第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の連結子会社)が判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは基本理念の「人間尊重」に基づき、「私たちは、世界的視野に立ち、豊かな創造力で、常にお客様に満足して頂ける魅力ある商品を供給することに全力を尽くす」という社是を実践することにより、社会に貢献して参ります。

経営戦略(経営目標)を達成するうえで、2030年ビジョンとして「独自技術を強化拡大し、新しい時代に期待される企業となる。」を掲げ、3つの方向性を定め推進して参ります。

1.Yutaka製品を世界のお客様に広め、地球環境に貢献する。

2.電動化時代に向けて、新しい価値を生み出す商品を創造する。

3.地域を超えて英知を結集し、グループの総合力を発揮する。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループをとりまく環境は近年、目まぐるしく変化しております。業界全体としては、「主要市場での自動車販売成長率の鈍化」や「自動車メーカー系列を超えた提携拡大」が見られます。また、グローバルに目を向けると、「脱炭素社会に向けた自動車電動化へのシフト」の方向性は確実視される一方、ハイブリット車や合成燃料車などの一部の内燃機関車の共存の可能性も示唆されるなど地域毎に多様性を増してきています。

今後も当社グループをとりまく環境は厳しく、先行きの見通しが困難であると認識し、以下の通り、中・長期コンセプトを見直し、あらゆる環境変化に対応すべく施策を加速展開して参ります。

 


第15次中期事業計画(2023年4月~2026年3月)に おいては、「排気/制動部品・電動車部品を事業の柱とし、環境・社会に貢献する」を経営戦略に掲げ、電動化の基盤確立と新価値商品の仕込みを実施することで新たな事業の柱の構築に注力して参ります。また、事業効率の追求により足元の事業の柱である既存排気/制動部品事業の収益を長期的に極大化することで継続的成長を目指して参ります。そのような中で全拠点の黒字化・新技術/製品の仕込み・新たな販路拡大を実現すべく以下の戦略テーマに取り組んできました。

1.「電動化時代をリードできる柱の創造」

2030年を見据え、新たな事業の「柱」となる製品を創造し事業転換を図ります。さらに電動化時代へ向けた新しい市場の開拓、電動化時代を支える各本部の役割/戦略を明確にしていきます。

2.「新価値商品の創造」

新時代へ向けた新商品を創造し、事業構築を図ります。

全従業員で新価値商品へ取り組み、当社グループの風土改革を行います。

さらにスピード感を持った新価値商品化フローの構築と運用を目指していきます。

3.「主幹部品の収益性追求と販路拡大」

将来の事業転換に向けた主幹部品の収益最大化を図ります。

環境変化に強いボトム体質を構築し、日本/海外地域と連携した販路拡大に取り組みます。

4.「デジタルを基軸とした運営基盤強化」

将来を見据えたデジタル化へのロードマップの構築を図り、グループ全体で管理業務のスリム化を目指していきます。デジタルツールを活用した業務改革の推進、データ管理と適切な教育/運営/活用を行います。

 

5.「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」

社会から信頼される企業であり続ける為にサステナビリティ活動の浸透を図ります。SDGs対応の明確化と発信、低炭素グローバルサプライチェーンの具現化に向けて取り組みます。また、人的資本の拡充に向け、ダイバーシティ&インクルージョンを加速させることにより、女性が働きやすい職場環境の充実に努めると共に、性別や国籍を問わない採用活動や風土づくりを拡大させていきます。

 

その中でも、以下3点を個別優先課題と認識し、取り組んで参りました。

①.主幹部品とモーター部品の販路拡大

②.海外子会社の体質強化と収益性の向上

③.SDGs対応に向けた取り組み強化

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは適正な利益及び財務状況を確保すべく事業を行っておりますので、営業利益額をその重要な経営指標と位置付けております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティに関する考え方及び取組

当社グループは「Clean for the Future」をカンパニースローガンに掲げ、将来に亘って働く場を取り巻く社会問題を解決するため、取締役会においてサステナビリティ基本方針を以下の通り定めております

・Yutakaフィロソフィーに基づいた従業員一人ひとりの行動を通して、
「社会から信頼され、存在を期待される企業になる」を目指しています。

・Yutakaグループを取り巻くすべての人々(ステークホルダー)の要望や期待に応えるよう、日々の事業活動を通じてCSR(企業の社会的責任)の取り組みを推進し、社会と企業の持続的な発展を目指します。

