中期経営計画「Make Waves 2.0」の概要
当社グループは、2022年4月からの3年間を対象とした中期経営計画「Make Waves 2.0」を策定しました。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営環境認識
COVID-19により、デジタル化、多様化、サステナビリティへの意識の高まりなど、前中期経営計画で前提としていた環境変化が一気に加速しました。人の移動や対面の活動が制約される一方で、オンラインを介したモノや情報のやりとりが拡大し、新しい生活様式に対応する製品、サービスが生まれてきています。サステナビリティ意識の一層の高まりは、人々の関心が経済的繫栄を超えた本質的な心の豊かさに向かっていることの証左であると考えられます。これらの環境変化によってもたらされる「新たな社会」は音・音楽を原点に“技術×感性”で新たな感動と豊かな文化を追求してきた当社グループにとって、さらなる大きな機会となると認識しています。

(2) 経営ビジョンと中期経営計画の基本方針
[経営ビジョン(中長期的に目指す姿)]
[基本方針]
当社グループは事業活動を通じて、「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を実現することを目指しています。そのために、「感動を・ともに・創る:私たちは、音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます」を企業理念に掲げ、我々の行動の原点としています。
中長期的に目指す姿「なくてはならない、個性輝く企業になる」を経営ビジョンとして、中期経営計画の各ステージで企業価値を高めてきました。
新たなステージである中期経営計画「Make Waves 2.0」では、ポストコロナで大きく様相が変化した新たな社会で持続的な成長力を高めることを基本方針とし、さらに企業価値を向上させていきます。

(3) マテリアリティ策定と3つの方針
「事業基盤」、「環境・社会」、「人材」の3領域10項目をマテリアリティとして策定しました。中期経営計画ではこれらのマテリアリティに基づき3つの方針を設定しました。

(4) 3つの方針の詳細
3つの方針の具体的な取り組みとして、各方針に3つの重点テーマを設定しました。これらの重点テーマに沿った施策を着実に遂行することで、当社は新たな社会で持続的な成長力を高めます。

1.事業基盤をより強くする
デジタルマーケティングとリアル拠点の活動を統合したブランド体験の提供に加え、メーカー直販の仕組みの拡大により、顧客との繋がりを強化し、一層のブランド価値向上を進めます。また、製品・サービスにおいてはヤマハの強みであるアコースティック技術とデジタル技術に加え、AIとネットワークをヤマハならではの感性により結びつけ、新たな体験を創造します。外的環境の変化に柔軟に対応できる事業組織としていくために調達・生産のレジリエンスを強化しつつ、DXにより新たな価値を創出します。
① 顧客ともっと繋がる :直接顧客と繋がる販売の進化、デジタル×リアルを統合した価値訴求、
顧客情報基盤を拡充
② 新たな価値を創出する :アコースティック技術とデジタル技術の融合、サービス・情報提供基盤
の構築、新たな感動体験を創造
③ 柔軟さと強靭さを備え持つ:レジリエンス強化、開発基盤の強化、DXによる新たな価値の創出
2.サステナビリティを価値の源泉に
2050年カーボンニュートラルを目指した事業活動におけるCO2排出量削減や持続的な木材の利用を通じ、地球環境の保全に努めます。製品・サービスを通じて新たな社会の様々な課題を解決し、快適で安全な暮らしに貢献することで社会価値を創造します。また多種・多彩な楽器の供給を通じた世界の音楽シーンへの貢献、新興国における器楽教育普及など、音楽文化全体の普及・発展に力を尽くします。
① 地球と社会の未来を支えるバリューチェーンを築く :カーボンニュートラル、持続可能な木材、
省資源・廃棄物削減
② 快適なくらしへの貢献でブランド・競争力を向上する:遠隔・非接触サービス、耳の保護、
音楽によるQoL向上
③ 音楽文化の普及・発展により市場を拡大する :新興国の器楽普及、ローカルコンテンツ、
技術者育成
3.ともに働く仲間の活力最大化
ともに働く仲間の活力は、事業活動を行う上で最も重要な要素であり、社会価値、企業価値を創造するための原動力です。従業員一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、一人ひとりの個性を活かす経営を行います。組織内、組織間の多面的な対話機会の創出により、心理的安全性が確保された働きやすい職場づくりを進め、多様な人材の知恵や発想から多くの挑戦や共創が生まれる組織風土を醸成します。
① 働きがいを高める :グローバルリーダーの育成、自律的なキャリア
開発支援、柔軟な働き方支援
② 人権尊重とDE&Iを推進する :人権デューディリジェンス、多様な人材構成、
女性活躍推進
③ 風通しがよく、皆が挑戦する組織風土を醸成する:対話機会の創出、組織風土・文化のさらなる変革
(5) 経営目標
① 非財務目標
1.事業基盤をより強くする
2.サステナビリティを価値の源泉に
3.ともに働く仲間の活力最大化
② 財務目標
(中期経営計画策定時の想定為替レート:USD 115円/ EUR 130円)
③ 投資と株主還元
創出したキャッシュを成長投資と株主還元にバランス良く配分します。
[投資]
・通常投資 : 400億円
・戦略投資 : 650億円(生産施設・設備、サステナビリティ、新規事業、M&A等)
[株主還元]
継続的かつ安定的な配当を基本としますが、将来の成長投資のための適正な内部留保とのバランスを考慮しながら、資本効率の向上を目的とした機動的な株主還元も適宜、実施します。3年累計で総還元性向50%を目標とします。
(6) ガバナンス
指名委員会等設置会社の特長を活かし、定期的な評価を行いながら、より実効性の高いコーポレートガバナンスを目指して継続的な向上を図ります。またグループガバナンスのしくみの整備を進め、リスク対応力の向上と健全で強固な経営基盤を実現します。
(7) 事業ポートフォリオと方向性
中長期的に企業価値を向上させるため、成長・中核・育成・再構築の4象限に各事業を位置づけ、経営資源を適切に配分するポートフォリオマネジメントを進めます。

