第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する。」ことを会社設立の趣旨とし、企業理念である「再生医療の産業化を通じ、社会から求められる企業となる。法令・倫理遵守の下、患者のQOL(生活の質)向上に貢献することにより、人類が生存する限り成長し続ける企業となる。その結果、全てのステークホルダーがより善く生きることを信条とする。」に基づいて、再生医療等製品及び関連製品の開発、製造、販売ならびに開発製造受託(CDMO)、開発業務受託(CRO)を行います。

(2)経営戦略

基本方針:再生医療のさらなる普及に向けた、新製品の開発ならびに生産技術革新・販売力強化を推進する

①新規再生医療等製品の開発

1.対象領域としては、既存の皮膚・軟骨領域に加え、角膜・がん領域を目指す。特に二次性の変形性膝関節症等従来にない大規模な市場を狙い、飛躍的な事業拡大をはかる。

2.これまで再生医療等製品の開発・適応拡大を実現してきた経験・ノウハウを生かし、既に治験を開始している製品及び今後治験開始を予定している製品の開発を着実に進める。

②より多くの需要に備えた生産技術開発・販売力強化

1.自家細胞製品の大量受注・安定供給実現のため、これまで蓄積してきた培養技術と富士フイルムのエンジニアリング技術を融合し、革新的な生産技術・生産体制を確立する。

2.販売数量の増加に効率的に対応できる、再生医療の営業戦略・営業手法を確立するとともに、当該製品がより適切に使用されるよう情報の収集・提供の仕組みを再整備する。

③既存事業の伸長による安定した利益の創出

1.自家培養表皮ジェイスは、表皮水疱症で売上を伸ばす。自家培養軟骨ジャックは、コラーゲン膜による低侵襲化・移植手技の簡便化を徹底的に訴求し、症例数の増加につなげる。

2.受託事業は、これまで獲得した案件を成功に導くとともに、これら実績を梃子にさらなる良質な新規案件を獲得する。加えて、当該事業モデルの一般化・標準化を目指す。

3.ラボサイトは、OECDテストガイドライン化の訴求と海外展開により売上増をはかる。

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

(単位:百万円)

売上高

対前期成長率

営業利益

営業利益率

経常利益

当期純利益

2020年3月期(計画)

3,080

30.6%

106

3.4%

112

86

2021年3月期(目標)

3,589

16.5%

207

5.8%

214

181

2022年3月期(目標)

4,093

14.1%

421

10.3%

428

364

(4)経営環境

 2012年に京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことを契機に、我が国は再生医療を成長戦略の一つとして位置付けました。再生医療への期待が急速に高まる中で、再生医療の普及を迅速に進めるための法整備が進められ、2014年11月に薬事法は医薬品医療機器等法として改正され、新たに再生医療等製品が定義されると同時に、再生医療等製品に条件・期限付承認制度が導入されました。また、再生医療を安全かつ迅速に実施するための再生医療等安全性確保法が施行されました。そのような状況の下、同種細胞を用いた再生医療製品の開発や、国内外技術導入による製薬企業の参入、iPS細胞による再生医療が臨床応用ステージに入る等の動きが加速しています。一方で、国民医療費は、高齢化の進展、疾病構造の変化、医療の高度化によって年々増大しており、医療保険制度の持続可能性の確保が喫緊の課題となっています。

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社は、会社が対処すべき課題を以下のとおり認識し、その解決に向けた取り組みを展開しています。

①再生医療製品事業

(a) 自家培養表皮ジェイス

 自家培養表皮ジェイスは、重症熱傷及び先天性巨大色素性母斑の治療のための再生医療等製品です。本品は、表皮水疱症への適応を目的とした一部変更の承認を2018年12月28日付で取得しました。当社は、この新たな適応においても速やかに本品を普及させ、売上増加に努めていきます。

 本品は、先天性巨大色素性母斑ならびに表皮水疱症の適応において10年間の使用成績調査が課せられており、当社は適切に医療機関に情報提供し、有効性及び安全性の確保に努めていきます。

 また重症熱傷の適応において一連につき40枚を限度としていた保険算定が、2018年4月から医学的に必要がある場合にその理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載した上で50枚を限度として算定できることになりました。当社は、使用実績を踏まえてさらなる算定限度の緩和を追求し、ジェイス治療の質向上を目指します。

 (b) 自家培養軟骨ジャック

 自家培養軟骨ジャックは、外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の治療のための再生医療等製品です。本品は、移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更の承認を2019年1月31日付で取得しました。当社は、これにより実現した本品の低侵襲化・移植手技の簡便化を徹底的に訴求し、売上増加に努めていきます。

 本品は、7年間の使用成績調査が課せられており、当社は適切に医療機関に情報提供し、有効性及び安全性の確保に努めていきます。

 本品の適応には欠損面積が4cm2以上という条件が付与されています。現在、軟骨欠損はMRI等の画像で診断されますが、軟骨欠損の状態を正確に把握することは技術的に困難です。当社は富士フイルムとの協業により軟骨欠損診断の支援技術を確立し、軟骨欠損の診断を正確かつ容易に行うことで、本品のさらなる普及につなげたいと考えています。

 さらに、外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を2018年7月に提出し、治験を実施しています。より大規模な市場に本品を展開するべく、開発を進めていきます。

②再生医療受託事業

 当社は、自社製品の開発・製造・販売を通じて蓄積したノウハウと確立したシステムを活用し、再生医療等製品に関する開発製造受託サービス、開発業務受託及び再生医療の提供への支援サービスを展開しています。

 受託案件は多種多様であり、案件毎に様々なステージに在って多くの課題を抱えているため、委託元と密に連携し、一つ一つ課題を解決していく必要があります。当社は社内の受入体制や得られた知見・経験を整備しながら、これまで獲得した案件を成功に導くとともに、これらの実績を梃子にさらなる良質な案件を獲得し、本事業を当社の中核事業に育てます。

 また株式会社ニデックからの委託を受けて進めてきた自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)及び自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET)の開発を完遂し、製品の製造受託を開始することで、事業を拡大します。

③研究開発支援事業

 研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズは、表皮細胞のエピ・モデル、角膜上皮細胞の角膜モデル及びエピ・モデルの3製品をラインナップしており、動物実験を代替する試薬として使用されています。

