第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。

 この基本思想のもと、当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

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 また2023年4月以降、「患者様の安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」、「生産性の向上」の3つを優先すべき事項として掲げています。誠実で透明性のある企業であり続けるために、規制当局やステークホルダーと協力して、強固で持続的な組織の構築に努め、ヘルスケア業界ならびにESGを主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者様の安全を第一に掲げ、QA/RA(品質保証および法規制対応)に注力し、「グローバル全地域での品質システムと業務プロセスの統一を目指した改革の実施」「グローバルな品質・コンプライアンス機能の強化による、一貫した施策の展開」「コンプライアンス上の問題を解決したうえで、是正活動の完遂」等の取り組みを推進します。そして、長期的な戦略に沿った高品質な製品・サービスをさまざまな分野で提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

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(2) 経営戦略

 基本思想のもと、経営理念の実現のために当社は2023年に新たな経営戦略を発表しました。

 

(長期的かつ持続的な成長のための戦略的な価値の源泉)

 2019年11月に発表した中長期の経営戦略において、当社は、世界をリードするメドテック・カンパニーへ成長し、革新的な価値によって全てのステークホルダーにベネフィットをもたらし、世界の人々の健康に貢献することを戦略目標としました。過去3年間にわたって「Focus and Simplify」「Transform to Perform」のステージにおいて変革に取り組んできた結果、当連結会計年度に20%を超える営業利益率の達成というマイルストーンを実現することができました。今後は、「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、主要セグメントにおける当社の市場ポジションの拡大や、最終的に患者様の体験価値と治療成果の改善を目指しています。これに資する長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、4つのキードライバーとして、「ⅰ)事業拡大とグローバル展開」「ⅱ)戦略的M&A」「ⅲ)ケア・パスウェイの強化」「ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム」です。

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ⅰ)事業拡大とグローバル展開

 世界的な人口動態の変化と疾病発生の増加を受けて、当社の製品・サービスが対象とする疾患に対するソリューションへのニーズが高まる中、引き続き当社がリーディングポジションを持つ消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域に注力し、「先進イメージング」「精緻な治療」「高付加価値ソリューション」を通じて、患者様のケア・パスウェイに最適なソリューションを提供いたします。

・主力の消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」:欧州、アジア、日本で販売を開始しており、今後、米国や中国をはじめ、全世界に販売を展開予定です。

・シングルユース内視鏡: 2022年3月期に気管支鏡を発売済み、2024年3月期には咽喉鏡を発売予定です。今後は気管支鏡の他にも十二指腸鏡、胆道鏡、尿管鏡の領域においてシングルユース内視鏡の開発を進めています。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)

・中国市場:当社にとって戦略的に重要な市場の一つであり、「臨床医の教育プログラムやトレーニングへの投資」「中国の医療従事者のアンメットニーズの探索」を継続します。また、中国国内に現地生産拠点を準備中で、中国市場向けに中国国産製品を提供することを検討しています。

 

ⅱ)戦略的M&A

 消化器科、泌尿器科、呼吸器科における既存の疾患領域や高い成長が期待できる関連分野において、タックイン M&Aの機会を通じて製品ポートフォリオを継続的に強化し、「臨床・治療ワークフローの変革」「ケアの向上」「事業の地理的拡大」を図ります。包括的なソリューションの提供によって患者様の治療成果の向上に貢献していきます。

 

ⅲ)ケア・パスウェイの強化

 当社は、医療水準の向上によって患者様のアウトカムを改善することを目指しています。消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域を中心に、早期発見や診断、ステージ分類、治療、予後のケアに至るまでのケア・パスウェイの中で、当社のソリューションを通して患者様と医療従事者のエクスペリエンスを向上させ、より多くの患者様に医療アクセスを提供し、診療の質と成果を改善します。

 

ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム

 慢性疾患の増加と高齢化を受けて、より良い治療成果をより多くの人に届け、医療提供者と患者様のエクスペリエンスを向上させながら、医療コストを抑えることの必要性が一層高まっています。当社はこのような課題に対して、コネクティビティ、AI、データインサイトを活用したインテリジェント内視鏡医療によるソリューションの提供を検討しており、「ワークフロー管理」「CAD*およびリアルタイムな手技の支援」「AIによる臨床・業務インサイト」等を通じて、ユーザーエクスペリエンスを標準化していきます。AIを活用したインテリジェント内視鏡医療エコシステムは、新たなソフトウェアプラットフォームによって、お客様、当社、そして、パートナー企業との間で価値の共創を可能にし、プラットフォームのソフトウェアやアプリケーションのアップグレードによって、常にイノベーションを提供し続けるビジネスモデルに移行することを目指し、より精度の高い早期発見、診断、治療を実現していきます。

*Computer Aided Detection/Diagnosis:AIによる検出/診断支援

 

(投資とイノベーションを可能にする取り組み)

 当社は、投資やイノベーションといった価値創造の取り組みを実現する基盤の強化のため、特に以下の4点に注力して取り組んでいます。

・QA/RA:一貫性のある強固な品質システム導入や体制強化によるQA/RAの改革および是正活動の完遂

・R&D:イノベーションの加速に向けたR&D投資のスピードアップと投資額の増加。より強固なイノベーション・パイプラインの構築、より積極的な戦略パートナーシップ推進、市場投入までの期間の短縮

・製造、サプライチェーンマネジメント:売上原価の改善、組織規模と拠点構造の最適化、プロセスの合理化とデジタル化、更なる効率化の追求

・GTOM(Global Target Operating Model):グローバルのガバナンスとオペレーションの継続的な改善。意思決定プロセスの明確化、イノベーション推進に向けたより効率的なリソース配分を可能にするハイパフォーマンスな組織の実現

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(財務ガイダンス)

 2024年3月期から2026年3月期の3年間の財務ガイダンスは以下の通りです。「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、約5%の売上高CAGRと、20%前後の調整後営業利益率を維持しつつ、EPSは売上成長を上回る約8%のCAGRを目指し、安定的な価値創造と競争力のある成長を実現していきます。

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* 為替前提を固定

** 特殊要因調整後:その他の収益および費用等を除く。為替レート変動による影響は調整せず。実際の為替レートを使用

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

 当社グループはその存在意義である、「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を目指す活動を通じて社会に貢献することで、当社グループ自身がサステナブルな企業であり続けることができると認識しており、当社のESG戦略はそれを実現する上で重要なものです。

 

<ガバナンス>

 ESGの推進においては、2021年4月にESG担当役員を新設し、中長期事業計画の中でKPIを設定する仕組みを構築する等、その強化を図っています。ESG担当役員はESGを包括的に推進するとともに進捗状況をモニタリングし、グループ経営執行会議および取締役会に報告しています。また、2021年3月期より執行役の報酬について、長期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬のうち、10%が外部ESG評価機関の評価結果と連動するようになりました。2022年3月期にはその比率を20%に引き上げ、取り組みの強化を図っています。ESGへの取り組みは企業活動そのものと一体である恒久的な取り組みであるため、インセンティブの中でも長期インセンティブを連動の対象とすると共に、成果に対する評価は単年度の成果ではなく3年間の各年度の外部ESG評価機関の評価結果と連動する設計となっています。

 2023年3月期には当社のESG戦略の推進体制の再検討を行い、2024年3月期より新しいグループレベルでのガバナンス体制の新設を決定いたしました。この新しいガバナンス体制においては、各事業・各機能部門の責任者を中心に構成され、ESG戦略の遂行及びモニタリングを推進する「ESG委員会(ESG Committee)」を設置し、その下に機能横断的に取り組む必要のあるテーマごとにテーマ別ワーキンググループを置いて戦略の実施を推進します。またESG委員会を通じてグループ経営執行会議及び取締役会に対して戦略の実施状況や活動成果、課題等の報告を実施いたします。グループ経営執行会議並びに取締役会からの指示・助言を受けることで、適切なガバナンス体制の下、ESG戦略を適切に実行して行きます。

 

<ガバナンス体制>

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<戦略>

 2023年3月期には従来のESG戦略をベースに、戦略の見直しと調整を実施しました。2024年3月期を初年度とする新しい経営戦略において、ESGを重要項目の一つと位置付け、従来以上にESG戦略と経営戦略・事業戦略・機能戦略との親和性・一貫性を強化してきています。

 

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 従来のESG戦略の骨子・枠組みを残しながら、新たにステークホルダーの皆様のご意見をお聞きし、近年の社会から企業が求められるサステナビリティへの期待値・要求事項を踏まえ、メドテック業界における動向も参考にしながら、グループ経営執行会議および取締役会に諮る等のプロセスを経て、従来の「6つのESG領域」と「5つの重要課題」を新たに「6つの重要領域(Focus Area)」とし、その下に「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定しました。また、この「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定するプロセスの中では、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社の事業へのインパクト」の2つの軸から、これら「25項目の重要課題(Materiality Topics)」をTop Priority / High Priority/ Othersの3段階に優先順位付けをしています。この「6つの重要領域(Focus Area)」及び「25項目の重要課題(Materiality Topics)」は、当社グループの経営活動・事業活動と一体化し、これらの活動を通じて広く社会課題の解決に貢献することを表明するものです。当社グループが競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えています。マテリアリティは社会・事業変化によって可変のものであり、今後も必要に応じて見直しを行います。

 

    6つの重要領域(Focus Area)

・医療機会の幅広い提供およびアウトカムの向上

・コンプライアンスおよび製品の品質安全性への注力

・責任あるサプライチェーンの推進

・健やかな組織文化の醸成

・社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献

・コーポレートガバナンスの強化

 