① 楽器事業
新たな社会に合致した販売とマーケティングの強化により、高付加価値商品の拡売を進めます。電子楽器は成長事業として、需要創造により市場成長を牽引し事業規模を拡大します。ギターは育成事業として、中高級価格帯を中心にブランド力向上へ向けた施策を展開し、収益性を向上させながら規模を拡大します。ピアノ・管弦打楽器は中核事業として、プレミアムブランドの地位を確立し、一層の収益強化を進めます。
② 音響機器事業
再構築事業として位置づけ、コロナ禍により大きく変化した音響機器の新たな市場へ事業ドメインを拡大します。法人向け市場では、企業・公共施設・学校などに、専門知識がなくても快適な音環境が得られる音響システムを提供します。個人向け市場では、オンラインゲームや制作・配信のシーンに、高品質な音を簡便な設定で実現できるソリューションを提供します。これらの需要に対応するため、保有する多彩な技術資産やリソースを柔軟に組み換え、各市場に最適な製品やソリューションを効率的に提供できる開発プラットフォーム・体制を整備します。
③ その他の事業(部品・装置、その他)
育成事業として位置づけ、前中期経営計画より取り組んできた電子デバイス事業の車載オーディオを核に、CASE時代に対応した車内音空間へのソリューション提供を新たな事業の柱として確立します。FA事業においては、超音波技術やセンシング技術による超音波検査機器やEV電池用リークテスターなどの検査機で、新たな市場の開拓を目指します。
(1) ヤマハグループサステナビリティ方針
当社グループは、世界中の全ての人々が心豊かに暮らす社会を目指します。その実現のために、企業理念である「ヤマハフィロソフィー」を心のよりどころに、かけがえのない地球環境を守り、平等な社会と快適なくらし、心潤す音楽文化の発展に貢献するとともに、人権尊重はもとより、多様な人材が互いに認め合い活躍できる環境を整えることで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます。
この考え方に基づき、持続可能な社会の実現に向けた取り組みによる社会価値の創造を通じ、自らの中長期的な企業価値を高める為、マテリアリティを特定し、積極的にサステナビリティ活動を推進します。

当社は、取締役会の監督に基づき、代表執行役社長の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置し、グループ全体のサステナビリティ活動の方向性の議論や、グループ内における取り組み状況のモニタリングを行い、代表執行役社長に答申しています。また、同委員会の下部組織として「気候変動部会」「資源循環部会」「調達部会」「人権・DE&I部会」「社会・文化貢献部会」を設置しています。各部会は、以下に示す全社横断的な重要テーマについて、推進体制の整備、方針や目標・施策・実行計画の策定、活動およびモニタリングを行い、サステナビリティ委員会へ報告しています。
◆気候変動部会:脱炭素、TCFD対応、水リスク対応など
◆資源循環部会:循環型バリューチェーン、環境配慮設計、包装梱包など
◆調達部会:木材デューディリジェンス、持続可能な木材、おとの森活動、サプライチェーン人権デューディリ
ジェンス、紛争鉱物対応など
◆人権・DE&I部会:人権デューディリジェンス、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなど
◆社会・文化貢献部会:音楽普及、地域共生など
サステナビリティ委員会の審議内容、ヤマハグループにおける活動状況については取締役会に定期的に報告され、取締役会によるレビューを受けています。
サステナビリティ推進体制は下図の通りです。

当社グループでは、社会の持続的発展と中長期的な企業価値向上につながる重要なサステナビリティ課題をサステナビリティ方針に組み込み、活動を推進・管理しています。2022年3月期には「サステナビリティに関するマテリアリティ」として9項目を特定し、これらを経営全体のマテリアリティに統合しました。このサステナビリティに関するマテリアリティに基づいて2022年4月にサステナビリティ方針を改定し、取り組みを進めています。
③ リスク管理
当社グループのバリューチェーンにおけるサステナビリティ課題を、持続可能な開発目標SDGsなどに照らして抽出し、お客さま、従業員、地域社会の声や、ESG評価項目、NGOからの意見・要請や社外有識者の提言、企業理念や経営ビジョン、中長期的な経営方針を踏まえ、リスクと機会の観点で重要度を評価し、推進を強化すべき課題(サステナビリティに関するマテリアリティ)を特定しています。特定したマテリアリティについて、サステナビリティ委員会の各部会、関係部門にて施策や達成度合いを測るKPI、目標および実行計画を策定します。サステナビリティ委員会が進捗をモニタリングすることで、マテリアリティの取り組みを推進し、リスクの低減を図っています。
④ 指標及び目標
特定したマテリアリティに基づき、2022年4月~2025年3月の中期経営計画「Make Waves 2.0」では、方針、重点テーマ、指標(KPI)と目標が設定されています。サステナビリティに関する主なKPIと目標は以下のとおりです。