 本シリーズは、2018年6月には角膜モデル24を用いた眼刺激性試験法がOECDガイドラインに収載、2019年6月にはエピ・モデル24を用いた皮膚腐食性試験法がOECDガイドラインに収載される等、使用方法の標準化に向けて着実に対応を進めており、それを訴求して売上増加に努めます。またアジア向け等海外への宣伝活動にも取り組んでおり、富士フイルムのネットワークの活用も視野に、海外展開を推進します。

④新規再生医療等製品の開発

 当社は、既存の皮膚・軟骨領域に加え、角膜・がん領域への展開を目指し、新製品の開発を進めています。これまで再生医療等製品の開発・適応拡大を実現してきた経験・ノウハウを生かし、各開発ステージで想定される開発長期化等のリスクをコントロールしながら、計画通り着実に開発を進めます。

 また自社開発パイプラインに加え、富士フイルムとの協業による新製品開発・販売を推進します。

⑤より多くの需要に備えた生産技術開発・販売力強化

 当社の取り扱う製品やサービスは、不確定性や個別性が高く、受注等に繁閑が生じることがあります。当社はこのような変動要因の多い製造環境においても高品質な製品を安定して供給するために、製造や検査作業の効率化を推進し、生産体制の整備を進めてきました。今後は、将来想定される大量受注に備えるため、これまで蓄積してきた培養技術と、富士フイルムが得意とするエンジニアリング技術を融合し、革新的な生産技術・生産体制の確立を目指します。

 また販売についても、数量の増加に効率的に対応出来るような営業戦略・営業手法を確立するとともに、当社の製品がより適切に使用されるよう情報の収集・提供の仕組みを再整備する等、再生医療等製品の販売力強化を図ります。

働きがいのある企業風土の醸成

 当社は、国内の労働環境の変化に対して、公平でチャレンジできる制度や多様な人材の育成を強化する仕組みにより、働き方の多様化に対応した、働きがいのある企業風土の醸成に向けて取り組んでいます。

(6) 株式会社の支配に関する基本方針について

①基本方針の内容

 当社の財務及び事業の方針を決定する者は、当社の企業価値の源泉を理解し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を継続的に確保、向上していくことを可能とする者であることが必要と考えています。

 当社は、金融商品取引所に株式を上場している者として、市場における当社株式の自由な取引を尊重し、特定の者による当社株式の大規模買付行為であっても、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保、向上に資するものである限り、これを一概に否定するものではありません。

 また、最終的には株式の大規模買付提案に応じるかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきだと考えます。

 ただし、株式の大規模買付提案の中には、ステークホルダーとの良好な関係を保ち続けることができない可能性がある等、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を損なうおそれのあるものや、当社の価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的な決定をされるために必要な情報が十分に提供されないものもありえます。

 そのような大規模買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考え、かかる提案に対して、当社取締役会は、株主の皆様から経営を負託された者の責務として、株主の皆様のために、必要な時間や情報の確保、株式の大規模買付提案者との交渉等を行う必要があると考えます。

②不適切な支配の防止のための取組み

1.企業価値向上への取り組み

 当社は、「医療の質的変化をもたらすティッシュエンジニアリングをベースに、組織再生による根本治療を目指し、21世紀の医療そのものを変えてゆく事業を展開する。」ことを会社設立の趣旨とし、「再生医療の産業化を通じ、社会から求められる企業となる。法令・倫理遵守の下、患者様のQOL(生活の質)向上に貢献することにより、人類が生存する限り成長し続ける企業となる。その結果、全てのステークホルダーがより善く生きることを信条とする。」という企業理念に基づいて事業を展開しています。当社は、再生医療等製品の研究開発・製造・販売と、再生医療に関する開発製造受託(CDMO)や開発業務受託(CRO)を提供する再生医療受託事業、ならびに研究開発支援事業を展開しています。

 当社は企業価値向上への取り組みとして、年度毎に経営計画を策定し、代表取締役が直接全役職員に説明することにより目標の共有化を図り、全社一丸となって企業理念の実現に向け事業を展開しています。また、当社事業を推進するにあたり富士フイルムと密接な連携を図ることにより、グループとしてより効率的に取り組んでいます。

 当社は、情報開示体制を整備し、再生医療の啓蒙を兼ねたPR活動を適切に行うことにより、多くの投資家の要望に応えることができる積極的なIR体制の構築、運用に努めています。また、適切に牽制がかかり情報の信頼性を担保する内部統制体制の維持、改善を目的として内部統制基本方針を定め運用しています。

 当社は、当社の企業文化の根源である設立趣旨、企業理念を高い次元で実現することにより、社会的意義を高め、経営資源を有効に活用するとともに、全てのステークホルダーとの良好な関係を維持・発展させ、結果として当社の企業価値及び株主共同の利益の向上に資することができるものと考えます。

2.コーポレート・ガバナンスについて

 当社は、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するために、経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制及び公正で透明性のある経営システムを構築し、これを維持することに取り組んでいます。

 当社の取締役会は7名で構成され、その内1名は社外取締役です。取締役会は当社の経営戦略を策定・遂行するとともに、取締役の職務遂行を監督しています。また、監査役3名(うち社外監査役2名)で構成される監査役会は、内部監査室及び会計監査人ならびに顧問弁護士と緊密な連携を保ち、情報交換を行い、監査の有効性・効率性を高めています。常勤監査役は取締役会、経営会議、コンプライアンス委員会及びリスク管理委員会等重要な会議に出席するとともに、業務及び財産の状況の確認を通じて取締役の職務遂行を監査しています。

 当社は創業時より、研究・開発事業に関する倫理的妥当性について助言を受けること、及びヒト組織・細胞等の収集・提供の実施状況等事業全般にわたる倫理的評価を行うことを目的に、企業委員2名、外部委員5名で構成されるJ-TEC倫理委員会を設け、適切に運営しています。

