当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。したがって、様々な要因により実際の結果と異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは企業理念体系『KAWAI Philosophy』を2025年3月に新たに制定いたしました。『KAWAI Philosophy』はKAWAIの価値観や存在意義、目指す方向性を体系的に表したものであり、「Mission(日々果たすべき使命)」、「Vision(目指す未来)」の他、世の中に提供する価値として「Values(提供する価値)」、社員一人ひとりが大切にする行動指針として「Credo(大切にすべき精神)」の4つで構成されています。
KAWAIの製品やサービスは、世界中の人々の日常の中にあり、たくさんの感情(喜怒哀楽)とともにあります。「どのような時でも寄り添い、人生を響かせる存在でありたい」という想いを『人生を、響かせる。』というミッションに込めています。新たな企業理念体系のもと、楽器のみならず、様々な分野でステークホルダーの皆様とともに感動や笑顔を分かち合える、かけがえのないパートナー企業を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、企業価値の最大化に向け、営業利益率、ROE(自己資本利益率)を経営指標として重視し取り組むとともに、財務基盤の強化のためキャッシュ・フローを重視し、持続的な成長を目指してまいります。
第8次中期経営計画「KAWAI 十年の計」(2025年4月から2035年3月期までの10年間)で掲げた目標指標につきましては、「(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
(3)経営環境
当社を取り巻く経営環境といたしましては、日本経済においては、物価高の継続により個人消費の一部に弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の拡大などもあり、総じて緩やかな回復基調となりました。
また世界経済は、ウクライナ危機の長期化や中東情勢の悪化、中国経済の停滞など不安定な国際情勢に加えて、米国の関税政策により、先行き不透明な状況が続いております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、企業価値の向上と持続的な成長を目指して、第8次中期経営計画「KAWAI 十年の計」を策定し、その目標達成に向けた各戦略を進めていくことを優先的に対処すべき課題としております。
<第8次中期経営計画「KAWAI 十年の計」の概要 (2025年3月19日発表)>
・「KAWAI 十年の計」で実現したいこと
「世界一の鍵盤楽器メーカー」になる為に、今後 10 年間で鍵盤楽器事業を大きく成長させる。同時に、永続的な企業価値の向上を目指し、次なる成長エンジンの構築を行う。
・「KAWAI 十年の計」ポイント
① 今後 10年間の見立て
世の中のデジタル化が加速する一方、リアルなモノ・コトの需要が反作用的に増大し、 鍵盤楽器や音楽/体育教室の需要は堅調に推移すると予想
鍵盤楽器のシェア向上余地が大きいことから、新興市場の開拓や新規事業の創出に頼らなくても、鍵盤楽器のシェアを高めることで当社全体として大きな成長が可能
② 成長戦略
鍵盤楽器市場は 10年後も市場規模の8割超は成熟市場(欧州/北米/日本/中国)が占めると予測する為、成熟市場における製品の高付加価値化とシェア拡大が最重要課題
ピアノ/電子ピアノの「品質向上」「ブランド認知度向上」「販売チャネル増強」等によって高付加価値化とシェア拡大を実現する(特に欧州と北米の戦略を強化)
③ 資本効率改善
持続的成長と株主還元とのバランスをとったキャピタルアロケーションを実行し、資本効率を継続的に改善する
④ 株主還元強化
累進配当と総還元性向 50%以上を継続する
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
第8次中期経営計画「KAWAI 十年の計」(2025年4月~2035年3月)では、3年後に ROE 5.5%、6年後に ROE 10.0%、10年後には ROE 16.0%以上を目標に掲げております。
(単位:億円)
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(3年目) 2028年3月期 |
(6年目) 2031年3月期 |
(10年目) 2035年3月期 |
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売上高 |
900 |
1,100 |
1,300 |
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営業利益 |
50 |
80 |
150 |
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営業利益率 |
5.6% |
7.3% |
11.5% |
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ROE |
5.5% |
10.0% |
16.0% |
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)カワイグループのサステナビリティ
カワイグループは、サステナビリティ方針を定め、中長期的な企業価値の向上に努めております。
・サステナビリティ方針
KAWAI PhilosophyのVision「100年後もつづく、音楽文化を。」の実現に向け、より良い楽器づくりと音楽文化の貢献を目的とした企業活動を通じて、地球環境・社会との調和、さらには経営の健全性を確保することにより企業としての持続的な発展に努めるとともに、お客さまをはじめとした全てのステークホルダーの皆様と協働して持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
Environment
各事業分野でグローバルな視野に立って地球環境と資源を守るとともに、真に豊かな心と社会の実現に尽くしてまいります。
Social
継続して音楽文化発展に貢献していくことで、豊かでうるおいのある社会の実現を目指し、全てのステークホルダーの皆様との良好な関係を構築してまいります。
Governance
持続的な企業価値の向上を実現するため、法令やその他のルールを遵守し、健全かつ透明性の高い経営の実践に取り組んでまいります。
① ガバナンス
