第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、2020年2月に創業100周年という節目を迎えたことを機に、これまでの歴史の重みを踏まえつつ、「次なる100年」に向けて持続的成長を遂げる企業グループとなるべく、2020年4月1日付で、当社グループの存在理由及び目的、使命を示した新たな経営理念を制定しました。また、持続的成長を続けていくには、この経営理念を拠り所とする、当社グループの将来展望を掲げるとともに、それを具現化していく「長期志向経営」への転換が必須であるとの思いから、同日付で、2030年を目標年に置いた将来展望を「長期ビジョン」として掲げました。

 

[経営理念]

新明和グループは、たゆまぬ技術革新で、

安心な社会と快適な暮らしを支え続け、

人々の幸せに貢献します。

 

[長期ビジョン]

グローバルな社会ニーズに応え、

都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する

価値共創カンパニーを目指します。

 

「長期ビジョン」の実現に向けて当社グループのありたい姿を具体化し、その姿と現状とのギャップをバックキャストで埋めていく「長期志向経営」を進めてまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

当社グループは、2021年度から2030年度までの10か年にわたる長期経営計画[SG-Vision2030]を策定しております。そして、同計画の適用期間を3つのPhase(段階・期間)に分け、各Phaseについて中期経営計画を立案・推進することとしております。

2024年度から2026年度までの3か年は、そのPhase2<拡大>の適用期間となることから、同期間を対象とする新たな中期経営計画[SG-2026]を策定し、公表いたしました。

 

■中期経営計画[SG-2026]の概要

(A)[SG-2026]経営指標

 

業績目標値

連結売上高

3,200億円

連結営業利益

180億円

海外売上高

800億円

ROE

10%以上

ROIC

7%以上

 

(為替前提:1ドル=140円)

 

 

(B)基本方針

① 持続的成長の実現

  海外展開の加速、戦略的M&Aの実施、DX推進による新たな価値の創造、新事業創出

② 事業ポートフォリオ・マネジメント

  [SG-Vision2030]のゴールを見据え事業ポートフォリオを「成長力強化事業」と「収益力強化事業」に

  区分

③ ROIC経営の浸透と推進

  ROIC逆ツリー展開、適正なキャッシュ・アロケーション

④ 人的資本の強化

  成長戦略に則った人材の獲得・育成、エンゲージメントサーベイによるモニタリング

⑤ 製品・サービスを通じた環境、社会への貢献

  GHG(温室効果ガス)プロトコル Scope1・2のグループ会社への展開・Scope3の導入、ステークホル

  ダーへの提供価値の拡大による企業価値の向上

⑥ リスクマネジメント・コンプライアンスの強化

  気候変動等に起因する事業リスクのモニタリング、情報セキュリティ対策強化、コンプライアンス教育

  の強化等

 

 

中期経営計画[SG-2026]は、長期経営計画[SG-Vision2030]に掲げる最終目標の実現に向けて、その最終目標からバックキャストした<拡大>戦略と2026年度までに到達すべき業績目標等を定めたものであります。資本効率や生産性、収益力のさらなる向上を図り、これらの目標を達成することができるよう、同計画に掲げた戦略・施策への取り組みを着実に進めていくことが課題となります。

 

(ご参考)長期ビジョン及び長期経営計画について

2021年度から2030年度までの長期経営計画適用期間の10年間を3つのPhase(段階・期間)に分け、各Phaseについて中期経営計画を立案・推進することで、当社グループが目指す2030年度における姿を表した「長期ビジョン」の実現及び各種経営指標への到達を目指します。

長期ビジョン

グローバルな社会ニーズに応え、都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する

価値共創カンパニーを目指します。

長期経営計画

Sustainable Growth with Vision 2030-価値創造による持続的成長-

[SG-Vision2030]

中期経営計画

2021~2023年度

2024~2026年度

2027~2030年度

Phase1<転換>

Phase2<拡大>

Phase3<飛躍>

 

 

■長期経営計画[SG-Vision2030]

「長期事業戦略」(2030年の社会未来像を描き、これを実現する事業施策を立案・実践する)と、「経営基盤の強化」(サステナビリティ経営の推進により「長期事業戦略」の進捗を支えつつ、価値創造を支えるマテリアリティ(重要課題)の解決とSDGsへの貢献に取り組む)という2つの経営テーマに並行して取り組み、経済的価値と社会的価値を持続的に創出することで、企業価値の向上を図ります。

