第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項には将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものです。

 

(1) 経営基本方針

  当グループは「人材重視」「喜ばれる企業」を経営理念としています。
 「人材重視」とは、「人こそ企業の決め手」と考え、働く者全てが「夢」と「情熱」をもって活き活きと働くことができる企業でありたいという私たちの想いを表しています。また、経営理念には、安全性のみならず、快適さや感動を与えられる製品を車室内空間(キャビン)全体で提供し、社会とともに持続的な成長を続けていくことで、全てのステークホルダーから「喜ばれる企業」であり続けるという強い意思が込められています。
 経営理念はTSフィロソフィーとしてグループ全体に共有され、社員一人ひとりが実践していくことで、企業価値の向上に努めています。

 

(2) 中長期経営計画

当グループはこれまで蓄積してきたシート・内装品に関する多岐にわたる技術を礎に、変化する事業環境の中でさらなる事業成長を遂げるため、安心・安全・快適なキャビンを提供できる企業へと変革すべく、2030年ビジョンに「Innovative quality company - 新たな価値を創造し続ける -」を掲げています。
 このビジョンの実現に向け新たに始まった第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期、以下「第15次中期」)は、「ESG経営の実現」を経営方針とし、「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」からなる重点戦略をもって、一層の事業成長と資本効率の向上に取り組んでいます。

第15次中期の中間である2025年3月期は、中国市場での日系自動車メーカーの販売不振による生産台数の減少や世界的な原材料価格の高騰、労務費の上昇など、大変厳しい事業環境が続きました。加えて、米国の通商政策による先行きの不透明感など、新たな課題が次々と浮上しており、日々変化する事業環境への対応が急務となっています。

しかしながら、第15次中期の策定時に定めた重点戦略は、事業環境が激変する現在においても方向性は妥当であり、各戦略の諸施策を着実に推進していくことが、当グループの持続的成長につながっていきます。引き続き、未来の車室内空間を見据えた次世代技術開発をはじめ、主要客先からのさらなる商権獲得、新事業の拡大に向けた生産体制整備、ビジネスパートナーとのアライアンス活用など、成長に不可欠な領域へ経営資源を投入していきます。

なお、第15次中期開始時点で開示した2030年ビジョンに向けての中長期目標(KPI)については、当グループを取り巻く事業環境の変化に伴い、目標の前提となる生産台数予測が計画策定時点から大きく変動していることを受け、現在見直しを行っています。

 


 

 

(3) 対処すべき課題(重点取り組み)

 ① 成長戦略

    1) キャビンコーディネート機能の獲得

長期視点では、EV化や自動運転車両の実現が着実に近づく中、キャビン全体をコーディネートし、お客さまやユーザーに新たな価値を提案できる企業への変革を加速させるべく、次世代車を見据えた商品開発に取り組んでいます。継続して取り組んでいる独自イベント「次世代車室内空間発表会」では、当グループの考えるこれまでにない車室内空間と、そこで過ごす新たな移動時間の提案を実際の車両の中に具現化し、さまざまな完成車メーカーの皆さまにご体験いただいています。そこから拾い上げたお客さまの声をタイムリーに研究開発に活かすことで、より魅力的な商品提案へとつなげていきます。

 

   2) 新事業のさらなる拡大

当グループは本田技研工業グループ(以下、ホンダ)を主要客先として、着実な成長を遂げてきました。しかしながら、外部環境変化による収益減少リスクを減らすとともに、さらなる事業成長を遂げるためには、新たなお客さまの獲得とその商権拡大が急務です。全世界のお客さまをターゲットとし、各機種のモデルチェンジタイミングを見据えた戦略的な営業活動を展開していきます。

特に、今後も自動車需要の拡大が見込まれるインド市場においては、マルチ・スズキ・インディア社向けに四輪車用シートをはじめとした自動車部品を製造しているクリシュナグループと、シート開発および自動車部品製造の合弁会社の設立を決定しました。両社が培ってきた技術と豊富な経験を共有し、インド国内の自動車メーカーなどの新規顧客、新商権獲得に向け、強力に受注活動を推進していきます。

 

   3) 主要客先シェア向上

新規顧客・新商権の獲得を図る一方、当グループにとってホンダビジネスは最も重要な事業基盤であることに変わりはなく、第15次中期もホンダビジネスのさらなる拡大を目指し、ホンダ向け四輪車用シートシェア向上を図っていきます。
 シェア向上には、既存商権の確実な受注と新商権による拡販が不可欠です。激変する自動車業界の環境下においても、開発初期段階からお客さまとの魅力商品の共創に取り組み、確実な商権獲得につなげ一層のシェア向上を目指します。

 

 

 ② 地域戦略

    1) 北米収益体質のV字回復

米州地域では、その市場の大きさからグループ最大の売上収益を計上する一方、変則生産から生じる労務費や生産ロスの増加、原材料価格の高騰など、さまざまな要因から収益性に課題を残しています。収益のV字回復に向けては、生産工程の自動化や生産変動に柔軟に対応できる自動立体倉庫システムなどの設備投資、調達構造の再編などに取り組んでおり、着実な体質改善が図られています。引き続き、さらなる収益体質への変革を目指し、徹底した原価低減に取り組んでいきます。

 

    2) 中国事業戦略の再構築

中国地域では、新興EVメーカーの勢力拡大により、日系自動車メーカーは苦戦を強いられ、非常に厳しい事業環境が続いています。そのような中でも、当グループの収益性を支えるべく、生産要員の最適化や調達体制の見直しにより、収益維持を図ります。また、新たなビジネスパートナーとの連携を活かし、長安汽車グループなど新たなお客さまからの商権を獲得しました。これらを皮切りに、さらなる事業拡大につなげ、激化する中国市場での勝ち残りを目指します。

 

 

