第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループ(当社および連結子会社)の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社は、長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」の実現に向けた4カ年ごとの中期経営計画(StageⅠ~Ⅲ)として、2022年度より最終ステージである中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」を推進してまいりました。2024年度に中期経営目標を1年前倒して達成したことから、2025年度を初年度とする中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」を策定いたしました。中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」では、基本方針を「筋肉質で持続可能な高利益体質の確立」と掲げ、持続的な企業価値向上を目指しております。

 2035年のエスペックの姿を描いた長期ビジョンは策定中ですが、10年後も環境試験業界において世界的トップランナーであり続けること、当社の創業の精神であるプログレッシブを継承するとともにイノベーティブな発想・活動ができるエスペックグループを目指してまいります。

 当社は、企業理念「THE ESPEC MIND」の実践と長期ビジョンの実現に向けた事業活動により「経済的価値」「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指すサステナビリティ経営を推進しております。当社が社会と共に成長し中長期の価値向上を果たすために、優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定しております。具体的には、グローバルな事業を通じた社会課題解決、責任ある製品サービスの提供、環境への配慮、多様な人材の確保・育成、グループガバナンスの強化の5つを重要課題としております。これらの課題を中期経営計画の各戦略に反映し、取り組んでまいります。なお、重要課題は、社会の変化に合わせて柔軟に見直しを行ってまいります。

 

(1)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、営業利益率、当期純利益、ROEです。

 中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」(計画実施期間2022~2025年度)では、中期目標として2025年度に売上高650億円、営業利益75億円、営業利益率11.5%、ROE10.0%以上を目指してまいりましたが、2024年度に売上高672億円、営業利益75億円、営業利益率11.2%、ROE11.0%となり、1年前倒して達成することができました。新しい中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」(計画実施期間2025~2027年度)では、中期目標として2027年度に売上高700億円、営業利益105億円、営業利益率15.0%、当期純利益76億円、ROE12.0%以上としました。持続的な企業価値向上に向けて「質の向上」に舵を切り、筋肉質な企業体質へと転換してまいります。

 中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」の基本方針や中期経営戦略につきましては(2)③に記載しております。

 

(2)長期ビジョン及び中期経営計画

①長期ビジョン「ESPEC Vision 2025」

<エスペックの姿>

・グローバルに〈環境〉をインテグレートするエスペック

・先端技術の安全・安心に貢献する企業

・クリエイティビティとバイタリティにあふれる成長企業

 

②中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」(計画実施期間2022~2025年度)

 2025年度目標:売上高650億円、営業利益75億円、営業利益率11.5%、ROE10.0%以上

 2024年度実績:売上高672億円、営業利益75億円、営業利益率11.2%、ROE11.0% 1年前倒し達成

 

<基本方針>

個と職場の慣性と惰性を打破し、先端技術の実用化に貢献する

・IoT・次世代自動車市場に貢献する商品・サービス提供に向けた積極的な成長投資

・ビジネスチャンスと不測の事態に対する変化対応力を高める

 

 

<中期経営戦略>

a.環境試験事業戦略

装置事業セグメント

(ⅰ)重点先端技術分野(IoT、次世代自動車)の製品ラインアップの拡充

(ⅱ)カスタム製品のグローバルでの競争力強化と新市場開拓

(ⅲ)オープンイノベーションの推進による新環境因子技術の拡充

サービス事業セグメント

(ⅰ)お客さまの悩みを解決するトータルテクニカルサポート業への転換

(ⅱ)先端技術分野向け試験の拡充と試験技術の高度化

b.グローバル戦略

 中国、欧州、韓国におけるマーケティングの強化

c.新規事業戦略

 新規事業の基盤確立と新たな分野へのチャレンジ

d.モノづくり改革とDX戦略

(ⅰ)デジタル技術による先進的カスタマイズモノづくり

(ⅱ)データ活用による顧客接点強化と社内情報蓄積・共有

(ⅲ)デジタル技術によるビジネススタイルの刷新

e.組織開発・人材開発戦略

(ⅰ)企業理念の浸透と自律的な社員が育つ組織づくり

(ⅱ)リーダーシップ改革と学び直しの推進

(ⅲ)DX、グローバル人材育成と多様な社員の活躍推進

f.経営基盤強化戦略

(ⅰ)安定調達と品質システムのレベルアップ

(ⅱ)持続的で健全な成長を支えるコーポレートガバナンス

(ⅲ)第8次環境中期計画の達成

 

<2024年度の主な取り組み>

a.環境試験事業戦略

 装置事業では、恒温(恒湿)器プラチナスJシリーズECOタイプや急速温度変化チャンバーなど製品ラインアップを拡充いたしました。サービス事業では受託試験事業において「あいち次世代モビリティ・テストラボ」として愛知県常滑市に「あいちバッテリー安全認証センター」を開設するとともに豊田試験所の機能を拡張いたしました。

b.グローバル戦略

 欧州では経済減速の影響を受けましたが、中国ではEV・バッテリーやIoT市場を中心に販売拡大に取り組み、韓国ではグローバル企業や受託試験機関への販売を強化いたしました。

c.新規事業戦略

 サーマルソリューション事業では、半導体の実装基板の熱による影響を可視化するシステムなどを開発し受託計測サービスを拡充いたしました。食品機械事業では急速冷凍装置を発売いたしました。

d.モノづくり改革とDX戦略

 受注残高の消化および生産負荷の平準化に向けて、要員の増加、生産スペース拡大、外注活用により国内の生産能力を増強いたしました。

e.組織開発・人材開発戦略

 教育制度の拡充や次世代経営人材の育成に取り組みました。また、コミュニケーションの活性化を推進するとともに、新しい人事評価制度の立案やエンゲージメントの向上に取り組みました。

f.経営基盤強化戦略

 企業理念の海外子会社展開などグループガバナンスの強化に取り組むとともに、サステナブル調達ガイドライン

を策定いたしました。また、環境中期計画のもと地球温暖化対策や生物多様性保全活動を推進してまいりました。

 

 

③中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」(計画実施期間2025~2027年度)

 持続的な企業価値向上に向けて「質の向上」に舵を切り、筋肉質な企業体質へと転換してまいります。

 

