第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、“精密化(PRECISION)”と“生産性の向上(PRODUCTIVITY)”を意味する「P&P」の経営理念の下、「精密技術を通じて、世界の産業の高度化をサポートする」ことを使命として、広く産業社会の進歩に貢献し、お客様・株主・地域社会・社員等の関係者各位との相互の発展に寄与することを目標に活動しております。

また行動理念としてChallenge & Create(C&C)の精神を掲げ、常に新しい技術と商品・サービスを開発し挑戦し続けること、そして「精密のクロダ」を品質と信頼のブランドとして世界中で確立することを目標としています。

 

(2)経営戦略及び目標とする経営指標

当社グループでは2021年度~2025年度の5年間を対象とする中期経営計画 Vision 2025を策定し、3つの事業分野においてそれぞれ世界的にニッチ・トップとなることを目指すとともに、成長戦略の実行と収益力の強化、人材育成により企業価値の向上を図ることを掲げ、中期的に営業利益率4%超~8%を安定的に確保する体制の確立を図ることを目指しております。

各事業分野の事業ビジョン

駆動システム事業:誰よりも早くお客様のニーズにこたえられる小型直動システムメーカーを目指す。

金型システム事業:高効率モーターコアのスペシャリスト、駆動モーター用大型金型と薄板コアでNo.1を目指す。

機工・計測システム事業:確かな計測と加工技術で Smart Solution プロバイダーを目指す。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループでは2021年度~2025年度の5年間を対象期間とする中期経営計画 Vision2025 を策定し、創業100周年を迎える2025年度までの期間を『新たな成長軌道への飛躍と安定的に利益を生む収益構造への転換を目指す5年』と位置付け、今次の中期経営計画を着実に実行・達成していくことが、当面の重要課題と認識しております。

 具体的には、駆動システム事業では、直動システム商品の拡販、顧客の増産要求に柔軟に対応出来る、より生産性の高い自動化製造ラインの拡充、生産管理強化による納期短縮、半導体以外の市場分野の開拓などに重点的に取り組んでまいります。金型システム事業では、電動車向けを中心とした高効率モーターコア量産技術の向上と生産体制の整備によるモーターコア量産プロジェクトの確実な推進、国内外のアライアンス戦略の推進、モーターコア用金型の生産能力増強、収益性の改善などに重点的に取り組んでまいります。機工・計測システム事業では、当社独自の技術による高精度油圧冶具や高効率研削装置等の新商品・ソリューション開発の加速、海外販売・サービス提供網の強化等を通じて業績向上への取り組みを引き続き進めてまいります。

 また、DX化推進を3事業共通の基盤とし、①収益力強化、②技術力強化、③顧客関係強化を図ることにより、それぞれの事業に於いて世界的に「ニッチ・トップ」となることを目指します。3事業が相互に補完し合い、全社ベースで安定的に収益とキャッシュフローを拡大し、成長分野への再投資と利益還元を適切な水準で実施することにより、成長戦略の実現と企業価値の向上を目指しています。

 ESG経営への取り組みも更に強化していきます。

 環境面では、2020年10月に表明された政府目標を踏まえ、2050年度に「カーボンニュートラル」の達成を目指します。具体的には、各種省エネ施策の実施、全社用車のEV化、工場への太陽光パネルの設置等に加え、経済合理性のある調達価格であることを前提とした再エネ由来等のカーボンフリー電力への切り替え、さらに削減が困難な部分の排出量については、植林(J-クレジット制度)等によるカーボンオフセットの施策を展開することにより、最終的なカーボンニュートラル達成を目指してまいります。これらの計画を着実に実行するとともに、低炭素社会の実現に貢献できる高効率モーターコア等の技術開発を継続して行ってまいります。

 人的資源の活用面では、オフィスや工場に於いてDX化の推進を図りながら、働き方改革や人事制度の見直し、人材育成を推進し、全社員がより働き易く、より働き甲斐がある制度・職場環境を作り上げていく所存です。

 また、IR活動を更に充実させ、積極的に情報発信をしながら株主の皆様との対話を緊密にし、ガバナンスを一層磨き上げ、企業価値の向上を図ることも重要な課題と捉えています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する考え方

