第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

当社グループは、Origin(創業の精神)、Purpose(使命)、Way(行動指針)で構成されるムサシフィロソフィーを基軸に事業を運営しております。

 

ムサシフィロソフィー

 

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激変する事業環境の中、当社は2023年に創業85周年の節目を迎えました。長い歴史の中で培った挑戦のDNAを受け継ぎ、長期ビジョン「Go Far Beyond! ~枠を壊し冒険へ出かけよう!~」を実現することで、新たな価値の創出と更なる成長を目指します。

 

・ムサシ100年ビジョン Go Far Beyond! ~枠を壊し冒険へ出かけよう!~

 

-人:自らの限界を壊し、ワクワクする仕事をしよう!

-しくみ:組織・風土の壁を壊し、常に変革を起こそう!

-事業:常識・既成概念を壊し、世界をあっと驚かせよう!

 

(2)中長期的な経営戦略

当社グループにおいては、ムサシ100年ビジョンの実現に向け、人・しくみ・事業の各視点で以下の方針を定め、既存事業(コア事業)の深化と、新規事業の創出による更なる成長を目指しています。

 

・人:ムサシフィロソフィーの体現、ビジョンへの挑戦

ムサシ100年ビジョンのグローバルでの実践に向けて、将来を担う、高いスキルを持ったプロ人財や、新しい働き方で価値を生み出す自律人財の育成を目指しています。

全ての活動の基軸であるムサシフィロソフィーについて、階層別の期待行動を具体化し、実践のための教育プログラムの整備やそれに連動した人事評価制度のしくみを導入することで、各個人が能力を高め、発揮し、活躍できる環境・企業文化づくりを進めてまいります。

 

・しくみ:Musashi DXの実現

デジタル技術を活用した業務の標準化、自動化、最適化により業務プロセスを高効率化し、さらにデジタル化されたプロセスの中で蓄積されるデータの利活用により、新たな価値の創出にも挑戦します。

また、デジタルトランスフォーメーション実現のため、進化したツールを使いこなし、価値を生み出すことができるデジタル人財の育成にも取り組んでいます。デジタル技術に対するリテラシー向上や、クラウドツールを活用した業務改善アプリの製作といった実践スキルを学ぶプログラムを整備し、新たな時代の成長基盤となるデジタル前提の企業文化を構築してまいります。

 

・事業:強いコア事業の確立、新規事業の創出

電動化の機会をとらえた、コア事業の拡大と収益性の向上に取り組みます。QCD+E(品質、コスト、デリバリー+環境)の観点で最適なものづくりを追求していくとともに、将来を担う新技術の仕込みや、オープンイノベーションによる新規事業の創出にも取り組みます。

当社グループの得意技術を活かした電動車向け商品の競争力強化・ラインナップの拡充に加え、既存商品の稼ぐ力を継続的に高めることで、電動化時代のキーデバイスサプライヤーとしての成長を目指します。また新規事業領域においては、主要4分野(Mobility、Energy、Industry、Well-being)において、社会課題の解決に貢献できる事業の創出に取り組んでいます。

 

・Musashi GX(グリーン戦略の推進)

当社は、2021年5月にカーボンニュートラルの実現に向けた中長期目標を発表いたしました。当社が創業100周年を迎える2038年までに事業活動(*1)でのカーボンニュートラル(グリーンオペレーション100)、2050年までにバリューチェーン全体のカーボンニュートラルの実現を目指します。全ての事業活動を対象に、省エネ化や再生可能エネルギーの利用拡大などの取り組みを価値に変えるグリーン戦略を策定・実行してまいります。

製造工程においては、CO2の見える化と徹底的な省エネ化、再エネ活用を進め、CO2排出を抑えた低炭素商品の実現を目指しています。また、自動車のCO2排出低減に貢献できる技術・商品の開発や、一人ひとりの意識・行動を変えていくことによる事業活動全般における低炭素化を通じ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

(*1) GHGプロトコルのScope1,2を対象

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループでは、収益性の向上を経営上の重要課題の一つとして捉えています。競争力の高い商品開発や生産プロセスの効率化、財務規律の確保に向けた諸施策により、売上高に対する利益率や資本効率性(ROA・ROE・ROIC)を高め、長期的な企業価値向上を目指しています。このほか、自己資本比率や借入金依存度などの指標により財務の安全性や健全性にも配慮しております。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題等

自動車業界において、中国やヨーロッパ市場を中心に進んでいたBEV(電気自動車)の普及が踊り場を迎え、PHEV(プラグインハイブリッド車)/HEV(ハイブリッド車)等の需要の拡大を受け、完成車メーカーのEV化戦略に変化がみられる状況となっています。

