

参照シナリオ

・2℃未満シナリオ NZE(IEA 2022)

・4℃以上シナリオ RCP8.5(IPCC AR5)

時間軸

・短期:5年未満、中期:10年未満、長期:2050年まで

 

(ⅳ)リスク管理

 当社グループは、管理対象となっている気候変動のリスクと機会の項目において、グローバル環境部署と各海外現地法人の担当者や関連部署、中央環境推進委員会とディスカッションを行い、現段階で外部の方向性に大きなずれがないことを確認し、社内の対応施策の進捗状況を共有しています。

 事業戦略に影響する気候変動を含めた世の中の動向や法制度・規制変更等の外部要因の共有や、各社の環境施策の進捗状況、今後のリスク・機会等の内部要因を踏まえて、戦略・施策等の検討を実施していきます。

 

(ⅴ)指標及び目標

 気候変動のリスクと機会を管理する指標として、グローバルでのScope1~3のCO₂の排出量削減目標を定めています。ジーテクトグローバルで排出されるScope1・2のCO₂排出におきましては、2013年度比で2030年には50%削減、2040年には100%削減を掲げています。また、2050年にはサプライチェーンでの協力を得ながらScope1~3でカーボンニュートラルを目指しています。2022年度における排出量におきましては、今後発行、開示される当社HP内のジーテクトレポート(統合報告書)やCDP Climate Change2023をご参照ください。

 

② 人的資本に関する取組み

 当社は従業員が活き活きと働ける環境と、一人ひとりが成長し活躍できる企業風土を大切にし、経営戦略の重要な項目の一つに「人財の多様性向上」を掲げています。

 

〇人財の育成及び社内環境整備に関する方針

 ジーテクトは人財こそ最も重要な経営資源と位置付け、「全ての従業員に成長の機会を提供し、自主的なスキルアップの支援」と「次の時代に向け新たな価値を生み出す人財の創出」を方針に定め、従業員と企業が共に成長する姿を目指しています。

 

(ⅰ)ガバナンス

 人財戦略に関しては、事業管理本部長を委員長とし、各事業本部長を委員とする「人材開発委員会」において採用・育成・異動及び人事制度に関する具体的な事項の審議を行い、必要に応じて、経営会議、社長執行役員と取締役会に上申・決議を行っています。また、人事担当役員を委員長とし、国内外の各拠点責任者を委員とする 「ダイバーシティ推進委員会」にて、性別、年代、職種等にかかわらず、従業員一人ひとりが強みを活かし、多様性の力で新しい価値を創造していく企業風土の醸成を目指しています。

 

(ⅱ)戦略

 当社の4つの経営戦略のうち「人財の多様性向上」に基づき、人財づくりの強化を推進しています。以下の項目について重点施策として取り組んでいます。

 

・従業員一人ひとりの成長を支援するための教育研修制度の検討

・多様な人財の活躍を後押しする人事施策の新設や見直し

・経営幹部候補人財の育成

・新規事業領域や高度なIT知識を有する専門人財等の採用

 

a. 戦略的な取組み:自律的な学習の支援及びモチベーションアップにつながる支援

 経営環境が大きく変化する中、従業員が自ら必要な知識や能力を習得する機会を部門横断的に設けています。業務に活かせるスキルや知識習得、デジタルスキルの習得などに加えて、海外駐在を見据えた語学力向上のプログラムを実施しています。また、職場の活性化やモチベーション向上に繋がる教育研修を実施しています。

 

・語学力向上支援:国内語学研修制度、海外駐在前語学研修制度、TOEIC無料受検や英語学習アプリなど

・自己啓発支援:生産マイスター、ビジネスE-Learning、資格取得支援やデジタルスキル推進など

・職場の活性化やモチベーションアップにつなげる支援:階層別他流試合研修(他業種交流)、部門横断型

 の階層別研修、ハラスメント研修など

 

b. 戦略的な取組み:タレントマネジメント

 変革を続けるビジネス環境において、新たな価値創造をけん引していく人財の計画的育成と育成状況の可視化を行い、持続可能な成長を下支えする組織運営の仕組みづくりを推進しています。具体的にはタレントマネジメントシステムを導入し、部門横断型に人財情報を可視化し、組織ごとに人財育成計画を検討するほか、人材開発委員会での議論や運営に役立てています。

 

c. 戦略的な取組み:多様なバックグラウンドを持つ人財が活きいきと働く環境づくり

 当社は非現業部門においてフレックスタイム制度を導入しています。また、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、リモートワーク制度を拡大し、オンライン会議を活用するなど、働く時間とともに働く場所や働き方の多様化を図りました。感染症拡大が収束に向かった後も、出社と在宅勤務を業務特性に応じて、有効活用しています。

 また、子育てと仕事の両立を目指す従業員を支援するため、育児休暇制度(※)や男女の育児休業制度の積極的な取得を推進し、時短勤務の期間を子どもが小学校3年生になる年まで取得が可能としています。

 加えて、2022年度に新設した多様な働き方や人財獲得のための制度として、夫婦のいずれかが海外駐在になった際に利用できる海外帯同休職制度、当社を退職後に再就職したい場合に利用できるカムバック制度、求職者が利用できる社員紹介制度や契約社員からの正社員転換制度など、積極的に制度の見直し・新設を推進しています。

