第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社は、「共生」を企業理念として、真のグローバル優良企業グループを目指し、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営の基本方針としております。

この基本方針に基づき当社は、1996年度にグローバル優良企業グループ構想をスタートし、そのフェーズⅠからフェーズⅣを通して経営基盤の強化と企業価値の向上に努めてまいりました。そして2016年には、「戦略的大転換を果たし、新たなる成長に挑戦する」をスローガンに掲げた新たな5カ年計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅤ」をスタートさせ、現行事業の再強化を図るとともに、事業構造の転換による成長を目指し、新規事業の育成、強化にも取り組んでおります。

2021年の世界経済は、長期にわたる各国・各地域のさまざまな景気対策や財政政策が後押しする形で、緩やかな回復を辿る見通しです。

当社関連市場においては、オフィス向け複合機は、プリントボリュームの回復及びスキャン機能とクラウド機能を強化したimageRUNNER ADVANCE DXシリーズの需要増加が見込まれ、レーザープリンターは、オフィスの稼働状況に回復の兆しが見え始めているため、ともに前期を上回る見通しです。レンズ交換式デジタルカメラの需要は、全体としては市場の縮小が続く見通しですが、引き続きフルサイズミラーレスの強化を図り、ミラーレスへのシフトに対応した拡販活動に注力し、プロダクトミックスを向上してまいります。インクジェットプリンター市場は、感染拡大の影響による在宅勤務や在宅学習が定着し、増加したプリントボリュームは大きく減少することなく推移する見通しです。医療機器については、新型コロナウイルス感染再拡大による影響が懸念され、医療機器市場はほぼ横這いで推移する見通しです。半導体露光装置は、メモリー向け投資は引き続き堅調に推移し、センサーや車載向けも需要の増加が継続すると想定されます。FPD露光装置と有機ELディスプレイ製造装置については、引き続きパネルメーカーの投資意欲が旺盛であり、投資が堅調に推移する見込みです。ネットワークカメラは、高解像度カメラやこれを活用した映像解析ソリューションに対する需要が高まり、再び市場は拡大に転じる見通しです。

このような状況の中、2021年は、新5カ年経営計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」のもと、グループの生産性向上と新規事業の強化を基本方針として、以下の施策に取り組んでまいります。

なお、当該事項は有価証券報告書提出日(2021年3月30日)現在において判断した記載となっております。

 

1.プリンティンググループ

カタログ印刷等の商業印刷事業を拡大するとともに、ラベル印刷やパッケージ印刷等の産業印刷を事業として確立します。また、オフィス市場では、電子写真技術とインクジェット技術双方の強みを生かして製品系列を拡充するとともに、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応を強化します。

2.光学産業グループ

キヤノンが長年培ってきた光学技術とネットワーク技術を基軸として車載カメラ事業に参入するとともに、スマートシティ向け監視システムなどの社会インフラを見据えた事業領域の拡大を目指します。

3.産業機器グループ

イノベーションとコストダウンにより有機ELディスプレイ製造装置の競争力を更に強化するとともに、半導体露光装置やFPD露光装置のシェア拡大を図ります。

4.メディカルグループ

CT、MRI、超音波診断装置といった主力製品、診断ソリューションやAIを活用した画像解析アプリケーションの競争力を強化し、医療検査機器事業の拡大を図ります。また、検査試薬など検査装置周辺領域へ本格参入し、事業拡大を加速させます。

 

 

2【事業等のリスク】

  当グループ(当社及びその連結子会社。以下、当該項目では「当社」という。)の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。当社では、グループ経営上のリスクについて、取締役会が定める「リスクマネジメント基本規程」に基づき設置されるリスクマネジメント委員会において、毎年、当社の経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクの特定を行っており、以下のリスクも同委員会で審議のうえ特定されたものです。ただし、以下のリスクは当社に関するすべてのリスクを網羅したものではなく、対応策もこれらのリスクを完全に排除するものではありません。なお、下記の事項は有価証券報告書提出日(2021年3月30日)現在において判断した記載となっております。

 

事業特有の重要性が高いリスク

 

 

1.事務機市場におけるプリント環境の変化に関連するリスク

 複合機やレーザープリンターなどの事務機市場においては、顧客のコスト削減や環境意識の高まりに加え、オフィスのワークフローのデジタル化やリモートワークの普及が進むことで、顧客のプリント機会が減少する可能性があります。

 こうしたリスクに対して、当社は、依然として高いニーズがあるオフィス業務の効率化に資する高機能機のほか、クラウド連携やセキュリティを強化した製品・サービスの提供に取り組んでおります。また、アナログ印刷からデジタル印刷への切り替えや多品種少量印刷のニーズの高まりにより中長期的に成長が見込まれる商業印刷の分野においても、特に成長期待の高いグラフィックアーツやパッケージングの領域に注力し需要の取り込みを図っております。

 当社は市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を重視し、定常的に実施しております。一方で、市場変化に対応した製品やサービスを当社が十分に提供できない場合、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

2.デジタルカメラ業界における競争に関連するリスク

  スマートフォンなどのデジタルデバイスの撮影機能が著しく向上する中、撮影行為そのものに対する消費者の嗜好も変化し多様化しています。その結果、デジタルカメラの市場は価格と性能の競争が激化しながら、縮小しています。

 このような状況下、当社はデジタルカメラの性能をさらに進化させ、スマートフォンとの差別化を一層図り、特にプロやハイアマチュアユーザー向けモデルを中心に製品力の更なる強化を進めております。また、手軽さや特定シーンでの撮影を求める新たなユーザーを掘り起こしていくために、新ジャンルのカメラの展開を進めております。

 当社は市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を重視し、定常的に実施しております。一方で、競合他社に対して優位性を維持できる新製品の投入及び消費者の嗜好の変化にマッチした製品や映像を楽しむ新たなサービスの提供ができない場合、当社の地位が相対的に低下し、結果として当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3.医療機器市場における認証・承認等の事業環境対応に関連するリスク

 画像診断装置を主とする医療機関向け医療機器市場は、その製品の性質上、医師・技師等の医療従事者に対する営業活動を行っていますが、各国における営業活動に対しては種々の規制・行動基準が定められており、それらの把握及び遵守に努める必要があります。

 また、新技術・新製品の臨床効果の検証、さらに各国の医療機器規制へ対応し認証・承認等を取得する必要があることから、製品構想、研究開発から製品販売までに時間を要します。加えて、新興国の医療インフラ整備が進む中で世界的には市場が拡大・成長していますが、一方、高齢化が進行する国では、社会保障費の増大が課題となっており、医療費削減政策による影響を大きく受ける事業環境にあります。

 当社は市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を重視し、定常的に実施しております。また、当社は、詳細な検討及び予測に基づいて投資及び研究開発を行っておりますが、今後の新技術・新製品の臨床効果及び事業環境の変化を読みきれず、適時に製品を市場投入できずに競争力を維持できない場合、あるいは想定外の新規制により新規事業の大幅な軌道修正を余儀なくされるような場合には、投資に対して十分な収益が生み出されず、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4.半導体・FPD業界における特有のビジネスサイクルに関連するリスク

 半導体・FPD業界のビジネスサイクルには時期、期間、変動が予測しづらいという特徴があります。半導体デバイスやパネルが供給過剰となる時期には、当社の半導体露光装置、FPD露光装置や有機EL蒸着装置を含む製造設備への投資は大きく減少します。このようなビジネスサイクルを持つ環境の中で、当社は現在の競争力を維持するために、研究開発へ多額の投資を継続していく必要があります。市況の下降局面では、売上減少によるキャッシュ・フロー悪化の影響で、研究開発費などの発生した費用の全てもしくは一部を回収できない場合があり、当社のビジネス、経営成績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。

 このような状況下、当社は、継続的な装置性能の向上と顧客ニーズへの対応力を強化することで、幅広い需要を取り込み、顧客や用途の多様化や販売地域バランスの向上に向けた製品開発を進め、収益基盤の安定化を図っています。また、自社の生産設備への投資については、急激な需要変動を前提に慎重を期しており、既存製造設備の活用やグループ内での柔軟な人員配置体制の構築を進めるなど、市況変動の影響を最小限に抑える施策を講じています。

 当社は市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を重視し、定常的に実施しております。一方、市場の変化が当社の想定と異なり、顧客のニーズを満たせなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5.販売に関連するリスク

 当社は、当社のOEMパートナーであるHP Inc.との関係及び当社製品を販売する大手ディーラーとの関係に支障が生じた場合や、競合他社による買収が行われた場合に、販売計画の達成等に影響を与える可能性があります。

 さらに、インターネットビジネスの急速な普及により、従来の流通プロセスが通用しなくなる可能性があり、このような環境の変化は、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社において、HP Inc.とのビジネスは重要であり、OEMパートナーとして、長年にわたり強固な関係を構築していますが、HP Inc.が、政策、ビジネス、経営成績の変化により、当社との関係を制限または縮小する決定を為す場合、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、当社と取引がある大手ディーラーとも良好な関係を構築しています。しかし、これらのパートナーが政策、ビジネス、経営成績の変化により、当社との関係を制限または縮小する決定を為す場合、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、インターネットビジネスの急速な普及を踏まえ、従来の流通プロセスに加え、さまざまなチャネルを活用したオンライン販売を展開し、注力しておりますが、当社の想定を超える環境の変化が起こる場合、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

事業横断的な重要性が高いリスク

 

 

