第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、グループ企業理念「市民に愛され市民に貢献する」のもと2019年2月に、2022年3月期を最終年度とする「シチズングループ中期経営計画2021」(以下「本中期経営計画」という。)を策定しました。

 本中期経営計画においてグループ中期経営ビジョン「Innovation for the next ~時を感じ、未来に感動を~」を掲げ、それぞれの事業において、新たな価値創造に挑戦してまいります。

 

(2) 経営戦略等

 本中期経営計画におけるグループ経営ビジョン実現に向けて、以下の3つの重点施策に取り組んでまいります。

1)時計・工作機械事業の成長促進

 時計事業は、グループ経営資源を積極的に投下し、100年間培ってきたマニュファクチュールとしての高い技術力や開発力、確かな品質という土台に加え、更に新たな顧客体験を生み出す“コト”の価値をも提供するようなものづくりを進めてまいります。

 工作機械事業は、景気動向に左右されやすいという特性もある事から、市場状況に合わせた投資を継続し、景気変動の渦中にあっても、世界最先端の生産革新ソリューションを創造し「新・モノづくり企業」のポジションを確立することを目指してまいります。

2)サステナブル経営の推進

 当社グループは、永続的に事業を継続できる企業となる為、事業を通じてさまざまな社会課題の解決を図り、2030年を見据えたグローバルな社会課題であるSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献していくことを目指してまいります。

 その一つとして、製品の製造プロセスにおいてはSDGsを視野に入れ、「サステナブルファクトリー」というコンセプトを打ち出し、従来からの環境配慮に加えてサプライチェーン全体で、コンプライアンス、人権や労働慣行に配慮したものづくりを進めてまいります。

3)品質コンプライアンスの強化

 当社グループでは、2018年より業務リスクを統括する「グループリスクマネジメント委員会」に品質コンプライアンス委員会を設置し、品質に係るコンプライアンスリスクについて取り組んでまいりました。また、同委員会を通じ「グループ品質行動憲章」を策定し、ものづくり全プロセスにおいてコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでおります。

 2020年度以降については、あらたに設置した「サステナビリティ委員会」が同委員会を管理及び統括することにより、業務リスクに加えESG・SDGs視点での品質に係るコンプライアンスリスクに取り組む体制としてまいります。

 

本中期経営計画における事業別の戦略としましては、

1)時計事業

 「時を通して新たな価値と体験を創造する」を事業スローガンに掲げ、時計本来の機能や価値を超えた商品や魅力あふれるサービスの提供を目指してまいります。

 これまで進めてきたシチズンブランドを核にしたマルチブランド戦略の成果発現に加え、今後成長が見込まれるスマートウオッチや機械式、高級品を中長期的に育成し製品領域の拡大を行ってまいります。また、デジタル技術の活用によるデジタルマーケティングの推進や製造革新によるムーブメント及び完成品のコスト力強化も図ってまいります。

2)工作機械事業

 世界最先端の生産革新ソリューションを創造し「新・モノづくり企業」のポジションを確立するために、現状の経営資源を最大限に効率化させる生産革新の実現及び今後期待される新興国市場を中心として既存事業の更なる競争力強化を推進してまいります。また、IoTに対応したソリューション事業の拡充も目指してまいります。

 

3)デバイス事業及びその他事業

 デバイス事業は、市場変化に合わせた製品の選択と集中と生産拠点の集約による収益力改善及び当社の強みを最大限に活かせる領域において事業拡大を図り確固たる競争優位を確立してまいります。当社グループの強みである小型金属加工技術を活かした自動車部品事業は、当社のコア技術である組立・研削技術等を活用した高付加価値製品の拡大を図り、小型化、薄型化、高耐久化が要求されるLEDやスイッチ事業は製品の選択と集中を行い、生産拠点の集約による収益力の改善及び強みを活した新規事業の創出を目指してまいります。