※育児休暇制度は当社独自の特別休暇制度で、子の出生から2か月以内に3日間取得することが可能

 

d. 戦略的な取組み:ダイバーシティ推進活動

 「すべての従業員が自分の強みを活かし活き活きと働ける職場づくり/組織や従業員間の壁をなくした繋がりづくり/たくさんのイノベーションの種が育つ広場づくり」を基本方針に掲げ、多様性から生まれる活力により新しい価値を生み出し、ジーテクトの持続的成長に結びつける活動を推進するため、ダイバーシティ委員会を設置し活動しています。女性活躍推進、男性の育児休業・休暇の取得の後押し、障がい者雇用やシニアの活躍などを重点テーマとし、課題解決のための具体的施策の実施を行っています。

 

e. 戦略的な取組み:健康経営の積極的推進

 当社グループは、「情熱と革新を融合させ、人とクルマと地球のより良い未来をかたちづくる」というビジョンの実現に向けて、従業員一人ひとりとその家族が心身ともに健康であることが最も大切な財産と考え、「健康経営」の推進に注力し、社員のエンゲージメント向上につなげられるような施策に取り組んでいます。特に重点課題として認識し取り組む項目は以下のとおりです。

 

①社員の生活習慣の向上

・従業員の健康意識の改革教育

・再検査等の積極的なフォロー

②メンタルヘルス

・メンタルヘルス研修の拡充

③喫煙者への禁煙意識の向上

・禁煙プログラムの推進

・禁煙支援の推進

 

(ⅲ)リスク管理

 当社グループは、世界各国の拠点で従業員を採用して事業活動を行っていますが、景気変動や少子化などの様々な要因による労働市場の逼迫や人事制度の構築・運用の失敗等により、優秀な人財の確保が困難となる恐れがあります。そのため、当社では従業員の定着を図るため、人事制度の見直し・拡充による福利厚生・従業員待遇の改善や体力・集中力を要する現場労働の自動化(機械化)による従業員の負荷低減等の施策を積極的に推進、展開しています。また、従業員が安心して働き続けたいと思う環境を整備していきます。リスク管理及び主なリスクについては、「第2 事業の状況、3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(ⅳ)指標及び目標

◆多様な働き方への環境整備と支援

 ダイバーシティ推進の重点テーマのひとつとして女性活躍推進を推進しています。

 

・女性採用比率向上

 目標:新卒および中途採用における女性採用比率を2028年までに25%とする

・女性役職者比率向上

 目標:女性役職者(※)の人数を2023年3月時点と比して2028年までに1.5倍とする

    ※女性役職者とは「主任」・「班長」以上の役職

・男性の育児休業取得の後押し

 目標:男性の育児休業取得率を2028年までに30%以上とする

・多様な働き方を支援する新規施策

 目標:生産性を維持した多様な働き方実現に向けた新規施策を1つ以上実施する

 

<実績>

 

2020年度

2021年度

2022年度

女性採用比率(%)

16.1

8.9

11.1

女性役職者(「主任」・「班長」以上)比率(%)

3.5

4.1

5.0

男性の育児休業取得率(%)

5.7

6.6

20.8

多様な働き方を支援する新規施策数

8

2

9

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関連する事項のうち、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあることを認識しております。

 なお、以下に記載している将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスクの分類

リスクの項目

リスクの説明

リスクの対策

事業環境

市場環境の変化

 当社グループは、日本、北米、中国及びその他のアジア地域、南米、欧州と、世界各国において事業を展開し、現地の完成車メーカー及び関連部品メーカーに対し製品を供給しております。これらの市場における景気後退による消費の低迷や税制変更による消費者の購買意欲の低下は、自動車の販売低下につながり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、事業展開をしている世界各国の市場の動向を注視し、設備投資の判断や適正な要員配置・経費管理等の面で迅速かつ的確な対応が取れるように努めております。

気候変動・環境規制への対応

 温室効果ガス排出等による温暖化の深刻な影響に対し、地球環境の保全を喫緊の課題として取り組むことが求められています。

 各国が強化する環境規制や、ステークホルダーが求める脱炭素への事業を通じた貢献の要請に適切に対応できない場合、社会的評価の低下等による機会損失により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、「2050年度カーボンニュートラル」を目指し、生産時(Scope 1+2)における温室効果ガス排出量を省エネ施策の実行と再生可能エネルギー由来の電力への切り替えによって削減する取り組みを行っております。

製品のライフサイクル(Scope 1~3)における温室効果ガス排出量は、購入した鋼板が大部分を占めていることから、より環境負荷の少ない方法で製造された鋼板への切り替えの検討に加えて、リサイクル性に優れたアルミ製品の開発と生産技術の確立に取り組んでおります。

自動車のEV化

 自動車業界では、脱炭素の実現のため、内燃機関の自動車からEVへの転換が急速に進もうとしています。

 従来の自動車と駆動系等の構造を異にするEVの普及は、新規参入による事業拡大の機会となる一方で、従来の部品の需要や、工場のあり方そのものを大きく変える可能性があります。

 当社グループは、EV化対応に積極的に取り組んでおりますが、研究開発・工場改革の遅延や頓挫等により、当社が適切に対応できない場合、受注を失い、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社では、「EV関連事業の確立」を新経営戦略の一つとして掲げております。研究開発費・設備投資として10年間で700億円を投入するとともに、EV関連事業として売上高1,000億円以上、営業利益率8%以上を目指して研究開発及び営業活動を推進しております。