当社および当社の子会社(以下、当社グループという)は、株主・顧客・従業員および社会からの信用が当社グループの長期的繁栄の基礎であることを認識し、当社グループの経営理念と行動理念に基づき、企業価値の継続的な向上、顧客満足度の向上、社内環境の改善および、より良い社会の構築に貢献することを目指して業務を推進しております。当社グループは、これらの実現には、持続可能な社会であることが根源的な前提となることを認識し、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営の取り組みを行っております。

 

(2)具体的な取組み

当社グループでは現在の中期経営計画「Vision2025」に於いてESG経営への取り組みを強化しております。

環境(Environment)では、

・環境方針の順守、環境マネジメントの継続的な改善

・CO2排出量削減目標の達成に向けたアクション

・環境負荷の低減に貢献する分野での事業展開 等の推進に取り組んでおります。

 

社会(Society)では、

・品質・健康・安全第一への継続的取り組み

・ワークライフバランスと多様性、高齢化社会に配慮した人事制度の拡充

・人材育成

・働き方改革の更なる推進

・スマートワーク構想の具体化 等の推進に取り組んでおります。

 

ガバナンス(Governance)では、

・グループ全社でのコンプライアンス、内部統制制度の徹底

・情報セキュリティー管理の強化 等の推進に取り組んでおります。

 

① ガバナンス

当社グループの環境保全活動に係る実施体制とガバナンスは以下のとおりであります。

 

・基本方針       全社的な環境保全活動の指針となる「基本方針」を定めて一般に公開するとともに、全従業員に対して環境教育、社内広報活動等を行い「基本方針」ならびに地球環境保全の大切さを周知し、啓発活動を実施しております。

 

・ISO14001認証    当社グループの国内外の工場では「基本方針」のもと、ISO14001認証を取得し、同規格に適合した環境マネジメントシステムを構築し実践しております。

 

・グリーン調達基準   当社グループでは環境負荷の少ない製品をお客様に提供することを目的として「グリーン調達基準」を定め、基準に従った調達活動を通して地球環境を保全し、循環型社会を構築する一助となることを目指しております。

 

・CO2排出量削減目標   「基本方針」のもと「CO2排出量削減」の具体的な目標値・期限を定めて計画的に活動するとともに活動内容を定期的に見直し、継続的に改善を進めております。

 

これら活動の実施内容と進捗状況は、代表取締役社長を委員長として本社に設置した「中央環境安全衛生委員会(EHS委員会)」で四半期毎にモニタリングし課題を審議するとともに、少なくとも年1回、経営会議および取締役会に報告され、トップマネジメントによる評価を受ける体制としております。

 

② 戦略

(イ)環境保全活動

当社グループでは、「CO2排出量削減」の具体的な目標値・期限を定めて計画的に活動を行っていることに加え、製造業としての企業活動において、

 

第一に商品での貢献として、

・BSアクチュエーターによる、従来の油圧・空気圧方式からの電動化への転換促進、

・高効率モーターコアによる省電力、エコカーの普及促進

・工作機械付帯システム「エコセーバー」による加工現場での環境負荷の低減

・平面研削盤のテーブル駆動の電動化 を行っております。

 

第二に工場における貢献として、

・工場屋上等への太陽光発電パネルの設置、

・省エネルギー仕様の空調設備への更新、照明のLED化などの省エネルギー対策投資

・廃棄物の削減などを行っております。

 

第三に「グリーン調達基準」に基づく調達活動により、お客様に提供させていただく製品についても、環境負荷の少ない原材料・部品を調達・使用することによって、環境負荷を低減すべく努めております。

 

(ロ)人材育成ならびに社内環境整備

当社は、女性、外国人、中途採用者を積極的に採用し、性別や国籍、採用ルートによらず能力や実績、適性を総合的に評価・判断することにより、多様な才能や価値観を持つ人材を確保しております。人材育成に関する取り組みや方針については、以下の通りです。

 

・ 「社員一人ひとりの成長が会社の発展につながる」という考えのもと、人材育成の環境作りを重視し、社員が有する能力や資質を最大限に引き出す多彩な施策やプログラムを用意しています。また、精密なものづくりを次世代へとつなげ、発展させていくための取り組みを大切にしています。

 