<基本方針と目標>

『筋肉質で持続可能な高利益体質の確立』

 質の向上と利益成長により「筋肉質な企業」となることで持続的な企業価値向上を目指す

 ■ターゲット市場:AI半導体、自動運転、衛星通信

 ■中期目標:2027年度 売上高700億円、営業利益105億円、営業利益率15.0%

       当期純利益76億円、ROE12.0%以上

       ※想定為替レート(米ドル)は145円

 

<中期経営戦略>

a.事業戦略(装置事業戦略、グローバル戦略、モノづくり戦略、サービス事業戦略、新規事業戦略)

 装置事業ではターゲット市場であるAI半導体、自動運転、衛星通信分野の試験ニーズに、多彩な製品群やカスタム対応力、新製品開発によりお応えしてまいります。また、日本、米国、中国を重視するエリアとし、グループの総合力を活かしてグローバル市場での競争優位性を確立してまいります。さらに、IT・デジタル技術を駆使しモノづくりの省力化・自動化を強力に推し進め、収益性の向上に取り組んでまいります。

 サービス事業では、受託試験事業において「あいち次世代モビリティ・テストラボ」を中心に収益拡大を目指してまいります。アフターサービス事業では、IT・デジタル技術の活用により、装置の遠隔監視など顧客の課題を解決するサービスを提供してまいります。あわせて、将来の収益の柱となる新たな事業創出を目指し、CAE(Computer Aided Engineering)に関連したサーマルソリューションサービスや食品機械事業の拡大に取り組んでまいります。

b.財務資本戦略(財務資本戦略、IR戦略)

 「資本コストと株価を意識した経営」に向けて、総資産の効率化と、3年間のキャッシュアロケーションに基づく株主還元の実施、IR活動の強化に取り組んでまいります。

c.非財務戦略(ESG)

 人材獲得・育成やエンゲージメントの向上など人的資本の取り組みを強化してまいります。また、環境への取り組みや、グループガバナンス・リスクマネジメントの強化といったガバナンス向上にも注力してまいります。

 

<2025年度目標及び取り組み>

 2025年度目標:売上高680億円、営業利益85億円、営業利益率12.5%、当期純利益61.9億円、ROE11.0%

        ※想定為替レート(米ドル)は145円

 

 中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」の初年度として、モノづくりの高効率化や新製品開発など成長投資を実行するとともに、2025年5月15日の新しい株主還元方針に基づき株主還元を実施してまいります。事業環境としましては、EV・バッテリーの主に生産用途の需要が減少すると想定しておりますが、AI半導体、自動運転、衛星通信市場の需要を獲得してまいります。また、製品リードタイムの短縮による受注残高の消化や原価改善・コストダウンにより収益性の向上を目指してまいります。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組

 企業理念THE ESPEC MINDには二つの重要な考え方があります。一つは「企業は公器」であることです。私たちは事業や企業活動を通じて社会に貢献する企業でありたいと考えています。二つ目は、エスペックは「ステークホルダーとの価値交換性の向上を目指す」ということです。これは、ステークホルダーのみなさまとの間で、お互いにとってより良い関係を築いていきたいということです。当社のサステナビリティ経営はTHE ESPEC MINDの実践であり、ESPEC Vision 2025の達成に向けた取り組みそのものです。当社は、こうした企業理念の実践と長期ビジョンの実現に向けた事業活動により「経済的価値」と「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指してまいります。

 

ESPEC Vision 2025/将来像

■エスペックの姿

・グローバルに〈環境〉をインテグレートするエスペック

・先端技術の安全・安心に貢献する企業

・クリエイティビティとバイタリティにあふれる成長企業

■エスペックの事業

・世界の先端技術にとって不可欠な存在となっている

・新ニーズへの一番乗りとなっている

・世界の市場における強力な販売・サービス体制を持っている

■エスペックの文化

・冒険心にあふれた構成員の活動によって、より「プログレッシブ」な文化が実現している

 

エスペックの「サステナビリティ経営」

 企業理念の実践と長期ビジョンの実現に向けた事業活動により「経済的価値」「社会的価値」の創出と向上を図り、持続的成長を目指してまいります。

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サステナビリティ方針

・企業理念「THE ESPEC MIND」の実践により、「経済的価値」と「社会的価値」の創出と向上を図ります

・ステークホルダーとのより良い価値交換により持続的成長を目指します

・ESPEC Vision 2025のもと、「環境創造技術」をかなめとした事業活動を通じて地球環境や社会課題の解決に貢献します

・サステナビリティに関する情報開示を積極的に行います

 

エスペックのステークホルダー・エンゲージメント

 私たちは社会に貢献する企業であり続けるためにステークホルダーとのエンゲージメントを大切にしています。そのため、エスペックが2025年までに果たしたい「約束」をステークホルダーごとに設定しました。これをもとに、各ステークホルダーとの対話を重視し、日常のさまざまな機会や仕組みを通じてコミュニケーションの活性化に取り組んでいます。私たちはステークホルダーとの価値交換性を高めるために重要なことは何かを常に考えながら活動し、お互いにとってより良い関係を築いてまいります。

 

 

ESPEC Vision 2025/ステークホルダーとの約束

■エスペックと従業員

・貢献に応じた明瞭な分配と待遇

・意欲と能力ある人材への多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」

・多様なワークスタイルに対応する環境の整備

■エスペックと顧客

・どこよりも最適な機能のひと足早い提供

・常に進化し続けるパートナー

■エスペックと株主

・成長機会の永続的探求

・現在と将来の的確な発信

・「説明できる経営」の堅持

■エスペックと取引先

・フェアな取引

・提案・意見の歓迎

■エスペックと地域社会

・地域社会の文化と伝統の尊重

・能動的かつ良質なコミュニケーション

※ステークホルダー・エンゲージメントの主な取り組み(ステークホルダーごとの主な対話の方法・機会)に関する詳細は、サステナビリティレポート2024をご参照ください。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ推進本部を設置し、サステナビリティの推進やSDGsの達成に貢献する取り組みを強化しております。2022年6月には、サステナビリティ推進本部長に取締役が就任いたしました。サステナビリティ推進本部は、サステナビリティ方針やマテリアリティ(重要課題)の策定・見直し、中期経営計画および環境中期計画への反映、サステナビリティ情報開示の役割の中心を担っております。サステナビリティの取り組みに関する進捗と課題については、取締役会または執行役員会にて報告を行っています。取締役会はサステナビリティ推進本部の報告を受け、サステナビリティの取り組みについて議論・監督を行っております。また、サステナビリティ推進本部は、情報開示委員会、内部統制システム委員会、リスク管理委員会、情報セキュリティ委員会、全社環境管理委員会と連携し、全社におけるサステナビリティ経営を推進しております。

