第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、“快適で健康なヒューマンライフの創造に貢献する”という企業理念のもと、健康・医療をメインテーマに事業を展開し、グローバルなメディカルカンパニーへと飛躍することを目指しております。

当社グループは、「社会はいつでも我々の製品を必要としている」をスローガンに、ESG、SDGsを意識した経営を推進し、人々のWell-beingの実現、サステナブルな社会の創造に貢献してまいります。

 

当社グループの事業は、ウォーターヘルスケア事業と医療関連事業からなり、現在、ウォーターヘルスケア事業が連結売上高の87.1%を占めておりますが、今後、医療関連事業を新たな事業軸の一つとして構築していくことを目指しております。電解水透析事業や再生医療関連事業を展開する医療関連事業を拡充することにより、グループの収益基盤が強化されるだけでなく、当社グループをメディカルカンパニーとしてブランディングすることで、整水器販売を中心とするウォーターヘルスケア事業への大きな波及効果を得ることが出来ると考えております。

ヘルスケア、医療に関連する当社グループ事業の成長には、科学的エビデンスによる裏付けが不可欠です。これまで30年以上に亘り産官学共同研究を実施し、その成果を国際学術誌に論文として多数発表してまいりました。今後も、理化学研究所や東京大学、神戸大学、早稲田大学を始めとする研究機関と連携し、既存ビジネスの拡大とともに新たな事業シーズの発掘を目的に、基礎研究から臨床研究まで幅広い研究開発を実施してまいります。

資本面では、「資本効率性」、「株主還元」、「財務健全性」をバランス良く実現することを基本方針とし、常に経営効率の向上に取り組み、適正な利益を生む経営を実施するとともに、ステークホルダーへの適切な収益の分配、安定した財政基盤の更なる充実に努めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、効率的で筋肉質な経営を目指しており、連結売上高経常利益率及びROE(自己資本利益率)を意識した経営を行っており、連結売上高経常利益率20%以上、ROE10%以上を中期的目標としております。

 

(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

新型コロナの感染症法上の位置付けが昨年5月に5類に移行されたことによる経済活動の正常化が進む一方、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化に加え、急激な円安の影響による原材料価格の高騰、物価上昇等の影響により、依然として先行きは不透明な状況が続いております。

このような環境のもと、当社グループにおきましてはコロナ禍により制限を受けていた対面販売や医療機関向けの営業活動が正常化へと向かい、2021年3月期を底とした成長路線を進み、当連結会計年度は過去最高の売上高を更新することができました。

コロナ禍を経て、世間の健康意識がより高まっていることも、ヘルスケア、医療分野を主事業とする当社グループにとってはチャンスであると捉えております。具体的には近年の「腸活」への関心の高まりや、水素ガスを使用した治療が先進医療として厚生労働省から承認されるなど水素の効果に関して公に認められる事例が出てきております。また、一昨年頃からは、永遠の化学物質ともいわれる有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)による水質汚染が社会問題となっており、水の安全性に対する意識が一層高まっておりますが、当社のカートリッジに使用している活性炭フィルターは、これらの有機フッ素化合物を除去することが可能となっております。こういった市場環境が当社グループにとって追い風となるものと考えております。

製造におきましては、仕入コストの上昇など引き続き厳しい環境が続いておりますが、新たな部材調達先の確保など先行して対策を講じており、強いサプライチェーンの構築、より筋肉質な経営へと繋げてまいります。

当社グループは、2027年3月期連結売上高320億円を目標とし、その実現並びに中長期的な企業価値向上を目指し、以下の3点を重点的に取り組んでまいります。

 1.主事業である整水器販売事業の直接販売部門の効率化を伴う量的拡大

 2.整水器販売事業の卸・OEM部門における海外展開の拡大

 3.世界に先駆けた電解水透析の普及と、保険適用も視野に入れた研究開発等の活動

 

①ウォーターヘルスケア事業

当社の電解水素水整水器は、アルカリ性で抗酸化性のある水素を含有した電解水素水を生成し、「胃腸症状の改善」に効果が認められた、厚生労働省所管の管理医療機器です。腸は免疫機能の約70%を担っており、また第二の脳とも呼ばれ、健康の維持・増進のためには腸内環境を整えることが重要であるとの認知が広まってきております。コロナ禍を経て、腸を健康にする「腸活」がさらに脚光を浴びており、「胃腸症状の改善」に効果のある整水器の需要は、今後、高まっていくと考えております。

電解水素水は胃腸症状の改善だけでなく、含有する水素の抗酸化性による健康保持、増進、疾病予防への効果も期待されており、当社では30年以上に亘りさまざまな大学、研究機関と産官学共同研究を実施し、その成果を国際学術誌で論文発表してまいりました。当社は、健康寿命の延伸、医療費の削減には「予防」が最も重要との考えのもと、その一助として「ウォーターヘルスケアという、新習慣。」を提唱しております。これは「健康長寿社会の実現」を掲げ、健康保持・増進策に注力している国策にまさに合致するものであり、厚生労働省、経済産業省が推奨する「健康経営®」を切り口に、企業への一括導入に注力しております。また、導入企業の従業員への展開へと広げてまいります。その他、新しい販路としてスポーツ分野、美容分野にも注力してまいります。

