当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「確かな技術とあくなき挑戦で、創造社会を切り拓く」というパーパス(存在意義)のもと、以下の課題に取り組んでおります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
2025年4月期の半導体関連分野におきましては、世界的な半導体需要が前年の落ち込みから回復し、特に生成AI向けデータセンターなどに使用されるGPUやCPUの需要が拡大しました。当社の主要取引先である半導体パッケージ基板メーカー各社が大規模な設備投資を行うなど、半導体パッケージ基板検査装置関連の引き合いや商談が活発化しました。一方で、自動車関連分野におきましては、電気自動車(EV)産業の停滞によりEV向けFPC市場の成長が鈍化しました。当社が新事業として取り組んできました露光装置関連事業につきましては、短期的には市場環境の回復が見込まれないと判断し、やむなく事業を撤退することを決断いたしました。
当社は、2023年12月に2030年をゴールとした中長期経営計画「インスペックVision 2030」を策定いたしましたが、当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ「インスペックVision 2030」を取り下げ、改めて2028年4月期をゴールとした中期経営計画を2025年6月に策定いたしました。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 高い競争力を持つ装置の開発
当社の柱となる基板検査装置関連事業について、生成AIの発展によりデータセンター向けの大規模投資を背景に、次世代CPU・GPUなどのハイエンドデバイスにおけるチップレット化で、より高機能化する半導体パッケージ基板に対応する検査装置の開発が急務であります。今後は配線パターンの微細化に対応する高性能検査装置の開発、近年主流になりつつある全自動化システム装置の更なる進化を実現し、急拡大する市場のニーズに応えてまいります。
② 収益体質の強化
昨今の原材料価格の高騰や円安の影響により、当社製品も製造コストが増加し、利益率を低下させております。この課題に対し、顧客折衝による価格転嫁のみならず、生産効率向上による原価低減を目指しております。
具体的には、見積段階から工数とノウハウを正確に管理することで基準となる適正な原価を算定し、予実管理システムを運用することで原価低減に努めております。
また、サプライチェーンの見直しを図り、新規サプライヤーの開拓によってリスク分散及びQCDの向上を目指し、より効率的・柔軟・持続可能な仕組みに改善していくことに取り組んでおります。
最適コストで高収益体質を維持し、市場における競争力を高めていくと同時に、次世代に向けた開発投資や株主還元にもつなげてまいります。
③ 海外市場向け販売の強化
海外市場においては、台湾及び中国の総販売代理店であった台湾TKK社と2025年4月に契約を解消し、既存代理店のWorld Wide Semi-Conductor Equipment社による中国、タイ及びベトナムでの営業活動に注力しております。
今後は東アジア諸国で拡大しつつある半導体関連市場をメインターゲットとし、台湾及び中国の展示会への出展、新たな台湾現地法人商社との連携や、当社子会社「台湾英視股份有限公司(所在地:台湾桃園市)」での実機デモンストレーションで商談活動を活発化させることや、タイ、ベトナムを中心とした東南アジアの展示会への出展等を通じて海外市場での販売活動を強化してまいります。
④ 人的資本経営の強化
当社は人的資本に積極投資し、持続的成長を支える組織力を強化するため、次世代のリーダーと高度専門人材の育成を進めてまいりました。市場の変動がもたらす企業間競争は激化しており、この厳しい競争を生き抜くためにも、社員一人ひとりが成長を続けその能力を最大限発揮することが不可欠であります。
2023年5月より運用を開始した人事評価制度の活用や階層別の教育研修制度を充実させ、初任給の引き上げや基本給のベースアップなど、働きがいのある職場環境を整備することで従業員エンゲージメントの向上を図っております。
また、当社のパーパス・バリューを日々の意思決定の指針として掲示することで全従業員に浸透させ、同じ目標に向かって一丸となり、企業価値の向上を実現させることで、全てのステークホルダーの期待に応えられるように取り組んでまいります。
⑤ コーポレート・ガバナンスの強化
当社は、リスク管理を徹底し、経営の透明性を向上させるため、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおります。
リスク管理については、第三者である社外役員の登用による経営への監視、内部監査による業務執行に関するリスクの監視とモニタリング及び月1回開催のコンプライアンス・リスク管理委員会によりコンプライアンスの徹底と事業全体のリスクを監視することで内部統制組織を強化しております。
経営の透明性については、内部統制組織を強化し、企業の透明性向上に努めるためステークホルダーに対する情報開示と説明責任をより明確に果たしていくことに取り組んでおります。
今後も企業価値を継続的に高めていくため、経営上の組織体制の強化と仕組みを整備し、必要な施策を実施してまいります。
(4) スリムでシンプルな経営体制
当社は製造業ですが、メーカーとしては極めて小規模な企業体制を取っております。この小規模体制であることを強みとして活かし、その上でグローバルマーケットに向けて事業を展開していくため、コア技術及び業務は社内で確立し、アウトソーシングが可能な業務については、外部企業の協力を得ることで必要な生産能力を確保し事業の拡大を図ってまいります。
