第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、健康、医療の分野でオリジナリティあふれるオンリーワンの製品・サービスを提供し、社会に貢献します。

 

(2) 経営戦略等

 国内市場においては、信頼性および品質の向上と、開発技術の創造により売上増収を目指します。海外市場においても、当社の技術力を活かした製品の拡販を目指します。

 また、新製品の開発により新たな事業の創造を目指します。

 

(3) 経営環境

 医療機器業界においては、人手の確保や業務の効率化といった医療現場の課題を踏まえて、医療従事者を支える産業としての社会的責務を果たし続けることが求められております。

 当社としても、引き続き医療機関におけるオペレーションの効率化に寄与する採血管準備装置・システムを主軸に製品ラインナップの拡充を図り、より円滑な医療機関の運営に貢献してまいります。併せて、原材料費の高騰が続く中でも、安定した製品・消耗品等の供給を維持できるよう尽力しております。

 

(4) 目標とする経営指標

① 2023中期経営計画

当社は、2023年度(2024年3月期)からの新3ヶ年中期経営計画を策定しております。当社の持続的な成長に向け、事業基盤の強化、積極的な研究開発投資を推進し、さらなる安定成長を目指して参ります。

 

② 基本方針

・採血管準備装置・システムおよび検体検査装置は、信頼性、品質の向上を図り、価値あるサービスを提供することにより、お客様の期待に応えます。

・新製品の開発により、新たな事業の創造を目指します。

・これからも日本国内にとどまらず、当社の技術力を活かし、世界に貢献する企業を目指します。

 

③ 経営指標

当社は、2023中期経営計画において、下記の通り3ヶ年累計売上高308億円、営業利益45億円を目指しております。

経営指標

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期

3ヶ年累計

売上高(億円)

98

100

110

308

営業利益(億円)

13

14

18

45

売上高営業利益率(%)

13.3

14.0

16.4

14.6

 

(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

 世界においてはインフレ進行やウクライナ情勢によるエネルギーコストおよび原料コストの高騰が続いています。また、人口増加、異常気象による天然資源、食料、水不足、更には地政学リスクの高まりによる影響も深刻化しています。国内においても、人口減少や超高齢化の進行、それに伴う労働力不足や、医療介護等への早急な対応が要請されています。

 当社は以上の社会環境の変化に対処し、時代要請を戦略に組み込みながら、健康、医療分野での社会課題の解決に貢献することが、当社の企業価値を高めることに繋がると考えています。

 持続可能な社会の実現のために、当社の三つの製品分野でソリューション提供を通し、継続的に企業価値を創造していきたいと考えています。

 

 

①採血管準備装置・システム

 当社は採血採尿業務に特化した分野において、世界に先駆けて採血管準備装置を開発しました。日本全国で2,500ヶ所以上、海外で500ヶ所以上の施設へ導入実績があります。これまで、大型採血管準備装置「BC・ROBO-8001RFID(無線自動識別機能)」の開発を筆頭に、中型採血管準備装置「BC・ROBO-900」、小型採血管準備装置「BC・ROBO7」等のラインアップをそろえてきており、更なる販路拡大を図っていきます。また、医療従事者の人手不足により今後需要が期待される、検体の非接触認識と自動搬送の実現、クラウド活用で最適化された患者誘導による待ち時間短縮をはじめとする、効率的で快適なサービスを提供するための装置・システム開発を通じて、医療機関様や患者様への利便性向上策に貢献していきます。

 

②検体検査装置

 当社の検体検査装置は、血液ガス分析、電解質分析を行い、状況把握、診断、治療に欠かせない緊急検査装置で、国内及び海外で販売して参りました。デスクトップ型とハンディ型を取りそろえ、検査室や集中治療室、動物病院等多様なニーズにも対応させていただきました。新型コロナ禍で海外市場での販路拡大し、緊急検査用途の血液ガス分析装置の需要が引き続き高まっています。