 また、その他事業では、当社グループの強みをしっかりと見極め、事業と製品における選択と集中を行い、生産効率の向上や合理化による安定的な利益確保を目指してまいります。

  本中期経営計画の達成に向けて、以上の取組み・戦略を推進してまいります。

 

(3) 経営環境

 当社を取り巻く経営環境として、中核事業である時計事業において、主に以下の環境変化を認識しております。

1)デジタル表示式のスマートウオッチ市場の拡大に伴う米国におけるファッションウオッチを中心とした時計市場  の縮小

2)アナログクオーツムーブメント市場の縮小

3)中国や米国などでのEコマース流通の急速な成長と実店舗流通の不振

4)高価格帯を中心とした機械式時計の堅調な需要

5)足元での新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響による消費の落ち込み

 当社は、以上のような経営環境変化の影響を受け、業績下振れリスクが高まっていることを認識し、中核事業である時計事業における課題について優先的に取り組んでまいります。

 なお、時計以外の事業につきましては、様々な事業環境の変化、足元の新型コロナウイルスの影響などの下振れリスクを注視しつつ、「シチズングループ中期経営計画2021」の取組みを継続してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の時計事業における収益の柱であったムーブメント事業は、デジタル表示式のスマートウオッチ市場の拡大に伴う、アナログクオーツウオッチ市場の縮小といった経営環境の変化により、収益の確保が難しい状況になってきております。今後、時計事業については、ムーブメント事業に過度に依存せず、シチズンブランドを核とした完成品事業での収益拡大を目指し、以下の4つの課題について優先的に取り組んでまいります。

1)ムーブメント事業の再構築

 ムーブメント事業の収益改善に向けて、アナログクオーツムーブメントの生産規模を適正化し、需要に見合った製造体制を再構築してまいります。また、ムーブメントの生産革新に加え、キャリバー統廃合等の合理化を推進し、コスト削減を追求してまいります。さらに、堅調な機械式ムーブメント需要の獲得に向けて、需要に応じた価格戦略を展開することにより、安定的な収益基盤を確立してまいります。

2)Eco-Driveを軸としたシチズンブランドの強化

 「Eco-Drive」は、光発電によって時計を駆動させる当社のコア技術であり、1996年には腕時計として初めて「エコマーク商品」に認定されるなど、これまでもその取組みは評価されてきました。今後、グローバルブランドとして展開しているプロフェッショナルスポーツウオッチ「PROMASTER」とエシカルウオッチ「CITIZEN L」の更なる拡大を図るほか、国内主要ブランドとしての地位を築く「ATTESA」と「xC」については、国内市場の更なる強化とアジア市場への拡販を進めてまいります。

3)EC販売及びデジタルマーケティングの強化

 新型コロナウイルスの感染拡大も相まって、実店舗流通への依存からの脱却とEC販売の強化は喫緊かつ重要な課題です。当社は、今後、既存のEC販売の促進に加え、米国市場で先行している直販ECプラットフォームの構築を国内市場においても迅速に進めることでEC販売の強化を図ってまいります。また、現在展開している「Riiiver」、「FTS(ファイン・チューニング・サービス)」、「AIウオッチレコメンドサービス」といったデジタルマーケティングについても、今後さらに強化し、新規顧客の開拓やオムニチャネル化の促進による収益拡大につなげてまいります。

4)重点地域戦略

 当社は、これまで日本及び北米市場を重点市場としておりましたが、今後の成長が見込まれるアジア市場、特に中国市場を再び成長軌道に乗せるべく、若年層向けの商品の拡充やEC販売の拡大を進めてまいります。また、北米市場においては、利益体質への転換に向けて、構造改革による販売管理費の適正化を図るとともに、これまで以上にEC販売の拡大に注力してまいります。

 