当社グループは、経営課題の一つにサステナビリティを定め、気候変動を含む持続可能な経営に関わる諸課題(サステナビリティ課題)の解決に貢献することを目指しております。サステナビリティに係る重要事項はサステナビリティ委員会にて審議を行ったうえで定期的(年に1回以上)に取締役会に報告を行うこととしています。取締役会はカワイグループのサステナビリティ課題への対応方針および実行計画などについての議論を行い、指示・監督を行ってまいります。また、サステナビリティ委員会の下部組織としてサステナビリティ推進部会を設置し、各サステナビリティ課題に対してそれぞれ専門部会がサステナビリティ活動を実効的に推進し、取締役会での意思決定が適切に組織に反映される体制を整えてまいります。
② 戦略
当社グループはサステナビリティ方針の実践のため、特に当社にとって重要であり対応していくべきサステナビリティ事項を、マテリアリティとして特定しました。
特定したマテリアリティは、カワイグループの経営における重要事項の一部と位置づけ、目標・指標や行動計画等を設定の上、全社の活動へ組み込み、取り組みを進めていきます。
<マテリアリティ特定のプロセス>
※ 1.サステナビリティ情報開示基準(SASB等)や、ESG評価機関の評価項目等に関連する事項
2.SDGsや社会課題に関連して、当社固有の活動が環境・社会・経済に一定のインパクトを与えている(与えうる)事項
<特定したマテリアリティ>
・気候変動への対応
・人財育成と働きがいのある職場環境の整備
・音楽文化発展への貢献
・品質・安全・顧客満足度の追求
・持続可能なサプライチェーンマネジメント
・ガバナンスの強化
また、当社グループは、「気候変動」、「人的資本」に関するリスク及び機会に対処するための方針を掲げております。
<気候変動>
当社グループでは気候変動が事業経営にどのような影響を与えるのかを検討し、重要課題への対応を経営戦略へと反映させることを目的として、シナリオ分析を通じた気候変動による影響評価を実施しています。気候変動に対する影響度及び対応策の考察・分析にあたっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)が報告している各シナリオを参考に、以下のような将来世界の仮説から、2030年及び2050年時点でのカワイグループへの影響についてリスクと機会について考察を実施しています。
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化から自社施設の直接的な被害の増加や、サプライヤーの被災によるサプライチェーンの寸断、また当社製品の重要な資源である木材資源の減少を想定しております。その他、継続的な化石燃料の需要拡大などを背景に、石油由来原材料の価格高騰から輸送コストの増加も懸念され、主にサプライチェーンの上流側に関わる支出増加や損失の拡大が懸念されます。一方で、平均気温上昇による巣ごもり需要の増加は、室内で楽しめる楽器製品への需要を後押しする要因の1つとなる可能性も認識しています。
1.5℃シナリオでは、脱炭素化に向けたカーボンプライシング導入による影響、再生可能エネルギー由来電力への切り替えに伴い、事業運営コストの増加が財務的にも影響を及ぼす可能性を想定しています。また、このような影響は当社のサプライヤーにも同様に求められることを想定しており、金属系素材をはじめ製品原材料の価格高騰も懸念されます。一方、環境負荷の少ない製品開発を通して、エシカル思考の高まった顧客の購買意欲を掻き立てる機会になると想定しており、製品の環境性能の向上が社会貢献と事業機会獲得の両軸で資するものと捉えています。
<影響度合い評価方法>
大:影響額が営業利益に対して3%以上のもの
中:影響額が3%に満たないもの
小:影響額が軽微、もしくは無いもの
※定量的な評価が困難な項目については、影響度合い評価方法で定める閾値に基づいて、参考としたパラメータや文献をもとに定性的に影響規模を分析しています
これらの分析結果を踏まえ、今後は気候変動影響に対するレジリエンス性を高めると同時に、経営の脱炭素化及びカーボンニュートラルの達成を見据え、引き続き取り組みを強化推進してまいります。なお、現在の取り組み状況としては、地球環境憲章を定め、現在も運用しているカワイグリーン調達ガイドライン、カワイ木材調達ガイドラインで定める資源の持続的な調達を目指し取り組みを推進しているほか、環境負荷低減に向けたCO2排出量や廃棄物量の削減目標の策定と進捗管理を実施しております。なお、その他個別具体的な活動報告についてはKAWAI Report上にて年次での報告を行っております。
<人的資本>
また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関しては、「従業員エンゲージメント向上で100年ブランドにふさわしい強靭な会社への成長を図る」という全社ビジョンの元、従業員の成長を支援するための人財育成を行うとともに、年齢・性別・国籍を問わず多様な従業員が個性を活かしながら能力を発揮できるよう、人財育成の基本方針、社内環境整備に関する方針(人財育成体系)及びダイバーシティ方針を掲げております。
・人財育成の基本方針
「従業員一人ひとりが能力を発揮することがカワイグループとしての成長につながる」という考えのもと、人財こそが最大の資産と捉え、人財育成を時代の変化に対応できる企業となるための重要な戦略課題と位置づけています。従業員一人ひとりが能力を発揮できる仕組みや環境を整備し、企業としての持続的な成長を図ってまいります。
・人財育成体系
従業員が自らのキャリアを創り自主的に成長していく姿勢を醸成するべく、以下のような体系で人財育成を行っています。
・ダイバーシティ基本方針
当社グループでは、女性、外国人、様々な職歴を持つ中途採用者など、人財の多様性を確保することが企業価値の向上につながると考えております。
多様な人財の採用・中核人材への登用を積極的に行い、それぞれの特性や能力が最大限発揮されるような職場環境の整備を行うことで、新たな価値を生み出す組織風土を醸成します。
また、カワイグループでは従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に「健康経営」を推進していくため、「健康経営宣言」を制定しております。
・健康経営宣言
カワイグループは、カワイで働くすべての人とその家族の心身の健康こそが、経営の理念で定める「創造性豊かな好感度企業を目指す」ための礎であり、当グループおよび社会にとっての大切な財産であると考えます。そのために、従業員一人ひとりが「音楽文化の担い手」として、持てる能力を最大限に発揮するとともに、働きがいを創造し、創業以来継続してきた音楽文化への貢献を継続・推進できるよう、会社、健康保険組合が一体となり、従業員およびその家族の健康維持・増進のための活動を積極的に支援してまいります。そして、従業員が能力を最大限に発揮し、いきいきと活躍することで、事業活動を通じて、幅広く人々の生活文化・音楽文化に貢献していくことを宣言します。
