第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、パーパスである「人が活きる社会の実現」に向け、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとして、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指しております。

当社は1945年、設立の主旨に賛同した技術者たちが、資金、技術、労働力を提供し合って「協同の工業・岡村製作所」としてスタートを切りました。その創業の精神は、「創造、協力、節約、貯蓄、奉仕」の5つの言葉からなる社是と、これを受けた「基本方針」により企業文化として定着し、「よい品は結局おトクです」をモットーに、お客様のニーズを的確にとらえたクオリティの高い製品とサービスを社会に提供することに努めてまいりました。これらは、「オカムラのDNA」として、現在のオカムラグループの経営と事業活動に受け継がれております。

企業理念である「オカムラウェイ」は、ミッション(経営姿勢)、オカムラ宣言(めざすありたい姿)、私たちの基本姿勢(大切にする価値観)の3つで構成され、全ての根幹には、「人が活きる」という視点があります。

サステナビリティの重要性がますます高まる新しい価値観の中、一人ひとりが「活きる」ことこそが社会課題の解決につながる。その信念と使命感のもとに、オカムラグループは、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指しています。なお、「オカムラウェイ」を通じた活動や取り組みについては、当社ウェブサイト(URL https://live.okamura.co.jp/)に掲載しております。

持続的な成長に向け、新たな需要の創出と変化に対応できる経営基盤強化をはかるとともに、事業を通じた社会課題解決に取り組んでまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社は、当連結会計年度である2024年3月期から2026年3月期までの3ヵ年を対象とする「中期経営計画2025」を策定しております。なお、直近の業績および事業環境を踏まえ、2024年5月10日に定量目標を上方修正しております。

 

① 中期経営計画2025で目指すもの

・新たな需要の創出

時代の流れを捉え、提案力と製品力を磨き、「需要創出型企業」への変革を加速する

変化に対応できる経営基盤強化

-人財育成と働きがいの向上:キャリア形成支援と専門人財の育成、働きがい改革の推進

-デジタル技術活用の加速:「経営」「事業」「業務」へのデジタル技術活用の加速とDX人材育成

-多品種変量生産への対応:環境の変化に対応する生産システムの変革による競争優位の維持・強化

-市場に根ざした海外事業の展開:M&A、現地有力パートナーとの提携・合弁による地産地消型事業の展開

事業を通じた社会課題への取り組み

事業を通じた社会課題への継続的な取り組みと2050年カーボンニュートラル実現に向けた地球環境への長期的取り組みの着実な実行

 

② 2026年3月期定量目標(括弧内は修正前)

・売上高    3,250億円以上( 修正前 3,000億円以上 )

・営業利益    270億円    ( 修正前   240億円   )

・営業利益率   8.0 %    

・ROE     10.0 %   

 

③ 投資と株主還元の基本方針

・成長に向けた投資

戦略投資枠として500億円を設定し、既存事業の強みの維持・強化と新規市場・事業開発にバランスよく投入する

・株主還元

配当性向は、前中期経営計画より引き上げ、40%以上を安定的に維持する

自己株式の取得は、投資の実行状況や外部環境等を踏まえ柔軟に対応する

 

 (3) 経営環境及び対処すべき課題

① 事業環境の変化

今後の日本経済は、ウクライナ・中東情勢を巡る地政学的リスク、諸資材・部品の価格高騰、米国の長引くインフレに対する金融引き締め政策にともなう大幅な円安など、先行きは極めて不透明な状況となっております。また、諸資材の高騰、人的資本経営の為の費用増加等が見込まれ、インフレ経済への対応が経営の重要課題となっております。

このような事業環境のなか、ハイブリッドワーク時代における新しいオフィスへのシフトや、流通業における人手不足への対応などによる社会・市場の大きな変化を捉え、新たな需要の創出を目指してまいります。

 

② 各事業における対処すべき課題

主力のオフィス環境事業につきましては、人財確保やコミュニケーション不足などの経営課題解決に向けて、「行きたくなる」オフィスづくりの需要は、全国に広まっており、旺盛に推移すると予想しております。

このような状況のもと、当社の強みである未来の働き方の研究成果と豊富な納入実績を通じた知見に基づく提案力、時代の変化を先取りした製品開発により新たな需要を創出し、売上高、営業利益の拡大を目指します。

 

商環境事業につきましては、人手不足を背景とした店舗の省人・省力化の需要は、地域、業態を問わず旺盛に推移すると予想されます。また、環境配慮などの小売業における社会課題の解決が、提案における重要度を増しております。

このような状況のもと、当社の強みである店舗什器、冷凍冷蔵ショーケースを始めとする豊富な製品と、提案からアフターサービスまでの一貫したサービス機能とお店づくりにかかわるデザイン・研究開発の体制を活かして、小売業が抱える様々な社会課題を解決し、みらいの店づくりをサポートすることで売上高、営業利益の拡大を目指します。

 

物流システム事業につきましては、物流施設の作業員不足を背景とした省人・省力化関連需要が旺盛に推移すると予想されます。

このような状況のもと、物流システムの統合インテグレーターとして、経営課題解決コンサルティングから保守サービスまでの一貫した体制を充実させ、事業規模拡大と利益確保を目指します。また、先進技術を用いた差別化製品の研究・開発に取り組んでまいります。

 

生産性・効率性の向上につきましては、変化する需要に柔軟に対応できるスマートファクトリーを目指して、生産供給体制を強化していきます。効果的な設備投資と継続的な改善活動により、生産性の向上を図るとともに、効率性と安定供給の両立に取り組んでまいります。また、より一層の安全・健康に働ける職場づくりを土台とし、全社にわたる人財育成と働きがい改革の実践、デジタル技術活用も含めた業務効率化への取り組みを一層強化し、競争力の向上に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方および取り組み】

(1)サステナビリティに関する考え方および取り組み

当社グループは、パーパスである「人が活きる社会の実現」に向け、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとして、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指しています。「人が活きる社会の実現」には、サステナビリティを中心に捉えた事業活動が重要であるとの認識のもと、事業活動の経済的側面と同時に社会的側面・環境的側面の重要性を認識し、「オカムラグループサステナビリティ方針」を掲げ、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んでいます。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