コロナ禍を契機として、新たな販売チャネルとして注力しておりますECサイト等のWEBマーケティングも引き続き推進してまいります。

当社の電解水素水整水器のユーザー数は、直接販売、間接販売合わせて現在約85万件ですが、これを300万件規模に拡大することを目指しております。これにより、消耗品である浄水カートリッジ販売がストックビジネスとして安定した収益基盤となります。仮に300万件のユーザー数を実現し、その70%が浄水カートリッジを購入した場合、売上高は年間約20,000百万円となります。その早期実現のため、価格帯も含めてより普及しやすい商品の開発、認知向上を目的とした広報施策など、中長期的視野に立った俯瞰的な対策を講じてまいります。

 

海外事業では、インドネシアで、日本の技術で生成した、より安全で美味しいアルカリ性の水をコンセプトとした「Pristine(プリスティン)」をブランドに、ボトルドウォーター事業を展開しております。インドネシアは、世界4位の人口と経済成長による中間所得層の増加により、ボトルドウォーター市場が拡大路線にあります。その中で、まずは売上高を伸ばして同国内でのシェアを高めることを方針とし、2034年度に売上高1兆ルピア(96億円、1ルピア=0.0096円)の目標を現地パートナーのシナルマスグループと掲げております。従来からのSNS等を通じたデジタルマーケティングに加え、より幅広い層への認知を拡大させるため2023年度よりインドネシア全土でのテレビCMを開始するなど、改めてマーケティングへの先行投資を実施しております。そして生産体制の強化、効率化、安定供給を目的に、シナルマスグループと新たな工場建設について協議しております。またジャワ島外へも展開地域を拡大していくとともに、今後の業績伸長を見据えた製造体制の強化にも取り組んでまいります。

 

②医療関連事業

電解水透析は、これまで透析液原液の成分(溶質)ばかりに主眼が置かれていた透析治療に、溶媒である「水」そのものに世界で初めて着目した次世代新規治療法です。透析患者のQOL向上とともに病院経営にも収益面で寄与することが期待されております。2018年7月に厚生労働省から提出された腎疾患対策検討会報告書において、CKD(慢性腎臓病)重症化予防を徹底するとともに、CKD患者(透析患者及び腎移植患者を含む)のQOL(生活の質)の維持向上を図ることが大方針に掲げられ、電解水透析がまさにその指針に沿うものとしての認知も広がっております。コロナ禍においては医療施設への訪問ができないなどの営業上の制約がありましたが、新型コロナの収束により緩和されてきております。現在、全国展開する大手病院グループの主病院や地域で主導的立場の病院への導入を進めており、それらを起点に更に普及を促進してまいります。まずは、国内約4,500施設の約7%、300施設への設置を目指します。また、国内にとどまらずグローバルスタンダードへの発展を目指します。

 

再生医療関連事業では、ステムセル研究所が、再生医療・細胞治療を目的とした、「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞バンク事業及び、それらの細胞を利用した、新たな治療法、再生医療等製品の開発、そしてこれらの事業基盤をベースにした再生医療・不妊治療・出産・子育て等の領域での事業開発及び投資等の事業展開を行っております。同社は、国内のさい帯血保管総数の約99%のシェアを占める国内最大手の民間さい帯血バンクです。従来の「さい帯血」に加え、2021年4月より日本初の「さい帯保管サービス」を開始し、また、昨年6月には細胞の保管意義の更なる向上を目的に「さい帯」を保管されるご家族向けに、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質(エクソソーム)等を含む培養上清液を作成するサービスも開始しております。コロナ禍において新たに取り組んできたデジタル・マーケティングと、従来のリアル・マーケティングの双方のシナジーにより、認知向上、保管検体数増加が大きく加速していくものと考えております。

一方、同社の強みである、全国の産婦人科医院及び出産を控える妊婦さんとその周辺の関係者の方々へアプローチできる独自のネットワークを活用し、「さい帯血」や「さい帯」以外の他の細胞のバンキング、またそれらを利用した新たなプロダクトやサービスの開発等の事業展開を、M&Aも含めて推進してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、以下のテーマを課題とし、その対策に取り組んでおります。また、SDGsの取組みとも連携し、持続的成長、企業価値向上を実現してまいります。

 

①ウォーターヘルスケア事業

整水器関連事業につきましては、現在の約85万件の整水器アクティブユーザー数を300万件とすることを目指しております。ユーザー数拡大の早期実現のためには販売力を強化し、整水器市場を拡大させることが最も重要であると考えております。

職域販売におきましては、「セミナー数×1セミナーあたりの販売台数」が実績の基本的な要素となり、セミナー数の増加および1セミナーあたりの販売台数の向上が業績拡大のための課題となります。セミナーにつきましては、これまで代理店である企業からの紹介をもとに展開してまいりましたが、現在、スポーツ、美容関連等の団体を起点とした展開にも注力しており、成果が上がってきております。1セミナーあたりの販売台数につきましては、営業トークを随時ブラッシュアップするとともに、営業ツールの見直し等、営業力の底上げに取り組んでおります。また、今後の業容拡大に備え、営業人員の増員にも取り組んでおります。

