第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。

 この基本思想のもと、当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

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(2) サステナビリティ

 当社は、世界をリードする事業を通じて、グローバル規模で企業の社会的責任を果たしていきます。私たちは100年以上にわたり、革新的な製品・サービスを通じて、世界の人々の健康と安心、心の豊かさを実現し、社会にとって意義のある価値を提供してきました。特に、患者さまの苦痛軽減やQOL(生活の質)向上、医学・科学の分野における経済的価値の創出といったソリューションを提供することで、世界の医療に貢献してきました。私たちはESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を取り入れた取り組みを積極的に行うことで、持続可能な社会のために貢献できると考えています。そして、このような活動によって、当社もまた企業価値を向上させ、持続可能な成長を実現していきます。

 当社は、経営戦略、ステークホルダーのご意見、ESG評価機関によるベンチマークなどを反映し、グループ経営執行会議および取締役会でのプロセスを経て、6つのESG領域および5つの重要課題(マテリアリティ)を特定しました。 5つのマテリアリティは、事業を通じた社会課題の解決に貢献することを明文化し、相互に補い合って強化される関係にあります。当社が競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えています。マテリアリティは社会・事業変化によって可変のものであり、今後も必要に応じて見直しを行います。

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(3) 目標とする経営指標

 2019年に発表した中長期の経営戦略において、当社は、世界をリードするメドテック・カンパニーへ成長し、革新的な価値によって全てのステークホルダーにベネフィットをもたらし、世界の人々の健康に貢献することを戦略目標としています。この考え方に基づき経営戦略を実行した結果として、年率5-6%の売上高成長率を持続し、グローバルメドテック並みの20%を超える営業利益率の達成を目指すとともに、当社が注力する治療領域においてリーディングポジションを獲得していきます。

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*その他の収益およびその他の費用を除外

 

 また、目標とする財務ガイダンス・参考指標を以下のとおり定めており、2023年3月期に営業利益率を20%超に改善することを目指しています。

 

(2022年5月公表見通し)

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注:特殊要因調整後 *継続事業のみ **2020年3月期を起点とするCAGR

 

(4) 経営戦略

(事業の成長・収益性向上のためのコア要素)

 当社は、2019年に発表した「Transform Olympus」に沿って、1.グローバル・グループ経営執行体制の構築、2.人事マネジメントのグローバル統一、3.医療事業の再編成(「Transform Medical」)4.取締役会メンバーの多様化、5.指名委員会等設置会社への移行など、真のグローバル・メドテックカンパニーとして、当社グループの持続的な成長を可能とする基盤整備に取り組んでまいりました。また同年に発表した中長期の経営戦略により、真のグローバル・メドテックカンパニーとしての飛躍、そして、当社の企業理念である「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」のもと、より競争力のある、ハイパフォーマンスな企業文化の醸成や、顧客価値の創造を目指しています。本経営戦略における事業の成長・収益性向上のためのコア要素を、以下のとおり定めています。

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A 事業ポートフォリオの選択と集中

 当社の主要な事業は、(i)内視鏡事業、(ii)治療機器事業及び(iii)科学事業になりますが、(i)内視鏡事業や(ii)治療機器事業が属する医療市場は、全体として高い成長性や収益性を有することに加えて、当社の事業としても持続的な成長及び高い収益性を示しています。この点を踏まえ、定期的に全社の事業ポートフォリオを見直す中で、さらなる成長が見込まれる、(i)内視鏡事業及び(ii)治療機器事業に対して、今後も積極的に経営資源を投入していきます。

 なお、2021年1月に当社の映像事業を、日本産業パートナーズ株式会社が設立した特別目的会社であるOJホールディングス株式会社に譲渡しました。また、科学事業については、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施し、第三者へ譲渡する可能性なども念頭に置いた検討を進めています。

 

B 内視鏡事業における圧倒的ポジションの強化

 継続的な技術革新と強固な販売力により、リユース内視鏡の競争優位性をさらに高めるとともに、アンメットニーズへの対応も図り、市場全体として高い成長が期待できるシングルユース内視鏡分野における製品を拡充していきます。また、今後予想される医療機器に係るビジネスモデルの転換に適切に対応することで、内視鏡市場における現在の主導的な地位をより一層強固なものにしていきます。

 具体的には、以下の施策等を実施していくことで、内視鏡事業において2021年3月期から2023年3月期の3年間で年平均6%の成長を目指します。

(i) リユース内視鏡における競争優位性の堅持

・AI搭載CAD(Computer-aided Diagnosis)機能等を実装した新消化器内視鏡システムの導入

・病変の発見、分類、ステージング、処置のそれぞれのシーンにおいて術者を支援する新技術の投入による内視鏡診断・処置の質的な向上

・新機能の投入による内視鏡診断の質の向上を示すクリニカルエビデンスの確立

・今後大きな成長が期待出来る新興国市場におけるドクタートレーニング支援とその継続

(ii) シングルユース内視鏡によるポートフォリオ拡充

・豊富なリユース内視鏡のラインアップにシングルユース内視鏡を加えることで、内視鏡医療のあらゆるシーンに対応する圧倒的な製品ポートフォリオを構築

 

(iii) 内視鏡の販売・サービスモデルの強化

・エビデンスベース、症例ベース課金モデルを試験的に導入

・包括的な保守サービスプログラムの試行拡大

 なお、消化器内視鏡の領域においては、2020年4月には欧州と一部アジア地域、7月に日本で、主力の内視鏡システム新製品「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」を導入しており、2023年3月期の下期中には米国での導入を目指しています。また、2020年10月には欧州と一部アジア地域にてAIを活用した内視鏡CADプラットフォーム「ENDO-AID」を発売しました。今後も世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現に向けて製品の普及に取り組んでいきます。

 

C 治療機器事業への注力と拡大

 当社が高い競争力を有する、消化器科関連処置具、泌尿器科、呼吸器科関連処置具の3つの領域を中心として、製品の拡充や手技の普及、販売体制の強化によって成長の拡大を図っていきます。

 具体的には、2021年3月期から2023年3月期の3年間、以下の施策等を実施していくことにより、治療機器事業において年平均8%の成長を目指します。

(i)消化器科関連処置具

・ERCP、消化器ステント、止血デバイスなどの主要カテゴリーにおける付加価値の高い製品の拡充

(ii)泌尿器科

・泌尿器科クリニックに対する前立腺肥大処置に係るソリューションの提供

・ファイバーレーザー技術を用いた結石処置デバイスの導入と泌尿器内視鏡処置デバイスの導入によるラインアップ拡充

(iii)呼吸器科関連処置具

・気管支内バルブシステムの普及

・穿刺針の製品開発によるEBUS分野のポートフォリオ拡充

 

 なお、治療機器事業においては、世界最大の治療機器市場である米国における事業展開を促進するため、事業のグローバル統括機能を米国に配置していますが、事業開発機能の強化を通して社外パートナーとの協働やライセンシング、M&Aを推し進め、製品ポートフォリオの拡充や補完を図るとともに、法規制対応やクリニカルアフェアーズなどの機能の強化、製品や手技に対するバリュー・プロポジションの追求もあわせて推進していきます。

 当社は上記の3つの注力領域において自社開発による製品投入を行う他、M&Aにも積極的に取り組んでおり、2021年3月期以降、消化器科関連処置具の領域でArc Medical Design Limitedを、泌尿器科の領域でMedi-Tate Ltd.を、また呼吸器科関連処置具の領域でVeran Medical Technologies, Inc.を、それぞれ買収しました。

 

D 次世代低侵襲手術市場のリード

 当社は、患者さまの術後のQOL維持といった観点で期待を集める低侵襲手術の分野を中長期の成長に向けた戦略分野と位置付けています。今後、手技の革新、機器の改善、低侵襲なロボティックスの開発を通じて、低侵襲手術の発展に貢献するとともに市場全体を牽引すべく、以下の施策を実施していきます。

・技術革新を目標とした病院や学会とのパートナーシップの確立

・技術的な優位性を確立することを主眼に置いたM&Aの実施

・持続可能なものづくりを実現する社内機能の強化

・低侵襲な内視鏡による治療技術(エンドルミナルマニピュレータープラットフォーム)の開発

 

(医療分野における戦略的な方針)

 当社では予防からスクリーニング、診断、治療、予後にいたるまで、患者さまがたどる一連のケア・パスウェイに着目し、一人ひとりに適したケアをサポート、向上させ、患者さまのアウトカムの改善に貢献するべく、ソリューション提供の強化を図っており、以下の医療分野における戦略的な方針を2021年に発表しました。

