第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)会社の経営方針

 当社グループは、世界トップレベルの高収益企業を築き、社会に貢献し、世界から尊敬を受ける企業を目指します。また、世界トップレベルの環境経営を積極的に進め、CSR・環境先進企業を目指すとともに、持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献します。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、世界でトップレベルの高収益企業となることを経営方針としており、その実現のため、売上高経常利益率15%を達成すべき目標として取組んでまいります。

 

(3)経営環境

当社グループ関連市場におきましては、カメラ関連市場は、経済活動の再開とカメラやレンズの商品展開の拡大により回復しましたが、一部製品で市場在庫の過多による在庫調整があり、販売が減少しました。ドキュメントスキャナー市場は、DXの進展や経済活動の再開による需要の回復により、引き続き拡大傾向にありますが、一部地域における市場在庫の過多による在庫調整があり、販売が減少しました。情報関連市場では、コロナ禍で縮小や延期となっていたシステムへの投資がDXへの取り組み強化・拡大に伴い回復してきており、市場が拡大しています。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略、対処すべき課題

 当社グループを取り巻く事業環境は、コロナ後の新しい社会への対応やサスティナビリティをはじめとする社会課題への関心の高まりなど、大きく変化しております。このような状況において、当社グループを取り巻く環境は引き続き厳しく、予断を許さない情勢が続いています。このような状況下で、当社グループは以下の課題に取り組んでいます

<成長分野への参入とその確立>

 当社グループでは現在、さまざまな成長分野への参入を進めております。宇宙関連分野ではこれまで開発を進めてきた超小型人工衛星だけでなく、小型ロケット打上げサービスについても事業化へ向けて準備を進めております。さらに、当社グループの特長である小回りの利く規模、技術を生かし、医療分野では、血圧計や滅菌器に加え、歯科用ミリングマシンも拡販に努めました。農業分野では、当社で新たに開発した「植物工場用自動生産装置」の販売活動を行っています。また、コンポーネント分野ではグループ会社からモータ事業の移管を受け、事業を拡大しています。このように数多くのスモールビジネス事業の確立を目指すとともに、若手の経営感覚を磨くための早期育成を行い、経営の人的基盤を強化してまいります。

<ESG経営・サスティナビリティへの取り組み推進>

 当社グループでは、これまで長年取り組んできた環境経営への取り組みを基礎として、サスティナビリティカンパニーへの進化を推し進めております。また、コンプライアンスの徹底やコーポレートガバナンスの体制強化、サプライチェーンマネジメント、地球温暖化防止への貢献、人権への配慮や多様な人材の確保と育成などにも積極的に取り組み、昨年1月には日本で初めてSGS社によるESGの体制や活動の認証を取得し、方針やデータの開示拡充などの取り組みを推進しました。そして、世界的に提唱されている2050年カーボンニュートラルの実現を見据えた対応も重要な課題と考えており、2030年にCO2排出量2013年比46%削減、2050年にCO2排出量実質ゼロという目標を掲げて活動しております。引き続き、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する技術や製品の提供・開発を進めるとともに、気候変動対応など多様なリスクへの対応を進めてまいります。

<多様性の確保>

 当社では、女性、外国人などさまざまな職歴を持つキャリア採用を実施し、それぞれの特性や能力を最大限活かすための教育や職場環境の整備などの取り組みを進めてきました。そのうえで役割と成果に応じて、処遇や報酬を決定する「役割給制度」を導入し、性別や学歴、入社年数といった要素に関わらず、仕事の難易度や責任に応じた役割等級によって報酬を決定しております。また、課長代理職以上の女性管理職比率を2030年には30%とすることを目標としています。この目標を達成するため、女性の採用比率が毎年30%超となるよう採用活動を実施しています。この他マネジメント層への登用を目的としたリーダーシップ研修等を実施し、管理職への登用に向けた施策を進めております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループ(当社及びその連結子会社。以下、当該項目では「当社」という。)のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組の詳細については、当社ウェブサイト(https://www.canon-elec.co.jp/csr/#top)をご参照ください。

 

(1)ガバナンス

企業のサステナビリティ向上を重要経営課題とする認識のもと、会長・社長直轄組織としてESG・サスティナビリティ推進委員会を設置し、環境、社会、ガバナンス分野の中長期的な課題とキヤノン電子の取り組みについて議論・検討し、各部門と連携してサステナビリティ活動を推進しています。

