第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、2019年4月からの3年間を対象とした中期経営計画「Make Waves 1.0」を策定しました。2016年に掲げた経営ビジョン“「なくてはならない、個性輝く企業」になる”の実現に向け、この3年間を顧客・社会との繋がりを強化し、価値創造力を高めていくための期間と位置づけ、取り組んでいきます。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

中期経営計画「Make Waves 1.0」の概要

 

1. 経営環境認識 

デジタル化の加速により、産業構造が急激に変化する一方、お客様とのより緊密な繋がりが可能になります。またAIやIoTで利便性が格段に高まると同時に、より精神的な満足や本質が求められる時代になると考えます。サステナビリティへの社会的な意識もより高まります。“技術×感性”を強みとする当社グループにとって、この様な変化はチャンスであると捉えています。

 
2. 経営ビジョン(中長期的に目指す姿)と価値創造ストーリー

「なくてはならない、個性輝く企業」になる

~ ブランド力を一段高め、高収益な企業へ ~

 

社会価値の創造を通じて、企業価値を高め、ビジョンの実現を目指します。
 

3.「Make Waves 1.0」の位置づけと基本戦略

これまでの成果も踏まえ、本中期経営計画を“顧客・社会との繋がりを強化し、価値創造力を高める”3年間と位置づけ、これを基本戦略とします。

 

4.経営目標(2022年3月期)

財務目標(IFRS)

(方針)収益力の強化と成長基盤の強化を両立

事業利益率:

13.8 %

ROE:

11.5 %

EPS:

270 円

 

(想定為替レート:USD 110円 / EUR 125円) 

 

非財務目標

コーポレートブランド価値*

1.3 倍

新興国の器楽教育普及:

100 万人(累計)

認証木材使用率:

50 %

 

*ヤマハ株式会社とヤマハ発動機株式会社の合同ブランド価値 $1.2 billion
 (Interbrand社 Best Japan Brands 2019) 

 

投資と還元

(方針)成長投資と株主還元にバランス良く配分

総還元性向:

50 %(3年累計)

 

 

 

5.4つの重点戦略

 ① 顧客ともっと繋がる

広く、深く、長く、お客様と繋がるため、ブランドプロミスを通じたブランド訴求と、デジタルマーケティングを軸にしたデジタル・リアル両面の顧客接点整備、そして、ライフタイムバリュー向上への貢献に取り組みます。また中国、ASEANをはじめとした新興国では、中間所得層を取り込み、成長を加速させます。音響機器事業、部品・装置事業では成長市場へ事業領域を拡大し成長を図っていきます。

 

 ② 新たな価値を創造する

ヤマハの強みである、“技術×感性”で新たな価値を創造します。世の中の変化や、お客様からのフィードバックに基づき、感性を定量化する技術(感性評価技術)や解析・シミュレーション技術を駆使し、また、アコースティック技術、デジタル技術等、当社が保有する技術を融合させ、ユニークな製品・サービスをお客様に提供していきます。 
 

 ③ 生産性を向上する

付加価値向上と商品価値の訴求強化を通じて価格適正化を進めるとともに、製造コストの持続的な低減を図ります。また経費をゼロベースで見直し、顧客価値向上に資する戦略経費にシフトさせ、収益力の強化を図っていきます。

 

 ④ 事業を通じて社会に貢献する

音楽文化・社会の持続的発展に貢献します。多種多彩な楽器の供給を通じた世界の音楽シーンへの貢献、新興国における器楽教育普及等、音楽文化のサステナビリティへの貢献を拡大する他、製品・サービスを通じた社会課題の解決に取り組みます。また、持続可能な木材利用や環境配慮製品の開発などを通じ、自然との共生を実現していきます。
 

6.事業別戦略

 ① 楽器事業

新興国を中心とした販売拡大と付加価値向上により収益力の強化を進めます。頂点戦略の推進や中高級価格帯の拡売、併せてライフタイムバリュー向上と音楽普及活動への取り組みを通じた需要創出を進めていきます。
 

 ② 音響機器事業

B2B事業では、デジタルミキサーの強みを活かしながら、トータルソリューションのさらなる強化に取り組む他、施主等、上流工程の顧客へのダイレクトアプローチを強化します。B2C事業であるAV機器では、顧客のライフスタイル変化に適合したポートフォリオへの転換を進めます。

 

 ③ その他の事業

「音響×音声×騒音制御」の技術で、車室内の多様な音の課題を解決し、市場でのポジションを確立していきます。
 

7.投資と株主還元

創出したキャッシュを通常投資、戦略投資(新製造拠点への追加投資、R&D拠点、M&A他)と株主還元にバランス良く配分します。

株主還元については、継続的かつ安定的な配当を基本としますが、将来の成長投資のための適正な内部留保とのバランスを考慮しながら、資本効率の向上を目的とした機動的な株主還元も適宜、実施してまいります。3年累計で総還元性向50%を目標とします。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 事業を取り巻く経済状況

 当社グループは、世界の各地域に製造・販売拠点を置き、グローバルな事業展開を行っております。連結子会社59社のうち44社が海外法人であり、そのうちの23社が製造・制作会社等で、主要製造拠点は中国、インドネシア、マレーシアに集中しております。また、海外売上高は売上高の70.4%を占めております。そのため、世界各国の経済状況や市場環境の影響を受けます。世界の市場における景気後退、これに伴う需要の減少は、当社グループの収益と事業展開に影響を与える可能性があります。