    3) 欧州新事業の戦略的拡大

「新事業のさらなる拡大」に向け、本格稼働を開始したポーランド四輪車用シート生産会社は、その立地を活かし、周囲に点在する欧州自動車メーカーへ向け価格競争力のある製品供給を可能とします。日本の各機能本部とドイツ営業・開発拠点が連携を図り、これらの利点を活かした欧州自動車メーカーへの積極的な営業活動により、新規顧客・新商権を着実に獲得していくことで、より一層の拡販を目指します。

 

 

 ③ 機能戦略

  1) サプライチェーンの再構築

EV化に伴う利益構造の変化や新興メーカーの台頭など、自動車業界を取り巻く環境は大きく変化しており、新規商権獲得に向けては、コスト競争力ある部品を安定的に供給できるサプライチェーンの確立が急務です。そのため、部品生産アロケーションの見直しや現地ローカルメーカーの採用拡大などによる原価低減、取引先と連携したCO₂排出量削減など、収益性を兼ね備えたサステナブルなサプライチェーンの構築を目指します。

 

    2) 環境技術開発の推進強化

これからの事業成長には環境負荷を回避・低減する“環境技術”が重要となります。従来から推進する軽量化技術はもとより、サステナブルマテリアル※1への置き換え技術の構築を図ります。また、リサイクル材やスクラップ鉄を使った電炉鋼材加工技術の確立、製品自体のリサイクル促進を目指し、モノマテリアル※2化や製品の易解体構造の実現など、環境技術をいち早く製品として世に送り出すことで、一層の事業成長と持続可能な社会への貢献に努めます。
※1継続的に利用可能な資源から得られ、ライフサイクル全体で環境への影響が小さい原材料
※2「単一素材」の意味。製品や部品が単一の素材でできていることでリサイクル性が向上する

 

    3) 高効率生産体制の構築

他社を凌駕する高効率な生産体制の構築により労働生産性を高めていくため、徹底した生産の自動化やAI技術を活用した生産ラインの進化などを推進していきます。また、サステナビリティへの取り組みとして、省エネ技術活用による電力使用量削減や環境負荷を低減する生産技術の導入を図り、持続可能な“モノづくり”へと進化させていきます。

 

 

 ④ 資本効率の向上

当グループは、盤石な財務基盤を持つ一方、積み上げた資本をいかに効率的に活用していくかが重要な課題であると捉えています。財務安全性は維持しつつ、資本構成を改善し、キャッシュをより有益な資産へアロケーションしていくべく、重点戦略に基づく積極的な成長投資を行っていきます。

また、第15次中期は、株主還元方針として「業績に左右されない、継続的かつ安定的な還元の実施」を基本方針と定め、配当と自己株式に関する具体的な指標をもって一層の株主還元を行います。なお、2025年3月期には約150億円規模の自己株式取得を実施し、加えて、2025年5月14日に市場買付けによる約50億円規模の自己株式の取得および自己株式12,000,000株の消却を公表しています。

今後も、成長投資による持続的成長と株主還元の拡充により、資本効率の向上へとつなげていきます。

 

 


 


 


 

⑤ サステナビリティ取り組みの強化

当グループが持続的な成長を遂げるためには、企業としての社会的責任を積極的に果たし、事業活動を通じて社会課題に取り組んでいくことが不可欠です。
 持続可能な社会の実現に向けて「当グループ」と「ステークホルダー」にとっての重要性の両軸から、優先的に取り組んでいくべきマテリアリティ(重要課題)を特定し、中長期的な視点で目標設定しています。社会領域では、未来の車室内空間を想定した研究開発や環境対応技術の開発成果を、独自イベント「次世代車室内空間発表会2024」において、多くの完成車メーカーに提案いたしました。

環境領域においては、省エネルギー施策の水平展開や、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組みました。加えて、さらなるサステナビリティ意識の醸成を目的に、自然保護団体への寄付制度「テイ・エス テック基金」を創設し、社員と会社が一体となり、自然を守る活動の支援を推進しています。

企業基盤領域では、多様な人材の確保や育成はもちろん、社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みを強化しています。毎年実施しているエンゲージメント調査を活用し、各機能本部の責任者が認識する課題や解決に向けた施策を経営陣に共有することで、現場任せで終わらせることなく、効果的な施策につなげています。

引き続き、第15次中期はマテリアリティへの取り組みをさらに加速し、企業価値向上と持続的な成長を実現していきます。特定したマテリアリティおよびKPIについては、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(2)戦略並びに指標及び目標」に記載のとおりです。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当グループのサステナビリティへの考え方、取り組みについては次の通りです。詳細は、当社ホームページ(https://www.tstech.co.jp/)で公開している「テイ・エス テック統合報告書」をご覧ください。
 なお、本項には将来に関する事項が含まれていますが、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

当社では、2021年12月に「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ領域全般に関する課題の審議とグループ全体のマネジメントを行っています。

同委員会は、年3回の開催を基本とし、経営会議の諮問機関として、サステナビリティに関する方針の決定や関連目標の進捗管理・施策の審議などを行います。審議された内容は経営会議での決議を得て、必要に応じて取締役会に上程します。経営レベルでサステナビリティへの取り組みに関する意思決定を行うことで、当グループの持続的な成長と社会課題の解決に努めています。

 

 

(2)戦略並びに指標及び目標

当グループは、2030年ビジョンとしてステートメント「Innovative quality company ―新たな価値を創造し続ける―」を掲げています。2030年に向けた最初の一歩となる第14次中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)では、ビジョン達成に向けたマテリアリティ(重要課題)と2030年時点でのあるべき姿を指標化したサステナビリティ目標を策定しました。第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)においては「ESG経営の実現」を経営方針に掲げ、目標達成に向けてサステナビリティ委員長が主軸となり、さらに取り組みを加速させていきます。

 

 

 

第14次中期

第15次中期

2030年

マテリアリティ

KPI

実績

2025年3月期

取り組み施策

目標

目標

社会

魅力的な
革新技術

開発

研究開発費に占める

革新技術開発費比率

2021年

3月期比

 +2.6%

・次世代の車室空間を
想定した研究開発

・環境対応技術の研究開発

2021年

3月期比

 +3%

2021年

3月期比

 +10%

製品品質の

向上

シートサプライヤー

IQS評点※1

8.8P

・外観品質阻害項目に
対する改善活

・外観品質向上委員会の
継続実施

7.0P

2.0P

(高位安定)