※オカムラグループサステナビリティ方針

https://www.okamura.co.jp/corporate/sustainability/policy/sustainability_policies.pdf

 

① ガバナンス

代表取締役を委員長とし、各事業本部およびコーポレート部門を統括する執行役員により構成されるサステナビリティ委員会を設置し、マテリアリティ(経営の重要課題)に関する年度計画に基づき、当社グループ全体の取り組みを推進・サポートし、進捗をモニタリングするとともに、対応方針の立案を行っています。

サステナビリティ推進部は、サステナビリティ委員会の事務局として委員会の運営を行うとともに、委員会で承認された事項について社内の各組織を通じて事業活動へ展開し、定期的にフォローを行っております。

また、全社横断のサステナビリティ推進プロジェクトにおいて、各事業本部の推進フォローおよび従業員への活動の浸透化を図っています。

これらの活動結果は定期的に取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っています。


② 戦略

当社グループは、「人を想う」ことで培ってきた3つの強み、「顧客との信頼関係」「顧客課題解決力」「確かなものづくり」をさらに磨き、「人が活きる社会の実現」を果たします。2023年5月発表の「中期経営計画2025」では、事業を通じて社会に貢献するとともに持続的な企業価値の向上を目指す姿勢を明確にしています。

「人が活きる社会の実現」にはサステナビリティを中心に捉えた事業活動が重要であるとの認識のもと、マテリアリティ(経営の重要課題)を特定し、4つの分野で取り組みを推進しています。

「責任ある企業活動」を経営基盤とし、「従業員の働きがいの追求」によって一人ひとりが活き活きと働きがいを感じるとともに、「地球環境への取り組み」を実践することで、サプライチェーン全体を通じて環境負荷を低減していきます。事業活動を通じて「人が活きる環境の創造」を実践することにより人が活きる社会の実現に貢献します。

重点課題への活動を推進し、社会に貢献するとともに持続的な企業価値の向上を目指します。

 

・マテリアリティ(経営の重要課題)

 


 

 

③ リスク管理

事業等のリスク」に記載の通り、当社グループのリスク全般について合理的にコントロールし、リスクがもたらす損失の最小化または機会の最大化を図るよう、サステナビリティ推進活動と有機的に結び付けて、計画的に推進しています。

また、サステナビリティの計画的な推進を目的として設置した、サステナビリティ委員会の事務局であるサステナビリティ推進部が、リスクマネジメント事務局としても関わっており、リスクマネジメントの運営を支援・推進しています。

重要課題の一つである「地球環境への取り組み」の活動として、気候変動リスクへの対応としては、パリ協定に準じた世界の平均気温上昇を、産業革命以前に比べて1.5℃以下に抑えるため、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量削減目標を設定しています。この目標は、国際的なイニシアチブ「SBTi(The Science Based Targets initiative)」により、2022年10月にSBT認定を取得しました。また、2023年5月発表の「中期経営計画2025」では、事業を通じて社会課題へ継続的に取り組む事を掲げ、今後さまざまな取り組みを進めていきます。

当社グループでは、「地球環境への取り組み」をビジネスの機会と捉え、サーキュラーエコノミー(循環経済)の概念に基づいた「サーキュラーデザイン」の考え方を策定しました。資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出し、資源・製品価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を積極的に進め、2050年カーボンニュートラル実現に向けて着実に実行していきます。

オカムラグループ気候変動情報開示

https://www.okamura.co.jp/corporate/sustainability/report/pdf/2024/TCFD_open_240625.pdf

 

④ 指標と目標

「人が活きる社会の実現」にはサステナビリティを中心に捉えた事業活動が重要であるとの認識のもと、マテリアリティ(経営の重要課題)を特定し、「人が活きる環境の創造」「従業員の働きがいの追求」「地球環境への取り組み」「責任ある企業活動」の4つの分野で取り組みを推進しています。

重要課題は、サステナビリティに関する各種ガイドライン、評価機関の調査項目、社内の方針や規範、社内外のアンケート・ヒアリング等多様な視点を統合し、ステークホルダーにとっての重要性と当社グループにとっての重要性を定量的かつ定性的に分析し、特定しました。

また、特定した重要課題を着実に実施するため、各課題それぞれにKPIを定め、年度毎の目標値を設定してその達成に向けた取り組みを推進、サステナビリティ委員会·サステナビリティ推進プロジェクト等の推進組織の中で、取り組みの進捗についてモニタリングしています。

 

・重要課題のKPIと2023年度目標・実績、2024年度目標

a.分野:地球環境への取り組み


 

b.分野:従業員の働きがいの追求


 

c.分野:責任ある企業活動


 

※重要課題の「人が活きる環境の創造」については、事業活動中心の内容で、中期経営計画としてKPI・年度目標を設定しているため、こちらには掲載していません。

 

(2)人的資本に関する考え方および取り組み

① 人財の育成に関する考え方(戦略)

当社は創業以来、経営の基本方針において、従業員を共に企業を繁栄させる協力者でありチームの一員と捉え、「創造・協力・節約・貯蓄・奉仕」を社是に、人を中心とした経営を行ってまいりました。創業の精神を踏まえ、「人が活きる」ことを経営理念として掲げながら、以下の考え方に基づき、持続的成長を支える従業員のエンゲージメント向上に向けて人財育成と働きがい改革を一段と進め、従業員一人ひとりが自分らしく活き活きと働くことができることで、環境の変化に対応できる「強いオカムラ」を目指してまいります。

 

・従業員一人一人が活き活きと働き、WiL-BE(注)を実現できる環境づくりを通して、エンゲージメントを高め、最大限の成果を発揮することによって企業価値を向上させる。

・経営戦略を実現するために必要な人財ポートフォリオを構築し、採用、育成、評価、処遇、配置の人財サイクルによって従業員一人一人の成長とキャリア形成を図る。

・全社一体で最大限のパフォーマンスが発揮できる組織の構築と人財の配置を行い、オカムラウェイ(経営理念)の浸透とチームワークの強化で経営目標を達成する。

 

(注)当社では働き方改革を「WiL-BE(ウィル・ビー)」と名付けて推進しています。「WiL-BE」は当社が提唱する「Work in Life(ワークインライフ)」に由来していますが、 Work in Lifeは「Life(人生)にはさまざまな要素があり、その中の一つとしてWork(仕事)がある」という考え方です。

