第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度における経営環境を振り返りますと、米国では雇用・所得の改善により個人消費が拡大したことから景気回復が緩やかに続き、欧州でも失業率の低下により個人消費が持ち直し、緩やかな景気回復がみられました。一方、中国及び新興国では景気の減速感が強まりました。国内では、金融政策による景気回復がみられたものの、1月以降の株価下落、為替の円高の影響により、景気の不透明感が出てまいりました。
 このような環境の中で当社グループは、平成25年4月にスタートした中期経営計画「Yamaha Management Plan 2016(YMP2016)」の最終年度として、重点戦略である「中国・新興国における成長加速」、「エレクトロニクス領域での売上げ拡大」、「コスト競争力の強化」、「新規の事業開発」に引き続き取組みました。
 「中国・新興国における成長加速」につきましては、中国では、楽器・音響機器の従来型特約店による販路拡大に加えて、ネット販売店、ディストリビューター等を積極的に活用しながら順調に市場を拡大してきました。中国マクロ経済の減速感はあるものの、アコースティックピアノをはじめ全ての楽器カテゴリーで着実に売上げが拡大し、楽器・音響機器事業の成長に大きく寄与しました。その他の新興国では、国・地域による跛行性はあるものの、全体としては、成長のペースが鈍化しました。このような環境のもと、将来を見据えて楽器演奏人口を拡大するための施策として、小学校の音楽の授業と連携する「スクールプロジェクト」を、マレーシア、インドネシアで展開するなど、地域音楽普及や音楽文化振興に向け積極的な活動を推進しました。
 「エレクトロニクス領域での売上げ拡大」につきましては、電子鍵盤楽器の主力商品であるデジタルピアノが、新商品のデザイン、機能などに関して市場の高い評価を得ることができました。「クラビノーバ」を中心に前期に引き続き全世界で大きく売上げが伸長し、収益性向上に貢献しました。またポータブルキーボードは、新興国向けの商品として、国・地域のニーズに合わせた地域対応モデルを発売し、売上げ拡大を図りました。オーディオ機器では、ネットワークオーディオ「MusicCast※1」が、欧州や豪州での販売に寄与しました。業務用音響機器は、普及価格帯モデルのデジタルミキサーの販売が好調であったことに加え、フラッグシップモデル「RIVAGE PM10」の市場投入により、業務用音響機器市場での着実な成長を達成しました。
 「コスト競争力の強化」につきましては、調達コストダウンや生産性向上等による原価低減活動、半導体事業を含む国内構造改革、国内製造工程の一部の海外生産拠点への移管等による成果が着実に表れ、海外生産工場の労務費上昇を吸収し、全体として目標を上回るペースでコストダウンが実現できました。
 「新規の事業開発」につきましては、新規の企業買収等はありませんでしたが、平成26年3月期に100%出資子会社化した「Line6,Inc.」、「Revolabs,Inc.」それぞれとの間で、新たな顧客価値を生み出す商品の共同開発を進めました。成果出しには当初計画より遅れが生じているものの、販売体制の整備、相互販路の最適化などによるシナジーの創出に取り組みました。また、新規事業の発掘施策として、前期より、社内からの事業・商品提案制度「Value Amplifier(バリュー アンプリファイア)」をスタートし、多くの提案の中から「おもてなしガイド※2」がマスメディア等で話題となっております。
 なお、当社の国内楽器・音響機器販売子会社である株式会社ヤマハミュージックジャパンが、特約店を会場として展開してきた国内の音楽教室事業を平成27年7月1日付で、一般財団法人ヤマハ音楽振興会に移管いたしました。これに伴い、当連結会計年度において売上高で124億円の減収となりましたが、損益面での影響は軽微にとどまりました。
 販売の状況につきましては、売上高は4,354億77百万円(前年同期比0.8%増加)となりました。
 損益の状況につきましては、営業利益は406億63百万円(前年同期比34.9%増加)、経常利益は409億7百万円(前年同期比31.0%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は326億33百万円(前年同期比30.9%増加)となりました。
 この結果、4期連続増収増益となり、また中期経営計画「YMP2016」において掲げた数値目標はすべて達成することができました。

※1「MusicCast(ミュージックキャスト)」:家庭の複数の部屋に設置したオーディオ機器で音楽を簡単に共有するための新しい機能。
※2「おもてなしガイド」:公共施設、商業施設等でのアナウンスを、多言語化してモバイル端末(スマートフォンなど)に表示する、当社の技術および専用アプリケーション。

 

セグメントの業績を示すと、次の通りであります。
 
(楽器事業)
 新商品の効果により前年の売上げが好調であったエレクトーンを除き、全ての楽器群で増収となりました。
 アコースティックピアノは、中国で売上げを伸ばしたほか、欧州では中・高級価格帯の商品が堅調に推移しました。デジタルピアノは、米国の大手量販店向けに普及価格帯商品が売上げを伸ばすなど全地域で好調に推移し、楽器事業全体の売上げを牽引しました。ポータブルキーボードは、南米では販売に苦戦しましたが、他の地域では新商品の販売が堅調で、増収となりました。管楽器は、特に北米が好調で、その他国内はじめ全地域での販売が伸長しました。ギターは欧州、中国及び国内で売上げを伸ばしました。
 以上により、当事業の売上高は、当期中に国内音楽教室の運営を一般財団法人ヤマハ音楽振興会に移管したことに伴う124億円の減収影響があったものの、2,788億72百万円(前年同期比1.0%減少)、営業利益は、315億30百万円(前年同期比25.8%増加)となりました。
 
(音響機器事業)
 オーディオ機器はAVレシーバーやパワード・スピーカーなどMusicCast対応商品が欧州及び豪州を中心に売上げを伸ばし、また米国の大手量販店の定番商品となる商品ラインアップが増えたこと等により、増収となりました。業務用音響機器は、フラッグシップモデルとなる大型デジタルミキシングシステムの販売を開始したほか、普及価格帯のミキシングコンソール、MGシリーズの販売が好調に推移しました。また、国内では業務用音響機器に加え音響設備工事も好調に推移しました。業務用通信カラオケ機器は減収となったものの、ICT(情報通信)機器はルーター及び会議システム等の音声コミュニケーション機器が堅調に推移しました。
 以上により、当事業の売上高は、1,193億78百万円(前年同期比5.8%増加)、営業利益は、86億93百万円(前年同期比41.7%増加)となりました。
 
(電子部品事業)
 半導体はアミューズメント機器用LSIの売上げが伸長しましたがモバイル機器向けデジタルアンプの販売が振るいませんでした。
 以上により、当事業の売上高は、130億68百万円(前年同期比2.7%減少)、営業利益は、1億7百万円(前年同期は営業損失14億46百万円)となりました。
 
(その他の事業)
 その他の事業では、FA機器の販売が伸びたほか、ゴルフ用品及びリゾート事業の売上げも堅調であったことから、自動車用内装部品の落ち込みをカバーし、ほぼ前年並みの売上高となりました。
 以上により、当事業の売上高は、241億56百万円(前年同期比0.3%減少)、営業利益は、3億32百万円(前年同期比13.5%減少)となりました。
 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期に比べ88億58百万円増加(前年同期は186億34百万円増加)し、期末残高は850億18百万円となりました。
 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益により、423億99百万円(前年同期に得られた資金は317億29百万円)となりました。
 
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度において投資活動の結果得られた資金は、有形固定資産の売却による収入等により、5億91百万円(前年同期に使用した資金は117億円)となりました。
 
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、自己株式の取得、配当による支出等により、303億49百万円(前年同期に使用した資金は59億9百万円)となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

楽器

197,962

108.0

音響機器

103,294

112.7

電子部品

12,980

87.3

その他

16,077

91.6

合計

330,314

107.5

 

(注) 1 金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注実績

当社グループは、製品の性質上、原則として見込生産を行っております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

楽器

278,872

99.0

音響機器

119,378

105.8

電子部品

13,068

97.3

その他

24,156

99.7

合計

435,477

100.8

 