・ 「チャレンジ60」と銘打った全社員参加型の資格取得制度を通じて個々のスキルアップと多能工化を図っております。1級以上の技能士60名を育成するという所期の目的は達成致しましたが、更なる高みを目指し引き続き継続してまいります。

 

・ 代表取締役社長直轄の組織である研修センターを設置し、”精密のDNA”を次世代に伝承していく実践の場として「クロダものづくり道場」を開設し、機械加工や測定を実地に体験する場としてのみならず、開発商品の試作や新たな工法へのチャレンジ等、多様なアイディアを創造することができる場として活用しております。

 

・ 女性社員に対しては、キャリア面談を通して生涯にわたるキャリアを考える機会を与えており、管理職候補となる女性社員を増やすべく取り組んでおります。

 

・ 人材データベースを整備の上、各自の経歴や得意分野、キャリアビジョンを体系的に可視化することで、現部署の枠にとどまらず、全社的視点での最適配置と育成を目指しております。

 

また、社内環境整備については、テレワークの実施、フレックスタイム制度・時間単位休暇制度の導入、仕事と育児の両立を図るための取組みや制度の充実(くるみんマーク認定を取得)、高齢者の能力や資質を最大限に引き出す人事制度への移行等により、属性や価値観によらず多様な人材が活躍でき、ワークライフバランスを保ちながら安心して働き続けられる働きがいのある職場環境を整備しています

 

③ リスク管理

 当社グループでは、事業推進上の課題、EHS委員会での審議・報告内容、ステークホルダーからの要望・期待などを総合的に勘案してリスクと課題を特定し、うち当社グループへの影響度が大きいリスクは「全社的な取組み課題」として、所管組織を指定して対応を促進し、四半期毎に開催されるリスク・コンプライアンス委員会(以下、RC委員会)に於いて進捗状況をモニタリングする体制としております。また、RC委員会の活動内容は、少なくとも年1回、経営会議と取締役会に報告され、トップマネジメントによる評価を受ける体制としております。

④ 指標及び目標

 当社は、2050年度にカーボンニュートラルを達成することを目指し、2018年度を基準年(CO2排出量8,600[ton]) として2030年度のエネルギー起源CO2排出量(Scope1+Scope2)を40%削減する目標を策定しております。

 具体的には、各種省エネ施策の実施、社用車のEV化、工場への太陽光パネルの設置等に加え、経済合理性のある調達価格で購入できる環境になっていることを前提として再エネ由来等のカーボンフリー電力への切り替え、さらに削減が困難な部分の排出量については植林(J-クレジット制度)等によるカーボンオフセットを含めた施策により、2050年度の実質的CO2排出量ゼロを目指してまいります。

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また当社では、上記「②戦略(ロ)人材育成ならびに社内環境整備」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

正社員に占める女性比率

2028年3月までに20%以上

10.2%

管理職に占める女性労働者の割合

2028年3月までに5%以上

2.2%

 

なお、当該指標について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のようなものがあります。以下の項目は当社グループの事業展開上リスクとなる可能性があると考えられる主な要因を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項に関しては、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)販売市場について

 当社グループ主力商品の販売先は、特定業種への依存度が高いものが多くあります。ボールねじおよび精密測定装置については当社の精密技術を評価頂いている半導体製造装置・各種分析関連装置分野および電子・デバイス分野、金型システムと要素機器については自動車業界、工作機械においては金型関連業界等であります。当社グループとしては販売先市場の多様化に努めてまいりますが、このような特定業種への依存は、当該業種の景気変動や、大きな技術革新等の動向によって、当社グループの経営成績・財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、顧客の海外生産への移行や新興国メーカーの市場占有率増加に対応して、当社グループは海外販売体制の強化等によって市場の海外移転に対応する努力を重ねておりますが、その動きが予想を超えて加速した場合は、当社グループの経営成績・財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 (2)生産体制について

 当社グループ製品の多くは、顧客からの個別仕様による受注請負型製品であります。そのため、在庫の陳腐化による不良在庫のリスクは少ない反面、急速に進みつつある短納期化の流れに対し、顧客動向の把握と短納期生産体制の確保ができない場合には受注が低下し、経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 (3)技術力、製品開発力、研究開発力について