③ リスク管理
当社グループは、サステナビリティに関わる諸課題の管理体制及びプロセスについては、サステナビリティ委員会がその統括管理を実施することとしています。
リスクの特定にあたっては各事業部からの報告をはじめ、サステナビリティに関する社会動向や外部要請を参考にサステナビリティ委員会が重要度の大きなリスクについて識別及び評価し、サステナビリティ活動に関する計画・目標を定めます。この設定した計画・目標に沿ったサステナビリティ活動を推進し、事業統括部門・グループ会社の具体的活動の指示及びモニタリングを実施することで、リスクの未然防止や影響規模の緩和を図ります。なお、これらのプロセスを経て特定されたリスクはリスクマネジメント委員会とも共有いたします。リスクマネジメント委員会ではその緊急性なども勘案しながら、短期的かつリスクの発生時対応を行う組織として必要に応じて個別に管理を行います。
④ 指標及び目標
当社グループは特定したマテリアリティに対しまして、主な取り組み課題ごとに中期経営計画期間(2025年4月~2035年3月)における目標を設定しております。行動計画等を設定の上、全社の活動へ組み込み、目標の達成に向けて取り組みを進めていきます。
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マテリアリティ |
主な取り組み課題 |
中期経営計画期間における目標 (2025年4月~2035年3月) |
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気候変動への対応 |
GHG排出量削減(Scope1,2,3) |
・スコープ1&2のGHG排出量50%削減(対2016年) |
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人財育成と働きがいのある 職場環境の整備 |
人財育成、技能習得支援 |
・社内研修受講率100%(受講対象者ベース) ・竜洋工場カワイ作業者認定取得率30% ・調律師 国家資格取得率100% |
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働きがいのある職場環境づくり |
・ワークエンゲイジメント指数*の継続的な向上(年1pt向上) *ストレスチェックの結果より算出 |
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DEI*の推進 *Diversity/Equity/Inclusion (多様性/公平性/包括性) |
・DEI研修の継続的な実施 ・女性管理職比率 12.5% |
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労働安全衛生の確保及び健康経営 |
・労働災害度数率 0% ・健康経営優良法人認定におけるホワイト500の認定 |
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音楽文化発展への貢献 |
ピアニストの育成支援 |
・カワイ音楽コンクールの継続的な開催 |
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地域での音楽文化振興 |
・カワイコンサートの継続的な開催 ・工場見学の継続的な実施 |
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調律師の育成 |
・調律師の継続的な輩出 |
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品質・安全・顧客満足度の追求 |
品質、顧客満足度の向上 |
・顧客満足度の継続的な向上 |
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AI/IoT等のデジタル技術の活用 |
・デジタル技術を活用した新製品/サービス開発の促進 |
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持続可能なサプライチェーン マネジメント |
サプライチェーン上のESGリスク (労働問題、人権リスク)への 対応 |
・サステナビリティ調達ガイドラインの策定 ・本ガイドラインに沿ったサプライヤー評価実施 |
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取引先との協力、円滑な関係構築(人材不足、事業承継問題への対応) |
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ガバナンスの強化 |
取締役会の実効性向上 |
・実効性評価の毎年の実施と提言された課題への継続的な対応 |
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リスクマネジメントの実践 |
・リスクマネジメント体制の運用と重大なリスクへの対処 |
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災害リスクへの対応 |
・BCPの体制構築と定期的な更新 ・有事を想定した訓練の実施 |
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サイバーセキュリティへの対応 |
・情報セキュリティ基本方針の策定と情報セキュリティ管理体制の運用 ・セキュリティ強化の為の訓練の実施 |
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コンプライアンスの維持、強化 |
・コンプライアンス強化の為の継続的な啓蒙 |
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事業活動上の人権リスクへの対応 |
・人権方針の策定 ・人権DDの実施と救済措置の構築 |
また、当社グループでは、気候変動対応に関する目標について、SDGsへの取り組みの一環としてCO2排出量の売上百万円あたりの原単位削減を経営目標の1つとして設定しており、当社グループの気候変動対応の取り組み状況の評価指標として引き続きその進捗を追っています。2022年度~2024年度の3ヶ年計画としては、2021年度を基準年として毎年売上原単位あたりの排出量1%削減することを目標値と定め運用しています。