 さらに当社では、業務上抱える各種リスクを正確に把握・分析し、適切に対処すべく、継続的にリスク管理体制の強化に取り組んでいます。総合的なリスク管理については、リスク管理委員会で討議し、必要に応じて取締役会で検討をしています。また、災害、重大事故、訴訟等の経営に重大な影響を与える事実が発生した場合には、直ちに担当部署から部長、情報取扱責任者、代表取締役に連絡する体制をとり、状況を迅速・正確に把握し対処することとしています。

③不適切な支配の防止のための取組みについての取締役会の判断

 上記②に記載した企業価値向上への取り組みやコーポレート・ガバナンスの強化といった各施策は、当社の支配に関する基本方針に沿うものであり、株主共同の利益を損なうものではなく、また、当社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

2【事業等のリスク】

当社は再生医療製品事業、再生医療受託事業及び研究開発支援事業を展開していますが、以下において、当社の事業展開その他に関してリスクとなり得る主な事項を記載しています。当社として必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から記載しています。なお当社は、これらのリスクを認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めますが、それらをすべて回避できる保証はありません。

以下の記載は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、当社事業に関連するすべてのリスクを網羅するものではありませんのでご留意ください。

 

I.当社事業に関するリスク

(1)再生医療製品事業

①市場規模について

(a)自家培養表皮ジェイス

自家培養表皮ジェイスは「重症熱傷(自家植皮のための恵皮面積が確保できない重篤な広範囲熱傷で、かつ受傷面積として深達性Ⅱ度及びⅢ度熱傷創の合計面積が体表面積の30%以上の熱傷)」、「先天性巨大色素性母斑(体表面積に占める母斑面積の割合が5%以上の患者の治療等、既存の標準的な治療法では母斑の切除に対応しきれない場合)」及び「表皮水疱症(難治性又は再発性のびらん・潰瘍を有する栄養障害型又は接合部型)」を適応対象としており、市場規模はいずれも限定的です。

そのため、一定以上のシェアを確保していたとしても、対象患者の発生状況により年間売上高が大きく変動する可能性があります。

(b)自家培養軟骨ジャック

自家培養軟骨ジャックは、「膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く。)の臨床症状の緩和」を適応対象とし、さらに「ただし、他に治療法がなく、かつ軟骨欠損面積が4cm2以上の軟骨欠損部位に適用する場合に限る」とされているため、市場規模は限定的です。

そのため、一定以上のシェアを確保していたとしても、対象患者の発生状況により年間売上高が大きく変動する可能性や、他社の参入により限られた市場におけるシェアが確保できなくなる可能性があります。

②法的規制について

再生医療が我が国の成長戦略の一つとして位置付けられ、再生医療の普及を迅速に進めるための法整備が進められる一方で、医療費抑制や医療の質の向上を目的とした医療改革が継続的に行われています。今後、予測できない法改正や医療行政の方針変更等による急激な環境変化が生じた場合には、当社の経営戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(a)承認条件について

自家培養表皮ジェイス(母斑及び表皮水疱症)、自家培養軟骨ジャックには、使用成績調査の実施が課されており、再審査の対象となっています。その結果によっては、承認が取り消される可能性が完全には否定できません。

また、自家培養表皮ジェイス及び自家培養軟骨ジャックは、製造販売承認において明確に適応対象が定められています。当社は、適応対象以外の疾患や使用方法への適応拡大(一部変更承認)を目指したいと考えていますが、治療における患者のリスクとベネフィットの観点から適応拡大が認められない可能性があります。

(b)保険適用について

自家培養表皮ジェイス、自家培養軟骨ジャックは、保険算定に関する留意事項が付与されています。今後、当該保険算定の条件が変更となった場合、内容によっては当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(c)薬事審査プロセスについて

当社は、医薬品医療機器総合機構の助言を得ながら、開発受託を含む再生医療等製品の開発を進めていますが、治験において期待どおりの有効性と安全性が証明できない、薬事承認プロセス等において適応対象が限定される等、当社の想定どおりに開発が進まない可能性があります。

③ヒト又は動物由来の原材料の使用について

ヒト細胞組織を利用した再生医療等製品においては、ヒト細胞組織の特性にばらつきがあり、製品規格を満たさずに出荷できない可能性があります。また、原材料や製造工程で使用する培地には動物由来原料を使用しており、未知のウイルスによる被害等が発生し、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性を完全には否定できません。

④競合について

近年、新たな製品が相次いで承認されたこと等を背景に、今後、再生医療業界へのさらなる新規参入者の増加及び競争の激化が予測されます。競合製品や新規技術の登場により当社製品の優位性を保持できなかった場合、当社が想定する売上を確保できない可能性があります。

⑤再生医療全般にわたる信頼性について

再生医療に関係する医療事故等が発生した場合には、当社の製品や役務が直接関係していなかったとしても、ネガティブなイメージとして再生医療業界及び再生医療等製品の全体に関わる問題として市場からの信頼が失われ、当社の経営戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)再生医療受託事業

当社は、再生医療等製品に関する開発製造受託サービス(開発製造受託(CDMO)、開発業務受託(CRO))及び再生医療の提供(臨床研究・治療)への支援サービスを展開しています。現在、様々な開発案件を受託していますが、開発状況や委託元の方針変更等により受託業務の解約や規模の縮小等の可能性が否定できません。また、当社の保有する設備や人員だけでは、開発元のニーズに十分に応えられない可能性があります。

(3)研究開発支援事業

当社は、研究開発支援事業として、研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズを化粧品、製薬、食品、化学品、日用品、農薬等の製造企業や安全性試験受託機関等に販売していますが、当市場には競合企業が複数存在します。そのため、競争の激化に伴う販売量の伸び悩みや、過当競争による販売価格の下落等により収益性が低下する可能性があります。

 

Ⅱ.会社体制に関するリスク

(1)研究開発体制

当社は、新製品や適応拡大の実現に向けて、研究開発本部を中心に、大学等の研究機関ならびに医療機関や医療関係者と連携・協働した研究開発活動を推進していますが、このような活動は国の政策や社会情勢により影響を受ける場合があります。また、共同研究の中止や知的財産権のライセンス交渉が順調に進まない等、当社の想定通りに活動が進まない可能性があります。さらに、他社の知的財産権を侵害することがないように十分な注意を払って研究開発活動を行っていますが、意図せずに他社の知的財産権を侵害する可能性を完全には否定できません。