 アジア諸国の技術力の急速な進化により、日本全体の製造業の技術力は急速にその差を縮められつつあり、当社グループもこの例外ではありません。また、製品寿命も極端に短くなる傾向にあり、開発期間の短縮が必須となっています。今後、当社グループがこのような業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品をタイムリーに市場に提供できない場合には将来の成長と収益性を低下させ、経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 (4)のれんの減損について

 当社グループは、現連結子会社である欧州・米国に拠点を有するKURODA JENA TEC HOLDINGS LTD.及びその子会社の買収に伴い、相当額ののれんを連結貸借対照表に計上しており、当連結会計年度の連結貸借対照表において、のれん7億円を計上しております。当社グループは、当該のれんにつきまして、事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えております。KURODA JENA TEC HOLDINGS LTD.の事業子会社であるドイツ子会社および米国子会社については、両社を合算した業績で評価しております。コロナウイルス感染症等の流行以降、ドイツ子会社の業績が悪化しており、今後の事業環境の変化等により、将来の超過収益力について期待された成果が得られないと判断した場合には、減損リスクが顕在化する可能性があります。

 (5)関係会社について

 当社は、収益基盤の多様化を進めるため複数の関係会社を有しております。これらの関係会社は、経済環境の変化や予測できない費用の発生等の影響により、当社グループが計画したとおりの成果が得られる保証はなく、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、連結財務諸表において各関係会社の業績は反映されておりますが、関係会社各社の業績によっては、個別財務諸表において関係会社に対する債権の貸倒れ及び関係会社株式の評価損が認識される可能性があります。

 (6)固定資産の減損について

 当社グル-プは、有形固定資産等を保有しておりますが、これらの資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。しかし、将来の経営環境の変化等により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 (7)災害による影響について

 当社グループは、設備機械及び人材の有効活用を図り、生産性を向上させることを目的とし、一品種一工場生産または一業種一工場生産を行っていますが、ひとつの工場が存在する地域で、大規模な地震、風水害等操業を中断せざるを得ない事象が発生した場合、当該工場で製造する品種または業種の生産能力が著しく低下する可能性があります。

 (8)国際活動および海外進出について

 当社グループは、アジアにおいては、大韓民国、中華人民共和国及びマレーシアに、欧米においては英国、ドイツ及び米国に海外事業拠点を有しております。これらの地域における事業は、以下に挙げるようないくつかのリスクが存在します。

  ①予期しない法律または規制の変更
 ②不利な政治または経済要因
 ③税制変更の可能性による影響
 ④テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱
 ⑤為替レートの変動
これらの事象が発生した場合は、当社グループの経営成績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 (9)人材について

 当社グループ製品の製造は、高精度な加工・計測技術が基本となっており、それを支えるのは永年の経験を有する優秀な技術者・技能者群であります。この技術・技能の継承は会社にとっての重要課題であり、当社グループにおいても継承の努力を重ねてまいりますが、近年の優秀新卒者の製造業への就職者数の減少や、社員の高齢化・退職により、当社グループにおける技術・技能の継承がスムーズに行われない場合には、将来の成長、経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 (10)保有有価証券について

 当社グループは長期保有を目的とした市場性のある株式を保有しておりますが、今後全般的に大幅な株価下落が続く場合には、当該株式に減損または評価損が発生し、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼすとともに自己資本比率の低下を招く恐れがあります。

 (11)繰延税金資産について

 当社グループは、将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断して貸借対照表上に計上しております。将来の課税所得が、当初の計画どおり得られない場合には、評価性引当額を計上することにより、繰延税金資産を減額することになり、その結果、当社グループの当期純利益に影響を与える可能性があります。

(12)財務制限条項について

 当社が、金融機関と締結しているコミットライン契約において、財務制限条項が定められており、当社業績が低迷し、純資産の減少額が定められた限度を超えた場合に、財務制限条項に抵触する場合があります。この場合、借入金の期限の利益喪失事由にあたり、借入金の即時返済を求められる等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(13)製品の品質にかかるリスクについて

 当社グループは製品の品質には細心の注意を払っています。しかしながら、当該製品の不具合等による販売停止及び製品回収あるいは損害賠償等が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の概要

