第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、コア事業である工業用ファスナー、自動組立機械、計測制御・検査機器など多岐にわたる技術、製品群をファスニング・ソリューションとして融合し、「締結・組立・計測検査における真のグローバルメーカー」となることを長期経営ビジョンに掲げております。

当社グループは、コンプライアンスの徹底、環境保護などの社会的責任を果たしつつ自己革新を進め、適正な利益を確保できる強靭な企業体質の構築と、持続可能な成長の実現により、株主、顧客、取引先、地域社会など、すべてのステークホルダーにとっての価値向上を目指しております。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2019年に10年後のビジョンとして『世界中で認められ、求められる「モノづくりソリューショングループ」を目指す』を掲げ、その第1ステージとして4ヶ年の中期経営計画「NITTOSEIKO Mission "G" 」をスタートしました。5つの戦略テーマで、事業領域の拡大やグループシナジーの向上を中心とした取り組みを実践してまいりました。

2023年度から、第2ステージとなる3ヶ年の中期経営計画「Mission G-second」を策定しました。Gの意味するGroup's Global Growth を継承し、事業の成長と安定基盤の確立を重点とする4つの成長戦略で、ステークホルダーから高い信頼と、将来が期待される持続可能な企業を目指してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等

当社グループは2023年を初年度とする3ヶ年の中期経営計画において、その最終年度である2025年には、売上高60,000百万円、営業利益5,160百万円、投下資本利益率(ROIC)8%以上及び自己資本当期純利益率(ROE)9%以上の達成を目標に取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき業務上及び財務上の課題

 当社グループは、2023年から2025年までの3年間を対象とする中期経営計画「Mission G-second」を策定しております。この計画は、2028年の長期経営ビジョン『世界中で認められ、求められる「モノづくりソリューショングループ」を目指す』の第2ステージとなります。初年度においては、持続可能な成長重視の戦略のもと「お客様目線」の意識と行動を実践してまいりましたが、海外経済の減速や電力料をはじめとするエネルギーや材料・資源価格の高止まり、労働市場のひっ迫などにより穏やかな環境とは言い難いものとなりました。そこで見られた課題を解決するためにも引き続き4つの成長戦略(事業拡大・環境・人財・財務)を実践していきます。

 企業価値の源泉は「成長」そして「稼ぐ力」であることを再認識し、企業価値を高めるための「稼ぐ力」を最優先とした事業経営ならびに様々なリスクに対して安定して対応できる強固な基盤を構築してまいります。

 

 

FY2023-FY2025

中期経営計画

Mission G-second

4つの成長戦略で持続可能なグループへ

事業拡大戦略

環境戦略

人財戦略

財務戦略

 

FY2019-FY2022

中期経営計画

NITTOSEIKO Mission "G"

顧客、市場のニーズに

グループの総合力で

より高く応える

FY2028

長期経営ビジョン

 世界中で認められ

求められる「モノづくり

ソリューショングループ」

を目指す

 

 

 中期経営計画「Mission G-second」では、当社グループや社会を取り巻く課題に対して、4つの戦略で取り組んでいきます。

① 事業拡大戦略

 事業拡大戦略は、当社グループが成長していくために最も重視する戦略と位置付けています。初年度から主要顧客である自動車関連のCASE市場をターゲットに取り組みましたが、価格転嫁の難航と海外向け販売が勢いを欠いたことにより苦戦を強いられる結果となりました。2023年末以降、価格転嫁については理解醸成が進みつつあり、生産性向上活動と並行して利益の創出に取り組んでまいります。また、競合他社との価格競争から脱却を図るべく、新製品をはじめとする高付加価値製品を国内外に市場投入し、成長戦略を再び軌道に戻すことを明言いたします。

 部品製造を中心とするファスナー事業においては、自動車・建築分野を中心に、軽量化、薄肉化、小型化への対応は進化を続けており、より高品質・高精度なモノづくりが求められるようになってきました。ユーザー仕様に特化したモノづくりを得意とする当社グループは、独自の開発力と提案力で益々強みを発揮できるステージが広がるものと考えています。また、サプライチェーンの見直しが日々加速しており、海外拠点の拡充も見据え、重点エリアへの積極的な事業拡大を進めてまいります。

 組立装置や検査・分析装置を製造する産機事業・制御事業においては、労働力不足や製造コスト削減による自動化の需要は国内外問わず拡大していくものと考えています。そのような中、市場では環境負荷低減に繋がる製品が求められており、お客様に貢献できる新製品の投入も視野に入れています。また、地域性に特化した製品ラインナップの充実化にも取り組み、サービス体制の構築と身近な存在であり続ける体制強化を図ってまいります。

② 環境戦略

 当社グループは、環境・社会問題と向き合い、事業を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することは当然の使命であると認識しています。モノづくり産業にとってCO排出量の削減は欠かせない取り組みであり、その責任を果たしていかなければなりません。当社グループでは初年度から各事業所・グループ会社で太陽光パネルの設置や廃棄ロスの削減を積極的に進め、4つの戦略の中では最も効果の出た取り組みでした。今期以降はCO排出量が大きいファスナー事業において新たなモノづくり手法への挑戦も視野に入れています。