環境

気候変動

対応

CO2排出量削減率※2

2020年

3月期比

 ▲16%

・省エネ施策の水平展開

・再生可能エネルギーの
地域最適手法の検討と導入計画立案

2020年

3月期比

 ▲25%

2020年

3月期比

 ▲50%

資源循環、

有効活用

廃棄物削減率※3

2020年

3月期比

 ▲16%

(全量)

・主要廃棄物再資源化調査

・再資源化の動向調査と
施策検討

 2020年

3月期比

 ▲25%

2020年

3月期比

 ▲50%

取水量削減率と

排水による環境影響※4

2020年

3月期比

▲13%

(全量)

・漏水等チェックリストの作成と点検実施

・取水量削減に向けた
動向調査と施策検討

2020年

3月期比

▲15%

2020年

3月期比

▲50%

環境影響“0”

自然との

共生

テイ・エス テック基金

(マッチングギフト制度

の創設

制度調査
構想検討

・「テイ・エステック
基金」設

・制度運営と自然保護団体への寄付実施

・寄付実績を社内外へ周知

テイ・エス
テックグループによる寄付制度の創設

テイ・エス

テックグループによる寄付制度の創設

企業基盤

人権の尊重

エンゲージメント

レーティング※5

C

・改善施策事例集の
水平展

・アクションプランの
策定、実行

BB

AAA

サプライヤー

サステナビリティ

ガイドライン遵守率※6

97%

対象:国内取引先126社

・グローバル調査の
取り組み強

・取引先へのヒアリング

 100%

対象:国内外

取引先

100%

対象:国内外

取引先

多様性を

活かした

働き方改革

多様な人材の

管理職比率※7

32.5%

・積極的なキャリア
採用の継続

33.3%

35.0%

ガバナンスの強化

コーポレート

ガバナンス・コード

遵守率

100%

・重要内容をコーポレートガバナンス報告書へ反映

・内部統制システム構築の基本方針見直し

100%

100%

 

※1 株式会社ジェイ・ディー・パワー ジャパンによる日本自動車初期品質調査SM(Initial Quality Study、略称IQS)の評点。新車
     購入者を対象に不具合経験を調査し、車100台当たりの不具合指摘件数として集計される。数値が低いほど品質が高いことを示す。

※2 当グループの事業活動に伴うCO2排出量(Scope1+2)の削減率

※3 当グループの生産活動に伴う廃棄物の削減率(残渣、汚泥などは除く)

※4 当グループの工場設備での取水量(使用量)の削減率と、生産活動に伴う排水による環境影響

※5 当社社員を対象とした、株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティング。

      目標とする「AAA」は全11段階中、最上位のレーティング

※6 当グループの取引先(海外を含む)を対象としたサプライヤーサステナビリティガイドラインの遵守率

※7 女性・キャリア採用・外国籍・高齢者・障がい者の管理職比率

 

主要取り組み① 気候変動対応

当グループはCO2を直接排出する自動車の製造に関わる企業として、また気候変動が事業に及ぼす影響の大きさから、気候変動対応を重要な経営課題の一つと捉えています。

カーボンニュートラルへの取り組みは、持続可能な社会の実現には不可欠であり、各国政府によるCO2排出量削減を目標としたエネルギー規制や、法令強化が見込まれ、自動車についてもさまざまな規制が強化されると予測されます。規制強化は当グループにとってリスクとなり得る一方、当グループが強みとする環境性能に優れた製品・サービスに力を入れて取り組むことは事業拡大の機会となり得ます。今後、変化する規制や法令に適応した当グループの製品・サービスを普及させていくことが、CO2を含む世界の温室効果ガス排出抑制に向けた有効な施策であり、かつ当グループの事業成長につながると考えています。

当グループの主要事業である四輪事業(シート・内装品)を対象とし、シナリオ分析および事業におけるリスクと機会の特定を行いました。気候変動に伴うリスクと機会には、規制の強化や技術の進展、市場の変化など脱炭素社会への移行に起因するものと、急性的な異常気象や慢性的な気温上昇など気候変動の物理的な影響に起因するものが考えられます。当グループは、気候変動に伴うさまざまな外部環境の変化について、その要因を「物理的リスク」と「移行リスク」に分類の上、財務的影響を大・中・小の3段階で定性評価し、重要なリスクと機会を特定しています。なお、重要なリスクと機会の影響については仮説を立て、影響額を想定した定量評価を実施しています。

分析対象期間は2050年までとし、当グループの長期環境目標に合わせ、中期を2030年、長期を2050年と設定しています。
 

 

気候変動によるリスクと機会、およびその対応

■主なリスク

分類

想定

される

リスク

時間軸

潜在的な

財務影響

対応

関連する

取り組みや指標

物理的
リスク

4℃

急性

台風・集中豪雨・ハリケーンなどの異常気象によるグループ拠点の操業停止に伴う売上減少

長期

[影響度:大]
洪水による操業停止に伴う減収影響額として、最大で1拠点当たり約50億円程度を想定

・BCP対策の強化
・災害時、部品代替生産

などの生産保全や、迅速

な稼働再開に向けた

グループ内連携
・リスクを考慮した

拠点展開
・サプライチェーンに

おける災害リスク管理

・グローバルリスク

 管理委員会による

 リスクマネジメント

移行
リスク
1.5℃

政策
法規制

規制強化に伴う、再生可能エネルギー導入や設備投資の増加

中期

[影響度:大]

太陽光発電をはじめとする再生エネルギーへの転換に関わる2030年までのコストとして約70億円程度を想定

・エネルギー使用の効率化
・費用対効果が最大となる
  効果的な設備への投資

・高効率生産体制の構築 
・長期環境目標

炭素税導入拡大による操業コストの増加

中期

[影響度:中]