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<リスク管理>

    全社的なリスクアセスメントを実施する中で、サステナビリティ・ESGに関するリスク項目を抽出し、全社のリスクモニタリング管理体制を通じてリスク管理を実施しています。合わせて、その結果は適宜グループ経営執行会議や取締役会にも報告しています。

 

<指標と目標>

    2023年3月期においても前年度に引き続き世界の代表的なコーポレート・サステナビリティ評価指標である「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)」をESG活動の指標とし、各種Indexに選定されることを目標としています。当社はこれまでの間、2018年に初めて「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に初めて選定された後、執行役の長期インセンティブと外部ESG評価機関の評価結果との連動を開始した2022年3月期の翌年、2022年12月に初めて「DJSI World」の構成銘柄に選定されました。それ以降、2023年3月期までDJSI Worldは2年連続、DJSI Asia Pacificは4年連続の選定となりました。

    また、2023年3月期においては、ESG戦略の見直しの中で、特に重要度の高いTop Priorityに位置付けられる「重要課題(Materiality Topics)」を中心に、これを実施するための具体的な「代表的実施項目(flagship initiatives)」を定め、それぞれに定量的・定性的なKPI及びターゲットを定めてきました。

 

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(2)気候変動

<ガバナンス>

 当社グループは、製品開発、調達、製造、物流、販売、修理といったバリューチェーン全体を通した環境負荷の低減に取り組んでいます。気候変動対応を含む環境活動の最高責任者であるCEOおよびCHRO(Chief Human Resources Officer)の下、EHS(環境・健康・安全衛生)機能を管轄するHuman Resources Headが、当社グループ全体の環境活動を統括しています。

 EHS機能はHuman Resources Headの指示のもと、当社グループ全体の「環境安全衛生ポリシー」を策定するとともに、温室効果ガス使用量の削減目標を含む環境行動計画を策定し、当社グループ全体の環境行動計画の推進と進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最高責任者(CEOおよびCHRO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指示を行います。取締役会は気候変動の対応状況について適宜報告を受け、取り組み状況をモニタリングしています。

  *最高責任者は2023年3月期まではCEOおよびCAO、2023年4月1日からはCEOおよびCHRO

 

 

環境推進体制 (本有価証券報告書提出時)

 

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<戦略>

 当社グループは、シナリオ分析の手法を用いて、短期、中期および長期の時間軸ごとに気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提示している「2℃シナリオ:RCP2.6、IEA B2DS(産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満とするシナリオ)」および「4℃シナリオ:RCP8.5(産業革命前からの世界の平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1~5年)には、自然災害発生による操業停止・サプライチェーン断絶を、中長期的(10~20年)には、炭素税の導入や温室効果ガス削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。

 気候変動のリスクは当社グループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは限定的であると認識しています。例えば、物理的リスクとしては自然災害の自社工場操業への影響についても台風や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの面でも、昨今世界規模で台風や洪水が発生し、当社グループでも販売拠点の一時休業等の影響がありましたが、影響は限定的でした。また、移行リスクとしては、炭素税導入等による操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると工場でのエネルギーコストは小さいため影響は限定的であると考えます。

 また、気候変動の機会については、温室効果ガス削減に寄与する製品へのニーズの高まりを機会ととらえて省エネルギー等に配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、当社グループの製品は製品自体が小型で使用によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が小さいことから、事業活動に大きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。

 

 

環境変化

リスク

機会

対策

2℃

シナリオ

低炭素社会への移行に伴う規制強化

<移行リスク>

炭素税・排出権取引や各国の温室効果ガス削減規制の強化による調達・操業コストの増加、製品に対する温室効果ガス削減規制の強化への対応不足による市場競争力の低下

省エネルギーによる事業コストの削減

環境配慮型製品の開発による市場競争力の向上

ステークホルダーからの評価向上

エネルギー効率改善

再生可能エネルギー導入拡大

サプライヤーの多様化

製品・サービスの設計開発段階での環境配慮設計

4℃

シナリオ

気温上昇・異常気象の発生増加

<物理リスク>

台風や洪水等の自然災害規模の拡大による操業停止およびサプライチェーンの断絶(サプライヤーからの納品停止、物流拠点及び販売・修理サービス拠点の休業による顧客への納品停止等)

 

<リスク管理>

 当社グループは、経営戦略や事業計画の策定段階において、当社の事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への影響度が高いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移行リスク、自然災害による物理的リスクの内容も含みます。

 リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発生可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを行い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法人の環境統括部門が事業所関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。

 また、特に事業運営への影響度の大きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執行会議および取締役会へ報告されます。CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不足している場合は活動計画の見直しを行います。

 

<指標と目標>

 当社グループは、2030年までに自社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope 1 & Scope 2)を実質ゼロとすること、2030年までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることの目標を設定しています。また、脱炭素社会の実現に広く貢献するためには、自社からの温室効果ガス排出量に加えて、サプライチェーン上の温室効果ガス排出量までを含めた取組みが必要であると考え、2023年5月にサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を2040年までにネットゼロとする目標を策定し発表しました。本目標は、パリ協定で努力目標とされる高水準の1.5℃目標に沿ったものです。

 2022年3月期における実績は、温室効果ガス排出量対2018年3月期比25.9%削減、再生可能エネルギー由来の電力導入率18.9%を達成しました。今後は2030年までの目標達成に向け、世界各国の拠点での継続的な製造改善活動や省エネの推進と、再生可能エネルギーの導入を進めます。また、製品ライフサイクル全体での温室効果ガスを削減するために、環境配慮型製品の開発、グリーン調達の推進や物流効率改善等に継続的に取り組みます。

  *実績データは本有価証券報告書提出時に第三者保証が得られている2022年3月期のもの

 

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目標

実績

温室効果ガス排出量削減率

(対2018年3月期)

21%以上

25.9%

再生可能エネルギー導入率

12%以上

18.9%

 

(3)人的資本・多様性

<戦略>

(ⅰ)人材育成方針

人材開発の基本的な考え方

 長期的視点における最も重要な経営資源は「人」であると考えのもと、誠実・共感をもって従業員一人ひとりを尊重するとともに、経営環境の変化に対しては当社グループ一体となって結束し俊敏に対応できる組織づくりを目指しています。これを実現するためには、従業員一人ひとりが当社グループ共通の理念や価値観を深く理解し、グローバルで活躍するためのスキル、そして高い専門性を有し、リーダーシップを発揮できる人材であることが求められます。また、人材開発を人材育成の側面から見るのではなく、こうした従業員の持つ意欲と活力を信頼し、その個性と能力が最大限活かされるよう適所に適材を配置することも重要です。

 

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当社グループの目指す企業文化

 当社グループでは、健やかな組織文化とそれを支えるリーダーが、経営戦略の実現を後押しする重要な要因になると考えています。

 当社グループが目指す健やかな組織文化は「私たちの存在意義を実現するため、従業員一人ひとりがベストな状態でパフォーマンスを発揮できる文化」と定義しており、この文化の実現のためには6つの要素を特定しています。現在、6つの要素のさらなる向上のため、当社グループ全体で取り組みを進めています。

 

健やかな組織文化を実現するための施策

 健やかな組織文化の実現に向け、当社グループ共通の人事制度の構築や人材育成を実行しています。特に、経営戦略の達成に向け、グローバルで活躍できるリーダーシップのある人材の育成が重要だと考え、継続的な経営人材の強化および人材育成、リーダーシップや実行力強化に向けた研修等を実施しています。

 

(ⅱ)社内環境整備方針

多様性(Diversity, Equity, and Inclusion)

 当社グループでは、組織全体のダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを促進することで、より魅力的で競争力のある革新的な事業展開が実現できると考えています。そのため、性別、障がい、国籍、人種に関係なく、多様な人材にやりがいのある仕事を提供し、専門性を高め持続的に成長することを目指しています。

 当社グループが競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えており、2023年3月期に策定したESG戦略の「6つの重要領域(Focus Area)」及び「25項目の重要課題(Materiality Topics)」においても、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンの推進を、特に重要度の高いTop Priorityに位置付けられる「重要課題(Materiality Topics)」の一つとして掲げています。

 DEIの戦略的な重点領域の一つとして女性活躍推進を定義し当社グループとしての目標値を設定しておりますが、特に日本地域においては注力すべき地域として個別の目標を定め、推進してまいります。

 

エンゲージメント強化

 当社グループのコアバリューサーベイは、健やかな組織文化づくりという私たちの目標を支える、従業員エンゲージメントの重要なツールです。従業員の声に耳を傾け、その体験や求めるものを会社が知る手段となっています。

 現在、サーベイの結果を受け、複数の組織階層でトップダウンとボトムアップの両面から組織のあるべき姿とのギャップを埋めるためのアクションプランを策定し、グローバルで展開しています。それぞれの地域を中心に、各部門や機能において、サーベイから抽出したコラボレーション、チャレンジできる風土、ワークライフバランスに関する課題を改善するためのアクションを実行していきます。今後は定期的にアクションプランの進捗と改善度合いを確認することで、より健やかな組織文化の実現を目指してまいります。

 

人材開発推進体制

 これまで当社グループが取り組んできた各地域の人材開発体制に加え、当社グループ全体での最適な人材開発を推進していくため、人事組織をグローバルと各地域による連携した体制としました。またHRビジネスパートナーと呼ばれる機能・事業組織担当の人事が事業や機能組織のリーダーたちとの連携も高めることで、当社グループ全体での一貫性を持つだけでなく地域やビジネス個別状況にも合わせて、人材開発施策の効率性の向上、効果の最大化を図っています。

 