 「お客さまも私たちも」を合言葉に2050年のカーボンゼロ化に向け、2030年には2019年比30%削減を目指してまいります。

③ 人財戦略

 当社グループは、人を「財」と考え、誰もがいきいきと働ける環境をつくることがマテリアリティの一つであると考えています。「Mission G-second」において強化すべきポイントとして「労働生産性:従業員の付加価値創造・生産性向上・企業価値向上につながる能力」、「エンゲージメント:従業員の自発性、仕事へのやりがい」を掲げ、ベクトルとなる指標を明確にすることで、評価を定量化し、PDCAを実行しています。初年度は売上の鈍化と原材料費の高騰が影響して労働生産性は目標値を下回った一方でエンゲージメントについては目標をクリアし、従業員の取り組みを結果に導く重要性を再認識しました。

 近年、人的資本経営が重要性を増す中、多様性が対話やイノベーション、事業のアウトプットにつながる環境を追求し、組織全体を活性化させる企業風土を醸成してまいります。

④ 財務戦略

 「稼ぐ力」を体現するものとしてさらに強化していくのが財務戦略と位置づけております。当社グループでは初めてROICを指標に掲げて取り組みましたが、収益面で精彩を欠き、目標値を下回りました。一方、資本コスト経営をグループ内にも展開し、投下資本の在り方、効率性を意識した意義のある年であったと認識しております。今期はさらに資金調達や運用を戦略的に行い、グループ全体の財務体質の最適化を図ってまいります。すでに資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた方針を開示しており、当社グループの持続的な利益成長を通じて、株主還元の一層の充実化にも取り組んでまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

<サステナビリティに関する基本的な考え方>

 当社は地域の雇用創出、産業振興を目的として創立し、社是「我らの信条」のもと創業の地・京都府綾部市よりモノづくりを通じて世界中のお客さまの課題の解決に貢献してきました。2019年には当社にとってのマテリアリティ(重要課題)を特定し、それに基づき2023年に開始した中期経営計画「Mission G-second」の戦略テーマを策定しています。持続的な成長および持続可能な社会の実現のため、サステナビリティ委員会を中心とした体制のもとサステナビリティ経営を推進しています。

 

<サステナビリティ推進体制>

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① ガバナンス

<ガバナンス体制>

 サステナビリティ委員会は、取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、社外取締役を含む役員で構成しております。原則年2回開催し、サステナビリティに関わる取り組みの諮問機関として、関連する方針や目標の進捗管理・施策の審議等の機能を担っております。サステナビリティ委員会の事務局にはサステナビリティ推進室を置き、サステナビリティ委員会の監督のもと、6つの委員会が推進活動ごとに取り組み計画の立案・実行などの業務を執行しております。

 

<役員報酬>

 当社は業績連動型株式報酬制度を導入しており、その中で指標の一つとしてESG目標(CO削減率)を定めております。中期経営計画「Mission G-second」の目標達成度に応じポイントを付与し、当社が設定する信託を通じて当社株式が付与される業績連動型株式報酬としております。

 

② リスク管理

 サステナビリティ委員会が監督する各推進活動においては、リスクマネジメント委員会と連携しています。リスクマネジメント委員会が各部門でリスクを抽出し、その発生頻度、影響度を評価したリスクカタログを作成し、サステナビリティ委員会と共有しています。

 

③ 戦略

<マテリアリティ>

 持続的な成長および持続可能な社会の実現のため、当社が存在する価値を改めて明確にするべく重要課題を抽出し、4つのマテリアリティ「お客さまとの共有」「環境共生」「地方創生」「人財育成」を特定し、重点的に取り組んでおります。

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<マテリアリティの特定プロセス>

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<理念体系図>

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④ 指標と目標

中期経営計画「Mission G-second」の戦略テーマは当社の4つのマテリアリティに基づいており、2025年までのサステナビリティ目標は中期経営計画の経営目標に組み込んでいます。

成長戦略

指標

範囲

2023年実績

2025年目標

Growth#1

事業拡大戦略

売上高

連結

447億円

600億円

営業利益

連結

26.1億円

51.6億円

Growth #2

環境戦略

CO排出量削減率(2019年比)

連結

17.1%

12%

廃棄量削減率(2019年比)

連結

0.2%

5%

Growth #3

人財戦略

労働生産性増加率(2022年比)

連結

0.3%

24%

エンゲージメント

連結

3.6p

3.8p以上

Growth #4

財務戦略

ROIC

連結

5.3%

8%以上

ROE

連結

5.5%

9%以上

 