2030年時点の当グループCO2排出量における

炭素税影響額として約7億円程度を想定

・CO2削減施策(省エネル

 ギー化推進・再生可能

 エネルギー導入など)の

 推進

(2024年3月期 対応費用  

 約1.9億円)

・物流効率向上

技術

低炭素製品や電動化対応製品に向けた研究開発に関わるコストや設備投資の増加

中期

[影響度:大]
環境負荷の少ない製品や製造技術、ならびに電動車に適した製品の研究開発費と、それに伴う設備投資額の増加を想定

・営業活動の強化による

売上の拡大
・顧客との共創による開発

の強化

・環境技術開発の

 推進強化

市場

環境に配慮した材料の採用や炭素税などに伴う原材料調達コストの増加

中期

[影響度:大]
2030年時点でのサプライヤーとの取引における炭素税影響額として約400億円を想定

・サプライチェーン

マネジメントの強化
・Scope3排出量削減施策

の推進
・物流効率向上

・サプライチェーンの

 再構築

電動化対応製品や低炭素製品への対応遅れによる売上減少

中期

[影響度:大]
電気自動車への移行や、製品の環境負荷低減が求められる中、顧客ニーズに適合した製品を提供できない場合、2030年の減収影響額として約1,000億円程度を想定

・電気自動車対応製品

開発の加速
・環境負荷低減素材の

加工技術確立
・新素材や新技術に対応

した高効率製造

ラインの構築

・主要客先シェア向上
・環境技術開発の推進

強化

 

 

 

■主な機会

分類

想定

される

リスク

時間軸

潜在的な

財務影響

対応

関連する

取り組みや指標

機会
1.5℃

資源

効率

生産プロセス効率化に伴う操業コストの減少

中期

[影響度:中]

省エネルギー化施策により2030年までにもたらされるコスト削減効果額として約5億円程度を想定

生産設備を中心とした

省エネルギー化施策の

継続推進

・生産工程の自動化とそれ

に適した製品仕様開発

・回生エネルギーや自重を

活用した生産工程の

改善

・高効率生産体制の構築

・マテリアリティ

・長期環境目標

製品
および
サービス

低炭素製品の需要拡大に伴う、電動化に対応したシートや環境負荷低減素材を採用した内装部品などの売上増加

中期

[影響度:大]

電気自動車に適合する製品の充実により、新規顧客獲得や商権拡大につながり、2030年の増収効果額として約700億円程度を想定

電費向上に貢献する製品

開発

・植物由来の原料などを

用いた製品の開発

(バイオマスウレタン
  など)

・リサイクル材の採用

 (リサイクルPP、電炉材

  の活用)や易解体構造化

  の推進

・環境負荷低減素材の加工

技術確立

・新素材や新技術に対応

した高効率製造ライン

の構築

・キャビンコーディネート

 機能の獲得

・新事業のさらなる拡大

・環境技術開発の推進強化

次世代自動車に適合した新製品販売による売上増加

中期

[影響度:大]

キャビン(車室内空間)全体をコーディネートし、次世代自動車に求められる新たなニーズに適合した製品開発により、新規顧客獲得や商権拡大につながり、2030年の増収効果額として約350億円程度を想定

キャビンコーディネート

に向けた他業種との

技術・製品

・システムソフトウェア

 開発の強化

・キャビンコーディネート

 機能の獲得

 

 

なお、気候変動を中心とした環境影響については、2030年目標に加え、2050年のあるべき姿を指標とした長期環境目標を策定しています。気候変動対応に加え、循環型社会の形成、水資源の保全など、社会課題解決への貢献とさらなる事業成長の両立を目指し、グループ全体で環境保全活動を推進しています。

項目

KPI

比較期

2030年目標

2050年目標

CO2

CO2排出量削減※1

2020年3月期比

▲50%

▲100%

廃棄物

廃棄物削減率※2

▲50%

▲100%

取水量/排水量削減率※3

取水量削減

▲50%

排水量削減

▲100%

排水による環境影響※4

ゼロ

ゼロ

 

※1  当グループの事業活動に伴うCO2排出量(Scope1+2)の削減率

※2  当グループの生産活動に伴う廃棄物の削減率(残渣、汚泥などは除く)

※3  当グループの工場設備での取水量(使用量)の削減率と、生産活動に伴う排水量の削減率

※4  当グループの生産活動に伴う排水による環境影響

 

 

主要取り組み② 人的資本活用・多様性向上への取り組み

当グループは、企業活動の根幹となる企業理念に「人材重視」「喜ばれる企業」を掲げ、「人こそ企業の決め手」との考えの下、人権尊重、人事評価・処遇、福利厚生、社員教育、職場環境など多岐にわたる領域において、資本となる社員一人ひとりが個人の特性を活かし、活き活きと活躍できる安全で快適な環境づくりと人材育成に努めることを基本方針としています。

特に、中長期的な企業価値向上に向けたダイバーシティの重要性を認識し、マテリアリティ(重要課題)に対して、2030年時点でのあるべき姿を指標化したサステナビリティ目標の一つである「多様な人材の管理職比率(女性・キャリア採用・外国籍・高齢者・障がい者の管理職比率)35%(単体)」を掲げています。多様な人材のさらなる活躍を促進するため、性別・国籍などの違いが阻害要因とならないよう、雇用・就労環境の整備へ中期的に取り組んでいるほか、長期的には海外各地域の国情に合わせた水平展開を目指しています。

また、当グループでは関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みを行っていますが、各会社によって取り組み内容が異なることから、連結グループにおける記載が困難です。そのため、指標に関する実績は連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の数値を記載しています。

 

[主な取り組み]

・多様な働き方ができる制度整備(コアタイムのないフレックスタイム制勤務、在宅勤務制度)

・仕事とプライベートの両立支援(出産・育児・介護の環境整備)

・採用手法の拡充(通年採用制度、リファラル採用制度、カムバック採用制度)