 

 

② 「人財育成」と「働きがい改革」の2本柱

・人財育成

変化の激しい社会で「答えのない問題を解く力」を身につける人財を育てることを念頭に置き、これまで以上に時間とお金を積極的に投資し、併せて若手の登用・抜擢も推進していきます。具体的には、従業員一人ひとりが未来のキャリアを描き続け、多様な経験を通じて成長し続けることを「オカムラキャリアジャーニー」とし、従業員が持つ知識やスキルなどの人財情報を、重要な経営資源として捉え活用できるよう、タレントマネジメントシステムを導入しています。今後もさらに整備をすすめることで、従業員と組織のパフォーマンスを最大化し、適材適所の人財の流動性を高めるとともに、従業員が自身の異動や昇格履歴、職務内容や実績など、いつでも閲覧することにより定期的に自分のキャリアを振り返り、今後どのように成長していきたいかを自律的に考えるきっかけにつなげていきます。

・働きがい改革

従業員一人ひとりが自分らしく活き活きと働けることを目指し、2018年6月から推進してきた「働き方改革WiL-BE」を「働きがい改革WiL-BE2.0」へ進化させ、具体的に2022年度は、社内コミュニケーションの活性化を目指し「働きがい向上の流れをつくる」「働きがい支援の流れをつくる」ことを目標に活動を行ってきました。2023年度は、所属長を実施責任者とし、働きがいに関して相互理解を進める場として「働きがい会議」を開催しました。また、2023年1月には、従業員と経営層が対話を行う仕組みで、従業員からの質問に代表取締役社長執行役員が自ら直接回答する「教えて!中村さん」がスタートしました。さらに、2023年4月には、新「提案制度」により、広く従業員から業務改善などの提案ができるようにするなど、社内コミュニケーションの活性化を図ってきました。8月には、従業員全員を対象としたエンゲージメントサーベイを初めて導入しました。今後は、それぞれの職場課題の解決を図り、従業員のエンゲージメント向上を目指していきます。

今後も人財育成と働きがい改革を両輪として、従業員と会社がともに成長することを目指して様々な取り組みを展開していきます。

 

③ 取り組み事例

「オカムラ ユニバーシティ(略称:オカユニ)」

オカムラでは、従業員が自律的な学びをデザインすることを目的とし、2020年にオカムラ ユニバーシティを

開校しました。4年目となった2023年度は、従業員が「オカムラキャリアジャーニー」の実現に向かう一歩と

して、ビジネススキルからパーソナルスキルまでの幅広い講座での学びを通じて自分が目指すものへ近づき、

今後のキャリアや自己成長について主体的に考えるきっかけとなっています。

 

「サクセッションプラン(次世代リーダー研修、オカムラビジネススクール)」

オカムラでは、企業の持続的成長と変化するビジネス環境への対応力を高めるべく、変革を担える次世代の「経営人財」の育成を行っています。育成を通して「経験×知識×勘所」を磨き、経営人財が自身のキャリアジャーニーを描き研鑽を積んでいく施策を3段階にて展開しています。1つ目は、非管理職を対象にケースを使いビジネススキルの習得と、アクションラーニングを通して代表取締役や役員に自社課題の提案を行う「次世代リーダー研修」を9カ月間かけて実施しています(過去114名受講)。2つ目は管理職を対象に、外部講師に加え社内外の役員が講話を行い、経営課題を描き解決に向けたアクションに取り組む「オカムラビジネススクール」を2022年に開校しました(1期生13名、2期生16名)。「企業経営」等について幅広くテーマを選定し、外部コンサルタントの指導により毎月1回対面で1年間実施しています。3つ目は研修修了者の一部を外部研修や国内のビジネススクールへ派遣し、社内外を含めた多様な知見の共有や経営感覚を磨く機会を設け、習得した知見を現場で発揮できる状態を目指しています。

 

「グローバル人財育成制度」

海外市場の拡大に対応できるグローバルな人財の育成を目的とする制度です。公募型で選抜した対象者は、通常業務から離れ国内の語学学校へ3ヵ月間集中して通学します。会話や文法、ビジネスコミュニケーションの他に、異文化理解等の講座を設けています。国内語学留学後、海外での語学留学や海外ビジネスに関わる業務への従事、海外現地法人に赴くなど、実際のビジネスを経験することで、海外勤務における総合的な適応力を養います。2022年度は7名が英語、2名が中国語を国内語学学校で学び、うち1名が米国の語学学校へ留学、3名が海外営業本部へ異動しました。また2023年度は9名が英語を国内語学学校で学び、うち3名が海外営業本部へ異動し活躍しています。

 

「DX人財」

変化の激しいビジネス環境下で、多様化するお客様のニーズや社会課題に柔軟かつ機動的に対応するため、経営戦略の一環としてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を強化いたします。最先端のデジタル技術を積極的に活用し、「人が活きる」環境づくり、各事業の成長に貢献していきます。DX教育として、全従業員に対してe-ラーニングを実施いたしました。また、全社横断的に人財を募りDX専門人財を育成するためのオンライン講座を実施し、「デジタル技術の活用」によって、これからの社会で活かせる仕組みや手法を発想し、実践して、顧客・従業員の体験価値を向上できるオカムラパーソンの育成を実施しております。

 

「女性活躍推進」

オカムラグループでは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの観点から、性別を問わず、一人ひとりの従業員が能力を発揮できる職場環境の整備に努めており、それぞれの違いや強みを活かすことができるよう、理解を深める施策を実施しています。オカムラでは、女性管理職比率を2024年度までに7%に上げることを目標にしています。女性管理職を増やす施策として、女性従業員がリーダーシップスキルとマインドを習得するための研修を実施しています。

 

「エンゲージメントサーベイ」

従業員の働きがいを定点観測するため、外部機関を利用したエンゲージメントサーベイを実施しました。回答率は97.7%、全社の結果平均はAからDのうち、Cレーティングでした。結果を踏まえ、「会社方針と自分の仕事の繋がり強化」、「上下間のコミュニケーション強化」、「働きやすさの追求」を重点課題とし、エンゲージメント向上に向け、具体的な施策を進めています。

 

