第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 自動車産業は100年に1度の大変革期の中、依然として続くインフレ、米国や中国での経済環境の変化など不透明な環境にあります。

 こうした環境下において、当社グループは安定的な収益確保ができる体質を目指し、不確実な事業環境へ対応するため、2024年8月に経営方針の軌道修正を行いました。

 中期会社目標として、業績回復と事業成長を掲げ、「経営スピード」「攻めと守り」「シナジー」をテーマにIMASENのさらなる企業価値向上を目指します。

 

(2)中長期経営計画

 1.長期目標を達成するための3年間の中期経営計画を策定

 2.シート電装事業・電子事業の主要2事業に集中

 3.資本コスト・株価を意識した経営の実現

  0102010_001.png

 

 中期経営計画の達成に向けては、以下の「9つの重点施策」を掲げ取り組みを進めてまいります。

  ①意思決定のスピードアップと権限移譲の促進

  ②営業機能の強化

  ③メガサプライヤーを超える競争力の強化

  ④北米・中国再編による収益強化

  ⑤調達構造の再構築による材料費率の改善

  ⑥稼ぐ力の再構築

  ⑦ROEと資本コストを意識した資本政策

  ⑧グループシナジーによる将来製品開発

  ⑨ESG経営の推進

 

 

(3)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の当社グループを取り巻く環境につきましては、国内では賃上げに伴う消費者マインドの持ち直しや、企業の設備投資意欲の高まりなどの景気回復の兆しがみえたものの、グローバルでは長期化する地政学リスクや中国の景気後退、現在の米国政権の追加関税をはじめとする政策動向など依然として不透明な状況が続くことが予想されます。

 日本の自動車業界におきましては、中国ローカルメーカーの台頭による販売の低迷、タイにおけるローン審査の厳格化に伴う販売台数の減少が続いており、さらには、米国の追加関税による販売不振も懸念されます。

 このような経営環境の中、当社グループにおきましては、中期会社目標で掲げる9つの重点施策についてスピード感を持って攻めと守りのバランスを取った取り組みを展開しています。

 目標達成に向けて国内では、事業基盤強化に向けて、岡山工場の電装生産ラインを中部地区に移管することで生まれるスペースで、拡大する電子製品生産をサポートする取り組みや、春里工場、可児工場の生産を岐阜工場に移管するなど生産拠点の最適化を予定しております。

 北米ではシート生産集約による一貫生産体制の構築および事業基盤の改善に努めてまいりましたが、米国オハイオ工場の建屋を拡張することで、これまで外部倉庫に依存していた倉庫機能の取込みや、構内物流の合理化、物流導線の短縮を行い、更なる収益体質や競争力の強化を進めてまいります。また、昨今の関税政策等のあらゆる環境変化に耐えるべく、地産地消の推進や将来の受注拡大にも活用してまいります。

 中国では日本車販売が今後さらに厳しくなるものと想定しており、そうした環境に対応するため広州および武漢工場の役割を見直し、拠点の最適化を検討してまいります。成長が見込まれているインド市場では今後のさらなる増産への対応と、現調化、内製化による体質強化に向けて、継続的に投資を行います。

 事業成長の取り組みとしましては、テイ・エス テック株式会社のグローバル拠点を活用した共同拡販により両社の事業拡大につなげ、また電子事業においては事業部の垣根を越えた営業強化による既存商圏以外の受注獲得に注力するとともに、2026年までにインバータ製品の開発や生産設備投資を行い、量産体制の構築に向けた準備を進めております。

 新たな事業基盤創出の取り組みとしましては、当社グループが保有する技術のシナジーにより、車室空間の快適さ、居心地の良さ、安心できる環境など、シートテクノロジーで「将来車室」を目指し、また「スマートファクトリー」「パーソナルモビリティ」をテーマとした基礎研究にも取り組んでおり、グループシナジーと技術の手の内化で新商品開発を推進しております。

 現在、9つの重点施策の成果が現れつつあり、業績回復を確実に行うことで資金を獲得し、事業成長に向けた投資と株主への還元水準の向上を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 中期経営計画(2024年~2026年)における9つの重点施策に「ESG経営の推進」を掲げ、サステナビリティ活動を推進しています。SDGsをはじめとした様々な社会課題や当社特有の課題の中から重要課題(マテリアリティ)を特定し、経営に取り込むことでサステナブルな社会への貢献と事業の持続的成長に努めています。