(2) 気候変動への対応とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示
当社グループは、「気候変動への対応」をマテリアリティとして特定し、経営重点テーマとして位置付けています。TCFDの提言に基づき、気候変動がもたらすリスクや機会を分析し、経営戦略に反映させるとともに、その財務的な影響についての情報開示に努めていきます。
① ガバナンス
気候変動対応を含むサステナビリティに関する重要事項は、代表執行役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会にて議論した上で、取締役会にて定期的に議案として取り上げ、施策の進捗確認と監督をしています。また、気候変動に関わるリスクと機会への対応は同委員会の下部組織である気候変動部会が主導し、関連テーマは資源循環部会、調達部会でも審議され、サステナビリティ委員会に報告されます。
② 戦略
当社は、グループ全体に及ぶ影響を確認するため、全事業を対象に国際エネルギー機関(IEA)による移行面で影響が顕在化する「1.5~2℃シナリオ(注1)」と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による物理面で影響が顕在化する「4℃シナリオ(注2)」をメインに、その他複数のシナリオ(注3)を参考に分析を行い、短期・中期・長期(注4)のリスクと機会を抽出しました。(表1)
当社は、気候関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるという認識のもと、リスクや機会を整理し、戦略の見直しを随時実施しています。(表2)
(注1)1.5℃シナリオ:NZE(IEA World Energy Outlook 2022)、2℃未満シナリオ:SDS(IEA World Energy Outlook 2022)、RCP2.6 他
(注2)4℃シナリオ:RCP8.5 他
(注3)APS(Accelerated Paris Scenario)、STEPS(Sustainable Transition Energy Pathways:Business as Usual)他
(注4)短期:現在-数年後/中期:2030年/長期:2050年に影響が強く表れる
(表1)特に重要度の高いリスク・機会一覧
(表2)特に重要度の高いリスク・機会と対応戦略
③ リスク管理
当社では、代表取締役の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、気候変動をはじめとした企業活動・行動に関わるすべてのリスクを対象とした全社横断的なリスク評価の仕組みを採用し、リスクの抽出と評価を行っています。
サステナビリティ委員会の下部組織である気候変動部会では、シナリオ分析結果をベースに想定される「損害規模」と「発生頻度」を特定・評価し、TCFDリスク分類に沿ってリスト化しています。「損害規模」は売上収益に対する割合を指標として3段階で評価、「発生頻度」は4段階で評価し、重要リスクと機会を特定し、対応状況のモニタリングや見直しを実施しております。対策については、調達部会や資源循環部会等他の部会と随時協働し、対策テーマの特定と資源配分に関する提言、進捗管理指標の設定等を行なっています。また、気候変動部会の担当範囲を超える対応が必要となる重要なリスクおよび機会については、逐次取締役会へ報告され、対応方針を審議検討しております。
気候変動部会が属するサステナビリティ委員会とリスクマネジメント委員会はどちらも代表執行役社長が委員長であり、両プロセスは有機的に連動しております。
④ 指標及び目標
サプライチェーンを含めたグループ全体のCO2削減を横断的に管理するため、温室効果ガスの総排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)をGHG(温室効果ガス)プロトコルのスタンダードに基づき算出し、指標としています。また、これらについて第三者検証を実施しています。2031年3月期までに2018年3月期比でスコープ1+2を55%削減(SBTイニシアティブ1.5℃水準)、スコープ3を30%削減する中期目標を策定し、スコープ1+2については2051年3月期までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標を設定しています。また、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量実質ゼロを目指し、2023年6月にSBTのNetZeroに向けた取り組み目標を策定することにコミットしました。目標を達成するための短期目標として、2025年3月期までに生産におけるエネルギー使用効率を5%向上、消費電力の再生可能電力使用率10%達成を掲げています。
当社グループにおける気候変動への対応とTCFDに基づく情報開示の詳細につきましては、下記URLをご参照ください。
(3) 人的資本
当社は、中期経営計画「Make Waves 2.0」の方針に掲げられた「ともに働く仲間の活力最大化」の実現を目指し、事業活動を行う上で最も重要な要素の一つであり、社会価値、企業価値を創造するための原動力である従業員について、一人ひとりの個性が活かされ、最高のパフォーマンスが発揮できるよう様々な施策を展開しています。
① ガバナンス
当社は、代表執行役社長の諮問機関として経営会議および人材開発委員会を設置し、経営会議では経営に関する重要な人事事項を、人材開発委員会では経営人材に関わる諸テーマを審議し、代表執行役社長に答申しています。その他、人権やダイバーシティーに関する取り組みを推進するためサスティナビリティ委員会の下部組織として人権・DE&I部会を設置しています。
② 戦略
当社は、中期経営計画「Make Waves 2.0」の方針に掲げられた「ともに働く仲間の活力最大化」を、「働きがいの向上」と「働きやすさの向上」に分け、それぞれを更に要素分解し、「ともに働く仲間の活力最大化」の実現に繋がる様々な施策を展開しています。なお、下図の各領域に「ともに働く仲間の活力最大化」の3つの重点テーマが表われており、あわせてそれらの関係を示しています。

当社は、代表執行役社長の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、人的資本をはじめとした企業活動・行動に関わるすべてのリスクを対象とした全社横断的なリスク評価の仕組みを採用し、リスクの抽出と評価を行っています。また、各リスクに対するコントロールレベルを評価し、優先的に対処すべき重要リスクを特定するとともに担当部門を定め、リスク管理レベルの引き上げを図っています。取締役会は執行役からの報告等によりリスクマネジメントの仕組みの有効性や推進状況を確認・監督しています。
人的資本に関するリスクについては、

当社は、中期経営計画「Make Waves 2.0」の方針に掲げられた「ともに働く仲間の活力最大化」の3つの重点テーマの指標と目標を以下のとおり定め、施策の効果を定期的にモニタリングし、継続的な改善に努めています。

当社グループは、リスクへの対応力を向上させ、健全で透明性の高い経営を実践するため、リスクマネジメントの推進体制や仕組みの整備・改善に取り組んでおります。当社は、代表執行役社長の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメントに関わるテーマについて全社的な立場から審議し、代表執行役社長に答申しております。同委員会の下部組織として、全社横断的な重要テーマについて活動方針の策定やモニタリングを行う「BCP・災害対策部会」「財務管理部会」「コンプライアンス部会」「輸出審査部会」「情報セキュリティ部会」を設置しております。また、事業活動において全社的な影響が及ぶような重大なリスクが顕在化した場合には、代表執行役社長を総本部長とするリスク対策総本部を設置し、当該リスクに対応します。
リスクマネジメント委員会では、識別した事業に関連するさまざまなリスクを大きく「外部環境リスク」「経営戦略リスク」「事業活動に係る業務プロセスリスク」「経営基盤に係る業務プロセスリスク」の4つに分類し、リスクの重要性を想定損害規模と想定発生頻度に応じて評価しており、各リスクに対するコントロールレベルを評価し、優先的に対処すべき重要リスクを特定するとともに担当部門を定め、リスク低減活動の推進によりコントロールレベルの引き上げを図っております。
経営者が連結会社の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。