当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の継続、昨年末まで続いた中国における所謂「ゼロコロナ政策」による経済活動の停滞、米国をはじめ世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響により、景気の減速感が強まりました。またコロナ禍下での「巣ごもり需要」の反動等の影響からIT機器の売上が減少し、IT業界の業績悪化や半導体需要の縮小を惹き起こしました。

国内においては、新型コロナウイルス感染対策の進展と行動制限の緩和により経済活動の正常化が進んだものの、為替相場が一時大きく円安に振れ、エネルギー価格や食料品価格の高騰と相まって物価上昇を招くなど、経済活動に大きな影響が及びました。

こうした状況下、当社グループにおいては半導体・液晶関連装置市場向け駆動システム商品の受注が調整局面を迎えたものの、自動車向け金型システム商品の需要が好調に推移し、受注高は21,958百万円(前年同期比1,969百万円、9.9%増)となりました。売上高は駆動システムの受注残の消化や、金型システムの売上増が大きく寄与し22,746百万円(前年同期比4,703百万円、26.1%増)となりました。

利益面に関しては、品種構成の変化、物流費の増加、電力料の高騰等の影響はあったものの増収効果が寄与し好調に推移しましたが、ドイツ現地法人において工場移転に伴う減収と一時的な移転費用が発生し、連結営業利益は1,284百万円(前年同期比50百万円、3.8%減)となりました。経常利益は為替差益118百万円やロイヤリティ119百万円等の営業外収益もあり1,533百万円(前年同期比95百万円、6.6%増)と増益となりました。

また、特別利益として政策保有株式売却益96百万円を計上した一方、機工・計測システムセグメントにおいて特別損失として固定資産減損損失76百万円を計上いたしました。親会社株主に帰属する当期純利益は906百万円(前年同期比342百万円、60.8%増)と大幅な増益となりました。

 

セグメントの業績は以下のとおりです。

なお、下記セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高を含めて表示しております。

 

 ○ 駆動システム

 当セグメントでは、半導体・液晶関連装置市場向け駆動システム商品の受注が第3四半期連結会計期間より生産調整局面を迎え、受注高は7,275百万円(前年同期比2,728百万円、27.3%減)となりました。一方売上高は潤沢な受注残を背景に生産体制増強に努めた結果8,966百万円(前年同期比595百万円、7.1%増)となりました。当セグメントの営業利益は、黒田精工単体としては過去最高を記録しましたが、海外子会社の移転に伴う減収と一時的な費用の増加等があり、1,030百万円(前年同期比107百万円、9.4%減)となりました。

 

 ○ 金型システム

 当セグメントでは、車載用モーター向け金型及び周辺システムに加えモーターコア等の受注急増により、受注高は10,645百万円(前年同期比4,680百万円、78.5%増)と大幅な増加となりました。受注高の増加に伴い売上高も同様に9,798百万円(前年同期比3,813百万円、63.7%増)と大幅な増収となりました。

利益面においては、増収が寄与した一方で、急激な受注増に対応して増産する為に外注加工費・資材購入費・償却費・物流費等が増加し、営業利益は366百万円(前年同期比92百万円、33.7%増)となりました。

 

 ○ 機工・計測システム

 当セグメントでは、自動車業界の生産減や部品納期の長期化等の影響を受けて受注高は4,055百万円(前年同期比22百万円、0.6%増)と横ばいで推移しましたが、受注残の消化と積極的な調達努力により、売上高は3,999百万円(前年同期比299百万円、8.1%増)と前年同期を上回りました。収益面では、子会社の事業縮小による収益減、原価上昇の影響や品種構成の変化もあって依然として厳しい状況が続いており、営業損失81百万円(前年同期は営業損失52百万円)となりました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は25,402百万円となり、前連結会計年度末と比較して3,355百万円増加しました。これは主に現金及び預金、棚卸資産の増加等により流動資産が2,638百万円増加し、建設仮勘定の増加等により固定資産が716百万円増加したことによるものです。

負債合計額は14,672百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,431百万円増加しました。これは主に短期借入金の増加等により流動負債が2,301百万円増加し、退職給付に係る負債の増加等により固定負債が129百万円増加したことによるものです。

また、当連結会計年度末の純資産は10,730百万円となり、前連結会計年度末と比較して923百万円増加しました。これは主に利益剰余金の増加等により株主資本合計が782百万円増加し、為替換算調整勘定の増加によりその他包括利益累計合計額が120百万円増加したことによるものです。