卸・OEM部門では、成長余地が特に大きな海外取引の新規開拓に注力しておりますが、展開を更に大きく進めるためには、製品の海外での安全認証取得が不可欠なことから、その対応を進めております。

WEBマーケティングにも引き続き注力してまいります。適正な顧客獲得単価(CPA)を維持しながら業績を伸長させるため、自社メディアの強化および資料請求からの購買率の向上を課題として取り組んでおります。また、電解水素水、整水器の認知や理解向上にも寄与するものであり、既存の販売チャネルとのシナジーを念頭に、全体最適の展開を追求しております。

インドネシアでのボトルドウォーター事業につきましては、ミネラルウォーター市場に占めるアルカリ水の市場割合を拡大させることが重要であると考えております。将来の飛躍的成長に向けて、2023年度よりインドネシア全土でのテレビCMを開始するなど、改めてマーケティングへの先行投資を実施しております。ペットボトルの販売では、ジャワ島外へ展開地域を拡大し、ガロンの宅配では、ジャカルタ市内を中心に専属のディストリビューターを増やし、より地域に密着した体制構築に取り組んでおります。

 

②医療関連事業

電解水透析事業につきましては、メイン商材である多人数用電解水透析システムの導入は、施設にとって設備投資となります。通常、透析用水作成装置は10年以上使用されることが多く、電解水透析システムの導入タイミングは、施設の新設時か経年劣化による装置の入替え時となり、時機を逸すると次の営業機会までのスパンが長くなります。より多くの商機を確保するため、透析学会以外にも腎臓関連の学会、各地の臨床工学技士会でのセミナー展開など活動域を拡大するとともに、代理店との連携強化により新規案件の開拓に注力しております。

また、電解水透析システムをより多くの施設に導入いただくには、水の質、安定性はもちろん、システムの小型化やメンテナンス性の向上、コストも重要な要素です。今後、より普及を促進することを目指し、医療機器化も視野にさらなる改良、開発に取り組んでおります。

細胞バンク事業における、さい帯血の保管につきましては、厚生労働省健康局より「臍帯血取扱事業の届出」の提出を要請されており、ステムセル研究所は今後も同省と協議しながら適切に事業運営を行ってまいります。

また、近年さい帯血の保管の需要が急激に高まってきており、「さい帯(へその緒)保管サービス」を含めた、出産に由来する組織由来の細胞(周産期組織由来細胞)等の採取、保管事業の拡大に備え、細胞処理能力、細胞保管能力の増強を行ってまいります。

 

③新規事業

当社グループが持続的に成長するためには、現在の主軸事業である整水器関連事業の他に、新たな事業軸を構築することが必要であると考えております。その一つとして最も注力しております医療関連事業の他、農業分野や工業分野でも電解水素水による新規事業の創出を目的とした研究開発に取り組んでおります。いずれも非常に大きな将来性がある分野です。今後も、グループ全体のシナジーを念頭に、将来性の見込める新規事業に対して先行投資を実施してまいります。

 

④サステナビリティ

当社グループでは、5つの重要領域(健康・医療、環境、ひと、社会、サプライチェーン)における9つのマテリアリティ(重要課題)を特定しております。企業活動を通じて、社会課題を解決していくべく鋭意取り組んでまいります。

・健康寿命の延伸への貢献

・新しい医療(治療法・サービス)の開発

・地球温暖化対策への対応

・環境対策(循環型社会の構築)への貢献

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・働き方改革の実施

・地域社会との共存

・農業分野への貢献

・持続可能な調達の実施

 

⑤人財

当社グループが持続的な成長を実現するためには、多様な人財の登用、育成が必要です。中でも、女性の活躍は不可欠であると考えており、マテリアリティでもありますダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでまいります。また、社員の生産性の向上や健全な労働環境づくりを目的に、代表取締役を責任者とした体制で「健康経営」を推進するなど、働き方改革にも取り組んでまいります。

 

⑥ガバナンス

当社グループが持続的な企業価値向上を実現するためには、経営の健全性、公正性および透明性を高くすることが重要であると考えており、コーポレート・ガバナンスが適切に機能するための体制強化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社グループは、“快適で健康なヒューマンライフの創造に貢献する”という企業理念のもと、健康・医療をメインテーマに、5つの重要領域(健康・医療、環境、ひと、社会、サプライチェーン)における9つのマテリアリティ(重要課題)を特定しております。事業を通じて社会課題解決に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

当社グループの価値観・取り組みは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」とも親和性が高く、ステークホルダーの皆様との対話も含め、事業活動を通じてSDGsの達成に貢献できると考えております。

また、当社グループの持続的な成長を実現するためには、人財が特に重要なマテリアリティの一つであると考えており、性別や国籍、職歴等に拘らない多様な人財の登用、育成に取り組んでおります。

 

(2) ガバナンス

当社グループでは、代表取締役をリーダーとして、日本トリム経営企画部を中心に、営業部門、管理部門にかかわらず、部門横断的なメンバーでサステナビリティ関連課題である重要領域に関するチームを構成し、関連課題の事業リスク・機会の分析と対応の検討を実施しております。その内容は、各チーム責任者から代表取締役に随時報告するとともに、取締役会はその報告を受け、監督しております。今後、サステナビリティの実現に向けた活動を推進する委員会の設立を検討してまいります。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、日本トリム経営企画部と管理本部が中心となり各担当部署と連携してリスクの識別、評価、管理を行っております。リスクの分析結果を踏まえ、全社レベルでの優先順位の高いリスクを抽出し、この結果は取締役会に報告されます。当社グループは、事業との連携も念頭に、今後の対策を議論、検討し、経営・事業戦略へ組み込んでまいります。

