文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社グループは、世界トップレベルの高収益企業を築き、社会に貢献し、世界から尊敬を受ける企業を目指します。また、世界トップレベルの環境経営を積極的に進め、CSR・環境先進企業を目指すとともに、持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献します。
当社グループは、世界でトップレベルの高収益企業となることを経営方針としており、その実現のため、売上高経常利益率15%を達成すべき目標として取組んでまいります。
当社グループ関連市場におきましては、カメラ本体の販売がミラーレスカメラを中心に堅調に推移していますが、当社が取扱う一部の部品・ユニットでは在庫調整の影響が残りました。レーザープリンター製品については、アジア圏を中心に需要が増加し、本体の販売が好調に推移しました。ドキュメントスキャナー製品は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やアフターコロナの需要増を受け緩やかな成長が維持されています。また、情報システム関連ではDXへの取組みが引き続き拡大し、金融機関向けのシステム開発等の投資需要が底堅く推移しています。
当社グループを取り巻く事業環境は、コロナ後の新しい社会への対応やサステナビリティをはじめとする社会課題への関心の高まりなど、大きく変化しております。取り巻く環境は引き続き厳しく、予断を許さない情勢が続いています。このような状況下で、当社グループは以下の課題に取り組んでいます。
<成長分野への参入とその確立>
当社グループでは現在、さまざまな成長分野への参入を進めております。宇宙関連分野ではこれまで研究・開発を進め、軌道投入した超小型人工衛星で重ねた実証実験の成果を踏まえて、防衛省との多軌道観測実証衛星の製造・試験の契約を締結する等、事業化へのシフトを着実に進めております。さらに、当社グループの特長である小回りの利く規模、技術を活かし、医療分野の血圧計や滅菌器に加え、環境関連機器としての歯科用ミリングマシン等の拡販も進めています。農業分野では、当社で新たに開発した「植物工場用自動生産装置」の販売活動を行っています。また、コンポーネント分野ではキヤノンの国内グループ会社からモータ事業の移管を受け、事業を拡大しています。このように数多くのスモールビジネス事業の確立を目指すとともに、若手の経営感覚を磨くための早期育成を行い、経営の人的基盤を強化してまいります。
<ESG経営・サステナビリティへの取り組み推進>
当社グループでは、これまで長年取り組んできた環境経営への取り組みを基礎として、サステナビリティカンパニーへの進化を推し進めております。また、コンプライアンスの徹底やコーポレートガバナンスの体制強化、サプライチェーンマネジメント、地球温暖化防止への貢献、人権への配慮や多様な人材の確保と育成などにも積極的に取り組み、2023年1月に日本で初めてSGS社によるESGの体制や活動の認証を取得し、継続したESG経営の質を高める活動を推進するとともに、関連する方針やデータの開示拡充などを行っています。そして、世界的に提唱されている2050年カーボンニュートラルの実現を見据えた対応も重要な課題と考えており、2030年にCO2排出量2013年比46%削減、2050年にCO2排出量実質ゼロの目標を掲げて活動しております。引き続き、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する技術や製品の提供・開発を進めるとともに、気候変動対応など多様なリスクへの対応を進めてまいります。
<人的資本経営の推進>
当社では、人的資本経営の観点から、人的資本の価値を最大化するための取り組みを進めています。女性、外国人などさまざまな経験や職歴・スキルを持つキャリア人材の採用を積極的に推進しています。それぞれの特性や能力を最大限活かすための教育制度や職場環境を整備し、管理職・経営幹部向けの研修プログラムを運用しています。課長代理職以上の女性管理職比率を2030年に30%とすることを目標に、女性の採用比率を毎年30%超とする採用活動を実施しています。処遇や報酬は、性別や学歴、入社年数といった要素に関わらず、役割と成果、仕事の難易度や責任に応じてこれを決定する「役割給制度」を運用しております。また、従業員がより安全かつ健康的に働ける職場づくりのため、労働安全衛生マネジメントシステムを構築し、その国際規格である「ISO45001」の認証を国内全事業所と海外2工場で取得しています。経済産業省健康経営優良法人認定制度の健康経営優良法人に5年連続で選出されており、健康第一主義の考え方に基づく取り組みも進めています。