当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、退職後給付の勤務期間への帰属についての会計方針の変更を行っており、遡及処理の内容を反映させた数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針選択の判断と適用を前提とし、決算においては資産・負債の残高、報告期間における収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて、経営者は、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、その性質上、実際の結果と異なる可能性があります。
重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
当連結会計年度における経営環境を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症による行動制限の解除等社会活動が再開される中、世界経済は、徐々に持ち直してきてはいるものの、エネルギー・原材料価格の高騰による世界的な物価上昇とこれを抑制するための各国の金融引き締めによる景気の下押しなど、依然として先行きが不透明な状況が続いています。
このような環境の中で当社グループは、中期経営計画「Make Waves 2.0」を「世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現に向け、ポストコロナの新たな社会で持続的な成長力を高める3年間と位置づけ、3つの方針「事業基盤をより強くする」、「サステナビリティを価値の源泉に」、「ともに働く仲間の活力最大化」を掲げて各施策を進めてきました。
《事業基盤をより強くする》
“顧客ともっと繫がる”では、ヤマハが展開する様々なウェブサービスやソフトウェアサービスを一つのログインIDで利用可能にするYamaha Music IDの導入や、ブランドショップでのショールーム機能の拡充など、お客様との直接の接点が拡大しました。また、人気アニメとのコラボレーション企画等、新たな顧客層へ楽器演奏を始めるきっかけとなる様々なアプローチも展開しています。“新たな価値を創出する”では、憧れのピアニストとの連弾ができるAIピアノによる合奏技術や、リアルタイムで有名歌手の歌声になれるAI歌声変換技術などヤマハの先進的な技術と豊かな感性でお客様に新しい体験を多数提供することができました。また、ユーザーの音楽ライフをより愉しく、創造的なものにしていくためのサービス事業の構想として取り組んでいる「Yamaha Music Connect」については、ヤマハが持っている様々な技術、コンテンツ、アプリケーションを結集するとともに、社外のリソースやサービスも取り込んだエコシステムの構築に向け、取り組んでいます。“柔軟さと強靭さを備え持つ”では、製造拠点のエリア統括体制の整備、調達先・部品種類の戦略的な見直し、同一商品群の複数拠点生産など、調達・生産における柔軟性とリスク対応力を向上させています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。

◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ
《サステナビリティを価値の源泉に》
“地球と社会の未来を支えるバリューチェーンを築く”では、気候変動への対応について、各拠点での省エネ活動の推進や太陽光発電パネルの増設、再生可能エネルギーへの切り替えなど、2050年カーボンニュートラルを目指して着実に取り組みが進んでいます。また、持続可能性に配慮した木材の利用については、認証木材の拡大や北海道・タンザニアなどでの「おとの森活動」を通じて楽器の材料となる希少樹種の育成・保全活動を継続推進しています。“快適なくらしへの貢献でブランド・競争力を向上する”では、「だれでもピアノ」の研究開発など、音のバリアフリーを目指して様々な商品でユニバーサルデザインへの取り組みを積極的に行っています。“音楽文化の普及・発展により市場を拡大する”では、インドでの「初等教育への日本型器楽教育導入事業」が、文部科学省による「令和4年度第2回EDU-Portニッポン応援プロジェクト」の一つに選ばれるなど、器楽教育の普及に貢献しています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。

◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ
《ともに働く仲間の活力最大化》
“働きがいを高める”では、社員が自律的にキャリアを描くための支援や副業など柔軟な働き方を実現するための各種制度・仕組みを充実させました。“人権尊重とDE&Iを推進する”では、人権デューディリジェンスや人権教育を充実させるとともに、グローバル人材や女性などの活躍推進を図り、多様な人材がより活躍できるための環境を整備しています。“風通しがよく、皆が挑戦する組織風土を醸成する”では、心理的安全性を高めるために、各部門で様々な創意工夫を凝らした対話の機会を増やしています。また、誰もが生き生きと仕事ができる環境として、2024年春竣工に向け、2つの拠点を整備しています。一つは営業部門・スタッフ部門を集結し、隣接する3つの建物とともに各機能の人材交流の促進をコンセプトに、本社棟の建設を行っています。もう一つは、首都圏の営業拠点を統合することに加え、ブランド発信やR&D機能を有したオープンイノベーションを促進する新拠点となる「横浜シンフォステージ」です。今後もヤマハに集う多様な人材一人ひとりにとって働きやすさと働きがいを感じられる職場づくりに、引き続き取り組んでいきます。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。

◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ
中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標「売上成長率 20%」「事業利益率 14%」「ROE 10%以上」「ROIC 10%以上」は、当連結会計年度においてそれぞれ10.6%、10.2%、8.8%、7.8%となりました。
(イ)セグメントごとの売上収益の状況
当連結会計年度の売上収益は、半導体調達難、エントリーモデルの需要減、および中国での新型コロナウイルス感染症による混乱などの影響を受けたものの、対USドルの為替レートが大幅な円安になったこともあり、前期に対し432億12百万円(10.6%)増加の4,514億10百万円となりました。
楽器事業は、エントリーモデルの需要減が続き、中国では新型コロナウイルス感染症による混乱などの影響を受けたものの、為替の影響により、前期に対し264億99百万円(9.6%)増加の3,026億53百万円となりました。
商品別では、ピアノは、主力の中国市場で新型コロナウイルス感染症による影響で販売が低迷し減収となりました。電子楽器は、楽器演奏環境の正常化が進み、中高級モデルの需要が堅調に推移したものの、エントリーモデルの需要が減少し減収となりました。管楽器は、各地で学校での吹奏楽活動が再開し、北米では米国政府による小中学校向け財政支援も寄与して大幅な増収となりました。ギターは、エントリーモデルの需要減少でアコースティックギターが苦戦したものの、エレキギターやギターアンプなどが好調であり増収となりました。
地域別では、日本は、学校での吹奏楽活動が再開され需要が回復した管弦打楽器、アニメの効果により需要が高まったギターが増収となったものの、物価高による消費意欲の低下がみられるピアノや電子楽器により、全体では減収となりました。北米及び欧州は、インフレによる生活コストの上昇から消費者の生活防衛姿勢が強く、エントリーモデルの需要に弱さが見られるものの、中高級品の需要が堅調であり、為替の影響もあり増収となりました。中国は、新型コロナウイルス感染症による混乱などの影響を受け、販売が低迷し減収となりました。その他の地域では、新型コロナウイルス感染症の影響から脱却し、各地で経済の正常化が進み、地域全体として増収となりました。
音響機器事業は、エントリーモデルの販売不振による影響を受けたものの、半導体調達難の一部改善により、前期に対し107億17百円(11.1%)増加の1,076億41百万円となりました。
商品別では、オーディオ機器は、半導体調達難の影響に加え、低価格サウンドバーの販売不振などもあり、減収となりました。業務用音響機器は、ライブ市場や設備市場が堅調で、下期には半導体調達難の改善もあり、増収となりました。ICT機器は、企業のDX推進やサイバーセキュリティ対策強化を背景に、ネットワーク投資が拡大し、増収となりました。
その他の事業の売上収益は前期に対し59億96百万円(17.1%)増加の411億15百万円となりました。
部品・装置事業では、電子デバイスは、中国自動車メーカー向けのヤマハブランドオーディオが販売を伸ばし、増収となりました。自動車用内装部品、FA機器は、半導体調達難による顧客企業の減産や、投資案件の延期や減少の影響を受け、減収となりました。ゴルフ事業では、韓国で大きく販売を伸ばし、増収となりました。
(ロ)売上原価と販売費及び一般管理費
売上原価は前期に対し268億9百万円(10.6%)増加の2,802億70百万円となりました。売上原価率は、前期と同様62.1%となりました。
売上総利益は前期に対し、164億3百万円(10.6%)増加の1,711億39百万円となりました。売上総利益率は、前期と同様37.9%となりました。
また、販売費及び一般管理費は、前期に比べ135億65百万円(12.1%)増加し、1,252億72百万円となりました。売上収益販売管理費比率は、前期から0.4ポイント上昇し27.8%となりました。
(ハ)事業利益
事業利益は、前期に対し28億37百万円(6.6%)増加の458億67百万円となりました。
報告セグメントごとの事業利益では、楽器事業は、為替のプラス影響70億円があったものの、前期に対し11億31百万円(3.0%)減少の362億円となりました。音響機器事業は、為替のマイナス影響19億円があったものの、前期に対し19億27百万円(125.3%)増加の34億66百万円となりました。その他の事業は、為替のプラス影響13億円を含め、前期に対し20億41百万円(49.1%)増加の62億円となりました。
要因別には、販売管理費の増加(50億円)や、エネルギー・調達コストの上昇(60億円)等の減益要因があったものの、増収・増産、モデルミックス及び価格適正化(87億円)や為替影響(65億円)等の増益要因により、前期に比べ増益となりました。
(注)事業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して算出した日本基準の営業利益に相当するものです。
(ニ)その他の収益及びその他の費用
その他の収益は、固定資産売却益47億円を計上した前期に対し55億52百万円(73.5%)減少の20億6百万円となりました。その他の費用は、前期に対し1億38百万円(11.1%)増加の13億89百万円となりました。
(ホ)金融収益及び金融費用
金融収益は、前期に対し12億82百万円(22.1%)減少の45億9百万円となりました。金融費用は、前期に対し16億60百万円(79%)減少の4億41百万円となりました。
(ヘ)税引前当期利益
税引前当期利益は、前期に対し24億75百万円(4.7%)減少し505億52百万円となりました。売上収益税引前当期利益率は、前期から1.8ポイント下落し11.2%となりました。
(ト)法人所得税費用
法人所得税費用は、主として繰延税金費用の減少により、前期に対し32億91百万円(21%)減少の123億75百万円となりました。
(チ)親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期に対し9億15百万円(2.5%)増加の381億83百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期の214円87銭から222円64銭となりました。
(リ)為替変動とリスクヘッジ
海外子会社の売上収益は、期中平均レートで換算しております。当連結会計年度の米ドルの期中平均レートは前期に対し約23円円安の135円となり、前期に対し約235億円の増収影響となりました。また、ユーロの期中平均レートは前期に対し約10円円安の141円となり、前期に対し約62億円の増収影響となりました。また、人民元など、米ドル、ユーロ以外の通貨は、前年同期に対し約144億円の増収影響となり、売上収益全体では、前期に対し約440億円の増収影響となりました。
また、事業利益につきましては、米ドルは充当(マリー)効果により、決済レートの変動による為替影響は概ねヘッジできているものの、海外子会社の事業利益の換算等により、約25億円の増益影響となりました。ユーロの決済レートは、前期に対し約5円円安の136円となり、約20億円の増益影響となりました。また、他の通貨を含めた全体では前期に対し約65億円の増益影響となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。