・国際ルールや各地域・国の法令順守に加え、現地の歴史、文化、慣習などを尊重した取り組みができるよう体制を構築していきます。

1.ガバナンス

当社グループは、全ての事業領域において地球環境を保全するべく、環境活動の指針となる「環境宣言」と具体的な「基本方針」のもと、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、グループ全体の環境マネジメントサイクルに拠点ごとの環境マネジメントサイクルを連動させることで全社員参加の環境活動を展開しています。また、3ヶ年毎の「中期環境計画」を策定し、重要な課題の設定、モニタリング、対応策の推進に取り組んでいます。

2.戦略

世界規模で大きな問題となっている気候変動に関連し、自動車メーカーを中心に電動化が加速し、カーボンニュートラルに向けた取り組み姿勢が大きな関心事項となっております。このような中で主要顧客である本田技研工業株式会社が2040年電動化100%を宣言いたしました。当社グループとしてはその取り組みに追従し受注機会を確保するとともに社会から信頼される企業を目指していきます。

中期事業計画における戦略テーマの中に「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」、「サステナビリティ活動の浸透」という重点テーマを定め、中長期CO2排出量削減目標を策定し、低炭素な資源活用・製造法や輸送効率の改善を進めております。また、ロス・ムダ・資源の削減として設備の不要時の停止や業務効率のアップ、仕損削減に取り組んでいます。製品開発領域としては環境新製品(モーター事業)にも取り組んでいます。それらの活動内容は定期的にモニタリングし、PDCAを着実に回すことにより、目標の達成に歩みを進めていきます。

3.リスク管理

当社グループは、「Yutakaグローバルリスクマネジメント規程」を制定し、従業員及び会社に対する被害の最小化とステークホルダーへの影響を最小限に抑え企業活動の発展や経営の安定化に繋がる活動をしています。リスクマネジメントオフィサー監視・監督のもと、企業活動、ステークホルダーに重大な被害・損失を与え、企業経営に影響をもたらす可能性があるものと定義したリスクを分類し、「発生頻度」・「事業への影響度」を評価基準にその重要性を定期的に評価し、その評価結果をもとに各本部長が「本部重点リスク」を特定しています。また、重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論を行っています。リスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で共有し、実施内容については経営会議で適宜報告されています

 

4.指標及び目標

当社では、気候変動への対応として以下の中長期CO2排出量目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んで取り組みを進めています。2024年は、各拠点にて省エネ施策の積極的な実行に加え、当社初となるオンサイトPPAを活用した太陽光発電設備の稼働を本社・豊製作所にて開始しました。年度累計で約350Mwhを発電、約150t-CO2を削減しました。2025年度以降は三重製作所、栃木開発センターでの設置を計画しています。またカーボンフリー電気の調達を2025年4月より開始しました。省エネ施策継続とあわせることで、カーボンニュートラル達成に向け、さらなるCO2削減への取り組みを進めて参ります。

<中長期CO2排出量目標>

2030年目標 Scope1・2 46%削減(2019年比)

2050年目標 Scope1・2 ネット・ゼロ(カーボンニュートラル)

<CO2排出量実績(単位:t-CO2)>

 

Scope1

Scope2

合計

2019年(基準年)

1,012

10,182

11,194

2022年

791

8,430

9,221

2023年

643

8,216

8,859

2024年

577

7,954

8,531

 

 

 

(2) 人的資本に関する取組

1.戦略

当社では、新しい時代に「期待される企業」となるための最大の資産は「人財」であるという考えのもと、2023年11月にありたい人財像を「“活き活き”と日々行動し、チャレンジを楽しむ人財」と新たに定義しました。この人財像には、「夢/志を持ち、自らの持つ専門性/特性を活かして、組織に貢献する」、「あらゆることに興味を持ち、学び続ける」等、多くの意味が込められており、従業員一人ひとりが自己実現を果たし、自己成長を達成することを目指しています。当社では、このありたい人財像をベースに、人財の能力を継続的かつ最大限に引き出すための取り組みを強力に進めて参ります。

2024年度で実施した具体的なアクションとしては、「キャリアパス制度の導入」、「多様性を尊重し、時代に合った労働条件への変更」、「新たな教育制度の導入」、「従業員とのオフサイトミーティングの場設定による職場・個人の課題共有と改善」等があります。これら人財マネジメントシステム全般に係る取り組みを通じ、従業員の働く満足度向上、エンゲージメント強化に努めることで、組織全体の成長と競争力の強化へも繋がるものと考えております。

