第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

当社の経営方針は、ものづくりの世界で必要とされる機械工具を適時提供することで顧客より対価を得て、企業として適正な利潤を上げ、株主に対して適切な還元を続けていくことであります。製造業の加工分野において幅広く行われていて、重要な位置をしめる切削工程で使用される機械工具に的を絞り、顧客の要求に細かく対応することで、受注の確保を図っております。機械工具の中でも、精密部品加工に使用される工具を中心にして、工具の種類が多く、少量の注文が大半で、工具製作に手間と技術を要する、いわゆる多品種少量生産品のニッチ分野に特化しております。大手メーカーが注力して対応するほど市場規模が大きくなく、毎日一定量の受注が入り、それなりの規模の設備と加工者の熟練度が必要であります。あらゆる業種の精密部品の切削加工において少しずつ使用される工具で、精度が重要であり、使用していくうちに消耗し、いずれは補充が必要となります。当社は、顧客の要求する品質と納期を充足することでリピートオーダーが確保でき、比較的安定した受注が可能となっております。長年にわたりニッチ分野の機械工具に特化してきたことで、熟練社員も多くなり生産効率が上がり、累計設備台数も多く償却費も低減してきて、固定費が抑制されていること、長期にわたり積み上げた顧客基盤を確保していることで、安定した受注が確保できれば、他社に比べて高い利益率を達成できる体制が確立しております。

当社を取り巻く経営環境は、常に変化しております。当社のコレットチャック部門、自動旋盤用カム部門で製造しているコレットチャック、自動旋盤用カムは、主に小型自動旋盤で使用される工具であり、小型精密部品の量産加工で使用されています。小型精密部品は、汎用品から精密さを要求される高度なものまで多岐にわたります。今後は、より一層加工難易度の高い、複雑で精密さを要求される部品が増加すると思われます。切削工具部門で受託している市販切削工具の再研磨、特殊切削工具の製造は、小型精密部品加工から大物部品加工まで、また単品ものから量産部品加工まで幅広く使用されています。

コレットチャック部門、自動旋盤用カム部門及び切削工具部門は、不特定多数の顧客から、様々な種類の工具を、少量ずつ受注することが多く、その要求に対応できる生産体制の整備、設備揃え、生産ノウハウの醸成、人材の確保・育成などが重要になっております。また、近年顧客からの工具の仕様・形状・精度などの要求がますます高度化する傾向であり、これらの要求に対応するため、新規の高精度設備の導入、既存設備のメンテナンス、加工精度向上の探求、加工者のスキルアップ、人材育成、多岐にわたる顧客ニーズを充足しつつ短納期対応するための生産効率化が重要となっており、この課題に取り組んでおります。

当社の優先的に対処すべき事業上の課題は、まさにこの点であり、これらの課題に取り組むことで、既存顧客からのリピートオーダーの獲得、加えて新規顧客からの受注が獲得できる可能性が高まります。常に変化する事業環境の中で、競争力を確保・向上させ、受注を確保し続けるために、安定した財務基盤を活用して、機動的な設備投資や人材の確保・育成を行ってまいります。財務上では、適切な投資を適時実施するとともに、着実な株主還元を行い、投資と株主還元のバランスをとることを課題としております。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、サステナビリティを企業としての持続可能なビジネスシステム、事業展開のプロセスと捉えております。

(1) ガバナンス

サステナビリティに関する判断はすべて経営会議を通じて行い、特に重要性の高い事案や高額の投資が必要となる案件は取締役会で決定を行います。当社は現在、業務執行取締役が4名、社外取締役が1名、監査等委員である取締役が3名であり、通常の事業活動におけるサステナビリティに関する事項は経営会議で迅速に決定をして、業務執行取締役が推進役となり全社的な展開をしています。持続可能なビジネスを展開するということは、正当な事業展開により利潤を得て、それを事業に再投資し、必要な環境対策にも充当して、さらに事業基盤を拡充していくことと考えております。サステナビリティに関するすべてのことが経営に関わるものであり、全社で対応すべき重要なことであると認識しています。

リスク及び機会については、対応如何によってはリスクにも機会にもなりうるとの認識で対象となる項目を統制しております。

対象となる項目は内的要因と外的要因に分類しております。

以下に概要を記載します。

分類

リスク項目

全社リスク

統制活動

統制主体

統制責任者

 

 

 

 