当社グループは、製品の性質上、原則として見込生産を行っております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は外部顧客に対する売上収益であります。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の5,806億62百万円から135億84百万円(2.3%)増加し、5,942億46百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末から161億31百万円(4.4%)減少し、3,465億45百万円となり、非流動資産は、297億15百万円(13.6%)増加し、2,477億1百万円となりました。流動資産では、為替変動の影響に加え、半導体調達難等に起因する一部製品の生産遅れやエントリーモデルの需要減、中国での新型コロナウイルス感染症による混乱などの影響を受け棚卸資産が増加しました。また、棚卸資産の増加、グループファイナンス拡大に伴う短期借入金の返済及び前連結会計年度の投資有価証券の売却に伴い増加した未払法人所得税の支払いにより現金及び現金同等物が減少しました。非流動資産では保有有価証券の時価上昇により金融資産が増加し、設備投資により有形固定資産が増加しました。また、Cordoba Music Group, LLCの持分取得により、のれんが増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末の1,637億94百万円から274億91百万円(16.8%)減少し、1,363億2百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末から309億74百万円(24.6%)減少し、951億40百万円となり、非流動負債は、前連結会計年度末から34億82百万円(9.2%)増加し、411億62百万円となりました。流動負債では、グループファイナンス拡大に伴う短期借入金の返済により有利子負債が減少し、前連結会計年度の投資有価証券の売却に伴う法人所得税の支払いにより未払法人所得税が減少しました。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の4,168億67百万円から410億76百万円(9.9%)増加し、4,579億44百万円となりました。自己株式の取得及び配当金の支払いによる株主還元を行ったものの、当期利益により利益剰余金が増加したことに加え、為替変動の影響及び保有有価証券の時価上昇によりその他の資本の構成要素が増加したことで、全体では増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ686億8百万円減少(前期は431億50百万円増加)し、期末残高は1,038億86百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税引前当期利益に対し、半導体調達難等に起因する一部製品の生産遅れやエントリーモデルの需要減、中国での新型コロナウイルス感染症による混乱などの影響を受け棚卸資産が増加したことに加え、前連結会計年度の投資有価証券の売却による法人所得税の支払いもあり、148億41百万円の支出(前年同期は360億16百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得およびCordoba Music Group, LLCの持分取得により、215億63百万円の支出(前年同期は主として投資有価証券の売却により、437億7百万円の収入)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、主としてグループファイナンス拡大に伴う短期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得等により、352億87百万円の支出(前年同期は主として自己株式の取得により、444億26百万円の支出)となりました。
(イ)資金需要
当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料、部品等の購入、労務費など製造費用と、商品の仕入、販売費及び一般管理費等、営業費用の運転資金及び設備投資資金、並びにM&Aや資本提携を目的とした投資資金であります。
当連結会計年度の設備投資額は、前期の148億35百万円から57億5百万円(38.5%)増加し、205億41百万円となりました。新オフィスの建設、設備の更新改修を中心として減価償却費(130億94百万円)を超える設備投資を行いました。
研究開発費は、前期の240億32百万円から10億25百万円(4.3%)増加し、250億57百万円となりました。売上収益研究開発費比率は前期の5.9%から0.3ポイント減少し、5.6%となりました。
(ロ)資金調達
運転資金及び設備投資資金について、当社及び国内子会社、一部の海外子会社においてグループ内資金を有効活用するためグループファイナンスを運用しています。また、一部の子会社においては、借入金額・期間・金利等の条件を総合的に勘案し、金融機関から借入を行っております。
特記すべき事項はありません。
当社グループは、ヤマハが目指すものとして「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を、企業理念として「感動 を・ともに・創る」を掲げています。これを支えるために、「製品」と「サービス」分野で新たな価値を創出するべく、コア技術の更なる高度化と拡張のための研究開発を進めております。取り組んでいる研究開発の領域は、アコースティック技術、デジタル技術を中心に、音そのものに留まらず、基礎から応用まで、音の活用を支える技術分野に大きく広がっています。
当連結会計年度は、「アコースティック技術とデジタル技術の融合でヤマハならではの新たな製品を生み出す」、「LTV戦略を加速、外部連携・UGC(User Generated Content)等を活用し音楽生活をより愉しむためのサービスを展開」、「先進的な技術と豊かな感性で新たな感動体験を創造」をテーマに研究開発を進めました。
「ヤマハならではの新たな製品を生み出す」では、「トランスアコースティックピアノ」と「サイレントピアノ」の新モデルを開発いたしました。
「音楽生活をより愉しむためのサービスを展開」では、BGM作成アプリ「AmBeat」を開発いたしました。
「新たな感動体験を創造」では、AI技術を用いた新合成エンジン「VOCALOID:AI」を搭載したVOCALOIDの新バージョン「VOCALOID6」を開発いたしました。
当社グループの研究開発体制は、楽器事業については当社楽器事業本部、及びYamaha Guitar Group,Inc.の開発部門、音響事業については当社音響事業本部、NEXO S.A.、Steinberg Media Technologies GmbHの開発部門、その他の事業については当社電子デバイス事業部、ゴルフHS事業推進部及びヤマハファインテック株式会社の開発部門、全社横断のR&Dについては当社研究開発統括部が担う形で構成しております。
当連結会計年度における主な成果をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1) 楽器事業
当セグメントでは、幅広い技術を融合し、個性際立つ商品を開発しております。