また、ありたい人財像実現のための根底となるものが、従業員の健康です。2022年11月に「Yutaka健康宣言」を制定し、運動、食事や禁煙といった様々な健康づくり施策を展開しています。さらにメンタルヘルス対策として、相談窓口の設置や復職支援プログラムの運用、職場環境改善を強化することで、一人ひとりが活き活きと働ける環境整備に努めております。

今後もこれらの取り組みの深化により、人財の側面からも経営戦略の実現に向け推進して参ります。

2.指標及び目標

人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

 

<中期人財戦略目標及び実績>

 

女性従業員採用率

従業員活性度測定※
(5段階評価)

 

目標

実績

目標

実績

38期末

20%以上

5.9%

3.50以上

39期末

20%以上

14.3%

3.50以上

3.22

40期末(第15次中期末)

20%以上

-%

3.50以上

 

 

※「従業員活性度測定」とは、Yutakaで勤務する全ての直雇用従業員を対象に、働きがいの創出や職場での働きやすさの改善に繋げることを目的に「自由闊達な職場」「やりがいのある仕事」「頑張れば報われる環境がある」「Yutakaで働くことに誇りを持っている」「マネジメントを信頼できる」「働きやすい環境がある」の6つの視点からの従業員の意識を測定する、39期より毎年実施している調査です。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は以下の通りです。これらのリスクは予測不可能な不確実性を内包しており、当社グループの将来の事業、業績並びに財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではこれらのリスクの回避、あるいはその影響の低減の為の適切なリスク管理に努めておりますが、これらすべてのリスクを完全に回避するものではありません。なお、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、当社グループが将来にわたり影響を受けうるリスクはこれらに限定されるものではありません。

 

(1) 市場環境の変化

当社グループは日本、北米、南米、中国、アジア地域を含む世界各国・地域で広範に事業を展開しており、これらの国々における景気後退や消費者の価値観の変化等に伴う四輪車、二輪車等の需要の減少や電気自動車の台頭による内燃機関車の減少が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの売上はその多くを本田技研工業株式会社グループに依存しており、その販売状況の変化が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、市場環境の変化を適宜把握し、柔軟に対応して参ります。さらに、顧客の拡大によりリスクの軽減に努めて参ります。

 

(2) 製品の価格変動

当社グループは常に独自の技術を用い、高い付加価値や世界トップレベルの競争力を持つ製品の開発と生産に努めておりますが、国内外の市場において多くのメーカーとの熾烈な競争に晒されており、強い価格変動圧力等が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替の変動

当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で生産・販売活動等の事業を行い、加えて複数国の拠点間で四輪車、二輪車等の部品を輸出入している為、為替レートの変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、外貨建取引において、当社グループが販売する部品及び製品の価格設定や購入する原材料の為替レート変動に起因する価格変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外子会社の資産・負債等が現地通貨から日本円に換算され連結財務諸表に反映される過程において、為替レートの変動が当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、為替予約等により為替相場の変動リスク軽減に努めております。

 

(4) 貿易リスク

当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で生産・販売活動等の事業を展開し、加えて複数国の拠点間で四輪車、二輪車等の部品を輸出入している為、関税率の変動、新たな輸出入規制、規制対象の変更等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、現地調達化の促進や調達方法の見直し等の検討により、リスク軽減に努めております。

 

(5) 金利の変動

当社グループは財務に関わり発生が見込まれる様々なリスクの回避に努めておりますが、金利の変動は支払利息や受取利息あるいは金融資産及び負債の価値等の変動に繋がり、当社グループの業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、当社としてはグループ全体の財政状態を把握し、長期借入金に対して支払利息の固定化等の適切な対応をすることによりリスクの軽減に努めております。

 

(6) 法規制リスク

当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域に生産拠点を有している為、各国や地域が制定する環境保護、四輪車、二輪車等、工場や生産工程等に関わる法規制等の変化や当局との見解の相違等が発生した場合、関連法規制や訴訟に関する様々な調査や法的手続き等を受ける可能性があります。その結果として当社グループが意図しない不利な判断がなされた場合、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、当社グループとしては地域ごとの、関連法規制や訴訟に関する様々な調査や法的手続き等を把握する体制を整備することにより、リスクの軽減に努めております。

 