0102010_002.png

 

 また、組織のガバナンスとして、会社全体におけるリスクについて審議・決定を行うリスクマネジメント委員会に加えて、サステナビリティ活動を推進するための専門委員会として『ISP2030委員会』を設置しています。この委員会は原則として年に3回開催し、気候関連をはじめとするサステナビリティに関するリスク及び機会について審議します。委員会で審議された内容は取締役会に報告されることで、経営陣が監督する体制としています。

0102010_003.png

 

 

(2)戦略

①気候変動

 気候変動の顕在化は、当社グループの事業展開のリスクとなると同時に脱炭素社会に対応する新たな事業を創出し、社会へ貢献する機会にもなります。気候変動への対応を検討するに当たり、当社グループの主要事業である自動車関連事業について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)などのシナリオを考慮し、リスクと機会を特定しました。具体的には、2℃以下シナリオでの低炭素社会への移行におけるリスク・機会と4℃シナリオでの気候変動による物理的リスクを抽出し、それぞれについての対応を定めております。

 

 ・2℃以下シナリオ・・・持続可能な発展の下で気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ

 ・4℃シナリオ  ・・・化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ

 

2030年を想定したリスクと機会の抽出及び当社の対応

0102010_004.jpg

 

②人的資本

 当社グループの経営理念の実現には、社員一人ひとりの成長と活躍が不可欠であるとの考えのもと、人材戦略を経営の中核に位置付けています。社員が自律的に学び、挑戦し続けられるようOJTや階層別教育などの教育プログラムを整備し、計画的な人材育成に取り組んでいます。

 また、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に立ち、社内における多様性の確保を推進しており、性別や国籍等の属性に関係なくその能力、識見、人格等を公正に評価するとともに、働きやすい環境作りに努める方針としています。

 

(3)リスク管理

 ESG経営を基盤とした事業運営により、社会課題の解決に貢献できるよう活動しております。サステナビリティに関連する事項については、ISP2030委員会においてリスク・機会の特定や活動の進捗を審議します。また、リスクマネジメント委員会では事業活動全体に関わる事項の審議・決定を行うとともに、主要リスクの対策内容や進捗状況のチェックなどを実施します。こうした委員会活動やグループ各社、各部門における統制によってリスク管理を行っています。

 

 

(4)指標及び目標

 特定したマテリアリティに対して、目標値を設定して活動しています。

 

①気候変動

 気候変動への対応については、2050年でのカーボンニュートラル達成を目指しており、中長期経営計画に沿ってフェーズ1(2021年〜2023年)、フェーズ2(2024年〜2026年)、フェーズ3(2027年〜2029年)におけるマイルストーンを設定し、2030年までにCO2排出量50%削減を達成する目標としています。

 

CO2排出量削減目標(2013年度比 スコープ1、2)

CO2排出量削減

-目標-

フェーズ1 2023

フェーズ2 2026

フェーズ3 2029

10%

20%

50%

 

CO2排出量削減実績(2013年度比 スコープ1、2)

CO2排出量削減率実績

実績(当事業年度)

△23.8%

 

②人的資本

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。なお、当社においては、関連する指標のデータとともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

提出会社における指標と目標

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月31日時点

3.0

2.2

男性労働者の育児休業取得率

2030年12月31日時点

85.0

67.9

労働者の男女の賃金の差異

2026年3月31日時点

75.7

正 規  71.8

 

 

3【事業等のリスク】

 当グループではリスク管理の統括責任者として、取締役よりリスクマネジメントオフィサーを任命するとともに、経営審議会の諮問機関として「リスクマネジメント委員会」を設置し、事業を運営するうえで顕在化する可能性のある、あらゆるリスクの低減に取り組んでいます。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済状況の変化について