このような事業環境の中、当社グループはICE(内燃機関車)向け、PHEV/HEV向け、BEV向け、どの領域においても競争力のある商品を提供し、“稼ぐ力”の最大化に取り組んでまいります。

また、新規事業領域においては1→10(事業の実現と拡大)フェーズの加速を図り、これまでに育んだ“芽”を“成果=事業の拡大”につなげるべく推進してまいります。

その代表例として、Energy Solution事業では、生成AIの急速な普及に伴うデータセンターの拡大に向けて、新たな蓄電ソリューションを提供してまいります。当社グループのハイブリッドスーパーキャパシタは、生成AI時代の電力消費削減、瞬停・停電防止に対するソリューションとなるキーデバイスです。

当社グループは次の中期計画を、“勝負の3年間”と定め、ムサシ100年ビジョン“Go Far Beyond!”の第2ステージと位置付けて、事業・しくみ・人のトランスフォーメーションに取り組んでまいります。

優先的に対処すべき課題は、以下のように考えております。

 

1.グローバルオペレーションの強化+マネジメント体質の向上による“稼ぐ力”の最大化

今後の成長につなげる原資を確実に確保すべく、既存のインフラを最大限に活用し、効率的なオペレーションができる生産体質を実現してまいります。

具体的にはデジタル技術を用い、生産状況等をモニタリングできる仕組みの構築を進め、得られたデータを基に管理部門と技術部門の連携により、高速でマネジメントのPDCAを回し、生産体質・品質の強化を実現します。

日本地域にて成果を上げているこの手法をグローバルに展開し、収益力を向上します。

 

2.EV時代をリードする事業構造への転換

ICE向け、PHEV/HEV向け、BEV向け、いずれの需要に対しても対応できる変化に強い事業構造を構築していきます。

デファレンシャルアッセンブリィのコンパクト化、減速ギヤ/シャフトの高精度/静音化、リンケージ&サスペンション部品の軽量化/低フリクション化などを通じ、顧客に選ばれる付加価値の高い商品を提供します。

また、より付加価値の高いモジュール部品となるギヤボックスユニットの提供も開始しております。

 

3.新規事業の1→10フェーズの加速

Our purpose(自社の使命)に掲げる「テクノロジーへの“情熱”とイノベーションを生み出す“知恵”をあわせて、人と環境が“調和”した豊かな地球社会の実現への貢献」に向けて、以下の事業を推進しています。

・e-Mobility事業:インド・アフリカ地域においてスタートアップとの協業により、自社開発e-Axleを搭載したEVスクーターの販売が開始されます。今後新興国向けに小型モビリティ向けe-Axle事業の拡大を進めます。

・Energy Solution事業:ハイブリッドスーパーキャパシタをコアに、事業拡大に取り組んでまいります。新たなマーケットとして、次世代データセンターや鉄道事業者向け電力システム等の事業開発を進めます。

・Smart Industry事業:AI外観自動検査機、無人搬送車を中心とした製造現場向け自動化ソリューションを展開しています。昨年譲受されたS-CART事業を加え、事業の拡大を進めています。

・植物バイオ事業:最先端のバイオテクノロジーを駆使した研究開発により、植物の持つ機能性を活かしたヘルスケア商品を提供してまいります。

 

4.事業活動を通じたサステナビリティの実現

当社グループの事業活動は、ムサシフィロソフィーを基軸に、ムサシ100年ビジョン“Go Far Beyond!”の実現を目指して、事業活動そのものを通じて、社会課題の解決に貢献することで、持続的な成長とサステナブルな社会の実現に取り組みます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

~ムサシフィロソフィーを基軸とした事業展開を通じて、持続的な成長とサステナブルな社会の実現に貢献~

「ムサシフィロソフィー」は、当社グループで働く全ての従業員共通の価値観であり、企業活動や個々の行動の基軸として根付いています。当社グループは、事業活動を通じて持続的な成長とサステナブルな社会の実現に貢献することを使命としてOur Purposeを制定し、その実現に向かう旗印としてムサシ100年ビジョン「Go Far Beyond!」を掲げました。既存の枠組みを壊し、社会から存在を必要とされる「エッセンシャルカンパニー」となることを目指しています。

事業展開においては、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて認識した期待・要請や社会課題をVision, Purposeと照らし合わせ、当社グループが果たすべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。「コア事業の深掘り」と「新事業の創出」によって新たな価値を創出することでマテリアリティに取り組む。すなわち事業活動そのものを通じて社会課題の解決に貢献することが、当社グループのサステナビリティへの取組み姿勢です。