「健康経営」

オカムラグループでは、「Work in Life」の基盤として健康経営を位置づけ、「オカムラ健康経営宣言」および「オカムラ健康経営の考え方」に基づき、健康経営推進体制を構築し、各種健康診断や疾病予防対策の充実、年次有給休暇取得促進などの取り組みを進め、従業員の健康に配慮した職場づくりに努めています。また、従業員の健康意識向上を促し、自ら健康増進に向けて取り組んでいけるように、ヘルスリテラシー教育や情報発信を行っています。

 

「重点施策」

・ 定期健康診断100%受診と受診後のフォロー実施

・ 二次健診の受診率向上

・ メンタルヘルス対策(セルフケア、ラインケア)

・ ストレスチェック結果による産業医面談実施の促進、長時間労働者への産業医面談実施

・ プレゼンティーズム(注)の改善によるパフォーマンス値改善

・ 年次有給休暇取得率の向上

・ 禁煙の促進

・ 特定保健指導の実施率向上

・「安全」を最優先に労働災害と交通事故の撲滅

 

(注)プレゼンティーズム(疾病就業):何らかの健康問題により業務効率が落ちている状態

 

指標と目標については、「(1)サステナビリティに関する考え方および取り組み ④指標と目標 b分野:従業員の働きがいの追求」をご参照ください。

また、詳細は「サステナビリティレポート」に記載し、当社ホームページ等で公開しております。  

  https://www.okamura.co.jp/corporate/sustainability/

 

 

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

(1) リスクマネジメントの体制

当社グループは、事業目的の達成に影響を及ぼす可能性(好ましい影響・好ましくない影響の双方を含む)をリスクと認識し、リスクの特定、分析および評価を行ったうえで、リスクを合理的にコントロールしてリスクがもたらす損失の最小化または機会の最大化を図るよう、組織的に活動しています。

また、リスクに係る上記の組織的な活動であるリスクマネジメントを、グループのサステナビリティ活動と有機的に結びつけて、その有効性の向上を図るため、サステナビリティ活動の計画的推進を目的として設置されたサステナビリティ委員会において、グループのリスクマネジメントに関する基本方針、重点対応リスクおよび対応策の決定ならびにリスクマネジメントの有効性評価等を行っております。

なお、サステナビリティ委員会およびリスクマネジメントにおける役割の概要に関しては、次のとおりです。

 

 サステナビリティ委員会

a.目的  グループのサステナビリティ活動の計画的推進

b.役割  サステナビリティ委員会は、リスクマネジメントに関して以下の役割を担っています。

     ・リスクマネジメントの基本方針の決定

     ・全社的なリスクに係る重点対応リスク、対応策およびリスクオーナーの決定

     ・リスクマネジメントの実施状況の確認、有効性評価および改善指導

     ・リスクに関する重要事項の取締役会への報告

c.開催  年2回定期的開催および必要に応じて臨時開催

d.構成員 委員長 社長執行役員、

     委員 各事業本部の執行役員、コーポレート担当執行役員等

 

② リスクマネジメント事務局

法務リスクマネジメント部長が事務局長を務め、サステナビリティ委員会の委員であるコーポレート担当部門を構成員として、当社グループのリスクマネジメントの運営を支援・推進しています。

 

③ 全社的レベルのリスクマネジメント

当社全体または当社グループに影響が及ぶことが想定される事態に対して、サステナビリティ委員会を決定機関として全社的リスクマネジメントを実施しております。

 

④ 事業ユニットレベルのリスクマネジメント

セグメントごとの当社の事業本部および連結子会社を総称した当社グループ内における事業活動の責任単位を事業ユニットとしており、事業本部の執行役員を主管本部長としています。事業本部または子会社で対応が可能な事態には、事業ユニットの主管本部長を責任者としてリスクマネジメントを実施しております。

 

⑤ リスクオーナー

リスクごとに、リスクを効果的にコントロールする活動責任と活動内容・結果についての説明責任を持つ責任者をリスクオーナーとして定めています。リスクオーナーは、事業目的・業績目標に照らして適切なリスク対応策を選択・適用する権限を有しており、リスクへの対応を行っています。全社的リスクのリスクオーナーは執行役員が担うものとし、サステナビリティ委員会にて決定しています。

 

 

当社グループのリスクマネジメント体制に関しては、次のとおりであります。

 


また、当社では、こうした体制の整備、運用に関して、平時のリスクマネジメントとして「リスクマネジメント規程」を、有事のクライシスマネジメントとして「緊急事態対応規程」を制定しております。

 

(2) リスクアセスメントのプロセス

リスクアセスメントにあたっては、まずリスクを特定し、特定したリスクに対して、発生可能性と影響度の観点からリスクマップを用いて分析をしたうえで評価を行っています。

特定されたさまざまなリスクは、大きく「事業環境リスク」「事業戦略リスク」「業務リスク」「金融リスク」「人権・人財・労務リスク」の5つに分類し、さらに中分類・小分類の3つの階層に整理しています。

 

・発生可能性のレベル判定目安


 

・影響度のレベル判定目安


 

・リスクマップ

 


 

リスクアセスメントは、全社的レベルで年2回、事業ユニットレベルで年1回実施しております。

事業ユニットレベルのリスクアセスメントは、まずグループ会社が自社に係るリスクについて分析・評価を行います。次に、グループ会社のアセスメント結果を踏まえて事業ユニットの主管本部長が事業ユニット単位での重点対応リスクを決定します。

全社レベルのリスクアセスメントは、リスクマネジメント事務局が指定した評価部門が事業ユニットのリスクアセスメントを参考にしつつ1次アセスメントを実施、リスクマネジメント事務局が各評価部門の結果を総合的に検討して再度アセスメントを行います。そのアセスメントによって、リスクマップで「重大」リスク、「高」リスクに位置付けられたリスク、および将来の影響変化予測や社会的責任の重要性を考慮して重要と判断したリスクを、サステナビリティ委員会に諮り、同委員会にて全社的な重点対応リスクを決定します。

重点対応リスクには、それぞれについてリスクオーナーが顕在化した場合の事業への影響度を分析して対応策を策定し、実行に努めております。その策定にあたっては、短期的・優先的に対応すべきリスクがサステナビリティ委員会で指定されており、その結果が計画に加味されています。