2【事業等のリスク】

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

  なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

① 当社グループの各事業のリスクについて

 当社グループは、時計、工作機械、デバイス、電子機器等の製造販売を主な事業とし、全世界で事業展開を行っております。そして、ユーザーは一般個人のほか、多種多様な製造業にまで広範囲に渡っております。従って、当社グループの業績は、多岐に渡る変動要因の影響を受けます。その要因の主なものは以下のとおりです。

 

時計事業

 時計事業においては、ウオッチでは国内競合メーカーのほか、スイス高級腕時計メーカー、中国製普及価格帯時計メーカー、スマートウオッチメーカー等との競争も激しく、また、スマートフォン等の時計機能代替製品との競争も内在しております。ムーブメント事業においては、スマートウオッチ市場拡大の影響により低価格帯を中心としたアナログクォーツ市場が減少傾向にあることや中国メーカーの台頭等に基因する競争環境の激化による単価下落の環境にあるため、数量減少及びシェア低下の危険性があります。

 また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による外出規制、店舗の営業停止や営業時間の短縮、サプライチェーンの停滞等がさらに深刻化、長期化した場合には、世界的な消費マインドの冷え込みにより今後の業績に影響を与える可能性があります。

 

工作機械事業

 工作機械事業は、景気サイクルや企業の設備投資需要の影響を受けやすく、米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの世界的な感染拡大による設備投資設意欲の停滞等の影響を受け、今後の業績に影響を与える可能性があります。

 

デバイス事業

 デバイス事業は、技術革新が早く企業間競争も激しいことから、販売価格の下落や開発等の遅れ等が業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。精密加工部品においては、販売先であります自動車メーカーやスマートフォンメーカーの動向に影響を受けます。オプトデバイスにおいては、一部製品で特許実施許諾の契約を結んでおりますが、何らかの事情により提携関係が解消され、特許の実施許諾が受けられない状態になった場合、当事業に影響を与える可能性があります。

 また、新型コロナウイルス感染拡大による工場稼働率の低下及び自動車メーカーを中心とする客先の稼働率低下やサプライチェーンの停滞等により今後の業績に影響を与える可能性があります。

 

電子機器事業

 電子機器事業は、景気変動による設備投資、個人消費の影響を受けやすいため、米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの世界的な感染拡大による世界経済停滞等の影響を受け、今後の業績に影響を与える可能性があります。また、国内競合メーカーはもとより、中国等の電子機器メーカーとの競争が激しく、技術革新が早いことから、販売価格の下落や開発等の遅れ等が業績に影響を与える可能性があります。

 

② 海外売上依存度について

 当社グループの製品の売上高における海外比率は高く、また、全世界に販売されております。このため、各地域における景気・消費動向は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該地域の政治的・経済的な社会情勢が、同様に影響を及ぼす可能性があります。

(単位:百万円)

 

 

 

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

 

 

売上高

構成比(%)

売上高

構成比(%)

 

日本

108,463

33.7

98,839

35.5

 

アジア

92,815

28.9

77,884

28.0

 

アメリカ

62,983

19.6

55,312

19.9

 

欧州

54,862

17.1

44,952

16.1

 

その他

2,528

0.8

1,543

0.6

 

海外合計

213,189

66.3

179,692

64.5

 

合計

321,652

100.0

278,531

100.0

 

③ 為替変動のリスクについて

 上記②のとおり、当社グループの製品の売上高における海外比率は高いため、為替予約及び通貨オプション等によるリスクヘッジを行うとともに、海外生産の拡充・強化を推し進めておりますが、当社グループの業績は為替変動の影響を受けます。

 

④ 中国生産依存度について

 中国は当社グループの製品における主な生産拠点の一つであり、中国において何らかのトラブルによる生産支障及び、生産に支障をきたすような規制等が実施された場合、または人民元が大幅に切り上げられた場合等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 減損損失について

