当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、コア事業である工業用ファスナー、自動組立機械、計測制御・検査機器など多岐にわたる技術、製品群をファスニング・ソリューションとして融合し、「締結・組立・計測検査における真のグローバルメーカー」となることを長期経営ビジョンに掲げております。
当社グループは、コンプライアンスの徹底、環境保護などの社会的責任を果たしつつ自己革新を進め、適正な利益を確保できる強靭な企業体質の構築と、持続可能な成長の実現により、株主、顧客、取引先、地域社会など、すべてのステークホルダーにとっての価値向上を目指しております。
(2)経営戦略等
当社グループは、2019年に10年後のビジョンとして『世界中で認められ、求められる「モノづくりソリューショングループ」を目指す』を掲げ、その第1ステージとして4ヶ年の中期経営計画「NITTOSEIKO Mission "G" 」をスタートしました。5つの戦略テーマで、事業領域の拡大やグループシナジーの向上を中心とした取り組みを実践してまいりました。
2023年度から、第2ステージとなる3ヶ年の中期経営計画「Mission G-second」を策定しました。Gの意味するGroup's Global Growth を継承し、事業の成長と安定基盤の確立を重点とする4つの成長戦略で、ステークホルダーから高い信頼と、将来が期待される持続可能な企業を目指してまいります。
(3)経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等
当社グループは2023年を初年度とする3ヶ年の中期経営計画において、その最終年度である2025年には、売上高60,000百万円、営業利益5,160百万円、投下資本利益率(ROIC)8%以上及び自己資本当期純利益率(ROE)9%以上の達成を目標に取り組んでまいります。
(4)優先的に対処すべき業務上及び財務上の課題
<会社の経営の基本方針>
経営の基本方針には、私たちの行動や意思決定の根底にある「我らの信条」が宿っています。この「我らの信条」は、企業の存在意義や価値観を明確にし、全ての従業員が共通の目標に向かって進むための道しるべとなっています。
当社グループは、持続可能な成長を追求し、社会の期待に応える企業としての責任を果たすことを基本的な考えとしています。私たちは、「モノづくり」の力を活かし、顧客のニーズを的確に捉え、革新を追求することで、企業価値の向上に努めてまいります。また、ステークホルダーとの信頼関係を大切にし、持続可能な社会の実現に寄与することを使命としています。
<中長期的な会社の経営戦略>
~世界中で認められ、求められる『モノづくりソリューショングループ』を目指す」の概要~
当社グループは、長期経営ビジョン「世界中で認められ、求められる『モノづくりソリューショングループ』を目指す」を掲げ、このビジョンに基づいて中長期的な経営戦略を策定しています。このビジョンは、当社が国際的な競争の中で持続可能な成長を実現し、顧客から信頼される存在であり続けることを目指しています。今後も革新と品質向上を追求し、グローバルな市場での競争力を強化してまいります。
<2024年度の業績状況を踏まえた中期経営計画「Mission G-second」の概要>
2024年度の業績状況は、売上高が前年同期比5.2%増加し、主に制御事業のエネルギー関連向け分析装置や欧米のPFAS規制対応製品、自動車向け部品検査機、そして海外でのファスナー事業のOA機器向け製品が好調でした。営業利益は前期比27.3%の大幅増益を達成し、これらは産機事業のねじ締め機やファスナー製品の価格転嫁、高付加価値の分析装置の出荷が進んだことによるものです。また、海外向けにおいては、欧州拠点での分析装置販売が好調に推移したことに加え、商流見直しにより中国で販売を開始したことも業績に貢献しました。
業績が比較的好調に推移した一方、人財・財務に関する取組みに関しては課題が残りました。これらの戦略は相互に関連し、持続可能な成長を実現するための基盤を形成します。課題を再認識した上で、中期経営計画「Mission G-second」のもと、引き続き以下の4つの成長戦略を進めてまいります。
① 事業拡大戦略
当社の事業拡大戦略は、成長の原動力として位置付けています。ファスナー事業では、自動車関連業界でのCASE関連製品の需要拡大に対応し、同関連製品向け売上目標に対し110%を達成しました。自動車の電動化は益々加速するものと捉えており、軽量化・薄肉化ニーズに応える新製品の開発に注力します。また、成長著しいインド市場において、子会社化した圧造部品メーカーでの事業が本格的に始動し、事業拡大に拍車がかかります。また、産機事業では、国内外の自動化需要に応えるため、高付加価値製品の投入を進め、新たな市場開拓を図ります。
② 環境戦略
当社は、環境問題に積極的に取り組む企業として、CO2排出量の削減に向けた施策を推進しています。太陽光発電装置の設置や製造工程における省エネルギー化の推進、従業員一人ひとりが環境意識を高め、日常業務においてもエコ活動に参加することで、組織全体の意識改革が進んだ結果、CO2削減率は16.4%(2019年比)を達成し、2025年度の目標を上回る結果となりました。この成果は、グループを挙げた取り組みの結果であり、今後のさらなる成長に向けた大きな一歩と捉え、2050年に向けたカーボンニュートラル達成に向けた確かな足跡を残すことができたと考えています。
新たな環境戦略の柱として、溶剤リサイクル装置の共同研究を開始しました。この環境ビジネスが軌道に乗ることで、当社は新たな収益源を確保し、経営基盤の強化を図ることができます。このことにより、お客様もコスト削減や環境規制への対応といったメリットを享受でき、双方にとってWIN-WINの関係を築くことが可能となります。また、リサイクルによって得られる経済的利益や環境保護に寄与することによるブランド価値の向上が期待されます。
環境負荷を軽減するこれらの技術を糧に早期に開発を進め、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化してまいります。
③ 人財戦略
人は企業の最も重要な資源であると考え、働きやすい職場環境の整備に力を入れています。しかし、2024年度において労働生産性、エンゲージメントスコアの指標が目標に達しなかったことは、私たちにとって大きな課題であると認識しています。
労働生産性の未達は、業務の効率化やプロセス改善が不十分であることを示唆しています。このため、業務フローの見直しやITシステムの導入、労働環境の整備を急務として捉え、従業員が最大限に能力を発揮できる環境を構築していきます。
エンゲージメントスコアの低下は、従業員の声を十分に反映する仕組みやキャリア開発の機会が不足していると考えられます。これらを改善するために、定期的なフィードバックやコミュニケーションの機会を増やし、従業員の意見を尊重する企業文化を醸成していきます。
迅速かつ効果的な対策を講じることで、労働生産性とエンゲージメントの向上を図り、持続可能な成長を実現してまいります。人的資本経営を重視し、従業員一人ひとりが活躍できる環境を整えることに注力して、企業全体の競争力を高め、組織全体の活性化に取り組んでまいります。