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(i)「Focus」:当社は、消化器科・泌尿器科・呼吸器科のリーディングカンパニーであり、これらの領域で当社が最大限の力を発揮できる疾患に注力します。

・消化器科:新製品によるリーダーシップの維持、地域戦略と販売モデルの拡大による成長、関連する領域への事業拡大による成長

・泌尿器科:結石破砕治療におけるリーダーシップ、泌尿器科医に対し包括的なBPH治療ソリューションを提供

・呼吸器科:技術革新と臨床エビデンスによりコア市場でのリーダーシップを維持、アンメットニーズに対応するソリューションを拡充、市場でのプレゼンスを広げることで当社の影響力を拡大

(ii)「Shape」:新たな投資を行うことにより、診療水準を向上させるイノベーションや価値の創造につなげていきます。

・シングルユース内視鏡:内視鏡の領域のリーディングカンパニーとして、処置・治療部位など一人一人の患者さまのニーズに最適なツールを利用できるよう、シングルユース内視鏡の発売を複数の診療科で予定

・デジタルに関する取り組み:デジタル技術と自動化技術を活用して、臨床医やスタッフの負担の軽減につながる製品・サービスの提供を目指す

(iii)「Enable」:グローバル・メドテックカンパニーとして持続的な成長を果たす上で、組織基盤をグローバル・メドテックカンパニーに相応しい体制やオペレーションに転換する取り組みに注力します。

・ビジネスディベロップメント:インオーガニックな成長の促進のため、新たな機会を模索

・メディカル&サイエンティフィックアフェアーズ:製品やサービスの臨床的意義、経済的価値、安全性の向上のため、機能を強化

・さらなる組織力の強化:調達・サプライチェーン・製造、R&D、品質保証・法規制対応などにおいても、グローバル・メドテックカンパニーとしてふさわしい機能とするべく変革を推進

 

(5) 2023年3月期 経営方針

 半導体をはじめとした部品供給不足やウクライナにおける戦争、中国での新型コロナウイルスの再拡大など、不確実性の高いリスクが顕在化しています。一方で世界的には、新型コロナウイルス感染症については、新たな変異株による感染の再拡大のリスクがあるものの、その影響は引き続き縮小していくものと想定しています。2023年3月期はこれらのリスクへの対応を進めつつ、事業運営を行います。

 2023年3月期は、上述の「医療分野における戦略的な方針」を推進しつつ、事業成長と効率性の向上によりマイルストーンとして掲げた財務ガイダンスの達成を目指します。また、グローバル・メドテックカンパニーとして、患者さまに高い価値を提供することに注力したうえで、マテリアリティに掲げている社会課題の解決、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 2019年以降、スピード感を持ってさまざまな施策を実行し、企業変革を推進し続けてきたことにより、全社に変革の文化が根付いてきており、2023年3月期はマイルストーンとして営業利益率20%超の達成を目指すとともに、「変革」から「成長」にフェーズをシフトしていく年にしたいと考えています。従来の効率性の追求、機能のグローバル化、健やかな企業文化の実現を目指した取り組み等は今後も継続しつつ、「成長」に舵を切ることにより、売上と収益性を持続的に向上させ、最終的な目標である当社の存在意義「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」に貢献していきます。

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2【事業等のリスク】

 当社グループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性がありま す。当社グループでは、経営理念、経営戦略等を含めた「経営の基本方針」を実現するためのリスクマネジメントの取り組みを実施しています。具体的には、「リスクマネジメント及び危機対応方針」及び関連規程に基づき、積極的かつ適切なリスクテイクによる企業の持続的成長や価値創出に繋げる“攻め”と、不正や事故の防止という“守り”の両方の視点で、リスクマネジメントを行っています。

 リスクマネジメント体制においては、グローバルなリスクマネジメント体制を構築し、経営戦略ほか当社の事業目標の達成に影響を与えうるリスクの分類を定義し、各リスク分類を管掌する執行役を明確にしています(リスクアシュアランスの確立)。各執行役は管掌するリスク分類に付随するリスクを許容範囲に収めるために必要な各種活動(組織体制の整備、プロセスの整備、重点施策の策定・実行など)を遂行します。

 また、リスクマネジメントのプロセスをリスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価およびリスク対応策の設定)、リスク対応策の実行、モニタリングおよびレポーティング、改善のPDCAサイクルで運用しています。リスクアセスメントは、年度計画策定プロセスに連動させ、全社共通の評価基準を用いてリスクを評価し、全社のリスクを可視化、一元管理しています。また、グループの重要リスクについてはその対応状況を定期的にグループ経営執行会議、取締役会および監査委員会へ報告し、継続的にモニタリングしています。

 

<リスクマネジメント体制>

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<「経営の基本方針」を達成するためのリスクマネジメント>

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 以下において、当社グループの経営意思決定以外の要因で、業績変動を引き起こす要因となり得る、事業展開上の主なリスクを記載しています。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

<事業環境に関するリスク>

(医療行政の方針変更、製品関連法規制強化および感染管理に係るリスク)

リスク

医療分野においては、国内外で医療費抑制や、医療サービスの安全性や有効性の向上を通じた患者さまの生活の質(QOL)の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われており、米国食品医薬品局(FDA)や、欧州医療機器規制(EU-MDR)をはじめとする各国の医療機器申請・登録等の法規制要求は年々高まっています。加えて、感染管理、リプロセス(洗浄・消毒・滅菌)要求も高度化しています。

今後、各国の医療関連法規制や関連した行政の方針変更などにより、新製品やサービス等をタイムリーに提供できない場合、また、販売した製品等に対する市場対応等を行う場合、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

FDAより、十二指腸内視鏡の洗浄・消毒に関する市販後の調査研究の実施を遵守していないという理由で、2018年3月に当社グループを含む十二指腸内視鏡メーカー各社に警告書が発行されました。その後、FDAと協力をしながら市販後の調査研究を完了し、2020年2月に市販後調査の最終報告書を提出しました。現在は2020年に米国で販売を開始した後継機種に関する市販後調査を実施していますが、今後の経過によっては、FDAによる更なる規制措置が取られる可能性があります。

対応策

 当社グループは、早期診断および低侵襲治療に寄与する製品ラインアップにより、患者さまのQOLの向上に貢献しており、製品ライフサイクルマネジメントおよび感染予防に係る戦略を通じ、安全な商品の開発と選定、法規制に適合した商品開発、各国への提出資料の共有化などに取り組んでいます。また、当社では品質および法規制対応関連部門等、当社グループ内部の人材の育成や対応力の強化を通じて、定期的な監査、検証の手順を継続しながら、市場の変化に速やかに対応できるよう、是正処置および予防処置に係るプロセスを改善していきます。さらに、医療政策や規制関連の事項について、定期的なモニタリングを実施し経営陣に対して状況のアップデートを行い、関連法令に対する理解を徹底させるとともに、ベストプラクティスを共有するなど、関連業務に従事する従業員に対して定期的なトレーニングを実施しています。

 

(市場・競合状況に係るリスク)

リスク

先進国を中心に、高齢化が進展しており、医療へのニーズは堅調に推移するものと考えられます。また、新興国においては、経済成長に伴い医療に対するニーズも高まっています。主に先進国では、増加する医療費の適正化や効率的かつ質の高い医療サービスの提供を図ることを目的とした医療制度改革が進められています。これらの変化は当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが関連する事業分野においては多くの競合会社が存在し、技術革新も進んでいます。競合会社との競争激化や、代替技術・製品の出現等の進む環境下において、当社が競争力を維持するためには、当社が価格、技術、品質等において、競争力を有する製品を適時に投入する必要がありますが、その成否によっては収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

一方で、当社グループが、市場環境の変化や、代替技術、市場に投入される競合製品の動向をキャッチアップし、適時に競争力のある製品を市場へ投入できた場合には、販売単価の上昇や当社シェアの拡充等による収益の増加等の機会を得られる可能性があります。

対応策

当社グループでは、特定の地域での事業展開にとどまらず、全世界の様々な事業分野・地域において、多様な製品・サービスの提供に努めています。新興国では内視鏡を操作できる医師を増やすことが重要なことから、内視鏡医の育成をサポートしています。