(7) 知的財産の保護

当社グループは製造する製品に関連する広範な知的財産権を有しており、これは当社グループ事業の成長にとって重要なものであります。しかしながら、これらの知的財産権が広範囲にわたって違法に侵害されることにより、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、他社により当社グループの知的財産権が侵害されないよう体制整備を行い、製品・技術の開発に当たっております。

 

(8) 特定の原材料及び部品への依存

当社グループは、多数の外部事業者から原材料及び部品を購入しておりますが、購入している原材料及び部品の一部は、その供給を特定の事業者に依存している場合があります。これらの部品について、何らかの原因にて外部事業者から安定的に、あるいは効率的かつ競争力あるコストでの供給が受けられない場合、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、調達体制の整備により、リスク軽減に努めております。

 

(9)他社との業務提携・合弁

当社グループは、一層の競争力強化を狙い、あるいは事業を展開している国の要件に従い、企業買収や他社事業者との業務提携等を実施することがあります。事業の状況によっては業務提携等を解消することもあり、この様な場合当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)戦争・テロ・政情不安・ストライキ、自然災害等の影響

当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域で事業を展開している為、いずれかの国及び地域において戦争、テロ、政情不安、ストライキ、大規模な自然災害、事故、感染症等の事象が発生した場合、原材料や部品の購入、生産活動及び物流などの遅延や停止が生じ、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、従業員の安全確保を第一と考え、地域ごとの情報収集及び状況に応じた体制を整備することにより、リスクの軽減に努めております。

 

(11)情報セキュリティ

当社グループは事業展開を行うにあたり、情報通信システムを利用しています。これらは日々高度化・複雑化しており、当社としてもそのセキュリティや信頼性の向上の為、最大限の努力を行っておりますが、自然災害やテロ、コンピューターウイルスやハッキングなどの外部要因、人為的ミスや機器の不具合、故障等による内部要因などでシステムの停止や機密データの漏えい、重要データの消失、改ざんなどが発生し、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、当社グループでは、セキュリティのさらなる強化、データのバックアップ、システムのクラウド化を含め、不測の事態による事業停止からの早期復旧に関しての対策を講じております。また、基幹システム及びグループインフラの情報セキュリティに対する内部評価を実施し、リスクの軽減に努めております。

 

(12)品質・ブランドイメージ

当社グループはお客様と社会双方から存在を期待される企業であり続ける為に、当社グループが製造した製品の品質が人命に直結するものであるとの認識のもと、開発、生産をはじめとした当社グループが行う事業活動全てにおいて世界トップレベルの品質の追求をするため、品質管理体制の整備・運用を行っております。

しかしながら、予期せぬ重大な品質問題が発生する可能性は皆無ではなく、そうした重大な事態が発生した場合にリコールなどの対応が必要となる場合があります。この様な時、当社グループのブランドイメージが失墜し、結果として当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、製品の不良等による万が一の重大なトラブルの発生に備え、賠償責任保険へ加入しリスクの低減を図っております。

 

(13)事業環境の変化

当社グループは日本をはじめとした世界各国・地域において、主要顧客である本田技研工業株式会社グループ各社との連携のもとに主要事業を展開している為、本田技研工業株式会社グループの生産体制等の変更が、当社グループの事業、業績並びに財務状況に大きく影響を及ぼす可能性があります。

その対応として、本田技研工業株式会社グループの生産体制等の変更・変化を適宜把握し、柔軟に対応して参ります。さらに、顧客の拡大によりリスクの軽減に努めて参ります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 経営成績の状況

第15次中期事業計画では、「電動化時代をリードできる柱の創造」「新価値商品の創造」「主幹部品の収益性追求と販路拡大」「デジタルを基軸とした経営基盤強化」「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」を戦略テーマとして設定し、グループ全体の事業基盤をさらに強固にすると共に、電動化を見据え新たな成長の創出を目指し事業を展開して参りました。

1.「電動化をリードできる柱の創造」

39期に中国に導入した積層パイロットラインに続いて日本の豊製作所にも積層パイロットラインを設置しました。また、栃木開発センターにステーターCOMP(巻線)のパイロットラインやモーター性能試験機の導入を行いました。電動化をリードする柱を創造し、あらゆる顧客ニーズに対応可能なオールラウンドプレーヤーを目指しモーター事業領域に積極的に投資を行って参りました