(2)生産体制

当社は、高品質で安全性の高い製品を生産するための製造施設・設備(ハードウェア)と、人・物の動線管理や標準作業手順書等の運用管理(ソフトウェア)をバランス良く備えた生産体制を構築しています。また、生産工程について十分に教育・訓練を受けた作業者が製造にあたっています。しかしながら、生産能力を超えるような急激な受注増が生じた場合、設備や人員が不足し、受注に対応しきれない可能性があります。

また、生産拠点が愛知県にある本社工場のみであり、南海トラフ大地震等の自然災害や何らかの事故等により製造インフラが機能しなくなった場合には、製品を供給出来なくなる可能性があります。

(3)販売体制

ヒト細胞を組み込んだ当社製品は、医療機関等のユーザーと緊密に連携し、適正な使用方法の開発・促進や安全対策への取組み等に対応できる販売体制の構築が必要です。そのために、医療機関等のユーザーへの適切な情報提供、製品仕様に関する説明等の技術的な知識を備えた営業担当者を教育・育成し、営業活動を担わせています。今後、新製品や適応拡大による市場の拡大に備えてさらなる販売体制の強化(営業担当者の増員、営業手法の効率化、ロジスティックの見直し等)を進めますが、あまりに急激に市場が拡大した場合、体制の強化が間に合わず受注に対応しきれない可能性があります。

(4)人材確保・育成

当社の発展のためには、優秀な人材の確保を重要課題と捉えており、事業計画に沿った採用活動を実施しています。さらに社内においては人材育成の充実、人事・評価制度の改善等により、活気ある企業づくりを目指しています。しかしながら、事業計画で必要とする数の人材を確保出来ない可能性や、時間とコストをかけて育成した人材が引き抜き等により社外に流出する可能性があり、その場合、当社の事業運営に支障をきたす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当事業年度(2018年4月1日から2019年3月31日)における我が国経済は、雇用・所得環境は改善傾向にあり、国内景気は緩やかな回復基調が続く一方で、米中貿易摩擦の深刻化による中国景気の悪化、米国長期金利の低下基調、英国の欧州連合(EU)からの離脱問題といったリスクを背景に、世界景気の減速懸念が根強く、先行き不透明な状況で推移しました。

再生医療・細胞治療分野では、脊髄損傷治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞(ニプロ 販売名:ステミラック注)が国内で5番目の再生医療等製品として2018年12月に承認されたのに続き、2019年3月には、足の血管を再生する遺伝子治療薬(アンジェス 販売名:コラテジェン筋注用)と、個別化されたがん免疫療法として注目を集めているCAR-T細胞療法(ノバルティス ファーマ 販売名:キムリア点滴静注)が相次いで承認されました。

一方、新たながん治療薬への関心が高まる中で、医療費高騰の懸念が顕在化し始め、ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑特別教授らが開発した免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」は、繰り返し薬価が改定され、収載時に比べ大幅に引き下げられました。上述したCAR-T細胞療法「キムリア」の薬価にも注目が集まっています。

このような状況の下、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

 

a. 財政状態

当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ271,098千円減少し、8,751,972千円となりました。

当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ62,209千円増加し、833,849千円となりました。

当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ333,307千円減少し、7,918,123千円となりました。

 

b. 経営成績

当事業年度における売上高は、自家培養軟骨ジャック、再生医療受託事業及び研究開発支援事業の売上高が伸長したことにより、2,357,918千円(前年同期比3.8%増)となりました。一方、自家CAR-T細胞治療の導入一時金を含む開発費用、及び治験費用等の研究開発費が増加したこと等により、営業損失は349,745千円(前年同期は211,508千円の営業利益)となりました。経常損失は339,631千円(前年同期は213,334千円の経常利益)となり、当期純損失は333,248千円(前年同期は227,890千円の当期純利益)となりました。

なお、セグメント別では、再生医療製品事業の売上高は、1,404,095千円(前年同期比1.2%増)、再生医療受託事業の売上高は、835,601千円(前年同期比6.4%増)、研究開発支援事業の売上高は、118,220千円(前年同期比19.9%増)となりました。

 

各セグメント及び新規パイプラインの開発における概況は以下のとおりです(□内は当事業年度における主な成果です)。

なお、当事業年度より報告セグメントの利益又は損失の算定方法を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。また、前年比較については、前年の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。

 

[再生医療製品事業]

当社は再生医療製品事業として自家培養表皮ジェイス及び自家培養軟骨ジャックの製造販売を進めました。

・自家培養表皮ジェイス

自家培養表皮ジェイスは、2009年1月に保険収載された我が国初の再生医療等製品であり、重症熱傷及び先天性巨大色素性母斑を適応対象としています。ジェイスの保険適用に関しては、2016年4月から保険機能区分が①採取・培養キットと②調製・移植キットの2つに細分化され、償還価格がそれぞれ①4,380千円、②151千円/枚に改定されています。2018年4月以降は、保険算定に関する留意事項が変更となり、熱傷治療において、患者様あたり一連につき40枚の保険算定限度が、医学的に必要がある場合に限り50枚の算定限度まで引き上げられました。

 

当事業年度におけるジェイスの売上は、1,031,525千円(前年比4.4%減)となりました。重症熱傷向けジェイスは、第1~第3四半期には重症熱傷の発生数が少ない状況が続き苦戦しましたが、第4四半期に入って前年同期売上を大きく上回る売上高となりました。先天性巨大色素性母斑向けジェイスは、拠点施設への営業強化ならびに新規施設の獲得効果もあり、安定的に受注を獲得しましたが、販売開始直後で待機患者需要が集中した前年に比べると売上は減少しました。当社は引き続き、熱傷での適正な枚数の使用を促す活動や、母斑治療を実施している拠点施設への営業強化、医師向けのエビデンス(臨床情報)提供・共有化等の施策に取り組み、売上拡大に努めます。

また、2018年3月に一部変更承認申請を行っていたジェイスの表皮水疱症への適応拡大について、12月28日付で厚生労働省より承認を取得しました。現在、保険収載に向けた審議が行われています。当社は、表皮水疱症治療においてもジェイスの普及を目指します。

 