また、当社グループでは市場における代替技術・製品の出現などを含めた競争環境を注視し、マーケティングや知的財産および関連部署との協力の下で、採用すべき新技術の選定および開発の迅速化に努めます。社内での開発のみならず、M&Aやアライアンス等を通じた社外の技術の取り込みも積極的に検討します。市場ニーズに即した高付加価値の新製品・技術の開発にも取り組んでいます。当社グループにおいては特に、内視鏡事業では消化器内視鏡システムEVIS X1の拡販によって圧倒的なシェアを維持し、治療機器事業では消化器科・泌尿器科・呼吸器科の製品ラインアップの強化によってシェアを拡大し、シングルユース内視鏡等の次世代の医療機器の開発を推進することによって、収益拡大を目指しています。

 

<マーケットに関するリスク>

(経済環境に係るリスク)

リスク

ウクライナにおける戦争や米中貿易摩擦のほか、地政学的リスクの顕在化や、資源価格の動向等の経済環境の変化により、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、内視鏡事業、治療機器事業、科学事業等において製品およびサービスを世界中の顧客に提供していますが、これらの事業の収益はグローバル経済や各国の景気動向に大きく影響を受けます。

医療分野では、各国の国家予算が縮小された場合、あるいは政策の転換等により、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

科学事業のライフサイエンス分野では、国公立の研究機関向けの販売の割合が高く、各国の国家予算が縮小された場合には、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。産業分野では、自動車産業・航空産業・石油関連産業向けの販売の割合が高く、企業の設備投資動向が収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

一方で、医療分野および科学事業のライフサイエンス分野については、政策等により関連国家予算が増加した場合、また、科学事業の産業分野についても、企業の事業環境の変化等により設備投資需要が増加した場合、収益の増加等の機会を得られる可能性があります。

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、厳しい状況が徐々に緩和される中で、持ち直しの動きが見られていますが、一部の地域では、医療機関など顧客先への訪問の制限や商談の延期・中止など、販売活動に影響が生じている他、症例数の減少に伴う製品の販売量の減少などの影響が生じています。詳細は「新型コロナウイルス感染症に係るリスク」に記載しています。

対応策

 当社グループでは、特定の地域での事業展開にとどまらず、全世界の様々な事業分野・地域において、多様な製品・サービスの提供に努めています。また、各国による自国の産業育成・保護等の政策につき、特に注視すべき状況となった場合には、必要に応じてタスクフォースの設置や定期的な社内報告等を行います。

 

(為替変動に係るリスク)

リスク

当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品およびサービスを提供しており、海外売上高比率(連結ベース)は、2022年3月期において約84%です。円高に推移した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響を与える可能性があります。外貨建債権・債務について可能なものについてはヘッジを行っていますが、急激な為替変動が生じた場合、あるいはヘッジの対象となる債権・債務の発生が予定と大きく異なった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

為替変動リスクを軽減することを目的として、先物為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化などを通じて、外貨建債権・債務の縮小を図っています。

 

(資金調達に係るリスク)

リスク

当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響が生じる可能性があります。

また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響が生じ、一方、業績良化等により資金調達コストが低下した場合、好影響を与える可能性があります。

対応策

当社グループでは、コマーシャル・ペーパーや公募社債の発行等、資金調達手段の多様化による調達コストの低減に取り組んでおり、長期の有利子負債は基本的に固定金利を採用することで、金利上昇の影響を限定的にしています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化や財務管理の強化を図っています。

 

 

<事業活動に関するリスク>

(開発活動に係るリスク)

リスク

当社グループの医療分野は、新型コロナウイルス感染症、高齢化、環境意識の高まりなどを主な要因として、これまで以上に急速な社会環境の変化、不確実性に直面しています。各国の医療政策の変更、医療費削減、医療関連法規制の強化、感染予防・リプロセスに対する要請の更なる高まりにより、技術開発に対するハードル・複雑さは増しています。それに対して開発サイクルは短くなる傾向にあります。技術的には、すべての領域でデジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速しており、いわゆるテクノロジー・イノベーション技術(AI/ロボティクス/ICT)も実用化の段階に入ろうとしています。それに伴い、新技術・代替技術のみならず、巨大IT企業など異業種からの医療業界への参入により事業環境は厳しさを増しています。また、当社グループの医療分野では、消化器科、泌尿器科、呼吸器科を中心にケア・パスウェイを広げ、技術開発、イノベーションを通じて診療水準の向上に貢献し、患者さまのアウトカムの改善を目指しています。既存の製品・技術に対して顧客のニーズに応じた改良をおこなう「持続型イノベーション」だけでなく、社会環境の変化に対応した新たな発想で技術を実用化する「破壊型イノベーション」とのバランスが重要だと考えています。市場の変化を適切に予測できない、あるいは製品の開発が予定通り進展しないことにより、顧客のニーズに合致した新製品をタイムリーに開発できない場合には、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。また、開発期間の長期化に伴う費用の増加あるいは回収可能額が相対的に低下することによる開発資産の減損損失等が発生する可能性があります。

機会として、当社グループの注力領域における技術開発の発展、およびアンメットニーズに対するソリューション提供を通じた医療への貢献、中長期ではロボティクス技術の普及による、低侵襲治療、医療費削減、医療従事者の負荷軽減の可能性があります。

対応策

当社グループでは、医療分野にフォーカスした機動力のある技術開発を行うための組織体制を整備しています。また、技術開発およびイノベーションに対して、以下の様な複合的なアプローチを用いています。①既存事業および製品に対する継続的な技術開発、②適切なプロダクトライフサイクル管理による製品の安全性の追及、開発効率向上、開発コストの削減、③M&Aを通じた技術獲得および製品ポートフォリオの拡充、④自社のコア・テクノロジー、コスト、開発期間などを勘案した業務提携、内製・外製の検討、⑤将来の事業および製品のためのイノベーションなど。

当社の既存製品に対する技術面での取り組みとして、製品ラインアップの拡充、製品関連法規制への対応、感染予防およびリプロセスへの対応、製品セキュリティ強化の取り組みが必須です。また、感染対策への意識の高まりにより市場のニーズが増している、シングルユース内視鏡に対する複数のラインナップを用意することは優先度の高い開発テーマです。また、当社ではDXを加速させ、デジタル技術を活用したサービスを本格的に始めようとしています。さらに、近い将来に向けて、診療プロセス全体の最適化および新しいビジネスモデル構築のための、より高度なAI、ICTの活用検討、次世代の低侵襲手術に向けたロボティクスの活用検討も推進しています。このような開発活動を通して、予防から診療、予後にいたるまで、患者さまがたどる一連のケア・パスウェイに着目し、向上させるためのソリューションを構築していきます。

 

(サプライチェーンに係るリスク)

リスク

当社グループでは、製品を開発し、必要な部品等を外部の供給元から調達し、生産、製品供給まで、適時に行う必要があります。特定の供給元に依存する部品等について、調達に制約を受ける場合には、当社における生産および供給が中断あるいは遅延する可能性があります。昨今の世界的な半導体およびその他の部品不足に関し、今後さらに供給が減少する、または供給不足が長期化する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

地政学的リスク、自然災害、疫病、戦争、内戦、暴動、テロ、サイバー攻撃、港湾労働者によるストライキ、或いは輸送事故などの理由により物流が停滞する場合、配送遅延による売上機会の損失、復旧対応のコスト増加により当社の収益確保に影響を及ぼす可能性があります。例えば、中国では、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて、厳しいロックダウンが実施されており、特に上海における2022年3月下旬以降のロックダウンは、当社グループの中国国内におけるサプライチェーンとグローバルな物流に影響を及ぼしています。

製品については外部への生産委託を含め、厳格な品質基準に基づき生産を行っていますが、万一、製品に不具合等が発生した場合には、リコール等、多額のコストが発生するだけでなく、当社グループの信頼が損なわれ、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、事業継続と持続可能な価値創造を見据えて、サプライチェーン方針や、「オリンパスグループグリーン調達基準」を制定し、これらのもとで、法令・社会規範遵守の強化に取り組んでいます。取引先に向けては、法令・社会規範の遵守、汚職・賄賂などの禁止、公平・公正な取引の推進、環境への配慮など、具体的な行動指針を定めています。これらをもとに、公平、公正かつ透明性の高い取引に基づく良好な関係の構築と関係強化に取り組んでいます。