また、リスクオーナーおよびリスクマネジメント事務局は、対応状況をモニタリングし、課題が明らかになった場合には、リスクオーナーがその是正・改善を図っております。

 

(3) 重点対応リスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に、重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。これらのリスクを制御して可能な限り回避するよう努めております。なお、下記記載のリスク項目は、当社グループ事業に関するすべてのリスクを網羅したものではありません。また、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。(下記に重点対応リスクと記載のあるものは、前述のリスクアセスメントプロセスにより全社的な重点対応リスクとしたリスクを、そのリスクの中分類の階層で経営の重要課題の4分類に関連付けしたものです。)

 

① 「人が活きる環境の創造」に係るもの

a.製品・サービスの開発

当社グループは、製品・サービスにおける「差」ではなく、価値提供におけるコンセプトの「違い」によって競争優位性を築くことを意識し、その姿勢が今までにないマーケットの創出につながると考えています。そうした活動から生まれる高い顧客課題解決力と製品のあるべき姿を形にするデザイン力および高度な生産技術力に裏打ちされた確かなものづくりを強みに、顧客と強い信頼関係を築き、事業領域の幅も広げております。しかしながら、顧客の嗜好の変化スピードに製品・サービスの開発が追いつかず、顧客の期待を超える製品・サービスをタイムリーに提供することができなければ、顧客満足度の低下による影響が生じる可能性があります。また、当社グループの属する業界は競合性の高い業界であり、競合他社が当社グループ製品のデザインおよび技術を追従し、安価で販売するないしは、より高い独自デザインおよび技術により市場シェアを高め、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

重点対応リスク:製品・サービスの開発

 

b.製品・サービスの品質維持、向上

製品・サービスの品質は「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」という当社のミッションの根本であります。安全、高品質で創造性豊かな製品・サービスを追求し、お客様の期待に応えることができるよう、調達から生産、物流、施工にいたるすべてのプロセスにおいて常に品質管理の徹底に努めております。

当社グループは、世界的に認められている品質基準(ISO9001)に従って各製品を製造しております。しかし、すべての製品について不測の事故も生じず、将来にわたりクレームが発生しないという保証はありません。製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、当社グループが最終的に負担する賠償額を、保険が十分にカバーできるという保証はありません。製品の欠陥は、当社グループの評価に影響を与え、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。お客様への新しい価値の提供、販売対象のモノからコトまでへの拡大、社内製造の製品だけでなく社外調達商品、請負工事、サービスまでのトータル販売の伸張といった事業の変化に伴い、対処すべき品質管理対象も多様化・複雑化し続けております。事業の成長速度に品質維持が追随できず品質管理活動が十分に行きわたらなくなる可能性を認識して、サプライチェーン全体を対象とする品質保証委員会を設置するなど安全・品質に関するマネジメント体制を整え、重大事故や不具合発生の可能性といったより詳細なリスクの特定やそれらに対応するための年度計画の策定および活動の推進・サポートを行い、進捗をモニタリングするとともに、お取引先との協力関係のもと、サプライチェーンの各段階で、事例を交えた実務的な品質管理教育を実施しています。また、絶えずその品質管理体制・活動の見直しを行い強固な体制の維持に努めるとともに、継続的な品質管理向上活動により品質の維持、向上を図っています。

重点対応リスク:製品・サービスの品質

 

② 「従業員の働きがいの追求」に係るもの

a.人的資本・多様性

事業の遂行および成長に必要な人財を効果的に集め、育成し、確保できなければ、事業活動を実行、管理、監督するといった重要な能力が妨げられ、計画通りの業績目標が達成できないおそれがあります。人的投資が不足して人財育成に対する取り組みが十分に行われない場合、従業員の健康と安全に十分配慮されない場合、または職場の心理的安全性が確保されない働きにくい社内環境に陥った場合は、従業員の士気の低下や体調不良または離職を招くおそれや、生産力の低下により当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。安全衛生に係る関係法令等への違反は、罰則や賠償金支払だけでなく、当社グループの評価に影響を与え、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。(リスクへの対応策については、「2 サステナビリティに関する考え方および取り組み」を参照)

重点対応リスク:人財、安全衛生、労務、人権

 

③ 「地球環境への取り組み」に係るもの

a.気候変動

気候変動対策の遅れや関係法令等への抵触、または社会が求める資源循環型に企業活動が移行できないと、持続可能な社会づくりへの貢献が妨げられるだけでなく、当社グループの社会的な信用を棄損するとともに、顧客選定基準からの除外による収益悪化の影響を及ぼす可能性があります。(リスクへの対応策については、「2 サステナビリティに関する考え方および取り組み」を参照)

重点対応リスク:気候変動、資源循環型社会への移行

 

④ 「責任ある企業活動」に係るもの

a.サプライチェーンの分断

当社グループは、地震・洪水等の自然災害や火災等の事故災害、新型の感染症の流行、米中貿易摩擦をはじめとする各国の政策動向により、サプライチェーンが分断された場合、事業活動の停止や機会損失、復旧のための費用負担により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、地政学的なリスクの高まりやエネルギー価格の高騰等を背景にした、資材価格の高騰や原材料の調達難といった事態が生じ、これに十分対処できなかった場合、事業活動の機会損失、調達費用負担により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、緊急事態対応規程にて社会・事業活動に重大な影響を及ぼすおそれのある緊急事態が発生した時の対応を定めるとともに、詳細な手順をマニュアルに定めて、迅速かつ的確な対応により、事態の拡大防止と早期収束を図るよう備えています。また、お取引先とは相互の連携による事業面の改善活動やサステナビリティの側面を重視した調達活動を強化しております。

重点対応リスク:大規模自然災害、資材・原材料調達、事故・人為的な災害

 

b.ガバナンス・コンプライアンス

当社グループは、法令等の確実な遵守に加えて高い倫理観に基づき、常に公正、透明、誠実な行動に努めるとともに、適時・適切な情報開示やコミュニケーションを通じて顧客、取引先、従業員、地域社会などさまざまなステークホルダーとより良好な関係を築き信頼を得られるよう努めております。経営層からの発信や行動規範の周知活動、e-ラーニングをはじめとする教育などの啓蒙活動を継続的に実施するとともに、グループ内で企業理念、経営方針をより一層徹底し、グループ一体となった企業活動が遂行できるよう活動責任を明確にしたグループ経営への見直しを行いました。