④ 財務戦略
当社は、「稼ぐ力」を体現する財務戦略を強化しています。ROICを指標に掲げ、資本コスト経営を徹底し、持続的な利益成長を実現します。しかし、2024年度においてROIC、ROE共に目標未達であったことは、私たちにとって大きな課題であると認識しています。
ROICについては、投下資本に対する利益の創出が期待した水準に達しておらず、資本コストを上回るリターンを確保するための戦略が不足している可能性があります。この課題を解決するためには、資本配分の見直しや新規事業の収益性向上、既存事業の効率化を進めることが不可欠です。改善策として、成長が見込まれる分野への戦略的な投資を実施し、資本の最適化を図ってまいります。
ROEについては、自己資本に対する利益の創出が不十分であることを示しています。資本効率の向上へ転嫁するため、より高付加価値の製品やサービスの提供を強化し、収益性の高い事業ポートフォリオの構築を進めることで、自己資本に対するリターンを最大化する施策に取り組みます。
これからも、資本の効率的な運用と高い収益性を追求し、株主還元の充実を図り、企業価値の向上に取り組んでまいります。
<次期(2025年度)の経営方針>
中期経営計画「Mission G-second」の最終年度である次期経営方針は、「価値(勝ち)の連鎖を極めて、未来を拓いていこう」を合言葉に、これまでの「お客さま目線の行動」「稼ぎ力」の集大成として、収益を還元することで未来へつなげてまいります。各戦略の実行を加速させ、市場環境の変化に柔軟に対応しながら、新たなビジネスチャンスを捉え、持続可能な成長を実現するための具体的な施策を展開してまいります。さらなる事業拡大と環境への配慮を両立させ、企業としての社会的責任を果たすことを目指します。
具体的な目標は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ共通 ④指標と目標」に記載のとおりであります。
当社は地域の雇用創出、産業振興を目的として創立し、社是「我らの信条」のもと創業の地・京都府綾部市よりモノづくりを通じて世界中のお客さまの課題の解決に貢献してきました。2019年には当社にとってのマテリアリティ(重要課題)を特定し、それに基づき2023年に開始した中期経営計画「Mission G-second」の戦略テーマを策定しています。会社の持続的な成長および持続可能な社会の実現のため、サステナビリティ委員会を中心とした体制のもとサステナビリティ経営を推進しています。
(1)サステナビリティ共通
① ガバナンス
<サステナビリティ推進体制>
サステナビリティ委員会は、取締役会による監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、社外取締役を含む役員で構成しております。原則年2回開催し、サステナビリティに関わる取組の諮問機関として、関連する方針や目標の進捗管理・施策の審議等の機能を担っております。サステナビリティ委員会の事務局にはサステナビリティ推進室を置き、サステナビリティ委員会の監督のもと、6つの委員会が推進活動ごとに取組計画の立案・実行などの業務を執行しております。
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推進担当会議体 |
役割と取り組み |
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開発委員会 |
お客さま、市場のニーズを先見し、研究・開発に関する方針や計画の立案、管理を行う。 |
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環境管理担当者会議 |
環境課題を把握し、当社が及ぼす影響や当社にできる改善を検討し、方針や計画の立案、管理を行う。 |
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全社厚生委員会 |
地域の活性化、地域産業の発展、福利厚生に関する方針・計画の立案や機会の提供を行う。 |
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全社人権推進委員会 |
ダイバーシティ、次世代育成、女性活躍推進、その他人権に関する方針や計画の立案、制度づくりを行う。 |
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全社教育推進委員会 |
企業価値向上、人財育成につながる教育計画の立案、機会の提供を行う。 |
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広報担当、財務担当 |
求められる財務情報、非財務情報を開示する。企業価値向上につながる情報を推進活動に展開する。 |
<役員報酬>
当社は業績連動型株式報酬制度を導入しており、その中で指標の一つとしてESG目標(CO2削減率)を定めております。中期経営計画「Mission G-second」の目標達成度に応じポイントを付与し、当社が設定する信託を通じて当社株式が付与される業績連動型株式報酬としております。
② 戦略
<マテリアリティ>
持続的な成長および持続可能な社会の実現のため、当社が存在する価値を改めて明確にするべく重要課題を抽出し、4つのマテリアリティ「お客さまとの共有」「環境共生」「地方創生」「人財育成」を特定し、重点的に取り組んでおります。これらマテリアリティに対する取組として、中期経営計画「Mission G-second」において4つの戦略テーマを掲げ、サステナビリティ委員会を中心とした推進担当会議体の活動により事業運営の活性化および中期経営計画の達成を目指します。
<マテリアリティの特定プロセス>
1.社会的な課題の抽出: 環境課題・社会課題の中から、当社の企業活動への影響度が大きいものを抽出。
2.マテリアリティ案の作成:抽出した課題の中から、経営理念の関連性を考慮し社内のプロジェクトでマテリアリティ案を作成(ステークホルダーが求める企業活動についても調査)。
3.マテリアリティの特定: 常勤役員会で議論のうえ、マテリアリティを決議。
<理念体系図>
③ リスク管理
サステナビリティ委員会が監督する各推進活動においては、リスクマネジメント委員会と連携しています。リスクマネジメント委員会が各部門でリスクを抽出し、その発生頻度、影響度を評価したリスクカタログを作成し、サステナビリティ委員会と共有しています。
④ 指標と目標
中期経営計画「Mission G-second」の戦略テーマは当社の4つのマテリアリティに基づいており、2025年までのサステナビリティ目標は中期経営計画の経営目標に組み込んでいます。
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成長戦略 |
指標 |
範囲 |
2024年実績 |
2025年目標 |
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Growth#1 事業拡大戦略 |
売上高 |
連結 |
470億円 |
600億円 |