(注) 1 金額は外部顧客に対する売上高であります。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

3 【対処すべき課題】

当社グループは、平成28年3月末で終了した中期経営計画「Yamaha Management Plan 2016(YMP2016)」に続き、平成28年4月からの3年間を対象とした新たな中期経営計画「NEXT STAGE 12」を策定しました。
 経営ビジョン「『なくてはならない、個性輝く企業』になる」を、当社グループが中長期的に目指す姿として掲げ、来たる3年間を「ブランド力の強化と、その成果としての利益率の向上」のための期間と位置付けた上で、①楽器事業のさらなる収益力向上 ②音響機器事業の成長 ③第3の柱となる部品・装置事業の基盤確立、に取り組みます。為替の円高傾向で経済環境の不透明感が強まるなかでも収益力の着実な向上を目指し、経営目標として、最終年度の営業利益率を12%に設定しました。

 

1 前中期経営計画「YMP2016」レビュー

「YMP2016」では、連結売上高4,300億円、連結営業利益300億円(営業利益率7%)、ROE10%の達成を目指していました。売上高、営業利益の目標は平成27年3月期に1年前倒しで達成し、最終年度である平成28年3月期にはROE10%も達成しました。
 当期間においては、エレクトロニクス事業領域で計画を上回る売上成長を実現しました。また、事業構造改革(国内営業・生産、半導体)の成果出しに加え、さらなるコストダウンの推進や主力の楽器事業の粗利改善等により、強い経営基盤の構築が進みました。

 

2 経営ビジョン

「なくてはならない、個性輝く企業」になる ~ブランド力を一段高め、高収益な企業へ~
 「YMP2016」が数値目標を大きく上回って完了できたことから、次の高い目標にグループ一丸となって挑戦するべく、当社グループが中長期的に目指す姿を経営ビジョンとして明確にしました。

 

3 新中期経営計画「NEXT STAGE 12」の概要

① 位置付け

高いブランド価値を持つ企業として長期的には営業利益率20%の実現を目指し、次のステップを、「なくてはならない、個性輝く企業」へ向けて「ブランド力の強化と、その成果としての利益率の向上」に取り組む3年間と位置づけます。
 

② 基本戦略と経営目標

新たな価値創造と差別化で競争優位力を高めることを基本戦略とし、そのために、お客様とのつながりを一層強め、魅力品質を高めるとともに、常に新しい価値ソリューションを提案していきます。

 

<経営目標(3年後)>
 営業利益率12%(平成31年3月期)
 ・楽器事業のさらなる収益力向上(営業利益率15%水準へ)
 ・楽器に並ぶ将来の事業規模を見据えた、音響機器事業の成長(売上高実質伸長20%)
 ・楽器・音響機器に次ぐ、第3の柱となる部品・装置事業の基盤確立

 

③ 4つの重点戦略

a. 個性際立つ商品の開発

素材・解析技術から音源・信号処理・ネットワークや感性評価まで保有する幅広い技術の融合によって、他社には真似のできないユニークな価値を高い基本性能の上に実現します。
 新たな研究開発の拠点「イノベーションセンター(仮称)」を建設し、約2,500人の技術者を本社地区に結集することによりシナジーの創出を加速します。

 

b. お客様の拡大

コンシューマー向け商品の販売網拡充や地域ニーズを踏まえた音楽普及活動を加速するほか、法人およびB2Bの顧客サポート体制・拠点拡充等を通じて、それぞれのお客様に最適なサービスとソリューションを提供することにより、お客様とのつながりを強め、広げていきます。

 

c. 持続的なコスト低減

製造原価の低減(生産工程再配置、調達コストダウン、新工法確立等)及び、間接業務の生産性向上を継続することにより、80億円(3年間・ネット)のコスト低減を実現します。

 

d. グローバル事業運営の基盤強化

グループ人材の適材適所な配置と育成を進め、国を超えた人材の活躍を推進します。
 また、IT、物流、会計、スタッフの機能をグローバルに最適化し、グローバル事業運営を支える基盤を強化するとともに、業務の効率化を進めます。

 

4 主要事業戦略

① 楽器事業

事業規模を活かした技術開発力とマーケティングによる、さらなる収益性向上を図ります。
 収益性の高い電子楽器の伸長と、モデルミックスや販売価格の見直しによる粗利改善等により利益率を改善させるほか、独自の感性評価技術による楽器の本質追求や、デジタル楽器、ハイブリッドピアノ等の新価値提供により、商品競争力の強化を加速します。
 また、マーケティングと顧客アクセスを地域別に最適化し、ブランド力の向上と顧客接点の拡大を推進します。

 

② 音響機器事業

信号処理とネットワーク技術の強みを活かした技術革新と、顧客サポートの強化により、成長を加速させます。
 業務用音響機器の領域では、パートナーとなる設備事業者の付加価値を高める音響システムを提供するとともに、システムエンジニアリング・営業スタッフを全世界で増強し、音楽ホール等に加えて店舗BGM・企業会議室等への顧客の拡大を加速します。
 コンシューマー・オーディオ機器の領域では、戦略商品であるMusicCastを中心に、顧客ニーズに合った自由自在な音楽視聴スタイルの提案を進め、ブランド力の強化を図ります。

 

③ 部品・装置事業

部品・装置事業を第3の柱とするための基盤を確立します。
 半導体メーカーからソリューションベンダーに形態を転換し、車載、ホームヘルスケア、産業機器の領域で、音の技術を中心とする快適・安心・安全なソリューションを提供することにより、売上伸長を図ります。
 車載領域では、音のトータル提案に加え、環境に配慮した車社会実現に向けた熱電ソリューションの開発を進めます。また、ホームヘルスケア市場に向けて、音とセンサー技術の応用による新しいソリューションを提案します。

 

5 ESG

持続可能な社会の実現に向け、E(Environment 環境)、S(Social 社会)、G(Governance 企業統治)の観点から、事業戦略に基づく事業活動を通じた社会課題解決への取り組み、事業プロセスにおける環境・社会への配慮、並びにコーポレートガバナンスや内部統制強化による透明で質の高い経営を目指して、引き続き様々な取り組みを進めます。
 

 

6 投資と株主還元       

創出したキャッシュを戦略投資に配分した上で、積極的な株主還元を実施していきます。
  ・設備投資                400億円
  ・戦略投資                500億円(M&Aを含む)
  ・戦略マーケティング・戦略研究開発投資  100億円
 株主還元については、継続的かつ安定的な配当を基本としますが、将来の成長投資の為の適正な内部留保とのバランスを考慮しながら、資本効率の向上を目的とした機動的な株主還元も適宜、実施して参ります。
 尚、配当については、連結配当性向30%以上を目標とします。

 

7 経営数値

「NEXT STAGE 12」最終年度(平成31年3月期)の経営目標を、営業利益率12%とします。
 尚、財務数値目標(想定為替レート:USD115円、EUR125円)は以下の通りです。
  ・売上高       4,650億円
  ・営業利益       550億円
  ・ROE         10%水準
  ・EPS(一株利益) 200円水準

 

8 株式会社の支配に関する基本方針

① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の財務及び事業の内容や当社グループの企業価値の源泉を十分に理解し、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保し、向上させていくことを可能とする者である必要があると考えております。

当社は、当社の支配権の移転を伴う買付提案がなされた場合にこれに応じるべきか否かの判断は、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えております。また、当社は、当社株式について大量買付けがなされる場合、これが当社の企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。

しかしながら、株式の大量買付けの中には、その目的等からみて企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付の条件について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社が買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、対象会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。

特に、当社株式の大量買付けを行う者が、当社の財務及び事業の内容を理解することはもちろんのこと、当社グループの企業価値の源泉を理解したうえで、これらを中長期的に確保し、向上させることができなければ、当社の企業価値・株主共同の利益は毀損されることになります。

当社は、このような当社の企業価値・株主共同の利益に資さない大量買付けを行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、このような者による大量買付けに対しては、必要かつ相当な対抗措置を採ることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保する必要があると考えます。

 

② 基本方針の実現に資する特別な取組みの概要

当社は、「感動を・ともに・創る~音・音楽を原点に培った技術と感性で新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます。」を企業目的として掲げ、経営の効率化を追求し、グローバルな競争力と高水準の収益性を確保するとともに、コンプライアンス・環境・安全・地域社会への貢献等、企業の社会的責任を果たすことにより、企業価値・ブランド価値の向上に努めております。その実現のために、経営上の組織体制や仕組みを整備し、必要な施策を実施するとともに、適切な情報開示を行うことにより、効率的かつ透明性の高い経営の実現に取り組んでおります。当社は、株主、顧客、従業員、地域社会それぞれのステークホルダー間の利益バランスを考慮した経営に努めております。それぞれのステークホルダー間の利害を適切に調整しながら、各ステークホルダーの満足度を高めつつ、企業価値の最大化に向け努力をしております。