 

(4) 人的資本関係

① 戦略

当社グループにおける、人財の採用・育成及び社内環境整備に関する方針、戦略は下記のとおりです。

(人財採用・育成方針)

当社グループは、多種多様な人財が最大限の力を発揮することが中長期的な企業価値向上に繋がるという考えのもと、性別・国籍・職歴に拘わらず、多種多様な人財を積極的に採用しております。

外国人の採用につきましては、国籍等に囚われず、その能力・成果に応じた邦人同様の人事評価を行うことを基本方針としております。特に海外のグループ子会社においては積極的に現地国の人財を採用しております。

採用した人財に対して雇用を保障する事が企業の最も重要な社会的責任の一つであると考えております。雇用を維持しつつ、従業員がより成長できる機会を提供することで、会社の持続的成長を可能にすると考えております。

 

(社内環境整備に関する方針)

従業員の帰属意識の醸成や、株価上昇に対する動機付け等の観点から、2023年3月より、株式給付信託(J-ESOP)を導入いたしました。本制度は従業員自身が株主となることで、企業価値向上に伴う株価向上が従業員の財産形成にも資することができ、また、従業員が企業価値向上のためにより高い次元で業務に邁進し、挑戦することで、会社の持続的成長に寄与するものであると考えております。

その他、専門性の高い資格取得に対する奨励金の支給や、E-Learningを提供し、従業員の自主的なスキルアップ・自己啓発活動を促す環境を整備しております。

多様な人財の活躍のため、女性の登用も積極的に行っております。2024年3月末時点では、管理職における女性の割合は5.8%と前年度の5.9%よりも少し低下しましたが、産前・産後休暇や育児休暇を取得し、復職する従業員は年々増加しております。昨年5月からは、育児短時間勤務の利用対象者を拡充するなど、今後も全社員がより力を発揮しやすい職場環境の醸成に向けた環境整備に努めてまいります。

 

② 指標及び目標

当社グループでは、上記① 戦略 において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

指標

実績

中期目標

2023年3月期

2024年3月期

管理職に占める女性労働者の割合

5.9

5.8

8.0

平均勤続年数

13.07

13.65

15.00

 

※当社は、グループ各社と連携してサステナビリティに関する重要課題に取り組んでおりますが、具体的な実績及び目標に関しては連結ベースの数値ではなく、当社の数値を記載しております。

 

性別に関係なく活躍できる環境を提供するため、引き続き、産前・産後休暇や育児休暇制度の充実を図り、加えて女性幹部候補の育成にも努めていく方針です。また、従業員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスや優秀な人財の確保・定着の実現に向け、今後も就業規則の見直しや多様な制度導入の検討を進めてまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 取扱製品、サービスの売上構成に関して

当社グループの主力取扱製品は、電解水素水整水器(連結売上高に占める割合45.1%)及びその浄水カートリッジ(同26.2%)であり、当社グループの業績は当該整水器関連事業への依存度が高い状況です。浄水カートリッジ販売は、外的影響を受けにくい安定した収益基盤となっておりますが、整水器につきましては、何らかの理由で営業活動に支障が出た場合、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

グループの収益基盤強化のため、整水器以外の事業(ウォーターヘルスケア事業のボトルドウォーター事業や医療関連事業)の成長に向けて取り組んでおり、これらの伸長により、整水器の売上高構成比は下がりつつあります。

 

(2) 販売チャネルに関して

当社グループの主事業である電解水素水整水器販売において、対面による説明販売を主とする職域販売、取付・紹介販売、店頭催事販売及びメンテナンス(修理)時の販売が整水器売上高の76.5%を占めており、コロナ禍のように人との対面機会が制限される事態が発生すると、営業機会が減り、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

リモート営業やWEBマーケティングなど、対面によらない販売チャネルの構築にも注力しております。

 

(3) 原材料及び部品の調達に関して

当社グループは、海外も含めて多数の取引先から原材料及び部品を仕入れております。当社グループがコントロールできない自然災害や市況変動、そのサプライヤーの原材料及び部品の確保状況によって部材の調達ができず、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。同一部品の仕入先を複数確保するとともに、コストも勘案しながら国内で調達できる体制を目指してまいります。

また、SDGsの観点からサステナブルな調達活動に対する社会的要請が今後より強くなると見込まれ、対応の遅れが業績に影響を及ぼす可能性があります。社会と環境に配慮した責任ある調達活動を実施してまいります。

 

(4) 品質管理に関して

ウォーターヘルスケア事業の主製品である電解水素水整水器は、製品に何らかの欠陥が発見された場合など、製造物にかかる賠償責任を負っております。また、顧客の安全のために大規模なリコールを実施する可能性があり、これらにより当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。電解水素水整水器はQMS省令※1に則り、ISO13485及びISO9001※2を取得した自社工場で製造しており、安全を最優先課題とし、品質の維持・向上に努めております。また、製造物に関して賠償が発生した場合に備え、対象となる全ての製品につき保険に加入しております。インドネシアのボトリング工場におきましても整水器と同様に製品の欠陥や賠償が発生するリスクがありますが、日本水準の品質管理の運用を目指し、設備管理、社員教育を実施しております。