 

2024年度の取締役会・執行役員会での報告

取締役会

・中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」について(協議・決議事項)

・長期ビジョン「ESPEC Vision 2035」について(協議事項)

・人事評価制度の改定について(報告事項)

・ストレスチェック(エンゲージメント)調査結果を受けての対応について(報告事項)

・企業文化の良質化に向けた研修報告および2025年度計画について(報告事項)

執行役員会

・日経サステナブル総合調査2024「SDGs経営編」「スマートワーク経営編」の結果報告と対応について

・2025年度のマテリアリティについて

・人事評価制度の改定について

・人材育成について(次世代経営人材の育成等)

・企業文化の良質化に向けた研修・全社イベント報告および2025年度計画について

・創業75周年記念事業について

 

 

②戦略

 当社は、社会と共に成長し中長期の価値向上を果たすために、優先的に取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定しております。マテリアリティ(重要課題)の特定にあたっては、まず、GRIスタンダードやSDGs(持続可能な開発目標)、外部調査などを参照し社会課題を抽出しました。次に、抽出した課題について、THE ESPEC MINDやESPEC Vision 2025との整合性などの観点から、持続的成長を図るために取り組むべき課題の選定を行いました。これらの選定した課題について執行役員会で協議・決定し、当社のマテリアリティとして特定しました。

 なお、当社は長期ビジョンESPEC Vision 2025の達成に向けて、2022年度から最終ステージである中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」を推進しています。「プログレッシブ プラン2025」の策定にあたっては、当社が特定したマテリアリティを各経営戦略に反映しており、社会課題の解決に貢献する事業の強化と、E(環境)S(社会)G(ガバナンス)に視点をおいた経営基盤の強化に取り組んでおります。

 

 

マテリアリティとKPI項目

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③リスク管理

 当社は、サステナビリティに関連するリスクを識別・評価するためリスク管理委員会を設置し、内部統制システム委員会と一体で運用し、サステナビリティ推進本部と連携することでリスク管理の徹底を図っております。リスク管理委員会はリスクについて影響の高さと対策状況に応じて4つの象限に分類し評価を行っております。また、象限ごとに対応方針を決定し、主管部門の活動に反映しております。

 主要なリスクの詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(2)地球環境に関する考え方及び取組

 当社は2022年度より第8次環境中期計画(計画実施期間2022~2025年度)を推進しており、特に地球温暖化対策と生物多様性保全活動を中心に取り組んでおります。

 

<地球温暖化対策>

 環境負荷低減に向けた技術を開発されるお客さまへの製品・サービスの提供を通じて、温室効果ガス排出量の低減に貢献しております。また、低GWP(地球温暖化係数)冷媒の搭載や省エネなど環境配慮型製品の開発を進めるとともに、取引先に対し、2025年までにSCOPE1・2排出量を20%削減することを要請するなど取引先と一体となった活動を強化しております。さらに、当社は2020年より再生可能エネルギーの事業所への導入を進めており、2021年度に国内拠点への導入を完了しております。引き続き自家発電比率の向上や海外拠点への再生可能エネルギーの導入を進めてまいります。

 当社は、2030年度までの温室効果ガス排出量削減目標を掲げており、当社の目標は国際的なSBTイニシアチブより「SBT(Science Based Targets)」認定を取得しています。また、当社は2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明し、気候変動に関する情報を開示しております。国際的な非営利団体CDPが公表した「CDP気候変動レポート」では、5年連続で8段階中上位から3番目のBスコアとなり、「水セキュリティ」分野では昨年度から2段階上の「B-スコア」に認定されました。

 

<生物多様性保全活動>

 森づくりや水辺づくりなど環境保全事業を通じて生物多様性保全に取り組む企業の活動を支援しております。また、当社の生物多様性保全活動の拠点である神戸R&Dセンターでは、社員と家族が在来苗木を植栽し育てた森やビオトープ、地元六甲北部の植物で構成した屋上草地を設置しており、環境省「自然共生サイト」の認定や、第三者認証「ABINC(いきもの共生事業所)認証」の取得、緑化優良工場等表彰制度(通称:全国みどりの工場大賞)「経済産業大臣賞」の受賞など社外より高い評価をいただいております。

 2022年11月には、創業75周年事業として、林野庁「法人の森林制度」を活用した新しい生物多様性保全活動「エスペック50年の森」をスタートしております。2024年4月までに植樹祭を3回開催し、計12,000本を植樹いたしました。苗木を育成し、生物多様性豊かな森を育むことで環境への貢献を目指すとともに環境教育の場としても活用してまいります。なお、2022年8月には、兵庫県立大学と「SDGs推進」に関する協定を締結しており、「エスペック50年の森」においても学術的な効果検証を行うなど連携しております。

 

■気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

 当社は2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明いたしました。TCFDの提言に基づき積極的に情報開示を行ってまいります。

 

①ガバナンス

 代表取締役執行役員社長を委員長とする全社環境管理委員会において、四半期ごとに環境課題に対する実行計画の策定と進捗管理を実施しております。取締役会は本委員会の報告を受け、環境課題への対応方針などについて議論・監督を行っております。代表取締役執行役員社長は執行役員会の議長を担うと同時に、諮問委員会である全社環境管理委員会の委員長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。

 

②戦略

 2℃未満および4℃シナリオにおける気候関連のリスク(移行リスク・物理的リスク)と機会について、短期・中期・長期の視点で事業影響や財務影響を評価しております。この評価をふまえ当社戦略のレジリエンスを検証しております。

 

 

気候関連リスク・機会に対する事業インパクト(財務影響と事業リスク)評価と当社の対応

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影響時期:短期10年以内、中期10年~30年、長期30年超

財務影響度:★1億円以内、★★1億円~10億円、★★★10億円超

 

