第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、2020年2月に創業100周年という節目を迎えたことを機に、これまでの歴史の重みを踏まえつつ、「次なる100年」に向けて持続的成長を遂げる企業グループとなるべく、2020年4月1日付で、当社グループの存在理由及び目的、使命を示した新たな経営理念を制定しました。また、持続的成長を続けていくには、この経営理念を拠り所とする、当社グループの将来展望を掲げるとともに、それを具現化していく「長期志向経営」への転換が必須であるとの思いから、同日付で、2030年を目標年に置いた将来展望を「長期ビジョン」として掲げました。

 

[経営理念]

新明和グループは、たゆまぬ技術革新で、

安心な社会と快適な暮らしを支え続け、

人々の幸せに貢献します。

 

[長期ビジョン]

グローバルな社会ニーズに応え、

都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する

価値共創カンパニーを目指します。

 

「長期ビジョン」の実現に向けて当社グループのありたい姿を具体化し、その姿と現状とのギャップをバックキャストで埋めていく「長期志向経営」を進めてまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

当社グループは、2021年度から2030年度までの10か年にわたる長期経営計画[SG-Vision 2030]を策定し、当社グループが目指す2030年度における姿を表した「長期ビジョン」の実現及び各種経営指標達成を目指しております。そして本計画の適用期間を3つのPhase(段階・期間)に分け、各Phaseについて中期経営計画を立案・推進しております。

 

 ①長期経営計画[SG-Vision 2030]

長期経営計画

(目標値)

Sustainable Growth with Vision 2030-価値創造による持続的成長-

[SG-Vision 2030]活動期間:2021年度~2030年度

長期ビジョン

グローバルな社会ニーズに応え、都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する

価値共創カンパニーを目指します。

連結売上高

海外売上高

ROE

ROIC

4,000億円以上

1,000億円以上

12%以上

10%以上

 

中期経営計画

(活動期間)

2021~2023年度

2024~2026年度

2027~2030年度

Phase1<転換>

Phase2<拡大>

Phase3<飛躍>

 

(為替前提:1ドル=140円)

 

②中期経営計画[SG-2026]

長期経営計画のPhase2<拡大>に該当する2024年度から2026年度の期間を中期経営計画[SG-2026]と定め、経営指標と基本方針に則り経営活動に取り組んでおります。

 

ア.[SG-2026]主な経営指標

 

連結売上高

連結営業利益

海外売上高

ROE

ROIC

目標値

3,200億円

180億円

800億円

10%以上

7%以上

 

(為替前提:1ドル=140円)

 

 

イ.基本方針

① 持続的成長の実現

   海外展開の加速:東南アジア・オセアニア・北米への展開強化

   戦略的M&Aの実施:海外拡大、新事業創出への積極的活用

   DX推進による新たな価値の創造:データ活用による価値創造、新たなビジネスモデルの開発

   新事業創出:事業シナジー、社外との価値共創による新事業創出

② 事業ポートフォリオ・マネジメント

   ROICを基準に事業ポートフォリオを「成長力強化事業」と「収益力強化事業」に区分

   「成長力強化事業」=パーキングシステム部門、産機・環境システム部門、流体部門

   「収益力強化事業」=特装車部門、航空機部門

③ ROIC経営の浸透と推進

  ROIC逆ツリー展開、適正なキャッシュ・アロケーション

④ 人的資本の強化

  成長戦略に則った人材の獲得・育成、従業員エンゲージメントの向上

⑤ 製品・サービスを通じた環境、社会への貢献

  GHG(温室効果ガス)プロトコル Scope1・2のグループ会社への展開・Scope3の導入

    ステークホルダーへの提供価値の拡大による企業価値の向上

⑥ リスクマネジメント・コンプライアンスの強化

   気候変動や人権問題等の事業リスクのモニタリング、大規模自然災害や情報セキュリティへの対

   策強化、高いコンプライアンス意識の醸成等

 

 

2025年度は[SG-2026]の折り返しにあたる重要年度と認識し、事業活動を通じて収益力のさらなる向上、生産性や資本効率の改善など、掲げております経営目標の達成に向けて取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス(サステナビリティ共通)

  代表取締役取締役社長を議長とする取締役会は、サステナビリティ関連リスク・機会を企業経営に関する重要な課題・テーマとして捉え、監督・審議する責務を担っています。当社の取締役会は原則として毎月1回開催され、中期経営計画に基づきサステナビリティ関連の重要な経営課題について議論、検討するなど、取締役および執行役員の業務執行について監督を行っています。