 欧州、中東における地政学的なリスクや米国をはじめとする追加関税などのリスクの高まりは、当社グループが製品を製造・販売している国や地域の経済情勢の変動を招いているとともに、石油・天然ガスなどの資源価格の高騰や、金融市場にも大きな影響を与えています。加えて、SDGsやTCFDなど、人権や環境に対する社会的な意識の高まりや、自動車業界における、電動車市場の急成長などは、今後の経済動向に大きな変化をもたらすとみられ、当社グループの経営成績、財政状態も影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、欧州、中東における地政学的なリスク、米国の関税リスクについては、そのリスクによって引き起こされる資源価格の高騰、金融市場の混乱、関税対応の混乱等について、影響度合いを注視しながら、個別に対応を検討してまいります。また、SDGsについては、今仙のサスティナビリティ活動施策である「ISP(Imasen Sustainable Plan)2030 ~未来の子どもたちのために~」を策定し、21年度から推進・展開するとともに、気候関連問題も重要な社会課題のひとつとして認識しており、2023年3月にTCFD提言に賛同を表明しております。加えて、電動車市場への対応では、完成車メーカーとの協業体制により、電動駆動ユニットの開発・生産に関する取り組みを行っております。

(2) 為替レートの変動について

 当社グループの主要基盤である自動車部品関連事業については、引き続き海外売上高が一定の比率を占めるものと予想されます。他国の通貨に対する日本円の為替レートの変動は、販売価格面での競争力に影響を及ぼし、延いては経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 また、当社の外貨建取引による外貨換算額及び連結財務諸表作成に用いる海外グループ会社の財務諸表は、決済、換算時の為替レートにより円換算の価値に影響を与えることから、当社グループの経営成績、財政状態が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、為替変動に対しては社内基準に基づき為替予約を実施するとともに、外貨建取引については、その影響を抑えるべく、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

(3) 特定得意先への依存について

 当社グループは自動車部品関連事業を主たる事業とし、グループ総売上高に占める当該事業の売上高の割合は、当連結会計年度において95.0%となっております。自動車部品関連事業の売上高のうち、本田技研工業㈱系列に対する売上高38.7%、マツダ㈱系列に対する売上高17.0%、㈱SUBARU系列に対する売上高13.8%と高い割合になっており、各社の事業方針、経営施策、各社及び各社取引先における品質問題等が発生した場合の販売影響等により当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

(4) 製品の不具合が生じた場合の責任について

 自動車部品関連事業において、当社グループが製造・販売した製品に何らかの不具合が生じた場合、得意先自動車メーカーが実施する改修費用のうち、責任割合に対応する負担が発生することとなり、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、法律上の損害賠償責任が発生した場合に備えて製造物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する補償額を十分カバーできる保証はないことから、世界に通用する品質保証体制を確立し、お客様に満足いただける製品を提供することを目的として、自動車産業における世界共通の品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得しており、品質管理・品質保証体制を構築して、製品不具合リスクの軽減を図っております。また、品質重視の環境を整備するべく、品質本部を新設し、品質管理体制の強化、見直しなどにより、グローバル全体で製品の品質向上に取り組みます。

(5) コンプライアンス違反について

 近年、モノ造り企業において品質に関連する不適切行為の報告が増加しております。当社グループにおいても、品質管理・保証規格であるIATF16949:2016の認証を取得し、品質保証体制を構築しておりますが、それだけでリスクを消し去るものではなく、ひとたびコンプライアンス違反が発生した場合は、当社グループの経営成績に影響を受けるばかりでなく、社会的信用も失墜する可能性があります。

 当社グループでは、取り巻くリスクの変化およびコンプライアンス事案への迅速かつ的確な対応を行うため、取締役よりコンプライアンスオフィサーを任命するとともに、「倫理・コンプライアンス委員会」を設置して、啓発活動や、メールによる目安箱の設置など、風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでおります。加えて、定期的な従業員満足度アンケートにより従業員の満足度、エンゲージメント数値を確認して、働きやすい職場を実現していくとともに、倫理、コンプライアンスを含む緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(6) 原材料、部品の供給状況による影響について