6.企業買収及び業務提携・戦略的投資に関連するリスク

 当社は、事業拡大を目的として企業買収を実施しております。また、業務提携、合弁事業、戦略的投資といった様々な形態で、他社との関係を構築しております。これらの活動は、当社の成長のための施策として重要なものであります。しかし、景気動向の悪化や、対象会社もしくはパートナーの業績不振により、期待していた事業拡大を実現できない可能性があります。当社とその対象会社もしくはパートナーが互いに共通の目的を定義し、その目的達成に対して協力していくことが肝要ですが、協力体制の確立が困難となる可能性や、協力体制が確立されても、当社の事業とその対象会社もしくはパートナーが営む事業におけるシナジー効果やビジネスモデルなどが十分な成果を創出できない可能性、また業務統合に想定以上の時間を要する可能性もあります。当社は、社内で保有する技術や得意とするビジネスに親和性の高い領域を企業買収及び業務提携、戦略的投資の対象とし、中でも優良企業でかつ経営陣の優れた会社に絞り込んで投資を行っておりますが、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、当社が貸借対照表に計上しております企業買収に伴うのれん及びその他の無形固定資産が、減損の対象となる可能性もあります。また、有力な提携先との提携が解消になった場合、共同開発を前提とした事業計画に支障をきたし、投資に対する回収が遅れる可能性が生じたり、または回収可能性が低下し、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼしたりする恐れがあります。

 

7.国際政治経済に関連するリスク

 当社は生産及び販売活動の多くを日本国外で行っておりますが、海外における事業活動には主に政治、外交問題または不利な経済状況の発生、急激な為替レートの変動と予期しない政策及び法制度、規制等の変更のリスクがあります。

 当社は日本、アメリカ、ヨーロッパ及びアジアなどの主要な市場において景気が後退した場合や米中貿易摩擦の問題がさらに深刻化した場合など、政治、外交問題または不利な経済状況の発生時には、消費の低迷や投資の抑制が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当社の事務機や診断機器、産業機器などのコーポレート向けまたは医療機関向け製品の需要は顧客の経営状態に影響され、経営状態の悪化により顧客が投資を抑制する場合があります。一方で、カメラやインクジェットプリンターのようなコンシューマ向け製品の需要は、個人消費の動向に左右されます。さらに、このような事態が発生した場合、当社製品の売上が急激に低下し、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、急激な為替レートの変動が、外貨建売上など当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そして、外貨建の取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する為替換算調整勘定も変動する恐れがあります。

 加えて、世界の各国・各地域では政治、行政や法制度整備に係る様々な問題があり、当社が予期しない政策及び法制度、規制等の変更に直面するリスクがあります。

 政治、外交問題または不利な経済状況の発生については、当社は、当社現地法人と日常的な意思疎通を通じて収集した関連情報や定期的なビジネス概況ヒアリングによる関連情報を経営戦略、業績予想に反映しております。また、特定の市場または世界全体で需要の減少が見込まれる場合は、当社は商品の生産、供給体制に応じて生産調整を実施しています。

 急激な為替レートの変動に関しては、当社は当社現地法人を含め、定常的に短期為替予約の為替ヘッジ取引を実施し、直近の為替水準を反映した価格で製品を市場に投入するなどの対策を講じております。

 予期しない政策及び法制度、規制等の変更については、当社は特に国際的な環境規制や国際及び国内税制変更に係る対策を強化しております。また、公正競争、腐敗防止、個人情報保護、安全保障貿易管理、環境その他の法規制に関しては、各所管部門による統制の下、遵守を徹底しています。

 上記の対応にもかかわらず、当社が国際的な企業活動を行う際に伴う様々なリスクについて対処していくことができない場合は、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

8.サプライチェーンに関連するリスク

 当社は製品を開発し、原材料及び部品を購入して製品を生産し、全世界で販売することを主な事業としております。その事業活動の中で、原材料の購入から、生産、販売までの一連の流れについて、最適なサプライチェーンの構築に努めていますが、原材料及び部品の供給不足や品質問題、生産コストの上昇のほか、製品の生産や販売が物流の停滞、輸送中の事故、その他の理由により損害を受ける場合、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社は、最適な生産システムの構築と品質の向上に努めています。自動化、ロボット化技術などを用いた効率的な生産体制の構築やキーパーツの内製化を進め、外部依存度を管理し、製造原価の低減を図ることにより、原材料の高騰と供給不足に対する耐性を高めております。また、品質管理専門の組織を設置し、外部サプライヤーと一緒に品質向上のための活動を進めることで、安定的な原材料、部品の調達に努めています。

 また、当社ではグループ全体の物流を管理する部門を設置し、グループ全体の物流を全世界的に運営、管理することにより、効率的な物流体制の構築及び物流コストの低減に努めるほか、問題発生時に迅速に対応できる体制の整備を図っています。そして、物流の事故に対しては保険契約により、その損害が補償されるように図っています。

 一方で、当社は、品質、効率及び環境の面で当社の厳密な基準を満たす製品に使用する重要な部品や材料を、外部の特定サプライヤーに依存しています。製品ラインアップで横断的に使用されている部品や材料のサプライヤーに不測の事態が発生する場合、またその部品や材料に品質問題あるいは供給不足や価格高騰が発生する場合等には、当社の生産活動の中断や製造原価の上昇等により当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社が製品を世界各国に供給できるかどうかは、物流サービスがどれだけ有効に機能するかにかかっておりますが、コンピュータ化されたロジスティクス・システムに何らかのトラブルが発生する場合、地域紛争等の問題が発生する場合、あるいは港湾労働者によるストライキといった労使紛争の問題が発生する場合、高額な製品が輸送中の事故により損害を受ける一方で、保険で補償がなされない場合及び代替製品を顧客に納入できない場合、コストの増加や配送の遅延による売上の機会損失、顧客からの信用を失う可能性があります。

 

9.自然災害・感染症に関連するリスク

 当社の本社ビル、情報システムや研究開発の基幹設備は、東京近郊に集中していますが、一般的に日本は世界の他の地域と比較して地震の頻度が多いため、それに伴う被害も受けやすい地域であるといえます。また、研究開発、調達、生産、ロジスティクス、販売、サービスといった当社の施設や事務所は、世界中に点在しており、地震・洪水等の自然災害、テロ攻撃といった事象に伴うインフラの停止により混乱状態に陥る可能性があります。そのような要因は当社の営業活動に悪影響を与え、物的、人的な損害に関する費用を発生させ、あるいはブランド価値を傷つける可能性があり、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社は、本社の各所管部門が中心となってリスクマネジメント活動を継続的に実施しています。具体的には、工場操業停止といった最悪の事態に備え、同類機種を複数の拠点で並行生産するというバックアップ体制を一部整えるほか、会社の営業停止時に迅速な復旧を実現するため、初動対応事項や関係部門の役割分担の確認、緊急時の連絡体制等の整備等を行っています。さらに、研究開発、調達、生産、ロジスティクス、販売、サービスに用いる基幹システムついては、情報システムのダウンに備えてバックアップ体制を整えております。

 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大は、当社のビジネス、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼしています。発生当初は世界各地のサプライチェーンや当社の生産活動に混乱をきたし、当社は一部の工場で一時的に操業を停止し、減産するなどの対応を取りました。その後、日本政府の緊急事態宣言や世界各地のロックダウン、外出規制など、経済活動制限の影響により、オフィスや販売店の閉鎖、海外渡航制限、国際貨物輸送の需給逼迫などを背景に、当社の販売活動も悪影響を受けております。当社は対策チームを設置し、社内外大規模イベントの中止や時差出勤・リモートワークの実施など、感染拡大の防止に努める一方で、このような外部環境の変化に対応し、国内・海外における生産活動及び販売活動の回復に取り組んでおります。

 COVID-19の収束時期についてはいまだ見通しが立っておらず、感染がさらに拡大、長期化し、世界経済・当社の事業活動が停滞する状況や取引先の事業活動や投資意欲の減退等が発生する場合、また各国政府等の要請により当社の事業活動が制限される事態においては、今後も当社のビジネス及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、当社関連市場において、リモートワークの進展により、オフィス機器のプリントボリュームが当社の想定ほど回復しない状況や産業機器の設置が当社の予想を下回る事態が発生する場合、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

10.人材の確保に関連するリスク

 当社の将来の経営成績は、有能な人材の継続的な会社への貢献に拠るところが大きいといえます。また、開発、生産、販売、管理といった当社の活動に関して有能な人材を採用・育成し、実力ある従業員の雇用の維持を図ることができるかどうかが、当社の将来の経営成績に影響してくると考えます。一方、当社が属する先端技術産業での労働市場における人材獲得競争は、近年ますます激しさを増してきております。さらに、技術進歩が日進月歩で加速するため、製品の研究開発面で求められる能力を満たすまでに新しい従業員を育てることはますます重要になってきております。

 また当社の製造技術の重要課題の一つに技能の伝承があります。レンズ加工など、特殊技能については、短期間に習得できるものではありません。

 こうしたリスクに対し、当社は、有能な人材にとって魅力ある場を提供するため、従業員それぞれの個性や価値観を生かし、一人ひとりが高いモチベーションを持ち、能力を最大限に発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。中でも、グローバルに事業活動を展開する上で、各国・地域の労働関連法令の遵守を徹底し、人権を尊重するとともに、さまざまな研修制度を整備して従業員の能力向上を支援しているほか、国際舞台でリーダーシップを発揮できる人材の育成を強化しています。また、一部の技能については、計画的な後継者育成を行っております。

 しかし、有能な人材を採用・育成できず、また有能な人材の流出が生じた場合、開発や生産の遅れなどをもたらし、研究成果や技術が流出するほか、技能が適切に伝承されないリスクが発生します。これらの結果、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

11.環境に関連するリスク

 当社は、気候変動対策、製品リサイクルを含む資源保全、有害物質の使用削減、大気汚染防止、水質保護及び廃棄物処理等環境における様々なリスクを認識し、また日本、外国の環境に関する規制の適用を受けているため、これらのリスク及び規制の強化により環境に関する費用負担や賠償責任が生じる可能性があります。この場合、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、現在所有あるいは操業している事業所、また以前に所有あるいは操業していた事業所に対する環境汚染の調査と浄化のための責任と義務を負っております。もし当社が将来の訴訟あるいはその他の手続により損害賠償責任を負わなければならない場合、その費用は保険で賄うことができない可能性もあります。この場合当社に与える影響は大きくなる可能性があります。

