文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の連結子会社)が判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは基本理念の「人間尊重」に基づき、「私たちは、世界的視野に立ち、豊な創造力で、常にお客様に満足して頂ける魅力ある商品を供給することに全力を尽くす」という社是を実践することにより、社会に貢献して参ります。
経営戦略(経営目標)を達成するうえで、2030年ビジョンとして「独自技術を強化拡大し、新しい時代に期待される企業となる。」を掲げ、3つの方向性を定め推進して参ります。
1.Yutaka製品を世界のお客様に広め、地球環境に貢献する。
2.電動化時代に向けて、新しい価値を生み出す商品を創造する。
3.地域を超えて英知を結集し、グループの総合力を発揮する。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループをとりまく環境は近年、目まぐるしく変化しております。業界全体としては、「主要市場での自動車販売成長率の鈍化」や「自動車メーカー系列を超えた提携拡大」が見られます。また、グローバルに目を向けると、「脱炭素社会に向けた自動車電動化へのシフト」の方向性は確実視される一方、ハイブリット車や合成燃料車などの一部の内燃機関車の共存の可能性も示唆されるなど地域毎に多様性を増してきています。
今後も当社グループをとりまく環境は厳しく、先行きの見通しが困難であると認識し、以下の通り、中・長期コンセプトを見直し、あらゆる環境変化に対応すべく施策を加速展開して参ります。

第15次中期事業計画(2023年4月~2026年3月)に おいては、「排気/制動部品・電動車部品を事業の柱とし、環境・社会に貢献する」を経営戦略に掲げ、電動化の基盤確立と新価値商品の仕込みを実施することで新たな事業の柱の構築に注力して参ります。また、事業効率の追求により足元の事業の柱である既存排気/制動部品事業の収益を長期的に極大化することで継続的成長を目指して参ります。そのような中で第15次中期事業計画の初年度となる38期においては、全拠点の黒字化・新技術/製品の仕込み・新たな販路拡大を実現すべく以下の戦略テーマに取り組んできました。
1.「電動化時代をリードできる柱の創造」
2030年を見据え、新たな事業の「柱」となる製品を創造し事業転換を図ります。さらに電動化時代へ向けた新しい市場の開拓、電動化時代を支える各本部の役割/戦略を明確にしていきます。
2.「新価値商品の創造」
新時代へ向けた新商品を創造し、事業構築を図ります。
全従業員で新価値商品へ取り組み、当社グループの風土改革を行います。
さらにスピード感を持った新価値商品化フローの構築と運用を目指していきます。
3.「主幹部品の収益性追求と販路拡大」
将来の事業転換に向けた主幹部品の収益最大化を図ります。
環境変化に強いボトム体質を構築し、日本/海外地域と連携した販路拡大に取り組みます。
4.「デジタルを基軸とした運営基盤強化」
将来を見据えたデジタル化へのロードマップの構築を図り、グループ全体で管理業務のスリム化を目指していきます。デジタルツールを活用した業務改革の推進、データ管理と適切な教育/運営/活用を行います。
5.「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」
社会から信頼される企業であり続ける為にサステナビリティ活動の浸透を図ります。SDGs対応の明確化と発信、低炭素グローバルサプライチェーンの具現化に向けて取り組みます。また、人的資本の拡充に向け、ダイバーシティ&インクルージョンを加速させることにより、女性が働きやすい職場環境の充実に努めると共に、性別や国籍を問わない採用活動や風土づくりを拡大させていきます。
その中でも、以下5点を個別優先課題と認識し、取り組んで参りました。
①.モーター部品の収益性向上・ビジネス拡大
②.生産体質・管理体質強化による国内黒字化
③.主幹部品の他販拡大
④.SDGs対応に向けた取り組み強化と発信
⑤.半導体不足、インフラ高騰等のリスクへの対応
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは適正な利益及び財務状況を確保すべく事業を行っておりますので、営業利益額をその重要な経営指標と位置付けております。
(1) サステナビリティに関する考え方及び取組み
当社グループは「Clean for the Future」をカンパニースローガンに掲げ、将来に亘って働く場を取り巻く社会問題を解決するため、サステナビリティに関する重要課題を定め、事業活動と融合させるべく体制の構築や具体的な取り組みを推進しています。
当社グループは気候変動への対応を重要な経営課題と考え、気候変動が事業にもたらす影響を分析しています。
当社グループは、全ての事業領域において地球環境を保全するべく、環境活動の指針となる「環境宣言」と具体的な「基本方針」のもと、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、グループ全体の環境マネジメントサイクルに拠点ごとの環境マネジメントサイクルを連動させることで全社員参加の環境活動を展開しています。