 当社グループにて消費する原材料、部品の調達については、市況変化、資源エネルギーの供給不安による価格高騰の影響を受けており、当事業年度においては、関税政策変動の影響も加わり、先行きが不透明な状況にあります。今後、事態がさらに悪化した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、日頃より原価低減活動に取り組むとともに、世界的な供給状況の混乱を受けて、調達先の複数化、在庫日数の延長や需給変動と調達期間のギャップ等、環境や調達先起因によるリスクを分析し、生産変動、供給維持に向けた対応や、現地調達への切り替えなどを進めております。

 

(7) 自然災害、感染症等について

 当社グループの国内及び海外の生産拠点において、地震、洪水等の自然災害、感染症等が発生した場合、当社グループの操業に直接的又は間接的に影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、災害、感染症拡大等の有事に備え、被害を最小限に抑え、事業の継続を図るべく、事業継続計画(BCP)を整備しその対応に努めるとともに、緊急事態発生に対するレポートラインを整備し、迅速な対応ができる体制整備に取り組んでおります。

(8) 固定資産の減損損失について

 当社グループが保有する有形固定資産、無形固定資産において、資産の価値が著しく下落した場合や事業の損失が継続するような場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、減損の兆候を捉えた場合、適時に減損損失額の把握を行い、業績及び財務状況に及ぼす影響を最小限とするよう、対応を行います。

(9) 情報漏洩、サイバー攻撃について

 当社グループが行う生産、販売活動及び各種事業活動は、ITシステム及びシステム間を繋ぐ通信ネットワークを利用しており、通信ネットワークにおける障害や、ランサムウェアに代表されるサイバー攻撃、ハードウェアの故障等のリスクに晒されており、その影響を受けた場合は、事業活動に支障が出る可能性があるとともに、社会的信頼を損ない、多額の費用負担が発生する可能性があります。

 当社グループでは、様々なITリスクへの対応と、変革するデジタル社会に適応するために、「従業員が どこでも 安全に ストレスフリーに仕事ができるIT環境」を目指したロードマップを作成し、ビジネスツール、セキュリティ基盤の整備を推進するとともに、「今仙情報セキュリティハンドブック」を社内WEB上で公開し、従業員のセキュリティ意識向上に活用しております。

(10) 人的資源の流失について

 当社グループの主力事業である自動車部品関連事業では、CASEに代表されるように百年に一度の大変革期を迎えており、業界各社がデジタル人材の獲得に動いています。加えてこれまでの年功序列型賃金は制度疲弊をしており、ジョブ型給与への移行が進むとみられ、ライフスタイルの変化とともに労働力の流動化が加速すると考えられます。今後、魅力的な仕事、ライフスタイルにマッチした賃金、福利厚生制度に対応できなければ、人財が流出し、事業の継続に影響を及ぼす事態になる可能性があります。

 当社グループでは、環境の変化に対応し、会社と従業員の持続的成長に向けた事業変革として、2024年4月より従来の年功序列型賃金から脱却し、どの世代でも高い目標にチャレンジし活躍している社員を評価する新人事制度に移行しました。今後も引き続き新人事制度を浸透させることにより、従業員とのエンゲージメントを高めて、当該リスクに対応してまいります。

(11) 国家間協定・条約等の影響について

 世界経済は、グローバル経済から、保護主義的な経済活動に移ってきており、資源エネルギーを取り巻く環境や、半導体製造やEV車などの電池製造などに関わる国家政策は、電機産業、自動車産業に留まらず、全ての経済活動に影響を及ぼしています。米国をはじめとする追加関税や輸出入規制の強化などは、各社及び各社取引先の事業方針、経営施策を含め、当社グループの事業計画が影響を受ける可能性があります。

 当社グループでは、国家間協定・条約等の影響を最小限に抑えるべく、各国、各地域の協定・条約の締結動向を注視するとともに、地産地消に向けた現地調達、現地生産の検討、実施を進めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移し景気が拡大しましたが、ウクライナ紛争や中東での地政学リスクの高まりや、中国の景気後退等により、先行き不透明な状況が続きました。

 当社グループが関連する自動車業界におきましては、米国において内需拡大に伴い自動車販売が増加したものの、原材料価格の高騰が継続していることに加え、中国市場における急速なEVシフトに伴う日系メーカーの販売不振もあり、依然として厳しい経営環境が続いております。