 今後も更なる販路拡大を図ると共に、新規顧客獲得に向けたデスクトップ型装置の開発、消耗品の量産安定化にも努めて参ります。

 

③消耗品等

 採血管準備装置・システム及び検体検査装置の消耗品は、医療機関内の日常的な検査で使用されており、装置の設置増加に伴い売上は増加してきました。

 これまで年率4~5%の割合で売上が増加してきましたが、原料、部材価格が上昇しています。消耗品価格の改定を進めると共に、引き続き安心安全な消耗品を提供して参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を、それ以外の経営上のリスク及び機会と一体的に監視及び管理しております。当社の事業を取り巻く様々なリスクに対し的確な管理・実践を行うため、「リスク管理規程」を定め、取締役会および本部長会議において、サステナビリティ関連も含む全社的なリスク、必要とされる対応等について随時議論し、これに基づいた経営戦略の立案、各部門への指示等を行う体制を構築することで、サステナビリティ関連も含めたガバナンスを維持しております。

 

(2)リスク管理

 当社は、経営の健全性の確保を主な目的とする「リスク管理規程」を制定し、当社が認識するリスクに対する基本的な考え方及びその管理方法を明確化しており、この実効性を高めるために適宜検討、改善を行っております。日常の業務執行から生じる様々なリスクを予想・認識し、これを十分に検討した上で、経営の安全性を確保いたします。リスク情報のみならず、日常業務の職務執行状況について定期的に各部門長を通じ社長へ報告するほか、内部通報窓口の拡充等を通じて、情報伝達に係る体制を強化し、発生リスクの早期発見と把握、ならびに対処の迅速化を図り、以ってリスクの未然防止と軽減等に取り組んでおります。

 

(3)戦略

①人的資本への取り組み

 2023中期経営計画において、「働きがい・生きがいの創造」を人事制度の理念と定め、多様な人材の多様な働き方を支援するため、社員一人一人が能力を発揮できる制度・環境の整備を行っており、その取り組みについては、在宅勤務、フレックスタイム制、時短勤務、就業規則の見直し等の施策を実施しております。

 また、人材育成の一環として、若手社員の基礎能力教育、役職者のマネジメント教育、キャリアプラン教育、及び各部門での業務に係わる研修等、各種の社内外研修を実施し、社員の持続的成長を図っております。

②環境負荷の低減

 事業活動における次のような取り組みを通して、温室効果ガスの削減、省エネルギ-化、省資源化を図っております。

・使用する原材料の削減

・消耗品等事業のプラスチックから紙製品への転換

・自社ビル内節電策、太陽光発電の活用

・産業廃棄物のミニマム化

 

(4)指標及び目標

 上記(3)の戦略に係わる指標及び目標を次の通りとしております。

 具体的な目標を定め、社内における多様性の確保に努めることとしております。

指標

実績

2025年3月期

目標

男女社員の平均勤続年数の差異

4.3

5年以内

管理職に占める女性社員の割合

3.3

10%以上

男性社員の育休取得率

57.1

50%以上

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)わが国の医療保険財政が業界に及ぼしている影響について

 わが国の国民医療費は、2022年度には46兆6,967億円で、前年度に比べ1兆6,608億円(3.7%)の増加となっており、今後における医療費の増大傾向が国家財政上の大きな問題となっております。一方で、人口の減少傾向が続く現状にあって経済成長は限定的(国内総生産は前年度比2.3%増加)であり、医療保険財政の悪化に歯止めをかけることが大きな課題となっております。

 2024年4月1日の診療報酬改定では、本体部分のプラスが0.88%にとどまり、薬価の改定を含めた診療報酬全体としては、前回に続いてマイナス改定となるなど、医療機関の経営環境は引き続き厳しい状況にあります。

 