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(1)ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティを巡る社会課題に適切に取り組むべく、最高経営責任者を議長とする「サステナビリティ戦略会議」をコーポレート・ガバナンス体制の中に組み込みました(2021年12月~)。ステークホルダーとの対話などから認識した期待・要請や社会課題を当社グループのVision・Purposeと照らし合わせサステナビリティの実現にむけた議論を行っています。社会課題を経営に取り込むことで実効性をあげ、確実な達成を目指しています。

「サステナビリティ戦略会議」の運用につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照下さい。

(2)戦略

Musashi GX(グリーン戦略の推進)

当社グループは、気候変動への対応をサステナビリティ経営の重要な課題と捉えています。これまでの環境対応というレベルでは到底追いつかない状況である今、Purposeでも示しているように、「テクノロジーでイノベーションを起こし、人と環境が “調和”した豊かな地球社会の実現」に貢献するグリーン戦略を展開します。

グリーン戦略では、グリーンを価値にすべく3つのコンセプトに基づき活動を進めています。

「創る」商品・サービスを通じてCO2削減に貢献

「使う」徹底的な省エネや生産の効率化、自家発電の導入など再生可能エネルギーへの転換

「繫ぐ」地域・社会とのコミットメント

当社は、ステークホルダーとのコミュニケーションを図るため、2021年8月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言へ賛同を表明しております。

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 気候変動が事業に与える影響を把握し、リスクと機会を分析することでリスクの最小化や新たな価値の創出を図り事業の持続的な成長へ繋げる取り組みを推進しています。想定されるリスクと機会については、統合報告書2023 P46をご参照下さい。

 

人財育成の基本コンセプト

当社グループは2038年に向けて、「Go Far Beyond!」のビジョンを新たに掲げ、ムサシフィロソフィーを基軸に「地球と人が豊かに共存できる世界」を目指し、一人ひとりが冒険者となりまだ見ぬ未来へ歩み始めました。時代や事業環境の変化に適応し、イノベーションを生み出し続ける組織を実現するために、「自律的に変革に挑戦し、常に自己研鑽に励むことができる志の高い人財(=自律したプロ人財)」の育成を目指しています。

「自律したプロ人財」を新たな育成方針に掲げ、“主体性・自立性をベースに、個々人が能力を開発していく組織風土を醸成”し、“ムサシフィロソフィー、経営方針(ビジョン)を正しく理解し、展開することを担い得る人財の輩出”に向けて、教育体系の刷新等様々な取り組みを行っています。当社グループはフィロソフィーに掲げているOur Wayを人財育成の要であるコアコンピテンシーとして位置づける一方、ビジョンを達成するための重点育成テーマとして、イノベーションやデジタル領域での能力開発機会の提供やグローバルリーダーの育成に向けて積極的な取組みを進めています。

人財育成体系や「フィロソフィー・ビジョンの浸透」を始め「イノベーション人財育成」「デジタル人財育成」

などの取組みについては、統合報告書2023 P50,P51,P52をご参照下さい。

 

働き続けたいと思える環境の整備

当社グループは、Our Purposeとして「人と環境が調和した豊かな地球社会の実現へ貢献」することを定め、100年企業を目指した新たな挑戦を進めています。その実現には、従業員が健康でいきいき働くことができる環境の維持継続と主体的な健康増進を促す取組みが不可欠です。一人ひとりが個性を発揮し、挑戦を続け、新たな価値を創造できる職場環境づくりを目指し「健康経営」に積極的に取組んでいます。

 

(3)リスク管理

当社グループでは、企業活動・行動に関わる全てのリスクを対象とした全社横断的なリスクマネジメントを行う体制を整えており、サステナビリティ関連も含めたリスクの抽出・評価・モニタリングを行っています。抽出された重要リスクについては、「サステナビリティ戦略会議」での議論は勿論のこと、役員の中から選任されたリスクマネジメントオフィサーの監督のもと取組みを進めています。特に、気候変動関連リスク(物理的リスク)は、事業継続上の重大なリスクとして選定しており「BCP委員会」にて事業継続計画を策定し、教育や訓練を定期的に実施しています。変化の激しいリスクの観点については、社会課題を積極的に取入れ、ステークホルダーや社外取締役からの意見を反映し、リスクの最小化を図るよう努めています。

 

(4)指標及び目標

当社グループは、CO2排出量削減を目標として設定しています。定期的にモニタリングし対応策を講じています。グリーンオペレーション100(2038年(*1)までに事業活動(*2)でのカーボンニュートラル)を目標として設定し、この達成にむけてマイルストーン2030(2030年までに事業活動(*2)でのCO2排出量を50%削減)を設定しています。

