第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1) 会社の経営方針

当社は、自立した個人を重んじ、和を尊び、協力を旨とする“人間尊重”、失敗を恐れず困難な道を選択する “チャレンジ精神”、“環境・地域社会、株主・従業員との共生”を基本理念としており、優れた技術力に基づく 優良な品質の製品を適正な価格で提供することに努めております。

こうした企業活動を推進することで、「わたしたちは世界的視野に立ち、高い志と誠をもって価値を創造し、国家社会に貢献すると共に豊かな未来を築く事に全力を尽くす。」との社是を実践し、世界中の得意先からの顧客満足度No.1の評価を得るとともに、一般社会からその存在を期待される企業となるよう努めております。

 

 (2) 中長期的な会社の経営戦略

第15次中期経営計画では全社方針を「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」と定めました。エフテックファミリー全体で「Back to Basics」「Challenge for New」を土台に事業基盤をしっかり固め、将来の持続的成長に向けた活動に取り組んでいきます。具体的な取り組みは以下のとおりです。

 

<Back to Basics> 

① 稼ぐ力の強化

モノづくりの本質追求から稼ぐ力を強化し、収益の向上へと繋げていきます。

② 財務体質の健全化

第14次中期経営計画投資による成果の創出やモニタリング機能、分析力の強化により財務体質を健全化していきます。

 

<Challenge for New> 

① 戦略的な成長ビジネス機会の追求

北米新子会社設立により、北米地域におけるEV自動車メーカーに対する営業活動及びこれらに関連する業務を強化していきます。

② サステナビリティ経営の構築

ESG経営の取り組みを通じて企業価値を向上させていきます。方針を策定し、サステナビリティの具現化に向けて組織的に推進していきます。

 (3) 事業の経過及び成果

当連結会計年度における世界経済は、米国新政権の政策動向による影響など、先行きは極めて不透明な状況が続きました。自動車業界においては、米国新政権が保護主義的な関税政策やEV普及策の撤回を進めており、完成車メーカーが戦略を軌道修正する動きがみられました。中国や東南アジアでは、中国系EVメーカーの勢いが継続しており、日・欧米系メーカーの販売不振が続きました。業界情勢の今後の動きは不透明であり、先行きの予測は極めて難しくなっております。 こうした事業環境下、当社グループは、第15次中期経営計画の全社方針に沿い、「原価低減活動の徹底」と「売価改定交渉」の2つのアプローチを攻めの姿勢で取り組みました。米国などの課題拠点は生産効率等の改善を継続するとともに、各種コストの負担増について価格転嫁を進めました。中国では得意先の生産減へ適切に対応するため要員数の適正化や固定資産の減損により事業の構造改革を完了させました。

 

 

 

 

 


 

 (4) 対処すべき課題

① 短期的な課題

翌2025年度における世界経済は、米国新政権の関税政策や、移民政策、更にはEV推進政策の撤廃により当社が事業を営む自動車業界においては、米国をはじめ関連諸国の生産台数減等の経済的な影響が激化すると想定しています。このような自動車部品業界の情勢悪化の中、「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」との全社方針の下、「モノづくりの本質追求」から稼ぐ力の強化と財務体質の健全化に繋げ、「得意先に対する新たな価値の提供」を通し、成長機会を深く追求することを全社一丸で取り組んでいます。

特に、

・海外課題拠点の課題解決と再建計画の遂行

・原価低減と併せ、労務費や物価上昇、追加関税影響に合わせた適正な価格転嫁

・EV化ニーズへの柔軟且つ的確な開発と生産対応

・前中期経営計画で大規模投資を行ったメキシコ拠点での効果創出

・財務状況モニタリング体制の強化による収支、投資の一元管理

・従業員エンゲージメントの向上施策実行による企業体質強化

・サステナビリティ経営に向けた基盤構築

以上について、当社の企業価値向上に直結する重要な短期的な課題と位置付けています。

 

② 中長期的な課題

[自動車産業の変化と課題]

日本においては少子高齢化、人口減少に伴い国内市場が縮小し、新車販売台数の減少が続いています。一方、海外では、中国市場は独自の進化を続けており、得意先の多様化が課題になります。安定的に高い需要が見込まれる北米と今後更なる市場の成長が期待されるインドでは、それぞれの市場ニーズを的確に把握し、新たな成長戦略の立案と事業展開を適切に行うことが求められます。

 

(サステナビリティ)

カーボンフリーなサステナブル社会の実現という世界的な潮流の中、米国では新政権誕生により、世界的にカーボンニュートラルへの取り組みが停滞する可能性もありますが、当社の社会的な責任と捉え、地球環境を重視した取り組みを今後もしっかり継続していかなければなりません。サステナビリティ経営として、当社と社会の持続的成長の実現に向け、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の領域での重要課題(マテリアリティ)を特定し、それぞれの重要評価指標(KPI) を設定し、その実現に向けた取り組みを今後も進めていかなければなりません。

 (人的資本)