(2)当社の事業戦略及び事業展開上内包するリスクについて

① 採血管準備装置・システムの市場規模、市場シェア及び同製品の新市場開拓について

 当社の総売上高のうち、採血管準備装置・システム事業と関連消耗品の売上高合計が占める割合は、70%前後に達しております。その依存の大きさからも医療財政の緊縮化などの外的要因による市場規模の収縮、及び次世代機において市場動向やニーズを的確に捉えることができず収益性が低下した場合、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、新製品の研究開発と製品化及び販売計画は、当社の想定どおりに拡大するかは不透明であり、将来においても当社売上高における採血管準備装置・システム事業への依存が大きい可能性があります。

 また、採血管準備装置・システムの当社製品の累計設置施設は国内2,500施設を超えており、市場シェアも当社調べでは累計設置施設数ベース90%前後で推移しております。当社が主な導入のターゲットとしている病床数200床以上の大規模一般病院数を踏まえると、今後、新規の設置台数は伸び悩み若しくは減少に転ずる可能性があります。

 このため、これまでターゲットとしてきた大規模一般病院に限らず、大規模病院の入院病棟や小規模病院をターゲットとした小型の装置開発・販売強化を図ってきております。さらに、治験業務等を受注する検査機関向けに直接販売の拡大を図っておりますが、小型製品については販売単価が低い一方、大型装置販売と同様の営業コストを要することから、潜在需要にもかかわらず、十分な採算を確保できない可能性があります。

 

② 採血管準備装置・システムに関する顧客との継続的関係強化について

 当社は、主力製品である採血管準備装置・システムを取巻く環境を踏まえ、累計設置台数の伸びに応じて、経常的に売上を見込める関連消耗品の売上や保守管理サービス収入により、既納入先との継続的取引の拡大を図っております。一方、これらの消耗品に対し、他メーカーが当社ハード製品に対応しうる非純正品を当社純正品に比し、廉価で販売する動きがあるため、当社は保守管理サービス業務の強化やハード新製品開発時における仕様変更等により、純正品の使用徹底を図っております。

 また、採血管準備装置の法定耐用年数は5年でありますが、第三・第四世代機が設置後10年以上経過し、その間の物理的陳腐化に加え、製品仕様の向上による旧世代機の技術的陳腐化により、当社ハード製品の更新需要の取込みをはかり、予想される純新規需要の減少を補完する計画であります。しかしながら、更新はユーザー側が決定しており、当該ユーザー側の事情により更新が後ろ倒しになる傾向があります。

 

③ 採血管準備装置・システムに関する競合等の影響及び対応策について

 採血管準備装置・システムについては、当社製品の国内市場におけるシェアは90%前後を占めておりますが、競合他社の新製品の仕様、販売価格等により、販売上の影響を被る可能性があります。

 当社製品の販売単価は、競合他社に比して高めに設定されておりますが、非接触、人手不足解消、待ち時間の短縮等の新機能・システムを付加するなど、提案内容の高付加価値化を目指してまいります。機能や処理能力における相違、操作の簡素化、省スペース化、デザイン等のきめ細やかなユーザーニーズが製品へ反映されていることの認知の向上とともに、継続的な製品開発・改良努力による製品差別化、ブランド構築・維持が販売価格維持の上で不可欠であると考えております。

 また、医療施設全体の経営環境の悪化により、装置の新設の中止・延期やスペック・ダウン等の影響があり、当社は採血管準備装置単体に対し、自動搬送採血台、検体搬送システム、RFID機能等のオプション製品を付加し、パッケージとして販売することにより、ユーザーの多様なニーズの吸収による販売単価の拡大を図っておりますが、これらの成否によっては当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

④ 採血管準備装置・システムの売上に至るまでに通常長期に亘る営業期間を要することについて

 主力製品である採血管準備装置・システムの導入は、医療機関にとって大規模投資となるため、最終的な決定に至るまでは、2~3年程度の間の情報収集、内部での検討を要するケースが一般的であります。