意識の醸成や行動の徹底はグループ全体で行う必要がありますが、グループ会社統制が機能しない場合を含め、すべての企業活動および役員・従業員の言動が適切で、将来にわたり問題行動が発生しないという保証はありません。社会の期待に対応できていない場合は、当社グループの信用が低下して業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの不適切な行動や信用低下・業績悪化は、取引先にも悪影響を及ぼして取引先を経営破綻に追い込んでしまう社会的責任を生じさせる可能性があると認識しています。組織内のコミュニケーションや心理的安全性が低下した場合、リスクや問題事項の検出遅延、誤認や独断による誤った業務運用、および不正・不適切処理に気づいても報告されない事態を誘発しやすくする可能性があるため、ヘルプラインを社内・社外・国外に設置して懸念事項の早期解決に努めるとともに、定期的に当社グループ全員を対象にした意識調査を行って経年の意識変化分析や改善活動を実施しております。

重点対応リスク:ガバナンス、信用、法律・規制の遵守

 

c.情報セキュリティ

当社グループは、事業上、顧客情報や個人情報を含む秘密情報を保有しております。また、製造販売等の各事業において、様々なICTシステムを利用しており、それらに対する情報セキュリティリスクは年々高まってきております。当社グループは、秘密情報の取扱いについて秘密情報管理規則を定め、電子データを含むすべての秘密情報を厳重に管理するとともに、取引先との間でも秘密情報の保護に関する契約を締結し、情報の適切な管理を実施しております。また、個人情報については、プライバシーマーク制度にも従って適切な取扱いを実施しております。サイバー攻撃等によるウイルス感染や不正アクセスなどに対しては、重要な情報資産の保護とその機密性、完全性、可用性の維持を目的に制定した情報セキュリティ方針のもと、情報セキュリティ管理に関する規程を新たに制定するなど情報セキュリティ事故を未然に防ぐための対策を強化するとともに、2020年に発足したCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心として情報セキュリティ事故が発生した際の被害を最小化するための対策を実施しております。その他、従業員に対しては、社内情報システム使用規則で適切な使用方法を定め、e-ラーニングによる教育や標的型攻撃メール訓練を実施するとともに、イントラネットやパソコン起動時の注意喚起により、日常業務の中で情報セキュリティリスクを意識するための啓蒙活動を継続的に実施しております。しかしながら、日々高度化するサイバー攻撃等にこれらの対策・対応が追い付かず、重大な情報セキュリティ事故が発生した場合、社会的信用の低下や業務停止により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

重点対応リスク:情報セキュリティ

 

⑤ 上記以外で財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の変動に係るもの

a.経済状況

当社グループは、社外のステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションや社内の会議体・報告手続などを通じて、経済環境の変化に関する情報をタイムリーに入手するように努め、一元的に収集・整理するとともに短期・中長期の事業への影響を分析・評価し、機動的に事業活動の見直しを図っております。しかしながら、当社グループの国内販売比率は90%を超えており、国内景気の悪化に伴う設備投資の抑制により、需要が縮小し、当社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

重点対応リスク:経済環境の変化

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

 

前連結会計年度末
(百万円)

当連結会計年度末
(百万円)

総資産

252,914

282,118

純資産

152,702

174,795

自己資本比率

59.6

61.1

1株当たり純資産

1,592.79

1,821.10

 

 

総資産は、前連結会計年度末から29,203百万円増加して282,118百万円となりました。流動資産は、売上債権の増加を主な要因として7,546百万円増加し、固定資産は、建物及び建築物など有形固定資産全般及び投資有価証券の増加を主な要因として21,657百万円増加いたしました。

負債は、未払法人税等、賞与引当金及び繰延税金負債の増加を主な要因として、前連結会計年度末から7,110百万円増加し107,322百万円となりました。

純資産は、利益剰余金、その他有価証券評価差額金及び為替換算調整勘定の増加を主な要因として、前連結会計年度末から22,093百万円増加して174,795百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ1.5ポイント増加して61.1%となり、1株当たりの純資産は、前連結会計年度末の1,592.79円から1,821.10円となりました。

 

② 経営成績の状況

売上高は、前連結会計年度に比べ7.7%増加して298,295百万円となりました。また、売上原価は売上高の増加に伴い、前連結会計年度に比べ10,512百万円増加して198,522百万円となり、売上高に対する売上原価の比率は66.6%となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ4,102百万円増加して75,735百万円となりました。また、販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.4%となりました。

この結果、営業利益は、前連結会計年度の17,372百万円に比べ38.4%増加し24,036百万円となりました。

営業外損益は、前連結会計年度の1,552百万円の収益(純額)に対し、当連結会計年度は2,191百万円の収益(純額)となりました。

この結果、経常利益は、前連結会計年度の18,924百万円に比べ38.6%増加し26,227百万円となりました。

特別損益は、前連結会計年度の4,224百万円の収益(純額)に対し、当連結会計年度は3,330百万円の収益(純額)となりました。

この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の23,148百万円に比べ27.7%増加し29,557百万円となりました。

法人税等は、前連結会計年度の6,935百万円に比べ28.8%増加し8,929百万円となりました。また、税効果会計適用後の法人税等の負担率は30.2%となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の15,906百万円に比べ27.5%増加し20,280百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の163.15円に比べ31.3%増加し214.27円となりました。また、自己資本利益率は12.6%となりました。

なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの状況は、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

区分

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

13,491

21,351

投資活動によるキャッシュ・フロー

△6,660

△12,248

財務活動によるキャッシュ・フロー

△9,485

△8,200

現金及び現金同等物期末残高

36,999

38,215

借入金・社債期末残高

21,159

20,862

 

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益29,557百万円、減価償却費6,532百万円、賞与引当金の増加額1,988百万円及び仕入債務の増加額2,213百万円等による増加と、売上債権及び契約資産の増加額7,861百万円、法人税等の支払額8,217百万円及び投資有価証券売却益3,817百万円等による減少の結果、21,351百万円の資金増加(前期は13,491百万円の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却及び償還による収入4,947百万円等による増加と、有形固定資産の取得15,768百万円、無形固定資産の取得1,290百万円及び投資有価証券の取得1,471百万円等による減少の結果、12,248百万円の支出(前期は6,660百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額7,194百万円等による減少の結果、8,200百万円の支出(前期は9,485百万円の支出)となりました。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,216百万円増加し、38,215百万円となりました。