また、3ヶ年毎の「中期環境計画」を策定し、重要な課題の設定、モニタリング、対応策の推進に取り組んでいます。
世界規模で大きな問題となっている気候変動に関連し、自動車メーカーを中心に電動化が加速し、カーボンニュートラルに向けた取り組み姿勢が大きな関心事項となっております。このような中で主要顧客である本田技研工業株式会社が2040年電動化100%を宣言いたしました。当社としてはその取り組みに追従し受注機会を確保するとともに社会から信頼される企業を目指していきます。
当社では中期事業計画における戦略テーマの中に「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」、「サステナビリティ活動の浸透」という重点テーマを定め、中長期CO2排出量削減目標を策定し、低炭素な資源活用・製造法や輸送効率の改善を進めております。また、ロス・ムダ・資源の削減として設備の不要時の停止や業務効率のアップ、仕損削減に取り組んでいます。製品開発領域としては環境新製品(モーター事業)にも取り組んでいます。それらの活動内容は定期的にモニタリングし、PDCAを着実に回すことにより、目標の達成に歩みを進めていきます。
当社は、リスク管理の統括機関として「リスク管理委員会」を設置しております。
気候変動のリスクに関しては、安全環境推進部門が具体的リスクを洗い出したうえで、「発生頻度」・「事業への影響度」を評価基準にその重要性を定期的に評価し、対応策の検討・立案及び目標の設定をし、リスク管理委員会に報告しています。対応策の取組状況及び設定した目標の進捗状況に関しては、リスクマネジメントオフィサーが監視、監督しています。
当社では、気候変動への対応として以下の中長期CO2排出量目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んで取り組みを進めています。2023年は、豊製作所のろう付け炉へ断熱パネル貼付けや、各拠点の工場・事務所照明のLED化等の省エネ施策の積極的な実行により187tのCO2排出削減を実施し目標を達成いたしました。なお、2024年以降は当社初となるオンサイトPPAを活用した太陽光発電設備の稼働を開始し、また、カーボンフリー電気の採用を検討しています。省エネ施策継続とあわせることで、カーボンニュートラル達成に向け、さらなるCO2削減への取り組みを進めて参ります。
<中長期CO2排出量目標>
2030年目標 Scope1・2 46%削減(2019年比)
2050年目標 Scope1・2 ネット・ゼロ(カーボンニュートラル)
<CO2排出量実績(単位:t-CO2)>
(2) 人的資本に関する取り組み
①.戦略
当社では、新しい時代に「期待される企業」となるための最大の資産は「人財」であるという考えのもと、2023年11月にありたい人財像を「“活き活き”と日々行動し、チャレンジを楽しむ人財」と新たに定義しました。この人財像には、「夢/志を持ち、自らの持つ専門性/特性を活かして、組織に貢献する」、「あらゆることに興味を持ち、学び続ける」等、多くの意味が込められており、従業員一人ひとりが自己実現を果たし、自己成長を達成することを目指しています。当社では、このありたい人財像をベースに、人財の能力を継続的かつ最大限に引き出すための取り組みを強力に進めて参ります。
2023年度で実施した具体的なアクションとしては、「より公平・公正な評価制度への見直し」、「多様性を尊重し、時代に合った労働条件への変更」、「新たな教育制度の導入」、「従業員とのオフサイトミーティングの場設定による職場・個人の課題共有と改善」等があります。これら人財マネジメントシステム全般に係る取り組みを通じ、従業員の働く満足度向上、エンゲージメント強化に努めることで、組織全体の成長と競争力の強化へも繋がるものと考えております。
また、ありたい人財像実現のための根底となるものが、従業員の健康です。2022年11月に「Yutaka健康宣言」を制定し、運動・食事・禁煙対策を3本柱とした様々な健康づくり施策を展開しています。さらにメンタルヘルス対策として、相談窓口の設置や復職支援プログラムの運用、職場環境改善を強化することで、一人ひとりが活き活きと働ける環境整備に努めております。
今後もこれらの取り組みの深化により、人財の側面からも経営戦略の実現に向け推進して参ります。
②.指標及び目標
人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
<中期人財戦略目標>
※従業員意識調査は3年毎の実施の為、38期末・39期末は目標設定せず
<中期人財戦略実績>
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下の通りです。これらのリスクは予測不可能な不確実性を内包しており、当社グループの将来の事業、業績並びに財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこれらのリスクの回避、あるいはその影響の低減の為の適切なリスク管理に努めておりますが、これらすべてのリスクを完全に回避するものではありません。なお、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、当社グループが将来にわたり影響を受けうるリスクはこれらに限定されるものではありません。