当社グループ(当社及びその連結子会社。以下、当該項目では「当社」という。)のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組の詳細については、当社ウェブサイト(
企業のサステナビリティ向上を重要経営課題とする認識のもと、社長直轄組織としてESG・サスティナビリティ推進委員会を設置し、環境、社会、ガバナンス分野の中長期的な課題とキヤノン電子の取り組みについて議論・検討し、各部門と連携してサステナビリティ活動を推進しています。
当社のガバナンスについては、「
当社は、「共生」の企業理念のもと世界の繁栄と幸福のために貢献することを目指し、環境経営を実践してまいりました。「共生」とは、すべての人々が、文化、習慣、言語、民族、地域などあらゆる違いを超えて共に生き、共に働き、互いに尊重し、幸せに暮らせる、そして、自然と調和し、未来の子どもたちにかけがえのない地球環境を引き継ぐ持続可能な社会の実現をめざす考え方です。私たちは、「急ごう、さもないと会社も地球も滅びてしまう」のスローガンのもと世界トップレベルのESG経営を積極的に進め、サステナビリティ先進企業を目指します。そして、ステークホルダーの皆様への活動の公表や対話を深め、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた各種課題解決への貢献と、当社グループの更なる成長に向けて取り組んでまいります。
当社は、さらなる品質・生産性の向上を図るため、社員一人ひとりを大切にし、互いに尊重し合い、それぞれの能力を最大限活かすことのできる体制と環境づくりに取り組んでいます。社員の専門性や士気を向上させる充実した社内教育制度の整備や公平・公正な人事制度の導入により、多様な経歴を持つ社員が互いに高め合いながら働いています。さらに、健康経営を推進しているほか、福利厚生制度の充実に取り組み、社員一人ひとりが生き生きと働くことができるよう、入社から退職に至るまでの社員の生活をサポートしています。
①人材育成の取り組み
当社では、社員を大切にし、社員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる体制をつくるとともに、環境についての意識を高め、将来にわたり必要とされるスキルと感性を持った未来志向の人材育成を目指しています。キヤノングループの企業理念である「共生」のもと、社員が互いに尊重し合い、力を発揮することのできる職場づくりに取り組んでいます。その中で、環境経営を実現し、社員のモチベーションと専門性の向上を支援するため、さまざまな教育・研修を行っています。
・各階層や年代ごとの異なる立場や役割ごとの姿勢等を学ぶ階層別全体研修
・開発設計、調達、生産部門等の専門性を高める専門別研修
・技術者としての基礎知識やすぐれた技能を習得するものづくり研修
・次世代経営幹部候補生を対象とした経営人材育成研修
・社内技能検定、国家技能検定、TOEIC英語検定やQC(品質管理)検定
②健康促進の取り組み
社員の健康は会社の重要な財産ととらえ、健康管理に十分な配慮を行っています。定期健康診断やストレスチェックなどの法定項目の実施に加え、産業医および保健師による個別相談、生活習慣病やメンタルヘルス不調の予防のための諸施策を講じています。社員が安全・安心に働ける職場を提供し、キヤノン健康保険組合と協働して社員とその家族の疾病予防と健康増進を推進していくことで、医療費の適正化と社員の生産性の向上を目指しています。
・各事業所での健康管理室の設置
・敷地内全面禁煙及び卒煙を希望する社員に無償で卒煙プログラムの提供
・生活習慣病やメンタルヘルス不調など特定のリスクを持つ社員への個別支援・社員のヘルスリテラシー
向上を目指した健康教育の実施
・睡眠、栄養、運動に着目した全社員向けの健康増進イベントの開催
・がん検診の受診促進のための取り組み
当社は、当社グループの業務の適正を確保し、企業価値の継続的な向上を図るため、事業遂行に際して直面し得る重大なリスクの管理体制を整備・運用することが極めて重要であると認識しています。
当社では、取締役会決議に基づき、リスクマネジメント委員会を設置しています。同委員会は代表取締役社長を委員長とし、「財務リスク分科会」「コンプライアンス分科会」「事業リスク分科会」の3つの分科会を置いています。同委員会では、当社グループが事業遂行に際して直面し得る重大なリスクの特定(法令・企業倫理違反、財務報告の誤り、環境問題、品質問題、情報漏えいなど)をを含むリスクマネジメント体制の整備に関する諸施策を立案します。法務部門、品質部門、人事部門、経理部門など、事業活動にともなう各種リスクを所管する各管理部門は、それぞれ関連する分科会に所属し、その所管分野について、当社の各部門および当社グループ会社のリスクマネジメント活動を統制・支援しています。当社の各部門および当社グループ会社は、上記体制のもと、リスクマネジメント体制の整備・運用を行い、その活動結果をリスクマネジメント委員会に毎年報告しています。リスクマネジメント委員会は、各分科会および各部門・各社からの報告を受け、リスクマネジメント体制の整備・運用情報を評価し、その評価結果を代表取締役CEOおよび取締役会に報告しています。