また、借入金・社債の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ297百万円減少し、20,862百万円となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

オフィス環境事業

61,053

104.5

商環境事業

27,675

109.7

物流システム事業

7,412

119.7

その他

5,628

104.2

合計

101,770

106.8

 

(注) 金額は、製造原価によっております。

 

b.受注状況

当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。一部受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

オフィス環境事業

161,692

103.8

商環境事業

111,682

109.7

物流システム事業

18,387

135.0

その他

6,532

112.8

合計

298,295

107.7

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態

財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。

 

b.経営成績

区分

売上高
(百万円)

営業利益
(百万円)

経常利益
(百万円)

親会社株主に
帰属する
当期純利益
(百万円)

1株当たり
当期純利益
(円)

ROE
(%)

当連結会計年度

298,295

24,036

26,227

20,280

214.27

12.6

前連結会計年度

277,015

17,372

18,924

15,906

163.15

10.8

 

 

当社グループは、パーパスである「人が活きる社会の実現」に向け、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとして、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指しております。

当連結会計年度の国内経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和、外国人観光客の増加によるインバウンド需要の回復などにより、経済活動が正常化に向かう一方、ウクライナ・中東情勢を巡る地政学的リスク、中国経済の先行き懸念、諸資材・部品の価格高騰、世界的な金融引き締めにともなう金利・為替変動などにより、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような状況のもと、コスト削減や価格転嫁の取組みの推進に取り組むとともに、コロナ後の環境変化、労働人口の減少など社会・市場の大きな変化を捉えた新たな需要の創出に注力してまいりました。

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高298,295百万円(前期比7.7%増)、営業利益24,036百万円(前期比38.4%増)、経常利益26,227百万円(前期比38.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益20,280百万円(前期比27.5%増)となり、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益ともに過去最高となりました。

また、自己資本当期純利益率(ROE)は、12.6%(前期比1.7ポイント増)、総資産経常利益率(ROA)は、9.8%(前期比2.2ポイント増)、売上高営業利益率は、8.1%(前期比1.8ポイント増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

売上高(百万円)

セグメント利益又は損失(△)(百万円)

前連結
会計年度

当連結
会計年度

増減

前連結
会計年度

当連結
会計年度

増減

オフィス環境事業

155,760

161,692

5,932

15,885

17,691

1,805

商環境事業

101,842

111,682

9,840

2,721

5,173

2,451

物流システム事業

13,624

18,387

4,763

△1,196

918

2,115

その他

5,788

6,532

743

△37

253

290

合計

277,015

298,295

21,279

17,372

24,036

6,664

 

(注) セグメント利益又は損失(△)の合計は、連結損益計算書の営業利益と一致しております。

 

 

オフィス環境事業

 オフィス環境事業につきましては、新しい働き方に対応したオフィスの構築が、業種・規模を問わず多くの企業にとって重要な経営課題となっており、全国でオフィスのリニューアル需要が活発に推移いたしました。このような状況のもと、当社は、ハイブリッドワークとデジタル時代に対応した新しいワークスタイルの提案営業と、それを支える働き方の変化を捉えた新製品を拡充し、需要の取り込みに努めました。一方で、諸資材・部品の価格高騰の影響を受ける中、生産・物流コスト削減に努めるとともに、価格転嫁の浸透に努めてまいりました。これにより売上高、利益ともに過去最高となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、161,692百万円(前期比3.8%増)、セグメント利益は、17,691百万円(前期比11.4%増)となりました。

 

商環境事業

 商環境事業につきましては、食品を取り扱う業態間の競争や、インバウンド需要回復への期待を背景に、店舗改装の需要が堅調に推移いたしました。このような状況のもと、店舗什器、冷凍冷蔵ショーケースをはじめとした幅広い製品ラインナップに加え、店舗デザインや施工管理等を含む店舗づくりのトータルサポート体制を拡充し、当社の総合力を活かした提案による需要の取り込みに努めました。一方で、諸資材・部品の価格高騰の影響を受ける中、生産・物流コスト削減に努めるとともに、価格転嫁の浸透に努めてまいりました。これにより売上高、利益ともに過去最高となりました。

 この結果、当セグメントの売上高は、111,682百万円(前期比9.7%増)、セグメント利益は、5,173百万円(前期比90.1%増)となりました。

 

物流システム事業

 物流システム事業につきましては、省人・省力化ニーズを背景に、物流施設を中心に自動倉庫の需要は高水準で推移しております。一方で、世界的なサプライチェーンの混乱による諸資材・部品の調達難及び価格高騰が継続しております。このような状況のもと、優位性のある製品の強みを最大限に活かした積極的な提案活動を展開するとともに、生産・物流コストの削減や価格転嫁を進める等、収益の改善に努めてまいりました。これにより売上高は過去最高となり、営業利益は大幅に増加いたしました。

 この結果、当セグメントの売上高は、18,387百万円(前期比35.0%増)、セグメント利益は、918百万円(前期は1,196百万円のセグメント損失)となりました。

 

c.キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社は、長野県須坂市に新工場の建設を予定しております。設備投資計画の詳細につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

当社は、安定的な資金の流動性を確保するため、及び運転資金の効率的な調達を行うため主要取引金融機関と20,000百万円の特定融資枠契約を締結しております。なお、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しております。当連結会計年度における売上高は298,295百万円(前期比7.7%増)、営業利益24,036百万円(前期比38.4%増)、経常利益26,227百万円(前期比38.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益20,280百万円(前期比27.5%増)、自己資本当期純利益率(ROE)は、12.6%(前期比1.7ポイント増)、総資産経常利益率(ROA)は、9.8%(前期比2.2ポイント増)、売上高営業利益率は、8.1%(前期比1.8ポイント増)となりました。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費の総額は、1,494百万円であります。