 現在、製造工程の自動化に留まらない工場内物流の自動化も含めた工場のフルオートメーション化を進めるとともに、業界全体として開発リソース、調達リソースが逼迫する状況下にあって、これまで培った車体一台解析技術と生産技術を駆使して、地域や製品に応じた外部とのアライアンスを新たに構築し、必要に応じて生産の外部委託を活用することで、EVを含む車体領域について、開発から一括受注するシステムサプライヤーを目指してまいります。

事業運営

市場ニーズに基づく技術開発

 市場ニーズの把握は、技術開発リソースの配分決定にとって重要な指標となるものですが、市場ニーズの変化を予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合や適時に提供できない場合、想定よりも需要が伸びなかった場合には、将来の成長と収益性を低下させ、投資負担が当社グループの財政状態又は業績に影響を与える可能性があります。

 

 2022年4月に、北米(デトロイト)・欧州(ミュンヘン)・中国(上海)に所在する開発・リサーチ拠点を営業・技術・開発機能が一体となった営業・エンジニアリング拠点として再編しました。当社グループの研究開発・知財管理の中核拠点であるジーテクト東京ラボは、これらの拠点との連携を強化することで、市場ニーズの把握に努めるとともに、欧州ESP(Engineering Service Provider)と協業して新たな技術の研究開発に取り組んでおります。

新素材、新工法の普及

 当社グループの取扱分野において新素材の普及が進んだ場合には、当社グループの製品と競合することとなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、ギガプレスの普及によって自動車の車体下側の部品の製法が大きく変わる可能性が示唆されており、将来的には、この工法の普及あるいは適用領域の拡大により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、従来の鋼板素材のみならず、欧州の高級車を中心に採用が進んでいるアルミ等の新素材の研究開発にも取り組んでおります。

 なお、アルミのプレス加工については、量産技術を確立し、欧州拠点では既に生産を行っております。

 また、㈱アーレスティとの共同開発基本合意を締結し、協業することにより、アルミダイキャスト技術の開発・研究を推進しております。

知的財産権

 研究開発中の技術について他者が当社グループに先行して知的財産権を取得するなど、技術の権利化に劣後した場合には、製品化することができないことによる機会損失又は追加の費用の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、知的財産の管理に特化した専門の部署を設置し、知財戦略に基づいた知的財産権の調査・取得・管理を行っております。

 新規事業領域の知的財産の取得状況を精査するとともに、これからのビジネスの流れを先取りした知的財産権の取得に注力して取り組んでいます。

人財の確保

 当社グループは、世界各国の拠点で従業員を採用して事業活動を行っておりますが、景気変動や少子化などの様々な要因による労働市場の逼迫や人事制度の構築・運用の失敗等により、優秀な人財の確保が困難となる恐れがあります。

 人財の採用難あるいは流出は、従業員の育成や能力向上の機会を損なうものであり、ひいては人財不足による事業活動全般の停滞を招き、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、従業員の定着を図るため、人事制度の見直し・拡充による福利厚生・従業員待遇の改善や、体力・集中力を要する現場労働の自動化(機械化)による従業員の負荷低減等の施策を積極的に推進、展開しています。また、職場診断等の実施により、職場の現状を可視化し、働きやすい職場づくりのための施策立案につなげています。

 これらの取り組みを通じて、国内外の多様な人財が自ら学び、考え成長することを支援する環境作りと企業風土の醸成に努めております。

リスクマネジメント体制

 当社グループは、海外において積極的な事業展開を図っております。これらの国、地域においては、それぞれに様々なリスクが存在し、一様ではありません。これらのリスクに対して当社グループが適切に対処できなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、当社グループ全体でのリスク管理の重要性に鑑み、当社グループが進出している国ごとにリスクマップを作成しており、これに基づいて各子会社が最優先対応リスクを選定し、対策を推進しております。対策状況については、日本本社が定期的なモニタリングを実施し、グループ全体でのリスクと対策の共有を行っております。

事業運営

特定の販売先への依存

 当社グループは、本田技研工業株式会社が総議決権の30%以上を所有しており、同社は当社のその他の関係会社に該当している他、連結売上高の概ね6割弱を本田技研工業株式会社及びそのグループ会社が占めております。同社グループの国内外における生産及び販売の動向、事業戦略や購買方針等により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、本田技研工業株式会社との長期にわたる緊密な取引関係を通じ、生産及び販売の見通し、事業戦略や購買方針に関する将来の方向性を共有し、自社グループの投資・事業戦略の判断に活用しております。

 また、既存の取引先以外の取引先との取引を拡大するため、価格競争力のある開発提案による営業戦略を展開しており、これによって、特定の販売先への依存リスクの低減を図っております。

品質

 当社グループの製品について、予期できない品質問題が発生した場合には、コストの発生や当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、関連法規を遵守し、国際的な品質管理基準に従って設計・製造を行い、品質ガバナンスを徹底することで品質向上に努めるとともに、カメラ映像や画像解析技術を活用した品質保証を進め、生産ライン内部での精度・品質検査の実現により、品質の信頼性向上に取り組んでおります。

