第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

①経営理念

 大いなる志と溢れる情熱で、世界最高のイノベーションを創造し、社会に貢献します。

 

②経営方針

 電子デバイス製造に関わる様々な生産工程における課題について、トータルで解決する「パッケージ戦略」を成長分野で展開します。また、ニッチ分野に差別化された様々な製品を機動的に展開し顧客課題を解決、グループ事業の規模拡大を目指します。中期経営計画については、進捗や最新の情報を当社Webサイト内「IRライブラリー/2024年3月期」にて、2024年5月14日より公開しております。こちらも併せてご参照ください。

 https://www.vtec.co.jp/ja/ir/library/library3.html

 

(2)経営環境及び対処すべき課題と取組み

<経営環境>

 当連結会計年度における世界経済は、2025年3月以降の米国による外交、貿易及び関税政策の動向並びに米中間の地政学的緊張の高まりを背景に、先行きが不透明な状況が継続しました。米国においては、雇用や個人消費を中心に堅調な動きが見られたものの、全体としては景気後退への懸念が根強く残りました。中国では、財政及び金融両面からの景気刺激策により小売売上高は回復基調を示したものの、物価の低迷が続き、デフレ懸念が高まりました。欧州においては、国別に経済状況のばらつきが見られる中、金融緩和の進展により景気は緩やかに拡大しました。国内経済においては、企業の設備投資が堅調に推移し、全体として緩やかな回復基調が継続しました。

 

<中長期的な成長に向けた取組み>

 当社グループは、独自の技術開発に加え、M&Aや他社との協業により、半導体やディスプレイといった電子デバイスの製造に不可欠で付加価値の高い製品やサービスをお客様にお届けしております。また、デバイス製造の上流から下流に至る様々な工程に向け、多角的な製品展開を進めることで事業の規模の拡大を実現しています。

 また、市況の急変に機動的に対応できる生産体制を整えることで、持続的かつ安定的な成長を図る取り組みを行うと共に、成長が期待できる電子デバイス分野とは異なる市場での新しい事業の立上げにも挑戦しています。

 

<主な取組み>

①事業組織の概要

 当社は、連続的かつ迅速なオペレーション及びマーケティング活動を通じて顧客満足度の向上と関係性の深化を図ることを基本方針としております。この方針のもと、当社及びグループ各社間で重要課題を共有し、連携体制を強化することで、顧客に対するソリューションの迅速な提供を実現してまいります。

 製品の性能・品質に加え、コストや納期面でも特定部材や企業への依存を避けた生産体制を構築し、顧客の期待に応えるべく社内体制の最適化を進めています。その一環として、当社は監査等委員会設置会社へ移行するとともに、リスク管理、情報セキュリティ及びコンプライアンスを所管する委員会を新たに設置いたしました。これにより、事業の持続的な成長及び拡大を効果的に支えるための管理機能の強化を図っております。

 

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②半導体分野での取組み

 当社は、半導体・フォトマスク装置事業の分野で「パッケージ戦略」を展開しており、アドバンスドパッケージ分野での事業拡大にも注力しています。2025年3月期は、露光技術(Direct Imaging)や電気検査技術(O/S検査)で2つの新製品を市場に投入し、インターポーザー等に関連する先端分野向けで受注を拡大することに成功しました。また、有機EL用蒸着マスクの開発で培った技術を応用し、アドバンスドパッケージ用の電気検査治具(マイクロプローブ)を開発し、2026年3月期から本格的な販売を開始する予定です。他に、2024年3月期に開発した、フォトマスクの検査装置および測定装置とシリコンウェハの結晶欠陥検査装置については、市場への浸透が更に進みました。

 また、ブイ・テクノロジーグループで手薄だった半導体用の真空プロセス技術等の補強を狙い、2023年3月期に子会化したジャパンクリエイトについては、同社の多彩な顧客への販売実績とユニークな製品ラインナップをグループの顧客基盤と組み合わせて活用し、半導体の幅広い顧客にプロモーション展開しています。

 今後は、グループ全体としてシナジーが発揮できる環境の整備を進め、更なる事業の拡大に努めてまいります。

 

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③FPD分野での取組み

 FPD装置事業の分野について、装置の市場は一定の規模感で推移すると想定しており、高シェア製品については更なる差別化やコストダウン、および中国現地での生産等の対応を進め、収益機会の確保に努めてまいります。