 企業がサステナビリティ経営を目指すうえで、従業員のモチベーションを向上させ、エンゲージメントを引き上げることが不可欠です。全従業員の個性を尊重し、個々の成長段階やキャリアに応じて能力を最大限に引き出すための人的資本戦略と人材育成の具体的取り組みが重要になります。

 

[当社グループの取り組み]

こうした環境下、当社グループとしては、以下の事項に積極的に取り組んでまいります。

・各極の市場動向変化に対応した新規開発受注活動の積極展開

・日本の生産技術力と現場管理力の更なる進化と海外拠点への伝承

・海外拠点のモノづくり力(安全・品質・コスト・納期)の強化と稼ぐ力の向上

・インド事業への経営リソースの投入強化

・カーボンニュートラルへの具体的取り組みの推進

・ESG重要課題への継続的取り組み

 

 

[当社の長期ビジョン]

当社グループは、世界中のお客様が求める価値を提供し、「足廻り機能領域の専門メーカーとして世界No.1を目指す」ために進化を続けてまいります。

「足廻り機能領域」とは、当社グループが得意とする「サブフレーム」、「サスペンション」、「ペダル」の3つのコア領域のことを指し、まさに当社グループのアイデンティティを表しています。また、当社グループが目指す「世界No.1」とは、売り上げ規模ではなく、社員全員が「モノづくりの本質」を誰にも負けないと自信を持って言えるまで追求することであり、最終的にはお客様の評価によって決まるものと考えています。

当社グループは、「高品質な製品を安全に、高効率、最少エネルギーで生産し、企業努力をしっかり反映させたコストレベルで、お客様にオンタイムで供給する。」との「モノづくりの本質」を追求することで、お客様の評価「世界No.1」を目指すべく、以下の5項目を徹底的に追求してまいります。

 

1. お客様から最高評価獲得

:品質、コスト、納期、マネージメントのすべての領域においてお客様から最高の評価を獲得します。

2. 新価値提供

:お客様が求める以上の価値を他社にはない形で提供します。

3. 新技術開発

:新たな発想、新たなアプローチから生まれるアイデアを駆使し、独自の技術を世界に展開します。

4. ネットワーク構築

:他専門メーカー様と知見を共有する協業ネットワークを拡充し、互いの専門性を融合させることで、新たな価値提案を行います。

5. 収益力強化

:「モノづくりの本質追求」で既存事業の盤石化を図るとともに、新たな成長機会への投資を的確に実行できるよう収益力を高めてまいります。

 

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループの「サステナビリティに関する考え方及び取組」は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループでは、「サステナビリティ基本方針」を制定し、当社グループ全体のサステナビリティの取組を経営レベルで推進していくために、代表取締役社長が委員長を務め、各本部長、各室長、執行役員で構成する「サステナビリティ委員会」を設置しています。同委員会では、サステナビリティに関連する重要な課題についての討議を行っています。ここで報告、協議された内容は、経営会議での詳細な審議を経て、取締役会へ上程されます。取締役会では、上程されたこれらの重要な課題に対して適切なガバナンスを実施し、持続可能な未来の実現に向けた当社戦略へと反映します。また、これら全ての経営活動は、全社のコーポレート・ガバナンス体制下で、取締役会及び監査役会の厳密な監督・監査のもと運営されています。

 

[サステナビリティ体系図]

 


 

 スキルマトリックス

 当社取締役会は、専門知識や経験等のスキルが異なる多様な取締役により構成されております。取締役5名につい

 ての専門知識や経験等のスキルは、次のとおりです。


また、当社は、第15次中期経営計画の実現に向けて、取締役会が経営上の重要事項の決定及び取締役並びに職務執行の監督の役割を適切に果たすために必要とするスキルを以下のように特定しております。


 

2024年度におけるサステナビリティ関連の取締役会等での議題

時期

会議体名

議題

4月

経営会議

報告:2023年度EcoVadis第三者評価結果

協議:当社グループの「価値創造プロセス」について

取締役会

決議:当社グループの「価値創造プロセス」の制定

5月

サステナビリティ委員会

報告:サステナビリティに関する開示基準の整理

協議:グローバルの取り組みについて

6月

取締役会

決議:サステナ経営基盤整備に向けたグローバル取り組み

   のKPI設定について

報告:サステナビリティ推進報告

サステナビリティ委員会

協議:第三者評価の必要性とサステナビリティ開示基準統

   一の最新動向

9月

経営会議

報告:サステナビリティ推進報告

10月

経営会議

報告:サステナビリティ推進報告

12月

経営会議

報告:サステナビリティ推進報告

2月

経営会議

報告:サステナビリティ推進報告

3月

経営会議

報告:持続可能なサプライチェーンマネジメント体制

   構築について

 

 

(2) 戦略

当社グループは、サステナビリティを巡る課題を重要な経営課題であると認識し、以下に掲げた第15次中期経営計画戦略マップ(2023年度~2025年度)の重点テーマの一つとして、「サステナビリティ経営の構築」を掲げています。全社方針である「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を実現するために、以下のとおり、各領域で具体的な取り組みを行っています。