(1) 市場環境の変化
当社グループは日本、北米、南米、中国、アジア地域を含む世界各国・地域で広範に事業を展開しており、これらの国々における景気後退や消費者の価値観の変化等に伴う四輪車、二輪車等の需要の減少や電気自動車の台頭よる内燃機関車の減少が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの売上はその多くを本田技研工業株式会社グループに依存しており、その販売状況の変化が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、市場環境の変化を適宜把握し、柔軟に対応して参ります。さらに、顧客の拡大によりリスクの軽減に努めて参ります。
(2) 製品の価格変動
当社グループは常に独自の技術を用い、高い付加価値や世界トップレベルの競争力を持つ製品の開発と生産に努めておりますが、国内外の市場において多くのメーカーとの熾烈な競争に晒されており、強い価格変動圧力等が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(3) 為替の変動
当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で生産・販売活動等の事業を行い、加えて複数国の拠点間で四輪車、二輪車等の部品を輸出入している為、為替レートの変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建取引において、当社グループが販売する部品及び製品の価格設定や購入する原材料の為替レート変動に起因する価格変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外子会社の資産・負債等が現地通貨から日本円に換算され連結財務諸表に反映される過程において、為替レートの変動が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、為替予約等により為替相場の変動リスク軽減に努めております。
(4) 貿易リスク
当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で生産・販売活動等の事業を展開し、加えて複数国の拠点間で四輪車、二輪車等の部品を輸出入している為、関税率の変動、新たな輸出入規制、規制対象の変更等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、現地調達化の促進や調達方法の見直し等の検討により、リスク軽減に努めております。
(5) 金利の変動
当社グループは財務に関わり発生が見込まれる様々なリスクの回避に努めておりますが、金利の変動は支払利息や受取利息あるいは金融資産及び負債の価値等の変動に繋がり、当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、当社としてはグループ全体の財政状態を把握し、長期借入金に対して支払利息の固定化等の適切な対応をすることによりリスクの軽減に努めております。
(6) 法規制リスク
当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域に生産拠点を有している為、各国や地域が制定する環境保護、四輪車、二輪車等、工場や生産工程等に関わる法規制等の変化や当局との見解の相違等が発生した場合、関連法規制や訴訟に関する様々な調査や法的手続き等を受ける可能性があります。その結果として当社グループが意図しない不利な判断がなされた場合、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、当社グループとしては地域ごとの、関連法規制や訴訟に関する様々な調査や法的手続き等を把握する体制を整備することにより、リスクの軽減に努めております。
(7) 知的財産の保護
当社グループは製造する製品に関連する広範な知的財産権を有しており、これは当社グループ事業の成長にとって重要なものであります。しかしながら、これらの知的財産権が広範囲にわたって違法に侵害されることにより、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、他社により当社グループの知的財産権が侵害されないよう体制整備を行い、製品・技術の開発に当たっております。
(8) 特定の原材料及び部品への依存
当社グループは、多数の外部事業者から原材料及び部品を購入しておりますが、購入している原材料及び部品の一部は、その供給を特定の事業者に依存している場合があります。これらの部品について、何らかの原因にて外部事業者から安定的に、あるいは効率的かつ競争力あるコストでの供給が受けられない場合、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、調達体制の整備により、リスク軽減に努めております。
(9)他社との業務提携・合弁
当社グループは、一層の競争力強化を狙い、あるいは事業を展開している国の要件に従い、企業買収や他社事業者との業務提携等を実施することがあります。事業の状況によっては業務提携等を解消することもあり、この様な場合当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(10)戦争・テロ・政情不安・ストライキ、自然災害等の影響