当社は、長期的な視点に立った経営を志向し、企業経営におけるESG(Environment, Social, Governance)に関する諸課題に対応するため、「サステナビリティ会議」を設置しています。取締役副社長執行役員(サステナビリティ担当)を議長とする同会議は、重要課題(マテリアリティ)の特定およびKPIの設定、ESGの各要素に関する分科会(環境分科会、社会分科会、統治分科会)における検討等の進捗状況のフォローおよび統括、KPIの達成状況の確認および計画の見直し並びにそれらの状況の取締役会への報告(原則として年2回)を行うこととしています。

 


 

(2)戦略

  ①気候変動

気候変動が当社事業にもたらす潜在的な影響の大きさと長期的な不確実性に鑑み、当社事業に関わる気候関連リスク・機会を特定・評価するプロセスとして、シナリオ分析を行っています。 

詳細は2024年9月発行の「統合報告書 2024」を参照ください。

 

②人的資本(人材育成方針および社内環境整備方針等)
 当社グループでは、経営理念実現のために3つの柱で構成される人事基本方針を定めています。多様な価値観・視点・個性を容認、尊重するとともに、チームワークを大切にする「意識醸成」を基盤に、多様な人材の活躍を可能とする「人権尊重と社内環境整備」を通じて「人材育成」を図ります。具体的には、特定の戦略に捉われることのない普遍的な取組みとして、人材の多様性を生かす組織風土づくり、多様な働き方を可能とする仕組みづくりに加えて、人的資本経営の基本となる経営戦略と人材戦略の連動を実現するため、人材ポートフォリオの活用により、経営戦略を起点とした動的な取組みを実施し、経営戦略を実現するための人材の質と量を満足させることで、持続的な競争優位の源泉としての個人と組織の活性化を図ります。

 詳細は2024年9月発行の「統合報告書 2024」のP55~P58を参照ください。

 

(3)リスク管理(サステナビリティ共通)

事業遂行にかかるリスクについては、「新明和グループリスクマネジメント規程」を定め、各事業部およびグループ会社において事業特性に適合したリスクマネジメント体制を主体的に構築しています。一方で、本社においては各事業部およびグループ会社のリスクマネジメントの状況をモニタリングするとともに、災害リスクや財務リスク等、全社横断的なリスク対策を実施することにより、リスクマネジメント体制を確立しています。 

また、サステナビリティ会議は、本社および事業部門から報告を受けた情報に基づき、当社グループにおけるリスクマネジメント体制の整備状況および活動状況を確認するとともに、事業運営に及ぼす影響等に照らして全社の重大リスクを特定し、これらの情報を経営会議および取締役会に対し定期的に報告することにより、当社グループにおけるリスクマネジメントの有効性の確保に努めています。 

当社事業に関わるサステナビリティ関連リスク・機会のうち、特に重大なものは、重大リスクとして上記の全社的なリスクマネジメントの枠組みの中で管理していきます。

さらに、当社グループはサステナビリティ関連の機会についても、マテリアリティを通じて識別しています。具体的にはマテリアリティである「地球温暖化防止」に関する重点テーマとして、「環境負荷軽減「製品・サービス」の提供」を掲げ、省エネルギー・低炭素製品の開発・販売および低炭素サービス・事業の提供に取り組んでいます。また、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」や「働きやすい職場環境の整備」に関する重点テーマとして、「体制の構築」や「人材の育成・開発」などにも取り組んでおり、経営戦略と人材戦略の連動を図っています。これらの取り組みは、中長期的な企業価値の向上に資するものと位置づけており、中期経営計画を通じて事業戦略へと展開しています。

 


 

(4)指標及び目標

  ①気候変動

詳細は2024年9月発行の「統合報告書 2024」を参照ください。

 

②人的資本

経営戦略と人材戦略の連動を実現するための重点施策として、

・人的資本投資の計画的維持・拡大の実施

・DX人材ポートフォリオ・マネジメントの実施および事業戦略と連動したキャリア開発(リスキリング)の実施

・風通しの良い職場風土・上司と部下の価値観共有文化の形成

を定め、KPIおよび目標値に基づき、確実に人材戦略を実践し、経営戦略の実行を支えてまいります。

(a)人的資本投資額

2024年度における人的資本投資額は次のとおりであります。2025年度以降についても、2022年度の1人当たり人的資本投資額をベースに拡大を図ってまいります。

取組み方位

2023年度実績

(1人当たり実績 千円)