(ⅰ)ESG経営への取り組み強化

(ⅱ)ステークホルダーからの評価向上

(ⅲ)カーボンニュートラルの実現へ向けた推進

 

[第15次中期経営計画戦略マップ]

 


 

 

(3) リスク管理

サステナビリティに関するリスク管理として、GRIスタンダードなどの国際規格や外部評価の結果を踏まえ、収益機会とリスクの両面から、「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーの関心事」の二軸で総合的に分析・検証し、サステナビリティ委員会の協議、機関決定を経て特定しています。特定された重要課題(マテリアリティ)7つに対し、改善取り組みを行っています。


 

(4) 指標及び目標

当社グループが特定した重要課題(マテリアリティ)について、ESG各領域における2030年の目指したい姿及びKPIを重要項目ごとに定め、サステナビリティ推進部が各関連部門と連携をとりつつ目標達成に向けて進めております。


 

(5) 人的資本多様性にかかる戦略

① 人材の多様性の確保を含む育成方針

当社は、企業理念の一つに「人間尊重」を掲げており、性別、国籍、人種等の垣根を越えて従業員同士が互い の価値観を認め、多様な視点で新たな価値を創造することが企業の成長に不可欠であると考え、積極的に多様性 の確保に努めてまいります。そのうえで、「チャレンジ精神」、「利益確保」を合わせた三つの企業理念を具現化 できるような人材を育成するために、社員個々のやる気と個性を最大限に伸ばすように取り組んでまいります。

 

・公募制度による駐在員選定

当社は、人材育成を目的として、社員が自らキャリアを希望することができるように、特定の職務に対して 社内で公募する制度を2021年度に導入しました。これまでに海外駐在員や国内技術職等を募集し、累計で12名合格しました。今後は、海外駐在員以外の職務についても公募を実施していく予定です。

 

・Women’s Working Team の設置

2024年4月に女性社員のみで構成したワーキングチームを社長直轄の組織として設置しました。多様な人材が活躍できるような機会創出や環境整備を図るために、先ずは女性社員の視点で改善に向けた検討を行い、取りまとめた結果を経営陣へ報告しました。小学生の子を持つ社員の要望に基づいて育児短時間勤務の対象を小学校3学年修了までから同6学年修了までに拡大し、法定を上回って育児勤務者の支援を図るなど、提言による制度見直しが進んでいます。これからもワーキングチームの提言を踏まえて働きやすい環境となるように改善に取り組んでまいります。

 

・人財育成課の設置

2025年4月に、教育体制の整備・強化や教育内容の充実など、人的資本の価値向上を更に推進することを目的に、人事部内に人財育成課を設置しました。今後は、社員に対する教育機会の増強や教育内容の改善に従来以上に取り組み、社員の能力やエンゲージメントの向上を通じて生産性の更なる改善を図ってまいります。

 

② 社内環境整備の方針

当社は、各社員が持つ多様な視点や経験を企業の成長に活かすために働き方改革を推進し、安全・安心かつ生活との調和をとることができる職場となるよう常に改善に取り組んでいます。

 

・高年齢層(シニア世代)の活躍推進

60歳の定年を迎える従業員を対象に、定年後も満65歳まで継続して働くことができる環境を提供するととも に、定年後の働き方を考えるためのライフプランセミナー等の情報提供も行っています。また、2019年7月からは、定年再雇用者の新たな働き方として、モチベーション向上と技術継承を目的とした「匠制度」を始めました。これは、高度な技術を持つ熟練者を「匠」(たくみ)として認定し、後継者へ技術を伝承する指導者として重要な役割を担っていただく制度であり、役割・責任に応じた報酬制度としています。また、満65歳の継続雇用期間を満了した従業員についても、必要な労働力を維持する観点から、業務委託契約などにより弾力的な雇用の確保に努めてまいります。

 

・女性社員の活躍推進

当社では、男女を問わずすべての人が個性と能力を発揮できる職場を目指しています。作業の性格上、男性 が中心だった製造・エンジニアリング・開発・購買部門では、作業環境が大きく改善され、女性の配置が積極的に進められる等、全社的に様々な分野で女性が働くことができるように取り組んでいます。今後は女性活躍 推進法に基づき、更なる女性の進出拡大を目指し、採用・登用及び指導者の育成の取り組みを進めていきま す。仕事とプライベートのバランスが図られ、男女ともに充実した社会生活を送ることができるよう環境整備 に取り組んでまいります。

 

 

・年次有給休暇の取得促進

当社では、時効で消滅する年次有給休暇を全社員「0」とする目標を掲げており、一般従業員は目標を24年連続達成しています。また、取得促進を図るために半日有給休暇は制度の範囲内で年20回取得可能としており、育児・介護等個人の状況に合わせ柔軟に対応できるようにしています。

 