 一方で、市場の成長が今後見込みにくい分野にある有機EL材料の事業を整理統合し、OLEDのサルベージについては、事業の再構築について検討を進めております。

 

④農業分野及びIT分野での取組み

 農業分野について、国内市場における販売が進展し、当社ブランド「Vトマト」の認知度は、2024年のJPCA Showへの出展や、全国各地の大規模小売店舗における販売活動を通じて着実に向上しております。一方で、需要の不安定化や中国における気候温暖化の影響、並びに国内農業拠点の一部における固定費の上昇等を背景に、収益性の改善を図るべく、生産体制の合理化及び生産品種の見直しを進めております。

 IT事業におきましては、2024年4月に株式会社クリマ・ソフトを当社子会社である株式会社アイテックの傘下に組み入れ、国内におけるソフトウェア関連ビジネスの拡大を推進しております。また、両社は当社グループにおける装置生産体制の強化及びDXの推進において、重要な役割を担っております。

 

⑤研究開発の取組み

 研究開発拠点としてYRPイノベーションセンターを設立、半導体関係装置の生産拠点の機能だけではなく、これまで分散していた開発機器を集結し、エンジニアが直接装置に触れることで、机上では得られない貴重なノウハウ取得や発想の転換から新製品につながるイノベーションを生み出します。

 また、開発成果を自社生産へ迅速に展開すると同時に、製品設計の共通化等を進めることで製造コストの削減や短納期化、品質の向上を実現させるなど、製品競争力の向上に向けた取り組みを重ねています。

 

⑥生産の取組み

 当社は、需要の変動に機動的に対応するため、製品の生産においては「ファブレス」を基本方針としており、国内外の協力会社への製造委託を行っております。特に、装置サイズが大きく、生産に広大なスペースを要するFPD装置事業においては、すべての製品を協力会社にて製造しております。

 一方、半導体及びフォトマスク装置事業においては、市場投入初期の製品や収益性の高い製品について、当社YRPイノベーションセンターにて製造を行い、それ以外の製品については協力会社に製造を委託する体制を採用しております。

 

<事業ポートフォリオに関する基本的な方針>

 電子デバイス製造分野を中心に、子会社の事業を含め、多方面で事業を展開しております。当社グループは、保有する事業ポートフォリオを適時・適切に見直し、グループの安定成長に最も適した全社管理に取り組んでいます。

 ポートフォリオの見直しに際しては、事業ごとの業績動向に加え、グループのビジョンへの適合性や、中長期の環境変化を踏まえた上で、判断いたします。

 

<経営理念及び中長期的な成長に向けた取組み 概要図>

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 当社では企業が社会ひいては地球と共存し、持続可能な発展ができるよう社会的責任を果たすことが重要と考えます。当社のサステナビリティを巡る取組みについて、経営理念、経営方針、企業行動指針並びに社員行動指針に基づき以下のとおり基本方針を定めております。

・世界最高のイノベーションの創造を通じた社会・地球への貢献

 事業を通じた地球環境問題への対処は勿論のこと、協賛を通じて地域社会への参画と貢献も行います。各種貢献のため、当社は新しい技術及び事業におけるイノベーションへの挑戦をし続けます。

・経済活動における法令遵守

 国内外の法令等を遵守し、良識のある企業活動を行います。公正な取引を行うために、市場における自由競争を尊重し、ステークホルダーの皆様との公平かつ対等な立場の維持に努めます。

・人権や様々な価値観の尊重

 従業員及び当社関係者の個人の多様な価値観・個性・プライバシーを尊重します。またアジアを中心にグローバルに企業活動を行う当社では、個々人の価値観だけでなく国や地域毎の文化や慣習も考慮し相互理解に努めます。

 

ガバナンス

 当社が手掛けるFPD装置および半導体装置の主要な課題が省エネルギー化でもあり、顧客のニーズを踏まえた製品開発、製造・販売を推進すること自体が、サステナビリティを含めた地球環境問題への対処であるものと認識しており、専任の部署に任せることなく、全社的に取り組んでおります。