このため、販売活動のみならず生産業務、サービス業務、一部の開発業務等についても、国内外を問わず求める能力とコストのバランスを検討し、最適なパートナーと判断できる企業との協力関係を構築して事業活動を進めてまいります。
なお、計画実現のため、販売部門、サービス・サポート部門、設計及び開発部門それぞれの部門でマンパワーの増強に取り組んでおり、若手社員の育成とともに、将来の事業拡大を支える経営基盤の強化に取り組んでおります。
この方針のもとに、高成長・高収益を目指し、強固な経営基盤の構築を実現してまいります。
(5) 財務及びキャッシュ・フロー方針
当社は、製品の生産活動及び技術開発や製品開発等の投資活動を通し、継続的な成長を実現し、最適な財務及びキャッシュ・フロー戦略を実行してまいります。
今後、中期経営計画の中で創出されるキャッシュ・フローは、戦略投資と財務基盤の強化について健全なバランスを維持して活用してまいります。
また、大口受注等による一時的な資金需要については、現状の金融機関との良好な関係をもとに資金需要のロットに合わせて機動的な資金調達方法により事業資金の安定化に努めてまいります。
剰余金の配当につきましては、当事業年度の業績及び財政状態等を総合的に勘案した結果、誠に遺憾ではございますが無配とさせて頂いております。
(6) 目標とする経営指標
当社は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、パーパスのもと、基板検査装置関連事業の成長の持続と稼ぐ力の向上で企業価値拡大を図り、2028年4月期をゴールとした中期経営計画のもと、中長期的な目標として営業利益率15%以上、ROE(自己資本利益率)15%以上を目指し、PBR(株価純資産倍率)の向上を図ります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、「確かな技術とあくなき挑戦で、創造社会を切り拓く」というパーパスを掲げており、「Society5.0」ともいわれる創造社会の実現に事業活動を通じて真摯に取り組んでおります。創造社会とは「誰もが輝き心豊かに生きることが出来る社会」とあり、「社員が幸せになれる会社」への取り組みこそが創造社会の実現への取り組みであると認識しております。
当社は、このパーパスに基づき、現在地球が抱えている様々な問題に対して、SDGs活動における地域社会への貢献や、環境問題解決への貢献に次のとおり取り組んでおります。
・自社製品の技術革新による生産性向上・人手不足解消・クリーンエネルギー技術発展への貢献
・工場・オフィス室内照明のLED化による環境負荷軽減への貢献
・事務処理のペーパーレス化による環境負荷軽減への貢献
・本社工場に再生可能エネルギー100%を導入したことによる環境負荷軽減への貢献
今後も事業活動及び事業活動を通じたSDGs活動によって、創造社会と持続可能な社会の実現を目指し、全てのステークホルダーの期待に応えられるように取り組んでまいります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社のコーポレート・ガバナンス体制は、
②リスク管理
当社のリスク管理体制については、全社的なリスクに関する課題・対応策を審議・承認する会議体として代表取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、毎月1回開催される経営会議と同時に開催しております。
(2)人的資本
①戦略
当社は、サステナビリティ経営推進のため、人的資本を最重要課題と位置付けております。人員計画については、ここ数年強化してきた新卒・中途の採用活動が実を結び、世代交代が順調に進んでおり、役職定年を迎えた社員をシニアエキスパート職として配置するなど、若手・中堅・シニアの幅広い世代が活躍できる職場づくりに取り組んでおります。人材育成については、従来行っていた従業員の役割に応じた階層別研修や、グローバル人材育成のための全従業員対象の英語研修に加え、年間を通じて複数回にわたる若手社員向け社会人基礎力研修、中堅社員向けマネジメントスキル研修、さらに当社のコア技術に関連した専門基礎知識習得のeラーニング研修など、多様な人材育成プログラムを体系的に整備してまいりました。これらの取り組みを通じて、人的資本の高度化と持続的な価値創出につなげております。
また、従業員一人ひとりが働きがいのある職場づくりを目指して、新たな人事評価制度を導入したほか、ノー残業デー設定による時間外労働の削減、計画有給による休暇取得の推進、時間単位の有給休暇と病気休暇制度の新設、育児・介護の両立支援などワークライフバランス実践に向けた取組も積極的に行っております。
②指標及び目標
当社は、上記戦略に関し、女性管理職割合増加を目指した人材教育を行うことを目標としております。2025年4月期の実績及び長期目標(2030年4月期)については以下の通りです。
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指標 |
2025年4月期 |
長期目標
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なお、労働者の男女の賃金の差異についての実績は、
以下には、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、事業上のリスクとして具体化する可能性は必ずしも高くないと見られる事項を含め、投資家の投資判断上、重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
当社はこれらのリスクの発生の可能性を認識した上で、その発生の予防及び発生の際の対応に努力する方針ですが、本項目の記載は当社の事業または当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。当社株式に関する投資判断は、本項目以外の記載内容をあわせて慎重に検討の上、行われる必要があると考えられます。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 設備投資需要の変動について