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営業利益 |
連結 |
33.2億円 |
51.6億円 |
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Growth #2 環境戦略 |
CO2排出量削減率(2019年比) |
連結 |
16.4% |
12% |
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廃棄量削減率(2019年比) |
連結 |
30.0% |
5% |
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Growth #3 人財戦略 |
労働生産性増加率(2022年比) |
連結 |
3.8% |
24% |
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エンゲージメント |
連結 |
3.6p |
3.8p以上 |
|
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Growth #4 財務戦略 |
ROIC |
連結 |
6.7% |
8%以上 |
|
ROE |
連結 |
6.6% |
9%以上 |
(2)気候変動
当社は、社是「我らの信条」およびそれに宿る精神を示した「行動規範」に基づき行動し、持続可能な社会の実現に向けて地域や地球環境の課題に対して積極的に取り組みます。
あらゆる業界のモノづくりに欠かせない「産業の塩」たる締結部品、締結技術を扱う企業として、環境に対する責任は大きいですが、それは同時に良い影響も大きく与えるチャンスがあると捉えています。当社の活動すべてが、社会やお客さまの環境課題と当社のモノづくりの環境課題の双方の解決につながる企業づくりに取り組んでいます。
① ガバナンス
当社はサステナビリティ委員会の下部に環境管理担当者会議を置き、気候変動を含む環境全般に関する業務執行をしています。環境管理担当者会議は年2回開催し、方針・目標の立案や具体的施策の検討、ISO14001の管理体制に基づく内部監査の報告等を行っています。環境管理担当者会議での協議内容は最終的には常勤役員会で決定し、決定した内容はサステナビリティ委員会および取締役会で報告しています。
<環境マネジメント体制>
② 戦略
気候変動に関する戦略については、年1回各部署で低炭素経済への移行リスク、気候変動による物理的リスク及び気候変動緩和策・適応策による経営改革の機会を抽出し、環境管理担当者会議がそれらをステークホルダーにとっての重要度、会社にとっての影響度の両面で評価しています。その上で、中期経営計画「Mission G-second」の「環境戦略」に気候変動に関する目標「CO2削減」「廃棄量の削減」「お客さまへのESG支援」を設定し、施策を展開しています。
<気候変動関連のリスクと機会>
③ リスク管理
当社はISO14001認証を取得しており、その環境マネジメント体制のもと、環境管理担当者会議を中心に気候変動関連を含む環境リスクを特定し、各部署が目標に沿った取組を進めています。各部署の進捗管理は社内指標NPIを活用することで進捗状況を可視化し、事業における環境への取組の推進と管理体制の強化を図っています。サステナビリティ委員会で検証した気候関連リスクはリスクマネジメント委員会と連携し評価、管理しています。
④ 指標と目標
2050年のカーボンニュートラルを見据え、Scope1、2におけるCO2の排出量を2030年には30%削減(2019年比)することを目指します。中期経営計画「Mission G-second」では同排出量を2025年に12%削減(2019年比)することを目標に掲げ、施策を実行していきます。
■主な実施予定施策
中期経営計画期間においては主に「再生可能エネルギーの導入」(太陽光発電設置、再生可能エネルギー由来の電力の購入)によって、CO2削減を図ります。また、特にCO2排出量の大きいファスナー事業においては、新工場建設による工程の見直しや自社の生産技術を活用した生産工程の見える化、改善を図り、段階的に生産エネルギーの削減を行います。
(3)人的資本・多様性
日東精工は人を「財」と考え、誰もがいきいきと働ける環境をつくることがマテリアリティ(重要課題)の一つであると考えています。社是「我らの信条」に描かれる理想の従業員像「健康・品性・誠実・知識と技術・品質・改善・明るい職場・貢献」を常に体現しながら、長期ビジョン、中期経営計画目標の達成に向けて取り組んでいきます。
① 戦略
中期経営計画「Mission G-second」の「人財戦略」に「労働生産性:従業員の付加価値創造・生産性向上・企業価値向上につながる能力」、「エンゲージメント:従業員の自発性、仕事へのやりがい」を掲げ、それぞれ2025年までの目標数値を設定しています。ベクトルとなる指標を明確にすることで、一つひとつ施策の方向性を揃えるとともに、評価を定量化しPDCAを実行しています。具体的な施策は、4つの側面(a人財育成、b多様性、c健康安全、d労働慣行)から進めています。それぞれの側面でも今後指標を設定し、効果的な施策実施につなげていきます。
a.人財育成
<人財育成方針>
① 基本方針
「我らの信条」と中期経営計画「Mission G-second」を遂行、達成できる人財を計画的に育成する。一人ひとりの能力を最大化し、エンゲージメントを向上することで強い組織を作り出す。事業戦略や組織目標の達成に貢献する知識とスキルを身に付けることで個々人の成長を促進する。
② 重点施策
施策1.自ら学び、教えあう風土を醸成する
施策2.次世代経営者を育成する
施策3.イノベーションリーダーを育成する
施策4.業務効率性、労働生産性を向上する
施策5.キャリアオーナーシップを推進する
<教育体系>
b.多様性
一人ひとりが尊重され、働きやすい環境が確保されることは、当たり前のことです。その当たり前のことが当たり前にできてはじめて、労働生産性やエンゲージメントを向上できると考えています。多様で個性豊かな人材が集まることで生まれる創造性を、日東精工の武器にできるよう取り組んでいきます。
女性活躍推進においては、女性管理職の育成、女性のキャリアアップのため、キャリアコンサルタントの資格を持つ女性取締役による女性社員へのエンカレッジ面談、女性リーダー育成研修、綾部工業研修所や次世代若手技術者プログラムへの女性技術者派遣などに取り組み、女性のキャリア向上を目指します。
c.健康安全
当社は社是に「健康を増進し、よい人づくりをすること」を掲げており、中期経営計画「Mission G-second」の「人財戦略」にも「健康経営」を盛り込み、従業員が活き活きと働くことを支援し生産性の向上・企業価値の向上を目指しています。
具体的な取組として、3つの領域「①生活習慣病などの疾病発生予防・重篤化予防」「②メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の予防」「③労働時間の適正化、ワークライフバランスの確保」を重点課題に設定し、7つの重点目標を掲げた「Nicotto7(にこっとセブン)」に取り組んでいます。7つの重点目標の指標を設定し毎年計測するとともに、従業員に目標カードを配布し意識の向上に努めています。