2.「新価値商品の創造」

新商品の事業化に向けたフローを構築し、商品化に向けた進捗管理高度化及びスピードアップを図って参りました。

39期の実績として前期にテストマーケティングを実施した作業アシスト装具「BELT POWER X」を上市し、販売を成約しました。前期上市した次世代モビリティ向け汎用フレームの「M-BASE」は幕張メッセで開催された「JAPAN MOBIRITY SHOW BIZWEEK 2024」に出展するなど販売促進を継続して参りました。また、弊社のコア技術である流体技術を活用した住宅向け「風力発熱システム」も産学での共同研究開発を継続しております。

3.「主幹部品の収益性追求と販路拡大」

各部品の戦略チームが中心となり各領域、各地域で立案した改善施策を確実に実行して参りました。主幹部品のライン最適化、生産拠点の品質体質の向上によるロスムダ削減などにより収益確保に向けた体質づくりを推進展開して参りました、主幹部品の足固めを図ることができました。また、弊社グループの強みである技術力を生かし、高品質低価格製品の開発により海外地域を中心に新規顧客獲得提案を強化して参りました。

4.「デジタルを基軸とした運営基盤強化」

サイバーセキュリティ対策について38期に全拠点で導入した対策ソフトによる24時間/365日の監視体制で運用安定化を維持継続して参りました。

管理領域ではマニュアル作業のデジタル化による効率改善でスリム化を実施し、製造領域では以前より進めておりますIoT化展開により、設備稼働状況自動監視やトレサビリティデータ管理自動化で最適生産活動ならびに顧客への搬入保証の精度アップを図って参りました。

5.「SDGs/Carbon Neutralへの挑戦」

気候変動への対応として中長期CO2排出量削減目標を策定し、具体的な行動計画に落とし込んでの省エネ施策等取り組みを進めております。世界での脱炭素社会に向けた取り組みがさらに加速する状況を認識し、当社グループとしてカーボンニュートラル達成に向けた対応をより一層強化しております。

また人的資本の拡充に向けては、15次中期初年度に設定しましたありたい人財像「“活き活き”と日々行動し、チャレンジを楽しむ人財」をベースに、人財の能力を継続的かつ最大限に引き出すための取り組みを継続的に進めております。引き続き職場環境改善と併せた取り組みにより、一人ひとりが活き活きと働ける職場環境を通じた経営戦略の実現に向け推進して参ります。

 

 

また、個別優先課題への対応状況としては、

①.主幹部品とモーター部品の販路拡大

各地域においてターゲットとなる顧客を定めニーズや困りごとを把握して営業推進を実施しました。主幹部品については、4輪排気サイレンサー分野において38期から取引を開始した中国の新規顧客向けの派生機種を受注しました。また、インドで2輪ブレーキディスクを複数の新規顧客から受注しました。モーター部品についても前期に積層パイロットラインを導入した中国で新規顧客からPHEV向け積層コア製品を受注しました。引き続き、中国、アジア地域や北米と全方位で営業活動を強化し受注拡大に注力致します。

②.海外子会社の体質強化と収益性の向上

戦略チームによる各領域の戦略の見直し、課題抽出及び改善施策の着実な実行により生産体質強化を継続して参りました。各海外子会社の体質強化と収益性向上に向け地域ごとの戦略を立案し、中国及び北米地域は4輪排気部品、モーター部品を主軸に、アジア地域は2輪部品を主軸にリソースの最適化を推進して参ります。また、全地域共通戦略として高効率ラインへの投資を実施します。その中で中国地域では無人化ラインの企画と段取りの着手を行いました。

また、当社は、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得の見込み及び利益計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しておりますが、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合は、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。この会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積を伴う判断」に記載しております。

今後においては、引き続き施策を確実に実行し、収益性向上に向けた取り組みを推進して参ります。

③.SDGsに向けた取り組み強化

Yutakaフィロソフィーに基づき、「豊かな社会づくりへの貢献」や「新しい技術とアイデアでチャレンジする」など持続可能な社会の実現に貢献する企業行動を実践すると共にSDGsに賛同し、「事業活動を通じた社会課題の解決」とそれを支える「経営基盤の強化」のため、設定した優先課題(マテリアリティ)に基づき活動を展開しています。

昨年刷新したホームページや公式SNSを活用し、情報発信のさらなる充実とステークホルダーとのコミュニケーション強化にも努めております。

また、足元の環境変化に対応すべく、40期においても引き続き以下3点を個別優先課題として取り組んで参ります。

①.主幹部品とモーター部品の販路拡大

②.海外子会社の体質強化と収益性の向上

③.SDGs対応に向けた取り組み強化

 