当社のガバナンスについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)戦略

当社は、「共生」の企業理念のもと世界の繁栄と幸福のために貢献することを目指し、環境経営を実践してまいりました。「共生」とは、すべての人々が、文化、習慣、言語、民族、地域などあらゆる違いを超えて共に生き、共に働き、互いに尊重し、幸せに暮らせる、そして、自然と調和し、未来の子どもたちにかけがえのない地球環境を引き継ぐ持続可能な社会の実現をめざす考え方です。私たちは、「急ごう、さもないと会社も地球も滅びてしまう」のスローガンのもと世界トップレベルのESG経営を積極的に進め、サステナビリティ先進企業を目指します。そして、ステークホルダーの皆様への活動の公表や対話を深め、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた各種課題解決への貢献と、当社グループの更なる成長に向けて取り組んでまいります。

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、さらなる品質・生産性の向上を図るため、社員一人ひとりを大切にし、互いに尊重し合い、それぞれの能力を最大限活かすことのできる体制と環境づくりに取り組んでいます。社員の専門性や士気を向上させる充実した社内教育制度の整備や公平・公正な人事制度の導入により、多様な経歴を持つ社員が互いに高め合いながら働いています。さらに、健康経営を推進しているほか、福利厚生制度の充実に取り組み、社員一人ひとりが生き生きと働くことができるよう、入社から退職に至るまでの社員の生活をサポートしています。

①人材育成の取り組み

当社では、社員を大切にし、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる体制をつくるとともに、環境についての意識を高め、将来に渡り必要とされるスキルと感性を持った未来志向の人材育成を目指しています。キヤノングループの企業理念である「共生」のもと、社員が互いに尊重し合い、力を発揮することのできる職場づくりに取り組んでいます。その中で、環境経営を実現し、社員のモチベーションと専門性の向上を支援するため、さまざまな教育・研修を行っています。

・各階層や年代ごとの異なる立場や役割ごとの姿勢等を学ぶ階層別全体研修
 ・開発設計、調達、生産部門等の専門性を高める専門別研修
 ・技術者としての基礎知識やすぐれた技能を習得するものづくり研修
 ・次世代経営幹部候補生を対象とした経営人材育成研修
 ・社内技能検定、国家技能検定、TOEIC英語検定やQC(品質管理)検定

 

②健康促進の取り組み

社員の健康は会社の財産ととらえ、健康管理に特に注意をはらい、定期健康診断やストレスチェックなどの法定項目だけでなく、産業医および保健師による個別相談、疫病予防のための階層別指導などの諸施策を講じています。また、受動喫煙防止のための対策として全事業所内での全面禁煙にいち早く取り組むとともに、医療費対策としてキヤノン健康保険組合と協働し、運動習慣定着のためのイベントを定期的に実施するなど、社員とその家族の健康増進活動(コラボヘルス)に積極的に取り組んでいます。

・各事業所での健康管理室の設置
 ・全事業所内での敷地内全面禁煙
 ・生活習慣病予防やメンタルヘルスケア対策の実施
 ・運動習慣定着のためのイベント実施
 ・がん検診の受診促進

 

(4)リスク管理

当社は、当社グループの業務の適正を確保し、企業価値の継続的な向上を図るため、事業遂行に際して直面し得る重大なリスクの管理体制を整備・運用することが極めて重要であると認識しています。
 当社では、取締役会決議に基づき、リスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は代表取締役社長を委員長とし、「財務リスク分科会」「コンプライアンス分科会」「事業リスク分科会」の3つの分科会を置いています。同委員会では、当社グループが事業遂行に際して直面し得る重大なリスクの特定(法令・企業倫理違反、財務報告の誤り、環境問題、品質問題、情報漏えいなど)を含むリスクマネジメント活動の推進に関する諸施策を立案します。法務部門、品質部門、人事部門、経理部門など、事業活動にともなう各種リスクを所管する各管理部門は、それぞれ関連する分科会に所属し、その所管分野について、当社の各部門および当社グループ会社のリスクマネジメント活動を統制・支援しています。当社の各部門および当社グループ会社は、上記体制のもと、リスクマネジメント体制の整備・運用を行い、その活動結果をリスクマネジメント委員会に毎年報告しています。リスクマネジメント委員会は、各分科会および各部門・各社からの報告を受け、リスクマネジメント体制の整備・運用情報を評価し、その評価結果を代表取締役CEOおよび取締役会に報告しています。