また、当社グループは、サプライチェーンマネジメントの強化を目指しており、部品等の調達から顧客への納品まで、全体を統合したEnd-to-Endサプライチェーンを構築し、顧客満足度およびビジネスの変化対応力の向上、コストの効率化、在庫の最適化を目的とした施策を実行しています。End-to-Endサプライチェーントランスフォーメーションの目標は、製造および調達と緊密に連携してこれらのリスクによる影響を管理し、外的な逆風による影響を制限するための計画および流通プロセスと機能を強化することです。新たに設置されたグローバルディストリビューション機能(End-to-Endサプライチェーントランスフォーメーションの一部)は、安定した配送と、課題やサポートの必要性に対するタイムリーな問題解決をするため、リスクの軽減と対策を、監督および調整しています。サプライチェーン、調達、製造、および営業機能間の緊密なコラボレーションと迅速な意思決定を推進します。

取引先の動向把握や取引先との関係強化を推進するとともに、バックアップ計画の検討を含むBCP(事業継続計画)の強化等を行っており、特に半導体の調達に関しては、社内横断タスクフォースを設置し、取引先との関係強化により、必要量の確保を図っています。また、製品の安定供給のため、各拠点で適切な在庫量を設定するとともに、製造・調達が一体となって、サプライチェーンの変化に対して対応策を講じています。さらに、品質管理部門との協働のもとで、最適な生産システムの構築と品質の向上に努め、製品開発プロセスを事業レビューや技術レビューなどに分けるなど、品質改善活動を推進することで品質問題の抑制を目指しています。

 

 

(業務提携、企業買収、事業売却および投資全般等に係るリスク)

リスク

当社グループはグローバル・メドテックへの転換を目指して2019年に発表した経営戦略に則り、事業ポートフォリオの選択と集中を行っており、医療分野、特に消化器科・泌尿器科・呼吸器科の領域について優先的に投資を実施しています。事業に係る様々な領域で設備投資や研究開発投資等の投資を実施しており、当該投資に係る意思決定を行った時点から外部環境が急激に変化する等、予期せぬ状況の変化が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

技術および製品開発、販売・マーケティングに関して、業界の先進企業と長期的な戦略的提携関係を構築していますが、これらの戦略的パートナーに、財務上あるいはその他事業上の問題が発生した場合、また戦略の変更等により提携関係を維持できなくなる等の問題が発生した場合には、当社グループの事業活動に影響が生じる可能性があります。

事業拡大のため、企業買収等を実施することがありますが、買収の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って適切に統合できない場合、あるいは既存事業および買収の対象事業について効率的な活用を行うことができなかった場合は、当社グループの事業遂行に影響が生じるほか、のれんの減損や、事業売却損、事業清算損、その他これに伴う費用の発生等が生じる可能性があります。

当社グループは、業務提携の推進等を目的として、投資有価証券等を保有しています。市場経済の動向や投資先の財政状態等により、株価および評価額に著しい変動が生じる場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、事業ポートフォリオの戦略的な見直しの一環で、当社はノンコア事業と位置付けられた関連会社あるいは事業の売却を実行することがありますが、各国の法規制や経済情勢および相手先の経営状況の変化などにより実施が困難となる場合、あるいは売却損、評価損が発生する場合、当社グループへの経営あるいは財務上の影響が生じる可能性があります。当社は、連結子会社であるOlympus (China) Co., Ltd.の保有する中国・深圳市にある当社の中国現地法人Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.の持分譲渡に向けた活動を継続しています。また、当社は、科学事業を第三者へ譲渡する可能性なども念頭に置いた検討を進めています。これらの結果によっては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

適切な対応策の下で行われる業務提携および企業買収等を通じて、当社は製品ポートフォリオの拡充や新技術の獲得を進め、ターゲットとする領域および疾患におけるリーディング・ポジションを確立し、長期的な成長と企業価値の向上を実現することが可能となります。

対応策

当社グループでは、投資前には投資評価の妥当性を審議し、投資の可否を判断しており、外部環境の変化等に応じて、投資後も評価を行っています。M&Aや出資の検討に際しては、契約の成立後に深刻な問題が発見されるようなリスクを低減すべく、外部の弁護士や財務アドバイザー等も活用して、各種デューデリジェンスを実施した上で、社内で定められた承認プロセスに従って投資評価の妥当性を審議するなどのプロセスを経て、投資の可否について判断を行っています。また、コンプライアンスを遵守するための内部指針、価値評価モデル、デューデリジェンス項目の見直し定期的に行うとともに、取引が完了した後も対象事業のモニタリングを実施するなど、投資に関するプロセス全体の改善に取り組んでいます。事業売却等においても同様の承認プロセスを経て判断を行い、プロセス全体の改善に取り組んでいます。

 

(事業構造改革に係るリスク)

リスク

当社グループは、2019年に公表した経営戦略に基づき、全社横断的な効率改善に向けた取り組みを推進し、持続的な成長と収益性を伴う真のグローバル・メドテックカンパニーを目指しています。

これらの取り組みの進展に遅れが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

対応策

ボトムアップ型の施策に加えて、各執行役がイニシアチブをとってオペレーティングモデルやプロセスの改善に向けた重点分野の施策を実行することにより、取り組みを一層加速し、持続的に成長できる企業文化の醸成と、経営基盤の強化を目指しています。各イニシアチブの進捗は、グループ経営執行会議にも報告されています。

 

 

<経営全般に影響を及ぼすリスク>

(法的規制に係るリスク)

リスク

当社グループおよび当社グループの販売店、供給者の多くが政府系の企業、政府系の医療機関および公務員と取引を行っています。また、当社グループでは、規制業種である医療分野を含む各種事業を世界各地で展開しており、本邦の法律に加えて各国・地域における医療に関する法律や独占禁止法のほか、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の贈賄禁止条項や英国反贈収賄法を始めとした各国・地域の贈収賄禁止に関する法律の適用を受けています。さらに、不当景品類および不当表示防止法、米国反キックバック法や米国虚偽請求取締法を含む、ヘルスケア事業に関連する様々な不正防止法の規制対象にあります。

法的規制への違反は罰金や課徴金、禁固刑、特定の国における医療制度への参加禁止などの処罰につながる可能性があります。さらに、当社グループの顧客の多くが公的医療保険その他、政府による医療制度から医療費を補助されており、法的規制への違反によって制度への参加を制限された場合には、当社グループの製品に対する需要やそれを使用した症例数の減少などの影響が生じる可能性があります。

当社は、米国司法省と2018年12月3日に締結した司法取引契約において「当社の子会社であるオリンパスメディカルシステムズ株式会社が法規制を遵守するプロセスを強化し、本合意に基づき同社が期待される水準に達していることの確認を定期的に実施する」という義務が課されています。今後の実施状況によっては、米国司法省によりさらなる措置が取られる可能性があります。

当社グループは、世界中のプライバシーに関する規制を受けています。個人情報の取り扱いに関して、世界各国の個人情報保護法制(日本の「個人情報保護法」、欧州連合(EU)の「EU一般データ保護規則(GDPR: General Data Protection Regulation )」)等に違反することにより、政府機関から罰金その他の処分を受ける、またはステークホルダーから訴訟を提起される可能性があります。

当社グループでは、これらの法的規制を遵守することを徹底していますが、違反する行為を行った場合、違反の意図の有無にかかわらず、当社グループの事業、財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況および株価に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループではグローバル行動規範において示しているとおり、法令順守に基づいた業務遂行を従業員に徹底しており、贈賄防止や各国の競争関連法を順守することの重要性について従業員への教育を行っています。また、中国では、代理店を対象に法規制遵守等に係るトレーニングも実施しています。

 法務、コンプライアンス、内部監査などの統制部門が、当社グループに適用されるすべての法律、規制、内部方針を遵守しているかどうかという観点から、事業活動をモニタリングしています。また、従業員に対しても必要かつ適切な研修や教育を実施しています。事業を展開するすべてのマーケットにおいて、当社事業に関連する規制をモニタリングし、情報収集を行う体制の構築を進めています。また、関連する法律や規制に改正や変更があった場合には、従業員に対して周知徹底するとともに、その改正や変更に対応した製品を速やかに開発し、供給していきます。

 個人情報保護規制に関わるリスク対応としては、2022年3月期にセキュリティおよびプライバシーコンプライアンス戦略を策定し、各地域における個人情報保護関連専門人材の配置を含む対応力の強化を進めるとともに、当社グループ全体での連携をより確実にするためグローバル体制の強化に取り組んでいます。

 

(訴訟に係るリスク)