 日本においては、当社グループの基幹事業である楽器事業で、子供を中心とする音楽教室や英語教室を展開しているほか、学校を通じた販売も重要な販売経路となっており、今後少子化の進行により、売上高の減少を招く可能性があります。

 

2 価格競争

 当社グループは、事業を展開するそれぞれの分野で厳しい競争にさらされております。例えば楽器事業では、総合楽器メーカーとして高品質、高性能な製品を広い価格帯で販売しておりますが、個々の製品分野ごとに競合他社が存在しており、特に近年は、普及価格帯製品における競争が激化しております。

 また、音響機器事業では、競合他社との低価格化競争にさらされており、今後の流通変革、新技術開発の動向によっては、低価格化競争がさらに激化する恐れもあり、当社グループの現在の優位性が影響を受ける可能性があります。

 

3 法律・規制の影響

当社グループの事業は、全世界の拠点において、それぞれの国における法律の適用を受け様々な規制の対象となっております。例えば、対外的投資、国家安全保障上の輸出入制限、通商規制、独占禁止規制、消費者保護、環境保護他の規制の適用を受けております。当社グループは、コンプライアンスの実践に尽力しておりますが、予期せずこれらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの企業活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。

 また、国内外における予期せぬ法律や政策、規制の変更などにより、当社グループの事業活動が大きな変更を余儀なくされ、その結果、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 為替レートの変動

 当社グループは、全世界において製造・販売等の企業活動を行っておりますが、グループ各社における外貨建取引は為替レートの変動の影響を受けます。外貨建取引については、短期的な為替変動の影響を最小限に止めるため先物為替予約取引等を行っておりますが、為替変動により当初の事業計画を達成できない可能性があります。特に損益については、影響が大きいユーロ・円レートにおいて、1円変動すると約4.5億円の損益影響をもたらします。

 

5 事業投資

 当社グループは事業の拡大のため、設備投資や戦略投資等の事業投資を行っております。投資決定にあたっては、投資効果とリスクを定性的かつ定量的に把握し、慎重に判断しておりますが、状況によっては、一部または全部の投資額を回収できない、または撤退の場合に追加損失が発生するリスクを負っております。このような場合、当該投資を行った投資が減損の対象となる可能性もあります。

 

 

6 人材の確保・育成

 当社グループは、高い専門性を備えた人材の採用、育成および配置が重要な経営課題の一つであると認識し、事業の維持・成長を達成するため、計画的な人材の確保や育成、配置に努めています。しかしながら、必要な人材を採用、育成できず、また重要な人材の流出等により十分な人材を維持・確保できない場合には、当社グループの将来の成長が阻害される可能性があります。

 

 7 人件費の上昇

 当社グループの主要製造拠点は中国、インドネシア、マレーシアに集中しております。これらの国々での人件費の上昇が製造原価を増加させることがあります。

 

 8 ストライキ等の労働争議

  当社グループは、円滑な労使関係の構築に努めておりますが、労使の交渉が不調に終わり、長期間に及ぶストライキが発生した場合、事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

9 税制の影響

 当社グループは、全世界で事業展開しておりますが、各国における租税制度の改正、税務行政の変更や税務申告における税務当局との見解の相違により、当社グループに予想以上の税負担が生じる可能性があります。

 

10 サイバー攻撃

 当社グループの事業活動においては、情報システムの利用とその重要性が増大しています。サイバー攻撃やコンピュータウィルスへの感染などにより情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

11 政治・経済の混乱、テロ、戦争

  政治・経済の混乱、テロ、戦争が発生した場合、当社グループの操業が遅延または中断する可能性があります。さらに、当社グループの製造拠点等が直接の損害を受けた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業を展開する各国の政情不安や港湾スト等の物流障害により製品の供給に影響を受ける可能性があります。

 

12 地震等自然災害による影響

 地震等の自然災害の発生により、当社グループの製造拠点等が損害を受ける可能性があります。特に当社の本社及び国内工場が集中している静岡県内においては、東海地震の発生が予想されております。また、製造拠点が集中する中国、インドネシアやマレーシアにおいても、予期せぬ自然災害が発生する恐れがあります。このような事象が発生した場合には、施設面での損害のほか、操業の中断や遅延、多額の復旧費用の発生などが予想されます。加えて、原材料・部品供給業者の被災状況によっては、製造に影響を受ける可能性があります。また、物流網の途絶により製品の供給に影響を受ける可能性があります。

 

13 他社との提携の成否

 当社グループにおいて、他社との業務提携、出資、合弁会社の設立など、近年、他社とのパートナーシップ戦略の重要性が増しております。これらの業務提携、出資等は、相手先との利害の対立や相手先の事業戦略の変更等により、当初期待した効果が得られない場合があります。

 

 

14 製品・サービスの欠陥

 当社グループの製品は、当社が定めたグループ品質管理規程及び製品品質規程によって管理されております。しかしながら、製品の全てについて欠陥が無いという保証はありません。製造物責任賠償及び一部製品の製品瑕疵に起因して被る損害については保険に加入しておりますが、この保険で損害賠償額を充分にカバーできるという保証はありません。製造物責任を伴う事故や大口のリコール等の発生があると保険料率の上昇が予想されます。また、設計変更などによる多額のコスト増大、当社グループの社会的評価の低下とそれによる売上高の減少が予想されることから、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが営む小売店舗、音楽教室、リゾート施設等における安全・衛生については十分注意を払っておりますが、万一事故が発生した場合、店舗・教室・施設等の一時休業や社会的評価の低下とそれによる売上高の減少が予想されます。