当社の業績は、景気変動による設備投資の増減の影響を大きく受ける傾向にあり、何らかの要因で日本及び主要事業国の台湾、中国において設備投資需要が落ち込んだ場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 他社との競合について
当社の検査装置は、自社で開発したコア技術が競争力の原点となっており、当社の成長はこの技術に依存していくものと予想しております。当社は、今後も継続して大きな競争力を持つシステムの開発を進めていきますが、他社が同様のシステムあるいは当社の製品を上回る性能を発揮するシステムを開発する可能性は否定できないため、当社事業において競争力が失われた場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 新製品の開発・販売について
当社の検査装置は、自社で開発した画像処理専用コンピューターをコアとした画像処理システムを特徴としており、画像処理システムのバージョンアップや検査対象の拡大など、今後も継続して魅力ある製品開発を行っていく予定であります。
新製品開発のためには先行して長期的な投資と大量の資源投入が必要ですが、これらのすべてが新製品・新技術の創造へとつながる保証はなく、また、新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を今後十分確保できるという保証もありません。
さらに、当社がユーザーから支持を獲得できる新製品・新技術を正確に予想することができるとは限らず、開発した新製品の販売が必ずしも成功する保証もありません。このため、当社が業界とユーザーの変化を十分に予測できず魅力ある新製品を開発できない場合には、開発のための先行投資が売上に貢献せず、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 製品のライフサイクルについて
当社の検査装置は、軽量化や小型化に向けた技術革新の進展が早いデジタル家電分野の商品を対象としており、より微細なものを検査する、あるいは製造する必要があることから装置性能の向上が求められ、新しいニーズが連続的に発生いたします。半導体分野及び精密プリント基板分野のメーカーからは、短期間で性能向上を実現する開発が求められるため、当社の開発に遅れが生じた場合には、顧客ニーズに対応しきれずに受注のタイミングを逃す可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 製品保証について
当社の製品については、品質不良あるいは製品不具合に対して、検収後1年間の無償保証期間を設けております。製品保証に伴い発生する費用に対しては、過去の実績等をもとに製品保証引当金を計上しておりますが、新製品など従来とは異なる仕様の製品などで引当額以上の保証費用が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 優秀な人材の確保について
当社の事業は、ユーザーからの要求に応じて最先端かつ高度な技術力を提供していくことが重要な要素であります。このような要求に対応し、ユーザー満足度を高め、製品の付加価値を高めていくためには、優秀な人材の確保が重要となります。このため、タイムリーに必要な人材の確保ができない場合や優秀な従業員が多数離職した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 検収時期の変動による業績変動の可能性について
当社の検査装置は、通常、受注から検収まで約4~6ヶ月を要し、ユーザーの検収に基づき売上を計上しております。そのため、当社は製品の設計から納品までの製造工程を管理し、計画どおりに売上計上できるように努めておりますが、ユーザーの設備投資計画の変更または事業方針の変更等により、仕様あるいは納期が変更されることもあります。この場合、1台当たりの製品が比較的高額であることから、ユーザーの検収タイミングによっては、事業年度期間を前後することで当社の売上が変動し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 有利子負債の依存度について
当社は、財務戦略として一定規模の有利子負債に依存しております。そのため、金利が上昇した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の有利子負債の内訳 (単位:千円)
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区分 |
第36期 前事業年度 (2024年4月期) |
第37期 当事業年度 (2025年4月期) |
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流動 負債 |
短期借入金 |
1,500,000 |
1,000,000 |
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1年内返済予定の長期借入金 |
154,224 |
154,224 |
|
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固定 負債 |
長期借入金 |
661,310 |
507,086 |
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有利子負債計 |
2,315,534 |
1,661,310 |
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|
総資産 |
3,739,515 |
3,000,683 |