リスク

 国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は研究開発および生産活動において様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループが所有しているもの、あるいは適法に使用許諾を受けたと認識しているものでありますが、当社グループの認識の範囲を超えて第三者から知的財産権を侵害したと主張され、係争等が発生した場合には、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 当社の連結子会社であるOlympus (China) Co., Ltd.が保有する中国・深圳市にある当社の中国現地法人Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.は、深圳市安平泰投資発展有限公司から2016年12月23日付で訴訟を提起され、2018年7月30日付で判決が出されています。当社はこの第一審判決を不服として2018年8月17日付で控訴しておりました。2020年7月1日付で広東省高級人民法院から、安平泰側が請求の根拠とする事実関係が不明確であるなどとして、第一審判決を取り消し、本案の審理を差し戻す裁定が下されました。2021年12月31日付で判決が出され、当社はこの第一審(差戻審)判決を不服として、2022年1月24日付で控訴しており、現在係属中ですが、今後の経過によっては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 訴訟その他法的な手続きが必要となる事案が発生した場合に、適時に弁護士等の外部専門家と対策を検討することが出来る体制を構築し、日本、米州、欧州、中国、アジア・オセアニアの各地域統括会社においても社内の関連部署のスキル・専門知識の強化に努めています。また、財務上のリスクを極小化する目的で、訴訟による予期せぬ損失に備えて、保険の付保等を行っています。

 

 

(情報セキュリティに係るリスク)

リスク

 当社製品やサービスを安定的に継続して提供するため、事業継続を妨げるサイバー攻撃に備え、当社およびステークホルダーの機密情報や個人情報の漏えい防止などの情報セキュリティリスクの低減や、法令違反の防止に努めています。しかしながら世界的に医療機関や製造業、そのサプライチェーンを標的としたサイバー攻撃が急増しており、攻撃の高度化・組織化が進んでいることから、以下にあげるような不測の事態が発生することにより、当社グループの企業価値の毀損、事業競争力の低下、社会的信用の失墜、影響を受けるステークホルダーに対する補償、各国当局からの制裁・罰金により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・当社の顧客である医療機関を標的としたサイバー攻撃により、当社製品の使用やその保守作業を介して患者さまの情報が漏えいし、顧客が事業を継続することが出来なくなること

・当社やそのサプライチェーンを標的としたサイバー攻撃により、当社において業務が中断したり、保守サービスの提供が滞るなどの結果として、医療機関において検査や治療行為が継続出来なくなること

・情報セキュリティ対策の不備や内部不正により、当社内に保管される技術情報・顧客情報が漏えいまたは毀損すること

 2022年3月期には、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ地域)における一部地域および米州(米国、カナダ、ラテンアメリカ)地域のITサーバーが不正アクセスの対象となりました。EMEA地域における不正アクセスでは当社のデータの損失、不正使用ならびに漏洩の痕跡は確認されませんでしたが、米州地域においては、一部のデータが流出した可能性があり、影響を受けた可能性のある方々に対して通知を行いました。

対応策

2022年3月期に発生したインシデントの解析結果に基づき、各種セキュリティの強化を行っています。また、サイバー攻撃等により不正アクセスが発生した場合に、より迅速な対応により顧客やビジネスパートナー、当社業績への影響を最少化するため、全従業員への定期的な教育の実施の徹底や、当社グループ全体を対象とするインシデント対応体制の構築に取り組んでいます。

上記に加えて、これまでの活動をさらに強化するため、2022年3月期において、新たなセキュリティおよびプライバシーコンプライアンス戦略を策定しました。この戦略には新たなガバナンスモデルの構築が含まれ、これにより私たちは当社グループ全体で情報/サイバーセキュリティ、プライバシーのリスク管理を可能にし、複数年にわたる戦略ロードマップをグローバルで一貫して実行していくことを目指します。具体的には、当社全体におけるグローバル化の進捗に合わせて機能軸での連携をより強化し、ITセキュリティ、Operational Technologyセキュリティ、製品セキュリティ、プライバシー保護、データ保護、それぞれについて関係各機能の責任を明確化しました。これにより、以下のことが可能になります。

・一般的なITシステムのみならず製品開発環境や製造環境においてもサイバー攻撃への耐性を高めること

・開発段階だけでなく製品ライフサイクル全体にわたり、製品セキュリティを継続的に担保すること

・各国・地域の最新動向や法規制に基づき、さらにプライバシー保護を強化すると共に、様々なデータの種類や機密度に応じた保護と利活用を実現すること

 

(人材に係るリスク)

リスク

当社グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀かつ多様な人材を採用し、維持し続ける必要があります。当社グループの業界における人材獲得競争はグローバルに激化しており、コロナ禍を経て労働市場が変化したことによる退職率の高まりも一部地域で見られ、人材の採用、育成、リテンションの重要性も増す中、当社が高い技能を有する人材を採用し、維持することができなかった場合、今後の製品やサービスの供給や持続的な成長に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは、従業員一人一人がグループ共通の理念や価値観を深く理解し、高い専門性を有する人材をグローバルで適所に配置することが重要であると考えています。この実現に向けて、理念・価値観の浸透のための活動を行うほか、スキルトレーニングプログラムなどを展開しています。経営戦略の遂行に必要となる職務を定義し、グローバル共通のタレント・マネジメントシステムを導入し、重要ポジションから順に後継者育成計画を作成しています。また、国籍や性別を問わず適切な人材が活躍し、高い専門性を発揮し続けることを可能にする体制の整備も進めています。このほかにも、グローバル共通のリーダーシップ・コンピテンシー・モデルを定めたほか、リーダーシップの発揮を支援するためのプログラムの整備を行い、従業員が高いパフォーマンスを発揮し続けるための文化醸成、人材開発のための取り組みを行っています。報酬についても、常にマーケットトレンドを意識しながら、競争力のある報酬水準と報酬体系を社員に提供しています。例えば、日本地域においては、職務と成果をより反映した報酬体系に移行すべく労働組合と協議しています。また、日本を含むグループ全体では、グローバル共通の職務評価と報酬ポリシーにより公平性を担保するとともに、一定層以上の社員に株式報酬を付与することで、報酬水準の底上げと同時に中長期目標達成へのコミットメントの向上を図ることとしています。人材採用に関しては、新卒などの定期採用に加えて、専門性を有する人材を不定期に採用しており、人材採用の体制を強化するとともに、当社に入社した社員が早期に活躍できるようにオンボーディングの取り組みを充実させています。

 

 

(内部統制に係るリスク)

リスク

 有効な内部統制システムを構築している状況においても、様々な要因により内部統制システムが機能せず、不測の事態が生じる可能性があります。その結果、当社の社会的信用の失墜により事業に悪影響が生じる、あるいは行政処分による課徴金や刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等の支払いにより、当社グループの業績および財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

 内部統制システムが有効に機能しないことで、経営者が、内部・外部の環境変化を適切に把握し、迅速な意思決定を行えない場合、当社の経営戦略、事業戦略の達成に悪影響を与える可能性があります。

対応策

 当社グループは、グループ・グローバルでの内部統制システムを整備・運用・改善し、教育・啓蒙活動を通じて浸透を図っています。ガバナンス関連の組織がグループ・グローバルで連携して取り組みを最適化するとともに、戦略立案、方針・施策策定と関連付けることにより、業務執行と監督活動が一連のサイクルとして実施できる仕組み作りを進めています。加えて、内部統制システムの運用状況に対するモニタリングを行い、経営に対する定期的な報告を実施しています。これらの対応策により、内部統制システムが有効に機能していることを検証し、継続的に改善を行います。

 

(税務に係るリスク)

リスク

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等により、追加の税負担が生じる可能性があります。繰延税金資産については、経営状況の変化や組織再編の実施等により、回収可能性の評価を見直した場合、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となる可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

対応策

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等に関しては、法令の改正や規則の変更に対するモニタリングを行いながら、社内の取引ルールを適宜見直していきます。繰延税金資産については、グループ各社の収益性をモニタリングしながら、それぞれの会社が適切な収益を確保出来る様に業績を管理することに加えて、グループ会社間の組織再編においても再編後の収益性の変化に留意することでリスクの最小化を図ります。

 

(気候変動・環境規制に係るリスク)

リスク

 当社グループは、気候変動の緩和と適応、水資源の保全、持続的な資源利用、生物多様性の保護といった環境課題を認識しています。世界各国においておよび脱炭素・循環型社会の実現に向けての炭素税導入や二酸化炭素の排出規制、資源循環に関する規制、化学物質管理などの規制が強化されることにより、事業コストが増加する可能性があります。また、気候変動に起因する自然災害の深刻化によって、自社拠点の操業やサプライチェーンに影響する可能性が高まり、適切な対応が取れなかった場合に、事業機会の損失等が生じる可能性があります。