 また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)プロジェクトを通じて、グローバルでグループの品質情報を可視化し、モニタリングすることで、予知予防による管理を目指します。さらには、新たな事業領域であるEV関連部品事業にふさわしい品質保証体制の確立にも取り組んでおります。

サプライチェーン

 当社グループは、主要な部分品・購入品の調達について、当社グループ内外の調達先から供給を受けております。このため、感染症の拡大あるいは洪水等の天災等により、調達先の操業が停止することで、調達ができない状況が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、主要サプライヤーの操業停止リスクについて、ハザードマップを基に調査を実施して各社の災害復旧体制を把握するとともに、災害発生・感染症の拡大に伴うサプライヤーの操業停止に備えた代替先確保に取り組んでいます。

 当社が金型の製作を委託する金型メーカーの中には、代替先の確保が困難な企業もありますが、金型製作のリードタイム短縮、工程分散をはかり、万一の際の物流確保などによるサプライチェーンの途絶リスクの低減・早期復旧を図っております。

為替

 当社グループは、国際的な事業展開の結果、本邦通貨に対する外貨の価値変動が当社グループの業績に影響します。当社グループの連結売上高の8割は海外子会社による現地生産であり、為替変動は本邦通貨への換算差額として、財政状態及び業績に影響があります。

 また、海外の販売先に対し金型・治工具等の生産設備を販売するなど、一部の製品及び部品等を輸出しております。急激又は大幅な為替変動により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、製品及び部品の輸出に関して、為替予約等の手段で為替変動による影響の軽減を図っており、為替リスクに対する対策を行っております。

事業運営

コンプライアンス

 当社グループは国内外の広範な法令に従って事業活動を展開しており、万が一、役職員による法令等の違反があった場合には、各種の訴訟や規制当局の訴追により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、コンプライアンスオフィサーを委員長とするコンプライアンス小委員会が主導して、自己検証、コンプライアンスに関する研修、社内啓発、企業倫理改善提案内容のレビューなどを行っており、例えば不正競争防止や腐敗防止などに関するグループ共通の基本方針を策定し、従業員への周知展開を行うなど、法令及び社内規程を遵守する体制を構築しております。

サイバーセキュリティ

 サイバー攻撃は日々巧妙化しており、エンドポイントの増加・多様化により防御範囲が拡大するとともに、攻撃者も変化していることから、侵入されることを前提とした新たな対策が必要となっております。万が一、当社が標的となった場合に、重要な業務の中断や機密データ等の流出等、当社の業績あるいは社会的イメージに影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、情報セキュリティ部門を中心として、サイバーセキュリティに関するルールの見直しや現場設備の棚卸を行っております。

 さらには、日本本社を核として当社海外子会社に不正操作監視システム(EDR)を導入し、同システムによる監視を通じて、侵入されたとしても、不正操作・動作を即座に検知・遮断する体制を構築し、運用しています。

感染症・自然災害、地政学リスク等

感染症の発生

 感染症の発生・世界的な拡大への対応として、各国政府等の行動制限要請がなされること等により、世界経済や当社あるいは得意先・取引先の事業活動が停滞することで、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、感染症の拡大に伴う操業停止中も支出が継続する労務費等の固定費に対して、日本本社等がグループ全体の手元流動性を確保する体制を整えております。

 生産領域の自動化、工場・事務所のレイアウト見直しやリモートワーク、関係先とのオンライン活用を推進し、感染リスクの低減を図っています。

自然災害

 当社グループは、国内外において工場を設け、プレス、溶接加工等の生産設備を活用し、現地で従業員を採用し、自動車部品の生産、販売を行っております。これらの生産、販売活動は大地震、洪水、津波、竜巻などの自然災害に影響される可能性があります。これらが発生した場合には、原材料や部品の調達、生産、販売に遅延や停止を生じる可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、リスクマネジメントオフィサーを委員長とするリスクマネジメント小委員会が主導して、従業員の安全確保を最優先として、リスクの把握・対策の実施・被害の最小化に向けた取り組みを継続的に行っています。具体的には、拠点ごとの自然災害の被害想定と、想定に基づく初動対応体制の整備、復旧計画の検討を通じ有事への備えをしております。

地政学リスク

 当社グループが進出する国、地域あるいはその周辺において、政情不安、国家間の政治的な緊張、戦争、紛争あるいはテロなどの地政学リスクが発生した場合、事業活動が制限、阻害され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、各地域の調達等の面での自律化を進め、また、収益面でのバランスを図ってまいります。

 また、情報システム体系を見直し、サイバーセキュリティ対策強化により、地政学リスクに起因するリスク低減を図っています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、コロナ後の経済再開とウクライナ情勢等を背景とした物価上昇が進みましたが、各国中央銀行による金融引締めにより、インフレ鈍化の兆しが見られ、金利のピーク感からドル高是正が進展しました。一方で、ウクライナ情勢長期化に伴うエネルギー確保や地政学的要因による中国での経済活動抑制等が依然リスク要因としてあり、欧米を中心に景気減速が懸念され、先行き不透明な状況です。

 自動車産業においては、期初は半導体供給制約やロックダウン等の影響により、自動車生産台数の変動がありましたが、完成車メーカーによる差はありながらも緩やかな回復基調にあります。