(2)気候変動

<気候変動対応に関する基本的な考え方>

 当社は、社是「我らの信条」およびそれに宿る精神を示した「行動規範」に基づき行動し、持続可能な社会の実現に向けて地域や地球環境の課題に対して積極的に取り組みます。

 あらゆる業界のモノづくりに欠かせない「産業の塩」たる締結部品、締結技術を扱う企業として、環境に対する責任は大きいですが、それは同時に良い影響も大きく与えるチャンスがあると捉えています。当社の活動すべてが、社会やお客さまの環境課題と当社のモノづくりの環境課題の双方の解決につながる企業づくりに取り組んでいます。

 

<環境マネジメント体制>

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① ガバナンス

 当社はサステナビリティ委員会の下部に環境管理担当者会議を置き、気候変動を含む環境全般に関する業務執行をしています。環境管理担当者会議は年2回開催し、方針・目標の立案や具体的施策の検討、ISO14001の管理体制に基づく内部監査の報告等を行っています。環境管理担当者会議での協議内容は最終的には常勤役員会で決定し、決定した内容はサステナビリティ委員会および取締役会で報告しています。

 

② リスク管理

 当社はISO14001認証を取得しており、その環境マネジメント体制のもと、環境管理担当者会議を中心に気候変動関連を含む環境リスクを特定し、各部署が目標に沿った取り組みを進めています。各部署の進捗管理は社内指標NPIを活用することで進捗状況を可視化し、事業における環境への取り組みの推進と管理体制の強化を図っています。サステナビリティ委員会で検証した気候関連リスクはリスクマネジメント委員会と連携し評価、管理しています。

 

③ 戦略

 気候変動に関する戦略については、年1回各部署で低炭素経済への移行リスク、気候変動による物理的リスク及び気候変動緩和策・適応策による経営改革の機会を抽出し、環境管理担当者会議がそれらをステークホルダーにとっての重要度、会社にとっての影響度の両面で評価しています。その上で、中期経営計画「Mission G-second」の「環境戦略」に気候変動に関する目標「CO削減」「廃棄量の削減」「お客さまへのESG支援」を設定し、施策を展開しています。

 

<気候変動関連のリスクと機会>

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④ 指標と目標

 2050年のカーボンニュートラルを見据え、Scope1、2におけるCOの排出量を2030年には30%削減(2019年比)することを目指します。中期経営計画「Mission G-second」では同排出量を2025年に12%削減(2019年比)することを目標に掲げ、施策を実行していきます。

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■主な実施予定施策

 中期経営計画期間においては主に「再生可能エネルギーの導入」(太陽光発電設置、再生可能エネルギー由来の電力の購入)によって、CO削減を図ります。また、特にCO排出量の大きいファスナー事業においては、新工場建設による工程の見直しや自社の生産技術を活用した生産工程の見える化、改善を図り、段階的に生産エネルギーの削減を行います。

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(3)人的資本・多様性

<人的資本に関する考え方>

 日東精工は人を「財」と考え、誰もがいきいきと働ける環境をつくることがマテリアリティ(重要課題)の一つであると考えています。社是「我らの信条」に描かれる理想の従業員像「健康・品性・誠実・知識と技術・品質・改善・明るい職場・貢献」を常に体現しながら、長期ビジョン、中期経営計画目標の達成に向けて取り組んでいきます。

 

① 戦略

 中期経営計画「Mission G-second」の「人財戦略」に「労働生産性:従業員の付加価値創造・生産性向上・企業価値向上につながる能力」、「エンゲージメント:従業員の自発性、仕事へのやりがい」を掲げ、それぞれ2025年までの目標数値を設定しています。ベクトルとなる指標を明確にすることで、一つひとつ施策の方向性を揃えるとともに、評価を定量化しPDCAを実行しています。具体的な施策は、4つの側面(a人財育成、b多様性、c健康安全、d労働慣行)から進めています。それぞれの側面でも今後指標を設定し、効果的な施策実施につなげていきます。

 

a.人財育成

<人財育成方針>

基本方針

「我らの信条」と中期経営計画「Mission G -second」を遂行、達成できる人財を計画的に育成する。一人ひとりの能力を最大化し、エンゲージメントを向上することで強い組織を作り出す。事業戦略や組織目標の達成に貢献する知識とスキルを身に付けることで個々人の成長を促進する。

重点施策

施策1.自ら学び、教えあう風土を醸成する

施策2.次世代経営者を育成する

施策3.イノベーションリーダーを育成する

施策4.業務効率性、労働生産性を向上する

施策5.キャリアオーナーシップを推進する

 

<教育体系>

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b.多様性

 一人ひとりが尊重され、働きやすい環境が確保されることは、当たり前のことです。その当たり前のことが当たり前にできてはじめて、労働生産性やエンゲージメントを向上できると考えています。多様で個性豊かな人材が集まることで生まれる創造性を、日東精工の武器にできるよう取り組んでいきます。