 このようなリスクに対し、当社はグループを挙げて省エネ活動、省エネ製品開発等、気候変動対応に取り組むと同時に高度な資源循環をめざし、製品の小型・軽量化やリマニュファクチュアリング、消耗品のリサイクル、更には水資源の効率利用や廃棄物の再資源化を進めています。また、グリーン調達による化学物質の厳格な管理に加え、生産工程で使用する化学物質の削減、排出抑制等の環境活動も行っております。これらの活動は本社所管部門を中心に、ISO14001によるグループ共通の環境マネジメントシステムを運用する方法を通じて推進しています。さらに、日本及び外国の環境に関する規制に準拠するため、本社所管部門がグループ全体における対応を統制しております。

 しかしながら、このような対応に想定以上にコストを要する事態が生じた場合には、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

12. 情報セキュリティに関連するリスク

 当社は、製造・研究開発・調達・生産・販売・会計などのビジネスプロセスに関する機密情報や、顧客やその他関係者に関する機密情報を電子データとして保有しております。当社はこれらの電子データを、第三者によって管理されているものも含め、様々なシステムやネットワークを介して利用しています。さらに、製品にも情報サービス機能などで電子データが利用されています。

  これらの電子データの利用に関しては、データのアクセス制限やセキュリティ対策をはじめ、業務に使用するソフトウェアの管理や情報の取り扱い及びサイバー攻撃に対する社員研修などを全社で行い、管理体制の継続的な改善を図り、安全対策に努めているものの、ハッカーやコンピュータウィルスによるサイバー攻撃やインフラの障害、天災などによって、個人情報の漏洩、サービスの停止などが発生する可能性があります。特にサイバー攻撃はますます高度化、複雑化し、その攻撃対象は世界各地に渡っております。日本国内及び海外において事業活動を展開する当社の拠点が、情報技術の脆弱性を突かれ、攻撃を受けた場合、当社ネットワークへの不正アクセスやウェブサイト・オンラインサービスの停止などが発生する可能性があります。

 このような事態が起きた場合、重要な業務の中断や、顧客やその他関係者に関する個人情報・営業機密などの機密データの漏洩、製品の情報サービス機能などへの悪影響のほか、損害賠償責任などが発生する可能性もあります。その結果、社会的信用失墜やブランド価値の低下、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

一般的なリスク

 

 

13.有価証券に関連するリスク

 当社の資産には、有価証券への投資も含まれております。その結果、金融市場におけるボラティリティ及び経済全般に対する不確実性により、将来において当社が実施する投資額と現在のその投資額に対する公正価値との間に大きな乖離を生じさせる可能性があります。

 これらのリスクに対し当社は、株価の変動や配当の受取りによって利益を受けることを目的とした株式を保有しておらず、グループ内の経営資源で実現することが困難で、体制の強化に有益と判断したものについてのみ、中長期的成長を目的としたグループ外の企業との連携の一環として、株式を保有しております。

 しかし、結果として株式及び債券市場の変動によって影響を受け、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

14.消耗品市場における独占禁止法に関連するリスク

 当社の売上高の一部は、製品販売後に発生する消耗品の販売及びサービスの提供から構成されております。このような消耗品やサービスは競合者によっても商品化され、その競合者も多数存在しております。これらのアフター・セールス事業の地位をさらに確固たるものにするためには、当社より低価格で製品やサービスを提供している競合者に打ち勝つ必要があります。このような競合者の増加にもかかわらず、現在も当社は消耗品市場で高いシェアを占めております。それに伴い、当社は独占禁止法規制関連の訴訟、調査、訴訟手続を受ける可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社は、本社所管部門が中心となって、関連部門の従業員に対する定期的な研修の実施等のリスクマネジメント活動を実施しています。

 しかし、訴訟、調査が発生した場合の一連の手続には費用が嵩み、結果として当社の経営成績あるいは評判に悪影響を与える可能性があります。

 

15.ブランド価値 (品質、模倣品、コンプライアンス)に関連するリスク

 当社が市場において成功するためには、当社のブランド価値を維持・発展させることが重要です。このブランド価値を毀損する主な要因として、製品の品質不良、模倣品の流通、コンプライアンスの不徹底が存在しております。製品の品質に関して、当社は当社製品を構成するハードウェア及びソフトウェア個々の機能性に加え、それらの組み合わせを含め、当社製品の品質責任問題から発生するあらゆるリスクの最小化を目指す取り組みをしております。しかし、これらの問題の発生、及びそれに伴う損害を完全に排除もしくは減少させることができるという保証はありません。当社の営業活動に悪影響を及ぼすような要因、例えば、製品リコール、サービス及び賠償金などの追加費用等が発生し、ブランド価値が毀損した場合、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社は模倣品の増加を防止するための施策をとっておりますが、その生産や販売が続く場合、当社のブランド価値や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

  当社では、法令や規制の遵守のため、当社グループにおけるコンプライアンス体制を整備しておりますが、コンプライアンスが徹底されない場合、当社の社会的信頼とブランド価値が毀損される可能性があります。また、当社グループのサプライチェーン上で発生した問題により、当社の社会的信頼とブランド価値が毀損される可能性もあります。

 

16.新製品への移行に関連するリスク

 当社が参入している業界の特徴として、ハードウェア及びソフトウェアの性能面における急速な技術の進歩、頻繁な新製品の投入、製品ライフサイクルの短縮化、また製品価格を維持しながらの従来製品以上の性能改善等が挙げられます。当社は市場のニーズに応えるイノベーティブで価格競争力のある新製品を投入するために多くの経営資源を投入しておりますが、新製品や新サービスの導入に伴うリスクは多岐にわたります。開発または生産の遅延、導入期における品質問題、製造原価の変動、新製品への切り替えによる現行製品への販売影響、需要予測の不確実性と適正な在庫水準を維持することの難しさに加えて、当社の製品・サービスの基盤である情報システムやネットワーク技術において技術革新が成された場合の移行対応への遅れ等のリスクがあり、当社の収益に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社の収益は競合者の製品またはサービスの導入時期によっても影響を受けます。当社は、上記のリスクに対応するため、市場のニーズを汲み取った商品をスピーディーに市場に供給する体制を有しておりますが、競合者が当社製品と類似した新製品を当社より先に投入する場合は特に影響を受ける可能性があり、この場合、今後の製品やサービスの需要に影響し、結果として経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

17.訴訟に関連するリスク

 当社は、通常の事業活動から生じる、種々の要求及び法的行為にさらされております。現在当社が当事者となっている、または今後当事者となる可能性のある訴訟及び法的手続の結果を予測することは困難です。しかし当社にとって不利な結果が生じた場合、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

18.知的財産に関連するリスク

 頻繁な技術革新を伴う当社製品にとって、プロダクト・イノベーションは非常に重要であり、そのため、特許やその他の知的財産は、競争上重要なファクターとなっておりますが、競合他社が同様の技術を独自に開発したり、当社が出願した特許が認められなかったり、当社の知的財産の不正使用あるいは侵害を防ぐために講じる手段が成功しない等のリスクがあります。特に新興市場等において、知的財産法が、当社の知的財産を保全するには不十分である等のリスクに直面しております。

 このリスクに対し、当社は自らが開発した技術を軸に事業運営を行う中で、知的財産専門の組織を設置し、関係部門と連携の上、特許、商標及びその他の知的財産権を組み合わせ、技術及び知的財産の保護に努めております。

 一方で、第三者の知的財産権に関して、第三者からの当社に対する侵害主張が正当であると裁定される場合、特定市場における製品の販売差止め、損害賠償の支払い、他社の権利を侵害しない技術の開発や他社技術についてのライセンス取得とそれに伴うロイヤリティの支払いを要求される可能性があります。

 当社の知的財産権を有効せしめるため、または他社からの権利侵害の主張に対抗するため、当社は訴訟手続を取らざるを得ない可能性があり、その場合は費用が嵩み、手続に長い期間を費やす可能性があります。

 また当社は、特許使用料受取または相手技術のライセンスを受けることと引き換えに、第三者に対して自社特許のライセンスを与えることもあります。そのようなライセンスの条件や更新時の条件変更によっては、当社のビジネスが影響を受ける可能性があります。

 また当社は、ルールや評価システムを設定して、当社従業員の職務発明に対して適切な支払いを行っていますが、その金額について将来争いが生じないという保証はありません。

上記の要因は全て、当社のビジネス、ブランド価値及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

19.繰延税金資産の回収可能性及び国際的な二重課税に関連するリスク

  当社は、繰延税金資産に対して、将来の課税所得の予測などに照らし、定期的に回収可能性の評価を行っております。しかし、経営環境悪化に伴う事業計画の目標未達などにより課税所得の見積もりの変更が必要となった場合や、税率の変動を伴う税制の変更などがあった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

  また近年、一部の多国籍企業の過度なタックスプランニングによる国際的な租税回避行為が、政治問題化したことを契機として、各国が協調し、税制度の調和を図るべくG20により委託を受けたOECDにおいてBEPSプロジェクト(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)が発足しました。2013年7月にBEPS行動計画が公表され、この行動計画に基づき検討が進められ、2015年10月にBEPSに関する最終報告書がOECDにより公表されました。各国は、この報告書を踏まえ、国内税法や租税条約の改正や見直しを行っております。このOECDの各種報告書や世界的なデジタル課税の方向性などを踏まえ、当社は、当社の移転価格に係る方針などを見直しております。

 しかしながら、各国の税務当局との見解の相違が生じる場合には、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

20.退職給付会計に関連するリスク

 当社及び一部の子会社は、確定給付型年金制度を有しており、未払退職及び年金費用を数理計算によって認識しております。数理計算は、割引率、期待運用収益率、昇給率、死亡率といった前提条件に基づいており、これらの前提条件と実際の結果が異なることにより生じた年金数理上の損失は、従業員の平均残存勤務年数にわたり規則的に償却し、年金費用に含めています。当社は、これらの数理計算上の前提は適切であると考えておりますが、金利低下に伴う割引率の低下や、運用収益の悪化による年金資産の減少など、予測が困難な事象から生じる前提条件からの乖離は、年金数理上の損失の増加につながり、将来の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャ

   ッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続き、世界各地で感染対策と経済活動の両立が図られたものの、収束に向かう兆しは見えず、大幅な減速となりました。米国では、外出制限により消費の記録的な落ち込みが上半期に見られましたが、経済活動規制の緩和や強化を繰り返しながら、下半期に景気の緩やかな回復が進みました。欧州では、3月から各国で実施された大規模なロックダウンや夜間外出禁止令がその後緩和され、消費が回復に向かったものの、感染の再拡大を受けて経済活動制限が再強化された影響により、景気の減速が続きました。中国では、世界に先駆け経済活動を再開した結果、内需や輸出を中心に景気の回復が進みました。また、その他の新興国については、一部の国では外出や経済活動の制限が行われましたが、感染拡大が続く中で経済活動の再開が徐々に進み、景気は回復の兆しが見られました。わが国では、11月に感染が再拡大しましたが、緊急事態宣言が解除された後の経済活動再開と外出自粛の緩和により、景気持ち直しの動きが続きました。

 このような状況の中、当社関連市場においては、新型コロナウイルスの感染が拡大した影響を大きく受けました。オフィス向け複合機とレーザープリンターは、新型コロナウイルスの感染が続く中で、企業活動の回復が十分でないため、モノクロ機とカラー機の需要がともに減少しました。カメラ市場は新型コロナウイルスの影響により需要が減退しましたが、期後半には消費の持ち直しにより改善へと向かいました。インクジェットプリンターは、在宅勤務や在宅学習の需要が堅調な先進国と中国に加え、期後半には一部の新興国において回復のペースが徐々に上がりました。一方、医療機器は、新型コロナウイルスの影響により、上半期は医療機関向け営業活動が制限され、その制限は下半期に緩和されたものの、新型コロナウイルスの影響が長期化した結果、販売活動に影響を受けました。産業機器においては、半導体露光装置、FPD露光装置ともに堅調に推移しました。

 当連結会計年度の平均為替レートにつきましては、米ドルが前期比で約2円円高の106.68円、ユーロが前期並みの122.07円となりました。

 当連結会計年度は、複合機は、期後半にかけて回復の兆しを示したものの、オフィス向け、プロダクション市場向けの販売がともに減少しました。レーザープリンターもモノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、新型コロナウイルスの影響により続いたオフィス閉鎖が解除され、企業活動が再開した後のプリントボリュームが緩やかな回復にとどまり、サービスと消耗品の売上が減少しました。レンズ交換式デジタルカメラは、販売台数は前期を下回りましたが、下半期にはフルサイズミラーレスカメラのEOS R5とEOS R6がけん引役となり、販売が上振れしました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を捉え、大容量インクモデルを含め、販売台数は前期を大きく上回りました。医療機器は、設置の延期や営業活動の制限がありましたが、各国政府による医療機関への機器納入支援などの機会を捉え、需要を取り込んだ結果、前期に対して若干の減収にとどめました。産業機器では、半導体露光装置におけるメモリー向け投資と有機ELディスプレイ製造装置は堅調に推移しましたが、新型コロナウイルスの影響により設置が遅延した結果、FPD露光装置は前期を下回りました。一方で、多様な用途への展開が進み市場が拡大していたネットワークカメラは、販売活動の回復が緩やかな水準にとどまり、微増収となりました。これらを合計した当期の売上高は、前期比12.1%減の3兆1,602億円となりました。売上総利益率は、前期を1.3ポイント下回る43.5%となり、売上総利益は前期比14.5%減の1兆3,759億円となりました。営業費用は、グループを挙げた効率化を一層推し進めた結果、前期比11.9%減の1兆2,653億円となりました。その結果、営業利益は前期比36.6%減の1,105億円となりましたが、上方修正した直近の連結業績予想をさらに上回りました。営業外収益及び費用は受取利息及び配当金の減少などにより前期比で13億円悪化し、197億円の収益となり、税引前当期純利益は前期比33.4%減の1,303億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比33.3%減の833億円となりました。

 基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ37円42銭減の79円37銭となりました。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 オフィスビジネスユニットでは、新製品であるimageRUNNER ADVANCE DXシリーズの販売が好調に推移しましたが、オフィス向け及びプロダクション市場向け複合機は、オフィス再開後の商談が緩やかな回復にとどまり、販売台数は前期から減少しました。レーザープリンターは、新型コロナウイルスによる景気の減速が続いた結果、モノクロ機、カラー機ともに販売台数は前期を下回りました。また、サービスと消耗品についても企業活動再開後のプリントボリュームが緩やかな回復で推移し、減収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比17.8%減の1兆4,402億円となり、税引前当期純利益は前期比49.3%減の865億円となりました。

 イメージングシステムビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは市場の縮小傾向が継続したことに加え、新型コロナウイルスの影響による需要の減退があり、販売台数は前期を下回りましたが、新製品EOS R5とEOS R6の拡販によりフルサイズモデルを中心にミラーレスへのシフトが進みました。インクジェットプリンターは、先進国と中国における在宅勤務や在宅学習の需要に加え、一部の新興国において回復した需要を取り込んだ結果、本体、消耗品ともに販売は前期を大きく上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比11.8%減の7,122億円となりましたが、新製品効果などにより収益性を改善し、税引前当期純利益は前期比43.1%増の711億円となりました。

 メディカルシステムビジネスユニットでは、新型コロナウイルスの感染拡大により大型機器の商談・据付の延期がありましたが、各国政府による緊急医療体制整備や医療機関に対する財政支援などを背景に、肺炎検査向けCT装置やX線診断装置の需要を取り込んだ結果、当ユニットの売上高は前期比0.6%減の4,361億円となり、税引前当期純利益は前期比6.4%減の255億円となりました。

 産業機器その他ビジネスユニットでは、半導体露光装置は、メモリー向け投資が堅調に推移し、販売台数は前期を大きく上回りました。有機ELディスプレイ製造装置は、新型コロナウイルスの影響により渡航制限が続きましたが、渡航の再開後に設置を順調に進め、増収となりました。一方、FPD露光装置についても、渡航制限が解除された後に、設置活動を順次進めましたが、販売台数は前期を下回りました。ネットワークカメラは、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、防犯や災害監視など従来のニーズに加え、遠隔モニタリングや人の密集具合の把握など、映像解析による用途の多様化を背景に販売活動を強化し、微増収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比4.9%減の6,548億円となり、税引前当期純利益は前期比26.3%減の143億円となりました。

 当連結会計年度末における総資産は、有形及び無形固定資産や売上債権が減少したことなどにより、前連結会計年度末から1,463億円減少して4兆6,256億円となりました。負債は、年金負債並びに未払費用等などが減少したことにより、前連結会計年度末から464億円減少して1兆8,416億円となりました。純資産は、当社株主への配当及び自己株式の取得や円高によるその他の包括損失累計額の増加などにより、前連結会計年度末から999億円減少して2兆7,840億円となりました。

 

  ②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から51億円減少し、4,077億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  前連結会計年度より大幅な減益となったものの運転資金の改善により、前連結会計年度末比で247億円の減少に

 とどめ、3,338億円の収入となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  生産設備への投資が減少したことなどにより、前連結会計年度末から731億円抑制し、1,554億円の支出となり

 ました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  配当金の支払いや自己株式の取得などの支出があった結果、1,834億円の支出となりました。

 

  また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度から485億円増加し、1,784億円の収入となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

オフィス

1,072,912

80.3

イメージングシステム

661,910

84.3

メディカルシステム

445,011

98.8

産業機器その他

467,755

114.2

合計

2,647,588

88.8

  (注)1.  金額は、販売価格によって算定しております。

        2.  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

  当グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合はきわめて僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。

 

c. 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

オフィス

1,440,212

82.2

イメージングシステム

712,238

88.2

メディカルシステム

436,074

99.4

産業機器その他

654,813

95.1

消去

△83,094

-

合計

3,160,243

87.9

  (注)1.  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.  最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお

      りであります。

相手先

第119期

(2019年1月1日から

2019年12月31日まで)

第120期

(2020年1月1日から

2020年12月31日まで)

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

HP Inc.

466,576

13.0

358,784

11.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年3月30日)現在において判断しております。

 

はじめに

  当社は、複写機、複合機、レーザープリンター、カメラ、インクジェットプリンター、診断機器、半導体露光装置及びFPD露光装置を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営指針としております。

①主要業績評価指標

  当社の事業経営に用いられる主要業績評価指標(Key Performance Indicators。以下「KPI」という。)は以下のとおりであります。

(収益及び利益率)

  当社は、真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指し邁進しておりますが、経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。

  売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品グループ別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。

  売上高総利益率は収益性を測るもう1つのKPIです。当社は開発革新活動を通して、より早く新製品を投入することで、値崩れせず価格面での競争力を保持できるよう、製品開発におけるリードタイムの短縮を図ってきました。さらに、生産革新活動を通して、コストダウンの成果も挙げてきました。こうした成果が当社の売上高総利益率の改善に繋がってきており、今後も開発革新、生産革新といった活動を推進してまいります。

  営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。

(キャッシュ・フロー経営)

  当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。

  たな卸資産回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。たな卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、たな卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えられます。

  また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性や設備投資に対応してまいります。

 総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えられます。

 

②重要な会計方針及び見積り

  当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染再拡大がみられている地域もあり、依然として収束の時期は見通せない状況ですが、各国・地域は引き続き感染対策と経済活動の両立を目指しております。2021年の経済活動は回復に向かうものの、新型コロナウイルスの影響を継続して受ける可能性があると想定しています。キヤノンは、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。

a.長期性資産の減損

  基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローを上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。

b.有形固定資産

  有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。

c.リース

  当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。

 借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。

 

d.企業結合

  企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。

e.のれん及びその他の無形固定資産

  のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。2019年第4四半期及び2020年第4四半期に行った減損テストの結果、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を十分に超過しており、減損が見込まれる報告単位はありません。しかし、メディカルシステムビジネスユニットに帰属するのれんについては、公正価値が帳簿価格を超過する割合が他の報告単位と比べて低くなっており、将来キャッシュ・フローが想定よりも減少した場合、減損損失を認識する可能性があります。なお、当該事業に帰属するのれんの帳簿価額は506,513百万円となっております。

 耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から8年で、商標は15年で、特許権及び技術資産は5年から18年で、ライセンス料は8年で、顧客関係は15年で定額償却しております。

 

f.法人税等の不確実性

  当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

g.繰延税金資産の評価

  当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。

h.未払退職及び年金費用

  未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。

  基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。

  当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で0.5%、1.5%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.0%、4.8%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。

  割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約978億円増加します。

  長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、翌連結会計年度の期間純年金費用は約52億円増加します。

  これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。

i.収益認識

 当社は、主にオフィス、イメージングシステム及びメディカルシステム製品、産業機器、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。

 オフィス製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター等)及びイメージングシステム製品(デジタルカメラ、インクジェットプリンター等)の収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、出荷または引渡時点で認識しております。

  半導体露光装置やFPD露光装置等の光学機器及びCT装置やMRI装置等の医療機器等の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収条件を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成された時点で、収益を認識しております。

  当社のサービス売上の大部分は、オフィス製品及びメディカルシステム製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間に渡り認識しております。オフィス製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、通常、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。オフィス製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルシステム製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間に渡り均等に収益を認識しております。

  オフィス製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能なすべての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するオフィス製品が販売された時に、費用として認識しております。

 転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部の産業機器の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間に渡り認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。

  財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングシステム製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。

  当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。

 

j.新会計基準

  「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。

③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

  当連結会計年度は、世界経済は総じて景気減速が続きました。こうした中、新製品の拡販に努めたものの、市場縮小及び為替レートの変動の影響を受け、売上高は前連結会計年度比12.1%減の3兆1,602億円となりました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、12.2%減の2兆4,898億円、11.5%減の6,704億円となりました。

  当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の74.5%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

  当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ106.68円及び122.07円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約2円円高、ユーロは前期並みで推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約224億円の売上高減少、ユーロとの変動で約20億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約68億円の売上高減少影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の減少影響は約272億円となりました。

b.売上原価

  売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度56.5%、前連結会計年度55.2%となりました。

c.売上総利益

  当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ14.5%減少の1兆3,759億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より1.3ポイント悪化し43.5%となりました。売上総利益及び売上総利益率の減少は、売上の減少、プロダクトミックス影響及びドルの円高影響などによるものです。

d.営業費用

  営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、経費の効率的な運用を全社的に推進した結果、前連結会計年度比11.9%減少し1兆2,653億円となりました。

e.営業利益

  当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比36.6%減少の1,105億円でありました。営業利益率は1.4ポイント悪化して3.5%となりました。

f.営業外収益及び費用

  当連結会計年度の営業外収益及び費用は、受取利息の減少などにより、前連結会計年度から13億円悪化し、197億円の収益となりました。

g.税引前当期純利益

  当連結会計年度の税引前当期純利益は1,303億円で、前連結会計年度比33.4%の減益となりました。また、売上高に対する比率は4.1%でした。

h.法人税等

  当連結会計年度の法人税等は218億円減少し、実効税率は26.4%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。

i.当社株主に帰属する当期純利益

  当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比33.3%の減益である833億円となりました。また、売上高当期純利益率は2.6%となりました。

 

④海外事業と外国通貨による取引

  当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上高総利益率に対してマイナス要因となります。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。

  海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。

⑤流動性と資金源泉

a.現金及び現金同等物

  当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から51億円減少して、4,077億円となりました。

  当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より大幅な減益となったものの、運転資金の改善に努め、前連結会計年度に比べて247億円の減少にとどめ、3,338億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。

  当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの減少は、主に売上高の減少に伴い、顧客からの現金回収が減少したことによるものです。当社の回収率に重要な変化はありません。また部品や材料の支払いといったキャッシュ・アウト・フローの減少は、在庫水準の低減に努めたことなどによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの減少は、前連結会計年度の課税所得の減少によるものです。

 

  当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産取得額が減少したこと等により、前連結会計年度より731億円減少し1,554億円の支出となりました。

  当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,299億円から、485億円増加し、1,784億円の収入となりました。

  当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置いているため、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家の理解のためにも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務諸表(Non-GAAP財務諸表)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。

 

(単位 億円)

 

 

 

第120期

営業活動によるキャッシュ・フロー

 

3,338

投資活動によるキャッシュ・フロー

 

△1,554

フリーキャッシュ・フロー

 

1,784

 

  当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、1,269億円の配当金支払いと500億円の自己株式の購入により1,834億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の1株当たりの配当は、120.00円の配当を実施しました。

  当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。

  当社は、2021年12月を返済期日とする借入につき、返済期日まで1年以内となったことから、長期債務から1年以内に返済する長期債務へ3,440億円の振り替えを実施しております。その影響から短期借入金(1年以内に返済する長期債務を含む)は前連結会計年度末の420億円から3,502億円増加し、当連結会計年度末には3,922億円となりました。長期債務(1年以内に返済する長期債務は除く)は前連結会計年度末の3,573億円から3,525億円減少し、当連結会計年度末には48億円となりました。

  当社の固定債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。

 

  当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、ムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード&プアーズの2つの格付機関から信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2021年3月15日現在、当社の負債格付は、ムーディーズ・インべスターズ・サービス:Baa1(長期);スタンダード&プアーズ:A(長期)、A-1(短期);格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入れコストの増加につながります。

 

b.在庫の適正化

  当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、60日、59日となりました。当連結会計年度は、売上が大きく減少する中で、在庫を前連結会計年度末から219億円削減したことで在庫回転日数は同水準となりました。

 

c.設備投資

  当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の1,781億円から458億円減少し、1,323億円になりました。翌連結会計年度につきましては、当社の設備投資は1,600億円の見込みであります。

 

d.退職給付債務への事業主拠出

  当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度270億円、前連結会計年度304億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度163億円、前連結会計年度174億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度42億円、前連結会計年度43億円であります。

 

e.運転資本

  当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の8,740億円から4,110億円減少し、4,630億円になりました。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は当連結会計年度は1.35、前連結会計年度は1.90であります。

 

f.総資本当社株主に帰属する当期純利益率

  総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では1.8%、前連結会計年度は2.6%であります。

 

g.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率

  株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度は3.2%となり、前連結会計年度の4.5%から減少いたしました。

 

h.有利子負債依存度

  当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債は、前連結会計年度末の5,149億円より87億円減少し5,062億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)で表すと10.9%になります。前連結会計年度の有利子負債依存度は10.8%でした。

 

i.株主資本比率

  株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は、当連結会計年度は55.7%となり、前連結会計年度の56.3%から減少いたしました。

 

⑥研究開発及び特許

  当社は創業当時より、業界をリードするコア製品を生み出す「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。また、成長の中で蓄えられてきたキヤノンブランドを支える技術・ノウハウ―品質、コスト、納期を支える技術―を価値創造基盤技術としてコアコンピタンスマネジメントに組み込んでいます。

  研究開発における主要戦略としては、1.「基盤要素技術と価値創造基盤技術のさらなる強化」、2.「強いコア技術と基盤要素技術に基づく次なる事業の芽の創出」、及び3.「時代の要請に応じたイノベーション型の技術開発の強化」を掲げ、その取組みを進めています。

  1.では、価値創造基盤技術をさらに進化させることによって、既存事業の高効率化に貢献します。並行して事業グループがもつ幅広いコア技術のエッセンスを抽出し、基盤要素技術を深化させ、新規事業のコア技術に注入します。これにより、既存事業の強化と新事業グループの成長に向けたコアコンピタンスマネジメントを推進します。

  2.では、その一例として、インク・トナー材料の基礎となる機能材料技術を生かした新機能材料、特徴ある材料を生かした装置を開発し、事業の芽につながる次世代技術の育成に新たに取り組むなど、技術多角化を通して、新事業領域の開拓を進めます。

  3.では、DXやカーボンニュートラルなどのトレンドを捉え、企業価値の向上につながる技術開発を推進します。特に、多様なサービスの結合を可能とするサイバー(仮想)空間と人との接点であるフィジカル(現実)空間、これらを高度に融合するサイバー&フィジカルシステムに注目しています。フィジカル領域において世界トップレベルのコア技術に、高度なサイバー技術をアライアンスなども活用しながら取り込み、一歩先を行くサイバー&フィジカル技術を開発します。

  研究開発費は、当連結会計年度2,723億円、前連結会計年度2,985億円でした。売上高研究開発費比率は、当連結会計年度8.6%、前連結会計年度8.3%でした。
  当社は、強い特許ポートフォリオに守られた製品は他社の追随を容易に許さず、市場や業界における標準化活動などでも中心的な役割を果たせるとの認識をもっております。IFI CLAIMS® Patent Servicesが発表した2020年の米国特許取得件数ランキングにおいて、当社は第3位となりました。

 

⑦トレンド情報

  当社は、オフィス、イメージングシステム、メディカルシステム、産業機器その他の分野において、開発、生産から販売、サービスにわたる事業活動を営んでおります。

 

オフィスビジネスユニット

 当社は、パーソナル向け、オフィス向け、さらにプロダクションプリント向けのプリンター、複写機、複合機の、開発・製造・販売及びメンテナンス、アフターサービスを行っております。また、ソフトウェア及びサービス、ソリューションビジネスを通して顧客に付加価値を提供しております。当社の製品はSOHO、中堅・中小企業から大企業及びプロダクションプリントのプロフェッショナルに至るまで、幅広い分野を網羅しております。近年の複写機業界では、ユーザーの志向がモノクロからカラー製品に、またハードウェアからサービスとソリューションにシフトしてきております。特にプロダクション印刷市場では、短納期、オンデマンド印刷やバリアブルデータ印刷への需要がますます強まっております。またコネクティビティ、セキュリティ、モバイル対応、システム・インテグレーション、ビジネスワークフロー、クラウドを利用したウェブサービスなどの高い付加価値の提供が重要となっております。これらの付加価値要素を複合機などのハードウェアと合わせて、お客様にソリューションとして提供することが求められております。2020年に当社は、オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」を発売いたしました。また、クラウドにつながることで複合機の機能を拡張するサービスとして、「uniFLOW Online」を提供しております。クラウドサービス連携とセキュリティの強化に加え、紙文書を効率的に電子化するアドバンスドスキャンを実現するために、スキャン機能を向上させ、主力製品を一新しました。市場動向に沿って、今後も更なる競争力の維持及び向上に向けて、ますます高度化する顧客の需要に応えるべく、製品群の更なる充実とソリューション対応力の強化を図るとともに、販売力の強化に努めてまいります。