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有利子負債依存度 |
61.9% |
55.4% |
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(9) 知的財産権について
当社の技術の中には、画像処理専用コンピューターにおけるソフトウェアのように、特許として知的財産権を獲得するよりも、ノウハウとして保有するほうが事業戦略上有利であると考えられるものもあり、必ずしも全ての技術について特許を出願する必要はないと考えております。
当社は、特許の出願については、有用性及び費用対効果を考慮して行っており、当社独自の技術あるいは研究成果について、必要かつ可能な範囲において特許権等の知的財産権の登録を行い、権利保護に努めることとしておりますが、他社により当社の権利が侵害される可能性があります。
また、ノウハウとして保有している技術についても他社が利用する可能性もあります。
一方、当社では、第三者に対する知的財産権の侵害を行っていないものと認識しておりますが、当社の事業分野における知的財産権の現状を完全に把握することは困難であります。したがって、万一、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償または使用差止め等の請求を受ける可能性があります。
これらの事態が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 経営陣への依存度について
当社の創業者であり代表取締役社長兼代表執行役員である菅原雅史は、経営方針や戦略の決定をはじめ、主要な取引先へのトップセールスなど、当社事業において極めて重要な役割を果たしております。現在、退任の予定はなく、当社も依存しない体制作りを行っておりますが、万一、当該体制が構築される前に何らかの事情で当社を離れる事態となった場合には、当社の事業活動に重大な影響を与える可能性があります。
(11) 小規模組織であることについて
当社は、従業員85名(2025年4月30日現在)と会社規模が小さいため、社内体制も組織規模に応じたものになっております。今後、事業規模が拡大し、それに応じた社内体制の構築が実現できない場合には、迅速かつ適切な内部管理を行えず、事業運営に制約を受ける可能性があります。
(12) 海外展開について
当社は、2012年度より本格的に海外展開を図っており、台湾及び中国の顧客への販売強化、サポート体制の確立のため、代理店と連携を図りながら推進しております。海外では予測しがたい規制や法律、政情不安、社会的混乱、為替、人材確保などのリスクが存在しており、これらの事象によっては当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 自然災害等による影響について
当社は創業の地である秋田県仙北市に本社があります。今後、当地域において大地震等の自然災害等が発生した場合は、当社の業績のみならず当社の活動に影響を与える可能性があります。
また、感染症の拡大によって事業活動に影響を受ける可能性があります。当社では、適宜リスク管理委員会を開催し検討の結果、必要な処置を施すことにより従業員等の安全を守るよう努めております。具体的には、Web会議システムの導入やテレワークの実施、リモートで立上作業を行う等の感染予防策を講じておりますが、この影響が継続・拡大した場合には、取引先との商談や工場稼働の悪化要因にもなり、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 企業買収、資本提携について
当社は、事業の拡大や競争力の強化などを目的として、企業買収や資本提携などを実施することがあります。これらを行う際には、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行ったうえで判断しておりますが、当社や対象企業を取り巻く事業環境の変化などにより、当初期待していたシナジー効果や新事業創出などのメリットを得られない場合や出資先の業績不振により「のれん」や「株式簿価」などの減損損失を計上する場合には、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
当事業年度末の財政状態につきましては、総資産が3,000百万円となり、前事業年度末に比べ738百万円減少しました。一方、負債は2,042百万円となり、前事業年度末に比べ618百万円減少しました。また、純資産は958百万円となり、前事業年度末に比べ120百万円減少しました。
②経営成績の状況
当事業年度(2024年5月1日~2025年4月30日)における世界経済は、金融引き締め政策の継続、中国経済の停滞、ウクライナ情勢及び中東地域における地政学リスクの長期化、米国の政策動向による景気減速懸念など先行き不透明な状況が続いております。わが国経済につきましては、雇用や所得環境の改善により、緩やかな回復基調で推移したものの、物価上昇の継続や、不安定な国際情勢による景気下振れリスクが高まるなど、先行き不透明感が強まっております。
このような経営環境の中、当社の当事業年度の売上状況につきましては、基板検査装置関連事業は当初計画を達成したものの、露光装置関連事業の受注・売上が獲得できず、当事業年度の売上高は当初計画を下回りました。
当事業年度の受注状況におきましては、2025年4月9日付及び2025年4月28日付「大型受注に関するお知らせ」で開示いたしましたとおり、当社の主力製品である半導体パッケージ基板検査装置及びロールtoロール型検査装置の大型受注をそれぞれ国内外の顧客から獲得し、当事業年度の受注高は3,014百万円(前年同期比173.3%増)と過去最高となり、当事業年度末における受注残高は1,420百万円(前年同期比120.6%増)となりました。