・育児・介護両立支援

育児や介護について、上司と部下が相互に理解し合える協力的な職場環境づくりを目指し、以下の取り組み を推進しています。

(ⅰ) 「仕事と育児・介護の両立支援ガイドブック」を社内ポータルサイトで発信

(ⅱ) 管理職を対象とした育児・介護休業法改正説明会の開催

(ⅲ) 男性向け育休取得促進のための周知文書の掲示

 

(6) 人的資本多様性にかかる指標及び目標

当社グループでは、上記「(5)人的資本多様性にかかる戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む育成方針及び社内環境整備の方針に係る指標については、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。なお、多様性の確保について連結ベースで推進することの重要性は認識しており、労働慣行などが異なる海外子会社として設定する指針や数値目標について、今後、検討してまいります。従いまして、次の指標に関する目標及び実績につきましては、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標・目標

・女性管理職

当社は、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する「くるみんマーク」を取得する等、女性社 員が活躍できる環境の整備に積極的に取り組んでいます。2019年4月に初めて女性が部長職に就き、2024年4 月には執行役員に女性が初めて就任しました。また、女性社員の意見を事業運営に活かすべく、社長による女 性社員とのタウンミーティングを実施しています。経営陣を支える管理職層における多様性を確保するために、女性管理職数を2025年度には2020年度比で2倍以上、2030年度には全管理職のうち女性管理職が占める割合を 10%以上とすることを目指しています(2025年3月末時点の女性管理職比率:1.1%)。

 

・外国人管理職

当社では、グループ売上高の約9割を海外売上高が占めており、事業におけるグローバル化の推進と合わせて人材のグローバル化にも積極的に取り組んでいます。外国人等のグローバル人材を採用するために、海外に おける採用活動に加えて、国内においては2023年度新卒採用活動より採用計画にグローバル人材の目標数を明 示しています。2025年3月末時点におけるグループ全体の外国人管理職は100名以上おりますが、当社における 外国人管理職は1名です。2025年度末には外国人管理職数及び外国人社員数を2021年度末より増加させる予定です(2021年度末時点の外国人管理職:1名、同一般職14名)。

 

・中途採用管理職

当社では即戦力となる人材を中途採用しており、管理職における中途採用社員の比率は2025年3月末時点で 29.7%となっており、2025年度においても現状を維持する予定です。

 

(7) 気候変動に係るリスク及び戦略

当社は、自動車の足廻り機能部品の製造会社として、設計・開発及び塑性加工、溶接、塗装、組立まで、安全性に配慮した一貫加工体制を構築し、技術を培ってきました。昨今、自動車産業では、ハイブリッド車や電気自動車等、バッテリーを搭載した自動車の生産・販売が主流になりつつあります。今後も自動車の足廻り機能部品のメーカーとして各自動車メーカーから選ばれ続けるために、当社は自動車の低燃費性能に貢献する軽量な製品を、安全に、かつ地球環境に配慮しながら量産していかなければなりません。一方で自動車は、多くの企業による多くの生産プロセスを経て製造され、一般消費者に販売されます。そして一定期間使用された後、廃棄されます。自動車のライフサイクルにおいては大量の環境資源が使用されています。当社は、当社の事業活動がこうしたライフサイクルの中で行われていることを自覚したうえで、環境負荷低減へ積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

当社グループでは、気候変動リスクへの対応を経営上の重要課題として位置付けており、2050年度までにScope3を含めたカーボンニュートラルの実現を目指しております。まずは2035年度までに自社領域(Scope1/2)においてカーボンニュートラルを実現するという野心的な中間目標を設定し、その達成に向けた取り組みを進めております。具体的には、省エネルギー活動の徹底、高効率生産設備への更新、生産ラインの再編及び再生可能エネルギーの導入や利用を加速させてまいります。

 

(8) 温室効果ガス(GHG)排出量

温室効果ガス(GHG)排出量に関する詳細な情報については、当社ウェブサイト(https://sustainability.ftech.co.jp/integrated-reports)に公表されている統合報告書(2024年10月発行)」をご参照ください。35ページからの「環境(Environment)」の章に、TCFD提言に基づきガバナンス体制や温室効果ガス(GHG)排出量の推移を含む当社グループの環境負荷低減、カーボンニュートラルに対する取り組みの詳細について記載しております。

なお、本事業年度(2024年度)の温室効果ガス(GHG)排出量の実績については、2025年9月末に発行予定の「統合報告書2025」にてお知らせする予定です。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループが連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

リスクの項目

リスクの説明

リスクの対策

市場環境

当社グループは、グローバルな規模で自動車部品の製造、販売事業を展開しております。当社グループが事業展開しているこれらの国々の市場において経済の低迷や物価等の動向により、消費者の自動車に対する購買意欲が低下し、主要得意先の生産が減少した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、事業展開をしている世界各国の市場の動向を注視し、生産ライン設置、設備投資の判断や適正な要員配置・経費管理等の面で迅速かつ的確な対応が取れるように努めております。