・社員との相互理解醸成
 (エンゲージメントレーティング調査・アクションプラン策定、異動希望調査及びジョブローテーション強化)

 

関連指標(単体)

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

女性管理職比率

2.6

2.9

2.7

2.8

3.0

障がい者雇用率

2.7

2.7

3.0

2.8

2.9

外国籍社員比率

0.6

0.6

0.6

0.6

0.5

有給休暇取得率

96.6

99.4

104.1

103.7

102.6

男性育児休職取得者数

8

13

27

27

38

男性育児休職取得率

11

19

43

50

70

人権・ダイバーシティ関連研修会

7

8

8

8

9

社員1人当たりの研修時間時間

11.1

9.8

9.3

9.1

6.6

研修費百万円

21

34

34

26

56

社員1人当たりの研修費

12,456

19,634

20,060

16,028

34,737

 

 

 

(3)リスク管理

ステナビリティ課題に関するリスクと機会については、毎年見直しを行い、サステナビリティ委員会で審議を行います。

気候変動に伴うリスクと機会は「物理的リスク」と「移行リスク」に分類し、財務影響度を評価した上で、重要なリスクと機会を特定しています。特定された重要なリスクと機会について、「物理的リスク」(自然災害対応)は内容に応じて「グローバルリスク管理委員会」を通じ各機能本部・地域本部で施策を推進します。「移行リスク」については、事業活動に直結する領域は中期経営計画や事業戦略に組み込み、決議された方針に沿って推進します。

その他のサステナビリティ領域については、「サステナビリティ委員会」を通じ各機能本部・地域本部にて施策を推進します。

 

3 【事業等のリスク】

当グループでは、リスク管理の統括責任者として、グローバルリスク管理委員会の委員長を務めるリスクマネジメントオフィサーを取締役または執行役員より選任し、事業を運営する上で顕在化する可能性のある、あらゆるリスクの抽出・評価・予防活動に取り組んでいます。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、別途記載がない限り、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものです。

 

(1) 製品製造・販売に関するリスク

① 本田技研工業株式会社及びそのグループ会社に対する販売依存度について

  当グループの連結売上収益に占める本田技研工業株式会社及び同社関係会社(以下、同社グループ)に対する比率は86.9%(同社グループの取引先への売上収益を含めた最終販売先が同社グループとなる売上収益の比率は89.8%)に達しています。従って、同社グループの事業戦略や購買方針の変更、同社グループにおける生産調整、特定車種の生産拠点移管、生産拠点再編成、当グループの製品を採用した車種の販売開始時期の変更や販売動向、同社グループ及び同社グループ取引先におけるリコールやその他重大な問題による販売動向への影響等は、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  当グループは、魅力商品創出による顧客満足度の向上や、開発初期段階からの同社グループとの商品共創を通じ、同社グループ向けビジネスの維持・拡大を図るとともに、当該リスクの低減とさらなる事業成長に向け、同社グループ以外の顧客獲得に向けて設立された新事業統括本部の指揮の下、全世界のお客さまをターゲットとした戦略的な営業活動を展開し、新規顧客の獲得及び新規商権拡大に努めています。

 

② 競合の状況について

  新たな競合先の台頭や既存競合先の競争力向上により、市場におけるシェアが低下する可能性があります。

当グループは、あらゆる面での競争力向上施策に加え、キャビン全体をコーディネートし、顧客に新たな価値を提案できる企業を目指し、次世代技術開発をはじめ、独自技術のさらなる進化とともに、異業種とのコラボレーションやスタートアップ企業との連携によって、顧客の潜在ニーズを引き出す魅力ある商品の開発・新規顧客の獲得に取り組んでいます。

 

③ 購買取引先の信用リスクについて

  当グループは、主力製品の構造上、数多くの取引先から原材料・部品を調達しており、取引先における財務状況の悪化や経営破綻等が発生した場合には、サプライチェーンが寸断され、製品製造に遅れや停止が生じる可能性があります。

  当該リスクに対しては、取引先の経営状態について定期的に確認を行い、取引先とともに財務体質の強化に取り組むほか、特定の取引先への依存度が高い部品を把握し、有事の代替策をあらかじめ策定しておく等、リスクの最小化に努めています。

 

 

④ 製品の欠陥への対応について

  当グループは、自動車部品の中でも乗員の身体に直接触れ、かつ保護する役割を持つ安全上重要な部品を製造しており、リコール等が発生した場合には、多額の賠償費用、製品保証引当金の計上や信用の低下等が発生する可能性があります。

  当グループは、開発段階からの仕様品質の熟成や製造工程内品質保証体制の構築に努めるとともに、ISO9001/IATF16949等の国際標準規格に基づく品質マネジメントシステムを運用する等、製品欠陥の発生予防に努めています。また、製造物責任賠償に繋がるような製品欠陥の発生に備え、影響範囲を速やかに把握するトレーサビリティ(製造履歴の追跡)システムを導入する等、迅速な対応を可能とする品質管理体制の強化に努めています。

 

⑤ 災害・事故・感染症・戦争・ストライキ等による事業活動への影響について

  当グループの所在地において、大規模な地震等の自然災害及び感染症、戦争、テロ、ストライキ等により、物的、人的被害及びインフラの遮断等、操業を中断する事象が発生した場合、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

    なお、ロシア・ウクライナをめぐる情勢悪化による影響範囲が拡大した場合等には円滑な事業運営が困難になることも予想され、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  当グループは、リスク抽出・検証、リスクへの対策内容の進捗確認と是正措置及び改善に取り組んでおります。重大な影響を与える事象が発生した場合、リスクマネジメントオフィサー指揮の下、当該リスクへの対策内容・対応検討指示を行います。

   また、当該リスクが顕在化した場合に備え、継続的な事業を行うために留保すべき運転資金が定められた「安全資金ガイドライン」をグループ全体に適用する等、有事でも円滑な事業運営と雇用維持を可能とする資金管理体制の構築に努めています。
 