省エネルギーに配慮した工場設備の導入、LED照明への更新、太陽光発電設備の導入の結果、2024年度は2021年度比 5.4%の減少となり目標を達成しています。2025年度からの10年間は「スコープ1、2のGHG排出量を2016年度比で50%削減する」という中長期的な目標を設定しています。
なお、CO2排出量実績については、以下表の通りです。
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集計範囲 |
排出量実績(t-CO2) |
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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Scope1 |
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内訳 |
国内拠点 |
5,688.3 |
5,674.8 |
4,522.2 |
3,866.4 |
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海外拠点 |
443.1 |
448.5 |
288.2 |
288.8 |
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Scope2 |
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内訳 |
国内拠点 |
16,442.6 |
14,916.2 |
14,099.5 |
13,772.8 |
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海外拠点 |
6,180.9 |
5,897.1 |
5,039.1 |
4,462.8 |
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Scope1+2 |
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また、当社では、人的資本に関する指標として、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
なお、当指標に関しては、国内を中心に当社グループとして具体的な取り組みが行われているものの、必ずしも連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載は困難であり、提出会社における指標と目標を記載しております。
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
目標 |
達成時期 |
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3.3% |
6.7% |
6.7% |
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12.9% |
14.2% |
16.8% |
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9名 |
12名 |
11名 |
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46名 |
55名 |
81名 |
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※ 外国人に占める管理職比率、中途採用者に占める管理職比率については、2025年3月時点でそれぞれ0.0%、5.3%であり、中核人材の多様性を確保するべく、引き続き改善に努めてまいります。
なお、サステナビリティに関連する詳細につきましては、下記当社Webサイトをご覧ください。
https://www.kawai.co.jp/
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経済状況の変化によるリスク
当社グループが事業活動を行っている国内、欧米及び中国等の市場において、景気後退により急激に個人消費が低迷した場合、当社グループが提供する製品やサービスの需要の減少や価格競争が激化することによって、当社グループの業績が悪化する可能性があります。
当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化を注意深く見守り、状況に応じた対応が取れるように対策を行っております。
2.為替変動リスク
当社グループの主力事業である楽器事業における販売先は海外が多く、また主要な原材料である木材や多くの楽器部品を輸入しています。したがって為替変動は販売価格や原材料価格に影響し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、金融機関等と主要通貨の為替予約等のヘッジ取引を行っております。
3.国際化によるリスク
楽器の主要市場である欧米市場や中国市場における事業環境の変化、ピアノ及び電子ピアノ工場があるインドネシアや中国の政情の大きな変化、並びに税制等各国特有の法令に関する想定外の運用は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、関係部門における情報収集の他、各国の会計監査人や弁護士等の見解を確認しながら対応しております。
4.研究開発に関するリスク
他社との差別化のため技術研究を進めておりますが、開発した製品が市場に受け入れられない可能性、また他社が画期的な新製品を開発し市場が席巻される可能性もあります。その場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、常に市場の情報を収集するとともに市場のニーズに合致した技術研究を進めております。
5.設備投資、提携等に関するリスク
当社グループは事業の拡大のため、設備投資等の事業投資を行っております。また、他社との業務提携、出資、合弁会社設立などを行っております。これらの設備投資、業務提携、出資、合弁会社設立などの実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っていますが、状況によっては事業環境の変化により当初期待した効果が得られない可能性や、当該投資を行った資産が減損の対象となる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、重要案件を審議・決定やモニタリングできるよう、会議体・決定機関を配置しております。
6.市場競争激化のリスク
ピアノ及び電子ピアノの普及価格帯における競争が激しくなっております。それに対抗する製品を継続的に市場に投入してまいりますが、充分な競争力が発揮できなかった場合、当社グループの業績が悪化する可能性があります。