 このため、当社は可能な限り初期段階から医療機関とのコンタクトを持ち、当社製品の導入をおこなうことのメリットを理解して頂くことが、販売戦略上不可欠であります。その過程において、装置販売候補先における医療施設の人事異動等によるキーパーソンの交代は、有力販売見込先である当該医療施設への販売計画に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)研究開発型企業として、研究開発期間と製品化に時間を要することについて

 当社において、研究開発は非常に重要であり、研究開発テーマの策定は市場ニーズ、技術的ハードル、他社の研究開発動向も踏まえ策定し、案件の開発期間は、基本的に2~5年間と設定しております。しかしながら、技術的なハードルや市場の変化により明確な商品コンセプトが設定できない等のケースが生じた場合には、開発の中断を余儀なくされ、今後の研究開発計画に影響を及ぼす可能性があります。

(4)製造委託を中心とする当社の生産体制について

 採血管準備装置及び検体検査装置の生産については、製造工程の大半を協力会社に委託しております。

 このうち、採血管準備装置については、製造委託先との長期に亘る取引関係及び同委託先には複数の協力会社があることから、安定的な製品供給が確保されると判断しておりますが、仮に製造委託先に重大な問題が発生した場合には、当社が製品の供給を受けられなくなる可能性があります。
 当社は、製造委託先との連携及び受入検査の強化を通じて、製品の品質確保を図っておりますが、採血管準備装置は、法制度上医療機器ではないものの医療関連機器であり、万が一製品の不具合が生じた場合、当社製品に対する信用失墜等に直面する可能性があります。

 

    (5)海外展開について

 海外への輸出については、展示会等でコンタクトのあった販売先と販売独占契約を締結の上、L/C発行等による直接取引、若しくは国内商社経由による販売をおこなっております。
 採血管準備装置・システムについては、代理店を通じて輸出もおこなっており、輸出先としては、日本と同様の採血システムを採っているアジア、欧州、中南米地域等であります。また、台湾に支店を置き、現地で販売活動を行っております。今後の海外展開によっては、販売先の国や地域における国際紛争、海外代理店との契約、保守管理上のリスク等に直面する可能性があります。

 

(6)主な特許権等について

 当社は、採血管準備装置に関連するバーコードラベル自動貼付・移送等にかかる特許権、及び検体検査装置事業に関連する特許権を登録済みであります。これらの登録済特許権は、事業実施にあたり、競合他社等から当社の知的財産権を保護するために必要不可欠なものであります。当社が登録済の特許権と類似の特許権を競合他社

が保有しているケースもあるため、製品開発にあたっては、訴訟対策もあり、今後新たに研究開発をおこなったものについての知的財産権保護と併せ、これらの動向にも十分留意していくことが不可欠となっております。

(7)下期への業績偏重について

 当社の主力事業である採血管準備装置・システムの売上は、その主要納入先である医療施設からの受注及び納入要請タイミングとの関係上、下期、第4四半期に集中する傾向があります。また、医療施設側の設置する採血管準備装置を制御する上位システムの導入が当初想定した時期よりも遅延した場合には、翌期に売上が計上されることになり、一定期間毎に区切った場合の当社の経営成績に、期間毎の変動が生じる可能性があります。

 (8)法的規制について

 当社は、各種の医療機器及び体外診断用医薬品の関連製品の製造、販売を行っております。医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業と製造業は、薬事法をはじめとして、医療機器及び品質管理の基準に関する省令(QMS省令)及びそれに関連する各種法令により規制を受けております。

 薬事法は、医療機器を含め、それらの品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行っており、また許可は“5年をくだらない政令で定める期間ごとに、その更新を受けること”とされております。QMS省令は、品質の良い医療機器等を供給するために、製造時の管理、遵守事項を定めております。

 当社は、薬事法やQMS省令に基づく許可を受け、(第2種医療機器製造販売業許可、医療機器製造業登録、体外診断用医薬品製造業許可)厚生労働省及び神奈川県の監督を受けております。

 これらの法的規制について、法律改正等により規制の内容に変更があった場合や、万一これらの規制に抵触した場合には当社の事業活動に影響が及ぶ可能性があることから、当社は引き続き、法律改正等の動向を注視しつつ、各種の法的規制に則って事業活動を展開する必要があります。