 

中期経営計画(Yamaha Management Plan 2016)では、全体を「アコースティック楽器事業」、「エレクトロニクス事業」、「教育・余暇事業」、「産業用部品・機械事業」の4つの事業領域に括り直し、それぞれの事業領域でメリハリを付けた戦略を構築して、既存事業の着実な成長と新たな事業の開発を図るとともに、各事業領域の中で、コアコンピタンスを最大限に活用して、シナジー効果の創出にも力を入れてまいります。

また、当社は、取締役会の意思決定の迅速化・監督機能強化、業務執行力強化等を図るため、執行役員制度の導入、社外取締役の選任、役員人事委員会の設置、内部監査部門の整備等をとおして積極的にコーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおります。

 

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、平成25年6月26日開催の第189期定時株主総会において「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)の更新の件」の承認を受け、新株予約権の無償割当てを活用した方策(以下、本プラン)の更新をしております。

本プランは、当社株券等に対する買付等が行われる場合に、買付等を行う者(以下、買付者等)に対し、事前に当該買付等に関する情報の提供を求め、当社が、当該買付等についての情報収集・検討等を行う期間を確保したうえで、株主に当社経営陣の計画や代替案等を提示したり、買付者等との交渉等を行っていくための手続を定めております。

本プランは、(ⅰ)当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付その他の取得、(ⅱ)当社が発行者である株券等について、公開買付けを行う者の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付けに該当する場合を対象とします。

買付者等が本プランにおいて定められた手続に従うことなく当社株券等に対する買付等を行う等、買付者等による買付等が当社の企業価値・株主共同の利益を害するおそれがあると認められる場合には、当社は、当該買付者等による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権を、その時点の当社を除く全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法により割り当てます。

本プランに従った本新株予約権の無償割当ての実施または不実施等の判断については、当社取締役会の恣意的判断を排するため、独立委員会規則に従い、独立性のある社外役員等のみから構成される独立委員会の客観的な判断を経るものとしております。また、当社取締役会は、これに加えて、所定の場合、株主の意思を確認するための株主総会を招集し、新株予約権無償割当ての実施に関する株主の意思を確認することがあります。

独立委員会は、買付者等からの必要情報を受領してから原則として最長90日を経過するまでの間に上記の判断を行い、当社取締役会に実施・不実施の勧告をします。この期間内において、独立委員会は、必要に応じて当社取締役会からも情報・意見を取得し、判断の材料とすることがあります。当社取締役会は、独立委員会の勧告を最大限尊重して、新株予約権の無償割当ての実施・不実施の決議を行います。また、新株予約権無償割当ての実施に関する株主の意思を確認するための総会決議があった場合、当社取締役会はこれに従います。

本プランの発動として本新株予約権の無償割当てを実施するための要件は、下記のとおりです。買付等の下記の要件への該当性については、必ず独立委員会の判断を経て決定されることになります。

(イ)本プランに定める手続を遵守しない買付等であり、かつ本新株予約権の無償割当てを実施することが相当である場合

(ロ)以下のいずれかに該当し、かつ本新株予約権の無償割当てを実施することが相当である場合

・当社の企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのある買付等として本プランで定められた買付等である場合

・強圧的二段階買付等株主に株式の売却を事実上強要するおそれのある買付等である場合

・買付等の条件が当社の本源的価値に鑑み不十分または不適当な買付等である場合

・当社の企業価値を生み出すうえで必要不可欠な当社のブランド並びに当社と当社株主、従業員、取引先及び顧客等との関係を破壊し、当社の企業価値・株主共同の利益に反する重大なおそれをもたらす買付等である場合

本プランの運用に際しては、適用ある法令または金融商品取引所の規則等に従い、本プランの各手続の進捗状況、独立委員会による勧告等の概要、当社取締役会または株主意思確認総会の決議の概要、その他独立委員会または当社取締役会が適切と考える事項について、適時に情報開示をすることとしており、手続の透明性を確保しております。

本プランに従って本新株予約権の無償割当てがなされ、買付者等以外の株主により本新株予約権が行使された場合、または当社による本新株予約権の取得と引換えに、買付者等以外の株主に対して当社株式が交付された場合、当該買付者等の有する当社株式の議決権割合は、最大50%まで希釈化される可能性があります。

本プランの有効期間は、平成28年3月31日に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとしております。また、有効期間の満了前であっても、当社株主総会または当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとしております。

 

④ 取締役会の判断及びその判断に係る理由

 本プランは、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって導入されたものであり、基本方針に沿うものです。特に本プランは、(ⅰ)経済産業省及び法務省による買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること、(ⅱ)株主総会において株主の承認をもって更新されたものであり、当社取締役会は、一定の場合に、本プランの発動の是非について、株主意思確認総会において株主の意思を確認することができるものとされていること、(ⅲ)有効期間を約3年間とし、有効期限の満了前であっても、株主総会の決議により廃止が可能であること、(ⅳ)発動に際しては、独立性のある社外役員等のみから構成される独立委員会による勧告を必ず得ることとされていること、(ⅴ)予め定められた合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みが確保されていること、(ⅵ)当社取締役の任期が1年であることから、毎年の取締役の選任を通じて、株主の意向を反映させることが可能なことなどにより、公正性・客観性が担保されており、高度な合理性を有し、当社の企業価値・株主共同の利益に資するものであって、当社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

なお、当社は、平成28年4月28日開催の取締役会において、本プランの有効期間満了をもって本プランを継続しないことを決議いたしました。ただし、本プランの有効期間満了後も、当社株式の大量買付行為を行なおうとする者に対しては、大量買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努める等、金融商品取引法、会社法その他関連法令の許容する範囲内において、適切な措置を講じてまいります。

 

当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)の詳細を、次の当社ウェブサイトに掲載しております。
 http://jp.yamaha.com/

 

 

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 経済状況

当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、日本をはじめとする世界各国の経済状況の影響を受けます。世界の市場における景気後退、これに伴う需要の減少は、当社グループの収益と事業展開に影響を与える可能性があります。

 

2 価格競争

当社グループは、事業を展開するそれぞれの分野で厳しい競争にさらされております。例えば楽器事業では、総合楽器メーカーとして高品質、高性能な製品を広い価格帯で販売しておりますが、個々の製品分野ごとに競合他社が存在しており、特に近年は、普及価格帯製品における競争が激化しております。

また、音響機器事業では、競合他社との低価格化競争にさらされており、今後の流通変革、新技術開発の動向によっては、低価格化競争がさらに激化する恐れもあり、当社グループの現在の優位性が影響を受ける可能性があります。

 

3 新技術開発

当社グループは楽器・音響機器に関わる事業領域をコアとし、楽器事業では世界一の総合楽器メーカーとしての地位を不動のものとする一方、音響機器事業では、オーディオと業務用音響機器を中心として事業を展開しております。電子部品及びその他の事業では、車載、アミューズメント機器、産業機器などの領域で事業を展開しております。

音・音楽・ネットワーク・デバイス関連技術の差別化を図ることが、当社グループの発展、成長に不可欠な要素となっております。これらの技術開発が、将来の市場ニーズを正しく予想し、的確に行われない場合、楽器事業では、製品付加価値の低下、価格競争に陥る恐れ、新規需要喚起ができないなどの問題が生じ、音響機器事業、電子部品及びその他の事業では事業そのものの存続が困難となる可能性があります。

 

4 事業投資リスク

当社グループは事業の拡大のため、設備投資等の事業投資を行っております。投資決定にあたっては、投資効果とリスクを定性的かつ定量的に把握し、慎重に判断しておりますが、状況によっては、一部または全部の投資額を回収できない、または撤退の場合に追加損失が発生するリスクを負っております。このような場合、当該投資を行った資産が減損の対象となる可能性もあります。

 

5 他社との提携の成否

当社グループにおいて、他社との業務提携、出資、合弁会社の設立など、近年、他社とのパートナーシップ戦略の重要性が増しております。これらの業務提携、出資等は、相手先との利害の対立や相手先の事業戦略の変更等により、当初期待した効果が得られない場合があります。

 