当社の主力事業であります基板検査装置関連事業につきましては、現在、生成AI向けデータセンターの大規模投資が継続し、半導体パッケージ基板及びインターポーザー※向け検査装置の新規需要の高まりにより高性能検査装置の引き合いが増加していることから、受注獲得へ向け技術開発に取り組んでおります。
また、当社は製品や技術を広く紹介し、新たな顧客との接点を構築するべく、国内外の展示会に積極的に出展しております。新事業年度においても、当事業年度に引き続き2025年6月4日~6月6日に東京ビッグサイトで開催されました「JPCA Show 2025(主催:一般社団法人日本電子回路工業会)」に出展し、商談に繋がるお問い合わせも多くいただくなど、大盛況で終えることができました。
一方、露光装置関連事業につきましては、当社独自のFPC向けロールtoロール型シームレス両面同時直描露光装置を開発し、成長を目指してまいりましたが、近年の電気自動車産業の停滞によりEV向けFPC市場の成長が鈍化し、当初の想定を大きく下回り需要が減少したこと、加えて市場環境の回復が短期的には見込むことが難しいと判断したため、2025年3月14日付「露光装置事業からの撤退、特別損失の計上、業績予想の修正及び剰余金の配当予想の修正(無配)に関するお知らせ」で開示いたしましたとおり、露光装置関連事業からの撤退を決定いたしました。
今後は、基板検査装置関連事業へ経営資源を集中し、技術開発の強化と市場ニーズへの迅速な対応を図ることで、拡大する需要に対応すべく、総力を挙げて取り組んでまいります。
以上の結果、当社の当事業年度の売上高は2,237百万円(前年同期比34.1%増)、営業利益は108百万円(前年同期は営業損失233百万円)、経常利益は116百万円(前年同期は経常損失263百万円)、事業撤退損247百万円を特別損失として計上したことにより当期純損失は142百万円(前年同期は当期純損失353百万円)となりました。
当社は「基板検査装置関連事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の業績は記載しておりません。
※ 半導体チップとパッケージ基板の間を配線する微細な再配線層、高性能半導体の重要部材
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ198百万円減少し、396百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は543百万円(前事業年度は105百万円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費126百万円の計上、事業撤退損247百万円の計上、売上債権の増加によるキャッシュ・フローの減少額136百万円、棚卸資産の減少によるキャッシュ・フローの増加額371百万円及び税引前当期純損失130百万円の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は66百万円(前事業年度は77百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出66百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は675百万円(前事業年度は129百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額による支出500百万円及び長期借入金の返済による支出154百万円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社は、基板検査装置関連事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載しておりませんので、生産実績、受注状況及び販売実績を品目別に記載しております。
a.生産実績
当事業年度の生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目別 |
当事業年度 (自 2024年5月1日 至 2025年4月30日) |
前年同期比(%) |
|
ロールtoロール型検査装置(千円) |
774,571 |
178.0 |
|
フラットベッド型検査装置(千円) |
578,024 |
△57.5 |
|
インライン検査装置(千円) |
23,477 |
△35.5 |
|
その他(千円) |
197,436 |
△28.9 |
|
合計(千円) |
1,573,510 |
△19.4 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
|
品目別 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
|
ロールtoロール型検査装置(千円) |
1,230,960 |
452.0 |
385,000 |
400.0 |
|
フラットベッド型検査装置(千円) |
1,489,770 |
142.9 |
869,400 |
92.6 |
|
インライン検査装置(千円) |
25,000 |
△12.5 |
- |
- |
|
その他(千円) |
268,788 |
12.8 |
166,543 |
92.9 |
|
合計(千円) |
3,014,518 |
173.3 |
1,420,943 |
120.6 |
c.販売実績
当事業年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
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品目別 |
当事業年度 (自 2024年5月1日 至 2025年4月30日) |
前年同期比(%) |
|
ロールtoロール型検査装置(千円) |
1,091,360 |
250.0 |
|
フラットベッド型検査装置(千円) |
896,370 |