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(*1)当社創業100周年(*2)GHGプロトコルのScope1,2を対象

 

人的資本(人材の多様性を含む)について、当社は、多様性を尊重し、性別、年齢、国籍、障がいなどにかかわらず、公正・公平な人材採用・登用の推進に取り組んでおります。今後は個社の企業運営に留まらず、地域全体/グループ全体を俯瞰し、リーダーシップを発揮できるグローバルリーダーの育成に向けた取り組みを強化していきます。現時点ではグローバルリーダーに求められる経営層コンピテンシーを育成目標として設定し、経営の中核となるグローバルキーポジションの後継者計画を策定し人財育成に取り組んでいます。

外国人・女性の管理職への登用につきましては、候補となる人材の全従業員に占める比率が小さいため、現時点では測定可能な数値目標を定めるには至っておりません。引き続き、母集団となる候補人材確保に向けた採用強化を通じて、母集団の形成を図るとともに、人材育成に取り組み、活動の推進を図っていきます。

なお、ムサシグループ全体では、日本以外にも世界13の国に仲間がおり、現地での登用や採用を通じて、多様な人材を確保しております。

管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループでは、経営におけるリスク、およびそのリスクが及ぼす影響を的確に把握し、事業への影響を回避・低減するリスクマネジメント活動を通じて、事業の競争力を維持し、継続的な企業価値の向上を目指しています。

経営におけるリスクは、国内/海外拠点共通の指標にて評価しており、結果を取締役会での報告/検証をすることで、リスクマネジメントの実効性を保証しています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、事業に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月21日)現在において当社グループが判断したものです。記載されたリスクが当社グループの全てではありません。

 

1)市場環境の変化

景気後退や経済危機により、4輪車、2輪車の需要が減少することで、その部品を製造している当社グループ商品の売上高が減少する可能性があります。

 

(対応策)

市場・顧客の需要を把握し、ニーズに合わせた柔軟な生産を行うことでリスクの影響を低減します。

 

2)電動化の進展による自動車業界の構造変化、競争の激化

自動車の電動化による必要部品点数の減少は当社グループの売上高に影響を与える可能性があります。

 

(対応策)

付加価値の高い商品の開発、製造を通じて、ICE向け、PHEV/HEV向け、BEV向け、いずれの需要に対しても対応できる変化に強い事業構造を構築しています。

 

3)地域的要因によるリスク

当社グループは世界各国で事業展開をしているため、政情不安、規制の強化等により、素材確保、生産活動、商品の供給が安定的に継続できず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(対応策)

海外子会社を通じて、情報の現地の情報収集に努めるとともに、グループ間での相互補完ができる生産体制、サプライチェーンの構築に努めています。

 

4)感染症によるリスク

新型コロナウイルスのように、突如とした感染症の拡大により、経済活動への制約が長期化した場合、事業活動が停滞を生じる可能性があります。

 

(対応策)

リスク発生時の体制、対応を文書に定め、被害の最小化と早期解決を図る仕組みを構築しております。

 

5)地震等の自然災害

大規模な地震等自然災害が発生した場合、生産活動に支障が生じ、復旧に要する費用等の発生が財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります

 

(対応策)

リスク発生時の体制、対応を文書に定め、被害の最小化と早期解決を図る仕組みを構築しております。

 

6)環境及びその他の規制

当社グループにおいては、2050年までにバリューチェーン全体のカーボンニュートラルの実現を目指しています。省エネ化や再生可能エネルギーの利用拡大のための設備投資等が必要になるほか、管理コストの上昇も見込まれ、当社グループの事業活動に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

段階ごとの具体的な目標値を定めて適切に管理することで、効果的な環境対策に取り組んでいます。

 

7)特定の取引先への依存

当社グループの業績は、今後の自動車産業や2輪車産業の動向によって影響を受ける可能性があります。

2024年3月期は、主要な取引先であるホンダグループへの売上高比率は約49%でした。

今後のホンダグループの事業戦略や購買政策等により、当社グループの業績に影響を受ける可能性があります。

 

(対応策)

培ってきた高い技術力とグローバル生産体制を活かし、積極的な顧客提案を進めてまいります。

 

8)特定の原材料等のサプライヤーへの依存

当社グループは、多数の外部の取引先から原材料等を購入しております。製品の製造において使用するいくつかの部品・原材料については、一部の取引先に依存しております。

安定したコストで継続的に供給を受けられるかどうかは、当社グループがコントロールできないものも含め多くの要因に影響を受けます。購入品の入手困難、価格高騰により当社グループの生産に影響を与え、コストを増加させる可能性があります。