・自家培養軟骨ジャック

自家培養軟骨ジャックは、2013年4月から保険収載された我が国第2号の再生医療等製品であり、適応対象は膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)です。ジャックの保険機能区分についてもジェイス同様に細分化され、2016年4月から、償還価格が①採取・培養キット879千円、②調製・移植キット1,250千円に改定されています。

当事業年度におけるジャックの売上は、372,570千円(前年比20.5%増)となり、前年に比べ売上が増加しました。膝治療の専門家からなる第三者委員会による評価を行い、学会報告を通じて中期的臨床データをフィードバックしたことに加え、富士フイルムグループのテレビCMによる認知度向上等が奏功し、新規施設からを含め多くの受注を獲得しました。また2019年1月31日付で、ジャック移植時に患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更申請の承認を厚生労働省より取得しました。これによりジャックの低侵襲化と移植手技の簡便化が可能となりました。本変更によるメリットを訴求し、さらなる売上拡大を図ります。

また、外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症を対象とする適応拡大のための治験計画届書を7月に提出し、現在治験を実施しています。

 

[再生医療受託事業]

当社は再生医療受託事業において、再生医療等製品の受託開発及びコンサルティング・特定細胞加工物製造受託を積極的に進めました。

・再生医療等製品の受託開発

当社は、医薬品医療機器等法のもと、再生医療等製品の承認を目的として臨床研究を実施するアカデミアや、医師主導治験を実施する医療機関、再生医療等製品の開発を行っている企業を対象に、再生医療等製品に特化した開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスを提供しています。自社製品の開発、製造販売で培った薬事開発、規制当局対応のノウハウ、GCTP適合の製造設備等の豊富かつ一貫した経験を生かし、細胞種(体細胞・幹細胞・iPS細胞)や製品形態を問わず、シーズの開発段階から実用化後までトータルかつシームレスに支援しています。

・コンサルティング・特定細胞加工物製造受託

当社は、2014年11月に施行された再生医療等安全性確保法のもと、再生医療の提供機関に対するコンサルティングならびに特定細胞加工物製造受託サービスを提供しています。コンサルティングサービスでは、再生医療等提供計画の作成・細胞加工施設の運営体制の構築等、臨床研究・治療提供のために必要な行政手続きを支援しています。特定細胞加工物製造受託では、厚生労働省より許可を得た当社の細胞加工施設で特定細胞加工物の製造を受託しています。

 

当事業年度における再生医療受託事業の売上は、835,601千円(前年比6.4%増)となりました。再生医療に関する企業の取組みの高まり等を受け、受託事業の契約顧客数が増加。受託した案件の進捗に伴うマイルストン収入や、再生医療等製品の開発コンサルティング及び開発製造受託の新規案件の獲得が、売上増加に寄与しました。名古屋市立大学病院での白斑や難治性皮膚潰瘍の治療(臨床研究)における培養表皮の製造受託でも、前年に対し売上が増加しました。2019年3月には、本臨床研究の共同研究施設に蒲郡市民病院が加わっており、今後同病院からも同表皮の製造受託を進めます。また、同年3月、株式会社ニデックからの委託を受けて開発を進めてきた自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)について、眼科領域の再生医療等製品としては国内初となる製造販売承認申請を行いました。この他にも、自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET)の製造販売承認申請に向けた準備を進めました。当社は今後も、一つ一つの受託案件を確実に前進させ、事業の拡大を目指します。

 

[研究開発支援事業]

当社は研究開発支援事業において、自社製品の開発で蓄積した高度な培養技術を応用した研究用ヒト培養組織(ラボサイトシリーズ)の製造販売を進めました。

・ラボサイトシリーズ

研究用ヒト培養組織ラボサイトシリーズは、動物実験を代替する試薬です。ラボサイト エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験に関する試験法は、標準法の一つとしてOECDの試験法ガイドラインTG439へ収載されています。

当事業年度におけるラボサイトの売上は、118,220千円(前年比19.9%増)となりました。国内外の化粧品・化学品メーカー等に向けた積極的な営業活動の結果、前年に比べ売上が増加。発売以来初の年間売上1億円超を達成しました。2018年7月には国内で皮膚基礎研究に携わる研究者の方々を対象とした皮膚基礎研究クラスターフォーラムに出展しました。9月にはマレーシア等アジア向けに取扱講習会を開催する等海外向けの宣伝活動にも取り組み、海外からの問合せも増加しました。また、角膜モデル24を用いた眼刺激性試験法が2018年6月にOECDのテストガイドライン492 (TG492) に収載され、エピ・モデル24を含む皮膚腐食性試験法は2019年6月にOECDのテストガイドライン431(TG431)に収載されました。当社は今後も、日用品、医薬品、化粧品、化学品メーカー等、化学物質を扱う国内外の企業向けに、より信頼性の高い動物実験代替法としてラボサイトシリーズを提案し、事業拡大を図ります。

 

[新規パイプラインの開発]

当社は、今後の成長を加速させるため、新たなパイプラインの開発に積極的に取り組んでいます。

当事業年度において、新たなパイプラインの開発も着実に前進させました。

- CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞治療薬の開発に向けて、2018年6月に名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結しました。当社は、名古屋大学と密に連携し、本治療薬の開発を進めています。

- 尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的として、メラノサイト(色素細胞)を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)の治験計画届書を2018年7月に提出し、現在治験を実施しています。ACE02を通じて、皮膚科領域の疾患治療に進出し、従来から取り組んでいる形成外科・整形外科領域からの事業拡大を目指しています。

- 我が国で初となる他人の皮膚を原材料としたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指しており、2018年10月より日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業(国家プロジェクト)として同種培養表皮の開発、及び産業利用を目的とした同種細胞の安定供給体制の構築に関する2案件を進めてきました。2020年3月期もAMED委託事業としてこれらの開発を継続します。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べて374,207千円減少し、2,029,601千円となりました。

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は396,110千円(前年同期は632,006千円の獲得)となりました。前事業年度との差異が生じた主な要因は、新規パイプラインに係る研究開発費の増加により、税引前当期純損失となったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果獲得した資金は27,636千円(前年同期は429,583千円の使用)となりました。前事業年度との差異が生じた主な要因は、定期預金の払戻による収入の増加によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は5,732千円(前年同期は11,651千円の獲得)となりました。前事業年度との差異が生じた主な要因は、前事業年度に新株予約権の行使により資金を獲得したことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