 当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 特許及びその他の知的財産について

 当社グループが研究開発及び生産活動を行う中でさまざまな知的財産権にかかわる技術を使用しており、それらの知的財産権は当社グループが所有しているもの、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から知的財産権を侵害したと主張され、係争等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 特に一部製品において、特許実施許諾の契約を結んで製造を行っておりますが、何らかの事情により提携関係が解消され、特許の実施許諾が受けられない状態になった場合、当事業に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 地震等の自然災害によるリスクについて

 当社グループの本社・工場等の設備安全について火災・地震などの自然災害の発生時に、人的被害・工場などの設備破損が生じないよう、防災シミュレーション活動などを通じて管理体制の確立を行っております。しかしながら、想定以上の地震等が発生した場合、生産活動や商品供給に支障をきたしたり、復旧などにかかる費用などで業績及び財務状況に大きな影響が出る可能性があります。

 

⑧ M&A及び業務提携等に関するリスクについて

 当社グループは、M&Aや業務提携等を通じた事業基盤の強化に取り組んでおります。これらを実行するにあたっては、対象企業の入念な調査、検討を行いますが、未認識債務の判明等や事業の展開等が計画どおりに進まない場合、当社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 借入金のリスクについて

 当社グループの借入金の一部は、取引先金融機関とシンジケート・ローン契約及びコミットメント・ライン契約を締結していますが、これらの契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上返済請求を受けることがあり、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑩ その他のリスクについて

 上記以外でも、当社グループの業績は、急激な技術革新等による社会インフラや市場競争状態の変化、当社グループの財務的・経営的状況の変動、国内外の主要市場における貿易規制等各種規制、移転価格税制等の国際税務リスク、株式市場や債券市場の大幅な変動により多様な影響を受けます。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

 当期における国内経済は、雇用環境の改善等から緩やかな回復基調で推移していましたが、消費税増税による消費の足踏み感が見られ、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大による影響も加わり、急速に悪化しました。また、こうした感染拡大の影響は海外市場においても大きく、中国の経済活動は急激に縮小し、その他のアジア地域も弱含みの展開となりました。各国との貿易を巡る動きが重しとなり低迷が続いていた米国経済、欧州経済においても大幅に景気を下押しし、先行き不透明感が一層強まる展開となりました。

 このような情勢のもと、当社グループは2019年2月に策定した「シチズングループ中期経営計画2021」の初年度として、従来のものづくりだけでなく、今までにない新たな価値創造に挑戦すべく、時計事業及び工作機械事業の成長促進、サステナブル経営の推進、品質コンプライアンスの強化を図ってまいりました。

 当期の連結業績は、売上高は2,785億円(前期比13.4%減)、営業利益は61億円(前期比72.6%減)と減収減益となりました。また、経常利益は75億円(前期比71.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は特別損失の計上に伴い166億円(前期は133億円の親会社株主に帰属する当期純利益)といずれも減益となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(時計事業)

 ウオッチ販売のうち、“CITIZEN”ブランドの国内市場は、上期は「The CITIZEN」等の高価格帯製品や「PROMASTER」等の中価格帯製品が好調に推移したものの、消費税増税後の消費マインドの冷え込みからクリスマス商戦での売上は伸び悩み、また、新型コロナウイルスの感染拡大による急激な落ち込みもあり、減収となりました。

 海外市場のうち、北米市場は、宝飾チェーンを中心とした実店舗閉鎖による影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の縮小が響き大幅な減収となったほか、比較的底堅さを保っていた欧州市場も同様に急激な減速に見舞われました。アジア市場も中国を中心に大規模な経済停滞の影響が大きく、減収となりました。

 マルチブランドについては、“BULOVA”ブランドが主力の北米市場で大きく売上を落とし、その他のブランドについても減収となりました。

 ムーブメント販売は、依然として市場の回復に力強さを欠く厳しい環境が続く中、高付加価値商品の需要が伸び悩み、減収となりました。

 なお、腕時計の生産規模は、前連結会計年度比10.2%減少し、約1,423億円(販売価格ベース)でありました。

 以上の結果、時計事業全体では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う急速な景気悪化による完成品の落ち込みや、ムーブメント販売の低迷を受け、売上高は1,416億円(前期比13.4%減)と、減収となりました。営業利益においては、重点施策の一つである高価格帯製品が売上を伸ばしましたが、完成品の急落やムーブメント販売の不振等による影響が大きく、39億円(前期比68.3%減)と、減益となりました。