 取締役会は、社長執行役員等からの報告、提案をもとに、当該サステナビリティを含めた地球環境問題に関連するリスクを管理、機会を活用するべく監督します。また、社長執行役員は、各本部会議に出席し、各本部の責任者より、当該サステナビリティを含めた地球環境問題に関連するリスク対応機会に関する報告、提案等を受け、精査・検討し、必要に応じて、管理・指示しています。

 

リスク管理

 気候変動を「危機管理基本規程」に定める外部リスクの一つと認識し、全社で取り組むリスクと位置づけています。そのため、事業計画及び予算の決定の際には取締役会のみならず各部署が、気候関連のリスク及び機会を考慮すべき事項として検討を行っております。今後も取締役会、本部会議に報告された気候関連リスク及び機会に関する報告を元に、適宜、精査し、管理・監督していく中で、気候関連リスクを評価し、その機会を活用するよう取り組んでいます。なお、リスク管理体制として、リスク管理委員会を設置しております。

 

戦略

(1)人的育成方針

 サステナビリティを巡る取組みの基本方針に定めているとおり、当社は従業員及び当社関係者の個人の多様な価値観・個性・プライバシーを尊重しております。またアジアを中心にグローバルに企業活動を行う当社では、個々人の価値観だけでなく国や地域毎の文化や慣習も考慮し相互理解に努めております。当社では海外現地法人含め本人の能力、識見等を公正に評価して性別、国籍、採用ルートによらず管理職に登用するという多様性確保の考え方のもと、企業活動を行っております。

 

(2)社内環境整備方針

 休日出勤時の振替休日100%取得や有給休暇の早期取得(付与より10ヶ月以内)に向けた徹底した管理、安全衛生委員会での海外現法含めたヒヤリハット事例の共有等、従業員の健康・安全を第一に考えて職場環境整備を行っています。

 

指標及び目標

(1)人的育成方針

 創業より様々な人々を受け入れ成長してきた背景(企業文化)があるため管理職に占める中途採用者は現状90%以上と非常に高く、その能力に応じて、適宜、執行役員への登用も進めてまいりました。また、女性及び外国人の管理職登用も、本人の資質・能力に応じて、積極的に進めてきました。この度、ビジネスをアジア諸外国中心に展開している現状を踏まえ、2030年代に向けて管理職に占める外国人の登用について10%程度の目標(現状4%程度)を設定いたしました。また、女性については昨年に引き続き2025年6月26日開催の第28回定時株主総会において役員を登用しましたが、管理職に値する人材は今後も積極的な登用を行う予定です。なお、中途採用者の管理職への登用は十分なため、2030年代に向けての具体的な数値は定めず現状維持としております。

 

(2)社内環境整備方針

 多様な働き方支援として、当社では最大1時間の時差出勤を認めております。また、2030年代に向けて、有給休暇の早期取得(付与より10ヶ月以内)の完全達成を目指してまいります(2024年度実績83.7%)。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)市場変化に関するリスク

当社グループは、主に電子デバイス製造装置の市場で事業を世界で展開しており、お客様価値を高める付加価値の高い製品を提供し持続的な収益の拡大に成功してきました。

一方で、装置市場は、需要動向、技術進化、産業政策や世界経済の変化による影響を受け易く、当社グループはこれら変化に対応できる収益構造の最適化にこれまで取り組んでまいりました。

しかしながら、予期せぬ大きな市場変化が発生した場合等、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、お客様のニーズを先取りした付加価値の高い装置を提供することで、お客様との取引を拡大し、事業を成長させてまいりました。その結果、お客様毎の取引額は増加してきたものの、市場変化による設備投資計画の延伸や受注キャンセル等が発生した場合には、業績に対し大きな影響が発生する可能性があります。

 

(2)生産の外部委託に関するリスク

当社グループは、市場変化リスクへの対応及び成長原資の配分最適化の為、主にFPD用の大型の設備について、生産を外部委託(ファブレス化)しています。

一方で、外部委託リスクを軽減する為に、生産委託先と協力会を組織し、当社グループの事業環境や納期や品質等の生産情報を共有しています。

さらに、部材調達の多角化をすすめ、当社製品・サービスの安定供給に努めています。また、YRPイノベーションセンターを設立し、一部重要部材の内製化にも取り組んでいます。