当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で事業を展開している為、いずれかの国及び地域において戦争、テロ、政情不安、ストライキ、大規模な自然災害、事故、感染症等の事象が発生した場合、原材料や部品の購入、生産活動及び物流などの遅延や停止が生じ、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、従業員の安全確保を第一と考え、地域ごとの情報収集及び状況に応じた体制を整備することにより、リスクの軽減に努めております。
(11)情報セキュリティ
当社グループは事業展開を行うにあたり、情報通信システムを利用しています。これらは日々高度化・複雑化しており、当社としてもそのセキュリティや信頼性の向上の為、最大限の努力を行っておりますが、自然災害やテロ、コンピューターウイルスやハッキングなどの外部要因、人為的ミスや機器の不具合、故障等による内部要因などでシステムの停止や機密データの漏えい、重要データの消失、改ざんなどが発生し、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、当社グループでは、セキュリティのさらなる強化、データのバックアップ、システムのクラウド化を含め、不測の事態による事業停止からの早期復旧に関しての対策を講じております。また、基幹システム及びグループインフラの情報セキュリティに対する内部評価を実施し、リスクの軽減に努めております。
(12)品質・ブランドイメージ
当社グループはお客様と社会双方から存在を期待される企業であり続ける為に、当社グループが製造した製品の品質が人命に直結するものであるとの認識のもと、開発、生産をはじめとした当社グループが行う事業活動全てにおいて世界トップレベルの品質の追求をするため、品質管理体制の整備・運用を行っております。
しかしながら、予期せぬ重大な品質問題が発生する可能性は皆無ではなく、そうした重大な事態が発生した場合にリコールなどの対応が必要となる場合があります。この様な時、当社グループのブランドイメージが失墜し、結果として当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、製品の不良等による万が一の重大なトラブルの発生に備え、賠償責任保険へ加入しリスクの低減を図っております。
(13)事業環境の変化
当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域において、主要顧客である本田技研工業株式会社グループ各社との連携のもとに主要事業を展開している為、本田技研工業株式会社グループの生産体制等の変更が、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。
その対応として、本田技研工業株式会社グループの生産体制等の変更・変化を適宜把握し、柔軟に対応して参ります。さらに、顧客の拡大によりリスクの軽減に努めて参ります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
第15次中期事業計画では、「電動化時代をリードできる柱の創造」「新価値商品の創造」「主幹部品の収益性追求と販路拡大」「デジタルを基軸とした経営基盤強化」「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」を戦略テーマとして設定し、グループ全体の事業基盤をさらに強固にすると共に、電動化を見据え新たな成長の創出を目指し事業を展開して参りました。
1.「電動化をリードできる柱の創造」
2023年2月1日から2023年6月30日の期間でBEV用モーター市場への参入/拡大を目的に「MOTOR事業拡大化プロジェクト」を発足し、モーター事業拡大のロードマップと実行計画を策定しました。その上で2023年7月に「新コア事業推進室」を発足し、計画の実行を推進して参りました。これまでの日本におけるモーターコアやローターコンプの量産実績に加え、巻線加工などあらゆる顧客ニーズに対応可能なオールラウンドサプライヤーを目指すべく、業容拡大に向け積極的に各機能本部・地域本部・拠点に施策を展開して参りました。
2.「新価値商品の創造」
新商品の事業化に向けたフローを新しく構築し、商品化に向けた進捗管理高度化及びスピードアップを図って参りました。
38期の実績として、環境問題の対策として今後拡大すると見込まれる小型EVなどの次世代モビリティ向けに、設計や組み立てのコストを大幅に削減することができる汎用フレーム「M-BASE」を上市しました。また、作業アシスト装具「BELT POWER」の上市に向け、テストマーケティングを開始しました。弊社のコア技術である流体技術を活用した「風力」を「熱」に変換し、住宅の暖房や給湯に利用する創エネ製品の研究開発を産学共同で開始しました。
3.「主幹部品の収益性追求と販路拡大」
各部品の戦略チームが中心となり各領域、各地域での戦略を見直し、課題抽出及び改善施策立案を確実に実行して参りました。主幹部品のライン最適化、生産拠点の品質体質の向上によるロスムダ削減などにより収益確保に向けた体質づくりを推進展開し、主幹部品の足固めを図ることができました。また、弊社グループの強みである技術力を生かし、高品質低価格製品の開発により海外地域を中心に新規顧客獲得提案を強化して参りました。