 レーザープリンターについては、より付加価値の高い中高速機、特に複合機の拡販に注力していますが、今年はコロナ影響によるオフィスの稼働率低下の影響を受けました。一方、在宅ニーズが高まる中、低中速機の需要は回復しつつあります。スマートフォン、クラウド環境の普及等でユーザーのプリントスタイルが変化する中、プリント需要の減少による市場全体の成長鈍化が懸念されているのに加え、競合メーカー各社の攻勢による競争の激化とそれに伴うプリンタ本体/消耗品CRGの著しい価格下落は大きな脅威となっております。そのような環境下において、当社は各種の技術的イノベーションにより、顧客との一定期間にわたる契約型ビジネスを推進するなどの競争力強化をはかり、数量・シェア拡大モメンタムの加速を図っていきます。加えて、一層のコストダウン、サプライチェーンの最適化を通じた事業効率の最大化を目指してまいります。

 

イメージングシステムビジネスユニット

 当社は、デジタルカメラと同様に、レンズや様々な関連アクセサリーを製造、販売しております。レンズ交換式デジタルカメラでは、フルサイズミラーレスカメラの新製品として、「EOS R5」と「EOS R6」の2機種を第3四半期に一度に投入しました。この2機種は、動画撮影機能やAF性能、手振れ補正機構が大きな反響を呼び、販売開始直後から好調な売上を記録しました。また、市場から高い評価を得たエントリーミラーレスカメラ「EOS KissM」の第2世代モデルとなる「EOS KissM2」を第4四半期に発売し、成長領域であるミラーレスカメラのラインアップの更なる強化/拡充を図って参りました。その結果、ミラーレスカメラ市場では確実に販売シェアは上昇しており、レンズ交換式デジタルカメラ全体でも、米国、欧州、中国、日本といった主要地域において引き続き1位を獲得しております。

 レンズ交換式デジタルカメラにおいては、撮影領域のより一層の拡大を目指し、更なる高画質化、小型・軽量化、動画機能/ネットワーク機能の充実など、最先端の技術をベースとした新しい製品を提供することにより、今後も成長を目指してまいります。

 レンズ交換式デジタルカメラ用交換レンズでは、フルサイズミラーレス用の専用レンズであるRFレンズを8機種投入し、ラインアップを拡充いたしました。EOSRシリーズカメラ本体との相乗効果もあり、RFレンズの販売が伸長しました。RFレンズは、大口径マウントを採用し、バックフォーカスを短くすることで、レンズ設計の自由度が格段に上がり、光学性能が大幅に向上しております。当社は、優れた光学技術力、新規要素技術開発を基に開発された高性能、高品質のレンズを市場に投入することで、お客様の期待に応えてまいります。

 コンパクトデジタルカメラ市場は全体としては縮小傾向にあるものの、引き続きプレミアムラインを強化し、収益性の向上に努めてまいります。

 コンパクトフォトプリンターでは、コロナ禍という厳しい環境においても家中需要を取り込むなど、販売促進に努めてまいりました。「SELPHY」は、簡単な操作性・優れた携帯性・高画質プリントという強みを持ち合わせ、各地域で高いプレゼンスを維持しております。第2四半期にはSNSで慣れ親しまれているスクエアフォーマットのプリントを手軽に楽しめるミニフォトプリンター「SELPHY SQUARE QX10」を投入しご好評を頂いています。今後更に新規需要を開拓し、市場を牽引してまいります。

 インクジェットプリンターは、技術の進化とともに、家庭用のみならず、ポスター印刷などの商業用、オフィスのビジネスプリンター、さらにはプロフェッショナルが求める高画質な写真印刷まで、幅広い分野で使われるようになってきております。

 当社は高画質と高速印刷を同時に実現できる高密度プリントヘッド技術「FINE」(Full-photolithography Inkjet Nozzle Engineering )をコア技術として、これらのニーズ全てに応える幅広いラインアップを揃えております。家庭用では、本体の小型化、高級感のあるデザイン、クラウドやスマートフォン、タブレットPCとの連携を強める「Canon PRINT Inkjet」といったソリューションの提供、便利な前面・背面双方からの給紙機構の採用、QRコードをスマホで読み取るだけでプリンターと接続できるといった機能やサービスの充実により、ユーザーの使いやすさと満足度の向上を図っております。

 また、内蔵インクタンクにより高生産性と低ランニングコストを実現した大容量インクタンクモデルを、新興国市場のビジネスユース向けに投入開始し、徐々に先進国にも展開を広げております。

 大判インクジェットプリンターは、プロフェッショナルのあらゆる高度な写真及びグラフィック印刷ニーズに応えるべく、新顔料インクとクロマオプティマイザーによる12色「LUCIA PROインク」や新画像処理エンジン「L-COA PRO」を搭載し、色の再現性や暗部領域での表現力を大幅に向上させました。グラフィック製品ラインアップも、A2サイズ対応「imagePROGRAF PRO-1000」から、プロのニーズに応えるべく機能性と生産性でも改良を加えた60インチフラッグシップモデル「imagePROGRAF PRO-6100」まで、全ての顧客ニーズに応えられるよう取り揃えております。また、企業で高まっているCAD・ポスターなど大判サイズの低価格による内製出力ニーズにお応えすべく、専用紙を必要としない普通紙での高画質プリントを実現する全5色顔料インク「LUCIA TD」を新開発し、高速プリントを実現する「imagePROGRAF TX/TMシリーズ」に加え、上位機種の高画質・静音化を継承したエントリーモデル「imagePROGRAF TAシリーズ」をラインアップしました。

 フラットベッドスキャナに関しても、当社はCIS(Contact Image Sensor)搭載の「CanoScan LiDEシリーズ」の堅調な販売により高いシェアを堅持しております。

 

 

メディカルシステムビジネスユニット

 当社は、疾病の早期発見、早期診断のためCT、MRI、超音波診断装置、X線診断装置などの画像診断装置や検査機器、ヘルスケアICTソリューションを開発、製造し、世界150以上の国や地域に提供しております。病院経営に貢献し、患者さんに優しい医療システム・サービスをお届けし、これからも変わらず医療に貢献してまいります。

 当社は、COVID-19診断に必要なトータルなソリューションを提供することで、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組まれているすべての医療従事者、関係の皆さまの支援をしております。例えば、藤田医科大学(愛知県豊明市)と産学協同研究で開発した肺炎診断支援に関する臨床への適用評価の開始、国内初となるどこにでも移動可能な感染症対策医療コンテナCTの製品化などを開始しております。

 また、新型コロナウイルス抗原定性検査キット「Rapiim SARS-CoV-2-N」を公立大学法人 横浜市立大学(神奈川県横浜市)との共同研究をもとに開発し販売を開始しました。横浜市立大学が開発したSARS-CoV-2に特異性の高い抗体と、当社が培ったRapiimの高感度検出技術プラットフォームを組み合わせることにより、A型・B型インフルエンザウイルスなど他のウイルスと交差反応することなくSARS-CoV-2を的確に検出するとともに、6.64pg/mL程度の微量なウイルス抗原をわずか15分で検出することができます。また、多量のウイルスの場合は4分で検出が可能です。

 当ビジネスユニットは、主力のCTはわが国でトップシェアを堅持しています。ディープラーニングを用いて設計された画像再構成技術を搭載した80/160列CTの「Aquilion Lightning / Helios I Edition」、大開口径80列マルチスライスCT 「Aquilion Exceed LB」を販売開始しました。

 「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(以下、AiCE)」については2019年7月に販売開始したハイエンドクラスの3テスラMRI「Vantage Centurian」でMRIに初めて搭載されましたが、今年度は1.5テスラMRI「Vantage Orian / S Grade」、「Vantage Gracian」へと搭載機種を展開しております。

 今後も、精密加工技術、生産技術、センサー技術や画像処理技術など様々なグループ総合力を医療機器の製品開発や製造・サービスに活用することで新たな付加価値を産み出し、更なる医療貢献を果たしてまいります。

 コンポーネント事業においては、新興国需要拡大及びコンピューテッド・ラジオグラフィー(CR)からデジタル・ラジオグラフィー(DR)への移行に伴い、X線撮影機器市場は堅調に伸びています。一方、ハイエンド製品では欧米コンポーネントメーカーとの技術競争、またコモディティ化が進行する普及装置では中国・韓国メーカーとの価格競争が激しくなっております。そうした市場環境の中、DR製品ビジネスにおいては、価格競争力を強化した普及機新製品を一部地域向けに販売し、ワールドワイドに順次展開していく予定です。今後の成長分野である動画分野では、透視撮影装置、血管造影装置市場への販売を積極的に展開しております。X線管及びX線イメージングデバイス他においては、当社の高信頼性コア技術(高電圧真空技術、液体金属軸受及び、ヨウ化セシウム(CsI)蒸着技術等)を基に、製品競争力を向上させ、好調に販売を展開しております。医療機器向けを含む業務用カメラでは、カメラの小型化や高画質化など市場ニーズを早期に実現させることで、競争力のある商品を開発し、販売を展開しております。

 眼科診断機器においては、今後も成長が見込まれるOCT(光干渉断層計)の分野で、造影剤を使用しない検査で網膜血管描出を実現するOCT アンギオグラフィーソフトウェアの機能を継続的に強化し、激化する市場競争に対応しております。

 

 