 女性活躍推進においては、女性管理職の育成、女性のキャリアアップのため、キャリアコンサルタントの資格を持つ女性取締役による女性社員へのエンカレッジ面談、女性リーダー育成研修、綾部工業研修所や次世代若手技術者プログラムへの女性技術者派遣などに取り組み、女性のキャリア向上を目指します。

 

c.健康安全

 当社は社是に「健康を増進し、よい人づくりをすること」を掲げており、中期経営計画「Mission G-second」の「人財戦略」にも「健康経営」を盛り込み、従業員が活き活きと働くことを支援し生産性の向上・企業価値の向上を目指しています。

 具体的な取り組みとして、3つの領域「①生活習慣病などの疾病発生予防・重篤化予防」「②メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の予防」「③労働時間の適正化、ワークライフバランスの確保」を重点課題に設定し、7つの重点目標を掲げた「Nicotto7(にこっとセブン)」に取り組んでいます。7つの重点目標の指標を設定し毎年計測するとともに、従業員に目標カードを配布し意識の向上に努めています。

<Nicotto7(にこっとセブン)>

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<健康経営推進体制>

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d.労働慣行

 労使協調を目的とし、定期的に協議会を開催しています。各事業(本)部の労使代表で協議する事業部会、役員と労働組合の代表が集まる事務局会をそれぞれ月に1回実施。売上、利益の進捗や人の問題まで話し合いを行います。また労働組合の中央執行委員以上と、会社の各事業本部の代表、役員以上が出席する経営協議会を四半期に1回行い、四半期ごとの経営数字を労使で共有し、目標達成に向けて協議をしています。このように頻繁に情報共有、問題点の協議を行う場を持ち、労使のベクトルを合わせています。

 また、有給休暇の計画付与の中で連続5日間の取得が可能な制度を設けており、仕事以外の時間を充実させ心理的な充足感を高めることによるエンゲージメント向上を目指しています。

 

 

② 指標と目標

戦略

指標

範囲

実績

目標

2023年

2023年

2024年

2025年

人財育成

労働生産性向上

単体

18,552円UP(月/人)

7,000円UP(月/人)

多様性

女性管理職比率

(課長級以上)

単体

6.5%

6%

6%

障がい者雇用比率

(注1)

単体

2.7%

2.7%

①育児休業等の取得割合

(②①+育児目的休暇の取得割合)(注2)

単体

33.3%

(75.0%)

30%

健康安全

プレゼンティーズム損失日数

単体

39日

38日

以下

ワークエンゲージメント

単体

2.55

2.58

労働慣行

有給休暇の

平均取得日数

単体

17日

(2022年)

12日

(2023年)

12日

(2024年)

※人的資本全体の指標と目標は「(1)サステナビリティ共通 ④指標と目標」に記載しております。

※男女の賃金差異は「従業員の状況」に記載しております。

(注)1 特例子会社の日東精工SWIMMY株式会社を含む雇用率です。

(注)2 ①は育児・介護休業法に基づく「育児休業等の取得割合」、②は同法に基づく「育児休業等+育児目的休暇の取得割合」であり、②は当社の定める「くるみん休暇」(配偶者の出産時に取得可能な休暇制度)の取得人数を含みます。社内の目標としては①の30%を目標数値に定め、取得率向上を目指しています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年12月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況等

 当社グループの製品に対する需要は、事業を展開している国或いは地域の経済状況と併せて、顧客である家電業界、精密機器業界、自動車関連業界、住宅関連業界等の業況・生産動向の影響を受けています。各販売地域での景気後退或いは主要顧客の需要減少や海外シフトの進行が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、事業環境の変化に左右されない収益基盤の構築を目指しております。

(2)販売価格の下落

 当社グループは、国内外の市場において厳しい競争に晒され、常に販売価格の下落圧力を受けています。競争激化による販売価格の更なる下落は、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、価格低下に対して、高付加価値製品の開発による差別化、コスト削減等により利益の確保に努めております。

(3)部材調達価格の上昇

 当社グループの生産活動には、原材料、部品等の部材の時宜を得た調達が必要不可欠であります。部材の供給不足、調達価格の高騰は、当社グループの生産高のみならず利益率や価格競争力を低下させ、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、部品の共通化や複数購買化を進め、コストダウンに努めるとともに、吸収できない市況価格の変動については、競合他社の動向を踏まえ、適切な売価への反映を行っております。

(4)製品の品質と責任

 当社グループは、品質第一をモノづくりの基本とし、厳格な品質管理体制を構築しています。しかしながら、万一、当社グループの製品・サービスに欠陥等の問題が生じた場合には、当該問題から生じた損害について当社グループが責任を負う可能性があるとともに、当社グループの信頼性や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、ISO9001やIATF16949といった外部認証を取得し、開発・設計から生産に至るすべての段階において品質を造り込み、優れた製品・サービスを安定的に供給することができる体制の確立に取り組むとともに、調達先の品質管理についても徹底しております。