 

(A)「長期事業戦略」及び「経営基盤の強化」として取り組む施策等の概略

長期事業戦略

既存事業の深化・領域拡大(ICTの活用、モビリティの進化への対応、海外市場拡大等)

新事業創出の促進

戦略的M&Aの促進

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進

経営基盤の強化

事業ポートフォリオ・マネジメントをはじめ経営資源を適切に配分するための財務戦略・資本政策の策定・推進と取締役会によるモニタリング

会社の持続的な価値向上と従業員エンゲージメント向上を両立させる人材戦略の実践

ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)に関するマテリアリティ(重要課題)への取り組みの推進

 

 

(B)長期経営計画[SG-Vision2030]における経営指標と目標水準

 

目標水準

連結売上高

4,000億円以上

海外売上高

1,000億円以上

ROE

12%以上

ROIC

10%以上

 

 

(C)環境・社会・ガバナンスに関するマテリアリティと重点取り組みテーマの概略

 

マテリアリティ(重要課題)

環境

地球温暖化防止

生産活動に伴う温室効果ガスの排出削減

循環型社会への貢献

廃棄物の削減

社会

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

多様性を尊重し支援する組織風土の醸成、個人に内在する多様性の獲得等

働きやすい職場環境の整備

ガバナンス

コーポレートガバナンス体制の充実

取締役会の機能強化等

リスク管理体制の整備・強化

BCPの整備、CSR調達の推進等

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス(サステナビリティ共通)

  代表取締役取締役社長を議長とする取締役会は、気候関連リスク・機会を企業経営に関する重要な課題・テーマとして捉え、監督・審議する責務を担っています。当社の取締役会は原則として毎月1回開催され、中期経営計画に基づき気候変動を含む重要な経営課題について議論、検討するなど、取締役および執行役員の業務執行について監督を行っています。

当社は、長期的な視点に立った経営を志向し、企業経営におけるESG(Environment, Social, Governance)に関する諸課題に対応するため、「サステナビリティ会議」を設置しています。取締役副社長執行役員(サステナビリティ担当)を議長とする同会議は、重要課題(マテリアリティ)の特定およびKPIの設定、ESGの各要素に関する分科会(環境分科会、社会分科会、統治分科会)における検討等の進捗状況のフォローおよび統括、KPIの達成状況の確認および計画の見直し並びにそれらの状況の取締役会への報告(原則として年2回)を行うこととしています。

 また、サステナビリティ関連リスク・機会も重要課題のひとつとしてこの枠組みの中で取り扱われ、同会議で、これらの動向のモニタリングも行います。

 


 

(2)戦略

  ①気候変動

気候変動が当社事業にもたらす潜在的な影響の大きさと長期的な不確実性に鑑み、当社事業に関わる気候関連リスク・機会を特定・評価するプロセスとして、シナリオ分析を行っています。 

詳細は2023年9月発行の「統合報告書 2023」を参照ください。

 

②人的資本(人材育成方針および社内環境整備方針等)
 当社グループでは、経営理念実現のために3つの柱で構成される人事基本方針を定めています。多様な価値観・視点・個性を容認、尊重するとともに、チームワークを大切にする「意識醸成」を基盤に、多様な人材の活躍を可能とする「人権尊重と社内環境整備」を通じて「人材育成」を図ります。特定の戦略に捉われることのない普遍的な取組みとして、人材の多様性を生かす組織風土づくり、多様な働き方を可能とする仕組みづくりが不可欠ですが、今後はそれに加えて、人的資本経営の基本となる経営戦略と人材戦略の連動を実現するため、経営戦略を起点とした動的な取組みを実施し、持続的な競争優位の源泉としての個人と組織の活性化を図ります。

 詳細は2023年9月発行の「統合報告書 2023」のP45〜P47を参照ください。

 

(3)リスク管理(サステナビリティ共通)

事業遂行にかかるリスクについては、「新明和グループリスクマネジメント規程」を定め、各事業部およびグループ会社において事業特性に適合したリスクマネジメント体制を主体的に構築しています。一方で、本社においては各事業部およびグループ会社のリスクマネジメントの状況をモニタリングするとともに、災害リスクや財務リスク等、全社横断的なリスク対策を実施することにより、リスクマネジメント体制を確立しています。 