 

(対応策)

発注数量の最適化や新たな取引先の開拓、従来のサプライチェーンの見直し等により、競争力のある、安定した価格で原材料等を調達するための取り組みを進めております。

 

9)製品の欠陥のリスク

大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の不具合が起きた場合、多額の対応コストが必要となります。また当社グループの評価に重大な影響を与えることで、売上が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(対応策)

開発から量産に至るプロセスを通じて商品の品質を評価、保証する仕組みを通じて、お客様に信頼頂ける生産・供給体制の向上に努めます。

 

10)新規事業展開に関するリスク

新規事業の創出にあたって、新たな技術の獲得や、事業開発のスピード向上のために、M&Aやスタートアップ企業への出資を伴う共同開発等も行っております。

対象企業の事業活動が想定通りに推移しない場合、また対象企業に想定しなかった問題点が発見された場合等には、減損損失の発生によって当社の業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(対応策)

経営会議における投資可否の厳格な検証に加え、リスク顕在化の早期確認や対応を可能とするため、投資会社の事業計画の進捗を継続的にモニタリングしております。

 

11)合弁事業のリスク

当社グループはグローバル展開並びに新技術や新製品の開発強化のため、直接投資を行うほか外部企業との間で資本提携・業務提携等を推進しております。

これらの合弁事業は、合弁先の経営方針、経営環境の変化により影響を受けることがあり、そのことが、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(対応策)

経営会議における投資可否の厳格な検証に加え、リスク顕在化の早期確認や対応を可能とするため、合弁会社の事業計画の進捗を継続的にモニタリングしております。

 

12)固定資産の減損に係るリスク

当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等により収益性が低下した場合には、減損損失が発生し当社グループの財政状況及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(対応策)

経営会議における投資可否の厳格な検証に加え、リスク顕在化の早期確認や対応を可能とするため、事業計画の進捗を継続的にモニタリングしております。

 

13)為替変動リスク

当社は、当社グループの海外拠点に対し、製品・半製品を輸出しております。

また、当社グループの海外拠点からも、それらの製品を複数の国へ輸出しております。

為替レートの変動は、当社グループの財政状態、経営成績、競争力にも影響し、長期的に当社グループの業績に影響いたします。

 

(対応策)

当社グループは当該リスクを軽減するため、為替予約契約等を締結しております。

 

14)情報セキュリティリスク

外部からのサイバー攻撃や当社グループが利用する情報システムにアクセスすることができる者による不正使用等によって、機密情報等の改ざん・流出、あるいは重要な業務・サービスの停止等が発生する可能性があります。

その場合、社会的信用の低下、影響を受けた関係者に対する損害賠償責任の発生等、当社グループの事業・財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(対応策)

リスク発生時の体制、対応を定め、被害の最小化と早期解決を図る仕組みを構築しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の世界経済は、地域ごとに経済成長のばらつきや金融政策の影響を受けながらも、全体的には持ち直しの動きが続きました。ユーロ圏では、エネルギー価格の高騰やインフレの高止まりが懸念材料となり、各国の中央銀行は政策金利の引き上げを進め、特に製造業の低迷が経済全体に影響を及ぼしました。中国では、景気回復への期待が高まったものの、そのペースは鈍く、不動産セクターの不安定さと輸出減速が経済成長の足かせとなりました。一方、アメリカでは金融引締めによる金利上昇が経済成長の下振れリスクとして懸念されましたが、年度を通じて景気拡大が続き、労働市場も堅調に推移する中で持続的な成長を維持しました。

自動車業界では、サプライチェーンの混乱や原材料コストの上昇などのリスクが顕在化する中、EV(電気自動車)化は足元で減速感があるものの一定のペースで進行しました。PHEV(プラグインハイブリッド車)の普及やOE完成車メーカー各社によるEV戦略の変化など、多様化の兆しも見られました。しかし全般的には、インフレ、地政学的リスク、サプライチェーン問題などの要因による不透明感が依然として残っています。

こうした中、当社グループはICE(内燃機関), BEV(電気自動車), HEV(ハイブリッド車)の各パワートレインにおける成長戦略をすすめ、市場ニーズの変化に強い4輪事業構造を構築してきております。特にリンケージ&サスペンション領域では、車体重量の増加する4輪EV車向けに、耐荷重性能が高く、低フリクションのボールジョイントの受注が好調に推移しました。また、パワートレイン領域においてもより高い仕様要件の製品に注力しており、本田技研工業株式会社より「CR-V」をベースとしたFCEV(新型燃料電池車)向けe-Axleに適用されるギヤボックスを新たに受注いたしました。またデジタルテクノロジーを活用したオペレーションの変革に取り組んでおり、スピードと収益力の向上が成果として現れてきております。