(5)海外事業活動と為替変動

 当社グループの海外事業は、アジアを中心に展開しており、事業展開をしている各国の文化、宗教、商慣習、社会資本の整備状況等の影響を受けるとともに、経済情勢、政治情勢および治安状態の悪化が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このような状況に対処するため、定期的に子会社との間で情報交換を行い、各社の経営状況の他、周辺環境の変化等についても積極的に情報の共有を図り、政情不安等の兆候の早期把握に努めております。

 また、為替変動が、当社グループの外貨建取引から発生する資産および負債、売上高等の円貨換算額が当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、ドル、タイバーツ等の主要通貨の変動の影響を最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等を行っております。

(6)知的財産権

 当社は、多数の知的財産権を保有しており、グループ各社において有効活用しておりますが、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性があり、知的財産権が侵害されるリスクがあります。また、知的財産権に関する訴訟において当社グループが当事者となった場合、結果として損害賠償金等の支払が発生する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、知的財産部門が、特許や登録商標等の出願や維持業務を行うとともに、係争への対応に備えることで損失の最小化に努めております。

(7)法的規制等

 当社グループは、事業を展開している国或いは地域において、事業・投資の許可、貿易・関税、知的財産権等に関する様々な規制の適用を受けています。また、当社グループの事業活動は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等の環境汚染の防止、地球温暖化物質、有害物質の使用削減および廃棄物処理等に係る環境関連法令、労働安全衛生関連法令に従っております。

 当社グループが、これらの規制を遵守できなかった場合、事業活動が制限されるとともに、これらに係る費用や補償が当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、効率的で健全な経営にはコンプライアンスが不可欠であると認識し、企業活動の基本指針として制定した「企業倫理綱領」に基づいた行動実践に努めております。また、企業倫理に反する行為やグループのブランド価値を著しく損ねる行為を予防し早期発見・是正するために、内部通報窓口を設けております。

 さらに環境保全への取り組みを企業経営の最優先事項の一つとして位置づけ、主要な工場においては、環境管理や監視体制の強化、産業廃棄物管理の徹底のため、ISO14001の認証を取得して問題発生の抑制に努めております。

(8)有利子負債

 当社グループは、金融機関からの借入により運転資金を調達しております。急激かつ大幅な金利上昇等の金融環境の悪化が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このような状況に対処するため、当社グループは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ内の余剰資金を最優先に活用することで、有利子負債の圧縮に努め財務体質の強化を図っております。

(9)投資有価証券の減損処理

 当社グループは、投資有価証券を保有していますが、そのうち市場価格のない株式等以外については、時価が著しく下落し、かつ回復する見込みがないと判定した場合に、市場価格のない株式等については、その実質価額が取得価額に比べ著しく下落し、かつ回復する見込みがないと判定した場合には、減損処理を行うこととなり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 このような状況に対処するため、保有株式の有効性評価を定期的に行い、取締役会にて必要可否を判断し、不要と判断された株式の速やかな処分を行うこととしております。

(10)固定資産の減損会計適用

 当社グループは、固定資産を保有していますが、固定資産の減損に係る会計基準の対象となる資産又は資産グループについて減損損失を認識すべきであると判定した場合には、当該資産又は資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額することとなり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11)M&A

 当社グループは、事業の拡大を図るために、M&Aを重要な経営戦略の一つとして積極的に活用しております。M&Aにあたっては、対象企業の財務・税務・法務等について事前にデューデリジェンスを実施し、リスクを吟味し収益力を分析したうえで決定しておりますが、対象企業における偶発債務の発生や、当初の事業計画との乖離等により、想定したシナジーや事業拡大の成果が得られなかった場合は、のれんの減損損失が発生する可能性があります。

 このような状況に対処するため、当社グループは、買収先企業については、取締役会および経営会議等で定期的にモニタリングし、監督機能を強化することにより、リスクの低減に努めております。

(12)退職給付債務

 当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されています。しかし、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件が変更された場合、または年金資産の運用利回りが低下した場合、その影響は累積され将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。一層の割引率の低下や運用利回りの悪化などが起こった場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(13)自然災害、戦争、テロ等

 当社グループは日本、アジア、北米および欧州に製造、販売等の拠点を設け事業を展開しています。

 これらの国或いは地域において、地震、火災、台風、洪水、戦争、テロ行為、感染症等が発生した場合、当社グループの製造ライン・情報システムの機能マヒやサプライチェーンの混乱に伴い、生産・出荷が停止し、業績および財政状態に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、防災体制の構築と事業継続能力の強化をはかるため、社内防災組織を編成し、訓練等を実施しており、耐震対策等の取り組みも行っております。また、重要な事業を継続あるいは早期復旧を果たし影響を最小限にするため、事業継続計画(BCP)の整備などによる対策を講じております。