また、サステナビリティ会議は、本社および事業部門から報告を受けた情報に基づき、当社グループにおけるリスクマネジメント体制の整備状況および活動状況を確認するとともに、事業運営に及ぼす影響等に照らして全社の重大リスクを特定し、これらの情報を経営会議および取締役会に対し定期的に報告することにより、当社グループにおけるリスクマネジメントの有効性の確保に努めています。 

当社事業に関わるサステナビリティ関連リスク・機会のうち、特に重大なものは、重大リスクとして上記の全社的なリスクマネジメントの枠組みの中で管理していきます。

 


 

(4)指標及び目標

  ①気候変動

詳細は2023年9月発行の「統合報告書 2023」を参照ください。

 

②人的資本

経営戦略と人材戦略の連動を実現するための重点施策として、

・人的資本投資概念の整理および計画的投資の実施

・DX人材ポートフォリオ・マネジメントの実施および事業戦略と連動したキャリア開発(リスキリング)の実施

・風通しの良い職場風土・上司と部下の価値観共有文化の形成

を定め、KPIおよび目標値に基づき、確実に人材戦略を実践し、経営戦略の実行を支えてまいります。

(a)人的資本投資額

2023年度における人的資本投資額は次のとおりであります。2024年度以降についても、2022年度の1人当たり人的資本投資額をベースに拡大を図ってまいります。

取組み方位

2023年度実績

(1人当たり実績 千円)

人材育成

197

社内環境整備

134

合計

331

 

(b)DX人材ポートフォリオ

1)DX人材の定義

当社におけるDX人材とは、「2022年12月に経済産業省が公開した『DX推進スキル標準』に基づいた5つの人材類型のケイパビリティのいずれかを有する人材」といたします。また、2002年に経済産業省が公表した「ITスキル標準」の「レベル定義」のうち、「レベル4」(※1)および「レベル3」(※2)を満たす人材を、上記記載の『ケイパビリティを有する人材』といたします。

(※1)専門レベルを駆使し、課題発見と解決をリードできるレベル

(※2)要求された作業をすべて独力で遂行するレベル

 

2)DX人材ポートフォリオのKPIと目標値

5つの人材類型のうち優先的に推進すべき「ビジネスアーキテクト」および「データサイエンティスト」の類型でケイパビリティを有する場合(重点ケイパビリティ)と、5つの人材類型のうちいずれかの類型でケイパビリティを有する場合(全方位ケイパビリティ)とに分けて設定いたします。

なお、今回からKPIにおける2026年度及び2030年度目標について、DXをさらに推進させるため、それぞれ引き上げて設定しております。

 

KPI

2022年度

2026年度

2030年度

D

X

重点ケイパビリティ

100

(140%)180

(170%)240%

全方位ケイパビリティ

100

(130%)150

(150%)200%

 

  (注)()は昨年度設定した引き上げ前の目標値

(c)エンゲージメントサーベイスコア

1)エンゲージメントサーベイスコアの設定

2022年7月実施のD&Iサーベイ項目から「エンゲージメント向上」に直結する項目および同項目と相関関係がある10項目を選定し、各サーベイ質問項目ごとの回答について、「最高得点の回答の割合」を「ベスト回答(ポイント)」とし、「肯定的な回答の割合」を「ポジティブ回答(ポイント)」として、それぞれの回答の割合の平均値をエンゲージメントサーベイスコアとして設定いたしました。

2)エンゲージメントサーベイスコアのKPIと目標値

KPI

2022年度

2026年度

2030年度

(長期ビジョン最終年度)

ベスト回答

11ポイント

15ポイント

20ポイント

ポジティブ回答

61ポイント

70ポイント

80ポイント

 

(d)チャレンジスコア

1)チャレンジスコアの設定

2024年2月に「新たな価値を生み出す従業員の意識醸成」創出のため、2022年7月実施のD&Iサーベイ項目から「従業員のチャレンジ意欲」に直結する項目および同項目と相関関係がある6項目を選定し、各サーベイ質問項目ごとの回答について、「最高得点の回答の割合」を「ベスト回答(ポイント)」とし、「肯定的な回答の割合」を「ポジティブ回答(ポイント)」として、それぞれの回答の割合の平均値をチャレンジスコアとして設定いたしました。

2)チャレンジスコアのKPIと目標値

KPI

2023年度

2026年度

2030年度

(長期ビジョン最終年度)

ベスト回答

18ポイント

20ポイント

25ポイント

ポジティブ回答

67ポイント

75ポイント

85ポイント

 

 