当社グループでは、競争力の有無については慎重に検討して市場投入し実施することとしております。
7.コスト増加のリスク
当社グループの製品の原材料となる木材、銅等の金属、樹脂等の部品の市況変化等による原材料コストの増加、原油価格の高騰等による物流コストの増加、海外人件費の高騰等による労務コストの増加など各種コストの増加が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、市況変化を確認しコスト増加のバランスを勘案した調達先の選択や分散を進めております。
8.取引先依存によるリスク
金属事業や塗装事業等における受託生産は、受託先企業の業績の影響を受けるとともに、品質や納期等において受託先企業の要求を満たせなかった場合、当社グループの業績が悪化する可能性があります。また、楽器部品など当社専用部品の生産委託先企業や、OEM生産委託先企業の経営状況の悪化などによる生産遅延や操業停止、主要取引先企業の受注変動等は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、受託先・委託先の情報を常に収集し、経営状況の変化に対応しております。
9.自然災害等に見舞われるリスク
近年、地震や気候変動により発生頻度・影響度が増大している自然災害、疫病、戦争、テロ等により当社グループの生産活動や営業活動が直接的又はサプライチェーンの寸断等による間接的な影響を受けた場合、当社グループの業績が悪化する可能性があります。特に国内主要施設が静岡県浜松市近辺に集中していることから東南海地震及び津波による本社及び工場への被害や営業活動への影響は大きなものとなる可能性があります。
当社グループでは、非常時の初期対応、報告方法、各対策本部の設置と役割について明記し、災害発生の際に適切な対応が取れるよう仕組みを構築しております。
10.人材の確保・育成に関するリスク
当社グループは平均年齢が高く、次世代を担う人材の確保・育成は重要な課題となっております。したがって、事業展開に必要な人材を確保できなかった場合や、生産部門の従業員による技術の継承が円滑に行われず人材育成が計画的に進まなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、新卒採用だけではなく、専門性をもつ人材の中途採用を進めております。また、技能継承を目的とした若手技術者の研修を定期的に行っております。
11.技術・技能流出のリスク
当社は楽器事業においてコストダウンやリスク分散のため海外生産を展開しています。これに伴い生産技術の流出や、知的財産の侵害による類似品や模倣品が出現した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、知的財産を管理する部門を設置し、技術の流出・侵害に対応しております。
12.製品及びサービスに係る事故等のリスク
当社製品による製造物責任を伴う事故は、コスト増大や社会的評価の低下をもたらします。また当社店舗や教室における火災や事故・事件、教室生徒及び講師等を巻き込んだ犯罪等により、当社のブランドイメージが損なわれた場合、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
当社グループでは、製品安全対策に関する管理体制を整備し、営業物件にはセキュリティ対策を講じるなど事故・犯罪等の発生の回避に努めております。
13.環境法制に関するリスク
当社グループが製造するピアノは、大半が木材を原材料とする部品で構成されており、その原材料の多くを海外調達しておりますが、海外における環境法制の変化が原材料の調達面に影響した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、環境負荷を考慮し、定期的な調達の検討に努めております。
14.感染症が流行するリスク
新型コロナウイルス・新型インフルエンザ等の感染力の強い感染症が流行した場合、当社グループが事業活動を行っている国内外の市場では、各国政府によるロックダウン(都市封鎖)や活動自粛要請などにより、生産活動においては、工場の一時的な操業停止や減産の可能性があります。また営業活動においては、店舗の営業自粛や音楽教室・体育教室の休講並びにコンサート等のイベント中止を余儀なくされる恐れがあり、流行の規模や期間によっては、収入の減少等により、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
当社グループでは、従業員等の感染の恐れが生じた場合の報告体制等の整備を行い、情報収集と感染予防対策の実施に努めております。
15.少子化進行のリスク
日本における少子化が、予想を超えて急速に進行した場合、当社の音楽教室や体育教室の業績を悪化させる可能性があります。また、少子化による市場の縮小により楽器販売が減少し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、対象世代を広げるとともに、各世代へのニーズに対応できるよう常に検討を行っております。
16.株価変動に関するリスク
当社グループは、取引先を中心に市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っております。したがって、株価の動向次第では、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、投資先企業の業績等の情報を収集し、保有についての検討を行っております。
17.情報システムに関するリスク
当社グループが事業活動を行っていく上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であります。コンピュータウイルスへの感染や不正侵入などにより情報システムの機能に支障が生じた場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、日々変化する情報セキュリティ情勢を常に把握し、適切な情報セキュリティ対策を検討・推進しております。
18.個人情報漏洩に関するリスク
当社グループは業務を円滑に行うため、お客様のお名前、ご住所、お電話番号、Eメールアドレス等の情報を取得・利用しております。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に意図せず違反した場合をはじめ、当社グループが扱う個人情報が漏洩した場合、当社グループの信頼の失墜等につながり、当社グループの業績が悪化する可能性があります。
当社グループでは、個人情報に関する規程及び管理体制を整備し、漏洩防止にあたっております。