医療関連事業の細胞バンク事業におきましては、細胞の分離・処理作業に必要な試薬や長期保管用タンクの冷却用液体窒素の供給が滞ったり、設備が正常に稼動しないなどにより細胞の品質維持に支障をきたす場合があります。これらにより、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。ステムセル研究所では、グローバル品質規格であるAABB※3やISO9001といった第三者の認証機関より査察を受け、品質や設備運用の維持向上に努めております。

※1 QMS省令: 医療機器、対外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(Quality Management System)。

※2 ISO13485、ISO9001:ISOとは、工業分野の国際標準規格。中でもISO13485は、医療機器の品質標準規格。

※3 アメリカ血液銀行協会(American Association of Blood Banks)。

 

(5) 風評被害に関して

当社グループが展開する各事業において、当社以外の事業者が関連法令に違反して当該違反の事実がマスメディア等に取り上げられた場合やSNS等でネガティブな情報が掲載された場合に、当社グループも風評被害を受け、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。業界団体のコンプライアンス強化の取り組みにも積極的に関与し、健全な市場環境の維持に努めます。

 

(6) 法的規制等に関して

当社グループは事業遂行にあたり、法的規制を受けております。国内の整水器関連事業におきましては、医薬品医療機器等法(薬機法)の規制を受けており、医療機器の製造を行うためには厚生労働省より指定を受けた第三者認証機関より医療機器製造販売認証を必要とし、また、販売に当たっては販売業の届出をする必要があります。細胞バンク事業におきましては、再生医療等安全性確保法により、さい帯血を処理するには特定細胞加工物製造許可を必要とします。また、その他事業も含め、国内におきましては独占禁止法や個人情報の保護に関する法律等の法規制を受けております。事業を展開する各国におきましては、当該国の法的規制の適用を受けております。当社グループでは、それぞれ法規制に対応した体制を整備しておりますが、関連する法令の改正、強化や新たな法規制が制定された場合、これらの法規制等に違反した場合、社会的要請に反した行動をした場合など、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁等により、当社グループ事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。業界団体のネットワークも活用し、関連法令に関する情報取得に努めております。

 

(7) 個人情報の漏洩に関して

個人情報の管理につきましては細心の注意を払っておりますが、社内の情報システムの不具合やサイバー攻撃等により個人情報の漏洩や不正使用等が発生した場合、社会的信用の低下や賠償金の支払い等により、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。

秘密情報の漏洩や不正使用等を防ぐため、情報セキュリティ対策ツールの導入やIT資産の一元管理を実施するとともに、社内教育にも徹底して取り組んでおります。

 

(8) 災害・事故等に関して

大地震等の大規模自然災害や火災等の突発的な事故が発生した場合は、生産設備等に多大な損害を被る可能性があり、操業の中断により出荷に遅れが生じ、また破損した建物や設備の復旧に多額の費用がかかるおそれがあります。また、コロナ禍のように、新型の感染症等が拡大した場合、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、災害・事故等の発生に備えたリスク管理を実施しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

(財政状態)

当連結会計年度の財政状態は以下のとおりであります。

資産合計は31,544百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,497百万円増加(前期比8.6%増)いたしました。

負債合計は7,917百万円となり、前連結会計年度末に比べ999百万円増加(同14.4%増)いたしました。

純資産合計は23,627百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,498百万円増加(同6.8%増)いたしました。

 

(経営成績)

当連結会計年度の当社グループの売上高は20,414百万円(前期比13.7%増)、営業利益は3,080百万円(同29.5%増)、経常利益は3,227万円(同28.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,150百万円(同30.6%増)となりました。

セグメント別の業績は以下のとおりであります。

ウォーターヘルスケア事業の売上高は17,777百万円(前期比13.5%増)、セグメント利益は2,688百万円(同26.2%増)となりました。

医療関連事業の売上高は2,636百万円(前期比15.3%増)、セグメント利益は392百万円(同58.1%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より1,163百万円増加して13,959百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は2,973百万円(前期は1,937百万円の収入)となりました。

これは主に売上債権の増加578百万円及び法人税等の支払額833百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益3,253百万円、減価償却費440百万円の計上及び前受金の増加368百万円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は882百万円(前期は551百万円の支出)となりました。

これは主に投資有価証券の売却による収入72百万円がありましたが、定期預金の預入による支出500百万円、有形固定資産の取得による支出386百万円及び投資有価証券の取得による支出199百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は998百万円(前期は500百万円の支出)となりました。

これは主に配当金の支払額970百万円があったことによるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

ウォーターヘルスケア事業

5,214,191

114.0

  電解水素水整水器

2,930,019

117.5

  カートリッジ

1,065,610

95.6

  その他

1,218,561

126.2

医療関連事業

39,599

93.9

合計

5,253,791

113.9

 