詳細は2023年9月発行の「統合報告書 2023」のP31〜P32を参照ください。また、最新情報の更新として、「統合報告書 2024」を2024年9月頃発行予定です。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク項目

リスク内容

対応策

1.研究開発等の遅延

当社グループでは、多額の投資を要する新製品開発や研究開発において、顧客からの求償・訴訟や想定外の変更、原材料高騰等に伴う原価低減の遅延等が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

専任のプロジェクトチームを組成し、顧客情報収集と綿密な打ち合わせに基づき事業計画を立案するとともに、進捗状況に対する定期的なモニタリングを実施しております。

2.脱炭素対応遅れ

当社グループでは、温室効果ガス排出量削減に関する活動が計画どおりに進捗しない場合や、法令改正等に伴い適合しなくなった場合は、エネルギー調達コスト増加や炭素税増税等により業績等に影響を及ぼす可能性があります。

温室効果ガス排出量削減をサステナビリティ経営の重要課題とし、CO2排出量に関する管理指標(KPI)や目標値を定め、低減活動を実施しております。また、気候変動に関するシナリオ分析によりリスクを特定し対処しております。

3.急激な市場環境変化

当社グループは、押しなべて社会基盤の整備・強化に資する製品・サービスを提供しておりますが、ロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢の変動、想定を大幅に乖離した市場環境の変化や顧客計画の変更が生じた場合、経営の軌道修正を行う間において一時的な労働負荷の増大、納期の遅延や生産の縮小・停止等により業績等に影響を及ぼす可能性があります。

市場環境の変化や顧客計画の変更に対しては、当社グループの実態に即し、過去からの需要情報に基づく将来計画や生産調整により経営資源の配分を行っております。また、平時から残業上限時間の管理強化、一斉定時退場日設定などの施策により長時間労働の防止を図っております。

4.原材料価格の高騰等

世界的な半導体部品不足や原油、鋼材等の資源高、輸送コスト上昇等による原材料調達価格の高騰が長期化した場合、製造原価の上昇や、顧客への納品遅延による売上の機会損失により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

海外調達拡大や複数の調達ルート開拓、協力企業との共同原価低減の推進などを行うとともに、適正在庫の確保、設計変更による代替材料への変更等により、原材料、部品の安定調達を図っております。

5.カントリーリスク

当社グループは、複数の海外拠点において調達・生産・販売活動を行っているため、それぞれの拠点において突発的な政治・経済的混乱(含む新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン)やテロ等のカントリーリスクが発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

平時から海外拠点における危険情報の収集、共有に努めるとともに、従業員に対し、カントリーリスク発生時の対応等について注意喚起を実施しております。

6.大規模自然災害

大規模な自然災害が発生した場合は、当社グループの事業運営に支障を来すなど、業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

防災等に関して各関係機関と連携して必要な措置や発生した場合の影響を最小限にすべく、BCM基本方針やBCPの策定、老朽化した工場の防災対策や刷新計画等を講じております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対応策

7.感染症パンデミック

新型コロナウイルス感染症による影響については、回復基調はあるものの、依然として不透明な状況が続いております。特に、航空機セグメントにおいては、これに起因する民間航空機の需要減少等に伴い大幅な減産対応を余儀なくされており、一定水準まで需要が回復しなければ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、感染拡大状況によっては、他のセグメントにおいても操業度の低下や営業活動の制限など、業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

ワクチンの職域接種、事務所等での換気、マスク着用の徹底、リモートワーク、時差出勤などの感染予防対策を講じつつ、事業継続に取り組むほか、航空機部門においては、コロナ禍が長期化する中、航空機需要減少等による影響を低減すべく、固定費の圧縮等に取り組んでおります。

8.労災・設備事故

当社グループは、生産・サービス活動を各拠点における従業員と重要な機械設備に依存しているため、重篤な労働災害が発生した場合や、重要な機械設備に偶発的な故障が発生した場合は、操業停止を余儀なくされるほか、指名停止処分や復旧費用、納期遅延による違約金の発生等により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループ及び協力会社において、安全衛生に関する教育・指導を徹底するほか、当社グループ内で発生した事故・災害に関する原因及び再発防止策等の情報を共有し、類似災害の防止に努めております。また、重要な機械設備については定期点検・整備等により偶発的な故障発生の予防に努めております。