 

15 新技術開発

 当社グループは楽器・音響機器に関わる事業領域をコアとし、楽器事業では世界一の総合楽器メーカーとしての地位を不動のものとする一方、音響機器事業では、オーディオと業務用音響機器を中心として事業を展開しております。その他の事業では、車載、アミューズメント機器、産業機器などの領域で事業を展開しております。

 音・音楽・ネットワーク・デバイス関連技術の差別化を図ることが、当社グループの発展、成長に不可欠な要素となっております。これらの技術開発が、将来の市場ニーズを正しく予想し、的確に行われない場合、楽器事業では、製品付加価値の低下、価格競争に陥る恐れ、新規需要喚起ができないなどの問題が生じ、音響機器事業、その他の事業では事業そのものの存続が困難となる可能性があります。

 

16 部材・部品事業における取引先への依存

 当社グループが製造・販売する半導体、自動車用内装部品、部材・部品は、供給先メーカーの業績の影響を受けます。また、供給先メーカーとの間で、納期・品質等で信頼関係が損なわれた場合、その後の受注に悪影響を及ぼす可能性があります。また、品質等の欠陥によって、供給先メーカーから補償を求められる可能性があります。

 

17 情報漏洩のリスク

 当社グループは、様々な経営及び事業に関する重要情報や、多数の顧客情報等の個人情報を保有しております。重要情報等の管理につきましては、方針や規程を策定し、情報セキュリティのための体制を整備しておりますが、万一これらの情報が誤って外部に漏洩した場合には、当社の事業に重大な影響を与え、あるいは社会的信用を低下させる可能性があります。

 

18 知的財産権の保護と利用

 当社グループは、独自技術についての特許等の知的財産権、業務遂行上取得したノウハウを保有しておりますが、その一部は、特定地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、または限定的にしか保護されない状況にあります。第三者が当社グループの知的財産権を利用することを、効果的に防止できない可能性があります。その結果、当該第三者の製造した類似品、模倣品が市場に出回ることにより当社グループ製品の販売に支障をきたす可能性があります。また、当社グループの製品が第三者から第三者の知的財産権を侵害しているとされる場合があり、その結果、これを利用した当社グループ製品の販売が遅れることにより、販売できなくなる可能性があります。

 当社グループは、製品の重要な部分のいくつかについて第三者から知的財産権のライセンスを受けております。ロイヤリティの上昇は、製造コストの増大を招き価格競争力に影響が出るほか、ライセンスを受けられなくなった場合、当該製品の製造ができなくなる可能性があります。

 

 

19 原材料価格の高騰、原材料の供給、物流コストの増加

 当社グループは製品の製造にあたり、木材、銅等の金属材料、樹脂等を部品として使用しておりますが、これらの材料価格の高騰が製造原価を増加させることがあります。また、材料の種類によっては、特定の業者より供給を受けているものもあり、供給状況によっては、製造に影響を受けることがあります。

  また、原油価格の高騰等により物流コストが増加すると、製造原価及び販売における売上原価を増加させる原因となることがあります。

 

20 環境保護規制

 事業活動に対する環境保護規制は強化の方向にあり、企業の社会的責任の一つとして自主的な環境活動プログラムの実施が求められております。当社グループは、製品、梱包材、省エネルギー、産業廃棄物処理などについて環境基準を上回る対策の実施に努めておりますが、事故などの発生により制限物質が環境基準を超えることを完全に防止または軽減できる保証はありません。また、工場跡地等で、制限物質により土壌が汚染されている場合には、将来、売却しようとする際、多額の浄化費用が発生する、あるいは売却できない可能性があります。第三者に売却済みの土地から将来制限物質が拡散し、大気、地下水を汚染し、その対策費が発生する可能性があります。

 

21 財政状態等の変動に係る事項

 ① 投資有価証券の評価

 当社グループは、時価のあるその他有価証券(当連結会計年度末の取得原価135億円、連結貸借対照表計上額909億円)を保有しております。時価のあるその他有価証券は決算日の市場価格等に基づき、再評価を行うため、決算日の株価等によって貸借対照表計上額が変動し、その結果、純資産金額が変動する可能性があります。また、時価が取得価額に比べ著しく下落した場合には減損の対象となる可能性があります。

 

 ② 土地の含み損

 土地の再評価に関する法律に基づき再評価を行った土地の当連結会計年度末における時価と再評価後の帳簿価額との差異は8億円であり、保有する土地に含み損が発生しております。土地の売却等の場合には、この含み損が実現する可能性があります。

 

 ③ 退職給付債務及び退職給付費用

 当社グループの退職給付債務及び費用は、採用する退職給付制度及び割引率や長期期待運用収益率等の見積りに基づいて算出されております。退職給付制度は変更される場合があり、また見積りは決算期毎の結果と相違することがあります。結果として、退職給付債務及び費用が増加する可能性があります。

 

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針選択の判断と適用を前提とし、決算においては資産・負債の残高、報告期間における収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。このような見積りについて経営者は、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるためこれらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの採用している重要な会計方針のなかで、経営者の見積りが大きな影響を与える事項は次のとおりです。

 

① 貸倒引当金算定における見積り

一般債権についての引当金算定における貸倒実績率と、貸倒懸念債権等特定の債権についての個別の回収不能見込額について、見積りを行っております。

 