 

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に対し1,113百万円増の3,960百万円となりました。各キャッシュ・フロ-の状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は1,349百万円(前年同期は2,150百万円の増加)となりました。これは棚卸資産の増加650百万円、法人税等の支払695百万円等により資金が減少した一方、税金等調整前当期純利益1,569百万円、仕入債務の増加721百万円等により資金が増加したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は1,429百万円(前年同期は716百万円の減少)となりました。これは主に有形固定資産等の取得1,418百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、増加した資金は1,149百万円(前年同期は748百万円の減少)となりました。これは主に短期借入れによる収入1,400百万円等により資金が増加した一方、長期借入金の返済1,013百万円等により資金が減少したことによるものであります。

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

駆動システム(千円)

9,413,839

7.2

金型システム(千円)

10,891,158

54.1

機工・計測システム(千円)

4,017,343

7.4

合計(千円)

24,322,342

24.1

   (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

駆動システム

7,275,645

△27.3

2,182,561

△43.6

金型システム

10,645,152

78.5

2,577,300

48.9

機工・計測システム

4,055,622

0.6

1,154,254

5.1

調整額

△17,756

40.5

-

-

合計

21,958,663

9.9

5,914,115

△11.8

   (注)金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

駆動システム(千円)

8,966,051

7.1

金型システム(千円)

9,798,989

63.7

機工・計測システム(千円)

3,999,280

8.1

調整額(千円)

△17,756

40.5

合計(千円)

22,746,564

26.1

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

Lucid USA, Inc.

3,898,313

17.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりであります。

・売上高

主要顧客である半導体・液晶関連装置市場向け駆動システム商品の受注が調整局面を迎えたものの、自動車向け金型システム商品の売上が好調に推移し、売上高は22,746百万円となり、前連結会計年度に比べ26.1%の増収となりました。

各セグメント別においては下記のとおりとなりました。

駆動システム8,966百万円(7.1%増)、金型システム9,798百万円(63.7%増)、機工・計測システム3,999百万円(8.1%増)と全事業において増収となりました。

・売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価については、全社を挙げて生産性向上と収益改善活動に取り組んだものの、人件費の増加及び減価償却費の増加、電力料の高騰等の影響を受け、当連結会計年度の原価率は76.1%と前連結会計年度に比べ3.3ポイント増加しました。

販売費及び一般管理費については、売上高増加に伴い運賃荷造費・輸出諸掛等の増加とドイツ現地法人において工場移転に伴う一時的な移転費用が発生し、4,151百万円と前連結会計年度に比べ578百万円増加いたしました。

・営業損益

以上の結果、営業利益は1,284百万円と前連結会計年度に比べ3.8%の減少となりました。

・営業外損益及び経常損益

営業外収益は「為替差益」「受取ロイヤリティー」等により455百万円(前年同期比175百万円増)、営業外費用は「クレーム対策関連費用」「シンジケートローン手数料」等により207百万円(前年同期比30百万円増)の結果、経常利益は1,533百万円となり、前連結会計年度に比べ6.6%の増加となりました。

・特別損益

特別利益として投資有価証券売却益等を113百万円(前年同期比86百万円増)、特別損失として機工・計測システムセグメントにおいて固定資産の減損損失等77百万円(前年同期比349百万円減)を計上しております。その結果、税金等調整前当期純利益は1,569百万円となり、前連結会計年度に比べ51.2%の増加となりました。

・親会社株主に帰属する当期純損益

税金等調整前当期純利益から法人税等合計647百万円(前年同期比187百万円増)と非支配株主に帰属する当期純利益15百万円を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、906百万円となり、前連結会計年度に比べ60.8%の増加となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに財源及び資金の流動性についての分析

・キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローにより増加した資金は1,349百万円(前年同期は2,150百万円の増加)、投資活動によるキャッシュ・フローにより減少した資金は1,429百万円(前年同期は716百万円の減少)、財務活動によるキャッシュ・フローにより増加した資金は1,149百万円(前年同期は748百万円の減少)となり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,960百万円となり前連結会計年度末に比較し1,113百万円の増加となりました。

・資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料・外注加工費の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。