ピアノ関連では、アコースティックピアノならではの音やタッチ感はそのままに、デジタル技術との融合により音量調節や消音が可能な「トランスアコースティックピアノ」と「サイレントピアノ」の新モデルを開発いたしました。「トランスアコースティックピアノ」、「サイレントピアノ」は、アコースティックピアノでの演奏体験に加えて、大きな音が出せない環境でも快適に演奏を楽しんでいただけるピアノです。新たに開発した「トランスアコースティックピアノTA3」、「サイレントピアノSH3」は、新開発の「アーティキュレーション・センサーシステム」を搭載し、ピアノ本来のタッチ感を損なう事なく、演奏者が思い描く細やかなニュアンスの表現を正確に検出し、忠実に再現することができます。また、独自の音源技術により、タッチの細かな違いで音色の変化を弾き分けられ、より本格的な演奏表現が可能となりました。その他、BluetoothⓇ(AUDIO/MIDI)がすべての機種に搭載され、当社のアプリ「スマートピアニスト」とのスムーズな連携により、快適な演奏体験を提供します。
管弦打楽器関連では、フリューゲルホルンの新製品として、「YFH-8310Z」と「YFH-8315G」を開発しました。新しいフリューゲルホルンでは、新設計のバルブケーシングを採用して剛性を高め、奏者が吹き込む息を管体がしっかり支え、効率良く音に変換することで、粒立ちの良い音を実現しています。また、ピストンの仕組みが違うトランペットと、バルブケーシングで吹奏感や音色の方向性を揃えることで、トランペットとフリューゲルホルンの持ち替えもスムーズに行えます。チューニングで抜き差しするリードパイプを固定するためのスクリューは、「YFH-8310Z」は真鍮、「YFH-8315G」はフォスファーブロンズと異なる材料を使い、形状もサイズも異なっており、2つのモデルの個性を際立たせる要素の一つになっています。
電子楽器関連では、演奏性・可搬性に優れたライブパフォーマンス向けステージキーボードの新シリーズとして、「CK61」「CK88」を開発しました。ステージキーボードとしては、高品位なピアノサウンドが特徴のステージピアノ「CPシリーズ」や、オルガン音源・FM音源も搭載したステージキーボード「YCシリーズ」が、多くのアーティストのステージで認められてきました。新たに開発した「CK61」「CK88」は「CPシリーズ」と「YCシリーズ」のエッセンスを受け継いだ新シリーズで、ライブで活躍する300種類以上の多彩な音色を搭載し、直感的な操作で、素早くサウンドメイキングができるOne-to-Oneインターフェースも備えています。当社のステージキーボードとして初めてスピーカーを内蔵しているため、本体1台でマイクと接続して弾き語りをしたり、デバイスとBluetoothⓇ接続してオーディオを再生しながら演奏したりすることも可能です。軽量ボディで可搬性にも優れ、電池でも駆動することから、ステージからストリートまで多彩なシーンで演奏をお楽しみいただけます。また、新開発のAI合成エンジンがナチュラルで豊かな表現力のある歌声を実現する、バーチャルボーカル制作の総合ソリューションを提供するソフトウェア「VOCALOID6」を開発しました。イメージにあった歌声をいつでも簡単に作り出すことが可能な「VOCALOID」を用いて制作された楽曲は「ボカロ曲」と呼ばれ、新世代の音楽として全世界のリスナーから支持され、高い人気を誇っています。4年ぶりの新バージョンとなった本製品では、AI技術を用いた新合成エンジン「VOCALOID:AI」を搭載し、よりナチュラルで表現力豊かな歌声合成を実現しました。アクセントやビブラートといった歌唱表現を素早く調整できる編集ツールを採用したほか、豊かな表現を生み出す制作手法である「ダブリング」や「ハモリ」を瞬時に作る機能を追加しました。VOCALOID:AI対応のVOCALOID6専用ボイスバンクでは、クリエイター自身の歌唱データを基に歌い方や歌詞を再現できたり、一つのボイスバンクで日本語や英語を織り交ぜた歌詞を流暢な発音で歌わせたりできるようになりました。言葉の壁を越えた作曲活動やボーカルパートの新たな制作方法を提案することで、クリエイターの制作意欲を後押しします。
なお、カジュアル管楽器Venova「YVS-120/YVS-140」が「iFデザインアワード2022」を、更に「YVS-140」は「アジアデザイン賞2022」の大賞を受賞いたしました。さらに、歌声合成技術/ソフトウェア「VOCALOID」は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」において、長年にわたり生活者に支持され続ける優れたデザインに贈られる「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しました。
楽器事業の研究開発費は
(2) 音響機器事業
当セグメントでは、社会の変化にも対応しながら、多様なニーズに応える商品を開発しております。
ホームシアター・オーディオ関連では、「5000シリーズ」の名を冠する、独自の「オルソダイナミックドライバー」を搭載したフラッグシップヘッドホン「YH-5000SE」を開発しました。アーティストが音楽に込めた想いの全てを表現し人の感情を動かす音 = TRUE SOUNDを実現するために、音の正確性を追求した「オルソダイナミックドライバー」、繊細かつ、しなやかな広帯域表現を叶える大容量ハウジング、音楽の躍動感をありのままに再現する超軽量薄型ダイヤフラム、音の密度感と開放感の両立を可能にした日本製圧延平畳織ステンレスフィルターなど、当社が考える最高の技術、最適なマテリアルを集結しました。音・音楽の多様な製品を手掛けるオーディオブランドであるヤマハのフラッグシップヘッドホンとして、ハイグレードなリスニングを追求されるお客様に、心深く残る特別な音楽体験を提供します。
業務用音響機器関連では、96kHzの高分解能を実現し、最大256chの入出力に拡張可能な音響空間を創造するシグナルプロセッサー「DME7」を開発しました。「DME7」は、劇場やコンサート会場などの音質が重要視されサウンドシステム設計者が音響をデザインするシーンにおいて、高度な音の演出表現を実現し上質な音響体験を提供するシグナルプロセッサーのフラッグシップモデルです。豊富なDSPコンポーネントを標準搭載し、それらを組み合わせて自在に配置することで、用途に合わせて柔軟にシステムを構築できるフリーコンフィグレーション方式を採用しています。サンプリング周波数は96kHzの高分解能を実現し、標準で64chのDante入出力、拡張キット「DSEK-DME-DX64」を適用することで、最大256chの入出力に対応します。さらに、新たなシステムのデザイン機能を追加した、設置環境や運用方法にあわせたコントロールパネルの作成や、機器のリモートコントロール、モニタリングが可能なアプリケーションソフトウェア「ProVisionaireシリーズ」によるシステム全体の制御にも対応しています。また、ポータブルPAシステムの新モデルとして、バッテリー駆動に対応し、5chミキサーと多彩なエフェクトを搭載したワンボックス型のオールインワンPAシステム「STAGEPAS 200」を開発しました。「STAGEPAS 200」は、30センチ・ワンボックス型のコンパクトな筐体に高い音質・クラス最大級の音圧を実現したスピーカーとアンプ、本格的なミキシング機能を持つミキサーに加え、シンプルな操作性を備えた、小規模なライブや各種イベントでの音楽やスピーチの拡声に最適なポータブルPAシステムです。シリーズで初めてバッテリー駆動による最大10時間の連続稼働に対応し、電源のない場所でも使用できます。