 

(5)指標及び目標

①気候変動への対応に関する指標及び目標

当社は、これまでキヤノングループが掲げる企業理念「共生」のもと、「環境経営」を進めてきました。当社が目指すべき持続可能な社会の姿(ビジョン)は「環境保証活動と経済活動が両立する社会」です。このビジョンを実現するために当社では、「脱炭素社会の実現」、「循環型社会の形成」、「有害物質の排除と汚染防止」、「自然共生型社会の実現」の4つの取り組みで、環境課題を解決していくとともに「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献していきます。 当社ではカーボンニュートラルの実現に向けて以下の目標を掲げ、気候変動対策に取り組んでいます。

・2030年までにCO2排出量を2013年基準で46%削減する。
 ・2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする。
 

②人的資本に関する指標及び目標

当社は、学歴や経験にとらわれず能力のある者を積極的に登用し、それにふさわしい処遇を考えていくという実力主義を採用しています。女性、外国人など、さまざまな職歴をもつキャリア採用を実施し、それぞれの特性や能力を最大限活かすための教育や職場環境の整備などの取り組みを進めています。また、役割と成果に応じて、処遇や報酬を決定する「役割給制度」を導入し、性別や学歴、入社年数といった要素に関わらず、仕事の難易度や責任に応じた役割等級によって報酬を決定しています。当社では以下の目標を掲げております。

・2030年までに課長代理職以上の女性管理職比率30%にする。

・2030年までに女性役員比率を30%以上にする。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループ(当社及びその連結子会社。以下、当該項目では「当社」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。当社では、グループ経営上のリスクについて、取締役会が定める「リスクマネジメント基本規程」に基づき設置されるリスクマネジメント委員会による活動において、毎年、当社の経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクの特定を行っており、以下のリスクもリスクマネジメント委員会活動を経て経営層での審議のうえ特定されたものです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 親会社等との関係について

当社は、親会社であるキヤノン株式会社(2023年12月31日現在、当社の議決権の55.2%を所有)を中心とするキヤノングループの一員であります。
 当社の売上高のうち、キヤノン株式会社に対する売上高の構成比は、当連結会計年度において43.9%を占めております。当社は、キヤノングループ以外への販売促進及び新規顧客開拓を積極的に進めておりますが、キヤノン株式会社の販売戦略や生産体制に関する方針の転換等があった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
 キヤノングループ各社との主な取引関係は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」における「関連当事者情報」をご参照下さい。
 また、キヤノングループにおいては、当社の一部製品または一部事業が競合関係にある場合があります。それぞれ得意な業務分野や技術分野を持って事業展開を図っておりますが、今後の製品戦略の変更等によって、競合関係に大きな変化が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
 

(2) 国際政治経済に関連するリスク

当社は、生産及び販売活動の一部を日本国外で行っておりますが、海外における事業活動には主に政治、外交問題または不利な経済状況の発生、急激な為替レートの変動と予期しない政策及び法制度、規制等の変更のリスクがあります。日本、アメリカ、ヨーロッパ及びアジアなどの当社の主要な市場において、景気が後退した場合など、外交問題または不利な経済状況の発生時には、対象製品の需給の大きな変化や個人消費や民間設備投資の減少が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、ロシアウクライナ侵攻により、世界経済の先行きは極めて不透明な状況となっております。当該情勢の悪化・長期化に起因する原材料価格の高止まりやサプライチェーンの混乱などが続く場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
 また、急激な為替レートの変動が、外貨建売上など当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そして、外貨建の取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する為替換算調整勘定も変動する恐れがあります。
 加えて、世界の各国・各地域では政治、行政や法制度整備に係る様々な問題があり、当社が予期しない政策及び法制度、規制等の変更に直面するリスクがあります。
 政治、外交問題または不利な経済状況の発生については、当社は、当社現地法人と日常的な意思疎通を通じて収集した関連情報や定期的なビジネス概況ヒアリングによる関連情報を業績予想に反映しております。また、特定の市場または世界全体で需要の減少が見込まれる場合は、当社は商品の生産、供給体制に応じて生産調整を実施しています。
 急激な為替レートの変動に関しては、当社は当社現地法人を含め、定常的に短期為替予約の為替ヘッジ取引を実施し、直近の為替水準を反映した価格で製品市場に投入するなどの対策を講じております。
 予期しない政策及び法制度、規制等の変更について、当社は特に国際的な環境規制や税制変更に係る対策を強化しております。また、公正競争、腐敗防止、個人情報保護、安全保障貿易管理、環境その他の法規正に関しては、各所管部門による統制の下、遵守を徹底しています。
 上記の対応にもかかわらず、当社が国際的な企業活動を行う際に伴う様々なリスクについて対処していくことができない場合、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 設備投資について