2024年度実績

(1人当たり実績 千円)

人材育成

197

222

社内環境整備

134

196

合計

331

418

 

(b)DX人材ポートフォリオ

1)DX人材の定義

当社におけるDX人材とは、「2022年12月に経済産業省が公開した『DX推進スキル標準』に基づいた5つの人材類型のケイパビリティのいずれかを有する人材」といたします。また、2002年に経済産業省が公表した「ITスキル標準」の「レベル定義」のうち、「レベル4」(※1)および「レベル3」(※2)を満たす人材を、上記記載の『ケイパビリティを有する人材』といたします。

(※1)専門レベルを駆使し、課題発見と解決をリードできるレベル

(※2)要求された作業をすべて独力で遂行するレベル

 

2)DX人材ポートフォリオのKPIと目標値

5つの人材類型のうち優先的に推進すべき「ビジネスアーキテクト」および「データサイエンティスト」の類型でケイパビリティを有する場合(重点ケイパビリティ)と、5つの人材類型のうちいずれかの類型でケイパビリティを有する場合(全方位ケイパビリティ)とに分けて設定いたします。

なお、KPIにおける2026年度及び2030年度目標について、DXをさらに推進させるため、それぞれ引き上げて設定しております。

 

KPI

2022年度

2024年度

2026年度

2030年度

D

X

重点ケイパビリティ

100

187

%

180

240%

全方位ケイパビリティ

100

150

%

150

200%

 

  (注)2024年度の実績結果から2026年度の目標値の再設定を検討中

(c)エンゲージメントサーベイスコア

1)エンゲージメントサーベイスコアの設定

2022年7月実施のD&Iサーベイ項目から「エンゲージメント向上」に直結する項目および同項目と相関関係がある10項目を選定し、各サーベイ質問項目ごとの回答について、「最高得点の回答の割合」を「ベスト回答(ポイント)」とし、「肯定的な回答の割合」を「ポジティブ回答(ポイント)」として、それぞれの回答の割合の平均値をエンゲージメントサーベイスコアとして設定いたしました。

2)エンゲージメントサーベイスコアのKPIと目標値

KPI

2022年度

2024年度

2026年度

2030年度

(長期ビジョン最終年度)

ベスト回答

11ポイント

13ポイント

15ポイント

20ポイント

ポジティブ回答

61ポイント

66ポイント

70ポイント

80ポイント

 

(d)チャレンジスコア

1)チャレンジスコアの設定

2024年2月に「新たな価値を生み出す従業員の意識醸成」創出のため、2022年7月実施のD&Iサーベイ項目から「従業員のチャレンジ意欲」に直結する項目および同項目と相関関係がある6項目を選定し、各サーベイ質問項目ごとの回答について、「最高得点の回答の割合」を「ベスト回答(ポイント)」とし、「肯定的な回答の割合」を「ポジティブ回答(ポイント)」として、それぞれの回答の割合の平均値をチャレンジスコアとして設定いたしました。

2)チャレンジスコアのKPIと目標値

KPI

2022年度

2024年度

2026年度

2030年度

(長期ビジョン最終年度)

ベスト回答

18ポイント

19ポイント

20ポイント

25ポイント

ポジティブ回答

67ポイント

67ポイント

75ポイント

85ポイント

 

 

詳細は2024年9月発行の「統合報告書 2024」のP37~P38をご参照ください。また、最新情報の更新として、「統合報告書 2025」を2025年9月頃発行予定です。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク項目

リスク内容

対応策

1.研究開発等の遅延

当社グループでは、多額の投資を要する新製品開発や研究開発において、顧客からの求償・訴訟や想定外の変更、原材料高騰等に伴う原価低減の遅延が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

顧客との綿密な打ち合わせに基づき事業計画を立案するとともに、進捗状況を定期的にモニタリングすることにより、重要課題の早期把握及び解消を図っております。

2.脱炭素対応遅れ

当社グループでは、温室効果ガス排出量削減に関する活動が計画どおりに進捗しない場合や、法令改正等に伴い適合しなくなった場合は、エネルギー調達コスト増加や炭素税増税等により業績等に影響を及ぼす可能性があります。

温室効果ガス排出量削減をサステナビリティ経営の重要課題とし、CO2排出量に関する管理指標(KPI)や目標値を定め、低減活動を実施しております。また、気候変動に関するシナリオ分析によりリスクを特定し対処しております。