産業機器その他ビジネスユニット

 半導体露光装置市場では、新型コロナウイルスの影響による長期的な景気回復時期の不透明感に加え、米中貿易摩擦激化による投資への影響等が懸念されてきましたがその影響は軽微に留まり、メモリやセンサー向け露光装置の設備投資は堅調に推移しました。また、IoT・5G関連の進展を背景に、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)センサー、通信デバイスなどの設備投資も堅調に推移しました。後工程露光装置の市場では、半導体チップの高集積化・薄型化への要求の高まりを受け、TSV(Through-Silicon Via)技術等によるメモリーの大容量化やウェハレベルパッケージング化などへの設備投資が伸長しました。

 当社では、多様化する半導体アプリケーションに柔軟に対応するため、顧客要望を製品開発の初期段階から反映させる「デザインイン」型のビジネススタイルが定着しております。高付加価値製品の開発も順調に進んでおり、急速に普及が進むIoTや車載向けなど幅広い分野に向けた製品を展開しております。メモリ向けでは、業界最高水準の生産性と重ね合わせ精度を実現したKrFスキャナー「FPA-6300ES6a」、ならびにi線ステッパー「FPA-5550iZ2」の継続的なアップグレードで、更なる市場シェアの拡大を目指してまいります。後工程露光装置では、大型四角基盤への対応と高い解像力を両立した「FPA-8000iW」をラインアップに加え、データセンター向けCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの低消費電力化を実現する有機基盤を使用したPLP(Panel Level Packaging)において、高い生産性を求めるユーザーのニーズに応えてまいります。また、ナノインプリント半導体製造装置は、量産展開に向け準備を進めております。

 FPD露光装置市場は、新型コロナウイルスの影響により主要パネルメーカーが集中する中国への渡航制限が続き、計画していた設置の先送りを余儀なくされました。しかし、フォルダブルディスプレイなどアプリケーションの拡大に向けた動きの加速や、大型TV向けの設備投資意欲は継続しております。TV市場のニーズは薄型TVの普及が進む中、今後は大型化、4K/8Kの高精細化に加え、有機ELに代表される高品位なディスプレイを用いたTVに移行していくと予想されています。当社は第8世代ガラス基板で、高品位な65型パネルを一括露光することにより高い生産性を実現したFPD露光装置「MPAsp-H1003T」で市場のニーズに応えてまいります。また、次世代ディスプレイ製造に不可欠な更なる高精細化のニーズに応えるべく中小型向け露光装置「MPAsp-E903T」をラインアップに加え、多種多様なパネル生産に貢献し、更なるシェア拡大を目指してまいります。

 ネットワークカメラと映像解析ソフトウェアを組み合わせたソリューションは、社会インフラとしてセキュリティ用途以外にも広がり、その市場はクラウドビジネスの成長と共に拡大基調にあります。顧客の多様な要望に応えられるネットワークカメラのラインアップとAIを活用した映像解析ソフトウェアを組み合わせた当社のソリューション提案は、国内外のチャネル展開とともに着実に浸透しつつあります。特に今年はCOVID-19により、混雑状況把握に対する社会的ニーズが急速に高まった年でした。その中で、当社では遠隔においてリアルタイムで状況を把握できる、人数カウント、群衆カウント、通過検知や動体のシルエット化などを組み合わせたソリューションを迅速に市場に対して提案しました。

 今後も、アクシス社、マイルストーン社、ブリーフカム社を始めとするグループ会社間の連携強化、技術の融合を加速し、最適なソリューションを提供することで、ネットワーク映像ソリューションにおけるグローバルリーダーを目指してまいります。

 放送用レンズ市場は、コロナ禍での大型イベントの延期を受け一時的な停滞がみられるものの、中長期的には先進国におけるスポーツ中継需要や新興国における4K化の需要が堅調に推移する見込みです。その中でも、スポーツ中継や各種番組制作ロケに最適なポータブルズームレンズ「CJ20e×5B」の発売により需要を喚起すると共に4K放送用レンズの更なるラインアップの拡充を進め制作現場の多様なニーズに応えていきます。

 デジタルビデオカメラ市場において、当社は高精細な映像表現を求める制作現場の多様なニーズに応えてきました。デジタルシネマカメラの分野では「EOS C300MKⅢ」及び「EOS C70」を発売しラインアップの強化と拡充をはかりました。また、4K業務用ビデオカメラの分野では、コロナ禍におけるストリーミング需要が急速に高まっております。今後も市況の変化を捉えた商品群を投入することで、映像制作現場におけるプロの幅広いニーズに応え、映像文化の発展に貢献していきます。

 新しい映像ソリューションとして、カメラを用いて自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術」を含む映像解析ソフトウエア「Vision-based Navigation Software」を開発し、商品化を実現しました。この商品を「移動ロボットの眼」として協業メーカーに提供することで、物流業務の生産性向上や自動化に貢献するとともに、今後清掃、運搬、警備、点検、探査などさまざまな用途で活用されるサービスロボットやドローンに搭載することを目指します。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)当社が締結している技術供与契約

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

京セラドキュメントソリューションズ(株)

日本

電子写真に関する特許実施権の許諾

2002年4月1日から

対象特許の満了日まで

ブラザー工業(株)

日本

電子写真及びファクシミリに関する特許実施権の許諾

2009年6月27日から

対象特許の満了日まで

 

(2)当社が締結している相互技術援助契約

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

HP Inc.

米国

バブルジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

1993年2月19日から

対象特許の満了日まで

Xerox Corporation

米国

ビジネスマシンに関する特許実施権の許諾

2001年3月30日から

対象特許の満了日まで

International Business
Machines Corporation

米国

情報処理システム製品及びその製造装置に関する特許実施権の許諾

2005年12月15日から

対象特許の満了日まで

Eastman Kodak Company

米国

電子写真及びイメージ・プロセス技術に関する特許実施権の許諾

2006年11月1日から

対象特許の満了日まで

セイコーエプソン(株)

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から

対象特許の満了日まで

 

(3)その他
 当社は、CMSCの買収に関わる資金調達のため、2016年3月15日付で株式会社三菱UFJ銀行との間で借入契約を締結し、借入を実施しております。

 また、上記借入については、2017年1月31日付で株式会社みずほ銀行及び株式会社三菱UFJ銀行にて借り換えを行っております。
 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注8 短期借入金及び長期
債務」に記載のとおりであります。

 

 

 

5【研究開発活動】

当社は創業当時より、業界をリードするコア製品を生み出す「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。また、成長の中で蓄えられてきたキヤノンブランドを支える技術・ノウハウ―品質、コスト、納期を支える技術―を価値創造基盤技術としてコアコンピタンスマネジメントに組み込んでいます。

研究開発における主要戦略としては、1.「基盤要素技術と価値創造基盤技術のさらなる強化」、2.「強いコア技術と基盤要素技術に基づく次なる事業の芽の創出」、及び3.「時代の要請に応じたイノベーション型の技術開発の強化」を掲げ、その取組みを進めています。

1.では、価値創造基盤技術をさらに進化させることによって、既存事業の高効率化に貢献します。並行して事業グループがもつ幅広いコア技術のエッセンスを抽出し、基盤要素技術を深化させ、新規事業のコア技術に注入します。これにより、既存事業の強化と新事業グループの成長に向けたコアコンピタンスマネジメントを推進します。

2.では、その一例として、インク・トナー材料の基礎となる機能材料技術を生かした新機能材料、特徴ある材料を生かした装置を開発し、事業の芽につながる次世代技術の育成に新たに取り組むなど、技術多角化を通して、新事業領域の開拓を進めます。

3.では、DXやカーボンニュートラルなどのトレンドを捉え、企業価値の向上につながる技術開発を推進します。特に、多様なサービスの結合を可能とするサイバー(仮想)空間と人との接点であるフィジカル(現実)空間、これらを高度に融合するサイバー&フィジカルシステムに注目しています。フィジカル領域において世界トップレベルのコア技術に、高度なサイバー技術をアライアンスなども活用しながら取り込み、一歩先を行くサイバー&フィジカル技術を開発します。

当期におけるグループ全体の研究開発費は、272,312百万円であり、セグメントごとの主な研究開発の成果は次のとおりです。

 

 

Ⅰ.オフィスビジネスユニット

オフィス向け複合機においては、「imageRUNNER ADVANCE DX」シリーズが、業界最高クラスの高速・高品質スキャナーにより、ファイルのメール添付送信や共有フォルダ―への格納などの紙文書の電子化を促進し、さらにユーザビリティーを追求したシンプルな操作パネルにより、お客様の業務の効率化に貢献します。新シリーズに搭載された新ADFは、読み取り画像の傾きを自動補正するデジタル斜行補正機能を採用することで、両面読み取りスピード最大270ページ/分※1を実現しました。

また、この技術により機械的に斜行を補正する際の紙の衝突音を軽減し、高速性と静音性を両立しています。重送検知機能や汚れ防止を搭載し、原稿から情報の欠落、劣化を防ぎ、読み取りの正確性向上に貢献しています。

新スキャナーと新ADFによる高速、高品質の新シリーズは、キヤノンのクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」の進化に対応可能な複合機です。機能拡張との組み合わせで、さらなる業務の効率化、生産性の向上をサポートし、オフィスのデジタルトランスフォーメーションの加速を促進します。

商業印刷向け大型複合機においては、「imagePRESS C10010VP/C9010VP」は、従来機種※2の高画質・高信頼性・高生産性を継承し、さらに長尺用紙や厚紙、合成紙などの用紙への対応力を強化しました。重厚感のある厚紙の名刺、合成紙を用いた耐水・耐久性に優れた飲食店のメニューなど、さまざまなグラフィックアーツ成果物を作成できます。また、長尺用紙の自動両面印刷および1,000枚の大量給紙にも新たに対応しました。三つ折りメニューのような両面の長尺成果物を大量に印刷する場合でも、給紙の手間をかけずに容易に作成できます。これらの機能拡充により、商業印刷を営むお客様のビジネス拡大を支援します。

中小規模事業所向けレーザー複合機(MFP)及びレーザープリンタでは,「Satera MF260」シリーズが、さらなる省スペース化と高速化を実現したA4モノクロレーザー複合機です。設置場所に限りのある在宅勤務などのテレワークをはじめ、中小規模オフィスや医療機関、店舗、窓口などでの業務において、設置場所の自由度の向上、出力時間の短縮などによりユーザーの業務効率化に貢献します。