 

 

全社管理

資産管理

システム保全

データ管理

法令遵守

 

規制対応

 

社会貢献

 

競争力確保

 

適正利潤追求

問題発生

  ↓

課題抽出

  ↓

報告

  ↓

対処法検討

  ↓

解決策実施

内部監査グループ

管理部門統括

取締役

監査等委員

 

 

 

取締役会

 

 

 

社長

 

生産管理

 

 

人材・設備補充

競争力の維持

対応力

製品開発

生産効率向上

納期管理

工程管理

管理職

製造部門統括

工場長

常務

 

 

 

市場

顧客

景気

競合他社

環境問題

自然災害

管理部門統括

製造部門統括

常務

社長

 

リスク及び機会の監視には、内的要因と外的要因に分類し、網羅的に対応できるようガバナンス体制を構築しております。内的要因に対しては、本社部門では内部監査グループや管理職が日常業務をモニタリングしており、工場では製造工程別責任者、管理職が現場での問題点や課題をモニタリングし、工場管理では現場事務所の管理グループが日常業務をモニタリングしております。日常業務面での問題点、課題は本社においては管理部門統括者に情報が集約され、工場では製造部門統括者に情報が集約され、対応策や解決策が練られて対処されています。重要性の高いものは、業務管掌取締役、社長へと報告がなされ、必要に応じて経営会議、取締役会で対応策が検討されます。

外的要因に対しては、管理部門統括者、製造部門統括者をはじめ、管掌取締役、社長により内容検討され、対策、対応、結果検証、さらなる対応というサイクルでリスクや機会への対応が行われております。

 

(2) 戦略

企業が継続的に事業を行い、しかも経営を持続するということは、受注を確保しつつ利潤を上げて、人材・設備に再投資をして事業基盤を充実させていくということであると考えています。受注確保のためには、当社の工具を使用する製造業の加工企業に対して利便性を提供し続ける必要があります。社内設備を充実させ、社員の育成とレベルアップを通して製品品質を向上させ、競争力のある製品を提供しなければなりません。そこで得た利潤を社員に還元してインセンティブを高めるとともに、上場会社として重要政策である株主還元も行っていきます。また事業活動を継続していくには、社会環境にも適合していなければなりません。これらのことを循環させてより高めていくことが使命と認識しています。

 

人的資本について

事業活動を持続して利潤を上げて事業に再投資をし、継続した株主還元を実施していくための重要な要素は人的資本であると考えております。すべての事業活動は人的資本により営まれており、人的資本の質により事業活動の質量が変わり、その成果も大きく左右されます。そのため人的資本の質的向上を目指して、人材育成と社内環境整備において、いくつかの取組みを行っております。

 

人材育成方針

当社は製造業の加工企業向けの機械工具の製作・再研磨をしており、顧客からの受注をもって製作・再研磨を行っております。完全な受注生産方式であります。受注確保の条件としては、要求される納期を充足することが大きな要因となります。社員には経営理念の認知を徹底して、そのうえで行動指針を示して業務活動の判断・行動基準としております。

 

人材採用の多様性

人材採用については、人材補充の必要性が生じたときに中途採用を行い様々な経歴・スキルの人材を採用しています。専門職種については、採用職種に必要な資格・能力を有する人材に的を絞って採用する場合もあり、性別・国籍を問わず必要人材を採用していきます。

 

<経営理念>

1. 高品質の製品をより低コスト、短納期で対応する

顧客ニーズを充足するため、顧客が必要とする仕様・品質の製品を可能な限り短納期で納品する

2. ものづくりに不可欠な工具を安定的に供給することで製造業に資することを目指す

ものづくりに不可欠な旋削・切削加工に使用される工具を安定的に供給することで、顧客のコスト削減に寄与する

3. 世の中に貢献することで適正な利潤を上げる

   世の中に必要とされる工具を提供することで適正な利潤を追求し、株主に還元する

 

<行動指針>

1. 顧客からの受注を最優先する

2. 受注・生産・発送・管理の各部門は受注品をどうしたら早く正確に納品できるかに全力を注ぐ

3. 必要なこと、やるべきことはすぐに率先して実行に移し、不必要なことはしない

4. 自分だけでなく関連するすべての部分で効率性を高めるために考え行動する

5. 周囲の人の迷惑になること、環境負荷の大きいことはしない

 