新規事業領域では、e-Mobility、Energy Solution、Smart Industry、植物バイオの4分野において社会課題の解決に向けた事業展開を進めています。このうち、e-Mobility事業では、2輪車におけるEV化をリードすべく、特にインド、アフリカ、アセアン地域をメインターゲットとして、現地パートナーとのオープンイノベーション展開を進め、e-Axleユニット、パワー制御ユニット、バッテリ制御システム等の提供を通じて、Small e-mobilityマーケット開拓と、事業拡構築を推進しています。また、植物バイオ事業では、当社の本社所在地である愛知県東三河地域の豊かな土壌から生まれる植物の力を活用したビジネスに取り組んでおり、2023年11月には第1弾商品「鋼の肝臓KReTA」を開発し、販売を開始しました。奈良先端大学院大学との共同研究を通じて、世界の人々のQOL向上への貢献をめざした事業のさらなる拡大を目指します。

このような状況において、当連結会計年度の業績は、連結売上高は349,917百万円(前連結会計年度比16.1%増)と増収となりました。

利益面では、連結営業利益は18,374百万円(同139.3%増)の増益、連結経常利益は15,560百万円(同121.3%増)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は7,921百万円(同225.1%増)の増益となりました。

セグメント別の状況は次の通りです。

(日本)

半導体不足等による減産からの回復による安定的な生産背景の中、DX等による改善も進み、売上高は42,354百万円(前年同期比17.1%増)、セグメント利益は4,853百万円(同481.1%増)となりました。

(米州)

半導体不足の問題の回復に伴い客先生産が安定的に推移し、また材料費高騰分の売価反映や円安の影響などもあり、売上高は101,552百万円(同37.6%増)、セグメント利益は5,778百万円(同144.9%増)となりました。

(アジア)

材料費高騰分の売価反映や円安の影響はあったものの、輸出向け2輪車用部品などの販売減少などにより、売上高は76,082百万円(同5.9%増)、セグメント利益は6,575百万円(同0.6%減)となりました。

(中国)

日系の自動車販売低迷はあったものの、EV補助金の終了する中PHEVやICEの需要が伸び、また新機種の効果もあり、売上高は33,873百万円(同5.1%増)、セグメント利益は919百万円(同6.3%増)となりました。

(欧州)

物価上昇の継続等により自動車市場全般が低迷する中、着実に改善等の施策が進展し、また材料費高騰分の売価反映や円安の影響もあり、売上高は96,054百万円(同9.8%増)、セグメント利益は145百万円(前連結会計年度は3,401百万円の損失)となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、26,747百万円となり、前連結会計年度末に比べ6百万円の減少となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの増減状況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、31,642百万円となりました。これは主に、税金等調整

前当期純利益13,714百万円(前期は6,994百万円)、減価償却費19,569百万円(前期は18,630百万円)などの資金の増加要因によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、15,994百万円となりました。これは主に有形固定資産

の取得による支出12,642百万円(前期は14,294百万円)、投資有価証券の取得による支出2,767百万円(前期は2,522百万円)などによる資金の減少要因によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果減少した資金は、17,752百万円となりました。これは主に借入の返済4,398百万円(前期は41百万円)、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出10,437百万円(前期は支出なし)などによる資金の減少要因によるものです。

③生産、受注及び販売の実績

(ⅰ)生産実績

当連結会計年度におけるセグメント別の生産実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

42,993

119.8

米州

103,116

139.3

アジア

77,354

106.1

中国

32,885

103.0

欧州

97,133

109.4

合計

353,483

116.5

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(ⅱ)受注実績

当連結会計年度におけるセグメント別の受注実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

43,316

119.6

1,727

225.9

米州

102,405

136.7

3,421

133.2

アジア

76,361

104.6

5,819

105.0

中国

33,909

105.1

606

106.5

欧州

96,239

109.5

1,985

110.3

合計

352,233

115.8

13,560

120.6

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(ⅲ)販売実績

当連結会計年度におけるセグメント別の販売実績を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

42,354

117.1

米州

101,552

137.6

アジア

76,082

105.9

中国

33,873

105.1

欧州

96,054

109.8

合計

349,917

116.1

(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は、次のとおりであります。

なお、本項に記載した予想、見込み、方針等の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの計画の達成状況は以下のとおりです。

指標

2023年度

(計画)