4.「デジタルを基軸とした運営基盤強化」
サイバーセキュリティ対策について全拠点において対策ソフト導入により24時間/365日の監視体制で運用安定化を強化して参りました。
管理領域ではマニュアル作業のデジタル化による効率改善でスリム化を実施し、製造領域では前期から進めておりますIoT化展開により、設備稼働状況自動監視やトレサビリティデータ管理自動化で最適生産活動ならびに顧客への搬入保証の精度アップを図って参りました。
5.「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」
気候変動への対応として中長期CO2排出量削減目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んでの省エネ施策等取り組みを進めております。世界では脱炭素社会に向けた取り組みがさらに加速する状況を認識し、当社グループとしてカーボンニュートラル達成に向けた対応をより一層強化しております。
また、人的資本の拡充に向けてありたい人財像を「“活き活き”と日々行動し、チャレンジを楽しむ人財」と新たに定義しました。このありたい人財像をベースに、人財の能力を継続的かつ最大限に引き出すための取り組みを強力に進めております。この取り組みを通じ、従業員の働く満足度向上、エンゲージメント強化に努めることで、組織全体の成長と競争力の強化へも繋がるものと考えております。また、職場環境改善にも取り組み、一人ひとりが活き活きと働ける環境整備に努めて参ります。今後もこれらの取組の深化により、経営戦略の実現に向け推進して参ります。
また、個別優先課題への対応状況としては、
①モーター部品の収益性向上・ビジネス拡大
稼働率の向上及びコストの削減により、継続的に収益性向上が図られています。38期は、中国やアジア地域中心に営業活動を強化して参りました。また、ビジネス拡大に向けた設備、開発投資も継続しております。
②生産体質・管理体質強化による国内黒字化
国内生産体質強化への取り組みとして各部品戦略チームによる各領域の戦略の見直し、課題抽出及び改善施策を実行して参りました。目標に向けた確実な施策実行により、生産体質強化へ繋がりました。管理体質に関しては、デジタルを基軸とした運営基盤強化により管理業務のスリム化を実施しました。
生産体質・管理体質強化に伴う効果に加え、円安効果や販売価格の改定などにより当社個別業績は営業黒字を達成致しました。
また、当社は、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得の見込み及び利益計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合は、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。この会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積を伴う判断」に記載しております。
今後においては、引き続き施策を確実に実行し継続した国内黒字化に向けた取り組みを推進して参ります。
③主幹部品の他販拡大
各地域においてターゲットとなる顧客を定めニーズや困りごとを把握して営業推進を実施しました。また、各部品レベルで原価低減施策を強力に展開した結果、中国の顧客向けのサイレンサー量産開始やインドの顧客向け二輪ディスク生産の受注獲得などを実現しました。
④SDGs対応に向けた取り組み強化と発信
Yutakaフィロソフィーに基づき、「豊かな社会づくりへの貢献」や「新しい技術とアイデアでチャレンジする」など持続可能な社会の実現に貢献する企業行動を実践すると共にSDGsに賛同し、「事業活動を通じた社会課題の解決」とそれを支える「経営基盤の強化」のため、優先課題(マテリアリティ)を設定しました。
またホームページの刷新をはじめ、公式SNSの開設等により情報発信をより強化して参りました。。
⑤半導体不足、インフラ高騰等のリスクへの対応
急激な市場変化の影響を最小限とするため生産数量の増減に影響されにくいフレキシブルな生産・調達体制の構築を進めてきました。また、インフラ高騰等については、筋肉質な体質に向けたコスト削減と顧客への価格交渉を継続的に実施することで対応して参りました。
また、足元の環境変化に対応すべく、39期においては以下3点を個別優先課題として取り組んで参ります。
①主幹部品とモーター部品の他販拡大
②海外子会社の体質強化と収益性の向上
③SDGs対応に向けた取り組み強化
当連結会計年度の売上収益は、2,162億6千万円(前年同期比0.8%減)、営業利益111億1千7百万円(前年同期比188.6%増)、税引前利益120億2千2百万円(前年同期比143.7%増)、当期利益83億7千9百万円(前年同期比411.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益74億4千8百万円(前年同期比415.9%増)となりました。
セグメントの業績を示すと次のとおりであります。
(日本)