<指標及び目標>

 本項「人的資本・多様性」における具体的な指標及び目標については、「第1 企業の概要 5 従業員の状況」掲載の、①管理職に占める女性労働者の割合、②男性の育児休業等取得率、③男女の賃金差異をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性がありま す。当社グループでは、経営理念、経営戦略等を含めた「経営の基本方針」を実現するためのリスクマネジメントの取り組みを実施しています。具体的には、「リスクマネジメント及び危機対応方針」及び関連規程に基づき、積極的かつ適切なリスクテイクによる企業の持続的成長や価値創出に繋げる“攻め”と、不正や事故の防止という“守り”の両方の視点で、リスクマネジメントを行っています。

 リスクマネジメント体制においては、グローバルなリスクマネジメント体制を構築し、経営戦略ほか当社の事業目標の達成に影響を与えうるリスクの分類を定義し、各リスク分類を管掌する執行役を明確にしています(リスクアシュアランスの確立)。各執行役は管掌するリスク分類に付随するリスクを許容範囲に収めるために必要な各種活動(組織体制の整備、プロセスの整備、重点施策の策定・実行など)を遂行します。

 2023年4月よりGRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)に関する4つの機能(リスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティ)を統括する新組織を発足させました。機能間の連携を高めることで、執行機能におけるリスクマネジメント体制の更なる強化を図ります。

 また、リスクマネジメントのプロセスをリスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価およびリスク対応策の設定)、リスク対応策の実行、モニタリングおよびレポーティング、改善のPDCAサイクルで運用しています。リスクアセスメントは、年度計画策定プロセスに連動させ、全社共通の評価基準を用いてリスクを評価し、全社のリスクを可視化、一元管理しています。また、グループの重要リスクについてはその対応状況を定期的にグループ経営執行会議、取締役会および監査委員会へ報告し、継続的にモニタリングしています。

 

<リスクマネジメント体制>

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<「経営の基本方針」を達成するためのリスクマネジメント>

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 以下において、当社グループの経営意思決定以外の要因で、業績変動を引き起こす要因となり得る、事業展開上の主なリスクを記載しています。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

<全社重要リスクマップ>

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<全社重要リスク一覧>

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<直近の事業環境変化>

当社グループ全体に影響を及ぼす基本的な環境認識を以下のように捉え、全社および各組織でのリスク認識、対応策の検討を行っています。

Political

政治

地政学

米中貿易摩擦の激化による先端技術の輸出規制が当社グループの業績へ影響を及ぼす可能性。

戦争・紛争の影響を考慮した対応策(BCP策定等)の整備。

Economical

経済

マクロ経済

各国間の経済摩擦、経済制裁の発生、主要原材料の不足あるいは需給バランスの悪化などの複雑な要素に起因する世界的なインフレーション、金利の変動や急激な為替変動。

Social

社会

ステークホルダー

世界的かつ各地域でのステークホルダーからのサステナビリティの観点での要請の高まり、および情報開示の法制化の加速。※サステナビリティについての詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧下さい。

Technological

技術

新技術

ビジネスモデルや競合関係の多様化。DX、ロボティクスの加速、AI技術の急速な実用化、医療への適用検討、法規制への影響。

 

<事業環境に関するリスク>

(医療行政、製品関連法規制強化および感染管理に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:増加

リスク

 医療分野においては、国内外で医療費抑制や、医療サービスの安全性や有効性の向上を通じた患者様の生活の質(QOL)の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われており、米国食品医薬品局(FDA)や、欧州医療機器規制(EU-MDR)をはじめとする各国の医療機器申請・登録等の法規制要求は年々高まっています。加えて、感染管理、リプロセス(洗浄・消毒・滅菌)要求も高度化しています。

 今後、各国の医療関連法規制や関連した行政の方針などにより、新製品やサービス等をタイムリーに提供できない場合、また、販売した製品等に対する市場対応等を行う場合、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。一方で、各国における医療政策変更の兆候を早期に捉えることができた場合、具体的な法規制への確実な対応、あるいはオペレーションの計画的な変更に繋がります。

 現在当社は2020年に米国で販売を開始した十二指腸内視鏡に関する市販後調査を実施していますが、今後の経過によっては、FDAにより更なる規制措置が取られる可能性があります。

 また、2022年11月から2023年3月にかけて、当社グループは、コンプレイント対応、医療機器報告(MDR)、是正予防処置、リスクアセスメント、プロセスおよび設計の検証に関連して、日本の施設に対してFDAより3件のWarning Letterを受領しました。今後の経過によっては、FDAによりさらなる規制措置が取られる可能性があります。

対応策

 当社グループは、早期診断および低侵襲治療に寄与する製品ラインアップにより、医療サービスと患者様のQOLの向上に貢献しており、製品ライフサイクルマネジメントおよび感染予防に係る戦略を通じ、法規制に適合した安全な商品の開発と選定に取り組んでいます。今後も、重要な法規制・品質戦略・計画の実行力強化や定期的な監査などを通じて、関連法規の遵守を最優先していきます。

 当社グループは、患者様の安全が最も重要だと考えており、各国当局からの指摘事項への対応は必要不可欠です。過去に受けた指摘事項に対する是正処置を遅滞なく行い、直近で当社グループがFDAから受領した3つのWarning Letterに確実に対応していきます。

 また、QARAの組織体制・製造プロセス・品質マネジメントシステム・医療事業のクオリティカルチャーに存在すると考えられる根本原因(脆弱性)の改善を推進します。

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性

 

(市場・競合状況に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:増加

リスク

 先進国を中心に、高齢化が進展しており、医療へのニーズは堅調に推移するものと考えられます。また、各国では増加する医療費の適正化や効率的かつ質の高い医療サービスの提供を図ることを目的とした医療制度改革が進められています。

 このような環境下で、当社グループが関連する事業分野においては多くの競合会社が存在し、技術革新も進んでいます。特に治療機器事業における競争がこれまで以上に激化しています。当社が価格、技術、品質等において、競争力を有する製品を適時に投入する必要がありますが、その成否によっては収益確保に影響を及ぼす可能性があります。短期的にはEVIS X1などの新製品の投入、中長期ではDX、エンドルミナルなどの内視鏡技術開発が進むことによる収益の増加等の機会を得られる可能性があります。

 特に中国市場については、中長期的に高い成長ポテンシャルを有する市場と認識しています。一方で、米中貿易摩擦の激化、中国政府・当局による国産優遇策や集中購買の推進など、中国市場に係る不確実性がこれまでに増して高まっています。さらに、新興国市場についても、経済成長に伴い医療に対するニーズが高まっており、さらなる成長余地があります。今後の政治情勢や政府・当局の政策・規制の動向、あるいは競合会社との競争状況によっては、当社の売上に大きな影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループでは、特定の地域での事業展開にとどまらず、全世界の様々な事業分野・地域において、多様な製品・サービスの提供に努めています。また、内視鏡を操作できる医師を増やすべく、トレーニングプログラムの提供など、内視鏡医の育成をサポートしています。

 また、当社グループでは市場における代替技術・製品の出現などを含めた競争環境を注視し、マーケティングや知的財産および関連部署との協力の下で、採用すべき新技術の選定および開発の迅速化に努めます。社内での開発のみならず、M&Aやアライアンス等を通じた社外の技術の取り込みも積極的に検討します。市場ニーズに即した高付加価値の新製品・技術の開発にも取り組んでいます。当社グループにおいては特に、内視鏡事業では消化器内視鏡システムEVIS X1の拡販によって強固なシェアを維持し、治療機器事業では消化器科・泌尿器科・呼吸器科の製品ラインアップの強化によってシェアを拡大し、シングルユース内視鏡等の次世代の医療機器の開発を推進することによって、収益拡大を目指しています。

 重要な市場の一つである中国においては、国産優遇策などへ対応するため、以下の対応策を検討し、推進しています。

・中国での製造拠点(一部研究開発機能含む)立ち上げ

・グローバルでのサプライチェーン全体の最適化

・米中関係などに関する各種情報収集

・有事の際の影響を考慮した対応策(BCP策定等)の整備

 新興国についても、専任組織の設置や優先順位の高い国における長期的な投資の開始など、機会を最大化するための活動を推進しています。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

<マーケットに関するリスク>

(経済環境に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:C

傾向:増加

リスク

 ウクライナにおける戦争や米中貿易摩擦のほか、地政学的リスクの顕在化や、資源価格の動向等の経済環境の変化により、世界的なインフレーションや急激な為替変動が生じ、当社グループの収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、内視鏡事業や治療機器事業等において製品およびサービスを世界中の顧客に提供していますが、これらの事業の収益はグローバル経済や各国の景気動向に大きく影響を受けます。

 医療分野では、各国の国家予算が縮小された場合、あるいは政策の転換等により、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 一方で、政策等により関連国家予算が増加した場合、収益の増加等の機会を得られる可能性があります。

対応策

 当社グループでは、特定の地域での事業展開にとどまらず、全世界の様々な事業分野・地域において、多様な製品・サービスの提供に努めています。また、各国による自国の産業育成・保護等の政策につき、特に注視すべき状況となった場合には、必要に応じてタスクフォースの設置や定期的な社内報告等を行います。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

(為替変動に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:D

傾向:増加

リスク

 当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品およびサービスを提供しています。為替が円高に推移した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響を与える可能性があります。外貨建債権・債務について可能なものについてはヘッジを行っていますが、急激な為替変動が生じた場合、あるいはヘッジの対象となる債権・債務の発生が予定と大きく異なった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 為替変動リスクを軽減することを目的として、先物為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化などを通じて、外貨建債権・債務の縮小を図っています。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