2023年度

(実績)

2023年度

(計画比)

連結売上高

340,000百万円

349,917百万円

9,917百万円増  (2.9%増)

連結営業利益

16,000百万円

18,374百万円

2,374百万円増 (14.8%増)

親会社株主に帰属する

当期純利益

8,500百万円

7,921百万円

579百万円減  (6.8%減)

1株当たり当期純利益

130.19円

121.24円

8.95円減

当連結会計年度における連結売上高は計画比9,917百万円増(2.9%増)となりました。連結営業利益は計画比2,374百万円増(14.8%増)となりました。これらは、米州及びアジアで想定よりも販売が好調であったためです。また親会社株主に帰属する当期純利益は計画比579百万円減(6.8%減)となりました。これは、保有する投資有価証券の評価損を計上したためです。その結果1株当たり当期純利益は計画比8.95円減となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(ⅰ)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

(ⅱ)借入金等の状況

2024年3月31日現在の借入金等の概要は以下のとおりであります。

区分

年度別要支払額(百万円)

1年以内

1年超5年以内

5年超

合計

短期借入金

49,587

49,587

長期借入金

8,154

34,125

7,500

49,780

上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

(ⅲ)財務政策

当社グループは、運転資金につきましては、内部資金及び短期借入金で調達しております。また設備資金につきましては、内部資金及び長期借入金で調達しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、重要な見積りや仮定を行う必要があります。

重要な見積りを伴う会計方針とは、本質的に不確実性があり、次年度以降に変更する可能性がある事項、または当連結会計年度において合理的に用いうる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。

次に挙げるものは、当社グループのすべての会計方針を包括的に記載するものではありません。

連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。

○退職給付費用及び退職給付債務

当社グループは退職給付債務に関する割引率等の仮定の変化による実際の退職給付債務の差額は、発生した連結会計年度に債務認識し、翌連結会計年度から費用処理しております。経営者は、現在使用している仮定は妥当であると考えておりますが、仮定の変更により退職給付費用及び退職給付債務に影響を与える可能性があります。

○固定資産の減損

当社グループが減損を判定する際のグルーピングは欧州地域を除き原則として会社単位で行い、減損の兆候が認められる場合は、減損テストを実施し、その結果、減損損失の認識が必要と判定された場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識しています。

当社グループは、将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えておりますが、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

なお、重要なものについては、第5 経理の状況 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

○投資有価証券の減損判定

当社グループは、市場価格のない株式等以外のものについては、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合は減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。

また、市場価格のない株式等については、第5 経理の状況 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

○繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産を計上する際には将来の課税所得を合理的に見積もっており、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合は、評価性引当額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合、繰延税金資産の減額又は評価性引当額を計上することにより税金費用が増額する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、ムサシ100年ビジョン「Go Far Beyond!」を主題として掲げ、テクノロジーへの“情熱”と、イノベーションを生み出す“知恵”をあわせて、「地球と人が豊かに共存できる世界」を目指して、さらに加速する電動化社会を見据え、独創的な商品開発と技術開発、電動化商品開発に取り組んでおります。特に、アジア地域における2輪車の電動化の加速が予測され、また4輪車では各国規制強化でBEV化計画が発表されており、電動化開発の本格化を迎えています。各4輪車メーカー、2輪車メーカー、汎用機メーカーと緊密に連携し、PT事業、L&S事業、2輪事業、さらに電動化事業構築に向けて世界No.1を目標にニーズを先取り出来る提案型の開発をスピード重視で推進しております。

 研究開発活動は、主に当社および国内子会社の九州武蔵精密株式会社が推進し、当連結会計年度における研究開発費は5,875百万円であり、主な成果は次のとおりであります。

 

(1) 商品開発

車両の電動化に伴い、当社の供給する動力伝達部品、足回り部品等には、従来にも増して高い静粛性・回生モードの付加による入力荷重の変化や車両重量の増加に耐える強度が求められます。当社はこれまで培った技術を活かして、4輪事業においては電動化ニーズに適合したオリジナルの小型・軽量デファレンシャルアッセンブリィや低フリクション、高応答の小型ボールジョイント、さらにEV向けのオリジナル減速機ユニットの開発を進めております。2輪事業においてはモーターやパワーコントロールユニットを含めた2輪EV向けe-Axleの開発、さらにコスト低減に向けた現調化の開発に取り組んでおります。

 

①PT事業 商品開発

デファレンシャルアッセンブリィにおいては急速な電動化に向け高強度、静音性の向上による製品ラインナップ拡充を目指した商品開発、さらに省電費に向けたエネルギー効率改善に寄与する次世代DIFFの開発を取り組んでおります。