 

(工作機械事業)

 国内市場は、回復の兆しが見えていた半導体関連が勢いを失ったほか、自動車関連も停滞感が強まり、減収となりました。

 海外市場においても、景気の減速傾向に加え大規模な経済活動の停滞が響き、中国市場で医療関連やIT関連に動きが見られたものの、その他のアジア市場、米州市場、欧州市場と軒並み低調な推移となり、減収となりました。

 なお、工作機械の生産規模は、前連結会計年度比26.5%減少し、約560億円(販売価格ベース)でありました。

 以上の結果、工作機械事業全体では、当社グループの独自技術であるLFV(低周波振動切削)技術搭載機の販売を推し進めましたが、国内外で設備投資に対する慎重姿勢が強まり、売上高は585億円(前期比18.9%減)、営業利益は72億円(前期比44.5%減)と、減収減益となりました。

 

(デバイス事業)

 精密加工部品のうち、自動車部品は、中国をはじめとした新車販売台数の減少や世界的な先行き不透明感の拡大を受け減収となったほか、スイッチもスマートフォンのサイドスイッチ搭載機種の減少により伸び悩み、精密加工部品全体で減収となりました。

 オプトデバイスは、車載向けチップLEDやバックライトが落ち込んだほか、照明向けLEDは、厳しい価格競争を強いられる中、価格競争に追随せず収益性を重視した取組みに注力したことにより、オプトデバイス全体で減収となりました。

 なお、オプトデバイスの生産規模は、前連結会計年度比19.5%減少し、約235億円(販売価格ベース)でありました。

 その他部品のうち、水晶デバイスは、スマートフォンなどの通信機器向け需要が増加し、横ばいとなりました。

 以上の結果、デバイス事業全体では、主にオプトデバイスを中心とした売上減の影響により、売上高は559億円(前期比8.0%減)と、減収となりました。営業利益においては、収益を重視した販売戦略に注力したものの売上減の影響が大きく9億円(前期比63.6%減)と、減益となりました。

 

(電子機器事業)

 情報機器は、バーコードプリンターが健闘したものの、設備投資意欲の減退等から主力のフォトプリンターやPOSプリンターが伸び悩み、情報機器全体では減収となりました。

 健康機器は、中東及びアジア向けの販売が好調に推移しましたが、国内向けの落ち込みを補うには至らず、減収となりました。

 以上の結果、電子機器事業全体では、売上高は168億円(前期比12.7%減)、営業損失は2億円(前年同期は4億円の営業利益)と、減収減益となりました。

 

(その他の事業)

 宝飾製品は、高額品需要に上向きの兆しが見られた一方で、消費税増税後の反動減や地方を中心に厳しさを増す百貨店、専門店の伸び悩み、また、会社清算及び一部事業譲渡に向けた営業活動の縮小等により、減収となりました。

 以上の結果、その他の事業全体では、売上高は55億円(前期比4.8%減)、営業利益は0億円(前期比71.3%減)と、減収減益となりました。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度末に比べ443億円減少し、3,695億円となりました。資産の内、流動資産は、たな卸資産が29億円増加した一方で、受取手形及び売掛金が208億円、現金及び預金が67億円それぞれ減少したこと等により、233億円の減少となりました。固定資産につきましては、繰延税金資産が27億円増加した一方で、投資有価証券が65億円、機械装置及び運搬具が56億円、無形固定資産が41億円それぞれ減少したこと等により、210億円の減少となりました。