経営理念の徹底と行動指針により社員の意識を同じ方向へ向け、個々の能力に応じて結果を求めて、そのレベルアップを図ります。

工場の生産現場では、現場統括責任者である工場長を配置して、工程ごとの責任者を選任し、予定納期を遵守する体制をとっております。社員個々の特性に合わせた役割を与えて個々の判断で生産効率性を追求しています。社員は自主目標の設定をして、その達成・実現を目指します。会社は社員の目標実現のための環境整備、サポート体制を整えています。

 

 

社内環境整備方針

当社は山梨工場で人員は101名、本社管理部門等で8名となっております。社員の年代もまちまちとなってきており、年代別に特性は変化してくる傾向にあります。同じ職種内でも年代は様々ですが、相互補完しながら職種内・職種間の効率性を追求する配置になっています。

 

<高精度・高効率化設備導入、工具、器具の設置>

生産効率・業務効率を向上させるための設備は、安定した財務体質を活かして機動的に実施します。設備導入後、設備を活かし切るのは現場の社員であり、年代による特性によって技術・知識の習得方法は異なります。社歴の長い社員は基本的に実地で習得する方法を選択し、若い世代は基本操作を覚えてから論理的に応用をする傾向にあります。これらの特性を活用して、世代間のレベルアップ手法を補佐するため、世代別に役割分担を決め、権限を付与して相互のレベルアップを図るようにしています。必要に応じて社外講習、教育DVD、技能実地訓練などを行っています。また、職場環境に配慮した設備の設置や社会環境保全の対策は、必要性に応じて適宜対応しております。

 

<評価制度の刷新、処遇、報酬の改善>

半年ごとに設定した個々人の業務目標に対して新たな評価基準を設定して周知し、成果を多角的に評価し賞与や昇給に結び付けています。製造業として顧客から求められる要望に高次元で応えるため業務目標を設定して、個人設定目標と併せて個々人の達成度を評価して従来よりも処遇面を改善しています。状況に応じて公平性を保ちながら改善していきます。

上場会社として社員にも自社株式を保有してもらい株主の立場にも立ち、企業価値向上のために高い業務目標を立て達成することで、給与・賞与の他に株式配当を受け取り株価上昇による利益も享受してもらい、更なる意識と行動の向上を目指すように意識付けしています。

 

(3) リスク管理

サステナビリティに関するリスクは、それに対しての適確な対応ができれば事業持続の機会にもなりうるものであります。現状当社で認識しているリスクと機会について以下に列挙します。

リスク項目

リスク内容

機会・対応策

受注確保

顧客市場縮小

競争力低下

生産効率向上

コスト低減不足

・標準品の安定的な短納期対応

・別注工具に短納期対応

・工程短縮できる工具の提供(顧客企業のコストダウン)

・顧客の使用する工具再生・リサイクル(廃棄予定工具を再利用し省資源、コストダウンに繋げる)

・品質、納期で競争力を維持

・新たな顧客の開拓

人材確保・育成

人員確保が不十分

社員のレベルアップ

社員の意識向上

 

・人事評価制度の改善

・個人目標設定、会社目標と総合的に評価して処遇

・昇給率の上乗せ

・従業員向け譲渡制限付株式報酬付与

・多角的評価で成果配分高める

・成果加算型給与の導入

材料確保

材料入手

材料価格抑制

 

・入手困難な材料は使用しない

・付加価値を高めることで相対的な材料費を抑制

・複数の取引先を確保(品質・価格のバランスを見ながら仕入れ)

電力調達

電力安定調達

電力費の上昇

・太陽光発電設備導入

・業務効率向上により操業時間短縮

災害

自然災害

生産設備への影響

人員への影響

・安全衛生管理者のもと災害を想定して対応

・災害発生可能性を判断して事前に善後策を実施

リスク項目

リスク内容

機会・対応策

物流

材料入手

製品配達

・物流大手企業と安定的な取引を継続

・仕入先の多様化、分散

・品質維持をしながら仕様を工夫して安定調達

データ管理

データ流出

システム不具合

・全社的にセキュリティソフト導入しPCの管理を高める

・基幹業務ソフトを導入し作業標準確立、効率化を図る

・データ管理業務フロー確立して安全性を高める

環境対応

環境保全

環境負荷抑制設備

・有害指定物質の不使用

・安全基準の遵守

・事業で顧客に工具のリサイクル・高効率性を提供することで省資源に寄与する

 