得意先の集中

当社グループの主要得意先である本田技研工業株式会社及び同社関係会社への当事業年度の売上高シェアは63.2%となっており、同社グループの売上が減少する場合は、当社グループの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、受注計画が計画どおり進捗せず想定外の失注が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、本田技研工業株式会社及び同社関係会社との取引の維持拡大に努めるとともに、同社以外の得意先との取引拡大に向けた営業活動を積極的に推進しております。

為替相場の変動

当社グループの海外における当事業年度の売上高シェアは90%(北米75%、アジア15%)であるため、外国為替相場の変動の影響を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、外貨建取引における為替相場の変動リスクに対して先物為替等を用いてリスクを縮小することに努めております。

特定の原材料及び部品の外部事業者への依存

当社グループは、多数の外部の取引先から原材料及び部品を購入しておりますが、製品の製造において使用するいくつかの部品・原材料については、一部の取引先に依存しております。これらの取引先に操業の停止やサプライチェーンの寸断等、予期せぬ事態が生じた場合は、当社グループの生産に影響を与え、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、事業、業績への影響を最小化するため、サプライチェーンの見直し及び強化を継続的に行っています。また、部品の供給状況についてモニタリングを行い、当社グループの生産等の事業活動に悪影響を与える可能性がある事象が発生した場合には、取引先と連携し速やかな対応を実施しています。

有利子負債依存及び金利上昇

当社グループはこれまで事業拡大に必要な資金の多くを金融機関からの借入等により調達しており有利子負債は比較的高い水準(2025年3月期72,591百万円総資産比率40.9%)にあります。当社グループが事業活動を行う国地域の金融市場に変化が生じ金利が大きく上昇した場合は当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、社内各部門及びグループ子会社の事業計画、投資計画及び資金計画を横断的にモニタリングするとともに、当社の借入及び当社グループ子会社の債務保証(当社によるグループ子会社の借入の親会社保証)にあたっては、当社取締役会の承認を得ることを前提条件としています。

 

 

 

リスクの項目

リスクの説明

リスクの対策

設備停止による影響

当社グループは、自然災害、停電又はその他の予期せぬ中断事象が生じ生産能力回復に長期間を要する場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、自然災害等の予期せぬ中断事象が生じた場合の製造ラインの中断リスクを最小化できるよう、設備の定期的な検査と予防保全点検を行っております。

製品の品質

当社グループは、予期せぬ事情で品質問題が発生した場合で、問題の重大性により法的責任やそれに起因する補償負担が生じたときは、当社グループの業績や企業イメージに影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、グローバルで厳正な品質管理基準に基づいた品質管理体制を敷いて製品を製造しております。万一品質問題が発生した場合に備え、当社グループが事業を行う国、地域の基準や得意先との協議により決定されたプロセスに基づき、すみやかに対処できる体制を整備しています。

法規制等の影響

当社グループは、グローバルに事業展開をしていることから、労働法、独占禁止法、環境諸法令等、さまざまな法規制等の適用を受けておりますが、これらの法規制等に違反した場合は、法的責任を負う可能性があります。

当社グループは、事業活動を行う国、地域の法令を調査し、それぞれの法制度を遵守して、事業を適正に行っております。

知的財産権

当社グループは、独自開発技術等に関する知的財産権の取得を進める一方、第三者の所有する知的財産権の侵害防止に取り組んでいますが、見解や解釈の相違等により第三者が知的財産権に関する訴訟等を当社グループに提起したり、第三者が当社グループの知的財産権を侵害したりする可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないよう、製品の設計開発及び新技術の研究開発に際しては先行調査を実施する等、十分な注意を払っております。また、継続的な他社製品の分析及び情報収集等によって第三者による模倣品や技術の模倣を監視し、当社グループの知的財産権の侵害抑止を図っております。さらに、営業秘密管理に関する従業員への社内教育や、退職者及び技術援助先と守秘義務にかかる契約を締結すること等により秘密情報管理を強化しております。

自然災害・戦争・テロ・ストライキ等の影響

当社グループは、グローバルな規模で事業を展開しておりますが、予期せぬ自然災害、戦争、テロ、ストライキ、紛争等の事象が発生した場合、原材料や部品の調達、生産、供給、販売等に遅延や停止が生じる可能性があります。同時に、自動車販売市場が縮小し、製品需要が減少に転じる可能性があります。こうした事象が起こり、長引く場合は、当社グループの事業、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、紛争等の事象が発生した場合に備え、当該事象の把握、対策の実施、当社事業への影響の最小化及び事業の早期復旧に向けた具体的な取り組みを定める「事業継続計画(BCP)」の整備を進めております。

固定資産の減損に係るリスク

当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等により収益性が低下し、減損損失が発生した場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、中期経営計画の当社の長期ビジョンとして「収益力強化」を掲げ、当社及びグループ子会社の業績を向上させるほか、各社の定期的なモニタリングによりリスクの早期把握に努めております。

 

 

 