 このような経営環境の中、当社グループにおきましては、安定した収益体制を構築し、IMASENのさらなる企業価値向上を目的に、長期目標を達成するための3年間の中期経営計画を策定し、「シート・電装事業、電子事業の主要2事業への集中」「資本コスト・株価を意識した経営」を主軸として、経営方針の軌道修正を行いました。

 その中で2024年度からの3年間の中期会社目標を「業績回復と事業成長」と置き、長期目標の達成に向けたステップとして、2026年度の収益目標を売上高910億円、営業利益4.0%、ROE 4.0%以上と設定し、9つの重点施策を掲げて取り組みを開始いたしました。

 経営判断のスピードアップに向けては、経営に関連した重要な会議体やプロセスの見直しと権限移譲の促進を行いました。また、2026年3月期第1四半期より在外子会社の決算期を親会社である当社の決算期に統一することを決定し、意思決定の迅速化や管理体制の強化を図るとともに、業績等の経営情報の適時・適切な開示により経営のさらなる透明性に努めてまいりました。

 海外拠点の取り組みとしまして、北米拠点では物流費の抑制および一貫生産体制の構築を目指し、テネシー工場からオハイオ工場への生産移管と生産体制強化に取り組み、当期までに自動組立ラインの導入とテネシー工場からの1,500トンプレス機の移管が完了しております。なお、テネシー工場は2024年12月に生産を終了し、2025年8月をもって工場の売却を完了する予定となっております。

 中国拠点では中国市場の需要動向に合わせた体制整備として希望退職者募集による人員最適化を実施し、収益体質の強化を図ってまいりました。また、現地OEMメーカー向けの拡販活動としてテイ・エス テック株式会社との連携による中国での拡販活動や、広州モーターショー2024への初出展など新規受注獲得に向けた営業活動を推進しております。

 拡大が期待されるインド市場に向けては投資を強化し、新機種向け高効率ラインや新規プレスラインなどを導入し、増産対応を行っております。また、部品の現調化、内製化に取り組んでいるほか、設備や金型・治具についても現地調達を進めており、コスト競争力の強化を図っております。

 このような施策に取り組んだ結果、中国における生産減少の影響等により当連結会計年度の売上高は94,341百万円(前期比5.4%減)と減収になったものの、円安による為替の好影響や自社体質改善等により営業利益は393百万円(前期は14百万円の利益)、経常利益は511百万円(前期比96.6%増)、投資有価証券売却益の発生等により親会社株主に帰属する当期純利益は2,084百万円(前期は71百万円の損失)となりました。

 

 セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

 (a) 日本

 単体での生産減少により売上高は39,334百万円(前期比2.5%減)と減収になりました。利益面では原価改善の効果はあるものの、減収影響に加え、管理体制強化による労務費・経費増加により、営業損失は510百万円(前期は322百万円の損失)となりました。

 

 (b) 北米

 円安による為替影響により売上高は30,179百万円(前期比4.6%増)と増収になり、利益面では機種構成の良化による増益に加え、生産設備の自動化投資や北米拠点の集約による原価改善効果がみられ営業利益は441百万円(前期は1,244百万円の損失)となりました。

 

 (c) アジア

 中国における日本車販売不振の影響を受け、生産減少により売上高は24,828百万円(前期比18.7%減)と減収になりました。また、希望退職の実施に加え原価低減活動を進めたものの、減収影響により営業利益は410百万円(前期比68.6%減)となりました。

 

②生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

39,309

△3.4

北米

30,582

7.8

アジア

23,398

△19.8

合  計

93,290

△5.0

 (注) 上記の金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

日本

39,582

△2.9

5,010

5.2

北米

29,228

△3.1

2,461

△27.9

アジア

24,686

△18.9

2,003

△6.6

合  計

93,497

△7.8

9,476

△8.2

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

39,334

△2.5

北米

30,179

4.6

アジア

24,828

△18.7

合  計

94,341

△5.4

 (注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

NHK Seating of America,Inc.