当社では、各生産部門の新製品対応や技術革新、あるいは生産能力の増強のため、毎年、新規または更新のための設備投資が必要であります。2023年12月31日現在、2024年12月期は30億円の設備投資を計画しております。生産設備への投資については、急激な需要変動を前提に慎重を期しており、既存製造設備の活用やグループ内での柔軟な人員配置体制の構築を進めるなど、市場変更の影響を最小限に抑える施策を講じています。
 しかしながら、これらの設備投資の実施により、減価償却費が増加し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、資産価値が下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損損失が発生し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 研究開発投資について

当社は先端技術の研究開発を行うための投資を行っております。当連結会計年度において一般管理費に計上した研究開発費は41億97百万円であり、売上高の4.4%を占めております。
 今後も積極的な研究開発投資を実行していく予定ですが、当該研究開発活動が計画通りに進まない可能性もあります。また、市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を定常的に実施しておりますが、当社が選定した研究開発テーマに基づき開発した新規技術やそれを応用した製品が普及しない場合や、事業環境の変化等により更なる研究開発費の負担が生じた場合には、先行投資した研究開発費の回収が困難になるなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 環境規制・法令遵守・知的財産権について

当社では、「地球環境保全のための活動と実践」という方針のもと、本社所管部門を中心に全ての事業活動において環境を重視した様々な施策を推進し、環境、健康及び安全等に関する様々な法律・規則に従っております。予期せぬ法令違反等が生じた場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、当社は知的財産権(特許権等)の保護について、知的財産専門の組織を設置し、社内の管理体制を強化し、細心の注意を払っておりますが、将来当社が認識していない第三者の所有する知的財産権を侵害した場合、または当社が知的財産権を有する技術に対し第三者から当該権利を侵害された場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 重要な訴訟について

当社は、国内外事業に関連して、訴訟その他法律的手続きの対象となるリスクがあります。当連結会計年度において当社の事業に影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 災害等について

地震等の自然災害や事故、テロをはじめとした当社によるコントロールが不可能な事由によって、当社の生産拠点及び設備等が壊滅的な損害を被る可能性があります。この場合は当社の操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高が低下し、さらに、生産拠点等の修復または代替のために巨額な費用を要することとなる可能性があります。これらのリスクに対し、当社は、会社の営業停止時に迅速な復旧を実現するため、初動対応事項や関係部門の役割分担、緊急時の連絡体制等の整備を行っています。また、当社の営業活動に用いる基幹システムについては、情報システムのダウンに備えてバックアップ体制を整えております。
 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

 ①経営成績

当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで)の世界経済・日本経済は、新型コロナウイルス感染抑制の措置やそれに伴う行動制限が緩和され、コロナ後の新しい社会への対応が進んだことで、需要と供給の両面において堅調に回復しています。半導体をはじめとする電子部品や材料等供給の国際的ひっ迫による厳しい状況が続きましたが、影響は軽減してきています。一方、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクや、米国におけるインフレ抑制のための金利の引上げ、中国経済の減速懸念など、経済の先行き不透明感が残りました。

このような状況の中、当社グループはカメラ用部品やプリンター用部品などの販売が好調に推移し、さらに、前年末よりグループ会社からの移管を進めているモータ製品の販売も堅調でした。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取組み強化・拡大に伴う金融機関向けのシステム開発などの需要が回復し、関連するサービスの拡販に努めました。これらに加えて、電気料金の値上げ、国内での燃料価格や物価の上昇、およびこれらを背景にした給与の引き上げ実施などがコストアップ要因となり、販売価格の見直しも行いました。なお、一部製品では市場在庫の過多による在庫調整があり、販売が減少しました。その結果、当期の連結売上高は963億21百万円(前期比0.2%減)、連結経常利益は89億63百万円(前期比0.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は65億66百万円(前期比5.1%減)となりました。