EV減速機ユニットにおいては、当社グループの強みであるギヤ技術、デフ技術を軸に静音性の優れる当社グループ初の減速機ユニットの上市が予定されています。今後さらに求められる静音性、効率、耐久性向上を目指し、減速機ユニットの開発に取り組んでおります。

 

②L&S事業 商品開発

電動化や自動運転に伴う顧客要求の変化に対して、長年蓄積した設計ノウハウと最新の解析技術を融合した開発力により、高い燃費、電費に貢献する小型軽量と、静粛性、安定性、乗り心地に寄与する低フリクション・高応答性化に取り組んでおり、これらの技術を使った商品は、日本だけではなく海外顧客からも大変ご好評をいただき、拡販、新規受注につながっております。カーボンニュートラルの実現に関しては、原材料リサイクルによる廃棄物の削減、工程改善などの取り組みを進めています。

 

③2輪事業 商品開発

2輪車用トランスミッションシェア世界No.1サプライヤーとして長年培って来たものづくりの技術力と、トランスミッションに要求される機能と仕様を熟知した設計力との融合により、合理性に優れ、且つ耐久性、静音性、スペース効率、低コストなどを実現する、より魅力溢れる商品の開発・提案・拡販活動を継続的に推進し、国内及び海外顧客に於いて更なる受注拡大を展開してまいります。

 

(2) 先進技術研究

EV拡大に向け、独自の4輪減速機ユニット、2輪e-Axleの研究・開発を推進しており、当社グループの強みであるギヤ技術による静音化を軸に、最新のコンピュータ設計支援によるシミュレーションを駆使し、仕様の最適化、開発期間の短縮に取り組み、お客様の要求に見合う電動用減速機ユニットの技術開発を進めております。さらに電動2輪においては、減速機だけでなくモーターやパワーコントロールユニットを含めたe-Axleとしてのシステム開発に取り組み、インドを軸にした現地開発を見据えた展開をおこなっております。また、電動2輪事業の提案力強化を目指しバッテリーシステムの研究開発(独自のバッテリセル技術、バッテリー制御技術)にも取り組んでおります。

カーボンニュートラルに向けて、ハイブリッドスーパーキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)技術を軸に工場のエネルギーマネージメントシステム研究に取り組み、さらにその技術を軸にした地域マイクログリッドを展開し、コンセプトの実現に向けて進めております。

 

(3) 生産技術開発

①加工技術開発

自動車の電動モーターに付帯する減速装置においては独自の加工・組立技術を継続的に進化させることで付加価値の向上を図っております。又、複雑化する市場のニーズに迅速に対応できる新たな加工技術の追求をしております。デファレンシャル部品ではEV時代に向け、高静音性・低コストを可能にする技術開発を進めております。又、ベンチマーク活動を加速させ小型設備の導入、生産ラインの省人化等を進めています。

 

②塑型技術開発

塑型領域では、競争力の源泉となるべく、これまでの豊富な蓄積データとDXを活用した解析・評価技術から新製法の構築、および既存インフラの最大活用への取り組みを加速しています。

またEVシフトへの適応を見据えたSHAFTの廉価製法と、環境への配慮を目的に主力部品であるベベルギヤの冷間鍛造化拡大を推進しています。

 

③2輪生産技術開発

2輪・汎用領域においては、当社の得意分野である精密鍛造技術をコアとし、加工の極小化や一体化、工程集約などの実施、デジタルやAIによる検査など更なる生産効率向上、省エネ・省資源化を目指し強力に推進しております。また生産拠点ベンチマーク活動を通じて改善や技術開発、技術ノウハウの共有による生産技術の高位平準化に取り組んでおります。効率化を目指し強力に推進しております。今後もこれまでの固定概念にとらわれない新しい発想を基に、4輪技術及び塑型加工技術、鋳造技術とのシナジー効果を最大限活用し、2輪部品生産技術の更なる進化を追求してまいります。

 

(4) AI研究

Musashi AIのブランドスローガンである「人にはもっと人らしい仕事を」を理念にAIを製造現場に実装し、ものづくりのイノベーションに取り組んでいます。特に現在注力して進めている活動は、搬送、および目視検査工程の自動化になります。その中でもAI検査事業はトヨタ自動車様への実装実績を生かし、SUBARUグループである富士機械(株)様へも多くの導入をさせて頂き、販売拡大を急速に推進しております。更にグローバル展開の点においても、北米に設置をしたMusashi AI North Americaにて世界のモノづくり現場に幅広く技術提供すると共に、事業拡大を進めております。