<Nicotto7(にこっとセブン)>
<健康経営推進体制>
d.労働慣行
労使協調を目的とし、定期的に協議会を開催しています。各事業(本)部の労使代表で協議する事業部会、役員と労働組合の代表が集まる事務局会をそれぞれ月に1回実施。売上、利益の進捗や人の問題まで話し合いを行います。また労働組合の中央執行委員以上と、会社の各事業本部の代表、役員以上が出席する経営協議会を四半期に1回行い、四半期ごとの経営数字を労使で共有し、目標達成に向けて協議をしています。このように頻繁に情報共有、問題点の協議を行う場を持ち、労使のベクトルを合わせています。
また、有給休暇の計画付与の中で連続5日間の取得が可能な制度を設けており、仕事以外の時間を充実させ心理的な充足感を高めることによるエンゲージメント向上を目指しています。
② 指標と目標
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戦略 |
指標 |
集計期間 |
範囲 |
実績 |
目標 |
||
|
2023年 |
2024年 |
2024年 |
|
||||
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人財育成 |
労働生産性向上 |
1~12月 |
単体 |
18,552円UP (月/人) |
10,567円UP (月/人) |
- |
- |
|
多様性 |
女性管理職比率 (課長級以上) |
12月末 時点 |
単体 |
6.5% |
|
6.0% |
|
|
(注1) |
12月末 時点 |
単体 |
2.70% |
|
2.7% |
|
|
|
(②:①+育児目的休暇の取得割合)(注2) |
1~12月 |
単体 |
①27.3% (②72.7%) |
① (②100.0%) |
①30% |
① |
|
|
健康安全 |
|
4月調査 |
単体 |
39日 |
|
38日以下 |
|
|
総合健康リスク (注4) |
4月調査 |
単体 |
89 |
89 |
88以下 |
- |
|
|
労働慣行 |
有給休暇の 平均取得日数 |
前年4月~当年3月 |
単体 |
17日 |
|
12日 |
|
※人的資本全体の指標と目標は「
※男女の賃金差異は「従業員の状況」に記載しております。
(注)1 特例子会社の日東精工SWIMMY株式会社を含む雇用率です。
(注)2 ①は育児・介護休業法に基づく「育児休業等の取得割合」、②は同法に基づく「育児休業等+育児目的休暇の取得割合」であり、②は当社の定める「くるみん休暇」(配偶者の出産時に取得可能な休暇制度)の取得人数を含みます。社内の目標としては①の30%を目標数値に定め、取得率向上を目指しています。
(注)3 欠勤にはいたっていないが健康問題が理由で生産性が低下している状態が及ぼす労働力への影響度を損失日数として表したものです。
(注)4 ストレスチェックから得られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」/「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の4尺度を用いて算出される指標で、職場の環境が従業員の健康に影響を与えるリスクを示します。全国平均の値を100とし、100より低いほど良好な結果となります。
(4)人権尊重
当社はグローバルに事業を展開しており、自社だけでなくサプライチェーンも含めた人権尊重の重要性を認識しています。当社はこれまでより「行動規範」において人権尊重について謳い従業員教育を実施してきましたが、人権尊重の具体的な内容を明確にし、その範囲を外部ステークホルダーにも広げるため、2024年1月1日に「日東精工グループ人権方針」を制定しました。
また、取引先に対しては、人権を含めた当社のサステナビリティ経営の考え方をご理解いただくため、同日付で「お取引先さま向け 日東精工グループサステナブル調達ガイドライン」も制定し、取引先に対し順次周知を進めています。2025年1月には主要取引先に対しCSR調査を実施し、調査の結果課題のある項目については取引先との対話を通じて改善を促すことで、サプライチェーン全体で人権を含むESG課題への対応を進めていきます。
救済措置については、グループ内でハラスメントをはじめとする人権侵害の相談窓口の認知度を高めるための取組を推進しており、外部に向けては自社ウェブサイトに取引先向けの相談窓口を設けることで、実際に人権侵害が起こった場合に対応できる体制を整えています。
<人権推進体制>
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部会 |
役割と取り組み |
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人権推進統括部会 |
・人権推進の全体統括 ・人権方針の策定・見直し、人権デューデリジェンスの実施、救済窓口の整備 ・人権教育の推進 |
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ダイバーシティ推進部会 |
・ダイバーシティに関する研究分析、推進計画策定および取組の実行 |
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健康経営推進部会 |
・健康経営推進に関する研究分析、推進計画策定および取組の実行 |
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サプライチェーン部会 |
・サプライチェーンの人権尊重への理解促進に関する計画策定および取組の実行 |
<人権デューデリジェンスの取り組みプロセス>
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済状況等
当社グループの製品に対する需要は、事業を展開している国或いは地域の経済状況と併せて、顧客である家電業界、精密機器業界、自動車関連業界、住宅関連業界等の業況・生産動向の影響を受けています。各販売地域での景気後退或いは主要顧客の需要減少や海外シフトの進行が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、事業環境の変化に左右されない収益基盤の構築を目指しております。
(2)販売価格の下落
当社グループは、国内外の市場において厳しい競争に晒され、常に販売価格の下落圧力を受けています。競争激化による販売価格の更なる下落は、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、価格低下に対して、高付加価値製品の開発による差別化、コスト削減等により利益の確保に努めております。
(3)部材調達価格の上昇
当社グループの生産活動には、原材料、部品等の部材の時宜を得た調達が必要不可欠であります。部材の供給不足、調達価格の高騰は、当社グループの生産高のみならず利益率や価格競争力を低下させ、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、部品の共通化や複数購買化を進め、コストダウンに努めるとともに、吸収できない市況価格の変動については、競合他社の動向を踏まえ、適切な売価への反映を行っております。