リスクの項目

リスクの説明

リスクの対策

環境・気候変動に関するリスク

近年、気候変動により発生頻度及び影響度が増大している自然災害は、調達、物流及びエネルギー供給網等を寸断し、当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。現在、日本をはじめ世界各国が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明しており、社会・経済の脱炭素化への流れが加速していますが、当社グループがこれらの脱炭素社会への移行リスクに適切に対応できなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、気候変動リスクへの対応を経営上の重要課題として位置づけており、当社のカーボンニュートラル基本方針では「私たちは、社会やお客さまとともに、モビリティ社会への貢献を通じて脱炭素社会の実現を目指します。」と宣言しています。長期目標として、2035年までに自社の製造領域で使用するCO2排出量(Scope1/2)に対して、カーボンニュートラルの実現を目指し、2050年までにはサプライチェーンを含めた事業全体のCO2排出量(Scope3)のネット・ゼロに挑戦します。具体的には、省エネ活動の徹底、高効率生産設備への更新、生産ラインの再編及び再生可能エネルギーの導入を加速させてまいります。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月19日)現在において判断しております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

a. 経営成績

当連結会計年度における世界経済は、中東・ウクライナ情勢の長期化、資源・エネルギー価格の高止まり、米国新政権の政策動向による影響など、先行きは極めて不透明な状況が続きました。自動車業界においては、米国新政権が保護主義的な関税政策やEV普及策の撤回を進めており、完成車メーカーが戦略を軌道修正する動きがみられました。中国や東南アジアでは、中国系EVメーカーの勢いが継続しており、日・欧米系メーカーの販売不振が続きました。業界情勢の今後の動きは不透明であり、先行きの予測は極めて難しくなっております。

こうした事業環境下、当社グループは、第15次中期経営計画の全社方針として、「稼ぐ力を向上させ持続的に成長し社会に貢献する」を掲げ、「Back to Basics」と「Challenge for New」の基本方針に沿い、「原価低減活動の徹底」と「売価改定交渉」の2つのアプローチを攻めの姿勢で取り組みました。米国などの課題拠点は生産効率等の改善を継続するとともに、各種コストの負担増について価格転嫁を進めました。中国では得意先の生産減へ適切に対応するため要員数の適正化や固定資産の減損により事業の構造改革を完了させました。

こうした活動のもと当社グループの当連結会計年度の業績は、北米においては新規受注製品の量産効果や主要得意先との売価改定交渉の合意などプラス要素がありましたが、中国においては希望退職者の募集費用(1,127百万円)や固定資産の減損損失(7,781百万円)の計上があり、売上高は300,831百万円(前期比0.7%増)、営業利益は5,481百万円(前期比47.8%増)、経常利益は3,047百万円(前期比1.5%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は6,925百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1,683百万円)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

(日本)

主要得意先の生産台数が回復基調にあることなどにより、売上高は30,100百万円(前期比1.7%減)となりましたが、損益面は北米のターンアラウンドに向けたコンサルティング費用の計上や技術収入の減少などにより、営業損失1,093百万円(前期は営業利益1,352百万円)となりました。

(北米)

主要得意先の生産台数が新機種立上げの量産効果もあり堅調に推移したことや為替の円安影響により、売上高は226,241百万円(前期比9.6%増)となりました。損益面は、増収効果に加えて売価改定の効果により前年同期比で大幅な増益となり、営業利益は8,024百万円前期比958.3%増)となりました。

(アジア)

主要得意先の生産台数は中国地域において大幅な減産が続いており、売上高は44,489百万円(前期比27.8%減)、営業損失が1,609百万円(前期は営業利益1,511百万円)となりました。

 

b. 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金、商品及び製品は増加しましたが、売掛金、機械装置及び運搬具(純額)、中国の減損影響により、前連結会計年度末に比べ14,216百万円減少し、177,555百万円となりました。

負債は、社債、長期借入金は増加しましたが、支払手形及び買掛金、短期借入金、1年以内返済予定長期借入金の減少により、前連結会計年度末に比べ6,720百万円減少し、113,309百万円となりました。

純資産は、利益剰余金、非支配株主持分の減少により、前連結会計年度末に比べ7,496百万円減少し、64,246百万円となりました。

 

 

② 生産、受注及び販売実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

35,416

102.2

北米

235,719

109.6

アジア

47,312

73.2

合計

318,447

101.3

 

(注) 1. 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

2.当連結会計年度において、アジアセグメントの生産実績に著しい変動がありました。これは、中国地域における主要得意先の生産台数大幅減産の影響等によるものであります。

 

b. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

30,554

102.2

7,160

106.8

北米

200,689

88.9

39,300

63.3

アジア

44,114

74.6

12,364

102.7

合計

275,357

87.5

58,825

72.8

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、北米セグメントの受注高及び受注残高に著しい変動がありました。これは、米国新政権の保護主義的な関税政策の影響等によるものであります。

3.当連結会計年度において、アジアセグメントの受注高に著しい変動がありました。これは、中国地域における主要得意先の生産台数大幅減産の影響等によるものであります。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