 このような環境の中、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末より6,158百万円増加し、288,698百万円となりました。負債合計は、前連結会計年度末より6,612百万円減少し、112,003百万円となりました。純資産合計は、前連結会計年度末より12,771百万円増加し、176,695百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の業績につきましては、売上高は314,312百万円(前期比32.9%増)、営業利益は12,836百万円(前期比17.4%増)、経常利益は14,284百万円(前期比14.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10,270百万円(前期比15.7%増)となりました。

 

 セグメントの業績は次のとおりであります。なお、増減理由については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 b. 経営成績の分析」のセグメントの業績をご参照ください。

1)日本

 売上高は、58,662百万円(前期比27.9%増)となり、営業利益は、1,974百万円(前期は936百万円の損失)となりました。

2)北米

 売上高は、109,031百万円(前期比66.5%増)となり、営業損益は、9百万円の営業損失(前期は2,250百万円の損失)となりました。

3)欧州

 売上高は、26,944百万円(前期比23.7%増)となり、営業利益は、2,901百万円(前期比32.2%減)となりました。

4)アジア

 売上高は、41,341百万円(前期比29.9%増)となり、営業利益は、1,884百万円(前期比13.4%減)となりました。

5)中国

 売上高は、76,553百万円(前期比8.7%増)となり、営業利益は、3,765百万円(前期比36.5%減)となりました。

6)南米

 売上高は、17,055百万円(前期比56.6%増)となり、営業利益は、2,404百万円(前期比16.8%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、40,248百万円となり、前連結会計年度に比べ4,279百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは37,270百万円の資金増加、投資活動によるキャッシュ・フローは16,022百万円の資金減少、財務活動によるキャッシュ・フローは、17,582百万円の資金減少となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

46,566

5.7

北米

103,931

61.7

欧州

14,795

26.9

アジア

37,543

34.7

中国

70,166

10.1

南米

14,087

66.1

合計

287,090

30.4

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

40,343

△1.9%

10,003

△29.9

北米

112,185

64.8%

26,632

15.1

欧州

28,492

28.5%

6,889

34.8

アジア

41,035

19.0%

8,499

△3.2

中国

78,773

14.3%

17,462

19.5

南米

17,862

48.6%

3,741

27.5

合計

318,693

29.1%

73,229

6.4

(注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

44,608

14.8

北米

108,691

67.1

欧州

26,713

23.8

アジア

41,313

29.9

中国

75,929

11.1

南米

17,055

56.6

合計

314,312

32.9

(注)最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Honda Development & Manufacturing

of America, LLC

31,700

13.4

63,170

20.1

本田技研工業㈱

21,375

9.0

25,771

8.2

(注)前連結会計年度及び当連結会計年度双方について、当該割合が100分の10未満の相手先は記載を省略しておりま

す。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

 

a.繰延税金資産

 繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。マネジメントは、将来の利益計画に基づく課税所得の見積りは合理的に行われたものと考えておりますが、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

b.固定資産の減損

 固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しております。将来キャッシュ・フローは、計画策定時における合理的な情報等を基礎として策定された事業計画に基づいております。この事業計画は、各種経済予測、顧客の生産計画などに関する経営者の判断に基づく過程により影響を受け、半導体不足の影響によるサプライチェーンリスクが潜在する市場環境等、事業計画の前提とした条件や仮定には不確実性が含まれています。

 マネジメントは、前提や検討は妥当なものと考えておりますが、市場環境等の変化により、事業計画の変更が生じた場合、将来キャッシュ・フローが減少することによって、減損処理が必要となる可能性があります。

c.退職給付に係る負債及び退職給付費用

 退職給付に係る負債及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付に係る負債の割引率、年金資産の期待運用収益率等の仮定に基づいて算出しております。割引率は、確定給付制度債務と概ね同じ支払期日を有する優良社債の報告期間の期末日時点における市場利回りに基づいて決定し、年金資産の期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等に基づいて決定しております。マネジメントは割引率、年金資産の期待運用収益率に使用した仮定は妥当なものと考えておりますが、割引率及び期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

(資産合計)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ6,158百万円増加し、288,698百万円となりました。流動資産は、生産販売活動の持ち直しにより、主に現金及び預金、受取手形及び売掛金が増加した一方、仕掛品が減少し、前連結会計年度と比べて124百万円減少の136,326百万円となりました。固定資産は、主に設備投資により、建物及び構築物、機械装置及び運搬具、工具、器具及び備品が増加し、前連結会計年度と比べて6,282百万円増加の152,372百万円となりました。

(負債合計)

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末より6,612百万円減少し、112,003百万円となりました。流動負債は、買掛金が増加した一方、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金が減少し、前連結会計年度末と比べて6,925百万円減少の74,239百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少した一方、繰延税金負債、その他が増加し、前連結会計年度末と比べて312百万円増加の37,763百万円となりました。

(純資産合計)

 主に、為替換算調整勘定、利益剰余金の増加により、前連結会計年度末と比べて12,771百万円増加し、176,695百万円となりました。

 

b.経営成績の分析

 当連結会計年度の業績は、本田技研工業株式会社グループの受注生産台数は減少した一方、他社販売の新規受注が寄与したことに加え、材料単価の変更及び為替影響等により、売上高は314,312百万円(前期比32.9%増)となりました。利益につきましては、生産変動への対応力を強化しつつ、原価低減に努めるとともに、経費抑制を継続し、営業利益は12,836百万円(前期比17.4%増)となりました。経常利益は、持分法利益等により、14,284百万円(前期比14.0%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、10,270百万円(前期比15.7%増)となりました。