また、従業員の健康管理、快適な職場環境の整備に向け、ハラスメント相談窓口を設置するほか、ストレスチェック等により兆候の把握と早期対応に努めております。

9.情報漏洩

日々脅威が増しているサイバーテロやコンピュータウイルス等に関し、想定以上の脅威などが発生した場合、対処の内容によっては多額の費用や生産活動等の停止などが発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

サイバーテロやコンピュータウイルス等に対し、監視ツール導入や従業員への教育・訓練等を実施の上、セキュリティの強化に努めております。

10.製品瑕疵

当社グループでは、リコール対象製品等が顕在化した場合、該当する期間に製造・販売した製品への遡及対策が求められることから、対処の内容によっては多額の費用が発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

主要な国内生産拠点において、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証を取得し、品質の確保及び継続的改善に努めております。

11.サプライチェーン途絶

後継者不足などにより重要サプライヤ等の廃業の影響を受け、材料・部品の入手が困難となり、状況によっては納期の遅延や生産の縮小が発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

サプライチェーンの早期情報収集や特定の取引先への過度の集中を避けるほか、適正在庫保有によるリスクの低減に努めております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対応策

12.法令違反

法令改正等に伴い、現行の業務内容では、適応しなくなる恐れがある状態、または適応していない状態であることが判明した場合は、過料や営業停止処分が科されるほか、社会的評価・信用の低下によって、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社は、2023年9月12日、機械式駐車装置の取引について独占禁止法に違反する行為を行っていた疑いがある、として公正取引委員会の立入検査を受けております。

当社グループでは、法令遵守は勿論のこと、高い倫理観と責任感をもって行動することを「行動指針」及び「行動規範」に定め、役員及び従業員に配布、周知するとともに、コンプライアンスに関する研修及びアンケート調査を実施し、啓蒙に努めております。

なお、左記の公正取引委員会による立入検査を受けた件に関し、当社は、かかる疑いを受けたことを厳粛に受け止め、公正取引委員会の検査に全面的に協力するとともに、コンプライアンス体制の強化に向けた取り組みを進めております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、ウクライナ情勢の長期化や不安定な中東情勢などの影響による原材料・エネルギー価格の高騰や、為替相場の急変動など、依然として先行き不透明な状況が続いております。また、コロナ禍を経て、経済活動の正常化が進む一方、さらなる価値観の多様化や、企業と従業員の関係性、働く環境にも変化が起きております。

こうした中、当社グループは、2030年を志向した長期経営計画[SG-Vision2030]のPhase1に当たる、中期経営計画[SG-2023]の最終年度を迎え、企業価値向上に向けた諸施策を推進してまいりました。

当連結会計年度の業績につきましては、受注高は291,370百万円(前期比9.1%増)、売上高は257,060百万円(同14.2%増)となりました。なお、当連結会計年度末の受注残高は291,431百万円(同13.9%増)であります。

損益面は、増収に伴い、営業利益は11,765百万円(同26.6%増)、経常利益は12,106百万円(同22.3%増)となりましたが、特別利益の減少と税金費用の増加により、親会社株主に帰属する当期純利益は7,279百万円(同0.5%減)となりました。

総資産は、260,102百万円(同14.6%増)となりました。負債は、151,367百万円(同19.7%増)となり、純資産は、108,734百万円(同8.3%増)となりました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

 

(特装車セグメント)

車体等の製造販売は、受注は減少し、売上は増加いたしました。

また、保守・修理事業は、受注、売上ともに増加いたしました。

このほか、林業用機械等も、受注、売上ともに増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は106,773百万円(前期比6.5%減)、売上高は100,523百万円(同10.1%増)となり、営業利益は2,313百万円(同226.9%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は111,975百万円(同5.9%増)であります。

総資産は、売上債権や棚卸資産の増加などにより、83,089百万円(同7.9%増)となりました。

 

(パーキングシステムセグメント)

機械式駐車設備は、受注、売上ともに増加いたしました。

また、航空旅客搭乗橋も、受注、売上ともに増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は54,360百万円(前期比36.2%増)、売上高は41,338百万円(同7.0%増)となり、営業利益は2,765百万円(同2.9%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は58,929百万円(同30.1%増)であります。

総資産は、棚卸資産や固定資産の増加などにより、26,702百万円(同8.3%増)となりました。

 

(産機・環境システムセグメント)

メカトロニクス製品は、真空製品の受注が減少したものの、売上が増加した結果、分野全体でも受注は減少し、売上は増加いたしました。

また、環境関連事業は、受注、売上ともに増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は52,600百万円(前期比7.8%増)、売上高は42,985百万円(同28.6%増)となり、営業利益は3,359百万円(同14.9%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は53,729百万円(同23.4%増)であります。