(2)国際情勢や経済動向等の外部経営環境に関するリスク

① 市場環境の変化について

  当グループは、日本、中国、その他のアジア地域、北米、南米、欧州において事業を展開しています。これらの国々における経済の低迷や、自動車市場構造の変化、物価等の動向による消費者の購買意欲の低下は、二輪車及び四輪車等の販売減少につながり、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  当グループでは、顧客の多様化を図るとともに、開発効率の向上、生産の自動化、サプライチェーンの再構築、管理体制の強化等、あらゆる角度から効率性の向上、原価低減に努めることで高収益体質づくりに取り組んでいます

 

② 原材料や調達部品の市況変動等の影響について

  当グループの主要製品である四輪車用シートは、鋼材、樹脂材、ウレタン、表皮材等の原材料及び、機構部品等の調達部品で構成されており、これらを取り巻く規制の変化、調達先の減産、価格の市況変動等に起因して、当社が対応または吸収できない原材料や半導体等の調達部品の供給不足によるサプライチェーンの混乱、急激な価格上昇等が発生した場合には、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  当グループは、原材料や部品の調達において、供給元との基本取引契約をベースに安定的な調達に努めるとともに、市況変動影響を取引価格へ機動的に反映できる取引形態を採用しています。

 

 

③ 為替変動の影響について

  当グループはグローバルに事業活動を展開しており、各国間で部品相互補完等のために行う外貨建取引において、為替変動の影響を受けます。

  当グループは、主要通貨間における為替予約等の為替ヘッジ取引を行い、外貨建取引における為替相場の変動リスクを最小化しています。なお、当グループにとっての主要通貨はUSドル及び中国元であり、それらの平均為替レートは「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」に記載しています。

 

(3)法的規制・訴訟に関するリスク

① 知的財産権保護について

  当グループは、自社が製造する製品に関連した技術とノウハウを蓄積してきましたが、将来にわたって知的財産権が有効に活用できない可能性があります。さらに、知的財産権が違法に侵害される、または当グループの開発した製品・技術が第三者の知的財産権を侵害していると判断された場合、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります

  当グループは、中長期的視点の知的財産戦略に基づき、知的財産ごとに独占化やライセンス化等の判断を行い、ノウハウの流出防止や、事業及び収益の拡大に努めています。また、知的財産部門が他社製品の構造を解析し、当社の知的財産権侵害がないかを随時確認するとともに、当社が他社の知的財産権を侵害しないよう、製品・技術開発に際しては先行調査を実施する等、十分な注意を払っています。

 

② 訴訟等への対応について

  当グループは、原材料・部品の調達や顧客への製品販売をはじめ、事業運営に必要な各種取引を行なっていますが、取引条件の疑義から発生する訴訟等の法的手続きにおいて、当グループの主張が認められなかった場合には、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  当該リスクに対しては、事業に関連する法規の制定・改正情報のタイムリーな把握や対応に努めるとともに、契約締結時の審査体制の整備や、弁護士等の専門家との連携を通じ、問題の未然防止に努めています。

 

③ 国際的活動に潜在するリスクについて

  当グループは、北米、南米、中国、その他のアジア地域、欧州に生産子会社を設立し、海外での事業展開に積極的に取り組んでおり、それらの拠点間における国際間取引は年々、複雑・多様化しています。予期しない法律・規制の制定及び変更等は、当グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、米国をはじめとする追加関税や輸出入規制の強化のほか、米中関係や中東をめぐる情勢変動による影響範囲が拡大した場合等には、広範なサプライチェーンへの影響が予測されます。

  当該リスクに対しては、当社からグループ各社に重要な法規の制定・改正情報の配信を行うとともに、グループ各社で現地関係機関からの積極的な情報収集に努め、変化への円滑な対応を図っています。また、移転価格税制においては、取引規模の大きい日米間のグループ内取引について、両国税務当局間であらかじめ当グループ内における取引価格の設定等を事前承認するAPA(事前確認制度)を活用しています。さらに、当グループは各地域ごとのサプライチェーン体制を構築しており、業績への影響を最小化すべく取り組んでおりますが、今後大きな影響がある場合にはお客様と緊密に連携していきます。

 

 

④ 製品への法規制について

  当グループは、事業を展開する各国において、自動車等に関する安全、環境等のさまざまな法的規制の適用を受けています。さらなる法的規制の強化または新たな規制の制定に際し、それらを遵守できなかった場合、当グループの事業活動を制限される可能性があります。また、これらの法的規制の強化または新たな規制の制定は、コスト増につながる可能性があります。

  当グループは、常に自動車等に関連する最新の法規を把握し、これを遵守した事業活動を行っています。また、欧米を中心とする自動車の最新の法規動向を注視し、今後の法的規制にも対応が可能な開発体制を整えています。

 

(4)その他のリスク

サステナビリティへの取り組みについて

当グループが持続的な成長を遂げるためには、企業としての社会的責任を積極的に果たし、事業活動を通じて社会課題に取り組んでいくことが不可欠です。また、サステナビリティへの取り組みの遅れや誤った対応が発生した場合、地域社会との関係性悪化や投資家や市場からの信頼を損ない、当グループのレピュテーションが低下することにより、株価の下落やビジネスチャンスを逃す可能性があります。

当グループは、刻々と変化する社会の期待に応えながら企業価値の最大化を図っていくために、ESGの観点で経営を行い、サステナビリティへの取り組みを通じ持続可能な社会の実現に貢献していきます。第15次中期は経営方針「ESG経営の実現」の下、全てのステークホルダーにとっての重要性の両軸から、優先的に取り組んでいくべき課題を特定した重要課題(マテリアリティ)及び2030年目標の達成に向けた諸施策への取り組みを加速させていきます

 

② 情報漏洩リスクについて

当グループは技術情報や従業員の個人情報、顧客から受け取ったさまざまな重要情報を保有しています。予期せぬ事態により機密情報の滅失、改ざんもしくは社外への漏洩が発生した場合には、企業価値の毀損、社会的信用の失墜、損害賠償責任等が発生する可能性があります。