19.インターネット等による風評被害に関するリスク
当社グループは、プレスリリース及び適時情報開示等により信頼の維持・向上に努めておりますが、インターネット等を利用した当社グループに関する誤った情報の書き込みや、それらを要因とするマスコミ報道等による風評・風説の流布が発生・拡散した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、リスクマネジメント委員会及び情報セキュリティ委員会を設置し、情報に関する不測の事態の対応体制を整えております。
20.退職給付債務及び退職給付費用に関するリスク
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で設定される割引率等の前提条件に基づき適正な金額を計算しています。この前提条件は、市場金利の影響を受けることから実際の結果とは異なる場合があり、退職給付債務が増加する可能性があります。その場合、当社グループの業績と財務状況に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、割引率等が実際と乖離しないよう適正な情報に基づいて計算を行っております。
21.ロシア・ウクライナ情勢に関するリスク
当社グループは、ロシア国内に連結子会社カワイピアノ・ロシアを有しており、ロシア・ウクライナ情勢の趨勢により財政状態等に影響を与える可能性があります。
22.在庫に関するリスク
当社グループは生産効率の最大化及び販売機会の最大化を目的として、在庫を保有しておりますが、市場の動向により在庫の増大、保管費用の増加に影響し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、常に需要と供給のバランスを把握し在庫状況を管理するなど、リスクの最小化に努めております。
23.取引相手国の法規制に関するリスク
当社グループは、教育・文化に密接にかかわる製品を扱っており、取引相手国の教育・文化に係る法規制の変更などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
24.金利が上昇するリスク
上記1~23の事象の発生等により、当社グループの業績が著しく悪化した場合や金融機関を取り巻く環境が大幅に変化した場合、金融機関からの資金借入れ条件が厳しくなることが考えられます。借入金の金利上昇は当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
当社グループでは、資金の借入に備え、コミットメントライン・当座借越契約を締結しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループにおける連結業績は、売上高は 72,918百万円(前年同期比 9.1%減)、営業利益は 316百万円(前年同期比 90.3%減)、経常利益は 474百万円(前年同期比 88.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は 405百万円(前年同期比 85.4%減)となりました。
当社グループは第7次中期経営計画「Resonate 2024」(2023年3月期から2025年3月期)の最終年度として、2027年に迎える「創立100周年」とその先の継続的な発展に向け、掲げている重点戦略に取り組むとともに、第8次中期経営計画「KAWAI 十年の計」(2026年3月期から2035年3月期)の準備期間として、在庫削減、品質向上、新製品開発、組織改定等を実行し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けた対応を進めました。
こうした中で、2024年11月に開催された「第12回浜松国際ピアノコンクール」では、シリーズ最高峰のフルコンサートピアノ『SK-EX』が第1次予選出場者87名中37名、また上位入賞者6名のうち3名に選択されるなど、当社にとって大きなトピックとなりました。
商品政策としては、ポータブルモデルであるESシリーズのラインナップを拡大し、コンパクトでありながら高い演奏性と高品質な音を実現した新製品『ES60』を2024年11月に発売しました。
ブランド強化の施策として、鍵盤楽器事業のブランドメッセージ『Instrumental to Life』を新たに制定し、2025年1月に米国で開催された世界最大規模の楽器見本市「2025 NAMM Show」で発表しました。新たなブランドメッセージには「音楽が人間の本質的な表現手段であり、当社がその架け橋となりたい」という決意が込められており、これからも音楽を通じて人生に寄り添い、心に響く体験を提供し続けます。また、同年3月には経営の理念などを見直し、新たな企業理念体系『KAWAI Philosophy(Mission, Vision, Values, Credo)』を制定しました。
財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末の流動資産は、現金及び預金の減少などにより 48,518百万円(前期末比 2.4%減)となりました。また固定資産はその他有形固定資産の増加などにより、 25,472百万円(前期末比 6.9%増)となりました。資産合計は 73,991百万円(前期末比 0.6%増)となりました。
(負債)
当連結会計年度末の流動負債は、支払手形及び買掛金の減少などにより 17,475百万円(前期末比 4.5%減)となりました。また固定負債は、退職給付に係る負債の減少などにより 11,973百万円(前期末比 1.0%減)となり、負債合計は 29,449百万円(前期末比 3.1%減)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は 44,541百万円(前期末比 3.2%増)となりました。これは、為替換算調整勘定の増加などによるものです。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(楽器教育事業)
楽器教育事業は、新型コロナウイルス感染症拡大時の巣ごもり需要の反動や物価高に伴う消費者マインドの悪化などにより、売上高は 58,379百万円(前年同期比 11.1%減)となり、在庫水準適正化のための減産の影響や材料費の高騰などにより営業損失は 701百万円(前年同期は営業利益 2,353百万円)となりました。
(素材加工事業)
素材加工事業は、自動車関連部品の受注増加などにより、売上高は 9,729百万円(前年同期比 2.0%増)となり、営業利益は 859百万円(前年同期比 14.0%増)となりました。
(その他事業)