(4)製品の品質と責任
当社グループは、品質第一をモノづくりの基本とし、厳格な品質管理体制を構築しています。しかしながら、万一、当社グループの製品・サービスに欠陥等の問題が生じた場合には、当該問題から生じた損害について当社グループが責任を負う可能性があるとともに、当社グループの信頼性や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、ISO9001やIATF16949といった外部認証を取得し、開発・設計から生産に至るすべての段階において品質を造り込み、優れた製品・サービスを安定的に供給することができる体制の確立に取り組むとともに、調達先の品質管理についても徹底しております。
(5)海外事業活動と為替変動
当社グループの海外事業は、アジアを中心に展開しており、事業展開をしている各国の文化、宗教、商慣習、社会資本の整備状況等の影響を受けるとともに、経済情勢、政治情勢および治安状態の悪化が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような状況に対処するため、定期的に子会社との間で情報交換を行い、各社の経営状況の他、周辺環境の変化等についても積極的に情報の共有を図り、政情不安等の兆候の早期把握に努めております。
また、為替変動が、当社グループの外貨建取引から発生する資産および負債、売上高等の円貨換算額が当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、ドル、タイバーツ等の主要通貨の変動の影響を最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等を行っております。
(6)知的財産権
当社は、多数の知的財産権を保有しており、グループ各社において有効活用しておりますが、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性があり、知的財産権が侵害されるリスクがあります。また、知的財産権に関する訴訟において当社グループが当事者となった場合、結果として損害賠償金等の支払が発生する可能性があり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、知的財産部門が、特許や登録商標等の出願や維持業務を行うとともに、係争への対応に備えることで損失の最小化に努めております。
(7)法的規制等
当社グループは、事業を展開している国或いは地域において、事業・投資の許可、貿易・関税、知的財産権等に関する様々な規制の適用を受けています。また、当社グループの事業活動は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等の環境汚染の防止、地球温暖化物質、有害物質の使用削減および廃棄物処理等に係る環境関連法令、労働安全衛生関連法令に従っております。
当社グループが、これらの規制を遵守できなかった場合、事業活動が制限されるとともに、これらに係る費用や補償が当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、効率的で健全な経営にはコンプライアンスが不可欠であると認識し、企業活動の基本指針として制定した「企業倫理綱領」に基づいた行動実践に努めております。また、企業倫理に反する行為やグループのブランド価値を著しく損ねる行為を予防し早期発見・是正するために、内部通報窓口を設けております。
さらに環境保全への取り組みを企業経営の最優先事項の一つとして位置づけ、主要な工場においては、環境管理や監視体制の強化、産業廃棄物管理の徹底のため、ISO14001の認証を取得して問題発生の抑制に努めております。
(8)有利子負債
当社グループは、金融機関からの借入により運転資金を調達しております。急激かつ大幅な金利上昇等の金融環境の悪化が、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような状況に対処するため、当社グループは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ内の余剰資金を最優先に活用することで、有利子負債の圧縮に努め財務体質の強化を図っております。
(9)投資有価証券の減損処理
当社グループは、投資有価証券を保有していますが、そのうち市場価格のない株式等以外については、時価が著しく下落し、かつ回復する見込みがないと判定した場合に、市場価格のない株式等については、その実質価額が取得価額に比べ著しく下落し、かつ回復する見込みがないと判定した場合には、減損処理を行うこととなり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
このような状況に対処するため、保有株式の有効性評価を定期的に行い、取締役会にて必要可否を判断し、不要と判断された株式の速やかな処分を行うこととしております。
(10)固定資産の減損会計適用
当社グループは、固定資産を保有していますが、固定資産の減損に係る会計基準の対象となる資産又は資産グループについて減損損失を認識すべきであると判定した場合には、当該資産又は資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額することとなり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)M&A
当社グループは、事業の拡大を図るために、M&Aを重要な経営戦略の一つとして積極的に活用しております。M&Aにあたっては、対象企業の財務・税務・法務等について事前にデューデリジェンスを実施し、リスクを吟味し収益力を分析したうえで決定しておりますが、対象企業における偶発債務の発生や、当初の事業計画との乖離等により、想定したシナジーや事業拡大の成果が得られなかった場合は、のれんの減損損失が発生する可能性があります。
このような状況に対処するため、当社グループは、買収先企業については、取締役会および経営会議等で定期的にモニタリングし、監督機能を強化することにより、リスクの低減に努めております。
(12)退職給付債務
当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されています。しかし、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件が変更された場合、または年金資産の運用利回りが低下した場合、その影響は累積され将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。一層の割引率の低下や運用利回りの悪化などが起こった場合、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)自然災害、戦争、テロ等
当社グループは日本、アジア、北米および欧州に製造、販売等の拠点を設け事業を展開しています。