総資産は、売上債権の増加などにより、35,801百万円(同17.7%増)となりました。

 

 

(流体セグメント)

海外の需要が堅調に推移し、受注及び売上が増加した結果、当セグメントの受注高は26,344百万円(前期比4.7%増)、売上高は26,330百万円(同7.5%増)となり、営業利益は4,103百万円(同4.8%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は7,123百万円(同1.1%増)であります。

総資産は、棚卸資産や固定資産の増加などにより、24,221百万円(同17.7%増)となりました。

 

(航空機セグメント)

防衛省向けは、受注、売上ともに増加いたしました。

また、民需関連も、受注、売上ともに増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は32,690百万円(前期比35.2%増)、売上高は31,915百万円(同37.9%増)となり、営業利益は2,187百万円(同56.5%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は43,965百万円(同1.8%増)であります。

総資産は、売上債権の増加などにより、43,291百万円(同27.5%増)となりました。

 

(その他)

建設事業において、受注が増加したものの、売上が減少した結果、当セグメントの受注高は18,600百万円(前期比24.4%増)、売上高は13,968百万円(同1.6%減)となり、営業利益は667百万円(同9.7%減)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は15,708百万円(同41.8%増)であります。

総資産は、売上債権や固定資産の増加などにより、30,891百万円(同20.8%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、22,891百万円(前期比1.6%増)となりました。これは、投資活動の結果支出した資金が8,217百万円あったことや、財務活動の結果支出した資金が5,884百万円あったものの、税金等調整前当期純利益を計上したことなどに伴い営業活動の結果得られた資金が14,065百万円あったことなどによるものであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は14,065百万円(前期比119.6%増)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益11,674百万円、契約負債の増減額10,999百万円、仕入債務の増減額6,618百万円、減価償却費5,225百万円であり、支出の主な内訳は、売上債権の増減額18,953百万円、棚卸資産の増減額4,612百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果支出した資金は8,217百万円(前期比14.7%増)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が5,578百万円あったことなどによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果支出した資金は5,884百万円(前期比43.2%増)となりました。これは配当金の支払が3,066百万円、長期借入金の返済による支出が2,211百万円あったことなどによるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特装車

100,842

8.4

パーキングシステム

42,103

8.2

産機・環境システム

43,270

28.5

流体

26,715

7.6

航空機

30,862

28.9

合計

243,794

13.7

 

(注)  金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

特装車

106,773

△6.5

111,975

5.9

パーキングシステム

54,360

36.2

58,929

30.1

産機・環境システム

52,600

7.8

53,729

23.4

流体

26,344

4.7

7,123

1.1

航空機

32,690

35.2

43,965

1.8

その他

18,600

24.4

15,708

41.8

合計

291,370

9.1

291,431

13.9

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特装車

100,523

10.1

パーキングシステム

41,338

7.0

産機・環境システム

42,985

28.6

流体

26,330

7.5

航空機

31,915

37.9

その他

13,968

△1.6

合計

257,060

14.2

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、販売実績が総販売実績の100分の10以上となる相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

当社グループは、2023年度を最終年度とする中期経営計画[SG-2023]において、「連結売上高2,500億円」「連結営業利益150億円」「海外売上高450億円」「ROE10%以上」「ROIC7%以上」を目標として掲げておりました。

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高については、特装車セグメントにおいて、前期に比べて主要部品調達遅れが緩和したこと、パーキングシステムセグメントにおいて、機械式駐車設備、航空旅客搭乗橋、ともに売上が増加したこと、産機・環境システムセグメントにおいて、メカトロニクス製品、環境関連事業、ともに売上が増加したこと、流体セグメントにおいて、堅調な市場環境を背景に、機器、システム製品、サービス事業全てにおいて売上が増加したこと、航空機セグメントにおいて、防衛省向け、民需関連ともに売上が増加したことなどから、全体では257,060百万円(前期比14.2%増)となり、中期経営計画の目標値を達成いたしました。

利益については、増収効果により、営業利益は11,765百万円(同26.6%増)、経常利益は12,106百万円(同22.3%増)となりましたが、特別利益の減少と税金費用の増加により、親会社株主に帰属する当期純利益は7,279百万円(同0.5%減)となりました。営業利益は、前期に比べて増加しましたが、長納期化により販売価格改定の効果が遅れ、コストダウン計画を実施するも、部品費を含む原材料費高騰の影響が大きく、中期経営計画の目標値は未達となりました。