③リスク管理

 リスク管理委員会と全社環境管理委員会および環境マネジメントシステム(ISO14001)において、リスクの識別・評価を実施し、発生頻度やインパクトから優先順位付けしたうえで対策を決定し、進捗を管理しております。重要リスクについては取締役会に報告し、取締役会による監督体制のもと当社戦略に反映しております。

 

④指標・目標

 当社は、2019年度からグループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでおり、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、SCOPE1・2およびSCOPE3温室効果ガス排出量の2つの指標を定めています。また、2022年度に当社は2030年度までの温室効果ガス排出量削減目標を設定いたしました。この目標は、国際的なSBTイニシアチブよりSBT(Science Based Targets)認定を取得しており、4カ年ごとに設定する環境中期計画に展開し、実現を目指しております。なお、当社は2019年度から、温室効果ガス排出量の第三者保証を取得しており、2024年度の温室効果ガス排出量についても第三者保証を取得し、2025年7月にサステナビリティサイトにて開示予定です。

 

2030年度温室効果ガス排出量削減目標

・SCOPE1+2  2030年度までに60%削減、2025年度までに55%削減(2019年度比)

・SCOPE3   2030年度までに30%削減、2025年度までに10%削減(2019年度比)

 

 

第8次環境中期計画(計画実施期間2022~2025年度)の温室効果ガス排出量

区分

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

排出量

2019年度比

排出量

2019年度比

排出量

Scope1

3,576t-CO2e

+4.2%

3,622t-CO2e

+5.5%

2025年7月開示予定

Scope2

マーケットベース

3,717t-CO2e

-65.0%

4,285t-CO2e

-59.7%

ロケーションベース

11,541t-CO2e

-5.7%

13,138t-CO2e

+7.4%

Scope3

1,091,612t-CO2e

+36.6%

1,040,425t-CO2e

+30.2%

合計(Scope1+2+3)

1,098,905t-CO2e

+35.1%

1,048,332t-CO2e

+28.9%

 

※TCFDに基づく情報開示に関する詳細は、サステナビリティサイトをご参照ください。

https://www.espec.co.jp/sustainability/env/climate/tcfd.html

 

(3)人的資本・多様性に関する考え方及び取組

人権の尊重

 当社は企業理念THE ESPEC MINDの「宣言」において、人権の尊重を表明しております。また、2023年度には、エスペックに所属する全ての役員・社員に適用する「エスペック行動憲章・行動規範」を時代に対応した内容に改定し、「基本的人権を尊重し、社内外において、性別、年齢、国籍、人種、民族、肌の色、宗教、信条、社会的地位、婚姻の有無、性的指向や性自認、病歴、ウイルス等への感染の有無、障がい等による差別的取り扱い、言動は一切行わない」旨を定め、毎年の社内教育を通じて周知徹底を図っております。

 

人事方針

 会社の盛衰は「人」で決まります。会社にとって「人」が中心であり「人」重視の経営こそが会社発展の原動力です。「社員が主役の会社でありたい」というのが基本的な考え方です。また、高いモチベーションと品格を兼ね備え、チャレンジ精神に富む良質な人材の開発・育成に取り組むことで「社員能力・活力の最大化」を目指しております。

 

人的資本の最大化に向けて

 当社は「多様な人材の確保・育成」をサステナビリティにおけるマテリアリティ(重要課題)の一つとして特定しており、人的資本の最大化に向けて、企業文化の良質化/組織マネジメント、個の成長支援、経営戦略と連動した人材育成、ダイバーシティ&インクルージョンおよび社員の健康と安全の確保に取り組んでおります。

 

 

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①戦略

 中期経営計画「プログレッシブ プラン2025」では組織開発・人材開発戦略を実行し、2024年度は教育制度の拡充や新しい人事評価制度の立案、次世代経営人材の育成に取り組みました。また、企業理念の理解を深める研修会や全社イベントの開催などコミュニケーションの活性化に注力しました。

 マテリアリティ(重要課題)である「エンゲージメントの向上」を推進するための取り組みとしましては、当社では毎年全社員を対象にエンゲージメント調査を実施しています。本調査では、仕事に対する主体的・前向きな心理状態を示すワークエンゲージメントと会社や組織に対する愛着を示すエンプロイーエンゲージメントを測定しています。2024年度調査では、ワークエンゲージメントのスコアは目標とする水準に達している状態であることを確認しましたが、エンプロイーエンゲージメントは前年度と比較しスコアはアップしましたものの目標未達であり改善の余地があることを確認しました。

 2025年度を初年度とする新しい中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」におきましても非財務戦略の重要な取り組みの一つと位置づけ、人的資本の最大化に注力してまいります。

 

<具体的な取り組み>

・2023年度の低エンゲージメントの主な要因の1つがマネジメントスタイルやコミュニケーションの不備にあったと分

 析。執行役員・本部長が職場の課題解決に向けた行動計画を策定・実行するなど改善に取り組みました。

・プログレッシブな組織文化の実現に向け人事評価制度を刷新。2025年4月から新制度の運用を開始しました。

・ビジョンの実現に向け「あるべき人材像」を明確化。新しい人事評価制度の評価軸としました。

・360°サーベイや人材アセスメントの分析結果といった人材データを活用した研修により管理職のマネジメントスタ

 イルのアップデートに取り組みました。

・コミュニケーションの活性化に向け1on1の実施を促進。心理的安全性に関する社内アンケートを通じ実施状況を確認

 しました。

・仕事と子育て支援に関する取り組みが認められ、当社は2025年3月に厚生労働大臣より「プラチナくるみん」の認定

 を受けました。

 

 多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針につきましては以下のとおりです。

 

人材育成方針

意欲と能力ある人材への多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」

 自身の成長は自分の意志と意欲に大きく左右されます。まさに成長は自分自身のテーマといえます。当社は成長意欲や能力のある従業員に対して、多彩な成長支援やチャレンジできる機会を提供します。

 

 

社内環境整備方針

多様なワークスタイルに対応する環境の整備

 従業員が、安心して思う存分能力を発揮できる環境を会社が整えることは重要であると考えます。人々が望むワークスタイルは時代とともに変化します。当社は適切な範囲の中で、時代の要請する多様なワークスタイルに対応する先進的な職場環境の整備に努めてまいります。

 

女性の活躍推進については、目指す姿を明確にし、3つの施策に取り組んでおります。

 