①気候変動への対応に関する指標及び目標
当社は、これまでキヤノングループが掲げる企業理念「共生」のもと、「環境経営」を進めてきました。当社が目指すべき持続可能な社会の姿(ビジョン)は「環境保証活動と経済活動が両立する社会」です。このビジョンを実現するために当社では、「脱炭素社会の実現」、「循環型社会の形成」、「有害物質の排除と汚染防止」、「自然共生型社会の実現」の4つの取り組みで、環境課題を解決していくとともに「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも貢献していきます。 当社ではカーボンニュートラルの実現に向けて以下の目標を掲げ、気候変動対策に取り組んでいます。
・2030年までにCO2排出量を2013年基準で46%削減する。
・2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする。
②人的資本に関する指標及び目標
当社は、学歴や経験にとらわれず能力のある者を積極的に登用し、それにふさわしい処遇を考えていくという実力主義を採用しています。女性、外国人など、さまざまな職歴をもつキャリア採用を実施し、それぞれの特性や能力を最大限活かすための教育や職場環境の整備などの取り組みを進めています。また、役割と成果に応じて、処遇や報酬を決定する「役割給制度」を導入し、性別や学歴、入社年数といった要素に関わらず、仕事の難易度や責任に応じた役割等級によって報酬を決定しています。当社では以下の目標を掲げております。
・2030年までに課長代理職以上の女性管理職比率30%にする。
当社グループ(当社及びその連結子会社。以下、当該項目では「当社」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。当社では、グループ経営上のリスクについて、取締役会が定める「リスクマネジメント基本規程」に基づき設置されるリスクマネジメント委員会による活動において、毎年、当社の経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクの特定を行っており、以下のリスクもリスクマネジメント委員会活動を経て経営層での審議のうえ特定されたものです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社は、親会社であるキヤノン株式会社(2024年12月31日現在、当社の議決権の55.2%を所有)を中心とするキヤノングループの一員であります。
当社の売上高のうち、キヤノン株式会社に対する売上高の構成比は、当連結会計年度において43.9%を占めております。当社は、キヤノングループ以外への販売促進及び新規顧客開拓を積極的に進めておりますが、キヤノン株式会社の販売戦略や生産体制に関する方針の転換等があった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
キヤノングループ各社との主な取引関係は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」における「関連当事者情報」をご参照下さい。
また、キヤノングループにおいては、当社の一部製品または一部事業が競合関係にある場合があります。それぞれ得意な業務分野や技術分野を持って事業展開を図っておりますが、今後の製品戦略の変更等によって、競合関係に大きな変化が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、生産及び販売活動の一部を日本国外で行っておりますが、海外における事業活動には主に政治、外交問題または不利な経済状況の発生、急激な為替レートの変動と予期しない政策及び法制度、規制等の変更のリスクがあります。日本、アメリカ、ヨーロッパ及びアジアなどの当社の主要な市場において、景気が後退した場合など、外交問題または不利な経済状況の発生時には、対象製品の需給の大きな変化や個人消費や民間設備投資の減少が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、ロシアのウクライナ侵攻により、世界経済の先行きは極めて不透明な状況となっております。当該情勢の悪化・長期化に起因する原材料価格の高止まりやサプライチェーンの混乱などが続く場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、急激な為替レートの変動が、外貨建売上など当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。そして、外貨建の取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する為替換算調整勘定も変動する恐れがあります。