当事業年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

 

 

前期比(%)

 

再生医療製品事業(千円)

1,403,146

101.0

再生医療受託事業(千円)

835,601

106.4

研究開発支援事業(千円)

118,220

119.9

合計(千円)

2,356,968

103.7

(注)1 金額は販売価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前期比

(%)

受注残高

(千円)

前期比

(%)

再生医療製品事業

1,523,557

104.4

123,040

103.9

再生医療受託事業

817,096

97.0

38,969

67.8

研究開発支援事業

118,855

119.2

6,812

110.3

合計

2,459,509

102.4

168,822

92.7

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c. 販売実績

 当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 

当事業年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

 

 

前期比(%)

 

再生医療製品事業(千円)

1,404,095

101.2

再生医療受託事業(千円)

835,601

106.4

研究開発支援事業(千円)

118,220

119.9

 合計(千円)

2,357,918

103.8

(注)1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2 最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

当事業年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

金額

(千円)

割合

(%)

金額

(千円)

割合

(%)

富士フイルム株式会社

457,761

20.2

438,758

18.6

 (注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

 当事業年度末において、総資産は8,751,972千円(前年同期と比べ271,098千円減少)、負債は833,849千円(前年同期と比べ62,209千円増加)、純資産は7,918,123千円(前年同期と比べ333,307千円減少)となりました。

 当事業年度における資産、負債及び純資産の状態に関する分析は以下のとおりであります。

(流動資産)

 当事業年度末における流動資産の残高は7,024,202千円となり、前事業年度末から69,844千円減少いたしました。この主な要因は、新規パイプラインの研究開発費支払及び長期預金(1年超)を定期預金(1年内)に振替えたことによるものであります。

(固定資産)

 当事業年度末における固定資産の残高は1,727,731千円となり、前事業年度末から201,203千円減少いたしました。この主な要因は、長期預金(1年超)を定期預金(1年以内)に振替えたこと等によるものであります。

(流動負債)

 当事業年度末における流動負債の残高は795,902千円となり、前事業年度末から62,056千円増加いたしました。この主な要因は未払金等の増加によるものであります。

(固定負債)

 当事業年度末における固定負債の残高は37,946千円となり、前事業年度末から152千円増加いたしました。この要因はリース資産の取得によるリース債務の増加によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産の残高は7,918,123千円となり、前事業年度末から333,307千円減少いたしました。この主な要因は、当期純損失333,248千円の計上によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

③資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要のうち主なものは、製造費、研究開発費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましても、自己資金を基本としております。

なお、当事業年度末におけるリース債務を含む有利子負債の残高は6,241千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は2,029,601千円となっております。

 

④セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は、再生医療製品事業、再生医療受託事業及び研究開発支援事業を行っております。当事業年度における財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(a)再生医療製品事業

 自家培養表皮ジェイスの売上高は、1,031,525千円(前年比4.4%減)となりました。対前期の減少要因は、母斑向けが、販売開始直後で待機患者需要が集中した前年に比べ減少したことによるものであります。今後、熱傷は使用枚数制限の緩和(40→50枚)を訴求するとともに、母斑は新規患者への普及により売上を維持します。また、新たに適応拡大された表皮水疱症で上積みを図ります

 自家培養軟骨ジャックの売上高は、372,570千円(前年比20.5%増)となりました。対前期の増加要因は、中期的臨床データの訴求や富士フイルムグループテレビCMの効果等であります。今後、コラーゲン膜による低侵襲化・移植手技の簡便化の訴求に加え、施設基準緩和や富士フイルム診断機器との協業を追求します。

 さらに、自社開発パイプラインに加え、富士フイルムとの協業による新製品開発・販売を推進していきます。

 セグメント資産は、前事業年度末に比べ167,624千円増加の999,065千円となりました。

(b)再生医療受託事業

 再生医療受託事業の売上高は、835,601千円(前年比6.4%増)となりました。対前期の増加要因は、これまで受託した案件の進捗に伴う収入と、新規案件の獲得であります。今後、既存案件の確実な収益の獲得、蓄積した知見・経験を生かしたさらなる良質な新規案件の受注、及び眼科領域製品の製造受託開始等により、事業を拡大していきます。

 セグメント資産は、前事業年度末に比べ125,956千円増加の869,200千円となりました。

(c)研究開発支援事業

 研究開発支援事業(ラボサイト)の売上高は、118,220千円(前年比19.9%増)となりました。対前期の増加要因は、国内外の化粧品・化学品メーカー等に向けた積極的な営業活動の効果であります。今後、角膜モデルの眼刺激性試験、及びエピ・モデル24の皮膚腐食性試験のOECDテストガイドライン収載を梃子に、売上増を図ります。

 さらに、アジア圏への拡販に加え、富士フイルムのネットワークを活用した海外展開を検討していきます。

 セグメント資産は、前事業年度末に比べ12,708千円増加の85,663千円となりました。

4【経営上の重要な契約等】

 

契約書名

新技術開発成果実施契約書

相手方名

独立行政法人科学技術振興機構(現、国立研究開発法人科学技術振興機構)

契約締結日

2009年2月13日

契約期間

原権利(特許権)の消滅する日まで

主な契約内容

当社は、独立行政法人科学技術振興機構より「自動制御培養法を用いたヒト培養軟骨」の新技術に関する特許(特許出願を含む)等(以下「本開発成果」という)の実施許諾を受けてこれを実施し、当社はその対価として売上の一定割合を開発納付金として15年間、もしくは開発納付金の累計額が、独立行政法人科学技術振興機構が当社に支出した委託開発費の2倍(最大で約9億2千万円)に達する時点まで支払う。

(注)本契約は、独立行政法人科学技術振興機構と2000年3月31日に締結した「新技術開発委託契約」にかかる本開発成果が、同機構のPO(プログラム・オフィサー)評価会議の審査を受け、2008年2月に成功と認定されたことによるものです。

 