30,100

98.3

北米

226,241

109.6

アジア

44,489

72.2

合計

300,831

100.7

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、アジアセグメントの販売実績に著しい変動がありました。これは、中国地域における主要得意先の生産台数大幅減産の影響等によるものであります。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シー

72,882

24.4

84,784

28.2

ホンダカナダ・インコーポレーテッド

36,830

12.3

44,888

14.9

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、14,256百万円(前期比16.8%増)となり、前連結会計年度末と比べ2,052百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの前連結会計年度に対する増減要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、14,757百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失5,805百万円、減価償却費14,920百万円、減損損失7,707百万円、棚卸資産の減少2,714百万円によるものであります。

なお、前連結会計年度との比較では、営業活動によるキャッシュ・フローは、19,466百万円の収入から14,757百万円の収入となりました。これは主に、売上債権の減少、棚卸資産の増加、契約負債の減少、仕入債務の減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、7,871百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出8,043百万円によるものであります。

なお、前連結会計年度との比較では、投資活動によるキャッシュ・フローは、8,902百万円の支出から7,871百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出の減少、有形固定資産の売却による収入の増加によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、5,728百万円の支出となりました。これは主に、短期借入金の純減額5,949百万円、長期借入れによる収入12,800百万円、長期借入金の返済による支出13,170百万円によるものであります。

なお、前連結会計年度との比較では、財務活動によるキャッシュ・フローは、4,263百万円の支出から5,728百万円の支出となりました。これは主に、短期借入金の減少、長期借入れによる収入の増加によるものであります。

 

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものであります。

 

① 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2026年3月末までの第15次中期計画(2023年4月1日~2026年3月31日)では、外部環境の良化や前中期経営計画期間に実施した投資効果による当社事業の平常化と収益力の向上、増加した有利子負債残高の減少による財務体質の健全化を目指し、最終年度の経営指標として、連結売上高3,000億円、連結営業利益80億円、連結売上高営業利益率2.7%、NetDebt/EBITDA((連結有利子負債残高-連結現預金)/(連結営業利益+連結減価償却費))3.1倍以下、EPS(1株当たりの親会社株主に帰属する当期純利益)175円以上を計画しております。

当連結会計年度については、新規受注製品の量産効果、円安による為替換算の影響により、連結売上高は計画を達成することができました。損益面は増収効果や主要得意先との売価改定交渉の合意などプラス要素がありましたが、連結営業利益は計画比16億円の未達、連結営業利益率は0.5ポイントの未達となりました。なお、NetDebt/EBITDAは投資額のコントロールに注力したことにより計画を達成することができましたが、EPSは中国において要員数の適正化や固定資産の減損による事業の構造改革を進めたことにより、親会社株主に帰属する当期純損益が損失となり、計画は未達となりました。

 

 

実績

(2024年3月期)

計画

(2025年3月期)

実績

(2025年3月期)

計画

(2026年3月期)

連結売上高

2,987億円

2,980億円

3,000億円

3,000億円

連結営業利益

37億円

70億円

54億円

80億円

売上高営業利益率

1.2%

2.3%

1.8%

2.7%

NetDebt/EBITDA

3.5倍

3.2倍以下

2.9倍

3.1倍以下

EPS

90.62円

100円以上

△372.97円

175円以上

 

 

② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度は「コロナ禍から生まれた悪の根を断ち切り、新たな流れを生み出さなければ」という強い思いで、「原価低減活動の徹底」と「売価改定交渉」の2つのアプローチを攻めの姿勢で遂行しました。1つ目の「原価低減活動の徹底」は、これまで特に米国拠点においては労務コスト抑制が課題となっており、日本・メキシコ・カナダ・中国からエキスパートを派遣し、グループ一体で各種製造工程の生産効率改善等のサポートを続けました。中国拠点では得意先の大幅な減産へ適切に対応すべく、要員数の適正化や固定資産の減損による事業の構造改革を進めました。2つ目の「売価改定交渉」は、各種コスト負担増の価格転嫁です。世界的なインフレによる原材料価格や労務コストの上昇について、主要得意先と売価改定交渉で合意に至ることができました。全額、価格転嫁が認められた訳ではありませんが、利益は正常値に戻りつつあると認識しております。

持続的な企業価値の向上を実現するためには、モノづくりの本質追求によるお客様からの信頼獲得、お客様の要請に応えられる設計開発力及び成長市場の開拓が必要となります。当社は、当連結会計年度においても、生産・品質面で多くのお客様から表彰をいただくとともに、当社の強みであるCAE解析技術を進化させた最適化設計で、軽量化や低コスト化、生産性向上を実現し、様々な得意先から多くの新機種の引合いを受け、新たなに4社16車種の受注を獲得することができました。