加えて、世界の各国・各地域では政治、行政や法制度整備に係る様々な問題があり、当社が予期しない政策及び法制度、規制等の変更に直面するリスクがあります。
政治、外交問題または不利な経済状況の発生については、当社は、当社現地法人と日常的な意思疎通を通じて収集した関連情報や定期的なビジネス概況ヒアリングによる関連情報を業績予想に反映しております。また、特定の市場または世界全体で需要の減少が見込まれる場合は、当社は商品の生産、供給体制に応じて生産調整を実施しています。
急激な為替レートの変動に関しては、当社は当社現地法人を含め、定常的に短期為替予約の為替ヘッジ取引を実施し、直近の為替水準を反映した価格で製品市場に投入するなどの対策を講じております。
予期しない政策及び法制度、規制等の変更について、当社は特に国際的な環境規制や税制変更に係る対策を強化しております。また、公正競争、腐敗防止、個人情報保護、安全保障貿易管理、環境その他の法規正に関しては、各所管部門による統制の下、遵守を徹底しています。
上記の対応にもかかわらず、当社が国際的な企業活動を行う際に伴う様々なリスクについて対処していくことができない場合、当社のビジネス、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社では、各生産部門の新製品対応や技術革新、あるいは生産能力の増強のため、毎年、新規または更新のための設備投資が必要であります。2024年12月31日現在、2025年12月期は30億円の設備投資を計画しております。生産設備への投資については、急激な需要変動を前提に慎重を期しており、既存製造設備の活用やグループ内での柔軟な人員配置体制の構築を進めるなど、市場変更の影響を最小限に抑える施策を講じています。
しかしながら、これらの設備投資の実施により、減価償却費が増加し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、資産価値が下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損損失が発生し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は先端技術の研究開発を行うための投資を行っております。当連結会計年度において一般管理費に計上した研究開発費は31億26百万円であり、売上高の3.1%を占めております。
今後も積極的な研究開発投資を実行していく予定ですが、当該研究開発活動が計画通りに進まない可能性もあります。また、市場の変化をいち早く捉え、対策を講じるべく、事前の情報収集と分析を定常的に実施しておりますが、当社が選定した研究開発テーマに基づき開発した新規技術やそれを応用した製品が普及しない場合や、事業環境の変化等により更なる研究開発費の負担が生じた場合には、先行投資した研究開発費の回収が困難になるなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、「地球環境保全のための活動と実践」という方針のもと、本社所管部門を中心に全ての事業活動において環境を重視した様々な施策を推進し、環境、健康及び安全等に関する様々な法律・規則に従っております。予期せぬ法令違反等が生じた場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、当社は知的財産権(特許権等)の保護について、知的財産専門の組織を設置し、社内の管理体制を強化し、細心の注意を払っておりますが、将来当社が認識していない第三者の所有する知的財産権を侵害した場合、または当社が知的財産権を有する技術に対し第三者から当該権利を侵害された場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、国内外事業に関連して、訴訟その他法律的手続きの対象となるリスクがあります。当連結会計年度において当社の事業に影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