その他事業は、医療機関向けIT機器販売の受注減少などにより、売上高は 4,809百万円(前年同期比 3.5%減)となり、営業利益は 236百万円(前年同期比 4.1%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は 1,698百万円(前年同期に得られた資金は 1,442百万円)となりました。これは主に売上債権の増加による減少 870百万円、仕入債務の減少による減少 1,125百万円、法人税等の支払額 1,219百万円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は 2,291百万円(前年同期に使用した資金は 943百万円)となりました。これは有形固定資産の取得による支出 1,529百万円、土地使用権の取得に係る手付金支出 1,244百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は 1,033百万円(前年同期に使用した資金は 1,844百万円)となりました。これは長期借入金の返済による支出 787百万円、配当金の支払額 818百万円などによるものであります。
これらにより、当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、換算差額等を含め前連結会計年度末に比べ 4,597百万円減少したことなどにより、当連結会計年度末には 12,466百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金需要のうち主なものは楽器製造のための材料費、楽器製造・販売及び音楽教室等の運営に携わる要員の給料手当、福利厚生費などの人件費の他、販売並びに役務提供に関する販売促進費、運送・保管料、物件費等であり、営業キャッシュ・フローによる充当を基本としています。また、設備投資資金については、自己資金及び金融機関からの借入れによっております。
当連結会計年度末において複数の金融機関との間で機動的な資金調達が可能となるコミットメントライン契約及び当座貸越契約等を締結し、15,080百万円の資金調達枠を設定しており、事業展開での資金需要に伴う手元資金の一時的な減少を防ぎ、経営の更なる安定化を図っております。(借入実行残高 4,825百万円、借入未実行残高 10,255百万円)
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、当連結会計年度末現在における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りについては、継続して評価を行っております。
なお、見積り及び評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性がありますため、実際の結果は異なる場合があります。
会計上の見積りの重要なものについては以下のとおりであります。
(棚卸資産)
当社グループは、棚卸資産については、主として総平均法による原価法を採用し、期末における正味売却価額が収益性の低下により取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額に帳簿価額を切り下げております。正味売却価額は期末前の一定期間の販売実績等を用いて算定しております。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すべきであると判定し、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として処理しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては、主として取締役会により承認された翌連結会計年度の計画及び中期経営計画等に基づき慎重に検討を行っております。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、資産及び負債の金額についての、会計上と税務上の差額である一時差異等に係る税金の額について、将来の会計期間において回収または支払が見込まれない税金の額を除き、繰延税金資産または繰延税金負債として計上しております。繰延税金資産につきましては、合理的な仮定に基づく業績予測によって見積もられた、将来の課税所得または税務上の欠損金に基づき、将来の回収可能見込額を毎期見直しております。当社グループは、将来の課税所得の見積りについて、主として取締役会により承認された翌連結会計年度の計画及び中期経営計画を基礎として見積りを行っております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異等のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において繰延税金資産の取崩が発生する可能性があります。
なお、詳細に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
楽器教育 |
31,427 |
84.6 |
|
素材加工 |
10,029 |
97.6 |
|
その他事業 |
194 |
72.8 |
|
合計 |
41,651 |
87.3 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
楽器教育 |
8,130 |
70.1 |
|
素材加工 |
155 |
95.3 |
|
その他事業 |
3,671 |
90.9 |
|
合計 |
11,957 |
75.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、商品仕入実績に著しい変動がありました。これは、中国市場向けピアノの仕入が減少したこと等によるものです。
c.受注実績
当連結会計年度における素材加工事業及びその他事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
なお、素材加工事業、その他事業の一部を除く製品については主に見込み生産を行っております。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
素材加工 |
6,759 |
88.6 |
670 |
119.7 |
|
その他事業 |
5,325 |
107.1 |
2,173 |
165.3 |
|
合計 |
12,084 |
95.9 |
2,844 |
151.6 |
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
楽器教育 |
58,379 |
88.9 |
|
素材加工 |
9,729 |
102.0 |
|