対応策

 当社グループでは、環境活動を推進する専門の機能を設置し、ISO14001に沿った環境マネジメント体制を整備しています。本体制のもと、規定類の維持、環境管理責任者および推進者への教育、現地運用のモニタリングと改善を通じて環境法規制への対応を推進しています。

 また、当社グループは、社会と協調した環境活動の推進が重要であることを認識し、2021年4月にTCFDへの賛同を表明しました。長期的に製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指しつつ、2030年までに自社事業所からの二酸化炭素排出量(Scope 1、2*)を実質ゼロとすること、2030年までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とするという2つの野心的な目標を、同年に策定しました。

 本目標達成およびサプライチェーンでの環境リスク対策として、世界各国の拠点での製造改善活動や再生可能エネルギーの導入とともに、環境配慮型製品の開発、物流効率改善、取引先と連携したグリーン調達に継続的に取り組みます。

* Scope 1:敷地内における燃料の使用による直接的な温室効果ガス排出、Scope 2:敷地内で利用する電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出

 

 

(新型コロナウイルス感染症に係るリスク)

リスク

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響による厳しい状況は徐々に緩和され、ワクチン接種も進み、経済活動は持ち直していますが、地域によっては感染再拡大の傾向が見られるなど、依然として不確実性の高い状況が続いています。

 当社グループの事業活動においても影響は緩和されつつあるものの、引き続き医療機関など顧客先への訪問の制限や商談の延期・中止など、販売活動に影響が生じている他、症例数の減少に伴う製品の販売量の減少などの影響が生じています。医療機関が新型コロナウイルスへの対応を優先せざるを得ない状況において、当社の事業に関連する医療行為が減少した場合や設備投資が減少した場合等において、当社グループの販売活動にさらなる影響を及ぼす可能性があります。また、特定の製品および部品調達や、製造・製品供給に制約が生じた場合、当社グループの収益確保および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループは、感染防止対策の徹底に努めており、在宅勤務等の柔軟な働き方の積極的な活用、感染状況を勘案した出張やイベントの実施等の措置を講じています。販売活動においては、オンラインでのトレーニングやデモンストレーション、セミナーを継続的に実施している他、新たな環境に対応したソリューションの提供に努めています。

 

(自然災害、感染症、戦争、内戦およびその他のリスク)

リスク

 その他、自然災害、感染症、戦争、内戦、暴動、テロ、経済制裁等が発生した場合、収益確保に影響が生じる可能性があります。

対応策

 重大な危機が発生した際には、グループ全体に適用される危機対応ルールに基づいて対策本部を設置し、企業価値に及ぼす影響を最小限にとどめるべく、危機管理に努めるとともに、平時においてもBCP(事業継続計画)の策定、定期的な見直しおよびBCPの実効性を高めるための教育・訓練を通じて事業中断リスクへの対応を強化しています。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

業績全般に関する動向

 当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による厳しい状況が、ワクチン接種も進み、徐々に緩和される中で、持ち直しの動きが見られました。一方で、新たな変異株により感染が再拡大するなど、依然として不確実性の高い状況が続いています。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、一部の国や地域におけるサプライチェーンへの影響や、新型コロナウイルスの感染拡大や米中の貿易摩擦に伴う、世界的な半導体不足による影響、ウクライナにおける戦争による影響、資源価格の高騰による影響も発生しています。わが国経済においても、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が緩和される中で、世界経済と同様に持ち直しの動きが見られました。

 こうした環境下にあるものの、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指し、2019年11月に発表した中長期の経営戦略に沿って、持続的な成長に向けた取り組みを推し進めています。

 本経営戦略に基づき、当社は内視鏡事業及び治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に努めています。その一環として2022年4月1日には、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施しました。

 

業績の状況

 以下(1)から(7)は継続事業の業績を、(8)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。なお、前連結会計年度において、映像事業を日本産業パートナーズ株式会社が設立した特別目的会社であるOJホールディングス株式会社に譲渡したことにより、当該事業に関わる損益については、非継続事業に分類しています。

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率(%)

(1)売上高

730,544

868,867

138,323

18.9%

(2)売上原価

271,014

297,172

26,158

9.7%

(3)販売費および一般管理費

357,032

405,399

48,367

13.5%

(4)持分法による投資損益/
その他の収益/その他の費用

△20,513

△12,398

8,115

(5)営業利益

81,985

153,898

71,913

87.7%

(6)金融損益

△5,175

△4,025

1,150

(7)法人所得税費用

11,140

33,903

22,763

204.3%

(8)親会社の所有者に帰属する当期利益

12,918

115,742

102,824

796.0%

 

(1)売上高

 前期比1,383億23百万円増収の8,688億67百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業、科学事業、その他事業の全ての事業で増収となりました。詳細は次ページのセグメント別の動向に関する分析に記載しています。

(2)売上原価

 前期比261億58百万円増加の2,971億72百万円となりました。売上原価率は、34.2%と前期比2.8ポイント改善しました。

 前期においては、新型コロナウイルス感染症による影響で生産高が減少した結果、工場の操業度が低下するなどの影響が生じました。また、治療機器事業および内視鏡事業で気管支鏡および胆道鏡の自主回収に伴う費用約57億円を計上し、治療機器事業で処置具の自主回収に伴う費用約20億円を計上しました。一方、当期は、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円、前期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円を、それぞれ計上しました。さらに増収に加え操業度の改善もあり、売上原価率も改善しました。

(3)販売費および一般管理費

 前期比483億67百万円増加の4,053億99百万円となりました。新型コロナウイルス感染症に伴う販売活動等の制限の緩和により、業務委託費、研究費、人件費等の費用が増加しました。

(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用

 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で123億98百万円の損失となり、前期比で損失が81億15百万円減少しました。その他の収益は、2019年3月期に当社の海外子会社が行った間接税に係る自主調査に関して追加的な負担を見込んで引当計上した税額の内、発生が見込まれなくなった約36億円や、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円等を計上したことにより、前期比で、約59億円増加しました。一方、その他の費用は、減少しました。当期は、科学事業における分社化に係る費用約94億円、内視鏡事業における開発資産の減損損失約16億円をそれぞれ計上しており、また、企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用は約28億円増加しましたが、前期は、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用約119億円や、映像事業における分社による新会社の設立及び譲渡に係る費用約52億円を計上しており、前期比で、約13億円減少しました。

(5)営業利益

 上記の要因により、前期比719億13百万円増益の1,538億98百万円となりました。

(6)金融損益

 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は40億25百万円の損失となり、前期比で損益は11億50百万円改善しました。損益の改善は、主として支払利息が減少したことによるものです。

(7)法人所得税費用

 税引前利益が増加したことにより、前期比で227億63百万円増加し、339億3百万円となりました。

(8)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算)

 上記の要因に加え、前期は非継続事業で526億81百万円の損失を計上していたこともあり、前期比で1,028億24百万円増益となる1,157億42百万円となりました。

 

(研究開発支出および設備投資)

 当期においては、当社グループ全体で852億72百万円の研究開発費を投じるとともに、755億3百万円の設備投資を実施しました。

 

(為替影響)

 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=112.38円(前期は106.06円)、1ユーロ=130.56円(前期は123.70円)、1人民元=17.51円(前期は15.67円)となり、売上高では前期比で487億84百万円の増収要因、営業利益では前期比で227億91百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比12.3%の増収、連結営業利益は前期比59.9%の増益となります。

 

セグメント別の動向に関する分析

 第1四半期連結会計期間より、呼吸器科分野の事業強化を目的として、従来「内視鏡事業」セグメントに含めていた気管支鏡を、「治療機器事業」セグメントに移管しています。前期のセグメント情報については、移管後の報告セグメントに基づき組替を行い、表示しています。

 

 

売上高

営業利益又は営業損失(△)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

内視鏡

393,664

461,547

17.2

98,771

133,204

34.9

治療機器

231,842

275,586

18.9

30,567

60,826

99.0

科学

95,861

119,105

24.2

4,949

17,526

254.1

その他

9,177

12,629

37.6

△682

△2,024

小計

730,544

868,867

18.9

133,605

209,532

56.8

消去又は全社

△51,620

△55,634

連結計

730,544

868,867

18.9

81,985

153,898

87.7

(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。

 

[内視鏡事業]
 内視鏡事業の連結売上高は、4,615億47百万円(前期比17.2%増)、営業利益は1,332億4百万円(前期比34.9%増)となりました。

 消化器内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、全ての地域で前期比プラス成長となり、特に北米と欧州の売上が増加しました。製品別では、新製品である「EVIS X1」シリーズの販売が堅調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管用スコープや下部消化管用スコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合も徐々に上昇しています。