 

受注生産台数(千台)

 当連結会計年度の本田技研工業株式会社グループから受注した生産台数をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率(%)

合計

3,810

3,545

△265

△7.0

日本

632

645

13

2.1

北米

1,120

1,128

8

0.7

欧州

30

0

△30

△100.0

アジア

323

400

76

23.7

中国

1,622

1,307

△315

△19.4

南米

83

66

△17

△20.9

(注)上記数値は千台未満を四捨五入して表示しています。増減率は一台単位まで計算しています。

 

 セグメントの業績は次のとおりであります。

1)日本

 売上高は、半導体影響の緩和により得意先の生産台数が回復し、量産売上の増加に加え、非量産売上が増加し、58,662百万円(前期比27.9%増)となりました。営業利益は、増収効果に加え、経費削減効果等により、1,974百万円(前期は936百万円の損失)となりました。

2)北米

 売上高は、半導体影響の緩和により得意先の生産台数が回復し、量産売上の増加に加え、非量産売上の増加及び為替影響等により、109,031百万円(前期比66.5%増)となりました。営業損益は、増収効果に加え、生産ラインの合理化による体質改善の効果等により、損失幅が大幅に縮小し、9百万円の営業損失(前期は2,250百万円の損失)となりました。

3)欧州

 売上高は、欧州系メーカーが増産となり、量産売上が増加したことに加え、為替影響等により、26,944百万円(前期比23.7%増)となりました。営業利益は、前期には一時的な補償等の要因があったため、2,901百万円(前期比32.2%減)となりました。

4)アジア

 売上高は、期初は上海ロックダウンの影響がありましたが、下期にかけて得意先の生産台数が回復し、量産売上が増加したことに加え、為替影響等により、41,341百万円(前期比29.9%増)となりました。営業利益は、型設備売上の減少により、1,884百万円(前期比13.4%減)となりました。

5)中国

 売上高は、コロナ感染再拡大の影響による得意先の減産により、生産台数が減少しましたが、他社販売の増加、為替影響及び材料単価の改定等により、76,553百万円(前期比8.7%増)となりました。営業利益は、主要得意先の減産影響に加え、型設備売上の減少により、3,765百万円(前期比36.5%減)となりました。

6)南米

 売上高は、トヨタ自動車株式会社グループ向けの生産が好調で量産売上が増加し、17,055百万円(前期比56.6%増)となりました。営業利益は、量産売上の増加による増収効果及び為替影響により、2,404百万円(前期比16.8%増)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ、4,279百万円増加し、40,248百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動のキャッシュ・フローは、37,270百万円の収入となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益14,211百万円、減価償却費17,414百万円、棚卸資産の減少9,014百万円です。

 前連結会計年度に対して、23,205百万円の収入となりました。主な要因は、棚卸資産の減少、売上債権の減少です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動のキャッシュ・フローは、16,022百万円の支出となりました。主な支出は、有形固定資産の取得による17,168百万円です。

 前連結会計年度に対して、2,837百万円の支出減少となりました。主な要因は、定期預金の払戻による収入増加です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動のキャッシュ・フローは、17,582百万円の支出となりました。主な支出は、短期借入金の返済9,721百万円、長期借入金の返済13,838百万円です。

 前連結会計年度に対して、30,129百万円の減少となりました。主な支出増加は、借入金の返済です。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性

a.資本政策

 当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的として、安定的・継続的な株主還元を実施し、目標値として2031年3月期にDOE(株主資本配当率)3.0%を目指すことを基本方針としております。

 事業活動によって得られた資金は、まず、成長投資及び研究開発費に向けられます。敏速な投資実行と危機対応を可能にする自己資本の水準を維持するため、内部留保に充てられます。

 

b.資金調達の状況

 当社グループは、運転資金及び設備投資資金を、内部資金又は借入により資金調達することとしています。

運転資金需要は、新規車種開発に伴い得意先に売却予定の金型・専用設備等の制作費用、量産部品製造のための原材料、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用などによるものです。

 また、設備投資需要は、量産部品生産用汎用設備の取得や生産能力増強、あるいは新規生産拠点設立にかかる出資及び設備投資などによるものです。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。また、設備投資に関しては、将来の資金創出能力を見積もり、当該能力の範囲内で設備投資を行うことを基本としております。

 短期運転資金は、自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本としております。長期運転資金や設備投資資金は、金融機関からの長期借入を基本としています。2020年4月に株式会社格付投資情報センター(R&I)から信用格付「A-」を取得し、維持しております。今後、長短期の資金調達の多様化を図ってまいります。

 海外子会社については、自己資金及び子会社が取引通貨、通貨の安定性等を勘案して最も適切な通貨で金融機関からの資金調達を基本としております。調達通貨の金利・為替の状況、子会社の財務状態等を勘案して、当社からの資金貸出を行うこともあります。

 

主要な借入先の状況(百万円)

借入先

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

㈱三菱UFJ銀行

26,493

22,852

△3,641

㈱三井住友銀行

12,673

11,106

△1,567

㈱みずほ銀行

9,518

7,896

△1,622

三井住友信託銀行㈱

4,260

3,024

△1,236

日本生命保険相互会社

3,335

2,195

△1,140

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)当社が技術援助等を与えている契約

相手先

国名

契約品目

契約内容

契約期間

Jefferson Industries Corporation

米国

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2013年2月1日

至2016年1月31日

以降1年毎に自動延長

Jefferson Elora

Corporation

カナダ

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自1997年3月31日

至2002年3月30日

以降5年毎に自動延長

Jefferson Southern Corporation

米国

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2013年3月31日

至2016年3月30日

以降1年毎に自動延長

G-TEKT MEXICO CORP. S.A. DE C.V.