地震等の自然災害や事故、テロをはじめとした当社によるコントロールが不可能な事由によって、当社の生産拠点及び設備等が壊滅的な損害を被る可能性があります。この場合は当社の操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高が低下し、さらに、生産拠点等の修復または代替のために巨額な費用を要することとなる可能性があります。これらのリスクに対し、当社は、会社の営業停止時に迅速な復旧を実現するため、初動対応事項や関係部門の役割分担、緊急時の連絡体制等の整備を行っています。また、当社の営業活動に用いる基幹システムについては、情報システムのダウンに備えてバックアップ体制を整えております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①経営成績
当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)の世界経済は、コロナ禍で世界的に発生した部品・材料の供給逼迫の解消やインフレの改善が進み、消費は底堅く推移し、回復が進みました。日本においても、個人消費を中心に景気の持ち直しが見られました。一方、中国経済の減速懸念の持続、地政学リスクの拡大、気候変動や自然災害の発生等、先行きは不透明で予断を許さない状況が続きました。
このような状況の中、当社グループでは、カメラ本体の販売がミラーレスカメラを中心に堅調に推移していますが、当社が取扱う一部の部品・ユニットでは在庫調整の影響が残りました。レーザープリンター製品については、アジア圏を中心に需要が増加し、本体の販売が好調に推移しました。ドキュメントスキャナー製品は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やアフターコロナの需要増を受け緩やかな成長が維持されています。また、情報システム関連ではDXへの取組みが引き続き拡大し、金融機関向けのシステム開発等の投資需要が底堅く推移しています。その結果、当期の連結売上高は1,006億56百万円(前期比4.5%増)、連結経常利益は98億77百万円(前期比10.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は76億55百万円(前期比16.6%増)となりました。
なお、前中間連結会計期間にはスペースワン株式会社を連結子会社として含めておりましたが、前第3四半期連結会計期間より持分法適用関連会社に移行いたしました。そのため、当連結会計年度の連結損益計算書には、スペースワン株式会社が持分法適用関連会社へ移行した影響が含まれております。
当社グループでは目標とする経営指標として売上高経常利益率15%を将来の目標としております。当連結会計年度の売上高経常利益率は、前連結会計年度の9.3%から0.5ポイント増加し、9.8%となりました。今後も目標達成に向け、当社グループの特長である小回りの利く規模、技術を生かしたスモールビジネス事業の確立を目指し、収益力の向上に努めてまいります。
また、宇宙関連分野におきましては、2024年2月、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット試験機2号機により、当社製3基目の超小型人工衛星として軌道投入された「CE-SAT-IE(シーイー・サット・ワンイー)」は、初期の性能確認が完了し、打上げから約7年半となる「CE-SAT-I(ワン)」と、約4年となる「CE-SAT-ⅡB(ツービー)」とあわせて、高精細や高感度の静止画・動画情報取得等の実証実験を進めています。姿勢制御の改善を重ね、またフレームを少しずつ移動しながら撮影して高解像度と広域撮影を両立するなど撮影手法の多様化にも取り組んでおります。また、2024年3月には、防衛省と宇宙領域把握能力向上のための実証事業である多軌道観測実証衛星の製造・試験の契約を締結し、現在、その開発等を進めています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(コンポーネント)
コンポ―ネントセグメントにおきましては、デジタルカメラ関係は、引き続き好調なミラーレスカメラの販売状況を受け、シャッターユニットの販売は堅調に推移し、また絞りユニットの新たな受注もありましたが、在庫調整が残る一部のカメラ用部品の減産が影響し、全体としては前期と比べ売上は減少しました。センサー関連事業においては、磁気センサーの生産が国内新紙幣へ対応する金融市場向けおよび自動販売機市場向けの特需で増加し、売上に寄与しました。レーザープリンター・複合機向けのレーザースキャナーユニットは、アジア圏を中心に需要が増加し、新製品の投入等で増産となり、前期と比べ売上が増加しました。ベトナム子会社では、既存のプリンター部品の増産に加え、新規部品の生産も増加し、売上が増加しました。その他、モータ関係は、キヤノンの国内グループ会社からの事業移管が完了しましたが、移管された製品の販売が減少し、前期と比べ売上は減少しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は594億88百万円(前期比6.4%増)、営業利益は96億4百万円(前期比4.0%増)となりました。