6 部材・部品事業における取引先への依存

当社グループが製造・販売する半導体、自動車用内装部品、部材・部品は、供給先メーカーの業績の影響を受けます。また、供給先メーカーとの間で、納期・品質等で信頼関係が損なわれた場合、その後の受注に悪影響を及ぼす可能性があります。また、品質等の欠陥によって、供給先メーカーから補償を求められる可能性があります。

 

7 国際的活動及び海外進出による事業展開

当社グループは、世界の各地域に製造・販売拠点を置き、グローバルな事業展開をしております。連結子会社67社のうち45社が海外法人であり、そのうちの23社が製造・制作会社等で、主要製造拠点は中国、インドネシア、マレーシアに集中しております。また、海外売上高は売上高の66.7%を占めております。

 

これらの海外市場での事業展開には、以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しておりますが、一旦これらのリスクが顕在化した場合には、例えば、製造においては拠点集中による弊害が顕著に現れ、安定的な製品供給ができなくなる可能性があります。

①政治・経済の混乱、テロ、戦争
 ②不利な政策の決定または規制の設定・変更
 ③予期しない法律または規制の変更
 ④人材の確保の難しさ
  ⑤人件費、物価などの大幅な上昇
 ⑥原材料・部品調達の難しさ、技術水準の程度
 ⑦港湾ストなど物流の障害
 ⑧移転価格税制等に基づく課税
 ⑨ストライキ等の労働争議

 

8 原材料価格の高騰、原材料の供給、物流コストの増加

当社グループは製品の製造にあたり、木材、銅等の金属材料、樹脂等を部品として使用しておりますが、これらの材料価格の高騰が製造原価を増加させることがあります。また、材料の種類によっては、特定の業者より供給を受けているものもあり、供給状況によっては、製造に影響を受けることがあります。

また、原油価格の高騰等により物流コストが増加すると、製造原価及び販売における売上原価を増加させる原因となることがあります。

 

9 少子化の影響

当社グループの基幹事業である楽器事業では、子供を中心とする音楽教室や英語教室を展開しているほか、学校を通じた販売も重要な販売経路となっております。今後、特に日本における少子化の進行により、売上高の減少を招く可能性があります。

 

10 人材の確保・育成

当社は、平均年齢が高く、高年齢層が厚い従業員構成となっており、従業員が大量に定年退職時期を迎えております。楽器等の製造に関わる技能の伝承や、次世代を担う人材の確保・育成など、要員構造変化への対応が重要課題であります。このような要員構造変化への対応が十分にできない場合、事業活動や将来の成長が阻害される可能性があります。

 

11 知的財産権の保護と利用

当社グループは、独自技術についての特許等の知的財産権、業務遂行上取得したノウハウを保有しておりますが、その一部は、特定地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、または限定的にしか保護されない状況にあります。第三者が当社グループの知的財産権を利用することを、効果的に防止できない可能性があります。その結果、当該第三者の製造した類似品、模倣品が市場に出回ることにより当社グループ製品の販売に支障をきたす可能性があります。また、当社グループの製品が第三者から第三者の知的財産権を侵害しているとされる場合があり、その結果、これを利用した当社グループ製品の販売が遅れたり、販売できなくなる可能性があります。

当社グループは、製品の重要な部分のいくつかについて第三者から知的財産権のライセンスを受けております。ロイヤリティの上昇は、製造コストの増大を招き価格競争力に影響が出るほか、ライセンスを受けられなくなった場合、当該製品の製造ができなくなる可能性があります。

 

12 製品・サービスの欠陥

 当社グループの製品は、当社が定めた品質保証規程及び製品品質規程によって管理されております。しかしながら、製品の全てについて欠陥が無いという保証はありません。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険で損害賠償額を充分にカバーできるという保証はありません。製造物責任を伴う事故の発生があると保険料率の上昇が予想されます。また、製品回収、交換・補修、設計変更などによる多額のコスト増大、当社グループの社会的評価の低下とそれによる売上げ減少が予想されることから、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが営む小売店舗、音楽教室、リゾート施設等における安全・衛生については十分注意を払っておりますが、万一事故が発生した場合、店舗・教室・施設等の一時休業や社会的評価の低下とそれによる売上げ減少が予想されます。

 

13 公法規制

当社グループの事業は、全世界の拠点において、それぞれの国における法律の適用を受け様々な規制の対象となっております。例えば、対外的投資、国家安全保障上の輸出入制限、通商規制、独占禁止規制、消費者保護、税制、環境保護他の規制の適用を受けております。また、個人情報については、安全管理義務が課せられております。当社グループは、コンプライアンスの遵守に尽力しておりますが、予期せずこれらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの企業活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。

 

14 環境保護規制

事業活動に対する環境保護規制は強化の方向にあり、企業の社会的責任の一つとして自主的な環境活動プログラムの実施が求められております。当社グループは、製品、梱包材、省エネルギー、産業廃棄物処理などについて環境基準を上回る対策の実施に努めておりますが、事故などの発生により制限物質が環境基準を超えることを完全に防止または軽減できる保証はありません。また、工場跡地等で、制限物質により土壌が汚染されている場合には、将来、売却しようとする際、多額の浄化費用が発生する、あるいは売却できない可能性があります。第三者に売却済みの土地から将来制限物質が拡散し、大気、地下水を汚染し、その対策費が発生する可能性があります。

 

15 情報漏洩のリスク

当社グループは、様々な経営及び事業に関する重要情報や、多数の顧客情報等の個人情報を保有しております。重要情報等の管理につきましては、方針や規定を策定し、情報セキュリティのための体制を整備しておりますが、万一これらの情報が誤って外部に漏洩した場合には、当社の事業に重大な影響を与え、あるいは社会的信用を低下させる可能性があります。

 

16 為替レートの変動

当社グループは、全世界において製造・販売等の企業活動を行っておりますが、グループ各社における外貨建取引は為替レートの変動の影響を受けます。外貨建取引については、短期的な為替変動の影響を最小限に止めるため先物為替予約取引等を行っておりますが、為替変動により当初の事業計画を達成できない可能性があります。特に損益については、影響が大きいユーロ・円レートにおいて、1円変動すると約4億円の損益影響をもたらします。

 

17 地震等自然災害による影響

地震等の自然災害の発生により、当社グループの製造拠点等が損害を受ける可能性があります。特に当社の本社及び国内工場が集中している静岡県内においては、東海地震の発生が予想されております。また、製造拠点が集中する中国、インドネシアやマレーシアにおいても、予期せぬ自然災害が発生する恐れがあります。このような事象が発生した場合には、施設面での損害のほか、操業の中断や遅延、多額の復旧費用の発生などが予想されます。加えて、原材料・部品供給業者の被災状況によっては、製造に影響を受けることがあります。

 

18 情報システムに係るリスク

当社グループの事業活動においては、情報システムの利用とその重要性が増大しています。コンピュータウィルスへの感染やサイバー攻撃などにより情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

19 財政状態等の変動に係る事項

 ① 投資有価証券の評価

 当社グループは、時価のあるその他有価証券(当連結会計年度末の取得原価159億円、連結貸借対照表計上額936億円)を保有しております。時価のあるその他有価証券は決算日の市場価格等に基づき、再評価を行うため、決算日の株価等によって貸借対照表計上額が変動し、その結果、純資産金額が変動する可能性があります。また、時価が取得価額に比べ著しく下落した場合には減損の対象となる可能性があります。

 

 ② 土地の含み損

土地の再評価に関する法律に基づき再評価を行った土地の当連結会計年度末における時価と再評価後の帳簿価額との差異は73億円であり、保有する土地に含み損が発生しております。土地の売却等の場合には、この含み損が実現する可能性があります。

 