△19.4 |
|
インライン検査装置(千円) |
54,400 |
29.5 |
|
その他(千円) |
195,638 |
△3.4 |
|
合計(千円) |
2,237,768 |
34.1 |
(注)最近2事業年度の主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2023年5月1日 至 2024年4月30日) |
当事業年度 (自 2024年5月1日 至 2025年4月30日) |
||
|
金額 (千円) |
割合 (%) |
金額 (千円) |
割合 (%) |
|
|
TOPPAN株式会社 |
498,240 |
29.9 |
383,832 |
17.2 |
|
株式会社村田製作所 |
198,090 |
11.9 |
333,970 |
14.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たり、過去の実績や現在の状況等に応じ合理的と考えられる要因に基づき、見積りを行っているものがあります。このため、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
製品保証引当金
当社は、製品の売上を認識する時点で、製品検収後1年間の無償保証期間における無償保証に係る費用の見積額を計上しておりますが、実際の製品の瑕疵に伴う無償保証費の発生額が見積りと異なる場合には、追加的に無償保証費の計上が必要となる可能性があります。
棚卸資産
当社は、棚卸資産のうち、主に製造委託先に支給する部品やメンテナンス用の部品について、将来の使用可能性を個々に判断し、評価損を計上しております。しかし、将来の使用可能性に変化が生じた場合には、追加的な評価損の計上が必要となる可能性があります。また、仕掛品については、一部受注予想に基づき見込み生産することがあり、予想通り受注できない場合には仕掛品が滞留し、評価損の計上が必要となる可能性があります。
固定資産の減損
当社は、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。将来において、事業環境の変化や業績の動向により減損の兆候が生じ、回収可能価額が帳簿価額を下回ることとなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
投資有価証券の評価
当社は、投資有価証券の評価においては投資先の財政状態、経営成績等を総合的に勘案し、時価又は実質価格の回復可能性を慎重に検討しております。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
当事業年度末における資産の部は、前事業年度末に比べ738百万円減少し、3,000百万円となりました。これは主に、現金及び預金198百万円の減少、売掛金51百万円の減少、電子記録債権187百万円の増加、仕掛品459百万円の減少、機械及び装置127百万円の減少によるものです。
負債の部では、前事業年度末に比べ618百万円減少し、2,042百万円となりました。これは主に、短期借入金500百万円の減少及び長期借入金154百万円の減少によるものです。
純資産の部では、前事業年度末に比べ120百万円減少し、958百万円となりました。これは主に、当期純損失142百万円の計上によるものであります。
2)経営成績
(売上高)
品目別の売上高は下表のとおりです。
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品目別 |
当事業年度 |
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金額(千円) |
構成比(%) |
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ロールtoロール型検査装置 |
1,091,360 |
48.8 |
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フラットベッド型検査装置 |
896,370 |
40.1 |
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インライン検査装置 |
54,400 |
2.4 |
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その他 |
195,638 |
8.7 |
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合計 |
2,237,768 |
100.0 |
(売上原価及び売上総利益)
当事業年度における売上原価は1,333百万円となり、売上総利益は904百万円となりました。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
販売費及び一般管理費は795百万円となりました。
この結果、営業利益は108百万円(前年同期は営業損失233百万円)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
営業外収益は63百万円となりました。
営業外費用は55百万円となりました。
この結果、経常利益は116百万円(前年同期は経常損失263百万円)となりました。
(当期純利益)
税引前当期純損失は130百万円となり、当期純損失は142百万円(前年同期は当期純損失353百万円)となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、部材調達のための原材料購入費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。