当連結会計年度の売上収益は、1,792億1千3百万円(前年同期比17.1%減)、営業利益63億4千7百万円(前年同期比42.9%減)、税引前利益67億8千9百万円(前年同期比43.5%減)、当期利益50億4千3百万円(前年同期比39.8%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益45億4千8百万円(前年同期比38.9%減)となりました。

セグメントの業績を示すと次のとおりであります。

(日本)

売上収益は主に顧客からの受注増により増加、利益面においては、増収効果に加え、原材料や輸送費高騰分の価格転嫁や費用削減施策の効果等により増加し、売上収益423億3千8百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益13億6千9百万円(前年同期比35.9%増)となりました。

(北米)

売上収益は顧客からの受注増に加え為替変動により増加、利益面においては、増収効果はあったものの、労務費の賃上げ影響や製品保証引当金の計上等により減少し、売上収益704億8百万円(前年同期比8.0%増)、営業利益11億7千7百万円(前年同期比28.1%減)となりました。

(アジア)

売上収益は顧客からの受注減により減少、利益面においては、減収影響に加え、労務費の賃上げ影響等により減少し、売上収益348億6千1百万円(前年同期比2.9%減)、営業利益25億9千3百万円(前年同期比21.9%減)となりました。

(中国)

売上収益は製品に含まれる貴金属の価格下落や顧客からの大幅な受注減により減少、利益面においては、減収影響に加え、急激な生産変化への対応費用や早期退職の募集に伴う経済補償金(退職金に相当するもの)の計上等により減少し、売上収益455億8千7百万円(前年同期比48.4%減)、営業利益8億8千5百万円(前年同期比82.2%減)となりました。

(その他)

売上収益は顧客からの受注減により減少、利益面においては、前期での工場移転に伴う売却益の計上がなくなったことにより減少し、売上収益14億4千5百万円(前年同期比3.9%減)、営業利益2億3千7百万円(前年同期比40.0%減)となりました。

(注) 上記に記載しているセグメント別の売上収益は、外部顧客への売上収益とセグメント間の内部売上収益の合計であります。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

  1.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

38,925

23.5

北米

68,738

7.9

アジア

32,920

△4.3

中国

41,883

△50.5

その他

1,505

△4.1

合計

183,971

△14.7

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況」に記載しております。

 

  2.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期末比(%)

日本

31,259

1.8

2,321

△6.1

北米

69,929

1.6

8,033

△0.6

アジア

32,661

△4.1

2,453

1.4

中国

40,609

△51.7

2,744

△53.4

その他

1,468

△2.6

119

24.7

合計

175,925

△19.7

15,671

△17.3

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.当連結会計年度において、受注高及び受注残高に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況」に記載しております。

 

 

  3.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

31,410

4.0

北米

69,979

8.1

アジア

32,628

△2.1

中国

43,753

△49.4

その他

1,444

△3.7

合計

179,213

△17.1

 

(注) 1.金額は販売価額によっております。 

2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績の状況に記載しております。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ・エル・エル・シー

27,139

12.5

47,344

26.4

東風本田汽車有限公司

67,306

31.1

29,619

16.5

本田技研工業株式会社

26,386

12.2

26,645

14.9

ホンダカナダ・インコーポレーテッド

22,451

10.4

8,237

4.6

 

 

(3) 財政状態の状況

当連結会計年度末の資産につきましては、主に現金及び現金同等物の減少の他、営業債権及びその他の債権や有形固定資産の減少により、前連結会計年度末に比べ172億4百万円減少し、1,684億8百万円となりました。

負債につきましては、主に営業債務及びその他の債務の減少の他、借入金及びその他の流動負債が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ189億3千4百万円減少し、568億5千8百万円となりました。

資本につきましては、主に利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ17億3千万円増加し、1,115億5千万円となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

①.資金需要の動向

当社グループの財務戦略の基本的な考え方は、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを基本方針としております。

強固な財務体質の維持に関しては、営業キャッシュ・フローによる十分な債務償還能力を前提に厳格な財務規律の下で負債の活用も進めることにより、資本コストの低減及び資本効率の向上に努めて参ります。

収益計画の基本的な方針については、事業環境の変化に対し、部門及び案件ごとの正確な収益分析を行い、主幹部品の収益性の向上、事業の選択と集中で事業性の向上を図り、利益を確保することとしております。