なお、第3四半期連結会計期間より連結損益計算書には、スペースワン株式会社が連結子会社から持分法適用関連会社に移行した影響が含まれております

当社グループでは目標とする経営指標として売上高経常利益率15%を将来の目標としております。当連結会計年度の売上高経常利益率は、前連結会計年度の9.2%から0.1ポイント増加し、9.3%となりました。今後も目標達成に向け、当社グループの特長である小回りの利く規模、技術を生かしたスモールビジネス事業の確立を目指し、収益力の向上に努めてまいります。

 また、宇宙関連分野におきましては、宇宙関連分野では、打上げから約6年半経過した当社製の超小型人工衛星「CE-SAT-Ⅰ(シーイー・サット・ワン)」と、約3年経過した「CE-SAT-ⅡB(ツービー)」の実証実験を継続しております。姿勢制御の改善を重ね、また、フレームを少しずつ移動しながら撮影して高解像度と広域撮影を両立するなど撮影手法の多様化にも取り組んでおります。また、衛星本体や内製コンポーネント、撮影画像の販売促進も継続しています。さらに、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット試験機2号機へ搭載する当社製超小型人工衛星「CE-SAT-ⅠE(ワンイー)」の準備をJAXAおよび関係当局と連携して進めました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(コンポーネント)

コンポ―ネントセグメントにおきましては、デジタルカメラ関係は、引き続きミラーレスカメラ用シャッターユニットの販売が堅調に推移しましたが、一部のカメラ用部品の減産により、前年同期と比べ売上は減少しました。レーザープリンター・複合機向けのレーザースキャナーユニットは、中国における国産製品の拡大やロシアによるウクライナ侵攻の影響によりレーザープリンターの需要が減少し、前年同期と比べ減収となりました。一方、ベトナム子会社において生産しているプリンター部品は、本体新製品の立ち上げに伴う生産数の増加により増収となりました。

これらの結果、当セグメントの売上高は559億34百万円(前期比1.9%減)、営業利益は92億38百万円(前期比1.7%減)となりました。

 

 

(電子情報機器)

電子情報機器セグメントにおきましては、スキャナー製品関係では、韓国やインド向けの販売が好調でしたが、欧米や中国、日本国内向けの販売が部品の納期遅延による生産調整や需要の減少により前年同期に対して減収となりました。ハンディターミナル関係では、モバイルプリンターの販売は堅調でしたが、ハンディターミナル本体や付属品の販売数が前年同期を下回りました。レーザープリンター関係では、当社が担当しているレーザープリンター本体の生産が前年のコロナ影響による減収から順調に回復したほか、新製品の生産も開始し、売上は増加しました。なお、ドキュメントスキャナーでは、スマートデバイスでの操作など環境に応じて柔軟に使用可能な「DR-S250N」、PCと接続してすぐにスキャンできる「R30」を発売しました。また、前期末に発売した可動式のスポットライトを搭載したワイヤレススピーカー「albos Light & Speaker」は、アルミ削り出しボディのデザイン性など市場から評価されており、欧州・中国でも販売を開始しました。

これらの結果、当セグメントの売上高は284億19百万円(前期比2.5%減)、営業利益は25億32百万円(前期比27.3%減)となりました。

(その他)

その他セグメントにおきましては、情報システム関係では、各企業のITシステムへの投資が回復してきており、情報セキュリティ対策ソフト「SML」においてテレワークや働き方の可視化に向けた分析パッケージの開発、提案を進めました。また、金融機関向けのシステム開発、顧客情報管理システムなどの受注活動を積極的に展開し、売上が増加しました。環境機器関係では、歯科用ミリングマシン「MD-500」「MD-500S」や小型成形機の販売が好調に推移し、前年同期と比べ売上は堅調に推移しました。医療関係では、血圧計は販売が減少しましたが、新製品の滅菌器の販売が伸びました。

これらの結果、当セグメントの売上高は119億68百万円(前期比15.8%増)、3億96百万円の営業損失となりました。

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

生産高

前年同期比(%)

コンポーネント

55,308

99.7

電子情報機器

28,618

97.3

その他

1,683

112.4

合計

85,610

99.1

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

2. 金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

受注高

前年同期比(%)

受注残高

前年同期比(%)