 負債は、前連結会計年度末に比べ、短期借入金及び長期借入金が合わせて40億円、事業再編整理損失引当金が13億円それぞれ増加した一方で、電子記録債務が56億円、未払費用が52億円、支払手形及び買掛金が40億円それぞれ減少したこと等により75億円減少し、1,387億円となりました。

 純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、利益剰余金が271億円、その他有価証券評価差額金が45億円、為替換算調整勘定が43億円それぞれ減少したこと等により367億円減少し、2,307億円となりました。

 当連結会計年度末の受取手形及び売掛金が大きく減少しておりますが、これは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う急速な景気悪化による時計事業や工作機械事業等の減収に伴い、売上債権が減少したことが主な理由です。また、減損損失の計上により固定資産が大きく減少しております。

 一方負債ではリファイナンスによる長期借入金の返済と借入を行っております。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ65億円減少し、当連結会計年度末には、779億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度と比べ25億円減少し173億円となりました。これは主に税金等調整前当期純損失が150億円、仕入債務の減少額89億円、法人税等の支払額71億円等による減少要因がありました一方、減価償却費が154億円、減損損失が192億円となりましたこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ43億円支出が減少し、154億円の支出となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入40億円、有形固定資産の売却による収入7億円等がありました一方、有形固定資産の取得による支出が168億円となりましたこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ11億円支出が増加し、70億円の支出となりました。これは主に長期借入れによる収入152億円等がありました一方、長期借入金の返済による支出が107億円、配当金の支払額が69億円、自己株式の取得による支出が30億円となりましたこと等によるものであります。

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失となりましたことにより、前年度対比で大きく減少しておりますが、主なものは非資金損益項目の減損損失の計上によるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ設備投資による支出が減少したことから、前年度対比で投資活動による支出が減少しております。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出により、前年度対比で支出が増加しております。また、当連結会計年度は、リファイナンスによる長期借入金の返済と借入を行っております。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことをしておりません。

 このため生産、受注及び販売の実績については、セグメント業績に関連付けて示しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりですが、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に次のとおりであります。

a.退職給付債務及び退職給付費用

 当社グループでは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件に基づき算出しております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

b.繰延税金資産の回収可能性

 当社グループでは、繰延税金資産の算定において慎重な判断を行い、評価性引当額を計上することにより実現可能性の高い金額への修正を行っております。評価性引当額における必要性の評価については、将来の課税所得と継続的な税務計画を慎重に判断しております。

c.固定資産の減損

 当社グループは、固定資産について、その帳簿価額の回収が懸念される企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損の要否を検討しております。その資産の市場価格及びその資産を使用した営業活動から生じる損益等から減損の兆候があると判定された固定資産については、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、回収可能価額まで減損処理を行っております。

 

 なお、経営者は見積り及び判断・評価につきまして、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 また、繰延税金資産の回収可能性及び固定資産の減損においては、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が、2020年6月頃まで続くものと仮定し、会計上の見積りを行っておりますが、この仮定は不確実性が高く、影響の長期化や深刻化した場合は、将来の損失額に影響を与える可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における経営成績等に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

 当社グループの経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報についての記載

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び部品等の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備投資であります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。自己資金につきましては国内グループ会社間の資金効率を上げるためキャッシュマネージメントシステムを導入しております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入と債券市場からの社債等による調達を基本としております。

 当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は56,616百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は77,996百万円となっております。

 不測の事態に備えて、金融機関との良好な関係の維持に努めるとともに、複数の金融機関との間で合計20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。

 なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

⑥ 目標とする経営指標の達成状況

 当社グループは、2019年度から2021年度までの中期経営計画において、グループ中期経営ビジョンとして「Innovation for the next ~時を感じ、未来に感動を~」を掲げ、これまでのものづくりにとどまらない新たな価値創造に挑戦いたします。

 中期経営計画においては、時計事業と工作機械事業をコア事業と位置付け、中長期的な成長に向けた取り組みを推進いたします。一方で、前中期経営計画で実施したM&A等の大型投資は一巡したことから、各事業における投資効率やバランスシートに対する意識を高め、資本効率と収益性の向上を目指すため、以下の目標指標を設定しております。