しかしながら、取引先の経営状態の急変、事故による製品の生産及び部品の供給体制への支障等が生じた場合、業績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)知的財産権等に関するリスク

当社グループは、製品の生産を協力会社に委託しており、当該企業との間では、技術やノウハウ等の知的財産の保護を目的とした契約を締結する等、知財等の社外流出の防止に努めております。また、事業の競争優位性を持続的に維持する為、特許・実用新案の出願を積極的に行っております。

しかしながら、人員の退職や、知的財産権の保護が不十分な地域における模倣行為等が発生した場合には、損害を被る可能性があります。

一方、第三者の知的財産権については、管理体制を整備し、これを侵害しないよう努めておりますが、万が一抵触した場合には、多額の係争費用や損害賠償金などが生じる可能性があります。

 

(4)研究開発に関するリスク

当社グループは、お客様の将来の要請に先駆ける製品の早期実用化を目指し、先進的な技術の開発に継続的に取組んでいます。また、お客様と技術開発を目的とした合弁会社の設立や、協業による技術開発等、取り組みを重ねています。

しかしながら、開発中の技術に対抗する技術が想定を上回る時間軸で登場した場合や、研究開発の大幅な遅延が発生した場合等により、研究開発の成果が必ずしも収益の獲得に繋がらない場合には、当社グループの業績へ大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5)品質に関するリスク

当社グループは、高い品質を確保する為に協力会社と仕様情報の共有化、完成品の出荷検査等の取り組みを継続的に実施しております。しかしながら、先端技術あるいは新技術を用いた製品を扱うことも多く、想定が困難な製品不具合等による検収の遅れ等が発生した場合、当社グループの業績へ大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)代金の回収に関するリスク

当社グループは、与信管理を厳格に行うと同時に、検収から代金回収までを計画的に行う為に納品済み装置の状況や課題等についてお客様と共有する等の取り組みを進めています。しかしながら、お客様の財務状況の変化や、新技術を用いた製品の不具合の発生と検収作業の長期化等が発生した場合には、当社グループの代金回収に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)企業買収に関するリスク

当社グループは、新たな事業領域への進出、新技術・ビジネス基盤の獲得、既存事業の競争力強化などを目的とした企業買収を実施しています。徹底した市場調査やデューデリジェンスに基づき企業買収等を実施しておりますが、予想を超えた事業環境の変化等の結果、期待した収益を獲得できない場合、期待した成果が十分に得られなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)重要な訴訟等に関するリスク

当社グループは、現在においてその業績に重要な影響を与えうる訴訟等に関与しておりません。また、法務・知財部による調査や社内チェック体制の整備をしており、必要に応じて取締役会等に報告し管理する体制となっています。しかしながら、当社グループの事業活動等が今後重要な訴訟等の対象となる場合には、その結果によっては当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)法令・規制に関するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開する上で、各国・各地域において、輸出入規制、環境規制、移転価格税制といった各種法令、規制の制約を受けており、その遵守に努めています。しかしながら、予期せぬ法令、規制の強化、改正が生じたこと等により、適切な対応ができなかった場合には、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)その他のリスク

当社グループは、新たな高成長・高収益事業の創出、既存事業における更なる高収益の追求、市場規模縮小時においても利益を生み出すことのできる体質への改善に積極的に取組んできましたが、世界及び各地域における経済環境、異常気象や地震等の自然災害、気候関連規制、戦争、テロ、感染症、金融・株式市場、政府等による規制、仕入先の供給体制、商品・不動産市況、国内外での人材確保、標準規格化競争、重要人材の喪失等の影響を受け、業績が大きく変動する可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ16億5千2百万円減少し、653億9千2百万円となりました。これは主に、「受取手形及び売掛金」が49億2千9百万円、「仕掛品」が15億6千6百万円減少し、「現金及び預金」が35億7千5百万円増加したことによります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ7億5千1百万円減少し、78億8百万円となりました。これは主に、「投資有価証券」が4億8千4百万円、「建物及び構築物」が4億4千9百万円減少したことによります。

 この結果、資産は、前連結会計年度末に比べ24億4百万円減少し、732億1百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ50億3千6百万円減少し、242億6千3百万円となりました。これは主に、「1年内返済予定の長期借入金」が33億1千7百万円、「電子記録債務」が26億2千5百万円減少し、「前受金」が5億4千万円増加したことによります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ36億8千9百万円増加し、153億5千6百万円となりました。これは主に、「長期借入金」が37億4百万円増加したことによります。