 外科内視鏡分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。特に、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ」の販売が好調に推移した北米と欧州で売上が増加しました。

 医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上や、新規契約の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、修理件数の増加が見られており、全ての地域で前年同期比プラス成長となりました。

 内視鏡事業の営業損益は、大幅増益となりました。前期は、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約42億円をその他の費用に計上していた一方、今期は、開発資産の減損損失約16億円を計上したものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い大幅な増収となり、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円も計上しました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比10.5%の増収、営業利益は前期比20.3%の増益となっています。

 

 

[治療機器事業]

 治療機器事業の連結売上高は、2,755億86百万円(前期比18.9%増)、営業利益は608億26百万円(前期比99.0%増)となりました。

 消化器科(処置具)分野では、症例数が回復傾向にあり、全ての地域・製品群でプラス成長となりました。特に、社会経済活動が正常化する中で、症例数が増加している欧州や北米で好調に推移しました。また、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリング、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群、病変の切除に使用されるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)用の製品群で売上が増加しました。

 泌尿器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んでいる、北米と欧州を中心に好調に推移し、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の拡販が奏功しました。

 呼吸器科分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進んだ北米と欧州を中心に大幅なプラス成長となりました。2020年12月に子会社化したVeran Medical Technologies, Inc.が当期を通じて売上に貢献したほか、EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具や気管支鏡等も好調に推移しました。

 その他の治療領域では、耳鼻科、エネルギーデバイスで売上が好調に推移しました。特に、耳鼻咽喉科向け内視鏡や「THUNDERBEAT」の売上が寄与しました。

 治療機器事業の営業損益は、大幅増益となりました。前期において、気管支鏡の自主回収に伴う費用を約55億円、処置具の自主回収に伴う費用約20億円、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約14億円を計上していた一方、当期は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い大幅な増収となり、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円や、前期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円、Veran Medical Technologies, Inc.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動に伴う利益約12億円も計上しました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比12.3%の増収、営業利益は前期比80.7%の増益となっています。

 

[科学事業]
 科学事業の連結売上高は、1,191億5百万円(前期比24.2%増)、営業利益は175億26百万円(前期比254.1%増)となりました。

 ライフサイエンス分野では、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により、前期比プラス成長となりました。研究所、大学での予算執行が進んだことに加え、販売活動の制限緩和により、市場環境の回復が顕著なアジアパシフィックや北米で生物顕微鏡の拡販等が寄与しました。

 産業分野では、全体的な市況回復に伴い、顧客の設備投資状況に改善が見られ、全ての分野で前期比プラス成長となりました。特に、北米において、市場環境に回復が見られる非破壊検査機器が好調に推移したほか、中国において、5G関連の電子部品や半導体市場が活況であることから工業用顕微鏡が好調に推移し、売上増加に寄与しました。

 科学事業の営業損益は、前期に社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用として約12億円を計上した一方、当期における新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴う大幅な増収により、大幅増益となりました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比17.3%の増収、営業利益は前期比196.5%の増益となっています。

 

[その他事業]
 その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。

 その他事業の連結売上高は、126億29百万円(前期比37.6%増)、営業損失は20億24百万円(前期は6億82百万円の営業損失)となりました。

 2020年11月に子会社化したFH ORTHO SASの売上約44億円が寄与し、大幅増収となりました。その他事業の営業損益は、増収だったものの、前期に当社子会社であったオリンパスRMS株式会社の全株式を譲渡したことに伴う譲渡益17億70百万円を計上していたこともあり、悪化しました。

 

 

② 財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

(百万円)

当連結会計年度末

(百万円)

増  減

(百万円)

増減率

(%)

資産合計

1,183,453

1,357,999

174,546

14.7

資本合計

395,480

511,362

115,882

29.3

親会社所有者帰属

持分比率

33.3%

37.6%

4.3%

 

 

 当連結会計年度において、2020年12月に買収したVeran Medical Technologies, Inc.及び2021年2月に買収したQuest Photonic Devices B.V.の取得資産と引受負債の公正価値を修正したことにより、前連結会計年度末の連結財政状態計算書を遡及修正しています。遡及修正の内容については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 40. 企業結合 (暫定的な金額の修正)」に記載しています。

 

[資産]

 当連結会計年度末は、資産合計が円安の影響もあり、前連結会計年度末から1,745億46百万円増加し、1兆3,579億99百万円となりました。これは為替変動の影響分も含めて、現金及び現金同等物が850億94百万円増加したこと、営業債権及びその他の債権が205億8百万円増加したこと、及び子会社を取得した影響によりのれん及び無形資産がそれぞれ371億14百万円及び155億51百万円増加したことが主な要因となります。

[負債]
 負債合計は円安の影響もあり、前連結会計年度末から586億64百万円増加し、8,466億37百万円となりました。これは為替変動の影響分も含めて、外貨建て社債の発行による資金調達を主因に流動負債及び非流動負債に含まれる社債及び借入金が308億63百万円増加したこと、及び未払法人税が236億17百万円増加したことが主な要因となります。

 

[資本]

 資本合計は、前連結会計年度末から1,158億82百万円増加し、5,113億62百万円となりました。剰余金の配当及び自己株式の取得を行った一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益1,157億42百万円を計上したこと等により、利益剰余金が268億14百万円増加したことに加え、円安の影響による為替換算調整勘定の変動により、その他の資本の構成要素が361億65百万円増加したことが主な要因となります。


 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の33.3%から37.6%となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

124,122

169,729

45,607

投資活動によるキャッシュ・フロー

△118,918

△71,016

47,902

財務活動によるキャッシュ・フロー

40,800

△40,667

△81,467

現金及び現金同等物期末残高

217,478

302,572

85,094

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において営業活動により増加した資金は、1,697億29百万円(前連結会計年度は1,241億22百万円の増加)となりました。税引前利益1,498億73百万円及び減価償却費及び償却費の調整646億15百万円が主な要因になります。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において投資活動により減少した資金は710億16百万円(前連結会計年度は1,189億18百万円の減少)となりました。主な要因は、デモ機等の有形固定資産の取得による支出416億88百万円、Medi-Tate Ltd.の取得による支出218億37百万円及び開発資産等の無形資産の取得による支出200億83百万円となります。

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において財務活動により減少した資金は、406億67百万円(前連結会計年度は408億円の増加)となりました。主な減少要因は、自己株式の取得による支出300億1百万円(単元未満株式の買い取り含む)、配当金の支払154億28百万円、長期借入金の返済による支出262億46百万円及び短期借入金及びコマーシャルペーパーの減少54億54百万円等となります。一方で、増加要因としては外貨建て社債の発行に伴う収入561億43百万円となります。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から850億94百万円増加し、3,025億72百万円となりました。

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

354,993

3.1

治療機器

211,718

8.1

科学

113,297

20.6

その他

2,657

82.9

682,665

7.4

(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

   2 当連結会計年度より、呼吸器科分野の事業強化を目的として、従来「内視鏡事業」セグメントに含めていた気管支鏡を、「治療機器事業」セグメントに移管しています。そのため、前連結会計年度のセグメント情報については、移管後の報告セグメントに基づき組替を行いました。下記④販売実績も同様です。

 

② 仕入実績

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

-

-

治療機器

-

-

科学

-

-

その他

1,463

△16.8

1,463

△16.8

 

③ 受注実績

 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。

④ 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

461,547

17.2%

治療機器

275,586

18.9%

科学

119,105

24.2%

その他

12,629

37.6%

868,867

18.9%

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度時点において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 当社グループは、2019年11月に発表した中長期の経営戦略において、目標とする業績指標を営業利益率で定めており、2023年3月期に営業利益率を20%超に改善することを目指しています。

 当連結会計年度における営業利益率は、販管費の効率化を進めたものの、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、17.7%(前期比6.5ポイント改善)となりました。

 目標とする業績指標の達成に向けて、内視鏡事業では消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販を進めるとともに、治療機器事業では消化器科処置具、泌尿器科、呼吸器科処置具の3領域に注力し、売上の成長と費用の効率向上を図るとともに、引き続き、財務の健全性を考慮しつつ、収益性と資産効率性の向上に向け、事業活動を推進していきます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、子会社株式の取得や自己株式の取得による支出があった一方で、営業活動からのキャッシュ・インフローが堅調であったことに加え、外貨建て社債の発行による資金調達を行いましたので、当連結会計年度末時点で約3,000億円(前連結会計年度末より約850億円増加)の手元資金を保有しています。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。