(電子情報機器)
電子情報機器セグメントにおきましては、ドキュメントスキャナー関係は、主力販売地域である米国の販売は同国の堅調な経済状況を背景に、Eコマースチャネルで販売している低速機が堅調に推移しましたが、中・高速機の販売が伸びず、同国の販売は前期を下回り、また、東南アジアや韓国の販売も減少しました。一方、欧州・日本・インド・中国等の販売が、政府機関や金融機関向けの商談獲得、市中在庫の解消等により増加し、その結果、全体としては増収となりました。ハンディターミナル関係では、モバイルプリンターや付属品の売上が増加しましたが、ハンディターミナル本体の販売は検針市場の縮小傾向の継続が影響して減少し、全体の売上は前期を下回りました。レーザープリンター関係では、部品逼迫の解消を受けて生産が回復し、A4原稿サイズの本体製品を中心に生産製品が拡大した結果、前期と比べ売上は増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は295億10百万円(前期比3.8%増)、営業利益は18億26百万円(前期比27.9%減)となりました。
なお、当セグメントにおいて、2024年5月発売の「imageFORMULA ScanFront 400II」や2024年9月発売のネットワークスキャナー「imageFORMULA DR-S350NW」は、PCを使用せずにスキャンからデータ送信・保存まで操作可能な仕様で、現在の多様な働き方に適応した製品であると市場から評価され、「imageFORMULA DR-S250N」は2024年10月16日に、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2024年度グッドデザイン賞」を受賞しました。また、可動式のスポットライト搭載の小型ワイヤレススピーカー「albos Light & Speaker」の拡販活動も継続しています。
(その他)
その他セグメントにおきましては、情報システム関係では、各企業のITシステム投資への底堅い需要が継続しており、情報セキュリティ対策ソフト「SML」は、引き続きニーズのあるテレワークや働き方を可視化する分析パッケージの開発、提案を進めました。また、金融機関向けの情報系システムや顧客情報管理システム等の積極的な受注活動を継続し、前期比で売上が増加しました。環境機器関係では、歯科用ミリングマシンにおいて、2024年2月に発売した湿式加工専用の「MD-500W」をシリーズに加えて拡販を強化し、販売台数が増加しました。医療機器関係では、血圧計の販売が減少しましたが、滅菌器の新製品の拡販に努め、前期と比べ売上は増加しました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は116億57百万円(前期比2.6%減)、営業利益は7億91百万円(前期は3億96百万円の営業損失)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(単位:百万円)
3.前連結会計年度におけるCanon Vietnam Co., Ltdの販売実績及び当該総販売実績に対する割合は、
当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
②財政状態
当連結会計年度末の総資産は1,418億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ107億46百万円増加しました。流動資産は726億56百万円となり、156億10百万円減少しました。固定資産は692億35百万円となり263億57百万円増加しました。うち有形固定資産は320億95百万円となり10億8百万円減少しました。
当連結会計年度末の負債は201億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億50百万円増加しました。流動負債は175億49百万円となり、20億17百万円増加しました。固定負債は26億1百万円となり、8億33百万円増加しました。
当連結会計年度末の純資産は1,217億41百万円となり、前連結会計年度末に比べ78億96百万円増加しました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の86.7%から85.7%となりました。
③キャッシュ・フロー