② たな卸資産評価における見積り

たな卸資産評価において、総平均法単価等と比較すべき時価の一部の算定について、見積りを行っております。

 

③ 固定資産の減損会計における見積り

減損損失の認識及び回収可能価額の算定に際し、将来キャッシュ・フロー及び割引率について見積りを行っております。

 

④ 時価のあるその他有価証券の減損処理における見積り

「著しく下落した」と判断し減損対象として候補にあがった銘柄についての回復可能性について、判定を行っております。

 

⑤ 繰延税金資産算定における見積り

繰延税金資産の回収可能性評価のために、将来の合理的な課税所得を算定するうえで、見積りを行っております。

 

⑥ 製品保証引当金算定における見積り

製品販売後に発生する補修費用の算定における、売上高もしくは販売台数に対する経験率による見積り及び個別見積りを行っております。

 

⑦ 退職給付に係る負債算定における見積り

退職給付に係る負債算定の前提になる退職給付債務について、見積りを行っております。

 

 

(2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

① 経営成績

当連結会計年度における経営環境を振り返りますと、世界経済全体としては、緩やかな成長が続いたものの米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題等により先行きの不透明感が高まりました。個別の国や地域においては、米国は好調さを維持しましたが、欧州では景気が減速しました。また中国では経済成長の拡大は続いたものの、そのペースが鈍化しました。一方国内では個人消費の緩やかな回復が続きました。

このような環境の中で当社グループは、中期経営計画「NEXT STAGE 12」の最終年度として、重点施策である「個性際立つ商品の開発」、「お客様の拡大」、「持続的なコスト低減」、「グローバル事業運営の基盤強化」に引き続き取り組みました。

「個性際立つ商品の開発」につきましては、事業毎に分散していた技術者を、新たに稼働を始めたイノベーションセンターに集結させることで技術の融合を図り、新たな価値の創造に努めました。楽器事業では、ハイブリッドピアノ「AvantGrand」やトランスアコースティックギターの新モデル、音響機器事業では、アナログとデジタルの特長を生かしたネットワークターンテーブルや、クリアな音声での遠隔コミュニケーションを可能にするユニファイドコミュニケーションスピーカーフォンなど、ヤマハならではのユニークな商品を発売いたしました。

「お客様の拡大」につきましては、楽器事業では、新興国を中心に販売網や音楽教室の整備を進め、顧客接点の拡大を図りました。また、新興国での音楽教育支援活動による器楽教育の導入が順調に進み、生徒数が累計26万人となるまで展開が進みました。音響機器事業では、社内人員体制を強化するとともに、協業パートナーである音響設備事業者数を大幅に増やし、新たな顧客の開拓に努めました。

「持続的なコスト低減」につきましては、電子部品等の調達価格上昇によるコストアップをカバーしきれず、低減目標には届きませんでしたが、生産工程の再配置、間接業務の生産性向上などの施策を進めました。なお、インドの新工場は計画に沿って建設が進み、インド市場向けのポータブルキーボードの生産を開始しました。

「グローバル事業運営の基盤強化」につきましては、グローバル人材マネジメントの枠組み整備を進めたほか、ITグローバル3極体制の確立、グローバル物流システムの最適化への取組等を進めました。また、2019年4月1日からの国際財務報告基準(IFRS)への移行準備が整いました。

 

当連結会計年度を最終年度とした中期経営計画「NEXT STAGE 12」において経営目標として掲げた「営業利益率12%」「ROE 10%水準」「EPS 200円水準」はいずれも達成しました。

 

(イ)セグメントごとの売上高の状況

当連結会計年度の売上高は、楽器事業が好調に推移したことから、前年同期に対し44億49百万円(1.0%)増加の4,374億16百万円となりました。

   

 楽器事業の売上高は、前年同期に対し75億6百万円(2.7%)増加の2,819億93百万円となりました。

 商品別では、ピアノ、電子楽器、管楽器、弦打楽器の全商品カテゴリーで前年同期を上回りました。ピアノは普及帯の高い伸長に加え、高価格帯も堅調に推移し、デジタルピアノはエントリーモデルが牽引し好調でした。管楽器も堅調に推移し、ギターは中国、北米でアコースティック中級帯が伸長しました。

 地域別では、中国は全商品カテゴリーで2桁成長しました。ピアノは高価格帯が減速したものの普及帯が大きく伸張しました。ギターは中級帯が堅調に推移しました。北米は全商品カテゴリーで前年を上回り好調に推移しました。デジタルピアノ、ギターが2桁成長となり、ピアノ、管楽器も好調に推移しました。また新興国市場でも前年同期を上回りました。

 

 音響機器事業の売上高は、前年同期に対し、10億78百万円(0.9%)減少の1,207億10百万円となりました。

 商品別では、業務用音響機器は前年同期を上回ったものの、オーディオ、ICT(情報通信)機器では前年同期を下回りました。

 オーディオは、市場の需要変化対応に遅れたこともあり、北米等で売上高が減少しました。業務用音響機器は、設備音響機器の販売、国内の音響工事共に堅調に推移し、全地域で前年同期を上回りました。また、ICT(情報通信)機器は、ネットワーク機器の販売は堅調に推移しましたが、OEMの減少により、前年同期を下回りました。

 