(資金調達に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:D

傾向:継続

リスク

 当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響が生じる可能性があります。

 また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響が生じ、一方、業績良化等により資金調達コストが低下した場合、好影響を与える可能性があります。

対応策

当社グループでは、コマーシャル・ペーパーや公募社債の発行等、資金調達手段の多様化による調達コストの低減に取り組んでおり、長期の有利子負債は基本的に固定金利を採用することで、金利上昇の影響を限定的にしています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化や財務管理の強化を図っています。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

 

<事業活動に関するリスク>

(開発活動に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:継続

リスク

 当社グループの医療分野は、高齢化、環境意識の高まりなどを主な要因として、これまで以上に急速な社会環境の変化、不確実性に直面しています。各国の医療政策の変更、医療費削減、医療関連法規制の強化、感染予防・リプロセスに対する要請の更なる高まりにより、技術開発に対するハードル・複雑さは増しています。また、欧米では、環境対応に対する意識が顕著になってきています。それらに対して要求される開発サイクルは短くなる傾向にあります。

 技術的には、すべての領域でデジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速しており、いわゆるテクノロジー・イノベーション技術(AI/ロボティクス/ICT)も実用化の段階に入ろうとしています。それに伴い、新技術・代替技術のみならず、巨大IT企業など異業種からの医療業界への参入により事業環境は厳しさを増しています。また、当社グループの医療分野では、患者様ファーストの考えに基づき消化器科、泌尿器科、呼吸器科を中心にケア・パスウェイを広げ、技術開発、イノベーションを通じて診療水準の向上に貢献し、患者様のアウトカムの改善を目指しています。既存の製品・技術に対して顧客のニーズに応じた改良をおこなう「持続型イノベーション」だけでなく、社会環境の変化に対応した新たな発想で技術を実用化する「破壊型イノベーション」とのバランスが重要だと考えています。市場の変化を適切に予測できない、あるいは製品の開発が予定通り進展しないことにより、顧客のニーズに合致した新製品をタイムリーに開発できない場合には、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。また、開発期間の長期化に伴う費用の増加あるいは回収可能額が相対的に低下することによる開発資産の減損損失等が発生する可能性があります。

 機会として、当社グループの注力領域における技術開発の発展、およびアンメットニーズに対するソリューション提供を通じた医療への貢献、中長期ではロボティクス技術の普及による、低侵襲治療、医療費削減、医療従事者の負荷軽減の可能性があります。

対応策

 当社グループでは、医療分野にフォーカスした機動力のあるコンカレントな技術開発を行うための組織体制を整備しています。また、技術開発およびイノベーションに対して、以下の様な複合的なアプローチを用いるとともにそれを推進する多様な人材の育成、獲得にも注力しています。①既存事業および製品に対する継続的な技術開発、②適切なプロダクトライフサイクル管理による製品の安全性の追求、開発効率向上、開発コストの削減、③M&Aを通じた技術獲得および製品ポートフォリオの拡充、④自社のコア・テクノロジー、コスト、開発期間などを勘案した業務提携、内製・外製の検討、⑤社会課題の解決にもつながる将来の事業および環境対応に配慮した製品開発のためのイノベーションなど。

 当社の既存製品に対する技術面での取り組みとして、製品ラインアップの拡充、製品関連法規制への対応、感染予防およびリプロセスへの対応、製品セキュリティ強化の取り組みが必須です。また、感染対策への意識の高まりにより市場のニーズが増している、シングルユース内視鏡に対する複数のラインナップを用意することは優先度の高い開発テーマです。また、当社ではDXを加速させ、デジタル技術を活用したサービスを本格的に始めようとしています。さらに、近い将来に向けて、診療プロセス全体の最適化および新しいビジネスモデル構築のための、より高度なAI、ICTの活用検討、次世代の低侵襲手術に向けたロボティクスの活用検討も推進しています。このような開発活動を通して、予防から診療、予後にいたるまで、患者様がたどる一連のケア・パスウェイに着目し、向上させるためのソリューションを構築していきます。

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性, 成長のためのイノベーション, 生産性の向上

 

(サプライチェーンに関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:継続

リスク

 当社グループでは、製品を開発し、必要な部品等を外部の供給元から調達し、生産、製品供給まで、適時に行う必要があります。近年、特に地政学的緊張の高まり、サイバー攻撃、影響力の大きい気象現象、世界的な輸送網の寸断によって、影響力の大きいサプライチェーンの潜在的なリスクが増加しており、原材料および部品調達から製品供給までの不確実性は以前より増しています。貿易における障壁の増加や原材料の入手困難など、外部要因による原材料価格の上昇や製品の不足に対して、強力なサプライヤーマネジメントに集中的に取り組む必要があります。

 特定の供給元に依存する部品等について、調達に制約を受ける場合には、当社における生産および供給が中断あるいは遅延する可能性があります。これらのマクロ経済の不確実性および地政学の脅威は、製造供給部門で進めている生産構造改革およびサプライチェーン全体の最適化に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 世界的な半導体およびその他の部品不足に関しては、全体的な需給は安定化の傾向にあり、リスクも減少方向に向かっています。しかしながら、当社が調達している半導体は供給量が限られ、供給不足が長期化する可能性もあり、引き続き注意が必要です。

 地政学的リスク、自然災害、疫病、戦争、内戦、暴動、テロ、サイバー攻撃、港湾労働者によるストライキ、或いは輸送事故などの理由により物流が停滞する場合、配送遅延による売上機会の損失、復旧対応のコスト増加により当社の収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 製品については外部への生産委託を含め、厳格な品質基準に基づき生産を行っていますが、万一、製品に不具合等が発生した場合には、リコール等、多額のコストが発生するだけでなく、当社グループの信頼が損なわれ、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 一方で、これらサプライチェーンのリスク及び課題に適切に対応することで、生産効率の向上、安定した製品供給、顧客の信頼獲得に繋がり、収益増加の機会を得られる可能性が高まります。

対応策

 当社グループでは、不確実性の高い環境下においても、透明性が高く、統合的で強靭なサプライチェーンを構築することを重視しています。事業継続と持続可能な価値創造を見据えて、サプライチェーン方針や、「オリンパスグループグリーン調達基準」を制定し、これらのもとで、法令・社会規範遵守の強化に取り組んでいます。取引先に向けては、法令・社会規範の遵守、汚職・賄賂などの禁止、公平・公正な取引の推進、環境への配慮など、具体的な行動指針を定めています。これらをもとに、公平、公正かつ透明性の高い取引に基づく良好な関係の構築と関係強化に取り組んでいます。

 また、当社グループは、サプライチェーンマネジメントの強化を目指しており、部品等の調達から顧客への納品まで、全体を統合したEnd-to-Endサプライチェーンを構築し、顧客満足度およびビジネスの変化対応力の向上、コストの効率化、在庫の最適化を目的とした施策を実行しています。End-to-Endサプライチェーントランスフォーメーションの目標は、製造および調達と緊密に連携してこれらのリスクによる影響を管理し、外的な逆風による影響を制限するための計画および流通プロセスと機能を強化することです。新たに設置されたグローバルディストリビューション機能(End-to-Endサプライチェーントランスフォーメーションの一部)は、安定した配送と、課題やサポートの必要性に対するタイムリーな問題解決をするため、リスクの軽減と対策を、監督および調整しています。サプライチェーン、調達、製造、および営業機能間の緊密なコラボレーションと迅速な意思決定を推進します。

 取引先の動向把握や取引先との関係強化を推進するとともに、バックアップ計画の検討を含むBCP(事業継続計画)の強化等を行っており、特に半導体の調達に関しては、社内横断タスクフォースを設置し、取引先との関係強化により、必要量の確保を図っています。また、製品の安定供給のため、各拠点で適切な在庫量を設定するとともに、製造・調達・サプライチェーン機能が一体となって、リスク管理体制を構築し、End-to-Endでのサプライチェーンの変化に対して対応策を講じています。さらに、品質管理部門との協働のもとで、最適な生産システムの構築と品質の向上に努め、製品開発プロセスを事業レビューや技術レビューなどに分けるなど、品質改善活動を推進することで品質問題の抑制を目指しています。製造の観点では、グローバルでの生産負荷最適化、内製/外製の検討、バリューエンジニアリングの推進、製造DXの推進などを通じて、製造コストの最適化を図っています。

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性, 成長のためのイノベーション, 生産性の向上

 

 

(業務提携、企業買収、事業売却および投資全般等に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:継続

リスク

 当社グループは事業ポートフォリオの選択と集中を行っており、特に消化器科・泌尿器科・呼吸器科の領域について優先的に投資を実施しています。事業に係る様々な領域で設備投資や研究開発投資等の投資を実施しており、当該投資に係る意思決定を行った時点から外部環境が急激に変化する等、予期せぬ状況の変化が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

技術および製品開発、販売・マーケティングに関して、業界の先進企業と長期的な戦略的提携関係を構築していますが、これらの戦略的パートナーに、財務上あるいはその他事業上の問題が発生した場合、また戦略の変更等により提携関係を維持できなくなる等の問題が発生した場合には、当社グループの事業活動に影響が生じる可能性があります。

 事業拡大のため、企業買収等を実施することがありますが、買収の対象事業を当社グループの経営戦略に沿って適切に統合できない場合、あるいは既存事業および買収の対象事業について効率的な活用を行うことができなかった場合は、当社グループの事業遂行に影響が生じるほか、のれんの減損や、その他これに伴う費用の発生等が生じる可能性があります。