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益、減価償却費、持分法による投資損失及び退職給付に係る資産の増加等により126億94百万円の収入(前期比24億94百万円収入増)となりました。また、投資活動によるキャッシュ・フローは新製品投資、生産能力増強等の設備投資、貸付金の回収及び長期預金の預入等により94億56百万円の支出(前期比61億48百万円支出増)となり、フリーキャッシュ・フローは32億38百万円のプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払等により26億24百万円の支出(前期比1億64百万円支出増)となり、これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は289億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億30百万円増加しました。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、材料費、人件費、新製品開発に必要な研究開発費及び設備投資資金です。これらの資金需要につきましては、自己資金を充当しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結会計年度末における資産、負債の金額及び連結会計年度における収益、費用の金額に影響を与える重要な会計方針及び各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表等の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
キヤノン株式会社との契約
当社は、キヤノン株式会社との間に以下の契約を締結しております。
当社グループは競争が激化する厳しい市場環境に対応するため、現行事業の更なる拡大と、新規事業の創出を図るべく、新製品開発活動を行っております。
当連結会計年度において、一般管理費に計上している研究開発費は
セグメントごとの研究開発活動状況は次のとおりであります。
(1)コンポーネント
デジタルカメラ市場をけん引しているミラーレスカメラは、従来の一眼レフカメラと比べ、小型化、軽量化を実現しやすく、また、静止画の高画質化や動画撮影の高機能化が進んでおります。このような環境下において、当社はセットメーカーのカスタムニーズに的確に応えたシャッターや絞りユニット、光学フィルタを開発し、シェア拡大に取り組んでまいりました。近年、急速に市場が拡大している拡張現実(XR:Extended Reality)市場向けには、3D映像撮影用レンズに特化した絞りユニットを開発し、生産を開始しました。コンパクトデジタルカメラ市場向けには、V-log(Video動画+Blogブログ)等の動画撮影機に特化した絞りユニット、光学フィルタの開発、監視カメラ市場向けには、4K動画撮影等の高解像度対応向けに開発した絞りユニットの展開を行い、それぞれシェア拡大を進めています。
グループ他社より事業移管を受けたモータ事業においては内製化を推進し、既存モータの高効率化を目指した開発を進めるとともに、今後の市場成長が見込まれるロボット、医療関連機器、ドローン等の分野に向けて、小型高トルクモータ、大型モータ、制御回路を含む駆動回路の開発を行い、製品ラインナップを拡充させました。ロボットハンド向け小型高トルクモータおよびドローン向けモータについては、試作評価を進め、実機評価に移行しました。小型ステッピングモータについては、セットメーカーのニーズに合わせた製品開発を進め、業容拡大に取り組みました。
このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は
(2)電子情報機器
ドキュメントスキャナーにおいては、2024年のグッドデザイン賞を受賞したDR-S250N(A4機50ppm)の上位モデルにあたるDR-S350NWの開発を行い、下期に販売を開始しました。本新製品は、カラータッチパネルとWi-Fiを搭載し、パネル上の操作で簡単にスキャンが出来る機能を備えました。また、Webブラウザーを用いてスキャンを行う機能(Capture On Touch Lite WEB)も搭載し、パソコンやスマートフォン・タブレット側にアプリをインストールしなくても使える利点を引き継ぎました。これらのラインナップ展開により、今後さらに需要が増えていくと予想されるネットワーク環境での活用を推進し、お客様の利便性向上を図ってまいります。また、DR-G2140、DR-M260および2024年に開発したDR-S350NWについては、SuMPO環境ラベルプログラムであるEPD(Environmental Product Declaration)を取得することで、環境評価システムであるEPEAT(Electronic Product Environmental Assessment Tool)GOLDを取得し、CFP(Climate宣言)を算出して公開する等、環境に配慮した設計を行っております。