3.急激な市場環境変化

当社グループは、押しなべて社会基盤の整備・強化に資する製品・サービスを提供しておりますが、ロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢の変動、想定を大幅に乖離した市場環境の変化や顧客計画の変更が生じた場合、経営の軌道修正を行う間において一時的に労働負荷の増大、納期の遅延や生産の縮小・停止等により業績等に影響を及ぼす可能性があります。

市場環境の変化や顧客計画の変更に対しては、当社グループの実態に即し、過去からの需要情報に基づく将来計画や生産調整により経営資源の配分を行っております。また、平素から残業上限時間の管理強化、一斉定時退場日設定などの施策により長時間労働の防止を図っております。

4.原材料価格の高騰等

世界的な半導体部品不足や原油、鋼材等の資源高、輸送コスト上昇等による原材料調達価格の高騰が長期化した場合、製造原価の上昇や、顧客への納品遅延による売上の機会損失により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

海外調達拡大や複数の調達ルート開拓、協力企業との共同原価低減の推進などを行うとともに、適正在庫の確保、設計変更による代替材料への変更等により、原材料、部品の安定調達を図っております。

5.カントリーリスク

当社グループは、複数の海外拠点において調達・生産・販売活動を行っているため、それぞれの拠点において突発的な政治的・経済的混乱(含む感染症拡大に伴うロックダウン)やテロ等のカントリーリスクが発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

平時から海外拠点における危険情報の収集、共有に努めるとともに、従業員に対し、カントリーリスク発生時の対応等について注意喚起を実施しております。

6.大規模自然災害

大規模な自然災害が発生した場合は、当社グループの事業運営に支障をきたすなど、業績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

防災等に関して各関係機関と連携して必要な措置や発生した場合の影響を最小限にすべく、BCM基本方針やBCPの策定、老朽化した工場の防災対策や刷新計画等を講じております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対応策

7.感染症パンデミック

感染症が流行した場合、当社グループの航空機セグメントにおいては、民間航空機の需要減少等による大幅な減産対応を余儀なくされる可能性があります。一定水準まで需要が回復しなければ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、感染拡大状況によっては、他のセグメントにおいても操業度の低下や営業活動の制限など、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

感染症の流行に対しては、ワクチンの職域接種、事務所等での換気、マスク着用の徹底、リモートワーク、時差出勤などの感染予防対策を講じ、事業継続に取り組むほか、感染拡大状況に応じ、固定費圧縮等の施策を実施し航空機需要減少等による影響の低減に努めてまいります。

8.労災・設備事故

当社グループは、生産・サービス活動を各拠点における従業員と重要な機械設備に依存しているため、重篤な労働災害が発生した場合や、重要な機械設備に偶発的な故障が発生した場合は、操業停止を余儀なくされるほか、指名停止処分や復旧費用、納期遅延による違約金等により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、職場におけるハラスメントや高残業等によるストレスにより従業員の健康やメンタルヘルスが悪化した場合、事業運営に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります

国内外の当社グループ及び協力会社において、安全衛生に関する教育・指導を徹底し、労働災害の未然防止に努めるとともに、当社グループ内で事故・災害が発生した場合に備え、原因究明、再発防止策の検討及び徹底を迅速に実施すべく、緊急連絡体制及び全社安全担当者会議を設置しております。一方、重要な機械設備については定期点検・整備等により偶発的な故障発生の予防に努めております。また、従業員の健康管理、快適な職場環境の整備に向け、ハラスメント相談窓口を設置するほか、ストレスチェック等により兆候の把握と早期対応に努めております。

9.情報漏洩

日々脅威が増しているサイバーテロやコンピュータウイルス等に関し、想定以上の脅威などが発生した場合、対処の内容によっては多額の費用や生産活動等の停止などが発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

サイバーテロやコンピュータウイルス等に対し、監視ツール導入や従業員への教育・訓練等を実施の上、セキュリティの強化に努めております。

10.製品瑕疵

当社グループでは、リコール対象製品等が顕在化した場合、該当する期間に製造・販売した製品への遡及対策が求められることから、対処の内容によっては多額の費用が発生し、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

主要な国内生産拠点において、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」の認証を取得し、品質の確保及び継続的改善に努めております。

11.サプライチェーン途絶

後継者不足などにより重要サプライヤ等の廃業の影響を受け、材料・部品の入手が困難となり、状況によっては納期の遅延や生産の縮小等により、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

サプライチェーンの早期情報収集や特定の取引先への過度の集中を避けるほか、適正在庫保有によるリスクの低減に努めております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対応策