 当社グループは、業務提携の推進等を目的として、投資有価証券等を保有しています。市場経済の動向や投資先の財政状態等により、株価および評価額に著しい変動が生じる場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、事業ポートフォリオの戦略的な見直しの一環で、当社はノンコア事業と位置付けられた関連会社あるいは事業の売却を実行することがありますが、各国の法規制や経済情勢および相手先の経営状況の変化などにより実施が困難となる場合、あるいは売却損、評価損が発生する場合、当社グループへの経営あるいは財務上の影響が生じる可能性があります。

 適切な対応策の下で行われる業務提携および企業買収等を通じて、当社は製品ポートフォリオの拡充や新技術の獲得を進め、ターゲットとする領域および疾患におけるリーディング・ポジションを確立し、長期的な成長と企業価値の向上を実現することが可能となります。

対応策

 当社グループでは、投資前には投資評価の妥当性を審議し、投資の可否を判断しており、外部環境の変化等に応じて、投資後も評価を行っています。M&Aや出資の検討に際しては、契約の成立後に深刻な問題が発見されるようなリスクを低減すべく、外部の弁護士や財務アドバイザー等も活用して、各種デューデリジェンスを実施した上で、社内で定められた承認プロセスに従って投資評価の妥当性を審議するなどのプロセスを経て、投資の可否について判断を行っています。また、コンプライアンスを遵守するための内部指針、価値評価モデル、デューデリジェンス項目の見直しを定期的に行うとともに、取引が完了した後も対象事業のモニタリングを実施するなど、投資に関するプロセス全体の改善に取り組んでいます。事業売却等においても同様の承認プロセスを経て判断を行い、プロセス全体の改善に取り組んでいます。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション, 生産性の向上

 

<経営全般に影響を及ぼすリスク>

(コンプライアンスに関するリスク)

種類:脅威

影響度・緊急度:D

傾向:継続

リスク

 当社グループおよび当社グループの販売店、供給者の多くが政府系の企業、政府系の医療機関および公務員と取引を行っています。また、当社グループでは、規制業種である医療分野を含む各種事業を世界各地で展開しており、本邦の法律に加えて各国・地域における医療に関する法律や独占禁止法のほか、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の贈賄禁止条項や英国反贈収賄法を始めとした各国・地域の贈収賄禁止に関する法律の適用を受けています。さらに、不当景品類および不当表示防止法、米国反キックバック法や米国虚偽請求取締法を含む、ヘルスケア事業に関連する様々な不正防止法の規制対象にあります。当社グループと協力関係にある取引先(ディーラー・サプライヤー)に対しても、高い水準のコンプライアンスが維持されるように取り組む必要があります。

 法的規制への違反は罰金や課徴金、禁固刑、特定の国における医療制度への参加禁止などの処罰につながる可能性があります。さらに、当社グループの顧客の多くが公的医療保険その他、政府による医療制度から医療費を補助されており、法的規制への違反によって制度への参加を制限された場合には、当社グループの製品に対する需要やそれを使用した症例数の減少などの影響が生じる可能性があります。

 当社グループは、世界中のプライバシーに関する規制を受けています。個人情報の取り扱いに関して、世界各国の個人情報保護法制(日本の「個人情報保護法」、欧州連合(EU)の「EU一般データ保護規則(GDPR: General Data Protection Regulation )」)等に違反することにより、政府機関から罰金その他の処分を受ける、またはステークホルダーから訴訟を提起される可能性があります。

 当社グループでは、これらの法的規制を遵守することを徹底していますが、違反する行為を行った場合、違反の意図の有無にかかわらず、当社グループの事業、財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況および株価に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループではグローバル行動規範において示しているとおり、法令順守に基づいた業務遂行を従業員に徹底しており、贈賄防止や各国の競争関連法を順守することの重要性について従業員への教育を行っています。また、世界中の販売店や第三者を対象に法規制遵守等に係るトレーニングや監査も実施しています。

 法務、コンプライアンス、内部監査などの統制部門が、当社グループに適用されるすべての法律、規制、内部方針を遵守しているかどうかという観点から、事業活動をモニタリングしています。また、当社グループは、従業員に対しても必要かつ適切な研修や教育を実施しており、全従業員、第三者、一般の方が懸念事項を報告できる、グローバル通報窓口を開設しています。このグローバル通報窓口は、独立した第三者によって運営されており、365日、24時間いつでも、多言語での受付が可能です。事業を展開するすべてのマーケットにおいて、当社事業に関連する規制をモニタリングし、情報収集を行う体制の構築を進めています。また、関連する法律や規制に改正や変更があった場合には、従業員に対して周知徹底するとともに、その改正や変更に対応した製品を速やかに開発し、供給していきます。

 個人情報保護規制に関わるリスク対応としては、2022年3月期にセキュリティおよびプライバシーコンプライアンス戦略を策定し、各地域における個人情報保護関連専門人材の配置を含む対応力の強化を進めるとともに、当社グループ全体での連携をより確実にするためグローバル体制の強化に取り組んでいます。

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性, 生産性の向上

 

(訴訟に関するリスク)

種類:脅威

影響度・緊急度:D

傾向:継続

リスク

 国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は研究開発および生産活動において様々な知的財産権を使用しており、それらは当社グループが所有しているもの、あるいは適法に使用許諾を受けたと認識しているものでありますが、当社グループの認識の範囲を超えて第三者から知的財産権を侵害したと主張され、係争等が発生した場合には、収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

 当社の連結子会社であるOlympus (China) Co., Ltd.が保有する中国・深圳市にある当社の中国現地法人Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.は、深圳市安平泰投資発展有限公司およびShenzhen YL Technology Co., Ltd.との間で計2件のビジネス上の紛争に関与しており、今後の経過によっては、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 訴訟その他法的な手続きが必要となる事案が発生した場合に、適時に弁護士等の外部専門家と対策を検討することが出来る体制を構築し、日本、米州、欧州、中国、アジア・オセアニアの各地域統括会社においても社内の関連部署のスキル・専門知識の強化に努めています。また、財務上のリスクを極小化する目的で、訴訟による予期せぬ損失に備えて、保険の付保等を行っています。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

 

(情報セキュリティに関するリスク)

種類:脅威

影響度・緊急度:A

傾向:増加↑

リスク

 当社製品やサービスを安定的に継続して提供するため、事業継続を妨げるサイバー攻撃に備え、当社およびステークホルダーの機密情報や個人情報の漏えい防止などの情報セキュリティリスクの低減や、法令違反の防止に努めています。しかしながら世界的に医療機関や製造業、そのサプライチェーンを標的としたサイバー攻撃が急増しており、攻撃の高度化・組織化が進んでいることから、以下にあげるような不測の事態が発生することにより、当社グループの企業価値の毀損、事業競争力の低下、社会的信用の失墜、影響を受けるステークホルダーに対する補償、各国当局からの制裁・罰金により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・医療機関に設置された当社の製品を標的としたサイバー攻撃により、顧客医療機関において検査や治療行為が継続できなくなること、あるいは患者様の個人情報が漏洩または毀損すること

・当社の顧客である医療機関を標的としたサイバー攻撃により、当社製品の使用やその保守作業を介して患者様の情報が漏えいし、顧客が事業を継続することが出来なくなること

・当社やそのサプライチェーンを標的としたサイバー攻撃により、当社において業務が中断したり、保守サービスの提供が滞るなどの結果として、医療機関において検査や治療行為が継続できなくなること

・情報セキュリティ対策の不備や内部不正により、当社内に保管される技術情報・顧客情報が漏えいまたは毀損すること

 上記の医療行為の継続性に対するリスクは各国の法規制当局にも認識されており、新製品だけではなく既販品も含め製品およびその供給に関する情報セキュリティ・サイバーセキュリティリスクを製品安全性の一環として扱うことが求められています。

対応策

 サイバー攻撃等により不正アクセスが発生した場合に、より迅速な対応により顧客やビジネスパートナー、当社業績への影響を最少化するため、全従業員への定期的な教育の実施の徹底や、当社グループ全体を対象とするインシデント対応体制の構築に取り組んでいます。

 上記に加えてこれまでの活動をさらに強化するため、まず2022年3月期において、当社グループ全体で情報/サイバーセキュリティ、プライバシーのリスク管理を可能にし、複数年にわたる戦略ロードマップをグローバルで一貫して実行していくことを目的として、新たなセキュリティおよびプライバシーコンプライアンス戦略とその実行のためのガバナンスモデルを策定し、続いて2023年3月期においては、戦略ロードマップ実行に必要となる関係各機能におけるグローバル体制づくり、およびロードマップ施策の実行を開始しました。具体的には、サイバー攻撃に対するグローバル対応体制の整備、製品開発および製造環境における情報資産管理プロセスのグローバル標準化、製品開発フェーズにおけるセキュリティ保証プロセスやセキュリティに関する顧客からの問い合わせへの応対プロセスのグローバル標準化などの活動を開始しました。これにより、以下のことが可能になります。

・一般的なITシステムのみならず製品開発環境や製造環境においてもサイバー攻撃への耐性を高めること

・セキュリティを製品安全の一部と捉え、開発段階だけでなく製品ライフサイクル全体にわたり製品セキュリティを継続的に担保し、当社サプライヤーを含めサプライチェーン全体で安定した製品供給を維持すること

・各国・地域の最新動向や法規制に基づき、さらにプライバシー保護を強化すると共に、様々なデータの種類や機密度に応じた保護と利活用を実現すること

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性, 成長のためのイノベーション, 生産性の向上

 