 なお、2020年3月期は、時計事業で製造の省人化・合理化を推進し、工作機械事業においては次の成長に向けた中国工場の移転拡張を決定する等の施策を実施、また、デバイス事業他においては構造改革を実施しましたが、市況環境の変化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、苦戦を強いられました。

 

 

2021年3月期

目標指標

2020年3月期

実績

売上高

3,700億円

2,785億円

営業利益

300億円

61億円

ROE

8.0%

△7.0%

 

4【経営上の重要な契約等】

技術援助を受けている契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約内容

契約期間

シチズン電子㈱

日亜化学工業㈱(注)

日本

白色LEDランプ

特許実施許諾

2002年1月1日から

2008年12月31日まで

(以降1年毎に自動延長)

 (注)ロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。

 

 

5【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、グループ事業戦略に基づき、“市民に愛され市民に貢献する” という企業理念実現のため、将来を見据え、新たな顧客価値創出を担う研究開発体制を構築しております。

研究開発体制としては、研究開発センターが中央開発機能を持ち、経営方針に沿ってグループを俯瞰した研究開発を行っております。また、それぞれの事業に関わる製品開発、生産技術開発等は、時計事業の製品開発部門と技術開発部門、および各事業会社が担っております。

 なお、研究開発費につきましては、各事業に配分できない基礎研究費用1,061百万円が含まれており、当連結会計年度中に投下した研究開発費は、6,164百万円であります。

 

主な研究開発活動

研究開発センターにおける研究開発活動

研究開発センターにおいては、当社のもつ基盤技術をより深化させるとともに、マーケティング活動にも力を入れ、新たな顧客を創造し続けることができる新技術・新製品の開発を行っております。また、グループ各社からの材料解析依頼や各種技術相談に応じることで、グループ研究開発活動の支援も行っております。

 

②時計事業

当社では、要素部品の小型化、高性能化により、小型化・薄型のムーブメントを実現し、シチズンブランドの主力商品であるエコ・ドライブのラインアップの強化を推し進めています。

光発電エコ・ドライブGPS衛星電波時計の新ムーブメントCal.F158を搭載したダイバーズウオッチ2モデルを2020年2月4日に発表しました。世界初のISO規格200mに対応した光発電GPS衛星電波時計の本格派ダイバーズウオッチです。ダイビング時の誤操作を防ぐためのダイブモードなど、ダイバーの安全を最優先した機能を搭載しています。また視認性の高い針や、ダイビンググローブの上からでも操作しやすいローレットのついた逆回転防止ベゼルなど、ダイバーズウオッチとしての本格機能とデザインを高い次元で融合させたモデルです。

また、時計の本質を追求し、卓越した精度を誇る高品質ウオッチ『The CITIZEN』から、ブランド誕生25周年を記念した数量限定モデルを、2020年3月19日に発売しました。年差±5秒の高精度 光発電エコ・ドライブムーブメントを搭載し、日本の伝統工芸である土佐和紙に砂子蒔きと言われる伝統的な技法で金沢金箔を施した文字板とスーパーチタニウムのケースを組み合わせたモデルです。

今後も、腕時計としての美しさと精度を追求し、グローバル展開を目指した環境に優しい「エコ・ドライブ」、「エコ・ドライブ電波腕時計」と、マニュファクチュール(自社一貫生産)としての実力を発揮した機械式時計の拡販に向け、表面処理・外装技術、精密加工技術、低消費電力技術、高感度受信技術、高密度実装技術、エネルギー源、通信技術の開発を継続し、「技術と美の融合」を実現していきます。

 当事業に係わる研究開発費は1,364百万円であります。

 