12.法令違反

法令改正等に伴い、現行の業務内容では、適応しなくなる恐れがある状態、または適応していない状態であることが判明した場合は、過料や営業停止処分が科されるほか、社会的評価・信用の低下によって、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、2024年11月12日、特装車の架装物の販売価格の決定に関して、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受けております。また、当社は、2025年3月25日、機械式駐車装置の取引について独占禁止法に違反する行為を行っていたとして、公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けております

当社グループでは、法令遵守は勿論のこと、高い倫理観と責任感をもって行動することを「行動指針」及び「行動規範」に定め、役員及び従業員に配布、周知するとともに、コンプライアンスに関する研修及びアンケート調査を実施し、啓蒙に努めております。

当社は、公正取引委員会による二度にわたる立入検査並びに排除措置命令及び課徴金納付命令を受けたことを厳粛に受け止め、独占禁止法に関する教育、競合他社との接触に関する規則の制定等の再発防止策をはじめ、コンプライアンス体制の強化に向けた取り組みを進めております

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなど、緩やかな回復基調が継続した一方、物価の上昇、通商政策などアメリカの政策動向、金融資本市場の変動等により、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

こうした中、当社グループは、2030年を志向した長期経営計画[SG-Vision2030]のPhase2に当たる、中期経営計画[SG-2026]を策定し、企業価値向上に向けた諸施策を推進しております。

当連結会計年度の業績につきましては、受注高は291,499百万円(前期比0.0%増)、売上高は266,441百万円(同3.6%増)となりました。なお、当連結会計年度末の受注残高は318,778百万円(同9.4%増)であります。

損益面は、増収に伴い、営業利益は13,970百万円(同18.7%増)、経常利益は13,536百万円(同11.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,957百万円(同23.0%増)となりました。

総資産は、266,443百万円(同2.4%増)となりました。負債は、153,377百万円(同1.3%増)となり、純資産は、113,066百万円(同4.0%増)となりました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

 

(特装車セグメント)

車体等の製造販売は、受注、売上ともに増加いたしました。

また、保守・修理事業も、受注、売上ともに増加いたしました。

このほか、林業用機械等は、受注は減少し、売上は増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は122,508百万円(前期比14.7%増)、売上高は108,204百万円(同7.6%増)となり、営業利益は4,899百万円(同111.8%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は126,285百万円(同12.8%増)であります。

総資産は、固定資産の増加などにより、89,808百万円(同8.1%増)となりました。

 

(パーキングシステムセグメント)

機械式駐車設備は、受注は減少し、売上は増加いたしました。

また、航空旅客搭乗橋も、大口案件を受注した前期に比べ受注は減少し、売上は増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は44,141百万円(前期比18.8%減)、売上高は45,748百万円(同10.7%増)となり、営業利益は3,333百万円(同20.5%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は58,522百万円(同0.7%減)であります。

総資産は、売上債権や固定資産の増加などにより、32,768百万円(同22.7%増)となりました。

 

(産機・環境システムセグメント)

メカトロニクス製品は、真空製品の受注及び売上が減少した結果、分野全体でも受注、売上ともに減少いたしました。

また、環境関連事業は、大口案件を受注した前期に比べ、受注は減少し、売上は増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は36,489百万円(前期比30.6%減)、売上高は33,270百万円(同22.6%減)となり、営業利益は2,208百万円(同34.3%減)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は58,029百万円(同8.0%増)であります。

総資産は、売上債権の減少などにより、28,709百万円(同19.8%減)となりました。

 

 

(流体セグメント)

国内、海外ともに需要が堅調に推移し、受注及び売上が増加した結果、当セグメントの受注高は28,693百万円(前期比8.9%増)、売上高は27,512百万円(同4.5%増)となり、営業利益は4,382百万円(同6.8%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は8,307百万円(同16.6%増)であります。

総資産は、固定資産の増加などにより、25,029百万円(同3.3%増)となりました。

 

(航空機セグメント)

防衛省向けは、受注、売上ともに増加いたしました。

また、民需関連も、受注、売上ともに増加いたしました。

この結果、当セグメントの受注高は42,891百万円(前期比31.2%増)、売上高は33,706百万円(同5.6%増)となり、営業利益は1,970百万円(同9.9%減)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は53,150百万円(同20.9%増)であります。

総資産は、棚卸資産の増加などにより、44,550百万円(同2.9%増)となりました。

 

(その他)