(9)採血管準備装置・システム及び検体検査装置等の当社製品の販売経路及び最終販売先について

 当社製品の販売において、最大の最終販売先は医療施設でありますが、主に医療品・医療機器卸会社経由で販売をおこなっております。

 主要最終販売先として医療施設の他、検査機関が挙げられます。検査機関は様々な医療機器等に対するノウハウを背景に、医療施設の機器選定に対して一定の影響力を有していることから、最終販売先如何にかかわらず検査機関に対しても販売戦略上、十分なフォローアップが必要となっております。

 海外については、展示会等でコンタクトのあった販売先と販売独占契約を締結の上、L/C発行等による直接取引、若しくは国内商社経由による販売をおこなっております。

 上述の通り、販売経路や最終販売先は、事業活動の拡大とともに国内外にわたり増加しており、医療財政の悪化や医療機器の価格競争の激化によりこれらの経営状態が悪化した場合、当社の事業活動にも影響が及ぶ可能性があるため、特定の取引業者や顧客に偏ることの無いバランスの取れた営業展開が求められております。

 

(10)気候変動による影響について

 当社において、気候変動が進展すること等による大規模災害で、事業活動に多大な影響を受けた場合には、財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。大規模災害に対しては、BCPにおける事前対策等により、リスクの最小化に努めます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績

当事業年度における世界経済は、中東情勢やウクライナ情勢の長期化による地政学リスクに加えて、インフレ抑制を目的とした金融引き締め政策が各国において継続され、世界的な景気減速懸念も根強く、依然として先行きの不透明な状況が続いております。国内経済においては、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要、企業の設備投資などにより緩やかな回復基調で推移したものの、物価上昇による消費者の購買力低下、原材料費の高止まりによる企業収益への悪影響など、景気の先行きは予断を許さない状況です。

医療業界では、医師の働き方改革や診療報酬の改定に加え、医療従事者の人手不足や、地域・診療科ごとの偏在といった課題が深刻化しており、医療現場における業務の効率化やデジタルトランスフォーメーションの推進が喫緊の課題となっております。

このような経営環境の中で当社は、採血管準備装置および関連システムの機能やラインナップを拡充し、各施設の検査業務に最適なソリューションの提供を目指してまいりました。検体検査装置に関しても、顧客のニーズに応じてハンディ型、デスクトップ型などを提案し、拡販に努めてまいりました。消耗品等については、原材料費の高騰による影響が続く中で、引き続き安定供給に努めてまいりました。また、医療施設向けの製品にとどまらず、一般ユーザーにも手軽に利用いただけるセルフモニタリング製品の開発・販売にも注力してまいりました。

この結果、当事業年度の売上高は9,905,864千円(前期比3.7%減少)となりました。国内市場において、主力製品である採血管準備装置・システムの大型案件の販売時期に変更が生じた影響により、売上は前年度を下回りました。なお、総売上高に対する海外売上高の占める割合は、前期比4.5ポイント増加し13.8%となりました。

利益面に関しては、売上高の減少に伴い、売上総利益が4,928,362千円(前期比4.3%減少)となりました。販売費及び一般管理費は、採血管準備装置・システムに関する研究開発費を積極的に投入した他、賃上げに伴う人件費の増加などにより、3,627,973千円(前期比9.5%増加)となり、営業利益は1,300,389千円(前期比29.3%減少)、経常利益は1,303,692千円(前期比30.3%減少)、当期純利益は1,004,583千円(前期比25.5%減少)となりました。

 

<採血管準備装置・システム>

当事業年度における採血管準備装置・システムの売上高は3,636,434千円(前期比15.4%減少)となりました。国内市場においては、大規模施設向けの機器・システムの販売案件に前倒しや先送りが多く生じた事により、売上高は3,237,325千円(前期比21.9%減少)となった一方、海外市場においては、主に東南アジアおよび中国市場における売上が、大型装置の受注等により大幅回復し、売上高は399,108千円(前期比156.2%増加)となりました。