当社グループとしての、利益配分の基本方針としては、「成長投資への支出」「株主還元の充実」をバランスよく配分することを目標としております。

成長投資への支出としては利益成長への資本活用として、新機種投資、次世代製品投資、改善合理化、開発投資及びモーター事業拡大、販路拡大に向けた投資を行い収益拡大を図るとともに、将来に向けた人的資本投資を行って参ります。

株主還元の充実としては安定的及び持続的な配当額の向上を基本方針とし株主還元の充実を図って参ります。

②.資金調達の方法

当社グループは事業活動維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。

設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、安定的な資金調達手段としては、金融機関からの借入等を一部活用しております。

また、緊急時の対応として国内金融機関において、アンコミットメントラインを設定しており、柔軟な対応ができる流動性を確保しております。

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、407億4千5百万円(前年同期末比13.2%減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は38億2千2百万円(前連結会計年度比82.9%減)となりました。これは主に税引前利益や減価償却費及び償却費、営業債権及びその他の債権の減少額による収入が、営業債務及びその他の債務の減少額や預り金の減少及び法人所得税等の支払額による支出を上回ったことによるものであります

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は34億7千8百万円(前連結会計年度比12.0%増)となりました。これは主に新機種投資等に伴う有形固定資産の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は64億8千8百万円(前連結会計年度比2.2%減)となりました。これは主に借入金の返済や配当金の支払によるものであります

 

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、地球環境を最優先に配慮した豊かなクルマ社会の創造を目指して、世界的な視野に立ち広範囲な顧客ニーズに応え、常にお客様に満足して頂ける魅力ある商品を、的確かつタイミング良く提供することを基本方針としております。

現在当社は、栃木開発センターが主体となり、日本を含めた世界各拠点で生産する製品の研究開発及び生産技術開発に関する活動を展開しております。北米では連結子会社であるカーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドが主体となり、主に北米市場向け製品の研究開発を行っております。当連結会計年度における研究開発費は2,587百万円となっております。

当連結会計年度における報告セグメントごとの研究目的、課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1) 日本

当連結会計年度におきましては、日本を含めた世界各拠点で生産する製品のうち、主に「自動車部品四輪」(排気系部品、熱マネジメント系部品、駆動系部品、モーター系部品)及び「自動車部品二輪」に関する研究開発及び生産技術開発に関する活動を展開しております。なお、日本における研究開発費は2,501百万円であります。

(自動車部品四輪)

排気系部品は、排気ガス浄化性能、燃費、静粛性向上等の環境対応技術をより進化させ、生産性向上と併せ製品競争力を高める排気システムの研究開発、生産技術開発を行っております。

当連結会計年度の主な成果としては、キャタリティックコンバーターでは「ホンダ FREED」用の開発を完了し国内の嵐山製作所にて生産開始しました。排気サイレンサーについても「ホンダ アメイズ」用の開発を完了してインドのユタカ・オートパーツ・インディア・プライベート・リミテッドにて生産開始、「アキュラ ADX」用の開発を完了してメキシコのユタカ・テクノロジーズ・デ・メキシコ・エス・エー・デ・シー・ブイにて生産を開始しました。

熱マネジメント系部品は、燃費性能、環境技術を高める研究開発、生産技術開発を行っております。

モーター系部品は、電動化が進む次世代の自動車に向けて、高性能モーター部品の研究開発・生産技術開発を行っております。

(自動車部品二輪)

自動車部品二輪事業の主要部品であるブレーキディスクは、軽量化、高性能化技術に加え機能進化や生産性向上など製品競争力を高める研究開発、生産技術開発を行っております。

当連結会計年度の主な成果としては、インドのユタカ・オートパーツ・インディア・プライベート・リミテッドにて新規顧客4社から受注を獲得した4機種に対し、量産に向けて開発を推進しています。

 

(2) 北米

当連結会計年度におきましては、主に北米市場向け製品のうち、「自動車部品四輪」(排気系部品)に関する研究開発を行っております。なお、北米における研究開発費は86百万円であります。

(自動車部品四輪)

排気系部品は、カーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドの研究開発部門において、排気ガス浄化性能、燃費、静粛性向上等の環境対応技術をより進化させ、生産性向上と併せ製品競争力を高める排気システムの研究開発を行っております。

当連結会計年度の主な成果としては、北米生産の「ホンダ MDX」用の排気サイレンサーの開発を完了し、カーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドにて量産を開始しました。