女性活躍推進の目指す姿

1.管理職となる女性社員、高い専門性を持つ女性社員が多数活躍している

2.女性社員が幅広い職種で活躍している

3.全社的にワークライフバランスが浸透し、社員にとって働きやすい職場環境になっている

・多様性に富んだ創造性と活力ある会社になっている

・様々な働き方ができる会社になっている

・優秀な人材が集まる会社になっている

 

女性活躍推進に向けた施策

1.女性自身の意識改革

女性社員のキャリア形成支援を目的としたキャリアデザイン研修や、女性リーダー育成研修などを通じて、女性社員自身の意識改革に取り組んでまいります。

2.女性のキャリアを支援する制度の拡充

短時間勤務制度の利用期間拡大など、女性のキャリアを支援する制度の拡充に取り組んでまいります。

3.働きやすい職場づくり

管理職を対象とした女性活躍推進セミナーの開催や、残業時間の抑制に向けた取り組みなどにより、働きやすい職場づくりを進めてまいります。

 

 ②リスク管理

  人的資本に関するリスク管理につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

③指標及び目標

 女性活躍推進に関する行動計画および次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を以下のとおり策定しております。なお、女性管理職比率につきましては、2025年度目標10%を2024年度に概ね達成したため、中期経営計画「PROGRESSIVE PLUS 2027」において2027年度20%以上を目指してまいります。

 

女性活躍推進に関する行動計画

計画期間:2021年1月1日~2025年12月31日までの5年間

 

目標1:新卒採用者に占める女性割合30%以上を確保する。

取り組み:新卒採用の女性を積極的に採用する。

 

目標2:女性管理職比率について、10%以上を確保する。

取り組み:管理職候補となる女性社員の発掘と育成。

 

目標3:一人あたりの平均残業時間を15時間(/月)以下にする。

取り組み:平均残業時間と、長時間残業が常態化している社員の残業時間の抑制。

 

 

目標と実績

指標

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

2025年度目標

女性新卒採用率※

29%

40%

39%

30

30%以上

女性管理職比率※

6.0%

7.0%

9.5%

9.8

10%以上

一人あたり平均残業時間

15.5時間/月

22.6時間/月

20.1時間/月

21.9時間/月

15時間/月以下

※ 女性新卒採用率および女性管理職比率は、翌年度の4月1日現在のものであります。

※ 女性管理職は、課長職以上(当社社内規定ではマネージャー以上)に占める女性の比率であります。

 

次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画

計画期間:2024年4月1日から2026年3月31日までの2年間

 

1.育児休業取得率

 計画期間中に、男性の育児休業取得率を10%以上にするとともに、女性の育児休業取得率を100%にする。

2.キャリア構築できる環境・風土づくり

 従業員が仕事と育児を両立しながら、キャリアの構築を実現できる環境・風土づくりを行う。

3.年次有給休暇の取得率向上

 年次有給休暇の取得率を、全社平均65%以上にする。

 

目標と実績

指標

2024年度実績

2025年度目標

育児休業取得率(男性)

56

10%以上

育児休業取得率(女性)

100

100

年次有給休暇取得率

78

全社平均65%以上

 

※ダイバーシティの推進に関する詳細は、サステナビリティサイトをご参照ください。

https://www.espec.co.jp/sustainability/social/employee/diversity.html

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

3【事業等のリスク】

 当社は、リスク管理委員会を設置し、内部統制システム委員会と一体で運用し、サステナビリティ推進本部と連携することでリスク管理の徹底を図っております。リスク管理委員会はリスクについて影響の高さと対策状況に応じて4つの象限に分類し評価を行っております。また、象限ごとに対応方針を決定し、主管部門の活動に反映しております。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。なお、当社におけるマテリアリティ(重要課題)につきましては、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ全般に関する考え方及び取組 ②戦略」に記載のとおりであります。

(1)業績変動のリスク

 当社は、電子部品・電子機器および自動車関連メーカーを主要顧客としており、当社の業績は、これらの業界の業績や設備投資動向の影響を強く受けます。景気変動の影響等により主要顧客の設備投資が低調に推移した場合は、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また当社は、国内市場において高い市場シェアを持っておりますが、国内市場は成熟市場であるため当社の成長は、海外市場での業績に左右されます。高い市場シェアを持つ欧米の環境試験器メーカーや低価格を武器に市場参入を図る中国、台湾メーカーとの競争が当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、これらの業績変動リスクの緩和と次代の成長を図るため、海外市場のさらなる拡大と中期経営計画に基づき新たな収益基盤となるサーマルソリューションサービスや食品機械事業の拡大に取り組んでおります。

 

(2)災害、感染症、戦争等に係るリスク

 当社の2024年度における連結売上高に占める海外売上高比率は51.9%と高い水準となっております。事業を展開する国や地域において、大規模な自然災害、重大な感染症の流行、戦争、テロ、政情不安等の予見困難な社会的混乱が発生する事態になった場合、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の主要な製造拠点、研究開発拠点は国内にあり、これらの主要な施設が地震や台風等の自然災害により甚大な損害を被った場合は事業運営が困難になるだけでなく、施設の修復または建て直しのために巨額の費用が発生する可能性があります。当社が直接被害を被らない場合でも、電力等のインフラの供給が制限されたり、サプライヤーから必要な部品、素材等の供給が受けられないなどの二次的被害を被ることで、事業活動に大きな支障が生じる可能性があります。当社におきましては、非常事態が発生した場合または発生が予想される場合には、危機対応規定に基づき、当社および関係者が被る損失を最小限にとどめるよう迅速な情報伝達と適切な対処、誠意ある対応を行っております。

 

(3)輸出規制に伴うリスク

 当社商品の輸出および技術の提供に関しては、外国為替及び外国貿易法、米国輸出管理規則(EAR)など、国内外の輸出管理関連法令の影響下にあります。また、最終需要者等を通じて、懸念国や懸念需要者に大量破壊兵器または通常兵器等の開発用として転用される可能性もあります。これらのことにより、当社の商品、技術が予期せぬ第三者、用途で使用され、結果として当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、最新の法規制を遵守すべく、輸出管理本部を主体として、商品の仕様、仕向地、最終需要者、用途、取引経路等を把握しております。

 