建設事業において、受注が減少したものの、売上が増加した結果、当セグメントの受注高は16,774百万円(前期比9.8%減)、売上高は18,000百万円(同28.9%増)となり、営業利益は1,462百万円(同119.2%増)となりました。

なお、当連結会計年度末の受注残高は14,482百万円(同7.8%減)であります。

総資産は、固定資産の減少などにより、30,239百万円(同2.1%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、28,282百万円(前期比23.6%増)となりました。これは、投資活動の結果支出した資金が10,806百万円あったことや、財務活動の結果支出した資金が5,115百万円あったものの、税金等調整前当期純利益を計上したことなどに伴い営業活動の結果得られた資金が20,499百万円あったことなどによるものであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は20,499百万円(前期比45.7%増)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益13,265百万円、売上債権の増減額6,203百万円、減価償却費5,648百万円であり、支出の主な内訳は、仕入債務の増減額3,124百万円、棚卸資産の増減額2,746百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果支出した資金は10,806百万円(前期比31.5%増)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が10,246百万円あったことなどによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果支出した資金は5,115百万円(前期比13.1%減)となりました。これは配当金の支払が3,268百万円連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出1,733百万円あったことなどによるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特装車

108,233

7.3

パーキングシステム

46,639

10.8

産機・環境システム

33,855

△21.8

流体

27,813

4.1

航空機

35,552

15.2

合計

252,092

3.4

 

(注)  金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

特装車

122,508

14.7

126,285

12.8

パーキングシステム

44,141

△18.8

58,522

△0.7

産機・環境システム

36,489

△30.6

58,029

8.0

流体

28,693

8.9

8,307

16.6

航空機

42,891

31.2

53,150

20.9

その他

16,774

△9.8

14,482

△7.8

合計

291,499

0.0

318,778

9.4

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特装車

108,204

7.6

パーキングシステム

45,748

10.7

産機・環境システム

33,270

△22.6

流体

27,512

4.5

航空機

33,706

5.6

その他

18,000

28.9

合計

266,441

3.6

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、販売実績が総販売実績の100分の10以上となる相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

当社グループは、2026年度を最終年度とする中期経営計画[SG-2026]において、「売上高3,200億円」「海外売上高800億円」「営業利益180億円」「ROE10%以上」「ROIC7%以上」を目標として掲げております。

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高については、産機・環境システムセグメントにおいて、メカトロニクス製品の売上が減少したものの、特装車セグメントにおいて、前期に比べて主要部品の供給遅延が緩和したことに加え、売価改善効果の顕在化などにより売上が増加したこと、パーキングシステムにおいて、機械式駐車設備、航空旅客搭乗橋ともに売上が増加したこと、その他セグメントにおいて、建設事業の売上が増加したことなどから、全体では266,441百万円(前期比3.6%増)となりました。

海外売上高については、産機・環境システムセグメントの売上が減少したことなどから、45,122百万円(同15.2%減)となりました。

利益については、増収効果により、営業利益は13,970百万円(同18.7%増)、経常利益は13,536百万円(同11.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,957百万円(同23.0%増)となりました。

ROEについては、親会社株主に帰属する当期純利益の増加に伴い8.2%(同1.1ポイント増)、ROICについては、営業利益の増加に伴い6.0%(同0.7ポイント増)となりました。

 

財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は、266,443百万円(前期比2.4%増)となりました。これは、売上債権は減少したものの、棚卸資産や有形固定資産が増加したことなどが主な要因であります。

負債は、仕入債務は減少したものの、未払費用や契約負債の増加などにより、153,377百万円(同1.3%増)となりました。

純資産は、配当金の支払いはあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどにより、113,066百万円(同4.0%増)となりました。

これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の41.1%から42.0%に上昇しました。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

当社グループの資金需要の主なものは、製品製造のための材料や部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金と生産設備の拡充や合理化を目的とした設備投資資金であります。

財務政策は、安定した財務基盤の維持と適正な負債比率のコントロールによる資本コストの最適化を基本方針としております。

資金調達は、主として営業活動から得られるキャッシュ・フローと金融機関からの借入を基本としております。なお、当社は緊急の資金需要に備えて、月商1ヶ月程度の手元資金を確保するとともに、取引金融機関との間にコミットメントラインを設定しております。また、国内子会社の現預金はCMS(キャッシュマネジメントシステム)によって当社が集中管理し、グループの資金効率の向上に努めております。

当社グループは、事業活動を円滑に維持し、持続的な成長を実現する上で十分な手元資金と資金調達能力を有しており、将来の資金需要に対して不足が生じる懸念は少ないと判断しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っておりますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。