メキシコ

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2017年1月1日

至2019年12月31日

以後1年毎に自動延長

G-ONE AUTO PARTS DE MEXICO S.A. DE C.V.

メキシコ

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2013年4月1日

至2015年3月31日

以後1年毎に自動延長

Austin Tri-Hawk Automotive, Inc.

米国

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2015年1月1日

至2017年12月31日

以降1年毎に自動延長

G-KT do Brasil Ltda.

ブラジル

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2020年1月13日

至2025年1月12日

Auto Parts Alliance (China) Ltd.

中国

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2016年6月30日

至2021年6月29日

以降1年毎に自動延長

Wuhan Auto Parts Alliance Co., Ltd.

中国

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2017年4月1日

至2022年3月31日

以降1年毎に自動延長

 

 

相手先

国名

契約品目

契約内容

契約期間

G-TEKT Europe Manufacturing Ltd.

イギリス

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2000年2月1日

至2004年1月31日

以降4年毎に自動延長

G-TEKT (Thailand) Co., Ltd.

タイ

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自1997年4月1日

至2002年3月31日

以降1年毎に自動延長

G-TEKT Eastern Co., Ltd.

タイ

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自1996年5月1日

至2001年4月30日

以降1年毎に自動延長

G-TEKT India Private Ltd.

インド

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2014年6月1日

至2017年5月31日

以降1年毎に自動延長

PT.G-TEKT Indonesia Manufacturing

インド

ネシア

自動車用部品、プレス金型及び治工具

自動車用部品、プレス金型及び治工具に関する技術及び製造ノウハウ供与につき、その製造権、使用権、販売権を非独占的に付与する契約

自2013年9月1日

至2016年8月31日

以降1年毎に自動延長

(注) 上記については、ロイヤリティとして売上高の一定率を受け取っております。

 

(2)研究開発基本契約

相手先

契約内容

契約期間

Jefferson Industries Corporation

Jefferson Industries Corporationが当社に対して当社が北米で製造・販売する製品についての研究開発支援を行う旨の契約

自2022年4月1日

至2027年3月31日

以降5年毎に自動延長

 

(3)業務委託契約

相手先

契約内容

契約期間

G-TEKT (Deutschland) GmbH.

自動車開発・生産における最新技術の情報、

テーマ、及びニーズの調査を委託する契約

2015年6月29日から無期限

ただし、3ヶ月間の事前通知に解除可

G-TEKT (Shanghai) Technical & Trading Co., Ltd.

自動車開発・生産における最新技術の情報、

テーマ、及びニーズの調査を委託する契約

2022年4月1日から無期限

ただし、3ヶ月間の事前通知にて解除可

G-TEKT North America Corporation

自動車開発・生産における最新技術の情報、

テーマ、及びニーズの調査を委託する契約

2022年4月1日から無期限

ただし、3ヶ月間の事前通知にて解除可

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、環境負荷低減と脱炭素社会の実現、安全性の高い自動車づくりを実現するため、軽量・高強度な車体部品の開発・製造に関わる研究開発活動を推進しております。この中で、環境規制、安全、EV化に関する先行技術や新製品の研究開発は、ジーテクト東京ラボにおいて当社の開発本部がその役割を担っています。当連結会計年度の開発本部の研究開発費の総額は1,531百万円であり、主な研究開発のテーマは、次のとおりであります。

 

<EV向け車体の研究開発>

 EV化は、脱炭素社会の実現に向けて自動車業界全体が推し進めている重要な施策の一つであります。当社は、自動車OEMとの車体の開発共創の中で進化させてきた車体一台解析技術を活用し、EV向け車体の研究開発を推進しております。

 EVの車体は、電池を収めるバッテリーハウジングや車体構造が複合的な機能をもつ非常に重要な部品群となっていくことが求められるため、仕様構築には高度な設計検討能力が必要となります。この課題に対し、当社が今まで培ってきた車体一台解析技術をさらに進化させ、それを活用することで、車体、バッテリーハウジング、シャーシ等を統合的に解析し、各コンポーネントに機能を最適に振り分けた仕様を構築してまいります。主な開発内容は以下のとおりです。

 

・各OEMのニーズに合わせて容易に構成できるフレキシブルな構造の構築

・高い生産性をもった環境負荷の低い工法の選択と仕様構築

・生産数増が見込まれるバッテリーハウジングの提案

・ボディとパワートレインを繋ぐシャーシ部品領域の性能評価能力の獲得

・EV車両としての衝突安全性と環境負荷低減に配慮した車一台分の最適仕様の構築

・大型一体化による部品製造技術の適用検討

・閉断面構造部材の車体への適用検討

 