(ⅱ) 財務政策

 当社グループは、財務健全性の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、D/Eレシオや有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達基盤の多様化、拡充を進めており、調達コストの低減に取り組んでいます。

 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2022年3月31日現在における状況は、次のとおりです。

 

格付投資情報センター:A(長期、見通し安定的)、a-1(短期)

S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通し安定的)

ムーディーズ・ジャパン:Baa2(長期、見通し安定的)

 

(ⅲ) 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは、人件費および広告・販売促進費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は、様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および欧米を中心とした製造、修理拠点の拡充など、生産効率向上のための設備投資です。加えて、当連結会計年度においては、Medi-Tate Ltd. の買収を行い、戦略投資の資金需要も生じました。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、引き続き積極的に対応してまいります。

 

 

 

(ⅳ) 資金調達

 当社グループの運転資金および設備投資資金は、内部資金により充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行により資金を調達しています。これらの借入金および社債については、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できると考えており、今後も成長に必要となる資金の調達に問題はないものと考えています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA格、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+及びムーディーズ・ジャパンはBaa2となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金を調達することが出来ると考えています。さらに、主要通貨(米ドル・ユーロ・円)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。

 当連結会計年度においては、手元流動性の確保及び資金調達手段の多様化を目的とし、2021年12月に外貨建て社債の発行による500百万米ドルの資金調達を行いました。安定した財務基盤の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率向上の両立を意識しながら、今後も資金需要に応じて、借入や社債の発行による調達を検討していきます。

 

(ⅴ) 資金配分

 (ⅳ) 資金調達に記載したとおり、機動的な資金調達体制により、当社グループは、成長投資や株主還元に必要な手元資金も十分に確保出来ています。当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ継続的に増配する方針で、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。

 

 

③ 重要な会計方針および見積り

 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)提携契約

契約会社名

相手先

国名

契約内容

契約期間

オリンパス㈱

テルモ㈱

日本

医療機器分野における開発・販売の提携

2001年4月25日より1年、但し毎年自動延長

オリンパス㈱

ソニー㈱

日本

医療事業における合弁会社の設立

2012年9月28日以降、期間の定めなし

 

(2)Medi-Tate Ltd.の取得

 当社は、2021年5月27日付でMedi-Tate Ltd.の発行済株式の全てを、当社の連結子会社であるOlympus Winter & Ibe GmbHを通じて取得しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 40.企業結合 (Medi-Tate Ltd.の取得)」に記載のとおりです。

 

(3)オリンパスシステムズ株式会社の譲渡

 当社は、当社の連結子会社であるオリンパスシステムズ株式会社の全株式をアクセンチュア株式会社へ譲渡する契約を2021年5月28日付で締結し、2021年8月31日をもって譲渡手続きを完了しました。この結果、当社は同日付でオリンパスシステムズ株式会社に対する支配を喪失しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 34.キャッシュ・フロー情報 (5)支配の喪失 (オリンパスシステムズ株式会社の譲渡)」に記載のとおりです。

 

(4)科学事業の分社化

 当社は、2022年4月1日を効力発生日として、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに対して、吸収分割により当社の科学事業を承継させることを2021年12月17日付で決定しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 44.後発事象 (科学事業の分社化)」に記載のとおりです。

 

(5)完全子会社の吸収合併契約

 当社は、2022年4月1日を効力発生日として、当社の連結子会社であるオリンパスロジテックス株式会社を吸収合併することを2021年12月17日付で決定しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 44.後発事象 (完全子会社の吸収合併契約)」に記載のとおりです。

 

(6)重要な資産の譲渡

 当社は、経営資源最適化の観点から保有資産の見直しを行い、当社の保有する固定資産(土地)を譲渡する契約を2022年3月30日付で締結し、2022年4月27日をもって譲渡手続きを完了しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 44.後発事象 (重要な資産の譲渡)」に記載のとおりです。

 

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、経営理念の「私たちの存在意義」を「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」とし、持続的発展の実現を目指して、研究開発活動を行っています。

 2019年に当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーとして持続的な成長を実現するための新たな経営戦略、企業変革プラン「Transform Olympus」を発表しました。当社グループは、消化器科、泌尿器科および呼吸器科の領域に強みがあり、本経営戦略に基づき、これらの領域に投資・リソースを集中させ、収益性の高い持続的な成長の実現や、患者さんのアウトカムの改善を目指しています。さらに、今後のさらなる成長に向けて、シングルユース内視鏡や、AI・ロボティクス等のデジタルツールや技術を活用したソリューションの開発を進めています。

当社グループは研究開発プロセスの革新に取り組んでおり、フロントローディング型研究開発の推進とアライアンスやオープンイノベーションによる必要技術の獲得により、開発スピードを向上させます。また、各研究開発テーマの費用を、収益性を考慮しながら最適化するとともに、プロジェクトの見極めも含めて優先順位付けをし、支出を適切にコントロールすることにより研究開発の効率性も改善していきます。

 2021年4月には、開発初期段階でのコンカレント・エンジニアリングを各プロジェクトで確実に行えるよう、技術ごとに組織を分けるなど新しい研究開発組織に移行しました。これにより、製品開発のプロジェクトチームに必要な人材を集める体制とし、多様なエンジニアが開発前の初期段階から集まり、各方面の要件定義、設計検証を行うことで各種の要求に応えることが可能になりました。また、製品開発の責任を各プロジェクトのプロジェクトリーダーとし、プロジェクトに参加する各エンジニアの能力開発、育成の責任を各エンジニア部門のマネージャーとすることで、従来以上に開発者の育成、専門技術の追求を目指しています。

 当連結会計年度の研究開発支出は、前期比4.3%増の853億円であり、売上高に対する比率は前期から1.4ポイント減少し9.8%となりました。

○ 内視鏡事業

 内視鏡ビデオスコープシステムや外科手術用内視鏡システムなど、病気の早期発見と患者様の負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、AIサポートを備えたクリニック向けのクラウド型の内視鏡画像・レポート管理ソフトウェア「Vivoly+」のサブスクリプションサービスなどを開発しました。また、次世代外科内視鏡システムやシングルユース十二指腸内視鏡などの発売に向けて、開発を進めています。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比9.3%増の393億円です。

 

○ 治療機器事業

 消化器科内視鏡処置具、呼吸器科および泌尿器科治療機器など、患者様の負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、腹腔鏡手術や開腹手術で血管やリンパ管の封止や組織の剥離、把持などに使われるアドバンスドバイポーラデバイス「POWERSEAL Curved Jaw Sealer and Divider, Double Action」や、ニーズに応じた切開・凝固性能の簡単な調整を可能とし、消化管における早期がんやポリープなどの内視鏡的治療に対応する高周波焼灼電源装置「ESG-150」を開発しました。また、シングルユース尿管鏡やシングルユース胆道鏡、シングルユース気管支鏡などの発売に向けて、開発を進めています。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比12.0%増の207億円です。

 

〇 科学事業

 医学・生命科学の研究を支援する生物顕微鏡や、非破壊検査領域で社会インフラの安心と安全を支える工業用顕微鏡、工業用内視鏡、超音波探傷器などの研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、医学研究の細胞観察や製造現場での品質管理に貢献する高解像度・忠実な色再現を実現した、顕微鏡用デジタルカメラDP23/DP28や、ライフサイエンス研究の効率向上に貢献するクラウドサービスを開発しました。また、顕微鏡用画像解析ソフトウェア「OLYMPUS Stream」に、半導体・電子部品など検査業務の効率を飛躍的に向上させるディープラーニングオプション「TruAI」を追加しました。

 なお、2022年4月1日には、科学事業の持続的な成長と収益性の向上に向けて、新たに設立した完全子会社である株式会社エビデントに当社の科学事業を承継させる会社分割を実施しました。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比12.5%増の101億円です。

 

〇 その他事業及び全社共通

 医療分野を主とした当社の主力事業のさらなる発展を目指し、様々な分野における研究開発を行っています。

 当期の主な成果としては、早期診断・観察機能向上を実現する光学技術やAIを含む画像処理技術、低侵襲治療を実現するためのデバイス技術やロボティクスを含む精密制御技術の開発、および内視鏡や治療器をはじめとした医療分野新製品の高機能化、低コストを実現するシミュレーション技術開発や材料技術開発、高精度レンズ量産化の加工技術開発や、自動化ラインに繋がる設備開発などの生産技術に関する取り組みなどです。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比17.5%減の152億円です。