 この結果、負債は、前連結会計年度末に比べ13億4千7百万円減少し、396億1千9百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ10億5千7百万円減少し、335億8千1百万円となりました。これは主に、「自己株式」の取得、株式交付信託の制度による処分により4億6千7百万円減少し、「為替換算調整勘定」が3億1千6百万円減少したことによります。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における世界の経済情勢について、2025年3月以降の米国の外交政策や貿易・関税政策の大きな変化や、米中間の緊張の更なる高まり等から、先行きへの不透明感が急速に高まっています。米国では、雇用や小売り等の面で堅調さが確認されたものの、経済全体としてはやや減速しており景気悪化への懸念が強まっています。中国では、景気刺激策や駆け込み輸出等から好調だったものの、物価の低迷が続いています。欧州では、国別に濃淡があるものの、金融緩和が進む中で景気はやや拡大しました。わが国の経済は、設備投資が堅調な中で緩やかに回復しました。

 当連結会計年度の当社グループの連結業績につきましては、売上高は461億8千2百万円(前年同期売上高373億3千5百万円)、営業利益は18億2千1百万円(前年同期営業利益8億4千6百万円)、経常利益は18億9千1百万円(前年同期経常利益11億1千2百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億円(前年同期親会社株主に帰属する当期純利益7億7千8万円)となりました。

 当連結会計年度の当社グループの受注金額は、527億4千7百万円(前年同期377億8千8百万円)となりました。この結果、当連結会計年度末の受注残高は436億6千4百万円(前年同期371億円)となりました。

 

 

 セグメントの業績は、次のとおりです。

(FPD装置事業)

 フラットパネルディスプレイ(FPD)装置事業においては、パネル市況の回復等から、設備投資が想定を上回り回復しました。当連結会計年度の当社グループのFPD装置事業の受注金額は347億1千6百万円(前年同期202億5千3百万円)、受注残高は248億7百万円(前年同期198億9千9百万円)となりました。また、当連結会計年度の当社グループのFPD装置事業の連結業績につきましては、売上高は298億9百万円(前年同期222億5千8百万円)、営業利益は9億1千2百万円(前年同期営業損失2千5百万円)となりました。

(半導体・フォトマスク装置事業)

 半導体・フォトマスク装置事業においては、最終製品の需要回復が鈍い中、AI関連は堅調に推移しました。その結果、関連する設備投資は想定を下回る水準で推移しました。当連結会計年度の当社グループの半導体・フォトマスク装置事業の受注金額は165億6千2万円(前年同期165億1千万円)、受注残高は188億5千7百万円(前年同期172億円)となりました。また、当連結会計年度の当社グループの半導体・フォトマスク装置事業の連結業績につきましては、売上高は149億5百万円(前年同期140億5千2百万円)、営業利益は12億4千2百万円(前年同期12億3千4百万円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ、32億3千1百万円増加し、261億2千4百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果取得した資金は、53億4千4百万円となりました。資金の取得は、主に、税金等調整前当期純利益13億8千3百万円、売上債権の減少48億2千9百万円によります。資金の使用は、仕入債務の減少32億5百万円、法人税等の支払額6億2百万円によります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は14億7千万円となりました。資金の取得は、主に、定期預金の払戻による収入3億2千9百万円、資金の使用は、主に、有形固定資産の取得による支出10億1千万円、定期預金の預入による支出6億5千9百万円によります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、4億7千1百万円となりました。資金の取得は、主に、長期借入れによる収入107億6千2万円、資金の使用は、主に、長期借入金の返済による支出104億3千7百万円によります。

 

③受注及び販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高 (百万円)

前年同期比(%)

受注残高 (百万円)

前年同期比(%)

FPD装置事業

34,716

71.4

24,807

24.7

半導体・フォトマスク装置事業

16,562

0.3

18,857

9.6

その他事業

1,468

43.4

合計

52,747

39.6

43,664

17.7

(注)その他事業の受注残高の前年同期比は、受注残高が存在しないため記載しておりません。

 

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

FPD装置事業(百万円)

29,809

33.9

半導体・フォトマスク装置事業(百万円)

14,905

6.1

その他事業(百万円)

1,468

43.4

合計(百万円)

46,182

23.7

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Xiamen Tianma Optoelectronics Co., Ltd.