(注) 金額は製造原価によっております。

 

b. 受注実績

当社グループは見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

ウォーターヘルスケア事業

17,777,955

113.5

  電解水素水整水器

9,199,470

112.6

  カートリッジ

5,357,548

105.8

  その他

3,220,936

132.5

医療関連事業

2,636,909

115.3

合計

20,414,865

113.7

 

(注) 上記販売高のうち、日本トリム単体の販売高は電解水素水整水器9,020,224千円(前期比112.9%)、カートリッジ5,348,075千円(同105.8%)であります。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態の分析

当連結会計年度の総資産は31,544百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,497百万円増加(前期比8.6%増)いたしました。

(資産)

流動資産は22,919百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,025百万円増加(同15.2%増)いたしました。主な要因は、営業活動の結果、現金及び預金が1,163百万円、受取手形及び売掛金が597百万円増加したこと、及び有価証券の満期日が1年内となったことにより固定資産からの振替1,302百万円があったことによるものであります。

固定資産は8,624百万円となり、前連結会計年度末に比べ527百万円減少(同5.8%減)いたしました。主な要因は、投資その他の資産に含まれる長期預金が500百万円増加した一方で、前述のとおり投資有価証券の流動資産への振替1,302百万円を行ったことによるものであります。

 

(負債)

流動負債は6,630百万円となり、前連結会計年度末に比べ724百万円増加(同12.3%増)いたしました。主な要因は、子会社であるステムセル研究所の業績伸長等に伴う前受金の増加368百万円や法人税、消費税等の税金の納付予定額が212百万円増加したことによるものであります。

固定負債は1,287百万円となり、前連結会計年度末に比べ274百万円増加(同27.1%増)いたしました。主な要因は、昨年3月より導入した株式給付信託(J-ESOP)制度に係る株式報酬引当金が88百万円増加したことや、ボトルドウォーター事業においてガロンボトルの販売が増加したことに伴い、ボトルのデポジットが増加し長期預り保証金が66百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

純資産は23,627百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,498百万円増加(同6.8%増)いたしました。主な要因は、配当により971百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益2,150百万円の計上及び非支配株主持分が212百万円増加したことによるものであります。

 

経営成績の分析

(売上高)

売上高は前連結会計年度に比べ、2,463百万円増加して20,414百万円(前期比13.7%増)となり、前期に引き続き過去最高売上高を更新いたしました。

<ウォーターヘルスケア事業>

ウォーターヘルスケア事業の売上高は17,777百万円(前期比13.5%増)となり、そのうち国内の整水器販売事業は、整水器売上高が9,020百万円(前期比12.9%増)となりました。

職域販売部門では、昨年5月に新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行されたことで営業活動が正常化し、セミナー開催数がコロナ禍前の水準に回復してきたことに加え、スポーツ分野、美容分野における販路開拓が引き続き順調に進捗しました。また、昨年3月に価格改定を行ったことも売上高増加に寄与しました。取付・紹介販売部門では、ユーザー向けのイベントを再開し、ユーザーからの新規紹介に注力しております。店頭催事販売部門におきましては、展示会の開催数及び来場者数がコロナ禍前の水準に戻ってきており、業績は回復してきております。

卸・OEM部門におきましては、売上高が前期比52.8%増と大幅に伸長いたしました。コロナ禍の収束により既存OEM先への販売支援活動を活発に展開できるようになったことや、新規取引が順調に立ち上がったことなどにより、国内向け出荷数が回復してまいりました。海外向けにつきましては、ベトナム向けの出荷が伸長する一方、香港、フィリピン向けの取引がスタートしました。現在、さらに他のアジア諸国での具体的な商談が進んでおり、今後、海外向け取引は拡大してまいります。

WEBマーケティング部門では、現在の売上規模は安定的に維持できる水準となっております。さらに業績を伸長し、次のステージアップをはかるべく、引き続き自社メディアの育成に注力するとともに、販売プロセス効率化による購買率向上に取り組んでおります。

 

ストックビジネスである国内カートリッジ販売につきましては、昨年4月に実施した価格改定が寄与し、当連結会計年度の売上高は過去最高の5,348百万円(前期比5.8%増)となりました。

 

海外では、インドネシアのボトルドウォーター事業を展開するPT.SUPER WAHANA TEHNOの売上高が2,267百万円(前期比38.4%増)となり、2期連続で過去最高の売上高を更新しました。昨年1月に実施した卸ルートの大幅変更及び同社初のテレビCMやインフルエンサーを起用したSNS広告などのプロモーション強化が狙い通りの成果を発揮し、ペットボトル、ガロンボトル共に過去最高売上となりました。

 

 

<医療関連事業>

医療関連事業の売上高は2,636百万円(前期比15.3%増)となりました。

電解水透析事業では、当期に導入を見込んでいた4施設が、施設側の事情で次期以降に延びたことなどにより、徳洲会グループ・湘南鎌倉総合病院及び東京ネフロクリニックの2施設への多人数用機の導入にとどまった結果、売上高は60百万円(前期比48.0%減)となりました。現在、腎臓関連の学会、各地の臨床工学技士会でのセミナー展開など、活動域拡大による認知向上、代理店との連携強化による新規案件開拓、また透析患者の方々への認知向上を目的とした広報活動など、電解水透析普及拡大に向けた基盤構築に注力しております。