当グループは、これらの情報が外部へ流出することを防止するため、社内規程の整備や社員教育の徹底、セキュリティシステムやネットワーク監視体制の強化に取り組んでいます。また、各顧客からのセキュリティ要件を踏まえた環境整備や、対象拠点においてはTISAX(Trusted Information Security Assessment Exchange)※の認証を取得する等、情報管理の徹底に努めています。
※自動車業界向けの情報セキュリティ基準であり、VDA(ドイツ自動車工業会:Verband der Automobilindustrie)が策定した、VDA情報セキュリティ評価基準(VDA ISA)に基づき、認証機関の審査を受ける制度。

 

③ 退職給付債務について

当グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等の前提条件に基づいて算出しています。従って、実際の結果が前提条件と異なった場合、または前提条件が変更となった場合は、当グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります

当グループは、従業員の年金資産運用に際しては、適宜外部専門家の意見を得るほか、審議会等の機関を設置する等、各社で適切かつ慎重な審議を経て行っています

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

(1) 経営成績

2025年3月期は、依然として続く中国市場における日系自動車メーカーの販売不振に加え、各地域での物価高騰や人件費の上昇など、製造コストの上昇局面が続きました。また、世界的なEVシフトの減速を受けた自動車メーカーの開発計画見直しなど、先行きが不透明な状況が続いています。

そのような中でも、課題としていた米州地域の収益改善は、さらなる生産自動化の推進などにより、着実にV字回復が図られています。また、生産台数の減少により厳しい事業運営が続く中国地域においても、要員構成の適正化や固定費の削減など、収益確保に向けた諸施策を推進してきました。さらに、当グループの次世代技術をご提案する独自イベント「次世代車室内空間発表会2024」の開催や、インド市場での事業拡大を見据えた新たな合弁会社の設立準備、新規顧客獲得とその商権拡大などに向け、将来の成長につながる取り組みを加速させています。

当連結会計年度における売上収益は、為替換算効果や新事業売上の増加等により、4,605億14百万円と前連結会計年度に比べ188億円4.3%)の増収となりました。利益面では、さらなる原価低減に努めましたが、中国を中心とした主要客先向けの減産影響等により、営業利益は164億28百万円と前連結会計年度に比べ10億78百万円6.2%)の減益となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は86億30百万円と前連結会計年度に比べ15億84百万円15.5%)の減益となりました。

※本田技研工業株式会社および同社の関係会社等以外への売上

USドル/円平均為替レート・・・前連結会計年度累計平均:144.7円⇒当連結会計年度累計平均:152.6円

中国元/円平均為替レート・・・前連結会計年度累計平均: 20.1円⇒当連結会計年度累計平均: 21.1円

 

セグメントごとの事業概況及び業績は次のとおりです。

 

(日本)

(単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比増減額

前期比増減率

売上収益

91,206

110,467

19,260

21.1

営業利益

7,963

10,359

2,395

30.1

 

前連結会計年度との主な増減理由

売上収益

主要客先向けの増産効果や新事業売上の増加等により増収となりました。

営業利益

諸経費の増加はありましたが、増収効果等により増益となりました。

 

 

 

(米州)

(単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比増減額

前期比増減率

売上収益

240,100

263,555

23,454

9.8

営業利益

3,276

6,111

2,834

86.5

 

前連結会計年度との主な増減理由

売上収益

為替換算効果や増産効果等により増収となりました。

営業利益

増収効果や機種構成の良化等により増益となりました。

 

 

(中国)

(単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比増減額

前期比増減率

売上収益

87,539

70,814

△16,724

△19.1

営業利益

9,999

7,449

△2,549

△25.5

 

前連結会計年度との主な増減理由

売上収益

減産影響等により減収となりました。

営業利益

諸経費の抑制や原価低減に努めましたが、減収影響等により減益となりました。

 

 

(アジア・欧州)

(単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比増減額

前期比増減率

売上収益

48,962

45,050

△3,911

△8.0

営業利益

(△は損失)

2,612

△925

△3,537

 

前連結会計年度との主な増減理由

売上収益

為替換算効果はありましたが、減産影響や機種構成の変化等により減収となりました。

営業利益

ポーランド連結子会社における固定資産の減損損失や減収影響等により減益となりました。

 

 

 

また、事業別の売上収益については下記のとおりです。

(単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比増減額

前期比増減率

 

構成比

 

構成比

 

二輪事業

8,093

1.8

8,203

1.8

109

1.4

 

四輪事業

411,212

93.1

429,224

93.2

18,011

4.4

 

(シート)

374,893

84.9

393,202

85.4

18,308

4.9

 

(内装品)

36,318

8.2

36,021

7.8

△296

△0.8

 

その他事業

22,407

5.1

23,086

5.0

679

3.0

 

合計

441,713

100.0

460,514

100.0

18,800

4.3

 

 

 

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

88,227

24.9

米州

262,656

9.6

中国

67,921

△20.6

アジア・欧州

42,173

△9.3

合計

460,979

4.3

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しています。

2  金額は販売価格により算出しました。

3 上記の金額には、仕入実績が含まれています。

 

② 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

86,903

21.7

7,099

△13.3

米州

264,256

8.1

23,269

9.0

中国

66,176

△24.8

3,871

△32.3

アジア・欧州

42,508

△10.5

3,190

12.5

合計

459,844

1.9

37,429

△1.8

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

87,995

25.1

米州

262,345

9.6

中国

68,019

△20.2

アジア・欧州

42,153

△9.8

合計

460,514

4.3

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しています。

2  最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

Honda Development and Manufacturing of America, LLC

140,400

31.8

154,887

33.6

Honda Canada Inc.