11,128

11.2

9,517

10.1

日本発条㈱

12,243

12.3

(注) 当連結会計年度の日本発条㈱については、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

財政状態の分析

a.流動資産

 当連結会計年度末における流動資産の残高は52,626百万円(前期比2,156百万円の増加)となりました。売掛金が1,328百万円減少したものの、現金及び預金が2,942百万円、棚卸資産が995百万円増加したことなどによるものであります。

b.固定資産

 当連結会計年度末における固定資産の残高は25,704百万円(前期比5,006百万円の減少)となりました。無形固定資産が149百万円増加したものの、有形固定資産が654百万円、投資その他の資産が4,500百万円減少したことなどによるものであります。

c.流動負債

 当連結会計年度末における流動負債の残高は20,504百万円(前期比3,134百万円の減少)となりました。短期借入金が3,181百万円減少したことなどによるものであります。

d.固定負債

 当連結会計年度末における固定負債の残高は4,785百万円(前期比1,487百万円の減少)となりました。長期借入金が477百万円、繰延税金負債が390百万円、リース債務が336百万円減少したことなどによるものであります。

e.純資産

 当連結会計年度末における純資産の残高は、53,041百万円(前期比1,771百万円の増加)となりました。その他有価証券評価差額金が2,323百万円減少したものの、為替換算調整勘定が2,178百万円、利益剰余金が1,787百万円増加したことなどによるものであります。

経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は94,341百万円(前期比5.4%減)となりました。セグメント別では、日本につきましては、単体での生産減少により、売上高は39,334百万円(前期比2.5%減)になりました。北米は、円安による為替影響により、売上高は30,179百万円(前期比4.6%増)、アジアは、中国における日本車販売不振の影響を受け、売上高は24,828百万円(前期比18.7%減)となりました。

 利益につきましては、円安による為替の好影響や自社体質改善等により営業利益は393百万円(前期は14百万円の利益)、経常利益は511百万円(前期比96.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益の発生等により2,084百万円(前期は71百万円の損失)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は14,412百万円と前連結会計年度末に比べ3,237百万円の増加となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、2,768百万円(前期比188.8%増)となりました。これは主として、売上債権の減少が3,349百万円であったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果増加した資金は、4,503百万円(前期は1,209百万円の減少)となりました。これは主として、投資有価証券の売却による収入が5,309百万円であったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は、4,987百万円(前期比0.2%減)となりました。これは主として、短期借入金の純減が1,463百万円、長期借入金の返済による支出が2,568百万円であったことによるものであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用、税金の支払い、新製品立ち上がりに伴う生産設備や金型投資等です。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度において3,129百万円の設備投資を実施しており、資金の調達につきましては、自己資金及び借入金によっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績などを勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、繰延税金資産の回収可能性の判断及び固定資産の減損に関する判断に関しては、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

a.製品保証引当金

 当社グループは、製品の品質保証期間内に発生する製品保証費の支払に備えるため、過去のクレームを基礎にして発生見込額を見積り計上しております。従いまして、実際の製品保証費は見積りと異なる場合があり、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。

b.退職給付に係る負債

 当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で使用される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率や年金資産の長期期待運用収益率など、多くの見積りが存在しております。このため、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、将来の退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。

c.固定資産の減損

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候のある資産又は資産グループについて、将来キャッシュ・フローを見積り、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

d.繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産の将来の回収可能性を検討して、回収可能な額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性を評価するに当たって、将来の課税所得を合理的に見積もっております。この見積額の変動により、繰延税金資産の全部または一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を税金費用として計上します。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、企業の競争力維持のため、また将来的な成長のため、研究開発を最重要経営課題であると認識し、これに取り組んでおります。「よい品を より安く より速く」顧客に提供するために、常に「世界的な視野に立ったハイエスト・クオリティー、ローエスト・コスト」を理念として、独創技術の開発に努め、新技術及び新製品を提案できる開発型の企業として、先端技術、現行技術の革新・改良と、それらを量産に結びつけるための研究開発を行っております。

 当連結会計年度における研究開発活動に係る費用の総額は2,810百万円であります。なお、当該金額には既存製品の改良、応用等に関する費用が含まれており、「研究開発費等に係る会計基準」(企業会計審議会)に規定する「研究開発費」は183百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

なお、研究開発活動は主に日本国内において、自動車部品関連事業及び福祉機器関連事業の分野で行っております。

日本

(自動車部品関連事業)