コンポーネント

53,644

91.4

7,634

76.2

電子情報機器

29,071

94.6

6,781

106.9

その他

11,844

110.2

3,982

104.9

合計

94,560

94.4

18,398

91.3

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

販売高

前年同期比(%)

コンポーネント

55,934

98.1

電子情報機器

28,419

97.5

その他

11,968

115.8

合計

96,321

99.8

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

(単位:百万円)

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

割合
(%)

販売高

割合
(%)

キヤノン㈱

47,773

49.5

42,240

43.9

 

 

 ②財政状態

当連結会計年度末の総資産は1,311億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ63億48百万円減少しました。流動資産は882億66百万円となり、6億27百万円減少しました。固定資産は428億78百万円となり57億20百万円減少しました。うち有形固定資産は331億4百万円となり80億30百万円減少しました。

当連結会計年度末の負債は172億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ88億97百万円減少しました。流動負債は155億31百万円となり、47億67百万円減少しました。固定負債は17億68百万円となり、41億30百万円減少しました。

当連結会計年度末の純資産は1,138億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ25億48百万円増加しました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の78.3%から86.7%となりました。

なお、連結貸借対照表には、スペースワン株式会社が連結子会社から持分法適用関連会社に移行した影響が含まれています。

 

 ③キャッシュ・フロー

当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益、減価償却費、持分法による投資損失及び売上債権の減少等により102億円の収入(前期比60億36百万円収入増)となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは新製品投資、生産能力増強等の設備投資等により33億7百万円の支出(前期比21億83百万円支出減)となり、フリーキャッシュ・フローは68億92百万円のプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払等により24億60百万円の支出(前期比41億81百万円支出増)となり、これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は271億83百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億39百万円増加しました。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

 

  ②資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、材料費、人件費、新製品開発に必要な研究開発費及び設備投資資金です。これらの資金需要につきましては、自己資金を充当しております。

 

  ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産、負債の金額及び連結会計年度における収益、費用の金額に影響を与える重要な会計方針及び各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

連結財務諸表等の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

キヤノン株式会社との契約

 当社は、キヤノン株式会社との間に以下の契約を締結しております。

 

契約名

契約内容

契約期間

取引基本契約

請負取引及び売買取引に関する基本契約

1999年11月10日から
2000年11月9日まで
以降1年毎の自動更新

技術研究開発基本契約

共同開発・委託開発に関する基本契約

1981年1月1日から
1981年12月31日まで
以降1年毎の自動更新

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは競争が激化する厳しい市場環境に対応するため、現行事業の更なる拡大と、新規事業の創出を図るべく、新製品開発活動を行っております。

当連結会計年度において、一般管理費に計上している研究開発費は4,197百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動状況は次のとおりであります。

 (1)コンポーネント

デジタルカメラ市場をけん引しているミラーレスカメラは、従来の一眼レフカメラと比べ、小型化、軽量化を実現しやすく、また、静止画の高画質化や動画撮影の高機能化が進んでおります。このような環境下において、当社はセットメーカーのカスタムニーズに的確に応えたシャッターや絞りユニット、光学フィルタを開発し、シェア拡大に取組んで参りました。また、監視カメラ市場では、4K動画撮影などの高解像度対応向けに開発した絞りユニットを採用して頂き、シェア拡大を進めています。コンパクトデジタルカメラ市場では、動画撮影に特化した絞りユニット、光学フィルタの開発を進めてシェア拡大を進めています。

このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は129百万円となりました。

 