当社グループの研究開発活動は、人にとって機能的で、安全・快適な空間創造に貢献するとともに、環境問題に配慮した製品の開発を行うことをモットーに、各事業分野にわたり積極的に研究・開発に取り組んでおります。

 

  当連結会計年度のセグメントごとの主な研究成果は以下のとおりであります。

 

(1)オフィス環境事業

新型コロナウイルスが猛威を振るった3年以上の間に、出社制限が掛かりオフィスに人が居なくなったこと、人材の採用難、働き方の変化などに直面し、経営者のマインドが大きく変化しました。経営者のマインド変化は、投資につながります。また、省人・省力・省エネというキーワードに関わる提案が、我々のビジネスに直結しています。

①コロナ禍で途切れた社員間のコミュニケーションの活性化を促す提案として、TBW(Team Based Working)を提唱し、人と人のちょうどよい距離感で個人作業の快適性とコミュニケーションを両立するクリエイティブファニチュア「WORK ISLE(ワークアイル)」を発売致しました。オフィス活動の拠点となる場において、オカムラではこれまでに、人と人をつなぐことをコンセプトにしたクリエイティブファニチュアとして、周りの空間と境界なくつながることで自然と人が集まりチームを超えたコミュニケーションを生み出す「WORK CARRIER(ワークキャリアー)」と、チームの溜まり場としてほどよいこもり感を有しつつ、内と外を縁側でつなぐ「WORK VILLA(ワークヴィラ)」を発売し、提案してきました。「ワークアイル」は、チームの力を発揮するための人と人とのつながりをはぐくみます。これらのクリエイティブファニチュアは、面と曲線で描かれたデザインと共通のカラー展開により、一体となって空間を構成し、オフィス活動の拠点となる場をトータルコーディネートします。

②近年、企業における人的資本経営や健康経営が広まる動きの中で、従業員のウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること)が注目されています。オカムラでは、心と体の調和が取れ、活力が向上している状態を「WELL at Work(ウェルアットワーク)」とし、その実現をサポートするためにワーカーがパフォーマンスを最大限に発揮し、それぞれの働きがい向上を目指すための空間づくりや働き方の提案をしています。ワーカーがオフィスで快適に働くために、身長や体格の違いに合わせた家具や仕事の内容に合わせた設えが必要です。天板が上下に電動で昇降する電動昇降デスクは、立ち姿勢や座り姿勢が取れるほか、座り姿勢時に一人ひとりに合わせて細かく天板の高さを変えることができるため、より快適で働きやすい姿勢をとることが可能です。北欧では、電動昇降デスクの普及率が9割に近く、米国は8割程度である一方、日本での普及率は低いのが現状です。オカムラでは、2015年に天板をなめらかに昇降させることができるデスク・ミーティングテーブル「Swift(スイフト)」を発売しました。「立ったり座ったり」を繰り返すことで、健康状態にも仕事への集中力にもプラスの効果があることに加え、一人ひとりの身長や体格の違いに合わせて天板を昇降し、快適な働く環境を実現します。今回、電動昇降デスク「スイフト」を全面リニューアルしたSwift Nex(スイフトネックス)」を発売し、日本市場においても欧米並みの普及率を目指します。

③近年、人手不足が深刻な問題となっているビル清掃において、省人化・効率化が進められております。新たな需要創出を目指し、2022年4月にクリーニングロボット「STRIVER(ストライバー)を発売しました。昨年は大手不動産デベロッパーと協業し、オフィスビル1棟全体の掃除ロボット活用に向けて、エレベーター連携に関する実証実験を行っております。また、オフィスビル内における他のロボット(警備ロボット、配膳ロボットなど)との連携実験を行い、ロボットフレンドリーな社会の実現に向けて開発を進めています。

④持続可能な医療提供体制を維持していくことを目的とした、医師の働き方改革が2024年4月より実施がされます。これまで主に医療機器に向けられていた病院の予算配分が、医師を取り巻く職場環境改善に向けられる機会と捉え、オフィス向けの働き方改革で得た知見と家具提案を、ヘルスケア市場(主に病院)に実施し需要喚起を行います。医局における収納システム「Relate(リレイト)の品揃え拡充や、医師向け集中作業空間家具「medifice(メディフィス)」のリニューアルを実施しました。

当事業における研究開発費の金額は651百万円であります。

 

(2)商環境事業

人件費の高騰及び人手不足を背景に、店内の効率化・省人化効果および環境配慮意識がより強くなり、店舗の省エネ効果がある製品・ソリューションへの期待が高まっております。また、災害時のインフラ機能など、店舗が果たす社会的役割の重要性がより認識されるなか、当事業においてもよりサステナブルな店舗開発・運営に寄与する製品、ソリューションの研究開発を行っております。

・10年後の環境変化を見据えた店舗の在り方の調査と研究

・デジタルを活用した店内販促及び作業効率の向上を行うサービスの開発

・ロボットを活用した店内作業の軽減に関する実験

・陳列や買い物をしやすくするための、特定の商品に特化した専用什器の研究・開発

・災害時に店舗をより早く復旧できるようにするための、製品の研究開発と復旧作業体制の構築

・冷凍冷蔵ショーケースの消費エネルギーを低減するシステムの研究・開発

当事業における研究開発費の金額は121百万円であります。

 

(3)物流システム事業

EC市場の拡大に伴う取り扱い荷物の増加や人手不足など、物流に対する要求・課題は増大しており、中でも物流の「2024年問題」では、荷主企業に対しても運送会社の荷待ち時間を減らすことが求められています。そのような物流効率化のニーズが高まる中、「自動化・省力化・省スペース化」を追求したマテリアルハンドリングシステム(ハード及びソフトウェア)の研究開発並びに自社製品に加えて、世界の最新技術も取り入れたお客様に最適なソリューションのご提案、導入サポートを行っております。

・AI・IoT・ロボット技術を応用したマテリアルハンドリングシステムの開発

・AI搭載ロボットと遠隔操作によるハイブリッド型自動化ソリューションの開発

・物流効率化を実現する高速・高密度収納のケース系自動倉庫の開発

・省スペース化を実現させるパレット高密度保管用自動倉庫の品揃え強化

・設置工事の短縮を可能とする搬送コンベヤシステムの開発

・保守IoTサービスシステムの開発

当事業における研究開発費の金額は703百万円であります。