その他の事業の売上高は、前年同期に対し19億78百万円(5.4%)減少の347億13百万円となりました。

 部品・装置事業は電子デバイスがアミューズメント向け、中国向けの減速により前年同期を下回りました。FA機器はプレシジョンマシン、リークテスターが伸張しました。

 

(ロ)売上原価と販売費及び一般管理費

売上原価は、前年同期に比べ31億74百万円(1.2%)減少し、2,552億91百万円となりました。売上原価率は、前年同期から1.3ポイント改善し58.4%となりました。

売上総利益は前年同期に比べ76億23百万円(4.4%)増加し、1,821億24百万円となりました。売上総利益率は、前年同期から1.3ポイント上昇し41.6%となりました。

また、販売費及び一般管理費は、前年同期に比べ4億26百万円(0.3%)増加し、1,260億94百万円となりました。売上高販売管理費比率は、前年同期から0.2ポイント改善し28.8%となりました。

 

(ハ)営業利益

営業利益は、前年同期に対し71億97百万円(14.7%)増加の560億30百万円となりました。7期連続の増益となり、過去最高益を更新しました。
 報告セグメントごとの営業利益では、楽器事業は、前年同期の346億44百万円から83億1百万円(24.0%)増加の429億45百万円となりました。音響機器事業は、前年同期の107億15百万円から97百万円(0.9%)減少の106億18百万円となりました。その他の事業は、前年同期の34億73百万円から、10億7百万円(29.0%)減少の24億66百万円となりました。
 要因別には、販売管理費の増加(27億円)、海外生産拠点の労務費上昇等による製造コストアップ(11億円)等の減益影響がありましたが、増収増産による増益(95億円)、コストダウン(11億円)、為替影響(4億円)等により、前年同期に比べ増益となりました。

 

(ニ)営業外損益

営業外収益は、前年同期の56億76百万円から10億65百万円(18.8%)増加の67億42百万円となりました。このうち、補助金収入は前年同期の1億89百万円から11億7百万円(585.9%)増加し、12億96百万円となりました。

営業外費用は、前年同期の52億76百万円から9億26百万円(17.6%)減少し、43億49百万円となりました。このうち、売上割引は前年同期の29億3百万円から3億36百万円(11.6%)増加し、32億40百万円、為替差損は前年同期の13億1百万円から11億59百万円(89.1%)減少の1億41百万円となりました。

 

(ホ)特別損益

特別利益は、前年同期にヤマハ発動機株式会社株式の一部売却による投資有価証券売却益258億円を計上したことから、前年同期の259億49百万円から229億7百万円(88.3%)減少し、30億42百万円となりました。

特別損失は、7億12百万円から、2億68百万円(37.7%)増加し、9億80百万円となりました。

 

 

(ヘ)税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前年同期の744億71百万円から139億86百万円(18.8%)減少し604億85百万円となりました。売上高税金等調整前当期純利益率は、前年同期の17.2%から3.4ポイント下がり、13.8%となりました。

 

(ト)法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額

法人税、住民税及び事業税は、前年同期の213億77百万円から68億15百万円(31.9%)減少し、145億61百万円となりました。
 法人税等調整額は、前年同期の△13億30百万円から34億35百万円増加し、21億5百万円となりました。

 

(チ)非支配株主に帰属する当期純利益

非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期の46百万円から17百万円(37.7%)増加し63百万円となりました。

 

(リ)親会社株主に帰属する当期純利益

 以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期の543億78百万円から106億24百万円(19.5%)減少の437億53百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前年同期の291円81銭から240円94銭となりました。

 

(ヌ)為替変動とリスクヘッジ

海外連結子会社の売上高は、期中平均レートで換算しております。当連結会計年度の米ドルの期中平均レートは前年同期と同水準の111円となり、前年同期に対し約1億円の増収影響となりました。また、ユーロの期中平均レートは前年同期に対し約2円円高の128円となり、前年同期に対し約7億円の減収影響となりました。また、人民元、イギリスポンドなど、米ドル、ユーロ以外の通貨は、前年同期に対し約34億円の減収影響となり、売上高全体では、前年同期に対し約40億円の減収影響となりました。

また、営業利益につきましては、米ドルは充当(マリー)効果により、決済レートの変動による為替影響は概ねヘッジできているものの、海外連結子会社の営業利益の換算等により、約1億円の減益影響となりました。ユーロの決済レートは、前年同期に対し約5円円安の131円となり、約20億円の増益影響となりました。また、他の通貨を含めた全体では前年同期に対し約1億円の増益影響となりました。 

 

 

(ル)生産、受注及び販売の状況

(a) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

楽器

210,646

109.1

音響機器

117,679

109.1

その他

30,237

87.9

合計

358,563

106.9

 

(注) 1 金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(b) 受注実績

当社グループは、製品の性質上、原則として見込生産を行っております。

 

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

楽器

281,993

102.7

音響機器

120,710

99.1

その他

34,713

94.6

合計

437,416

101.0

 

(注) 1 金額は外部顧客に対する売上高であります。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

② 財政状態

 当連結会計年度末の総資産は、前年同期末の5,523億9百万円から375億46百万円(6.8%)減少し、5,147億62百万円となりました。

  負債は、前年同期末の1,639億63百万円から319億73百万円(19.5%)減少し、1,319億90百万円となりました。

 純資産は、前年同期末の3,883億45百万円から55億73百万円(1.4%)減少し、3,827億71百万円となりました。当連結会計年度において株主還元として上限200億円の自己株式取得を決議し、119億33百万円の取得を行いました。