これらの国或いは地域において、地震、火災、台風、洪水、戦争、テロ行為、感染症等が発生した場合、当社グループの製造ライン・情報システムの機能マヒやサプライチェーンの混乱に伴い、生産・出荷が停止し、業績および財政状態に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、防災体制の構築と事業継続能力の強化をはかるため、社内防災組織を編成し、訓練等を実施しており、耐震対策等の取り組みも行っております。また、重要な事業を継続あるいは早期復旧を果たし影響を最小限にするため、事業継続計画(BCP)の整備などによる対策を講じております。
(14)気候変動
当社グループは、気候変動の重要性を認識しており、気候変動の移行リスク(政策・法規制リスク、市場リスク、社会リスク)と物理的リスク(短期的リスク、長期的リスク)は当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
移行リスクのうち、政策・法規制リスクとしては、炭素税の賦課やサーキュラーエコノミーに伴う法規制などが挙げられます。また、市場リスクとしては、原材料コストの上昇およびエネルギー調整コストの増加、社会リスクとしては、マーケットの気候変動への対応要求事項の増加が想定されます。
物理的リスクのうち、短期的リスクとしては、自然災害の激甚化により、生産現場や生産設備、物流インフラが甚大な被害を受けた場合、生産や出荷が長期間にわたり停止する可能性があります。また、長期的リスクとしては、夏季の気温上昇に伴う電力コストの増加、平均気温上昇、気象パターンの変化による労働環境の悪化などが挙げられます。
(15)情報セキュリティについて
当社グループは事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報および機密情報、また、当社グループの個人情報や機密情報を有しています。これらの情報に対するシステムのセキュリティ対策および監視体制ならびにリスクマネジメント体制の強化を推進しております。しかしながら、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの侵入等により、万一これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用が発生し、業績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、年々多様化かつ巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威への対策として、情報システム部門が中心となり、情報セキュリティレベルを向上するための取り組みを進めております。サイバーセキュリティの脅威に対する技術的な対策に加え、入社時および定期的に個人情報・機密情報の取扱いに関する研修を行う等、従業員の情報セキュリティに対する意識レベルの向上に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、米国の大統領選挙による先行き不透明感が一時強まったものの、米国を中心に緩やかな回復基調となりました。一方、ウクライナ情勢の長期化をはじめとした地政学的リスクによる資源価格の高騰、中国における不動産市場の停滞などから、一部の地域や業界において景気回復に鈍化が見られました。わが国においては、政府の景気刺激策により個人消費が好調を維持する形で緩やかに伸長しました。一方で、欧州・中国の消費低迷や米国の高金利政策の影響で輸出が鈍化するなど外需の停滞や物価上昇が回復抑制の要因となりました。
このような経営環境において、長期経営ビジョン“世界中で認められ、求められる「モノづくりソリューショングループ」を目指す”の第2ステージとして、持続可能な成長重視の4つの戦略(事業拡大戦略・環境戦略・人財戦略・財務戦略)を掲げた中期経営計画「Mission G-second(2023年~2025年)」のもと、有機溶剤リサイクル分野への進出を見据えたイーセップ株式会社との共同開発や顧客ニーズに応じた環境対応製品の市場投入を推進しました。また、インドの冷間圧造部品メーカーの子会社化の決定や欧州での展示会出展、グローバルサイトの開設など、新たな市場の開拓に努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ22億6千万円増加し、556億4百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ7千1百万円増加し、170億1千2百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ21億8千8百万円増加し、385億9千1百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は470億6千9百万円(前期比5.2%増)、営業利益は33億2千6百万円(前期比27.3%増)、経常利益は35億7千3百万円(前期比26.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は21億9千9百万円(前期比26.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
<ファスナー事業>
当事業につきましては、主な需要先である自動車関連業界においては、型式認証問題に起因した生産停止による影響を受けつつもCASE関連製品の需要拡大により堅調に推移しました。海外は、欧州・中国における消費の低迷による需要の減少がある一方、東南アジアで電機・電子部品やIT・情報機器の分野において需要が高まり、売上増加の一因となりました。一方でエネルギー価格や原材料価格の高騰は、生産コストの増加を生み、収益を減少させる要因となっています。
このような状況のもと、需要が拡大しているCASE関連製品や各種電動車の軽量化や省スペース化に寄与するクリンチングスタッドボルト「ジョイスタッド」や車載バッテリー端子に採用された「アクローズ」についても堅調に推移し、電子部品の増加に伴い締結粉飛散防止を目的とした「CPグリップ」も売上増加に貢献しました。また材料費や賃金などの上昇に対するコスト増加分は価格転嫁を徐々に進めるとともに、さらに材料費や加工費の低減、工場の集約化による消費燃料・電力料の削減など、利益率向上に向けた取り組みを進めました。
この結果、売上高は336億6千4百万円(前期比2.5%増)、営業利益は16億3千6百万円(前期比0.7%増)となりました。
<産機事業>
当事業につきましては、米国の需要の先行き不透明感や高金利政策の影響による設備投資意欲の低下の影響もあった一方で、国内で円安を背景とした輸出向け製品の需要が高まり売上増加に繋がりました。また労働力不足を背景とした自動化需要が高まり、電機・電子、エネルギー関連の分野が堅調に推移しました。さらに価格転嫁や高付加価値製品群受託の影響もあり、利益率の増進に繋がりました。
このような状況のもと、「協働ロボット用ねじ締めユニット:PD400シリーズ」のアップデートを行い市場拡大に繋がるモノづくりを推進したほか、「NXドライバT3シリーズ」に低トルクモデルを追加するなど省人・省力化をはじめとする顧客ニーズに応じた製品展開を図りました。また自動車業界の動向に対応したプロジェクトの発足など既存取引業界へのさらなる拡販に加え、新たな業界への参入による事業領域の拡大など継続して取り組みを進めました。