売上収益は顧客からの受注増及び海外からの収入増に加え為替変動により増収、利益面においては増収効果に加え費用削減施策の効果等により、売上収益420億6千3百万円(前年同期比16.1%増)、営業利益10億7百万円(前年同期は営業損失17億7千3百万円)となりました。
(北米)
売上収益は顧客からの受注増に加え為替変動により増収、利益面においては増収効果に加え原材料や輸送費高騰分の価格転嫁等により、売上収益652億1千3百万円(前年同期比13.4%増)、営業利益16億3千7百万円(前年同期比470.4%増)となりました。
(アジア)
主にインドネシアにおいて自動車部品二輪が好調に推移したことにより、売上収益358億9千6百万円(前年同期比24.1%増)、営業利益33億1千9百万円(前年同期比151.5%増)となりました。
(中国)
製品に含まれる貴金属の価格下落や顧客からの受注減の影響により減収したものの、利益面においては費用削減施策の効果等により、売上収益883億7千3百万円(前年同期比17.7%減)、営業利益49億8千2百万円(前年同期比23.4%増)となりました。
(その他)
顧客からの受注増や工場移転に伴う売却益の発生により、売上収益15億4百万円(前年同期比33.6%増)、営業利益3億9千5百万円(前年同期比172.8%増)となりました。
(注) 上記に記載しているセグメント別の売上収益は、外部顧客への売上収益とセグメント間の内部売上収益の合計であります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況」に記載しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、受注高及び受注残高に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況」に記載しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価額によっております。
2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況に記載しております。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産につきましては、主に現金及び現金同等物の増加はありましたが、営業債権及びその他の債権や有形固定資産の減少により、前連結会計年度末に比べ140億2千2百万円減少し、1,856億1千1百万円となりました。
負債につきましては、主に営業債務及びその他の債務や借入金及びその他の流動負債が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ264億2千2百万円減少し、757億9千1百万円となりました。
資本につきましては、利益剰余金やその他の資本の構成要素の増加により、前連結会計年度末に比べ123億9千9百万円増加し、1,098億2千万円となりました。
(4) キャッシュ・フローの状況
①資金需要の動向
当社グループの財務戦略の基本的な考え方は、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを基本方針としております。
強固な財務体質の維持に関しては、営業キャッシュ・フローによる十分な債務償還能力を前提に厳格な財務規律の下で負債の活用も進めることにより、資本コストの低減及び資本効率の向上に努めて参ります。
当社グループの2024年3月期の資本コストは、加重平均資本コスト(WACC)で算出すると4.6%であります。今後も、利益の向上に努め資本コストを上回る高い付加価値を生み出し、企業価値の向上を目指します。
収益計画の基本的な方針については、事業環境の変化に対し、部門及び案件ごとの正確な収益分析を行い、主幹部品の収益性の向上、事業の選択と集中で事業性の向上を図り、利益を確保することとしております。
当社グループとしての、利益配分の基本方針としては、「成長投資への支出」「株主還元の充実」「有利子負債の返済」をバランスよく配分することを目標としております。
成長投資への支出としては利益成長への資本活用として、新機種投資、次世代製品投資、改善合理化、開発投資及びモーター事業拡大、販路拡大に向けた投資を行い収益拡大を図るとともに、将来に向けた人的資本投資を行って参ります。
株主還元の充実としては安定的及び持続的な配当額の向上を基本方針とし株主還元の充実を図って参ります。
有利子負債の返済については、事業活動により得られた資金のうち、投資と株主還元を差し引いたフリーキャッシュフローにより有利子負債の返済を進め、無借金経営を目指して参ります。
②資金調達の方法
当社グループは事業活動維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。
設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、安定的な資金調達手段としては、金融機関からの借入等を一部活用しております。