財政状態については、当連結会計年度のNetDebt/EBITDAは、計画の3.2倍に対して実績が2.9倍になりました。計画値達成に向けて、有利子負債を抑制すべく「投資額のコントロール」に引き続き注力しました。一般投資、新機種向け投資を問わず、案件ごとに多面的な評価を実施し、投資額の抑制を徹底しています。また、当連結会計年度において、連結子会社エフアンドピーアメリカ・マニュファクチャリング・インコーポレーテッドに対する増資を実施しました。当該連結子会社の今後の持続的な成長の実現に向け、借入金の減少、資本の充実による財務基盤の安定化を図っております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績の状況③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度末と比べて4,709百万円減少した要因につきましては、親会社株主に帰属する当期純損益が損失となったことなどによるものであります。

当社グループの資本の財源については、主として営業活動から得られた資金により対応し、必要に応じて銀行等からの借入により調達をしております。主な使途は新規受注への対応や生産能力維持・増強などに伴う設備投資、部品の量産のための諸費用、研究開発費などであります。また、資金の流動性については、当社において十分な借入枠を維持・継続しております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、会計上の見積りを行う必要があります。貸倒引当金等の各引当金の計上、固定資産の減損に係る会計基準における回収可能価額の算定、繰延税金資産の回収可能性の判断、退職給付に係る負債の算定等につきましては、過去の実績や将来の事業計画を基礎として、一定の仮定を用いて会計上の見積りを行っております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

(1) 技術援助等に関する契約

当社が締結している技術援助等に関する契約は、次のとおりであります。

 

相手先

国名

契約品目

契約の内容

契約期間

プログレッシブ・ツールズアンド・コンポーネンツ・プライベート・リミテッド

インド

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自1996年11月29日

以降出資する間は
 継続

エスエムシー・カンパニー・リミテッド

大韓民国

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2015年12月23日

至2020年3月8日

以降1年ごとの自動更新

ヴィージー・インダストリアル・エンタープライゼス・プライベート・リミテッド

インド

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2014年7月1日

至2028年8月31日

又は対象製品の継続期間

上海匯衆汽車製造有限公司(SHAC)

中国

自動車部品

製造販売に関する技術役務提供契約

自2014年11月25日

至2033年7月3日

又は対象製品の継続期間

エレクト・エンジニアリング・プレスワークス・センドリアン・ベルハッド

マレーシア

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2015年9月14日

至対象製品の継続期間

ポス・オーステム・イェンタイ・オートモーティブ・カンパニー・リミテッド

中国

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2018年2月5日

至2023年2月4日

又は対象製品の継続期間

ゲスタンプ・ブラジル・インダストリア・デ・オート・ペサス・ソシエダデ・アノニマ

ブラジル

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2017年11月1日

至対象製品の継続期間

ポス・オーステム・ウーハン・オートモーティブ・カンパニー・リミテッド

中国

自動車部品

製造販売に関する開発委託契約

自2016年9月8日

至対象製品の継続期間

ヴィージー・オート・コンポーネンツ・プライベート・リミテッド

インド

自動車部品

製造販売に関する技術援助契約

自2018年9月1日

至2028年9月30日

又は対象製品の継続期間

ジェイヴィー・オズオート・オーステム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー

ウズベキスタン

自動車部品

製造販売に関する技術援助及び技術役務提供契約

自2020年7月31日

至2025年7月30日

又は対象製品の継続期間

 

(注) ロイヤリティ又は技術援助料として、技術援助先の売上高に一定の料率を乗じた額を受け取っております。

 

 

6 【研究開発活動】

 

当社グループの研究開発部門は、顧客である自動車メーカーが求めるサスペンションやサブフレーム、ペダルの先進設計や先進技術を先駆けて提案し、厳しい競争の中でも確実に受注が実現できるよう日々強力に推進しております。

当連結会計年度においては、当社の強みであるCAE技術を進化させた最適化設計で、ホンダ「N-VAN e:、CR-V e:FCEV」、北米EVメーカーのピックアップトラックのサブフレームやサスペンション等で大幅な軽量化や低コスト化、生産性向上を実現しました。また、日本をはじめ、北米、中国、フィリピンの研究開発部門が連携することにより、欧米系の自動車メーカーをはじめ新興EVメーカーからの受注や、新たな開発案件も順調に増加しております。より進化した受注活動を展開し、大幅軽量化、確実な機能や性能の見極め、スピード感を持った仕様提案、さらに安定立ち上げに向け開発を推進しております。

開発本部基本方針として「グローバルR&Dの英知の連鎖で新たなモビリティー社会のシャーシシステム開発メーカーになり、競合他社に圧倒的な軽量化とCostで差別化する」ことを推進しております。従来の単体部品の開発のみならずシステムとして最適な開発を目指し、更なる軽量化とコスト低減を目標に、グローバルな開発拠点で連携し、広い視野で開発に取り組んでおります。EV時代に向けた更なる軽量化対応として、独自な視点で関連サプライヤー及び協力メーカーと連携し、高ハイテン化・モジュール領域での最適構造化や新たな技術要素へも取り組んでおります。

当連結会計年度における研究開発費は、一般管理費に計上した3,091百万円であり、地域別セグメントでは日本1,088百万円、北米1,569百万円、アジア433百万円となりました。