この結果、売上高は66億4千2百万円(前期比11.5%増)、営業利益は11億4千1百万円(前期比38.9%増)となりました。
<制御事業>
当事業につきましては、戸建着工件数の減少や建築資材の高騰による住宅・建築業界の需要回復の遅れに伴い地盤調査機「ジオカルテ」が低調となりましたが、化学や食品分野に対する流量計が堅調に推移したことに加え、自動車向けシステム製品および環境分野での分析装置が増進しました。特に欧州のPFAS規制に対応する「自動試料燃焼装置 AOF/AQF-5000H」の受注が業績に大きく貢献しました。
このような状況のもと、造船業界のカーボンニュートラルに伴う新燃料に対応する質量流量計の安定供給や検査の省人化に寄与するシステム製品の受注拡大に向けて取り組みを進めました。分析装置においても引き続き優位性を訴求し安定供給を目指すとともに、欧州以外の地域においても需要の掘り起こしを行い増販に向けた取り組みを進めました。
この結果、売上高は67億4千3百万円(前期比14.0%増)、営業利益は6億6千9百万円(前期比140.4%増)となりました。
<メディカル事業>
当事業につきましては、ターゲット市場である医療業界において、高齢化社会に向け、さまざまな仕組みの改革が進められました。診療報酬改定では、医療機関への報酬の見直しが行われ、医療の質の向上や効率化、医療従事者の働き方改革などの施策が講じられました。
このような状況のもと、医療従事者や患者の負担軽減に繋がる「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム材料」の米国特許を取得しました。また早期製品化に向け、一貫製造設備の整備並びに非臨床試験に向けた試料の製作や性能試験に加え、大学病院と共同研究契約を継続し、手技確立のための動物実験を実施しております。この他、医療機器の製造販売業許可による新たな医療機器の開発や製造受託に関しても取り組みを進めました。
この結果、売上高は1千9百万円(前期比15.2%増)、営業損失は1億2千万円(前期は営業損失1億1千2百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ15億7千7百万円増加し、96億4百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、37億7百万円の収入(前期は31億5千1百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益34億4千2百万円に加え、減価償却費14億2百万円や棚卸資産の減少2億4百万円などによる資金の増加があった一方、法人税等の支払額8億5千5百万円、売上債権の増加3億3千9百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、8億9千9百万円の支出(前期は11億8千7百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入2億8百万円などによる資金の増加があった一方、有形固定資産の取得による支出9億3千7百万円や定期預金の預入による支出2億8千7百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、14億2千6百万円の支出(前期は20億7千4百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払6億8千9百万円に加え、借入金の返済3億7千2百万円や自己株式の取得による支出2億5千万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(注)「(a)生産実績」及び「(b)受注実績」における金額は販売価格によっております。
(a)生産実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
|
ファスナー |
26,234,363 |
99.3 |
|
産機 |
5,548,911 |
99.1 |
|
制御 |
7,884,106 |
116.7 |
|
メディカル |
11,173 |
97.6 |
|
合計 |
39,678,553 |
102.3 |
(b)受注実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|||
|
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
|
ファスナー |
34,292,279 |
104.7 |
4,531,387 |
116.1 |
|
産機 |
7,173,732 |
115.1 |
2,434,284 |
127.9 |
|
制御 |
6,054,846 |
99.3 |
1,217,705 |
63.9 |
|
メディカル |
30,960 |
181.7 |
11,200 |
- |
|
合計 |
47,551,818 |
105.4 |
8,194,577 |
106.2 |
(C)販売実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
|
ファスナー |
33,664,099 |
102.5 |
|
産機 |
6,642,724 |
111.5 |
|
制御 |
6,743,363 |
114.0 |
|
メディカル |
19,760 |
115.2 |
|
合計 |
47,069,948 |
105.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、現金及び預金が17億3千万円、電子記録債権が11億2千万円増加した一方で、受取手形及び売掛金が5億9千6百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ22億6千万円増加し、556億4百万円(前期比4.2%増)となりました。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、電子記録債務が3億6千3百万円増加した一方で、短期借入金が2億4千9百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ7千1百万円増加し、170億1千2百万円(前期比0.4%増)となりました。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金の増加13億9千3百万円や為替換算調整勘定が4億3千9百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ21億8千8百万円増加し、385億9千1百万円(前期比6.0%増)となりました。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、次のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、制御事業のエネルギー関連・環境分野向けの分析装置や自動車業界向け部品検査機、OA機器向けのファスナー製品が好調に推移するとともに、産機事業のねじ締め機の価格転嫁が進んだことにより、470億6千9百万円(前期比5.2%増)と過去最高額を計上しました。