(4)サプライヤーへの依存、原材料の調達および価格高騰に伴うリスク

 当社は、多種の部品や素材を複数のサプライヤーから購入しております。また、生産量の変化への対応と多様な生産技術を効率よく獲得するため、複数の外注加工業者を活用しております。サプライヤー、外注加工業者の倒産や事業撤退等により供給が停止した場合は生産に問題が生じる可能性があります。また、サプライヤーの責により、欠陥の内在する部品が混入した場合、生産の大幅な遅れや、最悪の場合には納品後の製品に対する対応等のために多額の費用が必要になる可能性があります。また、当社製品の原材料は、主にステンレス、鉄、銅、アルミニウム等であり、それらの仕入価格は国際市況の影響を受けます。世界的な半導体、電子部品等の不足による調達遅延や、原材料価格が高騰した場合、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、サプライヤーおよび外注加工業者に対し、厳重な取引先管理を実施し、品質保証、生産管理、環境管理体制、安定調達を目指したサプライチェーンの評価や指導を行い、相互の信頼関係の醸成に努めております。

 

 

(5)業務提携、企業買収等に伴うリスク

 当社は、事業領域の拡大のため、業務、資本提携や企業買収等を実施することがあります。事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業環境の変化等により当初想定した効果が得られない場合、のれんの減損処理等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、これらの意思決定に際しては、対象となる企業の事業内容や財務内容、取引関係等について詳細な事前審査を実施し、十分にリスクを検討しております。

 

(6)情報セキュリティ事故に伴うリスク

 当社は、業務を遂行するうえで個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。情報漏洩等の情報セキュリティ事故が発生した場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、情報セキュリティマネジメントシステムの国際認証規格「ISO27001」に基づき情報資産の管理を徹底しております。

 

(7)環境規制に伴うリスク

当社の主力製品である環境試験器は、使用時のエネルギー消費に起因して温室効果ガスを排出するほか、冷凍機の冷媒としてフロンを使用しています。脱炭素社会への移行に伴い、省エネルギー規制や温室効果を有する冷媒ガスの使用・排出規制などの環境規制がさらに強化される場合、規制に適合するためにコストが増加する可能性があります。また、これらの規制に対応ができない場合や遅れが生じる場合には、製品の販売に支障が出るなど当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、「地球温暖化対策」をマテリアリティ(重要課題)の一つと位置づけ、省エネ製品や低GWP(地球温暖化係数)のフロン冷媒を搭載した製品の開発・提供や、100%再生可能エネルギーによる受託試験サービスの提供などに取り組んでおります。

 

(8)人材の確保・育成に係るリスク

当社が企業競争力を維持・強化していくためには、事業運営に必要な有能な人材を確保・育成する必要があります。労働市場の流動化や国内における労働人口の減少が進むなか、人材の獲得競争は激化しています。当社が有能な人材を確保・育成できない場合や、人材流出を防止できない場合には、事業運営への影響、技術・ノウハウの社外流出など、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、多様な人材の獲得に向けた採用活動を積極的に行うとともに、従業員エンゲージメントの向上に向けて、企業文化の良質化や、多彩な「成長支援」と「活躍機会の提供」、多様なワークスタイルに対応する環境の整備などに取り組んでおります。

 

(9)グループガバナンスおよびコンプライアンスに係るリスク

当社は、国内外に複数の子会社を有し、グローバルにビジネスを展開しております。グループでの統治が十分に機能せず、役員や従業員によるコンプライアンス違反や倫理違反等が発生した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償請求等によって当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社におきましては、グループでの内部統制を整備するとともに、エスペックグループに所属するすべての役員・従業員が遵守する「エスペック行動憲章・行動規範」の教育・徹底に取り組んでおります。また、各種コンプライアンス研修の実施や、コンプライアンス通報窓口(社内・社外)の設置・運用など、継続的にコンプライアンスの強化を図っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度の当社グループの事業環境につきましては、引き続き社会のデジタル化や脱炭素化を背景にEV・バッテリー関連の試験需要が増加するとともに、エレクトロニクス関連の投資が堅調に推移いたしました。生産面におきましては、受注残高の消化及び生産負荷の平準化に向けて、要員の増加、生産スペースの拡大、外注の活用により国内の生産能力を増強いたしました。

 当連結会計年度の経営成績につきましては、受注高は国内が好調に推移し、前連結会計年度比で8.4%増加の67,514百万円となりました。売上高は国内の生産能力増強の効果などにより、前連結会計年度比で8.3%増加の67,288百万円となりました。利益面につきましては、販管費が増加いたしましたが、主に増収により営業利益は前連結会計年度比で14.3%増加の7,526百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比で20.8%増加の6,003百万円となりました。受注高・売上高・営業利益・親会社株主に帰属する当期純利益いずれも前連結会計年度に続き過去最高を更新いたしました。また、ROEは11.0%となりました。

 

 

前連結会計年度

(第71期)(百万円)

当連結会計年度

(第72期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

62,290

67,514

8.4

売上高

62,126

67,288

8.3

営業利益

6,585

7,526

14.3

経常利益

6,919

7,793

12.6

親会社株主に帰属する当期純利益

4,969

6,003

20.8

 

 

 セグメント別の状況につきましては、次のとおりであります。

 

当連結会計年度のセグメント別業績

 

受注高

(百万円)

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

装置事業

57,283

57,507

6,610

サービス事業

8,532

8,425

793

その他事業

2,170

1,758

126

連結消去

△472

△403

△4

67,514

67,288

7,526

 

 

 

装置事業

 

 

前連結会計年度

(第71期)(百万円)

当連結会計年度

(第72期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

53,565

57,283

6.9

売上高

53,518

57,507

7.5

営業利益

5,848

6,610

13.0

 

 

サービス事業

 

前連結会計年度

(第71期)(百万円)

当連結会計年度

(第72期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

7,634

8,532

11.8

売上高

7,536

8,425

11.8

営業利益

681

793

16.4

 

その他事業

 

前連結会計年度

(第71期)(百万円)

当連結会計年度

(第72期)(百万円)

対前期増減率(%)

受注高

1,453

2,170

49.3

売上高

1,455

1,758

20.8

営業利益

51

126

146.3

 

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は75,847百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,388百万円の減少となりました。