 電動パワートレイン関連部品は世界的なEV化の加速に伴いニーズが急拡大すると想定しており、当社グループでは新たな事業領域となる、駆動用モーターや駆動系減速装置関連部品等、当社グループの基盤技術を活かして貢献することができる領域についての量産技術の開発を推進しております。当期においては量産技術の実証ライン設置が完了しており、引き続き独自技術の確立を推進してまいります。

 

<先進技術開発>

 環境対応要求とEV化の加速を受けて、従来の車体骨格部品向けの新素材の加工、接合技術の早期量産化に取り組んでおります。また、EV化によりさらに厳しくなる強度要件、軽量化要求に対応していくための要素技術開発にも、他企業や大学とのアライアンス等を活用して取り組んでおります。具体的には、以下のテーマを推進しております。

 

・低歪の高速連続接合

・異種材料接合技術

・接着接合

・テーラードプロパティ

・重量増となるEVに対応する高強度軽量素材の成形技術開発(鉄/アルミ/複合材)

・アルミ押出材採用部品に変わる軽量廉価な構造部材開発

・EV化対応に必要となる工法の選定と実証ライン構築等

・LCA観点による将来技術の調査とCO₂排出量評価基準の策定

 

<生産技術開発>

 生産技術開発の領域では、技術・営業領域で蓄積した技術基盤や専門の知見をもって、お客様と連携しながら、新規車種の生産準備である機種開発に従事するとともに、既存技術の進化に取り組み、コスト低減・開発期間の短縮・品質の信頼性向上を図り、企業競争力の強化に努めております。

 

(1)冷間ウルトラハイテンの加工技術開発

 車体軽量化に伴う高強度部材の適用拡大が進む中、金型構造・型材・表面処理進化による耐荷重・摩耗性の向上、成型ひずみ予測技術進化による精度熟成工数の削減、新工法による成型課題の克服に取り組んでおります。

 

(2)ホットスタンプの加工技術開発

 新冷却構造の開発、レーザーレスの実現に向けた取組みを進め、部品1個当たりの電力使用量削減を目指しております。

(3)溶接ラインにおける生産性・品質の信頼性向上の取組み

 ビジョンシステムを活用した部品投入・払い出しの要員の負担軽減、レーザースキャン・非破壊検査機器を組み合わせた部品精度・溶着強度保証のインライン化に取り組んでおり、生産性・品質の信頼性向上に努めております。

(4)トランスミッション部品の開発

 トランスミッションメーカーのHEV・EVモーター一体型変速システム開発に追従した新規部品開発に取り組んでおります。

 

<知的財産権戦略>

(1)基本方針

 技術開発や生産活動の過程で生み出される知的財産権を積極的に保護管理・運用を行い、経営計画に基づく知財戦略を進めることにより、当社の企業価値向上に注力しております。また、将来の社会・顧客ニーズに応えるイノベーションの創出に向け、目指すべき開発の方向性を示すとともに、開発の推進に資する知財情報を提供できるよう、体制の強化を進めております。

 

(2)管理体制

 当社グループでは、グループ全体を取りまとめる知財管理体制を構築し、技術・開発部門及び各生産拠点、グローバル拠点(S&E)に、知財部門との円滑な連携のため、知財推進担当を置き、事業を安全に推進できるよう、開発・事業に対する障害特許をタイムリーに対策するとともに、隠れた技術やアイデアを抽出し特許取得につなげております。

 また、新事業領域における優位性の確保やコア技術の進化・獲得に向けて各本部と事業部ごとに議論する機会を設け、知的財産権の活用シナリオを明確にしたバックキャストでの推進を行うとともに、毎期の目標と実績を経営陣に報告し、取締役会による監督を行える仕組みを構築しています。

 

(3)全社の知的財産戦略

 自動車業界のCASE、MaaSなどの大変革、さらには気候変動問題等、環境の変化にも俊敏かつ柔軟な対応が求められています。このように世界で激しい変化が起きる状況において、これからのビジネスの流れを先取りした知的財産権の取得に力を入れて取り組んでいます。特にBattery EV(BEV)へのシフトが世界的に加速している事で、BEV固有部品であるバッテリーハウジングのニーズに加え、主力製品であるホワイトボディにも更なる軽量化と高強度化が求められていますが、製品の開発においては客先ニーズの把握が必要不可欠であり、また、価値あるモノを社会・お客様へ送り出すためには、ニーズの把握から描いた製品を具現化するための技術も欠かせません。

 そこで、知的財産の創出にあたっては、客先ニーズを営業本部が汲み取り、開発本部が製品の構造を検討提案し、技術・生産本部がそれらを品質よく製造する技術を手の内にできるよう、全社横断的な取り組みを実施しています。各々の検討段階において、知財推進担当も開発に入り込む事で、海外地域拠点で必要となる技術の見極めを行った出願国の決定、IPランドスケープを活用した開発テーマの妥当性の検証や、ベンチマーク調査による競争優位検討を実施し、事業力強化を目指しています。加えて、知財力向上が事業成長につながるという考えのもと、発明者研修等をはじめとした人財育成を継続的に実施し、発明者と知財部門が一丸となり知財戦略推進ができるよう取り組んでおります。