 

 ③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期に比べ215億87百万円減少(前年同期は167億33百万円増加)し、期末残高は958億15百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、主として税金等調整前当期純利益により、302億34百万円(前年同期に得られた資金は474億98百万円)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、主として有形及び無形固定資産の取得による支出により、230億92百万円(前年同期に得られた資金は47億66百万円)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、自己株式の取得による支出、配当金の支払額等により、284億79百万円(前年同期に使用した資金は355億84百万円)となりました。

 

(イ)資金需要

当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料、部品等の購入、労務費など製造費用と、商品の仕入、販売費及び一般管理費等、営業費用の運転資金及び設備投資資金、並びにM&Aや資本提携を目的とした投資資金であります。

当連結会計年度の設備投資額は、前年同期の246億円から86億44百万円(35.1%)減少し、159億56百万円となりました。海外新工場建設(インド・インドネシア)、新製品生産、設備の更新改修を中心に減価償却費(108億35百万円)を超える設備投資を行っております。

研究開発費は、前年同期の247億97百万円から1億29百万円(0.5%)増加し、249億26百万円となりました。売上高研究開発費比率は前年同期と同水準の5.7%となりました。

 

(ロ)資金調達

運転資金及び設備投資資金について、一部の子会社において借入金により調達しております。借入については通常、会社ごとに現地通貨による短期借入を行っておりますが、借入金額・期間・金利等を勘案し、長期借入を行う場合があります。なお、当社及び国内子会社についてはグループファイナンスを実施しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループは、「感動を・ともに・創る / 私たちは、音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます」を企業理念に掲げています。これを支えるために、これまでに蓄積してきた「音と人が関わる技術」をコア技術と定め、更なる高度化と拡張のための研究開発を進めております。取り組んでいる研究開発の領域は、素材・解析、センシング、メカトロニクス、音源、信号処理、ネットワーク、感性評価等、音そのものに留まらず、基礎から応用まで、音の活用を支える技術分野に大きく広がっています。

  当連結会計年度は、「音・音楽・ネットワーク・デバイス」を強化分野とし、特に「良い音」を科学的に理解し、実際の楽器・音響機器設計に適用できるよう研究開発を進めました。また、物理モデル、音楽解析、歌唱合成などの技術の高度化と、ネットワーク時代に対応した高音質の伝送技術や無線接続に関連する技術開発も進めています。

 当社グループの研究開発体制は、楽器事業については当社楽器事業本部、及びYamaha Guitar Group, Inc.の開発部門、音響機器事業については当社音響事業本部、NEXO S.A.、Steinberg Media Technologies GmbH、Yamaha Unified Communications, Inc.の開発部門、その他の事業については当社電子デバイス事業部、ゴルフHS事業推進部及びヤマハファインテック株式会社の開発部門、全社横断的R&Dについては当社技術本部研究開発統括部が担う形で構成しております。

  当連結会計年度における主な成果をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は24,926百万円であります。

 

1 楽器事業

 アコースティック楽器関連では、「トランスアコースティックピアノ TA2」と「サイレントピアノ SH2、SC2」を開発しました。音質面では、ベーゼンドルファー「インペリアル」をサンプリングした音源を新たに搭載したほか、ヘッドフォン使用時でも自然な演奏体験を実現する音響技術「バーチャル・レゾナンス・モデリング(VRM)」を採用したことで、さらに豊かな音と響きでの演奏が可能となりました。また「TA2」では、トランスデューサーを軽量化し、従来モデルよりクリアな高音の響きを実現しています。機能面では、一部のモデルでBLUETOOTHオーディオ接続に対応しました。当社が開発した無料アプリ「スマートピアニスト」との連携により、音色の切り替えや録音などの各種機能をスマートデバイス上で簡単に操作できます。また、管楽器の新製品として、軽やかな吹奏感と柔らかく太い音色を実現したカスタムテナーバストロンボーン「YSL-823G」を開発しました。カスタムモデルながら二枚取りゴールドブラス製薄肉ベルを搭載するなど、非常に軽量化された作りとなっています。その結果、楽器の反応性が向上し明瞭な発音性を実現しています。また、シンプルであたたかみを感じさせるデザインの大人向けピアニカ「P-37E」を開発しました。現行の同音域ピアニカ「P-37D」の機構をベースとしながら、「P-37E」は、レスポンスの良さ、強弱のコントロールのしやすさはそのままに、倍音のバランスを整えることでまろやかで芯のあるメロウな音色となっています。なお、2017年発売のカジュアル管楽器「Venova」は、「2017年度グッドデザイン大賞」に続き、「アジアデザイン賞2018」の上位賞である「Grand Award with Special Mention」、ドイツのデザイン賞「German Design Award 2019」を受賞し、「Winner」に選出されました。また、「トランスアコースティックピアノ TA2」は、「2018年度グッドデザイン賞」を受賞しました。