(14)気候変動

 当社グループは、気候変動の重要性を認識しており、気候変動の移行リスク(政策・法規制リスク、市場リスク、社会リスク)と物理的リスク(短期的リスク、長期的リスク)は当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 移行リスクのうち、政策・法規制リスクとしては、炭素税の賦課やサーキュラーエコノミーに伴う法規制などが挙げられます。また、市場リスクとしては、原材料コストの上昇およびエネルギー調整コストの増加、社会リスクとしては、マーケットの気候変動への対応要求事項の増加が想定されます。

 物理的リスクのうち、短期的リスクとしては、自然災害の激甚化により、生産現場や生産設備、物流インフラが甚大な被害を受けた場合、生産や出荷が長期間にわたり停止する可能性があります。また、長期的リスクとしては、夏季の気温上昇に伴う電力コストの増加、平均気温上昇、気象パターンの変化による労働環境の悪化などが挙げられます。

(15)情報セキュリティについて

 当社グループは事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報および機密情報、また、当社グループの個人情報や機密情報を有しています。これらの情報に対するシステムのセキュリティ対策および監視体制ならびにリスクマネジメント体制の強化を推進しております。しかしながら、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用が発生し、業績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、年々多様化かつ巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威への対策として、情報システム部門が中心となり、情報セキュリティレベルを向上するための取組みを進めております。サイバーセキュリティの脅威に対する技術的な対策に加え、入社時および定期的に個人情報・機密情報の取扱いに関する研修を行う等、従業員の情報セキュリティに対する意識レベルの向上に努めております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、インフレの長期化に伴う欧米を中心とする金融引き締めに加え、中東やウクライナ情勢等の地政学リスクの高まりや中国経済の減速懸念等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。わが国においては、ウィズコロナにおける消費活動の活発化やインバウンド需要の回復、雇用環境の改善等により景気に持ち直しの動きが見られる一方で、海外経済の減速や物価上昇による実質賃金の伸び悩み等により力強さを欠く状況となりました。

このような経営環境において、当社グループは、持続可能な成長重視の4つの戦略(事業拡大戦略・環境戦略・人財戦略・財務戦略)を掲げた中期経営計画「Mission G-second(2023年~2025年)」のもと、欧州市場への進出のほか、生産性向上とCO₂排出量削減を目的とした生産拠点の集約・最適化、中期経営計画目標に連動した株式報酬制度の導入、グループ資金の有効活用による有利子負債の削減等、当社グループや社会を取り巻く課題に対して、積極的に取り組みました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ6千3百万円減少し、533億4千4百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ19億6千4百万円減少し、169億4千1百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ19億円増加し、364億2百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は447億4千4百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は26億1千4百万円(前年同期比10.8%減)、経常利益は28億3千5百万円(前年同期比12.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は17億3千4百万円(前年同期比5.1%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

<ファスナー事業>

当事業につきましては、2022年4月に子会社化したケーエム精工株式会社および株式会社ピニングが業績に貢献しましたが、資源価格の高止まりや原材料価格の高騰により厳しい利益環境となりました。また、コロナ禍において需要先の生産調整で増加した流通在庫は、夏以降に在庫調整が終了し受注回復の兆しが見られましたが、自動車メーカーの生産停止問題等もあり、終盤の受注環境は再度失速しました。

このような状況のもと、製造時の環境負荷低減や製品物流の工程間短縮を図るため、製造工場の集約を推進しました。また、自動車関連業界を中心に需要が増加傾向にある、薄板の締結に貢献する「ジョイスタッド」、電子基板の締結時に発生する切粉の飛散や落下を防止する「CPグリップ」など、自動車の軽量化やCASE関連製品の需要拡大を図りました。併せて、ドイツで開催の展示会(Fastener Fair Global 2023)に出展し、欧州市場の開拓に努めました。

この結果、売上高は328億5千5百万円(前年同期比2.0%増)、営業利益は16億2千5百万円(前年同期比1.4%減)となりました。

<産機事業>

当事業につきましては、海外では、アジア地域において、ユーザー訪問強化に取り組んだことにより堅調に推移する一方、米国・中国における設備投資意欲の低迷などにより厳しい事業環境となりました。国内は、自動車関連業界を中心に引き合いは回復傾向にあるものの、標準機を中心に需要が低迷しました。また、エネルギー・原材料価格の高騰に対する製品価格への転嫁を促進しましたが、利益環境は厳しい状況となりました。

このような状況のもと、欧州市場の拡充や海外の非日系企業との取引拡大に努めました。また、省人化対応としてのロボットの需要増加を見据え、台湾のテックマンロボット社製協働ロボットTMシリーズの「TM Plug&Play」に対応したねじ締めユニット「PD400TM」シリーズをラインナップに加え市場の開拓に努めました。併せて、持続可能なコストの削減を目指した購買業務の最適化に取り組みました。