 ③ 退職給付債務及び退職給付費用

当社グループの退職給付債務及び費用は、採用する退職給付制度及び割引率や長期期待運用収益率等の見積りに基づいて算出されております。退職給付制度は変更される場合があり、また見積りは決算期毎の結果と相違することがあります。結果として、退職給付債務及び費用が増加する可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「感動を・ともに・創る」をコーポレートスローガンに掲げ、「音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづける」を企業理念に掲げております。これを支えるために、これまでに蓄積してきた「音・音楽」に関する技術群をコア技術と定め、更なる高度化と拡張のための研究開発を進めております。取り組んでいる研究開発の領域は、物理音響、音源、音声及び音響信号処理、音楽情報処理、素材、解析、電子デバイス、オペレーティングシステム、通信、ネットワークと、音の入口から出口まで、さらには音の多目的利用と大きく広がっております。
  当連結会計年度は、「音・音楽・ネットワーク・デバイス」を強化分野とし、特に「良い音」を科学的に理解し、実際の楽器・音響機器設計に適用できるよう研究開発を進めました。また、物理モデル、音楽解析、歌唱合成などの技術の高度化と、ネットワーク時代に対応した高音質の伝送技術や無線接続に関連する技術開発も進めております。
 当社グループの研究開発体制は、楽器・音響機器事業については当社の楽器・音響開発本部及び当社の連結子会社であるLine 6,Inc.、NEXO S.A.、Revolabs,Inc.、Steinberg Media Technologies GmbHの開発部門、電子部品事業については当社の半導体事業部の開発部門、その他の事業については当社のゴルフHS事業部及び当社の連結子会社であるヤマハファインテック株式会社の開発部門、全社横断的R&Dについては当社の技術本部研究開発統括部、新規事業創出については当社の事業開発部が担う形で構成しております。

当連結会計年度における主な成果をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は247億93百万円であります。

 

1 楽器事業

 アコースティック楽器関連では、トランスアコースティック™技術を搭載した、ハイブリッドピアノ「トランスアコースティック™ピアノ」の新製品として、アップライトピアノ「YUS1SHTA」「YUS3SHTA」「YUS5SHTA」、グランドピアノ「C1X-SHTA」「C3X-SHTA」を開発しました。電子音の情報を振動に変換してピアノ本体の響板に伝えるトランスデューサ―(加振器)を搭載しており、響板の振動に弦の共鳴効果が加わることで、電子音がピアノ全体から豊かに自然な響きで広がります。アコースティックピアノでありながら音量調整が可能であり、内蔵された多彩な音色の電子音とアコースティックピアノの音を重ねたレイヤー演奏が楽しめます。外部のオーディオデバイスとの接続により、響板をスピーカー代わりにしてオーディオリスニングを楽しんだり、趣味やシーンに合わせて幅広く楽しむことが可能です。なお「サイレントブラス™」とグランドピアノ「CX」シリーズは各々、「German Design Award 2016」(ドイツデザイン賞)の「Winner」と「Special Mention」に選出されました。また「サイレントブラス™」の意匠は、平成27年度全国発明表彰(主催:公益社団法人 発明協会)の特別賞「朝日新聞発明賞」を受賞しました。
 ギター関連では、Line 6,Inc.が、ギター・ワイヤレス・システム「Relay G60」「Relay G75」を開発しました。定評のあるLine6社のデジタル・ワイヤレス・テクノロジーにより、高音質でクリアな音色と低レイテンシーを実現し、ワイヤレスでありながら、ケーブルを繋いだサウンドと同じ様な感覚で演奏することを可能にしました。またレシーバーは、複数のトランスミッターをサポートしており、多種多様なセットアップ、トランスミッターの追加、楽器の持ち替えなどに簡単に対応することが可能です。
 電子楽器関連では、コンパクトシンセサイザー「reface」シリーズ「reface CS」「reface DX」「reface CP」「reface YC」を開発しました。当社がこれまで発売し好評を博してきたシンセサイザーやキーボードを現代風にアレンジし、本格的な演奏性とコンパクトな筐体を両立させた新たなキーボードです。それぞれの名前には、アレンジの基にした名器のシリーズ名を冠しました。4機種それぞれに特色ある高品質の音源を搭載し、レコーディングユースやステージユースにも対応する本格的な演奏性を実現しているほか、音の強弱を弾き分けることができる新開発のコンパクトな鍵盤「HQ mini」を搭載し、幅広い表現が可能です。さらに、スピーカー内蔵で乾電池駆動も可能なため、どこでも気軽に本格的な演奏を楽しむことができます。なお「reface」は、「2015年度グッドデザイン賞」(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)の「グッドデザイン・ベスト100」に選出されると共に、ドイツの「Red Dotデザイン賞2016」(主催:ノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター)において「Red Dotデザイン賞 プロダクトデザイン2016」を受賞しました。またクラビノーバ「CLP」シリーズは、「第9回キッズデザイン賞」(主催:キッズデザイン協議会)の「奨励賞 キッズデザイン協議会会長賞」を受賞しました。
 音楽ソフト関連では、「Unity」向けソフトウェア開発キット「VOCALOID SDK for Unity」を開発しました。「Unity」は、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社が提供する世界で極めて高いシェアを誇るゲームエンジンであり、その上で、当社の歌声合成技術「VOCALOID™」を利用したインタラクティブコンテンツを開発することが可能になりました。開発者は、使い慣れた「Unity」の開発環境からシームレスに「VOCALOID™」の機能が利用可能で、マルチプラットフォームに対応しております。同時に「Unity」のオフィシャルキャラクター「ユニティちゃん」が持つ世界観を表現するために開発したオリジナルボイス「Unityランタイム版VOCALOID Library unity-chan!」も、同時提供しました。

研究開発費は92億91百万円であります。

 

2 音響機器事業

オーディオ関連では、無線通信を使い、家庭内の複数の部屋に設置したオーディオ機器で、Hi-Fiやホームシアターサウンドの音楽を共有して、手軽に楽しめる機能である「MusicCast®」を開発しました。既存の家庭内Wi-Fiネットワークを使い、ストリーミングサービスやインターネットラジオ、サーバーやスマートフォンに保存された好きな音楽を、家の何処にいても、シームレスに再生し楽しむことができます。AppleやAndroidのスマートフォンやタブレット端末で動作する専用の無料アプリ「MusicCast CONTROLLER」でMusicCast®対応機器を操作して、コンテンツを検索し再生させることができます。今後当社は、AVレシーバー、無線スピーカー、サウンドバー、Hi-Fiコンポーネント、パワードスピーカーなどMusicCast®対応機器を拡大させていき、ホームシアター・オーディオの楽しみ方を広げていきます。また、臨場感あふれるサラウンド再生をワンボディで実現するデジタル・サウンド・プロジェクター「YSP」シリーズの新製品として最上級モデル「YSP-5600」を開発しました。最新の3DサラウンドフォーマットであるDolby Atmosにサウンドバーとして世界で初めて対応し、さらにDTS:Xにも対応しました。ハイトチャンネルのための垂直ビーム専用アレイスピーカーを含む、YSP史上最多となる44個のアレイスピーカーと2個のウーファーからなるスピーカー構成を採用することで、最大7.1.2ch相当のリアル3Dサラウンド再生を実現しました。なおライティングオーディオシステム「Relit LSX-70/LSX-170」は、「2015年度グッドデザイン賞」(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)の「グッドデザイン・ベスト100」に選出されると共に、「アジアデザイン賞2015」(主催:香港デザインセンター)の「プロダクト/工業デザイン」部門において「DFA銅賞」を受賞しました。またデジタル・サウンド・プロジェクター「YSP-1600」は、「2015年度グッドデザイン賞」の「グッドデザイン賞」を受賞しました。
 業務用音響機器関連では、新世代フラッグシップモデルとなるデジタル・ミキシング・システム「RIVAGE PM10」を発売しました。「RIVAGE PM10」は、長年に渡るデジタルミキサー開発の歴史の中で培ってきた技術の集大成であるだけでなく、さらに最新の技術を取り入れ、コンポーネントの組み合わせによるシステム構築の柔軟性と膨大なミキシング能力を備えた新世代フラッグシップとなるデジタル・ミキシング・システムです。観客数数百人・数千人規模のホールコンサートから数万人を超える大規模コンサートまで、複雑なセッティングの再現を要する演劇から開会式やセレモニーといった大規模イベントまで、様々な分野・環境に対応しており、伝統のナチュラルサウンドを極めたアナログ部と独自のモデリング技術VCMテクノロジーでさらに進化を遂げたデジタル部から成る新開発の「ハイブリッドマイクプリアンプ」により音作りのバリエーションを大きく広げました。また、革新的な操作性を提供する新世代の小型デジタルミキシングコンソール「TFシリーズ」を開発しました。タッチパネルに最適化した直感的なユーザーインターフェイスを核とする新開発の操作体系「TouchFlow Operation」により、初心者から経験豊富なエンジニアまで幅広く快適なオペレーションを提供します。当社のハイエンドレコーディング機器で定評のあるD-PREマイクアンプを搭載し、プロフェッショナルな要求に応える音質を実現しました。さらに、ライブレコーディングへの対応やiPadなどデジタルデバイスとの連携といった機能と拡張性を備え、小型デジタルミキサーの活躍するシーンをこれまで以上に大きく広げました。
 情報通信機器関連では、Revolabs,Inc.が開発した、USBスピーカーフォン「FLX UC 500」の日本国内での販売を開始しました。設備音響業界最高レベルのRevolabs社の技術を活かして開発され、中会議室向け高性能マイクスピーカーを搭載し、PCを中心とした6人程度のWeb会議などでの利用に最適な、ユニファイドコミュニケーションのためのマイクスピーカーです。音声帯域幅が広く聞き取りやすいスピーカーや、360度どこからでも広範囲の周波数を集音できるマイク、さらにエコーキャンセラー機能等の優れた音声処理技術の組み合わせにより、遠隔コミュニケーションに適した高音質を実現しました。