当社は、現在戦略的に取り組んでおりますフラットベッド型検査装置及びロールtoロール型検査装置の生産に対応すべく、かつ、当社の持続的な成長を維持するために必要な運転資金の調達は今後も発生する可能性があると考えております。
なお、当事業年度末における借入金を含む有利子負債の残高は1,661,310千円となっております。また、当事業年度において、株式会社秋田銀行をアレンジャーとするシンジケートローン契約を締結しております(借入未実行残高1,000,000千円)。
(1)代理店契約
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契約会社名 |
契約の名称 |
相手方の名称 |
契約締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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インスペック 株式会社 |
総代理店契約 |
台湾TKK(Taiwan Kong King Co.,Ltd.: 台灣港建股份有限公司)(注) |
2011年 6月2日 |
2011年6月2日より2年間。以降1年間自動更新。 |
当社主力製品であるフラットベッド型検査装置SXシリーズ及びロールtoロール型検査装置RAシリーズの台湾・中国向けの販売 |
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インスペック 株式会社 |
代理店契約 |
香港WWG(World Wide Semi-Conductor Equipment Co.Ltd.:香港公司環球集團) |
2022年 8月1日 |
2022年8月1日より3年間。以降1年間自動更新。 |
当社主力製品であるフラットベッド型検査装置SXシリーズ及びロールtoロール型検査装置RAシリーズの中国向けの販売 |
(注)2025年4月に契約を終了しました。
(2)企業・株主間のガバナンスに関する合意
該当事項はありません。
(3)企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意
該当事項はありません。
(4)ローン契約と社債に付される財務上の特約
(シンジケートローン契約の締結)
当社は、2024年12月25日にシンジケートローン契約(以下、「本契約」といいます。)を締結いたしました。
1.本契約の目的
当社は、主力製品でありますロールtoロール型検査装置及びフラットベッド型検査装置の受注を国内外の顧客から継続して獲得しており、今後も生成AI向け半導体を中心とした半導体市場の更なる拡大による、検査装置需要の増加が見込まれます。
当社の事業は、大量かつ高額の部材調達が先行する事業形態であるため、受注増加が必要運転資金の増加に直結いたします。そのため、安定的な資金調達手段を確保する目的として本契約を締結いたしました。
2.本契約の概要
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(1) |
契約形態 |
シンジケートローン方式によるコミットメントライン |
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(2) |
組成金額 |
総額20億円 |
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(3) |
アレンジャー |
株式会社秋田銀行 |
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(4) |
エージェント |
株式会社秋田銀行 |
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(5) |
参加金融機関 |
株式会社秋田銀行 株式会社商工組合中央金庫 羽後信用金庫 |
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(6) |
資金使途 |
運転資金 |
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(7) |
当初契約締結日 |
2024年12月25日 |
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(8) |
コミットメント期間 |
2024年12月30日~2025年12月30日 |
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(9) |
担保の有無 |
無担保・無保証 |
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(10) |
期末借入残高 |
10億円 |
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(11) |
財務制限条項 |
「第5 経理の状況 1財務諸表等 注記事項(貸借対照表関係)」に記載のとおりであります。 |
当事業年度における研究開発活動の総額は
AI市場の急成長に伴い、半導体パッケージ基板はチップレット※化、微細配線化が急速に進んでおります。これに対応するため、パッケージ基板検査装置SXシリーズは、更なるファイン化に対応するべく、L/S=1.5μm/1.5μm対応のSX7000シリーズの開発を行うとともに、L/S=5μm/5μm対応のショート欠陥を修正するリペア装置の準備も行っており、次世代基板の歩留まり向上に貢献できるラインナップを揃えております。ロールtoロール型検査装置RAシリーズでは、電気自動車(EV)による需要が中国から東南アジアにシフトしております。これに対応するため、さらなる高速化、AI搭載を進め、また、海外現地での生産委託を推進し競争力の強化を行ってまいります。
※ 半導体を複数の小さなチップに分けて製造、組み合わせて一つのパッケージ基板に収める技術