 (2)電子情報機器

ドキュメントスキャナーにおいては、現行のスキャナーの機能に加え、新たに標準のブラウザーを利用してスキャンする機能を実装した新製品DR-S250N(A4機 50ppm)の開発を行いました。本新製品は、Webブラウザーを用いてスキャンを行う新機能(CaptureOnTouch Lite WEB)を搭載し、パソコンやスマートフォン・タブレット側にアプリをインストールしなくても使える利点があります。今後さらに需要が増えていくと予想されるネットワーク環境での活用を効率よく進められる製品になります。加えて、上記機種の上位モデルであるD19S(仮称:DR-S350NW)の開発を開始しました。本モデルではカラータッチパネルとWi-Fiを搭載するモデルをベースモデルとし、機能差を設けた派生モデルのリリースを目指しています。これらのラインナップ展開により、売上の最大化を図ります。ソフトウェアに関しては、ドキュメントスキャナーの稼働・設置情報の収集とモニタリング、ソフトウェアのアップデート、ログの収集機能などをネットワークを介して管理する機能を備えた管理ツールをリリースしました。新製品だけでなく既存製品も幅広くサポートを行うことができるソフトウェアで、販売会社からも期待されております。今後も新製品、既存製品共に販売を伸ばせるソフトの開発を実施していきます。2022年開発したDR-M1060II、DR-M140IIとDR-S250NのSuMPO環境ラベルプログラムのCFP(Carbon Footprint of Products)検証を取得し、環境評価システムであるEPEAT (Electronic Product Environmental Assessment Tool) GOLDを取得しました。再生材の使用比率を高めるため、再生樹脂を積極的に採用しました。製品に使用されるプラスチック削減を進めるため、ソフトウェアの配布形態を見直すことで、本年は7製品で同梱されているセットアップディスクを廃止しました。

ハンディターミナルにおいては、OSにWindows 10 IoT Enterpriseを採用した標準モデルGT-50とサーマルプリンターを内蔵したGT-50Pを用意し、既存顧客のリプレイスに加え、新規市場、顧客獲得に注力しています。今後も継続して販売できるよう新規プラットフォームの検討のための研究開発も開始しています。また、ハンディターミナルで培った堅牢性、小型・省電力設計、各種通信制御の技術を活かし、新規分野へ積極的に進出します。第一弾として、マイナンバーカードをはじめとする公的証明書や、磁気とICの双方のキャッシュカード読み取りに対応した個人認証カードリーダーID-MY2をプレスリリースしました。

 

さらに、2022年12月に国内販売を開始したスポットライト型アルミスピーカー「Light & Speaker」ですが、2023年度は海外販売に向けて認証の取得を行い、12月8日に中国、12月11日にヨーロッパで販売を開始しました。ヨーロッパでは発売1週間で予想を上回り完売状態となりました。また、他の海外地域への販売も検討しております。Light & Speakerは、心地よいサウンドと光により日常から切り離されたパーソナルな空間を演出するスポットライト型のワイヤレススピーカーです。円筒形のフォルムと理想的なスピーカー配置により、クリアで豊かな音の響きを360°全方位から体感できます。ボディーはアルミ削り出しで、堅牢性と美しさを演出したデザインとなります。2種類の光色(暖色、白色)で、それぞれ3段階に調光できるライトは、照射角度をフリーストップで調整でき、目的やシーンに合わせた使い方ができます。

このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は803百万円となりました。

 

  (3)その他

小型ロケット「カイロス」による人工衛星の打上げサービスの事業化を目的とする持分法適用関連会社スペースワン株式会社では、ロケット機体の開発を進めているほか、和歌山県串本町で日本初の民間企業が所有するロケット打上げ射場「スペースポート紀伊」を建設し、小型ロケット打上げサービスの事業化を推進中です。

このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は1,025百万円となりました。

 

なお、各セグメントに配分できない基礎研究に係る研究開発費の金額は2,238百万円となりました。

 

また、新規事業の一環として、宇宙関連分野では、打上げから約6年半経過した当社製の超小型人工衛星「CE-SAT-I(シーイー・サット・ワン)」と、同じく約3年経過した「CE-SAT-ⅡB(ツービー)」の実証実験を継続しており、地上や天体などの画像を日々撮影しております。また、衛星本体や内製コンポーネント、撮影画像の販売促進も継続しているほか、姿勢制御の改善を重ね、少しずつ移動しながら撮影して高解像度と広域撮影を両立するなど撮影手法の多様化にも取り組んでおります。さらに、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット2号機へ搭載する当社製超小型人工衛星「CE-SAT-IE(ワンイー)」の準備をJAXAおよび関係当局と連携して進めました。農業分野では、植物工場向けの生産設備や温度・湿度等の管理システム、そして種蒔き、植え替え、収穫といった手作業を自動化した装置の開発に取り組み、これまでの植物の苗を植え替えする移植機に加え、自動で種まきを行う播種機の販売を開始しました。更に移植機については画像認識とAIを組み合わせた自動検査機能を追加したモデルの開発も進み、販売開始の段階となっています。また、栽培規模に合わせた手動機、半自動機、自動機の提案を行い、ニーズに合った商品化を進めています。