 負債は19,153百万円で前連結会計年度末と比べ6,365百万円の減少となりました。

 純資産は56,693百万円で前連結会計年度末と比べ3,977百万円の増加となりました。

 これらの結果、自己資本比率は74.7%と前連結会計年度末と比べ7.4ポイントの増加となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローの増加4,445百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの減少1,154百万円、財務活動によるキャッシュ・フローの減少7,245百万円、現金及び現金同等物に係る換算差額の減少74百万円などにより、期首時点に比べ4,027百万円減少し、当連結会計年度末には12,765百万円となりました。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

 当連結会計年度における生産実績、受注実績及び販売実績は、次のとおりであります。

a.生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

対前期増減率(%)

装置事業

52,910

5.6

サービス事業

85

46.1

その他事業

合計

52,996

5.7

(注) 上記金額は販売価格によっております。

 

 

b.受注実績

セグメントの名称

受注高(百万円)

対前期増減率

(%)

受注残高(百万円)

対前期増減率

(%)

装置事業

57,283

6.9

25,439

△0.9

サービス事業

8,532

11.8

1,763

6.5

その他事業

2,170

49.3

642

179.2

67,986

8.5

27,845

1.1

消去

△472

29.9

△97

243.7

合計

67,514

8.4

27,747

0.8

 

 

 

c.販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

対前期増減率(%)

装置事業

57,507

7.5

サービス事業

8,425

11.8

その他事業

1,758

20.8

67,691

8.3

消去

△403

5.0

合計

67,288

8.3

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

 当連結会計年度の事業環境といたしましては、主に国内のEV・バッテリー分野の投資がけん引し、受注高は4期連続で過去最高を更新いたしました。当社グループの取り組みといたしましては、EV・バッテリー市場において開発用途だけではなく生産用途のカスタム製品やバッテリー専用装置の大型受注を獲得するとともに、エレクトロニクス分野において恒温(恒湿)器プラチナスJシリーズECOタイプや急速温度変化チャンバーなど製品ラインアップを拡充いたしました。また、受注残高の消化及び生産負荷の平準化に向けて、要員の増加、生産スペース拡大、外注活用により国内の生産能力を増強いたしました。受託試験事業では、「あいち次世代モビリティ・テストラボ」として2025年2月に「あいちバッテリー安全認証センター」を開設し、4月には豊田試験所の機能を拡張し、中日本における受託試験サービスを強化いたしました。なお、部材価格や電気代などの高騰に対応するため前連結会計年度に製品・サービスの値上げを実施しており、当連結会計年度にかけてその効果が表れております。

 当連結会計年度の経営成績といたしましては、特に装置事業の環境試験器及びサービス事業の受託試験が好調に推移し、受注高は前連結会計年度比で8.4%増加の67,514百万円、売上高は前連結会計年度比で8.3%増加の67,288百万円となりました。売上原価につきましては、増収により前連結会計年度比で7.9%増加し43,300百万円となりましたが、原価率は64.4%と前連結会計年度比で0.2ポイント改善いたしました。販売費及び一般管理費につきましては、受注拡大に伴う人件費や活動経費の増加、人員増などにより16,460百万円(前連結会計年度比1,052百万円の増加)となりました。これらの結果、利益面につきましては、前連結会計年度比で営業利益は14.3%増加し7,526百万円、経常利益は12.6%増加し7,793百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、政策保有株式の売却に伴う特別利益の計上もあり20.8%増加の6,003百万円となりました。

 

b.セグメントごとの経営成績

<装置事業>

 環境試験器につきましては、国内市場では、汎用性の高い標準製品、カスタム製品いずれも前連結会計年度比で受注高・売上高ともに増加いたしました。海外市場におきましては、受注高は主に北米、中国が増加しましたが、東南アジアが減少し前連結会計年度並みとなりました。売上高につきましても、欧州が減少したものの東南アジア、北米、韓国が増加し前連結会計年度並みとなりました。なお、中国は前連結会計年度と同水準となりました。

 エナジーデバイス装置につきましては、EVバッテリー向け一括案件の投資に一服感があり、主に国内において前連結会計年度比で受注高・売上高ともに減少いたしました。

 半導体関連装置につきましては、サーバー関連の大型案件の受注獲得により、受注高は前連結会計年度比で増加いたしましたが、売上高はメモリ関連の投資抑制の影響を受け、大幅に減少いたしました。

 こうした結果、装置事業全体では、前連結会計年度比で受注高は6.9%増加し57,283百万円、売上高は7.5%増加し57,507百万円となりました。利益面につきましては、販管費が増加したものの主に増収により営業利益は前連結会計年度比で13.0%増加し6,610百万円となりました。

 

<サービス事業>

 アフターサービス・エンジニアリングにつきましては、予防保全サービス・修理サービスともに堅調に推移し、前連結会計年度比で受注高・売上高ともに増加いたしました。

 受託試験・レンタルにつきましては、EVバッテリー向け試験設備増強の効果があり、前連結会計年度比で受注高・売上高ともに増加いたしました。

 こうした結果、サービス事業全体では、前連結会計年度比で受注高は11.8%増加し8,532百万円、売上高は11.8%増加し8,425百万円となりました。利益面につきましては、人員増などにより販管費が増加したものの売上高の増加により営業利益は前連結会計年度比で16.4%増加し793百万円となりました。

 

<その他事業>

 環境保全事業及び植物育成装置事業を中心とするその他事業では、水辺づくりや森づくりが堅調に推移するとともに、植物研究用装置や植物工場の大型案件がありました。また、大阪・関西万博で展示されるアクアポニックス(植物の水耕栽培と陸上養殖を組み合わせた循環型生産システム)や会場の緑化のための植物苗・資材も納入いたしました。こうした結果、前連結会計年度比で受注高は49.3%増加し2,170百万円、売上高は20.8%増加し1,758百万円となりました。利益面につきましては、売上高の増加により営業利益は前連結会計年度比で146.3%増加し126百万円となりました。

 

②財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度末における総資産は75,847百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,388百万円の減少となりました。これは主に短期借入金の返済等に伴う現金及び預金の減少3,726百万円、売上高の増加に伴う売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産並びに電子記録債権)の増加2,015百万円、設備投資による有形固定資産の増加1,799百万円、棚卸資産の適正化へ向けた取組みによる仕掛品、原材料及び貯蔵品等の棚卸資産の減少1,172百万円、未収入金等その他流動資産の減少903百万円等によるものであります。