研究開発費は114億61百万円であります。

 

3 電子部品事業

 モバイル市場向けの地磁気センサーにて、3軸磁気センサーと周辺回路、I2Cインターフェイス回路を1パッケージに集積した、世界最小クラスのLSI「YAS539(MS-3S)」を開発しました。高感度、高S/N比の磁気センサー素子を採用し、センサーブリッジの低電圧化を実現しました。これにより、1.8Vでの単一電源動作が可能となり、測定完了後の自動パワーダウン機能などの特徴により、世界最高水準の低消費電力を実現しました。機能面では、連続測定モード、低消費電力と低ノイズを選択可能な平均化フィルターを搭載し、使用環境に合わせ、より柔軟な磁気測定を行うことを可能としました。またLSI内部には、出荷検査時に個々に測定された補正データを保持しており、これらを使って簡単に高精度な磁気測定が可能です。

研究開発費は21億62百万円であります。

 

4 その他の事業

ゴルフ用品では、ゴルフクラブ「RMX®(リミックス)」シリーズの2016年モデルのドライバー「RMXドライバー」を開発しました。“たわみ”のヘッドと“しなり”のシャフトを組み合わせて、飛距離性能を進化させております。“たわみ”で飛ばす「スーパーデュアル弾力ボディ」のヘッド性能だけで最大プラス6.4ヤードを実現し、「シンメトリック構造」と「アルティメットフェース」でオフセンターヒット時に強さを発揮しております。また自分に合うドライバーをつくることができるように、好みの弾道・打感で選べるヘッド2モデルと、スイングスタイルに合わせられるカスタムシャフト4モデルをラインアップしました。
 FA機器では、水素漏れを高速・高感度で検出する、卓上スニファー式水素ディテクタ「YHLD-100」を開発しました。容器や配管の機密性をチェックするためのトレース(追跡)ガスとして利用する水素は、現在主流のヘリウムに比べてガス自体のコストが安く、設備費も大幅に抑制できると期待されております。独自に開発したMEMS(微小電気機械システム)水素センサーを、世界で初めて搭載することにより、低濃度(0.5ppm)から高濃度(13,000ppm=1.3%)までの広いダイナミックレンジと、1秒以内の高速応答(1,000ppmにおける)を実現しております。今後はディテクタ-のラインナップ拡充に加えて、水素社会発展に伴い拡大する市場(水素ステーション、燃料電池、水素発電など)への用途開拓も進めていきます。

研究開発費は18億79百万円であります。

 

当社グループの当連結会計年度末における日本での特許及び実用新案の合計所有件数は5,176件であります。

 

(注)

・ iPadは、Apple Inc.の登録商標です。

・ Androidは、Google Inc.の登録商標です。

・ Unityおよび関連の製品名は、Unity Technologies及びその子会社の商標です。

・ Dolby Atmosは、Dolby Laboratories, Inc.の登録商標です。

・ DTS:Xは、DTS,Inc.の登録商標です。

・ トランスアコースティック、サイレントブラス、VOCALOID、MusicCast、RMXは当社の登録商標です。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針選択の判断と適用を前提とし、決算においては資産・負債の残高、報告期間における収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。このような見積りについて経営者は、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためこれらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの採用している重要な会計方針のなかで、経営者の見積りが大きな影響を与える事項は次のとおりです。

 

① 貸倒引当金算定における見積り

一般債権についての引当金算定における貸倒実績率と、貸倒懸念債権等特定の債権についての個別の回収不能見込額について、見積りを行っております。

 

② たな卸資産評価における見積り

たな卸資産評価において、総平均法単価等と比較すべき時価の一部の算定について、見積りを行っております。

 

③ 固定資産の減損会計における見積り

減損損失の認識及び回収可能価額の算定に際し、将来キャッシュ・フロー及び割引率について見積りを行っております。

 

④ 時価のあるその他有価証券の減損処理における見積り

「著しく下落した」と判断し減損対象として候補にあがった銘柄についての回復可能性について、判定を行っております。

 

⑤ 繰延税金資産算定における見積り

繰延税金資産の回収可能性評価のために、将来の合理的な課税所得を算定するうえで、見積りを行っております。

 

⑥ 製品保証引当金算定における見積り

製品販売後に発生する補修費用の算定における、売上高もしくは販売台数に対する経験率による見積り及び個別見積りを行っております。

 

⑦ 退職給付に係る負債算定における見積り

退職給付に係る負債算定の前提になる退職給付債務について、見積りを行っております。

 

 

(2) 経営成績の分析

① 報告セグメントごとの売上高の状況

当連結会計年度の売上高は、前年同期に比べ32億99百万円(0.8%)増加し4,354億77百万円となりました。音響機器事業は増収となりましたが、楽器事業は、音楽教室事業の一般財団法人ヤマハ音楽振興会への運営移管による減収影響124億円を、実質増収で補いきれず減収、電子部品事業及びその他の事業も僅かながら減収となりました。

 

楽器事業の売上高は、前年同期に比べ27億94百万円(1.0%)減少し2,788億72百万円となりました。

ピアノは、国内では減収となり、北米市場も前年末に販売が好調であった影響から、販売店の在庫が高い状況にあり、前年同期に対し厳しい状況でしたが、中国市場が底堅い教育需要を背景として、堅調に推移したことに加え、音楽大学等の入札案件獲得増もあり好調に推移したことで、商品全体ではほぼ前年並みとなりました。電子楽器は、前年に10年ぶりのモデルチェンジを実施したエレクトーンにおいて新商品効果が薄れ減収となったものの、ポータブルキーボードが堅調に推移したほか、デジタルピアノが主力商品のモデルチェンジ等により全地域で増収となり対前年同期二桁成長を達成するなど、全体では堅調な推移となりました。管楽器は、北米市場が牽引し、国内市場も好調に推移したほか、中国市場でも普及のスピードが加速しており好調に推移しました。弦・打楽器は、ギターが、欧州、中国、国内の各市場が好調に推移し、他の弦楽器、打楽器を含めても対前年同期二桁成長を記録するなど、総じて好調な販売状況でした。音楽教室、英語教室収入は、音楽教室の運営を第2四半期から、一般財団法人ヤマハ音楽振興会に移管したこと等により、大幅な減収となりました。また、音楽教室の教材等は、消費税増税後の反動減影響のあった前年同期から増収となりましたが、音楽ソフト事業は減収となりました。

 

音響機器事業の売上高は、前年同期に比べ65億38百万円(5.8%)増加し1,193億78百万円となりました。

オーディオは、前年のAVレシーバー等の既存商品領域における市場縮小傾向や、ネットワーク対応型機器の拡大傾向といった消費者の嗜好の変化に対応し、新商品の投入などの取り組みを積極的に実施し、前年同期に比べ回復基調となりました。業務用音響機器は、デジタルミキサーのフラッグシップモデル及び普及価格帯のモデル投入を軸に販売を伸ばし、アナログミキサー、アンプ、スピーカ―なども楽器販売ルートで売上げを伸ばしました。オーディオ、業務用音響機器共に欧州市場が好調に推移しました。業務用通信カラオケ機器は、得意先への供給方法変更に伴い減収となりましたが、ルーター及び会議システムなどのICT(Information and Communication Technology)機器は、対前年同期増収となりました。

 