将来の業績及び課税所得実績の変動により、繰延税金資産の計上に重要な影響を及ぼす可能性があります。

b.退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しております。割引率は退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

c.工事損失引当金

受注時における戦略的低採算案件や工事契約における未引渡工事のうち損失の発生する可能性が高く、工事損失額を期末において合理的に見積ることが出来る工事等については、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しております。

技術的難易度の高い長期請負工事等において、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

d.完成工事高及び完成工事原価の計上

成果の確実性が認められる工事契約については、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度の測定は、履行義務の充足のために発生した費用が、当該履行義務充足のために予想される総費用に占める割合に基づき見積っております。想定していなかった原価の発生等により進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

e.固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングをセグメント別に行い、収益性の低下や時価の下落といった兆候の見られる資産グループについては、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて減損処理を実施しております。

将来の収益性の低下や時価の下落が生じた場合は、これら固定資産の評価に重要な影響を及ぼし、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

 当社は、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約及びシンジケートローン契約を締結いたしました。
  契約に関する内容等は、以下のとおりであります。

 

(1)金銭消費貸借契約

①契約締結日:2019年9月24日

②相手方属性:都市銀行

③期末残高 :130億円(トランシェA:50億円・トランシェB:80億円)

 弁済期限 :トランシェA:2029年11月30日・トランシェB:2026年11月30日

 担保の内容:担保無し

④特約の内容:2020年3月決算期を初回とする各年度決算期の末日における借入人の連結の損益計算書におい

       て、2期連続して経常損失を計上しないこと。

 

(2)シンジケートローン契約

①契約締結日:2025年3月19日

②相手方属性:都市銀行・信託銀行

③期末残高 :50億円

 弁済期限 :2030年3月25日

 担保の内容:担保無し

④特約の内容:2024年3月に終了する決算期以降、各年度の決算期に係る借入人の連結の損益計算書上の経常損

       益に関して、それぞれ2期連続して経常損失を計上しないこと。

 

(3)シンジケートローン契約

①契約締結日:2025年3月19日

②相手方属性:都市銀行・地方銀行・信用金庫連合会

③期末残高 :140億円

 弁済期限 :2030年3月25日

 担保の内容:担保無し

④特約の内容:A.2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産

       の部の合計金額を、2024年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金

       額の75%に相当する金額、又は直近の事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産

       の部の合計金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高いほうの金額以上に維持すること。

       B. 2025年3月期末日及びそれ以降の各事業年度末日における連結損益計算書に記載される経常

       損益を2期連続して損失としないこと。

 

6 【研究開発活動】

(1)当社グループが取り組む研究開発活動及び知的財産活動の方向性

当社グループは、「たゆまぬ技術革新で、安心な社会と快適な暮らしを支え続け、人々の幸せに貢献する」ことを経営理念に掲げております。その実践において、近未来を志向した「長期ビジョン」を策定しており、ここでは「グローバルな社会ニーズに応え、都市・輸送・環境インフラの高度化に貢献する価値共創カンパニーを目指す」ことを謳っており、研究開発活動においては、社会インフラと関わりの深い既存事業を軸に、個々の事業部門、あるいは社内外の「共創」を通じて、長期ビジョンに描く姿の具体化を志向しております。

また、知的財産活動においては、有力知財の確保、他社権利の尊重、自社ブランドの保護に主眼を置いた戦略を立案・実行しております。

 

 

(2) 事業セグメント別研究開発活動

① セグメント別研究開発費(2025年3月期)  (単位:百万円)

セグメント

研究開発費

特装車

782

パーキングシステム

627

産機・環境システム

378

流体

231

航空機

818

その他(本社を含む)

506

合計

3,345

 

 

② セグメント別研究開発テーマ

特装車セグメント

当セグメントでは、「都市」「輸送」「環境」における社会課題の解消・改善を志向した各種商品・サービスの研究開発に取り組んでおります。

・廃棄物収集業務効率化システムの商品化

廃棄物収集業界のドライバーの負担軽減、安全性向上、収集効率の向上、車両管理負担軽減、メンテナンス費用の削減を志向したシステムの開発に、バス・鉄道用電装機器等の製造及び販売・サービスを手掛けるレシップ株式会社と共同で取り組みました。

・EVトラックへの対応

前連結会計年度に続き、カーボンニュートラル実現のため、二次電池や水素燃料電池で走行するシャシをベースにした塵芥車やダンプトラックの開発に積極的に参画しております。