③工作機械事業

シチズンマシナリー㈱では、グローバル化と情報化の進展による顧客ニーズの多様化に対応する革新的なモノづくり『個の量産』を提唱し、事業を推進しています。

メインとなる製品ブランドとして、主軸台移動形自動旋盤の「Cincom」と、主軸台固定形自動旋盤の「Miyano」の2つの工作機械商品群を展開しています。また、切削加工において切りくずの絡みつきを解消するLFV(低周波振動切削)技術、及び3台分もしくは4台分の単軸旋盤を1台に集約したMC20(Multi Station Machining Cell)は、『個の量産』のコンセプトから開発された今までにない革新的技術であり、国内外の業界紙およびLFVにおいては精密工学会からも表彰されるなど高い評価をいただいています。併せて、IoTを活用し多彩なソリューションを提供するalkapplysolution(アルカプリソリューション)も展開し、当社が蓄積した技術ノウハウ等を提供することで、お客さまの課題解決に役立てられています。

今後も革新的なモノづくりの実現を通して、お客さまの安心と成長、そして世界中の製造業の発展及び環境負荷低減に貢献することを目指し、シチズンマシナリーは挑戦を続けます。

 当事業に係わる研究開発費は1,020百万円であります。

 

④デバイス事業

 シチズン電子㈱の主要事業の一つであるオプティカル事業の照明LED分野では、製品の付加価値に繋がる発光スペクトル調整技術・LED駆動回路技術・光学技術などを器具に組込んで簡素化するモジュール技術の開発を進めております。

また、一般LED分野では、今後市場拡大が予想される3Dセンシング市場に向けて赤外VCSELをはじめとした新しい光源及び光源モジュールについても引き続き開発を進めております。

もう一つの主要事業であるスイッチ事業については高信頼性、高品質化・小型化に向けて材料からの開発を進めており、また弊社所有の小型精密技術を応用した新たな製品の開発を進めてまいります。

シチズンファインデバイス㈱では、長年築き上げてきた独自の技術を活かすとともに、各事業部門の技術の融合を図り、新技術開発、新製品開発を積極的に行っております。また、マーケティング活動も盛んに行っており、展示会への出展、顧客訪問などを通して市場ニーズをつかみ、新たな研究開発テーマ創出につなげています。

自動車部品を中心とする金属部品加工の分野では、セラミックス加工技術の1つであるワイヤー研削を高精度穴加工に活用して、エンジン部品の製品化に結びつけました。また、セラミックス事業で培った素材・材料技術の分野では、高硬度特性を持つ新材料のサイアロンを用いた各種部品、小型軸受部品、LD素子実装用の薄膜サブマウントなどを開発しています。

表示デバイスの分野では、表示ディスプレイ以外の用途として光学変調素子を開発しています。また、耐光性のあるLCOSパネルの開発も行っています。

センサの分野では、高温耐久性の高いランガテイト結晶を用いて、燃費改善に貢献する車載向け燃焼圧センサを開発しました。車載の更なる拡大と自動車以外の市場拡大も狙い、継続して製品開発を行っています。

また、精機事業の分野では、画像処理を活用した装置への要求の高まりに向けて、新たな開発体制を構築し、AIを活用した画像処理技術の開発に取り組んでいます。

 当事業に係わる研究開発費は1,802百万円であります。

 

⑤電子機器事業

 シチズン・システムズ㈱では、業務用プリンター製品及び健康機器製品を中心に開発を行っております。

プリンター関連のうち、POSプリンター、モバイルプリンターなどの小型プリンターは、モバイル端末普及により多様化する使用環境への対応を進めております。バーコードプリンターは、POSと技術共有が可能なミドルレンジを強化するための開発を進めております。フォトプリンターは、高付加価値製品のシリーズ化と多様化する市場要求に対応した新製品の開発に取り組んでおります。健康機器関連のうち、主力の体温計、血圧計は基本的機能の向上と操作性改善への取組みに加え、他社にない差別化された製品の実現に向けた開発に取り組んでおります。

 当事業に係わる研究開発費は914百万円であります。