この結果、売上高は59億5千5百万円(前年同期比8.6%減)、営業利益は8億2千2百万円(前年同期比33.0%減)となりました。

<制御事業>

当事業につきましては、流量計は、主な需要先である造船業界において、カーボンニュートラルに伴う新燃料への対応製品の受注が増加しました。システム製品は、省人化・自動化対応としての検査選別装置や環境意識の高まりから洗浄液に溶剤等を使用しないマイクロバブル洗浄装置の引き合いが増加しました。地盤調査機「ジオカルテ」は、資源価格の高止まりによる住宅需要の低迷から低調に推移しました。分析機器は、電子部品など部材の供給不足の解消が進み、水分計・元素計を中心に販売が国内外で大幅に増加しました。

このような状況のもと、欧州市場開拓の足掛かりとして、グループ会社の日東精工アナリテック株式会社が、ドイツ・デュッセルドルフを拠点とした子会社を設立しました。また、取込画像を自ら学習し判定を行い、これまでの手法では困難であった検査にも、簡単な設定・操作で対応可能な高性能検査選別装置「ミストルAI」を市場に投入しました。併せて、加工部品の内製化による安定的かつ低コストな生産体制の確立に努めました。

この結果、売上高は59億1千5百万円(前年同期比11.7%増)、営業利益は2億7千8百万円(前年同期比76.4%増)となりました。

<メディカル事業>

当事業につきましては、団塊世代の高齢化など、医療を必要とする高齢者が増加する中、需要先である医療機関においては、コロナ禍において落ち込んだ経営状況も徐々に回復傾向となりましたが、コロナ補助金の減額、食材物価高騰や人材不足解消・待遇改善のための賃金引上げの対応等により、引き続き厳しい事業環境となっております。

このような状況のもと、医療従事者や患者の負担軽減に繋がる「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム材料(6月23日に日本国特許取得)」の早期製品化に向け、一貫製造設備の構築と非臨床試験に向けた試料の製作、性能試験に加え、医師の手技確立を目的とした動物実験に取り組みました。

この結果、売上高は1千7百万円(前年同期比64.1%増)、営業損失は1億1千2百万円(前年同期は営業損失1億2百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ2億7千8百万円減少し、80億2千7百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金は、31億5千1百万円の収入(前期は9億9千9百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益28億3千万円に加え、減価償却費14億8千9百万円や売上債権の減少13億4千8百万円などによる資金の増加があった一方、法人税等の支払額10億4千万円、棚卸資産の増加8億2千9百万円や仕入債務の減少4億2千8百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金は、11億8千7百万円の支出(前期は19億8千7百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入4億3千6百万円などによる資金の増加があった一方、有形固定資産の取得による支出11億3千1百万円や定期預金の預入による支出4億5千3百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金は、20億7千4百万円の支出(前期は13億1百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の売却による収入2億8千6百万円などによる資金の増加があった一方、借入金の返済10億6千3百万円、配当金の支払6億3千6百万円や自己株式の取得による支出5億6百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(注)「(a)生産実績」及び「(b)受注実績」における金額は販売価格によっております。

(a)生産実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ファスナー

26,422,968

100.4

産機

5,600,728

93.4

制御

6,757,183

107.3

メディカル

11,443

123.4

合計

38,792,324

100.4

 

(b)受注実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ファスナー

32,746,182

98.8

3,903,207

97.3

産機

6,234,881

94.1

1,903,277

117.2

制御

6,099,690

104.7

1,906,223

110.7

メディカル

17,035

161.0

合計

45,097,790

98.9

7,712,707

104.8

 

(C)販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ファスナー

32,855,853

102.0

産機

5,955,847

91.4

制御

5,915,303

111.7

メディカル

17,158

164.1

合計

44,744,163

101.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。

(資産)

 当連結会計年度における資産の残高は、棚卸資産が9億4千2百万円、退職給付に係る資産が6億1千8百万円増加した一方、受取手形及び売掛金が11億6千7百万円、未収入金が2億5千1百万円、現金及び預金が2億4千8百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ6千3百万円減少し、533億4千4百万円(前年同期比0.1%減)となりました。

(負債)

 当連結会計年度における負債の残高は、繰延税金負債が1億8千9百万円増加した一方、借入金が10億6千3百万円、退職給付に係る負債が7億1千6百万円、電子記録債務が2億6千3百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ19億6千4百万円減少し、169億4千1百万円(前年同期比10.4%減)となりました。

(純資産)

 当連結会計年度における純資産の残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金の増加10億9千8百万円や為替換算調整勘定が3億7千5百万円、退職給付に係る調整累計額が3億4千万円増加したこと

などにより、前連結会計年度末に比べ19億円増加し、364億2百万円(前年同期比5.5%増)となりました。

 

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、次のとおりであります。

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、自動車関連や住宅・建築業界向けのファスナー製品や化学・薬品業界向けの分析機器などの制御製品が好調に推移するとともに、2022年4月に実施したM&Aによる連結子会社増加の影響もあり、447億4千4百万円(前年同期比1.6%増)と過去最高額を計上しました。

(営業利益)

 資源・原材料価格の高騰を受け販売価格の改定や製販一体となったコストダウンを進めたものの、米国・中国経済の減速による受注低迷の影響が大きく、26億1千4百万円(前年同期比10.8%減)となりました。