 負債は19,153百万円で前連結会計年度末と比べ6,365百万円の減少となりました。これは主に、短期借入金の減少5,000百万円、仕入債務(支払手形及び買掛金並びに電子記録債務)の減少2,804百万円、リース債務等その他固定負債の増加810百万円等によるものであります。

 純資産は56,693百万円で前連結会計年度末と比べ3,977百万円の増加となりました。これは主に、当連結会計年度において親会社株主に帰属する当期純利益が6,003百万円計上された一方、配当金として1,876百万円が剰余金処分されたこと等による利益剰余金の増加4,121百万円等によるものであります。

 これらの結果、自己資本比率は74.7%と前連結会計年度末と比べ7.4ポイントの増加となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローによる資金の増加4,445百万円、投資活動によるキャッシュ・フローの減少1,154百万円、財務活動によるキャッシュ・フローの減少7,245百万円、現金及び現金同等物に係る換算差額の減少74百万円等により、期首時点に比べ4,027百万円減少し、当連結会計年度末には12,765百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は4,445百万円(前年同期は、2,738百万円の資金の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益8,126百万円の計上による資金の収入、仕入債務の減少による資金の支出2,779百万円、売上高の増加に伴う売上債権の増加による資金の支出2,111百万円、法人税等の支払による資金の支出2,026百万円、減価償却費の計上1,723百万円、棚卸資産の適正化へ向けた取組みによる棚卸資産の減少による資金の収入473百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は1,154百万円(前年同期は、3,778百万円の資金の支出)となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出2,182百万円、信託受益権の純減額による資金の収入504百万円、投資有価証券の売却による収入516百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は7,245百万円(前年同期は、2,798百万円の資金の収入)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出5,000百万円、配当金の支払額1,870百万円等によるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金および設備資金を自己資金で賄うことを基礎としておりますが、必要に応じて銀行借入により資金調達しております。

 また、運転資金の効率的な調達を行うため、当連結会計年度末において複数の機関との間で合計3,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高-百万円、借入未実行残高3,000百万円)。

 事業活動における運転資金需要の主なものは、当社製品の製造に係る原材料費、労務費、外注加工費等の製造費用、各事業についての販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金需要としては、製造用設備やレンタル用設備、受託試験用設備への投資に加え、情報処理のためのソフトウエアへの投資等があります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって適用した重要な見積りの方法につきましては、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループでは研究開発活動としてコア技術である環境創造技術の深耕とネットワークシステム技術や電子デバイス計測制御技術との組み合わせにより、AI、自動運転分野や5G・IoTに関連する市場に向けた各種試験装置の製品開発を行いました。また、新たな事業領域である食品機械市場、マテリアル市場に向けた製品開発や、省エネルギー・地球温暖化対策といった環境負荷低減技術の研究開発を行ってまいりました。

当連結会計年度における研究開発費は1,343百万円であり、事業セグメント別の研究開発費は装置事業1,283百万円、サービス事業59百万円です。装置事業及びサービス事業の研究開発活動の成果は次のとおりであります。

 

(1)装置事業

①地球温暖化係数(GWP: Global Warming Potential)の低い新冷媒R-473Aを搭載した恒温恒湿器の各モデルの開発を進めております。冷媒R-23よりGWP値が88%削減された新冷媒を採用するとともに、独自技術により性能確保をしながら省エネを実現し、製品ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量低減に貢献してまいります。

②環境試験器のグローバルスタンダードモデルである恒温(恒湿)器「プラチナスJシリーズ」について、ECOタイプ6器種を開発し発売を開始しました。ECOタイプは現行モデルと比較して定値運転時の消費電力を最大70%低減できます。特に、電池の充放電試験や電子部品・電子機器の性能評価試験など定値の長期運転において、高い省エネ効果を発揮します。

③急速温度変化チャンバーのハイパフォーマンスモデルを開発しました。本モデルは、半導体の業界試験規格及び国際試験規格に適合し、試料温度を20℃/分で勾配制御可能です。高集積化・高密度化により発熱量が増大する高性能半導体の信頼性確保に向けた試験需要に応えてまいります。

④急速温度変化チャンバーの大容量300Lタイプの発売を開始しました。一度により多くの試料に10℃/分の温度勾配での試験を可能としました。

⑤先端パッケージ、材料評価用の次世代のエレクトロマイグレーション測定装置を開発しました。ストレス電流50mAであった従来装置に対し、50nAからの微小電流印加を可能としました。Beyond 2nm配線の信頼性評価が可能な製品として、先端半導体の信頼性向上に寄与します。

⑥半導体パッケージや実装基板の反り変形を可視化する「熱変形計測サービス」において、新たにリフロー炉の温度環境(最大260℃)及び大型基板サイズへの対応を開始しました。さらに、放熱設計用途向けに高速・高精度の「熱画像解析サービス」を開発し、熱設計向け受託計測サービスを拡充しました。

⑦-70℃の超低温で食品を急速に冷凍し、生鮮食品も鮮度を保ちながら保存できる「超低温ショックフリーザー」を開発しました。環境試験器メーカーならではの独自の温度制御技術を活用し、フードロスの削減という社会課題の解決に貢献します。

⑧神戸R&Dセンターに設置されている全天候型試験ラボを活用し、新たな試験方法の開発を進め、学術講演会等において情報発信を行っております。全天候型試験ラボでは、温度、湿度、雪、雨、霧、太陽光、風のような地球上のさまざまな気象環境を動的に再現することができます。社外への情報発信を進め、顧客の最先端ニーズに応えてまいります。

 

(2)サービス事業

①オンラインコンバーター及び槽内監視カメラのモデルチェンジを実施しました。装置稼働状況の一元管理や試験データの可視化を通じて、顧客における製品開発の効率化及びDX推進に貢献していきます。

②新試験所「あいちバッテリー安全認証センター」で、国際規則UNECE R100.03 PartⅡに準拠した国内初のEVバッテリーモジュールのLPGバーナー式耐火試験装置を開発しました。LPGバーナー式耐火試験は、安定した温度で再現性高く試験ができる点で期待が大きい試験手法です。