海外売上高については、産機・環境システムセグメント、航空機セグメント、流体セグメントの売上が増加したことなどから、53,219百万円(同14.7%増)となり、中期経営計画の目標値を達成いたしました。

ROEについては、自己資本の増加に伴い7.1%(同0.5ポイント減)、ROICについては、営業利益の増加に伴い5.3%(同0.9ポイント増)となりましたが、それぞれ中期経営計画の目標値は未達となりました。

 

財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は、260,102百万円(前期比14.6%増)となりました。これは、売上債権や棚卸資産が増加したことなどが主な要因であります。

負債は、仕入債務や契約負債の増加などにより、151,367百万円(同19.7%増)となりました。

純資産は、配当金の支払いはあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどにより、108,734百万円(同8.3%増)となりました。

これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の43.5%から41.1%に低下しました。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資金需要の主なものは、製品製造のための材料や部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金と生産設備の拡充や合理化を目的とした設備投資資金であります。

財務政策は、安定した財務基盤の維持と適正な負債比率のコントロールによる資本コストの最適化を基本方針としております。

資金調達は、主として営業活動から得られるキャッシュ・フローと金融機関からの借入を基本としております。なお、当社は緊急の資金需要に備えて、月商1ヶ月程度の手元資金を確保するとともに、取引金融機関との間にコミットメントラインを設定しております。また、国内子会社の現預金はCMS(キャッシュマネジメントシステム)によって当社が集中管理し、グループの資金効率の向上に努めております。

当社グループは、事業活動を円滑に維持し、持続的な成長を実現する上で十分な手元資金と資金調達能力を有しており、将来の資金需要に対して不足が生じる懸念は少ないと判断しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っておりますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。

将来の業績及び課税所得実績の変動により、繰延税金資産の計上に重要な影響を及ぼす可能性があります。

b.退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

c.工事損失引当金

受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しております。

技術的難易度の高い長期請負工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

d.完成工事高及び完成工事原価の計上

成果の確実性が認められる工事契約については、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度の測定は、履行義務の充足のために発生した費用が、当該履行義務充足のために予想される総費用に占める割合に基づき見積っております。想定していなかった原価の発生等により進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

e.固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性の低下や時価の下落といった兆候の見られる資産グループについては、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて減損処理を実施しております。

将来の収益性の低下や時価の下落が生じた場合は、これら固定資産の評価に重要な影響を及ぼし、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

  当社グループは、「たゆまぬ技術革新で、安心な社会と快適な暮らしを支え続け、人々の幸せに貢献する」ことを経営理念に掲げております。その実践において、2030年という近未来を志向した「長期ビジョン」を策定しており、ここでは、「グローバルな社会ニーズに応え、都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する価値共創カンパニーを目指す」ことを謳っております。

  当社グループの研究開発活動は、社会インフラと関わりの深い既存事業を軸に、これらの理念・ビジョンに基づくテーマを選定し、個々の事業部門において、あるいは自社内外との「共創」を通じて具現化に取り組んでおり、当連結会計年度も複数の事業分野において研究開発活動の成果を提示いたしました。

  こうした一連の活動に関して、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費として2,602百万円を計上いたしました。

  以下に、当連結会計年度に市場に投入した技術を中心に、セグメント単位で提示いたします。

 

(1)特装車セグメント

  当セグメントでは、“都市”“輸送”“環境”における社会課題の解消・改善を志向した商品・サービスの研究開発に取り組んでおります。

  当連結会計年度中、カーボンニュートラル実現のため、二次電池や水素燃料電池で走行するシャシをベースにした塵芥車やダンプトラックを開発する取り組みに参画いたしました。また、物流の2024年問題への対応のため、脱着ボデートラックやトラックミキサといった既存商品の大幅な軽量化を実現し、輸送効率の向上に寄与する商品を市場に投入いたしました。

  当セグメントに係る研究開発費は869百万円でした。

 

(2)パーキングシステムセグメント

  当セグメントでは、機械式駐車設備の利用者や管理者の利便性・安全性の向上や、空港グランド業務の効率向上に寄与する航空旅客搭乗橋の自動化等に関する開発に取り組んでおります。