(営業利益)
資源・原材料価格の高騰や賃金の上昇など生産コストは増加した一方、産機事業のねじ締め機の価格転嫁が進んだことや制御事業で高付加価値の分析装置の出荷が増加したことにより、33億2千6百万円(前期比27.3%増)となりました。
(経常利益)
受取賃貸料8千4百万円や円安の進展による為替差益6千9百万円の計上などにより、35億7千3百万円(前期比26.0%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
固定資産売却損6千5百万円、投資有価証券評価損3千1百万円および関係会社株式売却損3千万円計上したことなどにより、21億9千9百万円(前期比26.8%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
a.資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料および部品の購入費や製造経費のほか、販売費および一般管理費等であります。また、設備投資需要としては建物や機械装置等の生産設備の投資等があります。
b.財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することにしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備など長期資金につきましては、長期借入金で調達しております。前連結会計年度より、グループ会社との間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ各社における余剰資金の有効活用に努めております。
当連結会計年度末において、取引銀行1行と10億円の貸出コミットメントライン契約(借入実行残高10億円、借入未実行残高0円)を、また、取引銀行12行との間で合計62億7千5百万円の当座貸越契約(借入実行残高2億2百万円、借入未実行残高60億7千2百万円)を締結しております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
2024年2月13日に公表いたしました当連結会計年度の当初業績予想に対しては、売上高は2.3%減、営業利益は0.8%増、営業利益率は7.1%(業績予想は6.8%)となりました。
今後も、ファスナー事業では、自動車関連業界でのCASE関連製品の需要拡大に対応した新製品の開発に注力するとともに、成長著しいインド市場において事業を本格的に始動させ、事業拡大につなげてまいります。また、産機事業では、国内外の自動化需要に応えるため、高付加価値製品の投入を進め、新たな市場開拓を図ります。
さらに、付加価値を生み出す源泉である「稼ぐ力」を強化するために財務戦略では、投資効果の見える化を進め、投資判断や資産管理を徹底して利益率向上に取り組むと同時に、デジタル技術を活用して業務効率化を推進します。財務の健全性を維持しつつ、投資の効率化を図り、持続可能な成長のための基盤を築き上げます。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定設定を行い、提出日現在において判断したものであり、将来に関しては不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、次のとおり契約を締結しております。
|
契約会社名 |
CONTI FASTENERS A.G. |
|
契約内容 |
タップタイトねじ等の製造、販売の実施権 |
|
契約期間 |
2009年9月1日から1年間、以後1年ごとの自動更新 |
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技術導入料 |
上記製品販売高の一定率 |
また、当社は、2024年2月22日開催の取締役会において、インドのVulcan Forge Private Limitedの株式を取得し、Vulcan Forge Private LimitedおよびVulcan Cold Forge Private Limitedを子会社化することを決議し、同日に株式譲渡契約を締結し、2025年3月13日付で全株式を取得することによって、2社を連結子会社といたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、工業用ファスナーおよび工具類、産業用機械および精密機器、計測制御機器および地盤調査機器、医療機器分野等の事業活動を展開しております。これらを支援する研究開発活動は、主として当社の研究開発部と事業部門(ファスナー事業部門、産機事業部門、制御システム事業部門、メディカル事業部門)が互いに連携協力し、研究開発テーマの技術内容、開発期間等の視点から、研究開発活動の分業を行い、それぞれの部門の固有技術を生かした技術および製品の研究開発を行っており、当連結会計年度における研究開発費の総額は、
セグメントの研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
(1)ファスナー事業
優れた硬化スピードと強力なゆるみ止め効果を発揮する「NCグリップ」を市場投入するとともに、締結部材からの頭部の突出を抑えることで省スペース化を支援するクリンチングスタッドボルト「ジョイスタッド-FH」を開発し、販売を開始しました。当事業に係る研究開発費は、
(2)産機事業
「協働ロボット用ねじ締めユニット:PD400シリーズ」のうち、欧州市場から要望の多いユニバーサルロボット用およびテックマンロボット用の2機種をCEマーキング対応仕様にアップデートするとともに、「高精度・高機能ねじ締めドライバ:NXドライバT3シリーズ」の低トルクモデルを開発し、販売を開始しました。当事業に係る研究開発費は、
(3)制御事業
超微少流量計や通信機能を強化した流量計、セラミック分離膜を用いた溶剤リサイクル装置の開発や、ジオカルテ関連では、SDS試験を主体とした地盤調査研究の取り組みを進めました。また、分析機器関連では、固体・液体の燃焼分解からハロゲンと硫黄の分析を全自動でおこなう自動試料燃焼装置の新モデル「AQF-5000H」を市場投入するとともに、縦型微量窒素・硫黄・塩素分析装置やPFAS測定関連技術やリチウムイオンバッテリー用材料の抵抗率測定技術等の開発に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、
(4)メディカル事業
生体内で溶解吸収される期間を制御できる「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム」を用いた医療用インプラント製品の開発に取り組みました。当事業に係る研究開発費は、
(5)全社(共通)
研究開発部では、精密ねじ用駆動部や分離膜製造装置の開発、磁気式検査装置の応用開発、ねじ締め評価技術や金型耐久度向上の研究等に取り組みました。なお、研究開発費については、特定のセグメントに区分できない基礎的研究費が127百万円あります。