 

<検体検査装置>

当事業年度における検体検査装置の売上高は621,770千円(前期比3.8%増加)となりました。国内市場では、競合他社との競争も続く中で、デスクトップ型の血液ガス分析装置以外の分析装置の売上が前事業年度を下回り、売上高は392,644千円(前期比2.9%減少)となりましたが、海外市場においては、デスクトップ型血液ガス分析装置の販売が、中南米やアジア地域で伸長したことにより、売上高は229,125千円(前期比17.7%増加)となりました。

 

<消耗品等>

当事業年度における消耗品等の売上高は5,647,659千円(前期比4.9%増加)となりました。国内・海外市場ともに安定した需要が続き、国内市場での売上高は4,913,393千円(前期比2.8%増加)、海外市場での売上高は、機器の売上の増加に伴い734,266千円(前期比21.4%増加)となりました。

 

②キャッシュ・フロー

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、9,061,387千円(前事業年度末比475,027千円増加)となりました。なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、営業活動により得られた資金は977,535千円(前期比165,167千円減少)となりました。これは主に、税引前当期純利益が1,319,692千円、売上債権の減少が392,950千円であった一方、法人税等の支払額が574,587千円、棚卸資産の増加が452,396千円であったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、投資活動により支出した資金は32,343千円(前期比68,373千円減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が24,866千円であったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において、財務活動により支出した資金は470,164千円(前期比3,735,751千円減少)となりました。これは、配当金の支払額470,164千円があったことによるものであります。

 

③生産実績

 当事業年度の生産実績を単一セグメント内の品目別に示すと、次のとおりであります。

単一セグメント内品目別

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比増減率(%)

採血管準備装置・システム(千円)

4,268,045

△14.3

検体検査装置(千円)

727,091

82.2

消耗品等(千円)

5,707,872

3.4

合計(千円)

10,703,009

△1.8

 (注)金額は販売価格によっております。

 

④受注実績

 見込生産をおこなっておりますので、該当事項はありません。

⑤販売実績

 当事業年度の販売実績を単一セグメント内の品目別に示すと、次のとおりであります。

単一セグメント内品目別

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比増減率(%)

採血管準備装置・システム(千円)

3,636,434

△15.4

検体検査装置(千円)

621,770

3.8

消耗品等(千円)

5,647,659

4.9

合計(千円)

9,905,864

△3.7

 

 

⑥財政状態

(資産の部)

当事業年度末の総資産の残高は17,938,618千円となり、前事業年度末比504,744千円増加しました。これは主に、現金及び預金が475,027千円増加、商品及び製品が328,634千円増加、仕掛品が119,305千円増加した一方、売掛金が201,208千円減少、電子記録債権が168,433千円減少したことによるものであります。

 

(負債の部)

当事業年度末の負債の残高は3,549,555千円となり、前事業年度末比65,730千円減少しました。これは主に、未払法人税等が225,216千円減少、未払消費税等が128,576千円減少した一方、買掛金が160,022千円増加、前受金が131,760千円増加したことによるものであります。

 

(純資産の部)

当事業年度末の純資産の残高は14,389,063千円となり、前事業年度末比570,474千円増加しました。これは、配当金の支払いが470,144千円、自己株式の減少42,697千円があったほか、当期純利益が1,004,583千円であったことによるものであります。なお、自己資本比率は80.2%となり、前事業年度末比0.9ポイント増加しました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末日現在において判断したものであります。

 

①経営成績等

当事業年度の経営成績は、売上高9,905,864千円(前期比3.7%減少)、営業利益1,300,389千円(前期比29.3%減少)、経常利益1,303,692千円(前期比30.3%減少)、当期純利益1,004,583千円(前期比25.5%減少)となりました。