7,975

21.36

8,143

17.63

Guangzhou China Star Optoelectronics Semiconductor Display Technology Co., Ltd.

6,466

14.00

株式会社エイチ・ティー・エル

4,132

11.07

4,979

10.78

SDP GLOBAL (CHINA) CO., LTD.

4,038

10.82

2.前連結会計年度のGuangzhou China Star Optoelectronics Semiconductor Display Technology Co., Ltd.及び当連結会計年度のSDP GLOBAL (CHINA) CO., LTD.につきましては、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。

 

 

②経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。

a. 経営成績等の状況

 当連結会計年度のFPD(フラットパネルディスプレイ)装置事業では、中国における大型パネル向け装置の需要が堅調に推移したことなどから、設備投資は順調に回復しました。その一方で、現時点では直接的な影響はないものの、米国による対中輸出規制や関税率の動向に対する懸念が高まっています。このため、中国市場向けの装置については現地生産を行うなど、将来の様々なリスクに対応できる体制の構築を推進しました。

 半導体・フォトマスク装置事業においては、日本国内の半導体関連需要が停滞した影響を受けましたが、売上高及び受注高は前連結会計年度と比較し緩やかながら増加基調で推移いたしました。また、事業の更なる展開と拡大を目指し、半導体製造工程における課題を総合的に解決できる製品群を揃えるため、アドバンストパッケージ関連装置、フォトマスク関連装置、ウェハ検査装置、レジスト関連装置などの研究開発、受注活動、海外展開に注力いたしました。

 その結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は461億8千2百万円(前年同期売上高373億3千5百万円)となりました。また、営業利益については、上記理由に伴う売上の増加、プロダクトミックス(製品構成)の変化、製品保証引当金繰入額等の販売費及び一般管理費の増加等に伴い、18億2千1百万円(前年同期営業利益8億4千6百万円)となりました。

 

〈営業利益の主な増減要因(前年同期比)〉

 

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b. 当社グループの資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・ フロー」に記載のとおりです。

(契約債務)

2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。

 

年度別要支払額(百万円)

合計

1年以内

1年超

2年以内

2年超

3年以内

3年超

4年以内

4年超

5年以内

5年超

短期借入金

1,295

1,295

長期借入金

19,946

5,691

5,247

5,140

2,867

987

11

連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、上記の表において、長期借入金に含めております。

 

(財務政策)

 当社グループは、事業維持及び拡大に必要な資金について、安定的に低コストで確保することを基本方針としており、年度経営計画に照らして、必要な資金を調達するようにしております。また、資金の流動性確保のため、金融機関と114億5千万円(うち8億7千万円使用)の当座貸越契約を締結しております。

 当社グループの主な資金需要は、運転資金及び投資資金であります。運転資金の主なものは、製品製造のための原材料等の購入費、外注費、製造経費の他、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資資金の主なものは、固定資産等の設備投資、事業拡大を図るためのM&A等の投資であります。

 これらの運転資金及び投資資金につきましては、営業活動から得た資金や内部留保資金の他、金融機関からの借入により調達しております。

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)は半導体にかかわる検査・修正・製造、及び関連する部材・プロセス技術の基幹要素技術及び次世代技術開発の研究開発活動を進めており、電子回路設計、光学設計、制御システム設計、真空技術開発、材料開発、プロセス技術開発をベースに、業界をリードする技術を目指しております。

 当社グループの研究開発は主に当社にて実施しており、技術部門とも綿密に連携しながら研究開発効率の向上に努めております。また、新規テーマ探索等のために大学研究機関との積極的な交流も継続して進めております。

 当連結会計年度における研究開発費は、新製品及び新機能の開発、既存製品の性能・信頼性向上、コスト低減のための要素技術開発を目的に2,197百万円となっております。また、研究開発活動の状況は、次のとおりであります。

 半導体向け小型フォトマスク製造に関連する主な開発要素技術としては、高精度光学式パターン検査技術、超高精度座標計測技術、マスクレス露光技術、フェムト秒レーザ発振技術や電子ビーム計測技術の開発などを行っております。