 

パーキングシステムセグメント

当セグメントでは、機械式駐車設備の利用者や管理者の利便性・安全性の向上、空港グランド業務の効率向上に寄与する航空旅客搭乗橋の自動化等に関する研究開発に取り組みました。

・機械式駐車設備に関しては、機械式駐車設備操作支援ツール「Spasa(新明和パーキングサポートアプリ)」、人手不足対策・保守品質の均一化を志向した遠隔監視点検システム「SMART MAIN」の機能拡充や、機械式駐車設備におけるEV充電機能のバリエーション拡大、安全・環境に配慮した機械式駐車設備の高度化などに取り組みました。

・航空旅客搭乗橋に関しては、自動装着機能を遠隔で制御する技術や、バリアフリー対応製品を開発したほか、各航空施設の要求に応える機能開発に取り組みました。

 

産機・環境システムセグメント

当セグメントでは、自動車産業分野を中心に、市場の変化や顧客要求を反映したラインアップの拡充、省人化に対応する製品開発に取り組むとともに、循環型社会を支える廃棄物の中間処理設備や、施設運営の効率化に寄与する製品開発に注力しております。

・メカトロニクス製品関連では、自動電線処理機に関しては、複数国での使用を想定し、省人化や顧客要求に沿ったカスタマイズ開発に取り組みました。また、自動機(ダイレクトドライブモータ)は時流に沿った製品構成・付加価値向上に取り組みました。

・環境関連に関しては、デジタライゼーションの推進により、中間処理施設・製品の安全面・効率面向上の具体化に取り組みました。

 

流体セグメント

当セグメントでは、下水道市場で使用される製品の省エネを目的とした性能向上、豪雨災害の激甚化に伴う水中ポンプ大型化への対応、国内外の顧客に向けた高付加価値製品の開発、及び各種製品を長期間安心してご使用いただくためのサービスに関連した開発に取り組んでおります。

・マンホールポンプ市場で好評価を得ている高効率・高通過性水中ポンプの更なる異物通過性向上及び省エネ化を志向し、流体解析、3Dプリンタを用いた模型製造、実機試験等の基礎研究を継続実施しております。

・近年の豪雨災害の激甚化に伴う水中ポンプの大型化への対応、及び軽量化を目的とした減速機付水中ポンプ用モータの開発に取り組んでおります。

・北米のリフトステーション市場で好評価を得ている高効率・高通過性ポンプに対する大出力機種の要望増加に応えるべく、製品開発と市場投入を段階的に行っています。

 

航空機セグメント

当セグメントでは、観測・監視・通信など、幅広い分野で応用可能な固定翼型無人航空機の実用化に向けた研究開発に取り組んでおります。

・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム/無人機技術を用いた効率的かつ機動的な自律型無人探査機(AUV)による海洋観測・調査システムの構築」における研究開発課題「海空無人機による海洋観測・監視・調査システムの構築」に対して、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、いであ株式会社、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所と共同提案した内容が採択されました。この中で当社は、自動投入・揚収に対応するAUVを、調査海域まで自動で運搬・投入・揚収する輸送システムを構成する無人飛行艇の開発を担っております。

・株式会社Space Compass、株式会社三菱総合研究所と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「経済安全保障重要技術育成プログラム」における「高高度無人機による海洋状況把握技術の開発・実証」について、「HAPSによるリモートセンシングを用いたMDAシステムと運航管理技術の開発・実証」を共同提案し、採択されました。この中で当社は、成層圏における実証環境構築のためのHAPSの設計、製造を担います。

HAPS…High Altitude Platform Station(高高度プラットフォーム)

MDA…Maritime Domain Awareness(海洋状況把握)

 

その他(本社)

本社傘下の技術開発部では、主に現有のコア技術においてモビリティの変革を促すCASE(「Connected(コネクテッド)」「Automated/Autonomous(自動運転)」「Shared&Service(シェアリング)」「Electric(電動化)」)に関連した開発に取り組んでおり、当連結会計年度においては、事業部門の技術開発支援を行うとともに、自律走行ロボット(Autonomous Mobile Robot)を活用した配送システムの研究開発に取り組みました。

また、新事業戦略本部では、東京都が公募した「東京における水素実装課題解決技術開発促進事業」に高圧ガス工業株式会社、株式会社H2&DX社会研究所とともに共同提案した内容が採択されました。この中で当社は、ユニットの開発、製造、据付、実証及びユニット性能評価を担います。