 

再生医療関連事業では、売上高が前期比18.7%増の2,576百万円となりました。ステムセル研究所の細胞バンク事業における「さい帯血」保管サービス(市場シェア約99%)及び「さい帯(へその緒)」保管サービス(同100%)それぞれの検体数増加により過去最高の売上高を更新いたしました。

 

(売上原価及び売上総利益)

売上原価は前連結会計年度に比べ、674百万円増加し、6,194百万円(前期比12.2%増)となり、売上総利益は1,788百万円増加し、14,220百万円(同14.4%増)となりました。ともに増加した主な要因は、整水器関連事業、ボトルドウォーター事業、細胞バンク事業でそれぞれ売上高が伸長したことによります。

売上原価率については30.3%となり、前期比0.4ポイント減となりました。改善した主な要因は、各事業の売上構成比の変化により売上原価率が上昇した一方、整水器関連事業の価格改定寄与により売上原価率が減少したことによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費)

販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ、1,086百万円増加し、11,139百万円(前期比10.8%増)となりました。整水器販売の伸長により営業費が増加したほか、定期昇給や人員増加、株式給付信託(J-ESOP)制度の導入などによる人件費の増加、及びインドネシアのボトルドウォーター事業におけるプロモーション費用の増加により増加いたしました。

当社グループでは、将来の飛躍に向けた先行投資として研究開発やPR活動のほか、人員の採用にも積極的に取り組むとともに、コスト削減にも鋭意取り組んでおります。

 

(経常利益)

経常利益は前連結会計年度に比べ、712百万円増加し、3,227百万円(前期比28.3%増)となりました。

売上高経常利益率は前期の14.0%から当期は15.8%となり、1.8ポイント改善しました。上述のとおり、販売費及び一般管理費の増加はありましたが、コロナ禍の収束による営業活動の正常化への動きや価格改定により、費用以上に売上高が伸長し、経常利益率が改善されました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループでは、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として経常利益率20%以上、ROE(自己資本利益率)10%以上を中期的目標としております。経常利益率については前述のとおりであり、ROEは9.9%となりました。

次期につきましては、整水器関連事業の営業体制強化に伴う人員増や引き続きボトルドウォーター事業のマーケティングへの先行投資等を見込んでいるものの、整水器や浄水カートリッジ、ペットボトルやガロンの販売数増加による収益増加を勘案し、経常利益率は16.2%、ROEは10.6%を計画しております。引き続き資産効率を意識した経営を行ってまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については次のとおりであります。

ウォーターヘルスケア事業及び医療関連事業の両事業において、原則、営業活動により獲得した自己資金により運営しております。

当社は、「資本効率性」「株主還元」「財務健全性」をバランス良く実現し、株主価値の持続的向上を目指すことを資本政策の基本方針としております。これらを実現するため、収益性の高い整水器関連事業を軸に経営基盤確立のための内部留保の充実を図りつつ、累進的な株主還元を実施してまいります。整水器の普及拡大にはエビデンスの取得が不可欠であるとの考えのもと、電解水素水の新たな機能の解明や、他分野への用途拡大を見据えた産学共同研究開発を積極的に推進し、投資を行っております。また、浄水カートリッジ販売につきましては毎期着実に伸長しており、安定的収益基盤として当社グループの財務健全性に大きく寄与しております。事業拡大のための設備投資や業務効率化のための基幹システムへの投資についても随時積極的に行っております。

整水器関連事業とともに、電解水透析事業、再生医療関連事業などの医療関連事業の成長により、グローバルなメディカルカンパニーへと発展を遂げ、持続的成長を実現してまいります。

株主還元につきましては、資本政策の基本方針のもと、DOE(株主資本配当率)3%を基準として定め、業績に多大な影響を及ぼすことがない限り、財務健全性を確保しながら累進的な配当を実施することとしております。当方針に則り、前期の普通配当の1株当たり80円から5円増配して85円(DOE3.0%)を実施いたしました。

次期につきましては、1株85円から10円増配し、業績予想達成時のDOE 3.1%に相当する95円を予定しております。今後の市場環境の動向、業績の状況を見極めながら、適正な配当金額について検討を継続し、変更する場合は速やかに公表いたします。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

詳細については、「第5経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社グループ(当社)が締結している経営上の重要な契約は、次のとおりであります。

契約相手先

期間

契約内容

株式会社長崎屋

2018年1月10日から
2038年1月9日まで

物品販売並びにこれに付随する業務を営むことを目的として、土地付建物を一括賃貸する。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、事業を拡充していくためには科学的エビデンスが不可欠であるとの考えのもと、ウォーターヘルスケア事業におきましては、水を電気分解して得られるアルカリ性で水素を豊富に含んだ「電解水素水」の研究及びそれを生成する「整水器」等の機器開発を行っております。また、医療関連事業では、電解水素水を血液透析に応用した「電解水透析」に関する研究並びに機器開発を、再生医療関連事業におきましては、「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞を利用した新しい医療の実現を目指した共同研究等を実施しております。

 