 

 

(4) 指標及び目標

人材育成・社内環境整備の目標について

目標① 社員に占める女性比率を高め活躍の場を拡大する

  従来の人員採用は、幅広く募集した中から採用者を選択していました。ここ1年は幅広い募集をしても求める人材に近い応募は少なく採用は難しくなっていました。採用職種に必要な資格等を有した人材を採用するため、対象を絞り時間をかけて採用する試みをしました。その結果、製造部門に2名の女性の採用することができました。

社員合計 109名 うち女性 34名(社員に占める女性比率 31.2%)

  求められるスキル・資格を有した人材の採用を進めるとともに既存社員の育成にも注力して女性の活躍の場を拡大していく方針です。管理職に占める女性の割合は2.9%(管理職35名 うち女性1名)ですが、管理職の中で上位にあたる統括職は1名で女性です。統括職は、職務内容の重要性が高く、その達成度が高い、かつ他の社員で代替がきかない職務を担っている、会社の使命を理解して周囲をまとめ上げて成果に繋げられるかなどを総合的に判断して決定しております。今後社員のスキルアップを図り、女性の活躍の場の創出にも注力していきます。

 

 

2025年

2028年

社員に占める女性比率

31.2

35

 

目標② 中堅・若手リーダーの育成

  社員の評価制度刷新を機に個人目標の設定から、目標実現に向けての社内環境整備、公平性を期する評価制度の定着を目指しています。業務効率化と個人のレベルアップ、自己実現を図るために適任者をグループリーダーに選任し、更なる活躍の場を提供し、育成を図っております。今後は社内全体のレベルアップを目指して中堅・若手のリーダーを増やしていくよう注力していきます。

 

2025年

2028年

中堅・若手リーダーの育成

5

6

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 事業の特徴について

当社は、幅広い層の顧客に対して製造業の切削加工で使用される消耗工具の製造・販売及び研磨を行っております。事業の対象が切削加工で使用される消耗工具であるため、顧客企業の機械稼働率の多寡により当社の受注も変動します。将来の業績も景気の状態や機械業界の動向などによっては同様な影響を受ける可能性があります。
 当社の事業の方針は、①多品種少量生産向きで ②確実に需要が見込まれ ③既存のメーカーが顧客ニーズに充分対応できていない機械工具に対象を絞り、「高品質、短納期」を実現し、顧客からの信頼、リピートオーダーの獲得を重視し、業界での高シェアの確保を目指すというものであります。当社の扱う機械工具は消耗品であるため、リピートオーダーによる継続的な受注が可能となります。受注に関してコレットチャック部門、自動旋盤用カム部門は、顧客が必要に応じて注文をしてくる完全な受注生産となっております。そのため営業活動は、当社が標準品・特殊品ともに様々な加工に合わせて対応が可能であることを広めることを主眼としております。そうすることで顧客が必要になったときに、当社へ発注や相談がくる流れを作ることに力を入れております。

切削工具部門では、対象となる市場は広く顧客開拓余地は大きいため、当社の事業内容、品質と納期対応、市販にない工具でも設計から製作まで短い期間で対応することを広く知らしめるための営業活動を行っております。

 

① コレットチャック部門について

当社の主力製品のスプリングコレットチャックは、小型自動旋盤による金属旋削・切削加工の大半の局面で使用される消耗工具であり、通常の景気循環の中では比較的安定した受注が見込まれます。顧客層が広範な業種に亘り顧客数が多いため、一定の受注量は確保しておりましたが、ここ数年の景気変動局面ではその影響を大きく受けてきました。今後も景気が大きく変動する場合、その影響を受ける可能性があります。

CNC自動旋盤の主力メーカーである国内3社の年間新規販売台数の大半は、海外への輸出となっています。国内外ともに近年部品加工が高度化してきており、コレットチャックの受注も標準品に加えて顧客仕様のオーダー品が増加してきています。当社は高品質を維持しながら顧客の求める仕様のコレットチャックをできるだけ短い納期で製作することで、着実に受注を確保していくことに注力しております。国内外で当社のコレットチャック部門の対応力の高さを広めることを主眼に営業活動を行っております。この対応がうまくできない場合は、受注が確保できない可能性があります。
 また将来、技術革新等により旋削加工工程が必要でなくなった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