売上高に関しては、採血管準備装置・システム関連では、国内市場において大型案件の販売時期に変更が生じた影響により、前期比15.4%の減少となりました。検体検査装置関連では、海外市場においては、デスクトップ型血液ガス分析装置の販売が、中南米やアジア地域で伸長したことにより、前期比3.8%の増加となりました。消耗品等では、国内外ともに安定的な需要が続き、前期比4.9%の増加となりました。

売上総利益及び営業利益につきましては、売上高の減少に伴い、売上総利益は4,928,362千円(前期比4.3%減少)となり、販売費及び一般管理費は3,627,973千円(前期比9.5%増加)となった結果、営業利益は1,300,389千円(前期比29.3%減少)となりました。

 

②財政状態および経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当事業年度における我が国経済は、物価上昇による消費者の購買力低下、原材料費の高止まりによる企業収益への悪影響など、景気の先行きは依然として予断を許さない状況が続きました。医療機器業界においても、医師の働き方改革や診療報酬の改定に加え、医療従事者の人手不足などにより、業務の効率化が喫緊の課題となっております。このような環境の中で当社は引き続き、医療機器メーカーとして医療現場に価値を提供し続けるための製品開発、販売、製造活動に取り組んで参りました。

 

また当社は、2023年度(2024年3月期)からの中期経営計画を策定いたしました。本中期経営計画は、①財務戦略・投資計画・資本政策 ②人材戦略 ③営業戦略 ④生産技術戦略 ⑤研究開発戦略 の各戦略を着実に実行することにより、持続的成長を図り「2030長期ビジョン」へとつなげていくことを目指しています。3ヶ年累計で売上高308億円、営業利益45億円を計数目標としており、2025年3月期は計画未達となりましたが、2025年3月期までの2ヶ年累計では、2023中期経営計画の経営指標を上回っております。引き続き各戦略を遂行して参ります。

経営指標

2023中期経営計画

実績

計画比

2024年

3月期

2025年

3月期

2ヶ年累計

2024年

3月期

2025年

3月期

2ヶ年累計

2ヶ年累計

売上高(億円)

98.0

100.0

198.0

102.8

99.0

201.9

102%

営業利益(億円)

13.0

14.0

27.0

18.4

13.0

31.4

116%

売上高営業利益率

13.3%

14.0%

13.6%

17.9%

13.1%

15.6%

114%

 

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローにつきましては、(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローに記載のとおりであります。なお、当社のキャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりであります。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

84.28

79.26

80.21

時価ベースの自己資本比率(%)

82.59

70.19

67.78

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

(注)1. 各指標の算式は以下の算式を使用しております。

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

2. 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3. キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

4. 有利子負債は、貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としています。

 

当社の主な資金需要は、研究開発型企業として発展し続けるための研究開発資金や、生産活動に必要な運転資金、生産設備や研究設備を増設するための設備投資資金等であり、これらは主に自己資金によって賄っております。

 

④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表においては、経営者による会計上の見積りを行っております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社は、新しい価値をもった独創的新製品を開発し、新たな市場を開拓することを目的とし、積極的な経営資源の投資をおこなうことにより、今後とも新製品の継続的な上市をおこない、収益基盤の更なる強化をおこなってまいります。

 当社の研究開発活動は、1)医療・ヘルスケア製品技術の研究開発、2)新製品の設計及び商品改良開発、3)システム開発があります。研究開発案件の平均的な開発期間は、市場ニーズ、技術的ハードル、他社の研究開発動向も踏まえ基本的に2~5年間と設定しております。

 研究開発型企業として人員的にも多くの経営資源を投入しており、今後も大学との共同研究及び、外部有識者との研究会等を通じ収集・議論して生み出されたアイデアを製品開発に反映し、新たな収益の柱となる新製品の上市を目指してまいります。

 当事業年度の研究開発活動におきましては、採血管準備装置および関連システムの研究開発費572,192千円、検体検査装置分野の研究開発費118,330千円、合計690,523千円を費用計上しております。