(1) ウォーターヘルスケア事業

① 飲用分野

電解水素水は、医療効果の認証を得ている「胃腸症状の改善」だけでなく、溶存する水素の抗酸化作用による様々な効果が期待されております。昨年4月に開設いたしました神戸大学との共同研究講座「エッセンシャルヘルスケア科学共同研究講座」を始め、理化学研究所、東京大学、東北大学、早稲田大学等と、電解水素水の効果とその機序解明とともに新たな事業シーズ探索を目的とした共同研究を引き続き進めております。

本年1月に、東北大学大学院医学系研究科、聖路加国際病院とともに、2006年から行ってきた電解水素水による包括的腎臓病対策研究の成果に関する総説論文を出版社MDPI(本社:スイス)の「Antioxidants」誌にて発表しました。また、高知大学医学部、高知県須崎市とは、電解水素水の日常飲用がメタボリックシンドロームとその予備群の内臓脂肪の目安となる腹囲を減少させることに関する論文を同誌に発表いたしました。さらに3月には理化学研究所と、電解水素水の抗酸化、抗炎症、鎮痛効果、抗疲労効果、抗細胞死効果、抗糖尿病効果、抗腫瘍効果といった多様な利点に関するこれまでの研究成果をもとにした総説論文を同誌に発表しております。

現在、新たに4報の論文を投稿中、2報を投稿準備中です。

 

② 農業分野

農業分野では、農作物の栽培に電解水素水を応用することにより、生産効率向上、抗酸化性や糖度の高い機能性作物生産への寄与、「還元野菜®」のブランド化など高品質・高付加価値農業の実現に向けて取り組んでおります。

農作物栽培に関する電解水素水の効果については、その機序解明を目的に、遺伝子レベルでの解析を行う共同研究を理化学研究所と推進しております。効果の機序を明らかにし、国内のみならず世界にも目を向け、農業分野事業拡大に向けて精力的に研究開発に取り組んでまいります。

 

(2) 医療関連事業

① 電解水透析分野

電解水透析では、昨年6月に「第68回日本透析医学会学術集会・総会」(会場:神戸国際会議場)において開催いたしましたランチョンセミナー「電解水透析~New Discovery~」が、透析治療に関わる医師や臨床工学技士などが立ち見も含め360名以上が出席されるなど、大きな注目をいただきました。

本年7月7日には、「電解水透析の臨床導入から15年、~電解水透析 第2章始動~」というテーマで第1回電解水透析研究会・学術集会が開催される予定です。電解水透析に関する認知、理解がさらに進み、電解水透析普及促進の大きな後押しになるものと考えております。

電解水透析は、多くの透析患者が最も苦しんでいる疲労感を抑制することができる新規治療法として期待されており、そのエビデンスをさらに強固なものとすべく、新たな臨床研究にも取り組んでおります。疲労感の抑制は、透析患者の家庭復帰や社会復帰に繋がり、QOL改善によるWell-beingの実現は、社会的、経済的にも大変大きな意義があります。引き続き、臨床データを蓄積していくとともに、今後、当システムの医療機器化や海外展開も視野に、更なる開発を推進してまいります。

 

 

② 再生医療分野

再生医療分野では、ステムセル研究所において、「さい帯血」や「さい帯」等の周産期組織由来の細胞を利用した再生医療、細胞治療の新たな治療法や製品、サービスの開発を目的とした研究開発に取り組んでおります。

「さい帯血」を用いた再生医療分野につきましては、国内では高知大学医学部附属病院小児科において脳性麻痺児に対する臨床研究が順調に進んでおります。大阪公立大学大学院医学研究科発達小児医学教室を中心としたグループでは低酸素性虚血性脳症(HIE)児に対する臨床研究も引き続き進められております。また、同グループとは昨年6月に「自閉症スペクトラム障害に対する自家臍帯血有核細胞を用いた治療法の開発」を開始することを決定し公表、2024年の臨床研究開始に向け準備を進めています。米国においては、FDA認可のもとデューク大学で進められている脳性麻痺児等へのさい帯血投与プログラムへ、ステムセル研究所でさい帯血を保管されている方々が参加されるケースが増加しており、その結果も良好です。

「さい帯」を用いた研究開発につきましては、大阪大学大学院医学系研究科スポーツ医学教室と設立した「運動器スポーツバイオメカニクス学講座」において、新たな半月板治療法の開発を推進しております。また、東京大学医科学研究所付属病院セルプロセッシング・輸血部及び東京大学医学部附属病院ティッシュ・エンジニアリング部との小児形態異常等の先天性疾患に対する治療法の開発も、引き続き推進しております。

 

(3) 製品開発

上記の様々な研究成果を反映して、水の質をより高めるための機能向上は勿論、業務用機器、電解水透析用機器、農業用機器始め、新たな事業開拓を目指した製品、技術開発にも取り組んでおります。また、再生医療分野でも独自の技術によるユニークな製品開発に取り組んでまいります。

 

このように、当社グループでは、電解水素水の機能の解明、普及促進への後押しとなるエビデンスの取得、並びに農業分野、電解水透析分野、再生医療分野等での新たな事業軸の構築に向け、研究開発及びより高機能な製品開発に注力し、更なる企業価値向上に取り組んでおります。

以上の結果、ウォーターヘルスケア事業における研究開発費は218百万円、医療関連事業における研究開発費は15百万円となりました。