電子部品事業の売上高は、前年同期に比べ3億66百万円(2.7%)減少し130億68百万円となりました。アミューズメント機器向けLSIやスマートフォン向けの地磁気センサー(電子コンパス)の増収はあったものの、音声処理用コーデック等のオーディオ系デバイスが減収となり、全体として対前年同期で減収となりました。

 

その他の事業の売上高は、前年同期に比べ78百万円(0.3%)減少し241億56百万円となりました。ゴルフ用品は、国内市場の新商品投入効果により海外市場の減収を補い、対前年同期増収となり、リゾート事業も前年同期に比べ僅かに増収となりました。FA事業もプレシジョンマシンの販売で好調に推移しましたが、自動車用内装部品が得意先の新車計画等の影響で前年同期に比べ大幅な減収となり、全体では前年同期並みの売上高となりました。

 

② 地域別売上高の状況

国内売上高は、前年同期に比べ153億40百万円(9.6%)減少し、1,450億33百万円となりました。減収の主要因は、音楽教室事業の一般財団法人ヤマハ音楽振興会への運営移管影響によるものです。楽器事業は、ピアノが前年同期に比べ減収となったほか、前年に新商品が好調に推移したエレクトーンも大幅な減収となりましたが、デジタルピアノ、ポータブルキーボード、管楽器、ギターが好調に推移し、製品の売上げは、前年並を維持しました。しかしながら、音楽教室の運営移管に伴う減収影響が大きく、コンテンツ事業も減収となったことなどにより、楽器事業全体では大幅な減収となりました。音響機器事業は、オーディオは前年の不振から回復し、業務用音響機器も好調な販売状況となりました。加えて、音響設備工事がワイヤレスマイクの周波数変更などに伴う特需もあり、大きく売上げを伸ばしました。電子部品事業は、アミューズメント機器向けの音声及び画像LSIが増収となりましたが、オーディオ系のデバイスの減収が大きく、対前年同期減収となりました。その他の事業は、自動車用内装部品が減収となりましたが、FA機器、ゴルフ用品及びリゾート事業は増収となりました。

 海外売上高は、前年同期に比べ186億40百万円(6.9%)増加し2,904億43百万円となりました。現地通貨ベースでの販売は、欧州市場及び中国市場が大変好調な販売状況で北米市場、その他の市場も前年同期を上回る販売状況となりました。海外売上高比率は前期の62.9%から3.8ポイント上昇し、66.7%となりました。

 地域別では、北米は前年同期に比べ84億87百万円(10.6%)増加し882億34百万円となりました。楽器事業では、ピアノを除くほぼ全ての商品が好調に推移しました。音響機器事業は、オーディオが量販店向けの増収などで回復傾向を示しましたが、業務用音響機器は、販売体制整備の遅れもあり減収となりました。以上により北米市場全体では対前年同期で増収となりました。

欧州は、前年同期に比べ19億27百万円(2.4%)増加し822億5百万円となりました。楽器事業ではピアノが前年同期並みに留まりましたが、電子楽器はデジタルピアノが好調に推移し増収となったほか、管楽器及びギターが好調に推移した弦・打楽器共に増収となりました。音響機器事業では、オーディオ、業務用音響機器共に新商品の市場導入がスムーズに進み増収となりました。以上により欧州市場全体では増収となりました。

アジア・オセアニア・その他の地域は、前年同期に比べ82億25百万円(7.4%)増加し1,200億3百万円となりました。中国では、楽器事業で最も売上げ規模の大きいピアノが大きく売上げを伸ばしたことに加え、電子楽器、管楽器、ギター等その他の楽器も好調に推移しました。音響機器事業もオーディオ、業務用音響機器共に対前年同期二桁成長を記録し、経済の減速傾向が強まる中、総じて好調に推移しました。以上により中国市場全体では、前年に続き二桁成長となりました。中国以外の地域は、国・地域により跛行性はあるものの、楽器事業が前年同期並みを維持し、音響機器事業もオーディオ、業務用音響機器が堅調な推移で、全体で増収となりました。

 

③ 売上原価と販売費及び一般管理費

売上原価は、前年同期に比べ79億50百万円(2.9%)減少し2,624億6百万円となりました。売上原価率は、前年同期から2.3ポイント改善し60.3%となりました。

売上総利益は前年同期に比べ112億50百万円(7.0%)増加し1,730億70百万円となりました。売上総利益率は、前年同期から2.3ポイント改善し39.7%となりました。

 

また販売費及び一般管理費は、前年同期に比べ7億22百万円(0.5%)増加し1,324億7百万円となりました。売上高販売管理費比率は、前年同期から0.1ポイント下がり30.4%となりました。

 

④ 営業利益

営業利益は、前年同期に比べ105億27百万円(34.9%)増益の406億63百万円となりました。
 セグメントごとの営業利益では、楽器事業は減収とはなりましたが、利益率の高い商品の構成比の高まり、製造原価改善等により、前年同期の250億64百万円から64億66百万円(25.8%)増益となり、315億30百万円となりました。音響機器事業は、オーディオの新商品投入による回復や、業務用音響機器の増収などで、前年同期の61億33百万円から25億59百万円(41.7%)増益の86億93百万円となりました。電子部品事業は、前年同期の14億46百万円の営業損失から、構造改革による固定費の削減効果等により15億53百万円改善し、1億7百万円の営業利益となりました。その他の事業は、前年同期の3億84百万円の営業利益から、FA機器及び自動車用内装部品の減益により51百万円(13.5%)減益となり、3億32百万円の営業利益となりました。
 要因別には、海外生産拠点の労務費上昇等による製造コストアップ(18億円)、為替影響(17億円)、販売管理費の増加(15億円)の減益影響がありましたが、増収増産による増益(93億円)、製造原価改善(44億円)、構造改革による電子部品の損益改善(19億円)により、前年同期に比べ大幅な増益となりました。

 

⑤ 営業外損益

 営業外収益は、前年同期の46億87百万円から1億89百万円(4.0%)増加の48億76百万円となりました。このうち、受取配当金はヤマハ発動機株式会社からの配当金が増加したこと等により、前年同期の21億91百万円から、1億86百万円(8.5%)増加し、23億77百万円となりました。また、米国販売子会社での一般特恵関税還付金6億93百万円を計上しております。

 営業外費用は、前年同期の35億91百万円から10億40百万円(29.0%)増加し、46億32百万円となりました。このうち、売上割引は前年同期の26億41百万円から2億68百万円(10.1%)増加し、29億9百万円、為替差損は前年同期の84百万円から5億14百万円増加の5億98百万円となりました。

 

⑥ 特別損益

特別利益は、前年同期の1億68百万円から、旧店舗や寮施設、遊休地の売却等により88億11百万円増加し、89億79百万円となりました。

特別損失は、前年同期の28億74百万円から、54億35百万円増加し、83億9百万円となりました。このうち、減損損失は今後処分が見込まれる土地等の資産の減損に伴い8億82百万円を計上しております。また、のれん償却額として、67億59百万円を計上しております。これは連結子会社株式の減損処理に伴うのれんの一時償却であり、米国子会社であるLine 6,Inc.及びその子会社に係るのれんに対して44億57百万円、同じく米国子会社であるRevolabs,Inc.及びその子会社に係るのれんの一部に対して23億2百万円をそれぞれ計上しております。

 

⑦ 税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前年同期の285億26百万円から130億52百万円(45.8%)増加し、415億78百万円となりました。売上高税金等調整前当期純利益率は、前年同期の6.6%から2.9ポイント改善し、9.5%となりました。

 

⑧ 法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額

法人税、住民税及び事業税は、税金等調整前当期純利益が増加したことに伴い、前年同期の73億17百万円から22億24百万円(30.4%)増加し、95億41百万円となりました。
 法人税等調整額は、当連結会計年度で発生した固定資産売却益に対して圧縮記帳処理を行い繰延税金負債を計上したこと等により前年同期の△38億96百万円から32億40百万円増加し、△6億56百万円となりました。

 

⑨ 非支配株主に帰属する当期純利益

非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期の1億76百万円から1億17百万円(66.4%)減少し59百万円となりました。

 

⑩ 親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期の249億29百万円から77億4百万円(30.9%)増加し、326億33百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前年同期の128円75銭から168円90銭となりました。

 