ハンディターミナルにおいては、OSにWindows 10 IoT Enterpriseを採用した標準モデルGT-40とサーマルプリンターを内蔵したGT-40Pの開発を進めており、残存市場の顧客獲得に注力しております。また、これまで培った堅牢性、小型・省電力設計、各種通信制御の技術を活かし、新規分野へ積極的に進出しております。第一弾として開発した、マイナンバーカードをはじめとする公的証明書や、磁気とICの双方のキャッシュカード読み取りに対応した個人認証カードリーダーID-MY2を商品化して販売致しました。
国内、ヨーロッパ、中国で販売を開始しているスポットライト型アルミスピーカー「Light&Speaker」については、「おもてなしセレクション2024」の金賞を受賞いたしました。おもてなしセレクションは、日本の優れた“おもてなし心”あふれる商品・サービスを発掘し、世界に広めることを目的に、2015年に創設されたアワードです。今後は受賞商品が取り扱われるイベントに参加し、拡販してまいります。Light&Speakerは、心地よいサウンドと光により日常から切り離されたパーソナルな空間を演出するスポットライト型のワイヤレススピーカーであり、円筒形のフォルムと理想的なスピーカー配置により、クリアで豊かな音の響きを360°全方位から体感できます。ボディーはアルミ削り出しで、堅牢性と美しさを演出したデザインとなります。2種類の光色(暖色、白色)で、それぞれ3段階に調光できるライトは、照射角度をフリーストップで調整でき、目的やシーンに合わせた使い方ができます。今後、販売会社と協力して、第2、第3の機種を開発し製品群を拡大してまいります。
このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は
(3)その他
歯科用ミリングマシン関連では、2024年3月に新しいラインナップ製品として、「MD-500W」をリリースしました。専用架台を設け、その中にクーラント(冷却水)を循環させる装置と加工で排出される切粉を回収するユニットを搭載したことで、湿式加工が可能となりました。これにより、従来のMD-500、MD-500Sでは実現できなかったチタン材やガラスセラミック材の加工が可能となり、新たなユーザーの獲得を目指しています。
情報セキュリティソフトウェア「SML」においては、2000ライセンス以上の大規模ユーザー向けに統合ログ閲覧ツールを開発しました。本製品は従来ツールから保存ログを圧縮格納することでログ保存容量を80%削減し、圧縮しても機能を満たすことを実現しました。
このような活動の結果、当セグメントにおける研究開発費の金額は
なお、各セグメントに配分できない基礎研究に係る研究開発費の金額は1,826百万円となりました。
また、新規事業の一環として、宇宙関連分野では、高解像度と高感度の2つの研究テーマのもと、超小型光学衛星の開発に取り組んでいます。高解像度型の「CE-SAT-Ⅰ」は2017年の打上げから7年半が経過した現在も軌道上での実証試験を進めております。高感度型の「CE-SAT-ⅡB」は超高感度カメラ及び内製化したコンポーネントを搭載していて、2020年に打ち上げられた後、夜間撮影など高感度を活かした撮影の実証試験を引き続き進めております。2024年の2月には、新たに高解像度型の「CE-SAT-IE」がJAXAのH3ロケット試験機2号機にて種子島宇宙センターから打上げられました。「CE-SAT-IE」は「CE-SAT-I」の後継機であり、高度670kmから直下視時に地上分解能0.8mでの撮影ができるよう設計されています。2024年3月には搭載している望遠鏡の性能を確認するために行う最初の撮影に成功しました。引き続き、撮影試験と合わせて衛星の機能・性能試験を進めています。「CE-SAT-IE」が取得する高解像度の画像情報は道路の混雑状況把握、都市・地域整備時等に活用される地理空間情報収集や防災活動への貢献等、社会の安心・安全への寄与が期待されています。衛星事業化の取り組みでは、2024年3月に防衛省が進める宇宙領域把握能力の向上のため、低軌道から静止軌道までの衛星の動きを検知する実証事業において、多軌道観測実証衛星の製造・試験の契約を締結しました。また、マーケティングや自社開発製品へのフィードバックを目的とした衛星画像の販売も継続して行いました。
農業分野では、植物工場向けの生産設備や温度・湿度等の管理システム、そして種蒔き、植え替え、収穫といった手作業を自動化した装置の開発に取り組み、これまでの植物の苗を植え替えする移植機に加え、自動で種まきを行う播種機も販売しております。さらに移植機については、画像認識とAIを組み合わせた自動検査機能を追加したモデルの開発も進み、販売開始の段階に至りました。また、栽培規模に合わせた手動機、半自動機、自動機の提案を行い、販売拡大に努めています。