契約書名

共同研究開発基本契約書

相手方名

株式会社セルシード

契約締結日

2009年10月30日

契約期間

契約締結日から3年間(2009年10月30日から2012年10月29日まで)とする。ただし、期間満了の3か月前までに両者のいずれからも解約の意思表示のないときは、本基本契約はさらに満1年間自動的に継続更新されるものとし、以後も同様とする。

主な契約内容

株式会社セルシードと当社は、両社が保有する技術及びノウハウを活用し、次世代再生医療製品及びサービスならびにビジネスモデルを共同開発する。本基本契約に基づいて株式会社セルシードと当社が共同で取り組む研究開発テーマは、両社合意の上で別途個別共同研究開発契約をもって定める。

 

契約書名

業務提携に関する契約書

相手方名

富士フイルム株式会社

契約締結日

2010年10月6日

主な契約内容

・両社の技術を活用した再生医療製品の開発及び事業化。

・再生医療用材料の開発可能性及びその用途の探索。

・探索活動で具体化した用途の再生医療用材料及び製品の開発ならびにその事業化。

・当社が開発する再生医療製品の海外事業展開、国内事業拡大に向けた富士フイルム株式会社による支援。

 

契約書名

開発委託基本契約書

相手方名

株式会社ニデック

契約締結日

2011年1月31日

契約期間

本契約締結日より5年間(2011年1月31日から2016年1月30日まで)とする。ただし、本製品の製造販売承認が得られるまでは自動的に1年毎延長される。

主な契約内容

当社は、株式会社ニデックより、培養角膜上皮細胞シート(以下「本製品」という)に関する技術開発、薬事申請及びその他の関連業務を受託し、委託料の支払いを受ける。本製品の開発に基づく成果は、原則として株式会社ニデックに帰属するが、本製品の開発の過程で得られた技術等は、当社が本製品以外の製品に自由に使用できる。また、本製品に関する特許権や特許を受ける権利等は、当社と株式会社ニデックとの共有とする。

 

 

契約書名

業務委託基本契約

相手方名

富士フイルム株式会社

契約締結日

2014年4月1日

契約期間

2014年4月1日から2022年3月31日までとする。ただし、別途協議のうえ、期間を短縮又は延長できる。

主な契約内容

当社は、富士フイルムが開発した生体適合性に優れるコラーゲン(リコンビナントペプチド:RCP)等の材料及び技術を用いた再生医療製品について、製品開発へ向けた研究開発受託業務を行う。

(注)2019年3月25日に締結した覚書により契約期間を3年間延長しました。

 

契約書名

委託研究開発契約書

相手方名

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)

契約締結日

2018年4月1日

契約期間

2019年3月31日まで

主な契約内容

AMED及び当社は、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療の産業化に向けた評価手法等の開発)」について委託契約を締結する。委託業務の題目は以下のとおり。

「自家培養軟骨製品の製造法合理化のための基盤技術開発」

再生医療製品の製造法合理化を目的に、自家培養軟骨ジャックにおける組織処理工程の自動化、工程検査の自動判定システムの確立等を行う。

(注)本契約は、契約期間の満了により2019年3月31日をもって終了しました。

 

契約書名

CONSULTING CONTRACT

相手方名

Michele De Luca

契約締結日

2018年4月16日

契約期間

2018年4月1日から2019年3月31日まで

主な契約内容

Michele De Luca, M.D.が当社に対して、皮膚及び角膜の培養技術ならびに培養製品の品質管理等に関するアドバイスをし、当社がMichele De Luca,M.D.に対してその対価を支払う。

(注)本契約は、契約期間の満了により2019年3月31日をもって終了しました。

 

契約書名

CONSULTING CONTRACT

相手方名

Graziella Pellegrini

契約締結日

2018年4月16日

契約期間

2018年4月1日から2019年3月31日まで

主な契約内容

Graziella Pellegrini, Ph.D.が当社に対して、皮膚及び角膜、結膜の培養技術ならびに培養製品の品質管理等に関するアドバイスをし、当社がGraziella Pellegrini,Ph.D.に対してその対価を支払う。

(注)本契約は、契約期間の満了により2019年3月31日をもって終了しました。

 

契約書名

実施許諾契約書

相手方名

国立大学法人名古屋大学、国立大学法人信州大学

契約締結日

2018年6月22日

主な契約内容

当社は、対象特許(PCT/JP2016/079989「キメラ抗原受容体を発現する遺伝子改変T細胞の調製方法」)について、CD19陽性細胞の急性リンパ性白血病を対象とした自家細胞を用いたCD19分子を標的とする非ウィルスベクターを用いたキメラ抗原受容体T細胞製剤の日本における開発・製造・販売する独占的実施権の許諾を受ける。

 

 

 

契約書名

委託研究開発契約書

相手方名

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)

契約締結日

2018年10月1日

契約期間

2018年10月1日から2019年3月31日まで

主な契約内容

AMED及び当社は、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(国内医療機関からのヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給モデル事業)」について委託契約を締結する。委託業務の題目は、以下のとおり。

「同種細胞を用いた再生医療のための産業利用を目的としたヒト細胞及び組織の安定供給の実証」

ドナーのインフォームドコンセント取得とスクリーニング、医療機関内の申請、採取に係る輸送手配をシステム化するとともに、その運営工数を明確化することにより透明性の高い維持管理可能な安定供給モデルを構築する。

(注)本契約は、契約期間の満了により2019年3月31日をもって終了しました。

 

契約書名

委託研究開発契約書

相手方名

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)

契約締結日

2018年10月17日

契約期間

2018年10月17日から2019年3月31日まで

主な契約内容

AMED及び当社は、「医療機器開発推進研究事業(医療費適正化に資する革新的医療機器の臨床研究)」について委託契約を締結する。委託業務の題目は、以下のとおり。

「皮膚再建に用いる乾燥同種培養表皮の開発」

創傷を早期に治癒させる新たな治療法となる乾燥同種培養表皮の開発を行う。

(注)本契約は、契約期間の満了により2019年3月31日をもって終了しました。

 

契約書名

CONSULTING CONTRACT

相手方名

Michele De Luca

契約締結日

2019年3月28日

契約期間

2019年4月1日から2020年3月31日まで

主な契約内容

Michele De Luca, M.D.が当社に対して、皮膚及び角膜の培養技術ならびに培養製品の品質管理等に関するアドバイスをし、当社がMichele De Luca, M.D.に対してその対価を支払う。