⑪ 為替変動とリスクヘッジ

海外連結子会社の売上高は、期中平均レートで換算しております。当連結会計年度の米ドルの期中平均レートは前年同期に対し10円円安の120円となり、前年同期に比べ約91億円の増収影響となりました。また、ユーロの期中平均レートは前年同期に対し6円円高の133円となり、前年同期に比べ約40億円の減収影響となりました。また、カナダドル、豪ドルなど、米ドル、ユーロ以外の通貨は、前年同期に比べ約8億円の減収影響となり、売上高全体では、前年同期に比べ約44億円の増収影響となりました。

 

 また営業利益につきましては、米ドルは充当(マリー)効果により、決済レートの変動による為替影響は概ねヘッジできているものの、海外連結子会社の営業利益の換算等により、約1億円の減益影響となりました。ユーロの決済レートは、前年同期に対し約7円円高の134円となり、約28億円の減益影響となりました。また、他の通貨を含めた全体では前年同期に比べ約17億円の減益影響となりました。

 

 

(3) 財政状態の分析

① 資産

 当連結会計年度末の総資産は、前年同期末の5,300億34百万円から602億89百万円(11.4%)減少し、4,697億45百万円となりました。

 流動資産は、前年同期末に比べ75億3百万円(3.0%)増加し、2,551億35百万円となりました。主として現金及び預金、たな卸資産などが増加したことによります。現金及び預金は、前年同期末に比べ88億65百万円(11.2%)増加の、881億66百万円となりました。受取手形及び売掛金は、音楽教室の運営移管に伴う売掛金の減少等により前年同期末に比べ126億37百万円(20.5%)減少し、490億26百万円となりました。たな卸資産は、前年同期末に比べ40億83百万円(4.7%)増加し、918億66百万円となりました。繰延税金資産は、前年同期末に比べ8億55百万円(10.8%)増加し、88億2百万円となりました。その他の流動資産は、自己株式取得目的の信託金の増加等により前年同期末に比べ62億28百万円(50.7%)増加し、185億21百万円となりました。流動資産と後述の流動負債を比較した流動比率は338%(前年同期末は306%)で、引き続き高い流動性を維持しております。

有形固定資産は前年同期末に比べ88億78百万円(7.8%)減少し、1,042億80百万円となりました。なお、建設仮勘定は、ヤマハ大阪ビルの新築工事の竣工等により25億94百万円(62.7%)減少の15億44百万円となりました。無形固定資産は、前年同期末に比べ100億74百万円(64.4%)減少し、55億60百万円となりました。このうち、のれんは、米国子会社に係るのれんの一時償却を計上したことなどにより97億23百万円(79.8%)減少し、24億56百万円となりました。投資有価証券は、前年同期末に比べ479億25百万円(33.1%)減少し、969億11百万円となりました。主として、保有有価証券の時価が下落したことによります。繰延税金資産は、前年同期末に比べ1億2百万円(5.1%)増加し、21億23百万円となりました。

 

② 負債

負債残高は、前年同期末の1,812億82百万円から154億26百万円(8.5%)減少し、1,658億56百万円となりました。

流動負債は、前年同期末に比べ55億16百万円(6.8%)減少し、754億59百万円となりました。未払金及び未払費用、未払法人税等などは増加しましたが、支払手形及び買掛金、短期借入金などは減少しました。支払手形及び買掛金は前年同期末に比べ38億41百万円(16.6%)減少し、193億53百万円となりました。また、短期借入金は前年同期末に比べ33億38百万円(28.4%)減少し、84億9百万円となりました。未払金及び未払費用は、前年同期末に比べ23億20百万円(6.6%)増加し、372億22百万円となりました。未払法人税等は、前年同期末に比べ1億50百万円(7.0%)増加し、23億7百万円となりました。

固定負債は、前年同期末に比べ99億9百万円(9.9%)減少し、903億96百万円となりました。退職給付に係る負債は増加しましたが、繰延税金負債及び再評価に係る繰延税金負債等が減少しました。繰延税金負債は、保有有価証券の時価下落及び法定実行税率の変更等により前年同期末に比べ146億72百万円(37.2%)減少し、247億50百万円となりました。また、再評価に係る繰延税金負債は、旧店舗の土地売却及び法定実効税率の変更等により前年同期末に比べ12億54百万円(11.3%)減少し、98億78百万円となりました。退職給付に係る負債は、年金資産の運用損及び長期国債金利の低下に伴う割引率の低下等により前年同期末に比べ63億11百万円(19.9%)増加し、380億24百万円となりました。

 

③ 実質有利子負債

 有利子負債である長短借入金が85億10百万円ありますが、現金及び預金が881億66百万円あり、現金及び預金から長短借入金を差し引いたネットでの現金及び預金は796億55百万円となり、前年同期末の674億31百万円に比べ122億23百万円の増加となりました。

 

④ 純資産

 純資産は、前年同期末の3,487億52百万円から448億62百万円(12.9%)減少し、3,038億89百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の増加等により利益剰余金の増加はありましたが、その他有価証券評価差額金の減少、自己株式取得、為替換算調整勘定の変動、退職給付に係る調整累計額の減少、土地再評価差額金の減少などにより、減少となりました。
 利益剰余金は、親会社株主に帰属する当期純利益326億33百万円、配当金の支払額78億41百万円等により、前年同期末に比べ266億13百万円(14.3%)増加し、2,130億50百万円となりました。その他有価証券評価差額金は、保有有価証券の時価下落等により、前年同期末に比べ321億50百万円(36.9%)減少し、550億38百万円となりました。自己株式は、平成28年2月4日取締役会決議に基づく自己株式の取得等により前年同期末に比べ172億34百万円増加し、為替換算調整勘定は前年同期末に比べ104億6百万円マイナス幅が拡大しました。退職給付に係る調整累計額は、年金資産の運用損及び長期国債金利の低下に伴う割引率の低下等により前年同期末に比べ97億8百万円減少し、△113億20百万円となりました。土地再評価差額金は、旧店舗の土地売却等により前年同期末に比べ13億41百万円(7.4%)減少し、167億43百万円となりました。非支配株主持分は、前年同期末に比べ3億21百万円(12.1%)減少し、23億44百万円となりました。
 以上により、自己資本比率は前年同期末の65.3%から64.2%へ1.1ポイント減少し、自己資本利益率(ROE)は、前年同期の8.1%から10.1%へ2.0ポイント上昇しました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は、423億99百万円(前年同期は317億29百万円)となりました。前年同期に対して106億70百万円の増加となりました。

投資活動の結果得られた資金は、5億91百万円(前年同期は117億円の支出)となりました。有形固定資産の売却による収入が128億11百万円あったことによります。

財務活動の結果使用した資金は、303億49百万円の支出(前年同期は59億9百万円の支出)となりました。自己株式取得による支出が増加したことと借入金の返済による支出及び配当金の支払額等の増加により、前年同期に対して244億39百万円支出が増加しました。

以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年同期末に対し88億58百万円増加し、850億18百万円となりました。

 

② 資金需要

当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料、部品等の購入、労務費など製造費用と、商品の仕入、販売費及び一般管理費等、営業費用の運転資金及び設備投資資金、並びにM&Aや資本提携を目的とした投資資金であります。

当社グループにおける当連結会計年度の設備投資額は、前年同期の138億46百万円から26億25百万円(19.0%)減少し、112億20百万円となりました。楽器事業は、前年同期の95億34百万円から28億34百万円(29.7%)減少し、67億円となりました。音響機器事業は、前年同期の28億40百万円から2億61百万円(9.2%)増加し、31億2百万円となりました。また、電子部品事業は、前年同期の6億39百万円から21百万円(3.4%)減少し、6億17百万円となりました。その他の事業は前年同期の8億32百万円から31百万円(3.7%)の減少となり、8億1百万円となりました。

減価償却費は、前年同期の125億97百万円から84百万円(0.7%)増加し、126億81百万円となりました。

研究開発費は、前年同期の254億39百万円から6億46百万円(2.5%)減少し、247億93百万円となりました。売上高研究開発費比率は前年同期の5.9%から0.2ポイント下がり、5.7%となりました。

 

③ 資金調達

運転資金及び設備投資資金について、一部の子会社において借入金により調達しております。借入については通常、会社ごとに現地通貨による短期借入を行っておりますが、借入金額・期間・金利等を勘案し、長期借入を行う場合があります。なお、当社及び国内子会社についてはグループファイナンスを実施しております。