当事業セグメントに係る研究開発費は、75,618百万円であります。

 

※1  従来機種「imageRUNNER ADVANCE C5500」シリーズ(2019年1月発売)と比べ約70%アップ。A4サイズ普通紙両面カラー原稿読み取り時。

※2  「imagePRESS C10000VP/imagePRESS C8000VP」(2015年10月発売)。出力速度はそれぞれ毎分100枚、毎分80枚(ともにA4ヨコ)。

 

 

Ⅱ.イメージングシステムビジネスユニット

レンズ交換式デジタルカメラ(デジタル一眼レフカメラ及びミラーレスカメラ)の世界市場において、2003年から17年連続で台数シェアNo.1※3を達成しました。これからも基本コンセプトである「快速・快適・高画質」を追求し続けることで、幅広い製品ラインアップを揃え、写真・映像文化の発展に貢献していきます。

2018年に導入した「EOS Rシステム」では、キヤノンのレンズ交換式カメラEOSシリーズのフルサイズミラーレスカメラにおいて、新開発のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、さらなる高速連写や8K動画撮影を可能としたミラーレスカメラ「EOS R5」や、フルサイズセンサー搭載のカメラ用交換レンズとして、「RFマウント」の特長である大口径・ショートバックフォーカス※4を生かした設計により、焦点距離100mmから500mmのズーム全域で高画質を実現した「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」など「RFレンズ」8機種をラインアップに加えました。また、革新性・技術力・デザイン・使いやすさなどの観点から、「EOS-1D X Mark III」、「EOS 90D」、及び「RF70-200mm F2.8 L IS USM」の3製品が、世界的に権威のある写真・映像関連の賞「TIPA アワード 2020」※5、及び「EISA アワード 2020-2021」※6の両賞を受賞しました

インクジェットプリンターにおいては、家庭用インクジェットプリンター「PIXUS TS8430/TS7430/XK90」が、QRコードをスマホで読み取るだけでプリンターとダイレクト接続することができる新機能「QRコードダイレクト接続」を搭載、更に「新しい生活様式」にむけて、自宅業務での書類や資料、オンライン学習の課題や解答用紙、家族で楽しめるペーパークラフトなどの多様なプリントを自宅で簡単・便利に印刷できる新しいサービスに対応しています。また、写真やアート作品、商業広告などのグラフィックアート市場向けの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF PRO 6100/4100/2100/6100S/4100S」は、ロール紙を給紙部に置くだけで、自動で用紙を給紙・搬送し印刷可能な状態に調整する「自動ロール紙セット」機能を搭載、日々の作業を効率化し生産性向上に貢献しています。

当事業セグメントに係る研究開発費は、52,258百万円であります。

 

※3  2020年3月現在(当社調べ)。

※4  最後部のレンズ面の頂点から撮像面までの光軸上の距離が短いこと。

※5  2020年4月 TIPA:Technical Image Press Association (欧州を中心とした14カ国・地域のカメラ、ビデオなどの分野における主要な専門誌、30誌が加盟している業界団体)より26年連続受賞、他に「RF85mm F1.2 L USM DS」、「PowerShot G7 X Mark III」が同時受賞。

※6  2020年8月 EISA:European Imaging and Sound Association (29カ国・地域のカメラ、ビデオ、オーディオなどの専門誌約55誌が加盟している欧州を代表する業界団体)より31年連続受賞、他に「EOS R5」、「RF24-70mm F2.8L IS USM」、「RF600mm F11 IS STM」、「RF800mm F11 IS STM」が同時受賞。

 

 

Ⅲ.メディカルシステムビジネスユニット

CT装置においては、大開口径80列マルチスライスCT「Aquilion Exceed LB」ではディープラーニングを用いて設計された画像再構成法であるAdvanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated (AiCE-i) を搭載することで、治療計画をはじめ、通常の診断用としても高画質を実現することが可能となり、被ばく線量の低減にも貢献します。また、放射線治療時に患部に正確かつ効率的に放射線を照射できるように、900mmの大開口径により、治療時と同じ体位で固定器具と共にCT撮影が可能となります。

MRI装置においても、ディープラーニングを用いて設計したSNR向上技術「AiCE」により、高画質と撮像時間短縮の両立に必要なSNRを最大3.2倍に引き上げることができます。1.5テスラMRIと比較した3テスラMRIのSNRが理論上2倍であるため、Vantage Gracianでは3テスラMRIに匹敵する高いSNRを得ることができます。これにより、日常検査において従来の3テスラMRIのような高分解能の画像診断が可能になり、より確実な診断を支援します。

読影ワークフローの効率化を図る読影支援ソリューション「Abierto RSS」として、マルチベンダによるアプリケーションが搭載できるプラットフォーム「Automation Platform」を開発、第1弾としてAIの技術の一つであるディープラーニング等を用いて設計・開発した脳卒中向けアプリケーションを提供しています。頭部単純CT画像から周囲と比べ低コントラスト及び高輝度の領域を自動で強調表示することができ、画像診断のワークフローを大幅に改善できるため、病院搬送後の迅速な治療方針の決定に役立つことが期待されます。

新型コロナウイルス抗原定性検査キット「Rapiim SARS-CoV-2-N」は、公立大学法人横浜市立大学(神奈川県横浜市)との共同研究をもとに開発しました。鼻咽頭ぬぐい液に加え、医療従事者の管理下で患者様自身が採取可能な鼻腔ぬぐい液にも対応し、医療従事者への感染リスクを低減可能です。横浜市立大学が開発した抗SARS-CoV-2抗体を採用し、近縁ウイルスであるSARS-CoV、MERS、また、風邪症状を引き起こすヒトコロナウイルスや、A型インフルエンザウイルス(H1N1、H3N2)、B型インフルエンザウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルス等、37種類のウイルスや細菌で交差反応を示しません。これにより、偽陽性の発生リスクを低減させています。Rapiim独自の高感度検出技術を、インフルエンザウイルス、RSウイルスに続き、SARS-CoV-2に採用し、6.64pg/mLの抗原※7、203RNAコピー/テストのウイルス※8を15分で検出します。また、多量のウイルスでは、4分で陽性を判定します。

眼科機器においては、ディープラーニング技術を用いて設計した独自の新画像処理技術「Intelligent denoise」を「OCT-A1」に搭載しました。眼底の血管形態を描出したOCTA※9画像からノイズを除去し、血管の細部まで可視化された高精細OCTA画像の生成が可能です。加えて、高性能GPUを搭載することで画像処理時間を高速化し、患者さんや医療従事者の負担を軽減します。また、この上位機種である「OCT-S1」には、レーザー光源に波長掃引式光源を採用し、スキャン幅約23mm、深さ約5.3mmの超広角撮影を実現します。広範囲かつ深部に至るまでの画像を一度の撮影でとらえることが可能となり、大学病院や専門性の高い眼科医療施設での研究や診断に貢献します。

当事業セグメントに係る研究開発費は、39,927百万円であります。

 

※7  組換えSARS-CoV-2抗原

※8  SARS-CoV-2 JPN/TY/WK-521(国立感染症研究所株)

※9  Optical Coherence Tomography Angiographyの略。

 

 

Ⅳ.産業機器その他ビジネスユニット

半導体露光装置においては、キヤノンの半導体露光装置として初めて大型四角基盤に対応した後工程向け露光装置「FPA-8000iW」により、高い解像力と広画角の露光、高い生産性を達成してきました。これにより半導体パッケージングのさらなる微細化と大型化、コストダウンを実現しています。

FPD露光装置においては、第6世代ガラス基板サイズに対応した中小型ディスプレイ向け露光装置「MPAsp-E903T」により、解像力1.2マイクロメートル(Line and Space)での露光を実現してきました。これによりディスプレイの更なる高精細化に貢献しています。

ネットワークカメラにおいては、群衆人数カウントや顔認証などのディープラーニングを用いた映像解析技術の開発を推し進めました。群衆人数カウント技術はネットワークカメラで撮影した映像や、ビデオ管理ソフトウエアに保管した録画映像から人の頭部を検出することで、人が密集している状況でも人数をカウントすることができます。また、キヤノンが開発している顔認証エンジンは、研究・開発を行う企業や研究所において客観的指標として用いられているNIST※10の評価にて高い顔認証精度が認められており、今後実用化を進めてまいります。

デジタルシネマカメラにおいては、RFマウントを採用した「EOS C70」は、小型・軽量設計に加えて、4Kスーパー35mmのCMOSセンサー「DGO(Dual Gain Output)センサー」を搭載し、CanonLog2ガンマと組み合わせることで、16+ストップの広いダイナミックレンジの高画質な映像を撮影可能です。また、高速処理が可能な映像処理プラットフォーム「DIGIC DV 7」により、4K/120Pのハイフレーム動画記録や多彩な記録モードによる撮影が可能です。

更にCinema EOS Systemのカメラとして初めてディープラーニング技術による被写体認識アルゴリズムを搭載し、「デュアルピクセルCMOS AF」時に被写体の頭部を検出して安定した追尾を行うほか、タッチパネル操作で素早く撮影設定を変更でき、快適な映像制作ワークフローを実現しています。

映像ソリューションにおいては、サッカーやラグビーの映像を提供した「自由視点映像システム」の技術を応用し、3Dコンテンツの撮影から編集までをワンストップで実現する「ボリュメトリックビデオスタジオ」を川崎事業所内に開設しました。画像処理ハードウエアとアルゴリズムの改良により映像生成時間の短縮と精細度向上を進め、自由視点映像によるテレビ番組制作やインターネット配信を実現しました。

当事業セグメントに係る研究開発費は、78,956百万円であります。

 

※10  NIST(National Institute of Standards and Technology | 米国国立標準技術研究所)

 

また、各事業セグメントに配分できない基礎研究に係る研究開発費は25,553百万円であります。

 

 注:製品名は日本国内での名称です。