(人材に関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:A

傾向:増加

リスク

 当社グループの競争力を維持するためには、事業遂行に必要な優秀かつ多様な人材を採用し、維持し続ける必要があります。当社グループの業界における人材獲得競争はグローバルに激化しており、コロナ禍を経て労働市場が変化したことによる退職率の高まりも一部地域で見られ、人材の採用、育成、リテンションの重要性が増しています。当社グループではダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンや人権尊重に関する取り組みの推進等、一人ひとりがベストな状態でパフォーマンスを発揮できる健やかな組織文化の醸成を目指していますが、当社が高い技能を有する人材を採用し、維持することができなかった場合、今後の製品やサービスの供給や持続的な成長に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループは、従業員一人一人がグループ共通の理念や価値観を深く理解し、高い専門性を有する人材をグローバルで適所に配置することが重要であると考えています。この実現に向けて、理念・価値観の浸透のための活動を行うほか、スキルトレーニングプログラムなどを展開しています。経営戦略の遂行に必要となる職務を定義し、グローバル共通のタレント・マネジメントシステムを導入し、重要ポジションから順に後継者育成計画を作成しています。また、国籍や性別等を問わない多様な人材が活躍し、高い専門性を発揮し続けることを可能にする体制の整備も進めています。このほかにも、グローバル共通のリーダーシップ・コンピテンシー・モデルを定めたほか、リーダーシップの発揮を支援するためのプログラムの整備を行い、従業員が高いパフォーマンスを発揮し続けるための文化醸成、人材開発のための取り組みを行っています。報酬についても、常にマーケットトレンドを意識しながら、競争力のある報酬水準と報酬体系を社員に提供しています。例えば、日本地域においては、2023年4月より、職務と成果をより反映した報酬体系に移行しました。また、日本を含むグループ全体では、グローバル共通の職務評価と報酬ポリシーにより公平性を担保するとともに、一定層以上の社員に株式報酬を付与することで、報酬水準の底上げと同時に中長期目標達成へのコミットメントの向上を図ることとしています。人材採用に関しては、新卒などの定期採用に加えて、専門性を有する人材を不定期に採用しており、人材採用の体制を強化するとともに、当社に入社した社員が早期に活躍できるようにオンボーディングの取り組みを充実させています。

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性, 成長のためのイノベーション, 生産性の向上

 

(税務に関するリスク)

種類:脅威

影響度・緊急度:D

傾向:継続

リスク

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等により、追加の税負担が生じる可能性があります。繰延税金資産については、経営状況の変化や組織再編の実施等により、回収可能性の評価を見直した場合、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となる可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

対応策

 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等に関しては、法令の改正や規則の変更に対するモニタリングを行いながら、社内の取引ルールを適宜見直していきます。繰延税金資産については、グループ各社の収益性をモニタリングしながら、それぞれの会社が適切な収益を確保出来る様に業績を管理することに加えて、グループ会社間の組織再編においても再編後の収益性の変化に留意することでリスクの最小化を図ります。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

(気候および環境を含むサステナビリティに関するリスク)

種類:機会と脅威

影響度・緊急度:C

傾向:継続

リスク

 顧客を含むステークホルダーからのサステナビリティの観点での要請は増加しています。例えば、欧州においては顧客からの入札要件にサステナビリティ(ESGやBCP)の視点が加わるケースが増加しており、他地域でも同様の傾向が見られます。対象は当社のみならず、当社のサプライチェーンも包括的に対象となる傾向があります。また、各地域でサステナビリティ情報開示の法制化が進んでいます。日本のみならず欧州(EU CSRD)、米州(SEC)においても法制化が進んでおり、今後当社への影響が考えられます。これらのステークホルダーからの要請に応えられない場合には、ビジネスにおいて入札に参加できない、投資家からの投資が制限される、地域によっては企業活動に制限が生じるといったリスクがあります。

 環境分野については、気候変動の緩和と適応、水資源の保全、持続的な資源利用、生物多様性の保護といった環境課題を認識しています。世界各国において脱炭素・循環型社会の実現に向けての炭素税導入や二酸化炭素の排出規制、資源循環に関する規制、化学物質管理などの規制が強化されることにより、事業コストが増加する可能性があります。また、気候変動に起因する自然災害の深刻化によって、自社拠点の操業やサプライチェーンに影響する可能性が高まり、適切な対応が取れなかった場合に、事業機会の損失等が生じる可能性があります。

 気候および環境を含むサステナビリティの課題に適切に対応することで、企業の持続的成長と世界的課題への取組みを両立し、中長期において各地域及びステークホルダーからの信頼を築くことで、収益だけに限定されない企業価値の向上に繋がると認識しています。

対応策

 サステナビリティ全体の観点では、当社ESGチームが中心となり、事業活動を通じて当社が定めるESGマテリアリティを実現する活動を推進しています(機能戦略、ESG戦略の一体化)。

 環境分野については、環境活動を推進する専門の機能を設置し、ISO14001に沿った環境マネジメント体制を整備しています。本体制のもと、規定類の維持、環境管理責任者および推進者への教育、現地運用のモニタリングと改善を通じて環境法規制への対応を推進しています。サステナビリティについての詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧下さい。

 また、当社グループは、重要課題(マテリアリティ)に「社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献」を掲げ、2021年4月にTCFDへの賛同を表明しました。長期的に製品ライフサイクル全体のカーボンニュートラルを目指しつつ、2030年までに自社事業所からの二酸化炭素排出量(Scope 1、2*)を実質ゼロとすること、2030年までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とするという2つの野心的な目標を策定しました。

 また、脱炭素社会の実現に広く貢献するためには、自社からの二酸化炭素排出量に加えて、サプライチェーン上の二酸化炭素排出量までを含めた取組みが必要であると考え、2023年5月にサプライチェーン全体の二酸化炭素排出量(Scope1,2,3)を2040年までにネットゼロとする目標を策定しました。本目標は、パリ協定で努力目標とされる高水準の1.5℃目標に沿ったものです。

 本目標達成およびサプライチェーンでの環境リスク対策として、世界各国の拠点での製造改善活動や再生可能エネルギーの導入とともに、環境配慮型製品の開発や物流効率改善、サプライヤーとの協働による自主削減目標の設定、脱炭素活動への支援に継続的に取り組みます。

* Scope 1:敷地内における燃料の使用による直接的な温室効果ガス排出、Scope 2:敷地内で利用する電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出、Scope 3:その他の間接的な温室効果ガス排出(Scope1、Scope2を除く)

経営戦略・方針との関連性:患者様の安全と持続可能性

 

(自然災害、感染症、戦争、内戦およびその他のリスク)

種類:脅威

影響度・緊急度:C

傾向:増加

リスク

 その他、自然災害、感染症、戦争、内戦、暴動、テロ、経済制裁等が発生した場合、収益確保に影響が生じる可能性があります。

対応策

 重大な危機が発生した際には、グループ全体に適用される危機対応ルールに基づいて対策本部を設置し、企業価値に及ぼす影響を最小限にとどめるべく、危機管理に努めるとともに、平時においてもBCP(事業継続計画)の策定、定期的な見直しおよびBCPの実効性を高めるための教育・訓練を通じて事業中断リスクへの対応を強化しています。

経営戦略・方針との関連性:成長のためのイノベーション

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

 第2四半期連結会計期間において当社はBain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み以下ベインキャピタル)が投資助言を行う投資ファンドが間接的に株式を保有する特別目的会社である株式会社BCJ-66との間で科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約を締結しましたこれに伴い第2四半期連結会計期間より科学事業に関わる損益を非継続事業に分類しており当連結会計年度及び前連結会計年度についても同様の形で表示していますなお売上高営業利益税引前利益継続事業からの当期利益については非継続事業を除いた継続事業の金額を当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています

 また当社グループは従来内視鏡事業」「治療機器事業」「科学事業及びその他事業の4区分を報告セグメントとしておりましたが第2四半期連結会計期間より内視鏡事業」「治療機器事業及びその他事業の3区分に変更しています

 

業績全般に関する動向

 当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の大流行の影響による厳しい状況から経済活動が回復する中で、持ち直しの動きが継続しました。一方で、世界的な金融引き締めは、景気下振れのリスクとなっています。また、中国における新型コロナウイルスの感染拡大の影響、およびウクライナにおける戦争や世界的なインフレもあり、原材料価格の上昇や、サプライチェーンの制約、半導体及びその他の部品不足による影響が発生しました。わが国経済においても、経済活動が回復する中、景気は緩やかに持ち直している一方で、為替の変動や世界経済と同様に原材料価格の上昇、サプライチェーンの制約、半導体及びその他の部品不足による影響が発生しました。

 こうした環境下にあるものの、当社グループは、真のグローバル・メドテックカンパニーへの飛躍を目指しており、内視鏡事業及び治療機器事業を中心とした医療分野に経営資源を投入し、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に努めています。その一環として当社から吸収分割により当社の科学事業を承継した当社の完全子会社である株式会社エビデント(以下「エビデント」)の全株式を譲渡する契約を締結し、本契約に基づき、当社は2023年4月3日に譲渡を完了しました。

業績の状況

 以下(1)から(9)は継続事業の業績を、(10)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。

(単位:百万円)

 

2022年3月期

2023年3月期

増減額

増減率(%)

(1)売上高

750,123

881,923

131,800

17.6%

(2)売上原価

243,423

285,074

41,651

17.1%

(3)販売費及び一般管理費

357,510

420,547

63,037

17.6%

(4)持分法による投資損益/
その他の収益/その他の費用

△3,002

10,307

13,309

-

(5)営業利益

146,188

186,609

40,421

27.7%

(6)金融損益

△4,487

△4,315

172

-

(7)税引前利益

141,701

182,294

40,593

28.6%

(8)法人所得税費用

31,074

44,304

13,230

42.6%

(9)継続事業からの当期利益

110,627

137,990

27,363

24.7%

(10)親会社の所有者に帰属する当期利益

115,742

143,432

27,690

23.9%

為替レート(円/米ドル)