(1) シート機構・電装製品

 主力製品であるシートアジャスタについては、「安全」「環境」「快適・利便」をキーワードとした製品開発を最重要テーマとして、『お客様のニーズにあった製品』の研究開発に取り組み、世の中の移動に貢献しています。

「安全」: 衝突時の乗員保護をより高い次元で達成する製品や適正な姿勢を確保する製品の開発に取り組むとともに、各々の強度ごとのバリエーションに適応した製品開発を行っております。

「環境」: 低燃費及び将来の電動化を見据え、機能集約による部品の削減ならびに、新加工・新固定方法による小型・薄型にて軽量製品の開発に取り組んでおります。またリサイクル材の採用や海外生産拠点における材料からの現地調達の促進に取り組んでおります。

「快適・利便」: お客様の感性領域まで考慮し、心地よい操作・作動を提供できるシートアジャスタの開発に取り組んでおります。

「その他」: 当社グループ各社のシナジーを活かした、車室空間ならびに、スマートファクトリーの研究開発に取り組んでおります。

(2) 電子製品

 電子製品領域については、以下を研究開発の重点テーマに位置付けております。

1. 高効率パワーエレクトロニクス技術開発

 DC-DCコンバータ、インバータ等の電力変換装置において、電力損失を最低限に抑えることで製品コスト低減とエネルギー損失の抑制を図る新技術を開発し量産への移行を推進しております。

2. モデルベース開発

 複雑で大規模・高度なソフトウエア開発を短納期で行うべく、最先端の開発プロセスと解析用ツールを導入しております。

3. EMC開発

 車載電子機器が発生する電磁ノイズを抑制する為の製品コスト上昇と開発期間増加が問題になっています。これに対して社内での測定環境を整備して、技術ノウハウの蓄積と効率的な開発を行っております。

4. 電源システム開発

 車載電源は従来の鉛バッテリーのシステムから、リチウムイオン電源、キャパシター電源等の多彩なパワーソースの組み合わせへ変遷しています。これらは電動化の一環であることから重要なビジネスアイテムであると位置づけ独自の先行技術開発を行い、量産用製品への反映を推進しております。

5. E/Eアーキテクチャ開発

 ソフトウエア定義車両(SDV)の実現に向け、E/Eアーキテクチャ開発の一環として、車載OSを搭載したゾーンアーキテクチャのシステム構成をはじめ、高速ネットワーク技術および無線によるソフトウエアアップデート(OTA)技術の量産製品への実装に向けた検討を進めております。

(3) その他の製品

 その他の製品としましては、機構・電装技術に加え、当社グループ各社のシナジーを活かした次世代モビリティの研究開発に取り組んでおります。

 

(福祉機器関連事業)

 福祉機器の電動車いすについては、暮らしを支えるかけがえのないパートナーとして、安全性・快適性を徹底的に追求し、使われる方の快適さはもとより、介助する方や周りの環境にも優しい機能、性能、デザインであることに心を配って開発しております。

 主力製品である重度障がい者を対象とした製品に加え、今後の超高齢化社会に向け、電動駆動のコア技術を活用した高齢者向け製品の研究開発も行っております。そして障がい者、高齢者の方にとって唯一の自力移動手段であることを踏まえ、使いやすさと安全性を重点に、一層の軽量化、小型化、高機能化を目指しております。

 義足については、「使う人の要求を、作る人の立場で考える」というコンセプトのもと、様々な日本の生活環境、体型、年齢などに合わせた最適な義足を提供するため、パーツ選択や交換、調整を容易に行えるモジュール化した義足部品の研究開発を行っております。特に膝継手においては、国内だけでなく海外輸出を考慮した耐久性と耐環境性を備え、機能美といわれるデザイン性を重視した製品を開発しており、国内外から高い評価をいただいております。

 ミズノ株式会社と共同開発したスポーツ用義足は、東京パラリンピックでは、2名のパラアスリートに使用していただきました。この技術をもとに子供たちや初心者向けの製品を開発し、発売を開始しました。また、パラアスリートの山下千絵選手とスポンサー契約するなど障がい者スポーツの普及活動にも積極的に取り組んでいます。