・資金の調達と流動性

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は、金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。当連結会計年度末における借入及びリース債務を含む有利子負債の残高は5,501百万円となり前連結会計年度末に比較し、1,504百万円の増加となりました。

 

③重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 なお、連結財務諸表の作成のための重要な会計基準等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社事業、業務に係る契約

契約会社名

相手方の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

黒田精工㈱

Euro Group S.p.A

2022.10.1

ライセンス契約

2022年10月~2030年9月

(期間の延長あり)

黒田精工㈱

無錫隆盛新能源科技有限公司

2022.2.15

ライセンス契約

2022年2月~2030年1月

(期間の延長あり)

黒田精工㈱

株式会社日本共創

プラットフォーム

2022.8.10

資本、業務提携

2022年8月~

(期限の定めなし)

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、新たな市場・領域に向けて、また顧客満足度を高めるべく、新商品の企画、研究開発に邁進しております。

 技術関連業務を統括する技術本部に設置されているプロセス開発推進室では、当社グループ製品のより一層の高性能化や生産性の抜本的改善を目指した新工法・新プロセスの開発を推進しております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は266百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果は下記のとおりであります。

〔駆動システム〕

 ボールねじ関連では、小・中径ボールねじのシリーズ拡充のほか、新たに高いクリーン度が求められる環境下での使用に最適な、クリーンクラス3(ISO 14644-1)対応の低発塵クリーンアクチュエータSCシリーズを商品化いたしました。このアクチュエータは、ワークへの汚染抑制による歩留まり向上や、お客様のクリーンルームにおける換気回数低減(すなわち省エネ)などの効果が期待できます。

 直動システム関連では、お客様のご要望に応えるべく、多様なセミオーダーアクチュエータを設計してご提案し、ソリューションビジネスを目指しております。

 当セグメントに係る研究開発費は98百万円であります。

 

〔金型システム〕

 プレス型関連では、当社グループが開発した型内接着積層システム「Glue FASTEC®」ならびに永久磁石同期モーターのローターに装着する磁石を特殊な樹脂で固定する樹脂固着システム「MAGPREX®」に関し、複数の新規プロジェクトに取り組み、さらなるプロセスの改良と生産性の改善に注力しております。「Glue FASTEC®」と金型2列化の技術を統合し、高効率な電動車駆動用モーターコアを量産する技術が認められ、「第38回素形材産業技術賞 経済産業大臣賞」を受賞いたしました。また、Euroグループとの連携をさらに強化すべく「Glue FASTEC®」生産設備のCEマーキング適合宣言を実施いたしました。

 「LASER FASTEC®」に関しても、さらなるプロセスの改良と生産性の改善に注力しているところであります。

 当セグメントに係る研究開発費は59百万円であります。

 

〔機工・計測システム〕

 本事業においては、工作機械、計測システム、特殊治具を有機的に連携させたソリューションの開発に注力するとともに、それらのシステムのIoT化や自動化に向けた取り組みを行っております。

 工作機械関連では、平面研削盤の操作画面より加工条件等を選択・入力可能とする対話型ソフト「GS-SmartTouch®」につきまして、砥石の最適なドレスタイミングを自動で判断する「自動ドレス」や、熟練度が必要だった研削アタリ出し作業を誰でも安全に行える「自動アタリ出し」といった機能が、「従来、作業者の経験や技能に頼っていた作業を自動で行えるようにして生産性を向上させる画期的な機能である」と認められ、公益社団法人精密工学会主催の「第6回ものづくり賞」優秀賞を受賞しました。引き続きさらなる改良や機能追加に継続して取り組んでおり、成形ドレス機能を拡張して新たに29種類の形状が成形可能となった「コンビネーションドレス」は、複数の直線・R形状を組合せた複雑形状に対応した他、砥石の前後で別々の成形パターンを設定可能なため総計841通りの形状が成形可能です。また、「自動アタリ出し」についても機能を拡張し、ワーク全面のアタリ出しの自動化が可能となりました。

 要素機器関連では、高精度化の技術開発を継続するとともに、多様な産業において自動化を推進する動きに対応すべく、自動化対応ハイドロリックツールの基礎技術研究を続けております。

 当セグメントに係る研究開発費は109百万円であります。