 ② 切削工具部門について

当社は、切削工具部門において市販切削工具の再研磨及び特殊切削工具製造・再研磨を行っております。市販切削工具の再研磨は、金属加工の高度化、複雑化に伴い超硬工具の普及が加速し、自社研磨から外部の専業研磨会社へ外注するケースが増加しております。この流れを捉え当社は1999年8月に事業展開を開始いたしました。事業開始から年数を重ね、一定の顧客基盤を確保しましたが、この間、競合企業も増加して価格競争が激化してきました。今後、さらに価格競争が進む場合は、当社の受注に影響を及ぼす可能性があります。また、切削加工の変化により使用する工具が変わり、再研磨自体が減少する可能性があります。

切削工具部門においては、特殊切削工具の製造・販売・再研磨も行っております。製造業における部品の複雑化、材料の難削化、加工難易度の上昇により、市販切削工具で対応できない切削加工が増加しており、加工に応じたオーダーの特殊切削工具の需要が伸びてきております。特殊切削工具の製造は、一品一様であり、短納期対応が求められることが多く、大手メーカーでは対応が難しく、中小メーカーでは製造設備の調達、加工人員の熟練、人員の確保などでうまく対応できないことがあり、当社の競争力が発揮できる分野ということで事業展開しています。特殊切削工具の製造は、設計と製造方法・工程の良否によって、その性能が大きく左右されます。
 当社が的確に顧客ニーズに対応できない、業界において知名度が高まらないなどの場合、受注に影響を及ぼす可能性があります。

なお、加工に応じたオーダーの特殊切削工具の需要に対応するため機械装置他の設備投資を行った場合には事業部門の損益及び将来キャッシュ・フローに影響を及ぼすことがあり、減損損失計上の要件に該当した場合には固定資産の減損損失を計上することにより当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。当事業年度においては、今まで新規の設備投資を継続してきたなかでコスト増加を吸収するための受注が伸び悩み、収益性が低下したことで、将来の事業が生じるキャッシュ・フローを見直した結果、当部門は減損損失を計上しました。

 

 ③ 自動旋盤用カム部門について

当社の自動旋盤用カムが使われるカム式自動旋盤自体が生産されておらず、国内外で現存するカム式自動旋盤を使用する顧客からの注文のみとなっています。生産される部品もロットの多い量産部品が中心で、一度カムを取り付けると当面は補充が必要なくなります。当社のカムの受注は年々減少してきており、特に直近一年は大きく減少しています。売上が増加しないかぎり部門損益は赤字の傾向が継続します。

 

 (2) 海外市場依存度について

当社の最近5期における輸出販売高比率は、下表のとおりであります。当社からの販売についてはすべて円建てで行っております。当社の輸出地域であるアジアの経済情勢、市場動向及び為替変動等によっては、輸出販売高に影響を与える可能性があります。製造業においては、世界的に分散した部品加工が、地政学リスク、貿易関税引上げ問題や輸出入の制限・禁止措置などにより、流通が滞る場合、当社の受注も影響を受けます。

 

区分

第31期

第32期

第33期

第34期

第35期(当期)

金 額

比率

金 額

比率

金 額

比率

金 額

比率

金 額

比率

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

輸出販売高

169,809

10.2

195,790

10.5

155,324

8.8

135,780

8.5

153,257

9.6

国内販売高

1,500,043

89.8

1,672,270

89.5

1,599,934

91.2

1,465,769

91.5

1,437,587

90.4

合   計

1,669,853

100.0

1,868,061

100.0

1,755,258

100.0

1,601,549

100.0

1,590,845

100.0

 

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

(1) 経営成績の状況

当期におけるわが国経済は、世界各地の政情不安、地域紛争、貿易関税問題などの影響を受けて先行き不透明感が高まり、方向感の定まらない展開となりました。

世界の状況を見ると、一時の急速なインフレ率上昇が落ち着き欧州では緩やかに景気が回復傾向になり、米国では個人消費が比較的堅調で底堅い動きとなり景気動向も好調を維持しており、中国では長引いた景気低迷から回復傾向となっています。中国を除くアジアでは景気状態は低調な国が多く本格的な回復とはなっていません。ここにきて米国の貿易関税交渉で各国は今後の展開を見定めようと様子見となって、景気動向は不安定となってきて影響が出てきています。