音楽制作機器・ソフトウェア関連では、直感的な操作と独自の音声処理で没入感の高いゲーム・ボイスチャット体験を提供する、ゲームストリーミングミキサー「ZG01」を開発しました。「ZG01」は、PCやゲーム機、スマートフォンマイク・ヘッドセットを接続し、独立した各ツマミによる直感的な操作によって、各入力音源の音量を瞬時に調節しながらボイスチャットやゲーム配信が行える、ゲーム配信・ボイスチャット用の小型ミキサーです。ゲームのサラウンドサウンドをヘッドホンで体験できる「ZG SURROUND」や、プレイ場面やプレイスタイルに最適な音質へ補正する「FOCUS MODE/EQ」、快適なボイスチャット体験を提供する「3D CHAT SPACE」などの独自の音声処理を搭載。さらにプレイヤー本人が体験するこれらの音響効果は配信視聴者にもそのまま届け、没入感を共有することもできます。また、動画や写真をアップロードするだけで、イメージに合うオリジナルBGMを自動生成するBGM生成アプリ「AmBeat」を開発しました。「AmBeat」は、動画や写真のデータをアプリ上にアップロードするだけで、そのビジュアルコンテンツのイメージやシチュエーションにマッチした音楽を自動で作成するアプリです。イメージと音楽の結び付けには、ヒトの感覚や感性を言語化して科学的に分析する独自の「感性研究」の成果を応用しています。さらに、自動作成されたBGMを、アプリの画面での簡単な操作で自由にアレンジすることも可能です。できあがったBGM付きの動画や写真は、音楽付きの思い出として保存したり、SNSなどで投稿したりして活用いただけます。
ネットワーク機器関連では、業務用のVPNルーター「RTXシリーズ」で好評な機能を継承・強化し、新たに10ギガビットにも対応した10ギガアクセスVPNルーター「RTX1300」を開発しました。近年、テレワークやWeb会議が普及してきていることに加え、ウェビナーやオンライン研修などデータ量の大きいコンテンツを利用するユーザーが増えたことで、社内のネットワークに流れるトラフィックが急増しています。それに伴い、Wi-Fi 6対応の無線LANアクセスポイントや10ギガビット/マルチギガビット対応のスイッチが配備され、LANの高速化が進んでいますが、WAN側の高速化は未対応の拠点が多いという課題があります。その解決のために、中規模ネットワークにおけるWANの高速化を実現するルーターへの需要が高まっています。「RTX1300」は、「RTXシリーズ」の好評な機能を継承・強化しつつ、急増するトラフィックに耐えうるハードウェア性能を持ったVPNルーターです。10ギガビットに対応したコンボポート(LANポートとSFP+スロット)を2ポート搭載しており、現在普及しつつある10ギガビット光回線を使った高速インターネット接続が可能です。また、10ギガビット/マルチギガビット対応のスイッチやWi-Fi 6に対応した無線LANアクセスポイントと組み合わせることで、LAN/WAN両方の高速化を実現します。
なお、ヘッドホン「YH-L700A」が、国際的なデザイン賞「iFデザインアワード2022」と「アジアデザイン賞2022」の「Gold Award(金賞)」を受賞しました。また、ライブストリーミングUSBマイクロフォン「AG01」、業務用インターホンシステム「スマホでインターホンpowered by SoundUD」、当社がUSEN-NEX GROUPの株式会社USENと共同で取り組む業務用アナウンスシステム「音と文字で伝わる「SoundUDの多言語アナウンスシステム」」の3件が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」を受賞しました。中でも「SoundUD多言語アナウンスシステム」は、特に高い評価を得たデザインに与えられる「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。また、「スマホでインターホン powered by SoundUD」および「SoundUDトリガーパネル」が、一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)が主催する「IAUD国際デザイン賞2022」において、インタラクションデザイン部門の金賞を受賞しました。また、リモート応援システム「Remote Cheerer powered by SoundUD」が、革新的な優れたサービスを表彰する「第4回 日本サービス大賞」(主催:公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会)において「優秀賞」を受賞しました。
音響機器事業の研究開発費は
(3) その他の事業
電子デバイス事業関連では、立体音響の圧倒的な没入感を車の全シートで楽しめる技術を開発し、量産に先駆けて自動車メーカーに向けたデモを開始しました。自動運転やインターネット常時接続などの変革により、自動車は今まで以上に快適なプライベート空間に変化していくはずです。また、リモートコミュニケーションの進化は、「メタバース」のキーワードと共に、デジタル空間の体験の機会が今後さらに広がることを示唆しています。移動手段からセカンドリビングへと車が進化する中で、エンターテインメントで新しいサウンド体験を実現する提案の一つが、マルチチャンネルを生かしたオーディオ体験です。近年、Dolby Atmos等に対応した、立体音響を体験できる映像・楽曲コンテンツの配信サービスが普及してきました。従来のステレオ2チャンネルのコンテンツと異なり、これらのコンテンツには空間を積極的に活用した立体表現が盛り込まれており、様々な方向から音が聴こえてきます。このコンテンツはオーディオコンポーネントやヘッドホンで楽しむことができますが、音の反射や共鳴が顕著で複雑な形状をした車室内では、製作者の狙いを精度高く再現することが困難なうえ、リスニングポイントが限定される問題がありました。今回開発した技術を使うことで、全てのシートで立体音響の圧倒的な没入感を体感することができます。
ゴルフ事業関連では、「inpres」の新シリーズとして、「inpres DRIVESTAR」を開発しました。「inpres DRIVESTAR」は、独自技術による圧倒的な飛びと直進性を実現しながら、シャープで構えやすい正統派のヘッド形状を両立した「inpres」の新シリーズです。アベレージゴルファーから上級者まで幅広い層をターゲットとする一方で、プロゴルファーもその性能と感性を認めています。ドライバーは、独自の「BOOSTBOX」によるボール初速アップと、ウェイトを最適に配置する「COUNTERWEIGHT SYSTEM」によるルール限界クラスの横慣性モーメントが、圧倒的な飛びと直進性を生み出します。アイアンは、飛びの最大効率化を実現する「3POINT RESONANCE TECHNOLOGY」の搭載と、高い強度を持つステンレス系新素材「X37」を採用した精密鋳造による1.1mmの極薄ソールとの相乗効果で打点の反発性能をアップさせました。また、キャビティ部に46gものタングステンを搭載した低重心設計による高弾道も実現しています。これらの性能を搭載しながら、アイアンらしい形状も両立させた、飛距離性能も形状も妥協しない革新的アイアンです。
その他の事業の研究開発費は
当社グループの当連結会計年度末における日本での特許及び実用新案の合計所有件数は2,184件であります。