112.38

135.47

23.09

-

為替レート(円/ユーロ)

130.56

140.97

10.41

-

為替レート(円/人民元)

17.51

19.75

2.24

-

 

(1)売上高

 前期比1,318億円増収の8,819億23百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業では増収、その他事業では減収となりました。詳細は次ページのセグメント別の動向に関する分析に記載しています。

(2)売上原価

 前期比416億51百万円増加の2,850億74百万円となりました。売上原価率は、32.3%と前期比0.1ポイント改善しました。

 前期は、2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円、2021年3月期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円を、それぞれ計上しました。一方、当期は、半導体をはじめとする原材料の調達コストが上昇したものの、当連結会計年度に中国での売上が増加したことによる地域別売上構成の変化および円安による為替影響等により、売上原価率は改善しました。

(3)販売費及び一般管理費

 前期比630億37百万円増加の4,205億47百万円となりました。特に、販売活動に伴う費用や、品質保証・法規制対応等における事業運営基盤強化に係る費用が増加しました。

(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用

 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で103億7百万円の収益となり、前期比で損益は、133億9百万円改善しました。その他の収益は、前期において、2019年3月期に当社の海外子会社が行った間接税に係る自主調査に関して追加的な負担を見込んで引当計上した税額の内、発生が見込まれなくなった約30億円や、Medi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円等を計上し、また当期において固定資産売却益約164億円、Medi-Tate Ltd.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動により、取得時の買収対価が修正され、約14億円を計上した結果、前期比で、約100億円増加しました。一方、その他の費用は、前期において内視鏡事業の開発資産について約16億円の減損損失、また企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用として約88億円をそれぞれ計上しましたが、当期においては企業変革プラン「Transform Olympus」を推進するための関連費用が約65億円減少したこともあり、前期比で、約43億円減少しました。

(5)営業利益

 上記の要因により、前期比404億21百万円増益の1,866億9百万円となりました。

(6)金融損益

 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は43億15百万円の損失となり、前期比で損益は1億72百万円改善しました。損益の改善は、主としてドル金利の上昇により受取利息が増加したことによるものです。

(7)税引前利益

 上記の要因により、前期比で405億93百万円増加となる1,822億94百万円となりました。

(8)法人所得税費用

 税引前利益が増加したことにより、前期比で132億30百万円増加し、443億4百万円となりました。

(9)継続事業からの当期利益

 上記の要因により、前期比で273億63百万円増加となる1,379億90百万円となりました。

(10)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算)

 上記の要因および非継続事業からの当期利益を合わせて、前期比で276億90百万円増益となる1,434億32百万円となりました。

 

(研究開発支出および設備投資)

 当期においては、非継続事業を除いた継続事業で768億66百万円の研究開発費を投じるとともに、720億23百万円の設備投資を実施しました。

 

(為替影響)

 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=135.47円(前期は112.38円)、1ユーロ=140.97円(前期は130.56円)、1人民元=19.75円(前期は17.51円)となり、売上高では前期比で983億81百万円の増収要因、営業利益では前期比で443億45百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比4.5%の増収、連結営業利益は前期比2.7%の減益となります。

 

セグメント別の動向に関する分析

 

 

売上高

営業利益又は営業損失(△)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

内視鏡

461,547

551,823

19.6

133,204

152,769

14.7

治療機器

275,586

318,207

15.5

60,826

63,692

4.7

その他

12,990

11,893

△8.4

△2,018

△914

小計

750,123

881,923

17.6

192,012

215,547

12.3

消去又は全社

△45,824

△28,938

連結計

750,123

881,923

17.6

146,188

186,609

27.7

(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。

 

[内視鏡事業]
 内視鏡事業の連結売上高は、5,518億23百万円(前期比19.6%増)、営業利益は1,527億69百万円(前期比14.7%増)となりました。

 消化器内視鏡分野では、第2四半期連結累計期間まで上海をはじめとする各都市のロックダウンの影響を受けていた中国において売上が回復し、また北米や欧州においても売上が増加した結果、すべての地域で前期比プラス成長となりました。製品別では、消化器内視鏡システム「EVIS X1」シリーズの販売が好調に推移していることに加えて、一世代前の上部消化管ビデオスコープや大腸ビデオスコープに対するニーズも底堅く、増収に寄与しました。なお、全体の売上に占める「EVIS X1」シリーズの割合も徐々に上昇しています。

 外科内視鏡分野では、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ」を発売したアジア・オセアニアや、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅡ」と硬性鏡および外科用ビデオスコープの組み合わせでの販売が堅調に推移した北米における売上が寄与し、前期比プラス成長となりました。

 医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、全ての地域で前期比プラス成長となりました。

 内視鏡事業の営業損益は、増益となりました。2020年3月期に計上した十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約42億円の影響が当期はなくなったことに加え、EVIS X1をはじめとした販売等の費用や、品質保証・法規制対応等における事業運営基盤強化に係る費用等が増加しました。一方で、増収による売上総利益の増加に加えて、前期に計上した開発資産に係る減損損失約16億円の影響がなくなりました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比6.0%の増収、営業利益は前期比11.8%の減益となっています。

 

[治療機器事業]

 治療機器事業の連結売上高は、3,182億7百万円(前期比15.5%増)、営業利益は636億92百万円(前期比4.7%増)となりました。

 消化器科(処置具)分野では、北米や欧州を中心にプラス成長となりました。また、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群、スクリーニング検査における組織採取に用いられる生検鉗子等のサンプリングの製品群で売上が増加しました。

 泌尿器科分野では、北米と欧州を中心に好調に推移し、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極と尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の販売が順調に拡大しました。なお、2023年3月期より治療機器事業のその他の治療領域に分類していた婦人科製品については、治療機器事業の泌尿器科に含めています。

 呼吸器科分野では、北米と中国を中心にプラス成長となりました。EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具が好調に推移しました。

 その他の治療領域では、エネルギーデバイスを中心に売上が増加しました。特に「POWERSEAL」の売上が寄与しました。

 治療機器事業の営業損益は、増益となりました。前期にその他の収益として計上したMedi-Tate Ltd.の段階取得に係る差益約28億円や、2021年3月期に計上した気管支鏡の自主回収に係る引当金につき、当初想定よりも必要と認められる費用が減少したことから、一部引当額の取り崩しを行ったことによる売上原価の減額約27億円の影響が当期はなくなったことに加えて、品質保証・法規制対応等の費用が発生したことや事業活動の回復に伴い販売等の費用が増加しました。一方で、増収による売上総利益の増加およびMedi-Tate Ltd.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値の変動により、取得時の買収対価が修正され、その他の収益に約14億円を計上しました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比2.7%の増収、営業利益は前期比13.8%の減益となっています。

 

[その他事業]
 その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。

 その他事業の連結売上高は、118億93百万円(前期比8.4%減)、営業損失は9億14百万円(前期は20億18百万円の営業損失)となりました。

 売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いてきたこともあり、FH ORTHO SASの売上が増加したものの、動物市場向けの医療機器の販売を終了したことにより、減収となりました。その他事業の営業損益は、減収となったものの、前期に計上していた株式会社AVS(動物市場向けの医療機器の販売を行っていた子会社)の清算に伴う費用がなくなったこと等の要因により、改善しました。

 

 

② 財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

(百万円)

当連結会計年度末

(百万円)

増  減

(百万円)

増減率

(%)

資産合計

1,357,999

1,508,308

150,309

11.1

資本合計

511,362

641,234

129,872

25.4

親会社所有者帰属

持分比率

37.6%

42.4%

4.8%

 

 

[資産]

 当連結会計年度末は、円安による為替影響と繰延税金資産の増加を主因に資産合計が前連結会計年度末から1,503億9百万円増加し、1兆5,083億8百万円となりました。流動資産では科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約 が締結されたことに伴い譲渡が見込まれる科学事業の資産として1,649億36百万円を売却目的で保有する資産へ振 替えていますまた法人所得税の支払975億67百万円や有形固定資産の取得による支出475億70百万円等により、現金及び現金同等物が1,332億43百万円減少しています。非流動資産では、為替影響およびOdin Medical Ltd.の買収によりのれんが180億7百万円増加、および科学事業のエビデントへの集約等に伴い繰延税金資産が987億60百万円増加しています。

[負債]
 負債合計は、前連結会計年度末から204億37百万円増加し、8,670億74百万円となりました。流動負債では科学事 業の譲渡に関する株式譲渡契約が締結されたことに伴い譲渡が見込まれる科学事業の負債として432億53百万円を売却目的で保有する資産に直接関連する負債へ振替えていますまた科学事業のエビデントへの集約等に伴い未払法人所得税が652億14百万円増加しています非流動負債では社債及び借入金が期日返済に伴い437億59百万円減少しています。

 

[資本]

 資本合計は、前連結会計年度末から1,298億72百万円増加し、6,412億34百万円となりました。剰余金の配当及び自己株式の取得を行った一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益1,434億32百万円を計上および在外営業活動体の 換算差額の増加を主因とするその他の資本の構成要素424億62百万円増加が主な要因です

 また当社は2022年5月11日開催の取締役会決議に基づき2022年6月8日付で232億71百万円の自己株式の消 却を行った一方で2022年11月11日開催の取締役会決議に基づき自己株式の取得500億円および一部消却438億17百 万円を行ったこと等により自己株式が175億3百万円減少しています。