 ギター・ドラム関連では、「トランスアコースティック」技術搭載ギターの新モデルとして、「CG-TA」「CSF-TA」を開発しました。微妙なタッチや、音のニュアンス、強弱の差によって多彩な音色を表現するナイロン弦の魅力を、トランスアコースティック機能が一層引き立て、普段はスチール弦を弾いている方々にも、サウンドバリエーションを拡げる1本としてご愛用いただけるモデルです。また、エレキギター「PACIFICAシリーズ」の上位モデルとして、市場ニーズの高いピックアップコンフィグレーションモデル「PACIFICA612VⅡFM」を開発しました。本製品は、フロントとセンターにシングルコイルを、リアにハムバッキングのピックアップを搭載した「PACIFICAシリーズ」のフラッグシップモデルです。また、シェル材にメイプルを採用し明るく華やかな広がりのある音質と表現力豊かなサウンドを実現したドラムス「ツアーカスタム」を開発しました。新たに開発したインバースダイナフープによりナチュラルな倍音をコントロールすることで、シェル素材が持つ本来のサウンドキャラクターをより引き出します。また、アンプモデラー/プロファイラー使用ギタリスト向けのLine 6ブランドのアクティブ・ギタースピーカー・システム「Powercab 112シリーズ」を開発しました。ギター用スピーカーの迫力とダイナミックなレスポンスを、PA用スピーカーに匹敵するワイドなレンジで実現しました。

 電子楽器関連では、プレーヤーの最高のパフォーマンスを引き出す次世代ステージピアノ「CP88」「CP73」を開発しました。アコースティックピアノの音色には、コンサートグランドピアノ「CFX」からサンプリングしたものに加え、ベーゼンドルファー「インペリアル」、使い込まれたアップライトピアノのサウンドが特長の「U1」などの音色も搭載しており、演奏する音楽ジャンルや用途に応じて使い分けることができます。さらに、数々の名曲で使われてきた「CP80」をはじめ、1970年代からシーンを彩ってきた数々のビンテージエレクトリックピアノの音色を搭載しています。機能面では、新たに開発したステージ演奏に求められるあらゆる操作をシンプルに実現できるユーザーインターフェースを採用しています。また、若者に新たな楽器の楽しみ方を提案する新ブランド「sonogenic」の製品として、ショルダースタイルの電子キーボード「SHS-500」を開発しました。鍵盤楽器を演奏したことがない方でもすぐに楽しさを実感できる、コンパクトなショルダーキーボードです。無料アプリ「Chord Tracker」と連動させて使用する「JAM機能」を使うと、スマートデバイスに保存している楽曲のコード進行にマッチする音が自動的に鍵盤に割り当てられ、お気に入りの曲と自由にセッションを楽しむことができます。また、歌詞とメロディーを入力するだけでバーチャルシンガーによる歌声制作が楽しめるソフトウェア「VOCALOID」の新バージョンである「VOCALOID5」を開発しました。4年ぶりの新バージョンとなった本製品では、さらに多くのクリエイターにバーチャルシンガーによる音楽を取り入れていただきたいという思いから、歌詞とメロディーをゼロから創作する従来の制作フローに加えて、大量に用意されたプリセットフレーズやオーディオをドラッグ&ドロップするだけで歌のベースが出来上がる新しい製作フローを採用しました。歌唱表現の調整も、分かりやすくビジュアル化されたアイコンを選択するだけで、より素早くダイレクトにクリエイターの感性を反映出来るようになりました。なお、デジタルワークステーション「Genos」が「Red Dotデザイン賞 プロダクトデザイン2018」を、電子ピアノ 「クラビノーバ CSPシリーズ」が「Red Dotデザイン賞 プロダクトデザイン2019」を、ボーカロイドキーボード「VKB-100」、電子ピアノ「P-121」「P-125」「P-515」が「2018年度グッドデザイン賞」を受賞しました。また、ボーカロイドキーボード「VKB-100」は、グッドデザイン大賞や特別賞の候補で、特に優れたデザインに与えられる「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。

楽器事業の研究開発費は9,415百万円であります。

 

2 音響機器事業

 オーディオ関連では、ヤマハのオーディオ技術を集大成した「C-5000」、及び「M-5000」を開発しました。「C-5000」「M-5000」は、楽器製造からコンサートホールの設計まで、さまざまな分野で音と音楽に深く関わってきた総合力を背景に、当社がこれまで蓄積してきた独自のオーディオ技術を集大成したフラッグシップHiFiセパレートアンプです。フォノ端子を含む全音声入力からスピーカー出力までの全段完全バランス伝送をはじめ、パラレルMOS-FET出力段を装備したフローティング&バランス・パワーアンプ、すべてのオーディオ回路をチャンネルごとにワンボード化して背中合わせに配置し、信号経路を最短化するブックマッチ・コンストラクションなど、最新の開発成果と独創的なノウハウを結集しました。また、ホームシアター再生の理想を追求したフラッグシップモデル「AVENTAGEセパレートシリーズ」として、「CX-A5200」、及び「MX-A5200」を開発しました。「CX-A5200」は、最適な音場効果をリアルタイムに創出する革新的サラウンド体験「SURROUND:AI」や最新の高性能D/Aコンバーターの搭載など、パフォーマンスと使用感覚の両面を最新の技術・デバイスによってアップデートしました。「MX-A5200」は、多彩なスピーカーアサインを可能にするチャンネルセレクターに加えて、新たにBRIDGE出力モードも装備するなど、システム構成の自由度をいっそう高めました。また、アナログとデジタルの融合で、新しい音楽スタイルを提案するネットワークターンテーブル「MusicCast VINYL 500」を開発しました。高剛性キャビネットに加え、駆動方式には高い回転安定性を実現するベルトドライブ方式を採用し、さらに剛性に優れたストレートトーンアームを採用するなど、高品位な音でレコード再生が楽しめる優れた基本性能を搭載しました。さらに、ヤマハ独自のワイヤレスネットワーク機能「MusicCast」に対応し、レコードの音を他の「MusicCast」対応機器にワイヤレスで飛ばして再生したり、アナログとデジタルの融合により、新しい音楽ライフを提案するターンテーブルです。また、「MusicCast」に対応した機器において、Amazonが提供するクラウドベースの音声サービス「Amazon Alexa」に対応し、快適な音声操作を実現するための「MusicCastスマートホーム」スキルを開発しました。Amazonが販売するスマートスピーカー「Amazon Echo」に搭載された音声サービス「Alexa」を使用し、「MusicCast」対応機器の音声操作を実現するためのインターフェースです。電源のオン/オフ、音量調整などの基本動作を、シンプルかつ直感的な言葉で「Alexa」に対し話しかけるだけで「MusicCast」対応機器を操作することが可能になります。なお、プレミアムブックシェルフスピーカー「NS-5000」、ワイヤレスストリーミングプリアンプ「WXC-50」が、ドイツのデザイン賞「German Design Award 2019」を受賞し、ともに優秀な作品に贈られる「Winner」に選出されました。