日本国内製造業では、貿易関税の影響が心配されていた自動車生産において、EV車の伸び悩みでハイブリッド車部品加工が増加するなど量産部品は一定量ありました。AIやその関連分野の増加で、半導体、電子部品などは堅調に推移しました。一方で設備や工作機械は、海外向けは好調でありましたが、日本国内向けは、今後の動向を見極めようとする状態のなかで、大手企業の設備投資抑制などにより、低調な動きとなりました。世界経済の先行き不透明感の高まりにより、大手企業が生産調整や設備投資抑制をしたために、中小企業へ出る仕事量は大きく減少して、国内製造業は全体的に低調となりました。

当社においては切削工具部門で、別注切削工具の製作に力を入れて設備投資を多めにしてきましたが、営業体制強化が進まなかったこと、国内製造業の業況が改善しなかったことで、販売費及び一般管理費を加味した部門損益がマイナスとなったため、固定資産の減損を行い特別損失を計上いたしました。

このような状況のなか、当期の売上高は1,590,845千円(前年同期比0.7%減)、営業利益は84,655千円(前年同期比48.6%減)、経常利益は119,781千円(前年同期比33.1%減)、当期純損失は221,288千円(前年同期は120,523千円の利益)となりました。

 

 

セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

<コレットチャック部門>

コレットチャック部門では、ハイブリッド車が堅調であった自動車は比較的好調でしたが、設備部品や工作機械、建機、精密部品などは受注の変動がありました。当期の受注は昨年7月と12月が少なく2、3か月周期で上昇・下降を繰り返し、前期並みの水準となりました。

この結果、当セグメントの売上高は1,106,068千円(前年同期比0.1%増)、セグメント利益は406,498千円(前年同期比3.5%減)となりました。

 

<切削工具部門>

複雑な加工や特殊な形状加工に使用される別注切削工具の製作・再研磨は、加工時間短縮、複雑形状加工への対応、問題解消のために工具を改良するなどの目的で使用されています。顧客に徐々に浸透しだして顧客数は増加傾向にありますが、国内製造業の設備稼働率が低下して、当社の受注も前年並みとなりました。売上高は144,814千円(前年同期比0.5%増)となりました。

市販切削工具の再研磨は、大手企業の夏季休暇と年末年始に合わせて顧客企業の機械稼働率が低下し当部門の受注も昨年8月、今年の1月と下がりました。市販切削工具は標準的な切削加工で使用されるものであり、機械稼働率の高低が再研磨の量に繋がってきます。売上高は、325,618千円(前年同期比4.1%減)となりました。

この結果、当セグメントの売上高は470,433千円(前年同期比2.8%減)、セグメント利益は13,545千円(前年同期比76.4%減)となりました。

 

<自動旋盤用カム部門>

自動旋盤用カム部門では、国内外のカム式自動旋盤で加工する量産部品が減少しました。自動旋盤用カム部門は、国内のカム式自動旋盤ユーザーへのカムの供給責任を果たす使命で事業継続しており、対前期比で受注量は減少しましたが、今期は値上げが寄与して当部門の売上はやや増加となりました。

この結果、当セグメントの売上高は14,344千円(前年同期比8.3%増)、セグメント損失は3,510千円(前年同期は5,220千円の損失)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

a. 生産実績

当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

前期比(%)

コレットチャック部門

1,095,757

97.0

切削工具部門

477,221

98.0

自動旋盤用カム部門

14,344

108.3

合計

1,587,323

97.4

 

(注)  金額は販売価格によっております。

 

 

b. 受注実績

当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

コレットチャック部門

1,090,341

97.6

31,430

66.7

切削工具部門

476,437

99.0

17,697

151.4

自動旋盤用カム部門

14,789

111.7

445

合計

1,581,568

98.1

49,572

84.2

 

 

 

c. 販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

前期比(%)

コレットチャック部門

1,106,068

100.1

切削工具部門

470,433

97.2

自動旋盤用カム部門

14,344

108.3

合計

1,590,845

99.3

 

(注) 1 販売高で10%を超える主要な販売先はありません。

2 最近2期における輸出販売高及び輸出割合は次のとおりであります。なお、( )内は総販売実績

に対する輸出高の割合であります。

輸出先

前事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

当事業年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

アジア

韓国

34,591

25.5

46,326

30.2

中国(香港含む)