61,971

14.0

69,996

15.2

本田技研工業株式会社

45,672

10.3

56,233

12.2

 

 

(2) 財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は、4,323億66百万円と前連結会計年度末に比べ138億47百万円の減少となりました。これは、主要客先からの受注台数の増加等により営業債権及びその他の債権の増加はありましたが、為替換算影響等により全般的に資産が減少したこと、及び自己株式の取得や配当金の支払等により現金及び現金同等物が減少したことが主な要因です。

(負債)

負債合計は、1,066億79百万円と前連結会計年度末に比べ91億69百万円の増加となりました。これは、為替換算影響等により全般的に負債の減少はありましたが、主要客先からの受注台数の増加等により営業債務及びその他の債務が増加したことが主な要因です。

(資本)

資本合計は、3,256億86百万円と前連結会計年度末に比べ230億16百万円の減少となりました。これは、自己株式の取得により自己株式が増加したこと、及び投資有価証券の時価評価差額の減少等によりその他の資本の構成要素が減少したことが主な要因です。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度に比べ392億11百万円減少し、当連結会計年度末残高は1,115億43百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は、287億13百万円と前連結会計年度に比べ89億45百万円の減少となりました。これは、営業債務及びその他の債務の増減額が73億49百万円の減少から100億54百万円の増加となりましたが、営業債権及びその他の債権の増減額が137億56百万円の減少から38億46百万円の増加となったこと、及び棚卸資産の増減額が1億59百万円の増加から64億58百万円の増加となったこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は、358億67百万円と前連結会計年度に比べ271億97百万円の増加となりました。これは、定期預金の預入及び払戻による純増減額が65億15百万円の収入から116億13百万円の支出となったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は、314億43百万円と前連結会計年度に比べ136億24百万円の増加となりました。これは、自己株式の取得による支出が149億99百万円あったこと等によるものです。

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当グループの資金需要のうち主なものは、原材料の購入費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用、税金の支払い、新機種に対応する生産設備や金型投資等であり、主に営業活動から生み出されるキャッシュ・フローにより充当しています。また、想定される自然災害などのリスクに対応するための資金は、自己資金を基本としています。

 

 

 (4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 ⑤連結財務諸表注記 2 連結財務諸表作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当グループは、製品を通じてお客さまに「喜び」を提供するために、二輪車および四輪車のシート・内装品の製品開発と、より魅力のある高機能な製品実現に向け「魅力・快適」「環境」「安全」の3つの要素を基軸とした先進技術の研究開発を、常にチャレンジングな姿勢で行っています。

日本、米州、中国、アジア、欧州に開発拠点を構え、各地域に適した製品を効率良く開発することで、世界のお客さまの多様化するニーズに応えています。なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は194億円です。当グループの研究開発活動は、各事業における研究開発内容を応用する場合があり、その成果はセグメント横断的に効果があるため、セグメント別の金額は記載を省略しています。

事業ごとの研究開発活動の状況は以下の通りです。

 

(二輪事業)

①  魅力・快適技術

二輪車用シートにおける多彩なデザインを演出する加飾技術のさらなる進化や、四輪車用シート技術を応用し、快適な乗車姿勢や停車時の足着きをサポートする機構を備えたシートなど、魅力ある製品の開発を進めています。

 

②  環境対応技術

二輪車等のシートにおける構成材料の研究により、生産時のCO2排出量削減や製品の軽量化などに取り組んでいます。また、廃棄物削減に向け、分解しやすい組立構造を追求するなど、リサイクル率の向上や、サステナブルマテリアルを活用した製品の研究開発にも注力しています。

※継続的に利用可能な資源から得られ、ライフサイクル全体で環境への影響が小さい原材料

 

(四輪事業)

①  魅力・快適技術

世代自動車を見据え、キャビン全体をコーディネートし、お客さまやユーザーに対し、新たな価値を提案できる企業への変革に向けた取り組みを加速させています。独自技術の進化に加え、異業種とのコラボレーションやスタートアップ企業との共同開発を進めています。

より魅力ある商品を目指し、ユーザー目線に立った使い勝手の良い多彩なシートアレンジを実現するための回転デバイスやリラックス姿勢とドライビング姿勢を両立させる姿勢支持可変デバイスの開発、安全・快適をサポートする各種電子制御デバイス部品(シート統合ECUなど)の開発、これらを制御するためのシステム・ソフトウェア開発力強化に取り組んでいます。

さらに、製品に高質感を与える加工技術、加飾技術の開発、快適性の追求として産学共同で生理学の基礎研究や将来の車室内を想定した過ごし方の研究などを展開しています。

 

②  環境対応技術

シートフレーム構造の徹底的な見直しによる設計の最適化と部品点数の削減により、自動車の燃費を高めCO2排出量削減に貢献しています。また、材料のサステナブルマテリアルへの置き換えを目指し、リサイクル材料やバイオマス材料、環境対応鋼材、モノマテリアルなどを製品に活用可能とする加工技術の確立や、リサイクル性を向上させる分別解体を容易にした製品構造の開発など、いち早く世に送り出すための研究に取り組んでいます。さらに、電気自動車の普及を見据え、自動車の電費向上に貢献する低電力で効率的に人や空間を暖める空調・ヒーターシステムの開発に取り組むなど、さまざまな観点からカーボンニュートラルに寄与する製品開発を行っています。

※「単一素材」の意味。製品や部品が単一の素材でできていることでリサイクル性が向上する。

 

③  安全技術

世界各国の自動車の安全に関する法規対応だけでなく、アセスメントなどの先行情報から、より高い安全性能を備えた製品を研究・開発しています。全方向からの衝突に対する、乗員への衝撃軽減機能や乗員の状態を検知することによる事故防止などの研究を行い、製品開発へ展開しています。前席だけではなく、後席にも乗員検知システムやサイドエアバッグを内蔵し、安全性を高めたシートを順次上市しています。

 

(その他事業)

二輪事業および四輪事業の各研究開発による成果をベースに、その他レジャービークル用シートなど、事業分野の特性に合わせた技術開発を行い、商品デザインを含めた高品質・高機能な製品を商品化しています。

 

これら研究開発活動をさらに進化させ、世界のお客さまに満足していただける魅力ある商品を創出していきます。