  業務用音響機器関連では、スピーカーシステム「VXLシリーズ」を開発しました。「VXLシリーズ」は、会議室やホテルの宴会場などにおいて、明瞭な拡声・音楽再生を実現するラインアレイ形式のスピーカーです。ドライバーにネオジム磁石を贅沢に使用した3.75cmフルレンジユニットを採用し、幅54mmのスリムな形状を実現することで、音声明瞭度が求められながらも設置スペースに制限の多い、オフィス内の会議室やプレゼンテーションルーム、ホテルの宴会場などへ導入しやすくなっています。また、高度な信号処理能力と大出力アンプを、コンパクトなサイズで実現したNEXO社のパワードデジタルTDコントローラー「NXAMPmk2」を開発しました。音声信号の入出力部は、32bit/96kHz対応のA/D・D/Aコンバーターを採用し、幅広い帯域で高品位なサウンドを実現しています。プロセッシング部には、高い信号処理能力を持ったDSPを搭載し、NEXO社スピーカー全モデルに対応するとともに、アンプ出力の電圧・電流などを監視し、システム全体を安全に駆動しながらスピーカーの能力を最大限まで引き出します。さらに、パワーアンプ部は、最新のClass Dアンプを採用し、2U(高さ8.8センチ)とコンパクトな筐体サイズでありながら、高い出力が可能です。また、プロの音楽制作環境にも対応する音質と機能を備えたフラッグシップモデル、スタインバーグオーディオインターフェース「AXR4T」を開発しました。最大32bit/384kHz録音再生可能なA/D・D/Aコンバーターや4基のフロントハイブリットマイクプリアンプ、レイテンシーフリーのシステムを構築する28×24マトリクスミキサーを搭載しています。また、使いやすさを重視し、クリエイティブで快適な音楽制作環境を実現したスタインバーグソフトウェア「Cubase 10」を開発しました。1989年に「Cubase」を発売して以来スタインバーグ社が培ってきた技術を集結し、より強力なDAWソフトウェアとして進化しました。本製品では、ワークフローの改善、エフェクトの追加、プラグインの再設計、ユーザビリティの向上などを実現しています。
 情報通信機器関連では、DanteネットワークとPoEシステムをサポートしたL2スイッチ「SWR2311P-10G」を開発しました。Audinate社が開発し世界的に活用されているデジタルオーディオネットワーク規格「Dante」に対応し、設定・監視・管理・運用を簡単に行え、より安定したネットワークの構築を実現します。また、時間や場所にとらわれない快適な遠隔コミュニケーションをポータブルサイズで実現するユニファイドコミュニケーションスピーカーフォン「YVC-200」を開発しました。マイク、スピーカーに加え音声信号処理を内蔵し、遠隔会議が利用可能なパソコンやスマートフォン、タブレットに接続するだけで、すぐに打ち合わせたいタイミングからアイディアを生み出すためのディスカッションまで、まるで同僚とオフィスで会話しているようなクリアで快適な会話を実現します。

音響機器事業の研究開発費は11,127百万円であります。

 

3 その他の事業

  電子デバイス事業関連では、ロシアや欧州で義務化された緊急通報システムの自動車への搭載に対応した車載通話モジュールを開発しました。これまで培ってきた信号処理技術を活用する事で、緊急時に求められるクリアな通話品質を実現しています。

 ゴルフ事業関連では、ボール初速のアップによる、さらなる飛びに加え、やさしさも追求した「inpres UD+2(インプレス・ユーディープラスツー)」シリーズの2019年モデルを開発しました。「inpres UD+2 ドライバー」「inpres UD+2 フェアウェイウッド/ユーティリティ」では、フェースをシャフト軸から遠ざけてヘッドターンのエネルギーがより大きく伝わるようにした「ヘッドターンエネルギー構造」を新たに取り入れることでボール初速がアップしました。更に、シャフト先端部におもりを配置し、インパクト時の無駄な動きを抑える「チップウェイトテクノロジー」を「inpres UD+2 アイアン」を含むすべてのクラブでシリーズ採用したことで、ボール初速だけでなく最適な打ち出し角度・スピン量も実現し、飛びにさらなる磨きをかけています。

その他の事業の研究開発費は4,384百万円であります。

 

 当社グループの当連結会計年度末における日本での特許及び実用新案の合計所有件数は2,638件であります。