また、緊急時の対応として国内金融機関において、アンコミットメントラインを設定しており、柔軟な対応ができる流動性を確保しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、469億2千5百万円(前年同期末比45.0%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は223億5千万円(前連結会計年度比450.1%増)となりました。これは主に税引前利益や減価償却費及び償却費、営業債権及びその他の債権の減少額による収入が、営業債務及びその他の債務の減少額や預り金の減少及び法人所得税等の支払額による支出を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は31億5百万円(前連結会計年度比10.4%増)となりました。これは主に新機種投資等に伴う有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は66億3千3百万円(前連結会計年度比13.6%減)となりました。これは主に借入金の返済や配当金の支払によるものであります。
4.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、地球環境を最優先に配慮した豊かなクルマ社会の創造を目指して、世界的な視野に立ち広範囲な顧客ニーズに応え、常にお客様に満足して頂ける魅力ある商品を、的確かつタイミング良く提供することを基本方針としております。
現在当社は、栃木開発センターが主体となり、日本を含めた世界各拠点で生産する製品の研究開発及び生産技術開発に関する活動を展開しております。北米では連結子会社であるカーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドが主体となり、主に北米市場向け製品の研究開発を行っております。当連結会計年度における研究開発費は
当連結会計年度における報告セグメントごとの研究目的、課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
当連結会計年度におきましては、日本を含めた世界各拠点で生産する製品のうち、主に「自動車部品四輪」(排気系部品、熱マネジメント系部品、駆動系部品、モーター系部品)及び「自動車部品二輪」に関する研究開発及び生産技術開発に関する活動を展開しております。なお、日本における研究開発費は
(自動車部品四輪)
排気系部品は、排気ガス浄化性能、燃費、静粛性向上等の環境対応技術をより進化させ、生産性向上と併せ製品競争力を高める排気システムの研究開発、生産技術開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、キャタリティックコンバーターでは「ホンダ N-BOX」用、及び「ホンダ VEZEL」用の開発を完了し国内の三重製作所にて生産開始、「スズキ ジムニーシエラ」用の開発を完了してインドのユタカ・オートパーツ・インディア・プライベート・リミテッドにて生産を開始しました。排気サイレンサーについても「ホンダ CR-V」用の開発を完了して中国の佛山市豊富汽配有限公司、武漢金豊汽配有限公司、及びタイのワイエス・テック(タイランド)カンパニーリミテッドにて生産開始、「猛士汽車科技公司 猛士917」用の開発を完了して中国の武漢金豊汽配有限公司にて生産を開始しました。
熱マネジメント系部品は、燃費性能、環境技術を高める研究開発、生産技術開発を行っております。
駆動系部品は、さらなる小型軽量化、燃費向上及び生産性向上など製品競争力を高める研究開発、生産技術開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、「スズキ エブリイ」用のドライブプレートの開発を完了し、国内子会社のスミレックスにて生産を開始しました。
モーター系部品は、電動化が進む次世代の自動車に向けて、高性能モーター部品の研究開発・生産技術開発を行っております。
(自動車部品二輪)
自動車部品二輪事業の主要部品であるブレーキディスクは、軽量化、高性能化技術に加え機能進化や生産性向上など製品競争力を高める研究開発、生産技術開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、「ホンダ CBR600RR」用のFRディスクの開発を完了し、国内子会社のスミレックスにて量産を開始しました。
その他、ソリッドディスクの開発を完了し、インドネシアのピー・ティー・ユタカ・マニファクチャリング・インドネシア、インドのユタカ・オートパーツ・インディア・プライベート・リミテッドにて合計3機種の生産を開始しました。
当連結会計年度におきましては、主に北米市場向け製品のうち、「自動車部品四輪」(排気系部品)に関する研究開発を行っております。なお、北米における研究開発費は
(自動車部品四輪)
排気系部品は、カーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドの研究開発部門において、排気ガス浄化性能、燃費、静粛性向上等の環境対応技術をより進化させ、生産性向上と併せ製品競争力を高める排気システムの研究開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、北米生産の「ホンダ Ridgeline」用のキャタリティックコンバーター及び排気サイレンサーの開発を完了し、カーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドにて量産を開始しました。