(経常利益)

 受取賃貸料9千2百万円や円安の進展による為替差益5千7百万円の計上などにより、28億3千5百万円(前年同期比12.4%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 退職給付制度移行に伴う改定益が3千6百万円発生した一方で、投資有価証券評価損5千万円を計上したことなどにより、17億3千4百万円(前年同期比5.1%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 a.資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料および部品の購入費や製造経費のほか、販売費および一般管理費等であります。また、設備投資需要としては建物や機械装置等の生産設備の投資等があります。

 

 b.財務政策

 当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することにしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備など長期資金につきましては、長期借入金で調達しております。前連結会計年度より、グループ会社との間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ各社における余剰資金の有効活用に努めております。

 当連結会計年度末において、取引銀行2行と20億円の貸出コミットメントライン契約(借入実行残高12億円、借入未実行残高8億円)を、また、取引銀行12行との間で合計27億3千5百万円の当座貸越契約(借入実行残高2億2百万円、借入未実行残高25億3千2百万円)を締結しております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 2023年2月14日に公表いたしました当連結会計年度の当初業績予想に対しては、売上高は3.8%減、営業利益は25.3%減、営業利益率は5.8%(業績予想は7.5%)となりました。

 今後も、資源価格の高止まり、地政学リスクの高まりや中国経済の減速懸念等、先行き不透明な状況が続くと予想されますが、昨年末以降、価格転嫁については理解醸成が進みつつあり、生産性向上活動と並行して利益の創出に取り組んでまいります。また、競合他社との価格競争から脱却を図るべく、新製品をはじめとする高付加価値製品を国内外に市場投入し、成長戦略を再び軌道に戻します。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定設定を行い、提出日現在において判断したものであり、将来に関しては不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、次のとおり契約を締結しております。

契約会社名

CONTI FASTENERS A.G.

契約内容

タップタイトねじ等の製造、販売の実施権

契約期間

2009年9月1日から1年間、以後1年ごとの自動更新

技術導入料

上記製品販売高の一定率

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、工業用ファスナーおよび工具類、産業用機械および精密機器、計測制御機器および土質調査機器、医療機器分野等の事業活動を展開しております。これらを支援する研究開発活動は、主として当社の研究開発部と事業部門(ファスナー事業部門、産機事業部門、制御システム事業部門、メディカル事業部門)が互いに連携協力し、研究開発テーマの技術内容、開発期間等の視点から、研究開発活動の分業を行い、それぞれの部門の固有技術を生かした技術および製品の研究開発を行っており、当連結会計年度における研究開発費の総額は、737百万円であります。

 セグメントの研究開発活動の状況は、次のとおりであります。

 

(1)ファスナー事業

 サイズの異なるドライバビットを共用できるねじ用十字穴「シェアクロス」や高い軸力性能と防水性能を有しつつ、独自の構造で製品の位置ズレや組立工程時の安定搬送まで考慮した新発想のОリング組込みねじ「アスファWP」を市場投入するとともに、異種接合技術「アクローズ」を応用した金属被覆技術の開発等に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、63百万円であります。

 

(2)産機事業

 テックマンロボット社の協働ロボットTMシリーズに簡単に取り付けられるねじ締めユニット「PD400TM」シリーズや多品種対応と柔軟な設定・メンテナンス工数の削減で生産性向上に寄与するねじ締めロボット「SR580/RC7000」シリーズ、環境負荷の低減とねじ品質の向上を可能にした単軸自動ねじ締め機「FM515VE」の販売を開始するとともに、CEマーキングに対応した高トルク型ドライバや高機能で環境に配慮したねじ締め機等の開発に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、70百万円であります。

 

(3)制御事業

 流量計関連では、電子流量計アイシリーズに遠隔操作を可能にする「Bluetooth通信機能モデル」を追加するとともに、超微少流量計や超音波流量計変換器等の開発に取り組みました。ジオカルテ関連では、土手や橋梁建設の地盤調査向けにハイパワー型機の開発等を行い、システム製品関連では、取込画像を自ら学習し判定を行い、これまでの手法では困難であった部品の検査を可能にする「ミストルAI」の販売を開始しました。また、分析機器関連では、縦型微量窒素・硫黄・塩素分析装置やPFAS測定関連技術やリチウムイオンバッテリー用材料の抵抗率測定技術等の開発に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、380百万円であります。

 

(4)メディカル事業

 生体内で溶解吸収される期間を制御できる「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム」を用いた医療用インプラント製品の開発や医療用照明器「フリーレッド」などの応用開発に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、90百万円であります。

 

(5)全社(共通)

 研究開発部では、精密ねじ用駆動部や医療用ねじ締め機、圧転造機用検査装置の開発、磁気式検査装置の応用開発等に取り組みました。なお、研究開発費については、特定のセグメントに区分できない基礎的研究費が131百万円あります。