その他事業 |
4,809 |
96.5 |
|
合計 |
72,918 |
90.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
パーソンズ ミュージック コーポレーション グループ |
9,976 |
12.4 |
- |
- |
※当連結会計年度のパーソンズ ミュージック コーポレーション グループの販売実績については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(資本業務提携契約)
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契約会社名 |
相手先の名称 |
契約 締結日 |
契約期間 |
契約の内容 |
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(株)河合楽器 製作所 |
(株)学研 ホールディングス |
2015年 7月31日 |
自:2015年10月1日 至:2020年9月30日 以後1年ごとの自動更新 |
業務提携 ① 教室事業の拡大 ② シニア向け事業の拡大 ③ グローバル事業の拡大 ④ 園・学校向けの教室運営ノウハウやコンテンツ、リソースなどを活用し、それぞれの事業拡大に向けた連携 ⑤ 人材の交流 資本提携 ① 株式の相互保有 |
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(株)河合楽器 製作所 |
パーソンズ ミュージック コーポレーション |
2017年 2月9日 |
自:2017年2月9日 至:2027年2月8日 以後1年ごとの自動更新 |
業務提携 ① KAWAI ブランドの楽器生産 ② KAWAI ブランド商品のプロモーションと販売、アフターサービス ③ 音楽教室展開と講師人材の育成 ④ ピアノ調律サービスの普及、調律技術者の育成と調律技術の向上 ⑤ その他、新商品・サービスの企画・開発、音楽イベントの企画等、音楽産業の発展と音楽文化振興に資する事業活動全般 資本提携 ① パーソンズ ミュージック コーポレーションは当社株式を共同保有 ② (株)河合楽器製作所はパーソンズ ミュージック コーポレーションの完全子会社であるパーソンズ ミュージック ホールディング リミテッドが発行した転換社債型新株予約権付社債を保有 |
当社グループは、より良い楽器づくりと音楽文化への貢献を目指すとともに、持続的な企業の成長に向け、楽器教
育事業、素材加工事業の各セグメントにおいて研究開発活動を行っております。当社および連結グループ全体の研究開発要員は86名で、研究開発費は
① 楽器教育事業
アコースティックピアノに関しては、海外市場向けにアップライトピアノの開発を行っております。従来の温かみがあり色彩感のある当社こだわりの音色に加え、低音域の深みと力強さ、高音域の明瞭で抜けの良い響きを追求するため、基本設計からケース設計、ハンマーに至るまで新たに開発を行いました。あわせて、内装および外観品質の向上にも注力し、総合的な製品価値の向上を図りました。本試作品を2025年1月に開催された世界最大規模の楽器見本市『2025 NAMM Show』に出展し、現地ディーラーよりさまざまなご評価をいただくことができました。今後はいただいた評価を基に更なるブラッシュアップを行い、2025年度中の発売を目指しております。
また、欧州市場から多くのご要望をいただきました、アップライトピアノの艶消し塗装やクリスマスシーズンに合わせた配色に対応するため、ウォルナット艶消し塗装仕上げのアップライトピアノ『LD-200W』、赤塗色のアップライトピアノ『K-200FRS』を開発、発売しました。
国内市場ではオンライン販売の更なる強化を図るため、インテリア性に優れた『LD-200』に当社オンラインショップ限定色を開発、発売しました。
電子ピアノに関しては、ポータブルタイプの電子ピアノ『ES60』を開発、発売しました。軽量コンパクトなモデルながら、新開発の本格的ハンマーアクション鍵盤を搭載しており、ビギナーから中上級者まで幅広いユーザーにご好評をいただいております。また、当社の電子ピアノの特徴である響板スピーカーや木製鍵盤についての研究開発も推進しており、更なる製品競争力の向上に努めております。
音楽教室に関しては、2024年4月に開設した「新3歳グループコース」の進級先として、「新4歳グループコース」の研究開発を行いました。当コースはグループでピアノを学ぶことを目的としたコースで、アンサンブルやリトミック等、通常のピアノ個人レッスンでは行えないグループならではの活動を取り入れ、楽しみながらピアノ演奏やソルフェージュを学ぶことを目的としたコースです。2025年4月よりエリア限定の研究クラスを開講し、レッスン内容を検証しながらカリキュラムを改修、2026年4月より正式コースとしての全国展開を計画しております。
体育教室、英語教室、絵画造形教室に関しては、各カリキュラムの研究と教材の開発を継続的に行っております。体育教室では、子ども向けの体育教室にとどまらず、企業向けの体力測定やフィットネスプログラム、高齢者向けの介護予防プログラム、また、指導者育成マニュアルのデジタル化やスマートフォン対応アプリを利用した新たなイベント企画にも取り組んでおります。
音楽ソフトウェアに関しては、楽譜認識作成ソフトウェアの学校向け製品『スコアメーカー 学校版 13』を開発・発売しました。今回、新たに児童生徒用画面を開発しました。また、複数の児童生徒による楽譜の共同制作を支援する機能として、楽譜の分割・結合機能を開発しました。一方、一般向けの楽譜認識作成ソフトウェア『スコアメーカーZERO』に関しては、他社のボーカル音源が利用可能なVST3音源対応、楽譜認識精度の向上、楽譜編集機能の改善など、継続的な改良を行っており、新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの満足度向上に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は
② 素材加工事業
カワイ精密金属株式会社は、自動車向け異形条の開発およびローコスト製法の研究、合わせ材料(クラッド)における物性、塑性研究といった異種金属接合加工研究など、金属全般の異形加工に関する研究を行っております。株式会社カワイ音響システムは、個人用途では楽器演奏、ボーカル練習、映像配信などに使用できる防音室を、法人用途では研究機関や企業向けの実験室、検査室、会議室などに使用できる防音室の研究開発を行っております。株式会社カワイハイパーウッドでは、自動車向け本杢塗装部品を柱にカーボンフリーを意識した素材、塗装工法においても研究を行っております。
当事業に係る研究開発費は