(注)本契約は、2018年4月16日に締結した契約を更新して、締結したものです。

 

契約書名

CONSULTING CONTRACT

相手方名

Graziella Pellegrini

契約締結日

2019年3月28日

契約期間

2019年4月1日から2020年3月31日まで

主な契約内容

Graziella Pellegrini, Ph.D.が当社に対して、皮膚及び角膜、結膜の培養技術ならびに培養製品の品質管理等に関するアドバイスをし、当社がGraziella Pellegrini, Ph.D.に対してその対価を支払う。

(注)本契約は、2018年4月16日に締結した契約を更新して、締結したものです。

 

なお、当報告書提出日現在において、以下の重要な契約を締結しております。

契約書名

委託研究開発契約書

相手方名

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)

契約締結日

2019年4月1日

契約期間

2019年4月1日から2020年3月31日まで

主な契約内容

AMED及び当社は、「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(国内医療機関からのヒト(同種)体性幹細胞原料の安定供給モデル事業)」について委託契約を締結する。委託業務の題目は、以下のとおり。

「同種細胞を用いた再生医療のための産業利用を目的としたヒト細胞及び組織の安定供給の実証」

ドナーのインフォームドコンセント取得とスクリーニング、医療機関内の申請、採取に係る輸送手配をシステム化するとともに、その運営工数を明確化することにより透明性の高い維持管理可能な安定供給モデルを構築する。

(注)本契約は、2018年10月1日に締結した契約を更新して、締結したものです。

 

契約書名

委託研究開発契約書

相手方名

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)

契約締結日

2019年4月1日

契約期間

2019年4月1日から2020年3月31日まで

主な契約内容

AMED及び当社は、「医療機器開発推進研究事業(医療費適正化に資する革新的医療機器の臨床研究)」について委託契約を締結する。委託業務の題目は、以下のとおり。

「皮膚再建に用いる乾燥同種培養表皮の開発」

創傷を早期に治癒させる新たな治療法となる乾燥同種培養表皮の開発を行う。

(注)本契約は、2018年10月17日に締結した契約を更新して、締結したものです。

 

 

5【研究開発活動】

 当社は、ティッシュエンジニアリングを学術的基盤として、生きた細胞を用いた人工組織・臓器の開発に取り組み、再生医療の発展に貢献すべく活動しております。

 当事業年度における事業別の研究開発活動は以下のとおりで研究開発費の総額は606,562千円であります。なお、研究開発費の金額は助成金の対象となる費用(162,719千円)控除後の金額であります。

 

(1)再生医療製品事業

①自家培養表皮ジェイス

自家培養表皮ジェイスは、2007年10月に日本で最初の再生医療等製品として製造販売承認を取得(重症熱傷を対象)し、それ以降さらなる市場への普及を狙って、適応拡大に向けた研究開発活動を推進してきました。その結果、2016年9月には先天性巨大色素性母斑の切除創を対象とした一部変更承認を取得(再生医療等製品としては国内初の適応拡大)、さらに2018年12月には栄養障害型及び接合部型の表皮水疱症患者に発生する難治性のびらん・潰瘍部位を対象とした一部変更承認を取得しました(現在、保険収載に向けた審査中)。

ジェイスは、これまで順調に適応拡大を進めてきており、今後も新たな疾患に対する治療法を提供できるよう研究開発を続けていきます。

②自家培養軟骨ジャック

自家培養軟骨ジャックは、2012年7月に膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)を対象とした製造販売承認を取得しました。上市後の研究開発活動としては、ジャックの移植手術の簡便化・低侵襲化の実現に向け、患者自身の骨膜に代わって人工のコラーゲン膜を使用する一部変更の検討を進め、2019年1月に承認を取得しました。さらに適応拡大に向けた活動も推進し、2018年7月には外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症への適応拡大に向けた治験を開始しました。

また2018年4月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から委託された「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」における「自家培養軟骨製品の製造法合理化のための基盤技術開発」を進めました。

 

(2)再生医療受託事業

当社の研究開発活動の中には、様々なアカデミア・医療機関・企業に対する開発製造受託(CDMO)サービス・開発業務受託(CRO)サービスの提供に係るものも含んでいます。

株式会社ニデックからは、自家培養角膜上皮(開発名:EYE-01M)の研究開発に関する業務を受託しています。角膜幹細胞疲弊症の治療を目的として開発を進め、2019年3月に製造販売承認申請を提出しました。また、自家培養口腔粘膜上皮(開発名:COMET)の製造販売承認に向けた研究開発活動も進めています。

 

(3)研究開発支援事業

研究用ヒト培養組織ラボサイトの研究開発活動としては、エピ・モデル24を用いた皮膚刺激性試験法が2013年7月にOECDテストガイドラインに収載され国際的な知名度向上によって拡販に寄与したことから、それ以降テストガイドライン収載を目指した活動を進めています。2018年6月には角膜モデルを用いた眼刺激性試験法がOECDテストガイドラインに収載、また2019年6月にはエピ・モデル24を用いた皮膚腐食性試験法がOECDテストガイドラインに収載される等、活動の成果が表れています。

 

(4)その他の開発活動

当社は、既存の皮膚・軟骨領域に加え、角膜・がん領域への展開を目指し、新規再生医療等製品の開発を進めています。

2018年6月には、CD19陽性の急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)を対象とした自家CAR-T細胞治療薬に関して名古屋大学及び信州大学とライセンス契約を締結し、本治療薬の開発を開始しました。

2018年7月には、色素細胞を保持した自家培養表皮(開発名:ACE02)について、尋常性白斑及びまだら症といった安定期の白斑の治療を目的とした治験を開始しました。

また、我が国で初となる他家細胞を用いたレディメイド(事前に製造・保存しておき、必要な時に遅滞なく使用することができる)製品の実現を目指し、2018年10月から日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業(国家プロジェクト)として同種培養表皮の開発を進めています。

それ以外にも、産業利用を目的とした同種細胞の安定供給体制の構築に関して2018年10月にAMEDの委託事業が採択され、国内の再生医療産業化の推進に寄与する開発も進めています。