36,846

27.1

42,184

27.5

台湾

39,218

28.9

39,649

25.9

シンガポール

11,872

8.8

13,210

8.6

マレーシア

9,825

7.2

9,088

5.9

その他

3,426

2.5

2,799

1.8

合計

135,780

(8.5%)

100.0

153,257

(9.6%)

100.0

 

 

 

(2)財政状態の状況

当期における財政状態につきましては、総資産は前期末比888,069千円減少し、8,058,590千円となりました。

 

  主な内訳は次のとおりであります。

(流動資産)

当期末における流動資産の残高は、5,347,399千円(前事業年度末は6,569,229千円)となり1,221,829千円の減少となりました。これは、未収還付法人税等が45,911千円、未収還付消費税等が15,749千円、その他が5,843千円、売掛金が4,839千円増加しましたが、現金及び預金が1,241,238千円、前払費用が42,711千円、受取手形が12,515千円減少したこと等によるものであります。

 

 (固定資産)

当期末における固定資産の残高は、2,711,190千円(前事業年度末は2,377,430千円)となり333,760千円の増加となりました。これは、建物が194,304千円、機械及び装置が131,463千円、建設仮勘定が122,006千円、ソフトウェア仮勘定が47,745千円減少しましたが、投資有価証券が687,887千円、繰延税金資産が100,098千円、ソフトウェアが46,995千円、車両運搬具が2,226千円増加したこと等によるものであります。

この結果、当期末における総資産は、8,058,590千円(前事業年度末は8,946,659千円)となりました。

 

(流動負債)

当期末における流動負債の残高は、107,774千円(前事業年度末は210,657千円)となり102,882千円の減少となりました。これは、買掛金が3,218千円、未払費用が1,321千円増加しましたが、未払金が56,112千円、未払法人税等が29,896千円、預り金が16,962千円減少したこと等によるものであります。

 

(固定負債)

当期末における固定負債の残高は、465,469千円(前事業年度末は547,549千円)となり82,080千円の減少となりました。これは、長期未払金が47,300千円、退職給付引当金が33,876千円、長期リース債務が904千円減少したことによるものであります。

この結果、当期末における負債合計は、573,243千円(前事業年度末は758,206千円)となりました。

 

(純資産)

当期末における純資産の残高は、7,485,347千円(前事業年度末は8,188,452千円)となり703,105千円の減少となりました。これは、自己株式処分差益が8,669千円、その他有価証券評価差額金が5,675千円増加し、自己株式の減少が5,490千円ありましたが、別途積立金が500,000千円、繰越利益剰余金が222,941千円減少したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、定期預金の純増減額995,703千円、減損損失446,739千円、減価償却費182,152千円、株式報酬費用56,415千円、利息及び配当金の受取額23,760千円、売上債権の増減額 7,675千円がありましたが、投資有価証券の取得による支出675,955千円、配当金の支払額500,820千円、税引前当期純利益△326,817千円、有形固定資産の取得による支出203,304千円、法人税等の支払額71,922千円、営業活動によるキャッシュ・フローその他69,818千円、退職給付引当金の増減額33,876千円を計上したこと等により、前期末に比べ 245,535千円減少し、当期末は433,389千円(前期末比36.2%減)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期の営業活動により増加した資金は、151,438千円(前期は、342,468千円の増加)となりました。これは、税引前当期純損失△326,817千円、法人税等の支払額71,922千円、その他69,818千円、退職給付引当金の増減額33,876千円、未払金の増減額33,286千円がありましたが、減損損失446,739千円、減価償却費182,152千円、株式報酬費用 56,415千円、利息及び配当金の受取額23,760千円、売上債権の増減額7,675千円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期の投資活動により増加した資金は、104,751千円(前期は、138,938千円の減少)となりました。これは、投資有価証券の取得による支出675,955千円、有形固定資産の取得による支出203,304千円、無形固定資産の取得による支出10,722千円ありましたが、定期預金の純増減額995,703千円があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期の財務活動により減少した資金は、501,725千円(前期は、500,295千円の減少)となりました。これは、配当金の支払額500,820千円、リース負債の返済による支出904千円があったことによるものであります。
 

 資本の財源及び資金の流動性に関する情報

資本の財源及び資金の流動性については、換金性の高い現預金等の内部留保を活用し、主に営業サイクルにおける資金と設備投資における資金を捻出しております。当面必要とされる事業資金、設備投資は、現状で充足できております。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計方針のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。