 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の37.6%から42.4%となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

169,729

98,490

△71,239

投資活動によるキャッシュ・フロー

△71,016

△58,414

12,602

財務活動によるキャッシュ・フロー

△40,667

△143,178

△102,511

現金及び現金同等物期末残高

302,572

205,512

△97,060

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において営業活動により増加した資金は、984億90百万円(前連結会計年度は1,697億29百万円の増加)となりました。法人所得税の支払975億67百万円営業債権及びその他の債権の増加270億13百万円棚卸資産の 増加268億52百万円等の減少要因はあったものの税引前当期利益1,822億94百万円および減価償却費及び償却費の調整667億41百万円等の増加要因により増加しています。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において投資活動により減少した資金は584億14百万円(前連結会計年度は710億16百万円の減少)となりました。幡ヶ谷の土地を含む有形固定資産の売却による収入204億60百万円を計上した一方で生産設備等の 有形固定資産の取得に伴う支出475億70百万円及び研究開発資産等の無形資産の取得による支出230億53百万円を主因に減少しています。

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度において財務活動により減少した資金は、1,431億78百万円(前連結会計年度は406億67百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出500億3百万円、社債の償還による支出400億円、リース負債の返済に よる支出209億14百万円、配当金の支払178億22百万円、長期借入金の返済による支出135億47百万円等により減少しています

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して970億60百万円減少し、2,055億12百万円となりました。なお関連指標のうちインタレスト・カバレッジ・レシオは社債及び借入金が前期末から437億59百万円減少したものの営業活動によるキャッシュ・フローが984億90百万円と前連結会計期間と比較して712億39百万円減少したことにより前期末の39.6倍から18.3倍となりました

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

420,972

18.6

治療機器

230,680

9.0

その他

8,751

37.1

660,403

15.2

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

② 受注実績

 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。

③ 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

551,823

19.6%

治療機器

318,207

15.5%

その他

11,893

△8.4%

881,923

17.6%

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 当社グループは、2019年11月に発表した中長期の経営戦略において、目標とする業績指標を、特殊要因を調整した調整後営業利益率で定めており、2023年3月期に20%超に改善することを目指して事業活動を推進してきました。

 当連結会計年度における調整後営業利益率は、20.0%となりました。内視鏡事業では消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販が進み、治療機器事業でも消化器科処置具、泌尿器科、呼吸器科の3領域を中心に売上が増加したことで増収となり、これに伴う売上総利益の増加が寄与しました。

 2023年5月に発表した経営戦略に基づき、今後も20%前後の調整後営業利益率を維持しつつ、安定的な価値創造と競争力のある成長を実現していきます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、営業活動により資金が増加した一方で、自己株式の取得による支出、社債の償還および長期借入金の返済による支出等があったことで、当連結会計年度末時点で保有する手元資金は2,055億12百万円(前連結会計年度末より970億60百万円減少)となりました。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。

(ⅱ) 財務政策

 当社グループは、財務健全性の維持と、適正な財務レバレッジのコントロールによる資本効率性の向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、D/Eレシオや有利子負債/EBITDA倍率等の財務規律に照らし、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達基盤の多様化、拡充を進めており、調達コストの低減に取り組んでいます。

 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2023年3月31日現在における状況は、次のとおりです。

 

格付投資情報センター:A+(長期、見通し安定的)、a-1(短期)

S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通しポジティブ)

ムーディーズ・ジャパン:Baa2(長期、見通しポジティブ)

 

(ⅲ) 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは、人件費および広告・販売促進費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は、様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および欧米を中心とした製造、修理拠点の拡充など、生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、引き続き積極的に対応してまいります。

 

 

 

(ⅳ) 資金調達

 当社グループの運転資金および設備投資資金は、内部資金により充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行により資金を調達しています。これらの借入金および社債については、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できると考えており、今後も成長に必要となる資金の調達に問題はないものと考えています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA格、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+及びムーディーズ・ジャパンはBaa2となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金を調達することが出来ると考えています。さらに、主要通貨(米ドル・ユーロ・円)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。

 財務健全性の維持と資本効率性の向上の両立を意識しながら、今後も資金需要に応じて適正な調達を検討していきます。

 

(ⅴ) 資金配分

 (ⅳ) 資金調達に記載したとおり、機動的な資金調達体制により、当社グループは、成長投資や株主還元に必要な手元資金も十分に確保出来ています。当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ継続的に増配する方針で、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。

 

 

③ 重要な会計方針および見積り

 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)提携契約

契約会社名

相手先

国名

契約内容

契約期間

オリンパス㈱

テルモ㈱

日本

医療機器分野における開発・販売の提携

2001年4月25日より1年、但し毎年自動延長

オリンパス㈱

ソニー㈱

日本

医療事業における合弁会社の設立

2012年9月28日以降、期間の定めなし

 

(2)科学事業の譲渡

 当社は、2022年8月29日付で、ベインキャピタルが投資助言を行う投資ファンドが間接的に株式を保有する特別目的会社である株式会社BCJ-66と、科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約を締結し、2023年4月3日付で譲渡を完了しています。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 44.後発事象 (科学事業の譲渡)」に記載のとおりです。

 

(3)Odin Medical Ltd.の取得

 当社は、2022年12月19日付で、Odin Medical Ltd.の発行済株式の全てを、当社の連結子会社であるKeymed(Medical & Industrial Equipment)Ltd.を通じて取得しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 40.企業結合 (Odin Medical Ltd.の取得)」に記載のとおりです。

 

(4)コラーゲン事業及び歯科用商品販売事業の譲渡

 当社の連結子会社であるオリンパステルモバイオマテリアル株式会社は、2023年3月28日付で株式会社ジーシーと、当社グループのその他事業に含まれるコラーゲン製品の開発・製造・販売事業及び歯科用商品販売事業の譲渡に関する会社分割契約を締結しました。これにより、当連結会計年度より、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社の保有するコラーゲン事業及び歯科用商品販売事業に関する資産および負債を売却目的保有に分類される処分グループに分類しています。なお譲渡の完了は、2023年7月を予定しています。

 

(5)子会社株式の取得

 当社は、2023年2月24日付で、韓国の消化器用金属製ステントなどの医療機器メーカーであるTaewoong Medical

Co., Ltd.(本社:韓国)の発行済株式の全てを取得する契約を締結しました。

6【研究開発活動】

 当社グループは、経営理念である「私たちの存在意義」を「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」とし、持続的発展の実現を目指して、研究開発活動を行っています。

 当社グループが強みを持つ消化器科、泌尿器科および呼吸器科の領域に投資・リソースを集中させ、収益性の高い持続的な成長の実現や、患者さんのアウトカムの改善を目指しています。さらに、今後のさらなる成長に向けて、シングルユース内視鏡や、AI・ロボティクス等のデジタルツールや技術を活用したソリューションの開発を進めています。

 当社グループは研究開発プロセスの革新に取り組んでおり、フロントローディング型研究開発の推進とアライアンスやオープンイノベーション、M&Aによる必要技術の獲得により、開発スピードを向上させます。また、各研究開発テーマの費用を、収益性を考慮しながら最適化するとともに、プロジェクトの見極めも含めて優先順位付けをし、支出を適切にコントロールすることにより研究開発の効率性も改善していきます。

 2021年には、開発初期段階でのコンカレント・エンジニアリングを各プロジェクトで確実に行えるよう、技術ごとに組織を分けるなど新しい研究開発組織に移行し、2022年にはそのオペレーティングモデルの改善を推進しました。プロジェクトマネジメントの拡充、リソース管理プロセスの改善、バリューエンジニアリングおよびシステムズエンジニアリングの導入、プロジェクト内の専門技術の異なる部門間の連携を促進するなどの取り組みにより、開発効率の向上を目指しており、今後もさらなる改善を進めていきます。

 

 当連結会計年度の非継続事業を除いた継続事業の研究開発支出は、前期比2.2%増の769億円であり、売上高に対する比率は前期から1.3ポイント減少し8.7%となりました。

○ 内視鏡事業

 内視鏡ビデオスコープシステムや外科手術用内視鏡システムなど、病気の早期発見と患者様の負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、外科手術用内視鏡システム「VISERA ELITE III」や内視鏡用超音波観測装置「EU-ME3」などを開発しました。また、次世代内視鏡システムやシングルユース十二指腸内視鏡などの発売に向けて、開発を進めています。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比12.6%増の443億円です。

 

○ 治療機器事業

 消化器科内視鏡処置具、呼吸器科および泌尿器科治療機器など、患者様の負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、硬性尿管鏡「OES ELITE ウレテロレノスコープ」や、開腹手術用のエネルギーデバイス「THUNDERBEAT Open Fine Jaw Type X」などを開発しました。また、シングルユース尿管鏡やシングルユース胆道鏡、シングルユース気管支鏡などの発売に向けて、開発を進めています。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比9.8%増の227億円です。

 

〇 その他事業及び全社共通

 医療分野を主とした当社の主力事業のさらなる発展を目指し、様々な分野における研究開発を行っています。

 当期の主な成果としては、早期診断・観察機能向上を実現する光学技術やAIを含む画像処理技術、低侵襲治療を 実現するためのデバイス技術やロボティクスを含む精密制御技術の開発、および内視鏡や治療器をはじめとした医療分野新製品の高機能化、低コストを実現するシミュレーション技術開発や材料技術開発、高精度レンズ量産化の加工技術開発や、自動化ラインに繋がる設備開発などの生産技術に関する取り組みなどです。

 当事業領域に係わる研究開発支出は、前期比35.0%減の99億円です。