  当連結会計年度中、機械式駐車設備に備えた利用者認証機能を利用することで、二次元バーコード等による認証操作を行うことなくEV充電利用料金の課金がアプリ上で行える仕組みを開発いたしました。この他にも、株式会社アイシンが開発した自動走行及び駐車システムを搭載した車両と機械式駐車設備とを連携させた「自動バレー駐車」(レベル4)の実証実験に、国内で初めて成功いたしました。

  一方、航空旅客搭乗橋では、2023年8月にチャンギ空港(シンガポール)において、「フルオート・ドッキングシステム(完全自動装着システム)」を搭載した当社製品「Intelligent PAXWAY」を用いて、遠隔操作による自動装着のトライアルを実施し、実運用に向けて安全性や装着精度等に問題がないことをフィールド上で確認いたしました。

  当セグメントに係る研究開発費は588百万円でした。

 

 (3)産機・環境システムセグメント

  当セグメントでは、メカトロニクス製品において、主にワイヤーハーネス(組電線)を製造する前工程で用いられる自動電線処理機について、市場の変化や顧客要求を反映したラインアップの拡充や省人化に向けた製品開発に、前連結会計年度から継続して取り組んでおります。

  加えて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業株式会社が開発し、2024年2月に打ち上げに成功したH3ロケット試験機2号機には、当社が納めたBUILT-IN DDモータが第一段エンジンの各種電動バルブに搭載され、同機において推力の制御等重要な役割を果たしております。

  また、環境関連製品では、兵庫県宝塚市から受注した新ごみ処理施設整備・運営事業をはじめ、主な契約先となる自治体の要求を満たす設計に注力するとともに、デジタル技術を用いた既存製品の付加価値向上と性能改善に取り組みました。

  当セグメントに係る研究開発費は276百万円でした。

 

 (4)流体セグメント

  当セグメントでは、省エネ・高効率・低騒音をはじめとする性能向上を目的とした製品の開発や、海外市場に適合した製品、流体製品をより長くご使用いただくためのサービスに関する研究開発に取り組んでおります。

  当連結会計年度におきましては、下水道施設が抱える管理技術員の減少、施設の老朽化及びこれらに伴う維持管理費の増大、更新計画の策定(ストックマネジメント)といった運営上の課題対策として、施設の更新や維持管理計画を効率よく遂行する技術支援ツールとして、マンホールポンプ施設向け高機能型クラウド監視システム「マンポネット®(クラウド)」に、ストックマネジメント支援機能を付加した新サービスを開発いたしました。この他に、現有製品の省エネ化にも取り組みました。

  当セグメントに係る研究開発費は194百万円でした。

 

(5)航空機セグメント

  当セグメントでは、自社開発した複数の固定翼無人航空機による試験飛行を通じて将来顧客への訴求活動を行うとともに、他社と共同で内閣府が主導する「経済安全保障重要技術育成プログラム」(通称“K Program”)などの国主導のプロジェクトに参画し、研究開発に取り組んでおります。

  また、航空機分野における環境負荷低減対策の一環として、機体の製造工程や解体時に排出されるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)のリサイクルに関する共同研究を富士加飾株式会社とともに推進し、この再生技術を用いてリサイクルCFRPの量産化を担う富士デザイン株式会社を技術面で支援いたしました。

  当セグメントに係る研究開発費は176百万円でした。

 

 (6)本社・その他

 本社傘下の技術開発部では、社会課題解決を志向する中、主に現有のコア技術においてモビリティの変革を促すCASE(「Connected(コネクテッド)」「Automated/Autonomous(自動運転)」「Shared & Service(シェアリング)」「Electrification(電動化)」)に関連した開発に取り組むとともに、知的財産の投資・活用を促進して企業価値向上につなげる活動、及び当社の権利侵害を未然に防止する活動に注力しております。

  また、2022年4月に設置した新事業戦略本部では、当社グループが保有する技術と他社が得意とする領域や技術との共創を通じて、都市・輸送・環境インフラの高度化に寄与する新たな事業創出に取り組んでおります。当連結会計年度におきましては、従業員を対象に新事業の発案を募る活動「進取!!0→1チャレンジ」の初回募集を行い、複数の審査を経て2つのテーマを選定、次期連結会計年度からこれらの事業化に向けた活動を開始いたします。加えて、他社と協業して水素サプライチェーンビジネスに参画し、これに関わる技術の確立にも取り組みました。

 本社及びその他セグメントに係る研究開発費は497百万円でした。